(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】レジストパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/039 20060101AFI20221220BHJP
G03F 7/32 20060101ALI20221220BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20221220BHJP
C08F 220/30 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
G03F7/039 501
G03F7/32
G03F7/20 521
C08F220/30
(21)【出願番号】P 2018179384
(22)【出願日】2018-09-25
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】星野 学
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-021903(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130873(WO,A1)
【文献】特開昭63-234006(JP,A)
【文献】特開昭62-240956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 - 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】
〔式(I)中、Lは、単結合または2価の連結基であり、Arは、置換基を有していてもよい芳香環基である。〕
で表される単量体単位(A)と、
下記式(II):
【化2】
〔式(II)中、R
1は、アルキル基であり、R
2は、アルキル基、ハロゲン原子またはハロゲン化アルキル基であり、pは、0以上5以下の整数であり、R
2が複数存在する場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。〕
で表される単量体単位(B)とを有する共重合体、および、溶剤を含むポジ型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜を露光する工程と、
露光された前記レジスト膜を現像する工程と、
を含み、
前記現像を、SP値が10.0(cal/cm
3)
1/2以上14.0(cal/cm
3)
1/2以下の
アルコールを用いて行う、
ポジ型レジストパターン形成方法。
【請求項2】
前記Lが、置換基を有していてもよいアルキレン基である、請求項1に記載の
ポジ型レジストパターン形成方法。
【請求項3】
前記Lが、電子吸引性基を有する2価の連結基である、請求項1または2に記載の
ポジ型レジストパターン形成方法。
【請求項4】
前記電子吸引性基が、フッ素原子、フルオロアルキル基、シアノ基およびニトロ基からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項3に記載の
ポジ型レジストパターン形成方法。
【請求項5】
前記単量体単位(A)が、α-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル単位、または、α-クロロアクリル酸ベンジル単位であり、
前記単量体単位(B)が、α-メチルスチレン単位または4-フルオロ-α-メチルスチレン単位である、請求項1~4の何れかに記載の
ポジ型レジストパターン形成方法。
【請求項6】
前記
アルコールが、炭素数2以上4以下のアルコールである、請求項1~5の何れかに記載の
ポジ型レジストパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レジストパターン形成方法に関し、特には、ポジ型レジストとして好適に使用し得る共重合体を含むポジ型レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造等の分野において、電子線などの電離放射線や紫外線などの短波長の光(以下、電離放射線と短波長の光とを合わせて「電離放射線等」と称することがある。)の照射により主鎖が切断されて現像液に対する溶解性が増大する重合体が、主鎖切断型のポジ型レジストとして使用されている。
【0003】
そして、例えば特許文献1には、耐ドライエッチング性に優れるポジ型レジストとして、α-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチルの単独重合体(ポリα-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル)よりなるポジ型レジストが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のポリα-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチルよりなるポジ型レジストは、耐熱性が低いという点において問題があった。
【0006】
そこで、本発明者は、耐熱性に優れ、主鎖切断型のポジ型レジストとして良好に使用可能な重合体を提供することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、芳香環を含有する所定の単量体を用いて形成した共重合体が、耐熱性に優れており、且つ、主鎖切断型のポジ型レジストとして良好に使用可能であることを見出した。
【0007】
ここで、近年では、パターンの更なる微細化の要求に伴い、ポジ型レジストを用いたレジストパターンの形成においては、解像度に優れるレジストパターンの形成を可能にすることが求められている。しかし、本発明者が更に検討を重ねたところ、芳香環を含有する所定の単量体を用いて形成した上記共重合体をポジ型レジストとして用いたレジストパターンの形成には、解像度を更に向上させたレジストパターンを効率的に形成するという点において改善の余地があることが新たに明らかとなった。
