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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】画像読取装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/191 20060101AFI20221220BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20221220BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H04N1/191
G06T1/00 430J
H04N1/00 002A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018205736
(22)【出願日】2018-10-31
(65)【公開番号】P2020072396
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(72)【発明者】
【氏名】長野 竜明
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 達也
(72)【発明者】
【氏名】久保 宏
(72)【発明者】
【氏名】中田 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】小菅 勝弘
(72)【発明者】
【氏名】小野 智彦
(72)【発明者】
【氏名】橋本 歩
(72)【発明者】
【氏名】白土 寛貴
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】塚原 元
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-054834(JP,A)
【文献】特開2010-010826(JP,A)
【文献】特開2017-028642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04 - 1/207
G06T 1/00
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取位置上の光を受光することで、透明部材と前記透明部材に対向する白色部材との間に搬送される原稿の画像読み取りを行う画像読取部材と、
前記画像読取部材による画像読み取りの際に、前記透明部材を通じて前記白色部材側へ光を照射する光源と、
前記透明部材と前記白色部材との間に前記原稿が搬送されていない状態で前記画像読取部材により受光した前記読取位置上の光に基づいて、前記透明部材に付着している汚れと前記白色部材に付着している汚れとを検知する検知部と、
を備え
前記検知部は、前記白色部材に映る前記汚れの影の濃度傾斜が検知された場合には前記透明部材に前記汚れが付着していると判定し、前記白色部材に映る前記汚れの影の濃度傾斜が検知されなかった場合には前記白色部材に前記汚れが付着していると判定することを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記検知部による判別結果に基づいて、前記透明部材の清掃を促すアラート、前記白色部材の清掃を促すアラート、前記透明部材及び前記白色部材の両方の清掃を促すアラートのいずれかを報知する清掃アラート報知部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記画像読取部材は、前記原稿の搬送方向である副走査方向に前記読取位置を移動させながら、前記透明部材と前記白色部材との間に前記原稿が搬送されていない状態で画像読み取りを行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記検知部は、前記画像読取部材によって読み取られた画像の前記副走査方向の濃度変化に基づいて、前記汚れの影の濃度傾斜の有無を判定することを特徴とする請求項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記検知部は、前記画像読取部材によって読み取られた前記画像の前記副走査方向の濃度変化において前記白色部材の濃度と前記汚れの濃度との境界付近に濃度傾斜が検知された場合に、前記透明部材に前記汚れが付着していると判定することを特徴とする請求項に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記読取位置を挟んで前記副走査方向に配列された複数の前記光源のうちの少なくとも1つの発光量を制御する光源制御部を備えることを特徴とする請求項又はに記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記原稿の搬送方向である副走査方向に直交する主走査方向に配列された複数の前記光源の発光パターンを制御する光源制御部を備え、
前記画像読取部材は、複数の異なる前記発光パターンにおいて、前記透明部材と前記白色部材との間に前記原稿が搬送されていない状態で前記読取位置上の光を受光することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記検知部は、前記画像読取部材によって読み取られた画像の前記主走査方向の濃度変化に基づいて、前記汚れの影の濃度傾斜の有無を判定することを特徴とする請求項に記載の画像読取装置。
【請求項9】
前記検知部は、前記画像読取部材によって読み取られた前記画像の前記主走査方向の濃度変化において前記白色部材の濃度と前記汚れの濃度との境界付近に濃度傾斜が検知された場合に、前記透明部材に前記汚れが付着していると判定することを特徴とする請求項に記載の画像読取装置。
【請求項10】
請求項1からのいずれか1つに記載の画像読取装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿画像を光学的に読み取る画像読取装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なマルチファンクションプリンタ(MFP:Multifunction Printer)では、プリンタの上に画像読取装置が設置され、その上に自動原稿搬送装置(ADF:Auto Document Feeder)が搭載されている。
【0003】
ADFを備えた画像読取装置では、画像読取装置のコンタクトガラス表面やコンタクトガラスに対向する原稿読取ガイドの表面(背景ガイド板)に、糊や修正液などの粘着物が付着してしまうことがある。
【0004】
さらに、この粘着物に、原稿通紙時に原稿に固着しているトナー、原稿上のインク又は鉛筆の黒鉛、原稿が運んできたゴミ(例えば、搬送ローラのゴムカスなど)等が付着すると、粘着物は黒くなることがある。黒い粘着物が付着した状態でADFを使用した画像読み取りを行うと、読み取り画像上に原稿の搬送方向に延びる黒いスジが発生してしまう。
【0005】
特許文献1には、コンタクトガラス表面や背景ガイド板に付着しているゴミを検知して画像データ中のゴミスジ画素の位置を特定し、画像データに対してゴミスジ補正を行う技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1に開示されている技術は、コンタクトガラスと背景ガイド板のどちらに汚れ(上記の黒い粘着物やゴミなど)が付着しているかを判別することができないという課題がある。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、コンタクトガラスと背景ガイド板のどちらに汚れが付着しているかを判別することができる画像読取装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る画像読取装置は、読取位置上の光を受光することで、透明部材と前記透明部材に対向する白色部材との間に搬送される原稿の画像読み取りを行う画像読取部材と、前記画像読取部材による画像読み取りの際に、前記透明部材を通じて前記白色部材側へ光を照射する光源と、前記透明部材と前記白色部材との間に前記原稿が搬送されていない状態で前記画像読取部材により受光した前記読取位置上の光に基づいて、前記透明部材に付着している汚れと前記白色部材に付着している汚れとを検知する検知部とを備え、前記検知部は、前記白色部材に映る前記汚れの影の濃度傾斜が検知された場合には前記透明部材に前記汚れが付着していると判定し、前記白色部材に映る前記汚れの影の濃度傾斜が検知されなかった場合には前記白色部材に前記汚れが付着していると判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コンタクトガラスと背景ガイド板のどちらに汚れが付着しているかを判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の概略構成を示す正面断面図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係るADFの概略構成図である。
図3】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置における装置本体及びADFを示す斜視図であり、ADFが閉じた状態を示す図である。
図4】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置における装置本体及びADFを示す斜視図であり、ADFが開いた状態を示す図である。
図5】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の第1コンタクトガラス(DFガラス)近傍の概略構成図である。
図6】本発明の第1の実施の形態において、第1コンタクトガラス(DFガラス)に汚れが付着している場合に発生する黒スジを説明するための図である。
図7】本発明の第1の実施の形態において、背景ガイド板に汚れが付着している場合に発生する薄暗いスジを説明するための図である。
図8】本発明の第1の実施の形態において、第1コンタクトガラス(DFガラス)に汚れが付着している状態で、副走査方向成分の光によって背景ガイド板に汚れの影が形成される様子を説明するための図である。
図9】本発明の第1の実施の形態において、第1コンタクトガラス(DFガラス)に汚れが付着している状態で、主走査方向成分の光によって背景ガイド板に汚れの影が形成される様子を説明するための図である。
図10】本発明の第1の実施の形態において、主走査方向成分及び副走査方向成分の両方の光によって、背景ガイド板に汚れの影が映る様子を説明するための図である。
図11】本発明の第1の実施の形態において、背景ガイド板に汚れが付着している状態を説明するための図である。
図12】本発明の第1の実施の形態において、汚れ付着状態(1)で読み取られる画像の濃度変化を説明するための図である。
図13】本発明の第1の実施の形態において、汚れ付着状態(2)で読み取られる画像の濃度変化を説明するための図である。
図14】本発明の第1の実施の形態において、汚れ付着状態(3)で読み取られる画像の濃度変化を説明するための図である。
図15】本発明の第1の実施の形態において、汚れ付着状態(4)で読み取られる画像の濃度変化を説明するための図である。
図16】本発明の第1の実施の形態において、汚れ付着状態(5)で読み取られる画像の濃度変化を説明するための図である。
図17】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の制御構成の一例を示すブロック図である。
図18】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の汚れ検知処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図19】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の汚れ位置検知処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図20】本発明の第2の実施の形態において、第1コンタクトガラス(DFガラス)に汚れが付着している状態で読み取られる画像の濃度変化を説明するための図である。
図21】本発明の第3の実施の形態において、第1コンタクトガラス(DFガラス)に汚れが付着している状態で読み取られる画像(1回目の点灯状態)の濃度変化を説明するための図である。
図22】本発明の第3の実施の形態において、第1コンタクトガラス(DFガラス)に汚れが付着している状態で読み取られる画像(2回目の点灯状態)の濃度変化を説明するための図である。
図23】本発明の第3の実施の形態において、第1コンタクトガラス(DFガラス)に汚れが付着している状態で読み取られる画像(3回目の点灯状態)の濃度変化を説明するための図である。
図24】本発明の第3の実施の形態に係る画像形成装置の汚れ検知処理の流れを説明するためのフローチャートである。
図25】本発明の第3の実施の形態に係る画像形成装置の汚れ位置検知処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、本実施の形態においては、画像読取装置を、自動原稿搬送装置を備えた画像形成装置、例えば、電子写真方式のデジタル複合機に適用した場合を例示している。
【0012】
なお、複写方法としては、例えば、一般的な静電作像方法を用いて画像を形成するフルカラーの複写方法や、モノクロ画像を形成する複写方法などが挙げられる。また、作像方法としては、電子写真方式以外にも、例えば、インクジェット方式などを用いることも可能である。さらに、画像形成装置としては複写機に限定されず、例えば、FAX、スキャナ装置、あるいは、これらの機器を複合的に備えたMFPなどのオフィス機器であってもよい。
【0013】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態について説明する。まず、本発明の第1の実施の形態に係る自動原稿搬送装置(ADF)5を備えた画像形成装置1の構成について説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施の形態に係る画像形成装置1は、給紙装置2、画像形成部3、及び画像読取部4を有する装置本体1Mと、装置本体1M上に配置されたADF5とを備えたデジタル複合機である。画像読取部4及びADF5は、画像読取装置6を構成している。
【0015】
給紙装置2は、それぞれカットシート状の転写紙Pを積層状態で収納可能な複数段の給紙カセット21A,21B,21Cを有している。各給紙カセット21A,21B,21Cには、例えば複数のシートサイズから予め選択されたシートサイズの転写紙P(例えば白紙)が、縦又は横の給紙方向に向けて収容されるようになっている。
