(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド及び液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
B41J2/14 603
(21)【出願番号】P 2018223340
(22)【出願日】2018-11-29
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】松藤 良太
(72)【発明者】
【氏名】秋山 幸太
(72)【発明者】
【氏名】竹内 則康
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-046541(JP,A)
【文献】特開2013-059998(JP,A)
【文献】特開2007-320186(JP,A)
【文献】特開2010-089402(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0050098(US,A1)
【文献】特開2006-181949(JP,A)
【文献】特開2009-149057(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0124019(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルにそれぞれ連通する個別液室に共通液室から液体を供給し、駆動素子を駆動して前記個別液室内の前記液体を前記ノズルから吐出する液体吐出ヘッドであって、
冷媒が流れる冷媒流路が、前記共通液室に対して前記個別液室が位置する側とは反対側に隣接して配置され
、
前記複数のノズルが並んだノズル列が該複数のノズルのノズル並び方向に対して直交する方向に複数配置され、
複数の前記ノズル列ごとに1つずつ設けられる前記共通液室が複数配置され、
複数の前記共通液室に対応して複数の前記冷媒流路がそれぞれ配置されており、
複数の前記共通液室は、前記ノズル並び方向の両端で互いに連通し、かつ、共通液体通路が接続されており、
複数の前記冷媒流路は、前記ノズル並び方向の両端で互いに連通し、かつ、共通冷媒通路が接続されており、
前記共通液体通路と前記共通冷媒通路とが互いに異なる位置に配置されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記冷媒流路は、前記共通液室に対して鉛直方向上方に配置されることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記冷媒流路を形成する冷媒流路部材は、前記複数のノズルのノズル並び方向に平行な方向と前記ノズル並び方向に直交する方向との少なくとも一方の方向において、前記共通液室を形成する共通液室部材の外側へはみ出さないことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項
1から3のいずれかに記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記ノズル並び方向の各端部に設けられる2つの前記共通液体通路は、前記ノズル列の列並び方向の一端側と他端側に配置され、
前記ノズル並び方向の各端部に設けられる2つの前記共通冷媒通路は、前記ノズル列の列並び方向の前記他端側と前記一端側に配置されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項5】
複数のノズルにそれぞれ連通する個別液室に共通液室から液体を供給し、駆動素子を駆動して前記個別液室内の前記液体を前記ノズルから吐出する液体吐出ヘッドであって、
冷媒が流れる冷媒流路が、前記共通液室に対して前記個別液室が位置する側とは反対側に隣接して配置され、
前記複数のノズルが並んだノズル列が該複数のノズルのノズル並び方向に対して直交する方向に複数配置され、
1又は2以上の前記ノズル列ごとに1つずつ設けられる前記共通液室が複数配置され、
複数の前記共通液室に対応して複数の前記冷媒流路がそれぞれ配置されており、
複数の前記共通液室は、前記ノズル並び方向の両端で互いに連通し、かつ、共通液体通路が接続されており、
複数の前記冷媒流路は、前記ノズル並び方向の両端で互いに連通し、かつ、共通冷媒通路が接続されており、
前記共通液体通路と前記共通冷媒通路とが互いに異なる位置に配置され、
前記ノズル並び方向の各端部に設けられる2つの前記共通液体通路は、前記ノズル列の列並び方向の一端側と他端側に配置され、
前記ノズル並び方向の各端部に設けられる2つの前記共通冷媒通路は、前記ノズル列の列並び方向の前記他端側と前記一端側に配置されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項6】
液体を吐出させる液体吐出ヘッドを備えた液体を吐出する装置において、