【0008】
そこで、本発明は、耐熱性に優れる共重合体をポジ型レジストとして使用して解像度に優れるレジストパターンを効率的に形成する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者は、芳香環を含有する所定の単量体を用いて形成した共重合体をポジ型レジストとして使用してレジストパターンを形成するに当たり、所定のSP値を有する現像液を用いて現像を行えば、解像度に優れるレジストパターンを効率的に形成可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のレジストパターン形成方法は、下記式(I):
【化1】
〔式(I)中、Lは、単結合または2価の連結基であり、Arは、置換基を有していてもよい芳香環基である。〕
で表される単量体単位(A)と、下記式(II):
【化2】
〔式(II)中、R
1は、アルキル基であり、R
2は、アルキル基、ハロゲン原子またはハロゲン化アルキル基であり、pは、0以上5以下の整数であり、R
2が複数存在する場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。〕
で表される単量体単位(B)とを有する共重合体、および、溶剤を含むポジ型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜を露光する工程と、露光された前記レジスト膜を現像する工程とを含み、前記現像を、SP値が10.0(cal/cm
3)
1/2以上14.0(cal/cm
3)
1/2以下の現像液を用いて行うことを特徴とする。
上記単量体単位(A)および単量体単位(B)を有する共重合体は、耐熱性に優れており、主鎖切断型のポジ型レジストとして良好に使用することができる。また、単量体単位(A)および単量体単位(B)を有する共重合体をポジ型レジストとして使用してレジストパターンを形成するに当たり、SP値が10.0(cal/cm
3)
1/2以上14.0(cal/cm
3)
1/2以下の現像液を用いて現像を行えば、解像度に優れるレジストパターンを効率的に形成することができる。
なお、本発明において、「SP値」(溶解パラメータ;Solubility Parameter)は、Hoyの原子団寄与法を用いて計算することができる。
【0011】
ここで、本発明のレジストパターン形成方法は、前記Lが、置換基を有していてもよいアルキレン基であることが好ましい。Lが置換基を有していてもよいアルキレン基であれば、共重合体の耐熱性を十分に向上させることができるからである。
【0012】
また、本発明のレジストパターン形成方法は、前記Lが、電子吸引性基を有する2価の連結基であることが好ましい。Lが電子吸引性基を有する2価の連結基であれば、共重合体の電離放射線等に対する感度を向上させ、レジストパターンを更に効率的に形成することができるからである。
【0013】
そして、前記電子吸引性基は、フッ素原子、フルオロアルキル基、シアノ基およびニトロ基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。電子吸引性基がフッ素原子、フルオロアルキル基、シアノ基およびニトロ基からなる群より選択される少なくとも1種であれば、共重合体の電離放射線等に対する感度を向上させ、レジストパターンを更に効率的に形成することができるからである。
【0014】
更に、本発明のレジストパターン形成方法は、前記単量体単位(A)が、α-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル単位、または、α-クロロアクリル酸ベンジル単位であり、前記単量体単位(B)が、α-メチルスチレン単位または4-フルオロ-α-メチルスチレン単位であることが好ましい。共重合体が上述した単量体単位を有していれば、共重合体の電離放射線等に対する感度および耐熱性を十分に向上させることができるからである。
【0015】
そして、本発明のレジストパターン形成方法は、前記現像液が、炭素数2以上4以下のアルコールであることが好ましい。現像液として所定のSP値を有する炭素数2以上4以下のアルコールを使用すれば、レジストパターンの解像度および形成効率を更に向上させることができるからである。また、炭素数2以上4以下のアルコールは、入手が容易だからである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐熱性に優れる共重合体をポジ型レジストとして使用して解像度に優れるレジストパターンを効率的に形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
なお、本発明において、「置換基を有していてもよい」とは、「無置換の、または、置換基を有する」を意味する。
【0018】
ここで、本発明のレジストパターン形成方法は、電子線などの電離放射線や紫外線などの短波長の光の照射により主鎖が切断されて低分子量化する、主鎖切断型のポジ型レジストを用いるものである。そして、本発明のレジストパターン形成方法は、特に限定されることなく、例えば、半導体、フォトマスク、モールドなどの製造プロセスにおいてレジストパターンを形成する際に用いることができる。
【0019】
(レジストパターン形成方法)
本発明のレジストパターン形成方法は、以下に詳述するポジ型レジスト組成物を用いる。具体的には、本発明のレジストパターン形成方法は、芳香環を含有する所定の単量体を用いて形成した共重合体を含む所定のポジ型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程(レジスト膜形成工程)と、レジスト膜を露光する工程(露光工程)と、露光されたレジスト膜を現像する工程(現像工程)とを含み、任意に、現像されたレジスト膜をリンスする工程(リンス工程)を更に含む。さらに、本発明のレジストパターン形成方法は、現像工程を、SP値が10.0(cal/cm3)1/2以上14.0(cal/cm3)1/2以下の現像液を用いて行うことを特徴とする。
