IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社SUMCOの特許一覧

<>
  • 特許-石英ルツボの透過率測定方法及び装置 図1
  • 特許-石英ルツボの透過率測定方法及び装置 図2
  • 特許-石英ルツボの透過率測定方法及び装置 図3
  • 特許-石英ルツボの透過率測定方法及び装置 図4
  • 特許-石英ルツボの透過率測定方法及び装置 図5
  • 特許-石英ルツボの透過率測定方法及び装置 図6
  • 特許-石英ルツボの透過率測定方法及び装置 図7
  • 特許-石英ルツボの透過率測定方法及び装置 図8
  • 特許-石英ルツボの透過率測定方法及び装置 図9
  • 特許-石英ルツボの透過率測定方法及び装置 図10
  • 特許-石英ルツボの透過率測定方法及び装置 図11
  • 特許-石英ルツボの透過率測定方法及び装置 図12
  • 特許-石英ルツボの透過率測定方法及び装置 図13
  • 特許-石英ルツボの透過率測定方法及び装置 図14
  • 特許-石英ルツボの透過率測定方法及び装置 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】石英ルツボの透過率測定方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/59 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
G01N21/59 Z
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020519897
(86)(22)【出願日】2019-05-15
(86)【国際出願番号】 JP2019019357
(87)【国際公開番号】W WO2019221191
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2018095299
(32)【優先日】2018-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】清水 泰順
(72)【発明者】
【氏名】高梨 啓一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 剛司
(72)【発明者】
【氏名】北原 江梨子
(72)【発明者】
【氏名】福井 正徳
【審査官】赤木 貴則
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-146533(JP,A)
【文献】特開平09-210848(JP,A)
【文献】国際公開第2013/094318(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/158656(WO,A1)
【文献】特開2017-202974(JP,A)
【文献】特開2009-300165(JP,A)
【文献】特開2009-085795(JP,A)
【文献】国際公開第2015/099001(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/158655(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/01
G01N 21/17-G01N 21/61
C30B 15/10
C30B 29/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ルツボの一方の壁面側に配置した光源から前記石英ルツボの前記一方の壁面上の所定の測定点に向けて平行光を照射し、
前記平行光の光軸と前記石英ルツボの他方の壁面との交点であって前記他方の壁面上の前記平行光の出射点を中心とする同心円上の複数の位置にカメラを配置して前記石英ルツボの透過光の受光レベルを前記複数の位置で測定し、
前記複数の位置で測定した前記透過光の複数の受光レベルから前記透過光の全エネルギーを求め、前記一方の壁面側に入射した前記平行光の全エネルギーに対する前記透過光の全エネルギーの比に基づいて前記所定の測定点における前記石英ルツボの透過率を求めることを特徴とする石英ルツボの透過率測定方法。
【請求項2】
前記同心円に沿って単一のカメラを旋回させることにより前記カメラを前記複数の位置に配置する、請求項1に記載の透過率測定方法。
【請求項3】
前記平行光の光軸に対する前記カメラの最大旋回角度が45°以上である、請求項2に記載の透過率測定方法。
【請求項4】
前記複数の位置に予め配置した複数のカメラを用いて前記石英ルツボの透過率を求める、請求項1に記載の透過率測定方法。
【請求項5】
前記石英ルツボの外側に前記光源を配置し、
前記石英ルツボの内側に前記カメラを配置し、
前記光源から前記石英ルツボに照射した平行光を前記カメラで受光することにより、前記石英ルツボの透過率を非破壊で測定する、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の透過率測定方法。
【請求項6】
前記光源及び前記カメラの位置を前記石英ルツボの前記壁面に沿って高さ方向に移動させることにより、前記石英ルツボの高さ方向の位置が異なる複数の測定点において前記透過率を測定する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の透過率測定方法。
【請求項7】
前記光源及び前記カメラと前記石英ルツボの相対的な位置を前記石英ルツボの壁面に沿って周方向に移動させることにより、前記石英ルツボの周方向の位置が異なる複数の測定点において前記透過率を測定する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の透過率測定方法。
【請求項8】
前記平行光は、レーザー光源から出力されたレーザービームのビーム径を拡大したものである、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の石英ルツボの透過率測定方法。
【請求項9】
前記拡大されたレーザービームのビーム径が5mm以上である、請求項8に記載の石英ルツボの透過率測定方法。
【請求項10】
前記平行光は、レーザー光源から出力されたレーザービームをレーザーライン光に変換したものである、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の石英ルツボの透過率測定方法。
【請求項11】
前記レーザーライン光のスポット長さが10mm以上である、請求項10に記載の石英ルツボの透過率測定方法。
【請求項12】
石英ルツボの一方の壁面側に配置され、前記石英ルツボの前記一方の壁面上の所定の測定点に向けて平行光を照射する光源と、
前記石英ルツボの他方の壁面側に配置され、前記石英ルツボの透過光を受光する少なくとも一つのカメラと、
前記カメラによって測定された前記透過光の受光レベルに基づいて前記石英ルツボの透過率を算出する透過率演算部とを備え、
前記カメラは、前記平行光の光軸と前記他方の壁面との交点である前記他方の壁面上の前記平行光の出射点を中心とする同心円上の複数の位置で前記石英ルツボの透過光の受光レベルを測定し、
前記透過率演算部は、前記複数の位置で測定した前記透過光の複数の受光レベルから前記透過光の全エネルギーを求め、前記一方の壁面側に入射した前記平行光の全エネルギーに対する前記透過光の全エネルギーの比に基づいて前記所定の測定点における前記石英ルツボの透過率を求めることを特徴とする石英ルツボの透過率測定装置。