前記液体吐出ヘッドとして、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッドを用いたことを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド及び液体を吐出する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のノズルにそれぞれ連通する個別液室に共通液室から液体を供給し、駆動素子を駆動して前記個別液室内の前記液体を前記ノズルから吐出する液体吐出ヘッドが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、共通液室及び個別液室の両方を冷却するために、冷媒が流れる冷媒流路が、共通液室に対して個別液室の位置する側に隣接して配置された液体吐出ヘッドが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の構成では、ノズル間隔が広がってしまうという課題が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、複数のノズルにそれぞれ連通する個別液室に共通液室から液体を供給し、駆動素子を駆動して前記個別液室内の前記液体を前記ノズルから吐出する液体吐出ヘッドであって、冷媒が流れる冷媒流路が、前記共通液室に対して前記個別液室が位置する側とは反対側に隣接して配置され、前記複数のノズルが並んだノズル列が該複数のノズルのノズル並び方向に対して直交する方向に複数配置され、複数の前記ノズル列ごとに1つずつ設けられる前記共通液室が複数配置され、複数の前記共通液室に対応して複数の前記冷媒流路がそれぞれ配置されており、複数の前記共通液室は、前記ノズル並び方向の両端で互いに連通し、かつ、共通液体通路が接続されており、複数の前記冷媒流路は、前記ノズル並び方向の両端で互いに連通し、かつ、共通冷媒通路が接続されており、前記共通液体通路と前記共通冷媒通路とが互いに異なる位置に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、冷媒流路を設けても、ノズルの間隔を狭く維持することができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態1に係るインクジェット記録装置の要部構成を示す要部構成図。
【
図3】同インクジェット記録装置における液体吐出ヘッドの構成を簡略的に示した分解斜視図。
【
図4】同液体吐出ヘッドの各板状部材をノズル側から示す分解平面図。
【
図5】同液体吐出ヘッドの各板状部材を積層圧電素子側から示す分解平面図。
【
図6】同液体吐出ヘッドの
図3におけるA-A’断面を示す横断面図。
【
図7】実施形態2における液体吐出ヘッドの共通液室と温度調整流路との位置関係を示す説明図。
【
図8】同共通液室と同温度調整流路とを切り離して図示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態1〕
以下、本発明を、液体を吐出する装置であるインクジェット記録装置に使用される液体吐出ヘッドに適用した一実施形態(以下、本実施形態を「実施形態1」という。)について説明する。
なお、本発明は、以下に例示する実施形態によって限定されるものではない。
【0009】
なお、インクジェット記録装置によって画像を記録する記録材は、材質が紙に限定されるものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
【0010】
また、インクジェット記録装置には、特に限定しない限り、シリアル型インクジェット記録装置及びライン型インクジェット記録装置のいずれも含まれる。シリアル型インクジェット記録装置は、キャリッジに搭載された液体吐出ヘッドをシート送り方向と直交する主走査方向に移動させることで記録を行うものである。また、ライン型インクジェット記録装置は、記録領域の略全幅にわたって液滴を吐出する複数の吐出口(ノズル)を列設したライン型ヘッドを用いるものである。実施形態1では、シリアル型を採用した例について説明するが、シリアル型に限られるものではない。
【0011】
液体吐出ヘッドは、インク滴(液体)を吐出させるためのアクチュエーター手段の種類により、幾つかの方式に大別される。例えば液室の壁の一部を薄い振動板とし、これに対応して電気機械変換素子としての圧電素子を配置し、電圧印加に伴って発生する圧電素子の変形により振動板を変形させることで圧力発生室内の圧力を変化させて、インク滴を吐出させるピエゾ方式のものがある。また、液室内部に発熱体素子を配置し、通電による発熱体の加熱によって気泡を発生させ、気泡の圧力によってインク滴を吐出させる方式のものもある。また、液室の壁面を形成する振動板と、この振動板に対向して配置された液室外の個別電極との間に電界を形成して振動板を変形させて、液室内の圧力や体積を変化させることでノズルからインク滴を吐出させる静電型のものもある。実施形態1では、ピエゾ方式を採用した例について説明するが、ピエゾ方式に限られるものではない。
【0012】
まず、実施形態1に係るインクジェット記録装置の基本的な構成について説明する。
