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特許7196686無線通信システム、無線通信方法、送信局装置および受信局装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】無線通信システム、無線通信方法、送信局装置および受信局装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/0417 20170101AFI20221220BHJP
   H04B 7/005 20060101ALI20221220BHJP
   H04L 27/01 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H04B7/0417
H04B7/005
H04L27/01
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019033361
(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公開番号】P2020141173
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗山 圭太
(72)【発明者】
【氏名】福園 隼人
(72)【発明者】
【氏名】立田 努
【審査官】吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/115374(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/073851(WO,A1)
【文献】特表2007-508721(JP,A)
【文献】栗山 圭太 他,広帯域シングルキャリアMIMO伝送のためのFIR型送信ビーム形成,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2019年01月24日,pp.31-32
【文献】竹内 知明 他,GI越えマルチパス環境のためのSDM MIMO-OFDM用チャネル等化器,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.113 No.301,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2013年11月13日,pp.37-42
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/0417
H04B 7/005
H04L 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信局装置と受信局装置との間でSC-MIMO伝送を行う無線通信システムにおいて、
前記送信局装置は、
既知のトレーニング信号を生成するトレーニング信号生成部と、
アンテナ間干渉を等化するための送信側伝達関数を用いて複数の第1データ信号のアンテナ間干渉を等化した複数の第2データ信号を出力する送信側線形等化部と、
前記トレーニング信号または複数の前記第2データ信号を前記受信局装置に送信し、前記送信側伝達関数に関する情報を前記受信局装置から受信する複数のアンテナを有する送信局通信部と
を備え、
前記受信局装置は、
前記送信局装置が送信する複数の前記第2データ信号または前記トレーニング信号を受信し、前記送信側伝達関数に関する情報を前記送信局装置に送信する複数のアンテナを有する受信局通信部と、
前記受信局通信部により受信する前記トレーニング信号から通信路応答を推定する通信路推定部と、
前記通信路応答に基づいて、アンテナ間干渉を等化するための前記送信側伝達関数と、シンボル間干渉を等化するための受信側伝達関数とを算出する受信側係数算出部と、
前記受信側伝達関数を用いて前記受信局通信部が受信する複数の前記第2データ信号からシンボル間干渉を等化した複数の第3データ信号を出力する受信側線形等化部と
を備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
送信局装置と受信局装置との間でSC-MIMO伝送を行う無線通信システムにおいて、
前記送信局装置は、
既知のトレーニング信号を生成するトレーニング信号生成部と、
アンテナ間干渉を等化するための送信側伝達関数を用いて複数の第1データ信号のアンテナ間干渉を等化した複数の第2データ信号を出力する送信側線形等化部と、
前記トレーニング信号または複数の前記第2データ信号を前記受信局装置に送信し、通信路応答に関する情報を前記受信局装置から受信する複数のアンテナを有する送信局通信部と、
前記受信局装置から受信する前記通信路応答に関する情報に基づいて、アンテナ間干渉を等化するための前記送信側伝達関数を算出する送信側係数算出部
を備え、
前記受信局装置は、
前記送信局装置が送信する複数の前記第2データ信号または前記トレーニング信号を受信し、前記通信路応答に関する情報を前記送信局装置に送信する複数のアンテナを有する受信局通信部と、
前記受信局通信部により受信する前記トレーニング信号から前記通信路応答を推定する通信路推定部と、
前記通信路応答に基づいて、シンボル間干渉を等化するための受信側伝達関数を算出する受信側係数算出部と、
前記受信側伝達関数を用いて前記受信局通信部が受信する複数の前記第2データ信号からシンボル間干渉を等化した複数の第3データ信号を出力する受信側線形等化部と
備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
送信局装置と受信局装置との間でSC-MIMO伝送を行う無線通信方法であって、
前記送信局装置は、
既知のトレーニング信号を生成するトレーニング信号生成処理と、
アンテナ間干渉を等化する送信側伝達関数を用いて複数の第1データ信号のアンテナ間干渉を等化した複数の第2データ信号を出力する送信側線形等化処理と、
前記トレーニング信号または複数の前記第2データ信号を前記受信局装置に送信し、前記送信側伝達関数に関する情報を前記受信局装置から受信する複数の送信局通信処理と
を実行し、
前記受信局装置は、
前記送信局装置が送信する複数の前記第2データ信号または前記トレーニング信号を受信し、前記送信側伝達関数に関する情報を前記送信局装置に送信する複数の受信局通信処理と、
前記送信局装置から受信する前記トレーニング信号から通信路応答を推定する通信路推定処理と、
前記通信路応答に基づいて、アンテナ間干渉を等化するための前記送信側伝達関数と、シンボル間干渉を等化するための受信側伝達関数とを算出する受信側係数算出処理と、
前記受信側伝達関数を用いて前記受信局通信処理により受信する複数の前記第2データ信号からシンボル間干渉を等化した複数の第3データ信号を出力する受信側線形等化処理

を実行することを特徴とする無線通信方法。
【請求項4】
送信局装置と受信局装置との間でSC-MIMO伝送を行う無線通信方法であって、
前記送信局装置は、
既知のトレーニング信号を生成するトレーニング信号生成処理と、
アンテナ間干渉を等化する送信側伝達関数を用いて複数の第1データ信号のアンテナ間干渉を等化した複数の第2データ信号を出力する送信側線形等化処理と、
前記トレーニング信号または複数の前記第2データ信号を前記受信局装置に送信し、通信路応答に関する情報を前記受信局装置から受信する複数の送信局通信処理と、
前記受信局装置から受信する前記通信路応答に関する情報に基づいて、アンテナ間干渉を等化するための前記送信側伝達関数を算出する送信側係数算出処理
を実行し、
前記受信局装置は、
前記送信局装置が送信する複数の前記第2データ信号または前記トレーニング信号を受信し、前記通信路応答に関する情報を前記送信局装置に送信する複数の受信局通信処理と、
