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特許7196905放熱シート、放熱部材及び半導体デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】放熱シート、放熱部材及び半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/373 20060101AFI20221220BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20221220BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20221220BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20221220BHJP
   C08K 3/38 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H01L23/36 M
H05K7/20 F
C08L101/00
C08K3/01
C08K3/38
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020511083
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2019013966
(87)【国際公開番号】W WO2019189746
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2018068075
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018068471
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019046007
(32)【優先日】2019-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】澤村 敏行
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊行
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 朗
(72)【発明者】
【氏名】日高 克彦
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/070289(WO,A1)
【文献】特開2015-189609(JP,A)
【文献】特開2017-59704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/373
H05K 7/20
C08L 101/00
C08K 3/01
C08K 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集無機フィラーと樹脂とを含む放熱シートであって、
前記凝集無機フィラーの破壊強度が20MPa以下であり、かつ前記凝集無機フィラーの弾性率が48MPa以上であり、
前記放熱シートに含まれる前記凝集無機フィラーの半数以上が、下記条件A及び条件Bを満たし、かつ下記条件A及び条件Bを満たす前記凝集無機フィラーが下記条件Cを満たす、放熱シート。
条件A:凝集無機フィラー同士が面接触している。
条件B:長径と短径との比(長径/短径)で表されるアスペクト比が1超、2以下である。
条件C:放熱シートの厚さ方向の断面観察において、凝集無機フィラー同士の接触界面が構成する直線を一辺とし、この凝集無機フィラーの最大径を直径とした仮想円の中心を頂点として形成される三角形のうち、前記直線の両端と前記頂点とを結んでなる角度θが30度以上となる三角形の面積の総和Sが、凝集無機フィラーの断面積の総和Sに対して20%以上である。
【請求項2】
凝集無機フィラーと樹脂とを含む放熱シートであって、
前記凝集無機フィラーの破壊強度が20MPa以下であり、かつ前記凝集無機フィラーの弾性率が48MPa以上であり、
前記放熱シートに含まれる前記凝集無機フィラーの半数以上が、下記条件A及び条件Bを満たし、かつ下記条件A及び条件Bを満たす前記凝集無機フィラーが下記条件Dを満たす、放熱シート。
条件A:凝集無機フィラー同士が面接触している。
条件B:長径と短径との比(長径/短径)で表されるアスペクト比が1超、2以下である。
条件D:放熱シートの厚さ方向の断面観察において、凝集無機フィラーの断面積の総和Sが、凝集無機フィラーの最大径を直径とした仮想円の面積の総和Sに対して90%以下である。
【請求項3】
前記凝集無機フィラーが、カードハウス構造を有する窒化ホウ素凝集粒子である、請求項1又は2に記載の放熱シート。
【請求項4】
凝集無機フィラーと樹脂とを含む放熱シートと、前記放熱シートが接着した金属基板とを含む放熱部材であって、
前記凝集無機フィラーの破壊強度が20MPa以下であり、かつ前記凝集無機フィラーの弾性率が48MPa以上であり、
前記放熱シートに含まれ、前記金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーのうち、下記条件E及び条件Fを満たす凝集無機フィラーの個数割合が、前記金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーの総数に対して60%以上である、放熱部材。
条件E:長径と短径との比(長径/短径)で表されるアスペクト比が1超、2以下である。
条件F:放熱シートの厚さ方向の断面観察において、金属基板と凝集無機フィラーとの接触界面が構成する直線を一辺とし、この凝集無機フィラーの最大径を直径とした仮想円の中心を頂点として形成される三角形のうち、前記直線の両端と前記頂点とを結んでなる角度θが30度以上となる。
【請求項5】
前記凝集無機フィラーが、カードハウス構造を有する窒化ホウ素凝集粒子である、請求項4に記載の放熱部材。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか一項に記載の放熱シート、又は、請求項4~5のいずれか一項に記載の放熱部材を含む、半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱シート、放熱部材、半導体デバイスに関する。
本願は、2018年3月30日に、日本に出願された特願2018-068075号、2018年3月30日に、日本に出願された特願2018-068471号及び2019年3月13日に、日本に出願された特願2019-046007号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
熱伝導性がよく、かつ絶縁性に優れる放熱シートに関しては、多くの検討がなされている。特にフィラーを樹脂に混合し、それにより熱伝導性と絶縁性を高い水準で満足する放熱樹脂シートを得るための試みが続けられている。このような放熱樹脂シートに含有されるフィラーとしては、各種酸化物や窒化物が用いられ、その粒径、粒度分布等についての検討も多く行われている。
【0003】
放熱シートに含有されるフィラーとしては、六方晶の窒化ホウ素を用いることが試みられている。六方晶の窒化ホウ素は一般に薄板上の結晶であり、その薄板の平面方向の熱伝導率は高いが、薄板の厚さ方向の熱伝導率が低い。また、放熱シートに薄板状の窒化ホウ素を配合すると、シート化する際にシート面に平行に配向することから、シートの厚さ方向の熱伝導性は決してよいものにはならなかった。
【0004】
シートの厚さ方向の熱伝導性を上げる材料として、窒化ホウ素凝集粒子が挙げられる。
窒化ホウ素凝集粒子を使用することで、シートの厚さ方向への熱伝導性を向上できることが広く知られている。とりわけ本発明者らは、先にカードハウス構造の窒化ホウ素凝集粒子を開発した(例えば特許文献1参照)。さらに、比較的平均粒子径が大きく、かつ圧力が加わっても崩れることの少ないカードハウス構造の窒化ホウ素凝集粒子を開発した(例えば特許文献2参照)。これらの窒化ホウ素凝集粒子は、カードハウス構造による熱伝導パスが確保されることから、放熱シートに含有させることで、シートの厚さ方向への熱伝導性が優れたものとなる。また、窒化ホウ素凝集粒子は、別途バインダーを使用することなく窒化ホウ素粒子が凝集している。そのため、シート化する際に外力がかかっても容易に崩壊せず熱伝導パスを維持し、シートの厚さ方向への放熱ができ、優れた熱伝導性を達成することができる(例えば特許文献3参照)。
また、シートの厚さ方向の熱伝導性を上げる成形方法として、シート内の窒化ホウ素凝集粒子同士を面接触させることで熱伝導率を高める方法が知られている(例えば特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5679083号公報
【文献】特開2016-135730号公報
【文献】国際公開第2015/119198号
【文献】国際公開第2012/070289号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1~3で開示されたカードハウス構造粒子は、フィラー間に微細なボイドが残存しやすく、絶縁性を十分に確保することが難しいという問題がある。
特許文献4に記載のように、凝集粒子同士を面接触させるには高い圧力が必要であり、特許文献4に記載の方法では高い弾性率、具体的には46MPa以下の弾性率を有する二次粒子を用いている。特許文献4には、二次粒子の弾性率が46MPaを超えると、特許文献4の図4に示すように、二次粒子間が点接触してしまうために十分な熱伝導性を得ることができないという問題があると記載されている。
【0007】
そこで本発明は、上記既に開発された放熱シートよりも、更に高い熱伝導性及び絶縁性を有する放熱シート、放熱部材及び半導体デバイスを得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは更に高い熱伝導性及び絶縁性を有する放熱シートを得るべく研究を進めた。鋭意検討の結果、凝集無機フィラーと樹脂とを含む放熱シートであって、放熱シートの厚さ方向断面観察において、凝集無機フィラー同士が接触し、かつ該凝集無機フィラー同士の接触界面である外縁部がシート成形時に変形及び/又は破壊されることで、凝集無機フィラー同士が面接触して直線部分を構成する放熱シートを見出した。具体的には、比較的高い弾性率と低い破壊強度を有する凝集無機フィラーを用い、変形量を適度な範囲にすることにより、放熱シート中の凝集無機フィラー同士が接触した後、適度に変形したり破壊したりすることにより、凝集無機フィラー同士が面で接触し、かつ完全に破壊されにくくなる。その結果、凝集無機フィラー間で熱が伝わる太いパスが形成され、かつ該窒化ホウ素フィラーが凝集構造を維持することで、更に高い熱伝導性及び絶縁性を有する放熱シートが得られることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
(1)凝集無機フィラーと樹脂とを含む放熱シートであって、
前記凝集無機フィラーの破壊強度が20MPa以下であり、かつ前記凝集無機フィラーの弾性率が48MPa以上であり、
前記放熱シートに含まれる前記凝集無機フィラーの半数以上が、下記条件A及び条件Bを満たし、かつ下記条件A及び条件Bを満たす前記凝集無機フィラーが下記条件Cを満たす、放熱シート。
条件A:凝集無機フィラー同士が面接触している。
条件B:長径と短径との比(長径/短径)で表されるアスペクト比が1超、2以下である。
条件C:放熱シートの厚さ方向の断面観察において、凝集無機フィラー同士の接触界面が構成する直線を一辺とし、この凝集無機フィラーの最大径を直径とした仮想円の中心を頂点として形成される三角形のうち、前記直線の両端と前記頂点とを結んでなる角度θが30度以上となる三角形の面積の総和Sが、凝集無機フィラーの断面積の総和Sに対して20%以上である。
(2)凝集無機フィラーと樹脂とを含む放熱シートであって、
前記凝集無機フィラーの破壊強度が20MPa以下であり、かつ前記凝集無機フィラーの弾性率が48MPa以上であり、
前記放熱シートに含まれる前記凝集無機フィラーの半数以上が、下記条件A及び条件Bを満たし、かつ下記条件A及び条件Bを満たす前記凝集無機フィラーが下記条件Dを満たす、放熱シート。
条件A:凝集無機フィラー同士が面接触している。
条件B:長径と短径との比(長径/短径)で表されるアスペクト比が1超、2以下である。
条件D:放熱シートの厚さ方向の断面観察において、凝集無機フィラーの断面積の総和Sが、凝集無機フィラーの最大径を直径とした仮想円の面積の総和Sに対して90%以下である。