【請求項13】
前記同心円に沿って単一のカメラを旋回させる旋回機構をさらに備える、請求項12に記載の透過率測定装置。
【請求項14】
前記平行光の光軸に対する前記カメラの最大旋回角度が45°以上である、請求項13に記載の透過率測定装置。
【請求項15】
前記複数の位置にそれぞれ配置された複数のカメラをさらに備える、請求項12に記載の透過率測定装置。
【請求項16】
前記光源は前記石英ルツボの外側に配置されており、
前記カメラは前記石英ルツボの内側に配置されており、
前記光源から前記石英ルツボに照射した平行光を前記カメラで受光することにより、前記石英ルツボの透過率を非破壊で測定する、請求項12乃至15のいずれか一項に記載の透過率測定装置。
【請求項17】
前記光源の位置を前記石英ルツボの前記一方の壁面に沿って高さ方向に移動させる投光位置変更手段と、
前記カメラの位置を前記石英ルツボの前記他方の壁面に沿って高さ方向に移動させる受光位置変更手段とをさらに備える、請求項12乃至16のいずれか一項に記載の透過率測定装置。
【請求項18】
前記石英ルツボを回転させるルツボ回転機構をさらに備える、請求項12乃至17のいずれか一項に記載の透過率測定装置。
【請求項19】
前記光源は、レーザービームを出力するレーザー光源と、
前記レーザー光源から出力された前記レーザービームのビーム径を拡大するビームエキスパンダを含む、請求項12乃至18のいずれか一項に記載の透過率測定装置。
【請求項20】
前記拡大されたレーザービームのビーム径が5mm以上である、請求項19に記載の透過率測定装置。
【請求項21】
前記光源は、レーザービームを出力するレーザー光源と、
前記レーザー光源から出力された前記レーザービームをレーザーライン光に変換するラインジェネレータを含む、請求項12乃至18のいずれか一項に記載の透過率測定装置。
【請求項22】
前記レーザーライン光のスポット長さが10mm以上である、請求項21に記載の透過率測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン単結晶引き上げ用石英ルツボの透過率を測定する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チョクラルスキー法(以下、CZ法という)によるシリコン単結晶の製造では石英ルツボ(シリカガラスルツボ)が用いられている。CZ法では、石英ルツボ内にシリコン原料を充填し、石英ルツボの外側に配置したヒーターからの輻射熱でシリコン原料を加熱して溶融し、このシリコン融液に種結晶を浸漬し、ルツボを回転させながら種結晶を徐々に引き上げることにより、種結晶の下端に大きな単結晶を成長させる。半導体デバイス用の高品質なシリコン単結晶を低コストで製造するためには、一回の引き上げ工程で単結晶化率を高める必要があり、そのためには長時間にわたってシリコン融液を安定的に保持することができるルツボが必要となる。
【0003】
石英ルツボに関し、特許文献1には、単結晶化率が高く、酸素溶け込み量が多いシリコン単結晶を引き上げるため、ルツボの側壁部、湾曲部及び底部を含む任意の部位の赤外線透過率が30~80%であり、湾曲部の平均赤外線透過率が側壁部及び底部の平均赤外線透過率よりも大きい石英ルツボが記載されている。
【0004】
また特許文献2には、石英ルツボ全体の歪み分布を非破壊で測定する歪み測定装置が記載されている。この歪み測定装置は、石英ルツボの外側から投光する光源と、石英ルツボの内側に配置されたカメラと、光源と石英ルツボの壁体との間に配置された第1の偏光板及び第1の1/4波長板と、カメラとルツボ内表面との間に配置された第2の偏光板及び第2の1/4波長板と、カメラの撮影方向を制御するカメラ制御機構とを備えており、光源から投光され、第1の偏光板、第1の1/4波長板、ルツボ壁体、第2の1/4波長板、第2の偏光板を順に通過した光をカメラで撮影することにより、石英ルツボの残留歪み分布を測定する。
【0005】
また石英ルツボの測定方法ではないが、特許文献3には、工業炉や焼却炉の断熱材の電磁波の高温下での反射特性の評価に好適な電磁波の反射率又は透過率の測定方法が記載されている。この測定方法は、高温の試料に電磁波を照射し、試料を中心にして同心円状に電磁波検出手段を移動させながら、試料で反射した電磁波又は試料を透過した電磁波を検出する。この測定方法によれば、標準試料を用いることなく、高温の物体自体の電磁波の真の反射率及び透過率を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-157082号公報
【文献】特開2017-202974号公報
【文献】特開2009-85795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シリコン単結晶の引き上げ工程中、石英ルツボの内面はシリコン融液と接触して徐々に溶損するため、CZ法により製造されるシリコン単結晶にはルツボから供給される酸素が含まれている。シリコン単結晶中の酸素は汚染金属のゲッタリングサイトとなるだけでなく、転位を不動化して機械的強度を増加させる役割を果たすが、酸素濃度が高すぎるとデバイス特性に悪影響を与えるだけでなく、機械的強度を逆に低下させる原因にもなる。近年は製造技術の向上によりゲッタリング効果よりもデバイス特性の向上が重視されており、格子間酸素濃度が低いシリコン単結晶が求められている。
【0008】
低酸素のシリコン単結晶を製造するためにはルツボの加熱温度を抑える必要があり、そのためにはルツボの透過率を調整する必要があるが、加熱温度が低すぎるとシリコン融液の温度が低くなることで結晶引き上げ制御が難しくなり、単結晶化率が悪化するという問題がある。そのため、石英ルツボの透過率をルツボの部位ごとに精密に制御する必要が生じている。ここで透過率とは、石英ルツボの壁面の外側から入射したある波長の光エネルギーが内側へ透過した割合のことである。
【0009】
図15に示すように、従来の透過率測定方法は、赤外ランプ61から一定距離離れた正面位置にパワーメーター62(検出器)を対向配置し、さらに赤外ランプ61とパワーメーター62との間に石英ルツボから切り出したルツボ片60(石英ガラス片)をパワーメーター62に密着させて配置し、赤外ランプ61からの赤外線をパワーメーター62で受光することにより、ルツボ壁を透過した赤外線の強度(受光レベル)を測定する。
【0010】
しかしながら、石英ガラスからなるルツボ壁は多数の微小な気泡を内包する気泡層(不透明層)を有し、入射光はルツボ壁の内部で散乱して広がるため、従来の透過率測定方法では透過光が検出器の受光範囲の外側に漏れてしまい、透過率を正確に測定できないという問題がある。また、従来の石英ルツボの透過率測定方法はルツボ製品から切り出した数十mm角のルツボ片を用いる破壊検査であり、同じ製造条件で製造されたルツボを同じ透過率と見做しているだけであり、製品状態の石英ルツボの真の透過率を非破壊で測定することはできない。
【0011】
特許文献3には試料の透過率/反射率の角度依存性を測定する方法が記載されているに過ぎず、試料内で散乱する透過光から透過率を正確に測定する方法を開示するものではない。特許文献3に記載された従来の透過率測定方法は、透過光が内部で散乱するような試料を測定対象としておらず、試料の全透過光を検出することは比較的容易である。さらに、特許文献3は破壊検査であり、幾何学的な配置の制限から、石英ルツボのような大型の測定対象物を測定することは非常に困難である。
【0012】
