(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、および液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/015 20060101AFI20221220BHJP
B41J 2/045 20060101ALI20221220BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/045
B41J2/14
B41J2/14 611
(21)【出願番号】P 2018176083
(22)【出願日】2018-09-20
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】安藤 汐視
(72)【発明者】
【氏名】岩間 正美
(72)【発明者】
【氏名】吉田 悟
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-269315(JP,A)
【文献】特開2004-291542(JP,A)
【文献】特開2008-284848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/015
B41J 2/045
B41J 2/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する圧力を発生させる圧力発生素子と、
前記圧力発生素子に駆動信号を伝える少なくとも2つの配線部と、
複数の前記配線部にそれぞれ設けられ、前記圧力発生素子の駆動制御を行う複数のICと、
複数の前記ICに接し、前記ICの熱を放熱するヒートシンクと、を備え、
前記複数のICは、直接前記ヒートシンクに接する第1のICと、前記配線部を介して前記ヒートシンクに接する第2のICとにより構成され
、
前記第1のICの消費電力を、前記第2のICの消費電力よりも大きくなるように制御する回路であって、前記回路は、吐出時
の駆動信号として、吐出しない程度の大きさの
駆動波形を付与した駆動信号を
前記第1のICに対してのみ印加し、前記第2のICに対しては前記吐出しない程度の大きさの
駆動波形を付与しない駆動信号を印加
する前記回路を有した
液体吐出ヘッドを備える、
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項2】
液滴を吐出する圧力を発生させる圧力発生素子と、
前記圧力発生素子に駆動信号を伝える少なくとも2つの配線部と、
複数の前記配線部にそれぞれ設けられ、前記圧力発生素子の駆動制御を行う複数のICと、
複数の前記ICに接し、前記ICの熱を放熱するヒートシンクと、を備え、
前記複数のICは、直接前記ヒートシンクに接する第1のICと、前記配線部を介して前記ヒートシンクに接する第2のICとにより構成され
、
前記第1のICの消費電力を、前記第2のICの消費電力よりも大きくなるように制御する回路であって、前記回路は、吐出時
の駆動信号として、吐出しない程度の大きさの
駆動波形を付与した駆動信号を
前記第1のICに対してのみ印加し、前記第
2のICに対しては前記吐出しない程度の大きさの
駆動波形より
小さい駆動波形を付与した駆動信号を印加する前記回路を有した
液体吐出ヘッドを備える、
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項3】
液滴を吐出する圧力を発生させる圧力発生素子と、
前記圧力発生素子に駆動信号を伝える少なくとも2つの配線部と、
複数の前記配線部にそれぞれ設けられ、前記圧力発生素子の駆動制御を行う複数のICと、
複数の前記ICに接し、前記ICの熱を放熱するヒートシンクと、を備え、
前記複数のICは、直接前記ヒートシンクに接する第1のICと、前記配線部を介して前記ヒートシンクに接する第2のICとにより構成され
、
前記第1のICの消費電力を、前記第2のICの消費電力よりも大きくなるように制御する回路であって、前記回路は、吐出外のタイミングにおいて、前記第1のICに対しては吐出しない程度の大きさの駆動信号を印加し、前記第2のICに対しては前記吐出しない程度の大きさの駆動信号を印加しない前記回路を有した
液体吐出ヘッドを備える、
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項4】
液滴を吐出する圧力を発生させる圧力発生素子と、
前記圧力発生素子に駆動信号を伝える少なくとも2つの配線部と、
複数の前記配線部にそれぞれ設けられ、前記圧力発生素子の駆動制御を行う複数のICと、
複数の前記ICに接し、前記ICの熱を放熱するヒートシンクと、を備え、
前記複数のICは、直接前記ヒートシンクに接する第1のICと、前記配線部を介して前記ヒートシンクに接する第2のICとにより構成され
、
前記第1のICの消費電力を、前記第2のICの消費電力よりも大きくなるように制御する回路であって、前記回路は、吐出外のタイミング
の駆動信号として、吐出しない程度の大きさの駆動信号を
前記第1のICに対してのみ印加し、前記第
2のICに対しては前記吐出しない程度の大きさの駆動信号よりも波形が
小さい駆動信号を印加する前記回路を有した
液体吐出ヘッドを備える、
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド、および液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、IC(Integrated Circuit)が設けられた複数のFPC(Flexible Printed Circuits)にヒートシンクを設ける構成が知られている。例えば、特許文献1には、ICを冷却する目的で、FPCを介してICの裏面側からヒートシンクを貼り付ける構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
