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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】合わせガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20221220BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20221220BHJP
   B60J 1/02 20060101ALI20221220BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C03C27/12 M
B60J1/00 H
B60J1/02 Z
H05B3/20 367B
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020538227
(86)(22)【出願日】2019-07-10
(86)【国際出願番号】 JP2019027360
(87)【国際公開番号】W WO2020039781
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2018154917
(32)【優先日】2018-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】儀間 裕平
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/204291(WO,A1)
【文献】特開2018-070385(JP,A)
【文献】特開2000-030847(JP,A)
【文献】特開平08-072674(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0251975(US,A1)
【文献】特開2016-143914(JP,A)
【文献】特表2006-523601(JP,A)
【文献】特表2014-511327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12
B60J 1/00
B60J 1/02
H05B 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対のガラス板と、
前記一対のガラス板の間に位置する中間膜と、
前記一対のガラス板の間に位置し、前記中間膜に接する面を備えた導電性発熱体と、
前記一対のガラス板の間に位置し、平面視で前記導電性発熱体を挟むように対向して配置され、前記導電性発熱体と接続された第1バスバー及び第2バスバーと、
少なくとも一部が前記一対のガラス板の間に位置し、前記第1バスバー及び前記第2バスバーと一対の電極取り出し部とを接続する第3バスバーと、
少なくとも一部が前記一対のガラス板の間に位置し、前記第1バスバー、前記第2バスバー、前記第3バスバーのうち少なくとも1つのバスバーの少なくとも一部の領域に重畳して配置された第4バスバーと、を有し、
前記導電性発熱体、前記第1バスバー、前記第2バスバー、及び前記第3バスバーが同一材料により一体に形成されている合わせガラス。
【請求項2】
前記第4バスバーは、前記一対のガラス板の一方に接している請求項1に記載の合わせガラス。
【請求項3】
前記第4バスバーは、前記少なくとも1つのバスバーと前記中間膜との間に位置する請求項1に記載の合わせガラス。
【請求項4】
前記第4バスバーは、少なくとも前記第3バスバーに重畳している請求項1乃至3の何れか一項に記載の合わせガラス。
【請求項5】
前記第4バスバーは、はんだ又は導電性接着層から選択される接着部材のうち少なくとも一つの接着部材を介して前記少なくとも1つのバスバーに接着される請求項1乃至4の何れか一項に記載の合わせガラス。
【請求項6】
前記第4バスバーは、前記少なくとも1つのバスバーに直接接触する請求項1乃至4の何れか一項に記載の合わせガラス。
【請求項7】
前記一対のガラス板は、それぞれ左縁部及び右縁部を有し、
前記第1バスバーは前記左縁部に沿って配置され、前記第2バスバーは前記右縁部に沿って配置される請求項1乃至6の何れか一項に記載の合わせガラス。
【請求項8】
前記導電性発熱体は、複数の線状部材を有する請求項1乃至7の何れか一項に記載の合わせガラス。
【請求項9】
前記導電性発熱体は、前記複数の線状部材によって網目状に形成される請求項8に記載の合わせガラス。
【請求項10】
前記線状部材は、線幅が20μm以下である請求項8又は9に記載の合わせガラス。
【請求項11】
前記導電性発熱体、前記第1バスバー、前記第2バスバー、及び前記第3バスバーは、厚さが20μm以下である請求項1乃至10の何れか一項に記載の合わせガラス。
【請求項12】
前記第4バスバーは、金、銀、銅、アルミニウム、錫の何れかを含む請求項1乃至11の何れか一項に記載の合わせガラス。
【請求項13】
前記一対のガラス板の間に位置し、前記中間膜が、前記導電性発熱体、前記第1バスバー、前記第2バスバー、及び前記第3バスバーを表面に有する第1中間膜と、前記第1中間膜に接して積層された第2中間膜とを有する請求項1乃至12の何れか一項に記載の合わせガラス。
【請求項14】
前記第1中間膜の膜厚が0.01mm以上0.8mm以下である請求項13に記載の合わせガラス。
【請求項15】
前記合わせガラスが情報の送受信用領域を有し、
前記導電性発熱体は、少なくとも前記情報の送受信領域に配置されている請求項1乃至14の何れか一項に記載の合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車又は鉄道車両の窓ガラスとして、一対のガラス板の間で導電性発熱体(複数の抵抗加熱線等)を挟み込んだ合わせガラス(電熱窓ガラス又は電熱ガラスとも言う。)を適用することが知られている。この合わせガラスによれば、導電性発熱体を発熱させることにより、窓ガラスの曇を晴らしたり、冬季に窓ガラスに付着した水分の凍結を解消したりできる。
【0003】
このような合わせガラスは、一般に一対のガラス板と、一対のガラス板の間に挟まれた中間膜と、一対のガラス板の間の一方の端部に設けられた第1バスバーと、一対のガラス板の間の他方の端部に設けられた第2バスバーと、第1バスバーと第2バスバーとの間に設けられた導電性発熱体と、第1バスバー及び第2バスバーと電極取り出し部を接続する第3バスバーとを有している。導電性発熱体は、合わせガラスの周辺部を除いた透視域に配置されている。
【0004】
なお、導電性発熱体を備えた合わせガラスとしては、タングステン製の細い抵抗加熱線が埋設された中間膜を一対のガラス板の間に配置したもの(例えば、特許文献1参照)、ガラス上に透明導電性被膜を形成したもの(例えば、特許文献2参照)、基材上に導電性パターンが設けられたパターンシートを一対のガラス板の間に配置したもの(例えば、特許文献3参照)が知られている。又、導電性発熱体としては、透明フイルム基材上に導電部を形成したもの(例えば、特許文献4参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-72674号公報
【文献】特開平6-318492号公報
【文献】特開2016-128370号公報
【文献】特開2011-210487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の導電性発熱体を備えた合わせガラスは、ガラス板の透視域に配置された導電性発熱体の発熱量を十分に確保するため、第1バスバー、第2バスバー、及び第3バスバーには低抵抗の金属が用いられている。
【0007】
