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特許71965302液型接着剤用の硬化剤、2液型接着剤、積層フィルム及び包装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】2液型接着剤用の硬化剤、2液型接着剤、積層フィルム及び包装体
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/06 20060101AFI20221220BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20221220BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221220BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C09J175/06
C09J11/06
B32B27/00 D
B65D65/40 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018196714
(22)【出願日】2018-10-18
(65)【公開番号】P2020063384
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】細野 月子
(72)【発明者】
【氏名】江波戸 博
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-151497(JP,A)
【文献】国際公開第2018/186383(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00- 27/42
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2液型接着剤用の硬化剤であって、
グリコールと二塩基酸とを反応原料とするポリエステルポリオールと、
少なくともトルエンジイソシアネートを50~100重量%の範囲で有し、
キシリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、1,6-ヘキサ メチレンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート) 、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、及び1,3- (イソシアナートメチル)シクロヘキサンからなる群から選ばれる少なくとも1つのポリ イソシアネート、あるいは前記ポリイソシアネートのビウレット体、あるいは前記ポリイ ソシアネートのイソシアヌレート体、あるいは前記ポリイソシアネートのトリメチロール プロパン変性したアダクト体を0~50重量%の範囲で有するイソシアネート化合物との反応生成物(B-1)と、
イソシアネートとして4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと1,6-ヘキサメ チレンジイソシアネートのヌレート体のみとの反応生成物(B-2)であることを特徴とする2液型接着剤用の硬化剤。
【請求項2】
前記グリコールと二塩基酸とを反応原料とするポリエステルポリオールが、エチレングリ コール、ジエチレングリコール、グリセリン、又はネオペンチルグリコールから成る群か ら選ばれる少なくとも1つのグリコールと、アジピン酸、セバシン酸、又はイソフタル酸 から成る群から選ばれる少なくとも1つの二塩基酸とを反応原料とするポリエステルポリ オールである、請求項1に記載の2液型接着剤用の硬化剤。
【請求項4】
ポリオール化合物を含有するポリオール成分Aと、イソシアネート化合物を含有するイソシアネート成分Bとを有し、
前記イソシアネート成分Bは、グリコールと二塩基酸とを反応原料とするポリエステルポリオールと、
少なくともトルエンジイソシアネートを50~100重量%の範囲で有し、
キシリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、1,6-ヘキサ メチレンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート) 、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、及び1,3- (イソシアナートメチル)シクロヘキサンからなる群から選ばれる少なくとも1つのポリ イソシアネート、あるいは前記ポリイソシアネートのビウレット体、あるいは前記ポリイ ソシアネートのイソシアヌレート体、あるいは前記ポリイソシアネートのトリメチロール プロパン変性したアダクト体を0~50重量%の範囲で有するイソシアネート化合物との反応生成物(B-1)と、
イソシアネートとして4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートと1,6-ヘキサメ チレンジイソシアネートのヌレート体のみとの反応生成物(B-2)であることを特徴とする2液型接着剤。
【請求項5】
前記グリコールと二塩基酸とを反応原料とするポリエステルポリオールが、エチレングリ コール、ジエチレングリコール、グリセリン、又はネオペンチルグリコールから成る群か ら選ばれる少なくとも1つのグリコールと、アジピン酸、セバシン酸、又はイソフタル酸 から成る群から選ばれる少なくとも1つの二塩基酸とを反応原料とするポリエステルポリ オールである、請求項4に記載の2液型接着剤。
【請求項8】
第一のプラスチックフィルムと第二のプラスチックフィルムの間に接着剤層を積層してなる積層フィルムを袋状に成形してなる包装体であって、前記接着剤層が請求項4~6のい ずれかに記載の2液型接着剤の層であることを特徴とする包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2液型接着剤用の硬化剤、2液型接着剤、それを使用してなる積層フィルム及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
各種包装材、ラベル等に用いられる積層フィルム(ラミネートフィルムとも称する場合がある)は、各種多種多様なプラスチックフィルム、金属箔、紙等のラミネートにより、意匠性、機能性、保存性、利便性、輸送性が付与され、特に該積層フィルムを袋状に成形してなる包装体は、食品、医薬品、洗剤等の包装体として使用されている。そのなかでも特に食品包装体は、ボイル加工の他、レトルト加工にも耐えうる接着性能が要求されている。
【0003】