FPCやICのレイアウトによっては、ヒートシンクがICに対して直接貼り付けられる場合や、FPCを介してICの裏面側から貼り付けられる場合がある。今までのように、ヒートシンクをただ設けるだけでは、ICによってヒートシンクによる冷却効率に差が生じてしまい、ICに温度差が発生してしまう。ICはアナログスイッチ等で構成され、温度が変化するとスイッチのオン抵抗が変化し、ピエゾに印加される駆動波形がICによって異なってしまい、吐出ムラなどの原因となり印刷品質が低下する問題があった。
【0004】
本発明は、ICの温度差に起因する印刷品質の低下を抑制することが可能な液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかる液体吐出ヘッドは、液滴を吐出する圧力を発生させる圧力発生素子と、前記圧力発生素子に駆動信号を伝える少なくとも2つの配線部と、複数の前記配線部にそれぞれ設けられ、前記圧力発生素子の駆動制御を行う複数のICと、複数の前記ICに接し、前記ICの熱を放熱するヒートシンクと、を備え、前記複数のICは、直接前記ヒートシンクに接する第1のICと、前記配線部を介して前記ヒートシンクに接する第2のICとにより構成され、前記第1のICの消費電力を、前記第2のICの消費電力よりも大きくなるように制御する回路を備える、ことを特徴とする液体吐出ヘッドとして構成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ICの温度差に起因する印刷品質の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】液体吐出ヘッドの一例であるインクジェットヘッドの外観斜視図である。
【
図2】インクジェットヘッドが有するヒートシンクの外観斜視図である。
【
図3】インクジェットヘッドが有するヒートシンクの外観斜視図である。
【
図4】FPCに実装されるIC部の外観斜視図である。
【
図5】インクジェットヘッドの圧電素子への配線の模式図である。
【
図6】
図5に示した配線を実現する等価回路を示す図である。
【
図9】液体を吐出する装置の一例を示す図であり、(A)は要部構成の概略を示す斜視図、(B)は側面図である。
【
図10】液体吐出ユニットの一例を示す側面図である。
【
図11】液体吐出ユニットの一例を示す上面図である。
【
図12】液体吐出ユニットの一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、液体吐出ヘッド、および液体を吐出する装置の実施の形態を詳細に説明する。本実施形態における液体吐出ヘッドは、ヒートシンクがIC表面と接合する側のICに吐出に影響しない駆動波形を入力することで、ヒートシンクが直接貼り付けられたICの発熱量が増えるため、ヒートシンクがFPCを介して裏面側から貼り付けられたICの温度に近づくことが特徴になっている。
【0009】
図1は、液体吐出ヘッドの一例であるインクジェットヘッド1000の外観斜視図である。
図2は、インクジェットヘッド1000が有するヒートシンク100(第1のヒートシンク)の外観斜視図である。
図3は、インクジェットヘッド1000が有するヒートシンク200(第2のヒートシンク)の外観斜視図である。
図4は、FPCに実装されるIC部の外観斜視図である。
【0010】
インクジェットヘッド1000は、インクジェットヘッド1000内で駆動するICの発熱を外気に放熱するためのヒートシンクを備えている。本実施例では、ヒートシンクは、
図2に示すヒートシンク100と、
図3に示すヒートシンク200とに分割された構成となっているが、これらが一体として構成されていてもよい。ヒートシンク100は、インクジェットヘッド1000の外部である外気に接し、IC300(第1のIC)、IC300’(第2のIC)からの発熱を、ヒートシンク200を介して当該外部に放散するためのヒートシンクである。ヒートシンク200は、IC300、IC300’からの発熱をヒートシンク100に伝える働きをする。
【0011】
図4に示すように、IC300、IC300’のそれぞれは、同じ形状のFPC400、FPC400’に実装され、互いに向かい合うように配置される。IC300、IC300’は、液滴を吐出する圧力を発生させる圧力発生素子の駆動制御を行うICである。また、FPC400、FPC400’は、圧力発生素子に駆動信号を伝えるフレキシブル配線板である。
【0012】
この状態で、図の手前側からIC300とIC300’とに同じヒートシンクを貼り付けると、IC300に対しては、IC表面がヒートシンクに直接貼り付けられる。一方、IC300’に対しては、FPC400’を介して貼り付けられることになる。そのため、IC300’の放熱効率は、IC300の放熱効率よりも悪くなり、IC300とIC300’との間でIC温度に差が生じてしまう。IC温度に差が生じると、IC内のスイッチング素子の特性、例えばアナログスイッチのオン抵抗に差ができてしまい、吐出特性に差が出て印刷品質が悪化してしまう。
【0013】
図5は、液体吐出ヘッドの一例であるインクジェットヘッド1000の圧電素子への配線の模式図である。
図6は、
図5に示した配線を実現する等価回路を示す図である。
【0014】
図5に示すPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)501は圧電素子であり、本実施例では、圧電素子の端子間電圧を変化させ、圧電素子の変位量を変化させることにより、インクジェットヘッド1000の液室に圧力変化を発生させ、液滴の吐出を行う。
図6に示すように、圧電素子の一方の電極はアナログスイッチSWを経由して駆動信号生成回路502に接続されている。IC300およびIC300’は、吐出を行うノズルに対応するSWをオンするよう制御し、駆動信号発生回路502が駆動波形を出力することにより、圧電素子であるPZT501に駆動波形が供給される。
【0015】
図7は、本実施例における印加波形例を示す図である。本実施例では、IC300とIC300’の温度差を小さくするため、IC表面に直接ヒートシンクが貼り付けられるIC300にのみ、インクが吐出しない程度の駆動波形を付与している。
