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特許7196679無線通信システム、送信装置及び無線通信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】無線通信システム、送信装置及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/26 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
H04L27/26 113
H04L27/26 320
H04L27/26 410
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019028836
(22)【出願日】2019-02-20
(65)【公開番号】P2020136930
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 史洋
【審査官】吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-176406(JP,A)
【文献】国際公開第2010/113499(WO,A1)
【文献】阿部 順一 他,スペクトラム編集技術を用いた帯域分散伝送の提案,電子情報通信学会2009年通信ソサイエティ大会通信講演論文集1,日本,2009年09月01日,p.263
【文献】阿部 順一 他,帯域分散伝送におけるブラインド型位相歪み補償方式,電子情報通信学会2011年通信ソサイエティ大会通信講演論文集1,日本,2011年08月30日,p.303
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号を複数のサブスペクトラムに分解して送信する送信装置と前記送信信号を受信する受信装置を備えた無線通信システムであって、
前記受信装置は、
前記送信信号よりも周波数帯域が狭い干渉信号が重畳された受信信号における干渉信号の周波数帯域を推定する干渉推定部と、
前記干渉推定部が推定した前記干渉信号の周波数帯域を前記送信装置に対してフィードバックするフィードバック部と、
前記送信装置が分解した複数のサブスペクトラムに対応する周波数帯域の複数のサブスペクトラムを合成する帯域合成部と
を有し、
前記送信装置は、
前記受信装置からフィードバックされた前記干渉信号の周波数帯域に基づいて、前記送信信号を分割する帯域を決定する制御を行う帯域分割制御部と、
前記帯域分割制御部が決定した帯域に基づいて、前記干渉信号とサブスペクトラムが部分的に重畳するように前記送信信号を複数のサブスペクトラムに帯域分割する帯域分割部と
を有することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記受信装置は、
前記送信装置が送信した複数のサブスペクトラムと、当該受信装置が受信した複数のサブスペクトラムとの周波数誤差を検出する周波数誤差検出部
をさらに有し、
前記フィードバック部は、
前記周波数誤差検出部が検出した前記周波数誤差を前記送信装置に対してさらにフィードバックし、
前記帯域合成部は、
前記周波数誤差検出部が検出した前記周波数誤差に基づいて、複数のサブスペクトラムを合成すること
を特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記帯域分割部は、
干渉信号が存在する周波数帯域に加えて、干渉信号が存在しない周波数帯域に対しても、前記送信信号を複数のサブスペクトラムに帯域分割すること
を特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記受信装置は、
前記干渉推定部が推定した前記干渉信号の周波数帯域、及び前記周波数誤差検出部が検出した前記周波数誤差に基づいて、前記干渉信号が重畳しているサブスペクトラムについての周波数誤差を前記帯域合成部が使用しないように制御する周波数誤差制御部
をさらに有すること
を特徴とする請求項3に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記帯域分割部は、
周波数軸上で複数のサブスペクトラムが連続するように帯域分割すること
を特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項6】
送信信号を複数のサブスペクトラムに分解して受信装置へ送信する送信装置であって、
前記受信装置からフィードバックされる、前記送信信号よりも周波数帯域が狭い干渉信号が重畳された前記受信装置の受信信号における干渉信号の周波数帯域に基づいて、前記送信信号を分割する帯域を決定する制御を行う帯域分割制御部と、
