(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】搬送装置、搬送方法、および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 9/12 20060101AFI20221220BHJP
B65H 9/00 20060101ALI20221220BHJP
B65H 7/14 20060101ALI20221220BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B65H9/12
B65H9/00 A
B65H7/14
G03G15/00 450
B65H9/00 J
(21)【出願番号】P 2018192164
(22)【出願日】2018-10-10
【審査請求日】2021-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2018020467
(32)【優先日】2018-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雄大
(72)【発明者】
【氏名】新井 大輔
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-175776(JP,A)
【文献】特開2016-179881(JP,A)
【文献】特開2016-108152(JP,A)
【文献】特開2005-053646(JP,A)
【文献】特開2005-178929(JP,A)
【文献】特開2008-254843(JP,A)
【文献】特開2013-028432(JP,A)
【文献】特開2010-018438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/00-9/20
B65H 13/00-15/02
B65H 37/00-37/06
B65H 41/00-47/00
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されてきた被搬送物を挟持して搬送し、当該被搬送物の位置を補正する挟持ローラと、
前記挟持ローラの搬送方向上流に配置され、前記被搬送物の位置を検知する第一センサと、
前記挟持ローラと一体的に動作し、前記被搬送物を検知する第二センサと、
前記第一センサが検知した前記被搬送物の位置に基づいて前記挟持ローラにおけ
る搬送駆動を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記第一センサの検知結果に基づいて前記被搬送物の位置ズレ量を算出する位置ズレ量算出手段と、
前記位置ズレ量と前記第二センサが前記被搬送物を検知したタイミングとに基づいて前記挟持ローラにおけ
る前記搬送駆動に係る駆動量を算出する駆動量算出手段と、
前記駆動量に基づいて、前記被搬送物を挟持して搬送する前記挟持ローラの搬送駆動を制御する駆動制御手段と、
を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記駆動量算出手段は、前記第二センサにおける前記被搬送物の検知タイミングからの前記挟持ローラの動作を停止させるまでの動作停止時間を算出し、
前記駆動制御手段は、前記動作停止時間に至るまで前記挟持ローラの搬送駆動を行う、
請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記駆動量算出手段は、前記第二センサにおける前記被搬送物の検知タイミングからの前記挟持ローラの動作を開始させる動作開始時間を算出し、
前記駆動制御手段は、前記動作開始時間が経過してから所定の時間に至るまで前記挟持ローラの搬送駆動を行う、
請求項1記載の搬送装置。
【請求項4】
前記駆動量算出手段は、前記第二センサにおける前記被搬送物の検知タイミングに基づいて、前記挟持ローラを停止させる時間に至るまでの前記挟持ローラの回転速度の変化量を算出し、
前記駆動制御手段は、前記変化量に基づいて変化させた回転速度によって前記挟持ローラの搬送駆動を行う、
請求項1記載の搬送装置。
【請求項5】
前記駆動量算出手段は、前記第二センサにおける前記被搬送物の検知タイミングからの前記挟持ローラの動作を停止させるまでの動作停止時間に至るまで前記挟持ローラの搬送駆動を行ない、
その後、前記挟持ローラの搬送駆動を再開させる再開タイミングを前記位置ズレ量に基づいて算出し、
前記駆動制御手段は、前記再開タイミングに基づいて前記挟持ローラの搬送駆動を再開する、
請求項1記載の搬送装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記被搬送物の位置ズレ量を補正するように前記挟持ローラの補正駆動を制御する位置補正手段をさらに備え、
前記駆動制御手段は、前記搬送駆動の制御をしながら前記補正駆動の制御を行う、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記挟持ローラの搬送方向下流に配置され、前記被搬送物の位置を検知する第三センサを備え、
前記駆動制御手段は、前記補正駆動の制御の後に、前記第三センサの検知に基づいて前記被搬送物の位置ズレを再度補正する補正駆動を行う、
請求
項6記載の搬送装置。
【請求項8】
被搬送物に画像を形成する画像形成部と、
前記被搬送物の保管部から前記画像形成部まで当該被搬送物を搬送する搬送部と、
画像が形成された被搬送物を排出する排出部と、
を備え、
前記搬送部は請求項1乃至7のいずれか一項に記載の搬送装置である、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
搬送されてきた被搬送物を挟持して搬送し、当該被搬送物の位置を補正する挟持ローラを備える搬送装置における搬送方法であって、
前記挟持ローラの搬送方向上流に配置された第一センサが検知した前記被搬送物の位置ズレ量を算出し、
前記位置ズレ量と、前記挟持ローラと一体的に動作する第二センサが前記被搬送物を検知した検知タイミングと、に基づいて前記挟持ローラの駆動量を算出し、当該駆動量に基づいて前記挟持ローラの搬送駆動を制御する、
ことを特徴とする搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置、搬送方法、および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートを搬送する搬送装置を備える画像形成装置が知られている。このよう画像形成装置において、搬送中のシートの「斜行」や「幅方向のズレ」等が生じた場合、これを補正しないで画像形成を実行すると、形成される画像の位置が理想的な位置からずれてしまう。その結果、画像の質が低下することになる。したがって、画像形成装置において用いられる搬送装置は、搬送中のシートの斜行や幅方向のズレを、適宜補正する必要がある。
【0003】