従来ラミネートフィルムには、揮発性の有機溶剤に溶解した接着剤(溶剤型ラミネート接着剤と称される場合がある)をフィルムに塗工し、オーブンを通過する過程で有機溶剤を揮発させ、別のフィルムを貼り合わせるドライラミネーション方式により得るものが主流であったが、近年、環境負荷の低減および作業環境の改善の観点から、揮発性の有機溶剤を含有しない、反応型2液タイプのラミネート接着剤(2液型接着剤、あるいは無溶剤型ラミネート接着剤と称される場合がある)の需要が高まりつつある。(例えば特許文献1参照)
【0004】
2液型接着剤は、原料として溶剤型ラミネート接着剤よりも若干低分子の反応性モノマーを使用することから、ラミネート後のフィルムを通して内容物に溶出する可能性があった。特に近年では、欧州を始め、プラスチック容器から化学物質の溶出(移行)する成分の規制が細かく定義されるようになり、容器からの化学物質の溶出成分が少ない製品が求められている。一般に接着剤に使用される化学物質の溶出では、SML(Specific migration limit)が規定されており、溶出物は容易に制御可能であるが、合成等で生成する非意図的添加物質(NIAS)の溶出は簡単にはクリアできない問題となっている。
【0005】
前記特許文献1記載の2液型接着剤は、無溶剤型接着剤における接着強度とエージング時間短縮に効果があるものの、使用するポリイソシアネート成分(A)は、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(a1)および4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(a2)を必須とするイソシアネートと、ポリエーテルポリオール(a3)を必須とするポリオールとをイソシアネート基過剰の条件下で反応させてなる反応性生成物であり、即ち2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを必須とするものであり、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが構造変化した芳香族アミンが前記NIASに該当するおそれがあった。
【0006】
一方の4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートは、前記NIASに該当するおそれはなく安全に使用できる。しかし該化合物は結晶性が高いために、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを高濃度で使用した硬化剤は、時として結晶化や析出による白濁が生じるおそれがあった。(例えば特許文献2 段落0050参照)加えて、製造直後は透明度が高い場合でも、時間とともに白濁が進むことで、結晶化以外の予期せぬ化学変化の発生、および、品質の低下と捉えられるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-159548号公報
【文献】特表2014-516321号公報
【文献】特開2015-151497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、2液型接着剤として使用した際に、ラミネート後のフィルムを通して内容物に溶出する非意図的物質が非常に少なく、且つ時間の経過とともに白濁の生じにくい2液型接着剤用の硬化剤、及び2液型接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、非意図的物質溶出のおそれのある2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートは使用せずに、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを高濃度で使用した硬化剤として、ポリエステルポリオールとトルエンジイソシアネートとを予めポリオール過剰量で反応させたポリエステルポリウレタンポリオールに、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを過剰量反応させたポリエステルポリウレタンポリイソシアネートを硬化剤が、上記課題を解決できることを見いだした。
【0010】
本発明者らはこれまでの検討の中で、ポリエステルポリオール中に残存する低分子量オリゴマー成分と4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートからなる低分子量ウレタン化合物が、ポリイソシアネート(A)中の存在する4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの結晶化を促進する結晶核となるうることを発見した。そこで、低分子量オリゴマーとトルエンジイソシアネートを先に反応させ、結晶核をポリイソシアネート(A)に存在させないことで、時間の経過による白濁を生じにくい硬化剤が得られることを見出した。
【0011】
トリレンジイソシアネートと、ポリエステルポリオールを必須とするポリオールを、トリレンジイソシアネート(A-1)のNCO基のモル数と前記ポリオール中の水酸基のモル数との比であるNCO/OH比が0.3~0.8の範囲で反応させ、水酸基を有するウレタンプレポリマを得た後、前記水酸基を有するウレタンプレポリマと、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等の対称性ジイソシアネートと2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等の非対称性ジイソシアネートとを、トリレンジイソシアネートと対称性ジイソシアネートと非対称性ジイソシアネートとのNCO基の合計モル数と前記ポリオール中の水酸基のモル数との比であるNCO/OH比が1.5~4.0の範囲で反応させたポリイソシアネート成分(A)を2液型接着剤の硬化剤として使用することは特許文献3に記載されている。しかし特許文献3に開示された内容は、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等の非対称性ジイソシアネート(A-4)を必須としており、非意図的物質溶出の問題は解決されていない。
【0012】
即ち本発明は、2液型接着剤用の硬化剤であって、ポリエステルポリオールと少なくともトルエンジイソシアネートを含むイソシアネート化合物との反応生成物(B-1)と、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとの反応生成物(B-2)を含有する2液型接着剤用の硬化剤を提供する。
【0013】
また本発明は、ポリオール化合物を含有するポリオール成分Aと、イソシアネート化合物を含有するイソシアネート成分Bとを有し、前記イソシアネート成分Bは、ポリエステルポリオールと少なくともトルエンジイソシアネートを含むイソシアネート化合物との反応生成物(B-1)と、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとの反応生成物(B-2)を含有する2液型接着剤を提供する。
【0014】