したがって、本発明の目的は、石英ルツボの透過率を正確に測定することが可能な透過率測定方法及び測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明による石英ルツボの透過率測定方法は、石英ルツボの一方の壁面側に配置した光源から前記石英ルツボの所定の測定点に向けて平行光を照射し、前記石英ルツボの他方の壁面側であって前記他方の壁面上の前記平行光の出射点を中心とする同心円上の複数の位置に検出器を配置して前記石英ルツボの透過光の受光レベルを前記複数の位置で測定し、前記複数の位置で測定した前記透過光の複数の受光レベルに基づいて前記所定の測定点における前記石英ルツボの透過率を求めることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、ルツボ壁の内部で散乱して広がりを持った透過光を広い範囲で測定することができ、これにより石英ルツボの透過率を非接触にて正確に測定することができる。
【0015】
本発明による透過率測定方法は、前記同心円に沿って単一の検出器を旋回させることにより前記検出器を前記複数の位置に配置することが好ましい。この場合において、前記平行光の光軸に対する前記検出器の最大旋回角度は45°以上であることが好ましい。これにより、単一の受光手段を用いて石英ルツボの透過率を正確に測定することができる。また、複数の受光手段を用いる場合に生じる受光手段間の出力レベルのばらつきの影響による透過率の測定誤差を防止することができる。
【0016】
本発明による透過率測定方法は、前記複数の位置に予め配置した複数の検出器を用いて前記石英ルツボの透過率を求めることもまた好ましい。これによれば、複数の位置で透過率を同時に測定してスループットを向上させることができる。
【0017】
本発明による透過率測定方法は、前記石英ルツボの外側に前記光源を配置し、前記石英ルツボの内側に前記検出器を配置し、前記光源から前記石英ルツボに照射した平行光を前記検出器で受光することにより、前記石英ルツボの透過率を非破壊で測定することが好ましい。これによれば、石英ルツボ自身の透過率を正確に測定することができる。
【0018】
本発明による透過率測定方法は、前記光源及び前記検出器の位置を前記石英ルツボの前記壁面に沿って高さ方向に移動させることにより、前記石英ルツボの高さ方向の位置が異なる複数の測定点において前記透過率を測定することが好ましい。これにより、石英ルツボの側壁部、コーナー部及び底部において透過率を測定することが可能となる。
【0019】
本発明による透過率測定方法は、前記光源及び前記検出器と前記石英ルツボの相対的な位置を前記石英ルツボの壁面に沿って周方向に移動させることにより、前記石英ルツボの周方向の位置が異なる複数の測定点において前記透過率を測定することが好ましい。これによれば、石英ルツボの周方向の任意の位置に投光手段及び受光手段を配置して透過率を測定することが可能となる。
【0020】
本発明による透過率測定方法は、前記石英ルツボの高さ方向の位置が同じで周方向の位置が異なる複数の測定点でそれぞれ測定した複数の透過率の平均値を求めることが好ましい。これによれば、石英ルツボの高さ方向の任意の位置における透過率の測定精度を高めることができる。
【0021】
本発明による透過率測定方法は、前記同心円上であって前記光源の正面に検出器を配置して前記光源からの平行光を直接受光することにより受光レベルのブランク値を予め求め、前記ブランク値に対する前記透過光の受光レベルの比から前記透過率を求めることが好ましい。これによれば、石英ルツボの透過率を求めることができる。
【0022】
本発明において、前記平行光は、レーザー光源から出力されたレーザービームのビーム径を拡大したものであることが好ましい。この場合において前記拡大されたレーザービームのビーム径は5mm以上であることが好ましい。本発明によれば、石英ルツボの気泡分布の局所的なばらつきの影響が平均化された透過光を検出することができる。したがって、石英ルツボの任意の測定点における透過率を安定的に測定することができ、石英ルツボの測定時間を短縮することができる。
【0023】
本発明において、前記平行光は、レーザー光源から出力されたレーザービームをレーザーライン光に変換したものであることもまた好ましい。この場合において前記レーザーライン光のスポット長さは10mm以上であることが好ましい。本発明によれば、石英ルツボの気泡分布の局所的なばらつきの影響が平均化された透過光を検出することができる。したがって、石英ルツボの任意の測定点における透過率を安定的に測定することができ、石英ルツボの測定時間を短縮することができる。
【0024】
また、本発明による石英ルツボの透過率測定装置は、石英ルツボの一方の壁面側に配置され、前記石英ルツボの所定の測定点に向けて平行光を照射する光源と、前記石英ルツボの他方の壁面側に配置され、前記石英ルツボの透過光を受光する少なくとも一つの検出器と、前記検出器によって測定された前記透過光の受光レベルに基づいて前記石英ルツボの透過率を算出する透過率演算部とを備え、前記検出器は、前記他方の壁面上の前記平行光の出射点を中心とする同心円上の複数の位置で前記石英ルツボの透過光の受光レベルを測定し、前記透過率演算部は、前記複数の位置で測定した前記透過光の複数の受光レベルに基づいて前記所定の測定点における前記石英ルツボの透過率を求めることを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、ルツボ壁の内部で散乱して広がりを持った透過光を広い範囲で測定することができ、これにより石英ルツボの透過率を非接触にて正確に測定することができる。
【0026】
本発明による透過率測定装置は、前記同心円に沿って単一の検出器を旋回させる旋回機構をさらに備えることが好ましい。この場合において、前記平行光の光軸に対する前記検出器の最大旋回角度が45°以上であることが好ましい。これにより、単一の受光手段を用いて石英ルツボの透過率を正確に測定することができる。
【0027】
本発明において、前記複数の位置にそれぞれ配置された複数の検出器をさらに備えることが好ましい。これによれば、旋回角度が異なる複数の位置で透過率の測定を同時に行うことができ、スループットを向上させることができる。
【0028】
本発明において、前記光源は前記石英ルツボの外側に配置されており、前記検出器は前記石英ルツボの内側に配置されており、前記光源から前記石英ルツボに照射した平行光を前記検出器で受光することにより、前記石英ルツボの透過率を非破壊で測定することが好ましい。これによれば、石英ルツボ自身の透過率を正確に測定することができる。
【0029】
本発明による透過率測定装置は、前記光源の位置を前記石英ルツボの前記一方の壁面に沿って高さ方向に移動させる投光位置変更手段と、前記検出器の位置を前記石英ルツボの前記他方の壁面に沿って高さ方向に移動させる受光位置変更手段とをさらに備えることが好ましい。これにより、石英ルツボの側壁部、コーナー部及び底部において透過率を測定することが可能となる。
【0030】
前記石英ルツボを回転させるルツボ回転機構をさらに備えることが好ましい。これによれば、石英ルツボの周方向の任意の位置に投光手段及び受光手段を配置して透過率を測定することが可能となる。
【0031】
前記透過率演算部は、前記石英ルツボの高さ方向の位置が同じで周方向の位置が異なる複数の測定点でそれぞれ測定した複数の透過率の平均値を求めることが好ましい。これによれば、石英ルツボの高さ方向の任意の位置における透過率の測定精度を高めることができる。