【0016】
給紙装置2は、給紙カセット21A,21B,21Cに収納された転写紙Pをそれぞれの最上層側から順次ピックアップして分離給紙する給紙装置22A,22B,22Cを有している。給紙装置2には、更に各種ローラ23等が設けられており、これらによって、各給紙装置22A,22B,22Cから給紙された転写紙Pを画像形成部3の所定の画像形成位置まで搬送する給紙経路24が形成されている。
【0017】
画像形成部3は、露光装置31と、感光体ドラム32K,32Y,32M,32Cと、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)及びシアン(C)のトナーが充填された現像装置33K,33Y,33M,33Cとを備えている。また、画像形成部3は、一次転写部34と、二次転写部35と、定着部36とを備えている。
【0018】
露光装置31は、例えば、画像読取装置6で読み取った画像に基づいて各色の露光用のレーザ光Lを生成するようになっている。また、露光装置31は、レーザ光を各色の感光体ドラム32K,32Y,32M,32Cを露光して、各感光体ドラム32K,32Y,32M,32Cの表層部に読取画像に対応した各色の静電潜像を形成するようになっている。
【0019】
現像装置33K,33Y,33M,33Cは、それぞれ対応する感光体ドラム32K,32Y,32M,32Cに薄層状のトナーを近接させるように供給して、静電潜像をトナーにより顕像化する現像を行うようになっている。
【0020】
画像形成部3は、感光体ドラム32K,32Y,32M,32C上に現像されたトナー像を一次転写部34に一次転写し、一次転写部34に近接する二次転写部35でそのトナー像を転写紙Pに二次転写するようになっている。また、画像形成部3は、転写紙Pに二次転写したトナー像を定着部36により加熱・加圧して溶融させ、転写紙Pにカラー画像を定着させて記録するようになっている。定着部36に搬送された転写紙Pは、定着部36内における加圧や加熱によってフルカラー画像が定着された後、定着部36から排紙ローラ対に送られ、機外の排紙トレイ38上に排出されるようになっている。
【0021】
画像形成部3は、給紙装置2から給紙経路24を経て搬入された転写紙Pを二次転写部35側に搬送する搬送経路39Aを有している。この搬送経路39Aにおいては、まず、レジストローラ対37において、転写紙Pの搬送タイミング及び搬送速度が調整されるようになっている。そして、転写紙Pは、一次転写部34及び二次転写部35でのベルト速度に同期した状態で二次転写部35及び定着部36を通過した後、排紙トレイ38上に排紙されるようになっている。
【0022】
画像形成部3は、手差トレイ25上に載置される転写紙をレジストローラ対37よりも上流側で搬送経路39Aに給紙する手差給紙経路39Bを併有している。
【0023】
二次転写部35及び定着部36の下方には、それぞれ複数の搬送ローラ及び搬送ガイド等からなるスイッチバック搬送路39C及び反転搬送路39Dが配設されている。
【0024】
スイッチバック搬送路39Cは、転写紙Pの両面に画像を形成する場合に、任意の一面に画像定着が済んだ転写紙Pを一端から進入させた後に、後退(進入時とは逆方向に移動)させるスイッチバック搬送を行うようになっている。
【0025】
反転搬送路39Dは、スイッチバック搬送路39Cによりスイッチバック搬送された転写紙Pの表裏を反転させて、レジストローラ対37に再度給紙するようになっている。
【0026】
これらスイッチバック搬送路39C及び反転搬送路39Dにより、一面に対する画像定着処理を終えた転写紙Pは、その進行方向を逆向きに切り替えられた後に表裏反転されて、再び二次転写ニップに進入する。そして、転写紙Pは、他面にも画像の二次転写処理と定着処理とが施された後、排紙トレイ38上に排紙されるようになっている。
【0027】
画像読取部4は、光源や光学素子を有する読取モジュールとミラー部材を搭載した第1キャリッジ41と、ミラー部材を搭載した第2キャリッジ42と、結像レンズ43と、撮像部44と、第1コンタクトガラス45とを備えている。これらは装置本体1M側に配設され、第1コンタクトガラス45上を搬送される記録媒体としての原稿シートSの片側の画像面(例えば表側の画像面)の画像読み取りする第1面読取部40を構成している。ここにいう第1面とは、自動搬送される原稿シートSの片面、例えば表側の画像面である。また、画像読取部4による画像読み取りの際に、第1コンタクトガラス45を通じて第1コンタクトガラス45の上方へ光を照射する光源(例えば、後述する第1光源301及び第2光源302)が設けられている。この光源は、例えば第1キャリッジ41内部に設けられており、第1キャリッジ41とともに移動しながら、読取位置上に光を照射するようになっている。
【0028】
画像読取部4には、原稿シートSが載置される第2コンタクトガラス46と、原稿シートSの一辺の突当て及び位置決めが可能な突当部材47a等とが併設されている。
【0029】
第1キャリッジ41は、第1コンタクトガラス45及び第2コンタクトガラス46の下方に、図中の左右方向に移動可能に及び位置制御可能に設けられている。第1キャリッジ41は、光源からの照明光を画像読取部材であるミラー部材で反射させて第1コンタクトガラス45又は第2コンタクトガラス46を透過させることで、第1コンタクトガラス45又は第2コンタクトガラス46上の原稿シートSに光を照射することができるようになっている。なお、第1コンタクトガラス45及び第2コンタクトガラス46は光透過性を有する透明部材であり、その材質はガラスに限定されるものでない。
【0030】
原稿シートSで反射した反射光は、第1キャリッジ41及び第2キャリッジ42に搭載された各ミラー部材を経由して画像読取部材である結像レンズ43により結像され、画像読取部材である撮像部44にてその結像した画像が読み取られるようになっている。
【0031】
画像読取部4は、光源点灯状態で第1キャリッジ41及び第2キャリッジ42を例えば2:1の速度比で移動させつつ、第2コンタクトガラス46上に置いた原稿シートSの画像面を走査することができるようになっている。そして、画像読取部4は、この走査時に撮像部44により原稿画像を読み取ることで、固定原稿読取機能(いわゆるフラットベッドスキャナ機能)を発揮できるようになっている。
【0032】
画像読取部4は、第1キャリッジ41を第1コンタクトガラス45の直下の定位置に停止させることができるようになっている。そして、画像読取部4は、光源や反射ミラー等からなる光学系を移動させることなく、自動原稿搬送中の原稿シートSの第1面の画像を読み取る移動原稿読取機能(いわゆるDFスキャナ機能)を発揮できるようになっている。
【0033】
ADF5は、画像形成装置1の装置本体1Mの上部にヒンジ機構を介して開閉動作可能に連結されている。ADF5は、画像読取部4における第1コンタクトガラス45及び第2コンタクトガラス46を露出させる開放位置と、第1コンタクトガラス45及び第2コンタクトガラス46を覆う閉止位置との間で回動操作されるようになっている。
【0034】
ADF5は、シートスルー方式の自動原稿搬送装置として構成されている。ADF5は、原稿載置台である原稿テーブル51と、各種ローラ及びガイド部材等からなる原稿搬送部52と、画像読み取り後の原稿シートSを集積する原稿排紙トレイ53とを備えている。原稿テーブル51は、カットシート状の少なくとも1枚の原稿シートS、例えば複数枚の原稿シートSの原稿束を載置可能になっている。
【0035】
図2に示すように、ADF5は、複数の機能部として、原稿セット部A、分離給送部B、レジスト部C、ターン部D、読取搬送部E、排出部F、及びスタック部Gを備えている。上記の複数の機能部のうち、分離給送部B、レジスト部C、ターン部D、読取搬送部E、及び排出部Fの機能は、主に原稿搬送部52によって実現される。
【0036】
原稿搬送部52は、少なくともその上方を開閉可能とした給紙カバー部12によって覆われている。給紙カバー部12は、原稿シートSの先端が給紙カバー部12の内部に臨むように給紙口55aを有し、給紙カバー55を開閉する開閉機構13と、給紙カバー55の開状態及び閉状態を検知する開閉センサ18とを含んで構成されている。また、給紙カバー部12は、給紙口55aよりも内部に原稿テーブル51の先端が位置するように、原稿テーブル51の先端の上方を覆っている。
【0037】
開閉機構13は、回動軸及びこの回動軸を支持する軸受などの機構により構成されており、回動軸を中心として給紙カバー55を原稿テーブル51及び原稿搬送部52から離隔する方向に開閉できるようになっている。原稿搬送部52で、搬送途中の原稿シートSがローラなどの構成要素に押し込まれて詰まってしまった場合、ユーザが給紙カバー55を開いて、詰まった原稿シートSを取り出すジャム処理ができるようになっている。
【0038】
開閉センサ18は、例えば給紙カバー部12の内部に設けられており、給紙カバー部12の給紙カバー55の開状態及び閉状態を検知するようになっている。この開閉センサ18は、給紙カバー55の開状態及び閉状態を検知するものであればよく、例えば、給紙カバー55が開かれたときに遮蔽部材が退避し光を透過してオンとなる透過型フォトセンサからなる公知の素子で構成される。また、この開閉センサ18は、スプリングやヒンジレバーを備えたアクチュエータの動作を感知するマイクロスイッチであってもよい。
【0039】
原稿搬送部52は、給紙口55aから原稿排紙トレイ53の上方の排紙口55bに至る範囲が、給紙カバー部12の給紙カバー55等に形成されたリブ55cや他のガイド部材等により覆われ、原稿搬送経路56(原稿シートSの原稿搬送方向を基準として、上流端である給紙口55aから下流端である排紙口55bに至る、原稿が搬送される経路)を形成している。
【0040】
原稿搬送部52は、分離センサ11、突当センサ85、原稿幅センサ86、読取入口センサ87、レジストセンサ88、排紙センサ89を、原稿シートSの搬送方向上流側から下流側へと、この順に配置している。これらのセンサは、原稿搬送経路56における原稿シートSの位置や形状を検知するものである。特に、読取入口センサ87、レジストセンサ88、排紙センサ89は、原稿シートSの搬送距離や搬送速度等の制御並びにジャム検知等に用いられるようになっている。
【0041】
原稿セット部Aは、原稿シートSの原稿束の給送方向の先端が原稿突当爪28に突き当てられた状態で、原稿テーブル51上に原稿束がセットされるようになっている。原稿シートSが片面原稿の場合には、表面を上向きにした状態で原稿テーブル51に原稿束がセットされるようになっている。
【0042】
原稿突当爪28は、原稿束が原稿テーブル51にセットされた場合に原稿束の給送方向の先端が原稿突当爪28に突き当たる状態となる姿勢(ホームポジション)と、原稿シートSを給送させるためにホームポジションから下降した姿勢と、を取り得るよう構成されている。このような原稿突当爪28の姿勢の変更は、例えば、後述する読取モータ103の駆動により行われる。
【0043】
原稿突当爪28は、原稿束が原稿テーブル51にセットされていない場合には、図2中に点線で描かれているように上昇した姿勢(ホームポジション)になっている。また、原稿突当爪28は、原稿束が原稿テーブル51にセットされているが、後述する操作部108のスタートボタンが押下されていない場合にもホームポジションに位置する。
【0044】
一方、原稿突当爪28は、原稿束が原稿テーブル51にセットされて、後述する操作部108のスタートボタンが押下された場合には、図2中に実線で描かれているようにホームポジションから下降した姿勢を取り、給紙可能状態になる。そして、原稿テーブル51にセットされていた原稿束の全ての原稿シートSの読取が完了すると、原稿突当爪28はホームポジションに戻る。つまり、原稿突当爪28は、原稿シートSが搬送されていない間は、常にホームポジションに位置している。
【0045】
分離給送部Bは、原稿セット部Aの原稿テーブル51に載置された原稿シートSの原稿束から最上位のものを1枚ずつ分離して、給紙部55aから原稿搬送経路56内に給送するようになっている。
【0046】
レジスト部Cは、分離給送部Bから順次給送される原稿シートSを一次突当てにより所要の搬送姿勢に整合する機能と、その整合後の原稿シートSを下流側に搬送する機能を有している。
【0047】
ターン部Dは、レジスト部Cにより搬送される原稿シートSを表裏面が反転するよう搬送し、原稿シートSの表面を図中の下向きにする反転搬送機能を有している。
【0048】
読取搬送部Eは、ターン部Dからの原稿シートSを第1コンタクトガラス45上を通過させつつ副走査方向(原稿幅方向である主走査方向に対し直交する方向)に所定速度で搬送するようになっている。なお、副走査方向は、第1コンタクトガラス45上で搬送される原稿シートSの搬送方向と同じ方向であり、原稿シートSの原稿幅方向である主走査方向に対し直交する方向である。
【0049】
排出部Fは、読取搬送部Eで搬送されて原稿画像読み取りが完了した原稿シートSをスタック部G側に排出するようになっている。
【0050】
スタック部Gは、排出部Fから順次排紙される原稿シートSをその表面を下向きにしつつ、原稿セット部Aの下方に配置された原稿排紙トレイ53に順次積載するようになっている。スタック部Gに積載される原稿シートSは、原稿セット部Aに載置したときと同じ頁順序であって、その束全体としては原稿面の向きが上下逆に積み重ねられるようになっている。
【0051】
これら原稿セット部A、分離給送部B、レジスト部C、ターン部D、読取搬送部E、排出部F、及びスタック部Gは、後述する自動原稿搬送制御用のコントローラ部100によって制御されるようになっている。
【0052】
ADF5は、原稿テーブル51に載置された原稿シートSの原稿束から最上位の原稿シートSを1枚ずつ分離して、原稿搬送部52により、第1コンタクトガラス45上を通る所定の搬送経路で搬送するようになっている。さらに、ADF5は、原稿シートSが第1コンタクトガラス45を通過する際に画像読取部4により原稿シートSの画像を読み取った後、原稿シートSを原稿排紙トレイ53に排紙するようになっている。
【0053】
原稿シートSが上向きに載置される原稿テーブル51は、原稿搬送部52側を原稿シートSの先端側として、その先端側が下方、その後端側が上方となるように傾斜して配置されている。
【0054】
また、ADF5は、原稿テーブル51において給送方向に沿って離隔して設けられた原稿長さセンサ81A~81Cを有している。原稿長さセンサ81A~81Cは、例えば、公知の反射型フォトセンサで構成されているが、これに限定されず、スプリングやヒンジレバーを備えたアクチュエータの動作を感知するマイクロスイッチやフォトセンサであってもよい。
