(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】半導体用接着剤、半導体装置の製造方法及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
C09J 201/00 20060101AFI20221220BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20221220BHJP
C09J 171/10 20060101ALI20221220BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20221220BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20221220BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20221220BHJP
C09J 179/08 20060101ALI20221220BHJP
C09J 7/00 20180101ALI20221220BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20221220BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20221220BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J11/06
C09J171/10
C09J175/04
C09J133/00
C09J163/00
C09J179/08
C09J7/00
H01L21/56 R
H01L23/30 D
(21)【出願番号】P 2019525654
(86)(22)【出願日】2018-06-20
(86)【国際出願番号】 JP2018023422
(87)【国際公開番号】W WO2018235854
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-05-21
(31)【優先権主張番号】P 2017121512
(32)【優先日】2017-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 利泰
(72)【発明者】
【氏名】菅原 丈博
(72)【発明者】
【氏名】茶花 幸一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慎
(72)【発明者】
【氏名】林出 明子
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-112730(JP,A)
【文献】国際公開第2008/054012(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/125650(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/023452(WO,A1)
【文献】特開2008-294382(JP,A)
【文献】特開2012-184288(JP,A)
【文献】国際公開第2012/043764(WO,A1)
【文献】特開2017-028166(JP,A)
【文献】特開2009-073872(JP,A)
【文献】国際公開第2017/090439(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/090440(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度が35℃以下の熱可塑性樹脂
と、
熱硬化性樹脂と、
カルボン酸誘導体と、を含有
し、
前記カルボン酸誘導体の融点が130℃以下であり、
前記熱可塑性樹脂の含有量が、半導体用接着剤の固形分全量を基準として15質量%以下である、半導体用接着剤。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂の含有量が、半導体用接着剤の固形分全量を基準として10質量%以下である、請求項1に記載の半導体用接着剤。
【請求項3】
35℃でフィルム状である、請求項1
又は2に記載の半導体用接着剤。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂を含む、請求項
1~3のいずれか一項に記載の半導体用接着剤。
【請求項5】
硬化した接着剤の35℃における弾性率が2.0~4.0GPaである、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体用接着剤。
【請求項6】
前記カルボン酸誘導体が、カルボキシル基を有する化合物である、請求項
1~5のいずれか一項に記載の半導体用接着剤。
【請求項7】
前記カルボン酸誘導体が、カルボキシル基を2つ以上有する化合物である、請求項
1~6のいずれか一項に記載の半導体用接着剤。
【請求項8】
前記カルボン酸誘導体が、下記式(2)で表される化合物である、請求項
1~7のいずれか一項に記載の半導体用接着剤。
【化1】
[式(2)中、R
1及びR
2は、各々独立に、水素原子又は電子供与性基を示し、nは0~15の整数を示し、複数存在するR
2は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【請求項9】
35℃で液状のエポキシ樹脂
を含有しない、請求項1~
8のいずれか一項に記載の半導体用接着剤。
【請求項10】
半導体チップ及び配線回路基板のそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置、又は、複数の半導体チップのそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置の製造方法であって、
前記接続部の少なくとも一部を、請求項1~
9のいずれか一項に記載の半導体用接着剤を用いて封止する工程を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項11】
半導体チップ及び配線回路基板のそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された接続構造、又は、複数の半導体チップのそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された接続構造と、
前記接続部の少なくとも一部を封止する接着材料と、を備え、
前記接着材料は、請求項1~
9のいずれか一項に記載の半導体用接着剤の硬化物からなる、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体用接着剤、半導体装置の製造方法、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップと基板とを接続するには、金ワイヤ等の金属細線を用いるワイヤーボンディング方式が広く適用されている。一方、半導体装置に対する高機能化、高集積化、高速化等の要求に対応するため、半導体チップ又は基板にバンプと呼ばれる導電性突起を形成して、半導体チップと基板とを直接接続するフリップチップ接続方式(FC接続方式)が広まりつつある。
【0003】
例えば、半導体チップ及び基板間の接続に関して、BGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)等に盛んに用いられているCOB(Chip On Board)型の接続方式もFC接続方式に該当する。また、FC接続方式は、半導体チップ上に接続部(バンプ又は配線)を形成して、半導体チップ間を接続するCOC(Chip On Chip)型、及び、半導体ウェハー上に接続部(バンプ又は配線)を形成して、半導体チップと半導体ウェハー間を接続するCOW(Chip On Wafer)型の接続方式にも広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、さらなる小型化、薄型化、高機能化が強く要求されるパッケージでは、上述した接続方式を積層・多段化したチップスタック型パッケージ、POP(Package On Package)、TSV(Through-Silicon Via)等も広く普及し始めている。このような積層・多段化技術は、半導体チップ等を三次元的に配置することから、二次元的に配置する手法と比較してパッケージを小さくできる。また、半導体の性能向上、ノイズ低減、実装面積の削減、省電力化にも有効であることから、次世代の半導体配線技術として注目されている。
【0005】
ところで、一般に接続部同士の接続には、接続信頼性(例えば絶縁信頼性)を十分に確保する観点から、金属接合が用いられている。上記接続部(例えば、バンプ及び配線)に用いられる主な金属としては、はんだ、スズ、金、銀、銅、ニッケル等があり、これらの複数種を含んだ導電材料も用いられている。接続部に用いられる金属は、表面が酸化して酸化膜が生成してしまうこと、及び、表面に酸化物等の不純物が付着してしまうことにより、接続部の接続面に不純物が生じる場合がある。このような不純物が残存すると、半導体チップと基板との間、又は2つの半導体チップの間における接続信頼性(例えば絶縁信頼性)が低下し、上述した接続方式を採用するメリットが損なわれてしまうことが懸念される。
【0006】