前記送信局装置から受信する前記トレーニング信号から前記通信路応答を推定する通信路推定処理と、
前記通信路応答に基づいて、シンボル間干渉を等化するための受信側伝達関数を算出する受信側係数算出処理と、
前記受信側伝達関数を用いて前記受信局通信処理により受信する複数の前記第2データ信号からシンボル間干渉を等化した複数の第3データ信号を出力する受信側線形等化処理と
実行することを特徴とする無線通信方法。
【請求項5】
送信局装置が送信する複数の第2データ信号または既知のトレーニング信号を受信し、送信側でアンテナ間干渉を等化するための送信側伝達関数に関する情報を前記送信局装置に送信する複数のアンテナを有する受信局通信部と、前記受信局通信部により受信する前記トレーニング信号から通信路応答を推定する通信路推定部と、前記通信路応答に基づいて、アンテナ間干渉を等化するための前記送信側伝達関数及びシンボル間干渉を等化するための受信側伝達関数を算出する受信側係数算出部と、前記受信側伝達関数を用いて前記受信局通信部が受信する複数の前記第2データ信号からシンボル間干渉を等化した複数の第3データ信号を出力する受信側線形等化部とを備える受信局装置との間でSC-MIMO伝送を行う送信局装置において、
前記トレーニング信号を生成するトレーニング信号生成部と、
アンテナ間干渉を等化するための前記送信側伝達関数を用いて複数の第1データ信号のアンテナ間干渉を等化した複数の前記第2データ信号を出力する送信側線形等化部と、
前記トレーニング信号または複数の前記第2データ信号を前記受信局装置に送信し、前記送信側伝達関数に関する情報を前記受信局装置から受信する複数のアンテナを有する送信局通信部と
を備えることを特徴とする送信局装置。
【請求項6】
送信局装置が送信する複数の第2データ信号または既知のトレーニング信号を受信し、通信路応答に関する情報を前記送信局装置に送信する複数のアンテナを有する受信局通信部と、前記受信局通信部により受信する前記トレーニング信号から前記通信路応答を推定する通信路推定部と、前記通信路応答に基づいて、シンボル間干渉を等化するための受信側伝達関数を算出する受信側係数算出部と、前記受信側伝達関数を用いて前記受信局通信部が受信する複数の前記第2データ信号からシンボル間干渉を等化した複数の第3データ信号を出力する受信側線形等化部とを備える受信局装置との間でSC-MIMO伝送を行う送信局装置において、
前記トレーニング信号を生成するトレーニング信号生成部と、
アンテナ間干渉を等化するための送信側伝達関数を用いて複数の第1データ信号のアンテナ間干渉を等化した複数の前記第2データ信号を出力する送信側線形等化部と、
前記トレーニング信号または複数の前記第2データ信号を前記受信局装置に送信し、前記通信路応答に関する情報を前記受信局装置から受信する複数のアンテナを有する送信局通信部と
前記受信局装置から受信する前記通信路応答に関する情報に基づいて、アンテナ間干渉を等化するための前記送信側伝達関数を算出する送信側係数算出部
備えることを特徴とする送信局装置。
【請求項7】
既知のトレーニング信号を生成するトレーニング信号生成部と、アンテナ間干渉を等化するための送信側伝達関数を用いて複数の第1データ信号のアンテナ間干渉を等化した複数の第2データ信号を出力する送信側線形等化部と、前記トレーニング信号または複数の前記第2データ信号を受信局装置に送信し、前記送信側伝達関数に関する情報を前記受信局装置から受信する複数のアンテナを有する送信局通信部とを備える送信局装置との間でSC-MIMO伝送を行う受信局装置において、
前記送信局装置が送信する複数の前記第2データ信号または前記トレーニング信号を受信し、送信側でアンテナ間干渉を等化するための前記送信側伝達関数に関する情報を前記送信局装置に送信する複数のアンテナを有する受信局通信部と、
前記受信局通信部により受信する前記トレーニング信号から通信路応答を推定する通信路推定部と、
前記通信路応答に基づいて、アンテナ間干渉を等化するための前記送信側伝達関数と、シンボル間干渉を等化するための受信側伝達関数とを算出する受信側係数算出部と、
前記受信側伝達関数を用いて前記受信局通信部が受信する複数の前記第2データ信号からシンボル間干渉を等化した複数の第3データ信号を出力する受信側線形等化部と
を備えることを特徴とする受信局装置。
【請求項8】
既知のトレーニング信号を生成するトレーニング信号生成部と、アンテナ間干渉を等化するための送信側伝達関数を用いて複数の第1データ信号のアンテナ間干渉を等化した複数の第2データ信号を出力する送信側線形等化部と、前記トレーニング信号または複数の前記第2データ信号を受信局装置に送信し、通信路応答に関する情報を前記受信局装置から受信する複数のアンテナを有する送信局通信部と、前記受信局装置から受信する前記通信路応答に関する情報に基づいて、アンテナ間干渉を等化するための前記送信側伝達関数を算出する送信側係数算出部とを備える送信局装置との間でSC-MIMO伝送を行う受信局装置において、
前記送信局装置が送信する複数の前記第2データ信号または前記トレーニング信号を受信し、送信側でアンテナ間干渉を等化するための前記送信側伝達関数に関する情報を前記送信局装置に送信する複数のアンテナを有する受信局通信部と、
前記受信局通信部により受信する前記トレーニング信号から通信路応答を推定する通信路推定部と、
前記通信路応答に基づいて、アンテナ間干渉を等化するための前記送信側伝達関数と、シンボル間干渉を等化するための受信側伝達関数とを算出する受信側係数算出部と、
前記受信側伝達関数を用いて前記受信局通信部が受信する複数の前記第2データ信号からシンボル間干渉を等化した複数の第3データ信号を出力する受信側線形等化部と
を備えることを特徴とする受信局装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SC-MIMO(Single Carrier Multiple-Input Multiple-Output)伝送を行う無線通信システムにおいて、アンテナ間干渉とシンボル間干渉とを抑制する時間領域線形等化器の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
周波数選択性のフェージングがある通信環境下で広帯域のSC-MIMO伝送を行う場合、複数のアンテナの空間的な広がりにより生じるIAI(Inter-Antenna Interference:アンテナ間干渉)と、通信路特性の時間的な広がりにより生じるISI(Inter-Symbol Interference:シンボル間干渉)を抑制するための処理が必要となる。
【0003】
そこで、時間領域線形等化器を用いて時間/空間方向に送信ビーム形成を行うことで、低処理遅延でIAI/ISIを同時に等化する方法が検討されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】栗山圭太,福園隼人,吉岡正文,立田努,“広帯域シングルキャリアMIMO伝送のためのFIR型送信ビーム形成”信学技報,vol.118,no.435,RCS2018-247,pp.31-36,2019年1月.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、非特許文献1では、等化器の伝達関数行列を算出するために多項式の乗算を行うので、CIR(Channel Impulse Response)の長さが大きいと多項式の次数も大きくなり、演算量が膨大になるという問題がある。また、等化器の伝達関数がIIR(Infinite Impulse Response)形式となるため、タップ打ち切りによる誤差により、IAI/ISI成分が残留するという問題がある。
【0006】