図1は、実施形態1に係るインクジェット記録装置の要部構成を示す要部構成図である。
図2は、同要部構成を示す平面図である。
【0013】
実施形態1に係るインクジェット記録装置は、シリアル型のインクジェット記録装置であり、左右の側板421A,421Bに横架した主従のガイドロッド431,432でキャリッジ433を主走査方向(矢印方向)に往復移動可能に保持している。このキャリッジ433には、液体吐出部材としての液体吐出ヘッド434と、液体吐出ヘッド434に液体であるインクを供給するサブタンクであるヘッドタンク435とを、一体にした2つの液体吐出ユニット430A,430Bを搭載している。液体吐出ヘッド434は、複数のノズル(吐出孔)からなるノズル列のノズル並び方向(ノズル列の長手方向)を、主走査方向と直交する副走査方向(液体吐出ヘッド長手方向)にし、液体吐出方向を鉛直方向下側に向けて装着される。
【0014】
2つの液体吐出ユニット430A,430Bのそれぞれは、ノズル列を二つずつ有している。一方の液体吐出ユニット430Aの液体吐出ヘッド434は、一方のノズル列の各ノズルでブラック(K)のインク滴を吐出し、かつ、他方のノズル列の各ノズルでシアン(C)のインク滴を吐出する。また、他方の液体吐出ユニット430Bの液体吐出ヘッド434は、一方のノズル列の各ノズルでマゼンタ(M)のインク滴を吐出し、かつ、他方のノズル列の各ノズルでイエロー(Y)のインク滴を吐出する。
【0015】
なお、実施形態1に係るインクジェット記録装置は、二つの液体吐出ヘッドを使用して4色のインク滴を吐出するものであるが、1つの液体吐出ヘッドに4つのノズル列を配置して、1個の液体吐出ヘッドから4色のインクを吐出させることもできる。また、液体吐出ユニット430A,430Bにおける「一体化」は、液体吐出ヘッド434とヘッドタンク435とが直接、または、フィルタ部材などを介して相互に締結部材や接着などで固定されていることを意味する。あるいは、液体吐出ヘッド434とヘッドタンク435とが、チューブなどで相互に接続されていることなどを意味する。
【0016】
装置本体側のカートリッジホルダ404には、各色の液体カートリッジであるメインタンク410k,410c,410m,410yが着脱自在に装着される。そして、各液体吐出ユニット430A,430Bのヘッドタンク435には、各色の供給チューブ436を介して、送液ポンプ438cを含む送液ユニット424によって各色のメインタンク410から各色のインクが送液される。
【0017】
実施形態1に係るインクジェット記録装置は、給紙トレイ402のシート積載部441上に積載した記録材としての記録シート442を給紙するための給紙部を備えている。この給紙部は、シート積載部441から記録シート442を1枚ずつ分離給送する給紙コロ443及び給紙コロ443に対向する分離パッド444などからなる。
【0018】
また、実施形態1に係るインクジェット記録装置は、給送された記録シート442を搬送及び案内するガイド445、カウンタローラ446、搬送ガイド部材447、先端加圧コロ449を有する押さえ部材448も備えている。さらに、搬送された記録シート442を吸着して液体吐出ユニット430の液体吐出ヘッド434に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト451も備えている。
【0019】
搬送ベルト451は、無端状ベルトであり、搬送ローラ452とテンションローラ453との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成されている。この搬送ベルト451には、帯電手段である帯電ローラ456で帯電される静電搬送ベルトを使用している。ただし、搬送ベルト451としては、エアー吸引で吸着する搬送ベルトでもよい。また、搬送手段としては、搬送ベルトを使用しないで、ローラによって搬送するものでもよい。
【0020】
搬送ベルト451を掛け回したテンションローラ453の下流側には、搬送ベルト451から記録シート442を分離するための分離爪461と、排紙ローラ462及び排紙コロ463とを備え、排紙ローラ462の下方に排紙トレイ403を備えている。また、装置本体の背面部には両面ユニット471が着脱自在に装着されている。この両面ユニット471は搬送ベルト451の逆方向回転で戻される記録シート442を取り込んで反転させて、再度、カウンタローラ446と搬送ベルト451との間に給紙する。また、この両面ユニット471の上面は手差しトレイ472としている。さらに、キャリッジ433の走査方向一方側の非印字領域には、液体吐出ユニット430A,430Bにおける液体吐出ヘッド434のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構481を配置している。
【0021】