搬送装置は、画像の形成位置を合わせるために、転写タイミングの調整をするレジストローラ対を備えている。このレジストローラ対は、シートの搬送を一旦停止し、転写タイミングに応じて搬送を再開する。このレジストローラ対の前段と後段に、レジストローラ対に搬送されてきたシートを検知するセンサを配置し、搬送方向に対するシートの位置を補正するようにレジストローラ対を制御する技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術によれば、シートの搬送方向に対する傾斜の量や幅方向のズレの量を含むインプットスキューが大きい場合、これを補正するためのレジストローラ対の動作量が大きくなる。レジストローラ対の動作量が大きくなると、画像形成位置への転写タイミングを調整するためにシートを一旦停止させる位置がばらつくことになる。そして、レジストローラ対によるシート停止位置がばらつくと、シートへの画像形成位置(転写位置)がばらつくことになる。したがって、インプットスキューの大小に関わらず、レジストローラ対によるシート停止位置は一定であることが望ましい。
【0005】
本発明は、搬送中のシートのインプットスキューにより生じるシートの搬送進みまたは搬送遅れを解消できる搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために本発明の一態様は、搬送されてきた被搬送物を挟持して搬送し、当該被搬送物の位置を補正する挟持ローラと、前記挟持ローラの搬送方向上流に配置され、前記被搬送物の位置を検知する第一センサと、前記挟持ローラと一体的に動作し、前記被搬送物を検知する第二センサと、前記第一センサが検知した前記被搬送物の位置に基づいて前記挟持ローラにおける搬送駆動を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記第一センサの検知結果に基づいて前記被搬送物の位置ズレ量を算出する位置ズレ量算出手段と、前記位置ズレ量と前記第二センサが前記被搬送物を検知したタイミングとに基づいて前記挟持ローラにおける前記搬送駆動に係る駆動量を算出する駆動量算出手段と、前記駆動量に基づいて、前記被搬送物を挟持して搬送する前記挟持ローラの搬送駆動を制御する駆動制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、搬送中のシートのインプットスキューにより生じるシートの搬送進みまたは搬送遅れを解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る画像形成装置の実施形態を示す概略構成図。
【
図2】本発明に係る搬送装置の実施形態を示す、(a)平面図、(b)側面図。
【
図3】本実施形態に係る搬送装置が備える制御部のハードウェア構成図。
【
図4】本実施形態に係る搬送装置が備える制御部の機能ブロック図。
【
図5】本発明に係る搬送方法の第一実施形態を示すフローチャート。
【
図6】本実施形態に係る搬送装置によって用紙を搬送する過程を説明する図。
【
図7】本実施形態に係る搬送装置によって用紙を搬送する過程を説明する図。
【
図8】本実施形態に係る搬送装置によって用紙を搬送する過程を説明する図。
【
図9】本実施形態に係る搬送装置によって用紙を搬送する過程を説明する図。
【
図10】本実施形態に係る搬送装置によって用紙を搬送する過程を説明する図。
【
図11】本実施形態に係る搬送装置によって用紙を搬送する過程を説明する図。
【
図12】本実施形態に係る搬送装置における搬送動作の例を示すタイミングチャート。
【
図13】本実施形態に係る搬送装置における搬送動作の別例を示すタイミングチャート。
【
図14】本実施形態に係る搬送装置における搬送動作の別例を示すタイミングチャート。
【
図15】本実施形態に係る搬送装置における搬送動作の別例を示すタイミングチャート。
【
図16】本発明に係る搬送方法の第二実施形態を示すフローチャート。
【
図17】第二実施形態に係る搬送方法における搬送速度の例を示すチャート。
【
図18】第二実施形態に係る搬送方法における搬送速度の別例を示すチャート。
【
図19】第二実施形態に係る搬送方法における搬送速度の別例を示すチャート。
【
図20】本発明に係る搬送方法の第三実施形態を示すフローチャート。
【
図21】第三実施形態に係る搬送方法における再開タイミングの例を示すチャート。
【
図22】第三実施形態に係る搬送方法における再開タイミングの別例を示すチャート。
【
図23】第三実施形態に係る搬送方法における再開タイミングの別例を示すチャート。
【
図24】本発明に係る画像形成装置の別の実施形態を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本発明の要旨]
本発明に係る搬送装置は、シート状の記録媒体である被搬送物の搬送中に生ずる斜行や幅方向のズレ(横ズレ)を含む「位置ズレ」を補正する補正機能を有するレジスト装置を備える。このレジスト装置は、レジストローラへ被搬送物が到達することを検知するセンサを備えるものであって、当該センサが被搬送物を検知することでレジストローラによるシートの搬送動作を開始し、一定時間の経過後にレジストローラの搬送動作は停止する。このとき、位置ズレ、すなわちインプットスキューを補正するためにレジスト装置が移動する量に関わらず、シートの停止位置を一定にすることを要旨の一つとする。具体的には、被搬送物の位置ズレの量である位置ズレ量を算出し、その位置ズレ量に基づいて、被搬送物の進み量または遅れ量(進み遅れ量)を算出する。そして、進み遅れ量を解消するようにレジストローラによるシート搬送動作を制御する。なお、位置ズレ量は、斜行量を表すスキュー量と、搬送方向に直交する平面方向である被搬送物の幅方向のズレの量を表す横ズレ量と、を含むものである。本明細書では、スこの位置ズレ量を「インプットスキュー」と表記することもある。
【0010】
本発明に係る搬送装置は、インプットスキューの補正を実行する機構における補正動作の大きさや、補正動作の時間的な長さによらず、当該被搬送物を一旦停止させる位置(基準停止位置)に対する搬送進みや搬送遅れを解消するように、被搬送物の搬送動作を制御する。なお、本発明に係る搬送装置が画像形成装置に搭載される場合における「基準停止位置」とは、画像形成プロセスにおける被搬送物への画像の転写タイミングに合わせるために被搬送物の搬送を一旦停止させる位置である。以下、本発明に係る搬送装置の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0011】
[画像形成装置の第一実施形態]
まず、本発明に係る搬送装置を備える画像形成装置の実施形態について、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る電子写真方式の画像形成装置100の全体構成を説明する図である。
【0012】
画像形成装置100は、無端状移動手段である中間転写ベルト135に沿って各色の感光体ドラム134Y、134M、134C、134K(以降、総じて感光体ドラム134とする)が並べられた構成を備えるものである。画像形成装置100のような構成は、タンデムタイプと呼ばれる。画像形成装置100は、給紙トレイ12から給紙される用紙17に転写するための中間転写画像が形成される中間転写ベルトである中間転写ベルト135を備える。この中間転写ベルト135に沿って、用紙17の搬送方向の上流側から順に、複数の感光体ドラム134Y、134M、134C、134Kが配置されている。
