(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】純水製造装置及び純水製造方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20060101AFI20221220BHJP
B01D 61/12 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C02F1/44 H
B01D61/12
(21)【出願番号】P 2019064139
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100192773
【氏名又は名称】土屋 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【氏名又は名称】服部 映美
(72)【発明者】
【氏名】後藤 秀樹
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-159006(JP,A)
【文献】特開2009-279472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44
B01D 61/00-71/82
B01D 53/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を供給する原水供給路と、
前記原水供給路に設けられ、前記原水を供給する供給ポンプと、
前記供給ポンプによって供給された前記原水を透過水と濃縮水とに分離する逆浸透膜と、
前記逆浸透膜を透過した前記透過水が流れる透過水路と、
前記透過水路から分岐され、前記透過水の一部を前記原水供給路に返送可能な1または2以上の循環水路と、
前記循環水路にそれぞれ設けられ、前記原水、前記透過水または前記濃縮水のいずれかの温度が、前記循環水路毎に設定された基準温度を超えた場合に前記循環水路をそれぞれ開く1または2以上の開閉弁と、
前記循環水路の分岐位置よりも下流側の前記透過水路に設置された第1流量計と、
前記第1流量計によって測定された前記透過水の流量が第1基準流量範囲から外れた場合に、前記第1流量計により測定される前記透過水の流量が前記第1基準流量範囲内になるように前記供給ポンプによる前記原水の供給量を制御する制御部と、を備え
、
前記循環水路として、第1循環水路及び第2循環水路の2つが備えられ、
前記開閉弁として、第1開閉弁と第2開閉弁の2つが備えられ、
前記第1開閉弁は、前記第1循環水路に設けられ、前記原水、前記透過水または前記濃縮水のいずれかの温度が第1基準温度を超えた場合に前記第1循環水路を開く開閉弁であり、
前記第2開閉弁は、前記第2循環水路に設けられ、前記原水、前記透過水または前記濃縮水のいずれかの温度が、前記第1基準温度より高い第2基準温度を超えた場合に前記第2循環水路を開く開閉弁であることを特徴とする純水製造装置。
【請求項2】
前記逆浸透膜から排出された前記濃縮水が流れる濃縮水路と、
前記濃縮水路に設置された第2流量計と、
前記濃縮水路に設置され、前記第2流量計によって測定された前記濃縮水の流量があらかじめ設定された第2基準流量範囲から外れた場合に、前記第2流量計により測定される前記濃縮水の流量が前記第2基準流量範囲内になるように制御する流量制御弁と、を更に備えることを特徴とする請求項
1に記載の純水製造装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1流量計からの流量測定値が入力され、前記流量測定値に基づき前記原水の供給量を制御するための制御信号を前記供給ポンプに出力するインバータであることを特徴とする請求項1
または請求項2に記載の純水製造装置。
【請求項4】
供給ポンプにより原水を供給する供給工程と、
前記供給工程にて供給された前記原水を逆浸透膜により透過水と濃縮水とに分離する分離工程と、
前記原水、前記透過水または前記濃縮水のいずれかの温度が基準温度を超えた場合に、透過水路を流れる前記透過水の一部を、前記透過水路から分岐された1または2以上の循環水路によって前記供給工程前の前記原水に戻す循環工程と、
前記循環水路の分岐位置よりも下流側の前記透過水路において、第1流量計により、前記透過水の流量を測定する第1流量測定工程と、
前記第1流量測定工程において測定された前記透過水の流量が第1基準流量範囲から外れた場合に、前記第1流量計により測定される前記透過水の流量が前記第1基準流量範囲内になるように前記供給ポンプによる前記原水の供給量を制御する供給制御工程と、を備え
、
前記循環工程において、前記基準温度として複数の異なる基準温度を設定し、
前記原水、前記透過水または前記濃縮水のいずれかの温度が、前記複数の基準温度のうち最低の基準温度を超えた場合に、前記循環水路によって、前記透過水の一部を前記供給工程前の前記原水に戻すことを開始し、
前記原水、前記透過水または前記濃縮水のいずれかの温度が前記複数の基準温度を超える毎に、前記循環水路による前記透過水の循環量を増量することを特徴とする純水製造方法。
【請求項5】