本発明は、SC-MIMO伝送においてIAIとISIを等化する等化器の演算量の削減とタップ打ち切りによる残留誤差の抑制を行うことができる無線通信システム、無線通信方法、送信局装置および受信局装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、送信局装置と受信局装置との間でSC-MIMO伝送を行う無線通信システムにおいて、前記送信局装置は、既知のトレーニング信号を生成するトレーニング信号生成部と、アンテナ間干渉を等化するための送信側伝達関数を用いて複数の第1データ信号のアンテナ間干渉を等化した複数の第2データ信号を出力する送信側線形等化部と、前記トレーニング信号または複数の前記第2データ信号を前記受信局装置に送信し、前記送信側伝達関数に関する情報を前記受信局装置から受信する複数のアンテナを有する送信局通信部とを備え、前記受信局装置は、前記送信局装置が送信する複数の前記第2データ信号または前記トレーニング信号を受信し、前記送信側伝達関数に関する情報を前記送信局装置に送信する複数のアンテナを有する受信局通信部と、前記受信局通信部により受信する前記トレーニング信号から通信路応答を推定する通信路推定部と、前記通信路応答に基づいて、前記送信側伝達関数と、シンボル間干渉を等化するための受信側伝達関数とを算出する受信側係数算出部と、前記受信側伝達関数を用いて前記受信局通信部が受信する複数の前記第2データ信号からシンボル間干渉を等化した複数の第3データ信号を出力する受信側線形等化部とを備えることを特徴とする。
【0008】
第2の発明は、送信局装置と受信局装置との間でSC-MIMO伝送を行う無線通信システムにおいて、前記送信局装置は、既知のトレーニング信号を生成するトレーニング信号生成部と、アンテナ間干渉を等化するための送信側伝達関数を用いて複数の第1データ信号のアンテナ間干渉を等化した複数の第2データ信号を出力する送信側線形等化部と、前記トレーニング信号または複数の前記第2データ信号を前記受信局装置に送信し、通信路応答に関する情報を前記受信局装置から受信する複数のアンテナを有する送信局通信部と、前記受信局装置から受信する前記通信路応答に関する情報に基づいて、アンテナ間干渉を等化するための前記送信側伝達関数を算出する送信側係数算出部とを備え、前記受信局装置は、前記送信局装置が送信する複数の前記第2データ信号または前記トレーニング信号を受信し、前記通信路応答に関する情報を前記送信局装置に送信する複数のアンテナを有する受信局通信部と、前記受信局通信部により受信する前記トレーニング信号から前記通信路応答を推定する通信路推定部と、前記通信路応答に基づいて、シンボル間干渉を等化するための受信側伝達関数を算出する受信側係数算出部と、前記受信側伝達関数を用いて前記受信局通信部が受信する複数の前記第2データ信号からシンボル間干渉を等化した複数の第3データ信号を出力する受信側線形等化部とを備えることを特徴とする。
【0009】
第3の発明は、送信局装置と受信局装置との間でSC-MIMO伝送を行う無線通信方法であって、前記送信局装置は、既知のトレーニング信号を生成するトレーニング信号生成処理と、アンテナ間干渉を等化する送信側伝達関数を用いて複数の前記第1データ信号のアンテナ間干渉を等化した複数の第2データ信号を出力する送信側線形等化処理と、前記トレーニング信号または複数の前記第2データ信号を前記受信局装置に送信し、前記送信側伝達関数に関する情報を前記受信局装置から受信する複数の送信局通信処理とを実行し、前記受信局装置は、前記送信局装置が送信する複数の前記第2データ信号または前記トレーニング信号を受信し、前記送信側伝達関数に関する情報を前記送信局装置に送信する複数の受信局通信処理と、前記送信局装置から受信する前記トレーニング信号から通信路応答を推定する通信路推定処理と、前記通信路応答に基づいて、前記送信側伝達関数と、シンボル間干渉を等化するための受信側伝達関数とを算出する受信側係数算出処理と、前記受信側伝達関数を用いて前記受信局通信処理により受信する複数の前記第2データ信号からシンボル間干渉を等化した複数の第3データ信号を出力する受信側線形等化処理とを実行することを特徴とする。
【0010】
第4の発明は、送信局装置と受信局装置との間でSC-MIMO伝送を行う無線通信方法であって、前記送信局装置は、既知のトレーニング信号を生成するトレーニング信号生成処理と、アンテナ間干渉を等化する送信側伝達関数を用いて複数の第1データ信号のアンテナ間干渉を等化した複数の第2データ信号を出力する送信側線形等化処理と、前記トレーニング信号または複数の前記第2データ信号を前記受信局装置に送信し、通信路応答に関する情報を前記受信局装置から受信する複数の送信局通信処理と、前記受信局装置から受信する前記通信路応答に関する情報に基づいて、アンテナ間干渉を等化するための前記送信側伝達関数を算出する送信側係数算出処理とを実行し、前記受信局装置は、前記送信局装置が送信する複数の前記第2データ信号または前記トレーニング信号を受信し、前記通信路応答に関する情報を前記送信局装置に送信する複数の受信局通信処理と、前記送信局装置から受信する前記トレーニング信号から前記通信路応答を推定する通信路推定処理と、前記通信路応答に基づいて、シンボル間干渉を等化するための受信側伝達関数を算出する受信側係数算出処理と、前記受信側伝達関数を用いて前記受信局通信処理により受信する複数の前記第2データ信号からシンボル間干渉を等化した複数の第3データ信号を出力する受信側線形等化処理とを実行することを特徴とする。
【0011】
第5の発明は、送信局装置が送信する複数の第2データ信号または既知のトレーニング信号を受信し、送信側でアンテナ間干渉を等化するための送信側伝達関数に関する情報を前記送信局装置に送信する複数のアンテナを有する受信局通信部と、前記受信局通信部により受信する前記トレーニング信号から通信路応答を推定する通信路推定部と、前記通信路応答に基づいて、アンテナ間干渉を等化するための前記送信側伝達関数及びシンボル間干渉を等化するための受信側伝達関数を算出する受信側係数算出部と、前記受信側伝達関数を用いて前記受信局通信部が受信する複数の前記第2データ信号からシンボル間干渉を等化した複数の第3データ信号を出力する受信側線形等化部とを備える受信局装置との間でSC-MIMO伝送を行う送信局装置において、前記トレーニング信号を生成するトレーニング信号生成部と、アンテナ間干渉を等化するための前記送信側伝達関数を用いて複数の第1データ信号のアンテナ間干渉を等化した複数の前記第2データ信号を出力する送信側線形等化部と、前記トレーニング信号または複数の前記第2データ信号を前記受信局装置に送信し、前記送信側伝達関数に関する情報を前記受信局装置から受信する複数のアンテナを有する送信局通信部とを備えることを特徴とする。
【0012】
第6の発明は、送信局装置が送信する複数の第2データ信号または既知のトレーニング信号を受信し、通信路応答に関する情報を前記送信局装置に送信する複数のアンテナを有する受信局通信部と、前記受信局通信部により受信する前記トレーニング信号から前記通信路応答を推定する通信路推定部と、前記通信路応答に基づいて、シンボル間干渉を等化するための受信側伝達関数を算出する受信側係数算出部と、前記受信側伝達関数を用いて前記受信局通信部が受信する複数の前記第2データ信号からシンボル間干渉を等化した複数の第3データ信号を出力する受信側線形等化部とを備える受信局装置との間でSC-MIMO伝送を行う送信局装置において、前記トレーニング信号を生成するトレーニング信号生成部と、アンテナ間干渉を等化するための送信側伝達関数を用いて複数の第1データ信号のアンテナ間干渉を等化した複数の前記第2データ信号を出力する送信側線形等化部と、前記トレーニング信号または複数の前記第2データ信号を前記受信局装置に送信し、前記通信路応答に関する情報を前記受信局装置から受信する複数のアンテナを有する送信局通信部と、前記受信局装置から受信する前記通信路応答に関する情報に基づいて、アンテナ間干渉を等化するための前記送信側伝達関数を算出する送信側係数算出部とを備えることを特徴とする。