【0013】
各色の感光体ドラム134の表面に着色剤であるトナーにより現像された各色の画像が形成され、これが中間転写ベルト135に一次転写されて重ね合わせられる。この一次転写による像は、フルカラーの画像となる。このフルカラーの画像は中間転写ベルト135によって、
図1において破線で示す用紙の搬送経路16と最も接近する位置に搬送される。その位置に配置されている転写ローラ10と対向ローラ11によって、フルカラーの画像が中間転写ベルト135から用紙17に二次転写される。
【0014】
画像が二次転写された用紙17は、転写ローラ10の搬送方向下流に搬送される。転写ローラ10の搬送方向下流には定着ローラ14が配置されている。この定着ローラ14が、用紙17に転写された画像を定着させる。その後、用紙17は、画像形成装置100の筐体外に搬送される。なお、両面印刷の場合、用紙17の第1面(表面)に画像が形成され、画像が定着された後に、分岐部161から反転パス162を経由して、再度、搬送経路16において搬送される。
【0015】
このようにして、用紙17は、第2面(裏面)に画像形成が可能になるような状態、すなわち、中間転写ベルト135上に形成された画像が用紙17の第2面に転写されるような状態で、転写ローラ10の転写位置に再度搬送される。その後、第2面(裏面)にも画像が転写された用紙17は、画像が定着されて、分岐部161を介して排紙トレイ500に排出される。
【0016】
画像形成装置100は、用紙17にフルカラー画像を形成する機能を備えるが、4つの感光体ドラム134Y,134C,134M,134Kのいずれか1つを使用して単色画像を形成することも可能である。また、2つ又は3つの感光体ドラム134を使用して、2色又は3色の画像を形成することも可能である。
【0017】
転写ローラ10の搬送方向上流側には、本発明に係る搬送装置の実施形態であるレジスト装置200が配置されている。レジスト装置200は、用紙17を二次転写部である転写ローラ10に用紙17を所定のタイミングで搬送する機能、および、搬送経路16において搬送されてきた用紙17の搬送方向に対する位置のずれを補正する機能を備える。
【0018】
[レジスト装置200の概要]
図2は、レジスト装置200を感光体ドラム134側からみた平面図(a)と、搬送方向の左方から見た側面図(b)である。レジスト装置200は、給紙トレイ12から給紙された被搬送物である用紙17を搬送経路16に沿ってレジストローラ対221に向けて搬送させる搬送ローラ対20と、レジストローラを含むレジストローラ対221を備えるレジストローラ機構22と、を備える。レジスト装置200よりも搬送方向下流側には、中間転写ベルト135(
図1参照)に形成された画像を用紙17に二次転写する二次転写部を構成する「転写ローラ10と対向ローラ11」が配置されている。なお、二次転写部の搬送方向上流側に転写タイミング制御部に相当するローラ対が配置されてもよい。
【0019】
搬送ローラ対20とレジストローラ機構22(レジストローラ対221)との間には、用紙17のインプットスキューを検出するための第一センサが配置されている。当該第一センサは、用紙17の側端部の位置を検知する第一エッジセンサ26aと、同じく用紙17の側端部の位置を検知する第二エッジセンサ26bから構成される。第二エッジセンサ26bは、第一エッジセンサ26aよりも搬送方向下流側に配置されている。第一エッジセンサ26aと第二エッジセンサ26bはともに、フォトセンサが直線状に並べられたイメージセンサであって、例えば、画像の読み取り装置でも使用されているコンタクトイメージセンサ(CIS:Contact Image Sensor)である。
【0020】
また、
図2(a)に示すように、本実施形態に係るレジスト装置200は、インプットスキューを検出するために2つのCISよりも搬送方向下流に、第三エッジセンサ26cが配置されている。第三エッジセンサ26cは、レジストローラ機構22よりも搬送方向下流に配置されていて、インプットスキューに基づく補正が行われた後の用紙17における傾斜や横ズレを再度検出するために配置されている。第三エッジセンサ26cも、第一エッジセンサ26a等と同じく、CISである。第三エッジセンサ26cは、第三センサに相当する。
【0021】
図2(a)に示すように、第一エッジセンサ26a、第二エッジセンサ26b、第三エッジセンサ26cはいずれも、画素配列方向が用紙17の搬送方向に直交する方向と平行するように配置されている。したがって、第一エッジセンサ26a及び第二エッジセンサ26bによる用紙17の側端部の位置の検知結果に基づいて、レジストローラ機構22に向けて搬送されてきた用紙17の位置を検知することができる。すなわち、第一エッジセンサ26aと第二エッジセンサ26bにより、用紙17の搬送方向に対する用紙17の位置を検知することができる。また、第三エッジセンサ26cによる用紙17の側端部の位置の検知結果に基づいて、レジストローラ機構22により搬送された用紙17の位置を検知することができる。
【0022】
レジストローラ機構22は、レジストローラ対221を搬送方向に対して回動させる回動機構23と、レジストローラ対221を搬送されてくる用紙17の幅方向(搬送経路16の幅方向)に移動させるシフト機構24と、を備える。回動機構23とシフト機構24は、挟持ローラであるレジストローラ対221が用紙17を迎える状態(迎え状態)と、迎え動作に対応する補正動作と、を制御するための補正駆動を行う機構である。すでに説明したように、用紙17のインプットスキューのうち斜行(スキュー)量は、第一エッジセンサ26aと第二エッジセンサ26bによる用紙17の端部の位置の検知結果と、第一エッジセンサ26aと第二エッジセンサ26bの距離(予め設定されている)に基づいて算出される。用紙17のインプットスキューのうち横ズレ量は、例えば第一エッジセンサ26aと第二エッジセンサ26bがそれぞれ検知した用紙17の側端部の位置の平均値による算出される。
【0023】
用紙17が、理想的に搬送されれば、レジストローラ機構22に至ったときの用紙17の位置に斜行や横ズレは生じないことになる。この場合、転写ローラ10への搬送のタイミングに合わせるためにレジストローラ機構22によって搬送されて停止する用紙17の停止位置は、理想的な位置になる。しかし、用紙17の搬送において斜行や横ズレが生ずると、レジストローラ機構22によって搬送された後の停止位置が理想的な停止位置からずれることになる。レジストローラ機構22による用紙17の停止位置がずれると、転写ローラ10への搬送が乱れて、用紙17への画像の転写の乱れにつながることになる。これを解消するために、レジスト装置200は、第一エッジセンサ26aと第二エッジセンサ26bの検知結果に基づいて用紙17のインプットスキューが算出された後、このインプットスキューを解消して理想的な停止位置に用紙17を搬送できるように、レジストローラ機構22を駆動させ、レジストローラ対221を移動させる。
【0024】