前記帯域分割制御部が決定した帯域に基づいて、前記干渉信号とサブスペクトラムが部分的に重畳するように前記送信信号を複数のサブスペクトラムに帯域分割する帯域分割部と
を有することを特徴とする送信装置。
【請求項7】
送信装置が受信装置に対して送信信号を複数のサブスペクトラムに分解して送信する無線通信方法であって、
前記受信装置が、前記送信信号よりも周波数帯域が狭い干渉信号が重畳された受信信号における干渉信号の周波数帯域を推定する干渉推定工程と、
前記受信装置が、推定した干渉信号の周波数帯域を前記送信装置に対してフィードバックするフィードバック工程と、
前記送信装置が、前記受信装置からフィードバックされた前記干渉信号の周波数帯域に基づいて、前記送信信号を分割する帯域を決定する制御を行う帯域分割制御工程と、
前記送信装置が、決定した帯域に基づいて、前記干渉信号とサブスペクトラムが部分的に重畳するように前記送信信号を複数のサブスペクトラムに帯域分割する帯域分割工程と、
前記受信装置が、前記送信装置が分解した複数のサブスペクトラムに対応する周波数帯域の複数のサブスペクトラムを合成する帯域合成工程と
を含むことを特徴とする無線通信方法。
【請求項8】
前記送信装置が送信した複数のサブスペクトラムと、当該受信装置が受信した複数のサブスペクトラムとの周波数誤差を検出する周波数誤差検出工程
をさらに含み、
前記フィードバック工程では、
前記受信装置が、前記周波数誤差検出工程で検出した前記周波数誤差を前記送信装置に対してさらにフィードバックし、
前記帯域合成工程では、
前記受信装置が、前記周波数誤差検出工程で検出した前記周波数誤差に基づいて、複数のサブスペクトラムを合成すること
を特徴とする請求項7に記載の無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、送信装置及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、衛星通信における送信信号に干渉信号が重畳した場合のスペクトラムを示す。図5(a)は、干渉信号のスペクトラムを示す。図5(b)は、送信信号のスペクトラムを示す。図5(c)は、受信信号のスペクトラムを示す。図5に示すように、受信信号は、送信信号に対して、送信信号よりも周波数帯域が狭い干渉信号が重畳することがある。
【0003】
図6は、第1の干渉回避技術を用いた場合のスペクトラムを示す。図6(a)は、干渉信号のスペクトラムを示す。図6(b)は、送信信号のスペクトラムを示す。図6(c)は、受信信号のスペクトラムを示す。図6に示したように、例えば、衛星事業者側が干渉要因を特定できない場合は、通常、衛星事業者の指示に基づいて、干渉信号と送信信号が重畳しないように、利用者が送信信号の周波数をずらす(以降、第1技術と称する)。
【0004】
図7は、第2の干渉回避技術を用いた場合のスペクトラムを示す。図7(a)は、干渉信号のスペクトラムを示す。図7(b)は、送信信号のスペクトラムを示す。図7(c)は、受信信号のスペクトラムを示す。図7に示したように、マルチキャリアや、マルチスペクトラムで信号を伝送できる場合は、非特許文献1,2に記載されているように、干渉信号を避けるように送信信号を複数の信号に分割して伝送する方法(以降、第2技術と称する)もある。
【0005】
図8は、第2技術を実現する帯域分解合成機能を備えた無線通信システム10の概要を示す。無線通信システム10は、例えば信号送信装置(送信装置)20及び信号受信装置(受信装置)30を備え、送信信号に対して、当該送信信号よりも周波数帯域が狭い干渉信号が重畳する通信環境において無線通信を行うものとする。
【0006】
信号受信装置30は、干渉推定部300、フィードバック部302、周波数誤差検出部304、周波数誤差制御部306及び帯域合成部308を有する。
【0007】
干渉推定部300は、信号受信装置30が受信する受信信号における干渉信号の周波数帯域(干渉信号帯域)を推定して特定する。
【0008】
フィードバック部302は、干渉推定部300が推定した干渉信号帯域を示す干渉信号帯域情報を含む受信信号情報を信号送信装置20に対してフィードバックする。
【0009】
周波数誤差検出部304は、受信信号に含まれる複数の受信サブスペクトラムから周波数誤差を検出し、周波数誤差情報を周波数誤差制御部306に対して出力する。
【0010】
周波数誤差制御部306は、周波数誤差検出部304が検出した周波数誤差に基づいて、受信信号に含まれる複数の受信サブスペクトラムの周波数誤差を除去する。
【0011】
帯域合成部308は、周波数誤差制御部306が周波数誤差を除去した複数の受信サブスペクトラムを合成して出力する。