【0032】
前記透過率演算部は、前記同心円上であって前記光源の正面に検出器を配置して前記光源からの平行光を直接受光することにより予め求めた受光レベルのブランク値に対する前記透過光の受光レベルの比から前記透過率を求めることが好ましい。これによれば、石英ルツボの透過率を求めることができる。
【0033】
本発明において、前記光源は、レーザービームを出力するレーザー光源と、前記レーザー光源から出力された前記レーザービームのビーム径を拡大するビームエキスパンダを含むことが好ましい。この場合において前記拡大されたレーザービームのビーム径は5mm以上であることが好ましい。この構成によれば、石英ルツボの気泡分布の局所的なばらつきの影響が平均化された透過光を検出することができる。したがって、石英ルツボの任意の測定点における透過率を安定的に測定することができ、石英ルツボの測定時間を短縮することができる。
【0034】
本発明において、前記光源は、レーザービームを出力するレーザー光源と、前記レーザー光源から出力された前記レーザービームをレーザーライン光に変換するラインジェネレータを含むこともまた好ましい。この場合において前記レーザーライン光のスポット長さは10mm以上であることが好ましい。この構成によれば、石英ルツボの気泡分布の局所的なばらつきの影響が平均化された透過光を検出することができる。したがって、石英ルツボの任意の測定点における透過率を安定的に測定することができ、石英ルツボの測定時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、石英ルツボの透過率を正確に測定することが可能な透過率測定方法及び測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、本発明による透過率測定の対象となる石英ルツボの構造を示す略断面図である。
図2図2は、本発明による石英ルツボの透過率測定方法の原理を説明するための模式図である。
図3図3(a)及び(b)は、本発明による石英ルツボの透過率測定方法の原理を説明するための図であって、特に(a)は石英ルツボを透過したレーザー光の撮影画像であり、(b)は透過光の強度の空間分布を示す模式図である。
図4図4は、本発明の好ましい実施の形態による石英ルツボの透過率測定装置の構成を示す略側面断面図である。
図5図5は、本発明の好ましい実施の形態による石英ルツボの透過率測定装置の構成を示す略平面図である。
図6図6は、ルツボ壁面に沿ったレーザー装置及びカメラの昇降動作を説明するための略側面断面図である。
図7図7は、ルツボ壁面に沿ったレーザー装置及びカメラの昇降動作を説明するための略側面断面図である。
図8図8は、ルツボ壁面に沿ったレーザー装置及びカメラの昇降動作を説明するための略側面断面図である。
図9図9は、カメラの旋回動作及び石英ルツボの回転動作を説明するための略側面断面図である。
図10図10は、本実施形態による透過率測定装置を用いた石英ルツボの透過率測定方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図11図11は、本実施形態による透過率測定装置を用いた石英ルツボの透過率測定方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図12図12は、本発明の他の好ましい実施の形態による石英ルツボの透過率測定装置の構成を示す模式図である。
図13図13(a)~(c)は、投光装置20の実施の形態を示す模式図である。
図14図14(a)及び(b)は、石英ルツボの透過光の輝度プロファイルを示すグラフであって、特に(a)は不透明層が薄い場合、(b)は不透明層が厚い場合をそれぞれ示している。
図15図15は、従来の透過率測定方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0038】
図1は、本発明による透過率測定の対象となる石英ルツボの構造を示す略断面図である。
【0039】
図1に示すように、石英ルツボ1はシリコン融液を支持する有底円筒状の容器であって、円筒状の側壁部1aと、緩やかに湾曲した底部1bと、底部1bよりも大きな曲率を有し側壁部1aと底部1bとを連接するコーナー部1cとを有している。
【0040】
石英ルツボ1の口径は24インチ(約600mm)以上であることが好ましく、32インチ(約800mm)以上であることが特に好ましい。このような大口径のルツボは直径300mm以上の大型のシリコン単結晶インゴットの引き上げに用いられ、長時間使用しても単結晶の品質に影響を与えないことが求められるからである。ルツボの肉厚はその部位によって多少異なるが、32インチ以上の大型のルツボの側壁部1aの肉厚は10mm以上であることが一般的である。
【0041】
石英ルツボ1は、実質的に気泡を含まない石英ガラスからなる透明層2(無気泡層)と、多数の微小な気泡を含む石英ガラスからなり、透明層2よりもルツボの外側に設けられた不透明層3(気泡層)とを備えている。
【0042】
透明層2は、シリコン融液と接触するルツボの内面1iを構成する層であって、石英ガラス中の気泡が原因で単結晶化率が低下することを防止するために設けられている。透明層2の厚さは0.5~10mmであることが好ましく、単結晶の引き上げ工程中の溶損によって完全に消失して不透明層3が露出しないようにルツボの部位ごとに適切な厚さに設定される。透明層2はルツボの側壁部1aから底部1bまでのルツボ全体に設けられていることが好ましいが、シリコン融液と接触しないルツボの上端部(リム部)において透明層2の形成を省略することも可能である。
【0043】
透明層2が「実質的に気泡を含まない」とは、気泡が原因で単結晶化率が低下しない程度の気泡含有率及び気泡サイズを有することを意味する。ルツボの内面近傍に僅かにでも気泡が存在すると、ルツボの内面の溶損によってルツボ内面近傍の気泡を石英ガラス中に閉じ込めておくことができなくなり、結晶引き上げの際に石英ガラス中の気泡が熱膨張によって破裂することによってルツボ破片(石英片)が剥離するおそれがあるからである。融液中に放出されたルツボ破片が融液対流に乗って単結晶の成長界面まで運ばれて単結晶中に取り込まれた場合には、単結晶の有転位化の原因となる。またルツボ内面の溶損によって融液中に放出された気泡が固液界面まで浮上して単結晶中に取り込まれた場合にはピンホールの原因となる。透明層2の気泡含有率は0.1vol%以下であることが好ましく、気泡の平均直径は100μm以下であることが好ましい。
【0044】
透明層2の気泡含有率は、光学的検出手段を用いて非破壊で測定することができる。光学的検出手段は、ルツボに照射した光の透過光又は反射光を受光する受光装置を備える。照射光の発光手段は受光装置に内蔵されたものでもよく、外部の発光手段を利用してもよい。また光学的検出手段はルツボの内面に沿って回動操作できるものが好ましく用いられる。照射光としては、可視光、紫外線及び赤外線のほか、X線もしくはレーザー光などを利用することができる。受光装置は、光学レンズ及び撮像素子を含むデジタルカメラを用いることができる。光学的検出手段による測定結果は画像処理装置に取り込まれ、単位面積当たりの気泡含有率が算出される。
【0045】
単位体積当たりの気泡含有率は、単位面積当たりの気泡含有率を深さ方向に積算することにより求めることができる。表面から一定深さに存在する気泡を検出するには、光学レンズの焦点を表面から深さ方向に走査すればよい。単位面積当たりの気泡含有率は、デジタルカメラを用いて撮影したルツボ内面の画像を一定面積ごとに区分して基準面積とし、この基準面積に対する気泡の占有面積の比として求めることができる。