レジストローラ対221の移動は、いわゆる「迎え動作」である。レジスト装置200は、迎え動作を、後述する搬送センサ222が用紙17を検知する前に開始する。なお、レジストローラ対221の移動は、回動機構23とシフト機構24の動作によって実行される。なお、迎え動作は、レジストローラ対221に対する補正駆動に含まれる。
【0025】
また、レジストローラ機構22は、用紙17を検知する第二センサである搬送センサ222を備える。搬送センサ222は、レジストローラ機構22の搬送方向上流側の端部に設置されている。レジストローラ機構22は、搬送センサ222が用紙17の搬送方向先端部を検知したとき、これをトリガーとして、転写タイミングを調整するために用紙17の搬送を一旦停止する停止位置に当該用紙17を搬送するためのレジストローラ対221の駆動量を制御する。すなわち、搬送センサ222が用紙17の搬送方向先端部を検知するとレジストローラ対221を回転させるレジスト駆動モータ223が動作を開始する。これによって、レジストローラ対221が用紙17を挟持して搬送するための搬送動作を開始する。
【0026】
搬送センサ222が設置されている設置位置と、レジストローラ機構22においてレジストローラ対221が配置されている位置との間には若干の隙間がある。したがって、搬送センサ222で検知された用紙17がレジストローラ対221に到達するまでは、若干の時間のずれがある。レジストローラ対221は、この「時間のずれ」も考慮された状態で、搬送センサ222が用紙17を検知したことをトリガーとして、搬送動作を開始する。そして、その後、搬送動作を実行しているレジストローラ対221に対して用紙17が到達して、実際に搬送される。
【0027】
レジストローラ対221は、搬送センサ222が用紙17を検知したタイミングから所定の時間が経過するまで動作をするように制御される。なお、レジストローラ対221の搬送動作については、搬送センサ222が用紙17を検知したタイミングから所定の時間が経過した後に搬送動作を開始して、その後、所定の時間が経過するまで動作をするように制御されてもよい。
【0028】
本実施形態では、搬送センサ222がレジストローラ機構22の搬送方向上流の端部に設置されている。搬送センサ222の位置はこれに限定されるものではない。搬送センサ222は、レジストローラ機構22による補正動作によって傾きや幅方向の位置が変化するレジストローラ対の動作を一体的に動作する位置に設置されていればよい。すなわち、本実施形態に係る搬送センサ222は、レジストローラ機構22やレジストローラ対221に設置されていなくてもよい。
【0029】
[レジスト装置200のハードウェア構成]
次に、本実施形態に係るレジスト装置200のハードウェア構成について、
図3を用いて説明する。レジスト装置200は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)などの半導体素子により構成されるコントローラ210と、コントローラ210からの制御によって回動機構23,シフト機構24、レジスト駆動モータ223、搬送駆動モータ224等を動作させるドライバ220と、を備える。搬送駆動モータ224は、搬送ローラ対20を駆動させるモータである。コントローラ210により制御される搬送駆動モータ224の動作が、後述するように、インプットスキューにより生ずる搬送進みや搬送遅れを解消するために用紙17に対して実行される搬送動作の一部に含まれる搬送駆動となる。
【0030】
コントローラ210は、第一センサである第一エッジセンサ26aと第二エッジセンサ26b、第二センサである搬送センサ222、それぞれからの検知結果を入力として、ROMなどに格納されている制御プログラムによる演算処理を実行する演算部を構成する。そして、コントローラ210は、演算処理の結果に基づいてレジストローラ対221等の動作を制御する制御データをドライバ220に出力する制御部を構成する。具体的には、コントローラ210は、第一エッジセンサ26aの検知結果に基づき、インプットスキューを算出する。そして、コントローラ210は、第二センサが用紙17を検知したタイミングと算出されたインプットスキューとに基づいて、レジスト駆動モータ223の駆動量や駆動タイミングを制御する。
【0031】
上記の構成を備えるレジスト装置200の動作の詳細については、後述する。
【0032】
[レジスト装置200の機能構成]
次に、レジスト装置200の機能ブロックについて説明する。
図4に示すように、レジスト装置200は、インプットスキュー算出部201と、インプットスキュー補正部202と、用紙検知時刻取得部203と、レジスト駆動量算出部204と、レジストモータ駆動部205と、を有する。
【0033】
インプットスキュー算出部201は、第一エッジセンサ26aと第二エッジセンサ26bによる用紙17の幅方向の端部の検知結果に基づいて、搬送方向に対する用紙17の傾き(傾斜行)の量と用紙17の幅方向へのズレ(横ズレ)の量を含む「インプットスキュー」を算出する。インプットスキューは、用紙17の搬送方向に対する位置ズレの量(位置ズレ量)を示すものである。すなわち、インプットスキュー算出部201は、用紙17の搬送方向に対する位置ズレの量を算出する位置ズレ量算出手段に相当する。
【0034】
インプットスキュー補正部202は、インプットスキュー算出部201において算出されたインプットスキューに基づいて、用紙17の位置ズレを補正する(用紙の傾きと横ズレを補正する)ための傾斜補正量と横ズレ補正量を算出する。この傾斜補正量と横ズレ補正量に基づいて、用紙17の搬送方向に対する位置ズレを補正するための「動作」を制御する。なお、「位置ズレを補正するための動作」とは、レジストローラ機構22において、「搬送方向に対する用紙17の傾きを直す回動動作」と「搬送方向に対する用紙17の幅方向の位置を正しい位置に移動させるためのシフト動作」を含む動作である。すなわち、インプットスキュー補正部202は、インプットスキューに基づいて、回動機構23を動作させて、「迎え動作」を制御する。ここで、「迎え動作」とは、補正動作を実行する前段の準備的な動作であって、レジストローラ対221を用紙17の傾きに合うように傾斜させる動作と、シフト機構24を用紙17の横ズレに合う方向に移動させる動作を含む動作である。また、インプットスキュー補正部202は、インプットスキューを補正する方向にレジストローラ対221を移動させるように回動機構23とシフト機構24を動作させる。インプットスキュー補正部202は、位置補正手段を構成する。
【0035】
用紙検知時刻取得部203は、搬送センサ222が用紙17を検知した時刻を取得してレジスト駆動量算出部204に通知する。
【0036】
レジスト駆動量算出部204は、インプットスキュー算出部201において算出されたインプットスキューと、用紙検知時刻取得部203から通知された時刻に基づいて、レジストローラ対221の駆動量を算出する。レジスト駆動量算出部204において算出される駆動量は、レジスト駆動モータ223を動作させる時間やレジスト駆動モータ223の動作速度、レジスト駆動モータ223が所定の動作時間で一旦停止した後に再度動作するための時間など、として算出される。レジスト駆動量算出部204は、駆動量算出手段に相当する。なお、レジスト駆動モータ223の動作速度は、レジストローラ対221の単位時間当たりの回転数として算出することもできる。
