IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭硝子株式会社の特許一覧

特許7196927含フッ素エーテル組成物、コーティング液、物品およびその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】含フッ素エーテル組成物、コーティング液、物品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/02 20060101AFI20221220BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20221220BHJP
   C08G 65/336 20060101ALI20221220BHJP
   C09D 171/02 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C08L71/02
C08L71/00 B
C08G65/336
C09D171/02
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020550432
(86)(22)【出願日】2019-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2019038596
(87)【国際公開番号】W WO2020071330
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2018190427
(32)【優先日】2018-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 珠実
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 龍二郎
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-150519(JP,A)
【文献】特開2018-123206(JP,A)
【文献】特開2010-43281(JP,A)
【文献】特開2017-48370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 71/02
C08L 71/00
C08G 65/336
C09D 171/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖とケイ素原子に加水分解性基および/または水酸基が結合した基とを有する化合物Aと、ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖と末端の炭素-炭素二重結合とを有し、ケイ素原子に加水分解性基および/または水酸基が結合した基を有しない化合物Bと、を含む含フッ素エーテル組成物であって、
前記化合物Aの1モルに対して前記化合物Bを0.25~0.40モル含有することを特徴とする含フッ素エーテル組成物。
【請求項2】
前記化合物Aは、ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖とケイ素原子に加水分解性基および/または水酸基が結合した基とこれらを連結する連結基を有し、前記化合物Bはポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖と末端の炭素-炭素二重結合とこれらを連結する連結基を有し、前記化合物Aが有する連結基および前記化合物Bが有する連結基は、それぞれ独立して、アミド結合を有する基(ただし、オルガノポリシロキサン残基およびシルフェニレン骨格基を含まない。)、エーテル性酸素原子を有する基(ただし、アミド結合、オルガノポリシロキサン残基およびシルフェニレン骨格基を含まない。)、または炭素-炭素原子間にケイ素原子もしくは窒素原子を含んでもよい脂肪族飽和炭化水素基である、請求項1に記載の含フッ素エーテル組成物。
【請求項3】
前記化合物Aが有する連結基および前記化合物Bが有する連結基は、いずれも前記アミド結合を有する基である、いずれも前記エーテル性酸素原子を有する基である、または、いずれも前記脂肪族飽和炭化水素基である、請求項2に記載の含フッ素エーテル組成物。
【請求項4】
前記化合物Aが下式1で表される化合物であり、前記化合物Bが下式2で表される化合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の含フッ素エーテル組成物。
[A-(OXm1-]j1[-Si(Rn1 3-n1g1 式1
ただし、式1中、
は、ペルフルオロアルキル基または-Q[-Si(Rn1 3-n1k1であり、
は、1個以上のフッ素原子を有するフルオロアルキレン基であり、
m1は、2~200の整数であり、
j1、g1、k1はそれぞれ独立して、1以上の整数であり、
は、(j1+g1)価の連結基であり、
は、1価の炭化水素基であり、
は、加水分解性基または水酸基であり、
n1は、0~2の整数であり、
は、(k1+1)価の連結基である。
[A-(OXm2-]j2[-CH=CHg2 式2
ただし、式2中、
は、ペルフルオロアルキル基または-Q[-CH=CHk2であり、
は、1個以上のフッ素原子を有するフルオロアルキレン基であり、
m2は、2~200の整数であり、
j2、g2、k2はそれぞれ独立して、1以上の整数であり、
は、(j2+g2)価の連結基であり、
は、(k2+1)価の連結基である。
【請求項5】
前記化合物Aの数平均分子量が1,000~8000である、請求項1~4のいずれか一項に記載の含フッ素エーテル組成物。
【請求項6】
前記化合物Bの数平均分子量が1,000~8000である、請求項1~5のいずれか一項に記載の含フッ素エーテル組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の含フッ素エーテル組成物と、
液状媒体とを含むことを特徴とするコーティング液。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の含フッ素エーテル組成物から形成された表面層を基材の表面に有することを特徴とする物品。
【請求項9】
タッチパネルの指で触れる面を構成する部材の表面に前記表面層を有する、請求項8に記載の物品。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか一項に記載の含フッ素エーテル組成物を用いたドライコーティング法によって基材の表面を処理して、前記含フッ素エーテル組成物から形成された表面層を前記基材の表面に形成することを特徴とする物品の製造方法。
【請求項11】
ウェットコーティング法によって請求項7に記載のコーティング液を基材の表面に塗布し、乾燥させて、前記含フッ素エーテル組成物から形成された表面層を前記基材の表面に形成することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素エーテル組成物、コーティング液、物品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含フッ素化合物は、高い潤滑性、撥水撥油性等を示すため、表面処理剤に好適に用いられる。該表面処理剤によって基材の表面に撥水撥油性を付与すると、基材の表面の汚れを拭き取りやすくなり、汚れの除去性が向上する。該含フッ素化合物の中でも、ペルフルオロアルキレン鎖の途中にエーテル結合(-O-)が存在するポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖を有する含フッ素エーテル化合物は、柔軟性に優れる化合物であり、特に油脂等の汚れの除去性に優れる。
【0003】
ポリ(オキシペルフルオロアルキレン)鎖を有し、末端に加水分解性基が結合したシリル基を有する含フッ素エーテル化合物を含む組成物を、防汚剤、潤滑剤、撥水撥油剤等の表面処理剤として用いることが知られている(特許文献1および2参照。)。
【0004】
さらに、含フッ素エーテル化合物組成物から得られる表面層に優れた滑り性と耐摩擦性を付与するために、含フッ素エーテル化合物組成物に含フッ素オイルを含ませる技術が知られている(特許文献3および4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2011/059430号
【文献】国際公開第2013/042733号
【文献】特開2016-132719号公報
【文献】特許第6172410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら本発明者によれば、特許文献3や4に記載の組成物から得られる表面層においては、滑り性は充分に得られるものの耐摩擦性が充分でなく、さらに表面層を有する物品の使用時に溶剤を使用する場合において、含フッ素オイルが溶剤に溶出し易く滑り性が低下する点が問題であった。
【0007】
本発明は、基材の表面に優れた撥水撥油性を付与できるとともに、撥水撥油性の耐摩擦性に優れ、含有成分の溶剤への溶出が抑制された表面層を形成できる含フッ素エーテル組成物および該含フッ素エーテル組成物を含むコーティング液の提供を目的とする。本発明はさらに、該含フッ素エーテル組成物から形成された表面層を有する物品およびその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成を有する含フッ素エーテル組成物、コーティング液、物品および物品の製造方法を提供する。
【0009】
[1]ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖とケイ素原子に加水分解性基および/または水酸基が結合した基とを有する化合物Aと、ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖と末端の炭素-炭素二重結合とを有し、ケイ素原子に加水分解性基および/または水酸基が結合した基を有しない化合物Bと、を含む含フッ素エーテル組成物であって、前記化合物Aの1モルに対して前記化合物Bを0.25~0.40モル含有することを特徴とする含フッ素エーテル組成物。
[2]前記化合物Aは、ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖とケイ素原子に加水分解性基および/または水酸基が結合した基とこれらを連結する連結基を有し、前記化合物Bはポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖と末端の炭素-炭素二重結合とこれらを連結する連結基を有し、前記化合物Aが有する連結基および前記化合物Bが有する連結基は、それぞれ独立して、アミド結合を有する基(ただし、オルガノポリシロキサン残基およびシルフェニレン骨格基を含まない。)、エーテル性酸素原子を有する基(ただし、アミド結合、オルガノポリシロキサン残基およびシルフェニレン骨格基を含まない。)、または炭素-炭素原子間にケイ素原子もしくは窒素原子を含んでもよい脂肪族飽和炭化水素基である、[1]の含フッ素エーテル組成物。