【0046】
不透明層3は、ルツボの外面1oを構成する層であり、ルツボ内のシリコン融液の保温性を高めると共に、単結晶引き上げ装置内においてルツボを取り囲むように設けられたヒーターからの輻射熱を分散させてルツボ内のシリコン融液をできるだけ均一に加熱するために設けられている。そのため、不透明層3はルツボの側壁部1aから底部1bまでのルツボ全体に設けられている。不透明層3の厚さは、ルツボ壁の厚さから透明層2の厚さを差し引いた値とほぼ等しく、ルツボの部位によって異なる。シリコン融液の温度はヒーターからの輻射熱を不透明層3がどの程度透過させるかによって決まるため、ルツボ内部の気泡の状態(気泡の数、大きさ、密度)は重要である。
【0047】
CZ法においてシリコン単結晶の酸素濃度を制御するためには、石英ルツボ1が部位ごとに適切な透過率を有することが必要であり、そのためには石英ルツボ1の各部位の透過率を正確に測定する必要がある。
【0048】
図2及び図3は、本発明による石英ルツボの透過率測定方法の原理を説明するための模式図である。
【0049】
図2に示すように、本発明による石英ルツボの透過率測定方法の特徴は、石英ルツボ1の壁体1Wの一方の壁面1Wa(ルツボ外面)側に光源5を配置し、他方の壁面1Wb側にカメラなどの検出器6を光源5と対向するように配置し、光源5から平行光を出射し、壁体1Wを透過した光の受光レベルを検出器6で測定すると共に、他方の壁面1Wb(ルツボ内面)上の光の出射点Pを中心とする同心円に沿って検出器6を旋回させて石英ルツボの透過光の受光レベルを複数の測定位置で測定する点にある。この場合の透過率は、入射光の全エネルギーに対する透過光の全エネルギーの比として求めることができ、透過光の全エネルギーは複数の位置で測定した透過光の受光レベルの総和として求めることができる。
【0050】
壁体1Wの一方の壁面1Waに入射した光は、壁体1Wの内部を通って他方の壁面1Wbから出射するが、上記のように石英ルツボ1は多数の微小な気泡を内包する不透明層3(図1参照)を有するため、透過光は壁体1W内で散乱する。そのため、図3(a)に示すように、石英ルツボの透過光の輝度はその中心において非常に高いが、周囲もぼんやりと明るくなっており、平行光が散乱していることが分かる。このような透過光のエネルギー分布は、図3(b)のように出射位置を中心として同心円状に広がった回転対称の分布となる。
【0051】
従来の透過率測定方法のように光源5の真正面に検出器6を固定して測定するだけでは図15に示したように散乱光が検出器6の外側に漏れてしまい、全透過光を受光することができない。しかし本発明では、透過光の出射点Pを中心とする同心円C上の複数の位置に検出器6を配置して透過光を測定するので、石英ルツボ1の透過率を正確に測定することができ、非接触且つ非破壊で測定することができる。以下、本発明による石英ルツボの透過率測定方法について詳細に説明する。
【0052】
図4及び図5は、本発明の好ましい実施の形態による石英ルツボの透過率測定装置の構成を示す図であって、図4は略側面断面図、図5は略平面図である。
【0053】
図4及び図5示すように、本実施形態による石英ルツボの透過率測定装置10は、石英ルツボ1を3点支持する支持装置11と、石英ルツボ1の外側に配置された投光装置20と、石英ルツボ1の内側に配置された受光装置30と、受光装置30が測定した石英ルツボ1の透過光の受光レベルに基づいて透過率を算出する透過率演算部40とを備えている。
【0054】
支持装置11は、支持台12と、支持台12上に立設された3本の支柱13と、3本の支柱13の先端部にそれぞれ設けられた回転ローラ14とを備えている。各回転ローラ14の回転軸は斜めに傾けられており、これにより3つの回転ローラ14の円周面が石英ルツボ1のコーナー部1cの外周面の3点を回転自在に支持している。石英ルツボ1の回転動作は手動で行ってもよく、モーターなどの駆動機構を用いて回転ローラ14を回転させることにより自動で行ってもよい。
【0055】
また支持装置11は、支持台12上に立設された上部フレーム15と、上部フレーム15の上端部から水平方向に延びる梁部16とを備えており、梁部16は受光装置30をその上方から支持している。また上部フレーム15は投光装置20を支持している。
【0056】
投光装置20は、レーザー光を出力するレーザー装置21と、石英ルツボ1の外面に沿って設けられたガイドレール22を備えている。レーザー装置21は平行光を出力する光源であって、ガイドレール22に沿ってスライド自在に構成されている。これにより、レーザー装置21は石英ルツボ1の外面1oに沿ってルツボのリム上端から底部1bの中心まで移動可能であり、レーザー光の出射方向がルツボ壁面に対して常に垂直になるように、任意の位置に設置することができる。レーザー装置21のスライド動作は手動で行ってもよく、モーターなどの駆動機構を用いて自動で行ってもよい。ガイドレール22及び駆動機構は、レーザー装置21の位置を石英ルツボ1の外壁面に沿って高さ方向に移動させる投光位置変更手段を構成している。なおレーザー光がルツボ壁面に対して垂直に入射することにより壁面での反射と屈折を最小にすることができ、入射位置精度を高めることができるが、厳密に垂直である必要はない。
【0057】
受光装置30は、検出器としてのカメラ31と、カメラ31を昇降させるカメラ昇降機構32と、カメラ31を石英ルツボ1の回転中心軸を含む垂直面内で回動させるカメラ回動機構33と、石英ルツボ1の内面1i上のレーザー光の出射点(すなわち、レーザー光軸と石英ルツボ1の内面1iとの交点)を中心とする同心円に沿ってカメラ31を旋回させるカメラ旋回機構34とを備えている。検出器としてCCDカメラなどの受光範囲が広い装置を用いることにより、透過光のエネルギーを広い範囲で検出することができる。
【0058】
カメラ昇降機構32及びカメラ回動機構33の連携動作により、カメラ31は、投光装置20と同様に石英ルツボ1の内面1iに沿ってそのリム上端から底部1bの中心まで移動可能に構成されている。すなわち、カメラ昇降機構32及びカメラ回動機構33は、カメラ31の位置を石英ルツボの内壁面に沿って高さ方向に移動させる受光位置変更手段を構成している。また図5に示すように、カメラ旋回機構34は、ガイドレール35に沿ってカメラ31を移動させることでカメラ31を旋回させることができ、どこの位置に移動してもカメラ31の撮影方向が常にレーザー光の出射点を向くように設置することができる。なおカメラ31の旋回動作は手動で行ってもよい。
【0059】
カメラ31は、円弧状のガイドレール35を含むカメラ旋回機構34と一緒に駆動されて、カメラ31の上下方向の向き(チルト角)が調整される。また、カメラ31は、カメラ回動機構33及びカメラ旋回機構34と一緒に昇降駆動されてその高さ方向の位置が調整される。カメラ31の旋回角度は、カメラ昇降機構32及びカメラ回動機構33の動作から独立して任意に設定することができる。レーザー装置21及びカメラ31をルツボの壁面に沿って高さ方向の任意の位置に移動させたとしても、ルツボ表面から出射するレーザー光の中心点からカメラ31までの距離は常に一定となるように制御される。
【0060】
カメラ31が撮影した画像データは透過率演算部40で処理され、各画素の輝度レベルの積算値から透過率Tが算出される。石英ルツボ1を配置せずレーザー装置21からの出射光をカメラ31で直接撮影したときの画像データから求めた入射光の全エネルギー(ブランク値)をIとし、石英ルツボ1の透過光をカメラ31で撮影したときの画像データから求めた透過光の全エネルギーをIとするとき、透過率Tは、T=I/Iとして求めることができる。