【0020】
そして、本発明のレジストパターン形成方法では、芳香環を含有する所定の単量体を用いて形成した、耐熱性に優れる共重合体をポジ型レジストとして用いてレジストパターンを形成することができる。また、本発明のレジストパターン形成方法では、上述した所定の共重合体を含むポジ型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成し、且つ、SP値が10.0(cal/cm3)1/2以上14.0(cal/cm3)1/2以下の現像液を用いて現像を行っているので、解像度に優れるレジストパターンを効率的に形成することができる。
【0021】
<レジスト膜形成工程>
レジスト膜形成工程では、レジストパターンを利用して加工される基板などの被加工物の上に、ポジ型レジスト組成物を塗布し、塗布したポジ型レジスト組成物を乾燥させてレジスト膜を形成する。
ここで、ポジ型レジスト組成物の塗布方法及び乾燥方法としては、特に限定されることなく、レジスト膜の形成に一般的に用いられている方法を用いることができる。そして、本発明のパターン形成方法では、以下のポジ型レジスト組成物を使用する。
【0022】
[ポジ型レジスト組成物]
ポジ型レジスト組成物は、以下に詳述する所定の共重合体と、溶剤とを含み、任意に、レジスト組成物に配合され得る既知の添加剤を更に含有する。
【0023】
〔共重合体〕
本発明のレジストパターン形成方法にて使用するポジ型レジスト組成物に含有される共重合体は、下記式(I):
【化3】
〔式(I)中、Lは、単結合または2価の連結基であり、Arは、置換基を有していてもよい芳香環基である。〕で表される単量体単位(A)と、
下記式(II):
【化4】
〔式(II)中、R
1は、アルキル基であり、R
2は、アルキル基、ハロゲン原子またはハロゲン化アルキル基であり、pは、0以上5以下の整数であり、R
2が複数存在する場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。〕で表される単量体単位(B)とを有する。
【0024】
なお、共重合体は、単量体単位(A)および単量体単位(B)以外の任意の単量体単位を含んでいてもよいが、共重合体を構成する全単量体単位中で単量体単位(A)および単量体単位(B)が占める割合は、合計で90mol%以上であることが好ましく、100mol%である(即ち、共重合体は単量体単位(A)および単量体単位(B)のみを含む)ことがより好ましい。
【0025】
そして、共重合体は、所定の単量体単位(A)および単量体単位(B)の双方を含んでいるので、何れか一方の単量体単位のみを含む単独重合体等と比較し、電離放射線等(例えば、電子線、KrFレーザー、ArFレーザー、EUVレーザーなど)が照射された際に主鎖が切断され易く(即ち、電離放射線等に対する感度が高く)、且つ、耐熱性に優れている。
【0026】
-単量体単位(A)-
ここで、単量体単位(A)は、下記式(III):
【化5】
〔式(III)中、LおよびArは、式(I)と同様である。〕で表される単量体(a)に由来する構造単位である。
【0027】
そして、共重合体を構成する全単量体単位中の単量体単位(A)の割合は、特に限定されることなく、例えば30mol%以上70mol%以下とすることができる。
【0028】
ここで、式(I)および式(III)中のLを構成し得る、2価の連結基としては、特に限定されることなく、例えば、置換基を有していてもよいアルキレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基などが挙げられる。
【0029】
そして、置換基を有していてもよいアルキレン基のアルキレン基としては、特に限定されることなく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基などの鎖状アルキレン基、および、1,4-シクロヘキシレン基などの環状アルキレン基が挙げられる。中でも、アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基などの炭素数1~6の鎖状アルキレン基が好ましく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基などの炭素数1~6の直鎖状アルキレン基がより好ましく、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などの炭素数1~3の直鎖状アルキレン基が更に好ましい。
【0030】
また、置換基を有していてもよいアルケニレン基のアルケニレン基としては、特に限定されることなく、例えば、エテニレン基、2-プロペニレン基、2-ブテニレン基、3-ブテニレン基などの鎖状アルケニレン基、および、シクロヘキセニレン基などの環状アルケニレン基が挙げられる。中でも、アルケニレン基としては、エテニレン基、2-プロペニレン基、2-ブテニレン基、3-ブテニレン基などの炭素数2~6の直鎖状アルケニレン基が好ましい。
【0031】
上述した中でも、電離放射線等に対する共重合体の感度および耐熱性を十分に向上させる観点からは、2価の連結基としては、置換基を有していてもよいアルキレン基が好ましく、置換基を有していてもよい炭素数1~6の鎖状アルキレン基がより好ましく、置換基を有していてもよい炭素数1~6の直鎖状アルキレン基が更に好ましく、置換基を有していてもよい炭素数1~3の直鎖状アルキレン基が特に好ましい。
【0032】
また、電離放射線等に対する共重合体の感度を更に向上させる観点からは、式(I)および式(III)中のLを構成し得る2価の連結基は、電子吸引性基を1つ以上有することが好ましい。中でも、2価の連結基が置換基として電子吸引性基を有するアルキレン基または置換基として電子吸引性基を有するアルケニレン基である場合、電子吸引性基は、式(I)および式(III)中のカルボニル炭素に隣接するOと結合する炭素に結合していることが好ましい。