(3)前記凝集無機フィラーが、カードハウス構造を有する窒化ホウ素凝集粒子である、(1)又は(2)の放熱シート。
(4)凝集無機フィラーと樹脂とを含む放熱シートと、前記放熱シートが接着した金属基板とを含む放熱部材であって、
前記凝集無機フィラーの破壊強度が20MPa以下であり、かつ前記凝集無機フィラーの弾性率が48MPa以上であり、
前記放熱シートに含まれ、前記金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーのうち、下記条件E及び条件Fを満たす凝集無機フィラーの個数割合が、前記金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーの総数に対して60%以上である、放熱部材。
条件E:長径と短径との比(長径/短径)で表されるアスペクト比が1超、2以下である。
条件F:放熱シートの厚さ方向の断面観察において、金属基板と凝集無機フィラーとの接触界面が構成する直線を一辺とし、この凝集無機フィラーの最大径を直径とした仮想円の中心を頂点として形成される三角形のうち、前記直線の両端と前記頂点とを結んでなる角度θが30度以上となる。
(5)前記凝集無機フィラーが、カードハウス構造を有する窒化ホウ素凝集粒子である、(4)の放熱部材。
(6)(1)~(3)のいずれかの放熱シート、又は、(4)~(5)のいずれかの放熱部材を含む、半導体デバイス。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高い熱伝導性及び絶縁性を有する放熱シート及び放熱部材を提供できる。熱伝導性の高い放熱シート又は放熱部材を半導体デバイスに用いることで、発熱量の多いパワーデバイスであっても、良好な放熱性を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る放熱シート10の拡大断面模式図である。
図2】接触界面が直線部分を有する凝集無機フィラーの拡大断面模式図である。
図3】各凝集無機フィラーの最大径を示す断面模式図である。
図4】実施形態に係る放熱部材100の拡大断面模式図である。
図5】実施例1において製造した放熱シートの断面SEM画像である(図面代用写真)。
図6】実施例2において製造した放熱シートの断面SEM画像である(図面代用写真)。
図7】実施例3において製造した放熱シートの断面SEM画像である(図面代用写真)。
図8】比較例1において製造した放熱シートの断面SEM画像である(図面代用写真)。
図9】比較例2において製造した放熱シートの断面SEM画像である(図面代用写真)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0013】
以下、本発明について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
なお、後述する図2~4において、図1と同じ構成要素には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0014】
「第一の態様」
本発明の第一の態様の実施形態に係る放熱シートは、凝集無機フィラーと樹脂とを含む放熱シートであり、放熱シートの厚さ方向断面に特徴を有する。
本発明で使用される凝集無機フィラーの破壊強度は20MPa以下であり、好ましくは15MPa以下であり、より好ましくは10MPa以下である。破壊強度が上記上限値を超えると、後述するシート化工程においてプレス処理しても凝集無機フィラーが変形しにくく、凝集無機フィラー同士が点接触してしまう。破壊強度が上記上限値以下であれば、プレス処理したときに凝集無機フィラーの凝集構造が変形し、凝集無機フィラー同士が面接触しやすくなる。一方、破壊強度の下限値は特に限定されないが、取り扱いを容易とする点から、通常、破壊強度は2.5MPa以上が好ましく、より好ましくは3.0MPa以上であり、更に好ましくは3.5MPa以上であり、特に好ましくは4.0MPa以上である。
また、凝集無機フィラーの弾性率は48MPa以上であり、好ましくは50MPa以上であり、より好ましくは55MPa以上である。弾性率が上記下限値以上であれば、凝集無機フィラーがプレス圧力の方向に塑性変形し、凝集構造が崩れてしまうことを防ぐことができる。一方、弾性率の上限値は特に限定されないが、十分な変形が得られやすい点から、通常、弾性率は2000MPa以下が好ましく、より好ましくは1500MPa以下であり、更に好ましくは1000MPa以下である。
このように、凝集無機フィラーは高い弾性率を有するために、プレス処理時に球状を維持することができるが、破壊強度が20MPa以下であるため、凝集無機フィラー同士が接触している部分は変形し、面接触することができる。そのため、凝集無機フィラー内部の高い熱伝導率を維持しながら、凝集無機フィラー界面及び後述する金属基板と放熱シートとの界面の接触熱抵抗を下げ、全体の熱伝導率が向上することができる。
以上より、凝集無機フィラーの破壊強度は、2.5~20MPaが好ましく、3.0~20MPaがより好ましく、3.5~15MPaが更に好ましく、4.0~10MPaが特に好ましい。
また、凝集無機フィラーの弾性率は、48~2000MPaが好ましく、50~1500MPaがより好ましく、55~1000MPaが更に好ましい。
【0015】
凝集無機フィラーの破壊強度及び弾性率は、凝集無機フィラーが放熱シート中にある場合には、該凝集無機フィラーが変質しないよう、放熱シートの樹脂を焼いて凝集無機フィラーを取り出してから、測定することができる。測定方法は実施例に記載のある通りである。
【0016】
放熱シートに含有される凝集無機フィラーは、熱伝導性を有する凝集無機フィラーであれば制限なく用いることができるが、高い熱伝導性の観点から窒化ホウ素凝集粒子であることが好ましい。その中でも特に、凝集無機フィラーとしての破壊強度及び弾性率の観点からカードハウス構造を有する窒化ホウ素凝集粒子であることがより好ましい。「カードハウス構造」は、例えばセラミックス 43 No.2(2008年 日本セラミックス協会発行)に記載されており、板状粒子が配向せず複雑に積層した構造である。より具体的には、カードハウス構造を有する窒化ホウ素凝集粒子とは、窒化ホウ素一次粒子の集合体であって、一次粒子の平面部と端面部が接触し、例えばT字型の会合体を形成する構造を有する窒化ホウ素凝集粒子である。
凝集無機フィラーの凝集形態は走査型電子顕微鏡(SEM)により確認することができる。
【0017】
以下、凝集無機フィラーが窒化ホウ素凝集粒子である場合を例にして説明する。
凝集無機フィラーが窒化ホウ素凝集粒子である場合、X線回折(XRD)測定における100軸と004軸のピーク強度比(I(100)/I(004))は、通常3.0以上が好ましく、より好ましくは3.1以上であり、更に好ましくは3.2以上であり、特に好ましくは3.3以上である。上限値は特に制限されないが、ピーク強度比(I(100)/I(004))は、通常10以下が好ましい。ピーク強度比(I(100)/I(004))が上記下限値以上であれば、シート成形時に垂直方向の放熱性を高くすることができる。ピーク強度比(I(100)/I(004))が上記上限値以下であれば、シート成形時に凝集無機フィラーが崩れにくくなり、放熱性をより高くすることができる。
以上より、ピーク強度比(I(100)/I(004))は、3.0~10が好ましく、3.1~10がより好ましく、3.2~10が更に好ましく、3.3~10が特に好ましい。
凝集無機フィラーが窒化ホウ素凝集粒子である場合も、破壊強度は、前述のとおり20MPa以下であり、好ましくは15MPa以下であり、更に好ましくは10MPa以下である。下限値も前述のとおりであり、破壊強度は通常2.5MPa以上が好ましく、より好ましくは3.0MPa以上であり、更に好ましくは3.5MPa以上であり、特に好ましくは4.0MPa以上である。
凝集無機フィラーが窒化ホウ素凝集粒子である場合の比表面積は通常1m/g以上であることが好ましく、より好ましくは3m/g以上50m/g以下であり、更に好ましくは5m/g以上40m/g以下である。比表面積が上記下限値以上であれば、窒化ホウ素凝集粒子同士が接触した際に、窒化ホウ素凝集粒子の表面部分が変形しやすく、窒化ホウ素凝集粒子間の接触抵抗を低くすることができる。比表面積が上記上限値以下であれば、窒化ホウ素凝集粒子を含有する樹脂組成物(後述のシート用組成物)の粘度を低くすることができる。
【0018】
凝集無機フィラーが窒化ホウ素凝集粒子である場合、その形状は、球状であることが好ましい。窒化ホウ素凝集粒子の形状が球状であれば、等方性に優れるので、どの方向に対しても均一な熱伝導を有する。「球状」とは、長径と短径の比(長径/短径)で表されるアスペクト比が1超、2以下であり、好ましくは1超、1.75以下であり、より好ましくは1超、1.5以下であり、更に好ましくは1超、1.4以下である。窒化ホウ素凝集粒子のアスペクト比は、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影された画像から、それぞれの窒化ホウ素凝集粒子の長径と短径の比を求めることにより決定する。
【0019】
凝集無機フィラーが窒化ホウ素凝集粒子である場合、その体積基準の最大粒子径Dmax(本明細書では、単に「最大粒子径」と記載する場合がある。)は、通常2μm以上が好ましく、より好ましくは3μm以上であり、更に好ましくは5μm以上であり、特に好ましくは10μm以上である。また、最大粒子径は通常300μm以下が好ましく、より好ましくは200μm以下であり、更に好ましくは100μm以下であり、特に好ましくは90μm以下である。最大粒子径を上記範囲とすることにより、放熱シートの厚さ方向に十分な熱伝導率を有し、耐電圧特性も良好な放熱シートを得ることができる。
以上より、凝集無機フィラーが窒化ホウ素凝集粒子である場合、最大粒子径は、2~300μmが好ましく、3~200μmがより好ましく、5~100μmが更に好ましく、10~90μmが特に好ましい。
【0020】
また、凝集無機フィラーが窒化ホウ素凝集粒子である場合、その体積基準の平均粒子径D50(以下、単に「平均粒子径」と記載する場合がある。)については特に制限はない。平均粒子径は、上記体積基準の最大粒子径の値と同様な理由から、通常1μm以上が好ましく、より好ましくは2μm以上であり、更に好ましくは3μm以上であり、特に好ましくは5μm以上である。また、平均粒子径は通常250μm以下が好ましく、より好ましくは150μm以下であり、更に好ましくは90μm以下であり、特に好ましくは70μm以下である。平均粒子径を上記範囲とすることにより、放熱シートの厚さ方向に十分な熱伝導率を有し、耐電圧特性も良好な放熱シートを得ることができる。
以上より、凝集無機フィラーが窒化ホウ素凝集粒子である場合、平均粒子径は、1~250μmが好ましく、2~150μmがより好ましく、3~90μmが更に好ましく、5~70μmが特に好ましい。
【0021】
上記最大粒子径及び平均粒子径は、例えば凝集無機フィラーを適当な溶剤に分散させ、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。具体的には、分散安定剤としてヘキサメタリン酸ナトリウムを含有する純水媒体中に凝集無機フィラーを分散させた試料に対して、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(例えば株式会社堀場製作所製の製品名「LA-920」など)にて粒度分布を測定し、得られた粒度分布から凝集無機フィラーの最大粒子径及び平均粒子径を求めることができる。
窒化ホウ素凝集粒子は、例えば特開2015-193752号公報、特開2015-195287号公報、特開2015-195292号公報などに記載の方法で製造することができる。
【0022】
放熱シートを形成する樹脂(以下、「マトリクス樹脂」ともいう。)としては、硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも制限なく用いることができる。
マトリクス樹脂の複素粘度は特に限定されないが、100℃において、45Pa・s以下が好ましく、43Pa・s以下がより好ましく、40Pa・s以下が更に好ましい。また、マトリクス樹脂の複素粘度は100℃において、5Pa・s以上が好ましく、8Pa・s以上がより好ましい。マトリクス樹脂の複素粘度が上記範囲内であれば、プレス成形時にマトリクス樹脂が凝集無機フィラー同士の接触界面での破壊等による変形を妨げず、後述する条件A~Eを満たしやすくなる傾向にある。
以上より、マトリクス樹脂の複素粘度は100℃において、5~45Pa・sが好ましく、5~43Pa・sがより好ましく、8~40Pa・sが更に好ましい。