【0061】
レーザー装置21及びカメラ31の位置決めはコンピュータ制御により行うことが好ましいが、手動で行ってもよい。通常、石英ルツボ1の透過率の測定箇所は予め決まっており、例えば、側壁部1a、コーナー部1c、底部1bの3箇所、あるいは、側壁部1aの上部、側壁部1aの下部、コーナー部1c、底部1bの4箇所を測定することが多い。そのため、これらの箇所に対応する位置に目印を設けており、その位置にレーザー装置21及びカメラ31を自動又は手動で動かして設置することができ、透過率測定装置10を簡易な構成とすることができる。
【0062】
図6図8は、レーザー装置21及びカメラ31の昇降動作を説明するための略側面断面図である。
【0063】
図6に示すように、レーザー装置21及びカメラ31は、石英ルツボ1の側壁部1aの下部の測定位置に配置することができる。図4に示した石英ルツボ1の側壁部1aの上部から図6に示した側壁部1aの下部への測定位置の変更は、矢印dで示すように、レーザー装置21及びカメラ31を単純に下方に移動させることにより行うことができる。
【0064】
図7に示すように、レーザー装置21及びカメラ31は、石英ルツボ1のコーナー部1cの測定位置に配置することができる。このときのレーザー装置21の位置及び向きは、ガイドレール22に沿ってレーザー装置21を移動させることにより設定することができる。またカメラ31の位置及び向きは、カメラ昇降機構32がカメラ31を下方に移動させる(矢印d参照)と共に、カメラ回動機構33がカメラ31を斜め下方に向ける(矢印d参照)ことにより設定することができる。
【0065】
図8に示すように、レーザー装置21及びカメラ31は、石英ルツボ1の底部1bの測定位置に配置することができる。このときのレーザー装置21の位置及び向きは、ガイドレール22に沿ってレーザー装置21を移動させることにより設定することができる。またカメラ31の位置及び向きは、カメラ昇降機構32がカメラ31を下方に移動させる(矢印d参照)と共に、カメラ回動機構33がカメラ31を真下に向ける(矢印d参照)ことにより設定することができる。
【0066】
図9は、カメラ31の旋回動作及び石英ルツボ1の回転動作を説明するための略平面図である。
【0067】
図9に示すように、カメラ31は、ガイドレール35に沿って矢印dの方向にスライドすることにより、レーザー光軸Zを含む平面内で旋回することができる。これにより、レーザー光の出射点Pを中心とする同心円上の任意の位置にカメラ31を移動させて石英ルツボ1の透過率を測定することができる。透過率の測定精度を高めるため、カメラ31の最大旋回角度θは45°以上であることが好ましい。
【0068】
また石英ルツボ1は矢印dで示すように支持台12上で回転することができる。したがって、石英ルツボ1の透過率の周方向の測定位置(高さ方向の測定ライン)を変更することができ、例えばルツボ回転角度が0°、90°、180°、270°となる4方向の測定を行うことができる。
【0069】
図10及び図11は、本実施形態による透過率測定装置10を用いた石英ルツボ1の透過率測定方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【0070】
図10に示すように、本実施形態による透過率の測定では、まず石英ルツボ1を支持台12上に設置する。これにより、石英ルツボ1の周方向の初期測定位置(ルツボ回転角度が0°の位置)が設定される(ステップS11)。
【0071】
次に、レーザー装置21及びカメラ31の高さ方向の位置を調整して、ルツボの高さ方向の初期測定位置を設定する(ステップS12)。例えば図4に示したように、レーザー装置21及びカメラ31の高さ方向の設置位置を石英ルツボ1の側壁部1aの上部に合わせる。その後、この測定位置において石英ルツボ1の透過率を測定する(ステップS13)。個々の測定位置における透過率測定方法については後述する。
【0072】
上記測定後においても、石英ルツボ1の高さ方向の全測定位置で透過率を測定済みでない場合には、レーザー装置21及びカメラ31をルツボ壁面に沿って高さ方向に移動させて、ルツボの高さ方向の測定位置を変更する。具体的には、ルツボの側壁部1aの上部(初期測定位置)、側壁部1aの下部、コーナー部1c、底部1bの4箇所の透過率を順に測定する(ステップS14N、S15、S13)。なおルツボの高さ方向の測定箇所の数は4箇所に限定されず、何箇所であってもよい。測定箇所の数を増やせばルツボ内の透過率の分布を詳細に測定できるが、スループットは低くなる。
【0073】
一方、石英ルツボ1の高さ方向の全測定位置で透過率の測定が完了した場合には、ルツボの周方向の全測定位置を測定済みかどうかを判断する(ステップS16)。そして、ルツボの周方向の全測定位置を測定済みの場合には、ルツボ全体の透過率の測定を終了する(ステップS14Y、ステップS16Y)。
【0074】
上記測定後においても、石英ルツボ1の周方向の全測定位置を測定済みでない場合には、石英ルツボ1を回転させてルツボの周方向の測定位置を変更すると共に、レーザー装置21及びカメラ31をルツボの高さ方向の初期測定位置に戻す(ステップS16N、S17、S12)。具体的には、ルツボを90°回転させてレーザー装置21及びカメラ31を次の測定位置に移動させることにより、0°(初期測定位置)、90°、180°、270°の4箇所の透過率を順に測定する。なおルツボの周方向の測定箇所の数は4箇所に限定されず、何箇所であってもよい。測定箇所の数を増やせばルツボ内の透過率の分布を詳細に測定できるが、スループットは低くなる。
【0075】
次に、個々の測定位置における透過率測定方法について詳細に説明する。
【0076】
図11に示すように、個々の測定位置における透過率の測定では、まずレーザー装置21及びカメラ31の中心位置合わせを行う(ステップS21)。具体的には、レーザー装置21を所定の測定位置に設定し、ルツボに向けてレーザー光を出射し、ルツボ壁を通過したレーザー光をカメラ31で撮影し、レーザー光の中心が撮影画像の略中心に配置されるようにカメラ31の位置を微調整する。このときのカメラ31の旋回角度は0°であり、カメラ31はレーザー装置21と対向している。
【0077】
次に、レーザー装置21からレーザー光が出射した状態を維持しながら、カメラ31を第2ガイドレール35に沿って旋回させて、複数の角度から透過光の画像を撮影する(ステップS22)。カメラ31の旋回角度のピッチは、ルツボの透過光の全体を漏れなく検出できる限りにおいて特に限定されず、カメラ31のレンズの大きさ(画角)と測定点との距離などの条件によって適切なピッチを選択すればよい。具体的には、カメラ31の旋回角度のピッチは10°でもよい。カメラ31は基準位置(0°)から一定の角度範囲内の複数の位置でレーザー光の画像を撮影するが、このときの最大旋回角度は±45°よりも大きいことが好ましい。旋回角度をできるだけ広げ、より多くの散乱光を撮影して総和を求めることで透過率の測定精度を高めることができる。なお、カメラ31の角度範囲はプラス側又はマイナス側のどちらか片側の範囲だけでもよい。
【0078】