【0055】
原稿長さセンサ81A~81Cは、原稿シートSの原稿束の先端がホームポジションに位置する原稿突当爪28に突き当たり、原稿テーブル51上に原稿束がセットされた状態で、原稿束の概略の長さを検知するようになっている。ここで、原稿突当爪28は、原稿テーブル51上にセットされる原稿束の姿勢を整えるようになっている。
【0056】
ADF5は、原稿シートSの原稿搬送方向を基準として給紙口55a側の上流端である原稿テーブル51の先端上部に、原稿テーブル51に載置された原稿シートSにより回動する原稿セットフィラー57を有している。
【0057】
また、ADF5は、原稿テーブル51の先端寄りの底面付近に、原稿セットフィラー57の先端部の移動軌跡上の最下部を検知することによって、原稿テーブル51に原稿シートSがセットされたか否かを検知する原稿セットセンサ82を有している。原稿セットセンサ82は、原稿セットフィラー57が回動して原稿セットセンサ82から外れたか否かを検知することにより、原稿テーブル51にセットされた原稿シートSの有無を検知する。
【0058】
また、ADF5は、平坦で板状に形成され第2コンタクトガラス46に対向して配置された圧板部27を備えている。圧板部27は、読み取られる本や原稿を第2コンタクトガラス46に圧接するよう構成されている。
【0059】
原稿搬送部52は、給紙口55aよりも内側の近傍に配置された呼び出しローラとしてのピックアップローラ58と、原稿搬送経路56を挟んで対向するように配置された無端状の給紙ベルト59及びリバースローラ60(給紙部)とを有している。
【0060】
ピックアップローラ58は、カム機構を介して上下動し、接触位置において原稿テーブル51に積載された原稿シートSのうち、最上位側から数枚(理想的には1枚)の原稿シートSを摩擦搬送してピックアップして順次分離ユニットに呼び込むようになっている。ここで、分離ユニットは、駆動ローラ71、従動ローラ72、給紙ベルト59、及びリバースローラ60からなる。
【0061】
給紙ベルト59は、後述する給紙モータ102により駆動される駆動ローラ71により原稿シートSの搬送方向に回転するようになっている。
【0062】
リバースローラ60は、給紙ベルト59の給送方向と逆方向に回転可能であり、最上位の原稿シートSとその下の原稿シートSとを分離して、最上位の原稿シートSのみを給紙できる構成となっている。また、リバースローラ60は、トルクリミッタを内蔵している。リバースローラ60は、給紙ベルト59に対し所定圧で接しており、給紙ベルト59と直接に接しているか、又は1枚の原稿シートSを介して接している状態では、トルクリミッタが作動し、給紙ベルト59に連れ回りするようになっている。
【0063】
リバースローラ60は、複数枚の原稿シートSが給紙ベルト59とリバースローラ60との間に進入すると、反時計方向への連れ回り力がトルクリミッタの設定トルクに対応した力よりも低くなる。これにより、リバースローラ60は、本来の駆動方向である時計方向に回転し、余分な原稿シートSを押し戻して、原稿シートSが重送されるのを防止するようになっている。
【0064】
給紙ベルト59とリバースローラ60との作用により1枚に分離された原稿シートSは、給紙ベルト59によって更に送られ、突当センサ85によって先端が検知され、更に進んで停止している後述する搬送ローラ61に突き当たる。突当センサ85は、給紙ベルト59と搬送ローラ61との間に配置されており、原稿シートSの先端及び後端を検知するよう構成されている。
【0065】
また、原稿搬送部52は、原稿搬送経路56を挟んで対向するように原稿シートSをニップして搬送するプルアウトローラとしての搬送ローラ61と、読取入口ローラとしての搬送ローラ63と、読取出口ローラとしての搬送ローラ65と、を有している。各搬送ローラは、例えば原稿搬送経路56を挟むように互いに径方向に近接してニップを形成する各一対の又は大小のローラを含んで構成されているが、軸方向における各ローラの配設数は任意である。これらの搬送ローラの配置数や配置場所は、原稿搬送経路56の経路設計や、ADF5が許容する原稿シートSの最小サイズの原稿搬送方向の長さ等に応じて適宜設定される。
【0066】
原稿シートSは、突当センサ85で検知されてから所定の距離だけ送られ、搬送ローラ61に所定量の撓みを持って押し当てられる。この状態で後述する給紙モータ102を停止させることにより、給紙ベルト59の駆動が停止する。
【0067】
その際に、後述するピックアップ昇降モータ101の回転により、ピックアップローラ58が原稿シートSの上面から退避する。このようにして、原稿シートSを給紙ベルト59の搬送力のみで送ることにより、原稿シートSの先端が搬送ローラ61の上下ローラ対のニップに進入し、先端の整合(スキュー補正)が行われる。
【0068】
搬送ローラ61は、後述するプルアウトモータ113の逆転により駆動されるようになっている。このプルアウトモータ113の逆転時には、搬送ローラ61は駆動されるが、ピックアップローラ58と給紙ベルト59は、駆動されないようになっている。このように、搬送ローラ61を独立した駆動源であるプルアウトモータ113によって駆動することにより、モータの立ち上げ時間及び立ち下げ時間を短縮することが可能となり、生産性が向上する。
【0069】
搬送ローラ61は、ピックアップローラ58の駆動タイミングに応じて、給紙した原稿シートSの先端を突き当ててスキューを補正するとともに、補正後の原稿シートSを搬送方向に引き出して搬送するようになっている。
【0070】
なお、搬送ローラ61の駆動によってレジスト部Cからターン部Dに搬送される原稿シートSの搬送速度は、読取搬送部Eにおける原稿シートSの搬送速度よりも高速に設定されている。これにより、原稿シートSを読取搬送部Eへ送り込む処理時間の短縮が図られるようになっている。
【0071】
また、搬送ローラ61の下流側には、原稿幅センサ86が配置されており、搬送ローラ61により搬送された原稿シートSの搬送方向に直行する幅方向のサイズを検知する。原稿幅センサ86は、例えば、原稿シートSの幅方向に沿って複数並べた発光素子と、この発光素子と原稿搬送経路56を挟んで対向位置に配置した受光素子とで構成することが可能である。なお、原稿シートSの搬送方向の長さは、原稿シートSの先端及び後端を突当センサ85で読み取ることにより、モータのパルスカウントから検知することができる。
【0072】
ADF5は、原稿シートSの先端が読取入口センサ87により検出されると、搬送ローラ63の上下ローラ対のニップに原稿シートSの先端が進入する前に、原稿シートSの搬送速度を所定の速度にするために減速を開始する。同時に、ADF5は、読取モータ103を正転駆動して搬送ローラ63及び搬送ローラ65を駆動する。
【0073】
搬送ローラ63は、原稿読取ガイド91に向かって原稿シートSを搬送するようになっている。搬送ローラ65は、原稿読取ガイド91と対向する画像読取部4の第1コンタクトガラス45を通過し読み取りが完了した原稿シートSを排出部F側に搬送するようになっている。原稿読取ガイド91は、画像読取部4の第1コンタクトガラス45を通過中の原稿シートSをガイドするようになっている。
【0074】
さらに、原稿搬送部52は、排紙ローラ67と、反転ローラ68と、分岐爪90と、を含む。
【0075】
排紙ローラ67は、搬送ローラ65で搬送された原稿シートSを、原稿排紙トレイ53に排出するようになっている。また、この排紙ローラ67は、反転ローラ68及び分岐爪90によって反転した原稿シートSを搬送ローラ61に向かって搬送するようになっている。
【0076】
反転ローラ68は、原稿シートSの表面の読み取りが終わり、更に裏面の読み取りを行う場合に、原稿シートSを原稿排紙トレイ53に排出せずに、分岐爪90をガイドにして搬送ローラ61に向かって搬送するよう、原稿シートSを反転するようになっている。
【0077】
図3及び図4に示すように、画像形成装置1は、給紙装置2、画像形成部3、及び画像読取部4を有する装置本体1Mと、装置本体1M上に配置されたADF5とを備えたデジタル複合機である。ADF5は、画像形成装置1の装置本体1Mの上部にヒンジ機構を介して開閉動作可能に連結されている。
【0078】
図3にはADF5が閉じた状態が示されている。ADF5が閉じた状態では、ADF5は、画像読取部4の上部に位置する第1コンタクトガラス45及び第2コンタクトガラス46を覆う閉止位置に配置される。
【0079】
図4にはADF5が開いた状態が示されている。ADF5が開いた状態では、ADF5は、画像読取部4の上部に位置する第1コンタクトガラス45及び第2コンタクトガラス46を露出させる開放位置に配置される。
【0080】
ADF5の下部の第1コンタクトガラス45と対向する位置には、原稿読取ガイド91の一部が外部に露出している。以下、原稿読取ガイド91の露出部分を背景ガイド板200ともいう。
【0081】
背景ガイド板200は、ADF5が閉じた状態では第1コンタクトガラス45と対向するように配置される。
【0082】
ADF5を使用した画像読み取りが行われる際、原稿読取ガイド91によってガイドされた原稿シートSは、背景ガイド板200と第1コンタクトガラス45との間を通過する。背景ガイド板200は、原稿シートSの画像面の裏側に接して原稿シートSをガイドする。また、背景ガイド板200は白色部材であり、読取位置において白色の背景を作る。
【0083】
図5には、画像形成装置1の第1コンタクトガラス45近傍の概略構成が示されている。図5に示すように、読取モジュール300は、例えば、第1光源301及び第2光源302の2つの光源と、画像読取部材である光学素子303とを備えている。なお、読取モジュール300は、図1に示す第1キャリッジ41の一部に相当するものである。
【0084】
第1光源301及び第2光源302の2つの光源は、例えば、光学素子303を挟むように、副走査方向(図の左右方向)に互いに離間して設けられている。すなわち、第1光源301は、光学素子303の副走査方向上流側に設けられており、第2光源302は、光学素子303の副走査方向下流側に設けられている。
【0085】
光学素子303は、その直上を読取位置20として、DFガラス45の上面と背景ガイド板200との間を通過する原稿シートSの画像面からの反射光を受光するようになっている。光学素子303で受光した反射光は、画像読取部4で所定の処理を受けて画像データに変換される。なお、原稿シートSが読取位置20上に配置されていない場合、光学素子303は背景ガイド板200からの反射光を受光することになる。
【0086】
光学素子303の直上が読取位置20となることから、第1光源301は副走査方向上流側から読取位置20に向けて光を照射し、第2光源302は副走査方向下流側から読取位置20に向けて光を照射するようになっている。
【0087】
また、第1光源301及び第2光源302は、原稿の幅方向である主走査方向(図の奥行方向)全体において光を照射するようになっている。第1光源301及び第2光源302は、主走査方向全体に光を照射する構成として、例えば、主走査方向に沿って多数のLEDが配列されたLEDアレイなどであってもよく、主走査方向に伸長する蛍光灯や冷陰極管等が使用されてもよい。
【0088】
また、光学素子303は、主走査方向に沿って配列された複数のセンサチップを含んで構成され、読取位置20において原稿シートSの主走査方向全体の画像面からの反射光を受光するようになっている。
【0089】
読取モジュール300は副走査方向に移動可能に及び位置制御可能に設けられており、読取位置20を副走査方向に変えることができるようになっている。
【0090】
なお、ADF5を使用した画像読み取りの際には、読取モジュール300は、第1コンタクトガラス45(以下、DFガラス45ともいう)の下方の所定の位置に固定配置され、光学素子303が、所定の読取位置(以下、ADF5の読取位置ともいう)上の光を受光するようになっている。
【0091】
次に、DFガラス45及び背景ガイド板200に汚れが付着している場合について説明する。
【0092】
なお、汚れとは、DFガラス45や背景ガイド板200に付着して、ADF5を使用した画像読み取りで得られる画像データにスジとして現れてしまう要因となるものを意味する。汚れには、糊や修正液等の粘着物が黒くなったものや、ゴミ、チリ等が含まれ、さらには、DFガラス45や背景ガイド板200に付いた傷等も含まれる。DFガラス45や背景ガイド板200に付着する汚れは、その成分、色合い、濃度、形状、大きさ等がそれぞれ個々に異なるが、本明細書では説明を簡略化するために、汚れの成分、色合い、濃度、形状、大きさ等は全て同一であると仮定して説明を行う(ただし、後述する副走査方向に長い汚れのみ形状及び大きさが異なる)。
【0093】
図6に、DFガラス45に汚れ401が付着している状態で、白色原稿を通紙して画像読み取りを行った場合の一例を示す。図6には、(a)DFガラス45の上面側を示す平面図、(b)DFガラス45近傍の概略構成を示す正面図、(c)ADF5を使用して白色原稿を搬送しながら画像読み取りを行った場合に得られる画像データの概念図が図示されている。
【0094】
図6(a)に示すように、DFガラス45の読取位置20上には汚れ401が付着している。この状態でADF5を使用した白色原稿の画像読み取りを行った場合、読み取られた画像データには、図6(c)に示すように、汚れ401に対応する位置に黒スジ402が発生してしまうことになる。黒スジ402は望ましいものではなく、所望の画像データを得るためには、DFガラス45から汚れ401を除去する必要がある。
【0095】
図7に、背景ガイド板200に汚れ403が付着している状態で、白色原稿を通紙して画像読み取りを行った場合の一例を示す。図7には、(a)DFガラス45の上面側を示す平面図、(b)DFガラス45近傍の概略構成を示す正面図、(c)ADF5を使用して白色原稿を搬送しながら画像読み取りを行った場合に得られる画像データの概念図が図示されている。なお、図7(a)は、汚れ403が、DFガラス45ではなく、DFガラス45に対向する背景ガイド板200に付着していることを示している。
【0096】
図7(a)に示すように、背景ガイド板200の読取位置20上には汚れ403が付着している。この状態でADF5を使用した白色原稿の画像読み取りを行った場合、読み取られた画像データには、図7(c)に示すように、汚れ403に対応する位置に薄暗いスジ404が発生してしまうことになる。この薄暗いスジ404は、DFガラス45と背景ガイド板200との間を通過する白色原稿を介して、背景ガイド板200に付着している汚れ403が読み取られたものであり、言いかえると、薄暗いスジ404は、背景ガイド板200に付着している汚れ403が裏写りすることで生じたものである。薄暗いスジ404は上記の黒スジ402よりも薄いが望ましいものではなく、所望の画像データを得るためには、背景ガイド板200から汚れ403を除去する必要がある。