図7では、IC300に対してインクが吐出しない程度の駆動波形が印加される一方(P1)、IC300’に対しては上記駆動波形が印加されていないことを示している(P2)。
【0016】
このように、駆動波形が付与された分だけ、IC300側の消費電力が増加するため、発熱量が増加する。IC300’の方がIC300よりも放熱効率が低いため、IC300側の発熱量を増やすことでIC300’と同程度の温度になるように制御する。したがって、IC300の温度とIC300’の温度との温度差を低減する(例えば、同程度の温度とする)ことができ、印刷品質の悪化を防止することができる。
【0017】
図8は、他の実施例における印加波形例を示す図である。本実施例では、IC300とIC300’の温度差を小さくするため、IC表面に直接ヒートシンクが貼り付けられるIC300にのみ、吐出外のタイミングとなる非印字区間において、吐出しない程度の駆動波形を付与している。
図8では、印字区間Tの間の非印字区間T’において、IC300に対してインクが吐出しない程度の駆動波形が印加される一方(P3)、IC300’に対しては上記駆動波形が印加されていないことを示している(P4)。
【0018】
このように、駆動波形が付与された分だけ、IC300側が発熱する。また、印字区間Tでは、非印字区間T’においてIC300側が発熱した分だけ、印字開始時のIC温度が高くなる。このような制御により、印字中におけるIC300の温度とIC300’の温度との温度差を低減する(例えば、同程度の温度とする)ことができ、印刷品質の悪化を防止することができる。
【0019】
このように、上記各実施例における液体吐出ヘッドによれば、液滴を吐出する圧力を発生させる圧力発生素子と、圧力発生素子に駆動信号を伝える少なくとも2つの配線部(例えば、FPC400、FPC400’)と、複数の配線部にそれぞれ設けられ、圧力発生素子の駆動制御を行う複数のIC(例えば、IC300、IC300’)と、複数のICに接し、ICの熱を放熱するヒートシンク(例えば、ヒートシンク100、ヒートシンク200)と、を備え、複数のICは、直接ヒートシンクに接する第1のIC(例えば、IC300)と、配線部を介してヒートシンクに接する第2のIC(例えば、IC300’)とにより構成され、第1のICの消費電力を、第2のICの消費電力よりも大きくなるように制御する回路(例えば、駆動信号生成回路502)を備えるので、ヒートシンクによる冷却効率の差に起因する印刷品質の低下を抑制することができる。具体的には、ヒートシンクがIC表面と接合する側のICに吐出に影響しない程度の大きさの駆動波形を入力することで、ヒートシンクが直接貼り付けられたICの発熱量が増えるため、ヒートシンクがFPCを介して裏面側から貼り付けられたICの温度に近づけることができる。したがって、ヒートシンクが直接貼り付けられたICと、ヒートシンクがFPCを介して裏面側から貼り付けられたICの冷却効率の差を低減することができる。
【0020】
なお、上記各実施例では、駆動信号発生回路502が、インクが吐出しない程度の駆動波形が印加駆動波形を出力するか否かにより、IC間の温度差を低減することとした。しかし、駆動信号発生回路502が上記印加駆動波形を出力するか否かではなく、消費電力に所定の差を生じさせるような駆動波形を、各ICに出力してもよい。すなわち、駆動信号発生回路502が、ヒートシンクがIC側から取り付けられたFPCと、ヒートシンクが裏面側から取り付けられたFPCとで、ドライバICの消費電力にある一定の差を生じさせる。具体的には、駆動信号発生回路502は、ヒートシンクが裏面側から取り付けられたIC300’に対して吐出に影響しない程度の大きさの駆動信号(第2の駆動信号)を出力しつつ、ヒートシンクがIC側から取り付けられたIC300に対して吐出に影響しない程度の大きさの駆動信号(第2の駆動信号よりも所定の差分だけ大きい波形の第1の駆動信号)を出力して、ヒートシンクがIC側から取り付けられた方を、消費電力が大きくなるように制御する。例えば、駆動信号発生回路502は、IC300に対して、吐出に影響しない程度の大きさの高周波数の駆動波形を出力する一方、IC300’に対して、吐出に影響しない程度の大きさの低周波数の駆動波形(上記高周波数の駆動波形に対して所定の周波数分だけ低周波とした駆動波形)を出力するように制御する。
【0021】
これにより、ヒートシンクがIC側から取り付けられたFPCとヒートシンクが裏面側から取り付けられたFPCとで、温度差を低減する(例えば、同程度の温度とする)ことができ、印刷品質の悪化を防止することができる。
【0022】
なお、上記各実施例における消費電力は、単位時間あたりの消費電力のほか、1滴の吐出あたりの消費電力として考えることができる。さらには、1印刷データあたりの消費電力のほか、概念的1週間(稼働とスリープ/オフが繰り返される5日間+スリープ/オフの2日間)の消費電力量であるTEC(Typical Electricity Consumption)値あたりの消費電力として考えてもよい。
【0023】
〔液体吐出ユニット〕
液体吐出ユニットには、上述の液体吐出ヘッド(インクジェットヘッド1000)が備えられている。
図10、
図11及び
図12に、インクジェットヘッドとして搭載した液体吐出ユニットの一例を示す。
【0024】
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに他の機能部品、機構が一体化したものであり、液体を吐出する機能に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0025】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0026】
例えば、液体吐出ユニット440として、
図10に示すように液体吐出ヘッド404とヘッドタンク441が一体化されているものがある。
【0027】
