(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】シリコーン組成物およびその硬化物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20221220BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20221220BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20221220BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20221220BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20221220BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08L83/04
C08K3/013
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2019168468
(22)【出願日】2019-09-17
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 晶
(72)【発明者】
【氏名】松本 展明
(72)【発明者】
【氏名】石田 一馬
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-206652(JP,A)
【文献】特開2010-155946(JP,A)
【文献】特開2004-026875(JP,A)
【文献】特開2006-052760(JP,A)
【文献】特開平11-269388(JP,A)
【文献】特開2010-150399(JP,A)
【文献】特開2014-218564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に少なくとも1個の珪素原子に結合したアルケニル基を有する、25℃における粘度が0.01~100Pa・sのオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)1分子中に少なくとも1個の珪素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1~100質量部、
(C)付加反応触媒、
(D)平均粒径が100μm以下である中空無機フィラー:10~500質量部、および
(E)下記式(1)で示されるオルガノポリシロキサン:1~100質量部
【化1】
(式中、R
1は、それぞれ独立して付加反応性炭素-炭素結合を有しない非置換または置換の炭素原子数1~10の一価炭化水素基を表し、R
2は、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、またはアシル基を表し、nは、2~100の整数を表し、aは、1~3の整数を表す。)
を含む衝撃緩衝材用シリコーン組成物。
【請求項2】
前記中空無機フィラーが、球状であり、真比重0.1~0.8である請求項1記載の衝撃緩衝材用シリコーン組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載の衝撃緩衝材用シリコーン組成物を硬化してなる衝撃緩衝材用シリコーン硬化物。
【請求項4】
密度が、0.8g/cm
3以下である請求項3記載の衝撃緩衝材用シリコーン硬化物。
【請求項5】
(周波数100Hzにおける貯蔵弾性率)/(周波数0.1Hzにおける貯蔵弾性率)の値が3.0以上である請求項3または4記載の衝撃緩衝材用シリコーン硬化物。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1項記載の衝撃緩衝材用シリコーン硬化物からなる衝撃緩衝材。
【請求項7】
請求項6記載の衝撃緩衝材を有する電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン組成物およびその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気電子分野では、スマートフォンやタブレット端末、ウェアラブルデバイスなどのモバイル端末の高機能化が進んでいる。それに伴い、搭載されている部品についても小型化や高性能化がなされている。
それら搭載されている部品は、端末の振動等によって位置ずれが発生する可能性や、落下等の強い衝撃によって破損する可能性があるため、これらの部品を振動等の遅い応力に対しては柔らかい部材で、衝撃等の速い応力に対しては硬い部材で保護する手法が採用される(特許文献1,2参照)。
【0003】
ところで、一般的に、応力の周波数によって粘弾性特性が変化する特性を有する物質は、粒子を高充填した液体またはグリース状の組成物である(特許文献3)が、これらの組成物は、液だれ等が発生し易く、封入しないと流れ出てしまうため、当該組成物そのもので部品を保護することが難しく、設計上使いにくいものであった。
また、モバイル端末等は、持ち運んだり、身に着けたりするために少しでも軽い設計が要求されるが、上記組成物は、粒子を高充填していることから高密度となるため、その使用に制限があった。
【0004】
したがって、ゴムのような固体で衝撃を保護できるような粘弾性特性を有し、さらに低密度であるような部材が切に望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-104615号公報