供給ポンプにより原水を供給する供給工程と、
前記供給工程にて供給された前記原水を逆浸透膜により透過水と濃縮水とに分離する分離工程と、
前記原水、前記透過水または前記濃縮水のいずれかの温度が基準温度を超えた場合に、透過水路を流れる前記透過水の一部を、前記透過水路から分岐された1または2以上の循環水路によって前記供給工程前の前記原水に戻す循環工程と、
前記循環水路の分岐位置よりも下流側の前記透過水路において、第1流量計により、前記透過水の流量を測定する第1流量測定工程と、
前記第1流量測定工程において測定された前記透過水の流量が第1基準流量範囲から外れた場合に、前記第1流量計により測定される前記透過水の流量が前記第1基準流量範囲内になるように前記供給ポンプによる前記原水の供給量を制御する供給制御工程と、を備え
、
前記循環工程は、前記原水、前記透過水または前記濃縮水のいずれかの温度が第1基準温度を超えた場合に、前記透過水路を流れる前記透過水の一部を、第1循環水路によって前記供給工程前の前記原水に戻し、
前記原水、前記透過水または前記濃縮水のいずれかの温度が前記第1基準温度より高い第2基準温度を超えた場合に、前記透過水路を流れる前記透過水の一部を、第1循環水路及び第2循環水路によって前記供給工程前の前記原水に戻す工程であることを特徴とする純水製造方法。
【請求項6】
前記逆浸透膜から排出されて濃縮水路を流れる前記濃縮水の流量を、第2流量計により測定する第2流量測定工程と、
前記第2流量
測定工程において測定された前記濃縮水の流量が第2基準流量範囲から外れた場合に、前記第2流量計により測定される前記濃縮水の流量が前記第2基準流量範囲内になるように制御する流量制御工程と、
を更に備えることを特徴とする
請求項4または請求項5に記載の純水製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純水製造装置及び純水製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に純水製造装置には、不純物の除去を目的として、原水を透過水と濃縮水とに分離するための逆浸透膜が備えられている。逆浸透膜は、有効圧を一定とした場合、水温が高くなると水の粘性が低下して透過水量が増大する。一方、水温が低くなると水の粘性が上昇して透過水量が減少する。このため、逆浸透膜は、冬期の水温低下を見越して、低水温でも十分な透過水量が得られるように装置構成や操業条件が設計されている。そのため、水温が上昇する夏期では、逆浸透膜の透過水量が上昇し、透過水量の設計値を超えてしまう問題がある。この問題に対処するため、その都度、逆浸透膜の有効圧力を下げて透過水量を調整する必要がある。
【0003】
ところで、逆浸透膜は、有効圧力を下げると不純物の阻止率が低下する特性がある。このため、逆浸透膜の有効圧力を例えば0.6MPa以上に設定し、不純物の阻止率が低下しない条件で操業を行う必要がある。しかし、上述のように夏期において水温の上昇に伴って有効圧力を低下させると、不純物の阻止率が低下し、透過水の水質が低下する問題がある。
【0004】
特許文献1には、原水を昇圧して並列に接続した複数個の逆浸透膜モジュール・ユニットに供給し、透過水を得る際に、原水の温度および/または透過水の水質に応じて逆浸透膜モジュール・ユニットの運転本数を制御する逆浸透処理装置の運転方法が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、給水中の不純物を除去する逆浸透膜部と、給水を逆浸透膜部へ供給するポンプと、逆浸透膜部からの透過水の流量を検知する流量センサと、ポンプの回転数を出力周波数に応じて可変させるインバータと、流量センサからの流量検知信号に基づいてインバータへ指令信号を出力する制御部とを備える水質改質システムが記載されている。
【0006】
また、特許文献3には、ろ過膜装置に通じる原水供給ラインに設けられる原水供給ポンプと、ろ過膜装置のろ過水ラインに設けられる流量発信器を有し、流量発信器から送信される流量信号に基づいて原水供給ポンプの回転数を制御し、ろ過水流量を一定にするろ過水流量制御手段と、ろ過膜装置の濃縮水ラインに設けられ濃縮水流量を一定にする濃縮水定流量弁と、ろ過膜装置と上記濃縮水定流量弁との間に介設され、濃縮水圧力を減圧する減圧弁と、減圧弁と縮水定流量弁との間に介設される圧力指示器とを備える精製水製造装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-239134号公報
【文献】特開2005-296945号公報
【文献】特開2013-128911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1では、数多くの逆浸透膜モジュール・ユニットを準備する必要があり、純水製造装置の設置スペースが増大する問題がある。また、特許文献2では、水温の変化に応じてポンプの回転数を制御するものであり、透過水量が水温に応じて変動するので、夏期に透過水量が増大するおそれがある。更に、特許文献3では、給水ポンプの回転数を制御してろ過膜への水量を一定にすることで水温の変動があってもろ過水量を一定に保つようにしており、ろ過膜の有効圧力が低下した場合は水質の悪化を招くおそれがある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、夏期に水温が上昇した場合であっても、純水の水質を低下させず、かつ、純水の生産量を過剰させない純水製造装置及び純水製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1] 原水を供給する原水供給路と、