[3]前記化合物Aが有する連結基および前記化合物Bが有する連結基は、いずれも前記アミド結合を有する基である、いずれも前記エーテル性酸素原子を有する基である、または、いずれも前記脂肪族飽和炭化水素基である[1]または[2]の含フッ素エーテル組成物。
【0010】
[4]前記化合物Aが下式1で表される化合物であり、前記化合物Bが下式2で表される化合物である、[1]~[3]のいずれかの含フッ素エーテル組成物。
[A-(OXm1-]j1[-Si(Rn1 3-n1g1 式1
ただし、式1中、
は、ペルフルオロアルキル基または-Q[-Si(Rn1 3-n1k1であり、
は、1個以上のフッ素原子を有するフルオロアルキレン基であり、
m1は、2~200の整数であり、
j1、g1、k1はそれぞれ独立して、1以上の整数であり、
は、(j1+g1)価の連結基であり、
は、1価の炭化水素基であり、
は、加水分解性基または水酸基であり、
n1は、0~2の整数であり、
は、(k1+1)価の連結基である。
[A-(OXm2-]j2[-CH=CHg2 式2
ただし、式2中、
は、ペルフルオロアルキル基または-Q[-CH=CHk2であり、
は、1個以上のフッ素原子を有するフルオロアルキレン基であり、
m2は、2~200の整数であり、
j2、g2、k2はそれぞれ独立して、1以上の整数であり、
は、(j2+g2)価の連結基であり、
は、(k2+1)価の連結基である。
[5]前記化合物Aの数平均分子量が1,000~8000である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の含フッ素エーテル組成物。
[6]前記化合物Bの数平均分子量が1,000~8000である、前記[1]~[5]のいずれかに記載の含フッ素エーテル組成物。
【0011】
[7]前記[1]~[6]のいずれかの含フッ素エーテル組成物と、液状媒体とを含むことを特徴とするコーティング液。
[8]前記[1]~[6]のいずれかの含フッ素エーテル組成物から形成された表面層を基材の表面に有することを特徴とする物品。
[9]タッチパネルの指で触れる面を構成する部材の表面に前記表面層を有する、[8]の物品。
[10]前記[1]~[6]のいずれかの含フッ素エーテル組成物を用いたドライコーティング法によって基材の表面を処理して、前記含フッ素エーテル組成物から形成された表面層を前記基材の表面に形成することを特徴とする物品の製造方法。
[11]ウェットコーティング法によって[7]のコーティング液を基材の表面に塗布し、乾燥させて、前記含フッ素エーテル組成物から形成された表面層を前記基材の表面に形成することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の含フッ素エーテル組成物および該含フッ素エーテル組成物を含むコーティング液によれば、基材の表面に優れた撥水撥油性を付与できるとともに、耐摩擦性に優れ、含有成分の溶剤への溶出が抑制される(以下、「耐溶剤性」とも記す。)ことで、長期使用において撥水撥油性が低下しにくい表面層を形成できる。
本発明の物品は、本発明の含フッ素エーテル組成物から形成された表面層を有することで、優れた撥水撥油性を有し、該撥水撥油性は耐摩擦性および耐溶剤性に優れ、長期使用においても撥水撥油性が低下しにくい。
本発明の物品の製造方法によれば、基材の表面に優れた撥水撥油性を付与できるとともに、該撥水撥油性は耐摩擦性および耐溶剤性に優れ、長期使用においても撥水撥油性が低下しにくい表面層を有する物品を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、式1で表される化合物を化合物1と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。式2で表される基を基2と記す。他の式で表される基も同様に記す。
【0014】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「エーテル性酸素原子」とは、炭素-炭素原子間においてエーテル結合(-O-)を形成する酸素原子を意味する。
【0015】
オキシフルオロアルキレン基の化学式は、その酸素原子をフルオロアルキレン基の左側に記載して表すものとする。
「表面層」とは、本発明の含フッ素エーテル組成物から、基材の表面に形成される層を意味する。
【0016】
「2価のオルガノポリシロキサン残基」とは、下式で表される基である。下式におけるRは、アルキル基(好ましくは炭素数1~10)、または、フェニル基である。また、g1は、1以上の整数であり、1~9が好ましく、1~4が特に好ましい。
【0017】
【化1】
【0018】
「シルフェニレン骨格基」とは、-Si(RPhSi(R-(ただし、Phはフェニレン基であり、Rは1価の有機基である。)で表される基である。Rとしては、アルキル基(好ましくは炭素数1~10)が好ましい。
「ジアルキルシリレン基」は、-Si(R-(ただし、Rはアルキル基(好ましくは炭素数1~10)である。)で表される基である。
含フッ素化合物の「数平均分子量」は、NMR分析法を用い、H-NMRおよび19F-NMRによって、末端基を基準にしてオキシフルオロアルキレン基の数(平均値)を求めることによって算出される。
【0019】
[含フッ素エーテル組成物]
本発明の含フッ素エーテル組成物(以下、「本組成物」とも記す。)は、化合物Aと化合物Bとを、化合物Aの1モルに対して化合物Bが0.25~0.40モルとなる割合で含有することを特徴とする。
【0020】
化合物Aはポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖とケイ素原子に加水分解性基および/または水酸基が結合した基(以下、「基Y」とも記す。)とを有する含フッ素エーテル化合物である。化合物Bは、ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖と末端の炭素-炭素二重結合とを有し、基Yを有しない化合物である。
【0021】
本組成物は化合物Aを含有することで硬化して硬化物となる。本組成物を用いて基材の表面に形成される表面層は本組成物の硬化物からなる。本組成物の硬化は、化合物Aの基Yの反応により行われる。具体的には、化合物Aの基Yがケイ素原子に結合する加水分解性基を有する場合、該加水分解性基が加水分解してシラノール基(Si-OH)を形成し、該シラノール基が分子間で縮合反応してSi-O-Si結合により硬化する。化合物Aの基Yがケイ素原子に結合する水酸基を有する、すなわちシラノール基を有する場合、該シラノール基が分子間で縮合反応してSi-O-Si結合により硬化する。また、このような硬化に際して、例えば、基材がガラス基材のように表面にシラノール基を有する場合には該シラノール基と、化合物Aが有する、または、化合物Aから生成したシラノール基が反応してSi-O-Si結合が形成される。これにより、得られる表面層は基材に密着される。
【0022】
化合物Aが有するポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖は、硬化後は典型的には表面層中の大気側に存在して表面層に撥水撥油性を与える、と考えられる。
【0023】
一方、化合物Bはポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖を有することで、本組成物の硬化物である表面層において、化合物Aが反応して得られた加水分解縮合物の隙間を充填し、表面層に滑り性を付与して耐摩擦性を向上させる機能を有する。化合物Bは、従来の含フッ素オイルと異なり、末端に炭素-炭素二重結合を有することで、基材表面と密着しやすいと考えられる。さらには、ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖と末端の炭素-炭素二重結合との間の連結基を適切に選択することにより、化合物Aまたは化合物Aの硬化物とも相互に引きつけ合う作用が生じ、表面層から脱離しにくいと考えられる。
【0024】
そして、本組成物において、化合物Aの1モルに対して化合物Bを0.25~0.40モルとなる割合で含有させると、化合物Bは表面層への滑り性の付与と、表面層からの化合物Bの脱離の抑制がバランス良く達成できる。よって、本組成物から得られる表面層は、優れた撥水撥油性を有するとともに、撥水撥油性の耐摩擦性および耐溶剤性に優れるものである。
【0025】
(化合物Aおよび化合物Bの組み合わせ)
化合物Aはポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖(以下、「ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖a」とも記す。)と基Yとを有する。化合物Aにおいてポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖aと基Yは、連結基(以下、「連結基a」とも記す。)を介して結合されるのが好ましい。この場合、基Yはケイ素原子が連結基aと結合する。
【0026】
前記化合物Aにおいて、ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖aの2つの末端は、片方がフルオロアルキル基と結合していて、もう片方が連結基aを介して基Yに連結しているか、2つとも、それぞれ連結基aを介して基Yに連結している。撥水撥油性により優れる点から、ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖aの片方の末端はフルオロアルキル基と結合することが好ましい。
【0027】
ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖aと連結基aとの境目は次のように考える。すなわち、ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖aは左側の末端にフルオロアルキレン基に結合する酸素原子を有し、右側の末端はフルオロアルキレン基で構成される。例えば、ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖aの右側に連結基aが結合する場合、連結基aが結合するフルオロアルキレン基の”酸素原子と結合しない側の末端”を、フッ素原子と結合する最も右端の炭素原子とする。化合物Bのポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖bと連結基bの場合も同様である。
【0028】
化合物Aは、基Yを少なくとも1個有すればよい。表面層の耐摩擦性および耐溶剤性がより優れる点で、2個以上が好ましく、2~10個がより好ましく、2~5個がさらに好ましく、2または3個が特に好ましい。
【0029】
化合物Bはポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖(以下、「ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖b」とも記す。)と末端の炭素-炭素二重結合とを有し、基Yを有しない化合物である。化合物Bにおいて、ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖bと末端の炭素-炭素二重結合は、連結基(以下、「連結基b」とも記す。)を介して結合されるのが好ましい。