【0012】
信号送信装置20は、帯域分割制御部200及び帯域分割部202を有する。
【0013】
帯域分割制御部200は、信号受信装置30からフィードバックされた受信信号情報に基づいて、送信信号を分割する帯域を決定する制御を行う。
【0014】
帯域分割部202は、帯域分割制御部200が決定した帯域に基づいて、送信信号を複数のサブスペクトラムに帯域分割する。
【0015】
図9は、図8に示した無線通信システム10の動作原理を示す。図9(a)は、干渉信号のスペクトラムを示す。図9(b)は、信号送信装置20による主信号の帯域分割を示す。図9(c)は、分割された送信信号(送信分割信号)と干渉信号のスペクトラムを示す。図9(d)は、信号受信装置30による帯域合成フィルタリングを示す。図9(e)は、信号受信装置30が合成した帯域合成信号を示す。
【0016】
信号送信装置20は、予め推定された干渉信号の周波数を回避するように帯域分解フィルタA及び帯域分解フィルタBによって送信信号を帯域分割する(図9(a),(b))。
【0017】
次に、信号送信装置20は、帯域分割された送信信号が干渉信号に重畳しないように、帯域分割された送信信号の周波数をシフトさせて送信する(図9(c))。
【0018】
信号受信装置30は、分割された送信信号と干渉信号を受信し、帯域合成フィルタA及び帯域合成フィルタBによって受信信号から送信信号を抽出して帯域合成する(図9(d),(e))。
【0019】
第1技術及び第2技術では、分割された送信信号と干渉信号は、周波数軸上でそれぞれ独立しており、互いに重畳されていない。また、干渉信号の影響を低減させるために、信号送信装置が帯域分割することなく信号を送信し、信号受信装置がノッチフィルタによって干渉信号を減衰させる技術もある(以降、第3技術と称する:図12参照)。
【0020】
しかしながら、第1技術には、干渉を回避するために周波数をシフトさせようとしても、周波数のシフト先で他ユーザが通信をしている場合にはシフトできないという課題がある。図10は、第1技術の課題を示す。図10(a)は、干渉信号のスペクトラムを示す。図10(b)は、送信信号のシフト先のスペクトラムを示す。図10(c)は、受信信号における課題を示す。図10に示すように、第1技術では、周波数のシフト先で他ユーザが通信をしている場合には、送信信号と他ユーザの信号とが重畳されてしまう。
【0021】
また、第2技術には、干渉信号の帯域内において信号を送信することができず、周波数利用効率が低下するという課題がある。図11は、第2技術の課題を示す。図11(a)は、干渉信号がない場合に使用可能な周波数帯域幅を示す。図11(b)は、干渉信号がある場合に使用可能な周波数帯域幅を示す。図11に示すように、第2技術では、例えば使用可能な中継器帯域(A+B+C)から干渉信号帯域Bを差し引いた帯域(A+C)にしか主信号を分割配置できない。
【0022】
また、第3技術には、送信信号が干渉信号と同様に削られ、送信信号の回線品質が著しく劣化するという課題がある。図12は、第3技術の課題を示す。図12(a)は、干渉信号のスペクトラムを示す。図12(b)は、受信信号と干渉信号のスペクトラムを示す。図12(c)は、受信信号にノッチフィルタを適用した場合のスペクトラムを示す。図12に示すように、第3技術では、送信信号と干渉信号が合成された受信信号に対して信号受信装置がノッチフィルタを適用するため、送信信号が干渉信号と同様に削られてしまう。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0023】
【文献】Jun-ichi ABE et al, “Direct Spectrum Division Transmission Adapter for Satellite Communications”, 34th AIAA International Communications Satellite Systems Conference (ICSSC 2016), AIAA, 2016, 2016-5766
【文献】阿部順一、外2名、「スペクトラム分解アダプタにおけるブラインド型周波数同期方式の提案」、電子情報通信学会 ソサイエティ大会、2012年9月11~14日、B-3-1、p.268