【0097】
上述のように、図6(c)の黒スジ402は、図7(c)の裏写りによって生じる薄暗いスジ404よりも薄いことから、画像データに現れるスジの濃度に基づいてDFガラス45及び背景ガイド板200のどちらに汚れが付着しているかを判別できる。
【0098】
しかしながら、このような濃度差を用いた判別は、背景ガイド板200に付着している汚れ403を裏写りさせるためにADF5によって白色原稿を搬送する必要があり、背景ガイド板200に付着している汚れ403が裏写りしにくい場合には汚れ403を検出できないことがある。
【0099】
本発明の第1の実施の形態は、このような濃度差を用いた判別とは異なる技術によって、DFガラス45及び背景ガイド板200のどちらに汚れが付着しているかを判別するものである。本発明の第1の実施の形態では、ADF5によって白色原稿を搬送することなく、DFガラス45及び背景ガイド板200のどちらに汚れが付着しているかを判別できる。
【0100】
以下、DFガラス45に汚れ401が付着している場合と、背景ガイド板200に汚れ403が付着している場合との違いについて説明する。
【0101】
まず、DFガラス45に汚れ401が付着している場合について説明する。ここでは、第1光源301及び第2光源302からの光を、主走査方向成分の光と副走査方向成分の光とに分けて説明する。
【0102】
図8に、副走査方向成分の光によって、背景ガイド板200に汚れ401の影(副走査方向成分の光による影411a)が映る様子を示す。
【0103】
図8では、第1光源301及び第2光源302の2つの光源が読取位置20を挟んで副走査方向の異なる位置に配置されており、2つの光源のそれぞれから背景ガイド板200に向かって光が照射される。DFガラス45に汚れ401が付着している場合には、汚れ401に対しても、副走査方向の異なる位置に配置された2つの光源のそれぞれから指向性の高い光が照射される。
【0104】
汚れ401により遮光されることで、背景ガイド板200上には、副走査方向成分の光が照射されない範囲が生じる。例えば図8では、汚れ401による遮光で、背景ガイド板200上に、第1光源301又は第2光源302からの光が照射されない範囲A~Cが生じる。
【0105】
背景ガイド板200上の範囲A~Cは汚れ401によって遮光された領域であり、すなわち、汚れ401の影411aの領域となる。なお、範囲Aには第1光源301からの光が照射され、範囲Cには第2光源302からの光が照射されることから、範囲A及び範囲Cは、範囲Bに比べて影が薄くなる。また、範囲A及び範囲Cは、影411aの中心側(範囲B側)から副走査方向に沿って離れるほど影が薄くなる。
【0106】
副走査方向成分の光については、背景ガイド板200に映る汚れ401の影411aは、汚れ401が対向する背景ガイド板200上の範囲M(汚れ401を背景ガイド板200に対して鉛直方向に投影した範囲)を超えて広がるよう形成される。例えば図8では、汚れ401の影411aは、範囲Mの両端を超えて範囲Mの外側にまで広がっている。
【0107】
図9に、主走査方向成分の光によって、背景ガイド板200に汚れ401の影(主走査方向成分の光による影411b)が映る様子を示す。図9は、図面の左右方向を主走査方向とし、図面の手前方向を副走査方向としたDFガラス45近傍の側面図である。
【0108】
図9に示すように、光を照射する第1光源301は、例えば、LEDアレイなどのように主走査方向に多数の光源(図9では10個のLED311)が配列された構成を有する。第2光源302も同様の構成を有してよいが、ここでは図示省略する。なお、図9は、光源が主走査方向に沿って延伸した構成であることを例示した模式図であり、LED311の個数や形状、配置間隔等を限定するものではない。
【0109】
図9では、主走査方向の異なる位置に配置された多数のLED311が一斉に発光し、多数のLED311から背景ガイド板200に向かって光が照射される。その結果、多数のLED311から背景ガイド板200上の任意の場所に、主走査方向成分の光が照射される。
【0110】
DFガラス45に汚れ401が付着している場合には、汚れ401に対しても多数のLED311から主走査方向成分の光が照射される。多数のLEDのうちの主走査方向のある位置に配置された特定のLED311(主走査方向上のある位置の光源)に着目すると、そのLED311からの光の一部は汚れ401によって遮光され、背景ガイド板200には光が照射されない範囲が生じる。しかしながら、特定のLED311からの光が照射されない範囲には、別の位置に配置された多数のLED311からの光が照射される。
【0111】
言いかえると、あるLED311からの光は汚れ401によって遮光されるものの、その遮光を打ち消すように、その他のLED311からの光が汚れ401の裏側に回り込んで背景ガイド板200に光が当たる。このため、背景ガイド板200上の汚れ401の影411bは薄くなり、背景ガイド板200上には汚れ401の薄い影411bがわずかに形成されるか、又は、影411bは全く映らない状態となる。
【0112】
主走査方向成分の光について、背景ガイド板200に薄い影411bがわずかに形成される場合、この影411bは、汚れ401が対向する背景ガイド板200上の範囲N(汚れ401を背景ガイド板200に対して鉛直方向に投影した範囲)の内部に収まるように形成される。例えば図9では、汚れ401の影411bがわずかに形成されているものの、その影411bは小さく、範囲Nの内部に収まっている。
【0113】
以上、光を副走査方向成分と主走査方向成分とに分け、副走査方向成分の光によって形成される影411a(図8)と、主走査方向成分の光によって形成される影411b(図9)とについて説明した。しかしながら、実際には、これらの主走査方向成分及び副走査方向成分の両方の光が作用して、背景ガイド板200に汚れ401の影411が形成される。
【0114】
図10に、主走査方向成分及び副走査方向成分の両方の光によって、背景ガイド板200に汚れ401の影411が映る様子を示す。
【0115】
図10は、背景ガイド板200に映る汚れ401の影411を上方から見た様子を模式的に示している。図10には、略円形状の汚れ401が対向する背景ガイド板200上の領域R(汚れ401を背景ガイド板200に対して鉛直方向に投影した領域)が点線で描かれている。領域Rは、副走査方向については図8の背景ガイド板200上の範囲M、主走査方向については図9の背景ガイド板200上の範囲Nに相当し、略円形状の汚れ401と同じ形状である。なお、領域Rは、読取モジュール300側から見ると汚れ401の裏側に隠れた領域であり、後述するように、読取モジュール300を移動しながら画像読み取りを行った場合には、読取モジュール300の光学素子303から見えない(領域Rからの反射光を受光できない)領域となる。
【0116】
影411cは、第1光源301からの光によって形成された汚れ401の影である。第1光源301からの光が副走査方向上流側から汚れ401に照射された場合、影411cは、領域Rから副走査方向下流側にはみ出すように形成される。また、影411cは、主走査方向については小さくなる傾向(領域R内に収まろうとする傾向)を有し、その結果、影411c全体の形状は、短径が領域Rの半径(略円形状の汚れ401の半径)よりも短い略楕円状となる。
【0117】
影411dは、第2光源302からの光によって形成された汚れ401の影である。第2光源302からの光が副走査方向下流側から汚れ401に照射された場合、影411dは、領域Rから副走査方向上流側にはみ出すように形成される。また、影411dは、主走査方向については小さくなる傾向(領域R内に収まろうとする傾向)を有し、その結果、影411d全体の形状は、短径が領域Rの半径(略円形状の汚れ401の半径)よりも短い略楕円状となる。
【0118】
第1光源301からの光による影411cと、第2光源302からの光による影411dとが重なり合うことによって、背景ガイド板200に汚れ401の影411が形成される。
【0119】
次に、背景ガイド板200に汚れ403が付着している場合について説明する。
【0120】
図11に、背景ガイド板200の読取位置20上に汚れ403が付着している状態を示す。この状態で読取モジュール300の第1光源301及び第2光源302から光が照射された場合、汚れ403が背景ガイド板200に付着している(すなわち、背景ガイド板200と汚れ403との間に距離がない)ことから、背景ガイド板200には汚れ403の影は映らない。
【0121】
次に、図12図16を参照しながら、DFガラス45や背景ガイド板200に汚れが付着している場合に読み取られる画像の濃度変化について説明する。図12図16に示す濃度変化のグラフは、例えば下記のような動作によって得られる。
【0122】
画像読み取りは、原稿シートSが搬送されていない状態で行われる。読取モジュール300は、ADF5を使用した画像読み取りの際に固定される所定の位置(ADF5の読取位置)に対して、光学素子303を副走査方向上流側の位置(以下、読取開始位置ともいう)に移動させる。そして、第1光源301及び第2光源を点灯させ、この読取開始位置から、ADF5の読取位置に対して副走査方向下流側の位置(読取終了位置)まで光学素子303を移動させながら画像読み取りを行う。なお、光学素子303は、例えば主走査方向に並ぶ複数のセンサチップを含んで構成されており、読取位置20における主走査方向全体から反射光を受光するようになっている。
【0123】
このように、光学素子303を副走査方向に移動させる画像読み取りを行うことによって、読取開始位置から読取終了位置までの副走査方向の走査範囲(ADF5の読取位置を含む)と、主走査方向全体の範囲とを含む2次元の画像データが得られる。画像データの主走査方向及び副走査方向のそれぞれの輝度又は明度の変化を、主走査方向及び副走査方向のそれぞれの濃度変化とすることが可能である。
【0124】
この画像読み取りは、原稿シートSが搬送されていない状態で行われるため、光学素子303は、直上の読取位置20において、第1光源301及び第2光源からの光がDFガラス45を透過して背景ガイド板200に照射された後、背景ガイド板200で反射してDFガラス45を再び透過して戻ってくる反射光を受光する。背景ガイド板200は光の反射率が高い白色であり、画像読み取りで得られる画像データでは、背景ガイド板200からの反射光は白に近い(明るい)輝度又は明度として検出される。
【0125】
一方、DFガラス45に付着している汚れ401が読取位置20上に位置する場合には、光学素子303は、汚れ401からの反射光を受光する。汚れ401は光の反射率が低い黒色であり、画像読み取りで得られる画像データでは、汚れ401からの反射光は黒に近い(暗い)輝度又は明度として検出される。
【0126】
なお、濃度変化のグラフは、例えば、濃度が256段階のグレースケールで表すことができる。濃度が0に近いほど暗く、濃度が255に近いほど明るいことを示す。
【0127】
以下、汚れが付着している状態を、下記の汚れ付着状態(1)~(5)に分類して説明する。
【0128】
(1)DFガラス45に汚れ401が付着している場合
図12に、DFガラス45に汚れ401が付着している場合を示す。図12には、(a)DFガラス45の上面側を示す平面図(走査範囲のみ図示)、(b)DFガラス45近傍の概略構成を示す正面図、(c)図12(a)中の点線Zにおける副走査方向の画像の濃度変化の一例、(d)図12(a)中の点線Aにおける主走査方向の画像の濃度変化の一例、(e)図12(a)中の点線Bにおける主走査方向の画像の濃度変化の一例、(f)図12(a)中の点線Cにおける主走査方向の画像の濃度変化の一例が図示されている。
【0129】
副走査方向の画像の濃度変化について、図12(c)を参照しながら説明する。
【0130】
図12(c)において、横軸は副走査方向を表し、縦軸が画像の濃度を表す。図12(c)のグラフは、図12(a)中の点線Zに沿った走査範囲において、副走査方向の読取位置20(横軸)と、その読取位置20で読み取られた画像の濃度(縦軸)との関係を表す。
【0131】
図12(c)のグラフを左から右(副走査方向の上流から下流)へ辿りながら説明する。読取位置20が副走査方向上流に位置している範囲Z1では、画像の濃度は、白色の背景ガイド板200からの反射光を受光している濃度(以下、白色濃度ともいう)となる。範囲Z2では、画像の濃度は、傾斜しながら白色濃度から汚れ401からの反射光を受光している濃度(以下、汚れ濃度ともいう)まで落ち込む。範囲Z3では、画像の濃度は汚れ濃度となる。範囲Z4では、画像の濃度は、傾斜しながら汚れ濃度から白色濃度まで上がる。範囲Z5では、画像濃度は再び白色濃度となる。
【0132】
図12(c)のグラフの濃度変化と、図10を用いて説明した汚れ401の影411との関係について説明する。
【0133】
図12(c)のグラフの範囲Z1は、光学素子303の読取位置20が、図10の点線σ上の範囲σ1(白色の背景ガイド板200)において背景ガイド板200から反射光を受光している状態に対応している。この状態は、図12(c)のグラフの範囲Z1において、白色濃度の検出として現れる。
【0134】
図12(c)のグラフの範囲Z2は、光学素子303の読取位置20が、図10の点線σ上の範囲σ2(領域Rからはみ出した影411dの領域)において反射光を受光している状態に対応している。光学素子303は背景ガイド板200から反射光を受光するが、範囲σ2には汚れ401の影411dが映っており、検出される濃度は白色濃度に比べると暗くなる。また、副走査方向の下流に向かうほど(影411dの中心に向かうほど)影411dは濃くなる傾向を有している。この傾向は、図12(c)のグラフの範囲Z2において、副走査方向の位置変化とともに明るい濃度から暗い濃度へ落ち込む濃度傾斜として現れる。
【0135】
図12(c)のグラフの範囲Z3は、光学素子303の読取位置20が、図10の点線σ上の範囲σ3において汚れ401から反射光を受光している状態に対応している。この範囲σ3では、光学素子303側から上方の背景ガイド板200側を見ると、DFガラス45に付着している汚れ401が背景ガイド板200の手前に存在しており、背景ガイド板200が見えずに汚れ401自体が見える状態となる。この状態は、図12(c)のグラフの範囲Z3において、汚れ濃度の検出として現れる。
【0136】