【0030】
前記化合物Bにおいては、ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖bの2つの末端は、片方がフルオロアルキル基と結合しているか、2つとも、末端の炭素-炭素二重結合にそれぞれ連結基bを介して連結している。撥水撥油性により優れる点から、ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖bの片方の末端はフルオロアルキル基と結合することが好ましい。
【0031】
化合物Bは、末端の炭素-炭素二重結合を少なくとも1個有すればよい。表面層の耐摩擦性および耐溶剤性がより優れる点で、2個以上が好ましく、2~10個がより好ましく、2~5個がさらに好ましく、2または3個が特に好ましい。
【0032】
なお、末端の炭素-炭素二重結合を構成する炭素原子に結合する水素原子は、例えば、炭素数1~4のアルキル基に置換されていないことが好ましい。すなわち、末端の炭素-炭素二重結合としては-CH=CHが好ましい。
【0033】
連結基の価数は2以上の整数であり、3~11が好ましく、3~6がより好ましく、3または4が特に好ましい。
【0034】
連結基は、1つの炭素原子、ケイ素原子、または窒素原子で分岐する構造を有する価数3~4の連結基が好ましい。この場合、分岐した末端が基Yとポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖aと結合する。複数の分岐元素を有する連結基や価数が4を超える連結基であってもよい。なお、連結基の分岐の起点となる元素を以下、分岐元素とも記す。
【0035】
連結基aおよび連結基bとしては、それぞれ独立に以下の分類1~5が挙げられる。
【0036】
分類1:アミド結合を有する基(ただし、オルガノポリシロキサン残基およびシルフェニレン骨格基を含まない)
分類2:エーテル性酸素原子を有する基(ただし、アミド結合、オルガノポリシロキサン残基およびシルフェニレン骨格基を含まない)
分類3:炭素-炭素原子間に窒素原子またはケイ素原子を有してもよい脂肪族飽和炭化水素基
分類4:オルガノポリシロキサン残基またはシルフェニレン骨格基を有する基
分類5:上記分類1~4のいずれにも分類されない基
【0037】
以下、連結基aであって上記分類1~5の連結基を、それぞれこの順に連結基a-1~a-5とも記す。連結基aとしては、連結基a-1、連結基a-2、連結基a-3が好ましい。同様に、連結基bであって上記分類1~5の連結基を、それぞれこの順に連結基b-1~b-5とも記す。連結基bとしては、連結基b-1、連結基b-2、連結基b-3が好ましい。
【0038】
本組成物において、化合物Aと化合物Bとの組み合わせとしては、化合物Aが連結基a-1を有し、かつ、化合物Bが連結基b-1を有する組み合わせI、化合物Aが連結基a-2を有し、かつ、化合物Bが連結基b-2を有する組み合わせII、化合物Aが連結基a-3を有し、かつ、化合物Bが連結基b-3を有する組み合わせIIIが好ましい。複数の化合物Aおよび複数の化合物Bを用いる場合にも、用いる全ての化合物において組み合わせI、組み合わせII、または組み合わせIIIの要件を満たすことが好ましい。これらのなかでも、表面層の耐溶剤性の観点からは、組み合わせIおよび組み合わせIIがより好ましく、組み合わせIが特に好ましい。
【0039】
化合物Aと化合物Bを組み合わせるにあたっては、連結基aと連結基bの構造がほぼ同じ構造であることが好ましい。すなわち、分岐元素の種類と数が同じであり、炭素数は近いことが好ましく、同じことが好ましい。
【0040】
上記組み合わせでは化合物Aと化合物Bの連結基がほぼ同じ構造となるために、化合物Aと化合物Bの間にファンデルワールス力や水素結合などによる担持力が特に強く作用すると考えられる。これにより、耐摩擦性および耐溶剤性がより優れた表面層が得られると考えられる。
【0041】
また、1つの炭素原子、ケイ素原子、または窒素原子で分岐する構造を有する価数が3または4の連結基において、当該分岐元素を境にポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖a側と基Y側に分けて考えると、連結基中の、アミド結合、エーテル性酸素原子または脂肪族飽和炭化水素基は、ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖a側にあっても基Y側にあっても、その両方にあってもよい。ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖a側にあるか両方にあることが好ましい。ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖a側にあると化合物Aと化合物Bの間のファンデルワールス力や水素結合などによる担持力がより強く作用すると考えられる。
【0042】
以下、1つの炭素原子、ケイ素原子、または窒素原子で分岐する構造を有する価数が3または4の連結基を中心に説明する。
【0043】
連結基a-1において、価数が2の場合、アミド結合は-C(O)NR-であり、炭素原子側がポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖a側、窒素原子側が基Y側に位置する。Rは、例えば、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、フェニル基が好ましい。-C(O)NR-の炭素原子は、ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖aに、アルキレン基を介して結合するか直接結合し、直接結合するのが好ましい。-C(O)NR-の窒素原子は、例えば、炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有してもよいアルキレン基を介して基Yに結合する。
【0044】
連結基a-1において、価数が3以上の場合、基内に炭素原子、ケイ素原子、または窒素原子で分岐する構造を有し、分岐した末端が基Yと結合する。連結基a-1において、1つの炭素原子、ケイ素原子、または窒素原子で分岐する構造を有する価数が3~4の連結基は、分岐した末端が基Yとポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖aと結合することが好ましい。アミド結合は分岐元素を境にポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖a側にあっても基Y側にあっても、その両方にあってもよい。アミド結合は、ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖a側にあるのが好ましい。
【0045】
ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖a側にアミド結合がある場合、アミド結合はその炭素原子が、ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖aにアルキレン基を介して結合するか直接結合し、直接結合するのが好ましい。この場合、連結基a-1が有する分岐元素は、アミド結合の窒素原子でも、アミド結合に結合する基の炭素原子、ケイ素原子、または窒素原子であってもよい。アミド結合と分岐元素は直接結合するか、2価の連結基、例えば、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子および/またはアミド結合を有する基を介して結合する。分岐元素と基Yはそれぞれ2価の連結基により連結される。アルキレン基の炭素数は、1~5が好ましく、2~5が特に好ましい。炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基の炭素数は、2~5が好ましい。
【0046】
基Y側にのみアミド結合がある場合は、上記-C(O)NR-と同様のアミド結合が好ましい。
【0047】
連結基a-2において、価数が2の場合、エーテル性酸素原子のポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖a側は、ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖aに直接結合する構造でも、2価の連結基、例えば、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基を介してポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖aに結合する構造でもよい。アルキレン基の炭素数は、1~5が好ましく、2~5が特に好ましい。炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基の炭素数は、2~5が好ましい。
【0048】
連結基a-2において、価数が3以上の場合、基内に炭素原子、ケイ素原子、または窒素原子で分岐する構造を有し、分岐した末端が基Yと結合する。連結基a-2において、1つの炭素原子、ケイ素原子、または窒素原子で分岐する構造を有する価数が3~4の連結基は、分岐した末端が基Yとポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖aと結合することが好ましい。エーテル性酸素原子は分岐元素を境にポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖a側にあっても基Y側にあっても、その両方にあってもよい。エーテル性酸素原子は、ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖a側にあるのが好ましい。
【0049】
ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖a側にエーテル性酸素原子がある場合、エーテル性酸素原子は、ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖aに直接結合する構造でも、2価の連結基、例えば、アルキレン基を介してポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖aに結合する構造でもよい。エーテル性酸素原子と分岐元素は直接結合するか、2価の連結基、例えば、アルキレン基、または、炭素数2以上の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基が好ましい。アルキレン基の炭素数は、1~5が好ましく、2~5が特に好ましい。炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基の炭素数は、2~5が好ましい。
【0050】