この維持回復機構481は、液体吐出ヘッド434のノズル面をキャッピングするための各キャップ482a,482bを備えている。また、維持回復機構481は、ノズル面をワイピングするためのブレード部材483を備えている。また、維持回復機構481は、増粘したインクを排出するために画像形成に寄与しないインクを吐出させる空吐出を行うときのインクを受ける空吐出受け484などを備えている。また、キャリッジ433の走査方向他方側の非印字領域には、画像形成中などに空吐出を行うときのインクを受ける空吐出受け488を配置している。この空吐出受け488には液体吐出ヘッド434のノズル配列方向に沿った開口部489などを備えている。
【0022】
実施形態1に係るインクジェット記録装置においては、給紙トレイ402から記録シート442が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直方向上方に給紙された記録シート442はガイド445で案内され、搬送ベルト451とカウンタローラ446との間に挟まれて搬送される。更に、記録シート442は、先端を搬送ガイド437で案内されて先端加圧コロ449で搬送ベルト451に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。そして、帯電した搬送ベルト451上に記録シート442が給送されると、記録シート442が搬送ベルト451に吸着され、搬送ベルト451の周回移動によって記録シート442が副走査方向に搬送される。そこで、キャリッジ433を移動させながら画像信号に応じて液体吐出ユニット430A,430Bの液体吐出ヘッド434を駆動することにより、停止している記録シート442にインクを吐出して1行分の画像を記録する。そして、記録シート442を所定量搬送後、次の行の画像形成を行う。記録終了信号又は記録シート442の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、記録シート442を排紙トレイ403に排紙する。
【0023】
図3は、液体吐出ヘッド434の構成を簡略的に示した分解斜視図である。
図4は、液体吐出ヘッド434の各板状部材をノズル側から示す分解平面図である。
図5は、液体吐出ヘッド434の各板状部材を積層圧電素子側から示す分解平面図である。
図6は、液体吐出ヘッド434の
図3におけるA-A’断面を示す横断面図である。
なお、
図3~
図6は、液体吐出ヘッド434に設けられる2つのノズル列のうちの一方のみを図示したものである。
【0024】
これらの図において、複数の吐出孔たるノズル1は、吐出孔形成部材としてのノズルプレート2に形成されており、ノズルプレート2はステンレス板からなる。ノズル1となるスリット(貫通孔)の加工精度は、液体吐出ヘッド434のインク吐出特性に大きな影響を及ぼす。複数のノズル1の間において、寸法精度のバラツキを小さく抑えるためには、ノズルプレート2の複数のスリットを高精度で加工する必要がある。このため、ノズルプレート2の複数のスリットは、プレス加工法、レーザー加工法、ニッケルの電鋳加工法等によって形成されている。
【0025】
複数の個別液室である圧力発生室3やこれらに個別に連通する複数の個別供給路4は、流路プレート5に設けられたスリットによってその側面が形成されている。複数の個別供給路4のそれぞれは、後述する共通液室10と複数の圧力発生室3とを個別に連通させており、プレート面方向のサイズが比較的大きな大径部(
図6の符号4a)と比較的小さな小径部(
図6の符号4b)とを有している。そして、その小径部4bにおける流路抵抗により、共通液室10から圧力発生室3へのインク流入量を制御する。
【0026】
複数の圧力発生室3のそれぞれは、ノズルプレート2に設けられた複数のノズル1のいずれか一つに連通している。個別供給路4や圧力発生室3を形成するために個別液室形成部材や個別供給路形成部材としての流路プレート5に設けられたスリットは、精密プレス法によって加工されたものである。
【0027】
振動板プレート8には、圧電アクチュエーター21の変位を効率よく圧力発生室3に伝えるためのダイヤフラム膜7や、共通液室10と複数の個別供給路4との境界に存在する個別供給開口6などが形成されている。ダイヤフラム膜7は、振動板プレート8の母材板における無垢の領域によって構成されたもので、母材板と同じ厚みになっている。振動板プレート8において、ダイヤフラム膜7よりも厚い箇所は、母材板と、母材板に対する電気鋳造によって電着された部分とによって構成されている。個別供給開口6は貫通開口になっていて、個別供給路4の内部と共通液室10の内部とを連通させる。
【0028】
共通液室形成部材たるフレーム11には、後述する圧電アクチュエーター21を挿入するためのアクチュエーター挿入部9を構成するための矩形状の大きな貫通開口が形成されている。また、共通液室10を形成するための矩形状の大きな開口も形成されている。また、フレーム11における共通液室10が開口している側とは反対側には、冷媒流路である温度調整流路12を形成するための矩形状の大きな開口も形成されている。温度調整流路12は、共通液室10に隣接するように形成され、共通液室10に対し、圧力発生室3が形成される流路プレート5とは反対側に位置する。本実施形態1では、共通液室10に対して鉛直方向上方に温度調整流路12が配置されることになる。