前記原水供給路に設けられ、前記原水を供給する供給ポンプと、
前記供給ポンプによって供給された前記原水を透過水と濃縮水とに分離する逆浸透膜と、
前記逆浸透膜を透過した前記透過水が流れる透過水路と、
前記透過水路から分岐され、前記透過水の一部を前記原水供給路に返送可能な1または2以上の循環水路と、
前記循環水路にそれぞれ設けられ、前記原水、前記透過水または前記濃縮水のいずれかの温度が、前記循環水路毎に設定された基準温度を超えた場合に前記循環水路をそれぞれ開く1または2以上の開閉弁と、
前記循環水路の分岐位置よりも下流側の前記透過水路に設置された第1流量計と、
前記第1流量計によって測定された前記透過水の流量が第1基準流量範囲から外れた場合に、前記第1流量計により測定される前記透過水の流量が前記第1基準流量範囲内になるように前記供給ポンプによる前記原水の供給量を制御する制御部と、を備え、
前記循環水路として、第1循環水路及び第2循環水路の2つが備えられ、
前記開閉弁として、第1開閉弁と第2開閉弁の2つが備えられ、
前記第1開閉弁は、前記第1循環水路に設けられ、前記原水、前記透過水または前記濃縮水のいずれかの温度が第1基準温度を超えた場合に前記第1循環水路を開く開閉弁であり、
前記第2開閉弁は、前記第2循環水路に設けられ、前記原水、前記透過水または前記濃縮水のいずれかの温度が、前記第1基準温度より高い第2基準温度を超えた場合に前記第2循環水路を開く開閉弁であることを特徴とする純水製造装置。
[2] 前記逆浸透膜から排出された前記濃縮水が流れる濃縮水路と、
前記濃縮水路に設置された第2流量計と、
前記濃縮水路に設置され、前記第2流量計によって測定された前記濃縮水の流量があらかじめ設定された第2基準流量範囲から外れた場合に、前記第2流量計により測定される前記濃縮水の流量が前記第2基準流量範囲内になるように制御する流量制御弁と、を更に備えることを特徴とする[1]に記載の純水製造装置。
[3] 前記制御部は、前記第1流量計からの流量測定値が入力され、前記流量測定値に基づき前記原水の供給量を制御するための制御信号を前記供給ポンプに出力するインバータであることを特徴とする[1]または[2]に記載の純水製造装置。
【0011】
[4] 供給ポンプにより原水を供給する供給工程と、
前記供給工程にて供給された前記原水を逆浸透膜により透過水と濃縮水とに分離する分離工程と、
前記原水、前記透過水または前記濃縮水のいずれかの温度が基準温度を超えた場合に、透過水路を流れる前記透過水の一部を、前記透過水路から分岐された1または2以上の循環水路によって前記供給工程前の前記原水に戻す循環工程と、
前記循環水路の分岐位置よりも下流側の前記透過水路において、第1流量計により、前記透過水の流量を測定する第1流量測定工程と、
前記第1流量測定工程において測定された前記透過水の流量が第1基準流量範囲から外れた場合に、前記第1流量計により測定される前記透過水の流量が前記第1基準流量範囲内になるように前記供給ポンプによる前記原水の供給量を制御する供給制御工程と、を備え、
前記循環工程において、前記基準温度として複数の異なる基準温度を設定し、
前記原水、前記透過水または前記濃縮水のいずれかの温度が、前記複数の基準温度のうち最低の基準温度を超えた場合に、前記循環水路によって、前記透過水の一部を前記供給工程前の前記原水に戻すことを開始し、
前記原水、前記透過水または前記濃縮水のいずれかの温度が前記複数の基準温度を超える毎に、前記循環水路による前記透過水の循環量を増量することを特徴とする純水製造方法。
[5] 供給ポンプにより原水を供給する供給工程と、
前記供給工程にて供給された前記原水を逆浸透膜により透過水と濃縮水とに分離する分離工程と、
前記原水、前記透過水または前記濃縮水のいずれかの温度が基準温度を超えた場合に、透過水路を流れる前記透過水の一部を、前記透過水路から分岐された1または2以上の循環水路によって前記供給工程前の前記原水に戻す循環工程と、
前記循環水路の分岐位置よりも下流側の前記透過水路において、第1流量計により、前記透過水の流量を測定する第1流量測定工程と、
前記第1流量測定工程において測定された前記透過水の流量が第1基準流量範囲から外れた場合に、前記第1流量計により測定される前記透過水の流量が前記第1基準流量範囲内になるように前記供給ポンプによる前記原水の供給量を制御する供給制御工程と、を備え、
前記循環工程は、前記原水、前記透過水または前記濃縮水のいずれかの温度が第1基準温度を超えた場合に、前記透過水路を流れる前記透過水の一部を、第1循環水路によって前記供給工程前の前記原水に戻し、