【0013】
第7の発明は、既知のトレーニング信号を生成するトレーニング信号生成部と、アンテナ間干渉を等化するための送信側伝達関数を用いて複数の第1データ信号のアンテナ間干渉を等化した複数の第2データ信号を出力する送信側線形等化部と、前記トレーニング信号または複数の前記第2データ信号を受信局装置に送信し、前記送信側伝達関数に関する情報を前記受信局装置から受信する複数のアンテナを有する送信局通信部とを備える送信局装置との間でSC-MIMO伝送を行う受信局装置において、前記送信局装置が送信する複数の前記第2データ信号または前記トレーニング信号を受信し、送信側でアンテナ間干渉を等化するための前記送信側伝達関数に関する情報を前記送信局装置に送信する複数のアンテナを有する受信局通信部と、前記受信局通信部により受信する前記トレーニング信号から通信路応答を推定する通信路推定部と、前記通信路応答に基づいて、アンテナ間干渉を等化するための前記送信側伝達関数と、シンボル間干渉を等化するための受信側伝達関数とを算出する受信側係数算出部と、前記受信側伝達関数を用いて前記受信局通信部が受信する複数の前記第2データ信号からシンボル間干渉を等化した複数の第3データ信号を出力する受信側線形等化部とを備えることを特徴とする。
【0014】
第8の発明は、既知のトレーニング信号を生成するトレーニング信号生成部と、アンテナ間干渉を等化するための送信側伝達関数を用いて複数の第1データ信号のアンテナ間干渉を等化した複数の第2データ信号を出力する送信側線形等化部と、前記トレーニング信号または複数の前記第2データ信号を受信局装置に送信し、通信路応答に関する情報を前記受信局装置から受信する複数のアンテナを有する送信局通信部と、前記受信局装置から受信する前記通信路応答に関する情報に基づいて、アンテナ間干渉を等化するための前記送信側伝達関数を算出する送信側係数算出部とを備える送信局装置との間でSC-MIMO伝送を行う受信局装置において、前記送信局装置が送信する複数の前記第2データ信号または前記トレーニング信号を受信し、送信側でアンテナ間干渉を等化するための前記送信側伝達関数に関する情報を前記送信局装置に送信する複数のアンテナを有する受信局通信部と、前記受信局通信部により受信する前記トレーニング信号から通信路応答を推定する通信路推定部と、前記通信路応答に基づいて、アンテナ間干渉を等化するための前記送信側伝達関数と、シンボル間干渉を等化するための受信側伝達関数とを算出する受信側係数算出部と、前記受信側伝達関数を用いて前記受信局通信部が受信する複数の前記第2データ信号からシンボル間干渉を等化した複数の第3データ信号を出力する受信側線形等化部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る無線通信システム、無線通信方法、送信局装置および受信局装置は、SC-MIMO伝送においてIAIとISIを等化する等化器の演算量の削減とタップ打ち切りによる残留誤差の抑制を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態および第2実施形態に係る無線通信システムの一例を示す図である。
図2】2×2MIMOの一例を示す図である。
図3】第1実施形態に係る送信局装置および受信局装置の一例を示す図である。
図4】第1実施形態に係る無線通信システムの処理例を示す図である。
図5】第2実施形態に係る送信局装置および受信局装置の一例を示す図である。
図6】第2実施形態に係る無線通信システムの処理例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明に係る無線通信システム、無線通信方法、送信局装置および受信局装置の実施形態について説明する。
【0018】
図1は、第1実施形態および第2実施形態に係る無線通信システム100の一例を示す。図1において、無線通信システム100は、複数(N個:N≧2の整数)のアンテナATt(1)からアンテナATt(N)を有する送信局装置101と、複数(N個:N≧2の整数)のアンテナATr(1)からアンテナATr(N)を有する受信局装置102とを備え、送信局装置101と受信局装置102との間で無線通信を行う。ここで、以降の説明において、送信局装置101のアンテナATt(1)からアンテナATt(N)に共通の説明を行う場合は符号末尾の(番号)を省略してアンテナATtと表記し、特定のアンテナを指す場合は符号末尾に(番号)を付加して例えばアンテナATt(1)のように表記する。受信局装置102のアンテナATr(1)からアンテナATr(N)についても同様に表記する。また、複数の同じブロックを有する場合についても同様に表記する。
【0019】
本実施形態に係る無線通信システム100は、送信局装置101と受信局装置102の間で複数のアンテナを用いた広帯域のSC-MIMO方式による無線通信を行う。ここで、送信局装置101と受信局装置102の間の無線通信路では、マルチパスなど遅延時間が異なる複数の遅延波が存在し、周波数選択性のフェージングが生じる。このため、アンテナ間干渉(IAI)と通信路特性によるシンボル間干渉(ISI)とを抑制する必要がある。図1の例では、送信局装置101のN個のアンテナと、受信局装置102のN個のアンテナとの間で空間的な広がりによるアンテナ間干渉(IAI)が生じる。また、送信局装置101と受信局装置102のそれぞれのアンテナ間で送受信される信号には、時間的な広がりによるシンボル間干渉(ISI)が生じる。ここで、送信局装置101と受信局装置102との間の無線通信路の通信路応答(CIR)をH(z)とすると、通信路応答H(z)は、複数のアンテナの数に応じてN×Nを要素とする伝達関数の行列(伝達関数行列と称する)で表すことができる。
【0020】
図1において、送信局装置101は、QAM変調部201、送信側線形等化部202、RF部203およびアンテナATtを備える。
【0021】
QAM変調部201は、受信局装置102へ送信するデータ情報ビットのビット列を直交振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)したデータ信号S(n)(送信データ信号と称する)を出力する。なお、QAM変調部201は、QAM変調部201(1)からQAM変調部201(K)を有し(K:K≧1の整数)、K個のストリームに対応するデータ信号S(n)を出力する。ここで、データ信号S(n)は、K×1を要素とする行列である。
【0022】
送信側線形等化部202は、送信局装置101と受信局装置102との間のCIRに基づいて算出された送信側の伝達関数行列W(z)により等化処理を行う。伝達関数行列W(z)は、N×K個の伝達関数を要素とする行列である。なお、等化処理と同時に送信電力を正規化する処理も行われる。ここで、本実施形態では、送信側線形等化部202は、送信ビーム形成によりIAIの等化を行う。送信側線形等化部202は、例えばQAM変調部201が出力するデータ信号を保持し、一定時間毎にシフトする遅延タップを有し、各遅延タップの信号に所定のタップ係数を乗算した信号の和を出力するFIR(Finite Impulse Response)型の等化器で実現できる。ここで、IAI等化用の伝達関数は、送信局装置101から送信されるトレーニング信号により受信局装置102が推定したCIRに基づいて算出される。
【0023】
RF部203は、N個のアンテナATtにそれぞれ対応するN個のRF部203(1)からRF部203(N)を有し、送信側線形等化部202が出力するIAIの等化されたデータ信号またはトレーニング信号を高周波の送信信号に周波数変換して、ストリーム毎にアンテナATtから送出する。