図10に示す液体吐出ユニット440はキャリッジ403に搭載されている。キャリッジ403は、主走査移動機構を構成するガイド部材401により保持され、主走査方向に往復移動する。
【0028】
図10には、後述する液体を吐出する装置を構成している部材のうち、被記録媒体(例えば、用紙等)を搬送するための手段である搬送ベルト412を示している。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。
【0029】
また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0030】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0031】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッド404を主走査移動機構の一部を構成するガイド部材401に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッド404と主走査移動機構493が一体化されているものがある。また、
図11に示すように、液体吐出ヘッド404とキャリッジ403と主走査移動機構493が一体化されているものがある。
【0032】
図11に示す液体吐出ユニット440は、後述する液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド404で構成されている。図中矢印D1は主走査方向を示す。
【0033】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0034】
また、液体吐出ユニットとして、
図12に示すように流路部品444が取付けられた液体吐出ヘッド404にチューブ456が接続されて、液体吐出ヘッド404と供給機構が一体化されているものがある。このチューブ456を介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッド404に供給される。
【0035】
流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド404と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【0036】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0037】
〔液体を吐出する装置〕
液体を吐出する装置には、上述の液体吐出ヘッドを備えている。優れた組み立て性と優れた放熱効率とを両立することができ、最大吐出量の増加を実現可能な液体吐出ヘッドを備えることにより省スペース化を実現可能であり、液体を吐出する装置の小型化や低コスト化を実現することができるとともに、温度上昇による誤動作等を防止し、安定した液体吐出を実現することができる。
【0038】
なお、本願において、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0039】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手
段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0040】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装
置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0041】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0042】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0043】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0044】
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0045】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0046】
また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0047】
図9に、液体吐出ヘッドをインクジェットヘッドとして搭載した液体を吐出する装置であるインクジェット画像形成装置の一例を示す。
図9(A)は要部構成の概略を示す斜視図、(B)は側面図である。
【0048】
このインクジェット画像形成装置301は、装置本体の内部に、主走査方向に移動可能なキャリッジ、キャリッジに搭載したインクジェットヘッドからなる記録ヘッド、記録ヘッドへインクを供給するインクカートリッジ等で構成される液体吐出ユニットが印字機構部302に収納されている。装置本体の下方部には前方側から多数枚の記録紙303を積載可能な給紙カセット(給紙トレイ)304を抜き差し自在に装着することができ、また、記録紙303を手差しで給紙するための手差しトレイ305を開倒することができ、給紙カセット304或いは手差しトレイ305から給送される記録紙303を取り込み、印字機構部302によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ306に排紙する。
【0049】
印字機構部302は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド311と従ガイドロッド312とでキャリッジ313を主走査方向(紙面の垂直方向)に摺動自在に保持し、このキャリッジ313にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(B)の各色のインク滴を吐出するインクジェットヘッドからなる記録ヘッド314を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。またキャリッジ313には記録ヘッド314に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ315を交換可能に装着している。