前記原水、前記透過水または前記濃縮水のいずれかの温度が前記第1基準温度より高い第2基準温度を超えた場合に、前記透過水路を流れる前記透過水の一部を、第1循環水路及び第2循環水路によって前記供給工程前の前記原水に戻す工程であることを特徴とする純水製造方法。
[6] 前記逆浸透膜から排出されて濃縮水路を流れる前記濃縮水の流量を、第2流量計により測定する第2流量測定工程と、
前記第2流量測定工程において測定された前記濃縮水の流量が第2基準流量範囲から外れた場合に、前記第2流量計により測定される前記濃縮水の流量が前記第2基準流量範囲内になるように制御する流量制御工程と、
を更に備えることを特徴とする[4]乃至[5]の何れか一項に記載の純水製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の純水製造装置によれば、原水等の水温が基準温度を超える場合に自動的に開閉弁が開くことで、透過水量の増大のおそれがある高水温時に、透過水の一部が循環水路を経由して原水供給路に戻され、純水製造装置からユースポイントや後段の水処理装置に供給される透過水量の増大が抑制できる。また、透過水の一部が原水供給路に戻されることで、原水の水質が向上する。更に、第1流量計の流量値が第1基準流量範囲から外れた場合に、制御部が供給ポンプによる原水の供給量を制御することで、透過水量が第1基準流量範囲を維持するようにする。これにより、透過水の流量が必要以上に減少することが防止され、ユースポイントや後段の水処理装置に十分な量の透過水を供給できる。以上のように、本発明の純水製造装置によれば、高水温時であっても、純水の水質を低下させず、かつ、純水の生産量を適正な範囲に維持することができる。
【0014】
また、本発明の純水製造装置によれば、第1循環水路及び第2循環水路と、第1開閉弁及び第2開閉弁とが備えられ、水温が上昇するにつれて第1循環水路に透過水が流れ、更に水温が上昇した場合には第1循環水路と第2循環水路とに透過水が流れるように構成されているので、水温の変化に応じて、原水供給路に戻す透過水量を調整でき、純水の生産量を適正な範囲に維持することができる。
【0015】
更に、本発明の純水製造装置によれば、濃縮水路を流れる濃縮水の流量が第2基準流量範囲を外れた場合に、流量制御弁によって濃縮水の流量を適正な流量に制御する。これにより、例えば、濃縮水の流量が増大して透過水量の減少が懸念される場合であっても、濃縮水と透過水の水量比が適切な範囲に維持される。このため、逆浸透膜の操業条件を適正な範囲に維持でき、純水の品質を維持できる。
【0016】
更にまた、本発明の純水製造装置によれば、制御部がインバータであるので、第1流量計からの流量測定値に基づき原水の供給量を容易に制御できる。
【0017】
本発明の純水製造方法によれば、循環工程において、原水等の水温が基準温度を超える場合に、透過水の一部が原水に戻されるので、ユースポイントや後段の水処理装置に供給される透過水量の増大を抑制できる。また、透過水の一部が原水供給路に戻されることで、原水の水質が向上する。更に、第1流量測定工程及び供給制御工程において、透過水路と循環水路との分岐位置よりも下流側に設置された第1流量計の流量値が第1基準流量範囲から外れた場合に、供給ポンプによる原水の供給量を制御することで、透過水量が第1基準流量範囲を維持するようにする。これにより、透過水の流量が必要以上に減少することが防止され、ユースポイントや後段の水処理装置に十分な量の透過水を供給できる。以上のように、本発明の純水製造方法によれば、高水温時であっても、純水の水質を低下させず、かつ、純水の生産量を適正な範囲に維持することができる。
【0018】
また、本発明の純水製造方法によれば、基準温度として複数の異なる基準温度を設定し、原水等の温度が複数の基準温度を超える毎に、循環水路による透過水の循環量を増量するので、水温の変化に応じて、原水供給路に戻す透過水量を調整でき、純水の生産量を適正な範囲に維持することができる。
【0019】
更に、本発明の純水製造方法によれば、水温が上昇するにつれて第1循環水路に透過水が流れ、更に水温が上昇した場合には第1循環水路と第2循環水路とに透過水が流れるように構成されているので、水温の変化に応じて、原水供給路に戻す透過水量を調整でき、純水の生産量を適正な範囲に維持することができる。
【0020】
更にまた、本発明の純水製造方法によれば、第2流量測定工程及び流量制御工程において、濃縮水路を流れる濃縮水の流量が第2基準流量範囲を外れた場合に、濃縮水の流量を適正な流量に制御する。これにより、例えば、濃縮水の流量が増大して透過水量の減少が懸念される場合であっても、濃縮水と透過水の水量比が適切な範囲に維持される。このため、逆浸透膜の操業条件を適正な範囲に維持でき、純水の品質を維持できる。
【0021】
本発明の純水製造方法によれば、原水等の温度が基準温度を超えた場合に、透過水の一部を原水に返送する。また、原水等の温度に応じて透過水の返送量を調整する。更に、原水への返送分を除いた透過水の残部の流量が、返送開始前の流量になるように、供給ポンプによる供給量を調整する。