【0024】
アンテナATtは、アンテナATt(1)からアンテナATt(N)のN個の送受信用のアンテナを有し、RF部203が出力する高周波信号を電磁波として空間に放射する。
【0025】
このようにして、送信局装置101は、IAIを等化した送信信号を受信局装置102へ送信することができる。
【0026】
図1において、受信局装置102は、アンテナATr、RF部301、受信側線形等化部302およびQAM復調部303を備える。
【0027】
アンテナATrは、アンテナATr(1)からアンテナATr(N)のN個の送受信用のアンテナを有し、送信局装置101から送信された空間上の電磁波を高周波信号に変換する。
【0028】
RF部301は、N個のアンテナATrにそれぞれ対応するN個のRF部301(1)からRF部301(N)を有し、アンテナATr(1)からアンテナATr(N)が出力するそれぞれの高周波信号をベースバンド信号に周波数変換する。
【0029】
受信側線形等化部302は、送信局装置101と受信局装置102との間のCIRに基づいて算出された受信側の伝達関数行列W(z)で等化処理を行う。伝達関数行列W(z)は、K×N個の伝達関数を要素とする行列である。ここで、伝達関数行列W(z)は、送信局装置101から送信されるトレーニング信号により受信局装置102が推定したCIRに基づいて算出され、ISIを等化する。
【0030】
QAM復調部303は、受信側線形等化部302が出力するISIの等化されたK個のストリームのデータ信号S^(n)を情報ビットに復調し、ビット列を出力する。なお、受信側線形等化部302は、アンテナATrの数に応じてN個のストリームのデータ信号S^(n)を出力するので、QAM復調部303は、ストリーム毎にデータ信号S^(n)を復調する。
【0031】
このようにして、受信局装置102は、N個のアンテナATrで受信する信号からISIを等化し、データ信号を復調することができる。
【0032】
なお、受信局装置102では、送信局装置101から送信されるトレーニング信号からCIRを推定し、受信局装置102でISI等化用の伝達関数を算出する。また、送信側線形等化部202が用いる伝達関数は、後述するように、受信局装置102側で算出して送信局装置101側に送信してもよいし、受信局装置102側から送信局装置101側にCIRの情報を送信して、送信局装置101側で伝達関数を算出するようにしてもよい。
【0033】
図1において、QAM変調部201が出力するデータ信号をS(n)、送信側線形等化部202の伝達関数行列をW(Z)、CIRの伝達関数行列をH(z)、受信側線形等化部302の伝達関数行列をW(z)、QAM復調部303が出力するデータ信号をS^(n)、付加雑音をη(n)とすると、本実施形態に係る無線通信システム100において送受信される信号の関係は、式(1)で表すことができる。
【0034】
【数1】
ここで、S(n)、W(Z)、H(z)、W(z)、S^(n)およびη(n)は、以下の通りである。
【0035】
【数2】
なお、Cは行列の要素の集合を表し、例えばCK+1は(K+1)個の要素を有する。ここで、Kは、データ信号のストリーム数(ただし、K=N)である。
【0036】
式(1)において、CIRの伝達関数行列H(z)は、式(2)で表される。
【0037】
【数3】
ここで、伝達関数行列H(z)の各要素の伝達関数Hnrnt(z)は、式(3)で表される。なお、nは1≦n≦Nの整数、nは1≦n≦Nの整数である。また、式(3)の記号Hおよびhの下付き文字nおよびnは、文書中で記載する場合、Hnrnt(z)のようにnrおよびntと表記する。他の記号の下付き文字についても同様に表記する。
【0038】
【数4】
ここで、Z-l:伝達関数の遅延作用素、h(l) nrnt:第n番目の受信アンテナと第n番目の送信アンテナ間のlパス目のCIRである。lは、0≦l≦L-1(Lは正の整数)の整数で、パス数Lの中のパス番号を示す。なお、パス数Lは、マルチパスなどの数を示す。
【0039】
また、送信局装置101の送信側線形等化部202の伝達関数行列W(z)は、式(4)で表される。
【0040】
【数5】
ここで、伝達関数行列W(z)の各要素の伝達関数WT,ntk(z)は、式(5)で表される。なお、W(p) T,ntkは、第k番目(kは、1≦k≦Kの整数)のストリームのデータ信号を入力し、第n番目の送信アンテナへ信号を出力する送信側線形等化部202のp番目のタップ係数を示す。pは、0≦p≦P-1の整数で(Pは正の整数)、送信側線形等化部202のタップ数Pの中のタップ番号を示す。
【0041】
【数6】
また、受信局装置102の受信側線形等化部302の伝達関数行列W(z)は、式(6)で表される。
【0042】
【数7】
ここで、伝達関数行列W(z)の各要素の伝達関数WR,nr(z)は、式(7)で表される。なお、W(q) R,nrは、第n番目の受信アンテナの信号を入力し、等化処理を行う受信側線形等化部302のq番目のタップ係数を示す。qは、0≦q≦Q-1の整数で(Qは正の整数)、受信側線形等化部302のタップ数Qの中のタップ番号を示す。
【0043】
【数8】
(送信側線形等化部202および受信側線形等化部302の伝達関数の算出)
次に、Zero-forcing規範での送信側線形等化部202および受信側線形等化部302の伝達関数の算出について説明する。
【0044】
本実施形態では、CIR(H(z))の等化を送信局装置101と受信局装置102とで分割して行うので、式(8)に示すように、送信側線形等化部202の伝達関数行列W(z)と、受信側線形等化部302の伝達関数行列W(z)とを乗算した行列がCIRの伝達関数行列H(z)の逆行列H-1(z)となる。ここで、H-1(z)は、1/det(H(z))の伝達関数とadj(H(z))の行列との積で表すことができる。
【0045】
【数9】
ここで、det(・)、adj(・)はそれぞれ行列式、随伴行列(adjugate matrix)を表す。なお、adjは、エルミート転置を表す随伴行列(adjoint matrix)とは異なる。
【0046】
式(8)において、送信側線形等化部202の伝達関数行列W(z)を式(9)とする。
【0047】
【数10】
また、式(8)において、受信側線形等化部302の伝達関数行列W(z)を式(10)とする。
【0048】
【数11】
ここで、Iは単位行列である。
【0049】
以上のような線形等化器の伝達関数行列W(z)および伝達関数行列W(z)を乗算すれば、信号の入出力関係は式(11)のようになり、データ信号S(n)の復調が可能となる。
【0050】
【数12】
このようにして、本実施形態に係る無線通信システム100は、時間領域線形等化器によるIAI/ISI等化の機能を送信側線形等化部202と受信側線形等化部302とで分担することで、演算量を削減することができる。また、送信側でIIR形式の伝達関数を用いないので、IAIのタップ打ち切り誤差を抑制することができる。
【0051】
(2×2MIMOの例)
次に、具体例として、2×2MIMOの場合について詳しく説明する。
【0052】
図2は、2×2MIMOの一例を示す。なお、図2において、図1と同符号のブロックは、図1のブロックと同様に動作する。ここで、図2は、図1に示した無線通信システム100においてN=2およびN=2の場合を示し、送信局装置101は、アンテナATt(1)およびアンテナATt(2)の2個のアンテナ、受信局装置102は、アンテナATr(1)およびアンテナATr(2)の2個のアンテナを有する。なお、ストリーム数Kは2である。
【0053】
