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特許7196434湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/30 20060101AFI20221220BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20221220BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20221220BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C08G18/30 070
C08G18/10
C08G18/44
C08G18/40 009
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018123041
(22)【出願日】2018-06-28
(65)【公開番号】P2020002261
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】二宮 淳
(72)【発明者】
【氏名】藤原 豊邦
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-000785(JP,A)
【文献】国際公開第2012/096111(WO,A1)
【文献】特開平02-199185(JP,A)
【文献】特開2019-104847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)を原料とするイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)((メタ)アクリロイル基を有するものを除く。)を含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物であり、
前記ウレタンプレポリマー(i)のウレタン結合量が、1.1~3mol/kgの範囲であり、
前記ポリオール(A)が、脂環式ポリカーボネートポリオール(a1)とその他のポリオール(a2)とを含有し、
前記脂環式ポリカーボネートポリオール(a1)の使用量が、前記その他のポリオール(a2)の使用量よりも少ないことを特徴とする繊維用湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【請求項2】
前記その他のポリオール(a2)が、ポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオールである請求項1記載の繊維用湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリオール(A)とポリイソシアネート(B)とのモル比[NCO/OH]が、1.1~1.5の範囲である請求項1又は2記載の繊維用湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【請求項4】
前記ウレタンプレポリマー(i)のイソシアネート基含有率が、1~4質量%の範囲である請求項1~3のいずれか1項記載の繊維用湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤は、無溶剤であることから環境対応型接着剤として、繊維ボンディング・建材ラミネーションを中心に様々な研究が今日までなされており、産業界でも広く利用されている。
【0003】
前記湿気硬化型ポリウレタン接着剤は、その主剤であるウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基の湿気硬化により最終的な接着強度を発現するが、様々な基材の貼り合わせにおいて、接着剤を塗布した直後でも高い初期接着強度が求められる。
【0004】
高い初期接着強度を得るためには、結晶性ポリエステルポリオールを多量に用いることが一般的である(例えば、特許文献1を参照。)。しかしながら、かかる方法では硬化皮膜が硬くなるため、例えば、繊維用途等の柔軟性が求められる分野では、風合いが低下するとの理由から利用が進んでいないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-190309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、低粘度であり、初期接着強度に優れ、柔軟性に優れる硬化皮膜を形成できる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)原料とするイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)を含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物であり、前記ポリオール(A)が、脂環式ポリカーボネートポリオール(a1)とその他のポリオール(a2)とを含有し、前記脂環式ポリカーボネートポリオール(a1)の使用量が、前記その他のポリオール(a2)の使用量よりも少ないことを特徴とする湿気硬化型ポリレウレタンホットメルト樹脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、低粘度であり、初期接着強度および最終接着強度に優れ、また、柔軟性に優れる硬化皮膜を得ることができる。よって、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、繊維用途に特に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、特定のポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)を原料とするイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i)を含有するものである。
【0010】
前記ポリオール(A)は、脂環式ポリカーボネートポリオール(a1)とその他のポリオール(a2)とを含有するものである。
【0011】
前記脂環式ポリカーボネートポリオール(a1)は、優れた低粘度性、初期接着強度及び柔軟性を得る上で必須の成分であり、例えば、炭酸エステル及び/又はホスゲンと、分子量が50~400の範囲の脂環式ポリオールを含むポリオール化合物とを反応させて得られるものを用いることができる。なお、前記脂環式ポリオールの分子量は、化学構造式から計算される値を示す。
【0012】
前記炭酸エステルとしては、例えば、メチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネ-ト等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0013】