【文献】特開2011-74973号公報
【文献】特許第3867898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、高周波時下における貯蔵弾性率が高く、低密度である硬化物を与えるシリコーン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、中空無機フィラーを含むシリコーン組成物が、高周波時下における貯蔵弾性率が高く、かつ、低密度である硬化物を与えることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
1. (A)1分子中に少なくとも1個の珪素原子に結合したアルケニル基を有する、25℃における粘度が0.01~100Pa・sのオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)1分子中に少なくとも1個の珪素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1~100質量部、
(C)付加反応触媒、および
(D)平均粒径が100μm以下である中空無機フィラー:10~500質量部
を含むシリコーン組成物、
2. (E)下記式(1)で示されるオルガノポリシロキサン:1~100質量部を含む1のシリコーン組成物、
【化1】
(式中、R
1は、それぞれ独立して付加反応性炭素-炭素結合を有しない非置換または置換の炭素原子数1~10の一価炭化水素基を表し、R
2は、それぞれ独立して、アルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、またはアシル基を表し、nは、2~100の整数を表し、aは、1~3の整数を表す。)
3. 前記中空無機フィラーが、球状であり、真比重0.1~0.8である1または2のシリコーン組成物、
4. 1~3のいずれかのシリコーン組成物を硬化してなるシリコーン硬化物、
5. 密度が、0.8g/cm
3以下である4のシリコーン硬化物、
6. (周波数100Hzにおける貯蔵弾性率)/(周波数0.1Hzにおける貯蔵弾性率)の値が3.0以上である4または5のシリコーン硬化物、
7. 4~6のいずれかのシリコーン硬化物からなる衝撃緩衝材、
8. 7の衝撃緩衝材を有する電子部品
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシリコーン組成物を用いることで、落下等の衝撃時には貯蔵弾性率が高く、内部の精密な部品を衝撃から保護することができるのみならず、振動等に対しては貯蔵弾性率が低く、部品の位置ずれを防ぐことのできる硬化物を得ることができる。
また、本発明の硬化物は、硬化後の密度が小さいため、デバイスの重量を過度に上昇させることもない。
このような特性を有する本発明の硬化物は、例えば、スマートウォッチのような、少しでも重量を軽くしたいウェアラブルデバイスに対して極めて有効である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明に係るシリコーン組成物は、
(A)1分子中に少なくとも1個の珪素原子に結合したアルケニル基を有する、25℃における粘度が0.01~100Pa・sのオルガノポリシロキサン
(B)1分子中に少なくとも1個の珪素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン
(C)付加反応触媒
(D)平均粒径が100μm以下である中空無機フィラー
を含むことを特徴とする。
【0011】
[1](A)成分
(A)成分は、25℃における粘度が0.01~100Pa・s、好ましくは0.1~10Pa・s、より好ましくは0.5Pa・s~10Pa・sであり、1分子中に少なくとも1個の珪素原子と結合するアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。
【0012】
本発明において、上記粘度が0.01Pa・s未満であると、組成物の保存安定性が悪くなり、100Pa・sを超えると、組成物の粘度が高粘度になり成型性を確保できなくなる。なお、粘度は、回転粘度計による測定値(以下、同様)である。
このようなオルガノポリシロキサンは、上記粘度とアルケニル基含有量を満たせば、特に限定されるものではなく、公知のオルガノポリシロキサンを使用することができる。その構造も直鎖状でも分岐状でもよく、また異なる粘度を有する2種以上のオルガノポリシロキサンの混合物でもよい。
【0013】
珪素原子と結合するアルケニル基の炭素原子数は、特に限定されるものではないが、2~10が好ましく、2~8がより好ましい。アルケニル基の具体例としては、ビニル、アリル、1-ブテニル、1-ヘキセニル基等が挙げられ、これらの中でも、合成のし易さ、コストの面からビニル基が好ましい。
なお、アルケニル基は、オルガノポリシロキサンの分子鎖の末端、途中のいずれに存在してもよいが、柔軟性の点で末端にのみ存在することが好ましい。
【0014】
珪素原子と結合するアルケニル基以外の有機基としては、炭素原子数1~20、好ましくは1~10の1価炭化水素基が挙げられる。
このような1価炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ヘキシル、n-ドデシル基等のアルキル基;フェニル基等のアリール基;2-フェニルエチル、2-フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。