マトリクス樹脂の複素粘度の測定方法は特に限定されない。マトリクス樹脂の複素粘度は、例えば粘弾性測定装置を用いて測定できる。具体的には、粘弾性測定装置を用い、直径:10mmの円板状の板を治具として使用し、治具間距離:0.5mmに保持した2枚の治具の間にマトリクス樹脂:0.1gを挟持し、歪み:0.3%、測定温度:100℃、測定周波数:1Hzの条件にてマトリクス樹脂の複素粘度を測定する。
【0023】
マトリクス樹脂のガラス転移温度(以下、「マトリクス樹脂のTg」ともいう。)は、特段限定されない。マトリクス樹脂のTgは、通常0℃以上が好ましく、より好ましくは10℃以上であり、更に好ましくは25℃以上である。また、マトリクス樹脂のTgは通常400℃以下が好ましく、より好ましくは350℃以下であり、更に好ましくは300℃以下である。マトリクス樹脂のTgが上記下限値以上であれば、弾性率が低くなり過ぎず、高温での使用時の変形を抑制できる傾向にある。マトリクス樹脂のTgが上記上限値以下であれば、機械的な衝撃による割れを抑制し、絶縁不良が低減できる傾向にある。
以上より、マトリクス樹脂のTgは、0~400℃が好ましく、10~350℃がより好ましく、25~300℃が更に好ましい。
マトリクス樹脂のTgの測定方法は特に限定されない。マトリクス樹脂のTgは、例えば示差走査熱量計(DSC)、動的粘弾性測定装置(DMS)、熱機械分析装置(TMA)を用いて測定できる。
DSCを用いる際、具体的には窒素雰囲気下、昇温速度:10℃/分、測定温度範囲:-20~500℃で、JIS K 7121に記載の方法に基づいて測定し、DSC曲線が階段状変化を示す部分の中間点をマトリクス樹脂のTgとする。
【0024】
マトリクス樹脂として用いることができる硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などを用いることができ、熱硬化性樹脂が好ましい。
熱硬化性樹脂としては、例えば国際公開第2013/081061号に例示されたものを用いることができ、特にエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0025】
エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型骨格、ビスフェノールF型骨格、ビスフェノールA/F混合型骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びジシクロペンタジエン骨格からなる群から選択された少なくとも1つの骨格を有するフェノキシ樹脂を含むことが好ましい。中でも、上記フェノキシ樹脂は、ビスフェノールA型骨格、ビスフェノールF型骨格、ビスフェノールA/F混合型骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格及びビフェニル骨格からなる群から選択された少なくとも1種の骨格を有することがより好ましく、フルオレン骨格及びビフェニル骨格の内の少なくとも一方を有することが更に好ましい。これらの好ましい骨格を有するフェノキシ樹脂の使用により、放熱シートの硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。
【0026】
上記フェノキシ樹脂は、主鎖中に多環式芳香族骨格を有することが好ましい。また、上記フェノキシ樹脂は、下記式(1)~(6)で表される骨格のうちの少なくとも1つの骨格を主鎖中に有することがより好ましい。
【0027】
【化1】
【0028】
上記式(1)中、Rは、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基又はハロゲン原子であり、Xは単結合、炭素数1~7の2価の炭化水素基、-O-、-S-、-SO-、又は-CO-である。上記式(1)中、複数のRのそれぞれは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0029】
【化2】
【0030】
上記式(2)中、R1aは、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基又はハロゲン原子であり、Rは、炭素数1~10の炭化水素基又はハロゲン原子であり、Rは、水素原子又は炭素数1~10の炭化水素基であり、mは0~5の整数である。上記式(2)中、複数のR1aのそれぞれは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0031】
【化3】
【0032】
上記式(3)中、R1bは、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基又はハロゲン原子であり、Rは、炭素数1~10の炭化水素基又はハロゲン原子であり、lは0~4の整数である。上記式(3)中、複数のR1bのそれぞれは、互いに同一であっても異なっていてもよい。上記式(3)中、複数のRのそれぞれは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0033】
【化4】
【0034】
【化5】
【0035】
上記式(5)中、R及びRは水素原子、炭素数1~5のアルキル基又はハロゲン原子であり、Xは-SO-、-CH-、-C(CH-、又は-O-であり、kは0又は1である。
【0036】
【化6】
【0037】
上記フェノキシ樹脂としては、例えば下記式(7)で表されるフェノキシ樹脂が好適に用いられる。
【0038】
【化7】
【0039】
上記式(7)中、Aは上記式(4)~(6)の内のいずれかで表される構造を有し、かつその構成は上記式(4)で表される構造が0~60モル%、上記式(5)で表される構造が5~95モル%、及び上記式(6)で表される構造が5~95モル%であり、Aは水素原子、又は下記式(8)で表される基であり、nは平均値で25~500の数である。
【0040】
【化8】
【0041】
上記フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、10,000以上であることが好ましい。フェノキシ樹脂の重量平均分子量のより好ましい下限は30,000であり、更に好ましい下限は40,000である。フェノキシ樹脂の重量平均分子量の好ましい上限は1,000,000であり、より好ましい上限は250,000である。フェノキシ樹脂の重量平均分子量が上記下限値以上であれば、放熱シートの熱劣化が小さくなり、製膜性も向上する。フェノキシ樹脂の重量平均分子量が上記上限値以下であれば、フェノキシ樹脂と他の樹脂との相溶性が良くなる。その結果、放熱シートの硬化物及びその積層構造体の耐熱性が向上する。加えて、硬化不良による熱伝導率及び接着性が低下する可能性を減らすことができる。
以上より、フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、10,000~1,000,000が好ましく、30,000~1,000,000がより好ましく、40,000~250,000が更に好ましい。
フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定による、ポリスチレン換算による重量平均分子量である。
【0042】
放熱シートは重量平均分子量が600以下である低分子量エポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂は分子量が高くなるほど粘度も高くなる傾向にある。重量平均分子量が上記上限値以下であれば、プレス成形時に樹脂が凝集無機フィラー間の空隙に侵入しやすくなり、凝集無機フィラー間の空隙が減少し、絶縁性がより良好となる傾向にある。
放熱シートが低分子量エポキシ樹脂を含んでいれば、樹脂全体の粘度が低くなるため、プレス成形時に樹脂が凝集無機フィラー間に十分に侵入することができる。
【0043】
上記低分子量エポキシ樹脂としては、重量平均分子量600以下であれば特に限定されない。分子量エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノール骨格を有するエポキシモノマー、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシモノマー、ナフタレン骨格を有するエポキシモノマー、アダマンテン骨格を有するエポキシモノマー、フルオレン骨格を有するエポキシモノマー、ビフェニル骨格を有するエポキシモノマー、バイ(グリシジルオキシフェニル)メタン骨格を有するエポキシモノマー、キサンテン骨格を有するエポキシモノマー、アントラセン骨格を有するエポキシモノマー、又はピレン骨格を有するエポキシモノマー等が挙げられる。低分子量エポキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0044】
放熱シートは、上記フェノキシ樹脂、上記低分子量エポキシ樹脂に該当しないその他の樹脂を含んでいてもよく、その他の樹脂は熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のうちいずれか又はその両方でもよい。
熱可塑性樹脂としては、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。
【0045】
放熱シートは硬化剤を含んでいてもよい。放熱シートに含まれている硬化剤は特に限定されない。好ましい硬化剤としては、フェノール樹脂、芳香族骨格もしくは脂環式骨格を有する酸無水物、又は該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物が挙げられる。この好ましい硬化剤の使用により、耐熱性、耐湿性及び電気物性のバランスに優れた放熱シートの硬化物を得ることができる。硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0046】
硬化速度や硬化物の物性などを調整するために、上記硬化剤と硬化促進剤とを併用することが好ましい。
【0047】
上記硬化促進剤は特に限定されない。上記硬化促進剤は、用いられる樹脂や硬化剤の種類に応じて適宜に選ばれる。硬化促進剤の具体例としては、例えば3級アミン、イミダゾール類、イミダゾリン類、トリアジン類、有機リン系化合物、4級ホスホニウム塩類又は有機酸塩等のジアザビシクロアルケン類等が挙げられる。また、上記硬化促進剤としては、有機金属化合物類、4級アンモニウム塩類又は金属ハロゲン化物等が挙げられる。上記有機金属化合物類としては、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫又はアルミニウムアセチルアセトン錯体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0048】
放熱シートは、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、必要に応じて凝集無機フィラー以外の無機フィラー(以下、「他の無機フィラー」ともいう。)を含んでいてもよい。他の無機フィラーとしては、凝集しないものであれば特に制限されないが、例えばアルミナ(酸化アルミニウム)、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、ゼオライト、シリカなどが挙げられる。
【0049】
放熱シートは、凝集無機フィラーが窒化ホウ素(BN)凝集粒子である場合、X線回折測定して得られる、該シート中のBN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク強度比((100)/(004))は1.0以上が好ましく、より好ましくは1.5以上であり、更に好ましくは2.0以上であり、特に好ましくは2.5以上であり、最も好ましくは3.0以上である。上限は特に制限はないが、ピーク強度比((100)/(004))は通常10.0以下が好ましく、より好ましくは7.0以下であり、更に好ましくは5.0以下である。
ピーク強度比((100)/(004))が上記上限値以下であれば、シート面に対してBN一次粒子のab面が垂直方向に向く割合が高くなり過ぎず、プレス等の成形工程を行うときに、シート内の微小なクラックを抑制することができる。このようなクラックの発生を抑制することで、耐電圧等の電気特性の低下を抑制できる傾向がある。また、ピーク強度比((100)/(004))が上記下限値以上であれば、シート面に対するBN一次粒子の垂直方向に向く割合が低くなり過ぎず、熱伝導率が高くなる傾向がある。