また、これらの不純物の発生を抑制する方法として、OSP(Organic Solderbility Preservatives)処理等で知られる接続部を酸化防止膜でコーティングする方法があるが、この酸化防止膜は接続プロセス時のはんだ濡れ性の低下、接続性の低下等の原因となる場合がある。
【0007】
そこで上述の酸化膜及び不純物を除去する方法として、半導体材料にフラックス剤を含有させる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2008-294382号公報
【文献】国際公開第2013/125086号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、一般に接続部同士の接続には、接続信頼性(例えば絶縁信頼性)を十分に確保する観点から、金属接合が用いられている。半導体材料が十分にフラックス活性(金属表面の酸化膜及び不純物の除去効果)を有していない場合、金属表面の酸化膜及び不純物を除去できず、良好な金属-金属接合が形成されず、導通が確保されない場合がある。
【0010】
また、半導体材料を用いて製造される半導体装置は、耐熱性及び耐湿性に優れ、250℃前後のリフロー温度において、半導体材料の剥離、接続部の接続不良等が十分に抑制されるような耐リフロー性を有することが求められる。
【0011】
また、近年、生産性を向上させる観点から、フリップチップパッケージの組み立て時間を短縮することが求められており、ウェハーレベルでの実装プロセスが提案されている。
【0012】
ウェハーレベルでの実装においては、チップをウェハー上に複数個実装した後、ウェハーレベルでの一括封止、ダイシングによる個片化を経て、複数個のパッケージを効率良く作製することができる。
【0013】
ただし、チップ実装数が多い程、接着剤の硬化収縮及びリフロー工程時の熱履歴による影響から各パッケージに応力が掛かり、ウェハーに大きな反りが発生するため、封止工程でウェハーを真空チャックテーブル上に固定できないこと、及び、ウェハーが割れるといったプロセス上の不具合に繋がる。
【0014】
本開示は、ウェハーレベルでの実装プロセスに際し、ウェハー反り量を低減した半導体装置の作製を可能とする半導体用接着剤を提供することを目的とする。また、本開示は、上記半導体用接着剤を用いた半導体装置の製造方法及び半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示の一態様は、ガラス転移温度が35℃以下の熱可塑性樹脂を含有する、半導体用接着剤を提供する。上記半導体用接着剤によれば、ウェハーレベルでの実装プロセスに際し、ウェハー反り量を低減した半導体装置の作製を可能とすることができる。これは、接着剤が、室温状態に近い35℃で柔らかい特性を持つ上記熱可塑性樹脂を含むことにより、接着剤の硬化収縮又は硬化後の温度変化(高温圧着後に室温まで冷却する際の温度変化等)に伴う伸縮により生じる応力を、上記熱可塑性樹脂により分散させることができ、結果としてウェハー反り量を低減できるためであると推察される。なお、接着剤において、一般的に熱硬化性成分と熱可塑性成分とは相分離を生じて海島構造を作るが、この状態において、上記熱可塑性樹脂は熱硬化性成分の中に介入した状態で存在していると考えられ、硬化後の接着剤において生じる硬化収縮による歪みを上記熱可塑性樹脂により効率的に緩和できるものと考えられる。
【0016】
Pre-applied方式で半導体チップと配線基板との間の空隙又は複数の半導体チップ間の空隙を封止する場合の作業性を向上させることができることから、本態様の半導体用接着剤は、35℃で形状がフィルム状であることが好ましい。
【0017】
本開示の半導体用接着剤は、熱硬化性樹脂を含有していることが好ましい。この場合、温度サイクル試験時に収縮量が更に少なくなる為、一層優れた接続信頼性が得られやすい。また、硬化した接着剤が高い耐熱性とチップへの接着力を発現し、一層優れた耐リフロー性が得られやすい。
【0018】
上記熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂を含有することが好ましい。この場合、一層優れた耐リフロー性と保存安定性が得られやすい。
【0019】
本開示の半導体用接着剤は35℃で液状のエポキシ樹脂を実質的に含有しないことが好ましい。この場合、熱圧着時に液状のエポキシ樹脂が分解、揮発することなく実装することができ、チップ周辺部のアウトガス汚染が抑制されるため、一層優れたパッケージスループット性が得られやすい。
【0020】
本開示の半導体用接着剤は、硬化した接着剤の35℃における弾性率が2.0~4.0GPaであることが好ましい。これにより、各パッケージに掛かる応力を分散させることでき、ウェハー全体の反りを抑制することができる。
【0021】
本開示の半導体用接着剤は、硬化剤として潜在性硬化剤を含有することが好ましい。この場合、一層優れた保存安定性が得られやすい。
【0022】
上記潜在性硬化剤は、イミダゾール化合物であることが好ましい。この場合、一層優れた保存安定性が得られやすい。
【0023】
本開示の半導体用接着剤はフラックス化合物を含有することが好ましい。この場合、接続部の金属の酸化膜、及び、OSP処理を除去できる為、一層優れた接続信頼性が得られやすい。
【0024】
上記フラックス化合物は、カルボン酸誘導体であることが好ましい。この場合、一層優れた接続信頼性が得られやすい。
【0025】
上記フラックス化合物は、カルボキシル基を有する化合物であることが好ましい。この場合、一層優れた接続信頼性が得られやすい。
【0026】
上記フラックス化合物は、カルボキシル基を2つ以上有する化合物であることが好ましい。この場合、一層優れた接続信頼性が得られやすい。また、カルボキシル基を2つ以上有する化合物は、接続時の高温によっても揮発し難く、ボイドの発生を一層抑制することができる。
【0027】
上記フラックス化合物は、下記式(2)で表される化合物であることが好ましい。この場合、一層優れた接続信頼性が得られやすい。
【化1】
[式(2)中、R
1及びR
2は、各々独立に、水素原子又は電子供与性基を示し、nは0~15の整数を示し、複数存在するR
2は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0028】
上記フラックス化合物の融点は150℃以下であることが好ましい。この場合、熱圧着時に接着剤が硬化する前にフラックス化合物が溶融し、はんだ表面の酸化膜を除去することにより、一層優れた接続信頼性が得られやすい。
【0029】
本態様の半導体用接着剤は、半導体チップ及び配線回路基板のそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置、又は、複数の半導体チップのそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置における上記接続部の少なくとも一部を封止するために、好適に用いることができる。
【0030】
本態様のフラックス化合物によれば、ガラス転移温度が35℃以下の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び硬化剤と組み合わせることにより、ウェハーレベルでの実装プロセスに際し、ウェハー反り量を低減した半導体装置の作製を可能とする半導体用接着剤を、実現することができる。
【0031】
本開示の他の態様は、半導体チップ及び配線回路基板のそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置、又は、複数の半導体チップのそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された半導体装置の製造方法であって、上記接続部の少なくとも一部を、上記半導体用接着剤を用いて封止する工程を備える、半導体装置の製造方法を提供する。
【0032】
本態様の製造方法によれば、上記半導体用接着剤を用いることにより、ウェハー反り量を低減した半導体装置を得ることができる。
【0033】
本開示の他の態様は、半導体チップ及び配線回路基板のそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された接続構造、又は、複数の半導体チップのそれぞれの接続部が互いに電気的に接続された接続構造と、上記接続部の少なくとも一部を封止する接着材料と、を備え、上記接着材料は、上記半導体用接着剤の硬化物からなる、半導体装置を提供する。本態様の半導体装置は、ウェハー反り量が低減されたものとなる。
【発明の効果】
【0034】
本開示によれば、実装時のウェハー反り量が小さい半導体装置の作製を可能とする半導体用接着剤が提供される。また、本開示によれば、上記半導体用接着剤を用いた半導体装置の製造方法及び半導体装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本開示の半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図2】本開示の半導体装置の他の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図3】本開示の半導体装置の他の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図4】本開示の半導体装置の製造方法の一実施形態を模式的に示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、場合により図面を参照しつつ本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0037】