【0037】
レジストモータ駆動部205は、レジスト駆動量算出部204において算出された駆動量に基づいて、レジスト駆動モータ223を動作させて、レジストローラ対221における搬送動作を制御する。例えば、搬送センサ222が用紙17を検知したタイミングでレジスト駆動モータ223の動作を開始させ、駆動量に対応する動作時間が経過するまでレジスト駆動モータ223の動作を継続させる。また、レジストモータ駆動部205は、搬送センサ222が用紙17を検知したタイミングから、駆動量に相当するレジスト駆動モータ223の動作時間を特定する。この動作時間だけ、レジストローラ対221に用紙17が到達してからレジスト駆動モータ223を動作させる。以上のような制御によって、レジスト装置200は、用紙17のインプットスキューの大小に関わらず、レジストローラ対221により用紙17が搬送されて停止する停止位置を一定にすることができる。レジストモータ駆動部205は、駆動制御手段に相当する。
【0038】
[本発明に係る搬送方法の第一実施形態]
次に、本実施形態に係るレジスト装置200の動作の流れについて、
図5のフローチャートと、
図6~
図11を用いて説明する。
図6~
図11は、レジスト装置200による用紙17の搬送状態を段階的に例示している。各図の(a)は平面図、(b)は側面図を示している。
【0039】
まず、
図6に示すように、給紙トレイ12から繰り出された用紙17は、搬送経路16に沿って搬入されて、搬送ローラ対20に到達する。搬送ローラ対20は用紙17を狭持して搬送方向に移動させる。用紙17は、
図6中の矢印A方向、すなわち、レジストローラ機構22に向かって搬送される。搬送される途中、搬送経路16に配置されている第一エッジセンサ26aと第二エッジセンサ26bが、用紙17の幅方向の端部を検知する。この検知結果に基づいて、インプットスキュー算出部201がインプットスキューを算出する(S501)。
【0040】
次に、
図7に示すように、インプットスキューに基づいて、インプットスキュー補正部202が、レジストローラ機構22を回動させるための回動機構23を動作させ、シフトさせるためにシフト機構24を動作させて、「迎え動作」を開始する(S502)。迎え動作は、用紙17の位置ズレを補正する動作であって「回動動作」と「シフト動作」とを含む動作である。ここで、回動動作は、用紙17の先端部と平行になるようにレジストローラ対221を傾斜させる動作である。シフト動作は、用紙17の横ズレ量に相当する分だけレジストローラ対221を用紙17の幅方向に移動させる動作である。
【0041】
その後、
図8に示すように、用紙17は搬送ローラ対20によってさらに搬送されて、その先端がレジストローラ機構22に到達すると、搬送センサ222が用紙17の先端を検知する(S503/YES)。レジストローラ対221に用紙17が到達したら、搬送ローラ対20は離間して、用紙17を開放する。一方、レジストローラ対221は用紙17を挟持して、レジストモータ駆動部205はレジスト駆動モータ223を駆動させて用紙17を搬送方向に移動させる搬送動作を開始する。
【0042】
続いて、レジスト駆動量算出部204が、S501において算出されたインプットスキューと、S503において搬送センサ222が用紙17を検知したタイミングに基づいて、用紙17の「進み遅れ量」をレジストローラ対221の駆動量として算出する(S504)。続いて、算出された駆動量に基づいて、レジストモータ駆動部205がレジスト駆動モータ223を駆動させる(S505)。駆動量に基づくレジスト駆動モータ223の動作が終了するタイミングになるまで(S506/NO)、レジスト駆動モータ223の動作は継続し、レジストローラ対221による搬送動作が継続する。
【0043】
搬送動作が終了するタイミングに至った場合(S506/YES)、続いて、
図9に示すように、レジストローラ対221が用紙17を挟持し、補正動作を開始する(S507)。補正動作は、レジストローラ対221をホームポジションに復帰させる動作である。
【0044】
図10に示すように、補正動作も終了したとき(S508/YES)、用紙17は、二次転写に備えて一旦停止する停止位置に至っている。この段階では、用紙17のスキューは補正されていて、搬送ローラ対20の離間している。搬送ローラ対20は、次の用紙17の搬入に備えて当接する。
【0045】
次に、
図11に示すように、位置ズレが補正された用紙17は二次転写部(転写ローラ10)へと搬送される。しかし、レジストローラ機構22によって二次転写部へ搬送されている際に、用紙17に再度、搬送方向に対する位置ズレが生じることがある。そこで、レジストローラ機構22の下流側に配置されている第三エッジセンサ26cと、レジストローラ機構22の上流側に配置されている第二エッジセンサ26bとにより、用紙17を検知した結果に基づいて、用紙17の傾きと横ズレの量を再度算出する。この算出結果に基づいて、レジストローラ機構22を、回動およびシフトさせて再度補正する動作を実行する。これにより、位置ズレを再度補正する。以降、上記の動作を繰り返すことで、搬送経路から高精度に傾きと横ズレが補正された用紙17が繰り出される。
【0046】
[レジスト装置200のインプットスキュー補正動作のタイミング]
次に、上記にて説明をした本実施形態に係るレジスト装置200の動作について、タイミングチャートを用いて詳細に説明する。
図12はレジスト装置200の基本的な搬送動作を説明するタイミングチャートである。時刻T1は、搬送センサ222が用紙17を検知した瞬間とする。すなわち、この検知タイミングを用紙検知時刻取得部203がレジスト駆動量算出部204に通知する。
【0047】
搬送センサ222が用紙17を検知したら、その後の所定時刻に至るまでレジストモータ駆動部205を駆動させる。ここで所定時刻は
図12に示す時刻T3とする。すなわち、レジスト駆動モータ223は時刻T1から時刻T3まで動作することを基本とする。なお、レジストローラ対221の駆動モータは、例えば、ステッピングモータである。
【0048】
一方、用紙17が搬送センサ222において検知されてから(時刻T1)、少し時間が経過しないと用紙17はレジストローラ対221に到達しない。これは、レジストローラ対221の搬送方向上流側に搬送センサ222が配置されているからである。時刻T2は、レジストローラ対221に用紙17が到達して、レジストローラ対221によって用紙17の搬送が始まるタイミングを示している。したがって、実際にレジストローラ対221によって用紙17が搬送されるのは、時刻T2を経過してから時刻T3までの間である。時刻T3に至ったら、レジスト駆動モータ223の動作は停止する。したがって、時刻T1は動作開始時間に相当し、時刻T3は、動作停止時間に相当する。
【0049】