【0033】
なお、電離放射線等に対する共重合体の感度を十分に向上させ得る電子吸引性基としては、特に限定されることなく、例えば、フッ素原子、フルオロアルキル基、シアノ基およびニトロ基からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。また、フルオロアルキル基としては、特に限定されることなく、例えば、炭素数1~5のフルオロアルキル基が挙げられる。中でも、フルオロアルキル基としては、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基が好ましく、トリフルオロメチル基がより好ましい。
【0034】
そして、電離放射線等に対する共重合体の感度および耐熱性を十分に向上させる観点からは、式(I)および式(III)中のLとしては、メチレン基、シアノメチレン基、トリフルオロメチルメチレン基またはビス(トリフルオロメチル)メチレン基が好ましく、ビス(トリフルオロメチル)メチレン基がより好ましい。
【0035】
また、式(I)および式(III)中のArとしては、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基および置換基を有していてもよい芳香族複素環基が挙げられる。
【0036】
そして、芳香族炭化水素環基としては、特に限定されることなく、例えば、ベンゼン環基、ビフェニル環基、ナフタレン環基、アズレン環基、アントラセン環基、フェナントレン環基、ピレン環基、クリセン環基、ナフタセン環基、トリフェニレン環基、o-テルフェニル環基、m-テルフェニル環基、p-テルフェニル環基、アセナフテン環基、コロネン環基、フルオレン環基、フルオラントレン環基、ペンタセン環基、ペリレン環基、ペンタフェン環基、ピセン環基、ピラントレン環基などが挙げられる。
【0037】
また、芳香族複素環基としては、特に限定されることなく、例えば、フラン環基、チオフェン環基、ピリジン環基、ピリダジン環基、ピリミジン環基、ピラジン環基、トリアジン環基、オキサジアゾール環基、トリアゾール環基、イミダゾール環基、ピラゾール環基、チアゾール環基、インドール環基、ベンゾイミダゾール環基、ベンゾチアゾール環基、ベンゾオキサゾール環基、キノキサリン環基、キナゾリン環基、フタラジン環基、ベンゾフラン環基、ジベンゾフラン環基、ベンゾチオフェン環基、ジベンゾチオフェン環基、カルバゾール環基等が挙げられる。
【0038】
更に、Arが有し得る置換基としては、特に限定されることなく、例えば、アルキル基、フッ素原子およびフルオロアルキル基が挙げられる。そして、Arが有し得る置換基としてのアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの炭素数1~6の鎖状アルキル基が挙げられる。また、Arが有し得る置換基としてのフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロプロピル基などの炭素数1~5のフルオロアルキル基が挙げられる。
【0039】
中でも、電離放射線等に対する共重合体の感度および耐熱性を十分に向上させる観点からは、式(I)および式(III)中のArとしては、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環基が好ましく、非置換の芳香族炭化水素環基がより好ましく、ベンゼン環基(フェニル基)が更に好ましい。
【0040】
そして、電離放射線等に対する共重合体の感度および耐熱性を十分に向上させる観点からは、上述した式(I)で表される単量体単位(A)を形成し得る、上述した式(III)で表される単量体(a)としては、α-クロロアクリル酸ベンジルおよびα-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチルが好ましく、α-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチルがより好ましい。即ち、共重合体は、α-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル単位およびα-クロロアクリル酸ベンジル単位の少なくとも一方を有することが好ましく、α-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル単位を有することがより好ましい。
【0041】
-単量体単位(B)-
また、単量体単位(B)は、下記式(IV):
【化6】
〔式(IV)中、R
1およびR
2、並びに、pは、式(II)と同様である。〕で表される単量体(b)に由来する構造単位である。
【0042】
そして、共重合体を構成する全単量体単位中の単量体単位(B)の割合は、特に限定されることなく、例えば30mol%以上70mol%以下とすることができる。
【0043】
ここで、式(II)および式(IV)中のR1~R2を構成し得るアルキル基としては、特に限定されることなく、例えば非置換の炭素数1~5のアルキル基が挙げられる。中でも、R1~R2を構成し得るアルキル基としては、メチル基またはエチル基が好ましい。
【0044】
また、式(II)および式(IV)中のR2を構成し得るハロゲン原子としては、特に限定されることなく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。中でも、ハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
【0045】
更に、式(II)および式(IV)中のR2を構成し得るハロゲン化アルキル基としては、特に限定されることなく、例えば炭素数1~5のフルオロアルキル基が挙げられる。中でも、ハロゲン化アルキル基としては、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基が好ましく、トリフルオロメチル基がより好ましい。
【0046】