通常、第1バスバー、第2バスバー、及び第3バスバーは、外観の意匠性の観点から、ガラス板の周辺部に形成された遮蔽層(例えば、黒色セラミックス層)に隠蔽されるように配置される。しかし、近年の窓ガラスのデザイン性の向上に伴い、遮蔽層の幅が小さくなる傾向にある。遮蔽層の幅が小さくなると第1バスバー、第2バスバー、及び第3バスバーの幅も小さくせざるを得ない。このため、第1バスバー、第2バスバー、及び第3バスバーの抵抗値が上がり、第1バスバー、第2バスバー、及び第3バスバーでの発熱損失が増大するので、導電性発熱体の発熱効率が低下するという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、導電性発熱体の発熱効率を向上させた合わせガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本合わせガラスは、互いに対向する一対のガラス板と、前記一対のガラス板の間に位置する中間膜と、前記一対のガラス板の間に位置し、前記中間膜に接する面を備えた導電性発熱体と、前記一対のガラス板の間に位置し、平面視で前記導電性発熱体を挟むように対向して配置され、前記導電性発熱体と接続された第1バスバー及び第2バスバーと、少なくとも一部が前記一対のガラス板の間に位置し、前記第1バスバー及び前記第2バスバーと一対の電極取り出し部とを接続する第3バスバーと、少なくとも一部が前記一対のガラス板の間に位置し、前記第1バスバー、前記第2バスバー、前記第3バスバーのうち少なくとも1つのバスバーの少なくとも一部の領域に重畳して配置された第4バスバーと、を有し、前記導電性発熱体、前記第1バスバー、前記第2バスバー、及び前記第3バスバーが同一材料により一体に形成されていることを要件とする。
【発明の効果】
【0010】
開示の一実施態様によれば、導電性発熱体の発熱効率を向上させた合わせガラスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施の形態に係る車両用のフロントガラスを例示する図(その1)である。
図2】第1の実施の形態に係る車両用のフロントガラスを例示する図(その2)である。
図3】第1の実施の形態の変形例1に係る車両用のフロントガラスを例示する図である。
図4】第1の実施の形態の変形例2に係る車両用のフロントガラスを例示する図である。
図5】第1の実施の形態の変形例3に係る車両用のフロントガラスを例示する図である。
図6】第2の実施の形態に係る車両用のフロントガラスを例示する図(その1)である。
図7】第2の実施の形態に係る車両用のフロントガラスを例示する図(その2)である。
図8】第2の実施の形態に係る車両用のフロントガラスを例示する図(その3)である。
図9】第2の実施の形態に係る車両用のフロントガラスを例示する図(その4)である。
図10】第2の実施の形態に係る車両用のフロントガラスを例示する図(その5)である。
図11】第2の実施の形態に係る車両用のフロントガラスを例示する図(その6)である。
図12】第4バスバー近傍の断面構造を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。又、各図面において、本発明の内容を理解しやすいように、大きさや形状を一部誇張している場合がある。
【0013】
なお、ここでは、車両用のフロントガラスを例にして説明するが、これには限定されず、実施の形態に係る合わせガラスは、車両用のフロントガラス以外にも適用可能である。又、車両とは、代表的には自動車であるが、電車、船舶、航空機等を含むガラスを有する移動体を指すものとする。
【0014】
又、平面視とはフロントガラスの所定領域を所定領域の法線方向から視ることを指し、平面形状とはフロントガラスの所定領域を所定領域の法線方向から視た形状を指すものとする。
【0015】
〈第1の実施の形態〉
図1は、第1の実施の形態に係る車両用のフロントガラスを例示する図(その1)であり、図1(a)はフロントガラスを車室内から車室外に視認した様子を模式的に示した図である。図1(b)は、図1(a)のA-A線に沿う部分拡大断面図である。
【0016】
図1(a)では、説明の便宜上、実際の湾曲した形状を省略しフロントガラス20を平面的に示している。なお、以下の説明において、符号20をフロントガラス20の上縁部と称し、符号20を下縁部と称し、符号20を左縁部と称し、符号20を右縁部と称する。ここで、フロントガラス20を右ハンドル車の車両に取り付けた場合において、上縁部とは車両のルーフ側の縁部を指し、下縁部とはエンジンルーム側の縁部を指し、左縁部とは助手席側の縁部を指し、右縁部とは運転席側の縁部を指す。
【0017】
図1に示すように、フロントガラス20は、ガラス板21と、ガラス板22と、中間膜23と、遮蔽層24と、導電性発熱体30と、第1バスバー31と、第2バスバー32と、第3バスバー33と、第4バスバー34とを有する車両用の合わせガラスである。
【0018】
ガラス板21は、フロントガラス20を車両に取り付けたときに車内側となる車内側ガラス板である。又、ガラス板22は、フロントガラス20を車両に取り付けたときに車外側となる車外側ガラス板である。
【0019】
ガラス板21とガラス板22は互いに対向する一対のガラス板であり、中間膜23、導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、第3バスバー33、及び第4バスバー34は一対のガラス板の間に位置している。但し、第3バスバー33及び第4バスバー34は、少なくとも一部が一対のガラス板の間に位置していればよく、一対のガラス板の間から一対のガラス板の外側に延伸する部分を有してもよい。
【0020】
ガラス板21とガラス板22とは、中間膜23、導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、第3バスバー33、及び第4バスバー34を挟持した状態で固着されている。
【0021】
導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、第3バスバー33、及び第4バスバー34は、中間膜23とガラス板21との間に配置されている。導電性発熱体30及び第4バスバー34の車内側の面は、ガラス板21の車外側の面21bに接している。又、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33の車内側の面は、第4バスバー34の車外側の面に接している。又、導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33の車外側の面は、中間膜23の車内側の面に接している。なお、中間膜23は、複数層からなる積層体であってもよい。
【0022】
遮蔽層24は、不透明な層であり、例えば、フロントガラス20の周縁部(上縁部20、下縁部20、左縁部20、右縁部20)に沿って帯状に設けることができる。図1の例では、遮蔽層24は、ガラス板21の車内側の面21aに設けられている。但し、遮蔽層24は、必要に応じ、ガラス板22の車内側の面22aに設けられてもよいし、ガラス板21の車内側の面21a及びガラス板22の車内側の面22aの両方に設けられてもよい。
【0023】
フロントガラス20の周縁部に不透明な遮蔽層24が存在することで、フロントガラス20の周縁部を車体に保持するウレタン等の樹脂や、カメラ等を係止するブラケットをフロントガラス20に貼り付ける接着部材等の紫外線による劣化を抑制できる。又、バスバーを隠蔽できる。
【0024】
図2は、第1の実施の形態に係る車両用のフロントガラスを例示する図(その2)であり、フロントガラスを車室内から車室外に視認した様子を模式的に示した図である。図2では、遮蔽層24の形成領域を例示している。
【0025】
遮蔽層24は、フロントガラス20の上縁部20及び下縁部20に沿って形成される遮蔽領域24及び24と、フロントガラス20の左縁部20及び右縁部20に沿って形成される遮蔽領域24及び24とを含んでいる。遮蔽層24において、フロントガラス20の左右の視界を広げる観点から、遮蔽領域24及び24の幅は遮蔽領域24及び24の幅より小さく形成されていることが好ましい。
【0026】
フロントガラス20において、遮蔽領域24、24、24、及び24で囲まれる台形状の領域は透視域28であり、透視域28に図1に示す導電性発熱体30が配置される。導電性発熱体30は、透視域28の全面に設けられていてもよく、その一部に設けられていてもよい。なお、図1(a)は遮蔽層24を透視した状態であり、遮蔽層24、遮蔽領域24、24、24、及び24の符号のみを図示している。後述の図3図9についても同様である。
【0027】
図1に戻り、導電性発熱体30は、複数の線状部材を有している。複数の線状部材によって形成されるパターンは、特に限定はされないが、例えば、図1(a)に示す網目状(メッシュ状)とすることができる。図1(a)において、各々の線状部材を波線(例えば、正弦波、三角波、矩形波等)や、波線と直線との組み合わせ等としてもよい。