前記脂環式ポリオールとしては、例えば、1,2-シクロブタンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、トリシクロ[5,2,1,02,6]デカン-ジメタノール、ビシクロ[4.3,0]-ノナンジオール、ジシクロヘキサンジオール、トリシクロ[5,3,1,1]ドデカンジオール、ビシクロ[4,3,0]ノナンジメタノール、トリシクロ[5,3,1,1]ドデカン-ジエタノール、ヒドロキシプロピルトリシクロ[5,3,1,1]ドデカノール、スピロ[3,4]オクタンジオール、ブチルシクロヘキサンジオール、1,1’-ビシクロヘキシリデンジオール、シクロヘキサントリオール、水素添加ビスフェノ-ルA、1,3-アダマンタンジオール等を用いることができる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた低粘度性、初期接着強度及び柔軟性が得られる点から、1,4-シクロヘキサンジメタノールを用いることが好ましい。
【0014】
前記脂環式ポリオールの使用量としては、より一層優れた低粘度性、初期接着強度及び柔軟性が得られる点から、ポリオール化合物中20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上がより好ましい。
【0015】
前記脂環式ポリオール以外に用いることができるポリオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を用いることができる。これらの中でも、より一層優れた低粘度性、初期接着強度及び柔軟性が得られる点から、1,6-ヘキサンジオールを用いることが好ましい。
【0016】
前記脂環式ポリカーボネートポリオール(a1)の数平均分子量としては、より一層優れた低粘度性、初期接着強度及び柔軟性が得られる点から、2,800未満であることが好ましく、300~2,500の範囲がより好ましく、600~2,200の範囲が更に好ましい。なお、前記脂環式ポリカーボネートポリオール(a1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0017】
前記その他のポリオール(a2)としては、例えば、前記脂環式ポリカーボネートポリオール(a1)以外のポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた初期接着強度、柔軟性及び低粘度性が得られる点から、ポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオールを用いることが好ましい。
【0018】
前記その他のポリオール(a2)の数平均分子量としては、より一層優れた初期接着強度、柔軟性及び低粘度性が得られる点から、2,800未満であることが好ましく、300~2,500の範囲がより好ましく、600~2,200の範囲が更に好ましい。なお、前記その他のポリオール(a2)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0019】
前記脂環式ポリカーボネートポリオール(a1)の使用量は、前記その他のポリオール(a2)の使用量をよりも少ないことが、優れた初期接着強度及び柔軟性が得られ、かつ低粘度となる点から必須である。前記脂環式ポリカーボネートポリオール(a1)と前記その他のポリオール(a2)との質量比[(a1)/(a2)]としては、より一層優れた初期接着強度、柔軟性および低粘度性が得られる点から、1/99~49/51の範囲であることが好ましく、5/95~47/53の範囲がより好ましく、10/90~45/55の範囲が更に好ましい。
【0020】
前記ポリイソシアネート(B)としては、例えば、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネートイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらの中でも、より一層優れた反応性および最終接着強度が得られる点から、芳香族ポリイソシアネートを用いることが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネートがより好ましい。
【0021】
また、前記ポリイソシアネート(B)の使用量としては、より一層優れた接着強度が得られる点から、ウレタンプレポリマー(i)の原料中5~60質量%の範囲が好ましく、15~50質量%の範囲がより好ましい。
【0022】
前記ウレタンプレポリマー(i)は、前記ポリオール(A)と前記ポリイソシアネート(B)とを反応させて得られるものであり、空気中やウレタンプレポリマーが塗布される筐体や被着体中に存在する水分と反応して架橋構造を形成しうるイソシアネート基をポリマー末端や分子内に有するものである。
【0023】
前記ウレタンプレポリマー(i)の製造方法としては、例えば、前記ポリイソシアネート(B)の入った反応容器に、前記ポリオール(A)を滴下した後に加熱し、前記ポリイソシアネート(B)の有するイソシアネート基が、前記ポリオール(A)の有する水酸基に対して過剰となる条件で反応させることによって製造することができる。
【0024】
前記ウレタンプレポリマー(i)のウレタン結合量としては、より一層優れた初期接着強度、柔軟性および低粘度性が得られる点から、0.5~3mol/kgの範囲であることが好ましく、0.9~2.7mol/kgの範囲がより好ましく、1.1~2.4mol/kgの範囲が更に好ましい。
【0025】
前記ウレタンプレポリマー(i)を製造する際の、前記ポリイソシアネート(B)が有するイソシアネート基と前記ポリオール(A)が有する水酸基の当量比([イソシアネート基/水酸基])としては、より一層優れた初期接着強度、柔軟性および低粘度性が得られる点から、1.1~1.5の範囲であることが好ましく、1.15~1.45の範囲がより好ましい。
【0026】
前記ウレタンプレポリマー(i)のイソシアネート基含有率(以下、「NCO%」と略記する。)としては、より一層優れた初期接着強度、柔軟性および低粘度性が得られる点から、1~4質量%の範囲が好ましく、1.2~3.5質量%の範囲がより好ましい。なお、前記ウレタンプレポリマー(i)のNCO%は、JISK1603-1:2007に準拠し、電位差滴定法により測定した値を示す。
【0027】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、前記ウレタンプレポリマー(i)以外にも、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0028】