また本発明は、第一のプラスチックフィルムと第二のプラスチックフィルムの間に接着剤層を積層してなる積層フィルムであって、前記接着剤層が前記記載の2液型接着剤の層である積層フィルムを提供する。
【0015】
また本発明は、第一のプラスチックフィルムと第二のプラスチックフィルムの間に接着剤層を積層してなる積層フィルムを袋状に成形してなる包装体であって、前記接着剤層が前記記載の2液型接着剤の層である包装体を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、硬化剤中の4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの結晶化が抑えられるので、2液型接着剤として使用した際に、時間の経過に伴う白濁等の問題が生じにくい。
また、2液型接着剤として使用した際に、ラミネートおよびレトルト加工を施した後でも、フィルムを通して内容物に溶出する非意図的物質が非常に少ないため、内容物の充填時、充填後の時間経過後も、デラミネーション等のラミネート構成体の剥離を発生させない優れた接着性、内容物耐性、および安全性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(言葉の定義 溶剤)
本発明の2液型接着剤は、前述の通り反応型2液タイプのラミネート接着剤であり、従来の揮発性の有機溶剤を使用しないことから無溶剤型ラミネート接着剤とも称される。
本発明では、イソシアネート基と水酸基との化学反応によって硬化する接着剤を使用する。なお本発明でいう無溶剤型の接着剤の「溶剤」とは、本発明で使用するポリイソシアネートやポリオールを溶解することの可能な、溶解性が高く揮発性の有機溶剤を指し、「無溶剤」とは、これらの溶解性の高い有機溶剤を含まないことを指す。溶解性の高い有機溶剤とは、具体的には、トルエン、キシレン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸nープロピル、酢酸n-ブチル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、トルオール、キシロール、n-ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。中でもトルエン、キシレン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、酢酸エチルは特に溶解性の高い有機溶剤として知られている。
【0018】
一方本発明の接着剤は、低粘度等の要求がある場合には、所望の粘度に応じて適宜前記溶解性の高い有機溶剤で希釈して使用してもよい。その場合は、ポリオール成分Aまたはイソシアネート成分Bのいずれか1つを希釈してもよいし両方を希釈してもよい。このような場合に使用する有機溶剤としては、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸nープロピル、酢酸n-ブチル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、トルオール、キシロール、n-ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。これらの中でも溶解性の点から酢酸エチルやメチルエチルケトン(MEK)が好ましく、特に酢酸エチルが好ましい。有機溶剤の使用量は所要される粘度によるが概ね0.1~10質量%の範囲で使用することが多い。
また、本発明の接着剤の低粘度化を達成するために、トリアセチン、プロピレンカーボネート等の水酸基を有さないカルボニル基を有する沸点200℃以上の溶剤も使用してよい。これら高沸点の有機溶剤の使用量は所要される粘度と塗膜物性によるが概ね0.1~10質量%の範囲で使用することが多い。
【0019】
(言葉の定義 主剤、硬化剤)
一般に2液型接着剤において「2液」を表す表現には様々なものがあるが、本発明においては、イソシアネート化合物を含有するイソシアネート成分Bを「硬化剤」と称し、ポリオール化合物を含有するポリオール成分Aを「主剤」と称す。
【0020】
(主剤 ポリオール化合物を含有するポリオール成分A)
本発明の2液型接着剤の主剤であるポリオール成分Aが含有するポリオール化合物は、特に限定なく公知のポリオールを使用することができる。例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステル(ポリウレタン)ポリオール、ポリエーテル(ポリウレタン)ポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシルアルカン、ひまし油又はそれらの混合物から選ばれるポリマーポリオールを挙げることができる。
【0021】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物と、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のグリコール類若しくはそれらの混合物とを反応させて得られるポリエステルポリオール或いはポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0022】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分量ポリオールを開始剤として重合して得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。 ポリエーテルエステルポリオールとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物と、上記ポリエーテルポリオールを反応させて得られるポリエーテルエステルポリオールが挙げられる。
【0023】
ポリウレタンポリオールとしては、1分子中にウレタン結合を有するポリオールであり、例えば、数平均分子量200~20,000のポリエーテルポリオールと有機ポリイソシアネートとの反応物で、NCO/OHが1未満が好ましく、より好ましくは0.9以下のものを挙げることができる。有機ポリイソシアネートは後述のポリイソシアネート化合物、特にジイソシアネート化合物を使用することができる。
【0024】
ポリエーテル(ポリウレタン)ポリオール、ポリエステル(ポリウレタン)ポリオールは、ポリエステルポリオールやポリエーテルエステルポリオール等と有機ポリイソシアネートとの反応物で、NCO/OHが1未満が好ましく、より好ましくは0.9以下のものを挙げることができる。
【0025】
ポリエステルアミドポリオールとしては、上記エステル化反応に際し、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアミノ基を有する脂肪族ジアミンを原料としてあわせて使用することによって得られる。
