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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】流体デバイス及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20221220BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N37/00 101
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020527151
(86)(22)【出願日】2018-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2018024910
(87)【国際公開番号】W WO2020003520
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】小林 遼
(72)【発明者】
【氏名】高崎 哲臣
(72)【発明者】
【氏名】石澤 直也
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/012429(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/213123(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/153006(WO,A1)
【文献】特開2014-038018(JP,A)
【文献】特開2008-224499(JP,A)
【文献】特開2006-234536(JP,A)
【文献】特開2007-225438(JP,A)
【文献】国際公開第2015/083829(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-35/10
G01N 37/00
B01J 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視で略正三角形の空間であって当該略正三角形の少なくとも1つの頂点位置において前記空間に液体を導入する導入流路が接続する第1合流・分岐部と、前記第1合流・分岐部の頂点位置のうち前記導入流路が非配置の頂点位置の1つと一端が接続する流路形状の接続部と、平面視で略正三角形の空間であって、当該略正三角形の頂点位置の1つが前記接続部の他端と接続し、少なくとも1つが前記液体を排出する排出流路と接続する第2合流・分岐部と、を有する定量部と、
前記第1合流・分岐部および前記第2合流・分岐部の頂点位置において前記接続部が非配置の頂点位置に配置されるバルブと、
を備える、流体デバイス。
【請求項2】
前記バルブが閉じた際に前記バルブが当接する窪みが形成された基板と、
前記基板において、前記第1合流・分岐部および前記第2合流・分岐部と前記窪みとの境界に配置される傾斜部を更に備え、
前記傾斜部は、前記第1合流・分岐部および前記第2合流・分岐部の底面から前記窪みに向かうに従って、前記底面から天面との距離を小さくするように傾斜している、
請求項1に記載の流体デバイス。
【請求項3】
前記傾斜部における幅は、前記底面から前記窪みに向かうのに従って狭くなる、
請求項2に記載の流体デバイス。
【請求項4】
前記第1合流・分岐部の前記頂点位置には、前記導入流路、前記接続部、および前記液体を前記定量部以外の流路に移送可能な移送流路の一端が接続する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の流体デバイス。
【請求項5】
前記第2合流・分岐部の前記頂点位置には前記排出流路、前記接続部、および前記移送流路の他端が接続する
請求項4に記載の流体デバイス。
【請求項6】
記バルブを介して接続する複数の前記定量部により循環流路が構成される、
請求項5に記載の流体デバイス。
【請求項7】
複数の前記定量部の少なくとも1つは、前記接続部にポンプ部を備える、
請求項6に記載の流体デバイス。
【請求項8】
複数の前記定量部を備え、
複数の前記定量部はそれぞれ、前記第1合流・分岐部および前記第2合流・分岐部の体積が同一であり、前記接続部の体積が異なる、
請求項1~7のいずれか一項に記載の流体デバイス。
【請求項9】
前記接続部以外に配置された前記第1合流・分岐部における2つの前記バルブの中心点と、前記接続部に位置する接点とを頂点とする第1基準正三角形と、前記接続部以外に配置された前記第2合流・分岐部における2つの前記バルブの中心点と、前記接点とを頂点とする第2基準正三角形とを設定したときに、
前記第1基準正三角形の各線分と、前記第1合流・分岐部の輪郭を形成する多角形の最も長い三辺との間の3つの距離のうち、少なくとも一つが異なり、
前記第2基準正三角形の各線分と、前記第2合流・分岐部の輪郭を形成する多角形の最も長い三辺との間の3つの距離のうち、少なくとも一つが異なる、
請求項1~8のいずれか一項に記載の流体デバイス。
【請求項10】
前記バルブの中心位置は、二次元六方格子パターンで所定数配置された指標点から選択された位置にそれぞれ配置されている、
請求項1~9のいずれか一項に記載の流体デバイス。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の流体デバイスと、
前記流体デバイスにセットされたときに、前記バルブを変形する用力を前記バルブ毎に独立して供給可能な供給部と、
を備えるシステム。
【請求項12】
前記供給部は、二次元六方格子パターンで所定数配置され、
前記バルブは、前記二次元六方格子パターンで所定数配置された前記供給部から選択された位置に配置されている、
請求項11記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体デバイス及びシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、体外診断分野における試験の高速化、高効率化、および集積化、又は、検査機器の超小型化を目指したμ-TAS(Micro-Total Analysis Systems)の開発などが注目を浴びており、世界的に活発な研究が進められている。
【0003】
μ-TASは、少量の試料で測定、分析が可能なこと、持ち運びが可能となること、低コストで使い捨て可能なこと等、従来の検査機器に比べて優れている。