連結基a-3における脂肪族飽和炭化水素基は直鎖状、分岐鎖状が好ましい。直鎖状の場合、連結基a-3の価数は2である。分岐鎖状の場合、連結基a-3の価数は3以上であり、複数の基Yやポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖aに結合することができる。1つの炭素原子で分岐する構造を有する価数が3~4の連結基が好ましい。なお、脂肪族飽和炭化水素基の水素原子の一部は水酸基に置換されていてもよい。連結基a-3が窒素原子を有する場合、窒素原子が2個の基Yにそれぞれアルキレン基(炭素数1~5が好ましい。)を介して結合する構造が好ましい。連結基a-3がケイ素原子を有する場合、ケイ素原子が2個または3個の基Yにそれぞれアルキレン基(炭素数1~5が好ましい。)を介して結合する構造が好ましい。
【0051】
連結基a-4としては、例えば、後述の化合物1における基11-6中の連結基が例示できる。
【0052】
連結基b-1~b-4は、具体的には、それぞれ連結基a-1~a-4と同様にできる。ただし、連結基b-1~b-4においては、連結基a-1~a-4が基Yに結合する構成であるのに対して、末端の炭素-炭素二重結合に結合する点で異なる。
【0053】
(化合物1:化合物Aの具体的化合物)
化合物Aは、化合物1であることが好ましい。化合物1において、(OXm1が化合物Aのポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖aに相当し、-Si(Rn1 3-n1が基Yに相当し、ZおよびQが連結基aに相当する。
[A-(OXm1-]j1[-Si(Rn1 3-n1g1 式1
ただし、式1中、
は、ペルフルオロアルキル基または-Q[-Si(Rn1 3-n1k1であり、
は、1個以上のフッ素原子を有するフルオロアルキレン基であり、
m1は、2~200の整数であり、
j1、g1、k1はそれぞれ独立して、1以上の整数であり、
は、(j1+g1)価の連結基であり、
は、1価の炭化水素基であり、
は、加水分解性基または水酸基であり、
n1は、0~2の整数であり、
は、(k1+1)価の連結基である。
【0054】
が、ペルフルオロアルキル基である場合、ペルフルオロアルキル基中の炭素数は、表面層の耐摩擦性がより優れる点から、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~6がさらに好ましく、1~3が特に好ましい。ペルフルオロアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
【0055】
ペルフルオロアルキル基の具体例としては、CF-、CFCF-、CFCFCF-、CFCFCFCF-、CFCFCFCFCF-、CFCFCFCFCFCF-、CFCF(CF)-が挙げられる。ペルフルオロアルキル基としては、表面層の撥水撥油性がより優れる点から、CF-、CFCF-、CFCFCF-が好ましい。
【0056】
(OXm1は、(OX)で表される単位(以下、「単位1」とも記す。)がm1個結合してなる。
は、1個以上のフッ素原子を有するフルオロアルキレン基である。フルオロアルキレン基の炭素数は1~6が好ましい。
フルオロアルキレン基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよいが、本発明の効果がより優れる点から、直鎖状が好ましい。
【0057】
フルオロアルキレン基のフッ素原子数は、1個以上であり、表面層の耐摩擦性および撥水撥油性がより優れる点から、2~10個が好ましく、2~4個が特に好ましい。
フルオロアルキレン基は、フルオロアルキレン基中のすべての水素原子がフッ素原子に置換されたペルフルオロアルキレン基であってもよい。
【0058】
単位1の具体例としては、-OCHF-、-OCFCHF-、-OCHFCF-、-OCFCH-、-OCHCF-、-OCFCFCHF-、-OCHFCFCF-、-OCFCFCH-、-OCHCFCF-、-OCFCFCFCH-、-OCHCFCFCF-、-OCFCFCFCFCH-、-OCHCFCFCFCF-、-OCFCFCFCFCFCH-、-OCHCFCFCFCFCF-、-OCF-、-OCFCF-、-OCFCFCF-、-OCF(CF)CF-、-OCFCFCFCF-、-OCF(CF)CFCF-、-OCFCFCFCFCF-、-OCFCFCFCFCFCF-が挙げられる。
【0059】
(OXm1に含まれる単位1の繰り返し数m1は2~200の整数であり、5~150の整数が好ましく、5~100の整数がより好ましく、10~50の整数が特に好ましい。
【0060】
(OXm1は、1種のみの単位1を含んでいても2種以上の単位1を含んでいてもよい。2種以上の単位1としては、例えば、炭素数の異なる2種以上の単位1、炭素数が同じであっても側鎖の有無や側鎖の種類が異なる2種以上の単位1、炭素数が同じであってもフッ素原子の数が異なる2種以上の単位1が挙げられる。2種以上の単位1のそれぞれのm1は同一であっても異なっていてもよい。例えば(OCF)と(OCFCF)を有する場合に(OCF)に対する(OCFCF)の比率は0.1~10が好ましく、0.2~5がより好ましく、0.2~2がさらに好ましく、0.2~1.5が特に好ましく、0.2~0.85が最も好ましい。なお、2種以上の単位1の結合順序は限定されず、ランダム、交互、ブロックに配置されてもよい。
【0061】
化合物1は、-Si(Rn1 3-n1(以下、「基Y1」とも記す。)を少なくとも1個有すればよい。基Y1の数は、表面層の耐摩擦性がより優れる点で、2個以上が好ましく、2~10個がより好ましく、2~5個がさらに好ましく、2または3個が特に好ましい。基Y1が1分子中に複数ある場合、複数ある基Y1は、同一であっても異なっていてもよい。原料の入手容易性や含フッ素エーテル化合物の製造容易性の点からは、互いに同じであることが好ましい。
【0062】
は、1価の炭化水素基であり、1価の飽和炭化水素基が好ましい。Rの炭素数は、1~6が好ましく、1~3がより好ましく、1~2が特に好ましい。
【0063】
は、加水分解性基または水酸基である。Lにおける加水分解性基の具体例としては、アルコキシ基、アリロキシ基、ハロゲン原子、アシル基、イソシアナート基(-NCO)が挙げられる。アルコキシ基としては、炭素数1~4のアルコキシ基が好ましい。アシル基としては、炭素数1~6のアシル基が好ましい。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましい。
【0064】
としては、化合物1の製造がより容易である点から、炭素数1~4のアルコキシ基またはハロゲン原子が好ましい。Lとしては、塗布時のアウトガスが少なく、化合物1を含む本組成物の保存安定性がより優れる点から、炭素数1~4のアルコキシ基が好ましく、化合物1を含む本組成物の長期の保存安定性が必要な場合にはエトキシ基が特に好ましく、塗布後の反応時間を短時間とする場合にはメトキシ基が特に好ましい。
【0065】
n1は、0~2の整数である。n1は、0または1が好ましく、0が特に好ましい。Lが複数存在することによって、表面層の基材への密着性がより強固になる。n1が1以下である場合、1分子中に存在する複数のLは同一であっても異なっていてもよい。原料の入手容易性や含フッ素エーテル化合物の製造容易性の点からは、互いに同じであることが好ましい。n1が2である場合、1分子中に存在する複数のRは同一であっても異なっていてもよい。原料の入手容易性や含フッ素エーテル化合物の製造容易性の点からは、互いに同じであることが好ましい。
【0066】
j1は、1以上の整数であり、表面層の撥水撥油性がより優れる点から、1~5の整数が好ましい。Aが-Q[-Si(Rn1 3-n1k1である場合、j1は1であるのが好ましい。さらに、化合物1を製造しやすい点から、j1は1が特に好ましい。
g1は、1以上の整数であり、表面層の耐摩擦性がより優れる点から、2~4の整数が好ましく、2または3がより好ましく、3が特に好ましい。
【0067】
化合物1において、k1×j1+g1が基Y1の数である。この数が上記好ましい範囲となるようにk1、j1およびg1を調整する。表面層の基材への密着性の観点からは、k1が1以上であるのが好ましい。表面層の撥水撥油性の観点からはAは、ペルフルオロアルキル基であるのが好ましい。
【0068】
化合物1において、Qは、(k1+1)価の連結基であり、Zは、(j1+g1)価の連結基である。ZおよびQは、価数が同じ場合、同じであっても異なってもよいが、同じであることが好ましい。価数が異なる場合、ZおよびQは異なるが、類似の構造を有することが好ましい。以下、Zを例に説明するが、Qについても同様にできる。
【0069】
ここで、式1において、連結基であるZと(OXm1の切り分けについて説明する。連結基Zは、[A-(OXm1-]中の、m1個ある(OX)基のうち、もっともAに遠い(OX)基において、基Xの酸素原子と結合しない側に結合する。基Xの酸素原子と結合しない側の末端は、フッ素原子と結合した炭素原子であって最もAに遠い炭素原子である。
【0070】
は、本発明の効果を損なわない上記価数の基であればよい。Zの具体的な例について、基Y1を含む基として、基11および基12を用いて説明する。式11および式12において、Zは、基11、基12からSi(Rn1 3-n1を除いた基である。
-Q-X31(-Q-Si(Rn1 3-n1(-R31 式11
-Q-[CHC(R32)(-Q-Si(Rn1 3-n1)]-R33 式12
【0071】
式11および式12中の各記号の定義は、以下のとおりである。
、Lおよびn1の定義は、式1中の各基の定義と同義である。
【0072】
は、単結合または2価の連結基である。
2価の連結基としては、例えば、2価の炭化水素基(2価の飽和炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基、アルケニレン基、アルキニレン基であってもよい。2価の飽和炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状または環状であってもよく、例えば、アルキレン基が挙げられる。炭素数は1~20が好ましい。また、2価の芳香族炭化水素基は、炭素数5~20が好ましく、例えば、フェニレン基が挙げられる。それ以外にも、炭素数2~20のアルケニレン基、炭素数2~20のアルキニレン基であってもよい。)、2価の複素環基、-O-、-S-、-SO-、-N(R)-、-C(O)-、-Si(R-および、これらを2種以上組み合わせた基が挙げられる。ここで、Rは、アルキル基(好ましくは炭素数1~10)、または、フェニル基である。Rは、水素原子またはアルキル基(好ましくは炭素数1~10)である。
【0073】
なお、上記これらを2種以上組み合わせた基としては、例えば、-OC(O)-、-C(O)N(R)-、アルキレン基-O-アルキレン基、アルキレン基-OC(O)-アルキレン基、アルキレン基-Si(R-フェニレン基-Si(Rが挙げられる。
【0074】
31は、炭素原子、窒素原子およびケイ素原子から選ばれる分岐元素、単結合、または2~8価のオルガノポリシロキサン残基である。
2~8価のオルガノポリシロキサン残基としては、2価のオルガノポリシロキサン残基、および、後述する(w+1)価のオルガノポリシロキサン残基が挙げられる。
【0075】