【0029】
仕切り板13は、フレーム11における温度調整流路12の開口に蓋をして温度調整流路12を封止するためのものである。仕切り板13には、ヘッドタンク435から送られてくるインクを共通液室10まで導き、また、共通液室10内を通過したインクを共通液室10から排出するためのインク導入出流路14を形成する貫通孔が形成されている。また、仕切り板13には、温度調整流路12に対して冷媒である温調液を導入、排出するための温調液導入出流路15を形成する貫通孔も形成されている。それら貫通開口や貫通穴を形成する方法としては、切削加工等を例示することができる。
【0030】
アクチュエーター挿入部9を構成するための矩形の貫通開口は圧電アクチュエーター21の全体を収容するように形成されているが、圧電アクチュエーター21の複数の圧電素子19を個別に収容するように複数の仕切り壁を設けて剛性を高めてもよい。剛性を高めることで、クロストーク(チャンネル(ノズル1、圧力発生室3、個別供給路4及び圧電素子19の組み合わせ)間の相互干渉)の機会的要因による不具合を低減することができる。
【0031】
圧電アクチュエーター21は、複数のノズル1のそれぞれに個別に対応する複数の圧電素子19と、これを固定する固定部材20とを有している。圧電素子19の一端面は固定部材20の一端面に接着剤を用いて固着され、圧電素子19のもう一端面はダイヤフラム膜7に接合されている。それぞれの圧電素子19には、素子毎に個別に設けられた個別電極と、各素子で共通の共通電極とが接続され、複数の個別電極には電源の入切を個別に制御するための個別のスイッチング素子が接続されている。それらのスイッチング素子は、フレキシブルプリント基板22に配設されている。このような電極構成により、複数の圧電素子19のそれぞれを個別に駆動する(変位させる)ことが可能になっており、その個別の駆動によって、複数の圧力発生室3内のインク圧力を個別に変化させることができる。圧電素子19の変位によってインク圧力が高められた圧力発生室3に通じるノズル1からは、インク滴が吐出する。
【0032】
図6に示される横断面は、一つのチャンネルの断面を示している。また、
図4、
図5の各構成部品について断面として示している箇所については、A―A’線上で破断した箇所に相当する。
【0033】
ヘッドタンク435から導入されたインクは、インク導入出流路14を経て共通液室10に流入する。この共通液室10には、各チャンネルの個別供給路4におけるそれぞれの大径部4aが個別供給開口6を介して通じている。共通液室10から個別供給路4の大径部4aに進入したインクは、小径部4bへ進入して流路抵抗を付与されながら圧力発生室3に向かう。
【0034】
次に、本実施形態1における液体吐出ヘッド434におけるインクの冷却について説明する。
本実施形態1の液体吐出ヘッド434では、インク吐出のために圧電アクチュエーター21を駆動させるため、圧電素子19が発熱する。発熱した熱は、液体吐出ヘッド434を構成するヘッド構造体(フレーム11等)を介して、吐出させるインクを加熱する。より高速にインクを吐出させるためには、高周波数で圧電アクチュエーター21の振動が発生させる必要があり、この場合には特に熱が発生し、インクの温度が変化するようになる。また、インクの温度は、環境温度の変化によっても変化する。このような温度変化によってインクの粘度と表面張力等の変化が発生するようになるため、インクの吐出速度や吐出体積(吐出量)などが変化し、記録品質に悪影響を及ぼす。なお、この問題は、本実施形態1のようなピエゾ方式に限らず、発熱体素子を用いる方式や静電型のものでも、同様に発生する。
【0035】
一般に、液体吐出ヘッドにおいて、ヘッド駆動による発熱を放熱及び温度調整する技術の中では、加熱されたインクの熱を直接的に放熱させるのが有効である。なぜなら、発熱原となる駆動素子やその駆動回路基板を冷却する構成では、いわゆる環境温度の変化によるインクの温度変化には対応できないからである。そして、加熱されたインクの熱を直接的に放熱させる構成としては、個々の圧力発生室3を冷却することも考えられるが、それよりも共通液室10を冷却する方が、インクを効率よく冷却できる。
【0036】
ここで、従来、冷媒が流される冷媒流路(本実施形態1の温度調整流路12)を共通液室10に対して圧力発生室3の位置する側に隣接して配置したものがあるが、この場合、その冷媒流路内には、共通液室10と各圧力発生室3とを連通させる複数の個別供給路4が存在してしまう。このような複数の個別供給路4が冷媒流路内に存在すると、冷媒の流れを確保するために個別供給路4間の間隔を広げる必要があり、これに合わせて圧力発生室3間の間隔も広げる必要がある。その結果、各圧力発生室3に連通するノズル1の間隔も広げる必要が生じ、画像解像度が悪化し、また、液体吐出ヘッド434が大型化することになる。
【0037】
そこで、本実施形態1においては、
図6に示すように、液体吐出方向(