アクリルポリオールの例としては、1分子中に1個以上の水酸基を含むアクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロプル、アクリルヒドロキシブチル等、或いはこれらの対応するメタクリル酸誘導体等と、例えばアクリル酸、メタクリル酸又はそのエステルとを共重合することによって得られる。
【0026】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,8-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールAの中から選ばれた1種又は2種以上のグリコールをジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲン等との反応によって得られたものが挙げられる。
【0027】
ポリヒドロキシアルカンとしては、ブタジエン、又はブタジエンとアクリルアミド等と共重合して得られる液状ゴムが挙げられる。
中でも、ポリエーテル(ポリウレタン)ポリオールが特に好ましい。
【0028】
また、本発明に用いられるポリオール化合物として、ポリイソシアネートとビス(ヒドロキシアルキル)アミンの反応物であって末端にウレア結合基を有するものも好ましく用いることができる。
【0029】
前記ポリオール成分Aの数平均分子量は、特に限定はないが、塗工時における適正な樹脂粘度の観点から通常は500~3000の範囲で調整されることが多い。
【0030】
尚、本願発明において数平均分子量(Mn)は、下記条件のゲルパーミアーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
【0031】
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC-8220GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSK-GUARDCOLUMN SuperHZ-L
+東ソー株式会社製 TSK-GEL SuperHZM-M×4
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC-8020modelII
測定条件 ;カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0032】
(硬化剤 イソシアネート化合物を含有するイソシアネート成分B)
本発明の2液型接着剤の硬化剤であるイソシアネート成分Bは、ポリエステルポリオールと少なくともトルエンジイソシアネートを含むイソシアネート化合物との反応生成物(B-1)と、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとの反応生成物(B-2)を含有することが特徴である。
即ち、ポリエステルポリオールと少なくともトルエンジイソシアネートを含むイソシアネート化合物と、ポリエステルポリオールを過剰量として先に反応させ、水酸基を有する反応生成物(B-1)を得たのち、該反応生成物(B-1)と4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとを、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを過剰量として反応させ、イソシアネート基を有する反応生成物(B-2)を得る。
【0033】
本発明においては、ポリエステルポリオール中に残存する低分子量オリゴマー成分とトルエンジイソシアネートを先に反応させることで、結晶核をポリイソシアネート(A)に存在させないようにする。そのために、ポリエステルポリオールと少なくともトルエンジイソシアネートを含むイソシアネート化合物との反応の際には、イソシアネート反応率をモニターし、反応率が0.8~1.0の範囲とすることが好ましい。具体的には、反応中、系内の水酸基価またはイソシアネート基の定量値をモニターし、一定の反応率を超えた時点、すなわちイソシアネート基反応率が0.8~1.0の範囲内となった時点で反応を止めることで、反応生成物(B-1)が得られる。ここでイソシアネート基の定量値はISO14896(イソシアネート基含有率の試験方法)に記載された方法により求めることが出来、イソシアネート基の反応率は反応生成物のイソシアネート基の定量値を反応前のイソシアネート基の定量値で除した値から算出することが出来る。
【0034】
本発明においてイソシアネート基反応率とは、ポリエステルポリオールとトルエンジイソシアネートを含むイソシアネート化合物との反応前混合物中に含まれるイソシアネート基を1としたときの反応率を差す。すなわち、前記反応生成物(1)中に残存するイソシアネート基の率は、1からイソシアネート反応率を除した率である。
すなわちイソシアネート基の反応率が0.8未満であると未反応のトルエンジイソシアネートが多く残存しており、イソシアネート化合物を含有するイソシアネート成分B中にトリレンジイシアネートが残存するため、ラミネート後のフィルムを通して内容物にトリレンジイソシアネート由来の芳香族アミンが溶出する可能性がある。
【0035】
ここで反応させるイソシアネートはトルエンジイソシアネートが必須であるが、その他、公知のポリイソシアネートを併用してもよい。但しその場合は、本発明の効果を損なわない程度にとどめておくことが好ましい。特に非意図的物質溶出のおそれのある2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートは使用しないことが好ましい。ここで併用できる公知のポリイソシアネート化合物としては、例えば、キシリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-(イソシアナートメチル)シクロヘキサン等の脂肪族ポリイソシアネート;これらの芳香族又は脂肪族ポリイソシアネートのビウレット体、または、これらの芳香族又は脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート体などのポリイソシアネートの誘導体(変性物)、これらの芳香族又は脂肪族ポリイソシアネートをトリメチロールプロパン変性したアダクト体などが挙げられる。
併用する場合、トルエンジイソシアネートの使用量は、反応生成物(B-1)を反応させる際に使用するポリイソシアネート化合物の総重量に対し50~99重量%の範囲であることが好ましく、80~99重量%の範囲がなお好ましい。
【0036】
前記反応生成物(B-1)の原料であるポリエステルポリオールとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物と、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等のグリコール類若しくはそれらの混合物とを反応させて得られるポリエステルポリオール或いはポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0037】