更に、高価な試薬を使用する場合や少量多検体を検査する場合において、有用性が高い方法として注目されている。
【0004】
μ-TASの構成要素として、流路と、該流路上に配置されるポンプとを備えたデバイスが報告されている(非特許文献1)。このようなデバイスでは、該流路へ複数の溶液を注入し、ポンプを作動させることで、複数の溶液を流路内で混合する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Jong Wook Hong, Vincent Studer, Giao Hang, W French Anderson and Stephen R Quake,Nature Biotechnology 22, 435 - 439 (2004)
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様に従えば、厚さ方向に積層され、一方の基板には他方の基板により覆われることで構成される流路を有する一対の基板を有し、前記流路は、溶液を所定量に定量可能な定量部を含み、前記定量部は、それぞれが前記厚さ方向視で正三角形の頂点位置同士を結ぶ各線分と合致する輪郭又は前記各線分と平行な輪郭で囲まれ、前記溶液の合流または分岐が行われる一対の合流・分岐部と、前記合流・分岐部の前記正三角形の頂点位置の一つを介して前記一対の合流・分岐部を接続する接続部と、を有し、前記接続部が非配置の前記合流・分岐部における前記頂点位置には、前記流路中の流体の流れを調整するバルブが設けられる、流体デバイスが提供される。
【0007】
本発明の第2の態様に従えば、本発明の第1の態様の流体デバイスと、前記流体デバイスにセットされたときに、前記バルブを変形する用力を前記バルブ毎に独立して供給可能な供給部と、を備えるシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態の流体デバイスを模式的に示す断面図である。
図2】一実施形態の流体デバイスを模式的に示す平面図である。
図3】一実施形態の流体デバイスを模式的に示す部分平面図である。
図4図2における基材5のA-A線視断面図である。
図5】一実施形態の流体デバイスを模式的に示す平面図である。
図6】一実施形態の流体デバイスを模式的に示す部分平面図である。
図7】一実施形態のシステムSYSの基本構成を示す断面図である。
図8】一実施形態のシステムSYSの駆動部TRを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の流体デバイス及びシステムの実施の形態を、図1ないし図8を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限られない。
【0010】
図1は、本実施形態の流体デバイス1の断面模式図である。図2は、流体デバイス1に設けられた流路の一例を模式的に示した平面図である。なお、図2においては、透明な上板6について、下側に配置された各部を透過させた状態で図示する。
【0011】
本実施形態の流体デバイス1は、検体試料に含まれる検出対象である試料物質を免疫反応および酵素反応などにより検出するデバイスを含む。試料物質は、例えば、核酸、DNA、RNA、ペプチド、タンパク質、細胞外小胞体などの生体分子である。
【0012】
図2に示すように、流体デバイス1は、基材5と複数のバルブV1~V9とを備える。また、図1に示すように、基材5は、厚さ方向に積層された3つの基板(第1基材6、第2基材9および第3基材8)を有する。本実施形態の第1基材6、第3基材8および第2基材9は、樹脂材料から構成される。第1基材6、第3基材8および第2基材9を構成する樹脂材料としては、ポリプロピレン、ポリカーボネイト等が例示される。また、本実施形態において、第1基材6および第3基材8は、透明な材料から構成される。なお、第1基材6、第3基材8および第2基材9を構成する材料は、限定されない。
【0013】
以下の説明においては、第1基材(例、第1の基板(基板)、蓋部、流路の上部又は下部、流路の上面又は底面)6、第3基材(例、第3の基板(基板)、蓋部、流路の上部又は下部、流路の上面又は底面)8および第2基材(第2の基板)9は水平面に沿って配置され、第1基材6は第2基材9の上側に配置され、第3基材8は第2基材9の下側に配置されるものとして説明する。ただし、これは、説明の便宜のために水平方向および上下方向を定義したに過ぎず、本実施形態に係る流体デバイス1の使用時の向きを限定しない。
【0014】
第1基材6、第2基材9および第3基材8は、水平方向に沿って延びる板材である。第1基材6、第2基材9および第3基材8は、上下方向に沿ってこの順で積層されている。すなわち、第2基材9は、第1基材6の下側において第1基材6に積層される。また、第3基材8は、第1基材6と反対側の面(下面9a)において第2基材9に積層される。
なお、以下の説明において、第1基材6、第2基材9および第3基材8を積層させる方向を単に積層方向と呼ぶ。本実施形態において、積層方向は、上下方向である。また、本実施形態において、積層方向は、基板(第1基材6、第2基材9および第3基材8)の厚さ方向である。
【0015】
第1基材6は、上面6bと下面6aと、を有する。第2基材9は、上面9bと下面9aとを有する。同様に、第3基材8は、上面8bと下面8aと、を有する。
【0016】
第1基材6の下面6aは、第2基材9の上面9bと積層方向に対向し接触する。第1基材6の下面6aと第2基材9の上面9bとは、接着等の接合手段により互いに接合されている。第1基材6の下面6aと第2基材9の上面9bとは、第1境界面61を構成する。すなわち、第1基材6と第2基材9とは、第1境界面61で接合される。
同様に、第3基材8の上面8bは、第2基材9の下面9aと積層方向に対向し接触する。第3基材8の上面8bと第2基材9の下面9aとは、接着等の接合手段により互いに接合されている。第3基材8の上面8bと第2基材9の下面9aとは、第2境界面62を構成する。すなわち、第2基材9と第3基材8とは、第2境界面62で接合される。
【0017】
基材5には、注入孔32と、リザーバー29と、流路11と、廃液槽7と、排出孔37と、空気孔35と、供給孔39と、が設けられている。
【0018】
注入孔32は、第1基材6および第2基材9を貫通する。注入孔32は、第2基材9と第3基材8との境界部に位置するリザーバー29に繋がる。注入孔32は、リザーバー29を外部に繋げる。溶液は、注入孔32を介してリザーバー29に充填される。注入孔32は、1つのリザーバー29に対して1つ設けられる。なお、図2において、注入孔32の図示は、省略されている。