図2において、通信路応答CIRは、式(2)のH(z)において、N=2、N=2として、式(12)のようにH(z)を表すことができる。
【0054】
【数13】
図2の例では、送信局装置101の2個のアンテナと、受信局装置102の2個のアンテナとの間で空間的な広がりによるIAIが生じるが、式(9)の送信側線形等化部202の伝達関数行列W(z)において、N=2、K=2として、式(13)のように伝達関数行列W(z)を表すことができる。
【0055】
【数14】
ここで、W(z)はFIR型の等化器により構成される。
【0056】
そして、受信局装置102で受信される受信信号Y(n)は、式(14)のように表すことができる。
【0057】
【数15】
一方、受信局装置102において、受信側線形等化部302の伝達関数行列W(z)は、式(15)で表すことができる。なお、Iは単位行列である。
【0058】
【数16】
ここで、W(z)はIIR型の等化器により構成されるが、無限級数を用いた近似を行うことにより、FIR型の等化器として構成することができる。また、式(15)に示すように、受信局装置102側の対角化された伝達関数行列W(z)の対角成分は同じであり、ストリーム毎に共通のものを用いるため、多項式の乗算は1回行うだけでよい。
【0059】
そして、受信側線形等化部302は、式(14)の受信信号Y(n)に式(15)の伝達関数行列W(z)を乗算することにより、式(16)に示すように受信信号Y(n)に含まれるISIを等化し、データ信号S(n)を復調することができる。
【0060】
【数17】
(従来技術との演算量の比較)
次に、本実施形態における送信側線形等化部202および受信側線形等化部302の演算量と、従来技術の等化器の演算量とを比較する。
【0061】
次式は、従来技術で説明した非特許文献1において、送信側の等化器で用いられる伝達関数行列W(z)を示す。
【0062】
【数18】
上式の場合、2×2のMIMOなので、多項式の乗算を2×2=4回行うことになる。N×NのMIMOの場合は、多項式の乗算をN×N回も行わなければならない。
【0063】
これに対して、本実施形態では、送信局装置101の送信側線形等化部202は、式(13)の伝達関数行列W(z)をデータ信号S(n)に乗算するだけなので、多項式の乗算を行う必要がない。また、受信局装置102の受信側線形等化部302は、式(15)の伝達関数行列W(z)を受信信号Y(n)に乗算するが、受信側の伝達関数は、各ストリーム毎に共通のものを用いるため、多項式の乗算は1回だけ行えばよい。
【0064】
このように、本実施形態に係る無線通信システム100は、従来技術に比べて、多項式の乗算回数が少ないので、演算量を大幅に削減することができる。
【0065】
(等化器の残留成分の比較)
次に、本実施形態における送信側線形等化部202および受信側線形等化部302の残留成分と、従来技術の等化器の残留成分とを比較する。
【0066】
式(18)は、従来技術で説明した非特許文献1における等化器の残留成分を示す。なお、Δijは、IAI/ISIの残留成分である。
【0067】
【数19】
式(18)に示すように、アンテナATt(1)とATr(2)、および、アンテナATt(2)とATr(1)のアンテナ間においてIAIの成分Δ12およびΔ21が残留し、アンテナATt(1)とATr(1)、および、アンテナATt(2)とATr(2)のアンテナ間においてISIの成分Δ11およびΔ22が残留する。
【0068】
これに対して、本実施形態では、送信側線形等化部202および受信側線形等化部302の残留成分は、式(19)のように表すことができる。なお、Δ ijは、ISIの残留成分である。
【0069】
【数20】
式(19)に示すように、アンテナATt(1)とATr(2)、および、アンテナATt(2)とATr(1)のアンテナ間におけるIAIの残留成分は0である。そして、アンテナATt(1)とATr(1)、および、アンテナATt(2)とATr(2)のアンテナ間におけるISIの成分Δ 11およびΔ 22のみが残留する。
【0070】
このように、本実施形態に係る無線通信システム100は、従来技術に比べて、送信側でIIR形式の伝達関数を用いないので、IAI等化用の伝達関数のタップ打ち切り誤差を抑制することができる。
【0071】
[第1実施形態]
図3は、第1実施形態に係る送信局装置101および受信局装置102の一例を示す。なお、図3は、図1および図2で説明した送信局装置101および受信局装置102の詳細な構成例を示す。
【0072】
図3において、送信局装置101は、情報ビット生成部401、データ信号変調部402、トレーニング信号生成部403、送信側線形等化部404、送信信号変換部405、受信信号変換部406およびアンテナATt(1)からアンテナATt(N)のN個のアンテナを有する。また、図3において、受信局装置102は、アンテナATr(1)からアンテナATr(N)のN個のアンテナ、受信信号変換部501、通信路推定部502、線形等化器係数算出部503、受信側線形等化部504、データ信号復調部505、情報ビット検出部506および送信信号変換部507を有する。
【0073】
先ず、送信局装置101の構成について説明する。
【0074】
情報ビット生成部401は、受信局装置102へ送信するデータ情報ビットを生成する。データ情報ビットは、例えば外部(不図示)から入力するデータ信号、内部で生成するデータ信号などに対応するビット列である。なお、情報ビット生成部401は、所定の符号化率で誤り訂正符号を生成する誤り訂正符号化機能やインターリーブ機能などを有してもよい。
【0075】
データ信号変調部402は、情報ビット生成部401が出力するビット列を所定の変調方式(例えば直交振幅変調(QAM)など)で変調したデータ信号S(n)を出力する。なお、本実施形態では、情報ビット生成部401が出力するビット列をアンテナATtの数に応じて複数のストリームに分割し、各々のストリーム毎に変調したデータ信号S(n)を出力するので、各ストリーム毎にデータ信号変調部402を有する。
【0076】
トレーニング信号生成部403は、通信路応答(CIR)を推定するためのトレーニング信号を生成する(トレーニング信号生成処理に対応)。トレーニング信号は、信号検出用のプリアンブルなどの予め決められた情報(例えば”01”の交互パターン等の特定パターン)をPSK(Phase Shift Keying)など干渉を受けにくい変調方式で変調した所定の信号であり、受信局装置102でCIRを推定するために用いられる。なお、送信局装置101が送信するトレーニング信号の情報は、予め受信局装置102との間で既知である。
【0077】
送信側線形等化部404は、データ信号変調部402が出力するデータ信号S(n)(第1データ信号に対応)からIAIを等化した信号(第2データ信号に対応)を送信信号変換部405へ出力する(送信側線形等化処理に対応)。送信側線形等化部404は、例えば、データ信号変調部402が出力するデータ信号を保持し、一定時間毎にシフトする遅延タップを有し、各遅延タップの信号に所定のタップ係数を乗算した信号の和を出力するFIR型の等化器で実現できる。ここで、タップ係数は、受信局装置102が推定したCIRに基づいて算出したIAI等化用の伝達関数を構成する係数であり、式(9)および式(13)で説明したW(z)の等化器を実現する。送信側線形等化部404は、IAIを等化するための線形等化処理を行う。また、線形等化処理と同時に送信電力を正規化する処理も行われる。なお、送信側線形等化部404は、トレーニング信号生成部403が出力するトレーニング信号については、線形等化処理を行わずにそのまま出力する。
【0078】