図12(c)のグラフの範囲Z4は、光学素子303の読取位置20が、図10の点線σ上の範囲σ4(領域Rからはみ出した影411cの領域)において反射光を受光している状態に対応している。光学素子303は背景ガイド板200から反射光を受光するが、範囲σ4には汚れ401の影411cが映っており、検出される濃度は白色濃度に比べると暗くなる。また、副走査方向の下流に向かうほど(影411cの中心から離れるほど)影411cは薄くなる傾向を有している。この傾向は、図12(c)のグラフの範囲Z4において、副走査方向の位置変化とともに暗い濃度から明るい濃度へ上がる濃度傾斜として現れる。
【0137】
図12(c)のグラフの範囲Z5は、光学素子303の読取位置20が、図10の点線σ上の範囲σ5(白色の背景ガイド板200)において背景ガイド板200から反射光を受光している状態に対応している。この状態は、図12(c)のグラフの範囲Z5において、白色濃度の検出として現れる。
【0138】
次に、主走査方向の画像の濃度変化について、図12(d)~(f)を参照しながら説明する。
【0139】
図12(d)~(f)において、横軸は主走査方向を表し、縦軸が画像の濃度を表す。図12(d)のグラフは、図12(d)中の点線Aに沿った主走査方向全体において、主走査方向の位置(横軸)と、その位置で読み取られた画像の濃度(縦軸)との関係を表す。図12(e)のグラフは、図12(d)中の点線Bに沿った主走査方向全体において、主走査方向の位置(横軸)と、その位置で読み取られた画像の濃度(縦軸)との関係を表す。図12(f)のグラフは、図12(d)中の点線Cに沿った主走査方向全体において、主走査方向の位置(横軸)と、その位置で読み取られた画像の濃度(縦軸)との関係を表す。
【0140】
図12(d)のグラフを左から右(主走査方向の上流から下流)へ辿りながら説明する。主走査方向上流の範囲A1では、画像の濃度は白色濃度となる。範囲A2では、画像の濃度は、傾斜しながら白色濃度から汚れ濃度まで落ち込む。範囲A3では、画像の濃度は汚れ濃度となる。範囲A4では、画像の濃度は、傾斜しながら汚れ濃度から白色濃度まで上がる。範囲A5では、画像の濃度は再び白色濃度となる。
【0141】
図12(e)のグラフを左から右(主走査方向の上流から下流)へ辿りながら説明する。主走査方向上流の範囲B1では、画像の濃度は白色濃度となる。範囲B1と範囲B2の境界には傾斜がなく、画像の濃度は、白色濃度から汚れ濃度に突然落ち込む。範囲B2では、画像の濃度は汚れ濃度となる。範囲B2と範囲B3の境界には傾斜がなく、画像の濃度は、汚れ濃度から白色濃度に突然上がる。範囲B3では、画像の濃度は再び白色濃度となる。
【0142】
図12(f)のグラフを左から右(主走査方向の上流から下流)へ辿りながら説明する。主走査方向上流の範囲C1では、画像の濃度は白色濃度となる。範囲C2では、画像の濃度は、傾斜しながら白色濃度から汚れ濃度まで落ち込む。範囲C3では、画像の濃度は汚れ濃度となる。範囲C4では、画像の濃度は、傾斜しながら汚れ濃度から白色濃度まで上がる。範囲C5では、画像の濃度は再び白色濃度となる。
【0143】
図12(e)のグラフの濃度変化と、図10を用いて説明した汚れ401の影411との関係について説明する。
【0144】
図12(e)のグラフの範囲B1は、光学素子303の読取位置20が、図10の点線β上の範囲β1(白色の背景ガイド板200)において背景ガイド板200から反射光を受光している状態に対応している。この状態は、図12(c)のグラフの範囲B1において、白色濃度の検出として現れる。
【0145】
図12(e)のグラフでは、範囲B1と範囲B2の境界において、画像の濃度は白色濃度から汚れ濃度に突然落ち込む。これは、図10の点線β上の範囲β1と範囲β2との境界において、背景ガイド板200から反射光を受光する状態から、汚れ401から反射光を受光する状態に突然変わることに対応している。
【0146】
図12(c)のグラフの範囲B2は、光学素子303の読取位置20が、図10の点線β上の範囲β2において汚れ401から反射光を受光している状態に対応している。この範囲β2では、光学素子303側から上方の背景ガイド板200側を見ると、DFガラス45に付着している汚れ401が背景ガイド板200の手前に存在しており、背景ガイド板200が見えずに汚れ401自体が見える状態となる。この状態は、図12(c)のグラフの範囲B2において、汚れ濃度の検出として現れる。
【0147】
図12(e)のグラフでは、範囲B2と範囲B3の境界において、画像の濃度は汚れ濃度から白色濃度に突然上がる。これは、図10の点線β上の範囲β2と範囲β3との境界において、汚れ401から反射光を受光している状態から、反射ガイド板200から反射光を受光している状態に突然変わることに対応している。
【0148】
図12(c)のグラフの範囲B3は、光学素子303の読取位置20が、図10の点線β上の範囲β3(白色の背景ガイド板200)において反射ガイド板200から反射光を受光している状態に対応している。この状態は、図12(c)のグラフの範囲B3において、白色濃度の検出として現れる。
【0149】
図12(d)及び図12(f)のグラフの濃度変化と、図10を用いて説明した汚れ401の影411との関係について説明する。なお、図12(d)のグラフの濃度変化は、図12(f)のグラフの濃度変化と同一の傾向を有するため、ここでは、図12(f)のグラフの濃度変化のみ説明し、図12(d)のグラフの濃度変化については説明を省略する。
【0150】
図12(f)のグラフの範囲C1は、光学素子303の読取位置20が、図10の点線γ上の範囲γ1(白色の背景ガイド板200)において背景ガイド板200から反射光を受光している状態に対応している。この状態は、図12(c)のグラフの範囲C1において、白色濃度の検出として現れる。
【0151】
図12(c)のグラフの範囲C2は、光学素子303の読取位置20が、図10の点線γ上の範囲γ2(領域Rからはみ出した影411cの領域)において反射光を受光している状態に対応している。光学素子303は背景ガイド板200から反射光を受光するが、範囲γ2には汚れ401の影411cが映っており、検出される濃度は白色濃度に比べると暗くなる。また、主走査方向の下流に向かうほど(影411cの中心に向かうほど)影411cは濃くなる傾向を有している。この傾向は、図12(c)のグラフの範囲C2において、主走査方向の位置変化とともに明るい濃度から暗い濃度へ落ち込む濃度傾斜として現れる。なお、主走査方向の影の範囲(範囲γ2)は、副走査方向の影の範囲(範囲σ2や範囲σ4)よりも小さいので、主走査方向に係る濃度傾斜は、副走査方向に係る濃度傾斜に比べて急な傾斜となる。
【0152】
図12(c)のグラフの範囲C3は、光学素子303の読取位置20が、図10の点線γ上の範囲γ3において汚れ401から反射光を受光している状態に対応している。この範囲γ3では、光学素子303側から上方の背景ガイド板200側を見ると、DFガラス45に付着している汚れ401が背景ガイド板200の手前に存在しており、背景ガイド板200が見えずに汚れ401自体が見える状態となる。この状態は、図12(c)のグラフの範囲C3において、汚れ濃度の検出として現れる。
【0153】
図12(c)のグラフの範囲C4は、光学素子303の読取位置20が、図10の点線γ上の範囲γ4(領域Rからはみ出した影411cの領域)において反射光を受光している状態に対応している。光学素子303は背景ガイド板200から反射光を受光するが、範囲γ4には汚れ401の影411cが映っており、検出される濃度は白色濃度に比べると暗くなる。また、主走査方向の下流に向かうほど(影411cの中心から離れるほど)影411cは薄くなる傾向を有している。この傾向は、図12(c)のグラフの範囲C4において、副走査方向の位置変化に従って暗い濃度から明るい濃度へ上がる濃度傾斜として現れる。なお、主走査方向の影の範囲(範囲γ4)は、副走査方向の影の範囲(範囲σ2や範囲σ4)よりも小さいので、主走査方向に係る濃度傾斜は、副走査方向に係る濃度傾斜に比べて急な傾斜となる。
【0154】
図12(c)のグラフの範囲C5は、光学素子303の読取位置20が、図10の点線γ上の範囲γ5(白色の背景ガイド板200)において背景ガイド板200から反射光を受光している状態に対応している。この状態は、図12(c)のグラフの範囲C5において、白色濃度の検出として現れる。
【0155】
なお、ここでは、DFガラス45に汚れ401が1つだけ付着している場合を説明しているが、複数の汚れ401が付着している場合には、複数の汚れ401のそれぞれに対応する位置で同様の濃度変化が見られる。
【0156】
このように、DFガラス45に汚れ401が付着している場合には、主走査方向及び副走査方向の両方の濃度変化に、影411の存在を示す濃度傾斜が現れる。また、濃度傾斜は、主走査方向の濃度変化に比べて、副走査方向の濃度変化においてより明確に現れる。
【0157】
(2)DFガラス45に副走査方向に長い汚れ401が付着している場合
図13に、DFガラス45に、副走査方向に長い汚れ401が付着している場合を示す。図13には、(a)DFガラス45の上面側を示す平面図(走査範囲のみ図示)、(b)DFガラス45近傍の概略構成を示す正面図、(c)図13(a)中の点線Zにおける副走査方向の画像の濃度変化の一例、(d)図13(a)中の点線Aにおける主走査方向の画像の濃度変化の一例が図示されている。
【0158】
副走査方向に長い汚れ401とは、例えば、読取モジュール300が画像読み取りにおいて移動する副走査方向の走査範囲全域にわたって付着している汚れである。
【0159】
DFガラス45に汚れ401が付着している場合であっても、その汚れ401が副走査方向の走査範囲全域にわたって付着している場合には、影411の存在を示す濃度傾斜は検出されない。例えば、図13(c)に示すように、副走査方向に長い汚れ401を通る副走査方向の濃度変化(図13(a)の点線Zに沿った濃度変化)は、走査範囲全域にわたって汚れ濃度の一定値となり濃度傾斜は見られない。また、図13(d)に示すように、副走査方向に長い汚れ401を通る主走査方向の濃度変化(図13(a)の点線Aに沿った濃度変化)には、白色濃度から汚れ濃度に突然落ち込む濃度変化や、汚れ濃度から白色濃度に突然上がる濃度変化は見られるものの、濃度傾斜は見られない。
【0160】
なお、ここでは、DFガラス45に、副走査方向に長い汚れ401が1つだけ付着している場合を説明しているが、複数の副走査方向に長い汚れ401が付着している場合には、複数の副走査方向に長い汚れ401のそれぞれに対応する位置で同様の濃度変化が見られる。
【0161】
このように、DFガラス45に、副走査方向に長い汚れ401が付着している場合には、主走査方向及び副走査方向の両方の濃度変化に濃度傾斜は現れない。
【0162】
(3)背景ガイド板200に汚れ403が付着している場合
図14に、背景ガイド板200に汚れ403が付着している場合を示す。図14には、(a)DFガラス45の上面側を示す平面図(走査範囲のみ図示)、(b)DFガラス45近傍の概略構成を示す正面図、(c)図14(a)中の点線Zにおける副走査方向の画像の濃度変化の一例、(d)図14(a)中の点線Aにおける主走査方向の画像の濃度変化の一例、(e)図14(a)中の点線Bにおける主走査方向の画像の濃度変化の一例、(f)図14(a)中の点線Cにおける主走査方向の画像の濃度変化の一例が図示されている。
【0163】
上述のように、背景ガイド板200に汚れ403が付着している場合、背景ガイド板200には汚れ403の影は形成されない。
【0164】
図14(c)に示すように、背景ガイド板200に付着した汚れ403を通る副走査方向の濃度変化(図14(a)の点線Zに沿った濃度変化)には、白色濃度から汚れ濃度に突然落ち込む濃度変化や、汚れ濃度から白色濃度に突然上がる濃度変化は見られるものの、濃度傾斜は見られない。また、図14(d)~(f)に示すように、背景ガイド板200に付着した汚れ403を通る主走査方向の濃度変化(図14(a)の点線A、B、Cのそれぞれに沿った濃度変化)においても同様に、白色濃度から汚れ濃度に突然落ち込む濃度変化や、汚れ濃度から白色濃度に突然上がる濃度変化は見られるものの、濃度傾斜は見られない。
【0165】
なお、ここでは、背景ガイド板200に汚れ403が1つだけ付着している場合を説明しているが、複数の汚れ403が付着している場合には、複数の汚れ403のそれぞれに対応する位置で同様の濃度変化が見られる。
【0166】
このように、背景ガイド板200に汚れ403が付着している場合には、主走査方向及び副走査方向の両方の濃度変化に濃度傾斜は現れない。
【0167】
(4)背景ガイド板200に副走査方向に長い汚れ403が付着している場合
図15に、背景ガイド板200に、副走査方向に長い汚れ403が付着している場合を示す。図15には、(a)DFガラス45の上面側を示す平面図(走査範囲のみ図示)、(b)DFガラス45近傍の概略構成を示す正面図、(c)図15(a)中の点線Zにおける副走査方向の画像の濃度変化の一例、(d)図15(a)中の点線Aにおける主走査方向の画像の濃度変化の一例が図示されている。
【0168】
副走査方向に長い汚れ403は、例えば、副走査方向の走査範囲全域にわたって付着している汚れである。
【0169】
背景ガイド板200に汚れ403が付着している場合、背景ガイド板200には汚れ403の影は形成されない。図15(c)に示すように、副走査方向に長い汚れ403を通る副走査方向の濃度変化(図15(a)の点線Zに沿った濃度変化)は、走査範囲全域にわたって汚れ濃度の一定値となり、濃度傾斜は見られない。また、図15(d)に示すように、副走査方向に長い汚れ403を通る主走査方向の濃度変化(図15(a)の点線Aに沿った濃度変化)には、白色濃度から汚れ濃度に突然落ち込む濃度変化や、汚れ濃度から白色濃度に突然上がる濃度変化は見られるものの、濃度傾斜は見られない。
【0170】
なお、ここでは、背景ガイド板200に、副走査方向に長い汚れ403が1つだけ付着している場合を説明しているが、複数の副走査方向に長い汚れ403が付着している場合には、複数の副走査方向に長い汚れ403のそれぞれに対応する位置で同様の濃度変化が見られる。
【0171】
このように、背景ガイド板200に、副走査方向に長い汚れ403が付着している場合には、主走査方向及び副走査方向の両方の濃度変化に濃度傾斜は現れない。
【0172】
(5)DFガラス45に汚れ401が付着しており、背景ガイド板200に汚れ403が付着している場合
図16に、DFガラス45に汚れ401が付着しており、背景ガイド板200に汚れ403が付着している場合を示す。図16には、(a)DFガラス45の上面側を示す平面図(走査範囲のみ図示)、(b)DFガラス45近傍の概略構成を示す正面図、(c)図16(a)中の点線Zにおける副走査方向の画像の濃度変化の一例、(d)図16(a)中の点線Yにおける副走査方向の画像の濃度変化の一例、(e)図16(a)中の点線Aにおける主走査方向の画像の濃度変化の一例、(f)図16(a)中の点線Bにおける主走査方向の画像の濃度変化の一例、(g)図16(a)中の点線Cにおける主走査方向の画像の濃度変化の一例が図示されている。