【0050】
インクカートリッジ315は上方に大気と連通する大気口、下方にはインクジェットヘッドへインクを供給する供給口を、内部にはインクが充填された多孔質体を有しており、多孔質体の毛管力によりインクジェットヘッドへ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。
【0051】
また、記録ヘッドとしてここでは各色の記録ヘッド314を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドでもよい。さらに、記録ヘッド314として用いるインクジェットヘッドは、圧電素子などの電気機械変換素子で液室壁面を形成する振動板を介してインクを加圧するピエゾ型、或いは発熱抵抗体により気泡を生じさせてインクを加圧するバブル型、若しくはインク流路壁面を形成する振動板とこれに対向する電極との間の静電力で振動板を変位させてインクを加圧する静電型などを使用することができるが、本実施形態では静電型インクジェットヘッドを用いている。
【0052】
ここで、キャリッジ313は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド311に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向下流側)を従ガイドロッド312に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ313を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ317で回転駆動される駆動プーリ318と従動プーリ319との間にタイミングベルト320を張装し、このタイミングベルト320をキャリッジ313に固定しており、主走査モータ317の正逆回転によりキャリッジ313が往復駆動される。
【0053】
一方、給紙カセット304にセットした記録紙303を記録ヘッド314の下方側に搬送するために、給紙カセット304から記録紙303を分離給装する給紙ローラ321及びフリクションパッド322と、記録紙303を案内するガイド部材323と、給紙された記録紙303を反転させて搬送する搬送ローラ324と、この搬送ローラ324の周面に押し付けられる搬送コロ325及び搬送ローラ324からの記録紙303の送り出し角度を規定する先端コロ326とを設けている。搬送ローラ324は副走査モータ327によってギヤ列を介して回転駆動される。
【0054】
そして、キャリッジ313の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ324から送り出された記録紙303を記録ヘッド314の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材329を設けている。この印写受け部材329の用紙搬送方向下流側には、記録紙303を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ331、拍車332を設け、さらに記録紙303を排紙トレイ306に送り出す排紙ローラ333及び拍車334と、排紙経路を形成するガイド部材335,336とを配設している。
【0055】
記録時には、キャリッジ313を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド314を駆動することにより、停止している記録紙303にインクを吐出して1行分を記録し、記録紙303を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号または、記録紙303の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ記録紙303を排紙する。
【0056】
また、キャリッジ313の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、記録ヘッド314の吐出不良を回復するための回復装置337を配置している。回復装置はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。キャリッジ313は印字待機中にはこの回復装置337側に移動されてキャッピング手段で記録ヘッド314をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
【0057】
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段で記録ヘッド314の吐出口を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出し、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(不図示)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
【符号の説明】
【0058】
1000 インクジェットヘッド
100、200 ヒートシンク
300、300’ IC
400、400’ FPC
401 ガイド部材
403 キャリッジ
404 液体吐出ヘッド
405 主走査モータ
406 駆動プーリ
407 従動プーリ
408 タイミングベルト
412 搬送ベルト
413 搬送ローラ
414 テンションローラ
440 液体吐出ユニット
441 ヘッドタンク
442 カバー
443 コネクタ
444 流路部品
456 チューブ
491A、491B 側板
491C 背板
493 主走査移動機構
501 PZT
502 駆動信号生成回路
SW スイッチ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】