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、周波数利用効率が低下することを抑制しつつ、送信信号に重畳する干渉信号を低減することができる無線通信システム、送信装置及び無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の一態様にかかる無線通信システムは、送信信号を複数のサブスペクトラムに分解して送信する送信装置と前記送信信号を受信する受信装置を備えた無線通信システムであって、前記受信装置は、前記送信信号よりも周波数帯域が狭い干渉信号が重畳された受信信号における干渉信号の周波数帯域を推定する干渉推定部と、前記干渉推定部が推定した前記干渉信号の周波数帯域を前記送信装置に対してフィードバックするフィードバック部と、前記送信装置が分解した複数のサブスペクトラムに対応する周波数帯域の複数のサブスペクトラムを合成する帯域合成部とを有し、前記送信装置は、前記受信装置からフィードバックされた前記干渉信号の周波数帯域に基づいて、前記送信信号を分割する帯域を決定する制御を行う帯域分割制御部と、前記帯域分割制御部が決定した帯域に基づいて、前記干渉信号とサブスペクトラムが部分的に重畳するように前記送信信号を複数のサブスペクトラムに帯域分割する帯域分割部とを有することを特徴とする。
【0026】
また、本発明の一態様にかかる無線通信システムは、前記受信装置が、前記送信装置が送信した複数のサブスペクトラムと、当該受信装置が受信した複数のサブスペクトラムとの周波数誤差を検出する周波数誤差検出部をさらに有し、前記フィードバック部が、前記周波数誤差検出部が検出した前記周波数誤差を前記送信装置に対してさらにフィードバックし、前記帯域合成部が、前記周波数誤差検出部が検出した前記周波数誤差に基づいて、複数のサブスペクトラムを合成することを特徴とする。
【0027】
また、本発明の一態様にかかる無線通信システムは、前記帯域分割部が、干渉信号が存在する周波数帯域に加えて、干渉信号が存在しない周波数帯域に対しても、前記送信信号を複数のサブスペクトラムに帯域分割することを特徴とする。
【0028】
また、本発明の一態様にかかる無線通信システムは、前記受信装置が、前記干渉推定部が推定した前記干渉信号の周波数帯域、及び前記周波数誤差検出部が検出した前記周波数誤差に基づいて、前記干渉信号が重畳しているサブスペクトラムについての周波数誤差を前記帯域合成部が使用しないように制御する周波数誤差制御部をさらに有することを特徴とする。
【0029】
また、本発明の一態様にかかる無線通信システムは、前記帯域分割部が、周波数軸上で複数のサブスペクトラムが連続するように帯域分割することを特徴とする。
【0030】
また、本発明の一態様にかかる送信装置は、送信信号を複数のサブスペクトラムに分解して受信装置へ送信する送信装置であって、前記受信装置からフィードバックされる、前記送信信号よりも周波数帯域が狭い干渉信号が重畳された前記受信装置の受信信号における干渉信号の周波数帯域に基づいて、前記送信信号を分割する帯域を決定する制御を行う帯域分割制御部と、前記帯域分割制御部が決定した帯域に基づいて、前記干渉信号とサブスペクトラムが部分的に重畳するように前記送信信号を複数のサブスペクトラムに帯域分割する帯域分割部とを有することを特徴とする。
【0031】
また、本発明の一態様にかかる無線通信方法は、送信装置が受信装置に対して送信信号を複数のサブスペクトラムに分解して送信する無線通信方法であって、前記受信装置が、前記送信信号よりも周波数帯域が狭い干渉信号が重畳された受信信号における干渉信号の周波数帯域を推定する干渉推定工程と、前記受信装置が、推定した干渉信号の周波数帯域を前記送信装置に対してフィードバックするフィードバック工程と、前記送信装置が、前記受信装置からフィードバックされた前記干渉信号の周波数帯域に基づいて、前記送信信号を分割する帯域を決定する制御を行う帯域分割制御工程と、前記送信装置が、決定した帯域に基づいて、前記干渉信号とサブスペクトラムが部分的に重畳するように前記送信信号を複数のサブスペクトラムに帯域分割する帯域分割工程と、前記受信装置が、前記送信装置が分解した複数のサブスペクトラムに対応する周波数帯域の複数のサブスペクトラムを合成する帯域合成工程とを含むことを特徴とする。
【0032】
また、本発明の一態様にかかる無線通信方法は、前記送信装置が送信した複数のサブスペクトラムと、当該受信装置が受信した複数のサブスペクトラムとの周波数誤差を検出する周波数誤差検出工程をさらに含み、前記フィードバック工程では、前記受信装置が、前記周波数誤差検出工程で検出した前記周波数誤差を前記送信装置に対してさらにフィードバックし、前記帯域合成工程では、前記受信装置が、前記周波数誤差検出工程で検出した前記周波数誤差に基づいて、複数のサブスペクトラムを合成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、周波数利用効率が低下することを抑制しつつ、送信信号に重畳する干渉信号を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】一実施形態にかかる無線通信システムの構成例の概要を示す図である。