前記その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、粘着付与剤、可塑剤、安定剤、充填材、染料、顔料、蛍光増白剤、シランカップリング剤、ワックス等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物の硬化皮膜を得る方法としては、例えば、前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を50~130℃で溶融した後に基材に塗工し、湿気硬化させる方法が挙げられる。
【0030】
前記基材としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、エポキシ系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン、シクロオレフィン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、脂環式ポリイミド系樹脂、セルロース系樹脂、PC(ポリカーボネート)、PBT(ポリブチレンテレフタラート)、変性PPE(ポリフェニレンエーテル)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、乳酸ポリマー、ABS樹脂、AS樹脂等の樹脂フィルム;MDF、合板、パーチクルボード等の木質基材;不織布、織布、編み物等の繊維基材などを用いることができる。前記基材は、必要に応じて、コロナ処理、プラズマ処理、プライマー処理等が施されていてもよい。
【0031】
前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を塗工する方法としては、例えば、ロールコーター、スプレーコーター、T-ダイコーター、ナイフコーター、コンマコーター等を使用する方法が挙げられる。
【0032】
前記塗工後は、例えば、温度20~80℃、相対湿度50~90%にて0.5~3日間エージングし、最終接着強度を得ることができる。
【0033】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物としては、より一層優れた初期接着強度が得られる点から、硬化前の20℃における溶融粘弾性の前記貯蔵弾性率(G’)が、0.1MPa以上であることが好ましく、0.2~1,000MPaの範囲が好ましく、0.3~500MPaの範囲がより好ましい。
【0034】
なお、前記貯蔵弾性率(G’)は、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を110℃で1時間溶融した後、10mlをサンプリングし、溶融粘弾性測定装置(Anton Paar社製「MCR-302」)のパラレルプレート上に置き、110℃から10℃まで降温速度1℃/min、周波数1Hzで溶融粘弾性測定を行った際の20℃における貯蔵弾性率(G’)を示す。
【0035】
また、本発明の硬化皮膜のヤング率としては、より一層優れた柔軟性が得られる点から、20MPa以下であることが好ましく、0.5~15MPaの範囲がより好ましく、1~10MPaの範囲が更に好ましい。
【0036】
なお、前記ヤング率は、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を110℃で1時間溶融した後、離型処理されたポリエチレンテレフタレート基材上に、硬化後の膜厚が100μmとなるように、ナイフコーターを使用して塗工し、3日間放置することで硬化皮膜を得、離型PETから硬化皮膜を剥離し、2号ダンベルで打ち抜き加工したものを試験片とし、この試験片を、テンシロン引張試験機(株式会社オリエンテック製「RTM-100」)を使用して、25℃の雰囲気下で、クロスヘッドスピード:200mm/分、で引張試験を行った際のチャートの原点と、伸び率が2.5%時の応力から測定した値を示す。
【0037】
以上、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、低粘度であり、初期接着強度および最終接着強度に優れ、また、柔軟性に優れる硬化皮膜を得ることができる。よって、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、繊維用途に特に好適に用いることができる。
【実施例
【0038】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。
【0039】
[実施例1]
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、脂環式ポリカーボネートポリオール(宇部興産株式会社製「エタナコールUC-100」、数平均分子量:1,000、以下「脂環式PC-1」と略記する。)30質量部、ポリプロピレングリコール(数平均分子量:1,000、以下「PPG1000」と略記する。)70質量部を仕込み、90℃で減圧加熱することにより水分含有率が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、容器内温度60℃に冷却後、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下「MDI」と略記する。)33質量部を加え、110℃まで昇温して、イソシアネート基含有率が一定となるまで約3時間反応させ、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i-1)を得、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を得た。前記ウレタンプレポリマー(i-1)のNCO%は1.7質量%、ウレタン結合量は1.50mol/kg、合成時の[NCO/OH]は1.32であった。
【0040】
[数平均分子量の測定方法]
前記実施例において、ポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0041】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0042】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0043】
[実施例2]