すでに説明したとおり、本実施形態に係るレジスト装置200は、搬送センサ222が用紙17を検知する前から、レジストローラ機構22が用紙17の傾きと横ズレを補正するための迎え動作を行っている。したがって、迎え動作によってレジストローラ機構22が搬送方向に対して傾斜し、または、搬送方向と直交する方向(幅方向)に移動している状態で、搬送センサ222が用紙17を検知することになる。搬送センサ222は、レジストローラ機構22に設置されているので、迎え動作によって相対的に用紙17に対する位置が変化している搬送センサ222が用紙17の搬送方向先端部を検知したタイミングをもってレジストローラ対221の駆動量を制御することになる。搬送センサ222の用紙17に対する相対位置が変化することによって、搬送センサ222が用紙17を検知してからレジストローラ対221が動作する時間は一定であっても、レジストローラ対221に用紙17が到達するタイミングは迎え動作の量によって異なる。以上のように、インプットスキューを解消するための迎え動作により搬送センサ222による用紙17の検知タイミングは変化するので、何ら補正動作を実行しなければ、レジストローラ機構22により搬送された用紙17の停止位置は、インプットスキューの大きさによってばらつく。
【0050】
そこで、本実施形態に係るレジストローラ機構22は、用紙17の停止位置のばらつきを解消するために、
図5を用いて説明をした処理を実行する。これを
図13のタイミングチャートを用いて説明する。時刻T1において搬送センサ222が用紙17を検知して、レジストモータ駆動部205がレジスト駆動モータ223を動作させる。このとき、用紙17のインプットスキューの大きさによって、レジストローラ対221の迎え動作の大きさは異なる。仮に、迎え動作によるレジストローラ対221の動きが用紙17に近づく方向である場合、
図12に示した時刻T2よりも早い時刻T2aで用紙17がレジストローラ対221に到達する。レジスト駆動モータ223は、時刻T1から時刻T3の間、駆動する。したがって、時刻T2よりも早い時刻T2aで用紙17がレジストローラ対221に到達すると、レジストローラ対221による搬送動作によって用紙17が搬送される量は通常よりも進む「搬送進み」になる。一方、迎え動作によるレジストローラ対221の動きが用紙17から遠のく方向である場合、
図12に示した時刻T2よりも遅い時刻T2bで用紙17がレジストローラ対221に到達する。この場合、レジストローラ対221による動作によって用紙17が搬送される量は通常よりも遅れる「搬送遅れ」になる。
【0051】
すなわち、インプットスキューが表す、用紙17の搬送方向に対する傾きの大きさと方向および横ズレの量と方向によって、用紙17がレジストローラ対221によって搬送される搬送動作の量が異なる。インプットスキューの大きさに応じて用紙17に「搬送進み」が生ずると、用紙17の停止位置は理想的な停止位置よりも、搬送方向下流側になる。また、「搬送遅れ」が生ずると、用紙17の停止位置は理想的な位置よりも、搬送方向上流側になる。
【0052】
本実施形態に係るレジスト装置200は、用紙17のインプットスキューによる生ずる「搬送進み」または「搬送遅れ」である停止位置のばらつきを解消する機能を備える。
図14は、レジスト装置200における制御の概要を説明する図である。
図14に示すように、搬送センサ222が用紙17を検知してからレジスト駆動モータ223を駆動して、停止する時刻をインプットスキューに基づいて可変させる。具体的には、迎え動作においてレジストローラ対221が用紙17に近づく方向に移動した場合は、レジスト駆動モータ223の駆動停止時刻を通常の時刻T3よりも早い時刻T3aにする。この場合、レジストローラ対221による搬送動作は、時刻T2から時刻T3aの間、行われることになる。すなわち、理想的な搬送状態(インプットスキューがゼロの場合)に比べて搬送動作の時間が短くなる。
【0053】
また、迎え動作においてレジストローラ対221が用紙17から遠のく方向に移動する場合は、レジスト駆動モータ223の駆動停止時刻を通常の時刻T3よりも遅い時刻T3bにする。この場合、レジストローラ対221による搬送動作は、時刻T2から時刻T3bの間、行われることになる。すなわち、理想的な搬送状態(インプットスキューがゼロの場合)に比べて搬送動作の時間が長くなる。
【0054】
ここで、インプットスキューと、レジストローラ対221が用紙17を搬送する搬送動作の時間との関係について説明する。インプットスキューの大きさと、レジストローラ対221が動作を開始して停止するための時間(T)と、レジストローラ対221が動作を始めてから用紙17がレジストローラ対221に到達するための時間(t)の関係は、以下の式(1)によって表される。なお、式(1)における「Lsens」は、レジストローラ対221が回動するときの回転中心と搬送センサ222の設置位置との距離である。この場合、回転中心は、レジストローラ対221の幅方向の端部を想定し、搬送センサ222は、レジストローラ対221の回動に伴って円弧を描く軌道で移動する。
【0055】
【0056】
式1に示すように、インプットスキューによる迎え動作の方向はSkewの符号によって表すことができる。
【0057】
なお、本実施形態に係るレジスト装置200における動作は、上記の例に限定されるものではない。
図15を用いて別の実施形態について説明する。時刻T1において搬送センサ222が用紙17を検知したとする。迎え動作の方向とレジストローラ対221の迎え動作の大きさに基づいて、駆動量を算出するにあたり、レジスト駆動モータ223の動作開始タイミングを可変にしてもよい。
【0058】
例えば、迎え動作においてレジストローラ対221が用紙17に近づく方向に移動した場合は、搬送センサ222が用紙17を検知する前の時刻T1aからレジスト駆動モータ223の動作を開始し、動作時間は一定とする。この場合、レジスト駆動モータ223は時刻T1aから時刻T3cまで動作をする。そして、レジストローラ対221による搬送動作は時刻T2から時刻T3cまで行われる。また、迎え動作においてレジストローラ対221が用紙17から遠のく方向に移動する場合は、レジスト駆動モータ223の駆動開始時刻を時刻T1よりも遅い時刻T1bにし、その後、所定時間だけ駆動させる。この場合、レジスト駆動モータ223は、時刻T1bから時刻T3dまで動作をする。そして、レジストローラ対221による搬送動作は時刻T2から時刻T3dまで行われる。
【0059】
以上説明したとおり、本実施形態に係るレジスト装置200によれば、搬送センサ222が用紙17を検知してからレジストローラ対221に用紙17が到達するタイミングがインプットスキューに応じて変化しても、用紙17の停止位置を一定にすることができる。つまり、レジストローラ対221が用紙17を搬送させる搬送動作を一定にすることで、レジストローラ機構22により用紙17が停止する停止位置を一定にする。これによって、インプットスキューの補正動作後の用紙17の停止位置のばらつきである「搬送進み」または「搬送遅れ」を防止することができ、二次転写部における画像の転写位置を精度よく合わせることができる。
【0060】
[本発明に係る搬送方法の第二実施形態]
次に、本実施形態に係るレジスト装置200の動作の流れについて、