次に、複数の角度から撮影した複数の透過光の画像から透過光の全エネルギーを算出する(ステップS23)。透過光はルツボ壁内での散乱により、出射位置を中心として同心円状に広がる(図3(a)参照)。よって透過光のエネルギーの算出では、撮影画像をラインスキャンして透過光の出射位置中心からの距離に対する輝度プロファイルを算出する(図14(a),(b)参照)。この輝度プロファイルは出射位置を中心にして等方的に広がっていると仮定することができるから、輝度プロファイルを周方向に回転させたときに得られる体積(図3(b)参照)が、ある角度から撮影した透過光のエネルギーとなる。よって、撮影角度が異なる複数の画像からそれぞれ求めた複数の透過光のエネルギーの総和が透過光の全エネルギーIとなる。透過率Tは、入射光の全エネルギーI(ブランク値)に対する透過光の全エネルギーIの比(T=I/I)として求めることができる(ステップS24)。なお、透過光の全エネルギーIは、複数の角度から撮影した画像から求めた複数の透過光の輝度プロファイルを合計した後に体積分することにより求めてもよく、計算の順序は特に限定されない。
【0079】
次に、レーザー光の照射位置(レーザー装置21の高さ方向の位置)をルツボ壁面に沿って例えば周方向に所定間隔(例えば1cm)ずらした後、上記のようにカメラ31を旋回させて画像を再び撮影する(ステップS25N、S26、S21~S24)。こうして透過率の測定とレーザー照射位置の変更とを交互に所定回数(例えば4回)繰り返すことにより、1つの測定点(例えば側壁部1aの上部)における透過率の測定が終了する(ステップS25Y)。最後に、複数の透過率の測定値の平均値を求める(ステップS27)。このように、1つの測定箇所内でレーザー照射位置を少し変えて透過率を測定し、その平均値を求めることにより、透過率の測定値の局所的なばらつきの影響を抑えることができる。なお、平均化処理のためにレーザー光の照射位置をずらす方向は周方向に限らず、どの方向であってもよい。
【0080】
以上のように、石英ルツボ1の高さ方向の複数の箇所での透過率の測定では、レーザー装置21及びカメラ31をルツボの高さ方向に移動させることにより、例えば、側壁部1aの上部、側壁部1aの下部、コーナー部1c、底部1bの4箇所の透過率を測定する。さらに、石英ルツボ1を所定角度(例えば90度)回転させてルツボの透過率の周方向の測定位置を変更した後、上述したルツボの高さ方向における測定ステップを繰り返すことにより、例えば、石英ルツボ1の周方向の複数個所、例えば0°、90°、180°、270°の4方向の透過率を測定する。こうして、周方向の4個所における透過率の平均値を求めることにより、ルツボの各部位(側壁部1aの上部、側壁部1aの下部、コーナー部1c、及び底部)における透過率の測定精度を高めることができる。
【0081】
以上説明したように、本実施形態による石英ルツボの透過率測定方法は、石英ルツボの外面側から平行光を照射し、石英ルツボの内面上の光の出射点を中心とした同心円上の複数の位置にカメラを配置して透過光を受光することで石英ルツボの壁内で散乱する透過光の光量を広い範囲で測定し、複数の位置での透過光の光量の測定結果に基づいて石英ルツボの透過率を求めるので、石英ルツボの透過率を正確に求めることができる。
【0082】
また、本実施形態による石英ガラスルツボの透過率測定装置は、石英ルツボの内面上の光の出射点を中心とした同心円に沿ってカメラを旋回させるカメラ旋回機構を備えているので、石英ルツボの内面上の光の出射点を中心とした同心円上の複数の位置にカメラを移動させて透過光を受光することができ、複数の位置での透過光の光量の測定結果に基づいて石英ルツボの透過率を求めることができる。したがって、石英ルツボの壁内で散乱する透過光の光量を広い範囲で測定することができ、これにより石英ルツボの透過率を正確に求めることができる。
【0083】
図12は、本発明の他の好ましい実施の形態による透過率測定装置の特徴を説明するための模式図である。
【0084】
図12に示すように、この透過率測定装置の特徴は、1台のカメラ31を旋回させるのではなく、出射点を中心とする同心円上に設置した複数台のカメラ(ここでは5台のカメラ31a~31e)を用いて透過率を複数の測定位置(ここでは5つの測定位置)で同時に測定する点にある。その他の点は、第1の実施の形態と同様である。この透過率測定装置を用いた透過率測定方法では、測定位置の数と同数のカメラ31を用意する必要があるが、カメラ31を旋回させる必要がないのでスループットを向上させることができる。
【0085】
図13(a)~(c)は、投光装置20の実施の形態を示す模式図である。
【0086】
図13(a)に示す投光装置20は、レーザー装置21内のレーザー光源21a(レーザー発振器)から出力されたレーザービームBを石英ルツボ1の壁体1Wに直接照射するように構成したものである。通常、レーザー光源21aから出力されるレーザービームBのビーム径は1mm前後である。このようにビーム径が細い場合、石英ルツボ1の局所的な透過率の測定が可能である反面、ルツボ内部の局所的な気泡密度の影響を受けて透過率の測定値がばらつきやすい。気泡密度の局所的なばらつきの影響を抑えて安定した測定値を求めたい場合には、レーザービームBの照射位置を局所的に何か所か変えて測定し、複数の測定値の平均値を求める必要がある。しかし、複数回の測定を行う場合、測定時間が長くなる。
【0087】
図13(b)に示す投光装置20のレーザー装置21は、レーザー光源21aから出力されたレーザービームBのビーム径を拡大するビームエキスパンダ21bをさらに備えている。ビームエキスパンダ21bを用いることにより、石英ルツボ1の壁体1Wに照射されるレーザービームBのビーム径を拡大することができ、石英ルツボ1壁体1Wの内部の気泡密度の局所的なばらつきの影響を低減して透過率を安定的に測定することができる。特に気泡密度が少ないルツボほど、ビーム径を拡大することで気泡密度の局所的なばらつきの影響を低減できる効果が大きくなる。また気泡密度の局所的なばらつきの影響が低減された透過率を1回の測定で求めることができ、測定時間の短縮が可能である。
【0088】
ビームエキスパンダ21bを用いてビーム径を拡大する場合、ビーム径の拡大率(D/D)は2倍以上であり、5~50倍であることが好ましく、10~20倍であることが特に好ましい。あるいは、拡大されたビーム径(ビームのスポット径)は2mm以上であり、5~50mmであることが好ましく、10~20mmであることが特に好ましい。ビーム径の拡大率が2倍未満あるいはビーム径が2mm未満ではビーム径を拡大することによる実質的な効果が得られないからである。ビーム径又はその拡大率の上限は測定の目的と装置上の制約を考慮して自由に設定できる。例えば、ビーム径の上限は50mm、ビーム径の拡大率の上限は50倍とすることができる。
【0089】
図13(c)に示す投光装置20のレーザー装置21は、レーザー光源21aから出力されたレーザービームBをレーザーライン光Bに変換するラインジェネレータ21cをさらに備えている。ビームエキスパンダ21bがビーム径を2次元方向に拡大するものであるのに対し、ラインジェネレータ21cはビーム径を1次元方向に拡大するものである。ラインジェネレータ21cを用いることにより、石英ルツボ1壁体1Wの内部の気泡密度の局所的なばらつきの影響を低減して透過率を安定的に測定することができる。また気泡密度の局所的なばらつきの影響が低減された透過率を1回の測定で求めることができ、測定時間の短縮が可能である。
【0090】