【0019】
リザーバー29は、第2基材9の下面9aに設けられた溝部21の内壁面と第3基材8とによって囲まれたチューブ状、あるいは筒状に形成された空間である。すなわち、リザーバー29は、第2境界面62に位置する。本実施形態の基材5には、複数のリザーバー29が設けられる。リザーバー29には、溶液が収容される。複数のリザーバー29は、互いに独立して溶液を収容する。リザーバー29は、収容した溶液を流路11に供給する。本実施形態のリザーバー29は、流路型のリザーバーである。リザーバー29の長さ方向の一端は、注入孔32に接続される。また、リザーバー29の長さ方向の他端は、供給孔39が接続される。
【0020】
なお、本実施形態では、第2基材9に溝部21が設けられ第3基材8によって溝部21の開口を覆うことでリザーバー29が構成される場合について説明した。しかしながら、リザーバー29は、第3基材8に設けられた溝部の開口を第2基材9により覆うことで構成されていてもよい。
【0021】
流路11は、一方の基板としての第2基材9の上面9bに設けられた溝部14の内壁面と、他方の基板としての第1基材6とによって囲まれたチューブ状、あるいは筒状に形成された空間である。すなわち、流路11は、第1境界面61に位置する。流路11には、リザーバー29から溶液が供給される。溶液は、流路11内を流れる。
【0022】
なお、本実施形態では、第2基材9に溝部14が設けられ第1基材6によって溝部14の開口を覆うことで流路11が構成される場合について説明した。しかしながら、流路11は、第1基材6に設けられた溝部の開口を第2基材9により覆うことで構成されていてもよい。すなわち、基材5が、厚さ方向に積層された一対の基板を有し、流路11は、一対の基板のうち一方の基板に設けられた溝部を他方の基板により覆うことで構成されていればよい。
流路11の各部に関しては、図2を基にして後段において詳細に説明する。
【0023】
供給孔39は、第2基材9に設けられている。供給孔39は、第2基材9を板厚方向に貫通する。供給孔39は、リザーバー29と流路11とを繋ぐ。リザーバー29に貯留された溶液は、供給孔39を介して流路11に供給される。すなわち、リザーバー29は、供給孔39を介して流路11と接続される。
【0024】
廃液槽7は、流路11中の溶液を廃棄する為に基材5に設けられる。廃液槽7は、第2基材9の下面9a側に設けられた凹部7aの内壁面と、凹部7aの下側を向く開口を覆う第3基材8に囲まれた空間に構成される。
【0025】
排出孔37は、第2基材9に設けられている。排出孔37は、第2基材9を板厚方向に貫通する。排出孔37は、廃液槽7と流路11とを繋ぐ。流路11中の溶液は、排出孔37を介して廃液槽7に排出される。すなわち、廃液槽7は、排出孔37を介して流路11と接続される。
【0026】
空気孔35は、第1基材6および第2基材9を貫通する。空気孔35は、廃液槽7に繋がる。空気孔35は、廃液槽7を外部に繋げる。すなわち、廃液槽7は、空気孔35を介して外部に開放される。
【0027】
次に、流路11について、より具体的に説明する。
図2に示すように、流路11は、循環流路10と、複数(図2の例では3つ)の導入流路12A、12B、12Cと、複数(図2の例では3つ)の排出流路13A、13B、13Cと、を含む。流路11には、リザーバー29(図1参照)から溶液が導入される。
【0028】
循環流路10は、積層方向から見て、ループ状に構成される。循環流路10の経路中には、ポンプPと、それぞれが溶液を所定量に定量可能な複数(図2の例では3つ)の定量部GB1、GB2、GB3とが配置されている。
定量部GB1は、略正三角形の合流・分岐部GB11、GB12、及びこれらを接続する接続部GB13を含む。定量部GB2は、略正三角形の合流・分岐部GB21、GB22、及びこれらを接続する接続部GB23を含む。定量部GB3は、略正三角形の合流・分岐部GB31、GB32、及びこれらを接続する接続部GB33を含む。すなわち、定量部GB1、GB2、GB3は、それぞれ循環流路の一部である。
定量部GB1の合流・分岐部GB11の頂点の一つと、定量部GB2の合流・分岐部GB22の頂点の一つが、バルブV2を介して接続している。また、定量部GB1の合流・分岐部GB12の頂点の一つと、定量部GB3の合流・分岐部GB32の頂点の一つが、バルブV4を介して接続している。また、定量部GB2の合流・分岐部GB21の頂点の一つと、定量部GB3の合流・分岐部GB31の頂点の一つが、バルブV6を介して接続している。このように、流路11は、定量部GB1、GB2、GB3を有し、定量部GB1、GB2、GB3のそれぞれの両端に配置される合流・分岐部が、別の定量部の合流・分岐部とバルブを介して接続することにより、循環流路10を形成している。
【0029】
ポンプPは、定量部GB2における流路11中に並んで配置された3つの要素ポンプPeから構成されている。要素ポンプPeは、いわゆるバルブポンプである。ポンプPは、3つの要素ポンプPeを順次開閉することにより、循環流路内において液体を搬送することができる。ポンプPを構成する要素ポンプPeの数は、4以上であってもよい。
【0030】
図3は、定量部GB1の詳細を示す積層方向視の平面図である。
図3に示すように、合流・分岐部GB11、GB12は、略正三角形の上面と底面を有する空間である。ここで、略正三角形とは、最も長い三辺がそれぞれ60度をなすことを意味する。合流・分岐部GB11、GB12の最も長い三辺は、二点鎖線で示される正三角形TR11、TR12の各辺と重なるか、それと平行な線分となる。正三角形TR11、TR12の頂点のうち、正三角形TR11、TR12の接点となるAP3以外の頂点は、バルブV1~V4の中心と一致する(詳細は後述)。以下、各合流・分岐部における正三角形TR11、TR12に相当する正三角形を「基準となる正三角形」という。
本実施形態の合流・分岐部GB11、GB12の上面と底面の輪郭のうち、最も長い三辺は、正三角形TR11、TR12の内側に所定距離ずれた正三角形の各辺と重なっている。このずれの大きさをオフセット量という。
合流・分岐部GB11、GB12を構成する上面と底面とは、同じ大きさの正三角形であり、積層方向視で完全に重なる。
【0031】
なお、合流・分岐部GB11、GB12を構成する上面と底面とは、上面の方が底面より大きい正三角形であり、積層方向視で、底面となる小さい正三角形が上面となる大きい正三角形の内部に配置される構成であってもよい。このとき、合流・分岐部GB11、GB12を構成する側面は上面から底面に向かうのに従って内部に向かう方向に傾斜する。