なお、これらの炭化水素基の水素原子の一部または全部は、塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子で置換された基の具体例としては、フロロメチル、ブロモエチル、クロロメチル、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換一価炭化水素基などが挙げられる。
これらの中でも、合成のし易さ、コストの面から、上記有機基の90モル%以上がメチル基であることが好ましい。
【0015】
以上のことから、(A)成分としては、両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖されたオルガノポリシロキサンが好ましく、特に、両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサンがより好ましい。
なお、(A)成分は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
[2](B)成分
(B)成分は、1分子中に少なくとも1個の珪素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。
(B)成分のオルガノハイドロジェンシロキサンの分子構造は、直鎖状、分岐状または網状のいずれでもよい。また、その動粘度も特に限定されるものではないが、25℃における動粘度1~10,000mm2/sが好ましく、1~1,000mm2/sがより好ましい。なお、動粘度は、キャノン・フェンスケ型粘度計による測定値である。
【0017】
(B)成分の珪素原子に結合する水素原子以外の有機基としては、アルケニル基を除く炭素原子数1~10のものが好ましい。その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ヘキシル、n-ドデシル基等のアルキル基;フェニル基等のアリール基;2-フェニルエチル、2-フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。なお、これらの炭化水素基の水素原子の一部または全部は、塩素、フッ素、臭素等のハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子で置換された基の具体例としては、フロロメチル、ブロモエチル、クロロメチル、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換一価炭化水素基などが挙げられる。
これらの中でも、合成のし易さ、コストの面から、上記有機基の90モル%以上がメチル基であることが好ましい。
【0018】
特に、本発明の(B)成分としては、下記式(2)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含むことが好ましい。
【0019】
【化2】
(式中、括弧が付されたシロキサン単位の配列は任意であってよい。)
【0020】
式(2)において、pおよびqは正の整数、p+qは10~100の整数、好ましくは20~60の整数を表す。p+qの値がこのような範囲であると、オルガノハイドロジェンポリシロキサンが取扱いに適した粘度となり、また、電子部品に用いる場合に、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの揮発による接点不良等を抑制することができる。
また、p/(p+q)は、0.01~0.5が好ましく、0.05~0.4がより好ましい。このような範囲であれば、架橋が十分に進行し、初期硬化後の未反応Si-H基による余剰の架橋反応が経時で進行することを抑制できる。
【0021】
上記R3は、それぞれ独立して炭素原子数1~6のアルキル基を表し、その構造としては、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル基等が挙げられ、合成のし易さ、コストの面からR3の90モル%以上はメチル基が好ましい。
【0022】
また、本発明の(B)成分は、下記式(3)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含むことが好ましい。
【0023】
【0024】
式(3)において、R4は、それぞれ独立して炭素原子数1~6のアルキル基を表し、その具体例としては、上記R3で例示した基と同様のものが挙げられるが、この場合も、合成のし易さ、コストの面から90%以上はメチル基が好ましい。
また、mは、5~1,000の整数を表すが、好ましくは10~100の整数である。このような範囲であれば、オルガノハイドロジェンポリシロキサンが取扱いに適した粘度となり、また、電子部品に用いる場合に、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの揮発による接点不良等を抑制することができる。
【0025】
本発明で用いられる(B)成分の好適な具体例としては、下記式で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
【化4】
(式中、括弧が付されたシロキサン単位の配列は任意である。)
【0027】