そして、共重合体の調製の容易性および電離放射線等を照射した際の主鎖の切断性を向上させる観点からは、式(II)および式(IV)中のR1は、炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
【0047】
また、共重合体の調製の容易性および電離放射線等を照射した際の主鎖の切断性を向上させる観点からは、式(II)および式(IV)中のpは、0または1であることが好ましい。
【0048】
中でも、共重合体の耐熱性、および、レジストパターンの形成効率を向上させる観点からは、式(II)および式(IV)中のpが1であり、R2がフッ素原子または炭素数1~5のフルオロアルキル基であることが好ましく、pが1であり、R2がフッ素原子または炭素数1~5のパーフルオロアルキル基であることがより好ましく、pが1であり、R2がフッ素原子であることが更に好ましい。
【0049】
そして、上述した式(II)で表される単量体単位(B)を形成し得る、上述した式(IV)で表される単量体(b)としては、特に限定されることなく、例えば、以下の(b-1)~(b-12)等のα-メチルスチレンおよびその誘導体が挙げられる。
【化7】
【0050】
なお、共重合体の耐熱性および調製の容易性を向上させると共にレジストパターンを更に効率的に形成し得るようにする観点からは、単量体単位(B)は、α-メチルスチレンまたは4-フルオロ-α-メチルスチレンに由来する構造単位であることが好ましく、4-フルオロ-α-メチルスチレンに由来する構造単位であることがより好ましい。即ち、共重合体は、α-メチルスチレン単位または4-フルオロ-α-メチルスチレン単位を有することが好ましく、4-フルオロ-α-メチルスチレン単位を有することがより好ましい。
【0051】
-共重合体の性状-
そして、共重合体は、分子量分布が1.7以下であることが好ましく、1.2以上1.5以下であることが好ましい。分子量分布が上記上限値以下であれば、共重合体を用いて形成されるレジストパターンの解像度を十分に向上させることができる。また、分子量分布が上記下限値以上であれば、共重合体の調製が容易となる。
【0052】
また、共重合体の重量平均分子量は、好ましくは10000以上、より好ましくは30000以上、更に好ましくは40000以上であり、好ましくは80000以下、より好ましくは70000以下、更に好ましくは60000以下である。重量平均分子量が上記上限値以下であれば、電離放射線等に対する感度を向上させることができる。また、重量平均分子量が上記下限値以上であれば、共重合体を用いて形成されるレジストパターンの解像度を十分に向上させることができる。
【0053】
なお、本発明において、「分子量分布」は、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)を算出して求めることができる。そして、本発明において、「数平均分子量」および「重量平均分子量」は、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用し、標準ポリスチレン換算値として測定することができる。
【0054】
-共重合体の調製方法-
そして、上述した単量体単位(A)および単量体単位(B)を有する共重合体は、例えば、単量体(a)と単量体(b)とを含む単量体組成物を重合させた後、得られた共重合体を回収し、任意に精製することにより調製することができる。
なお、共重合体の組成、分子量分布、重量平均分子量および数平均分子量は、重合条件および精製条件を変更することにより調整することができる。具体的には、例えば、重量平均分子量および数平均分子量は、重合温度を高くすれば、小さくすることができる。また、重量平均分子量および数平均分子量は、重合時間を短くすれば、小さくすることができる。更に、精製を行えば、分子量分布を小さくすることができる。
【0055】
ここで、本発明の共重合体の調製に用いる単量体組成物としては、単量体(a)および単量体(b)を含む単量体成分と、任意の溶媒と、重合開始剤と、任意に添加される添加剤との混合物を用いることができる。そして、単量体組成物の重合は、既知の方法を用いて行うことができる。中でも、溶媒としては、シクロペンタノンなどを用いることが好ましく、重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリルなどのラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。
【0056】
また、単量体組成物を重合して得られた重合物は、特に限定されることなく、重合物を含む溶液にテトラヒドロフラン等の良溶媒を添加した後、良溶媒を添加した溶液をメタノール等の貧溶媒中に滴下して重合物を凝固させることにより回収することができる。
【0057】
なお、得られた重合物を精製する場合に用いる精製方法としては、特に限定されることなく、再沈殿法やカラムクロマトグラフィー法などの既知の精製方法が挙げられる。中でも、精製方法としては、再沈殿法を用いることが好ましい。
なお、重合物の精製は、複数回繰り返して実施してもよい。
【0058】
そして、再沈殿法による重合物の精製は、例えば、得られた重合物をテトラヒドロフラン等の良溶媒に溶解した後、得られた溶液を、テトラヒドロフラン等の良溶媒とメタノール等の貧溶媒との混合溶媒に滴下し、重合物の一部を析出させることにより行うことが好ましい。このように、良溶媒と貧溶媒との混合溶媒中に重合物の溶液を滴下して精製を行えば、良溶媒および貧溶媒の種類や混合比率を変更することにより、得られる共重合体の分子量分布、重量平均分子量および数平均分子量を容易に調整することができる。具体的には、例えば、混合溶媒中の良溶媒の割合を高めるほど、混合溶媒中で析出する共重合体の分子量を大きくすることができる。
【0059】
なお、再沈殿法により重合物を精製する場合、本発明で用いる共重合体としては、良溶媒と貧溶媒との混合溶媒中で析出した重合物を用いてもよいし、混合溶媒中で析出しなかった重合物(即ち、混合溶媒中に溶解している重合物)を用いてもよい。ここで、混合溶媒中で析出しなかった重合物は、濃縮乾固などの既知の手法を用いて混合溶媒中から回収することができる。