【0032】
上記オフセット量としては、一例として0.1mm~0.2mm程度である。正三角形TR11、TR12の辺の長さは、実質的に同一である。合流・分岐部GB11、GB12は、正三角形TR11、TR12より大きくてもよく、小さくてもよい。オフセット量は、正三角形の各辺について同一であっても異なっていてもよい。オフセット量d1~d3は、合流・分岐部GBの輪郭RL1~RL3と頂点位置AP1~AP3同士を結ぶ各線分との距離である。オフセットによって、バルブのダイアフラム部材のエラストマーの接地面を広くすることができるので、より安定的にバルブを封止できる。また、オフセットによって分岐部の体積の微調整が可能である。例えば、複数の合流・分岐部において、バルブのサイズは共通であっても、オフセット量を変えることで、それぞれ異なる体積の分岐部とすることができる。また、オフセット量は、三辺のうち少なくとも一辺における前記距離が他の辺における前記距離と異なっていてもよい。この構成を採った場合には、バルブの接液面積に差をつけることができ、接液面積が小さいバルブの耐内圧性を向上することができる。
【0033】
接続部GB13は、合流・分岐部GB11、GB12同士を接続する。接続部GB13は、直線状の溝で形成されている。本実施形態の合流・分岐部GB11、GB12及び接続部GB13は、同一深さに形成されている。合流・分岐部GB11、GB12及び接続部GB13の面積、深さ(すなわち容積)は、定量部GB1において定量する溶液の体積に応じて設定される。
【0034】
合流・分岐部GB11における接続部GB13が配置されていない頂点位置には、バルブV1、V2が配置されている。合流・分岐部GB11は、バルブV1を介して導入流路12Aと繋がり、バルブV1の開閉に応じて導入流路12Aに対して接続可能または遮蔽可能である。合流・分岐部GB11は、バルブV2の開閉に応じて合流・分岐部GB22に対して接続可能または遮蔽可能である。
【0035】
すなわち、合流・分岐部GB11は、接続部GB13、導入流路12A及び合流・分岐部GB22のうちの二つの流路から溶液の流入及び合流させて、もう一つの流路に送り出すことが可能である。また、合流・分岐部GB11は、接続部GB13、導入流路12A及び合流・分岐部GB22のうちの一つの流路から導入された溶液を、他二つの流路に分岐することが可能である。
【0036】
合流・分岐部GB12における接続部GB13が配置されていない頂点位置には、バルブV3、V4が配置されている。合流・分岐部GB12は、バルブV3を介して排出流路13Aと繋がり、バルブV3の開閉に応じて排出流路13Aに対して接続可能または遮蔽可能である。合流・分岐部GB12は、バルブV4の開閉に応じて合流・分岐部GB32に対して接続可能または遮蔽可能である。
【0037】
すなわち、合流・分岐部GB12は、接続部GB13、排出流路13A及び合流・分岐部GB32のうちの二つの流路から溶液の流入及び合流が可能である。また、合流・分岐部GB12は、接続部GB13、排出流路13A及び合流・分岐部GB32のうちの一つの流路から導入された溶液を、他二つの流路に分岐することが可能である。
【0038】
定量部GB1は、バルブV1~V4を閉じることにより、合流・分岐部GB11、GB12及び接続部GB13の容積分の溶液の定量区画を実施できる。例えば定量部GB1は、合流・分岐部GB11において、バルブV1又はバルブV2の一方のバルブを開き、他方のバルブを閉じ、合流・分岐部GB12においてバルブV3又はバルブV4の一方のバルブを開き、他方のバルブを閉じた状態で、開いているバルブと接続する流路の一方から溶液を流入し、開いているバルブと接続する流路の他方に向けて溶液を流出した後、開いているバルブを閉じることにより、合流・分岐部GB11、GB12及び接続部GB13の容積分の溶液の定量区画を実施できる。
【0039】
定量部GB2における一対の合流・分岐部GB21、GB22の構成、及び定量部GB3における一対の合流・分岐部GB31、GB32の構成は、定量部GB1における一対の合流・分岐部GB11、GB12と同様であるため、その説明は簡略化する。
【0040】
定量部GB2における接続部GB23は、合流・分岐部GB21及びGB22を接続する。接続部GB23は、循環流路10の一部を形成する溝で形成されている。本実施形態の合流・分岐部GB21、GB22及び接続部GB23は、同一深さに形成されている。合流・分岐部GB21、GB22及び接続部GB23の面積、深さ(すなわち容積)は、定量部GB2において定量する溶液の体積に応じて設定される。
【0041】
図2に示すように、合流・分岐部GB21と合流・分岐部GB22とは、積層方向視で重ならない位置に配置されている。合流・分岐部GB21における接続部GB23が配置されていない頂点位置には、バルブV5、V6が配置されている。合流・分岐部GB21は、バルブV5を介して導入流路12Bと繋がり、バルブV5の開閉に応じて導入流路12Bに対して接続可能または遮蔽可能である。合流・分岐部GB21は、バルブV6の開閉に応じて合流・分岐部GB31に対して接続可能または遮蔽可能である。
【0042】
すなわち、合流・分岐部GB21は、接続部GB23、導入流路12B及び合流・分岐部GB31のうちの二つの流路から溶液の流入及び合流が可能である。また、合流・分岐部GB21は、接続部GB23、導入流路12B及び合流・分岐部GB31のうちの一つの流路から導入された溶液を、他二つの流路に分岐することが可能である。
【0043】
合流・分岐部GB22における接続部GB23が配置されていない頂点位置には、バルブV2、V7が配置されている。合流・分岐部GB11における基準となる正三角形の頂点位置の一つと、合流・分岐部GB22における基準となる正三角形の頂点位置の一つとは同一位置に配置されている。バルブV2は、合流・分岐部GB11、GB22において重なる頂点位置に配置されている。
【0044】
合流・分岐部GB22は、バルブV2の開閉に応じて合流・分岐部GB11に対して接続可能または遮蔽可能である。合流・分岐部GB22は、バルブV7を介して排出流路13Bと繋がり、バルブV7の開閉に応じて排出流路13Bに対して接続可能または遮蔽可能である。
【0045】