以上より、ピーク強度比((100)/(004))は、1.0~10.0でもよく、1.0~7.0でもよく、1.0~5.0でもよく、1.5~10.0でもよく、1.5~7.0でもよく、1.5~5.0でもよく、2.0~10.0でもよく、2.0~7.0でもよく、2.0~5.0でもよく、2.5~10.0でもよく、2.5~7.0でもよく、2.5~5.0でもよく、3.0~10.0でもよく、3.0~7.0でもよく、3.0~5.0でもよい。
【0050】
更に、凝集無機フィラーが窒化ホウ素(BN)凝集粒子である場合、該シートをX線回折測定して得られる、該シート中のBN一次粒子の(002)面ピークから求めたBN一次粒子平均結晶子径は、特に制限はない。BN一次粒子平均結晶子径は、通常300Å以上が好ましく、より好ましくは320Å以上であり、更に好ましくは375Å以上であり、より更に好ましくは380Å以上であり、特に好ましくは390Å以上であり、最も好ましくは400Å以上である。
また、前記BN一次粒子平均結晶子径は、通常5000Å以下が好ましく、より好ましくは2000Å以下であり、更に好ましくは1000Å以下である。
前記BN一次粒子平均結晶子径が上記上限値以下であれば、プレス工程などのシート成形時においても、凝集粒子内のカードハウス構造がある程度維持され、シート面に対してBN一次粒子のab面が垂直方向に向く割合が増加し、熱伝導度が高くなる傾向がある。
また、前記BN一次粒子平均結晶子径が上記下限値以上であれば、BN一次粒子界面の増加が抑制され、伝熱抵抗が低くなり熱伝導度が高くなる傾向がある。
以上より、前記BN一次粒子平均結晶子径は、300~5000Åが好ましく、320~5000Åがより好ましく、375~5000Åが更に好ましく、380~5000Åがより更に好ましく、390~2000Åが特に好ましく、400~1000Åが最も好ましい。
【0051】
放熱シートにおいては、X線回折測定して得られる、該シート中のBN一次粒子の(100)面と(004)面のピーク面積強度比((100)/(004))は、特に制限はない。ピーク面積強度比((100)/(004))は、通常0.6以上が好ましく、より好ましくは0.65以上であり、更に好ましくは0.7以上であり、より更に好ましくは0.75以上であり、特に好ましくは0.8以上であり、最も好ましくは0.85以上である。また、上限は特に制限はないが、ピーク面積強度比((100)/(004))は通常10.0以下が好ましく、より好ましくは5.0以下であり、更に好ましくは4.0以下である。
ピーク面積強度比((100)/(004))が上記上限値以下であれば、凝集粒子内のカードハウス構造がある程度維持され、シート面に対してBN一次粒子のab面が垂直方向に向く割合が増加し、熱伝導度が高くなる傾向がある。また、ピーク面積強度比((100)/(004))が上記下限値以上であれば、BN一次粒子界面の増加が抑制され、伝熱抵抗が低くなり熱伝導度が高くなる傾向がある。
以上より、ピーク面積強度比((100)/(004))は、0.6~10.0でもよく、0.6~5.0でもよく、0.6~4.0でもよく、0.65~10.0でもよく、0.65~5.0でもよく、0.65~4.0でもよく、0.7~10.0でもよく、0.7~5.0でもよく、0.7~4.0でもよく、0.75~10.0でもよく、0.75~5.0でもよく、0.75~4.0でもよく、0.8~10.0でもよく、0.8~5.0でもよく、0.8~4.0でもよく、0.85~10.0でもよく、0.85~5.0でもよく、0.85~4.0でもよい。
ピーク面積強度比((100)/(004))は、測定するXRD装置に付帯する解析プログラムを用いればよく、例えばオランダPANalytical社製の製品名「X’PertPro MPD粉末X線回折装置」を用いて、該当するピーク面積の強度比を計算することができる。
【0052】
本実施形態に係る放熱シートは、放熱シートの厚さ方向断面に特徴を有し、具体的には、放熱シートに含まれる凝集無機フィラーの半数以上が、下記条件A及び条件Bを満たし、かつ下記条件A及び条件Bを満たす凝集無機フィラーが下記条件Cを満たす。具体的には、図1を用いて説明する。
条件A:凝集無機フィラー同士が面接触している。
条件B:長径と短径との比(長径/短径)で表されるアスペクト比が1超、2以下である。
条件C:放熱シートの厚さ方向の断面観察において、凝集無機フィラー同士の接触界面が構成する直線を一辺とし、この凝集無機フィラーの最大径を直径とした仮想円の中心を頂点として形成される三角形のうち、前記直線の両端と前記頂点とを結んでなる角度θが30度以上となる三角形の面積の総和Sが、凝集無機フィラーの断面積の総和Sに対して20%以上である。
【0053】
図1は、本実施形態に係る放熱シート10の拡大断面模式図である。
放熱シート10は、凝集無機フィラー1がマトリクス樹脂2中にランダムに配置されてなる。放熱シート10中における凝集無機フィラー1の含有量は、放熱シート10の総質量に対して通常5重量%以上が好ましく、より好ましくは10重量%以上であり、更に好ましくは15重量%以上であり、特に好ましくは20重量%以上である。また、放熱シート10中における凝集無機フィラー1の含有量は、放熱シート10の総質量に対して通常90重量%以下が好ましく、より好ましくは80重量%以下であり、更に好ましくは70重量%以下であり、特に好ましくは60重量%以下である。
以上より、放熱シート10中における凝集無機フィラー1の含有量は、放熱シート10の総質量に対して、5~90重量%が好ましく、10~80重量%がより好ましく、15~70重量%が更に好ましく、20~60重量%が特に好ましい。
【0054】
放熱シート10に含まれる凝集無機フィラー1のうち、半数以上において、凝集無機フィラー同士が面接触している(条件A)。すなわち、凝集無機フィラー1同士の接触界面3が直線部分を構成することを特徴とする。
本実施形態に係る放熱シートは、凝集無機フィラーをマトリクス樹脂中に含むため、シート化した際に樹脂・フィラー界面にボイドが生じやすい。これを低減させるために、放熱シートの厚さ方向に対してプレスを行う。プレスにより放熱シート中のボイドは低減される一方で、放熱シート中の凝集無機フィラーにも圧力が掛かり、隣り合う凝集無機フィラー同士が点ではなく面で接触することとなる。そして、当該面で接触した部分は、厚さ方向断面観察において「直線部分」として観察される。また、凝集無機フィラーの含有量にもよるが、放熱シート中の凝集無機フィラーの形状は、ペンタゴナル形状、ヘキサゴナル形状などの多角形状になり得る。
【0055】
このように、凝集無機フィラー同士の接触界面に破壊等による変形が起こり直線部分を構成する一方で、凝集構造そのものは崩れないまま面で接触する。よって、凝集無機フィラー同士のコンタクトが増加し、放熱シートの厚さ方向への熱伝導パスが増加し、かつ凝集無機フィラー間のボイドを低減することもできる。これにより高い放熱性能及び高い絶縁性を有する放熱シートを作製できる。
【0056】
放熱シート中でこのような形状を取り得る限り、凝集無機フィラーの種類は特段限定されないが、凝集無機フィラーの破壊強度が高すぎず、また、フィラー自体が十分な弾性率を有する凝集無機フィラーであることが好ましい。具体的には、凝集無機フィラーの破壊強度は20MPa以下であり、弾性率は48MPa以上である。このような観点から凝集無機フィラーは、カードハウス構造を有する窒化ホウ素凝集粒子であることがより好ましい。
【0057】
また、放熱シートの厚さ方向の断面観察において、接触界面が直線部分を構成する凝集無機フィラーの最大径を直径とした仮想円と、該直線部分と、の2つの交点が、該仮想円の中心との間で形成する角度θが、30度以上であることが好ましい。即ち、凝集無機フィラー同士の接触界面が構成する直線を一辺とし、この凝集無機フィラーの最大径を直径とした仮想円の中心を頂点として形成される三角形において、前記直線の両端と前記頂点とを結んでなる角度θが、30度以上であることが好ましい。このことを、図2により説明する。
図2における凝集無機フィラー1は、接触界面が直線部分A-Bを構成する凝集無機フィラーである。図中左側の凝集無機フィラーの最大径dを直径とした仮想円と、接触界面3の直線部分との交点A及びBが、仮想円の中心Cとの間で形成する角度θが30度以上であることが好ましい。当該角度θは、フィラー同士の接触による元の凝集無機フィラーの潰れ具合を表す。角度θは45度以上であってよく、60度以上であってよい。
一方で、角度θは、通常180度以下が好ましく、135度以下であってよく、120度以下であってよく、105度以下であってよい。
以上より、角度θは、30~180度でもよく、30~135度でもよく、30~120度でもよく、30~105度でもよく、45~180度でもよく、45~135度でもよく、45~120度でもよく、45~105度でもよく、60~180度でもよく、60~135度でもよく、60~120度でもよく、60~105度でもよい。
【0058】
また、放熱シートは、ボイドを低減させるためにプレスを行うことから、ボイドが少ないことが好ましい。放熱シートの空隙率は、10体積%以下であることが好ましく、5体積%以下であることがより好ましく、3体積%以下であることが更に好ましい。
【0059】
放熱シート中の凝集無機フィラー同士がどのように接触しているかは、硬化後の放熱シートを切断し、その断面を光学顕微鏡或いは走査型電子顕微鏡で観察することにより、確認することができる。
【0060】
放熱シートに含まれる凝集無機フィラーのうち、半数以上において、長径と短径との比(長径/短径)で表されるアスペクト比が1超、2以下である(条件B)。本実施形態においては、アスペクト比が1超、2以下である凝集無機フィラーを「球形を維持している。」とみなす。凝集無機フィラーが球形を維持しているというのは、放熱シートの断面写真により、該フィラーが球形を維持しており、かつ凝集構造を作る一次粒子が等方性を保っていることを指す。球形を維持している凝集無機フィラーのアスペクト比は1超、2以下であり、好ましくは1超、1.75以下であり、より好ましくは1以上1.5以下であり、更に好ましくは1以上1.4以下である。
【0061】
放熱シート中の凝集無機フィラー同士の面接触の程度は、次に示す指標で表すことができる。即ち、放熱シートの厚さ方向の断面観察において、凝集無機フィラー同士の接触界面が構成する直線を一辺とし、この凝集無機フィラーの最大径を直径とした仮想円の中心を頂点として形成される三角形のうち、前記直線の両端と前記頂点とを結んでなる角度をθとする。前記条件A及び条件Bを満たす凝集無機フィラーのうち、前記θが30度以上となる三角形の面積の総和をSとしたときに、前記条件A及び条件Bを満たす凝集無機フィラーの断面積の総和Sに対する総和Sの数値で、放熱シート中の前記条件A及び条件Bを満たす凝集無機フィラーの面接触の程度を表すことができる。
なお、ここでいう「接触界面が構成する直線」の「直線」とは数学的に厳密に直線である必要はなく、接触する凝集無機フィラー同士が、互いに破壊及び/又は変形している状態がほぼ直線状になっているものを意味する。直線の引き方は、隣接する凝集無機フィラー同士が接触し始める点を結んだ直線で考えればよい。
また凝集無機フィラーの間に、サイズの異なる別の種類の無機フィラーが一部存在している場合、例えば凝集無機フィラーとして粒径の大きい窒化ホウ素を用い、無機フィラーの充填率向上のため、前記凝集無機フィラーより粒径が1/10以下になるような小さい他の無機フィラー、例えばアルミナを併用する場合などは、凝集無機フィラーである窒化ホウ素同士の界面に、粒径の小さいアルミナが一部はさまれていることがある。このアルミナのような粒径の小さい粒子が含まれていても、直線が途切れたり、そのために中心角(角度θ)が30度未満となったりするとは考えない。
【0062】
前記総和S及び総和Sを求める方法は特に限定されない。例えば、画像解析ソフトを利用する方法、紙に印刷して重さを測定する方法等が挙げられる。
【0063】
凝集無機フィラー同士の面接触の程度、即ち前記総和Sに対する前記総和S(S/S)の数値が高くなることで、凝集無機フィラー同士のコンタクトが増加し、放熱シートの厚さ方向への熱伝導パスが増加し、かつフィラー間のボイドが低減でき絶縁性を向上できる。従って、S/Sの数値が大きいほど、放熱シートの放熱性・絶縁性が向上し、好ましい。
よって、本実施形態においては、前記条件A及び条件Bを満たす前記凝集無機フィラーにおいて、前記総和Sが前記総和Sに対して20%以上(即ち、S/Sが20%以上)である(条件C)。S/Sは23%以上が好ましく、より好ましくは25%以上であり、更に好ましくは30%以上である。一方で、プレス成形時のシート形状の寸法安定性の観点から、S/Sは通常99%以下であることが好ましく、より好ましくは95%以下であり、更に好ましくは80%以下である。