これにより、夏期の高水温時に逆浸透膜を透過する透過水量が増大したとしても、ユースポイントや後段の水処理装置に供給される透過水量の増大が抑制できる。また、透過水の一部が原水供給路に戻されることで、原水の水質が向上する。更に、原水への返送分を除いた透過水の残部の流量を調整することで、透過水の極端な流量減少を予防する。
従って、本発明の純水製造方法によれば、高水温時であっても、純水の水質を低下させず、かつ、純水の生産量を適正な範囲に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態である純水製造装置の構成を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態の純水製造装置1及び純水製造方法について説明する。
図1に示すように、本実施形態の純水製造装置1には、原水供給路2、供給ポンプ3、原水W1を透過水W2と濃縮水W3に分離する逆浸透膜4、透過水W2が流れる透過水路5、透過水路5から分岐した循環水路6、循環水路6に設けられた開閉弁7、8、透過水路5に設けられた第1流量計9、および、供給ポンプ3を制御する制御部10が備えられている。
【0024】
また、本実施形態の純水製造装置1には、
図1に示すように、濃縮水W3が流れる濃縮水路11が備えられている。濃縮水路11には、第2流量計12及び流量制御弁13が備えられている。
更に、純水製造装置1の透過水路5には、水温計20が備えられている。
【0025】
原水供給路2は、原水槽2aと原水水路2bとから構成されている。原水槽2aは、原水W1を一時的に貯留する槽である。原水水路2bは、原水W1を原水槽2aから逆浸透膜4に流す流路である。原水水路2bの途中に、供給ポンプ3が配置されており、原水W1は供給ポンプ3によって加圧され、逆浸透膜4に送られる。
【0026】
供給ポンプ3は、原水W1を逆浸透膜4に供給するものである。供給ポンプ3の回転量によって逆浸透膜4への原水W1の供給量が制御され、逆浸透膜4に対する有効圧力が調整される。供給ポンプ3の回転量は、制御部10によって制御される。
【0027】
逆浸透膜4は、原水W1を、透過水W2と濃縮水W3に分離させる。原水W1は、逆浸透膜4に通水されることによって、不純物が除去されて透過水W2とされる。除去された不純物は濃縮水W3に含有される。逆浸透膜4は、浸透膜(メンブレン)を何層にも重ねて海苔巻き状に巻き、容器に収めたスパイラル型モジュールを好適に使用できるが、これに限定されるものではない。また、逆浸透膜4には、透過水W2を流す透過水路5と、濃縮水W3を流す濃縮水路11とが接続されている。
【0028】
透過水路5は、逆浸透膜4によって分離された透過水W2をユースポイント又は後段の水処理装置(以下 単に「ユースポイント等」と記す)に供給する水路である。透過水路5の途中には、循環水路6が接続されている。また、透過水路5には、水温計20と第1流量計9とが設置されている。
【0029】
図1に示す純水製造装置1では、循環水路6として、第1循環水路6aと第2循環水路6bの2つが備えられている。循環水路6の数は特に制限がなく、1以上であればよい。第1循環水路6a及び第2循環水路6bは、透過水路5の途中から分岐され、原水供給路2を構成する原水槽2aまたは原水水路2bのいずれかに接続されている。循環水路6によって、透過水W2の一部を、原水供給路2に返送できるようになっている。
【0030】
循環水路6の途中には、開閉弁7、8が備えられている。第1循環水路6aに第1開閉弁7が備えられ、第2循環水路6bには第2開閉弁8が備えられている。開閉弁7、8は、原水W1、透過水W2または濃縮水W3のいずれかの温度が、あらかじめ設定された基準温度を超えた場合に開く弁である。開閉弁7、8は例えば、水温に応じて自動で開閉する自動弁がよい。また、開閉弁7、8は、水温に応じて開度を可変にすることが可能な制御弁でもよい。
【0031】
第1開閉弁7は、原水W1、透過水W2または濃縮水W3のいずれかの温度が第1基準温度を超えた場合に開く開閉弁であり、第2開閉弁8は、原水W1、透過水W2または濃縮水W3のいずれかの温度が第2基準温度を超えた場合に開く開閉弁である。第2基準温度は、第1基準温度よりも高い温度に設定されている。基準温度、第1基準温度及び第2基準温度は、逆浸透膜の性能や純水製造装置の製造能力等に応じて適宜設定すればよい。
【0032】
第1開閉弁7、第2開閉弁8の開閉動作をさせる際に、原水W1、透過水W2または濃縮水W3のいずれかの温度を参照することにしたのは、原水W1、透過水W2及び濃縮水W3の水温は逆浸透膜4の通過前後でほとんど変化しないので、いずれかの水温に基づいて開閉弁7、8を動作させればよいためである。
【0033】
水温計20は、循環水路6との分岐位置よりも下流側の透過水路5に設置されており、透過水W2の水温を測定する。なお、水温計20の設置位置は
図1に示す位置に限定されるものではなく、原水水路2bや濃縮水路11に設置されていてもよい。水温計20が原水水路2bに設置される場合は原水W1の水温が測定され、濃縮水路11に設置される場合は濃縮水W3の水温が測定される。この水温計20によって測定された水温に基づいて、開閉弁7、8を動作させればよい。