特に、低温での塗工性の観点から、融点の低い原料を使用することが望ましい。具体的には、アジピン酸、セバチン酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセリンが好ましく、更に、アジピン酸とジエチレングリコールが好ましい。
また、前記ポリエステルポリオールがあまりに低分子量の場合は、トルエンジイソシアネートと反応させた際に反応生成物(B-1)が高粘度化する傾向にあり、一方ポリエステルポリオールがあまりに高分子量の場合はトリレンジイソシアネートとの反応時に均一に混合しにくい場合があり、均一な反応を保ち難い。この観点から、ポリエステルポリオールの数平均分子量は300~5000が好ましく、500~3000であることがより好ましい。
【0038】
前記イソシアネート化合物との反応生成物(B-1)において、前記ポリエステルポリオールと、少なくともトルエンジイソシアネートを含有するイソシアネート化合物との反応比率としては、前記ポリエステルポリオールの水酸基(OH)のモル数(b)とトルエンジイソシアネートのイソシアネート基(NCO)のモル数(a)の比であるNCO/OH比〔(a)/(b)〕が、0.3~0.8が好ましく、0.5~0.8がより好ましい。〔(a)/(b)〕が0.3以下の場合、前記ポリエステルポリオール中の低分子量オリゴマー成分がイソシアネートと反応しきらず残存することで、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの結晶化を防止する効果が低下する恐れがある。また、0.8以上の場合、反応生成物(B-1)の凝集力が高くなりすぎるため、接着剤塗工時にフィルムへの転移性が低下する恐れがある。
【0039】
前記ポリエステルポリオールと少なくともトルエンジイソシアネートを含むイソシアネート化合物とを反応させ、水酸基を有する反応生成物(B-1)を得たのち、該水酸基を有する反応生成物(B-1)と4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとを反応させ、イソシアネート基を有する反応生成物(B-2)を得る。
【0040】
得られるイソシアネート基を有する反応生成物(B-2)の数平均分子量は、特に限定はないが、塗工時における適正な樹脂粘度の観点から通常は500~5000の範囲で調整されることが多い。より好ましくは500~3000である。
【0041】
(3官能以上のイソシアネート化合物(B-3))
本発明において硬化剤であるイソシアネート成分Bは、前記イソシアネート基を有する反応生成物(B-2)単独で使用してもよいが、他のポリイソシアネート化合物を併用しても良く、特に3官能以上のイソシアネート化合物(B-3)を併用することが好ましい。時として前記イソシアネート基を有する反応生成物(B-2)を得る際、未反応の4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが残存することがあり、即ち硬化剤であるイソシアネート成分B中には4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートそのものが存在する場合がある。このとき、3官能以上のイソシアネート化合物(B-3)を併用することで、より結晶化を低減させることができ好ましい。
【0042】
前記3官能以上のイソシアネート化合物(B-3)は、ジイソシアネートの二量体または三量体が好ましく、より具体的には、カルボジイミド修飾ジフェニルメタンジイソシアネート、アロファネート修飾ジフェニルメタンジイソシアネート、ビウレット修飾ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-(イソシアナートメチル)シクロヘキサン等の脂肪族ポリイソシアネート;これらの芳香族又は脂肪族ポリイソシアネートのアロファネート体、ビウレット体、または、これらの芳香族又は脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート体などのポリイソシアネートの誘導体(変性物)、これらの芳香族又は脂肪族ポリイソシアネートをトリメチロールプロパン変性したアダクト体などが挙げられる。
【0043】
前記イソシアネート成分B中、前記イソシアネート基を有する反応生成物(B-2)と前記3官能以上のイソシアネート化合物(B-3)との配合割合は、前記反応生成物(B-2)/前記3官能以上のイソシアネート化合物(B-3)が80/20~95/5の範囲であることが好ましく、90/10~95/5の範囲であることがなお好ましい。
【0044】
中でも、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、ビウレット体、アダクト体またこれらの組み合わせを使用することが、低温下での結晶化を抑制できるため好ましい。
【0045】
前記イソシアネート基を有する反応生成物(B-2)単独もしくは(B-2)と3官能以上のイソシアネート化合物(B-3)を併用することで得られるイソシアネート成分Bのイソシアネート基濃度は10~20%の範囲が好ましく、より好ましくは12~18の範囲である。
【0046】
尚、本願発明において数平均分子量(Mn)は、下記条件のゲルパーミアーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
【0047】
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC-8220GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSK-GUARDCOLUMN SuperHZ-L
+東ソー株式会社製 TSK-GEL SuperHZM-M×4
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC-8020modelII
測定条件 ;カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0048】
(粘度)
本発明の2液型接着剤は、前記ポリオール成分Aとイソシアネート成分Bとを重量比の割合で配合し40℃雰囲気下で30分放置後の粘度が5000mPa・s以下である。本発明においては、粘度は、下記条件の回転粘度計により測定される値である。
測定装置 ;アントンパール社製 MCR-302
測定条件 ;温度 40℃、コーンプレートΦ50mm
【0049】
粘度は、中でも500~5000mPa・sの範囲が好ましく、より好ましくは1500~4500mPa・sの範囲である。
【0050】
本発明の2液型接着剤は、詳述した通り、ポリオール成分Aとイソシアネート成分Bとを必須成分とするものであるが、更に、脂肪族環状アミド化合物を、ポリオール成分Aとイソシアネート成分Bとのどちらか一方の成分に混合させるか、或いは、第3成分として塗工時に配合することにより、ラミネート包装体において芳香族アミンに代表される有害な低分子化学物質の内容物への溶出が効果的に抑制できる。