図16のフローチャートを用いて説明する。まず、すでに説明をした搬送方法の第一実施形態におけるS501~S504、S506~S508は、本実施形態に係るS1601~S1604、S1606~S1608と同様の処理となるので、詳細な説明を省略する。ここでは、第一実施形態とは異なる処理であるS1605を中心に説明する。
【0061】
まず、レジストローラ機構22に向かって搬送される途中において、第一エッジセンサ26aと第二エッジセンサ26bにより、用紙17の幅方向の端部が検知されインプットスキュー算出部201がインプットスキューを算出する(S1601)。そして、算出されたインプットスキューに基づいて、インプットスキュー補正部202が、レジストローラ機構22の「迎え動作」を開始する(S1602)。その後、用紙17の先端がレジストローラ機構22に到達して、搬送センサ222が用紙17の先端を検知すると(S1603/YES)、レジスト駆動量算出部204が、用紙17の「進み遅れ量」に基づいて算出される駆動量を用いてレジストローラ対221の駆動量として算出する(S1604)。S1604において算出される駆動量は、S1601において算出したインプットスキューと、S1603において搬送センサ222が用紙17を検知したタイミングに基づいて算出される。
【0062】
続いて、算出された駆動量に基づいて、レジストモータ駆動部205がレジスト駆動モータ223を駆動させる(S1605)。S1605においては、レジスト駆動モータ223の回転速度を制御する。
【0063】
S1605について詳細に説明する。レジストローラ機構22が迎え動作(S1602)を開始した後(S1602)搬送センサ222が用紙17を検出したタイミング(S1603/YES)において、レジストローラ機構22が用紙17を搬送して停止させる停止位置までのズレ量を算出する。このズレ量を解消するために、用紙17の搬送速度を変化させる量を算出し目標とする搬送速度を算出する。なお、レジストローラ機構22が備える制御部には、インプットスキューが無い理想的な搬送状態における用紙17の搬送速度が記憶されている。したがって、S1605では、算出されたインプットスキューと予め記憶されている搬送速度とに基づいて、レジストローラ対221の回転速度を算出する。
【0064】
S1605における速度制御の概要を、
図17~
図19を用いて説明する。
図17が、予めレジストローラ機構22の制御部に記憶されている通常の搬送速度Vsを示すものとする。なお、制御部には、搬送速度Vsで用紙17を搬送するためのレジストローラ対221の回転速度を制御する制御データとして記憶されているものとする。ここで、搬送速度Vsよりも速い搬送速度Vsuや、搬送速度Vsよりも遅い搬送速度Vsdで用紙17を搬送するためのレジストローラ対221の回転速度の変化量を制御するデータも制御部に記憶されているものとする。
【0065】
S1605において、レジストローラ対221へ到達したタイミングが通常のタイミングT4であれば、レジストローラ対221による用紙17の搬送速度は通常の搬送速度Vsのままとする。
【0066】
S1605において、レジストローラ対221への到達がタイミングT4よりも早いタイミングT5となるようなインプットスキューが発生しているとき、つまり、通常よりも到達が早まる方向にインプットスキューが発生しているときは、
図18に示すように制御する。すなわち、レジストモータ駆動部205が、レジストローラ対221の回転速度を遅くし、用紙17の搬送速度を搬送速度Vsdとなるように制御する。これによって、レジストローラ対221に用紙17が到達した後の、レジストローラ対221による用紙17の搬送距離を短くすることができる。
【0067】
S1605において、レジストローラ対221への到達がタイミングT4よりも遅くなるタイミングT6となるようなインプットスキューが発生しているとき、つまり、通常よりも到達が遅れる方向にインプットスキューが発生しているときは、
図19に示すように制御する。すなわち、すなわち、レジストモータ駆動部205が、レジストローラ対221の回転速度を速くし、用紙17の搬送速度を搬送速度Vsuとなるように制御する。これによって、レジストローラ対221に用紙17が到達した後の、レジストローラ対221による用紙17の搬送距離を長くすることができる。
【0068】
以上のように、レジストローラ対221の回転速度を制御し、用紙17の搬送速度を変更することによって、レジストローラ対221により用紙17の搬送により用紙17が停止する停止位置のずれを解消することができる。
【0069】
なお、S1605は、上記のように速度制御を行った動作を予め設定されている時間まで継続するので、この搬送動作が終了するタイミングに至った場合(S1606/YES)、レジストローラ対221により、搬送方向に対する用紙17の位置ズレを補正する補正動作を開始する(S1607)。その後、補正動作も終了すれば(S1608/YES)、用紙17の搬送は一旦停止する。
【0070】
以上のように本実施形態に係る搬送方法によれば、インプットスキューの大きさに応じて、レジストローラ対221の搬送動作の速度を調整することで、レジストローラ対221による用紙17の搬送量を一定にすることができる。搬送中のシートの位置ズレ量に応じて、基準となる位置に対するシートの進み量または遅れ量を解消できる。
【0071】
[本発明に係る搬送方法の第三実施形態]
次に、本実施形態に係るレジスト装置200の動作の流れについて、
図20のフローチャートと、
図21~
図23に示すチャートを用いて説明する。まず、すでに説明をした搬送方法の第一実施形態におけるS501~S508は、本実施形態に係るS2001~S2008と同様の処理となるので、詳細な説明を省略する。ここでは、第一実施形態とは異なる処理であるS2009~S2011を中心に説明する。
【0072】
まず、レジストローラ機構22に向かって搬送される途中において、第一エッジセンサ26aと第二エッジセンサ26bにより、用紙17の幅方向の端部が検知されインプットスキュー算出部201がインプットスキューを算出する(S2001)。そして、算出されたインプットスキューに基づいて、インプットスキュー補正部202が、レジストローラ機構22の「迎え動作」を開始する(S2002)。
【0073】
その後、用紙17の先端がレジストローラ機構22に到達して搬送センサ222が用紙17の先端を検知したとき(S2003/YES)、レジスト駆動量算出部204が、レジストローラ対221の駆動量を算出する(S2004)。S2004において算出される駆動量は、S1601において算出したインプットスキューと、S2003において搬送センサ222が用紙17を検知したタイミングに基づいて算出される用紙17の「搬送進み」の量または「搬送遅れ」に基づく。
【0074】
続いて、算出された駆動量に基づいて、レジストモータ駆動部205がレジスト駆動モータ223を駆動させる(S2005)。S2005による搬送動作が終了するタイミングに至った場合(S2006/YES)、レジストローラ対221により、搬送方向に対する用紙17の位置ズレを補正する補正動作を開始し(S2007)、補正動作も終了すれば(S2008/YES)、用紙17の搬送は一旦停止する。