送信信号変換部405は、送信側線形等化部404が出力するデータ信号またはトレーニング信号をアンテナATtから送出するための高周波の送信信号に周波数変換する。例えば、送信信号変換部405は、20MHz帯域のデータ信号またはトレーニング信号を5GHz帯の高周波信号にアップコンバートして、アンテナATtから送出する。ここで、複数のストリームに分割された各々のストリームは、それぞれ高周波信号に変換され、アンテナATt(1)からアンテナATt(N)のそれぞれから送出される。
【0079】
受信信号変換部406は、アンテナATt(1)からアンテナATt(N)のそれぞれのアンテナにより受信された高周波の受信信号を低周波のベースバンド信号に周波数変換する。例えば、受信信号変換部406は、5GHz帯の高周波信号をダウンコンバートして20MHz帯域のベースバンド信号を出力する。ここで、本実施形態では、受信信号変換部406は、受信局装置102から送信側線形等化部202で使用する伝達関数を構成するタップ係数などの情報を含む制御信号を受け取り、ベースバンド信号に変換して送信側線形等化部404に出力する。なお、ベースバンド信号からタップ係数などの情報を復調する復調部の機能は、送信側線形等化部202が有してもよいし、受信信号変換部406がタップ係数などの情報を復調して送信側線形等化部404へ出力してもよい。ここで、送信信号変換部405および受信信号変換部406は、送信局通信処理を行う送信局通信部に対応する。
【0080】
アンテナATtは、アンテナATt(1)からアンテナATt(N)のN個の送受信用のアンテナを有し、送信信号変換部405が出力する高周波信号を電磁波として空間に放射する。或いは、アンテナATtは、受信局装置102から送信された空間上の電磁波を高周波信号に変換して、受信信号変換部406へ出力する。
【0081】
このようにして、送信局装置101は、送信側線形等化部202により、IAIを等化したデータ信号を受信局装置102へ送信することができる。
【0082】
次に、図3に示す受信局装置102の構成について説明する。
【0083】
アンテナATrは、アンテナATr(1)からアンテナATr(N)のN個の送受信用のアンテナを有し、後述する送信信号変換部507が出力する高周波信号を電磁波として空間に放射する。或いは、アンテナATrは、送信局装置101から送信された空間上の電磁波を高周波信号に変換して、後述する受信信号変換部501へ出力する。
【0084】
受信信号変換部501は、送信局装置101の受信信号変換部406と同様に、アンテナATr(1)からアンテナATr(N)のそれぞれから受信される高周波信号をベースバンド信号に周波数変換する。ここで、送信局装置101から受信するトレーニング信号は、通信路推定部502へ出力され、送信局装置101から受信するデータ信号は、受信側線形等化部504へ出力される。
【0085】
通信路推定部502は、送信局装置101から送信されるトレーニング信号に基づいてCIRを推定する(通信路推定処理に対応)。
【0086】
線形等化器係数算出部503は、通信路推定部502が推定したCIRに基づいて、送信局装置101の送信側線形等化部404が用いるIAI等化用の伝達関数(送信側伝達関数に対応)を構成するタップ係数と、受信局装置102の受信側線形等化部504が用いるISI等化用の伝達関数(受信側伝達関数に対応)を構成するタップ係数とをそれぞれ算出する。そして、線形等化器係数算出部503が算出したIAI等化用の伝達関数を構成するタップ係数などの情報を送信局装置101側に送信する。なお、線形等化器係数算出部503は、受信側係数算出処理を行う受信側係数算出部に対応する。
【0087】
受信側線形等化部504は、線形等化器係数算出部503が算出したISI等化用の伝達関数を用いて、受信信号変換部501が出力する信号からISIを等化したデータ信号S^(n)(第3データ信号に対応)をデータ信号復調部505へ出力する(受信側線形等化処理に対応)。
【0088】
データ信号復調部505は、受信側線形等化部504が出力するISIの等化されたデータ信号S^(n)を情報ビットに復調し、ビット列を出力する。なお、受信側線形等化部504は、アンテナATrの数に応じて複数のストリームのデータ信号S^(n)を出力するので、データ信号復調部505は、データ信号S^(n)をストリーム毎に復調する。そして、データ信号復調部505は、送信局装置101側で複数のストリームに分割されたビット列を結合したビット列を情報ビット検出部506に出力する。なお、データ信号復調部505は、送信局装置101側の機能に応じて、誤り訂正復号機能やデインターリーブ機能を備えてもよい。
【0089】
情報ビット検出部506は、データ信号復調部505が出力するビット列をデジタルデータに変換した受信データを出力する。なお、誤り訂正復号機能やデインターリーブ機能を情報ビット検出部506側で行ってもよい。
【0090】
送信信号変換部507は、線形等化器係数算出部503が出力する情報を高周波信号に変換してアンテナATtから送出する。例えば、本実施形態では、線形等化器係数算出部503が算出したIAIを等化するための伝達関数行列W(z)を構成するタップ係数などの情報をアンテナATrから送信局装置101側に送信する。なお、タップ係数などの情報をベースバンド信号に変調する変調部の機能は、送信信号変換部507が有してもよいし、線形等化器係数算出部503が有してもよい。ここで、受信信号変換部501および送信信号変換部507は、受信局通信処理を行う受信局通信部に対応する。
【0091】
このようにして、受信局装置102は、送信局装置101が送信するトレーニング信号からCIRを推定し、推定されたCIRからIAIおよびISI等化用の伝達関数を構成するタップ係数を算出する。そして、ISI等化用のタップ係数は受信側線形等化部504に設定され、IAI等化用のタップ係数は送信局装置101に送信されて送信側線形等化部404に設定される。これにより、IAIの等化処理を送信局装置101側で行い、ISIの等化処理を受信局装置102側で行うことができる。
【0092】
[無線通信システム100の処理方法]
図4は、第1実施形態に係る無線通信システム100の処理の一例を示す。なお、図4に示した処理は、図3に示した送信局装置101および受信局装置102の各部により実行される。
【0093】
ステップS101:送信局装置101において、トレーニング信号生成部403は、受信局装置102側でCIRを推定するためのトレーニング信号を生成し、送信信号変換部405によりアンテナATtから送信する。
【0094】
ステップS102:受信局装置102において、通信路推定部502は、ステップS101で送信されたトレーニング信号を受信してCIRを推定する。
【0095】
ステップS103:受信局装置102において、線形等化器係数算出部503は、ステップS102で推定されたCIRに基づいて、IAIおよびISI等化用の伝達関数を構成するタップ係数を算出する。
【0096】
ステップS104:受信局装置102において、線形等化器係数算出部503は、ステップS103で算出されたIAI等化用の伝達関数を構成するタップ係数を送信局装置101へ送信する。
【0097】
ステップS105:受信局装置102において、ステップS103で算出されたISI等化用の伝達関数を構成するタップ係数は、受信側線形等化部504に設定される。
【0098】
ステップS106:送信局装置101において、送信側線形等化部404は、ステップS103で算出されたIAI等化用の伝達関数を構成するタップ係数を受信局装置102から受信する。
【0099】
ステップS107:送信局装置101において、送信側線形等化部404は、ステップS106で受信したIAI等化用の伝達関数を構成するタップ係数を設定する。
【0100】
ステップS108:送信局装置101において、送信側線形等化部404は、ステップS107で設定したタップ係数を用いてIAIを等化したデータ信号の送信を開始する。