(B)成分の配合量は、組成物の硬化性を良好にすることを考慮すると、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1~100質量部であるが、1~10質量部が好ましい。
なお、(B)成分は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
[3](C)成分
(C)成分の付加反応触媒は、白金族金属系触媒であり、(A)成分のアルケニル基と(B)成分のSi-H基との間の付加反応を促進するものであれば、従来公知のものから適宜選択して使用することができる。
触媒の具体例としては、白金(白金黒を含む。)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体;H2PtCl4・nH2O、H2PtCl6・nH2O、NaHPtCl6・nH2O、KHPtCl6・nH2O、Na2PtCl6・nH2O、K2PtCl4・nH2O、PtCl4・nH2O、PtCl2、Na2HPtCl4・nH2O(但し、式中のnは0~6の整数であり、好ましくは0または6である。)等の塩化白金、塩化白金酸および塩化白金酸塩;アルコール変性塩化白金酸;塩化白金酸とオレフィンとのコンプレックス;白金黒、パラジウム等の白金族金属を、アルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させた触媒;ロジウム-オレフィンコンプレックス;クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒);塩化白金、塩化白金酸または塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサンとのコンプレックスなどが挙げられ、これらの白金族金属系触媒は、単独で使用しても2種以上組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、白金および白金化合物から選ばれる触媒が好ましい。
【0029】
(C)成分の配合量は触媒としての有効量、すなわち、(A)成分等と、(B)成分との反応を進行できる量であればよく、希望する硬化速度に応じて適宜調整すればよい。
特に、(A)成分の質量に対し、白金族金属原子に換算した質量基準で0.1~7,000ppm、好ましくは1~6,000ppmとなる量がよい。(C)成分の配合量が、白金族金属原子に換算した質量基準で0.1ppm未満の場合、触媒としての効果が発揮されないことがあり、また、7,000ppmを超えて用いても特に硬化速度の向上が期待できないことがある。
【0030】
[4](D)成分
(D)成分は、平均粒径が100μm以下である中空無機フィラーであり、フィラー自身が中空の構造であるために、組成物の密度を低下させる成分であり、無機粒子として高周波時の貯蔵弾性率を上昇させる成分でもある。
中空無機フィラーの平均粒径は、硬化物の衝撃保護性能の観点から、100μm以下とされるが、この衝撃保護性能をより高めることを考慮すると、1~90μmが好ましく、5~40μmがより好ましい。
なお、本発明における平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における体積平均値D50(即ち、累積体積が50%になるときの粒子径またはメジアン径)として測定した値である。
【0031】
本発明において、中空無機フィラーの形状は、特に限定されるものではないが、球状が好ましい。
また、中空無機フィラーの真比重も特に限定されるものではないが、組成物の調製の容易性や、効率的に低密度化を図ることを考慮すると、0.1~0.8が好ましい。
【0032】
(D)成分の具体例としては、ガラスバルーン、シリカバルーン、カーボンバルーン、アルミナバルーン、ジルコニアバルーン、シラスバルーン等が挙げられる。これらの中でも、入手がしやすく、組成物の耐熱性が良好になる事から、ガラスバルーンが好ましい。
【0033】
(D)成分の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して10~500質量部、好ましくは30~100質量部である。配合量が10質量部未満の場合には組成物の低密度化および衝撃保護の効果が十分に得られないことがあり、500質量部を超える場合は、組成物の機械的物性が劣る。
なお、(D)成分は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
[5](E)成分
本発明のシリコーン組成物は、(E)下記式(1)で示されるオルガノポリシロキサンを含んでいてもよい。この(E)成分は、組成物の粘度を低下させて中空フィラーの充填性を向上させる役割を有する。
【0035】
【0036】
式(1)において、R1は、それぞれ独立して、付加反応性炭素-炭素結合を有しない、非置換または置換の、炭素原子数1~10、好ましくは1~6、より好ましくは1~3の一価炭化水素基である。
この一価炭化水素基としては、例えば、直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル等が挙げられる。
直鎖状アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ヘキシル、n-オクチル基等が挙げられる。
分岐鎖状アルキル基の具体例としては、イソプロピル、イソブチル、tert-ブチル、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。