【0028】
導電性発熱体30において、各々の線状部材が波線である場合、波長や周期が一定でなくてもよい。又、各々の線状部材が波線である場合、隣接する線状部材の位相は揃っていてもよいし、ずれていてもよいが、隣接する線状部材の位相がずれていると、光の規則的な散乱による光芒を抑制できる点で好適である。
【0029】
第1バスバー31及び第2バスバー32は、平面視で透視域28の導電性発熱体30を挟むように対向して配置され、導電性発熱体30と接続されている。第1バスバー31はフロントガラス20の上縁部20に沿って配置されており、第2バスバー32はフロントガラス20の下縁部20に沿って配置されている。
【0030】
第3バスバー33は、第1バスバー31と電極取り出し部38、第2バスバー32と電極取り出し部39を接続するバスバーである。すなわち、電極取り出し部38は第3バスバー33を介して第1バスバー31と電気的に接続され、電極取り出し部39は第3バスバー33を介して第2バスバー32と電気的に接続されている。電極取り出し部38及び39は、第3バスバー33の端部に位置し、外部電源の正側及び負側と接続される一対の電極取り出し部である。
【0031】
電極取り出し部38と電極取り出し部39との間に電圧が印加されると、第1バスバー31と第2バスバー32との間に接続された導電性発熱体30に電流が流れ、導電性発熱体30が発熱する。
【0032】
電極取り出し部38と電極取り出し部39は、第3バスバー33をそのまま合わせガラスの外に引き出した形態とすることができる。車内側のガラス板21に切り欠きを設け、そこに第3バスバー33を固定し、通電に必要なコネクタを接続できる。車内側のガラス板21に切り欠きを設け、そこで第3バスバー33とコネクタとの接続を行う場合は、接続部に水分が浸入して短絡や腐食するのを防ぐため、シリコーン等の樹脂で封止されることが望ましい。
【0033】
電極取り出し部38と電極取り出し部39は、第3バスバー33が合わせガラスの内部で電極取り出し用のハーネスに接続されており、そのハーネスが合わせガラスの外に出ている構造でも良い。電極取り出し用のハーネスとしては、フラットハーネスが好適に用いられるが、この限りではなくワイヤーハーネス等を用いてもよい。第3バスバー33と電極取り出し用のハーネスの接続方法は、はんだ又は導電粘着材(導電性接着層)から選択される接着部材のうち少なくとも一つの接着部材を使用できる。又、第3バスバー33は、上記のはんだ又は導電粘着材を介さずに電極取り出し用のハーネスに直接接触させてもよい。
【0034】
第4バスバー34は、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33に重畳して配置されている。第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33に第4バスバー34を重畳して配置することにより、以下の効果が得られる。
【0035】
すなわち、第4バスバー34を重畳して配置した領域では、第4バスバー34の断面積に対応する分だけ第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33の抵抗値を小さくできる。これにより、導電性発熱体30の発熱量を大きくするために第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33に流れる電流が増大した場合でも、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33での発熱損失を抑制できる。従って、フロントガラス20では、本来加熱すべき透視域28における防曇及び融氷性能を十分に発揮できる。
【0036】
又、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33は、遮蔽領域24、24、及び24に隠蔽されるように配置されることが好ましい。この際、フロントガラス20のデザイン性の向上に伴い、遮蔽領域24、24、及び24の幅を小さくすると、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33の幅も小さくせざるを得ない。
【0037】
仮に第4バスバー34を設けていないとすれば、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33の幅を小さくしたことに伴って、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33の抵抗値が大きくなる。
【0038】
しかし、フロントガラス20では、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33に第4バスバー34が重畳して配置されている。そのため、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33の幅を小さくしても、これらの抵抗値を小さくできる。
【0039】
なお、本実施の形態では、一例として、第1バスバー31、第2バスバー32、第3バスバー33の全てに第4バスバー34を重畳して配置しているが、第4バスバー34の重畳形態は、これには限定されない。第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33のうち何れか1つ以上のバスバーを選択し、選択したバスバーに第4バスバー34を重畳して配置した形態であればよい。又、第4バスバー34は、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33のうちから選択した1つ以上のバスバーと平面視で完全に重なっていてもよく、一部が重なっていてもよい。すなわち、第4バスバー34は、第1バスバー31、第2バスバー32、第3バスバー33のうち少なくとも1つのバスバーの少なくとも一部の領域に重畳して配置されればよい。
【0040】
第4バスバー34の好ましい重畳形態の一例としては、少なくとも第3バスバー33に重畳して配置する形態が挙げられる。この形態が好ましい理由は下記の通りである。
【0041】
一般的に、フロントガラスの場合、運転視野を十分に確保する観点から、左右の遮蔽領域24及び24の幅を上下の遮蔽領域24及び24の幅よりも小さくすることが要求される。このため、左右の遮蔽領域24及び24によってバスバーを隠蔽しようとすると、そのバスバーの幅を確保することが難しく、バスバーの抵抗値が上がり、発熱損失が起きやすい。
【0042】
従って、大部分が遮蔽領域24に配置され、幅を狭くせざるを得ない第3バスバー33に第4バスバー34を重畳して配置することにより、第3バスバー33の抵抗値を小さくでき、発熱損失を抑制できる。
【0043】
次に、フロントガラス20の各構成要素の材料等について説明する。
【0044】
〔ガラス板21、22〕
ガラス板21及び22は、無機ガラスであっても有機ガラスであってもよい。無機ガラスとしては、例えば、ソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が特に制限なく用いられる。これらのうちでもソーダライムガラスが特に好ましい。無機ガラスは、未強化ガラス、強化ガラスの何れでもよい。未強化ガラスは、溶融ガラスを板状に成形し、徐冷したものである。強化ガラスは、未強化ガラスの表面に圧縮応力層を形成したものである。
【0045】
強化ガラスは、物理強化ガラス(例えば風冷強化ガラス)、化学強化ガラスの何れでもよい。物理強化ガラスである場合は、曲げ成形において均一に加熱したガラス板を軟化点付近の温度から急冷し、ガラス表面とガラス内部との温度差によってガラス表面に圧縮応力を生じさせることで、ガラス表面を強化してもよい。
【0046】
化学強化ガラスである場合は、曲げ成形の後、イオン交換法等によってガラス表面に圧縮応力を生じさせることでガラス表面を強化してもよい。又、紫外線又は赤外線を吸収するガラスを用いてもよく、更に、透明であることが好ましいが、透明性を損なわない程度に着色されたガラス板であってもよい。
【0047】