以上より、前記S/Sは、20~99%でもよく、20~95%でもよく、20~80%でもよく、23~99%でもよく、23~95%でもよく、23~80%でもよく、25~99%でもよく、25~95%でもよく、25~80%でもよく、30~99%でもよく、30~95%でもよく、30~80%でもよい。
前記S/Sの数値は、凝集無機フィラーの破壊強度、凝集無機フィラーの弾性率、放熱シート中の凝集無機フィラーの含有量、樹脂の組成、及び放熱シートを製造する際のプレス圧力などにより調整することができる。
【0064】
以下、本実施形態に係る放熱シートの製造方法を説明する。上記形状の放熱シートが得られる限り、その製造方法は特段限定されず、例えば国際公開第2015/119198号を適宜参照できる。
放熱シートは、例えばシート用組成物を基板の表面に塗布し、乾燥させた後、シート化することで得られる。
【0065】
<シート用組成物の調製>
シート用組成物は、配合成分として上記凝集無機フィラーと、樹脂と、必要に応じて他の無機フィラー、硬化剤、硬化促進剤や、これら以外のその他の成分とを撹拌や混練によって均一に混合することによって得ることができる。各配合成分の混合には、例えばミキサー、ニーダー、単軸又は二軸混練機等の一般的な混練装置を用いることができ、混合に際しては、必要に応じて加熱してもよい。
なお、シート用組成物が液体状態の樹脂や溶媒を含むなどして、シート用組成物が流動性を有するスラリー状態(本明細書では「塗布用スラリー」ともいう。)の場合、スラリーにする際の調製方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。なお、その際、塗布用スラリーの均一性の向上、脱泡等を目的として、ペイントシェーカーやビーズミル、プラネタリミキサ、攪拌型分散機、自公転攪拌混合機、三本ロール、ニーダー、単軸又は二軸混練機等の一般的な混練装置などを用いて各配合成分を混合・撹拌することが好ましい。
【0066】
各配合成分の混合順序も、反応や沈殿物が発生するなど特段の問題がない限り任意であるが、例えば以下のようして塗布用スラリーを調製することができる。
まず、樹脂を有機溶媒(例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサン等)に混合・溶解させて樹脂液を調製する。得られた樹脂液に、凝集無機フィラーと、必要に応じて他の無機フィラー及びその他の成分の1種以上とを十分に混合した混合物を加えて混合し、その後、粘度調整用として更に有機溶媒を加えて混合する。その後、更に、樹脂硬化剤や硬化促進剤、或いは、分散剤等の添加剤を加えて混合し、塗布用スラリーを得る。
【0067】
<塗布工程>
まず、別途準備した基板の表面に、塗布用スラリーを塗布する。
即ち、ディップ法、スピンコート法、スプレーコート法、ブレード法、その他の任意の方法で基板の表面に塗布用スラリーを塗布する。塗布用スラリーの塗布には、スピンコーター、スリットコーター、ダイコーター、ブレードコーター、コンマコーター、スクリーン印刷、ドクターブレード、アプリケーター、スプレー塗布などの塗布装置を用いることにより、基板上に所定の膜厚の塗膜を均一に形成することが可能である。上記の塗布装置の中でも、ギャップを調整可能なブレードコーターが好ましい。
基板としては、金属基板、プラスチック基板(プラスチックフィルムともいう。)などが挙げられる。
【0068】
<乾燥工程>
次に、基板の表面に塗布された塗布用スラリーを乾燥させ塗布乾燥物(塗膜)を得る。
乾燥温度は、通常15℃以上が好ましく、より好ましくは20℃以上であり、更に好ましくは23℃以上である。また、乾燥温度は、通常100℃以下が好ましく、より好ましくは90℃以下であり、更に好ましくは80℃以下であり、特に好ましくは70℃以下である。
また乾燥時間は特に限定されないが、通常5分以上が好ましく、より好ましくは30分以上であり、更に好ましくは1時間以上であり、特に好ましくは2時間以上である。また、乾燥時間は、通常168時間以下が好ましく、より好ましくは144時間以下であり、更に好ましくは120時間以下であり、特に好ましくは96時間以下である。
以上より、乾燥時間は、5分~168時間が好ましく、30分~144時間がより好ましくは、1~120時間が更に好ましく、2~96時間が特に好ましい。
【0069】
乾燥させる前の放熱シートの膜厚は、組み込まれるデバイスによって適宜設定されるが、通常50μm以上が好ましく、より好ましくは100μm以上であり、更に好ましくは150μm以上であり、特に好ましくは300μm以上である。また、乾燥させる前の放熱シートの膜厚は、通常800μm以下が好ましく、より好ましくは700μm以下であり、更に好ましくは600μm以下であり、特に好ましくは500μm以下である。
以上より、乾燥させる前の放熱シートの膜厚は、50~800μmが好ましく、100~700μmがより好ましく、150~600μmが更に好ましく、300~500μmが特に好ましい。
【0070】
<シート化工程>
乾燥工程の後には、塗布乾燥物を加圧、成形する工程(シート化工程)を行う。
基板が金属基板の場合、塗布乾燥物の上に別の金属基板を積層して加圧することが好ましい。また、加圧の前又は後に、塗布乾燥物を所定の大きさに切断してもよい。
基板がプラスチックフィルムの場合、塗布乾燥物の上に別のプラスチックフィルムを積層して加圧することが好ましい。その後、プラスチックフィルムを剥離し、加圧後の塗布乾燥物の両面に金属基板を積層して再度加圧する、又は加圧後の塗布乾燥物の片側を金属基板に仮接着した後に再度加圧することが好ましい。再度加圧することによって、金属基板に塗布乾燥物が接着する。また、1度目の加圧の前又は後に、塗布乾燥物を所定の大きさに切断してもよい。
シート化をする際の加熱温度(プレス温度)は、通常0℃以上が好ましく、より好ましくは20℃以上である。また、プレス温度は、通常300℃以下が好ましく、より好ましくは250℃以下であり、更に好ましくは200℃以下である。
以上より、プレス温度は、0~300℃が好ましく、20~250℃がより好ましく、20~200℃が更に好ましい。
【0071】
上記シート化工程(以下、「プレス処理」ともいう。)におけるプレス方法は、公知の技術を用いて行うことができ、例えば静水圧プレス、真空プレス、ベルトプレス、加熱プレス、サーボプレス、カレンダーロール等、公知の方法で成形することができる。
プラスチックフィルム又は金属基板上の塗布乾燥物を加圧する際のプレス圧力は、通常10kgf/cm以上が好ましく、より好ましくは150kgf/cm以上であり、更に好ましくは200kgf/cm以上であり、特に好ましくは250kgf/cm以上である。また、プレス圧力は、通常2000kgf/cm以下が好ましく、より好ましくは1000kgf/cm以下であり、更に好ましくは900kgf/cm以下であり、特に好ましくは800kgf/cm以下である。
以上より、プレス圧力は、通常10~2000kgf/cmが好ましく、150~1000kgf/cmがより好ましく、200~900kgf/cmが更に好ましく、250~800kgf/cmが特に好ましい。
【0072】
本実施形態の放熱シートに対して両面を銅で貼り合せた放熱シートを有した回路基板は、従来にはない高い熱伝導性による放熱効果で、高い信頼性のもとに、デバイスの高出力、高密度化が可能であるため、半導体デバイス、特にパワー半導体デバイス装置の放熱基板や放熱シートとして適している。パワー半導体デバイス装置は、本実施形態の放熱シートを含むものであるが、本実施形態の放熱シート以外のアルミ配線、封止材、パッケージ材、ヒートシンク、サーマルペースト、はんだ等の部材は、従来公知の部材を適宜採用できる。
【0073】
また、放熱シートの熱伝導率(W/mK)は特に制限はないが、通常5W/mK以上が好ましく、より好ましくは10W/mK以上であり、更に好ましくは13W/mK以上であり、特に好ましくは15W/mK以上であり、最も好ましくは17W/mK以上である。
耐電圧性能は、通常10kV/mm以上が好ましく、より好ましくは15kV/mm以上であり、更に好ましくは20kV/mm以上である。
また、放熱シートのガラス転移温度は特段限定されないが、通常0℃以上が好ましく、より好ましくは10℃以上であり、更に好ましくは25℃以上である。また、放熱シートのガラス転移温度は、通常400℃以下が好ましく、より好ましくは350℃以下であり、更に好ましくは300℃以下である。
また、放熱シートの接着強度(N/cm)は特に制限はないが、通常0.5N/cm以上が好ましく、より好ましくは1N/cm以上であり、更に好ましくは2N/cmであり、特に好ましくは3N/cm以上であり、最も好ましくは5N/cm以上である。
【0074】
以上説明した本発明の第一の態様の実施形態に係る放熱シートは、特定の凝集無機フィラーと樹脂とを含み、放熱シートに含まれる凝集無機フィラーの半数以上が、前記条件A及び条件Bを満たし、かつ前記条件A及び条件Bを満たす凝集無機フィラーが前記条件Cを満たすので、高い熱伝導性及び絶縁性を有する。熱伝導性の高い放熱シートを半導体デバイスに用いることで、発熱量の多いパワーデバイスであっても、良好な放熱性を提供できる。
【0075】
「第二の態様」
本発明の第二の態様の実施形態に係る放熱シートは、凝集無機フィラーと樹脂とを含む放熱シートであり、放熱シートの厚さ方向断面に特徴を有する。
本発明の第二の態様の実施形態に係る放熱シートは、放熱シートに含まれる凝集無機フィラーの半数以上が、下記条件A及び条件Bを満たし、かつ下記条件A及び条件Bを満たす凝集無機フィラーが下記条件Dを満たす以外は、本発明の第一の態様の実施形態に係る放熱シートと同様である。なお、条件A及び条件Bは、第一の態様と同様である。また、製造方法についても第一の態様と同様である。
条件A:凝集無機フィラー同士が面接触している。
条件B:長径と短径との比(長径/短径)で表されるアスペクト比が1超、2以下である。
条件D:放熱シートの厚さ方向の断面観察において、凝集無機フィラーの断面積の総和Sが、凝集無機フィラーの最大径を直径とした仮想円の面積の総和Sに対して90%以下である。
【0076】
本実施形態に係る放熱シートは、凝集無機フィラーをマトリクス樹脂中に含むため、シート化した際に樹脂・フィラー界面にボイドが生じやすい。これを低減させるために、放熱シートの厚さ方向に対してプレスを行う。プレスにより放熱シート中のボイドは低減される一方で、放熱シート中の凝集無機フィラーにも圧力が掛かり、隣り合う凝集無機フィラー同士が点ではなく面で接触することとなる。そして、当該面で接触した部分は、厚さ方向断面観察において「変形によりプレス前と比較して面積が減少したもの」として観察される。また、凝集無機フィラーの含有量にもよるが、放熱シート中の凝集無機フィラーの形状は、ペンタゴナル形状、ヘキサゴナル形状などの多角形状になり得る。
【0077】
このように、凝集無機フィラー同士の接触界面に破壊等による変形が起こり面積の減少が生じる一方で、凝集構造そのものは崩れないまま面で接触する。よって、凝集無機フィラー同士のコンタクトが増加し、放熱シートの厚さ方向への熱伝導パスが増加し、かつ凝集無機フィラー間のボイドを低減することもできる。これにより高い放熱性能及び高い絶縁性を有する放熱シートを作製できる。
【0078】
放熱シート中でこのような形状を取り得る限り、凝集無機フィラーの種類は特段限定されないが、凝集無機フィラーの破壊強度が高すぎず、また、フィラー自体が十分な弾性率を有する凝集無機フィラーであることが好ましい。具体的には、凝集無機フィラーの破壊強度は20MPa以下であり、弾性率は48MPa以上である。このような観点から凝集無機フィラーは、カードハウス構造を有する窒化ホウ素凝集粒子であることがより好ましい。
【0079】
放熱シート中の凝集無機フィラーの接触変形の程度は、次に示す指標で表すことができる。即ち、放熱シートの厚さ方向の断面観察において、前記条件A及び条件Bを満たす凝集無機フィラーの最大径を直径dとした仮想円の面積の総和をSとしたときに、総和Sに対する前記条件A及び条件Bを満たす凝集無機フィラーの断面積の総和Sの数値で、放熱シート中の前記条件A及び条件Bを満たす凝集無機フィラーの接触変形の程度を表すことができる。
例えば、図3を用いて説明すると、両側矢印で表された凝集無機フィラー1の中心を通る最も長い線を凝集無機フィラー1の粒子径(直径) dとみなし、dを直径とする仮想円の面積の総和をSに対する、実際の変形した凝集無機フィラー1の断面積の総和Sを求める。
【0080】
前記総和S及び総和Sを求める方法は特に限定されず、画像解析ソフトを利用する方法、紙に印刷して重さを測定する方法等が挙げられる。
【0081】