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、脂環式ポリカーボネートポリオール(宇部興産株式会社製「エタナコールUM-90(3/1)」、数平均分子量:900、以下「脂環式PC-2」と略記する。)30質量部、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量:1,000、以下「PTMG1000」と略記する。)70質量部を仕込み、90℃で減圧加熱することにより水分含有率が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、容器内温度60℃に冷却後、MDI34質量部を加え、110℃まで昇温して、イソシアネート基含有率が一定となるまで約3時間反応させ、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i-2)を得、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を得た。前記ウレタンプレポリマー(i-2)のNCO%は1.7質量%、ウレタン結合量は1.54mol/kg、合成時の[NCO/OH]は1.32であった。
【0044】
[実施例3]
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、脂環式PC-1を15質量部、ポリエステルポリオール(1,4-ブタンジオール及びアジピン酸の反応物、数平均分子量:600、以下「BG/AA600」と略記する。)85質量部を仕込み、90℃で減圧加熱することにより水分含有率が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、容器内温度60℃に冷却後、MDI48質量部を加え、110℃まで昇温して、イソシアネート基含有率が一定となるまで約3時間反応させ、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i-3)を得、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を得た。前記ウレタンプレポリマー(i-3)のNCO%は1.7質量%、ウレタン結合量は2.12mol/kg、合成時の[NCO/OH]は1.23であった。
【0045】
[実施例4]
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、脂環式PC-2を40質量部、ポリプロピレングリコール(数平均分子量:2,000、以下「PPG2000」と略記する。)60質量部を仕込み、90℃で減圧加熱することにより水分含有率が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、容器内温度60℃に冷却後、MDI26.5質量部を加え、110℃まで昇温して、イソシアネート基含有率が一定となるまで約3時間反応させ、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i-4)を得、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を得た。前記ウレタンプレポリマー(i-4)のNCO%は1.8質量%、ウレタン結合量は1.18mol/kg、合成時の[NCO/OH]は1.42であった。
【0046】
[比較例1]
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、脂環式PC-1を80質量部、PPG1000を20質量部仕込み、90℃で減圧加熱することにより水分含有率が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、容器内温度を60℃に冷却後、MDIを33質量部加え、110℃まで昇温し、イソシアネート基含有率が一定となるまで約3時間反応させて、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i-R1)を得、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を得た。前記ウレタンプレポリマー(i-R1)のNCO%は1.7質量%、ウレタン結合量は1.50mol/kg、合成時の[NCO/OH]は1.32であった。
【0047】
[比較例2]
温度計、攪拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四つ口フラスコに、脂環式PC-2を70質量部、PPG1000を30質量部仕込み、90℃で減圧加熱することにより水分含有率が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、容器内温度を60℃に冷却後、MDIを35質量部加え、110℃まで昇温し、イソシアネート基含有率が一定となるまで約3時間反応させて、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(i-R2)を得、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を得た。前記ウレタンプレポリマー(i-R2)のNCO%は1.7質量%、ウレタン結合量は1.60mol/kg、合成時の[NCO/OH]は1.30であった。
【0048】
[粘度の測定方法]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を120℃で1時間溶融した後、1mlをサンプリングし、コーンプレート粘度計(40Pコーン、ローター回転数;50rpm)にて溶融粘度を測定し、低粘度性を以下のように評価した。
「○」;30,000mPa・s未満
「×」;30,000mPa・s以上
【0049】
[初期接着強度の測定方法]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を、それぞれ120℃の温度で1時間溶融させた。該接着剤をポリエチレンテレフタレートシート上に厚さが100μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布した。該塗布層の上に、ポリエチレンテレフタレートシートを貼り合せ、圧着ローラーで圧着した。圧着後5分後に株式会社島津製作所製の精密万能試験機「AG-10NX」を使用して接着強度(N/25mm)を測定し、初期強度を以下のように評価した。
「○」:接着強度が15(N/25mm)以上である。
「×」:接着強度が15(N/25mm)未満である。
【0050】
[柔軟性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を110℃で1時間溶融した後、ポリエステル不織布上にナイフコーターを使用して硬化後の膜厚が100μmとなるように塗工し、3日間放置することで硬化皮膜を得た。これを触感により、柔軟性を以下のように評価した。
「○」:柔軟性に富む。
「×」:硬い印象を受ける。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物である実施例1~4のものは、低粘度であり、初期接着強度および柔軟性に優れていた。
【0054】
一方、比較例1及び2は、脂環式ポリカーボネートポリオールの使用量が、その他のポリオールの使用量よりも多い態様であるが、低粘度性及び柔軟性が不良であった。