<半導体用接着剤>
本実施形態の半導体用接着剤は、熱可塑性樹脂(以下、場合により「(a)成分」という。)を含有する。本実施形態の半導体用接着剤は、熱可塑性樹脂として、ガラス転移温度が35℃以下の熱可塑性樹脂を含有する。本実施形態の半導体用接着剤は必要に応じて、熱硬化性樹脂(以下、場合により「(b)成分」という。)、硬化剤(以下、場合により「(c)成分」という。)、フラックス化合物(以下、場合により「(d)成分」という。)を含有する。
【0038】
本実施形態の半導体用接着剤によれば、ガラス転移温度が35℃以下の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、硬化剤及びフラックス化合物を組み合わせて用いることにより、ウェハーレベルでの実装プロセスに際し、ウェハー反り量を低減した半導体装置の作製を可能とすることができる。
【0039】
本実施形態の半導体用接着剤は、必要に応じて、フィラー(以下、場合により「(e)成分」という。)を含有していてもよい。
【0040】
以下、本実施形態の半導体用接着剤を構成する各成分について説明する。
【0041】
(a)熱可塑性樹脂
(a)成分としては、限定されるものではないが、例えば、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂及びアクリルエラストマー(アクリルゴム等)が挙げられる。これらの中でも耐熱性及びフィルム形成性に優れる観点から、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリルエラストマー、シアネートエステル樹脂及びポリカルボジイミド樹脂が好ましく、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂及びアクリルエラストマーがより好ましい。これらの(a)成分は単独で又は2種以上の混合物もしくは共重合体として使用することもできる。
【0042】
(a)成分の重量平均分子量は、10000以上であることが好ましく、60000以上であることがより好ましく、100000以上であることが更に好ましい。このような(a)成分によれば、フィルム形成性及び接着剤の耐熱性及びを一層向上させることができる。
【0043】
また、(a)成分の重量平均分子量は、1000000以下であることが好ましく、500000以下であることがより好ましい。このような(a)成分によれば、フィルム加工性を一層向上させることができる。
【0044】
なお、本明細書において、上記重量平均分子量とは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー、Gel Permeation Chromatography)を用いて測定された、ポリスチレン換算の重量平均分子量を示す。GPC法の測定条件の一例を以下に示す。
装置:HCL-8320GPC、UV-8320(製品名、東ソー株式会社製)、又はHPLC-8020(製品名、東ソー株式会社製)
カラム:TSKgel superMultiporeHZ-M×2、又は2pieces of GMHXL + 1piece of G-2000XL
検出器:RI又はUV検出器
カラム温度:25~40℃
溶離液:高分子成分が溶解する溶媒を選択する。例えば、THF(テトラヒドロフラン)、DMF(N,N-ジメチルホルムアミド)、DMA(N,N-ジメチルアセトアミド)、NMP(N-メチルピロリドン)、トルエン。尚、極性を有する溶剤を選択する場合は、リン酸の濃度を0.05~0.1mol/L(通常は0.06mol/L)、LiBrの濃度を0.5~1.0mol/L(通常は0.63mol/L)と調整してもよい。
流速:0.30~1.5mL/分
標準物質:ポリスチレン
【0045】
半導体用接着剤が(a)成分を含有するとき、(a)成分の含有量Caに対する(b)成分の含有量Cbの比Cb/Ca(質量比)は、0.01~5であることが好ましく、0.05~3であることがより好ましく、0.1~2であることがさらに好ましい。比Cb/Caを0.01以上とすることで、より良好な硬化性及び接着力が得られ、比Cb/Caを5以下とすることでより良好なフィルム形成性が得られる。
【0046】
(a)成分は、ガラス転移温度が35℃以下の熱可塑性樹脂を少なくとも含むが、ガラス転移温度が35℃を超える熱可塑性樹脂を更に含んでいてもよい。(a)成分のガラス転移温度は、-50~50℃であることが好ましく、-30~45℃であることがより好ましく、-25~35℃であることが更に好ましく、-25~25℃であることが特に好ましく、-25~20℃であることが極めて好ましい。このような(a)成分を含む半導体用接着剤によれば、ウェハーレベルでの実装プロセスに際し、ウェハー反り量を一層低減することができると共に、半導体用接着剤の耐熱性及びフィルム形成性を一層向上させることができる。(a)成分のガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)により測定することができる。
【0047】
(a)成分の含有量は、半導体用接着剤の固形分全量を基準として20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。(a)成分の含有量が20質量%以下であると、半導体用接着剤は良好な耐リフロー性を得ることができ、吸湿後でも250℃前後のリフロー温度で良好な接着力を得ることができる。また、(a)成分の含有量は、半導体用接着剤の固形分全量を基準として1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることが更に好ましい。(a)成分の含有量が1質量%以上であると、半導体用接着剤はウェハーレベルでの実装プロセスに際し、ウェハー反り量を一層低減することができると共に、半導体用接着剤の耐熱性及びフィルム形成性を一層向上させることができる。
【0048】
(b)熱硬化性樹脂
(b)成分としては、分子内に2個以上の反応基を有するものであれば特に制限なく用いることができる。(b)成分としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、(メタ)アクリル化合物、ビニル化合物が挙げられる。これらの中でも耐熱性及び保存安定性に優れる観点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂が好ましく、エポキシ樹脂、イミド樹脂がより好ましい。これらの(b)成分は単独で又は2種以上の混合物もしくは共重合体として使用することもできる。
【0049】
エポキシ樹脂及びイミド樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂及び各種多官能エポキシ樹脂、ナジイミド樹脂、アリルナジイミド樹脂、マレイミド樹脂、アミドイミド樹脂、イミドアクリレート樹脂、各種多官能イミド樹脂及び各種ポリイミド樹脂を使用することができる。これらは単独で又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0050】
(b)成分は、高温での接続時に分解して揮発成分が発生することを抑制する観点から、接続時の温度が250℃の場合は、250℃における熱重量減少量率が5%以下のものを用いることが好ましく、接続時の温度が300℃の場合は、300℃における熱重量減少量率が5%以下のものを用いることが好ましい。
【0051】
(b)成分の含有量は、半導体用接着剤の固形分全量を基準として、例えば5~75質量%であり、好ましくは15~60質量%であり、より好ましくは30~50質量%である。
【0052】
(c)硬化剤
(c)成分としては、例えば、フェノール樹脂系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤及びホスフィン系硬化剤が挙げられる。(c)成分がフェノール性水酸基、酸無水物、アミン類又はイミダゾール類を含むと、接続部に酸化膜が生じることを抑制するフラックス活性を示し、接続信頼性・絶縁信頼性を向上させることができる。以下、各硬化剤について説明する。
【0053】
(i)フェノール樹脂系硬化剤
フェノール樹脂系硬化剤としては、分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有するものであれば特に制限はなく、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールナフトールホルムアルデヒド重縮合物、トリフェニルメタン型多官能フェノール樹脂及び各種多官能フェノール樹脂を使用することができる。これらは単独で又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0054】
上記(b)成分に対するフェノール樹脂系硬化剤の当量比(フェノール性水酸基/(b)成分の反応基、モル比)は、良好な硬化性、接着性及び保存安定性の観点から、0.3~1.5が好ましく、0.4~1.0がより好ましく、0.5~1.0が更に好ましい。当量比が0.3以上であると、硬化性が向上し接着力が向上する傾向があり、1.5以下であると未反応のフェノール性水酸基が過剰に残存することがなく、吸水率が低く抑えられ、絶縁信頼性が向上する傾向がある。