【0060】
〔溶剤〕
溶剤としては、上述した共重合体を溶解可能な溶剤であれば特に限定されることはなく、例えば特許第5938536号公報に記載の溶剤などの既知の溶剤を用いることができる。中でも、適度な粘度のポジ型レジスト組成物を得てポジ型レジスト組成物の塗工性を向上させる観点からは、溶剤としては、アニソール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、 シクロペンタノン、シクロヘキサノンまたは酢酸イソアミルを用いることが好ましい。
【0061】
<露光工程>
露光工程では、レジスト膜形成工程で形成したレジスト膜に対し、電離放射線や光を照射して、所望のパターンを描画する。
なお、電離放射線や光の照射には、電子線描画装置やレーザー描画装置などの既知の描画装置を用いることができる。
【0062】
<現像工程>
現像工程では、露光工程で露光されたレジスト膜と、現像液とを接触させてレジスト膜を現像し、被加工物上にレジストパターンを形成する。
ここで、レジスト膜と現像液とを接触させる方法としては、特に限定されることなく、現像液中へのレジスト膜の浸漬やレジスト膜への現像液の塗布等の既知の手法を用いることができる。
【0063】
[現像液]
本発明のレジストパターン形成方法で使用する現像液は、SP値が10.0(cal/cm3)1/2以上14.0(cal/cm3)1/2以下であることを必要とする。上述した共重合体を用いて形成したレジスト膜を現像するに当たり、SP値が上記範囲内の現像液を用いれば、解像度に優れるレジストパターンを効率的に形成することができる。
なお、レジストパターンの解像度および形成効率を向上させる観点からは、現像液のSP値は、11.0(cal/cm3)1/2以上13.0(cal/cm3)1/2以下であることが好ましい。
【0064】
中でも、入手容易性、並びに、レジストパターンの解像度および形成効率の更なる向上の観点からは、現像液としては、上述したSP値を有するアルコールを用いることが好ましく、上述したSP値を有する炭素数2以上4以下のアルコールを用いることがより好ましく、エチルアルコールまたはイソプロピルアルコールを用いることが更に好ましい。
【0065】
[現像条件]
なお、現像時の現像液の温度は、特に限定されないが、例えば21℃以上25℃以下とすることができる。また、現像時間は、例えば、30秒以上4分以下とすることができる。
【0066】
<リンス工程>
任意に実施されるリンス工程では、現像工程で現像されたレジスト膜と、リンス液とを接触させて、現像されたレジスト膜をリンスし、被加工物上にレジストパターンを形成する。現像工程の後にリンス工程を実施すれば、現像されたレジスト膜に付着したレジストの残渣を効果的に除去することができる。
ここで、現像されたレジスト膜とリンス液とを接触させる方法としては、特に限定されることなく、リンス液中へのレジスト膜の浸漬やレジスト膜へのリンス液の塗布等の既知の手法を用いることができる。
【0067】
[リンス液]
リンス液としては、現像されたレジスト膜に付着したレジストの残渣を除去可能なものであれば、特に限定されることなく、任意のリンス液を用いることができる。
具体的には、リンス液としては、例えば、温度25℃において輪環法を用いて測定した表面張力が17mN/m以下であるリンス液を用いることができる。そして、表面張力が17mN/m以下であるリンス液としては、例えば、CF3CFHCFHCF2CF3(表面張力:14.1mN/m)、CF3CF2CHCl2(表面張力16.2mN/m)、CClF2CF2CHClF(表面張力16.2mN/m)、CF3CF2CF2CF2OCH3(表面張力13.6mN/m)、C8F18(表面張力13.6mN/m)、C4F9OC2H5(表面張力13.6mN/m)、C2F5CF(OCH3)C3F7(表面張力15.1mN/m)およびこれらの混合物等のフッ素系溶剤が挙げられる。中でも、リンス液としては、CF3CFHCFHCF2CF3またはCF3CF2CF2CF2OCH3(メチルノナフルオロブチルエーテル)が好ましい。
【0068】
[リンス条件]
なお、リンス時のリンス液の温度は、特に限定されないが、例えば21℃以上25℃以下とすることができる。また、リンス時間は、例えば、5秒以上3分以下とすることができる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例において、共重合体の重量平均分子量、数平均分子量、分子量分布、耐熱性、ガラス転移温度は、下記の方法で評価した。
【0070】
<重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布>
得られた共重合体についてゲル浸透クロマトグラフィーを用いて重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
具体的には、ゲル浸透クロマトグラフ(東ソー製、HLC-8220)を使用し、展開溶媒としてテトラヒドロフランを用いて、共重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を標準ポリスチレン換算値として求めた。そして、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
<耐熱性>
得られた共重合体について、示差熱熱重量同時測定装置(日立ハイテクサイエンス社製、STA7000)を使用し、窒素気流下、10℃/分の昇温条件で0.5%重量減少温度および1.0%重量減少温度を測定した。0.5%重量減少温度および1.0%重量減少温度が高いほど、耐熱性に優れていることを示す。
<ガラス転移温度>
得られた共重合体について、示差熱熱重量同時測定装置(日立ハイテクサイエンス社製、STA7000)を使用し、窒素気流下、10℃/分の昇温条件で、ガラス転移温度を測定した。
【0071】
(実施例1)
<共重合体の調製>