図6中上下方向)において、冷媒流路である温度調整流路12を、共通液室10に対して圧力発生室3の位置する側とは反対側に隣接して配置している。これにより、温度調整流路12には、共通液室10と各圧力発生室3とを連通させる個別供給路4が存在することはなく、冷媒の流れを確保するために個別供給路4間の間隔(ノズル並び方向の間隔。
図6中紙面垂直方向)を広げる必要がなく、圧力発生室3間の間隔も広げる必要がないため、ノズル1の間隔を狭く維持することができる。
【0038】
また、本実施形態1の液体吐出ヘッド434は、ノズル列を2つ備えているところ、これらのノズル列の間隔も、同様の理由から、狭く維持することができる。ノズル列の間隔(配列ピッチ)が狭く維持されれば、液体吐出ヘッド434の移動速度ムラによるノズル列間の着弾位置誤差を小さくすることが可能となり、より高品質な画像の記録が実現される。
【0039】
更には、共通液室10と圧力発生室3や個別供給路4との間に温度調整流路12を設けないことで、圧力発生室3を形成する流路プレート5とこれに接合される振動板プレート8との間に温度調整流路12用の空間を設ける必要がなくなり、広い接合面を確保できる。これにより、圧力発生室3を形成する流路プレート5の剛性が確保でき、クロストークの機会的要因による不具合を低減することができる。
【0040】
ここで、圧電素子19で発熱した熱は、圧力発生室3や個別供給路4から共通液室10へと伝わって、共通液室10内のインクが加熱される。液体吐出ヘッド434内におけるインク全体の熱分布は、熱対流が発生するために共通液室10の鉛直方向上方において、インク温度が高くなる傾向になる。本実施形態1における液体吐出ヘッド434は、ノズルプレート2が鉛直方向下側に向くように装着され、液体吐出方向が鉛直方向下側へ向けられる。したがって、本実施形態1の温度調整流路12は、共通液室10に対して鉛直方向上方に配置される。よって、本実施形態1によれば、共通液室10の鉛直方向上方の熱を温度調整流路12内の冷媒と熱交換でき、冷却効率の良い液体吐出ヘッド434が実現できる。
【0041】
〔実施形態2〕
次に、本発明を、液体を吐出する装置であるインクジェット記録装置に使用される液体吐出ヘッドに適用した他の実施形態(以下、本実施形態を「実施形態2」という。)について説明する。
本実施形態2のインクジェット記録装置は、1つの液体吐出ヘッドに対して4つのノズル列を備え、全ノズル列から同色のインクを吐出するものである。ただし、その基本構成や動作については、上述した実施形態1と同様であるため、以下、液体吐出ヘッドの冷却構成を中心に説明する。
【0042】
図7は、本実施形態2における液体吐出ヘッド434の共通液室10と温度調整流路12との位置関係を示す説明図である。
図8は、共通液室10と温度調整流路12とを切り離して図示した説明図である。
本実施形態2のインクジェット記録装置に搭載される液体吐出ヘッド434は、上述のとおり、4つのノズル列を備えており、各ノズル列に対応して1つずつの共通液室10が設けられている。本実施形態2では、4つのノズル列のすべてから同色のインクを吐出するため、各ノズル列に接続される合計4つの共通液室10には、同色のインクが供給される。
【0043】
本実施形態2において、4つの共通液室10は、ノズル並び方向の一端で液体連通路23Aにより互いに連通され、液体連通路23Aには、ヘッドタンク435に接続された共通液体通路24Aが接続されている。また、4つの共通液室10は、ノズル並び方向の他端でも液体連通路23Bにより互いに連通されており、液体連通路23Bには、共通液室10から排出されるインクを排出するための共通液体通路24Bが接続されている。
【0044】
また、本実施形態2においては、4つの共通液室10に対応して4つの冷媒流路である温度調整流路12がそれぞれ配置されている。各温度調整流路12は、ノズル並び方向の一端で冷媒連通路25Aにより互いに連通され、冷媒連通路25Aには、冷媒供給元に接続された共通冷媒通路26Aが接続されている。また、4つの温度調整流路12は、ノズル並び方向の他端でも冷媒連通路25Bにより互いに連通されており、冷媒連通路25Bには、温度調整流路12から排出される冷媒(温調液)を排出するための共通冷媒通路26Bが接続されている。
【0045】
本実施形態2においても、液体吐出方向(
図7中上下方向)において、4つの温度調整流路12が、4つの共通液室10のそれぞれに対して圧力発生室3の位置する側とは反対側に隣接して配置される。したがって、ノズル1の間隔を狭く維持することができるなど、上述した実施形態1と同様の効果が発揮される。
【0046】
また、本実施形態2における4つの温度調整流路12も、4つの共通液室10のそれぞれに対して鉛直方向上方に配置される。よって、本実施形態2も、上述した実施形態1と同様、各共通液室10の鉛直方向上方の熱をそれぞれの温度調整流路12内の冷媒と熱交換でき、冷却効率の良い液体吐出ヘッド434が実現できる。
【0047】
さらに、本実施形態2では、