放熱シート中の凝集無機フィラーの接触変形の程度、即ち前記総和Sに対する前記総和S(S/S)の数値が小さくなることで、凝集無機フィラー同士のコンタクトが増加し、放熱シートの厚さ方向への熱伝導パスが増加し、かつフィラー間のボイドが低減でき絶縁性を向上につながる。従って、S/Sの数値が小さいほど、放熱シートの放熱性・絶縁性が向上し、好ましい。
よって、本実施形態においては、前記条件A及び条件Bを満たす前記凝集無機フィラーにおいて、前記総和Sが前記総和Sに対して90%以下(即ち、S/Sが90%以下)である(条件D)。S/Sは87%以下が好ましく、より好ましくは85%以下であり、更に好ましくは80%以下である。一方で、プレス成形時に凝集無機フィラー内の放熱性の高い凝集構造を維持しやすい観点から、S/Sは通常40%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上であり、更に好ましくは55%以上である。
以上より、S/Sは、40~90%でもよく、40~87%でもよく、40~85%でもよく、40~80%でもよく、50~90%でもよく、50~87%でもよく、50~85%でもよく、50~80%でもよく、55~90%でもよく、55~87%でもよく、55~85%でもよく、55~80%でもよい。
前記S/Sの数値は、凝集無機フィラーの破壊強度や弾性率、放熱シート中の凝集無機フィラーの含有量、樹脂の組成、及び放熱シートを製造する際のプレス圧力などにより調整することができる。
【0082】
以上説明した本発明の第二の態様の実施形態に係る放熱シートは、特定の凝集無機フィラーと樹脂とを含み、放熱シートに含まれる凝集無機フィラーの半数以上が、前記条件A及び条件Bを満たし、かつ前記条件A及び条件Bを満たす凝集無機フィラーが前記条件Dを満たすので、高い熱伝導性及び絶縁性を有する。熱伝導性の高い放熱シートを半導体デバイスに用いることで、発熱量の多いパワーデバイスであっても、良好な放熱性を提供できる。
【0083】
「第三の態様」
本発明の第三の態様の実施形態に係る放熱部材は、凝集無機フィラーと樹脂とを含む放熱シートと、前記放熱シートが接着した金属基板とを含む放熱部材であり、金属基板との接触界面付近における放熱シートの厚さ方向断面に特徴を有する。
本発明の第三の態様の実施形態に係る放熱部材は、放熱シートに含まれ、金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーのうち、下記条件E及び条件Fを満たす凝集無機フィラーの個数割合が、金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーの総数に対して60%以上である。
条件E:長径と短径との比(長径/短径)で表されるアスペクト比が1超、2以下である。
条件F:放熱シートの厚さ方向の断面観察において、金属基板と凝集無機フィラーとの接触界面が構成する直線を一辺とし、この凝集無機フィラーの最大径を直径とした仮想円の中心を頂点として形成される三角形のうち、前記直線の両端と前記頂点とを結んでなる角度θが30度以上となる。
【0084】
金属基板は、第一の態様において説明した放熱シートの製造方法で用いる金属基板と同様である。具体的には、金属基板は、半導体デバイスの放熱基板に用いられる金属基板や金属電極に相当する。使用する金属としては銅、アルミなどの高熱伝導の導電体が好ましく、金属基板の厚みは0.01~10mmtが好ましい。また使用する金属基板、金属電極の表面は、機械処理、化成処理などによる表面粗化や樹脂親和性の改良が施されていてもよい。
放熱シートに含まれる凝集無機フィラー及び樹脂としては、第一の態様の実施形態に係る放熱シートに含まれる凝集無機フィラー及び樹脂が挙げられる。
【0085】
本実施形態に係る放熱部材に備わる放熱シートは、凝集無機フィラーをマトリクス樹脂中に含むため、シート化した際にボイドが生じやすい。これを低減させるために、放熱シートの厚さ方向に対してプレスを行う。具体的な放熱部材の製造方法は、第一の態様の実施形態に係る放熱シートの製造方法と同様である。
プレスにより放熱シート中のボイドは低減される一方で、放熱シート中の凝集無機フィラーにも圧力が掛かり、金属基板と接触する凝集無機フィラーが点ではなく面で接触することとなる。そして、当該面で接触した部分は、厚さ方向断面観察において「変形によりプレス前と比較して面積が減少したもの」として観察される。また、凝集無機フィラーの含有量にもよるが、放熱シート中の凝集無機フィラーの形状は、ペンタゴナル形状やヘキサゴナル形状などの多角形状になり得る。
【0086】
このように、金属基板と凝集無機フィラーとの接触界面に破壊等による変形が起こり面積の減少が生じる一方で、凝集構造そのものは崩れないまま面で接触する。よって、金属基板と凝集無機フィラーのコンタクトが増加し、金属基板から放熱シートへの熱伝導パスが増加し、かつ凝集無機フィラー間のボイドを低減することもできる。これにより高い放熱性能及び高い絶縁性を有する放熱シートを作製できる。
【0087】
放熱シート中でこのような形状を取り得る限り、凝集無機フィラーの種類は特段限定されないが、凝集無機フィラーの破壊強度が高すぎず、また、フィラー自体が十分な弾性率を有する凝集無機フィラーであることが好ましい。具体的には、凝集無機フィラーの破壊強度は20MPa以下であり、弾性率は48MPa以上である。このような観点から凝集無機フィラーは、カードハウス構造を有する窒化ホウ素凝集粒子であることがより好ましい。
【0088】
放熱シートの厚さ方向の断面観察において、金属基板と凝集無機フィラーとの接触界面が直線部分を構成する凝集無機フィラーの最大径を直径とした仮想円と、該直線部分と、の2つの交点が、該仮想円の中心との間で形成する角度θが、30度以上であることが好ましい。即ち、金属基板と凝集無機フィラーとの接触界面が構成する直線を一辺とし、この凝集無機フィラーの最大径を直径とした仮想円の中心を頂点として形成される三角形において、前記直線の両端と前記頂点とを結んでなる角度θが、30度以上であることが好ましい。このことを、図4により説明する。
図4は、放熱シート10と、放熱シート10が接着した金属基板20とを含む放熱部材100の一例を示す拡大断面模式図である。図4における凝集無機フィラー1は、金属基板20との接触界面4が直線部分E-Fを構成する凝集無機フィラーである。金属基板20と接触する凝集無機フィラー1の最大径dを直径とした仮想円と、接触界面4の直線部分との交点E及びFが、仮想円の中心Gとの間で形成する角度θが30度以上であることが好ましい。当該角度θは、凝集無機フィラー1と金属基板20との接触による元の凝集無機フィラーの潰れ具合を表す。角度θは45度以上であってよく、60度以上であってよい。一方で、角度θは、通常180度以下が好ましく、135度以下であってよく、120度以下であってよく、105度以下であってよい。
以上より、角度θは、30~180度でもよく、30~135度でもよく、30~120度でもよく、30~105度でもよく、45~180度でもよく、45~135度でもよく、45~120度でもよく、45~105度でもよく、60~180度でもよく、60~135度でもよく、60~120度でもよく、60~105度でもよい。
【0089】
放熱シート中の凝集無機フィラーと金属基板とがどのように接触しているかは、硬化後の放熱シートを切断し、その断面を光学顕微鏡或いは走査型電子顕微鏡で観察することにより、確認することができる。
【0090】
放熱シートに含まれ、前記金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーのうちの60%以上の凝集無機フィラーのアスペクト比が1超、2以下である(条件E)。本実施形態においては、アスペクト比が1超、2以下である凝集無機フィラーを「球形を維持している。」とみなす。凝集無機フィラーが球形を維持しているというのは、放熱シートの断面写真により、該フィラーが球形を維持しており、かつ凝集構造を作る一次粒子が等方性を保っていることを指す。球形を維持している凝集無機フィラーのアスペクト比は1超、2以下であり、好ましくは1超、1.75以下であり、より好ましくは1以上1.5以下であり、更に好ましくは1以上1.4以下である。
【0091】
放熱シート中の凝集無機フィラーと金属基板との面接触の程度は、次に示す指標で表すことができる。即ち、放熱シートの厚さ方向の断面観察において、金属基板と凝集無機フィラーとの接触界面が構成する直線を一辺とし、この凝集無機フィラーの最大径を直径とした仮想円の中心を頂点として形成される三角形のうち、前記直線の両端と前記頂点とを結んでなる角度をθとする。金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーの総数に対する、前記θが30度以上となる凝集無機フィラーの個数割合の数値で、放熱シート中の凝集無機フィラーと金属基板との面接触の程度を表すことができる。
なお、ここでいう「接触界面が構成する直線」の「直線」とは数学的に厳密に直線である必要はなく、接触する金属基板と凝集無機フィラーが、互いに破壊及び/又は変形している状態がほぼ直線状になっているものを意味する。直線の引き方は、接触する金属基板と凝集無機フィラーが接触し始める点を結んだ直線で考えればよい。
【0092】
凝集無機フィラーと金属基板との面接触の程度、即ち、金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーのうち、前記θが30度以上となる凝集無機フィラーの個数割合が多くなることで、凝集無機フィラーと金属基板とのコンタクトが増加し、金属基板から放熱シートへの熱伝導パスが増加し、かつフィラー間のボイドが低減でき絶縁性を向上できる。
従って、金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーの総数に対する、前記θが30度以上となる凝集無機フィラーの個数割合が多いほど、放熱シートの放熱性・絶縁性が向上し、好ましい。
本実施形態においては、金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーのうち、前記条件E及び条件Fを満たす凝集無機フィラーの個数割合が、金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーの総数に対して60%以上であることで、金属基板との熱伝導性が向上し、これを用いた回路基板は、従来にはない高い熱伝導性による放熱効果及び界面のボイド低減による絶縁性向上で、高い信頼性のもとに、デバイスの高出力、高密度化が可能となる。
前記条件E及び条件Fを満たす凝集無機フィラーの個数割合は60%以上であればよく、65%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、75%以上が更に好ましく、80%以上が特に好ましい。また、上限値については特に制限されず、高い方が好ましい。
前記条件E及び条件Fを満たす凝集無機フィラーの個数割合は、凝集無機フィラーの破壊強度や弾性率、放熱シート中の凝集無機フィラーの含有量、樹脂の組成、及び放熱シートを製造する際のプレス圧力などにより調整することができる。
【0093】
本実施形態においては、放熱シートに含まれる無機フィラーの半数以上が、前記条件A及び条件Bを満たし、かつ前記条件A及び条件Bを満たす無機フィラーが、前記条件C又は条件Dを満たすことが好ましい。即ち、本実施形態に係る放熱部材に備わる放熱シートは、第一の態様又は第二の態様の実施形態に係る放熱シートであることが好ましい。これにより、熱伝導性及び絶縁性がさらに高まる。
【0094】
以上説明した本発明の第三の態様の実施形態に係る放熱部材は、特定の凝集無機フィラーと樹脂とを含む放熱シートと、前記放熱シートが接着した金属基板とを含む。そして、放熱シートに含まれ、金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーの総数に対して、60%以上の凝集無機フィラーが前記条件E及び条件Fを満たすので、高い熱伝導性及び絶縁性を有する。熱伝導性の高い放熱シートを半導体デバイスに用いることで、発熱量の多いパワーデバイスであっても、良好な放熱性を提供できる。
【0095】
本発明のその他の態様としては、以下の通りである。
(1)凝集無機フィラーと樹脂とを含む放熱シートであって、
前記凝集無機フィラーの破壊強度が20MPa以下であり、かつ前記凝集無機フィラーの弾性率が48MPa以上であり、
前記放熱シートに含まれる前記凝集無機フィラーの半数以上が、下記条件A及び条件Bを満たし、かつ下記条件A及び条件Bを満たす前記凝集無機フィラーが下記条件Cを満たす、放熱シート。
条件A:凝集無機フィラー同士が面接触している。