[重合物の合成]
撹拌子を入れたガラス製のアンプルに、単量体(a)としてのα-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル3.00gと、単量体(b)としてのα-メチルスチレン2.493gと、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル0.0039534gとを加えて密封し、窒素ガスで加圧、脱圧を10回繰り返して系内の酸素を除去した。
そして、系内を78℃に加温し、3.5時間反応を行った。次に、系内にテトラヒドロフラン10gを加え、得られた溶液をメタノール300mL中に滴下して重合物を析出させた。その後、析出した重合物をろ過で回収した。
[重合物の精製]
次いで、得られた重合物を100gのテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、得られた溶液をTHF200gとメタノール(MeOH)800gとの混合溶媒に滴下し、白色の凝固物(α-メチルスチレン単位およびα-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル単位を含有する共重合体)を析出させた。その後、析出した共重合体を含む溶液をキリヤマ漏斗によりろ過し、白色の共重合体を得た。そして、得られた共重合体について、重量平均分子量、数平均分子量、分子量分布、耐熱性およびガラス転移温度を測定した。その結果、重量平均分子量は66729であり、数平均分子量は45630であり、分子量分布は1.462であり、0.5%重量減少温度は221.41℃であり、1.0%重量減少温度は222.9℃であり、ガラス転移温度は159.2℃であった。
なお、得られた共重合体は、α-メチルスチレン単位とα-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル単位とを50モル%ずつ含んでいた。
<ポジ型レジスト組成物の調製>
得られた共重合体を溶剤としての酢酸イソアミルに溶解させ、共重合体の濃度が11質量%および2質量%であるレジスト溶液(ポジ型レジスト組成物)をそれぞれ調製した。
そして、共重合体の濃度が11質量%であるレジスト溶液からなるポジ型レジスト組成物を使用し、以下のようにしてレジストパターンを形成して、共重合体のE
thおよびγ値、並びに、レジストパターンの欠陥の有無を評価した。また、共重合体の濃度が2質量%であるレジスト溶液からなるポジ型レジスト組成物を使用し、以下のようにしてレジストパターンを形成して、レジストパターンの解像度を評価した。結果を表1に示す。
<レジストパターンの形成および評価>
[E
thおよびγ値]
スピンコーター(ミカサ製、MS-A150)を使用し、濃度11質量%のポジ型レジスト組成物を直径4インチのシリコンウェハ上に厚さ500nmになるように塗布した。そして、塗布したポジ型レジスト組成物を温度160℃のホットプレートで5分間加熱して、シリコンウェハ上にレジスト膜を形成した。そして、電子線描画装置(エリオニクス社製、ELS-S50)を用いて、電子線の照射量が互いに異なるパターン(寸法500μm×500μm)をレジスト膜上に複数描画し、レジスト用現像液としてイソプロピルアルコール(SP値:11.4(cal/cm
3)
1/2)を用いて温度23℃で1分間の現像処理を行った後、リンス液としてフッ素系溶剤(3M社製、Novec(登録商標)7100、メチルノナフルオロブチルエーテル)を用いて10秒間リンスした。なお、電子線の照射量は、4μC/cm
2から200μC/cm
2の範囲内で4μC/cm
2ずつ異ならせた。次に、描画した部分のレジスト膜の厚みを光学式膜厚計(SCREENセミコンダクタソリューション社製、ラムダエース)で測定し、電子線の総照射量の常用対数と、現像後のレジスト膜の残膜率(=現像後のレジスト膜の膜厚/シリコンウェハ上に形成したレジスト膜の膜厚)との関係を示す感度曲線を作成した。
そして、得られた感度曲線(横軸:電子線の総照射量の常用対数、縦軸:レジスト膜の残膜率(0≦残膜率≦1.00))について、残膜率0.20~0.80の範囲において感度曲線を二次関数にフィッティングし、得られた二次関数(残膜率と総照射量の常用対数との関数)上の残膜率0の点と残膜率0.50の点とを結ぶ直線(感度曲線の傾きの近似線)を作成した。また、得られた直線(残膜率と総照射量の常用対数との関数)の残膜率が0となる際の、電子線の総照射量E
th(μC/cm
2)を求めた。なお、E
thの値が小さいほど、ポジ型レジストとしての共重合体を少ない照射量で良好に切断して現像液に溶解させることができる(即ち、レジストパターンを効率的に形成し得る)ことを示す。
また、下記の式を用いてγ値を求めた。なお、下記の式中、E
0は、残膜率0.20~0.80の範囲において感度曲線を二次関数にフィッティングし、得られた二次関数(残膜率と総照射量の常用対数との関数)に対して残膜率0を代入した際に得られる総照射量の対数である。また、E
1は、得られた二次関数上の残膜率0の点と残膜率0.50の点とを結ぶ直線(感度曲線の傾きの近似線)を作成し、得られた直線(残膜率と総照射量の常用対数との関数)に対して残膜率1.00を代入した際に得られる総照射量の対数である。そして、下記式は、残膜率0と1.00との間での上記直線の傾きを表している。なお、γ値の値が大きいほど、感度曲線の傾きが大きく、明瞭なパターンを良好に形成し得ることを示す。
【数1】
[欠陥の有無]
また、上記において描画した部分のレジスト膜の厚みを測定して残膜率を求めた後のパターン(寸法:500μm×500μm)について、クラック欠陥の有無を光学式膜厚計(SCREENセミコンダクタソリューション社製、ラムダエース)を用いて倍率100倍で観察した。
[レジストパターンの解像度]
スピンコーター(ミカサ社製、MS-A150)を使用し、濃度2質量%のポジ型レジスト組成物を直径4インチのシリコンウェハ上に塗布した。次いで、塗布したポジ型レジスト組成物を温度160℃のホットプレートで5分間加熱して、シリコンウェハ上に厚さ50nmのレジスト膜を形成した。そして、電子線描画装置(エリオニクス社製、ELS-S50)を用いて、レジスト膜を最適露光量(E