【0051】
ここで用いる脂肪族環状アミド化合物は、例えば、δ-バレロラクタム、ε-カプロラクタム、ω-エナントールラクタム、η-カプリルラクタム、β-プロピオラクタム等が挙げられる。これらの中でも低分子化学物質の溶出量低減の効果に優れる点からε-カプロラクタムが好ましい。また、その配合量は、ポリオール成分A100質量部あたり、脂肪族環状アミド化合物を0.1~5質量部の範囲で混合させることが好ましい。
【0052】
本発明の2液型接着剤は、必要に応じて、顔料を併用してもよい。この場合使用可能な顔料としては、特に限定されるものではなく、例えば、塗料原料便覧1970年度版(日本塗料工業会編)に記載されている体質顔料、白顔料、黒顔料、灰色顔料、赤色顔料、茶色顔料、緑色顔料、青顔料、金属粉顔料、発光顔料、真珠色顔料等の有機顔料や無機顔料、さらにはプラスチック顔料などが挙げられる。これら着色剤の具体例としては種々のものが掲げられ、有機顔料としては、例えば、ベンチジンエロー、ハンザエロー、レーキッド4R等の、各種の不溶性アゾ顔料;レーキッドC、カーミン6B、ボルドー10等の溶性アゾ顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の各種(銅)フタロシアニン系顔料;ローダミンレーキ、メチルバイオレットレーキ等の各種の塩素性染め付けレーキ;キノリンレーキ、ファストスカイブルー等の各種の媒染染料系顔料;アンスラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ペリノン系顔料等の各種の建染染料系顔料;シンカシアレッドB等の各種のキナクリドン系顔料;ヂオキサジンバイオレット等の各種のヂオキサジン系顔料;クロモフタール等の各種の縮合アゾ顔料;アニリンブラックなどが挙げられる。
【0053】
無機顔料としては、例えば、黄鉛、ジンククロメート、モリブデートオレンジ等の如き、各種のクロム酸塩;紺青等の各種のフェロシアン化合物;酸化チタン、亜鉛華、マピコエロー、酸化鉄、ベンガラ、酸化クロームグリーン、酸化ジルコニウム等の各種の金属酸化物;カドミウムエロー、カドミウムレッド、硫化水銀等の各種の硫化物ないしはセレン化物;硫酸バリウム、硫酸鉛等の各種の硫酸塩;ケイ酸カルシウム、群青等の各種のケイ酸塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の各種の炭酸塩;コバルトバイオレット、マンガン紫等の各種の燐酸塩;アルミニウム粉、金粉、銀粉、銅粉、ブロンズ粉、真鍮粉等の各種の金属粉末顔料;これら金属のフレーク顔料、マイカ・フレーク顔料;金属酸化物を被覆した形のマイカ・フレーク顔料、雲母状酸化鉄顔料等のメタリック顔料やパール顔料;黒鉛、カーボンブラック等が挙げられる。
【0054】
体質顔料としては、例えば、沈降性硫酸バリウム、ご粉、沈降炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、寒水石、アルミナ白、シリカ、含水微粉シリカ(ホワイトカーボン)、超微粉無水シリカ(アエロジル)、珪砂(シリカサンド)、タルク、沈降性炭酸マグネシウム、ベントナイト、クレー、カオリン、黄土などが挙げられる。
【0055】
さらに、プラスチック顔料としては、例えば、DIC(株)製「グランドールPP-1000」、「PP-2000S」等が挙げられる。
【0056】
本発明で用いる顔料としては、耐久性、耐侯性、意匠性に優れることから、白色顔料としての酸化チタン、亜鉛華等の無機酸化物、黒色顔料としてのカーボンブラックがより好ましい。
【0057】
本発明で用いる顔料の質量割合は、イソシアネート成分Bとポリオール成分Aの合計100質量部に対して、1~400質量部、中でも10~300質量部とすることが、接着性、耐ブロッキング性などに優れることからより好ましい。
【0058】
また本発明の2液型接着剤には接着促進剤を用いることもできる。接着促進剤にはシランカップリング剤、チタネート系カップチング剤、アルミニウム系等のカップリング剤、エポキシ樹脂が挙げられる。
【0059】
シランカップリング剤としては、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン;ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン;ヘキサメチルジシラザン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることが出来る。
【0060】
チタネート系カップリング剤としては、例えば、テトライソプロポキシチタン、テトラ-n-ブトキシチタン、ブチルチタネートダイマー、テトラステアリルチタネート、チタンアセチルアセトネート、チタンラクテート、テトラオクチレングリコールチタネート、チタンラクテート、テトラステアロキシチタン等を挙げることが出来る。
【0061】
また、アルミニウム系カップリング剤としては、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げることが出来る。
【0062】
エポキシ樹脂としては、一般的に市販されているビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールのβ-メチルグリシジルエーテル、ノボラック樹脂のβ-メチルグリシジルエーテル、環状オキシラン型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂等の各種エポキシ樹脂が挙げられる。
【0063】
本発明で使用する2液型接着剤には、必要であれば、前記以外のその他の添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、例えば、レベリング剤;コロイド状シリカ、アルミナゾルなどの無機微粒子;ポリメチルメタクリレート系の有機微粒子;消泡剤;タレ性防止剤;湿潤分散剤;粘性調整剤;紫外線吸収剤;金属不活性化剤;過酸化物分解剤;難燃剤;補強剤;可塑剤;潤滑剤;防錆剤;蛍光性増白剤;無機系熱線吸収剤;防炎剤;帯電防止剤;脱水剤などが挙げられる。
【0064】
これらの顔料、接着促進剤、添加剤は、イソシアネート成分B又はポリオール成分Aのどちらか一方の成分に混合させるか、或いは、第3成分として塗工時に配合して使用することができる。これらのなかでも、顔料、接着促進剤、及び添加剤をポリオール成分Aに予め配合したプレミックスを本発明のラミネート接着剤用ポリオール組成物として調整し、2液型接着剤として使用することが、作業性の点から好ましい。
【0065】
(積層フィルム)