条件B:長径と短径との比(長径/短径)で表されるアスペクト比が1超、2以下である。
条件C:放熱シートの厚さ方向の断面観察において、凝集無機フィラー同士の接触界面が構成する直線を一辺とし、この凝集無機フィラーの最大径を直径とした仮想円の中心を頂点として形成される三角形のうち、前記直線の両端と前記頂点とを結んでなる角度θが30度以上となる三角形の面積の総和Sが、凝集無機フィラーの断面積の総和Sに対して20%以上である。
(2)前記条件Cにおいて、前記総和Sが総和Sに対して23%以上である、(1)の放熱シート。
(3)前記条件Cにおいて、前記総和Sが総和Sに対して25%以上である、(2)の放熱シート。
(4)前記条件Cにおいて、前記総和Sが総和Sに対して99%以下である、(1)~(3)のいずれかの放熱シート。
(5)前記条件Cにおいて、前記総和Sが総和Sに対して95%以下である、(4)の放熱シート。
(6)前記条件Cにおいて、前記総和Sが総和Sに対して80%以下である、(5)の放熱シート。
(7)凝集無機フィラーと樹脂とを含む放熱シートであって、
前記凝集無機フィラーの破壊強度が20MPa以下であり、かつ前記凝集無機フィラーの弾性率が48MPa以上であり、
前記放熱シートに含まれる前記凝集無機フィラーの半数以上が、下記条件A及び条件Bを満たし、かつ下記条件A及び条件Bを満たす前記凝集無機フィラーが下記条件Dを満たす、放熱シート。
条件A:凝集無機フィラー同士が面接触している。
条件B:長径と短径との比(長径/短径)で表されるアスペクト比が1超、2以下である。
条件D:放熱シートの厚さ方向の断面観察において、凝集無機フィラーの断面積の総和Sが、凝集無機フィラーの最大径を直径とした仮想円の面積の総和Sに対して90%以下である。
(8)前記条件Dにおいて、前記総和Sが総和Sに対して87%以下である、(7)の放熱シート。
(9)前記条件Dにおいて、前記総和Sが総和Sに対して85%以下である、(8)の放熱シート。
(10)前記条件Dにおいて、前記総和Sが総和Sに対して40%以上である、(7)~(9)のいずれかの放熱シート。
(11)前記条件Dにおいて、前記総和Sが総和Sに対して50%以上である、(10)の放熱シート。
(12)前記条件Dにおいて、前記総和Sが総和Sに対して55%以上である、(11)の放熱シート。
(13)前記凝集無機フィラーが、カードハウス構造を有する窒化ホウ素凝集粒子である、(1)~(12)のいずれかの放熱シート。
(14)前記樹脂が、エポキシ樹脂を含む、(1)~(13)のいずれかの放熱シート。
(15)前記エポキシ樹脂が、フェノキシ樹脂を含む、(14)の放熱シート。
(16)前記フェノキシ樹脂が、前記式(1)~(6)で表される骨格のうちの少なくとも1つの骨格を主鎖中に含む、(15)の放熱シート。
(17)前記フェノキシ樹脂の重量平均分子量が10,000~1,000,000である、(15)又は(16)の放熱シート。
(18)前記樹脂が、重量平均分子量が600以下である低分子量エポキシ樹脂を更に含む、(1)~(17)のいずれかの放熱シート。
(19)硬化促進剤を更に含む、(1)~(18)のいずれかの放熱シート。
(20)前記凝集無機フィラーの含有量が、前記放熱シートの総質量に対して5~90重量%である、(1)~(19)のいずれかの放熱シート。
(21)前記凝集無機フィラー以外の他の無機フィラーを更に含む、(1)~(20)のいずれかの放熱シート。
(22)前記他の無機フィラーがアルミナである、(21)の放熱シート。
(23)前記凝集無機フィラーの体積基準の最大粒子径が2~300μmである、(1)~(22)のいずれかの放熱シート。
(24)前記凝集無機フィラーの体積基準の平均粒子径が1~250μmである、(1)~(23)のいずれかの放熱シート。
(25)熱伝導率が10W/mK以上である、(1)~(24)のいずれかの放熱シート。
(26)耐電圧が20kV/mm以上である、(1)~(25)のいずれかの放熱シート。
(27)凝集無機フィラーと樹脂とを含む放熱シートと、前記放熱シートが接着した金属基板とを含む放熱部材であって、
前記凝集無機フィラーの破壊強度が20MPa以下であり、かつ前記凝集無機フィラーの弾性率が48MPa以上であり、
前記放熱シートに含まれ、前記金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーのうち、下記条件E及び条件Fを満たす凝集無機フィラーの個数割合が、前記金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーの総数に対して60%以上である、放熱部材。
条件E:長径と短径との比(長径/短径)で表されるアスペクト比が1超、2以下である。
条件F:放熱シートの厚さ方向の断面観察において、金属基板と凝集無機フィラーとの接触界面が構成する直線を一辺とし、この凝集無機フィラーの最大径を直径とした仮想円の中心を頂点として形成される三角形のうち、前記直線の両端と前記頂点とを結んでなる角度θが30度以上となる。
(28)前記金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーのうち、前記条件E及び条件Fを満たす凝集無機フィラーの個数割合が、前記金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーの総数に対して65%以上である、(27)の放熱部材。
(29)前記金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーのうち、前記条件E及び条件Fを満たす凝集無機フィラーの個数割合が、前記金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーの総数に対して70%以上である、(28)の放熱部材。
(30)前記金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーのうち、前記条件E及び条件Fを満たす凝集無機フィラーの個数割合が、前記金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーの総数に対して75%以上である、(29)の放熱部材。
(31)前記金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーのうち、前記条件E及び条件Fを満たす凝集無機フィラーの個数割合が、前記金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーの総数に対して80%以上である、(30)の放熱部材。
(32)前記放熱シートが(1)~(26)のいずれかの放熱シートである、(27)~(31)のいずれかの放熱部材。
(33)(1)~(26)のいずれかの放熱シート、又は、(27)~(32)のいずれかの放熱部材を含む、半導体デバイス。
【実施例
【0096】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されない。
【0097】
(実施例1)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂1(重量平均分子量:60000、エポキシ当量:9840g/eq)を2.5質量部と、
芳香族エポキシ樹脂2(重量平均分子量:290、3官能の芳香族エポキシ樹脂、エポキシ当量:97g/eq)を0.7質量部と、
非芳香族エポキシ樹脂3(重量平均分子量:400、2官能の非芳香族エポキシ樹脂、エポキシ当量:205g/eq)を3.1質量部と、
フェノール樹脂1(水酸基当量:143g/eq)を1.6質量部と、
硬化促進剤としてイミダゾール系硬化促進剤1(四国化成工業株式会社製、商品名「C11Z-CN」)を0.14質量部と、
球状アルミナ1(熱伝導率:36W/m・K、アドマテックス社製、体積平均粒子径:7μm)を5.8質量部と、
窒化ホウ素フィラー(凝集無機フィラー)としてカードハウス構造窒化ホウ素凝集粒子1(三菱ケミカル株式会社製、新モース硬度:2、体積平均粒子径:45μm)を14.5質量部と、
有機溶剤としてメチルエチルケトンを8.4質量部、及びシクロヘキサノンを8.4質量部と、を混合して塗布用スラリーを調製した。マトリクス樹脂の100℃での複素粘度は18Pa・sであった。
得られた塗布用スラリーをドクターブレード法でPETフィルムに塗布し、加熱乾燥を行った。得られた塗布乾燥物(塗膜)上に銅製の基板(40mm×45mm)を積層した後、30MPaでプレスし、硬化を実施することで、放熱シート(1)が銅製の基板に接着した放熱部材を得た。放熱シート(1)のシート厚は、約130~160μmであった。放熱シート(1)の断面SEM画像を図5に示す。
【0098】
(実施例2)
ビフェニル型エポキシ樹脂4(重量平均分子量:30000、エポキシ当量:9000g/eq)を2.0質量部と、
芳香族エポキシ樹脂5(重量平均分子量:380、2官能の芳香族エポキシ樹脂、エポキシ当量:189g/eq)を2.0質量部と、
非芳香族エポキシ樹脂6(重量平均分子量:400、4官能の非芳香族エポキシ樹脂、エポキシ当量:100g/eq)を1.9質量部と、
フェノール樹脂1を2.1質量部と、
硬化促進剤としてイミダゾール系硬化促進剤2(四国化成工業株式会社製、商品名「2E4MZ-A」)を0.12質量部と、
球状アルミナ1を5.8質量部と、
カードハウス構造窒化ホウ素凝集粒子1を14.5質量部と、
有機溶剤としてメチルエチルケトンを8.4質量部、及びシクロヘキサノンを8.4質量部と、を混合して塗布用スラリーを調製した。マトリクス樹脂の100℃での複素粘度は8Pa・sであった。
得られた塗布用スラリーをドクターブレード法でPETフィルムに塗布し、加熱乾燥を行った。得られた塗布乾燥物(塗膜)上に銅製の基板(40mm×80mm)を積層した後、30MPaでプレスし、硬化を実施することで、放熱シート(2)が銅製の基板に接着した放熱部材を得た。放熱シート(2)の厚みは約130~160μmであった。得られた放熱シート(2)の断面SEM画像を図6に示す。
【0099】
(実施例3)
実施例2と同様にして塗布用スラリーを調製した。
得られた塗布用スラリーをドクターブレード法でPETフィルムに塗布し、加熱乾燥を行った。得られた塗布乾燥物(塗膜)をPETフィルムから剥がし、2枚の銅製の基板(40mm×80mm)で塗布乾燥物を挟んだ後、30MPaでプレスし、硬化を実施することで、放熱シート(3)が銅製の基板に接着した放熱部材を得た。放熱シート(3)の厚みは約130~160μmであった。得られた放熱シート(3)の断面SEM画像を図7に示す。
【0100】
(比較例1)
ビスフェノールA/F型エポキシ樹脂7(重量平均分子量:60000、エポキシ当量:8800g/eq)を0.17質量部と、
芳香族エポキシ樹脂8(重量平均分子量:2950、多官能の芳香族エポキシ樹脂、エポキシ当量:210g/eq)を0.67質量部と、
芳香族エポキシ樹脂5を0.17質量部と、
分散剤(ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名「BYK-2155」)を0.40質量部と、
硬化促進剤としてイミダゾール系硬化促進剤1を0.06質量部と、
窒化ホウ素フィラー(凝集無機フィラー)としてカードハウス構造窒化ホウ素凝集粒子1を5.5質量部、及びカードハウス構造窒化ホウ素凝集粒子2(三菱ケミカル株式会社製、新モース硬度:2、体積平均粒子径:14μm)を1.8質量部と、
有機溶剤としてメチルエチルケトンを0.4質量部、及びシクロヘキサノンを5.8質量部と、を混合して塗布用スラリーを調製した。マトリクス樹脂の100℃での複素粘度は50Pa・sであった。
得られた塗布用スラリーをドクターブレード法で0.1mmの銅箔に塗布し、加熱乾燥を行った。得られた塗布乾燥物(塗膜)を30MPaでプレスし、硬化を実施することで、放熱シート(4)が銅箔に接着した放熱部材を得た。放熱シート(4)のシート厚は、約200μmであった。放熱シート(4)の断面SEM画像を図8に示す。
【0101】
(比較例2)
ビスフェノールF型エポキシ樹脂1を0.50質量部と、
芳香族エポキシ樹脂2を0.14質量部と、
非芳香族エポキシ樹脂3を0.29質量部と、
非芳香族エポキシ樹脂9(重量平均分子量:400、3官能の非芳香族エポキシ樹脂、エポキシ当量:205g/eq)を0.29質量部と、
フェノール樹脂1を0.36質量部と、
硬化促進剤としてイミダゾール系硬化促進剤1を0.02質量部と、
球状アルミナ1を20.9質量部と、
有機溶剤としてメチルエチルケトンを2.4質量部と、を混合して塗布用スラリーを調製した。マトリクス樹脂の100℃での複素粘度は20Pa・sであった。