【0075】
続いて、S2004において算出された「進み遅れ量」に基づいて、用紙17の搬送を再開するタイミングを算出する(S2009)。続いて、S2009において算出した再開タイミングに至ったか否かを判定し、再開タイミングに至っていなければ(S2010/NO)、処理をループする。
【0076】
再開タイミングに至っていれば、(S2010/YES)、レジスト駆動モータ223の駆動を制御して(S2011)、用紙17の搬送を再開する。
【0077】
ここで、S2209~S2011について詳細に説明する。すでに説明をした式1を用いることで、S2007の補正動作が終了した段階における(S2008/YES)、用紙17のインプットスキューを算出することは可能である。用紙17の補正動作が終了した後、当該用紙17の搬送動作は停止する。その後、転写タイミングに基づいて、搬送速度Vpともって用紙17の搬送速度が再開される。再開タイミングをS2004において算出されている「進み遅れ量」に基づいて算出する。
【0078】
例えば、
図21に示すように、レジストローラ対221への用紙17の到達タイミングが通常のタイミングの場合の再開タイミングを「T7」とする。この場合、タイミングT7において、用紙17の搬送を再開し、その後、搬送速度Vpで搬送するように、レジストモータ駆動部205がレジスト駆動モータ223を駆動させる。
【0079】
S2004において算出されている「進み遅れ量」に基づき、レジストローラ対221への用紙17の到達タイミングが早まっているときは、
図22に示すように、用紙17の搬送を再開する再開タイミングを、タイミングT7よりも遅いタイミングである「T8」とする。この場合、タイミングT8において、用紙17の搬送を再開し、その後、搬送速度Vpで搬送するように、レジストモータ駆動部205がレジスト駆動モータ223を駆動させる。
【0080】
S2004において算出されている「進み遅れ量」に基づき、レジストローラ対221への用紙17の到達タイミングが遅れているときは、
図23に示すように、用紙17の搬送を再開する再開タイミングを、タイミングT7よりも早いタイミングである「T9」とする。この場合、タイミングT9において、用紙17の搬送を再開し、その後、搬送速度Vpで搬送するように、レジストモータ駆動部205がレジスト駆動モータ223を駆動させる。
【0081】
なお、S2004において算出される「進み遅れ量」は、搬送方向に対して進む方向であれば正の値であり、搬送方向に対して遅れる方向であれば、負の値となる。したがって、S2209において算出される再開タイミングは、通常のタイミングに対して遅れる方向では正の値、早まる方向では負の値となる。
【0082】
以上説明したとおり、本実施形態に係るレジスト装置200によれば、搬送センサ222が用紙17を検知してからレジストローラ対221に用紙17が到達するタイミングがインプットスキューによって変化しても、転写タイミングを一定にできる。これによって、インプットスキューの補正動作後の用紙17の停止位置に、搬送進みや搬送遅れによるズレが残っていても、二次転写部における画像の転写位置を精度よく合わせることができる。
【0083】
[画像形成装置の第二実施形態]
なお、本実施形態に係る画像形成装置として、電子写真方式の画像形成装置100を例に取り上げて説明を行ったが、例えば、インクジェット方式の画像形成装置100aにおいても同様に適用することができる。画像形成装置100aの全体構成について
図16を参照しながら説明する。
【0084】
図16に示すように、インクジェット方式の画像形成装置100aは、給紙部110と、レジスト装置200aと、画像形成部130と、乾燥部140と、排紙部150とを備えている。
【0085】
保管部を構成する給紙部110から送り出されるシート状の被搬送物を用紙17とする。用紙17は、レジスト装置200aによって搬送され、画像形成部130へ送り出される。
【0086】
画像形成部130においては、用紙17が円筒形状ドラム131に位置決めされ、円筒形状ドラム131の回転によって
図24において示す矢印方向へ搬送される。そして、用紙17は、各色のインク液を吐出する液体吐出ヘッド132の下部(用紙17への画像形成位置)に所定のタイミングで用紙17が搬送され、各色のインクが用紙17に吐き出され、用紙17の表面上に画像が形成される。
【0087】
画像形成部130によって画像が形成された用紙17は、乾燥部140に搬送されてインク中の水分を蒸発させた後、排出部を構成する排紙部150にて、作業者が取り出し可能な位置に排出される。
【0088】
両面印刷が行われる場合には、乾燥工程の後、用紙17が反転搬送路160へ送られて、用紙17の表裏が反転した状態で、再びレジスト装置200aへ送り出される。
【0089】
上記のレジスト装置200aは、本発明に係る搬送装置の実施形態であって搬送部を構成する。つまり、レジスト装置200aは、すでに説明をしたレジスト装置200に相当する機能を備える。レジスト装置200aは、用紙17の搬送方向に対して傾斜した状態で搬送される「斜行」と、「幅方向のズレ(横ズレ)」とを補正し、補正した量に応じて、画像形成部130に用紙17を搬送するタイミングを制御する。そして、用紙17の位置ズレが補正された状態で下流の画像形成部130へ搬送される。
【0090】
なお、シート状の被搬送物としては、用紙17(普通紙)の他、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、プラスチックフィルム、プリプレグ、銅箔等が含まれる。
【0091】
本発明に係る画像形成装置は、
図1及び
図16に示すカラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置や、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等であってもよい。
【符号の説明】
【0092】
10 :転写ローラ
11 :対向ローラ
12 :給紙トレイ
14 :定着ローラ
16 :搬送経路
17 :用紙
20 :搬送ローラ対
22 :レジストローラ機構
23 :回動機構
24 :シフト機構
26a :第一エッジセンサ
26b :第二エッジセンサ
26c :第三エッジセンサ
100 :画像形成装置
110 :給紙部
130 :画像形成部
131 :円筒形状ドラム
132 :液体吐出ヘッド
134 :感光体ドラム
135 :中間転写ベルト
140 :乾燥部
150 :排紙部
160 :反転搬送路
161 :分岐部
162 :反転パス
200 :レジスト装置
201 :インプットスキュー算出部
202 :インプットスキュー補正部
203 :用紙検知時刻取得部
204 :レジスト駆動量算出部
205 :レジストモータ駆動部
210 :コントローラ
220 :ドライバ
221 :レジストローラ対
222 :搬送センサ
223 :レジスト駆動モータ
224 :搬送駆動モータ
500 :排紙トレイ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0093】