すなわち、合流・分岐部GB22は、接続部GB23、排出流路13B及び合流・分岐部GB11のうちの二つの流路から溶液の流入及び合流が可能である。また、合流・分岐部GB22は、接続部GB23、排出流路13B及び合流・分岐部GB11のうちの一つの流路から導入された溶液を、他二つの流路に分岐することが可能である。
【0046】
定量部GB2は、バルブV2、V5~V7を閉じることにより、合流・分岐部GB21、GB22及び接続部GB23の容積分の溶液の定量区画を実施できる。
【0047】
定量部GB3における接続部GB33は、合流・分岐部GB31及びGB32を接続する。接続部GB33は、循環流路10の一部を形成する溝で形成されている。本実施形態の合流・分岐部GB31、GB32及び接続部GB33は、同一深さに形成されている。合流・分岐部GB31、GB32及び接続部GB33の面積、深さ(すなわち容積)は、定量部GB3において定量する溶液の体積に応じて設定される。
【0048】
合流・分岐部GB31と合流・分岐部GB32とは、積層方向視で重ならない位置に配置されている。合流・分岐部GB31における接続部GB33が配置されていない頂点位置には、バルブV6、V8が配置されている。合流・分岐部GB31における基準となる正三角形の頂点位置の一つと、合流・分岐部GB21における基準となる正三角形の頂点位置の一つとは同一位置に配置されている。バルブV6は、合流・分岐部GB21、GB31において重なる頂点位置に配置されている。
【0049】
合流・分岐部GB31は、バルブV8を介して導入流路12Cと繋がり、バルブV8の開閉に応じて導入流路12Cに対して接続可能または遮蔽可能である。合流・分岐部GB31は、バルブV6の開閉に応じて合流・分岐部GB21に対して接続可能または遮蔽可能である。
【0050】
すなわち、合流・分岐部GB31は、接続部GB33、導入流路12C及び合流・分岐部GB21のうちの二つの流路から溶液の流入及び合流が可能である。また、合流・分岐部GB31は、接続部GB33、導入流路12C及び合流・分岐部GB21のうちの一つの流路から導入された溶液を、他二つの流路に分岐することが可能である。
【0051】
合流・分岐部GB32における接続部GB33が配置されていない頂点位置には、バルブV4、V9が配置されている。合流・分岐部GB12における基準となる正三角形の頂点位置の一つと、合流・分岐部GB32における基準となる頂点位置の一つとは同一位置に配置されている。バルブV4は、合流・分岐部GB12、GB32において重なる頂点位置に配置されている。
【0052】
合流・分岐部GB32は、バルブV4の開閉に応じて合流・分岐部GB12に対して接続可能または遮蔽可能である。合流・分岐部GB32は、バルブV9を介して排出流路13Cと繋がり、バルブV9の開閉に応じて排出流路13Cに対して接続可能または遮蔽可能である。
【0053】
すなわち、合流・分岐部GB32は、接続部GB33、排出流路13C及び合流・分岐部GB12のうちの二つの流路から溶液の流入及び合流が可能である。また、合流・分岐部GB32は、接続部GB33、排出流路13C及び合流・分岐部GB12のうちの一つの流路から導入された溶液を、他二つの流路に分岐することが可能である。
【0054】
定量部GB3は、バルブV4、V6、V8~V9を閉じることにより、合流・分岐部GB31、GB32及び接続部GB33の容積分の溶液の定量区画を実施できる。
【0055】
また、上記のバルブV1、V3、V5、V7~V9を閉じ、他のバルブV2、V4、V6を開くことにより、定量部GB1~GB3が繋がった循環流路10が形成される。
【0056】
上記の合流・分岐部GB11~GB12、GB21~GB22、GB31~GB32に係る基準となる三角形の頂点位置及びバルブV1~V9の中心位置は、二次元六方格子パターンで所定数配置された指標点から選択された位置にそれぞれ配置されている。
【0057】
導入流路12Aは、循環流路10の定量部GB1に溶液を導入(移送)するための流路である。導入流路12Aは、一端側において供給孔39Aに接続され、他端側においてバルブV1に接続される。導入流路12Bは、循環流路10の定量部GB2に溶液を導入(移送)するための流路である。導入流路12Bは、一端側において供給孔39Bに接続され、他端側においてバルブV5に接続される。導入流路12Cは、循環流路10の定量部GB3に溶液を導入(移送)するための流路である。導入流路12Cは、一端側において供給孔39Cに接続され、他端側においてバルブV8に接続される。
【0058】
排出流路13Aは、循環流路10の定量部GB1の溶液を廃液槽7に排出(移送)するための流路である。排出流路13Aは、一端側において排出孔37Aに接続され、他端側においてバルブV3に接続される。排出流路13Bは、循環流路10の定量部GB2の溶液を廃液槽7に排出(移送)するための流路である。排出流路13Bは、一端側において排出孔37Bに接続され、他端側においてバルブV7に接続される。排出流路13Cは、循環流路10の定量部GB3の溶液を廃液槽7に排出(移送)するための流路である。排出流路13Cは、一端側において排出孔37Cに接続され、他端側においてバルブV9に接続される。
【0059】
すなわち、合流・分岐部GB11は、バルブV1が設けられた頂点位置において、第1移送流路としての導入流路12Aと接続可能であり、バルブV2が設けられた頂点位置において、第2移送流路としての循環流路10の一部を形成する合流・分岐部GB22と接続可能である。また、合流・分岐部GB12は、バルブV3が設けられた頂点位置において、第1移送流路としての排出流路13Aと接続可能であり、バルブV4が設けられた頂点位置において、第2移送流路としての循環流路10の一部を形成する合流・分岐部GB32と接続可能である。
【0060】
合流・分岐部GB21は、バルブV5が設けられた頂点位置において、第1移送流路としての導入流路12Bと接続可能であり、バルブV6が設けられた頂点位置において、第2移送流路としての循環流路10の一部を形成する合流・分岐部GB31と接続可能である。また、合流・分岐部GB22は、バルブV7が設けられた頂点位置において、第1移送流路としての排出流路13Bと接続可能であり、バルブV2が設けられた頂点位置において、第2移送流路としての循環流路10の一部を形成する合流・分岐部GB11と接続可能である。
【0061】