【0055】
(ii)酸無水物系硬化剤
酸無水物系硬化剤としては、例えば、メチルシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物及びエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテートを使用することができる。これらは単独で又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0056】
上記(b)成分に対する酸無水物系硬化剤の当量比(酸無水物基/(b)成分の反応基、モル比)は、良好な硬化性、接着性及び保存安定性の観点から、0.3~1.5が好ましく、0.4~1.0がより好ましく、0.5~1.0が更に好ましい。当量比が0.3以上であると、硬化性が向上し接着力が向上する傾向があり、1.5以下であると未反応の酸無水物が過剰に残存することがなく、吸水率が低く抑えられ、絶縁信頼性が向上する傾向がある。
【0057】
(iii)アミン系硬化剤
アミン系硬化剤としては、例えばジシアンジアミドを使用することができる。
【0058】
上記(b)成分に対するアミン系硬化剤の当量比(アミン/(b)成分の反応基、モル比)は、良好な硬化性、接着性及び保存安定性の観点から0.3~1.5が好ましく、0.4~1.0がより好ましく、0.5~1.0が更に好ましい。当量比が0.3以上であると、硬化性が向上し接着力が向上する傾向があり、1.5以下であると未反応のアミンが過剰に残存することがなく、絶縁信頼性が向上する傾向がある。
【0059】
(iv)イミダゾール系硬化剤
イミダゾール系硬化剤としては、例えば、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノ-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加体、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、及び、エポキシ樹脂とイミダゾール類の付加体が挙げられる。これらの中でも、優れた硬化性、保存安定性及び接続信頼性の観点から、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノ-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加体、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールが好ましい。これらは単独で又は2種以上を併用して用いることができる。また、これらをマイクロカプセル化した潜在性硬化剤としてもよい。
【0060】
イミダゾール系硬化剤の含有量は、(b)成分100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。イミダゾール系硬化剤の含有量が0.1質量部以上であると硬化性が向上する傾向があり、20質量部以下であると金属接合が形成される前に半導体用接着剤が硬化することがなく、接続不良が発生しにくい傾向がある。
【0061】
(v)ホスフィン系硬化剤
ホスフィン系硬化剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ(4-メチルフェニル)ボレート及びテトラフェニルホスホニウム(4-フルオロフェニル)ボレートが挙げられる。
【0062】
ホスフィン系硬化剤の含有量は、(b)成分100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましく、0.1~5質量部がより好ましい。ホスフィン系硬化剤の含有量が0.1質量部以上であると硬化性が向上する傾向があり、10質量部以下であると金属接合が形成される前に半導体用接着剤が硬化することがなく、接続不良が発生しにくい傾向がある。
【0063】
フェノール樹脂系硬化剤、酸無水物系硬化剤及びアミン系硬化剤は、それぞれ1種を単独で又は2種以上の混合物として使用することができる。イミダゾール系硬化剤及びホスフィン系硬化剤はそれぞれ単独で用いてもよく、フェノール樹脂系硬化剤、酸無水物系硬化剤又はアミン系硬化剤と共に用いてもよい。
【0064】
保存安定性が一層向上し、吸湿による分解又は劣化が起こりにくくなる観点から、(c)成分は、フェノール樹脂系硬化剤、アミン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤及びホスフィン系硬化剤からなる群より選択される硬化剤であることが好ましい。また、硬化速度の調整の容易さの観点、及び、速硬化性により生産性向上を目的とした短時間接続が実現できる観点からは、(c)成分は、フェノール樹脂系硬化剤、アミン系硬化剤及びイミダゾール系硬化剤からなる群より選択される硬化剤であることがより好ましい。
【0065】
(c)成分としては、(b)成分の硬化剤として機能すれば特に制限はなく、上記以外の硬化剤も使用可能である。硬化系としてはラジカル重合が好ましい。(c)成分としては、ラジカル発生剤が好ましい。ラジカル発生剤としては、熱ラジカル発生剤(熱によるラジカル発生剤)、光ラジカル発生剤(光によるラジカル発生剤)等が挙げられる。(c)成分としては、取り扱い性に優れる観点から、熱ラジカル発生剤が好ましい。(c)成分は、1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0066】
熱ラジカル発生剤としては、アゾ化合物、過酸化物(有機過酸化物等)などが挙げられる。熱ラジカル発生剤としては、取り扱い性及び保存安定性に優れる観点から、過酸化物が好ましく、有機過酸化物がより好ましい。有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネイト、パーオキシエステル等が挙げられる。有機過酸化物としては、保存安定性の観点から、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステルが好ましい。さらに、有機過酸化物としては、耐熱性の観点から、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイドが好ましい。
【0067】
(c)成分の含有量は、(b)成分100質量部に対して、0.5~20質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、1~5質量部が更に好ましい。含有量が0.5質量部以上の場合、充分に硬化が進行する傾向があり、20質量部以下の場合、硬化が急激に進行して反応点が多くなることを抑制し、分子鎖が短くなったり、未反応基が残存したりして信頼性が低下することを防ぐことができる傾向がある。
【0068】
半導体用接着剤が(c)成分として、フェノール樹脂系硬化剤、酸無水物系硬化剤又はアミン系硬化剤を含む場合、酸化膜を除去するフラックス活性を示し、接続信頼性をより向上することができる。
【0069】
(d)フラックス化合物
(d)成分はフラックス活性を有する化合物であり、本実施形態の半導体用接着剤において、フラックス剤として機能する。(d)成分は、カルボン酸誘導体を含むことが好ましい。(d)成分としては、例えば、下記式(1)で表される基を有する化合物が挙げられる。(d)成分としては、フラックス化合物の1種を単独で用いてもよく、フラックス化合物の2種以上を併用してもよい。
【0070】
【0071】
式(1)中、R1は、水素原子又は電子供与性基を示す。
【0072】
電子供与性基としては、例えば、アルキル基、水酸基、アミノ基、アルコキシ基及びアルキルアミノ基が挙げられる。電子供与性基としては、他の成分(例えば、(b)成分のエポキシ樹脂)と反応しにくい基が好ましく、具体的には、アルキル基、水酸基又はアルコキシ基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0073】
電子供与性基の電子供与性が強くなると、上述のエステル結合の分解を抑制する効果が得られ易くなる傾向にある。また、電子供与性基の立体障害は、大きいと、上述のカルボキシル基とエポキシ樹脂との反応を抑制する効果が得られ易くなる。電子供与性基は、電子供与性及び立体障害をバランス良く有していることが好ましい。
【0074】
アルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~5のアルキル基がより好ましい。アルキル基の炭素数は、多いほど電子供与性及び立体障害が大きくなる傾向にある。炭素数が上記範囲であるアルキル基は、電子供与性及び立体障害のバランスに優れるため、当該アルキル基によれば、本開示の効果が一層顕著に奏される。
【0075】
また、アルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよいが、中でも直鎖状が好ましい。アルキル基が直鎖状であるとき、電子供与性及び立体障害のバランスの観点から、アルキル基の炭素数は、フラックス化合物の主鎖の炭素数以下であることが好ましい。例えば、フラックス化合物が下記式(2)で表される化合物であり、電子供与性基が直鎖状のアルキル基であるとき、当該アルキル基の炭素数は、フラックス化合物の主鎖の炭素数(n+1)以下であることが好ましい。