【0173】
図16(c)に示すように、DFガラス45に付着している汚れ401を通る副走査方向の濃度変化(図16(a)の点線Zに沿った濃度変化)には、影411の存在を示す濃度傾斜が見られる。図16(d)~(f)に示すように、DFガラス45に付着している汚れ401の中心からずれた位置を通る主走査方向の濃度変化(図16(a)の点線A、Cに沿った濃度変化)には、影411の存在を示す濃度傾斜が見られるが、汚れ401の中心付近を通る主走査方向の濃度変化(図16(a)の点線Bに沿った濃度変化)には濃度傾斜が見られない。図16(c)~(f)中のDFガラス45に付着している汚れ401に係る濃度変化は、図12(c)~(f)を参照して説明した濃度変化と同一である。
【0174】
図16(d)に示すように、背景ガイド板200に付着している汚れ403を通る副走査方向の濃度変化(図16(a)の点線Yに沿った濃度変化)には濃度傾斜は見られない。図16(d)~(f)に示すように、背景ガイド板200に付着している汚れ403を通る主走査方向の濃度変化(図16(a)の点線A、B、Cのそれぞれに沿った濃度変化)には濃度傾斜は見られない。図16(c)~(f)中の背景ガイド板200に付着している汚れ403に係る濃度変化は、図14(c)~(f)を参照して説明した濃度変化と同一である。
【0175】
このように、DFガラス45に付着している汚れ401については、主走査方向及び副走査方向の両方の濃度変化に、影411の存在を示す濃度傾斜が現れる。また、濃度傾斜は、主走査方向の濃度変化に比べて、副走査方向の濃度変化においてより明確に現れる。
【0176】
背景ガイド板200に付着している汚れ403については、主走査方向及び副走査方向の両方の濃度変化に濃度傾斜は現れない。
【0177】
なお、汚れ付着状態(5)は複数の汚れが異なる場所に付着している場合を想定しており、一例として、上述した汚れ付着状態(1)と汚れ付着状態(3)とを組み合わせたものであるといえる。このような組み合わせとして、上述した汚れ付着状態(1)~(4)のうちの2つ以上の組み合わせを考えることもできる。
【0178】
以下、本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の制御構成について説明する。以下に説明する制御構成は一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0179】
図17に示すように、画像形成装置1は、自動原稿搬送制御用のコントローラ部100と、装置本体制御用の本体制御部111と、本体制御部111に付帯する操作部108と、画像読取部4と、清掃アラートを報知する清掃アラート報知部130と、本発明の第1の実施の形態に係る汚れ検知処理を実行する検知部120とを備えている。
【0180】
操作部108は、スタートボタン(プリントキー)などの各種スイッチ類や、各情報を表示する表示装置108Aを有している。表示装置108Aは、コントローラ部100又は本体制御部111から受信する指示信号に基づいて、様々なエラーメッセージやアラート(DFガラス45や背景ガイド板200の清掃を促す清掃アラートを含む)を報知する機能を有している。コントローラ部100と本体制御部111とは、インターフェース107を介して接続されている。本体制御部111は、操作部108のスタートボタンが押下されると、インターフェース107を介してコントローラ部100に原稿給紙信号や読取開始信号を送信するようになっている。また、本体制御部111は、インターフェース107を介してコントローラ部100に、エラーメッセージやアラートなどの報知指示信号を送信するようになっている。
【0181】
コントローラ部100は、分離センサ11、開閉センサ18、原稿長さセンサ81A~81C、原稿セットセンサ82、突当センサ85、原稿幅センサ86、読取入口センサ87、レジストセンサ88、及び排紙センサ89の検知信号を取り込むようになっている。
【0182】
コントローラ部100は、ピックアップローラ58を昇降するピックアップ昇降モータ101、給紙ベルト59を駆動する給紙モータ102、搬送ローラ63,65、並びに原稿突当爪28を駆動する読取モータ103を作動させるようになっている。
【0183】
また、コントローラ部100は、排紙ローラ67を駆動する排紙モータ104、搬送ローラ61を駆動するプルアウトモータ113、ピックアップローラ58を回転させるピックアップ搬送モータ115を作動させるようになっている。
【0184】
コントローラ部100は、原稿シートSの先端をレジストセンサ88にて検知すると、所定の搬送距離をかけて搬送速度を減速し、読取位置20の手前で原稿シートSを一時停止させる。このとき、コントローラ部100は、本体制御部111にインターフェース107を介して搬送停止信号を送信する。以下、この搬送停止信号が送信されるときの原稿シートSの先端位置をレジスト位置ともいう。
【0185】
続いてコントローラ部100は、本体制御部111より読取開始信号を受信すると、一時停止していた原稿シートSを、読取位置20に原稿シートSの先端が到達するまでに所定の搬送速度に立ち上がるように増速して搬送する。
【0186】
コントローラ部100は、原稿シートSの先端が第1面読取部40に到達するタイミングで、本体制御部111に対して第1面の副走査方向有効画像領域を示すゲート信号を、原稿シートSの後端が第1面読取部40を抜けるまで送信する。ここで、上記タイミングは、読取入口センサ87により原稿シートSの先端が検知されてからの読取モータ103のパルスカウントにより検出される。
【0187】
読取搬送部Eを通過した原稿シートSは、排出部Fへ搬送される。この際、コントローラ部100は、排紙センサ89により原稿シートSの先端を検知すると、排紙モータ104を正転駆動して排紙ローラ67を反時計方向に回転させる。また、コントローラ部100は、排紙センサ89による原稿シートSの先端検知からの排紙モータパルスカウントに基づいて所定パルスだけ原稿シートSを搬送する。この際、コントローラ部100は、原稿シートSの後端が排紙ローラ67の上下ローラ対のニップから抜ける直前に排紙モータ104の駆動速度を減速させて、原稿排紙トレイ53上に排出される原稿シートSが飛び出さないように制御する。
【0188】
本体制御部111は、装置本体1Mが有する給紙装置2、画像形成部3、及び画像読取部4における動作制御、並びに、検知部120及び清掃アラート報知部130の動作制御を行うようになっている。本体制御部111は、特に本発明の第1の実施の形態に関連した制御として、検知部120における汚れ検知処理の動作制御、画像読取部4による画像読み取りの読取位置制御、清掃アラート報知部130における清掃アラートの報知制御、光源の発光量の制御(例えば、光源の点灯/消灯制御)等を実行するようになっている。
【0189】
画像読取部4は、本体制御部111からの制御信号に基づいて、読取位置上の光を受光して所定の処理を施すことで、受光した反射光を画像データに変換する画像読み取りを行うようになっている。例えば、画像読取部4は、本体制御部111からADF5による画像読み取りの開始指示信号を受信すると、画像読取部4の読取モジュール300(第1キャリッジ41の一部に相当)内の光学素子303をADF5の読取位置に固定して画像読み取りを行うようになっている。また、画像読取部4は、本体制御部111から汚れ検知処理の開始指示信号を受信すると、上述したように読取開始位置から読取終了位置まで光学素子303を移動させながら画像読み取りを行うようになっている。
【0190】
また、DFガラス45を通じてDFガラス45上方へ光を照射する光源(画像読取部4の読取モジュール300内に設けられた第1光源301及び第2光源302)は、本体制御部111からの制御信号に基づいて、点灯/消灯を行うようになっている。例えば、第1光源301及び第2光源302は、本体制御部111から点灯指示信号を受信すると点灯し、本体制御部111から消灯指示信号を受信すると消灯するようになっている。
【0191】
検知部120は、本体制御部111から汚れ検知処理の開始指示信号を受信すると、汚れ検知処理を実行するようになっている。例えば、検知部120は汚れ検知処理において、原稿シートSが搬送されていない状態で画像読取部4によって読み取られた画像データに基づいて、DFガラス45や背景ガイド板200に付着している汚れの有無を判定する。
【0192】
さらに、検知部120は、汚れの存在が検知された場合には、背景ガイド板200に映る汚れの影の有無を判定することで、DFガラス45に付着している汚れと背景ガイド板200に付着している汚れとを判別する。例えば検知部120は、汚れの存在が検知された場合には、画像データの主走査方向及び/又は副走査方向の濃度変化に基づいて、その汚れがDFガラス45に付着している汚れ401であるか、背景ガイド板200に付着している汚れ403であるかを判別する。
【0193】
検知部120は、汚れ検知結果を示す汚れ検知結果信号を本体制御部111に対して送信する。本体制御部111は、受信した汚れ検知結果信号に応じた清掃アラートの報知指示信号を清掃アラート報知部130へ送信する。
【0194】
清掃アラート報知部130は、本体制御部111から報知指示信号を受信し、受信した報知指示信号に応じた清掃アラートを報知する。清掃アラート報知部130は、操作部108のタッチパネル(表示装置108A)に清掃アラートを表示させたり、清掃アラートを音声出力させたりするようになっている。具体的には、清掃アラート報知部130は、DFガラス45の清掃を促す清掃アラート、背景ガイド板200の清掃を促す清掃アラート、DFガラス45及び背景ガイド板200の両方の清掃を促す清掃アラートを報知することができる。
【0195】
なお、図17にはハードウェアのブロック図が示されているが、制御系の処理を実行するブロックは、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの任意の組み合わせによって実現されてもよい。例えばソフトウェアで実装される機能は、1つ又は複数の命令又はコードとして任意のコンピュータ可読媒体に記憶され、これらの命令又はコードは、中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)やグラフィックスプロセッシングユニット(GPU:Graphics Processing Unit)などのハードウェアベースの処理ユニットによって実行可能である。また、本発明に関連した機能は、集積回路(IC:Integrated Circuit)やICチップセットなどを含む様々なデバイスによって実現されてもよい。
【0196】
次に、図18及び図19を参照しながら、本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置1の汚れ検知処理について説明する。以下に説明する処理の流れは一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0197】
図18に示す汚れ検知処理は、例えば、ADF5を使用した画像読み取りの指示を受信すると開始される。一例として、ユーザが、ADF5の原稿テーブル51上に原稿束をセットして、操作部108のスタートボタンを押下してコピーの指示を入力した場合、汚れ検知処理が開始される。
【0198】
なお、ここでは、ADF5を使用したコピーの指示が入力されると、コピーを開始する前の割り込み処理として本体制御部111が汚れ検知処理を開始する場合について説明するが、例えば、汚れ検知モードを設定して、汚れ検知処理を単独で実行できるようにしてもよい。
【0199】
本体制御部111は、ADF5を制御して原稿シートSの搬送を停止し、原稿シートSが搬送されていない状態で、画像読取部4を制御して画像読み取りを行わせる(ステップS101)。
【0200】
このとき、読取モジュール300は、ADF5の読取位置に対して副走査方向上流側の読取開始位置に移動し、この読取開始位置からADF5の読取位置を介して読取終了位置まで移動しながら画像読み取りを行う。これにより、読取開始位置から読取終了位置までの走査範囲(ADF5の読取位置を含む)の画像データが得られる。
【0201】
画像データは検知部120に供給される。画像データの各画素には、画像読み取りの各位置に対応した濃度を特定することが可能な情報が含まれている。
【0202】
検知部120は、供給された画像データを参照し、汚れの濃度出力があるか否かを判定する(ステップS102)。これにより、汚れがあるか否かを判定することができる。汚れがある場合、画像データの主走査方向及び/又は副走査方向の濃度変化には、背景ガイド板200の白色濃度に対して濃度が落ち込んでいる部分が見られる。検知部120は、例えば、濃度が一定の閾値以下となる画素が検出された場合に、汚れの濃度出力があると判定することができる。
【0203】
汚れの濃度出力がないと判定された場合(ステップS102のNO)、本体制御部111は汚れがないと判定して、清掃アラートを清掃アラート報知部130に報知させず(ステップS103)、ADF5における原稿搬送を開始させる(ステップS104)。これにより、ユーザが最初に入力したコピー指示に従って、ADF5によるコピーが実行される。
【0204】
一方、汚れの濃度出力があると判定された場合(ステップS102のYES)には、図19に示す汚れ位置検知処理が行われる。検知部120は、白色濃度と汚れ濃度との境界付近の濃度変化に濃度傾斜があるか否かを判定する(ステップS201)。上述のように、DFガラス45に付着している汚れ401の影411は、背景ガイド板200の白色濃度と汚れ濃度との境界付近における濃度傾斜として現れる。したがって、濃度傾斜の存在は、背景ガイド板200に汚れ401の影411が映っていることを示している。
【0205】
複数の汚れが検出されている場合(すなわち、汚れが2箇所以上に付着している場合)には、複数の汚れのうちの少なくとも1つに影411の存在を示す濃度傾斜があれば、汚れ401の影411の濃度傾斜があると判定される。また、複数の汚れのすべてに影411の影響による濃度傾斜がなければ、濃度傾斜がないと判定される。
【0206】
濃度傾斜があるか否かの判定には様々な方法が適用可能であるが、一例として、白色濃度と汚れ濃度との境界付近の濃度変化に着目し、その濃度変化の絶対値が一定の閾値以下となっているか否かを判定する方法が挙げられる。この場合、濃度変化の絶対値が一定の閾値以下であれば、影411の影響による濃度傾斜があると判定することが可能である。
【0207】