【0034】
第1流量計9は、循環水路6との分岐位置よりも下流側の透過水路5に設置されており、透過水W2の流量を測定する。測定された透過水W2の流量は、制御部10に出力される。
【0035】
制御部10は、第1流量計9によって測定された透過水W2の流量が第1基準流量範囲から外れた場合に、透過水W2の流量が第1基準流量範囲内になるように、供給ポンプ3による原水W1の供給量を制御する。制御部10には、第1流量計9からの流量測定値が入力される。そして、制御部10は、入力された流量測定値に基づき、原水W1の供給量を制御するための制御信号を前記供給ポンプ3に出力する。制御部10は、インバータであることが好ましい。第1基準流量範囲は、逆浸透膜の性能や純水製造装置の製造能力等に応じて適宜設定すればよい。
【0036】
濃縮水路11は、逆浸透膜4によって分離された濃縮水W3を流す水路である。濃縮水路11は、原水槽2aまたは原水水路2bのいずれかに接続されている。これにより、濃縮水W3を原水供給路2に返送できるようになっている。
【0037】
なお、濃縮水路11の途中に排水路を分岐させておき、濃縮水W3の一部を純水製造装置1の外部に排出してもよい。あるいは、濃縮水路11は、原水槽2aおよび原水水路2bに接続することなく、濃縮水W3の全量を純水製造装置1の外部に排出するようにしてもよい。
【0038】
また、濃縮水路11の途中には、第2流量計12及び流量制御弁13が設置されている。第2流量計12は、濃縮水W3の流量を測定する。測定された濃縮水W3の流量は、流量制御弁13に出力される。流量制御弁13は、第2流量計12によって測定された濃縮水W3の流量が、あらかじめ設定された第2基準流量範囲から外れた場合に、濃縮水W3の流量が第2基準流量範囲内になるように、濃縮水W3の流量を制御する。第2基準流量範囲は、逆浸透膜の性能や純水製造装置の製造能力等に応じて適宜設定すればよい。
【0039】
次に、
図1を参照しつつ、本実施形態の純水製造方法について説明する。本実施形態の純水製造方法は、供給ポンプ3により原水W1を供給する供給工程と、逆浸透膜4により原水W1を透過水W2と濃縮水W3とに分離する分離工程と、循環水路6によって透過水W2の一部を原水W1に戻す循環工程と、第1流量計9により透過水W2の流量を測定する第1流量測定工程と、供給ポンプ3によって原水W1の供給量を制御する供給制御工程と、を行う。
【0040】
また、本実施形態の純水製造方法は、第2流量計12により濃縮水W3の流量を測定する第2流量測定工程と、濃縮水W3の流量が第2基準流量範囲内になるように制御する流量制御工程とを行ってもよい。以下、各工程について説明する。
【0041】
まず、供給工程では、原水槽2aに貯留された原水W1を、原水水路2bを通じて逆浸透膜4に供給する。この際、供給ポンプ3を作動させて、逆浸透膜4に供給する原水W1の有効圧力を調整する。有効圧力は、逆浸透膜4の阻止率が低くなりすぎないように調整する。
【0042】
次に、分離工程では、逆浸透膜4によって、原水W1を透過水W2と濃縮水W3とに分離する。原水W1を逆浸透膜4に通すことによって、不純物量が低減された透過水W2が得られる。一方、濃縮水W3には不純物が濃縮される。透過水W2は透過水路5に送られ、濃縮W3は濃縮水路11に送られる。
【0043】
次に、循環工程では、原水W1、透過水W2または濃縮水W3のいずれか(以下、原水W1等という)の温度が基準温度を超えた場合に、循環水路6によって透過水W2の一部を供給工程前の原水W1に戻す。一方、原水W1等の温度が基準温度以下の場合は、透過水W2の一部を原水W1に戻さずに、透過水W2の全部をユースポイント等に供給する。循環水路6に透過水W2を流す場合は、開閉弁7、8を作動させることによって透過水W2を循環水路6に流すようにする。原水W1の水温が基準温度を超えると、原水W1の粘度が低下して、透過水W2の量が過剰になる。そこで循環工程では、この過剰分の透過水W2を原水W1に戻す操作を行う。
【0044】
原水W1の水温が上昇するにつれて、原水W1の粘度が低下するので、原水W1の水温の上昇に応じて、透過水W2の返送量を増やすとよい。そこで、循環工程では、基準温度として複数の異なる基準温度を設定し、原水W1等の温度が、複数の基準温度のうち最低の基準温度を超えた場合に、循環水路6によって、透過水W2の一部を供給工程前の原水W1に戻すことを開始し、原水W1等の温度が複数の基準温度を超える毎に、循環水路6による透過水W2の循環量を増量してもよい。なお、原水W1等のいずれかの温度が最低の基準温度以下の場合は、透過水W2の一部を原水W1に戻さずに、透過水W2の全部をユースポイント等に供給すればよい。
【0045】
この場合、1つの循環水路6を用いて透過水W2の循環を開始するとともに循環水量を増量してもよい。循環水路6に設ける開閉弁としては、例えば、開度を可変可能な制御弁を用いるとよい。
【0046】
また、2以上の循環水路6を用い、1つ目の循環水路によって透過水W2の循環を開始し、更に水温が上昇した場合は残りの循環水路を順次開通させることで循環水量を増量してもよい。それぞれの循環水路6に設ける開閉弁としては、例えば、開閉状態を「開」と「閉」の2つに切り替え可能な弁を用いるとよい。