合流・分岐部GB31は、バルブV8が設けられた頂点位置において、第1移送流路としての導入流路12Cと接続可能であり、バルブV6が設けられた頂点位置において、第2移送流路としての循環流路10の一部を形成する合流・分岐部GB21と接続可能である。また、合流・分岐部GB32は、バルブV9が設けられた頂点位置において、第1移送流路としての排出流路13Cと接続可能であり、バルブV4が設けられた頂点位置において、第2移送流路としての循環流路10の一部を形成する合流・分岐部GB12と接続可能である。
【0062】
図4は、図2における基材5のA-A線視断面図である。なお、ここでは、合流・分岐部GB21、GB31及びバルブV6の構造を代表して示すが、合流・分岐部GB11、GB12、GB22、GB32及びバルブV1~V5、V7~V9についても同様の構成である。
【0063】
まず、バルブV6の構造について説明する。
図4に示すように、第1基材6には、バルブV6を保持するバルブ保持孔34が設けられる。バルブV6は、バルブ保持孔34において、第1基材6に保持される。バルブV6は、弾性材料から構成される。バルブV6に採用可能な弾性材料としては、ゴム、エラストマー樹脂などが例示される。バルブV6の直下の流路11には、半球状の窪み40が設けられる。窪み40は、第2基材9の上面9bにおいて、平面視円形状である。上面9bにおける窪み40の直径としては、例えば、1.0~3.0mmが好ましい。
【0064】
バルブV6は、下側に向かって弾性変形して流路の断面積を変化させることにより、流路11における溶液の流れを調整する。バルブV6は、下側に向かって弾性変形して窪み40に当接することで流路11を閉塞する。また、バルブV6は、窪み40から離間することで流路11を開放する(図4の仮想線(二点鎖線))。
【0065】
合流・分岐部GB21、GB31の底面85qには、バルブV6(窪み40)と合流・分岐部GB21、GB31の境界に位置し、バルブV6に向かうに従い天面85pとの距離を小さくする傾斜部SLが設けられている。傾斜部SLが設けられることによって、例えば、傾斜部SLが設けられず、窪み40の底部と合流・分岐部GB21、GB31の底面85qとの境界に段差(角部)が存在する場合と比較して、溶液をバルブV6にスムーズに導入することができ、段差(角部)の気泡残りを効果的に抑制できる。
【0066】
また、導入流路12A~12Cのそれぞれと窪み40との境界、排出流路13A~13Cのぞれぞれと窪み40との境界についても、上述した傾斜部SLが設けられている。傾斜部SLは、流路11が扁平であり、且つ、溶液に対して親液性を有する場合に特に有効である。流路11が扁平であるとは、流路11の幅よりも流路11の深さが小さいことである。
【0067】
各傾斜部SLは、バルブの中心に向かうのに従って60°の角度で縮径するテーパ形状を有している。当該テーパ形状における上記の傾斜部SLの最大幅W(図6参照)としては、0.5~1.5mm程度が好ましい。
【0068】
なお、窪み40の最も低い位置が合流・分岐部GB21、GB31の底面85qよりも高い位置にある場合は、上記傾斜部SLが設けられる構成が有効に作用するが、窪み40の最も低い位置が合流・分岐部GB21、GB31の底面85qよりも低い位置にある場合は、傾斜部SLを設けることなく、底面85qと窪み40とが交差する構成であってもよい。
【0069】
(リザーバーから流路11に溶液を供給する手順)
次に、流体デバイス1においてリザーバー29から流路11に溶液Sを供給する手順について説明する。
図1に示すように、リザーバー29には、予め溶液Sが充填されている。流体デバイス1を用いた測定では、まず、リザーバー29内の溶液Sを流路11に移動させる。より具体的には、循環流路10のそれぞれの定量部GB1~GB3のそれぞれにリザーバー29から溶液Sを順次導入する。
【0070】
まず、定量部GB1に溶液SAを導入する際のバルブV1~V9の開閉について図1及び図5を基に説明する。まず、定量部GB1を定量部GB2と区画するバルブV2と、定量部GB1を定量部GB3と区画するバルブV4とを閉じる。また、定量部GB1を導入流路12Aに繋げるバルブV1と、定量部GB1を排出流路13Aに繋げるバルブV3とを開く。
【0071】
次に、図示略の吸引装置を用いて、図1に示す空気孔35から廃液槽7内を負圧吸引する。これにより、リザーバー29A内の溶液SAは、供給孔39Aを介して流路11側に移動する。また、リザーバー29の溶液SAの後方には、注入孔32Aを通過した空気が導入される。これによりリザーバー29Aに収容された溶液SAは、供給孔39A及び導入流路12Aを介して、循環流路10の定量部GB1に導入される。この後、バルブV1、V3を閉じることにより、溶液SAは、定量部GB1において定量される。
【0072】
また、定量部GB2に溶液SBを導入する際には、バルブV2、V4に加えてバルブV6を閉じる。さらに、定量部GB2と排出流路13Bとに繋がるバルブV7を開く。また、定量部GB2と導入流路12Bとに繋がるバルブV5を開く。
【0073】
そして、吸引装置を用いて、空気孔35から廃液槽7内を負圧吸引する。これにより、リザーバー29B内の溶液SBは、供給孔39Bを介して流路11側に移動する。また、リザーバー29Bの溶液SBの後方には、注入孔32Bを通過した空気が導入される。これによりリザーバー29Bに収容された溶液SBは、供給孔39B及び導入流路12Bを介して、循環流路10の定量部GB2に導入される。この後、バルブV5、V7を閉じることにより、溶液SBは、定量部GB2において定量される。
【0074】
また、定量部GB3に溶液SCを導入する際には、バルブV4、V6を閉じる。さらに、定量部GB3と排出流路13Cとに繋がるバルブV9を開く。また、定量部GB3と導入流路12Cとに繋がるバルブV8を開く。
【0075】
そして、吸引装置を用いて、空気孔35から廃液槽7内を負圧吸引する。これにより、リザーバー29C内の溶液SCは、供給孔39Cを介して流路11側に移動する。また、リザーバー29Cの溶液SCの後方には、注入孔32Cを通過した空気が導入される。これによりリザーバー29Cに収容された溶液SCは、供給孔39C及び導入流路12Cを介して、循環流路10の定量部GB3に導入される。この後、バルブV8、V9を閉じることにより、溶液SCは、定量部GB3において定量される。
【0076】
例えば、定量部GB1に溶液SAを導入する際に、導入流路12AからバルブV1を介して合流・分岐部GB11に導入された溶液SAは、接続部GB13を介して合流・分岐部GB12に導入される。
【0077】