【0076】
アルコキシ基としては、炭素数1~10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~5のアルコキシ基がより好ましい。アルコキシ基の炭素数は、多いほど電子供与性及び立体障害が大きくなる傾向がある。炭素数が上記範囲であるアルコキシ基は、電子供与性及び立体障害のバランスに優れるため、当該アルコキシ基によれば、本開示の効果が一層顕著に奏される。
【0077】
また、アルコキシ基のアルキル基部分は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、中でも直鎖状が好ましい。アルコキシ基が直鎖状であるとき、電子供与性及び立体障害のバランスの観点から、アルコキシ基の炭素数は、フラックス化合物の主鎖の炭素数以下であることが好ましい。例えば、フラックス化合物が下記式(2)で表される化合物であり、電子供与性基が直鎖状のアルコキシ基であるとき、当該アルコキシ基の炭素数は、フラックス化合物の主鎖の炭素数(n+1)以下であることが好ましい。
【0078】
アルキルアミノ基としては、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基が挙げられる。モノアルキルアミノ基としては、炭素数1~10のモノアルキルアミノ基が好ましく、炭素数1~5のモノアルキルアミノ基がより好ましい。モノアルキルアミノ基のアルキル基部分は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
【0079】
ジアルキルアミノ基としては、炭素数2~20のジアルキルアミノ基が好ましく、炭素数2~10のジアルキルアミノ基がより好ましい。ジアルキルアミノ基のアルキル基部分は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
【0080】
フラックス化合物は、カルボキシル基を2つ有する化合物(ジカルボン酸)であることが好ましい。カルボキシル基を2つ有する化合物は、カルボキシル基を1つ有する化合物(モノカルボン酸)と比較して、接続時の高温によっても揮発し難く、ボイドの発生を一層抑制できる。また、カルボキシル基を2つ有する化合物を用いると、カルボキシル基を3つ以上有する化合物を用いた場合と比較して、保管時・接続作業時等における半導体用接着剤の粘度上昇を一層抑制することができ、半導体装置の接続信頼性を一層向上させることができる。
【0081】
フラックス化合物としては、下記式(2)で表される化合物を好適に用いることができる。下記式(2)で表される化合物によれば、半導体装置の耐リフロー性及び接続信頼性を一層向上させることができる。
【0082】
【0083】
式(2)中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子又は電子供与性基を示し、nは0又は1以上の整数を示し、複数存在するR2は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0084】
式(2)におけるnは、1以上であることが好ましい。nが1以上であると、nが0である場合と比較して、接続時の高温によってもフラックス化合物が揮発し難く、ボイドの発生を一層抑制することができる。また、式(2)におけるnは、15以下であることが好ましく、11以下であることがより好ましく、4以下であることが特に好ましく、2以下であってもよい。nが15以下であると、一層優れた接続信頼性が得られる。
【0085】
また、フラックス化合物としては、下記式(3)で表される化合物がより好適である。下記式(3)で表される化合物によれば、半導体装置の耐リフロー性及び接続信頼性をより一層向上させることができる。
【0086】
【0087】
式(3)中、R1及びR2は、各々独立に、水素原子又は電子供与性基を示し、mは0又は1以上の整数を示す。
【0088】
式(3)におけるmは、10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、3以下であることがさらに好ましい。mが10以下であると、一層優れた接続信頼性が得られる。
【0089】
式(3)において、R1及びR2は、水素原子であっても電子供与性基であってもよい。R1及びR2が水素原子であると、融点が低くなる傾向があり、半導体装置の接続信頼性をより向上させることができる場合がある。また、R1とR2とが異なる電子供与性基であると、R1とR2とが同じ電子供与性基である場合と比較して、融点が低くなる傾向があり、半導体装置の接続信頼性をより向上させることができる場合がある。
【0090】
式(3)で表される化合物のうち、R1が電子供与性基であり、R2が水素原子である化合物としては、メチルコハク酸、2-メチルグルタル酸、2-メチルアジピン酸、2-メチルピメリン酸、2-メチルスベリン酸等が挙げられる。これらの化合物によれば、半導体装置の接続信頼性を一層向上させることができる。また、これらの化合物のうち、メチルコハク酸及び2-メチルグルタル酸が特に好ましい。
【0091】
なお、式(3)において、R1とR2とが同じ電子供与性基であると、対称構造となり融点が高くなる傾向があるが、この場合でも本開示の効果は十分に得られる。特に融点が150℃以下と十分に低い場合には、R1とR2とが同じ基であっても、R1とR2とが異なる基である場合と同程度の接続信頼性が得られる。
【0092】
フラックス化合物としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸及びドデカン二酸から選択されるジカルボン酸、並びに、それらの化合物の2位に電子供与性基が置換した化合物を用いることができる。これらの中でも、半導体装置の接続信頼性を一層向上させることから、コハク酸及びグルタル酸、並びに、それらの化合物の2位に電子供与性基が置換した化合物が特に好ましい。
【0093】
フラックス化合物の融点は、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。このようなフラックス化合物は、エポキシ樹脂及びイミド樹脂等の反応成分と硬化剤との硬化反応が生じる前にフラックス活性が十分に発現しやすい。そのため、このようなフラックス化合物を含有する半導体用接着剤によれば、接続信頼性に一層優れる半導体装置を実現できる。また、フラックス化合物の融点は、25℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。また、フラックス化合物は、室温(25℃)で固形であるものが好ましい。
【0094】
フラックス化合物の融点は、一般的な融点測定装置を用いて測定できる。融点を測定する試料は、微粉末に粉砕され且つ微量を用いることで試料内の温度の偏差を少なくすることが求められる。試料の容器としては一方の端を閉じた毛細管が用いられることが多いが、測定装置によっては2枚の顕微鏡用カバーグラスに挟み込んで容器とするものもある。また、急激に温度を上昇させると試料と温度計との間に温度勾配が発生して測定誤差を生じるため、融点を計測する時点での加温は毎分1℃以下の上昇率で測定することが望ましい。
【0095】
前述のように微粉末として調整するので、表面での乱反射により融解前の試料は不透明である。試料の外見が透明化し始めた温度を融点の下限点とし、融解しきった温度を上限点とすることが通常である。測定装置は種々の形態のものが存在するが、最も古典的な装置は二重管式温度計に試料を詰めた毛細管を取り付けて温浴で加温する装置が使用される。二重管式温度計に毛細管を貼り付ける目的で温浴の液体として粘性の高い液体が用いられ、濃硫酸ないしはシリコンオイルが用いられることが多く、温度計先端の溜めの近傍に試料が来るように取り付ける。また、融点測定装置としては金属のヒートブロックを使って加温し、光の透過率を測定しながら加温を調整しつつ自動的に融点を決定するものを使用することもできる。
【0096】
なお、本明細書中、融点が150℃以下とは、融点の上限点が150℃以下であることを意味し、融点が25℃以上とは、融点の下限点が25℃以上であることを意味する。
【0097】
(d)成分の含有量は、半導体装置作製時のウェハー反り量を一層低減する観点から、半導体用接着剤の固形分全量を基準として、0.5~10質量%であることが好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましい。
【0098】
(e)フィラー
本実施形態の半導体用接着剤は、必要に応じて、フィラー((e)成分)を含有していてもよい。(e)成分によって、半導体用接着剤の粘度、半導体用接着剤の硬化物の物性等を制御することができる。具体的には、(e)成分によれば、例えば、接続時のボイド発生の抑制、半導体用接着剤の硬化物の吸湿率の低減、等を図ることができる。
【0099】
(e)成分としては、絶縁性無機フィラー、ウィスカー、樹脂フィラー等を用いることができる。また、(e)成分としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0100】
絶縁性無機フィラーとしては、例えば、ガラス、シリカ、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラック、マイカ及び窒化ホウ素が挙げられる。これらの中でも、シリカ、アルミナ、酸化チタン及び窒化ホウ素が好ましく、シリカ、アルミナ及び窒化ホウ素がより好ましい。