【0101】
ステップS109:受信局装置102において、受信側線形等化部504は、ステップS105で設定したタップ係数を用いて、送信局装置101から受信する信号からISIを等化したデータ信号の受信を開始する。
【0102】
このようにして、受信局装置102は、送信局装置101が送信するトレーニング信号からCIRを推定し、推定されたCIRからIAIおよびISI等化用の伝達関数を構成するタップ係数を算出する。そして、ISI等化用の伝達関数を構成するタップ係数は受信側線形等化部504に設定され、IAI等化用の伝達関数を構成するタップ係数は送信局装置101に送信されて送信側線形等化部404に設定される。これにより、IAIの等化処理を送信局装置101側で行い、ISIの等化処理を受信局装置102側で行うことができる。
【0103】
特に、本実施形態に係る無線通信システム100では、式(18)および式(20)で説明したように、多項式の乗算回数が従来技術に比べて少ないので演算量を大幅に削減することができ、さらに、式(24)で説明したように、IAIの等化処理にIIR形式の伝達関数を用いないので、IAIのタップ打ち切り誤差を抑制することができる。
【0104】
[第2実施形態]
図5は、第2実施形態に係る送信局装置101aおよび受信局装置102aの一例を示す。ここで、図5に示す無線通信システム100aと図3で説明した無線通信システム100との違いは、送信局装置101aが線形等化器係数算出部601を有することである。また、受信局装置102aの線形等化器係数算出部503aの処理も受信局装置102の線形等化器係数算出部503と少し異なる。なお、図5において、図3と同符号のブロックは、図3と同様の処理を行う。
【0105】
受信局装置102aにおいて、線形等化器係数算出部503aは、通信路推定部502が推定したCIRに基づいて、受信局装置102の受信側線形等化部504でISI等化用の伝達関数を構成するタップ係数を算出する。ここで、線形等化器係数算出部503aは、送信局装置101の送信側線形等化部404でIAIを等化する等化処理を行うための伝達関数を構成するタップ係数の算出を行わず、通信路推定部502が推定したCIRに関する情報を送信局装置101へ送信する。なお、CIRに関する情報は、通信路推定部502から直接、送信信号変換部507を介してアンテナATrから送信局装置101へ送信するようにしてもよい。
【0106】
一方、送信局装置101aにおいて、線形等化器係数算出部601は、受信局装置102aから送信されたCIRの情報を受信して、送信側線形等化部404でIAI等化用の伝達関数を構成するタップ係数を算出し、送信側線形等化部404に設定する。ここで、線形等化器係数算出部601は、送信側係数算出処理を行う送信側係数算出部に対応する。
【0107】
このようにして、本実施形態に係る無線通信システム100aは、第1実施形態に係る無線通信システム100と同様に、送信局装置101aが送信するトレーニング信号からCIRを推定するが、CIRに関する情報は送信局装置101a側へ送信され、IAI等化用の伝達関数を構成するタップ係数は送信局装置101a側で算出される。これにより、等化用伝達関数のタップ係数を算出する処理が送信局装置101a側と受信局装置102a側とに分散されるので、線形等化器係数算出部503aの処理量は、第1実施形態の線形等化器係数算出部503の処理量よりも少なくできる。ここで、線形等化器係数算出部503aは、受信側係数算出処理を行う受信側係数算出部に対応する。
【0108】
なお、本実施形態に係る無線通信システム100aにおいても、第1実施形態に係る無線通信システム100と同様に、多項式の乗算回数が従来技術に比べて少なくなるので演算量を削減することができ、さらに、IAIの等化処理にIIR形式の伝達関数を用いないので、タップ打ち切り誤差を抑制することができる。
【0109】
[無線通信システム100aの処理方法]
図6は、第2実施形態に係る無線通信システム100aの処理の一例を示す。なお、図6に示した処理は、図5に示した送信局装置101aおよび受信局装置102aの各部により実行される。なお、図6において、第1実施形態で説明した図4と同符号のステップは、図4と同様の処理を行う。
【0110】
ステップS101およびステップS102では図4と同様の処理が行われ、受信局装置102aは、送信局装置101aから送信されるトレーニング信号を受信してCIRを推定する。
【0111】
ステップS201:受信局装置102aは、ステップS101で推定されたCIRを送信局装置101aへ送信する。
【0112】
ステップS202:受信局装置102aにおいて、線形等化器係数算出部503aは、ステップS102で推定されたCIRに基づいて、ISI等化用の伝達関数を構成するタップ係数を算出する。
【0113】
ステップS203:送信局装置101aは、ステップS201で受信局装置102aから送信されたCIRを受信する。
【0114】
ステップS204:送信局装置101aにおいて、線形等化器係数算出部601は、ステップS203で受信したCIRに基づいて、IAI等化用の伝達関数を構成するタップ係数を算出する。
【0115】
図6において、ステップS105では図4の処理と同様の処理が行われ、受信局装置102aにおいて、ステップS202で算出されたISI等化用の伝達関数を構成するタップ係数が受信側線形等化部504に設定される。
【0116】
図6において、ステップS107およびステップS108では、図4の処理と同様の処理が行われ、送信局装置101aにおいて、ステップS204で算出されたIAI等化用の伝達関数を構成するタップ係数が送信側線形等化部404に設定され、IAIを等化したデータ信号の送信を開始する。また、ステップS109では、図4の処理と同様の処理が行われ、受信局装置102aにおいて、受信側線形等化部504は、送信局装置101aから受信する信号からISIを等化したデータ信号の受信を開始する。
【0117】
このようにして、本実施形態に係る無線通信システム100aは、第1実施形態に係る無線通信システム100と同様に、送信局装置101aが送信するトレーニング信号からCIRを推定するが、CIRに関する情報は送信局装置101a側へ送信され、送信局装置101a側でIAI等化用の伝達関数を構成するタップ係数が算出される。これにより、等化用伝達関数のタップ係数を算出する処理が送信局装置101a側と受信局装置102a側とに分散されるので、線形等化器係数算出部503aの処理量は、第1実施形態の線形等化器係数算出部503の処理量よりも少なくできる。
【0118】
以上、各実施形態で説明したように、本発明に係る無線通信システム、無線通信方法、送信局装置および受信局装置は、SC-MIMO伝送においてIAIとISIを等化する等化器の演算量の削減とタップ打ち切りによる残留誤差の抑制を行うことができる。
【符号の説明】
【0119】
100,100a・・・無線通信システム;101,101a・・・送信局装置;102,102a・・・受信局装置;201・・・QAM変調部;202,404・・・送信側線形等化部;203・・・RF部;301・・・RF部;302,504・・・受信側線形等化部;303・・・QAM復調部;401・・・情報ビット生成部;402・・・データ信号変調部;403・・・トレーニング信号生成部;405,507・・・送信信号変換部;406,501・・・受信信号変換部;ATt,ATr・・・アンテナ;502・・・通信路推定部;503,503a・・・線形等化器係数算出部;505・・・データ信号復調部;506・・・情報ビット検出部;601・・・線形等化器係数算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6