一方、有機ガラスとしては、ポリカーボネート等の透明樹脂が挙げられる。ガラス板21及び22の形状は、特に矩形状に限定されるものではなく、種々の形状及び曲率に加工された形状であってもよい。ガラス板21及び22の曲げ成形としては、重力成形、又はプレス成形等が用いられる。ガラス板21及び22の成形法についても特に限定されないが、例えば、無機ガラスの場合はフロート法等により成形されたガラス板が好ましい。
【0048】
ガラス板21及び22の板厚は、0.4mm以上3.0mm以下であることが好ましく、1.0mm以上2.5mm以下であることがより好ましく、1.5mm以上2.3mm以下であることが更に好ましく、1.7mm以上2.0mm以下であることが特に好ましい。ガラス板21及び22は互いの板厚は同じでもよく、異なっていてもよい。ガラス板21及び22の板厚が互いに異なる場合は、車内側に位置するガラス板の板厚の方が薄いことが好ましい。車内側に位置するガラス板の方の板厚が薄い場合は、車内側に位置するガラス板の板厚が0.4mm以上、1.3mm以下であると、フロントガラス20を十分軽量化できる。
【0049】
〔中間膜23〕
中間膜23としては、熱可塑性樹脂が多く用いられ、例えば、可塑化ポリビニルアセタール系樹脂、可塑化ポリ塩化ビニル系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、可塑化飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、可塑化ポリウレタン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン-エチルアクリレート共重合体系樹脂等の従来からこの種の用途に用いられている熱可塑性樹脂が挙げられる。又、特開2015-821号公報に記載されている変性ブロック共重合体水素化物を含有する樹脂組成物も好適に使用できる。中間膜23は、可塑化ポリビニルアセタール系樹脂であることが好ましく、ポリビニルブチラールであることがより好ましい。
【0050】
中間膜23の膜厚は、図1(b)の構成での総膜厚として、最薄部で0.3mm以上であることが好ましい。中間膜23の膜厚が0.3mm以上であるとフロントガラスとして必要な耐貫通性が十分となる。又、中間膜23の膜厚は、最厚部で2.28mm以下であることが好ましい。中間膜23の膜厚の最大値が2.28mm以下であると、合わせガラスの質量が大きくなり過ぎない。中間膜23の膜厚は、0.3mm以上1mm以下であることが好ましい。又、中間膜23は膜厚が均一ではなく、断面視楔形状を有してもよい。
【0051】
なお、中間膜23は、遮音性の機能を有していてもよい。例えば、中間膜を3層以上の層から構成し、内部層のショア硬度を可塑剤の調整等により外側の層のショア硬度よりも低くすることにより、合わせガラスの遮音性を向上できる遮音膜であってもよい。この場合、外側の層のショア硬度は同じでもよいし、異なってもよい。
【0052】
中間膜23を作製するには、例えば、中間膜となる上記の樹脂材料を適宜選択し、押出機を用い、加熱溶融状態で押し出し成形する。押出機の押出速度等の押出条件は均一となるように設定する。その後、押し出し成形された樹脂膜を、フロントガラス20のデザインに合わせて、上辺及び下辺に曲率を持たせるために、例えば必要に応じ伸展してもよい。
【0053】
〔遮蔽層24〕
遮蔽層24としては、黒色セラミックス印刷用インクをガラス板上にスクリーン印刷等により塗布後に焼成することにより形成された層を例示できる。遮蔽層24において、遮蔽領域(遮蔽領域24~24の何れか)の幅は、その遮蔽領域に配置される第1バスバー31、第2バスバー32、又は第3バスバー33の幅よりも大きいことが好ましい。
【0054】
遮蔽層24をガラス板21の車内側の面21aに設けると、車内からフロントガラス20を見たときに、遮蔽層24によって第1バスバー31、第2バスバー32、第3バスバー33、及び第4バスバー34を隠蔽でき、外観の意匠性が損なわれず好ましい。
【0055】
又、遮蔽層24をガラス板22の車内側の面22aに設けると、車外からフロントガラス20を見たときに、遮蔽層24によって第1バスバー31、第2バスバー32、第3バスバー33、及び第4バスバー34を隠蔽でき、外観の意匠性が損なわれず好ましい。
【0056】
又、遮蔽層24を、ガラス板21の車内側の面21aとガラス板22の車内側の面22aの両方に設けてもよい。この場合、車内及び車外からフロントガラス20を見たときに、遮蔽層24によって第1バスバー31、第2バスバー32、第3バスバー33、及び第4バスバー34を隠蔽でき、外観の意匠性が損なわれず更に好ましい。
【0057】
〔導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33〕
導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33は、同一材料により一体に形成されている。導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33の材料は、導電性材料であれば特に制限はないが、例えば、金属材料が挙げられる。金属材料の一例としては、金、銀、銅、アルミニウム、タングステン、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、チタン、イリジウム、亜鉛、マグネシウム、スズ等が挙げられる。又、これらの金属は、めっき加工されていてもよく、合金又は樹脂とのコンポジット(複合)であってもよい。
【0058】
導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33の形成方法は、フォトリソグラフィー等のエッチング方式でもよく、スクリーン印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、又はグラビア印刷等の印刷方式でもよい。何れの方式でも、導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33を同一材料により一体に形成できる。この場合、導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33を互いに等しい厚さとしてもよいし、互いに異なる厚さとしてもよい。
【0059】
又、導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33は、スパッタ法により形成される銀又はスズドープ酸化インジウム等の導電性薄膜であってもよい。薄膜形成方法として、真空蒸着又はイオンプレーティング等のPVD(physical vapor deposition)法、又はCVD(chemical vapor deposition)法も好適に利用できる。又、ウェットコーティング法を用いて導電性薄膜を形成してもよい。
【0060】
導電性発熱体30において、各々の線状部材の線幅は、好ましくは25μm以下、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは16μm以下である。導電性発熱体30の線状部材の線幅が狭いほど、運転者が線状部材を視認しにくくなり、線状部材の存在が運転の妨げになることを防止できる。
【0061】
導電性発熱体30において、各々の線状部材の厚さは、好ましくは20μm以下、より好ましくは12μm以下、更に好ましくは8μm以下である。導電性発熱体30の線状部材の厚さが薄いほど、線状部材が光を反射する面積が減少し、太陽光や対向車のヘッドランプ等の光が反射しにくくなるため、反射光が運転者の運転の妨げになることを防止できる。
【0062】