図7に示すように、共通液体通路24A,24Bと共通冷媒通路26A,26Bとが互いに異なる位置に配置される。具体的には、共通液体通路24A,24Bは、ノズル並び方向(副走査方向)の各端部におけるノズル列の列並び方向(主走査方向)の一端側に寄せて配置され、共通冷媒通路26A,26Bは、ノズル並び方向(副走査方向)の各端部におけるノズル列の列並び方向(主走査方向)の他端側に寄せて配置されている。
【0048】
このような配置により、共通液体通路24A,24B及び共通冷媒通路26A,26Bを、ノズル並び方向(副走査方向)において同じ位置に配置することができ、ノズル並び方向への大型化を抑制できる。
【0049】
特に、本実施形態では、鉛直方向上方から見て、共通冷媒通路26A,26Bは、それぞれ対角に配置される。これにより、4つの温度調整流路12のそれぞれを通る、入口側の共通冷媒通路26Aから出口側の共通冷媒通路26Bまでの流路長が互いに略同一のものとすることが容易になる。そのため、4つの温度調整流路12の流体抵抗を略均一化して、冷媒(温調液)の流量を均一化でき、4つの共通液室10に対する冷却効果のばらつきをなくすことができる。
【0050】
しかも、本実施形態では、鉛直方向上方から見て、共通液体通路24A,24Bは、それぞれ対角に配置される。これにより、4つの共通液室10のそれぞれを通る、入口側の共通液体通路24Aから出口側の共通液体通路24Bまでの流路長が互いに略同一のものとすることが容易になる。そのため、4つの共通液室10の流体抵抗を略均一化して、インクの流量を均一化でき、4つの共通液室10間でインクの冷却効果のばらつきをなくすことができる。
【0051】
また、本実施形態2では、4つの共通液室10及び4つの温度調整流路12がノズル並び方向の両端でそれぞれ液体連通路23A,23B及び冷媒連通路25A,25Bにより連通されているため、流路制御が複雑にならず、容易である。
【0052】
本明細書において、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0053】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0054】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置であるインクジェット記録装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0055】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0056】
前記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0057】
前記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、壁紙や床材などの建材、衣料用のテキスタイルなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0058】
また、「液体」は、液体吐出ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30[mPa・s]以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。具体的には、「液体」は、インク、処理液、DNA試料、レジスト、パターン材料、結着剤、造形液、又は、アミノ酸、たんぱく質、カルシウムを含む溶液及び分散液なども含まれる。
【0059】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0060】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0061】
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0062】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0063】
例えば、液体吐出ユニットとして、本実施形態1及び2で説明したように、液体吐出ヘッド434とヘッドタンク435が一体化されている液体吐出ユニット430A,430Bがある。また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取り付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものとする。
【0064】
また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0065】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する
[第1態様]