ここで、導入流路12AとバルブV1との境界には、上述した傾斜部SLが設けられているため、導入流路12AとバルブV1(窪み40)との境界に気泡残りを抑制した状態で溶液をスムーズにバルブV1に導入して満たすことができる。また、合流・分岐部GB11は、平面視で正三角形に形成されており、バルブV1(窪み40)を基点として他の頂点位置にあるバルブV2及び接続部GB13までの距離が同一である。そのため、バルブV1から合流・分岐部GB11に導入された溶液は、図6に二点鎖線で示すように、バルブV2及び接続部GB13にほぼ同時に到達する。
その結果、例えば、接続部GB13に先に到達した溶液が接続部GB13に流動してしまい、バルブV2近辺に気泡が残る事態を抑制することが可能となる。
【0078】
また、接続部GB13を介して溶液が導入された合流・分岐部GB12についても、合流・分岐部GB12が平面視で正三角形に形成されており、接続部GB13を基点として他の頂点位置にあるバルブV3、V4までの距離は同一である。そのため、接続部GB13から合流・分岐部GB12に導入された溶液は、図6に二点鎖線で示すように、バルブV3、V4にほぼ同時に到達する。
その結果、例えば、バルブV3に先に到達した溶液が排出流路13Aに流動してしまい、バルブV4近辺に気泡が残る事態を抑制することが可能となる。
【0079】
従って、この後にバルブV1、V3を閉じることにより、定量部GB1において気泡残りが抑制された状態で溶液SAを定量することができる。また、定量部GB2においても、定量部GB1と同様に、導入流路12BとバルブV5との境界に傾斜部SLが設けられ、合流・分岐部GB21、GB22が平面視で正三角形に形成されているため、導入流路12BとバルブV5(窪み40)との境界に気泡残りを抑制した状態で溶液SBをスムーズにバルブV5に導入して満たすことができるとともに、合流・分岐部GB21から接続部GB23を介して合流・分岐部GB22に気泡残りを抑制した状態で溶液SBを導入して定量することができる。
【0080】
さらに、定量部GB3においても、定量部GB1、GB2と同様に、導入流路12CとバルブV8との境界に傾斜部SLが設けられ、合流・分岐部GB31、GB32が平面視で正三角形に形成されているため、導入流路12CとバルブV8(窪み40)との境界に気泡残りを抑制した状態で溶液SCをスムーズにバルブV8に導入して満たすことができるとともに、合流・分岐部GB31から接続部GB33を介して合流・分岐部GB32に気泡残りを抑制した状態で溶液SBを導入して定量することができる。
【0081】
(流路11内の溶液を混合する手順)
次に、流体デバイス1の流路に供給された溶液を混合する手順について図5を基に説明する。まず、上述したように循環流路10のそれぞれの定量部GB1、GB2、GB3にそれぞれ溶液SA、SB、SCを導入(定量)した状態で、バルブV4、V6、V8~V9を閉じ、バルブV2、V4、V6を開く。これにより、定量部GB1、GB2、GB3が繋がった循環流路10が形成される。
【0082】
そして、ポンプPを用いて循環流路10内の溶液SA、SB、SCを送液して循環させる。循環流路10を循環する溶液SA、SB、SCは、流路内の流路壁面と溶液の相互作用(摩擦)により、壁面周辺の流速は遅く、流路中央の流速は速くなる。その結果、溶液の流速に分布ができるため、定量部GB1、GB2、GB3でそれぞれ定量された溶液SA、SB、SCの混合および反応が促進される。
【0083】
以上説明したように、本実施形態の流体デバイス1では、正三角形の頂点位置同士を結ぶ線分と平行な輪郭で囲まれ、溶液の合流または分岐が行われる一対の合流・分岐部GB11、GB12と、一対の合流・分岐部GB21、GB22と、一対の合流・分岐部GB31、GB32と、上記一対の合流・分岐部における頂点の一つを介して一対の合流・分岐部同士を接続する接続部GB13、GB23、GB33とを有する定量部GB1、GB2、GB3が設けられ、定量部GB1、GB2、GB3が非配置の頂点位置にバルブV1~V9が設けられているため、気泡の発生を抑制しつつ定量部GB1、GB2、GB3内に溶液SA、SB、SCを導入して高精度に定量することが可能になる。
【0084】
そのため、本実施形態の流体デバイス1では、気泡に影響されずに高精度に定量された溶液SA、SB、SCを用いて、高精度の測定を実施することが可能になる。
【0085】
また、本実施形態の流体デバイス1では、一対の合流・分岐部GB11、GB12、一対の合流・分岐部GB21、GB22、及び一対の合流・分岐部GB31、GB32とバルブV1~V9における窪み40との境界に傾斜部SLが設けられているため、窪み40の底部と上記の合流・分岐部の底面85qとの境界に段差(角部)が存在する場合と比較して、溶液をバルブV1~V9にスムーズに導入することができ、段差における気泡残りを効果的に抑制できる。
【0086】
循環流路10中に検出部が設けられている場合には、第1溶液に含まれる試料物質を検出することが可能である。なお、試料物質を検出するとは、試料物質を直接的または間接的に検出することが可能である。試料物質を間接的に検出する例として、試料物質を、試料物質の検出を補助する検出補助物質と結合させてもよい。標識物質(検出補助物質)を用いる場合、標識物質と混合し検出補助物質と結合させた試料物質を含む溶液を第1溶液として用いればよい。検出部としては、試料物質を光学的に検出するものであってもよく、一例として、対物レンズ、撮像部を備えていてもよく、撮像部は、例えばEMCCD(Electron Multiplying Charge Coupled Device)カメラを備えていてもよい。また、検出部は、試料物質を電気化学検出するものであってもよく、一例として、電極を備えていてもよい。
【0087】
標識物質(検出補助物質)としては、例えば、蛍光色素、蛍光ビーズ、蛍光タンパク質、量子ドット、金ナノ粒子、ビオチン、抗体、抗原、エネルギー吸収性物質、ラジオアイソトープ、化学発光体、酵素等が挙げられる。
蛍光色素としては、FAM(カルボキシフルオレセイン)、JOE(6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ2’,7’-ジメトキシフルオレセイン)、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)、TET(テトラクロロフルオレセイン)、HEX(5’-ヘキサクロロ-フルオレセイン-CEホスホロアミダイト)、Cy3、Cy5、Alexa568、Alexa647等が挙げられる。
酵素としては、アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ等が挙げられる。