【0047】
以下、
図1に示す純水製造装置1における循環工程を説明する。
図1では、循環水路6として第1循環水路6a及び第2循環水路6bの2つが備えられている。そこで、基準温度として、第1基準温度と第2基準温度の2つを設定する。第2基準温度は、第1基準温度よりも高い温度に設定する。
【0048】
そして、原水W1等の温度が第1基準温度を超えた場合に、第1開閉弁7を開かせて、透過水W2の一部を、第1循環水路6aによって供給工程前の原水W1に戻す。更に原水W1等の水温が上昇して、原水W1等の温度が第2基準温度を超えた場合には、更に第2開閉弁8を開かせて、透過水W2の一部を第1循環水路6a及び第2循環水路6bによって供給工程前の原水W1に戻す。
【0049】
第1循環水路6a及び第2循環水路6bによって返送されなかった透過水W2の残部は、そのまま透過水路5を流れ、ユースポイント等に送られる。
【0050】
次に、第1流量測定工程では、第1流量計9によって透過水W2の流量を測定する。第1流量計9は、循環水路6の分岐位置よりも下流側の透過水路5に配置されている。このため、透過水W2の一部が循環水路6によって返送されているときは、第1流量計9は透過水W2の残部の流量を測定する。また、透過水W2が循環水路6によって返送されないときは、第1流量計9によって透過水W2の全部の流量を測定する。第1流量計9によって測定された透過水W2の流量測定値は、制御部10に送られる。
【0051】
次に、供給制御工程では、第1流量測定工程において測定された透過水W2の流量が第1基準流量範囲から外れた場合に、制御部10がこれを検知して、透過水W2の流量が第1基準流量範囲内になるように、供給ポンプ3による原水W1の供給量を制御する。透過水W2の一部を循環水路6によって原水W1に戻した場合、ユースポイント等に供給される透過水W2の水量が減少し、ユースポイント等において水不足が生じることがある。そのため、透過水W2の流量の適正範囲である第1基準流量範囲を設定し、透過水W2の流量が第1基準流量範囲から外れる場合は、これを制御部10が検知して、供給ポンプ3に制御信号を送り、原水W1の供給量を調整する。
【0052】
例えば、透過水W2の流量が第1基準流量範囲を下回る場合は、制御部10が供給ポンプ3に制御信号を送り、原水W1の供給量を増加させる。この場合、逆浸透膜4における原水W1の有効圧力が高まり、逆浸透膜4の阻止率を高く維持したまま透過水W2の水量を増加できる。また、透過水W2の流量が第1基準流量範囲を超える場合は、制御部10が供給ポンプ3に制御信号を送り、原水W1の供給量を減少させる。
【0053】
次に、第2流量測定工程では、第2流量計12により、濃縮水路11を流れる濃縮水W3の流量を測定する。第2流量計12によって測定された濃縮水W3の流量測定値は、流量制御弁13に送られる。
【0054】
次に、流量制御工程では、第2流量測定工程において測定された濃縮水W3の流量が第2基準流量範囲を外れた場合に、濃縮水W3の流量が第2基準流量範囲内になるように制御する。供給ポンプ3によって原水W1の供給量を増加させると、濃縮水W3の流量が増大する一方で、透過水W2の流量の減少が懸念される場合がある。そこで、第2流量計12によって濃縮水W3の流量を監視し、これが適正な範囲から外れる場合は、流量制御弁13を作動させて濃縮水W3の流量を低下させることにより、透過水W2の流量と濃縮水W3との流量バランスを適切な範囲にする。これにより、逆浸透膜4の操業条件を適正な範囲に維持できるようになる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の純水製造装置1によれば、原水W1等の水温が基準温度を超える場合に自動的に開閉弁7、8が開くことで、透過水量の増大のおそれがある高水温時に、透過水W2の一部が循環水路6を経由して原水供給路2に戻され、純水製造装置1からユースポイント等に供給される透過水量の増大が抑制できる。また、透過水W2の一部が原水供給路2に戻されることで、原水W1の水質が向上する。更に、第1流量計9の流量値が第1基準流量範囲から外れた場合に、制御部10が供給ポンプ3による原水W1の供給量を制御することで、分岐後の透過水量が第1基準流量範囲を維持するようにする。これにより、透過水W2の流量が必要以上に減少することが防止され、ユースポイント等に十分な量の透過水を供給できる。以上のように、本実施形態の純水製造装置1によれば、高水温時であっても、純水の水質を低下させず、かつ、純水の生産量を適正な範囲に維持することができる。
【0056】
また、本実施形態の純水製造装置1によれば、水温が上昇するにつれて第1循環水路6aに透過水W2が流れ、更に水温が上昇した場合には第1循環水路6aと第2循環水路6bとに透過水W2が流れるように構成されているので、水温の変化に応じて、原水供給路2に戻す透過水量を調整でき、純水の生産量を適正な範囲に維持することができる。
【0057】