得られた塗布用スラリーをドクターブレード法でPETフィルムに塗布し、加熱乾燥を行った。得られた塗布乾燥物(塗膜)をPETフィルムから剥がし、2枚の銅製の基板(40mm×80mm)で塗布乾燥物を挟んだ後、30MPaでプレスし、硬化を実施することで、放熱シート(5)が銅製の基板に接着した放熱部材を得た。放熱シート(5)のシート厚は、約130~160μmであった。得られた放熱シート(5)の断面SEM画像を図9に示す。
【0102】
以下に、実施例1~3及び比較例1、2で得られた放熱シート及び放熱部材の測定条件を記載する。
【0103】
(凝集無機フィラーの破壊強度及び弾性率の測定)
凝集無機フィラーの破壊強度及び弾性率の測定は、以下の手法により実施した。
凝集無機フィラーの破壊強度は、微小圧縮試験機(株式会社島津製作所製、製品名「MCT-510」)を用いて測定した。
微小圧縮試験機の下部に設置された加圧板の上に試料を極微量散布し、1粒子ずつ圧縮試験を行い、粒子が破壊した時の破壊試験力と粒子の粒子径から下記の式を用いて破壊強度を求めた。5粒子について測定を行い、その平均値を凝集無機フィラーの破壊強度とした。
Cs=2.48P/πd
(「Cs」は破壊強度(MPa)であり、「P」は破壊試験力(N)であり、「d」は粒子径(mm)である。)
【0104】
通常、破壊強度の算出は、破壊点の試験力を使用して計算するが、破壊点が明確でない(例えば、試料は変形するが急激な破壊を起こさない)場合、参考強度として10%の変形を与えた時の試験力を使用して10%強度として比較に用いることとした。10%強度は下記の式より算出した。
Cx=2.48P/πd
(「Cx」は10%強度(MPa)であり、「P」は粒子径の10%変位時の試験力(N)であり、「d」は粒子径(mm)である。)
【0105】
凝集無機フィラーの弾性率は、破壊強度の測定に用いた装置を用い、破壊が起きた時点の試験力とその時点の圧縮変位から下記の式より算出した。
E=3×(1-ν)×P/4×(d/2)1/2×Y3/2(「E」は弾性率(MPa)であり、「ν」はポアソン比であり、「P」は破壊試験力(N)であり、「d」は粒子径(mm)であり、「Y」は圧縮変位(mm)である、なお、ポアソン比は一定(0.13)と仮定した。)
【0106】
(樹脂の複素粘度の測定)
樹脂の複素粘度測定は以下の条件・装置により実施した。
複素粘度は、粘弾性測定装置MCR302(アントンパール社製)を用いて測定した。
具体的には、樹脂:0.1g程度を用いて、直径:10mmのパラレルプレートを使用して、測定歪み:0.3%、測定周波数:1Hz、測定ギャップ(冶具間距離):0.5mm、測定温度:100℃での複素粘度を測定した。
【0107】
(条件A~Fについて)
放熱シートについて、下記A-1を満たしているか否かを確認し、満たしている場合を「I」とし、満たしていない場合を「II」とした。なお、下記A-1を満たしていない場合は、放熱シートに含まれる凝集無機フィラーの半数以上が、前記条件Aを満たしていないことを意味する。
A-1:放熱シートに含まれる凝集無機フィラーの半数以上において、凝集無機フィラー同士が面接触している。
【0108】
放熱シートについて、下記B-1、B-2、B-3、B-4をそれぞれ満たしているか否かを確認し、満たしている場合を「I」とし、満たしていない場合を「II」とした。
なお、下記B-1を満たしていない場合は、放熱シートに含まれる凝集無機フィラーの半数以上が、前記条件Bを満たしていないことを意味する。
B-1:放熱シートに含まれる凝集無機フィラーの半数以上において、前記アスペクト比が1超、2以下である。
B-2:放熱シートに含まれる凝集無機フィラーの半数以上において、前記アスペクト比が1超、1.75以下である。
B-3:放熱シートに含まれる凝集無機フィラーの半数以上において、前記アスペクト比が1超、1.5以下である。
B-4:放熱シートに含まれる凝集無機フィラーの半数以上において、前記アスペクト比が1超、1.4以下である。
【0109】
放熱シートについて、厚さ方向の断面観察において、放熱シートに含まれる前記A-1及びB-1を満たす凝集無機フィラーが、下記C-1、C-2、C-3、C-4、C-5、C-6をそれぞれ満たしているか否かを確認し、満たしている場合を「I」とし、満たしていない場合を「II」とした。なお、下記C-1を満たしていない場合は、放熱シートに含まれる前記A-1及びB-1を満たす凝集無機フィラーが、前記条件Cを満たしていないことを意味する。
C-1:放熱シートに含まれる前記A-1及びB-1を満たす凝集無機フィラーにおいて、前記S/Sが20%以上である。
C-2:放熱シートに含まれる前記A-1及びB-1を満たす凝集無機フィラーにおいて、前記S/Sが20~99%である。
C-3:放熱シートに含まれる前記A-1及びB-1を満たす凝集無機フィラーにおいて、前記S/Sが20~95%である。
C-4:放熱シートに含まれる前記A-1及びB-1を満たす凝集無機フィラーにおいて、前記S/Sが23~95%である。
C-5:放熱シートに含まれる前記A-1及びB-1を満たす凝集無機フィラーにおいて、前記S/Sが23~80%である。
C-6:放熱シートに含まれる前記A-1及びB-1を満たす凝集無機フィラーにおいて、前記S/Sが25~80%である。
【0110】
放熱シートについて、厚さ方向の断面観察において、放熱シートに含まれる前記A-1及びB-1を満たす凝集無機フィラーが、下記D-1、D-2、D-3、D-4、D-5、D-6をそれぞれ満たしているか否かを確認し、満たしている場合を「I」とし、満たしていない場合を「II」とした。なお、下記D-1を満たしていない場合は、放熱シートに含まれる前記A-1及びB-1を満たす凝集無機フィラーが、前記条件Dを満たしていないことを意味する。
D-1:放熱シートに含まれる前記A-1及びB-1を満たす凝集無機フィラーにおいて、前記S/Sが90%以下である。
D-2:放熱シートに含まれる前記A-1及びB-1を満たす凝集無機フィラーにおいて、前記S/Sが40~90%である。
D-3:放熱シートに含まれる前記A-1及びB-1を満たす凝集無機フィラーにおいて、前記S/Sが50~90%である。
D-4:放熱シートに含まれる前記A-1及びB-1を満たす凝集無機フィラーにおいて、前記S/Sが50~87%である。
D-5:放熱シートに含まれる前記A-1及びB-1を満たす凝集無機フィラーにおいて、前記S/Sが55~87%である。
D-6:放熱シートに含まれる前記A-1及びB-1を満たす凝集無機フィラーにおいて、前記S/Sが55~85%である。
【0111】
放熱部材について、下記E-1、E-2、E-3、E-4、E-5をそれぞれ満たしているか否かを確認し、満たしている場合を「I」とし、満たしていない場合を「II」とした。なお、下記E-1を満たしていない場合は、放熱シートに含まれ、金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーのうちの40%超が、前記条件Eを満たしていないことを意味する。
E-1:金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーのうち、前記アスペクト比が1超、2以下である凝集無機フィラーの個数割合が、金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーの総数に対して60%以上である。
E-2:金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーのうち、前記アスペクト比が1超、2以下である凝集無機フィラーの個数割合が、金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーの総数に対して65%以上である。
E-3:金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーのうち、前記アスペクト比が1超、2以下である凝集無機フィラーの個数割合が、金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーの総数に対して70%以上である。
E-4:金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーのうち、前記アスペクト比が1超、2以下である凝集無機フィラーの個数割合が、金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーの総数に対して75%以上である。
E-5:金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーのうち、前記アスペクト比が1超、2以下である凝集無機フィラーの個数割合が、金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーの総数に対して80%以上である。
【0112】
放熱部材について、下記F-1、F-2、F-3、F-4、F-5をそれぞれ満たしているか否かを確認し、満たしている場合を「I」とし、満たしていない場合を「II」とした。なお、下記F-1を満たしていない場合は、放熱シートに含まれ、金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーのうちの40%超が、前記条件Fを満たしていないことを意味する。
F-1:金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーのうち、前記E-1を満たし、前記角度θが30度以上となる凝集無機フィラーの個数割合が、金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーの総数に対して60%以上である。
F-2:金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーのうち、前記E-1を満たし、前記角度θが30度以上となる凝集無機フィラーの個数割合が、金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーの総数に対して65%以上である。
F-3:金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーのうち、前記E-1を満たし、前記角度θが30度以上となる凝集無機フィラーの個数割合が、金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーの総数に対して70%以上である。
F-4:金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーのうち、前記E-1を満たし、前記角度θが30度以上となる凝集無機フィラーの個数割合が、金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーの総数に対して75%以上である。
F-5:金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーのうち、前記E-1を満たし、前記角度θが30度以上となる凝集無機フィラーの個数割合が、金属基板との界面に存在する凝集無機フィラーの総数に対して80%以上である。
【0113】
(放熱シートの厚さ方向の熱伝導率の測定)
熱抵抗測定装置(株式会社メンターグラフィックス製、製品名「T3ster」)を用いて、同一組成・同一条件で作製した厚さの異なる放熱シートの熱抵抗値を測定し、熱抵抗値を厚さに対してプロットしたグラフの傾きから、熱伝導率を求めた。
【0114】
(放熱シートの耐電圧測定)
絶縁油中にて、1分ごとに500Vずつ昇圧していき、サンプルが破壊される電圧を求めた。
【0115】
得られた放熱シート(1)~(5)について、放熱シート中の凝集無機フィラーの破壊強度及び弾性率を測定し、樹脂の複素粘度を測定した。さらに、放熱シート又は放熱部材が条件A~Fを満たしているか否かを確認した。なお、放熱シート(1)、(2)は条件E及び条件Fを満たしているか否かは確認していない。放熱シート(5)は凝集無機フィラーを含まないため、条件A~Fを満たしているか否かは確認していない。また、放熱シート(1)~(5)について、放熱シートの厚さ方向の熱伝導率の測定、並びに放熱シートの耐電圧測定を行った。これらの結果を表1に示す。
【0116】
【表1】
【符号の説明】
【0117】
1 凝集無機フィラー
2 マトリクス樹脂
3 接触界面
4 接触界面
10 放熱シート
20 金属基板
100 放熱部材
C 仮想円の中心
G 仮想円の中心
d 直径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9