図2】(a)は、干渉信号のスペクトラムを示す図である。(b)は、信号送信装置による主信号の帯域分割を示す図である。(c)は、分割された送信信号と干渉信号のスペクトラムを示す図である。(d)は、信号受信装置による帯域合成フィルタリングを示す図である。(e)は、信号受信装置が合成した帯域合成信号を示す図である。
図3】(a)は、干渉信号のスペクトラムを示す図である。(b)は、信号送信装置による主信号の帯域分割を示す図である。(c)は、分割された送信信号と干渉信号のスペクトラムを示す図である。
図4】(a)は、干渉信号のスペクトラムを示す図である。(b)は、信号送信装置による周波数誤差に基づく主信号の帯域分割を示す図である。(c)は、分割された送信信号と干渉信号のスペクトラムを示す図である。
図5】(a)は、干渉信号のスペクトラムを示す図である。(b)は、送信信号のスペクトラムを示す図である。(c)は、受信信号のスペクトラムを示す図である。
図6】(a)は、干渉信号のスペクトラムを示す図である。(b)は、送信信号のスペクトラムを示す図である。(c)は、受信信号のスペクトラムを示す図である。
図7】(a)は、干渉信号のスペクトラムを示す図である。(b)は、送信信号のスペクトラムを示す図である。(c)は、受信信号のスペクトラムを示す図である。
図8】第2技術を実現する無線通信システムの概要を示す図である。
図9】(a)は、干渉信号のスペクトラムを示す図である。(b)は、信号送信装置による主信号の帯域分割を示す図である。(c)は、分割された送信信号と干渉信号のスペクトラムを示す図である。(d)は、信号受信装置による帯域合成フィルタリングを示す図である。(e)は、信号受信装置が合成した帯域合成信号を示す図である。
図10】(a)は、干渉信号のスペクトラムを示す図である。(b)は、送信信号のシフト先のスペクトラムを示す図である。(c)は、受信信号における課題を示す図である。
図11】(a)は、干渉信号がない場合に使用可能な周波数帯域幅を示す図である。(b)は、干渉信号がある場合に使用可能な周波数帯域幅を示す図である。
図12】(a)は、干渉信号のスペクトラムを示す図である。(b)は、受信信号と干渉信号のスペクトラムを示す図である。(c)は、受信信号にノッチフィルタを適用した場合のスペクトラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に、図面を用いて無線通信システムの一実施形態を説明する。図1は、一実施形態にかかる無線通信システム40の構成例の概要を示す。図1に示すように、無線通信システム40は、例えば信号送信装置(送信装置)50及び信号受信装置(受信装置)60を備え、送信信号に対して、当該送信信号よりも周波数帯域が狭い干渉信号が重畳する通信環境において無線通信を行うものとする。
【0036】
信号受信装置60は、干渉推定部600、フィードバック部602、周波数誤差検出部604、周波数誤差制御部606及び帯域合成部608を有する。
【0037】
干渉推定部600は、信号受信装置60が受信する受信信号における干渉信号の周波数帯域(干渉信号帯域)を推定して特定する。例えば、干渉推定部600は、スペクトラムアナライザとしての機能を備え、信号送信装置50が主信号の送信を一旦オフにした状態で、受信信号を解析することにより、周波数帯域を推定して特定する。そして、干渉推定部600は、推定した干渉信号帯域を示す干渉信号帯域情報をフィードバック部602及び周波数誤差検出部604に対して出力する。
【0038】
フィードバック部602は、干渉推定部600が推定した干渉信号帯域を示す干渉信号帯域情報、及び、後述する周波数誤差検出部604が検出した周波数誤差を示す周波数誤差情報を含む受信信号情報を信号送信装置50に対してフィードバックする。
【0039】
周波数誤差検出部604は、受信信号に含まれる複数の受信サブスペクトラムと、後述する複数の送信サブスペクトラムとの周波数差を周波数誤差として検出し、周波数誤差情報をフィードバック部602及び周波数誤差制御部606に対して出力する。
【0040】
周波数誤差制御部606は、周波数誤差検出部604が検出した周波数誤差に基づいて、受信信号に含まれる複数の受信サブスペクトラムの周波数誤差を除去する。例えば、周波数誤差制御部606は、干渉推定部600が推定した干渉信号の周波数帯域、及び周波数誤差検出部604が検出した周波数誤差に基づいて、干渉信号が重畳しているサブスペクトラムについての周波数誤差を帯域合成部608が使用しないように制御する。
【0041】