は、QおよびX31が単結合の場合、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子および/またはアミド結合を有する基であり、それ以外の場合は単結合または2価の連結基である。アルキレン基の炭素数は、1~20が好ましく、1~10が特に好ましい。炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子および/またはアミド結合を有する基の炭素数は、2~20が好ましく、2~10が特に好ましい。
2価の連結基の定義は、上述したQで説明した定義と同義である。
【0076】
31は、水酸基またはアルキル基である。
アルキル基の炭素数は、1~5が好ましく、1~3がより好ましく、1が特に好ましい。
【0077】
31が単結合の場合、hは1、iは0であり、
31が窒素原子の場合、hは1~2の整数であり、iは0~1の整数であり、h+i=2を満たし、
31が炭素原子またはケイ素原子の場合、hは1~3の整数であり、iは0~2の整数であり、h+i=3を満たし、
31が2~8価のオルガノポリシロキサン残基の場合、hは1~7の整数であり、iは0~6の整数であり、h+i=1~7を満たす。
(-Q-Si(Rn1 3-n1)が2個以上ある場合は、2個以上の(-Q-Si(Rn1 3-n1)は、同一であっても異なっていてもよい。R31が2個以上ある場合は、2個以上の(-R31)は、同一であっても異なっていてもよい。
【0078】
は、単結合、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基である。アルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
【0079】
32は、水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、化合物を製造しやすい点から、水素原子が好ましい。
アルキル基としては、メチル基が好ましい。
【0080】
は、単結合またはアルキレン基である。アルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、1~6が特に好ましい。化合物を製造しやすい点から、Qは、単結合または-CH-が好ましい。
【0081】
33は、水素原子またはハロゲン原子であり、化合物を製造しやすい点から、水素原子が好ましい。
【0082】
yは、1~10の整数であり、1~6の整数が好ましい。
2個以上の[CHC(R32)(-Q-Si(Rn1 3-n1)]は、同一であっても異なっていてもよい。
【0083】
以下、連結基aとしてのZについて、基11を例に、hの数、すなわち基Y1の数に応じて以下の基11-1~11-6を用いてより具体的に説明する。
【0084】
-Qa1-Qb1-Si(Rn1 3-n1 式11-1
-Qa2-N[-Qb2-Si(Rn1 3-n1 式11-2
-Qa3-X34(R)[-Qb3-Si(Rn1 3-n1 式11-3
-Qa4-C[-Qb4-Si(Rn1 3-n1 式11-4
-Qa5-Si[-Qb5-Si(Rn1 3-n1 式11-5
-Qa6-X35[-Qb6-Si(Rn1 3-n1 式11-6
なお、式11-1~11-6中、R、Lおよび、n1の定義は、上述したとおりである。
【0085】
基11-1は、基Y1を1個有する場合のZの例示であり、基11-1における各記号の定義は、以下のとおりである。
a1は、(X32s1であり、X32は、-O-、または、-C(O)N(R)-である(ただし、式中のNはQb1に結合する)。
の定義は、上述したとおりである。
s1は、0または1である。
【0086】
b1は、アルキレン基、もしくは炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間に-O-、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基またはジアルキルシリレン基からなる群から選択される基を1または2以上有する基である。
【0087】
b1で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間に-O-、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基またはジアルキルシリレン基からなる群から選択される基を1または2以上有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
【0088】
b1としては、s1が0の場合は、-CHOCHCHCH-、-CHOCHCHOCHCHCH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHOCHCHCHSi(CHOSi(CHCHCH-が好ましい。(X32s1が-O-の場合は、-CHCHCH-、-CHCHOCHCHCH-が好ましい。(X32s1が-C(O)N(R)-の場合は、炭素数2~6のアルキレン基が好ましい(ただし、式中のNはQb1に結合する)。Qb1がこれらの基であると化合物が製造しやすい。
【0089】
基11-1の具体例としては、以下の基11-11~11-14が挙げられる。下記式中、*は、(OXm1との結合位置を表す。なお、基11-11中の連結基は、連結基a-2に分類される。基11-12中の連結基は、連結基a-1に分類され、基11-13中の連結基は、連結基a-3に分類され、基11-14中の連結基は、連結基a-4に分類される。
【0090】
【化2】
【0091】
基11-2は、基Y1を2個有する場合のZの例示であり、基11-2における各記号の定義は、以下のとおりである。
a2は、(X33s2-Qa21であり、X33は、-O-、-NH-、または、-C(O)N(R)-である。
の定義は、上述した通りである。
【0092】
a21は、単結合、アルキレン基、-C(O)-、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-もしくは-NH-を有する基である。
a21で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、1~6が特に好ましい。
a21で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-または-NH-を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
【0093】
a21としては、化合物を製造しやすい点から、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHOCHCH-、-CHNHCHCH-、-CHCHOC(O)CHCH-、-C(O)-が好ましい(ただし、右側がNに結合する。)。
【0094】
s2は、0または1(ただし、Qa21が単結合の場合は0である。)である。化合物を製造しやすい点から、0が好ましい。
【0095】
b2は、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間に、2価のオルガノポリシロキサン残基、エーテル性酸素原子もしくは-NH-を有する基である。
b2で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
b2で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間に、2価のオルガノポリシロキサン残基、エーテル性酸素原子または-NH-を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
【0096】
b2としては、化合物を製造しやすい点から、-CHCHCH-、-CHCHOCHCHCH-が好ましい(ただし、右側がSiに結合する。)。
【0097】
2個の[-Qb2-Si(Rn1 3-n1]は、同一であっても異なっていてもよい。
【0098】
基11-2の具体例としては、以下の基11-21~11-24が挙げられる。下記式中、*は、(OXm1との結合位置を表す。なお、基11-21中の連結基は、連結基a-3に分類される。基11-22、基11-23中の連結基は、連結基a-2に分類され、基11-24中の連結基は、連結基a-1に分類される。
【0099】
【化3】
【0100】
基11-3は、基Y1を2個有する場合の、基11-2とは別のZの例示であり、基11-3における各記号の定義は、以下のとおりである。
a3は、単結合、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基であり、化合物を製造しやすい点から、単結合が好ましい。
a3で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
a3で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
【0101】
34は、炭素原子またはケイ素原子である。
は、水酸基またはアルキル基である。Rで表されるアルキル基の炭素数は、1~4が好ましい。
34(R)としては、化合物を製造しやすい点から、C(OH)またはSi(Rga)(ただし、Rgaはアルキル基である。アルキル基の炭素数は1~10が好ましく、メチル基が特に好ましい。)が好ましい。
【0102】
b3は、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子もしくは2価のオルガノポリシロキサン残基を有する基である。
b3で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
b3で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子または2価のオルガノポリシロキサン残基を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
b3としては、化合物を製造しやすい点から、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCHCHCHCHCHCHCH-が好ましい。
【0103】
2個の[-Qb3-Si(Rn1 3-n1]は、同一であっても異なっていてもよい。
【0104】
基11-3の具体例としては、以下の基11-31~11-33が挙げられる。下記式中、*は、(OXm1との結合位置を表す。ここで、基11-31~11-33中の連結基は、いずれも連結基a-3に分類される。
【0105】
【化4】
【0106】
基11-4は、基Y1を3個有する場合のZの例示であり、基11-4における各記号の定義は、以下のとおりである。
a4は、-[C(O)N(R)]s4-Qa41-(O)t4である。
の定義は、上述した通りである。
s4は、0または1である。
a41は、単結合、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基である。
a41で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、1~6が特に好ましい。
【0107】
a41で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
t4は、0または1(ただし、Qa41が単結合の場合は0である。)である。