【0088】
さらに、循環流路10に上記試料物質を捕捉できる捕捉部が設けられている場合には、上記検出部により試料物質を効率的に検出できる。試料物質の捕捉を継続したまま第2流路120A~120Eから溶液を排出することで試料物質を濃縮することができる。また、試料物質の捕捉を継続したまま循環流路10に洗浄液を導入し循環させることで、捕捉部で捕捉された試料物質を洗浄することが可能である。
【0089】
捕捉部は、試料物質自体、又は試料物質と結合された担体粒子を捕捉することで、循環流路10を循環する溶液から、試料物質を収集することができる。捕捉部としては、例えば、磁石等の磁力発生源である。担体粒子としては、例えば、磁気ビーズ又は磁性粒子である。
【0090】
また、流体デバイス1内に循環流路10とは異なる循環流路を反応部として設け、当該反応部に上記検出部、捕捉部等を設けることにより、例えば、検出、捕捉、洗浄、希釈等の所望の反応をさせることが可能となる。
【0091】
[システム]
次に、上記の流体デバイス1を備えるシステムSYSについて、図7及び図8を参照して説明する。
図7は、システムSYSの基本構成を示す断面図である。
【0092】
図7に示すように、システムSYSは、上記の流体デバイス1及び駆動部TRを備えている。流体デバイス1は、駆動部TRにセットして使用される。駆動部TRは、板状に形成されており、流体デバイス1をセットしたときに、第1基材の上面6bと対向して配置される。駆動部TRは、流体デバイス1をセットしたときに、第1基材6の上面6bと当接する当接部72を有する。当接部72は、バルブ保持孔34の周囲を取り囲む環状に形成されている。当接部72は、第1基材6の上面6bと当接したときに、上面6bとの間を気密にシール可能である。
【0093】
駆動部TRは、流体デバイス1のバルブV1~V9に駆動流体を供給する駆動流体供給孔(供給部)73を有する。駆動流体供給孔73には、流体供給源Dから駆動流体(例えば、エアー)が供給される。駆動流体は、バルブV1~V9を変形させる用力である。
【0094】
図8は、駆動部TRの平面図である。図8に示すように、駆動部TRは、複数の当接部72及び駆動流体供給孔73を有している。各駆動流体供給孔73には、流体供給源Dから駆動流体が独立して供給可能である。当接部72及び駆動流体供給孔73は、二次元六方格子パターンで所定数(図8では、182個)配列されている。上記流体デバイス1におけるバルブV1~V9の中心位置は、二次元六方格子パターンで配置された当接部72及び駆動流体供給孔73から選択された位置(図8に黒塗りで示される位置)に配置されている。
【0095】
上記構成のシステムSYSにおいては、流体デバイス1が駆動部TRにセットされ、上述したバルブV1~V9の開閉に応じて流体供給源Dから駆動流体が供給されることにより、定量部GB1、GB2、GB3への溶液SA、SB、SCの導入、循環流路10における溶液SA、SB、SCの混合を実施できる。
【0096】
本実施形態のシステムSYSでは、二次元六方格子パターンで配置された当接部72及び駆動流体供給孔73から選択された位置に流体デバイス1のバルブV1~V9を配置することにより、上述したように、正三角形の頂点位置同士を結ぶ線分と平行な輪郭で囲まれた合流・分岐部を容易に設けることが可能になる。そのため、本実施形態のシステムSYSでは、上記流体デバイス1における流路11、合流・分岐部GB11、GB12、GB21、GB22、GB31、GB32の配置や数に限られず、測定(検査)対象に応じて、溶液を導入する際に気泡が生じることを抑制できる最適な流路設計が可能になる。
【0097】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0098】
例えば、上記実施形態で例示した流路、合流・分岐部、バルブの配置や数は一例であり、上述したように、二次元六方格子パターンで配置された当接部72及び駆動流体供給孔73から選択された位置に流体デバイス1のバルブ(及び合流・分岐部、流路)を配置することにより、種々の測定(検査)対象に容易に対応可能である。
【0099】
また、上記実施形態では、合流・分岐部GB11、GB12、GB21、GB22、GB31、GB32の輪郭が、バルブV1~V9の中心位置が配置された正三角形の頂点位置同士を結ぶ線分と平行である構成を例示したが、この構成に限定されず、例えば、当該輪郭が頂点位置同士を結ぶ線分である構成であってもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、バルブV、V1~V8の中心が、一対の合流・分岐部GB、GB1~GB3を形成する正三角形の頂点位置に配置される構成を例示したが、正三角形の頂点位置を含む領域に設けられていればこの構成に限定されない。例えば、バルブV、V1~V8の中心が一対の合流・分岐部GB、GB1~GB3を形成する正三角形の頂点位置から偏心して配置される構成であってもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、定量部GB1が同一の頂点位置を有する一対の合流・分岐部GB11、GB12構成を例示したが、この構成に限定されず、例えば、一対の合流・分岐部GB21、GB22あるいは一対の合流・分岐部GB31、GB32を有する定量部GB2、GB3のように、頂点位置を共有しない構成であってもよい。
【0102】
また、上記実施形態では、流体デバイス1におけるバルブV1~V9の中心位置が二次元六方格子パターンで配置された指標点から選択された位置に配置される構成を例示したが、この構成に限定されず、二次元六方格子パターンから外れた位置に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0103】
1…流体デバイス、 5…基材、 6…第1基材(他方の基板)、 9…第2基材(一方の基板)、 10…循環流路(第2移送流路)、 11…流路、 12A、12B、12C…導入流路(第1移送流路)、 13A、13B、13C…排出流路(第1移送流路)、 40…窪み、 GB1、GB2、GB3…定量部、 GB11、GB12、GB21、GB22、GB31、GB32…合流・分岐部、 GB13、GB23、GB33…接続部、 S、SA、SB、SC…溶液、 V1~V9…バルブ
図1
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