また、上述のように、影411の影響による濃度傾斜は、主走査方向の濃度変化に比べて、副走査方向の濃度変化に明確に現れる。このことから、例えば、副走査方向の濃度変化のみを参照して濃度傾斜があるか否かの判定を行うことが可能である。また、副走査方向の濃度変化に加えて主走査方向の濃度変化を参照することで、より高い精度の判定を行ってもよい。なお、主走査方向の濃度変化においても影411の影響による濃度傾斜が現れることから、主走査方向の濃度変化のみを参照して濃度傾斜があるか否かの判定を行ってもよい。
【0208】
汚れ401の影411の濃度傾斜があると判定された場合(ステップS201のYES)、検知部120は、検出されたすべての汚れに係る濃度変化において、影411の影響による濃度傾斜があるか否かを判定する(ステップS202)。
【0209】
すべての汚れについて影411の影響による濃度傾斜があると判定された場合(ステップS202のYES)、検知部120は、検出された1つ又は複数の汚れのすべてがDFガラス45に付着していると判定する。この判定結果に基づき、本体制御部111は、DFガラス45の清掃を促す清掃アラートを清掃アラート報知部130に報知させる(ステップS203)。
【0210】
検出された一部の汚れについてのみ影411の影響による濃度傾斜がある場合、すなわち、影411の影響による濃度傾斜がある汚れと濃度傾斜がない汚れの両方が存在する場合(ステップS202のNO)、検知部120は、副走査方向全体に広がる汚れがあるか否かを判定する(ステップS204)。なお、影411の影響による濃度傾斜がある汚れは、副走査方向全体に広がる汚れではないことから、ここでは、濃度傾斜がない汚れについて、副走査方向全体に広がる汚れであるか否かを判定すればよい。
【0211】
ここでいう副走査方向全体に広がる汚れとは、読取開始位置から読取終了位置までの副走査方向の走査範囲全域にわたって付着している、副走査方向に長い汚れである。上述のように、副走査方向に長い汚れは、DFガラス45に付着している場合であっても背景ガイド板200に付着している場合であっても、濃度傾斜の見られない汚れとして検出される。
【0212】
副走査方向全体に広がる汚れがないと判定された場合(ステップS204でNO)、検知部120は、DFガラス45及び背景ガイド板200の両方に汚れが付着していると判定する(ステップS205)。この判定結果に基づき、本体制御部111は、DFガラス45及び背景ガイド板200の両方の清掃を促す清掃アラートを清掃アラート報知部130に報知させる(ステップS210)。
【0213】
副走査方向全体に広がる汚れがあると判定された場合(ステップS204でYES)、検知部120は、DFガラス45及び背景ガイド板200のどちらかに副走査方向全体に広がる汚れが付着している可能性があると判定する(ステップS206)。なお、この判定では、副走査方向に長い汚れがDFガラス45及び背景ガイド板200のどちらに付着しているかを特定することはできない。この判定結果に基づき、本体制御部111は、DFガラス45及び背景ガイド板200の両方の清掃を促す清掃アラートを清掃アラート報知部130に報知させる(ステップS210)。
【0214】
一方、汚れの影の濃度傾斜がないと判定された場合(ステップS201のNO)、検知部120は、副走査方向全体に広がる汚れがあるか否かを判定する(ステップS207)。
【0215】
副走査方向全体に広がる汚れがないと判定された場合(ステップS207でNO)、検知部120は、背景ガイド板200に汚れ403が付着していると判定する。この判定結果に基づき、本体制御部111は、背景ガイド板200の清掃を促す清掃アラートを清掃アラート報知部130に報知させる(ステップS208)。
【0216】
副走査方向全体に広がる汚れがあると判定された場合(ステップS207でYES)、検知部120は、DFガラス45及び背景ガイド板200のどちらかに副走査方向全体に広がる汚れが付着している可能性があると判定する(ステップS209)。なお、この判定では、副走査方向に長い汚れがDFガラス45及び背景ガイド板200のどちらに付着しているかを特定することはできない。この判定結果に基づき、本体制御部111は、DFガラス45及び背景ガイド板200の両方の清掃を促す清掃アラートを清掃アラート報知部130に報知させる(ステップS210)。
【0217】
図18及び図19に示すフローチャートでは、上述した汚れ付着状態(1)~(5)は、以下のステップで判定される。
【0218】
汚れ付着状態(1)は、ステップS203において、DFガラス45に汚れが付着していると判定され、DFガラス45の清掃を促す清掃アラートが報知される。
【0219】
汚れ付着状態(2)は、ステップS206において、DFガラス45及び背景ガイド板200のどちらかに副走査方向全体に広がる汚れが付着している可能性があると判定され、DFガラス45及び背景ガイド板200の両方の清掃を促す清掃アラートが報知される。
【0220】
汚れ付着状態(3)は、ステップS208において、背景ガイド板200に汚れが付着していると判定され、背景ガイド板200の清掃を促す清掃アラートが報知される。
【0221】
汚れ付着状態(4)は、ステップS209において、DFガラス45及び背景ガイド板200のどちらかに副走査方向全体に広がる汚れが付着している可能性があると判定され、DFガラス45及び背景ガイド板200の両方の清掃を促す清掃アラートが報知される。
【0222】
汚れ付着状態(5)は、ステップS205において、DFガラス45及び背景ガイド板200の両方に汚れが付着していると判定され、DFガラス45及び背景ガイド板200の両方の清掃を促す清掃アラートが報知される。
【0223】
なお、図19のフローチャートに係る汚れ位置検知処理では、本体制御部111は、検知部120による汚れ検知結果に基づいて清掃アラートを清掃アラート報知部130に報知させているが、汚れ検知結果は他の用途で用いられてもよい。
【0224】
以上説明したように、第1の実施の形態によれば、DFガラス45に付着している汚れと、背景ガイド板200に付着している汚れとを判別することができる。さらに、副走査方向に長い汚れが付着している場合を検出することもできる。また、汚れの付着している部材を清掃するよう、正しい清掃箇所を指示することができる。
【0225】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0226】
第2の実施の形態では、読取位置の副走査方向上流側から照射される光の強さ(光量)と、読取位置の副走査方向下流側から照射される光の強さ(光量)とが異なる状態(偏った状態)を作るようにする。これにより、DFガラス45に付着している汚れ401に照射される光の向きに偏りを生じさせて、汚れ401の影411が背景ガイド板200により映りやすくなるようにする。
【0227】
図20に、本発明の第2の実施の形態において、DFガラス45に汚れ401が付着している場合を示す。図20には、(a)DFガラス45の上面側を示す平面図(走査範囲のみ図示)、(b)DFガラス45近傍の概略構成を示す正面図、(c)図20(a)中の点線Zにおける副走査方向の画像の濃度変化の一例、(d)図20(a)中の点線Aにおける主走査方向の画像の濃度変化の一例、(e)図20(a)中の点線Bにおける主走査方向の画像の濃度変化の一例、(f)図20(a)中の点線Cにおける主走査方向の画像の濃度変化の一例が図示されている。
【0228】
図20(b)に示すように、例えば、読取モジュール300は、例えば、第1光源301及び第2光源302の2つの光源と、光学素子303とを備えている。
【0229】
第1光源301及び第2光源302の2つの光源は、例えば、光学素子303に対して、副走査方向(図の左右方向)に互いに離間して設けられている。すなわち、第1光源301は、光学素子303の副走査方向上流側に設けられており、第2光源302は、光学素子303の副走査方向下流側に設けられている。
【0230】
この構成において、例えば上流側の光源(第1光源301)を点灯し、下流側の光源(第2光源302)を消灯する。この場合も第1の実施の形態と同様に、背景ガイド板200にはDFガラス45に付着している汚れ401の影411が映る。図20(b)では、第1光源301の点灯状態が白色によって表され、第2光源302の消灯状態が黒色によって表されている。
【0231】
ただし、この影411は、上流側の光源である第1光源301から照射される光により、第1光源301が配置されている位置とは反対側(すなわち、下流側)に偏って形成される。
【0232】
図10を参照して説明すると、第1光源301のみを点灯して第2光源302を消灯した場合、影411dは形成されず、第1光源301からの光による影411cのみが、背景ガイド板200に汚れ401の影411として形成される。また、第2光源302が点灯している場合には、第2光源302からの光が影411cに照射されるため影411cは薄くなるが、これに対し、第2光源302が消灯している場合には、影411cはより濃くなる。その結果、第1光源301のみを点灯した場合には、第1光源301及び第2光源302の両方を点灯した場合と比べて、影411cの副走査方向の長さ(図10の範囲σ4の長さ)は長くなる。同様に、影411cの主走査方向の長さ(図10の範囲γ2及び範囲γ4の長さ)も長くなる。
【0233】
図20(c)に示すように、DFガラス45に付着した汚れ401を通る副走査方向の濃度変化(図20(a)の点線Zに沿った濃度変化)には、影411の存在を示す濃度傾斜が見られる。第1の実施の形態(例えば、図12(c)参照)とは異なり、第2の実施の形態における濃度傾斜は下流側に、より緩やかな傾斜を持った状態で明確に現れる。例えば、図20(c)の範囲Z4は、図12(c)の範囲Z4よりも長くなる。その結果、図20(c)の範囲Z4に係る濃度傾斜は、図12(c)の範囲Z4に係る濃度傾斜よりも緩やかとなる。
【0234】
また、主走査方向の濃度変化についても、第1の実施の形態よりも、濃度傾斜がより明確に現れる。図20(d)、(e)に示すように、DFガラス45に付着した汚れ401の中心から上流側にずれた位置及び中心付近を通る主走査方向の濃度変化(図20(a)の点線A、Bに沿った濃度変化)には濃度傾斜が見られないが、一方、図20(f)に示すように、汚れ401の中心から下流側にずれた位置を通る主走査方向の濃度変化(図20(a)の点線Cに沿った濃度変化)には、影411の存在を示す濃度傾斜が見られる。この主走査方向の濃度変化も、第1の実施の形態に比べて、より緩やかな傾斜を持つ。例えば、図20(f)の範囲γ2や範囲γ4は、図12(f)の範囲γ2や範囲γ4よりも長くなる。その結果、図20(f)の範囲γ2や範囲γ4に係る濃度傾斜は、図12(f)の範囲γ2や範囲γ4に係る濃度傾斜よりも緩やかとなる。
【0235】
このように、DFガラス45に汚れ401が付着している場合には、主走査方向及び副走査方向の両方の濃度変化に、影411の存在を示す濃度傾斜が現れる。また、濃度傾斜は、第1の実施の形態よりも緩やかな傾斜を持った状態で明確に現れる。
【0236】
なお、ここでは、上流側の第1光源301を点灯し、下流側の第2光源302を消灯した場合を一例として説明しているが、反対に、上流側の第1光源301を消灯し、下流側の第2光源302を点灯してもよい。また、一方の光源を完全に消灯せずに光源からの照射される光の強さ(光量)を弱くし、汚れ401に照射される副走査方向の光の強さ(光量)に偏りを持たせるだけでもよい。さらに、3つ以上の光源が存在する場合においても、各光源の発光状態を制御し、汚れ401に照射される光の向きが偏るようにすることでよい。
【0237】
第2の実施の形態では、例えば、本体制御部111が、画像読取部4が汚れ検知処理において画像読み取りを開始する前に、汚れ401の影411が副走査方向に偏って形成されるよう光源の発光状態を制御するようになっている。その他の構成は、第1の実施の形態における画像形成装置の構成(例えば、図17参照)と同様であり、説明を省略する。
【0238】
また、第2の実施の形態では、例えば、本体制御部111が、画像読取部4が汚れ検知処理における画像読み取りを開始する前に、汚れ401の影411が副走査方向に偏って形成されるよう光源の発光状態を制御する処理を実行する。その他の処理は、第1の実施の形態における汚れ検知処理(例えば、図18及び図19参照)と同様であり、説明を省略する。
【0239】
以上説明したように、第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を実現でき、しかも、影411の存在を示す濃度傾斜がより顕著に現れるため、DFガラス45に付着している汚れと、背景ガイド板200に付着している汚れとを、より高い精度で判別することができる。
【0240】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0241】
第3の実施の形態では、読取モジュール500に設けられる光源として、主走査方向の異なる位置で異なる発光状態となるように制御することが可能な光源が用いられる。この光源は、例えばLEDアレイなどのように主走査方向に複数の光源(複数のLED)が配列され、一部の光源のみを点灯してその他の光源を消灯することが可能な、いわゆる部分点灯照明を行えるものである。
【0242】
なお、第1及び第2の実施の形態とは異なり、読取モジュール500は、汚れ検知処理における画像読み取りの際に、副走査方向に移動しながら画像読み取りを行う必要はない。第3の実施の形態では、汚れ検知処理を行う際に、読取モジュール500を移動させずにADF5の読取位置に配置された状態とし、例えば主走査方向に配列された複数の光源の一部を順次点灯させながら、順次点灯させるごとに画像読取部4が画像読み取りを繰り返し行うようになっている。
【0243】
汚れ401に照射される主走査方向の光の強さ(光量)が偏っていると、DFガラス45に付着している汚れ401の影411は主走査方向に偏って形成される。主走査方向に偏った影411は、主走査方向の濃度変化において濃度傾斜として現れる。この濃度傾斜を検出することにより、DFガラス45に付着している汚れ401と、背景ガイド板200に付着している汚れ403とを判別することができる。
【0244】
以下、図21図23を参照して、主走査方向に配列された複数の光源の一部を順次点灯させる動作の一例について説明する。
【0245】
図21に、DFガラス45に汚れ401が付着している場合における第1の例(1回目の点灯状態)を示す。図21には、(a)DFガラス45の上面側を示す平面図(走査範囲のみ図示)、(b)DFガラス45近傍の概略構成を示す正面図、(c)図21(a)中の点線Aにおける主走査方向の画像の濃度変化の一例が図示されている。
【0246】