-Qa41-(O)t4-としては、化合物を製造しやすい点から、s4が0の場合は、単結合、-CHO-、-CHOCH-、-CHOCHCHO-、-CHOCHCHOCH-、-CHOCHCHCHCHOCH-が好ましく(ただし、左側が(OXm1に結合する。)、s4が1の場合は、単結合、-CH-、-CHCH-が好ましい。
【0108】
b4は、-(O)u4-Qb41である。
b41は、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間に-O-、-C(O)N(R)-(Rの定義は、上述した通りである。)、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基またはジアルキルシリレン基を有する基、もしくは、アルキレン基と該アルキレン基の(O)u4側末端に結合する-C(O)N(R)-、ジアルキルシリレン基または2価のオルガノポリシロキサン残基とを有する基である。
【0109】
b41で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間に-O-、-C(O)N(R)-(Rの定義は、上述した通りである。)、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基またはジアルキルシリレン基を有する基、もしくは、アルキレン基と該アルキレン基の(O)u4側末端に結合する-C(O)N(R)-、ジアルキルシリレン基または2価のオルガノポリシロキサン残基とを有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
u4は、0または1である。
【0110】
-Qb4-としては、化合物を製造しやすい点から、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHOCHCHCH-、-CHOCHCHCHCHCH-、-OCHCHCH-、-OSi(CHCHCHCH-、-OSi(CHOSi(CHCHCHCH-、-CHCHCHSi(CHPhSi(CHCHCH-が好ましい(ただし、右側がSiに結合する。)。
【0111】
3個の[-Qb4-Si(Rn1 3-n1]は、同一であっても異なっていてもよい。
【0112】
基11-4の具体例としては、以下の基11-41~11-44が挙げられる。下記式中、*は、(OXm1との結合位置を表す。なお、基11-41~11-43中の連結基は、連結基a-2に分類され、基11-44中の連結基は、連結基a-1に分類される。
【0113】
【化5】
【0114】
基11-5は、基Y1を3個有する場合の、基11-4とは別のZの例示であり、基11-5における各記号の定義は、以下のとおりである。
a5は、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基である。
a5で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
【0115】
a5で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
a5としては、化合物を製造しやすい点から、-CHOCHCHCH-、-CHOCHCHOCHCHCH-、-CHCH-、-CHCHCH-が好ましい(ただし、右側がSiに結合する。)。
【0116】
b5は、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子もしくは2価のオルガノポリシロキサン残基を有する基である。
b5で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
b5で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子または2価のオルガノポリシロキサン残基を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
b5としては、化合物を製造しやすい点から、-CHCHCH-、-CHCHOCHCHCH-が好ましい(ただし、右側がSi(Rn1 3-n1に結合する。)。
【0117】
3個の[-Qb5-Si(Rn1 3-n1]は、同一であっても異なっていてもよい。
【0118】
基11-5の具体例としては、以下の基11-51~11-52が挙げられる。下記式中、*は、(OXm1との結合位置を表す。なお、基11-51中の連結基は、連結基a-2に分類される。基11-52中の連結基は、連結基a-3に分類される。
【0119】
【化6】
【0120】
基11-6は、基Y1をw個有する場合のZの例示であり、基11-6における各記号の定義は、以下のとおりである。基11-6中の連結基は、以下に示すとおりオルガノポリシロキサン残基を含む。したがって、基11-6中の連結基は、連結基a-4に分類される。
【0121】
a6は、-[C(O)N(R)]-Qa61である。
の定義は、上述の通りである。
vは、0または1である。
【0122】
a61は、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基である。
a61で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
a61で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
a61としては、化合物を製造しやすい点から、-CHOCHCHCH-、-CHOCHCHOCHCHCH-、-CHCH-、-CHCHCH-が好ましい(ただし、右側がX35に結合する。)。
【0123】
35は、(w+1)価のオルガノポリシロキサン残基である。
wは、2~7の整数である。
(w+1)価のオルガノポリシロキサン残基としては、下記の基X1-1~X1-8が挙げられる。ただし、下式におけるRは、上述のとおりである。
【0124】
【化7】
【0125】
b6は、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子もしくは2価のオルガノポリシロキサン残基を有する基である。
b6で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
b6で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子または2価のオルガノポリシロキサン残基を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
b6としては、化合物を製造しやすい点から、-CHCH-、-CHCHCH-が好ましい。
【0126】
w個の[-Qb6-Si(Rn1 3-n1]は、同一であっても異なっていてもよい。
【0127】
化合物1は、表面層の撥水撥油性がより優れる点から、式1-2で表される化合物も好ましい。
[A-(OXm1-Q-]j3232[-Q-Si(Rn1 3-n1h32 式1-2
式1-2中、A、X、m1、Q、Q、R、Lおよびn1の定義は、式1中および式11中の各基の定義と同義である。
【0128】
32は、(j32+h32)価の炭化水素基、または、炭化水素基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を1つ以上有する炭素数2以上で(j32+h32)価の炭化水素基である。
32としては、1級の水酸基を有する多価アルコールから水酸基を除いた残基が好ましい。
32としては、原料の入手容易性の点から、基Z-1~Z-5が好ましい。ただし、R34は、アルキル基であり、メチル基またはエチル基が好ましい。
【0129】
【化8】
【0130】
j32は2以上の整数であり、表面層の撥水撥油性がより優れる点から、2~5の整数が好ましい。
h32は1以上の整数であり、表面層の耐摩擦性がより優れる点から、2~4の整数が好ましく、2または3がより好ましい。
化合物1-2において、例えば、Q、Qが共に単結合の場合は、基Z-1~基Z-5が連結基aに相当する。基Z-3は連結基a-2に分類され、それ以外は連結基a-3に分類される。
【0131】
化合物Aとしては、ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖aの片方の末端に連結基a、基板と結合する箇所が多いほど密着性は向上するため、好ましくは、連結基a-1を介して基Yが2個以上連結した化合物が特に好ましい。この場合、基Yの数は、上記と同様に2~10個がより好ましく、2~5個がさらに好ましく、2または3個が特に好ましい。
【0132】
このような化合物Aの具体例としては、化合物1において、Aがペルフルオロアルキル基であり、Z[-Si(Rn1 3-n1g1が、基11-2、基11-4、基11-6から選ばれ、連結基aであるZが連結基a-1に分類される化合物が挙げられる。Z[-Si(Rn1 3-n1g1としてより具体的には、基11-24、基11-44等が挙げられる。また、化合物1-2において、Aがペルフルオロアルキル基であり、Qが-C(O)N(R)-(ただし、Rは上記のとおりである)である化合物が挙げられる。
【0133】
化合物Aの数平均分子量(Mn)は、表面層の耐摩擦性の点から、500~20,000が好ましく、800~10,000がより好ましく、1,000~8,000が特に好ましい。
【0134】
化合物Aの数平均分子量(Mn)は、NMR分析法を用い以下の方法で得られる値である。すなわち、19F-NMR(溶媒:CDCl、内部標準:CFCl)により、(OXm1の繰り返し単位を同定するとともに、繰り返し単位の数を算出し、一分子あたりの(OXm1の分子量の平均値を算出する。次に、1H-NMR(溶媒:CDCl、内部標準:TMS)により、末端基の同定および定量を行い、末端基のモル数に基づいて、本組成物の数平均分子量(Mn)を算出する。以下、数平均分子量を単に「Mn」で示す場合もある。
【0135】
化合物Aの具体例としては、例えば、下記の文献に記載のものが挙げられる。