【0101】
ウィスカーとしては、例えば、ホウ酸アルミニウム、チタン酸アルミニウム、酸化亜鉛、珪酸カルシウム、硫酸マグネシウム及び窒化ホウ素が挙げられる。
【0102】
樹脂フィラーとしては、例えば、ポリウレタン、ポリイミド等の樹脂からなるフィラーが挙げられる。
【0103】
樹脂フィラーは、有機成分(エポキシ樹脂及び硬化剤等)と比較して熱膨張率が小さいため接続信頼性の向上効果に優れる。また、樹脂フィラーによれば、半導体用接着剤の粘度調整を容易に行うことができる。また、樹脂フィラーは、無機フィラーと比較して応力を緩和する機能に優れている。
【0104】
無機フィラーは、樹脂フィラーと比較して熱膨張率が小さいため、無機フィラーによれば、接着剤組成物の低熱膨張率化が実現できる。また、無機フィラーには汎用品で粒径制御されたものが多いため、粘度調整にも好ましい。
【0105】
樹脂フィラー及び無機フィラーはそれぞれに有利な効果があるため、用途に応じていずれか一方を用いてもよく、双方の機能を発現するため双方を混合して用いてもよい。
【0106】
(e)成分の形状、粒径及び含有量は特に制限されない。また、(e)成分は、表面処理によって物性を適宜調整されたものであってもよい。
【0107】
(e)成分の含有量は、半導体用接着剤の固形分全量基準で、10~80質量%であることが好ましく、15~60質量%であることがより好ましい。
【0108】
(e)成分は、絶縁物で構成されていることが好ましい。(e)成分が導電性物質(例えば、はんだ、金、銀、銅等)で構成されていると、絶縁信頼性(特にHAST耐性)が低下するおそれがある。
【0109】
(その他の成分)
本実施形態の半導体用接着剤には、酸化防止剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、レベリング剤、イオントラップ剤等の添加剤を配合してもよい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの配合量については、各添加剤の効果が発現するように適宜調整すればよい。
【0110】
本実施形態の半導体用接着剤の硬化後の35℃における弾性率は、特に限定されないが、1.0~5.0GPaであってもよく、2.0~4.0GPaであることが好ましく、2.5~4.0GPaであることがより好ましい。上記弾性率が4.0GPa以下であると、各パッケージに掛かる応力を分散させることでき、ウェハー全体の反りを一層抑制することができる。一方、上記弾性率が2.0GPa以上であると、吸湿後でも250℃前後のリフロー温度で一層良好な接着力を得ることができる。ここで、上記弾性率は、実施例に記載の方法で測定される貯蔵弾性率である。
【0111】
本実施形態の半導体用接着剤は、フィルム状に成形することができる。本実施形態の半導体用接着剤を用いたフィルム状接着剤の作製方法の一例を以下に示す。
【0112】
まず、(a)成分、並びに必要に応じて添加される(b)成分、(c)成分、(d)成分及び(e)成分等を、有機溶媒中に加え、攪拌混合、混錬等により、溶解又は分散させて、樹脂ワニスを調製する。その後、離型処理を施した基材フィルム上に、樹脂ワニスをナイフコーター、ロールコーター、アプリケーター等を用いて塗布した後、加熱により有機溶媒を除去することにより、基材フィルム上にフィルム状接着剤を形成することができる。
【0113】
フィルム状接着剤の厚みは特に制限されないが、例えば、接続前のバンプの高さの0.5~1.5倍であることが好ましく、0.6~1.3倍であることがより好ましく、0.7~1.2倍であることがさらに好ましい。
【0114】
フィルム状接着剤の厚さがバンプの高さの0.5倍以上であると、接着剤の未充填によるボイドの発生を十分に抑制することができ、接続信頼性を一層向上させることができる。また、厚さが1.5倍以下であると、接続時にチップ接続領域から押し出される接着剤の量を十分に抑制することができるため、不要な部分への接着剤の付着を十分に防止することができる。フィルム状接着剤の厚さが1.5倍より大きいと、多くの接着剤をバンプが排除しなければならなくなり、導通不良が生じやすくなる。また、狭ピッチ化・多ピン化によるバンプの弱化(バンプ径の微小化)に対して、多くの樹脂を排除することは、バンプへのダメージが大きくなるため好ましくない。
【0115】
一般にバンプの高さが5~100μmであることからすると、フィルム状接着剤の厚みは2.5~150μmであることが好ましく、3.5~120μmであることがより好ましい。
【0116】
樹脂ワニスの調製に用いる有機溶媒としては、各成分を均一に溶解又は分散し得る特性を有するものが好ましく、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ジオキサン、シクロヘキサノン、及び酢酸エチルが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。樹脂ワニス調製の際の攪拌混合及び混錬は、例えば、攪拌機、らいかい機、3本ロール、ボールミル、ビーズミル又はホモディスパーを用いて行うことができる。
【0117】
基材フィルムとしては、有機溶媒を揮発させる際の加熱条件に耐え得る耐熱性を有するものであれば特に制限はなく、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム及びポリエーテルイミドフィルムを例示できる。基材フィルムは、これらのフィルムからなる単層のものに限られず、2種以上の材料からなる多層フィルムであってもよい。
【0118】
基材フィルムへ塗布した樹脂ワニスから有機溶媒を揮発させる際の乾燥条件は、有機溶媒が十分に揮発する条件とすることが好ましく、具体的には、50~200℃、0.1~90分間の加熱を行うことが好ましい。有機溶媒は、フィルム状接着剤全量に対して1.5質量%以下まで除去されることが好ましい。
【0119】
また、本実施形態の半導体用接着剤は、ウェハー上で直接形成してもよい。具体的には、例えば、上記樹脂ワニスをウェハー上に直接スピンコートして膜を形成した後、有機溶媒を除去することにより、ウェハー上に直接半導体用接着剤を形成してもよい。
【0120】
<半導体装置>
本実施形態の半導体装置について、
図1及び2を用いて以下説明する。
図1は、本開示の半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
図1の(a)に示すように、半導体装置100は、互いに対向する半導体チップ10及び基板(回路配線基板)20と、半導体チップ10及び基板20の互いに対向する面にそれぞれ配置された配線15と、半導体チップ10及び基板20の配線15を互いに接続する接続バンプ30と、半導体チップ10及び基板20間の空隙に隙間なく充填された接着材料40とを有している。半導体チップ10及び基板20は、配線15及び接続バンプ30によりフリップチップ接続されている。配線15及び接続バンプ30は、接着材料40により封止されており外部環境から遮断されている。
【0121】
図1の(b)に示すように、半導体装置200は、互いに対向する半導体チップ10及び基板20と、半導体チップ10及び基板20の互いに対向する面にそれぞれ配置されたバンプ32と、半導体チップ10及び基板20間の空隙に隙間なく充填された接着材料40とを有している。半導体チップ10及び基板20は、対向するバンプ32が互いに接続されることによりフリップチップ接続されている。バンプ32は、接着材料40により封止されており外部環境から遮断されている。接着材料40は、本実施形態の半導体用接着剤の硬化物である。
【0122】
図2は、本開示の半導体装置の他の一実施形態を示す模式断面図である。
図2の(a)に示すように、半導体装置300は、2つの半導体チップ10が配線15及び接続バンプ30によりフリップチップ接続されている点を除き、半導体装置100と同様である。
図2の(b)に示すように、半導体装置400は、2つの半導体チップ10がバンプ32によりフリップチップ接続されている点を除き、半導体装置200と同様である。
【0123】
半導体チップ10としては、特に限定はなく、シリコン、ゲルマニウム等の同一種類の元素から構成される元素半導体、ガリウムヒ素、インジウムリン等の化合物半導体を用いることができる。
【0124】
基板20としては、回路基板であれば特に制限はなく、ガラスエポキシ、ポリイミド、ポリエステル、セラミック、エポキシ、ビスマレイミドトリアジン等を主な成分とする絶縁基板の表面に、金属膜の不要な個所をエッチング除去して形成された配線(配線パターン)15を有する回路基板、上記絶縁基板の表面に金属めっき等によって配線15が形成された回路基板、上記絶縁基板の表面に導電性物質を印刷して配線15が形成された回路基板を用いることができる。
【0125】
配線15及びバンプ32等の接続部は、主成分として、金、銀、銅、はんだ(主成分は、例えばスズ-銀、スズ-鉛、スズ-ビスマス、スズ-銅、スズ-銀-銅)、ニッケル、スズ、鉛等を含有しており、複数の金属を含有していてもよい。
【0126】
上記金属の中でも、接続部の電気伝導性・熱伝導性に優れたパッケージとする観点から、金、銀及び銅が好ましく、銀及び銅がより好ましい。コストが低減されたパッケージとする観点から、安価であることに基づき銀、銅及びはんだが好ましく、銅及びはんだがより好ましく、はんだが更に好ましい。室温において金属の表面に酸化膜が形成すると生産性が低下する場合及びコストが増加する場合があるため、酸化膜の形成を抑制する観点から、金、銀、銅及びはんだが好ましく、金、銀、はんだがより好ましく、金、銀が更に好ましい。