図21(b)に示すように、読取モジュール500は、主走査方向に配列された複数のLED501と、遮光板502と、リフレクタ503とを備えている。
【0247】
図21(a)に示す例では、主走査方向の奥側(平面図の上側)の2つのLED501が点灯し、その他のLED501が消灯している状態が示されている。図21(a)では、点灯状態のLED501が白色によって表され、消灯状態のLED501が黒色によって表されている。この状態を1回目の点灯状態とする。
【0248】
主走査方向の奥側から汚れ401に照射される光が強いため、背景ガイド板200には、DFガラス45に付着している汚れ401の影411が映る。この影411は、主走査方向の奥側の光源(点灯状態のLED501)から照射される光により、点灯状態のLED501の位置とは反対側(すなわち、主走査方向の手前側)に偏って形成される。
【0249】
この1回目の点灯状態で画像読み取りを行うと、図21(c)に示すように、主走査方向の濃度変化(図21(a)の点線Aに沿った濃度変化)には、影411の存在を示す濃度傾斜が見られる。点灯状態のLED501から照射される光が当たりにくい主走査方向の手前側の部分には緩やかな長い濃度傾斜が見られるが、これは部分照明を行ったことによる傾斜であると判断される。
【0250】
図22に、DFガラス45に汚れ401が付着している場合における第2の例(2回目の点灯状態)を示す。図22には、(a)DFガラス45の上面側を示す平面図(走査範囲のみ図示)、(b)DFガラス45近傍の概略構成を示す正面図、(c)図22(a)中の点線Aにおける主走査方向の画像の濃度変化の一例が図示されている。
【0251】
図22(a)に示す例では、主走査方向の奥側(平面図の上側)の4つのLED501が点灯し、その他のLED501が消灯している状態が示されている。図22(a)では、点灯状態のLED501が白色によって表され、消灯状態のLED501が黒色によって表されている。この状態を2回目の点灯状態とする。
【0252】
主走査方向の奥側から汚れ401に照射される光が強いため、背景ガイド板200には、DFガラス45に付着している汚れ401の影411が映る。ただし、図21に示す1回目の点灯状態に比べると影411は薄い。
【0253】
この2回目の点灯状態で画像読み取りを行うと、図22(c)に示すように、主走査方向の濃度変化(図22(a)の点線Aに沿った濃度変化)には、影411の存在を示す濃度傾斜が見られる。ただし、影411が薄いことから、1回目の点灯状態に比べると濃度傾斜が少ない状態(傾きが急な状態)となっている。1回目の点灯状態と同様に、点灯状態のLED501から照射される光が当たりにくい主走査方向の手前側の部分には緩やかな長い濃度傾斜が見られるが、これは部分照明を行ったことによる傾斜であると判断される。
【0254】
図23に、DFガラス45に汚れ401が付着している場合における第3の例(3回目の点灯状態)を示す。図22には、(a)DFガラス45の上面側を示す平面図(走査範囲のみ図示)、(b)DFガラス45近傍の概略構成を示す正面図、(c)図23(a)中の点線Aにおける主走査方向の画像の濃度変化の一例が図示されている。
【0255】
図23(a)に示す例では、主走査方向の奥側(平面図の上側)の6つのLED501が点灯し、その他のLED501が消灯している状態が示されている。図23(a)では、点灯状態のLED501が白色によって表され、消灯状態のLED501が黒色によって表されている。この状態を3回目の点灯状態とする。
【0256】
主走査方向の異なる位置から汚れ401に照射される光の強さ(光量)が同等レベルであるため、背景ガイド板200には、DFガラス45に付着している汚れ401の薄い影411が映るか、又は、影411は全く映らない。
【0257】
この3回目の点灯状態で画像読み取りを行うと、図23(c)に示すように、主走査方向の濃度変化(図23(a)の点線Aに沿った濃度変化)には、読み取られた画像データの濃度変化には、白色濃度から汚れ濃度に突然落ち込む濃度変化や、汚れ濃度から白色濃度に突然上がる濃度変化は見られる。しかしながら、背景ガイド板200には影411は全く映らないか、影411が映っていたとしても読取モジュール300の光学素子303から見えない領域に映っていることから、濃度傾斜は見られない。1回目及び2回目の点灯状態と同様に、点灯状態のLED501から照射される光が当たりにくい主走査方向の手前側の部分には緩やかな長い濃度傾斜が見られるが、これは部分照明を行ったことによる傾斜であると判断される。
【0258】
以上、3回目の点灯状態まで説明したが、同様の方法で、点灯状態のLED501を増やしながらすべてのLED501が点灯するまで繰り返し画像読み取りを行う。このように、複数のLED501の一部を順次点灯させることで、汚れ401が主走査方向に対してどの位置に付着していても、繰り返し画像読み取りを行って得られたいずれかの画像において、背景ガイド板200に映る影411が、主走査方向の濃度変化における濃度傾斜として現れるようにすることができる。
【0259】
なお、背景ガイド板200に付着している汚れ403については、汚れ403が背景ガイド板200に付着している(すなわち、背景ガイド板200と汚れ403との間に距離がない)ことから影は映らず、濃度傾斜は現れない。
【0260】
複数のLED501の一部を順次点灯させる発光パターンは、上記の例に限定されるものではなく、複数のLED501が異なる発光パターンで発光を行うよう制御すればよい。例えば、上記の例とは逆の順序で、複数のLED501のすべてを点灯した状態から、複数のLED501を順次消灯してもよい。また、例えば、1回目の点灯状態では1番目及び2番目のLED501を点灯し、2回目の点灯状態では2番目及び3番目のLED501を点灯するなどのように、一定の個数のLED501を点灯状態としながら、点灯させるLED501を順次変更してもよい。
【0261】
第3の実施の形態では、例えば、本体制御部111が、画像読取部4による画像読み取りに同期して光源の発光状態を制御するようになっている。これにより、汚れ401の影411が主走査方向に偏って形成されるようになる。その他の構成は、第1の実施の形態における画像形成装置の構成(例えば、図17参照)と同様であり、説明を省略する。
【0262】
次に、図24及び図25を参照しながら、本発明の第3の実施の形態に係る画像形成装置1の汚れ検知処理について説明する。以下に説明する処理の流れは一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0263】
図24に示す汚れ検知処理は、例えば、ADF5を使用した画像読み取りの指示を受信すると開始される。一例として、ユーザが、ADF5の原稿テーブル51上に原稿束をセットして、操作部108のスタートボタンを押下してコピーの指示を入力した場合、汚れ検知処理が開始される。
【0264】
なお、ここでは、ADF5を使用したコピーの指示が入力されると、コピーを開始する前の割り込み処理として本体制御部111が汚れ検知処理を開始する場合について説明するが、例えば、汚れ検知モードを設定して、汚れ検知処理を単独で実行できるようにしてもよい。
【0265】
本体制御部111は、ADF5を制御して原稿シートSの搬送を停止し、原稿シートSが搬送されていない状態で、部分点灯照明の点灯状態を制御しながら、画像読取部4を制御して、異なる点灯状態における画像読み取りを順次行わせる(ステップS301)。ここでは、例えば図21図23で説明したように、読取モジュール500の光学素子303がADF5の読取位置に固定され、複数のLED501のすべてを消灯させた状態を初期状態として、主走査方向の奥側から順次LED501を点灯させながら画像読み取りが行われる。
【0266】
画像読み取りによって得られた画像データは検知部120に供給される。画像データの各画素には、画像読み取りの各位置に対応した濃度を特定することが可能な情報が含まれている。
【0267】
検知部120は、供給された画像データを参照し、汚れの濃度出力があるか否かを判定する(ステップS302)。これにより、汚れがあるか否かを判定することができる。汚れがある場合、画像データの主走査方向の濃度変化には、背景ガイド板200の白色濃度に対して濃度が落ち込んでいる部分が見られる。検知部120は、例えば、濃度が一定の閾値以下となる画素が検出された場合に、汚れの濃度出力があると判定することができる。
【0268】
汚れの濃度出力がないと判定された場合(ステップS302のNO)、本体制御部111は汚れがないと判定して、清掃アラートを清掃アラート報知部130に報知させず(ステップS303)、ADF5における原稿搬送を開始させる(ステップS304)。これにより、ユーザが最初に入力したコピー指示に従って、ADF5によるコピーが実行される。
【0269】
一方、汚れの濃度出力があると判定された場合(ステップS302のYES)には、図25に示す汚れ位置検知処理が行われる。検知部120は、白色濃度と汚れ濃度との境界付近の濃度変化に濃度傾斜があるか否かを判定する(ステップS401)。上述のように、DFガラス45に付着している汚れ401の影411は、背景ガイド板200の白色濃度と汚れ濃度との境界付近における濃度傾斜として現れる。したがって、濃度傾斜の存在は、背景ガイド板200に汚れ401の影411が映っていることを示している。
【0270】
複数の汚れが検出されている場合(すなわち、汚れが2箇所以上に付着している場合)には、複数の汚れのうちの少なくとも1つに影411の存在を示す濃度傾斜があれば、汚れ401の影411の濃度傾斜があると判定される。また、複数の汚れのすべてに影411の影響による濃度傾斜がなければ、濃度傾斜がないと判定される。
【0271】
濃度傾斜があるか否かの判定には様々な方法が適用可能であるが、一例として、白色濃度と汚れ濃度との境界付近の濃度変化に着目し、その濃度変化の絶対値が一定の閾値以下となっているか否かを判定する方法が挙げられる。この場合、濃度変化の絶対値が一定の閾値以下であれば、影411の影響による濃度傾斜があると判定することが可能である。
【0272】
なお、上述のように、例えば、主走査方向の濃度変化には、部分照明を行ったことによる緩やかな長い濃度傾斜が見られることがあり、このような部分照明による緩やかな長い傾斜と、影411の影響による濃度傾斜とを区別する必要がある。
【0273】
汚れ401の影411の濃度傾斜があると判定された場合(ステップS401のYES)、検知部120は、検出されたすべての汚れに係る濃度変化において、影411の影響による濃度傾斜があるか否かを判定する(ステップS402)。
【0274】
すべての汚れについて影411の影響による濃度傾斜があると判定された場合(ステップS402のYES)、検知部120は、検出された1つ又は複数の汚れのすべてがDFガラス45に付着していると判定する。この判定結果に基づき、本体制御部111は、DFガラス45の清掃を促す清掃アラートを清掃アラート報知部130に報知させる(ステップS403)。
【0275】
検出された一部の汚れについてのみ影411の影響による濃度傾斜がある場合、すなわち、影411の影響による濃度傾斜がある汚れと濃度傾斜がない汚れの両方が存在する場合(ステップS402のNO)、検知部120は、DFガラス45及び背景ガイド板200の両方に汚れが付着していると判定する(ステップS404)。この判定結果に基づき、本体制御部111は、DFガラス45及び背景ガイド板200の両方の清掃を促す清掃アラートを清掃アラート報知部130に報知させる(ステップS405)。
【0276】
汚れの影の濃度傾斜がないと判定された場合(ステップS401のNO)、検知部120は、背景ガイド板200に汚れ403が付着していると判定する。この判定結果に基づき、本体制御部111は、背景ガイド板200の清掃を促す清掃アラートを清掃アラート報知部130に報知させる(ステップS406)。
【0277】
なお、図25のフローチャートに係る汚れ位置検知処理では、本体制御部111は、検知部120による汚れ検知結果に基づいて清掃アラートを清掃アラート報知部130に報知させているが、汚れ検知結果は他の用途で用いられてもよい。
【0278】
以上説明したように、第3の実施の形態によれば、DFガラス45に付着している汚れと、背景ガイド板200に付着している汚れとを判別することができる。また、汚れの付着している部材を清掃するよう、正しい清掃箇所を指示することができる。さらに、汚れ検知処理における画像読み取りの際に読取モジュール500を副走査方向に移動させる必要がないことから、第1及び第2の実施の形態に比べて汚れ検知処理に要する時間を短縮することが可能となる。また、読取モジュール500の移動距離を短くすることができるため、装置の小型化を実現することが可能となる。
【0279】
本発明の基本的な概念は、汚れの影の有無を検出することで、汚れが透明部材(例えばDFガラス45)と、透明部材に対向する白色部材(例えば、背景ガイド板200)のどちらに付着しているかを判別するものである。本発明の実施の形態では、ADF5を使用して原稿の画像読み取りを行うためのDFガラス45に付着している汚れ401と、DFガラス45に対向する背景ガイド板200に付着している汚れ403とを判別する一例について説明しているが、これに限定されるものではない。例えば、第2コンタクトガラス46に付着している汚れと、ADF5を閉じた状態とした場合に第2コンタクトガラス46を覆うADF5下部の白色面に付着している汚れとを判別することも可能である。
【0280】
以上により、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態に制限されるものではない。また、本発明は、添付の特許請求の範囲に照らし、種々に変形又は変更することが可能である。
【符号の説明】
【0281】
1 画像形成装置
4 画像読取部
5 自動原稿搬送装置(ADF)
6 画像読取装置
41 第1キャリッジ
45 第1コンタクトガラス(DFガラス)
91 原稿読取ガイド
100 コントローラ部
108 操作部
108A 表示装置
111 本体制御部
120 検知部
130 清掃アラート報知部
200 背景ガイド板
300、500 読取モジュール
301 第1光源
302 第2光源
303 光学素子
311、501 LED
401 汚れ(DFガラスに付着している汚れ)
403 汚れ(背景ガイド板に付着している汚れ)
411、411a、411b、411c、411d 影
502 遮光板
503 リフレクタ
S 原稿シート
【先行技術文献】
【特許文献】
【0282】
【文献】特開2014-14000号公報
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