帯域合成部608は、例えば信号送信装置50が用いる複数の帯域分解フィルタに対応する複数の帯域合成フィルタを用いて、周波数誤差制御部606が周波数誤差を除去した複数の受信サブスペクトラムを合成して出力する。
【0042】
信号送信装置50は、帯域分割制御部500及び帯域分割部502を有する。
【0043】
帯域分割制御部500は、信号受信装置60からフィードバックされた干渉信号帯域情報及び周波数誤差情報を含む受信信号情報に基づいて、送信信号を分割する帯域を決定する制御を行う。
【0044】
帯域分割部502は、帯域分割制御部500が決定した帯域に基づいて、干渉信号とサブスペクトラムが部分的に重畳するように送信信号を複数のサブスペクトラムに帯域分割する。
【0045】
次に、無線通信システム40の動作について説明する。
【0046】
図2は、図1に示した無線通信システム40の動作原理の概要を示す。図2(a)は、干渉信号のスペクトラムを示す。図2(b)は、信号送信装置50による主信号の帯域分割を示す。図2(c)は、分割された送信信号(送信分割信号)と干渉信号のスペクトラムを示す。図2(d)は、信号受信装置60による帯域合成フィルタリングを示す。図2(e)は、信号受信装置60が合成した帯域合成信号を示す。
【0047】
まず、信号受信装置60において、干渉推定部600は、干渉信号の周波数位置を推定して特定する(図2(a))。
【0048】
次に、フィードバック部602は、干渉信号帯域情報を含む受信信号情報を信号送信装置50に対して送信することによってフィードバックする。
【0049】
信号送信装置50において、帯域分割制御部500は、フィードバック部602からフィードバックされた受信信号情報に含まれる干渉信号帯域情報に基づいて、帯域分割部502が送信信号を複数のサブスペクトラムに帯域分割するように制御を行う。例えば、帯域分割部502は、帯域分解フィルタA及び帯域分解フィルタBを用いて、送信信号を複数のサブスペクトラムに分割する(図2(b))。
【0050】
ここで、帯域分割部502は、サブスペクトラムと干渉信号が部分的に重畳するように送信信号を帯域分割する(図2(c))。すなわち、信号送信装置50は、帯域分割部502が干渉信号とサブスペクトラムとを部分的に重畳させることにより、周波数利用効率の低下を抑制することができる。
【0051】
一方、信号受信装置60は、分割されて送信された送信信号を、周波数誤差制御部606を介して帯域合成部608が合成する(図2(d))。ここで、帯域合成部608は、帯域合成フィルタA及び帯域合成フィルタBの遷移域で干渉信号を一部フィルタリングするため、図2(e)に示したスペクトラムを帯域合成信号として出力する。
【0052】
図2(e)に示すように、帯域合成部608が出力する帯域合成信号には干渉信号が部分的に残るが、干渉信号の最大電力部分が帯域合成フィルタA及び帯域合成フィルタBの遷移域で十分にフィルタリングされるため、送信信号の伝送品質劣化は低減される。
【0053】
また、無線通信システム40は、信号送信装置50が送信信号を周波数軸上で連続するように帯域分割し、連続するように帯域分割された送信信号を信号受信装置60が受信して合成することにより、周波数利用効率の低下をさらに抑制するように構成されてもよい。
【0054】
図3は、図1に示した無線通信システム40の他の動作例を示す。図3(a)は、干渉信号のスペクトラムを示す。図3(b)は、信号送信装置50による主信号の帯域分割を示す。図3(c)は、分割された送信信号(送信分割信号)と干渉信号のスペクトラム(信号受信装置60が受信する受信信号)を示す。
【0055】
まず、信号受信装置60において、干渉推定部600は、干渉信号の周波数位置を推定して特定する(図3(a))。
【0056】
次に、フィードバック部602は、干渉信号帯域情報を含む受信信号情報を信号送信装置50に対して送信することによってフィードバックする。
【0057】
信号送信装置50において、帯域分割制御部500は、フィードバック部602からフィードバックされた受信信号情報に含まれる干渉信号帯域情報に基づいて、帯域分割部502が送信信号を複数のサブスペクトラムに帯域分割するように制御を行う。例えば、帯域分割部502は、帯域分解フィルタA~Fを用いて、送信信号を複数のサブスペクトラムに分割する(図3(b))。
【0058】
ここで、帯域分割部502は、帯域分解フィルタD,Eで作られるサブスペクトラムD,Eと干渉信号が部分的に重畳するように送信信号を帯域分割する(図3(c))。すなわち、信号送信装置50は、帯域分割部502が干渉信号とサブスペクトラムとを部分的に重畳させることにより、周波数利用効率の低下を抑制することができる。
【0059】