本発明の積層フィルムは、第一のプラスチックフィルムと第二のプラスチックフィルムの間に前記2液型接着剤からなる接着剤層を積層してなる。具体的には、前記2液型接着剤を第一のプラスチックフィルムに塗布、次いで塗布面に第二のプラスチックフィルムを積層し、該接着剤層を硬化させて得られるものである。例えば前記2液型接着剤を、ロールコーター塗工方式で第一のプラスチックフィルムに塗布し、次いで、乾燥工程を経ることなく、他の基材を貼り合わせる方法が挙げられる。塗工条件は、通常のロールコーターでは、30℃~90℃まで加熱した状態で、接着剤の配合液粘度が40℃で300~3000mPa・s程度が好ましいが、本発明の接着剤は配合し40℃雰囲気下で30分放置後の粘度が5000mPa・s以下であるので問題なく塗工できる。また塗布量は、0.5~5g/mが好ましく、より好ましくは、0.5~3g/m程度で使用するのがよい。
【0066】
また、前記第一のプラスチックフィルム上に、印刷インキをグラビア又はフレキソ印刷したものを用いてもよく、この場合であっても良好なラミネート外観を呈することができる。前述の印刷インキは溶剤型、水性型又は活性エネルギー線硬化型インキを使用することがきる。
【0067】
本発明で使用する2液型接着剤を用いた場合、ラミネートした後、常温または加温下で、12~72時間で接着剤が硬化し、実用物性を発現する。
【0068】
ここで用いる、第一のプラスチックフィルムとしては、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、ナイロンフィルム、OPP(2軸延伸ポリプロピレン)フィルム、ポリ塩化ビニリデン等のKコートフィルム、各種蒸着フィルム等のベースフィルムやアルミ箔等が挙げられ、第二のプラスチックフィルムとしては、前記他の基材としては、CPP(無延伸ポリプロピレン)フィルム、VMCPP(アルミ蒸着無延伸ポリプロピレンフィルム)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、VMLDPE(アルミ蒸着無低密度ポリエチレンフィルム)フィルム等のシーラントフィルムが挙げられる。
【0069】
本発明においては、無溶剤型ラミネート機で高速ラミネート加工しても優れた積層フィルム外観が得られるが、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム/VMCPP(アルミ蒸着無延伸ポリプロピレンフィルム)のフィルム構成の場合200m/分以上、OPP/CPPのフィルム構成の場合350m/分以上の高速加工であっても良好な外観を呈することできる。
【0070】
(包装体)
本発明の包装体は、前記積層フィルムを袋状に成形してなり、具体的には前記積層フィルムをヒートシールすることにより包装体の形態となる。また、包装体としての用途、必要な性能(易引裂性やハンドカット性)、包装体として要求される剛性や耐久性(例えば、耐衝撃性や耐ピンホール性など)などを考慮した場合、必要に応じて他の層を積層することもできる。通常は基材層、紙層、第2のシーラント層、不職布層などを伴って使用される。他の層を積層する方法としては、公知の方法を用いることができる。たとえば、他の層との層間に接着剤層を設けてドライラミネート法、熱ラミネート法、ヒートシール法、押出しラミネート法などにより積層すればよい。接着剤としては、前記2液型接着剤を使用してもよいし、他の1液タイプのウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、酸変性ポリオレフィンの水性分散体などを用いてもよい。
【0071】
具体的な積層体構成としては、一般の包装体や蓋材、詰め替え容器などに好適に用いることが可能な、第一のプラスチックフィルム層/接着層/第二のプラスチック層、第一のプラスチック層をバリア層にした、基材層/接着層/第一のプラスチックフィルム層/接着層/第二のプラスチック層や紙容器、紙カップなどに好適に用いることが可能な、第二のプラスチック層/紙層/接着層/第一のプラスチックフィルム層/接着層/第二のプラスチック、第二のプラスチック層/紙層/ポリオレフィン樹脂層/基材層/第一のプラスチック層/接着層/第二のプラスチック層、紙層/第一のプラスチックフィルム層/接着層/シーラント層やチューブ容器などに好適に用いることが可能な、第二のプラスチック層/接着層/第一のプラスチック層/接着層/第二のプラスチック層などが挙げられる。これら積層体は、必要に応じて、印刷層やトップコート層などを有していても構わない。
【0072】
第一のプラスチックフィルム層は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)などのポリエステル樹脂フィルム;ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂フィルム;ポリスチレン樹脂フィルム;ナイロン6、ポリ-p-キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)などのポリアミド樹脂フィルム;ポリカーボネート樹脂フィルム;ポリアクリルニトリル樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;これらの複層体(例えば、ナイロン6/MXD6/ナイロン6、ナイロン6/エチレン-ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体などが用いられる。なかでも、機械的強度や寸法安定性を有するものが好ましい。特に、これらの中で二軸方向に任意に延伸されたフィルムが好ましく用いられる。
【0073】
また、第一のプラスチックフィルム層は、バリア機能を付与するためにアルミニウム箔などの軟質金属箔の他、アルミ蒸着、シリカ蒸着、アルミナ蒸着、シリカアルミナ2元蒸着などの蒸着層;塩化ビニリデン系樹脂、変性ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、MXDナイロンなどからなる有機バリア層などを採用できる。
【0074】
第二のプラスチックフィルム層としては、従来から知られたシーラント樹脂を使用できる。例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)などのポリエチレン、酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマーなどのポリオレフィン樹脂などがあげられる。なかでも低温シール性の観点からポリエチレン系樹脂が好ましく、安価であることからポリエチレンが特に好ましい。シーラント層の厚みは、特に限定されないが、包装材料への加工性やヒートシール性などを考慮して10~60μmの範囲が好ましく、15~40μmの範囲がより好ましい。また、シーラント層に高低差5~20μmの凸凹を設けることで、シーラント層に滑り性や包装材料の引き裂き性を付与することが可能である。
【0075】