特開平11-029585号公報および特開2000-327772号公報に記載のパーフルオロポリエーテル変性アミノシラン、特許第2874715号公報に記載のケイ素含有有機含フッ素ポリマー、特開2000-144097号公報に記載の有機ケイ素化合物、特表2002-506887号公報に記載のフッ素化シロキサン、特表2008-534696号公報に記載の有機シリコーン化合物、特許第4138936号公報に記載のフッ素化変性水素含有重合体、米国特許出願公開第2010/0129672号明細書および国際公開第2014/126064号に記載の化合物、国際公開第2011/060047号、国際公開第2011/059430号および特開2014-070163号公報に記載のオルガノシリコン化合物、国際公開第2012/064649号に記載の含フッ素オルガノシラン化合物、特開2012-72272号公報に記載のフルオロオキシアルキレン基含有ポリマー、国際公開第2013/042732号、国際公開第2013/121984号、国際公開第2013/121985号、国際公開第2013/121986号、国際公開第2014/163004号、特開2014-080473号公報、国際公開第2015/087902号、国際公開第2017/038830号、国際公開第2017/038832号、国際公開第2017/187775号、国際公開第2018/143433号、国際公開第2018/216630号、国際公開第2019/039186、国際公開第2019/039341号、国際公開第2019/044479号、国際公開第2019/049753号および特開2019-044158号公報に記載の含フッ素エーテル化合物、特開2014-218639号公報に記載のパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物、国際公開第2018/169002号に記載のパーフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物、国際公開第2019/151442号に記載のフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物、国際公開第2019/151445号に記載の(ポリ)エーテル基含有シラン化合物、国際公開第2019/098230号に記載のパーフルオロポリエーテル基含有化合物、特開2015-199906号公報、特開2016-204656号公報、特開2016-210854号公報および特開2016-222859号公報に記載のフルオロポリエーテル基含有ポリマー変性シラン、国際公開第2019/039083号および国際公開第2019/049754号に記載の含フッ素化合物。
【0136】
化合物Aの市販品としては、信越化学工業社製のKY-100シリーズ(KY-178、KY-185、KY-195、KY-1900等)、AGC社製のAfluid(登録商標)S550、ダイキン工業社製のオプツール(登録商標)DSX、オプツール(登録商標)AES、オプツール(登録商標)UF503、オプツール(登録商標)UD509等が挙げられる。なお、本組成物が含有する化合物Aは1種でも2種以上でもよい。
【0137】
(化合物2:化合物Bの具体的化合物)
化合物Bは、化合物2であることが好ましい。化合物2において、(OXm2が化合物Bのポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖bに相当し、-CH=CHが末端の炭素-炭素二重結合を示し、ZおよびQが連結基bに相当する。
[A-(OXm2-]j2[-CH=CHg2 式2
ただし、式2中、
は、ペルフルオロアルキル基または-Q[-CH=CHk2であり、
は、1個以上のフッ素原子を有するフルオロアルキレン基であり、
m2は、2~200の整数であり、
j2、g2、k2はそれぞれ独立して、1以上の整数であり、
は、(j2+g2)価の連結基であり、
は、(k2+1)価の連結基である。
【0138】
が、ペルフルオロアルキル基である場合の[A-(OXm2-]j2は、化合物1において、Aが、ペルフルオロアルキル基である場合の[A-(OXm1-]j1と、好ましい態様も含めて同様にできる。
【0139】
化合物2は、-CH=CHを少なくとも1個有すればよい。表面層の耐摩擦性および耐溶剤性がより優れる点で、2個以上が好ましく、2~10個がより好ましく、2~5個がさらに好ましく、2または3個が特に好ましい。
【0140】
g2は、1以上の整数であり、表面層の耐摩擦性および耐溶剤性がより優れる点から、2~4の整数が好ましく、2または3がより好ましく、3が特に好ましい。
化合物2において、k2×j2+g2が-CH=CHの数である。この数が上記好ましい範囲となるようにk2、j2およびg2を調整する。表面層の耐摩擦性および耐溶剤性の観点からは、k2が1以上であるのが好ましい。表面層の撥水撥油性の観点からはAは、ペルフルオロアルキル基であるのが好ましい。
【0141】
化合物2において、Qは、(k2+1)価の連結基であり、Zは、(j2+g2)価の連結基である。ZおよびQは、価数が同じ場合、同じであっても異なってもよいが、同じであることが好ましい。価数が異なる場合、ZおよびQは異なるが、類似の構造を有することが好ましい。以下、Zを例に説明するが、Qについても同様にできる。
【0142】
ここで、連結基であるZと(OXm2の切り分けについては、化合物1におけるZと(OXm1の切り分けと同様とする。
【0143】
は、本発明の効果を損なわない上記価数の基であればよい。Zの具体的な例については、化合物1におけるZと同様にできる。
【0144】
は、具体的には、-CH=CHを含む基として、以下の式21に示す基および式22に示す基が挙げられる。すなわち、式21および式22において、Zは、基21、基22から-CH=CHを除いた基である。
-Qaa-X36(-Qbb-CH=CHhh(-R35ii 式21
-Qcc-[CHC(R36)(-Qdd-CH=CH)]yy-R37 式22
式21および式22中の各記号の定義は、以下のとおりである。
aaは、単結合または2価の連結基である。2価の連結基の定義は、上述した式11中のQで説明した定義と同義である。
36は、炭素原子、窒素原子およびケイ素原子から選ばれる分岐元素、単結合、または2~8価のオルガノポリシロキサン残基である。
2~8価のオルガノポリシロキサン残基としては、2価のオルガノポリシロキサン残基、および、後述の(ww+1)価のオルガノポリシロキサン残基が挙げられる。
【0145】
bbは、QaaおよびX36が単結合の場合、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子および/またはアミド結合を有する基であり、それ以外の場合は単結合または2価の連結基である。アルキレン基の炭素数は、1~18が好ましく、1~8が特に好ましい。炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子および/またはアミド結合を有する基の炭素数は、2~18が好ましく、2~8が特に好ましい。2価の連結基の定義は、上述した式11中のQで説明した定義と同義である。
【0146】
35は、水酸基またはアルキル基である。
アルキル基の炭素数は、1~5が好ましく、1~3がより好ましく、1が特に好ましい。
【0147】
36が単結合の場合、hhは1、iiは0であり、
36が窒素原子の場合、hhは1~2の整数であり、iiは0~1の整数であり、hh+ii=2を満たし、
36が炭素原子またはケイ素原子の場合、hhは1~3の整数であり、iiは0~2の整数であり、hh+ii=3を満たし、
36が2~8価のオルガノポリシロキサン残基の場合、hhは1~7の整数であり、iiは0~6の整数であり、hh+ii=1~7を満たす。
(-Qbb-CH=CH)が2個以上ある場合は、2個以上の(-Qbb-CH=CH)は、同一であっても異なっていてもよい。R35が2個以上ある場合は、2個以上の(-R35)は、同一であっても異なっていてもよい。
【0148】
なお、式21におけるQaa、X36、hh、R35、iiとQbbは、以下の基であることが好ましい。連結基aと連結基bの構造がほぼ同じ構造であることが好ましい点から、式21における、Qaa、X36、hh、R35、iiはそれぞれ、式11におけるQ、X31、h、R31、iと同じであり、式21におけるQbbは、式11におけるQから炭素数が2個少ない基であるのが好ましい。
【0149】
ccは、単結合、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基である。アルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
【0150】
36は、水素原子または炭素数1~10のアルキル基であり、化合物を製造しやすい点から、水素原子が好ましい。
アルキル基としては、メチル基が好ましい。
【0151】
ddは、単結合またはアルキレン基である。アルキレン基の炭素数は、1~8が好ましく、1~4が特に好ましい。化合物を製造しやすい点から、Qddは、単結合が好ましい。
【0152】
37は、水素原子またはハロゲン原子であり、化合物を製造しやすい点から、水素原子が好ましい。
【0153】
yyは、1~10の整数であり、1~6の整数が好ましい。
2個以上の[CHC(R36)(-Qdd-CH=CH)]は、同一であっても異なっていてもよい。
【0154】
なお、式22におけるQcc、R36、R37、yyとQddは、以下の基であることが好ましい。連結基aと連結基bの構造がほぼ同じ構造であることが好ましい点から、式22におけるQcc、R36、R37、yyはそれぞれ、式12におけるQ、R32、R33、yと同じであり、式22におけるQddは、式12におけるQから炭素数が2個少ない基であるのが好ましい。
【0155】
連結基bとしてのZについて、具体的には、以下に示す基21-1~21-6において-CH=CHを除いた基が挙げられる。
【0156】
-Qaa1-Qbb1-CH=CH 式21-1
-Qaa2-N[-Qbb2-CH=CH 式21-2
-Qaa3-X37(Rgg)[-Qbb3-CH=CH 式21-3
-Qaa4-C[-Qbb4-CH=CH 式21-4
-Qaa5-Si[-Qbb5-CH=CH 式21-5
-Qaa6-X38[-Qbb6-CH=CHww 式21-6
【0157】
基21-1は、-CH=CHを1個有する場合のZの例示であり、基21-1における各記号の定義は、以下のとおりである。
aa1は、(X39ss1であり、X39は、-O-、または、-C(O)N(R)-である(ただし、式中のNはQbb1に結合する)。
の定義は、上述したとおりである。
ss1は、0または1である。
【0158】
bb1は、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間に-O-、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基またはジアルキルシリレン基を有する基である。Qbb1については、基11-1のQb1よりも炭素数が2個少ない基が好ましく例示できる。
【0159】
bb1としては、ss1が0の場合は、-CHOCH-、-CHOCHCHOCH-、-CH-、-CHOCHCHCHSi(CHOSi(CH-が好ましい。(X39ss1が-O-の場合は、-CH-、-CHCHOCH-が好ましい。(X39ss1が-C(O)N(R)-の場合は、炭素数2~4のアルキレン基が好ましい(ただし、式中のNはQbb1に結合する)。Qbb1がこれらの基であると化合物が製造しやすい。
【0160】
基21-1のQaa1およびQbb1は、連結基aと連結基bの構造がほぼ同じ構造であることが好ましい点から、基11-1におけるQa1およびQb1とそれぞれ同じであることが好ましい。基21-1の具体例としては、以下の基21-11~21-14が挙げられる。下記式中、*は、(OXm2との結合位置を表す。なお、基21-11中の連結基は、連結基b-2に分類される。基21-12中の連結基は、連結基b-1に分類され、基21-13中の連結基は、連結基b-3に分類され、基21-14中の連結基は、連結基b-4に分類される。
【0161】
*-(CH0or1OCH-CH=CH 21-11
*-C(O)NH-CH-CH=CH 21-12
*-CH-CH=CH 21-13
*-CHO-(CH-Si(CH-O-Si(CH-CH=CH 21-14
【0162】
基21-2は、-CH=CHを2個有する場合のZの例示であり、基21-2における各記号の定義は、以下のとおりである。