環状アルキル基の具体例としては、シクロペンチル、シクロヘキシル基等が挙げられる。
アリール基の具体例としては、フェニル、トリル基等が挙げられる。
アラルキル基の具体例としては、2-フェニルエチル、2-メチル-2-フェニルエチル基等が挙げられる。
ハロゲン化アルキル基の具体例としては、3,3,3-トリフルオロプロピル、2-(ノナフルオロブチル)エチル、2-(ヘプタデカフルオロオクチル)エチル基等が挙げられる。
これらの中でも、R2は、炭素原子数1~3の直鎖状アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0037】
また、R2は、互いに独立して、炭素原子数1~5の、アルキル基、アルコキシアルキル基、アルケニル基、またはアシル基である。
アルキル基の具体例としては、上記R1で例示したものが挙げられる。
アルコキシアルキル基の具体例としては、メトキシエチル、メトキシプロピル基等が挙げられる。
アシル基の具体例としては、アセチル、オクタノイル基等が挙げられる。
これらの中でも、R2は、炭素原子数1~3の直鎖状アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
さらに、nは、2~100の整数を表すが、5~80の整数が好ましい。aは、1~3の整数であるが、3が好ましい。
【0038】
(E)成分の25℃における粘度は、特に限定されるものではないが、組成物からのブリード防止および成型性の点から、0.005~10Pa・sが好ましく、0.005~1Pa・sがより好ましい。
【0039】
(E)成分の好適な具体例としては、下記式で示されるオルガノポリシロキサンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
【0041】
(E)成分を使用する場合の配合量は、硬化性の点から、(A)成分100質量部に対して好ましくは1~100質量部、より好ましくは1~50質量部である。
なお、(E)成分は、単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0042】
[6]その他の成分
本発明のシリコーン組成物は、上記(A)~(E)成分以外に、公知の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で含んでいてもよい。
このような添加剤としては、例えば、反応制御剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、炭酸カルシウム等の充填材、顔料、染料などが挙げられる。
反応制御剤としては、室温での硬化反応を抑え、シェルフライフ、ポットライフを延長させるために(C)成分の触媒活性を抑制できるものであればよく、公知の反応制御剤から適宜選択して使用すればよい。
反応制御剤の具体例としては、1-エチニル-1-シクロヘキサノール,3-ブチン-1-オール等の水酸基を有するアセチレン化合物、各種窒素化合物、有機りん化合物、オキシム化合物、有機クロロ化合物などが挙げられ、これらの中でも、金属への腐食性の無い水酸基を有するアセチレン化合物が好ましい。
なお、反応制御剤は、シリコーン樹脂への分散性を良くするためにトルエン、キシレン、イソプロピルアルコール等の有機溶剤で希釈して使用してもよい。
【0043】
[7]シリコーン組成物の製造方法
本発明のシリコーン組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法に従えばよい。すなわち、本発明のシリコーン組成物は、(A)~(D)成分、並びに必要に応じて用いられる(E)成分およびその他の成分を混合して得ることができる。
【0044】
より具体的には、1液タイプの組成物は、ゲートミキサーに、(A)成分、(D)成分、および必要に応じて(E)成分を入れ、所定温度(例えば25℃)で所定時間(例えば1時間)減圧混合し、得られた混合物を冷却後、(C)成分、反応制御剤を加え、所定温度(例えば25℃)で所定時間(例えば1時間)混合し、さらに(B)成分を加えて所定温度(例えば25℃)で所定時間(例えば30分間)混合して得ることができる。
2液タイプの組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分の組み合わせのみ共存させなければ、任意の組み合わせで構成することができる。
例えば、ゲートミキサーに、(A)成分、(D)成分、および必要に応じて(E)成分を入れ、所定温度(例えば25℃)で所定時間(例えば1時間)減圧混合し、冷却後、(C)成分を加え所定温度(例えば25℃)にて所定時間(例えば30分)混合して得られた組成物をA材とし、一方、ゲートミキサーに、(A)成分、(D)成分、および必要に応じて(E)成分を入れ、所定温度(例えば150℃)で所定時間(例えば1時間)減圧混合し、冷却後、反応制御剤を加えて所定温度(例えば25℃)で所定時間(例えば30分)混合した後、(B)成分を加え、所定温度(例えば25℃)で所定時間(例えば30分)混合し、得られた組成物をB材とすることで、A材、B材の2液タイプの組成物を得ることができる。
なお、本発明のシリコーン組成物は、1液タイプであれば冷蔵または冷凍して長期保存することができ、2液タイプであれば、常温で長期保存することができる。
【0045】