【0127】
上記配線15及びバンプ32の表面には、金、銀、銅、はんだ(主成分は、例えば、スズ-銀、スズ-鉛、スズ-ビスマス、スズ-銅)、スズ、ニッケル等を主な成分とする金属層が、例えばメッキにより形成されていてもよい。この金属層は単一の成分のみで構成されていても、複数の成分から構成されていてもよい。また、上記金属層は、単層又は複数の金属層が積層された構造をしていてもよい。
【0128】
また、本実施形態の半導体装置は、半導体装置100~400に示すような構造(パッケージ)が複数積層されていてもよい。この場合、半導体装置100~400は、金、銀、銅、はんだ(主成分は、例えばスズ-銀、スズ-鉛、スズ-ビスマス、スズ-銅、スズ-銀-銅)、スズ、ニッケル等を含むバンプ又は配線で互いに電気的に接続されていてもよい。
【0129】
半導体装置を複数積層する手法としては、
図3に示すように、例えばTSV(Through-Silicon Via)技術が挙げられる。
図3は、本開示の半導体装置の他の一実施形態を示す模式断面図であり、TSV技術を用いた半導体装置である。
図3に示す半導体装置500では、インターポーザ50上に形成された配線15が半導体チップ10の配線15と接続バンプ30を介して接続されることにより、半導体チップ10とインターポーザ50とはフリップチップ接続されている。半導体チップ10とインターポーザ50との間の空隙には接着材料40が隙間なく充填されている。上記半導体チップ10におけるインターポーザ50と反対側の表面上には、配線15、接続バンプ30及び接着材料40を介して半導体チップ10が繰り返し積層されている。半導体チップ10の表裏におけるパターン面の配線15は、半導体チップ10の内部を貫通する孔内に充填された貫通電極34により互いに接続されている。なお、貫通電極34の材質としては、銅、アルミニウム等を用いることができる。
【0130】
このようなTSV技術により、通常は使用されない半導体チップの裏面からも信号を取得することが可能となる。さらには、半導体チップ10内に貫通電極34を垂直に通すため、対向する半導体チップ10間又は半導体チップ10及びインターポーザ50間の距離を短くし、柔軟な接続が可能である。本実施形態の半導体用接着剤は、このようなTSV技術において、対向する半導体チップ10間又は、半導体チップ10及びインターポーザ50間の半導体用接着剤として適用することができる。
【0131】
また、エリヤバンプチップ技術等の自由度の高いバンプ形成方法では、インターポーザを介さないでそのまま半導体チップをマザーボードに直接実装できる。本実施形態の半導体用接着剤は、このような半導体チップをマザーボードに直接実装する場合にも適用することができる。なお、本実施形態の半導体用接着剤は、2つの配線回路基板を積層する場合に、基板間の空隙を封止する際にも適用することができる。
【0132】
<半導体装置の製造方法>
本実施形態の半導体装置の製造方法について、
図4を用いて以下説明する。
図4は、本開示の半導体装置の製造方法の一実施形態を模式的に示す工程断面図である。
【0133】
まず、
図4の(a)に示すように、配線15を有する基板20上に、接続バンプ30を形成する位置に開口を有するソルダーレジスト60を形成する。このソルダーレジスト60は必ずしも設ける必要はない。しかしながら、基板20上にソルダーレジストを設けることにより、配線15間のブリッジの発生を抑制し、接続信頼性・絶縁信頼性を向上させることができる。ソルダーレジスト60は、例えば、市販のパッケージ用ソルダーレジスト用インキを用いて形成することができる。市販のパッケージ用ソルダーレジスト用インキとしては、具体的には、SRシリーズ(日立化成株式会社製、商品名)及びPSR4000-AUSシリーズ(太陽インキ製造(株)製、商品名)が挙げられる。
【0134】
次に、
図4の(a)に示すように、ソルダーレジスト60の開口に接続バンプ30を形成する。そして、
図4の(b)に示すように、接続バンプ30及びソルダーレジスト60が形成された基板20上に、フィルム状の半導体用接着剤(以下、場合により「フィルム状接着剤」という。)41を貼付する。フィルム状接着剤41の貼付は、加熱プレス、ロールラミネート、真空ラミネート等によって行うことができる。フィルム状接着剤41の供給面積及び厚みは、半導体チップ10及び基板20のサイズ、並びに、接続バンプ30の高さによって適宜設定される。
【0135】
上記のとおりフィルム状接着剤41を基板20に貼り付けた後、半導体チップ10の配線15と接続バンプ30とをフリップチップボンダー等の接続装置を用いて、位置合わせする。続いて、半導体チップ10と基板20とを接続バンプ30の融点以上の温度で加熱しながら圧着し、
図4の(c)に示すように、半導体チップ10と基板20とを接続すると共に、フィルム状接着剤41の硬化物である接着材料40によって、半導体チップ10及び基板20間の空隙を封止充填する。以上により、半導体装置600が得られる。
【0136】
本実施形態の半導体装置の製造方法では、位置合わせをした後に仮固定し(半導体用接着剤を介している状態)、リフロー炉で加熱処理することによって、接続バンプ30を溶融させて半導体チップ10と基板20とを接続してもよい。仮固定の段階では、金属接合を形成することが必ずしも必要ではないため、上記の加熱しながら圧着する方法に比べて低荷重、短時間、低温度による圧着でよく、生産性が向上すると共に接続部の劣化を抑制することができる。
【0137】
また、半導体チップ10と基板20とを接続した後、オーブン等で加熱処理を行って、更に接続信頼性・絶縁信頼性を高めてもよい。加熱温度は、フィルム状接着剤の硬化が進行する温度が好ましく、完全に硬化する温度がより好ましい。加熱温度、加熱時間は適宜設定される。
【0138】
本実施形態の半導体装置の製造方法では、フィルム状接着剤41を半導体チップ10に貼付した後に基板20を接続してもよい。また、半導体チップ10及び基板20を配線15及び接続バンプ30により接続した後、半導体チップ10及び基板20間の空隙にペースト状の半導体用接着剤を充填し、硬化させてもよい。
【0139】
生産性が向上する観点から、複数の半導体チップ10が連結した半導体ウェハーに半導体用接着剤を供給した後、ダイシングして個片化することによって、半導体チップ10上に半導体用接着剤が供給された構造体を得てもよい。また、半導体用接着剤がペースト状の場合は、特に制限されるものではないが、スピンコート等の塗布方法により、半導体チップ10上の配線又はバンプを埋め込み、厚みを均一化させればよい。この場合、樹脂の供給量が一定となるため生産性が向上すると共に、埋め込み不足によるボイドの発生及びダイシング性の低下を抑制することができる。一方、半導体用接着剤がフィルム状の場合は、特に制限されるものではないが、加熱プレス、ロールラミネート及び真空ラミネート等の貼付方式により半導体チップ10上の配線又はバンプを埋め込むようにフィルム状の半導体用接着剤を供給すればよい。この場合、樹脂の供給量が一定となるため生産性が向上し、埋め込み不足によるボイドの発生及びダイシング性の低下を抑制することができる。
【0140】
ペースト状の半導体用接着剤をスピンコートする方法と比較して、フィルム状の半導体用接着剤をラミネートする方法によれば、供給後の半導体用接着剤の平坦性が良好となる傾向にある。そのため、半導体用接着剤の形態としては、フィルム状が好ましい。また、フィルム状接着剤は、多様なプロセスへの適用性、取り扱い性等にも優れる。
【0141】
また、フィルム状接着剤をラミネートすることによって半導体用接着剤を供給する方法では、半導体装置の接続性が一層確保しやすくなる傾向にある。
【0142】
接続荷重は、接続バンプ30の数及び高さのばらつき、加圧による接続バンプ30、又は接続部のバンプを受ける配線の変形量を考慮して設定される。接続温度は、接続部の温度が接続バンプ30の融点以上であることが好ましいが、それぞれの接続部(バンプ又は配線)の金属接合が形成される温度であればよい。接続バンプ30がはんだバンプである場合は、接続温度は約240℃以上が好ましい。
【0143】
接続時の接続時間は、接続部の構成金属により異なるが、生産性が向上する観点から短時間であるほど好ましい。接続バンプ30がはんだバンプである場合、接続時間は20秒以下が好ましく、10秒以下がより好ましく、5秒以下が更に好ましい。銅-銅又は銅-金の金属接続の場合は、接続時間は60秒以下が好ましい。
【0144】
以上、本開示の好適な実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。
【0145】
また、本開示の他の側面は、ガラス転移温度が35℃以下の熱可塑性樹脂を含有する組成物の、半導体用接着剤としての使用、ということもできる。さらに、本開示の他の側面は、ガラス転移温度が35℃以下の熱可塑性樹脂を含有する組成物の、半導体用接着剤の製造のための使用、ということもできる。
【実施例】
【0146】
以下、実施例により本開示をより具体的に説明するが、本開示は実施例に限定されるものではない。
【0147】
各実施例及び比較例で使用した化合物は以下の通りである。
(a)成分:熱可塑性樹脂
・フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、商品名「ZX1356-2」、Tg:約71℃、Mw:約63000)
・フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、商品名「FX293」、Tg:約160℃、Mw:約40000)
・ポリウレタン(ディーアイシーコベストロポリマー株式会社製、商品名「T-8175N」、Tg:-23℃、Mw:120000)
・アクリルエラストマ(ナガセケムテックス株式会社製、商品名「HTR-860 No.25」、Tg:約58℃、Mw:約600000)
・アクリルエラストマ(日立化成株式会社製、商品名「CT-D12」、Tg:約13℃、Mw:約530000)
・アクリルエラストマ(日立化成株式会社製、商品名「CT-D21」、Tg:約-11℃、Mw:約550000)
・アクリルエラストマ(株式会社クラレ製、商品名「LA4285」、Tg:約-27℃、Mw:約60000)
・アクリルエラストマ(株式会社クラレ製、商品名「LA2140」、Tg:約-24℃、Mw:約60000)
・アクリルエラストマ(株式会社クラレ製、商品名「LA2250」、Tg:約-23℃、Mw:約160000)
【0148】
(b)成分:熱硬化性樹脂
(b-1)エポキシ樹脂
・トリフェノールメタン骨格含有多官能固形エポキシ(三菱ケミカル株式会社製、商品名「EP1032H60」)
・ビスフェノールF型液状エポキシ(三菱ケミカル株式会社製、商品名「YL983U」)
・柔軟性エポキシ(三菱ケミカル株式会社製、商品名「YX7110B80」)
(b-2)イミド樹脂
・4,7-メタノ-1H-イソインドール-1,3(2H)-ジオン(丸善石油化学株式会社製、商品名「BANI-M」)
・ビス-(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン(ケイ・アイ化成株式会社製、商品名「BMI-70」)
【0149】
(c)成分:硬化剤
・2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加体(四国化成株式会社製、商品名「2MAOK-PW」)
・1,4-ビス-((tert-ブチルパーオキシ)ジイソプロピル)ベンゼン(日油株式会社製、商品名「パーブチルP」)
【0150】
(d)成分:フラックス剤
・グルタル酸(和光純薬工業株式会社製、融点約98℃)
・2-メチルグルタル酸(和光純薬工業株式会社製、融点約78℃)
【0151】
(e)成分:フィラー
(e-1)無機フィラー
・シリカフィラー(株式会社アドマテックス製、商品名「SE2030」、平均粒径0.5μm)
・エポキシシラン表面処理シリカフィラー(株式会社アドマテックス製、商品名「SE2030-SEJ」、平均粒径0.5μm)
・メタクリル表面処理シリカフィラー(株式会社アドマテックス製、商品名「YA050C-SM1」、平均粒径約0.05μm)
(e-2)有機フィラー
・ブタジエン/スチレン共重合ポリマー(ロームアンドハースジャパン株式会社製、商品名「EXL-2655」、平均粒径約0.1μm)
【0152】
(a)成分の重量平均分子量(Mw)は、GPC法によって求めたものである。GPC法の詳細は以下のとおりである。
装置名:HPLC-8020(製品名、東ソー株式会社製)
カラム:2pieces of GMHXL + 1piece of G-2000XL
検出器:RI検出器
カラム温度:35℃
流速:1mL/分
標準物質:ポリスチレン
【0153】
(実施例1~18及び比較例1~7)
<フィルム状半導体用接着剤の作製>
表1及び表2に示す配合量(単位:質量部)の(a)熱可塑性樹脂、(b)熱硬化性樹脂、(c)硬化剤、(d)フラックス剤、及び、(e)フィラーを、NV値([乾燥後の塗料分質量]/[乾燥前の塗料分質量]×100)が50質量%になるように有機溶媒(シクロヘキサノン)に添加した。その後、上記成分(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、硬化剤、フラックス剤、フィラー、シクロヘキサノン)の全配合量と同質量のφ1.0mmのジルコニアビーズを同容器内に加え、ボールミル(フリッチュ・ジャパン株式会社製、遊星型微粉砕機P-7)で30分撹拌した。撹拌後、ジルコニアビーズをろ過によって除去し、塗工ワニスを作製した。
【0154】
得られた塗工ワニスを、基材フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名「ピューレックスA55」)上に、小型精密塗工装置(株式会社廉井精機製)で塗工し、クリーンオーブン(ESPEC社製)で乾燥(100℃/10min)することで、膜厚20μmのフィルム状接着剤を得た。
【0155】
以下に、実施例及び比較例で得られたフィルム状接着剤の評価方法を示す。評価結果は表1及び表2に示す。
【0156】
<硬化物の35℃での弾性率の測定>
実施例又は比較例で得られたフィルム状接着剤を50℃でラミネートすることにより作製された総厚60μmのフィルム状接着剤を、所定のサイズ(縦40mm×横4.0mm×厚さ0.06mm)に切り出し、クリーンオーブン(ESPEC社製)中でキュア(240℃、1h)することで、試験サンプルを得た。
【0157】
上記試験サンプルについて、動的粘弾性測定装置を用いて、35℃での弾性率(貯蔵弾性率)を測定した。弾性率の測定方法の詳細は以下のとおりである。
装置名:動的粘弾性測定装置(ユー・ビー・エム株式会社製、Rheogel-E4000)
測定温度領域:30~270℃
昇温速度:5℃/min
周波数:10Hz
歪み:0.05%
測定モード:引張モード
【0158】
<チップ反り評価>
実施例又は比較例で得られたフィルム状接着剤を、真空ラミネータ(エヌ・ピー・シー株式会社製、LM-50X50-S)を用いてシリコンチップ(縦10mm×横10mm×厚さ0.05mm、酸化膜コーティング)上にラミネートした。次に、フィルム状接着剤をラミネートしたサンプルを、クリーンオーブン(ESPEC社製)中でキュア(240℃、1h)し、試験サンプルを作製した。
【0159】
表面形状測定装置(Akrometrix社製)を用いて、上記試験サンプルのチップ反り量を測定した。具体的には、上記試験サンプルをシリコンチップが下側になるように置いた状態で、表面形状測定装置を用いてフィルム状接着剤側の表面の高低差の最大値を測定し、これを反り量とした。
【0160】
<吸湿後の250℃における接着力の測定>
実施例又は比較例で作製したフィルム状接着剤を所定のサイズ(縦3.2mm×横3.2mm×厚さ0.02mm)に切り抜き、シリコンチップ(縦5mm×横5mm×厚さ0.725mm、酸化膜コーティング)上に70℃で貼付け、熱圧着試験機(日立化成テクノプラント株式会社製)を用いて、シリコンチップに貼付けたフィルム状接着剤上に別のシリコンチップ(縦3mm×横3mm×厚さ0.725mm、酸化膜コーティング)を圧着した(圧着条件:圧着ヘッド温度190℃、圧着時間5秒、圧着荷重1.3kgf(12.7N))。次に、得られたサンプルを熱圧着試験機で再度圧着した(圧着条件:圧着ヘッド温度240℃、圧着時間5秒、圧着荷重1.3kgf)。圧着したサンプルをクリーンオーブン(ESPEC社製)中でアフターキュア(175℃、2h)し、試験サンプルとしての半導体装置を作製した。
【0161】
上記試験サンプルを、85℃、相対湿度85%の恒温恒湿器(ESPEC社製、PR-2KP)内に24時間放置し、取り出した後、250℃のホットプレート上で接着力測定装置(DAGE社製、万能型ボンドテスタDAGE4000型)を使い、シリコンチップ(縦5mm×横5mm×厚さ0.725mm)上面からのツール高さ0.05mm、ツール速度0.05mm/sの条件で接着力を測定した。
【0162】
<アウトガス評価>
実施例又は比較例で得られたフィルム状接着剤を、真空ラミネータ(エヌ・ピー・シー株式会社製、LM-50X50-S)を用いてステージ温度70℃、時間60sec、圧力0.5MPaの条件でシリコンチップ(縦5mm×横5mm×厚さ0.765mm、酸化膜コーティング)上にラミネートした。次に、フィルム状接着剤をラミネートしたチップをフリップ実装装置「FCB3」(パナソニック株式会社製、商品名)を用いてガラス板上に実装した。実装条件は、コンタクト温度100℃、圧着温度250℃、圧着時間3秒、圧着圧力0.5MPaとした。これにより、試験サンプルを作製した。
【0163】
半導体チップ周辺部(4辺)のチップ端部からの汚染部分(圧着時のアウトガスによりガラス板が汚染されて白濁した部分)の幅を、上記で作製した試験サンプルの上面から金属顕微鏡(株式会社キーエンス製)で測定し、この汚染部分4箇所の平均値をアウトガス量として算出した。
【0164】
【0165】
【0166】
実施例1~18の半導体用接着剤を用いて作製された半導体装置においては、チップ反り量が低減していることが確認された。更に、実施例14~18の半導体接着剤においてはアウトガスが発生しにくく、評価結果が良好であることが確認された。また、実施例1、2、10、15及び16の半導体用接着剤は、吸湿後の250℃における接着力が高いことが確認された。
【符号の説明】
【0167】
10…半導体チップ、15…配線(接続部)、20…基板(配線回路基板)、30…接続バンプ、32…バンプ(接続部)、34…貫通電極、40…接着材料、41…半導体用接着剤(フィルム状接着剤)、50…インターポーザ、60…ソルダーレジスト、100,200,300,400,500,600…半導体装置。