一般的に、導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33を、同一材料により一体に形成することで、製造プロセスを簡略化でき、より生産性に優れる。しかしこの場合、導電性発熱体30の厚みが薄くなるにつれ、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33も厚みが薄くなる。すなわち、導電性発熱体30の線状部材の厚みを薄くするほど、光を反射する面積が減少し、ドライバーの運転にとって望ましいが、同時に第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33の厚みも薄くなる。そのため、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33の抵抗値が上がり、発熱損失により肝心の導電性発熱体30での発熱が十分に確保できない。このことから、本発明は導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33が、同一材料により一体に形成される場合に特に有用であると言え、ドライバーの視認性と電熱ガラスの発熱特性の両方を良好にできる。
【0063】
〔第4バスバー34〕
第4バスバー34は、金、銀、銅、アルミニウム、錫の何れかを含む材料により形成できる。又、第4バスバー34には、銅リボン又は平編み銅線を好適に使用できる。銅リボン又は平編み導線には、銅以外の金属がめっきされていてもよい。又、第4バスバー34は導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33と同じ材料であっても良いし、異なる材料であっても良い。
【0064】
第4バスバー34と、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33との接合には、はんだ又は導電粘着材(導電性接着層)から選択される接着部材のうち少なくとも一つの接着部材を使用できる。又、第4バスバー34は、上記のはんだ又は導電粘着材を介さずに第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33に直接接触させてもよい。
【0065】
第4バスバー34は、スクリーン印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、又はグラビア印刷等の方式で形成されていても良い。第4バスバー34は、ガラス板と第1バスバー31、第2バスバー32、又は第3バスバー33との間に形成されていてもよく、中間膜23と第1バスバー31、第2バスバー32、又は第3バスバーと33の間に形成されていてもよい。第4バスバー34の厚みは、好ましくは50μm以上、より好ましくは75μm以上、更に好ましくは100μm以上である。
【0066】
〔フロントガラス20の製造方法〕
フロントガラス20の製造方法としては、一般的な製造方法を挙げることができるが、以下に一例を示す。
【0067】
まず、ガラス板21の車外側の面21bに第4バスバー34を形成する。次に、中間膜23の車内側の面に導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33を形成する。導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33は、同一材料により一体に形成できる。中間膜23の車内側の面に導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33を形成する方法は、例えば中間膜23に直接形成してもよい。或いは、例えば中間膜が2層以上から成り、一つの中間膜上に、導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33を表面に形成した別の中間膜を積層して、中間膜23としてもよい。後者についての詳細な説明は後述する。
【0068】
次に、ガラス板21に形成された第4バスバー34の車外側の面と、中間膜23に形成された第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33の車内側の面が接するように、ガラス板21上に中間膜23を積層して第1積層体を作製する。そして、第1積層体の中間膜23上に、更にガラス板22を積層して第2積層体を作製する。
【0069】
そして、例えば、第2積層体をゴム袋の中に入れ、-65~-100kPaの真空中で温度約70~110℃で接着する。更に、例えば100~150℃、圧力0.6~1.3MPaの条件で加熱加圧する圧着処理を行うことで、より耐久性の優れた合わせガラスを得ることができる。但し、場合によっては工程の簡略化、及び合わせガラス中に封入する材料の特性を考慮して、この加熱加圧工程を使用しない場合もある。真空中での加熱及び加圧により、中間膜23が変形し、中間膜23に形成された導電性発熱体30の車内側の面がガラス板21の車外側の面21bと接する。
【0070】
なお、以上の図1(b)の断面構造を有する合わせガラスの作製に関する説明では、ガラス板21の車外側の面21bに第4バスバー34を形成するとしたが、これは一例である。例えば、中間膜23の車内側の面に導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33を形成し、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33の車内側の面に第4バスバー34を形成する工程としてもよい。
【0071】
このように、フロントガラス20では、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33のうち何れか1つ以上のバスバーに、第4バスバー34が重畳して配置されている。そのため、第4バスバー34を重畳して配置した領域では第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33の抵抗値を小さくできる。これにより、導電性発熱体30の発熱量を大きくするために、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33に流れる電流が増大した場合でも、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33での発熱損失を抑制できる。従って、フロントガラス20では、本来加熱すべき透視域28における防曇及び融氷性能を十分に発揮できる。
【0072】
又、フロントガラス20では、第4バスバー34を重畳して配置することにより、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33で発熱する温度を下げることが可能となる。そのため、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33で発熱により生じる熱応力によってガラス板21及び22が割れる懸念も解消できる。
【0073】
〈第1の実施の形態の変形例1〉
第1の実施の形態の変形例1では、導電性発熱体30が加熱するゾーンが2つ以上に分割されている例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例1において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0074】
図3は、第1の実施の形態の変形例1に係る車両用のフロントガラスを例示する図であり、フロントガラスを車室内から車室外に視認した様子を模式的に示した図である。
【0075】
図3に示すように、フロントガラス20Aの透視域28は、左右に分割された加熱ゾーンAと加熱ゾーンBとを有している。ここで、加熱ゾーンとは、1組のバスバー間に通電することにより加熱される区域である。
【0076】
第1バスバー31A及び第2バスバー32Aは、加熱ゾーンAにおいて透視域28の導電性発熱体30を挟んで対向して配置され、加熱ゾーンAにおいて透視域28の導電性発熱体30と接続される1組のバスバーである。第1バスバー31Aはフロントガラス20Aの上縁部20に沿って配置されており、第2バスバー32Aはフロントガラス20Aの下縁部20に沿って配置されている。
【0077】
第3バスバー33Aは、第1バスバー31Aと電極取り出し部38A、第2バスバー32Aと電極取り出し部39Aを接続するバスバーである。すなわち、電極取り出し部38Aは第3バスバー33Aを介して第1バスバー31Aと電気的に接続され、電極取り出し部39Aは第3バスバー33Aを介して第2バスバー32Aと電気的に接続されている。電極取り出し部38A及び39Aは、第3バスバー33Aの端部に位置し、外部電源の正側及び負側と接続される一対の電極取り出し部である。