なお、帯域分割部502は、干渉信号を含まない送信信号帯域についても意図的に帯域分解を実施している。すなわち、帯域分割部502は、帯域分解フィルタA・B・C・Fによって干渉信号がない帯域についても帯域分解をしている(図3(c))。
【0060】
参考として、非特許文献1,2には、隣接するサブスペクトラムの電力差を活用して、送信信号が伝搬過程で介在する周波数変換装置で受ける周波数誤差を最終的に受信側で補償する周波数誤差補償が開示されている。この場合、特定のサブスペクトラムに干渉信号が重畳すると、左右の電力差に干渉信号が重畳されるため、受信側の周波数誤差を精度よく求めることが難しくなる。
【0061】
この課題を解決するため、信号受信装置60は、干渉信号を含まない帯域分割も合わせて実施し、周波数誤差検出部604が検出する周波数誤差に与える干渉信号の影響を緩和し、周波数誤差の検出精度を高めている。
【0062】
上述したように、干渉推定部600は、干渉信号の周波数位置を特定している(図3(a))。したがって、信号受信装置60は、帯域合成部608が帯域合成を行うときに、分解された送信信号帯域に対応する帯域合成フィルタDと帯域合成フィルタEが合成する受信信号には干渉信号が重畳していることを予め分かっている。よって、周波数誤差制御部606は、干渉信号が重畳しているサブスペクトラムについては、周波数誤差検出精度が劣化するリスクがあるため、周波数誤差を示す情報として用いないこととしている。
【0063】
具体的には、周波数誤差制御部606は、周波数誤差に干渉成分を含まない帯域合成フィルタA-B、帯域合成フィルタB-C、帯域合成フィルタC-D、帯域合成フィルタE-Fの各遷移域から周波数誤差検出部604が検出した周波数誤差を使用し、帯域合成フィルタD-Eで検出した周波数誤差については使用しない。
【0064】
図4は、図1に示した無線通信システム40が行う周波数誤差に対する制御例を示す。図4(a)は、干渉信号のスペクトラムを示す。図4(b)は、信号送信装置50による周波数誤差に基づく主信号の帯域分割を示す。図4(c)は、分割された送信信号(送信分割信号)と干渉信号のスペクトラム(信号受信装置60が受信する受信信号)を示す。
【0065】
まず、信号受信装置60において、干渉推定部600は、干渉信号の周波数位置を推定して特定する(図4(a))。
【0066】
次に、フィードバック部602は、干渉信号帯域情報及び周波数誤差情報を含む受信信号情報を信号送信装置50に対して送信することによってフィードバックする。
【0067】
信号送信装置50において、帯域分割制御部500は、フィードバック部602からフィードバックされた受信信号情報に含まれる干渉信号帯域情報及び周波数誤差情報に基づいて、帯域分割部502が送信信号を複数のサブスペクトラムに帯域分割するように制御を行う。例えば、帯域分割部502は、帯域分解フィルタA及び帯域分解フィルタBを用いて、送信信号を複数のサブスペクトラムに分割する(図4(b))。
【0068】
ここで、帯域分割部502は、干渉信号に対して隣接するサブスペクトラムが部分的に重畳するように送信信号を帯域分割する(図4(c))。
【0069】
一般的には、送信信号に対して、送受信装置の周波数変換器や衛星中継器の周波数変換器などにおける発振器の周波数変動等によって周波数誤差が重畳すると、受信信号の周波数がシフトしてしまい、結果的に帯域合成フィルタの遷移域で十分にフィルタリングできず、伝送品質が劣化する場合がある。
【0070】
この伝送品質の劣化を防止するために、信号受信装置60は、干渉信号帯域情報に加えて、受信信号の周波数誤差情報をフィードバック部602から信号送信装置50に対してフィードバックしている。具体的には、信号送信装置50は、受信信号の周波数誤差分だけ送信信号の帯域分割位置(帯域分割フィルタの周波数)を変更するように帯域分割制御部500が帯域分割部502を制御している。
【0071】
このように、無線通信システム40によれば、フィードバック部602が干渉信号帯域情報及び周波数誤差情報を含む受信信号情報を信号送信装置50に対してフィードバックするので、周波数利用効率が低下することを抑制しつつ、送信信号に重畳する干渉信号を低減することができる。
【符号の説明】
【0072】
40・・・無線通信システム、50・・・信号送信装置、60・・・信号受信装置、500・・・帯域分割制御部、502・・・帯域分割部、600・・・干渉推定部、602・・・フィードバック部、604・・・周波数誤差検出部、606・・・周波数誤差制御部、608・・・帯域合成部
図1
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図4
図5
図6
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図12