本発明のシリコーン組成物の粘度は、特に限定されるものではないが、中空無機フィラーの分散性およびシリコーン組成物の取り扱い性の点から、25℃で1~400Pa・sが好ましく、10~300Pa・sがより好ましい。
【0046】
[8]シリコーン硬化物
本発明の硬化物は、上述した本発明のシリコーン組成物を硬化させて得られる。
その際、硬化条件は特に制限されるものではなく、従来公知の硬化性シリコーン組成物と同様の条件とすることができる。
具体的には、シリコーン組成物は、流し込まれた後、設置部品から生じた熱で自然に硬化させても、積極的に加熱して硬化させてもよい。加熱して硬化させる場合の条件は、好ましくは60~180℃、より好ましくは80~150℃の温度にて、好ましくは0.1~3時間、より好ましくは0.5~2時間である。
こうして得られるシリコーン組成物の硬化物は、通常、JIS K 6253-3:2012に規定されているタイプAデュロメータにて測定した硬度40以下であれば、ゆっくりとした変形に対して柔らかく振る舞い、接触する部品に与えるストレスを可及的に軽減可能なものとなる。さらに、タイプAデュロメータにて測定した硬度が5以上であれば部品からの衝撃を保護することができる。
【0047】
上記硬化物において、密度は0.8g/cm3以下が好ましい。このような密度を有する硬化物であれば、本発明のシリコーン硬化物を有するデバイスの重量増加を抑制することができる。
また、上記硬化物において、周波数100Hzの場合の貯蔵弾性率は、好ましくは3.0MPa以上であり、より好ましくは3.0~11.0MPaである。
さらに、周波数0.1Hzの場合の貯蔵弾性率は、好ましくは4.0MPa以下であり、より好ましくは0.3~4MPaである。
そして、上記硬化物の[周波数100Hzの場合の貯蔵弾性率]/[周波数0.1Hzの場合の貯蔵弾性率]は、好ましくは3.0以上であり、より好ましくは3.5以上である。このような範囲であれば、衝撃緩衝材として好適なものとなる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
使用した各成分を以下に示す。
【0049】
(A)成分
・A-1:両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖され、25℃における粘度5Pa・sのジメチルポリシロキサン
・A-2:両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖され、25℃における粘度0.6Pa・sのジメチルポリシロキサン
【0050】
(B)成分
・B-1:下記式で示されるオルガノハイドロジェンシロキサン
【化7】
【0051】
・B-2:下記式で示されるオルガノハイドロジェンシロキサン
【化8】
(式中、括弧が付されたシロキサン単位の配列は任意である。)
【0052】
(C)成分
・C-1:白金―ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のジメチルポリシロキサン溶液(上記A-2と同じジメチルポリシロキサンに溶解したもの。白金原子として1%含有)
【0053】
(D)成分
・D-1:平均粒径20μm、真比重0.46のガラスバルーン粉末
・D-2:平均粒径24μm、真比重0.60のガラスバルーン粉末
・D-3:平均粒径40μm、真比重0.38のガラスバルーン粉末
・D-4:平均粒径4μmの結晶性シリカ粉末
【0054】
(E)成分
・E-1:下記式で示されるオルガノポリシロキサン
【化9】
【0055】
その他の成分
・F-1:1-エチニル-1-シクロヘキサノール
【0056】
[実施例1~5および比較例1~3]
5Lゲートミキサー(井上製作所(株)製、5Lプラネタリミキサー)に、(A)成分、(D)成分、および(E)成分を加え、25℃で1時間減圧混合した。次に、(C)成分を加え、25℃で30分混合した。その後、反応制御剤(F-1)を加えて25℃で30分混合した。最後に、(B)成分を加えて25℃で30分混合した。各成分の配合量を表1に示す。
【0057】
上記で得られた各組成物を硬化してなる硬化物について、以下の物性を測定・評価した。結果を併せて表1に示す。
(1)硬度
各シリコーン組成物を2.0mmの厚さで120℃10分プレス硬化し、さらに120℃のオーブン中で50分間加熱した。得られたシリコーンシートを3枚重ねて、JIS K 6253-3:2012に規定されるタイプAデュロメータにより硬さを測定した。
(2)密度
各シリコーン組成物を2.0mmの厚さで120℃10分プレス硬化し、さらに120℃のオーブン中で50分間加熱した。得られたシリコーンシートを、JIS K 7112:1999に規定される水中置換法により密度を測定した。
(3)貯蔵弾性率
各シリコーン組成物を2.0mmの厚さで120℃10分プレス硬化し、さらに120℃のオーブン中で50分間加熱した。得られたシリコーンシートを、(株)ユービーエム社製Rheogel-E4000を用いて、引張モード、正弦波歪みにより粘弾性を測定し、周波数0.1Hzの貯蔵弾性率と周波数100Hzの貯蔵弾性率を評価した。
【0058】
【0059】
表1に示されるように、実施例1~5で得られたシリコーン組成物を硬化して得られた硬化物は、低密度であり、周波数100Hzのときの貯蔵弾性率が3.2~11.0の範囲と比較的高く、かつ、周波数0.1Hzのとき貯蔵弾性率が0.3~3.2の範囲と低く、良好な特性を有していることがわかる。