【0078】
電極取り出し部38Aと電極取り出し部39Aとの間に電圧が印加されると、第1バスバー31Aと第2バスバー32Aとの間に接続された導電性発熱体30に電流が流れ、加熱ゾーンAに配置された導電性発熱体30が発熱する。
【0079】
第1バスバー31B及び第2バスバー32Bは、加熱ゾーンBにおいて透視域28の導電性発熱体30を挟んで対向して配置され、加熱ゾーンBにおいて透視域28の導電性発熱体30と接続される1組のバスバーである。第1バスバー31Bはフロントガラス20Aの上縁部20に沿って配置されており、第2バスバー32Bはフロントガラス20Aの下縁部20に沿って配置されている。
【0080】
第3バスバー33Bは、第1バスバー31Bと電極取り出し部39B、第2バスバー32Bと電極取り出し部38Bを接続するバスバーである。すなわち、電極取り出し部39Bは第3バスバー33Bを介して第1バスバー31Bと電気的に接続され、電極取り出し部38Bは第3バスバー33Bを介して第2バスバー32Bと電気的に接続されている。電極取り出し部38B及び39Bは、第3バスバー33Bの端部に位置し、外部電源の正側及び負側と接続される一対の電極取り出し部である。
【0081】
電極取り出し部38Bと電極取り出し部39Bとの間に電圧が印加されると、第1バスバー31Bと第2バスバー32Bとの間に接続された導電性発熱体30に電流が流れ、加熱ゾーンBに配置された導電性発熱体30が発熱する。
【0082】
加熱ゾーンAに配置された導電性発熱体30と加熱ゾーンBに配置された導電性発熱体30とは接続されていなく、独立に温度制御可能である。なお、フロントガラス20Aは、独立に温度制御可能な3つ以上の加熱ゾーンを有しても構わない。
【0083】
第4バスバー34は、第1バスバー31A及び31B、第2バスバー32A及び32B、及び第3バスバー33A及び33Bに重畳して配置されている。第1バスバー31A及び31B、第2バスバー32A及び32B、及び第3バスバー33A及び33Bに第4バスバー34を重畳して配置することにより、第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0084】
なお、第4バスバー34は、第1バスバー31A及び31B、第2バスバー32A及び32B、及び第3バスバー33A及び33Bのうち少なくとも1つのバスバーの少なくとも一部の領域に重畳して配置されればよい。
【0085】
〈第1の実施の形態の変形例2〉
第1の実施の形態の変形例2では、第1の実施の形態とは導電性発熱体への給電方向が異なる例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例2において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0086】
図4は、第1の実施の形態の変形例2に係る車両用のフロントガラスを例示する図であり、フロントガラスを車室内から車室外に視認した様子を模式的に示した図である。
【0087】
図4に示すように、フロントガラス20Bでは、左縁部20に沿って第1バスバー31を配置し、右縁部20に沿って第2バスバー32を配置している。すなわち、フロントガラス20Bでは給電方向が左右方向である点が、給電方向が上下方向であるフロントガラス20(図1参照)と相違する。このように、給電方向は、フロントガラスの左右方向であっても、上下方向であってもよい。
【0088】
フロントガラス20Bにおいて、第1バスバー31、第2バスバー32、第3バスバー33の全てに第4バスバー34を重畳して配置できるが、第4バスバー34の重畳形態は、これには限定されない。第4バスバー34は、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33のうち少なくとも1つのバスバーの少なくとも一部の領域に重畳して配置されればよい。
【0089】
第4バスバー34の好ましい重畳形態の一例としては、第1バスバー31及び第2バスバー32のみに重畳して配置する形態が挙げられる。この形態が好ましい理由は下記の通りである。
【0090】
前述のように、一般的に、フロントガラスの場合、運転視野を十分に確保する観点から、左右の遮蔽領域24及び24の幅を上下の遮蔽領域24及び24の幅よりも小さくすることが要求される。このため、左右の遮蔽領域24及び24によってバスバーを隠蔽しようとすると、そのバスバーの幅を確保することが難しく、バスバーの抵抗値が上がり、発熱損失が起きやすい。又、フロントガラスは一般的に縦方向に対し、横方向の方が長いため、横方向に給電する際は導電性発熱体及びバスバーはより低抵抗であることが求められる。
【0091】
従って、このようなフロントガラスの特性を考慮すると、左右方向に給電するフロントガラス20Bでは、少なくとも第1バスバー31及び第2バスバー32に第4バスバー34を重畳して配置することが好ましい。これにより、第1バスバー31及び第2バスバー32の抵抗値を小さくでき、発熱損失を抑制できる。
【0092】
〈第1の実施の形態の変形例3〉
第1の実施の形態の変形例3では、第1の実施の形態とは導電性発熱体の線状部材の配置が異なる例を示す。なお、第1の実施の形態の変形例3において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0093】
図5は、第1の実施の形態の変形例3に係る車両用のフロントガラスを例示する図であり、フロントガラスを車室内から車室外に視認した様子を模式的に示した図である。
【0094】
図5に示すように、フロントガラス20Cでは、導電性発熱体30が導電性発熱体30Cに置換された点が、フロントガラス20B(図4参照)と相違する。導電性発熱体30Cは、上縁部20及び下縁部20に沿った方向に配置された複数の線状部材を有している。導電性発熱体30Cの各々の線状部材の線幅や厚さは、導電性発熱体30の場合と同様とすることができる。
【0095】
図5において、各々の線状部材を波線(例えば、正弦波、三角波、矩形波等)や、波線と直線との組み合わせ等としてもよい。
【0096】
導電性発熱体30Cにおいて、各々の線状部材が波線である場合、波長や周期が一定でなくてもよい。又、各々の線状部材が波線である場合、隣接する線状部材の位相は揃っていてもよいし、ずれていてもよいが、隣接する線状部材の位相がずれていると、光の規則的な散乱による光芒を抑制できる点で好適である。
【0097】
このように、導電性発熱体の線状部材は、図1に示した網目状(メッシュ状)でもよく、図5に示す横線状でもよい。
【0098】
〈第2の実施の形態〉
第2の実施の形態では、情報送受信領域を有するフロントガラスに導電性発熱体を配置する例を示す。なお、第2の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0099】
図6は、第2の実施の形態に係る車両用のフロントガラスを例示する図(その1)であり、フロントガラスを車室内から車室外に視認した様子を模式的に示した図である。
【0100】
図6に示すように、フロントガラス20Dには、情報送受信領域50が画定されている。情報送受信領域50は、車両内のフロントガラス20Dの上縁部20の近傍等に、情報を送信及び/又は受信するデバイス(カメラや各種センサ等)が配置される場合に、デバイスが情報を送信及び/又は受信する領域として機能する。情報送受信領域50の平面形状は特に限定されないが、例えば、等脚台形とすることができる。
【0101】
情報送受信領域50内に導電性発熱体やバスバーが存在すると、デバイスが情報を送信及び/又は受信することを阻害する場合がある。そこで、情報送受信領域50内には導電性発熱体及びバスバーを配置しないことがこと好ましい。
【0102】
例えば、図6に示すように、情報送受信領域50内には導電性発熱体30は配置せず、第1バスバー31を情報送受信領域50の両側辺及び下辺の外側を迂回するように配置できる。
【0103】
図6は給電方向が上下方向である場合の例であるが、給電方向が左右方向である場合の例を図7に示す。図7では、フロントガラス20Eの上縁部20側に、導電性発熱体30、第1バスバー31、及び第2バスバー32が存在しない領域Rを設け、情報送受信領域50は領域R内に画定されている。この場合、領域R内に、平面視矩形状のアンテナ配置領域52等を画定することも可能である。