第1態様は、複数のノズル1にそれぞれ連通する個別液室(例えば圧力発生室3)に共通液室10から液体(例えばインク)を供給し、駆動素子(例えば圧電素子19)を駆動して前記個別液室内の前記液体を前記ノズルから吐出する液体吐出ヘッド434であって、冷媒(例えば温調液)が流れる冷媒流路(例えば温度調整流路12)が、前記共通液室に対して前記個別液室が位置する側とは反対側に隣接して配置されていることを特徴とするものである。
冷媒流路が共通液室に対して個別液室の位置する側に隣接して配置される従来の構成では、その冷媒流路内には、共通液室と各個別液室とを連通させる複数の個別供給路が存在する。このような複数の個別供給路が冷媒流路内に存在すると、冷媒の流れを確保するために個別供給路間の間隔を広げる必要があり、これに合わせて個別液室間の間隔も広げる必要がある。その結果、各個別液室に連通するノズルの間隔も広げる必要が生じる。
本態様によれば、冷媒流路が、前記共通液室に対して前記個別液室が位置する側とは反対側に隣接して配置されているため、共通液室と各個別液室とを連通させる個別供給路が冷媒流路内に存在することはない。そのため、冷媒の流れを確保するために個別供給路間の間隔を広げる必要がなく、個別液室間の間隔も広げる必要がないため、ノズルの間隔を狭く維持することができる。
【0066】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記冷媒流路は、前記共通液室に対して鉛直方向上方に配置されることを特徴とするものである。
これによれば、液体温度が高くなる傾向にある共通液室の鉛直方向上方部分の熱を冷媒流路内の冷媒と熱交換でき、冷却効率の良い液体吐出ヘッドが実現できる。
【0067】
[第3態様]
第3態様は、第1又は第2態様において、前記冷媒流路を形成する冷媒流路部材(例えばフレーム11)は、前記複数のノズルのノズル並び方向(例えば副走査方向)に平行な方向と前記ノズル並び方向に直交する方向(例えば主走査方向)との少なくとも一方の方向において、前記共通液室を形成する共通液室部材(例えばフレーム11)の外側へはみ出さないことを特徴とするものである。
これによれば、冷媒流路を備えた液体吐出ヘッドにおいて小型化を実現できる。
【0068】
[第4態様]
第4態様は、第1乃至第3態様のいずれかにおいて、前記複数のノズルが並んだノズル列が該複数のノズルのノズル並び方向に対して直交する方向に複数配置され、1又は2以上の前記ノズル列ごとに1つずつ設けられる前記共通液室が複数配置され、複数の前記共通液室に対応して複数の前記冷媒流路がそれぞれ配置されており、複数の前記共通液室は、前記ノズル並び方向の両端で互いに連通し、かつ、共通液体通路(例えば共通液体通路24A,24B)が接続されており、複数の前記冷媒流路は、前記ノズル並び方向の両端で互いに連通し、かつ、共通冷媒通路(例えば共通冷媒通路26A,26B)が接続されており、前記共通液体通路と前記共通冷媒通路とが互いに異なる位置に配置されていることを特徴とするものである。
これによれば、共通液体通路及び共通冷媒通路を、ノズル並び方向において同じ位置に配置することができ、ノズル並び方向への大型化を抑制できる。
【0069】
[第5態様]
第5態様は、第4態様において、前記ノズル並び方向の各端部に設けられる2つの前記共通液体通路は、前記ノズル列の列並び方向の一端側と他端側に配置され、前記ノズル並び方向の各端部に設けられる2つの前記共通冷媒通路は、前記ノズル列の列並び方向の前記他端側と前記一端側に配置されていることを特徴とするものである。
本態様によれば、共通液体通路及び共通冷媒通路が、それぞれ、複数の共通液室及び複数の冷媒流路に対して、いわゆる対角に配置される。これにより、複数の共通液室間、及び、複数の冷媒流路間において、流路長が略同一のものとなり、流体抵抗を略均一化して、流量を均一化できる。その結果、4つの共通液室10間におけるインクの冷却効果のばらつきをなくすことができる。
【0070】
[第6態様]
第6態様は、液体を吐出させる液体吐出ヘッド434を備えた液体を吐出する装置(例えばインクジェット記録装置)において、前記液体吐出ヘッドとして、第1乃至第5態様のいずれかの液体吐出ヘッドを用いたことを特徴とするものである。
これによれば、冷媒流路を設けてもノズルの間隔が狭い液体を吐出する装置を実現できる。
【符号の説明】
【0071】
1:ノズル
2:ノズルプレート
3:圧力発生室
4:個別供給路
5:流路プレート
6:個別供給開口
7:ダイヤフラム膜
8:振動板プレート
9:アクチュエーター挿入部
10:共通液室
11:フレーム
12:温度調整流路
13:仕切り板
14:インク導入出流路
15:温調液導入出流路
19:圧電素子
20:固定部材
21:圧電アクチュエーター
22:フレキシブルプリント基板
23A,23B:液体連通路
24A,24B:共通液体通路
25A,25B:冷媒連通路
26A,26B:共通冷媒通路
410:メインタンク
430A,430B:液体吐出ユニット
433:キャリッジ
434:液体吐出ヘッド
435:ヘッドタンク
436:供給チューブ
442:記録シート
481:維持回復機構
【先行技術文献】
【特許文献】
【0072】