op)で露光して、パターンを描画した。その後、レジスト用現像液としてイソプロピルアルコール(SP値:11.4(cal/cm
3)
1/2)を用いて温度23℃で1分間の現像処理を行った。その後、リンス液としてフッ素系溶剤(3M社製、Novec(登録商標)7100、メチルノナフルオロブチルエーテル)を用いて10秒間リンスしてレジストパターンを形成した。なお、最適露光量(E
op)は、それぞれ、上記で測定したE
thの約2倍の値を目安として、適宜設定した。また、レジストパターンのライン(未露光領域)とスペース(露光領域)は、それぞれ20nm、22nm(即ち、ハーフピッチ20nm、22nm)とした。
そして、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて倍率100,000倍で観察し、パターンが形成しているハーフピッチを解像度とした。なお、ハーフピッチ22nmでパターンを形成できなかった場合には、「-」(測定不能)とした。
【0072】
(実施例2)
レジストパターンの形成および評価の際に、レジスト用現像液としてエチルアルコール(SP値:12.7(cal/cm3)1/2)を用いた以外は実施例1と同様にして、共重合体およびポジ型レジスト組成物の調製、並びに、レジストパターンの形成および評価を行った。結果を表1に示す。
【0073】
(比較例1)
レジストパターンの形成および評価の際に、レジスト用現像液としてフッ素系溶剤(三井・デュポンフロロケミカル社製、バートレルXF(登録商標)、CF3CFHCFHCF2CF3、SP値:6.8(cal/cm3)1/2)を用いた以外は実施例1と同様にして、共重合体およびポジ型レジスト組成物の調製、並びに、レジストパターンの形成および評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
(比較例2)
レジストパターンの形成および評価の際に、レジスト用現像液として乳酸エチル(SP値:9.6(cal/cm3)1/2)を用いた以外は実施例1と同様にして、共重合体およびポジ型レジスト組成物の調製、並びに、レジストパターンの形成および評価を行おうとしたが、未照射部分も現像液に溶解してしまった。結果を表1に示す。
【0075】
(比較例3)
レジストパターンの形成および評価の際に、レジスト用現像液としてメチルアルコール(SP値:14.5(cal/cm3)1/2)を用いた以外は実施例1と同様にして、共重合体およびポジ型レジスト組成物の調製、並びに、レジストパターンの形成および評価を行った。結果を表1に示す。
【0076】
【0077】
(実施例3~4および比較例4~6)
以下のようにして調製した共重合体を使用した以外は、それぞれ実施例1~2および比較例1~3と同様にして、共重合体およびポジ型レジスト組成物の調製、並びに、レジストパターンの形成および評価を行った。結果を表2に示す。
なお、比較例5では、未照射部分も現像液に溶解してしまい、評価ができなかった。
<共重合体の調製>
[重合物の合成]
撹拌子を入れたガラス製のアンプルに、単量体(a)としてのα-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル3.00gと、単量体(b)としての4-フルオロ-α-メチルスチレン2.873gと、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル0.0039534gとを加えて密封し、窒素ガスで加圧、脱圧を10回繰り返して系内の酸素を除去した。
そして、系内を78℃に加温し、3.5時間反応を行った。次に、系内にテトラヒドロフラン10gを加え、得られた溶液をメタノール300mL中に滴下して重合物を析出させた。その後、析出した重合物をろ過で回収した。
[重合物の精製]
次いで、得られた重合物を100gのテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、得られた溶液をTHF100gとメタノール(MeOH)900gとの混合溶媒に滴下し、白色の凝固物(4-フルオロ-α-メチルスチレン単位およびα-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル単位を含有する共重合体)を析出させた。その後、析出した共重合体を含む溶液をキリヤマ漏斗によりろ過し、白色の共重合体を得た。そして、得られた共重合体について、重量平均分子量、数平均分子量、分子量分布、耐熱性およびガラス転移温度を測定した。その結果、重量平均分子量は53472であり、数平均分子量は36226であり、分子量分布は1.476であり、0.5%重量減少温度は222.92℃であり、1.0%重量減少温度は224.28℃であり、ガラス転移温度は157.1℃であった。
なお、得られた共重合体は、4-フルオロ-α-メチルスチレン単位とα-クロロアクリル酸-1-フェニル-1-トリフルオロメチル-2,2,2-トリフルオロエチル単位とを50モル%ずつ含んでいた。
【0078】
【0079】
表1および2より、現像液としてイソプロピルアルコールおよびエチルアルコールを用いた実施例1~4では、耐熱性に優れる共重合体をポジ型レジストとして使用して解像度に優れるレジストパターンを効率的に形成できることが分かる。
また、表1および2より、現像液としてバートレルXFを用いた比較例1および4では、レジストパターンを効率的に形成することができず、現像液として乳酸エチルおよびメチルアルコールを用いた比較例2,3および5,6では、解像度に優れるレジストパターンを形成できないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によれば、耐熱性に優れる共重合体をポジ型レジストとして使用して解像度に優れるレジストパターンを効率的に形成することができる。