【0104】
但し、導電性発熱体30をデバイス(カメラや各種センサ等)に影響しないように設計する場合(例えば、導電性発熱体30の線幅をより狭く、膜厚をより薄く設計する場合等)には、図8図9のように情報送受信領域50内に導電性発熱体30を配置してもよい。導電性発熱体30は、例えば、網目状(メッシュ状)や直線状、正弦波とすることができる。
【0105】
図8に示すフロントガラス20F及び図9に示すフロントガラス20Gでは、情報送受信領域50内にも導電性発熱体30が存在し、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33により給電可能である。図8は情報送受信領域50内の導電性発熱体30を上下方向に給電する例であり、図9は左右方向に給電する例である。図8及び図9において、透視域28内と情報送受信領域50内とは、独立に加熱できる。
【0106】
このように、導電性発熱体30をデバイス(カメラや各種センサ等)に影響しないように設計することで、情報送受信領域50にも導電性発熱体30を配置可能となる。情報送受信領域50内の導電性発熱体30を加熱することにより、情報送受信領域50の防曇、融氷が可能となる。
【0107】
又、情報送受信領域50内の導電性発熱体30に給電する第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33の一部又は全部に第4バスバー34を重畳して配置してもよい。これにより、第4バスバー34を重畳して配置したバスバーの抵抗値を小さくでき、発熱損失を抑制できる。
【0108】
なお、図10に示すフロントガラス20Hや図11に示すフロントガラス20Iのように、情報送受信領域50内のみに導電性発熱体30を配置し、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33により給電可能な形態としてもよい。図10及び図11では、透視域28には導電性発熱体30が配置されていない。
【0109】
〈断面構造の変形例〉
図1(b)に第4バスバー34近傍の断面構造を示したが、第4バスバー34近傍の断面構造は図1(b)には限定されず、各実施の形態及び変形例において、図12(a)~図12(d)のように変形してもよい。なお、図12(a)~図12(d)において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0110】
図12は、第4バスバー近傍の断面構造を例示する断面図であり、図1(b)に対応する断面を示している。
【0111】
図12(a)では、導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33の車内側の面が、ガラス板21の車外側の面21bに接している。又、第4バスバー34は第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33と中間膜23との間に位置しており、第4バスバー34の車内側の面が、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33の車外側の面に接している。又、導電性発熱体30の車外側の面及び第4バスバー34の車外側の面が、中間膜23の車内側の面に接している。
【0112】
図12(a)の断面構造を有する合わせガラスを作製するには、まず、中間膜23の車内側の面に第4バスバー34を形成する。
【0113】
次に、中間膜23に導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33を形成する。この際、導電性発熱体30は中間膜23の車内側の面に形成し、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33は第4バスバー34の車内側の面に形成する。導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33は、同一材料により一体に形成できる。
【0114】
次に、ガラス板21の車外側の面21bと、中間膜23に形成された第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33の車内側の面が接するように、ガラス板21上に中間膜23を積層して第1積層体を作製する。そして、第1積層体の中間膜23上に、更にガラス板22を積層して第2積層体を作製する。そして、第2積層体を前述のように真空中で加熱及び加圧することで、図12(a)の断面構造を有する合わせガラスを作製できる。真空中での加熱及び加圧により、中間膜23が変形し、中間膜23に形成された導電性発熱体30の車内側の面がガラス板21の車外側の面21bと接する。
【0115】
図12(b)は、図1(b)において、単層の中間膜23を、ガラス板21側に設けられた第1中間膜231と、ガラス板22側に設けられた第2中間膜232との積層構造に変更した例である。第1中間膜231と第2中間膜232とは接している。導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、第3バスバー33、及び第4バスバー34は、第1中間膜231とガラス板21との間に配置されている。
【0116】
図12(b)では、導電性発熱体30及び第4バスバー34の車内側の面が、ガラス板21の車外側の面21bに接している。又、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33の車内側の面が、第4バスバー34の車外側の面に接している。又、導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33の車外側の面が、第1中間膜231の車内側の面に接している。
【0117】
第1中間膜231の膜厚は0.01mm以上0.8mm以下が好ましく、0.025mm以上0.4mm以下がより好ましく、0.05mm以上0.1mm以下が更に好ましい。第1中間膜231の膜厚が下限以上であると製造時の扱い性、ハンドリングに優れる。第1中間膜231の膜厚が上限以下であると通電によるガラス外への熱伝達に優れる。
【0118】
第2中間膜232の膜厚は0.3mm以上2.0mm以下が好ましく、0.4mm以上1.8mm以下がより好ましく、0.5mm以上1.5mm以下が更に好ましい。第2中間膜232の膜厚が下限以上であると耐貫通性に優れる。第2中間膜232の膜厚が上限以下であると軽量化に優れる。
【0119】
第1中間膜231のヤング率は第2中間膜232のヤング率より大きいことが好ましい。第1中間膜231のヤング率が高いことにより、膜厚が薄くてもハンドリングに優れ、また剛性を有するため導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33等を正確に形成できる。一方、第2中間膜232は適度な柔軟性を有することで、合わせガラスの耐貫通性などの安全性に関わる性能を満たす。 第1中間膜231の所定のヤング率は、例えば、ポリビニルアセタール系樹脂の可塑剤量の添加を少量にする、好ましくは可塑剤を添加しないことで得られる。
【0120】
図12(b)の断面構造を有する合わせガラスを作製するには、まず、ガラス板21の車外側の面21bに第4バスバー34を形成する。
【0121】
次に、第1中間膜231の車内側の面に導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33を形成する。導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33は、同一材料により一体に形成できる。
【0122】
次に、ガラス板21に形成された第4バスバー34の車外側の面と、第1中間膜231に形成された第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33の車内側の面が接するように、ガラス板21上に第1中間膜231を積層して第1積層体を作製する。そして、第1積層体の第1中間膜231上に、更に第2中間膜232及びガラス板22を順次積層して第2積層体を作製する。そして、第2積層体を前述のように真空中で加熱及び加圧することで、図12(b)の断面構造を有する合わせガラスを作製できる。真空中での加熱及び加圧により、第1中間膜231が変形し、第1中間膜231に形成された導電性発熱体30の車内側の面がガラス板21の車外側の面21bと接する。