更に、本実施形態の純水製造装置1によれば、濃縮水路11を流れる濃縮水W3の流量が第2基準流量範囲を外れた場合に、流量制御弁13によって濃縮水W3の流量を適正な流量に制御する。これにより、例えば、濃縮水W3の流量が増大して透過水W2の流量の減少が懸念される場合であっても、濃縮水W3と透過水W2の水量比が適切な範囲に維持される。このため、逆浸透膜4の操業条件を適正な範囲に維持でき、純水の品質を維持できる。
【0058】
更にまた、本実施形態の純水製造装置1によれば、制御部10がインバータであるので、第1流量計9からの流量測定値に基づき原水W1の供給量を容易に制御できる。
【0059】
また、本実施形態の純水製造方法によれば、循環工程において、原水W1等の水温が基準温度を超える場合に、透過水W2の一部を原水W1に戻すので、ユースポイント等に供給される透過水量の増大が抑制できる。また、透過水W2の一部が原水供給路2に戻されることで、原水W1の水質が向上する。更に、第1流量測定工程及び供給制御工程において、透過水路5と循環水路6との分岐位置よりも下流側に設置された第1流量計9の流量値が第1基準流量範囲から外れた場合に、供給ポンプ3による原水の供給量を制御することで、透過水量が第1基準流量範囲内に維持される。これにより、透過水W2の流量が必要以上に減少することが防止され、ユースポイント等に十分な量の透過水W2を供給できる。以上のように、本実施形態の純水製造方法によれば、高水温時であっても、純水の水質を低下させず、かつ、純水の生産量を適正な範囲に維持することができる。
【0060】
また、本実施形態の純水製造方法によれば、基準温度として複数の異なる基準温度を設定し、原水W1等の温度が複数の基準温度を超える毎に、循環水路6による透過水W2の循環量を増量するので、水温の変化に応じて、原水供給路2に戻す透過水W2の量を調整でき、純水の生産量を適正な範囲に維持することができる。
【0061】
更に、本実施形態の純水製造方法によれば、水温が上昇するにつれて第1循環水路6aに透過水が流れ、更に水温が上昇した場合には第1循環水路6aと第2循環水路6bとに透過水W2が流れるように構成されているので、水温の変化に応じて、原水供給路2に戻す透過水W2の量を調整でき、純水の生産量を適正な範囲に維持することができる。
【0062】
更にまた、本実施形態の純水製造方法によれば、第2流量測定工程及び流量制御工程において、濃縮水W3の流量が第2基準流量範囲から外れた場合に、濃縮水W3の流量を適正な流量に制御する。これにより、濃縮水W3の流量が増大して透過水W2の流量の減少が懸念される場合であっても、濃縮水W3と透過水W2の水量比が適切な範囲に維持される。このため、逆浸透膜4の操業条件を適正な範囲に維持でき、純水の品質を維持できる。
【実施例】
【0063】
図1に示す純水製造装置において、原水の水温を25℃、28℃、30℃、32℃及び35℃に徐々に上昇させた場合の、透過水の流量と逆浸透膜の有効圧力との関係を調査した。結果を表1に示す。
表1に示すように、原水の温度が上昇するにつれて、水の粘性係数が低下し、水の粘度は低下する。
【0064】
比較例は、循環水路による透過水の返送を行わなかった例である。比較例では、原水の温度によらずに供給ポンプの回転量を一定量にして稼働させた。
【0065】
表1に示すように、比較例では水温が上昇し、水の粘度が低下するにつれて、各温度での透過水の流量(第1流量計による流量値)が増大した。一方、逆浸透膜(RO膜)の有効圧力は、水温が上昇し、水の粘度が低下するにつれて、低下した。特に、水温が35℃になると、有効圧力が0.575MPaとなり、逆浸透膜の阻止率が低下し、透過水(純水)の不純物量が増大した。
【0066】
一方、実施例は、循環水路による透過水の返送を行なった例である。実施例では、第1基準温度を28℃に設定し、第2基準温度を32℃に設定した。また、実施例では、制御部により、供給ポンプの回転量を増大させて原水の供給量を制御した。これにより、逆浸透膜(RO膜)の有効圧力は0.721~0.764MPaの範囲に維持された。
【0067】
表1に示すように、実施例では、原水の温度が28℃になったときに、第1開閉弁が開いて第1循環水路によって透過水を原水槽に返送した。また、原水の温度が32℃になったときに、更に第2開閉弁が開き、第2循環水路によって透過水を原水槽に返送した。このため、表1に示すように、透過水の返送量は水温の上昇とともに増加した。これにより、第1流量計による透過水の流量値は95~102m3/hの範囲に維持された。また、実施例では逆浸透膜(RO膜)の有効圧力が0.721~0.764MPaの範囲に維持されたため、逆浸透膜の阻止率が低下せず、透過水(純水)の不純物量は低いままだった。
【0068】
【符号の説明】
【0069】
1…純水製造装置、2…原水供給路、2a…原水槽、2b…原水水路、3…供給ポンプ、4…逆浸透膜、5…透過水路、6…循環水路、6a…第1循環水路、6b…第2循環水路、7…第1開閉弁(開閉弁)、8…第2開閉弁(開閉弁)、9…第1流量計、10…制御部、11…濃縮水路、12…第2流量計、13…流量制御弁、20…水温計、W1…原水、W2…透過水、W3…濃縮水。