ラインジェネレータ21cを用いてビーム径を一方向に拡大する場合、ビーム径の拡大率(L/D)は5倍以上であり、10~200倍であることが好ましく、50~100倍であることが特に好ましい。あるいは、レーザーライン光のスポット長さ(ビームスポットの最大幅)Lは5mm以上であり、10~200mmであることが好ましく、50mm~100mmであることが特に好ましい。ビーム径の拡大率が5倍未満あるいはビーム径が5mm未満ではビーム径を拡大することによる実質的な効果が得られないからである。ビーム径又はその拡大率の上限は測定の目的と装置上の制約を考慮して自由に設定できる。例えば、レーザーライン光のスポット長さの上限は200mm、ビーム径の拡大率の上限は200倍とすることができる。
【0091】
ラインジェネレータ21cを用いる場合、レーザーライン光の長手方向は、石英ルツボ1の円周方向を向いていてもよく、石英ルツボ1の高さ方向を向いていてもよい。通常、石英ルツボ1の高さ方向における気泡含有率の変化は比較的大きく、石英ルツボ1内の円周方向における気泡含有率の変化は比較的小さい。そのため、レーザーライン光の長手方向を円周方向と平行に設定した場合には、気泡含有率に起因する透過率の変化の影響を受けることなく測定点の透過率を正確に測定することができる。一方、レーザーライン光の長手方向を高さ方向と平行に設定した場合には、気泡含有率に起因する透過率の比較的大きな変化を平均化した値を求めることができる。
【0092】
レーザー光源21aから出力されるレーザービームのビーム径が初めから太い場合、上記のようなビームエキスパンダ21bやラインジェネレータ21cを別途用意する必要はなく、透過率の平均化と測定時間の短縮化を図ることが可能である。しかし、ビーム径が太いレーザー光源21aを用いた場合、パワーメーターを用いてレーザービームのパワーを測定することが困難となる。石英ルツボ1の透過率は入射光に対する透過光のパワー比から求められ、入射光のパワーと透過光のパワーの両方の測定値が必要である。入射光のパワーはレーザー光源21aから出力されるレーザービームをパワーメーターで直接受光することで測定することができるが、パワーメーターの検出口の口径が小さいため、大口径のビームのパワーを測定することは困難である。このような理由から、最初からビーム径の大きなレーザー光源21aを用いるよりも、ビーム径の小さなレーザー光源21aを用いる方が好ましく、レーザー光源21aから独立したビームエキスパンダ21bやラインジェネレータ21cを用意してレーザー光のスポットサイズを拡大することが好ましい。
【0093】
以上のように、投光装置20にビームエキスパンダ21bやラインジェネレータ21cを採用し、ビーム径が拡大されたレーザービームを石英ルツボ1に照射した場合には、石英ルツボ1の気泡分布の局所的なばらつきの影響が平均化された透過光を検出することができる。したがって、石英ルツボ1の任意の測定点における透過率を安定的に測定することができ、石英ルツボ1の透過率の測定時間を短縮することができる。
【0094】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0095】
例えば、上記実施形態においては、石英ルツボの高さ方向の4点、周方向の4点、合計4×4=16点の透過率の測定を行っているが、測定点の数はさらに細かく測定することも可能である。
【0096】
また、上記実施形態においては、石英ルツボ1の縦方向の測定ライン上の複数の測定箇所を測定した後、ルツボを周方向に所定角度回転させて次の測定ライン上の複数の測定箇所を測定しているが、石英ルツボ1の周方向の測定ライン上の複数の測定箇所を連続して測定した後、レーザー装置及びカメラの高さ方向の位置を変えてもよい。また、透過率測定装置の構成としては、石英ルツボ1の内側と外側に多関節型ロボットを配置し、それぞれの多関節アームの先端部にカメラと光源を配置したものなど、様々な構成が考えられる。
【0097】
また、上記実施形態においては、石英ルツボを非破壊検査する場合を例に挙げたが、石英ルツボ1から切り出したルツボ片に対して上記測定を行うことも可能であり、破壊検査を行っても構わない。また、本発明において光の波長は限定されず、例えば赤外線またはその近傍の波長のレーザーを使用すれば赤外線の透過率を測定することができるが、可視光線や紫外線などの他の波長の透過率測定に適用することも可能である。
【実施例
【0098】
図4等に示した透過率測定装置を用いて口径32インチの石英ルツボの赤外線の透過光の輝度プロファイルを測定した。この測定では、側壁部の不透明層の厚さが約10mmである第1のルツボサンプルと、側壁部の不透明層の厚さは約15mmである第2のルツボサンプルの2種類を用意した。そして図11に示す手順に従って透過率測定を行った。
【0099】
図14(a)及び(b)は、石英ルツボの透過光の輝度プロファイルに示すグラフであり、横軸は透過光の出射位置からの距離(mm)、縦軸は透過光の輝度(相対値)をそれぞれ示している。なお図14(a)及び(b)には、角度差が大きい0°と50°の2種類のみを示している。
【0100】
図14(a)に示すように、第1のルツボサンプルの輝度プロファイルは、出射位置中心に高いピークを持ち、出射位置中心から±10mm以内ではピークから離れるにつれて輝度が急激に小さくなっているが、それよりも外側では徐々に小さくなっており、ほぼ左右対称なパターンとなっていることが分かる。
【0101】
また第1のルツボサンプルは、不透明層の厚さが約10mmと比較的薄いため、撮影角度が0°のときの透過光の輝度のピークレベルは90を超えており、透過率が高いことが分かる。一方、撮影角度が50°のときの透過光の輝度のピークレベルは約70であり、撮影角度が0°のときの透過光の輝度プロファイルに比べると、出射位置中心から±10mm以内の輝度レベルが低いことがわかる。しかし、出射位置中心から±10mmを超える外側では、撮影角度の差がほとんどないことが分かる。
【0102】
図14(b)に示すように、第2のルツボサンプルの輝度プロファイルも第1のルツボサンプルと同様に左右対称なパターンとなっているが、不透明層の厚さが約15mmと比較的厚いため、輝度ピークレベルが低いことが分かる。詳細には、撮影角度が0°のときの透過光の輝度のピークレベルは82であり、また撮影角度が50°のときの透過光の輝度のピークレベルは約61であり、第1のルツボサンプルよりも透過率が低いことが分かる。
【0103】
以上のように、不透明層の条件の違いによって輝度プロファイルに多少の差はあるものの、石英ルツボに入射した光の透過光は出射位置を中心に同心円状に広がる輝度分布となることが分かった。
【符号の説明】
【0104】
1 石英ルツボ
1W 石英ルツボの壁体
1Wa 石英ルツボの一方の壁面
1Wb 石英ルツボの他方の壁面
1a 石英ルツボの側壁部
1b 石英ルツボの底部
1c 石英ルツボのコーナー部
1i 石英ルツボの内面
1o 石英ルツボの外面
2 透明層(無気泡層)
3 不透明層(気泡層)
5 光源
6 検出器
10 透過率測定装置
11 支持装置
12 支持台
13 支柱
14 回転ローラ
15 上部フレーム
16 梁部
20 投光装置
21 レーザー装置
21a レーザー光源(レーザー発振器)
21b ビームエキスパンダ
21c ラインジェネレータ
22 ガイドレール
30 受光装置
31,31a~31e カメラ
32 カメラ昇降機構
33 カメラ回動機構
34 カメラ旋回機構
35 ガイドレール
40 透過率演算部
60 ルツボ片(石英ガラス片)
61 赤外ランプ
62 検出器(パワーメーター)
同心円
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15