【0123】
なお、以上の図12(b)の断面構造を有する合わせガラスの作製に関する説明では、ガラス板21の車外側の面21bに第4バスバー34を形成するとしたが、これは一例である。例えば、第1中間膜231の車内側の面に導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33を形成し、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33の車内側の面に第4バスバー34を形成する工程としてもよい。
【0124】
図12(c)は、図12(a)において、単層の中間膜23を、ガラス板21側に設けられた第1中間膜231と、ガラス板22側に設けられた第2中間膜232との積層構造に変更した例である。導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、第3バスバー33、及び第4バスバー34は、第1中間膜231とガラス板21との間に配置されている。
【0125】
図12(c)では、導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33の車内側の面が、ガラス板21の車外側の面21bに接している。又、第4バスバー34は第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33と第1中間膜231との間に位置しており、第4バスバー34の車内側の面が、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33の車外側の面に接している。又、導電性発熱体30の車外側の面及び第4バスバー34の車外側の面が、第1中間膜231の車内側の面に接している。
【0126】
図12(c)の断面構造を有する合わせガラスを作製するには、まず、第1中間膜231の車内側の面に第4バスバー34を形成する。
【0127】
次に、第1中間膜231に導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33を形成する。この際、導電性発熱体30は第1中間膜231の車内側の面に形成し、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33は第4バスバー34の車内側の面に形成する。導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33は、同一材料により一体に形成できる。
【0128】
次に、ガラス板21の車外側の面21bと、第1中間膜231に形成された第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33の車内側の面が接するように、ガラス板21上に第1中間膜231を積層して第1積層体を作製する。そして、第1積層体の第1中間膜231上に、更に第2中間膜232及びガラス板22を順次積層して第2積層体を作製する。そして、第2積層体を前述のように真空中で加熱及び加圧することで、図12(c)の断面構造を有する合わせガラスを作製できる。真空中での加熱及び加圧により、第1中間膜231が変形し、第1中間膜231に形成された導電性発熱体30の車内側の面がガラス板21の車外側の面21bと接する。
【0129】
図12(d)は、図12(a)において、単層の中間膜23を、ガラス板21側に設けられた第1中間膜231と、ガラス板22側に設けられた第2中間膜232との積層構造に変更した他の例である。導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、第3バスバー33、及び第4バスバー34は、第1中間膜231と第2中間膜232との間に配置されている。
【0130】
図12(d)では、導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33の車内側の面が、第1中間膜231の車外側の面に接している。又、第4バスバー34は第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33と第2中間膜232との間に位置しており、第4バスバー34の車内側の面が、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33の車外側の面に接している。又、導電性発熱体30の車外側の面及び第4バスバー34の車外側の面が、第2中間膜232の車内側の面に接している。
【0131】
図12(d)の断面構造を有する合わせガラスを作製するには、まず、第1中間膜231の車外側の面に導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33を形成する。導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33は、同一材料により一体に形成できる。
【0132】
次に、第1中間膜231に形成された第1バスバー31、第2バスバー32、及び第3バスバー33の車外側の面に第4バスバー34を形成する。
【0133】
次に、ガラス板21の車外側の面21bと第1中間膜231の車内側の面が接するように、ガラス板21上に第1中間膜231を積層して第1積層体を作製する。次に、第1積層体の第1中間膜231に形成された導電性発熱体30及び第4バスバー34の車外側の面と接するように第2中間膜232を積層し、更にガラス板22を積層して第2積層体を作製する。そして、第2積層体を前述のように真空中で加熱及び加圧することで、図12(d)の断面構造を有する合わせガラスを作製できる。真空中での加熱及び加圧により、第2中間膜232が変形し、第1中間膜231に形成された導電性発熱体30の車外側の面が第2中間膜232の車内側の面と接する。
【0134】
このように、第4バスバー34近傍の断面構造は様々な形態にでき、又、中間膜23を複数の中間膜の積層構造としてもよい。
【0135】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0136】
例えば、各実施の形態及び変形例は適宜組み合わせることができる。例えば、図4のように給電方向が左右方向の場合において、導電性発熱体30が加熱するゾーンが2つ以上に分割されてもよい。
【0137】
又、各実施の形態及び変形例では、導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、第3バスバー33、及び第4バスバー34を、車内側のガラス板21側に配置する例を示した。しかし、導電性発熱体30、第1バスバー31、第2バスバー32、第3バスバー33、及び第4バスバー34を、車外側のガラス板22側に配置してもよい。第4バスバー34を車外側のガラス板22側に配置する場合、第4バスバーがガラス板22に接してもよい。
【0138】
本国際出願は2018年8月21日に出願した日本国特許出願2018-154917号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願2018-154917号の全内容を本国際出願に援用する。
【符号の説明】
【0139】
20、20A、20B、20C、20D、20E、20F、20G、20H、20I フロントガラス
20 上縁部
20 下縁部
20 左縁部
20 右縁部
21、22 ガラス板
21a、21b、22a 面
23 中間膜
24 遮蔽層
24、24、24、24 遮蔽領域
28 透視域
30、30C 導電性発熱体
31、31A、31B 第1バスバー
32、32A、32B 第2バスバー
33、33A、33B 第3バスバー
34 第4バスバー
38、38A、38B、39、39A、39B 電極取り出し部
50 情報送受信領域
52 アンテナ配置領域
231 第1中間膜
232 第2中間膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12