紙層としては、天然紙や合成紙などが挙げられる。第1および第2のシーラント層は、上述のシーラント層と同様の材料で形成することができる。基材層および紙層の外表面または内面側には、必要に応じて印刷層を設けてもよい。
【0076】
「他の層」は、公知の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、易接着コート剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤などを含んでいてもよい。また「他の層」は、その他の材料と積層する場合の密着性を向上させるために、前処理としてフィルムの表面をコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、薬品処理、溶剤処理などしたものであってもよい。
【0077】
本発明の包装体の態様としては、三方シール袋、四方シール袋、ガセット包装袋、ピロー包装袋、ゲーベルトップ型の有底容器、テトラクラッシク、ブリュックタイプ、チューブ容器、紙カップ、蓋材、など種々ある。また、本発明の包装体に易開封処理や再封性手段を適宜設けてあってもよい。
【0078】
本発明の包装体は、主に食品、洗剤、薬剤を充填する包装体として工業的に使用することができる。具体的な用途としては、洗剤、薬剤として、洗濯用液体洗剤、台所用液体洗剤、浴用液体洗剤、浴用液体石鹸、液体シャンプー、液体コンディショナー、医薬用タブレット等が挙げられる。また、上記の容器を包装する2次包装体にも使用できる。特に前記2液型接着剤を用いているため、溶出が問題となるような食品、医薬品用途の包装体として好適に使用することができる。
【実施例
【0079】
次に、本発明を、実施例及び比較例により具体的に説明する。例中断りのない限り、「部」「%」は質量基準である。
【0080】
(合成例1)
(ポリエステルポリオールの合成例)
攪拌機、温度センサー、窒素ガス導入管および精留等を備えたガラス製四つ口フラスコに、エチレングリコール205.0g、アジピン酸600.0gを仕込み、常圧窒素気流下にて徐々に昇温し脱水反応を行いながら240℃まで昇温しエステル化反応を行った。その後、精留塔を取り外してガラス製コンデンサーに切り替え、窒素ガス導入管から真空ポンプにラインをつなぎ、5kPaの減圧下で酸価2.0mgKOH/gになるまで反応を継続しポリエステルポリオール(P1)を得た。得られたポリエステルポリオール(P1)の水酸基価を表1の合成例1に示す。
【0081】
(合成例2~6)
(ポリエステルポリオールの合成例)
表1に示した原料を使用した以外は、合成例1と同様に合成し、(P2)~(P6)を得た。
【0082】
(合成例7)
(ポリエステルポリオールとトルエンジイソシアネートの反応生成物(B-1)の合成例)
攪拌翼、温度センサー、窒素ガス導入管およびコンデンサーを備えたガラス製四つ口フラスコに、合成例1で得たポリエステルポリオール(P1)100gを仕込み、攪拌しながら50℃まで昇温した。次いでトルエンジイソシアネート2.74gを仕込み80℃まで昇温し、NCO反応率が0.8%以上になるまで反応を継続し、ポリエステルポリオール(P1)とトルエンジイソシアネートの反応生成物(B-1-1)を得た。合成に使用したポリオールの水酸基モルとトルエンジイソシアネートNCOモルの比NCO/OHおよび得られた反応生成物(B-1-1)の数平均分子量を表2に示す。
【0083】
(合成例8~12)
表2に示した原料を使用した以外は、合成例7と同様に合成し、(B-1-2)~B-1-6)を得た。
【0084】
(合成例13)
(硬化剤 反応生成物(B-1)と、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとの反応生成物(B-2)の合成例)
攪拌翼、温度センサー、窒素ガス導入管およびコンデンサーを備えたガラス製四つ口フラスコに、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート83.0g、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体19.0gを仕込み、攪拌しながら60℃まで加熱した。その後、合成例6で得た反応生成物(B-1-1)100gを発熱に注意しながら徐々に仕込み、70℃まで昇温した。4時間反応を継続し、硬化剤(B1)を得た。得られた硬化剤(B1)のNCO%を表3に示す。
【0085】
(合成例14~比較例H2)
表3に示した原料を使用した以外は、合成例14と同様に合成し、硬化剤(B2)~(B7)、(H1)~(H2)を得た。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】

【0089】
(硬化剤(B)の経時濁り)
実施例で得た硬化剤(B)を気泡が入らないように透明なガラス瓶に採取し、密閉した後、デシケーター中に1か月静置した。保管後の外観を観察し、保管前の外観と比較した際の濁りの変化の程度により以下の評価を行った。
評価◎:保管前後で全く濁りがない。
評価○:保管後に僅かに濁りがあるが、保管前に比べて変化がほとんどない。
評価△:保管後に僅かに濁りがあり、保管前に比べて濁りの程度が増している。
評価×:保管前から濁っており、保管後も同様に濁っている。
【0090】
(溶出試験)
主剤として、合成例5のポリエステルポリオールP5を使用した。
主剤と、実施例で得た硬化剤(B)とを表4に示す割合で配合した後、PETフィルム(厚さ:12μm)に、無溶剤ラミネーターで塗工ロール温度40℃、加工スピード10m/min、塗布量3.0g/m2の条件で塗布した。この塗布面に無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルムを貼合し、ラミネートフィルムを作製した。得られたラミネートフィルムを40℃の恒温槽に3日間保存した後、120mm×220mmで切り取り、無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルムが内側になるように折り曲げ、3方方向を10mm幅で0.1MPa、200℃、1秒間でヒートシールして、内容物が2dm2接触するパウチを作製した。内容物は3%酢酸水溶液を100mlとした。充填したパウチをレトルト試験機で121℃、30分間滅菌処理した。その後、酢酸水溶液を取り出し、液体黒的グラフ質量分析により、芳香族アミン類(PAA)の定量測定を行った。測定値から換算し、PAA溶出量(μg/kg-food)を算出した。 PAA溶出量により、以下の評価を行った。
評価◎:5未満
評価○:5以上10未満
評価×:10以上
【0091】
【表4】

【0092】
これにより、硬化剤(B1)~(B7)は、経時濁りはなく、また接着剤として使用したときに芳香族アミン類(PAA)の溶出量は10未満であった。一方比較例1は、経時濁りが発生した。比較例2は、芳香族アミン類(PAA)の溶出量が10以上であった。