aa2は、(X40ss2-Qaa21であり、X40は、-O-、-NH-、または、-C(O)N(R)-である。
の定義は、上述した通りである。
【0163】
aa21は、単結合、アルキレン基、-C(O)-、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-もしくは-NH-を有する基である。
aa21で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、1~6が特に好ましい。
aa21で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-または-NH-を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
【0164】
aa21としては、化合物を製造しやすい点から、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHOCHCH-、-CHNHCHCH-、-CHCHOC(O)CHCH-、-C(O)-が好ましい(ただし、右側がNに結合する。)。
【0165】
ss2は、0または1(ただし、Qaa21が単結合の場合は0である。)である。化合物を製造しやすい点から、0が好ましい。
【0166】
bb2は、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間に、2価のオルガノポリシロキサン残基、エーテル性酸素原子もしくは-NH-を有する基である。Qbb2については、基11-2のQb2よりも炭素数が2個少ない基が好ましく例示できる。
【0167】
bb2としては、化合物を製造しやすい点から、-CH-、-CHCHOCH-が好ましい(ただし、右側が-CH=CHに結合する。)。
【0168】
2個の[-Qbb2-CH=CH]は、同一であっても異なっていてもよい。
【0169】
基21-2のQaa12およびQbb2は、連結基aと連結基bの構造がほぼ同じ構造であることが好ましい点から、基11-2におけるQa2およびQb2とそれぞれ同じであることが好ましい。基21-2の具体例としては、以下の基21-21~21-24が挙げられる。下記式中、*は、(OXm2との結合位置を表す。なお、基21-21中の連結基は、連結基b-3に分類される。基21-22、基21-23中の連結基は、連結基b-2に分類され、基21-24中の連結基は、連結基b-1に分類される。
【0170】
*-CHN[CH-CH=CH 21-21
*-CHN[CHCHOCH-CH=CH 21-22
*-CHOCHCHN[CH-CH=CH 21-23
*-C(O)N[CH-CH=CH 21-24
【0171】
基21-3は、-CH=CHを2個有する場合の、基21-2とは別のZの例示であり、基21-3における各記号の定義は、以下のとおりである。
aa3は、単結合、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基であり、化合物を製造しやすい点から、単結合が好ましい。
aa3で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
aa3で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
【0172】
37は、炭素原子またはケイ素原子である。
ggは、水酸基またはアルキル基である。Rggで表されるアルキル基の炭素数は、1~4が好ましい。
37(Rgg)としては、化合物を製造しやすい点から、C(OH)またはSi(Rgga)(ただし、Rggaはアルキル基である。アルキル基の炭素数は1~10が好ましく、メチル基が特に好ましい。)が好ましい。
【0173】
bb3は、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子もしくは2価のオルガノポリシロキサン残基を有する基である。Qbb3については、基11-3のQb3よりも炭素数が2個少ない基が好ましく例示できる。
【0174】
bb3としては、化合物を製造しやすい点から、-CH-、-CHCHCHCHCHCH-が好ましい。
【0175】
2個の[-Qbb3-CH=CH]は、同一であっても異なっていてもよい。
【0176】
基21-3のQaa3、X37、RggおよびQbb3は、連結基aと連結基bの構造がほぼ同じ構造であることが好ましい点から、基11-3におけるQa3、X34、RおよびQb3とそれぞれ同じであることが好ましい。基21-3の具体例としては、以下の基21-31~21-33が挙げられる。下記式中、*は、(OXm2との結合位置を表す。ここで、基21-31~21-33中の連結基は、いずれも連結基b-3に分類される。
【0177】
*-C[CH-CH=CH(OH) 21-31
*-CHCH-Si[CH-CH=CH(CH) 21-32
*-C[(CH-CH=CH(OH) 21-33
【0178】
基21-4は、-CH=CHを3個有する場合のZの例示であり、基21-4における各記号の定義は、以下のとおりである。
aa4は、-[C(O)N(R)]ss4-Qaa41-(O)tt4である。
の定義は、上述した通りである。
ss4は、0または1である。
aa41は、単結合、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基である。
aa41で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、1~6が特に好ましい。
【0179】
aa41で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
tt4は、0または1(ただし、Qaa41が単結合の場合は0である。)である。
-Qaa41-(O)tt4-としては、化合物を製造しやすい点から、ss4が0の場合は、単結合、-CHO-、-CHOCH-、-CHOCHCHO-、-CHOCHCHOCH-、-CHOCHCHCHCHOCH-が好ましく(ただし、左側が(OXm2に結合する。)、ss4が1の場合は、単結合、-CH-、-CHCH-が好ましい。
【0180】
bb4は、-(O)uu4-Qbb41である。Qbb41は、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間に-O-、-C(O)N(R)-(Rの定義は、上述した通りである。)、シルフェニレン骨格基、2価のオルガノポリシロキサン残基またはジアルキルシリレン基を有する基、もしくは、アルキレン基と該アルキレン基の(O)uu4側末端に結合する-C(O)N(R)-、ジアルキルシリレン基または2価のオルガノポリシロキサン残基とを有する基である。uu4は、0または1である。Qbb41については、基11-4のQb41よりも炭素数が2個少ない基が好ましく例示できる。
【0181】
-Qbb4-としては、化合物を製造しやすい点から、-CH-、-CHOCH-、-CHOCHCHCH-、-OCH-、-OSi(CHCH-、-OSi(CHOSi(CHCH-、-CHCHCHSi(CHPhSi(CH-が好ましい(ただし、右側が-CH=CHに結合する。)。
【0182】
3個の[-Qbb4-CH=CH]は、同一であっても異なっていてもよい。
【0183】
基21-4のQaa4およびQbb4は、基11-4におけるQa4およびQb4とそれぞれ同じであるのが好ましい。基21-4の具体例としては、以下の基21-41~21-44が挙げられる。下記式中、*は、(OXm2との結合位置を表す。なお、基21-41~21-43中の連結基は、連結基b-2に分類され、基21-44中の連結基は、連結基b-1に分類される。
【0184】
*-CHO-C[CH-CH=CH 21-41
*-CHOCH-C[CHO(CH1~3-CH=CH 21-42
*-CHO-C[CH-CH=CH(-CH=CH) 21-43
*-C(O)NH-(CH0or1-C[CH-CH=CH 21-44
【0185】
基21-5は、-CH=CHを3個有する場合の、基21-4とは別のZの例示であり、基21-5における各記号の定義は、以下のとおりである。
aa5は、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基である。
aa5で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
【0186】
aa5で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
aa5としては、化合物を製造しやすい点から、-CHOCHCHCH-、-CHOCHCHOCHCHCH-、-CHCH-、-CHCHCH-が好ましい(ただし、右側が-CH=CHに結合する。)。
【0187】
bb5は、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子もしくは2価のオルガノポリシロキサン残基を有する基である。Qbb5については、基11-5のQb5よりも炭素数が2個少ない基が好ましく例示できる。
【0188】
bb5としては、化合物を製造しやすい点から、-CH-、-CHCHOCH-が好ましい(ただし、右側が-CH=CHに結合する。)。
【0189】
3個の[-Qbb5-CH=CH]は、同一であっても異なっていてもよい。
【0190】
基21-5のQaa5およびQbb5は、連結基aと連結基bの構造がほぼ同じ構造であることが好ましい点から、基11-5におけるQa5およびQb5とそれぞれ同じであることが好ましい。基21-5の具体例としては、以下の基21-51、基21-52が挙げられる。下記式中、*は、(OXm2との結合位置を表す。なお、基21-51中の連結基は、連結基b-2に分類される。基21-52中の連結基は、連結基b-3に分類される。
【0191】
*-CHO-(CH-Si[CH-CH=CH 21-51
*-(CH-Si[CH-CH=CH 21-52
【0192】
基21-6は、-CH=CHをww個有する場合のZの例示であり、基21-6における各記号の定義は、以下のとおりである。基21-6中の連結基は、以下に示すとおりオルガノポリシロキサン残基を含む。したがって、基21-6中の連結基は、連結基a-4に分類される。
【0193】
aa6は、-[C(O)N(R)]vv-Qaa61である。
の定義は、上述の通りである。
vvは、0または1である。
【0194】
aa61は、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基である。
aa61で表されるアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
aa61で表される炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を有する基の炭素数は、2~10が好ましく、2~6が特に好ましい。
aa61としては、化合物を製造しやすい点から、-CHOCHCHCH-、-CHOCHCHOCHCHCH-、-CHCH-、-CHCHCH-が好ましい(ただし、右側がX38に結合する。)。
【0195】
38は、(ww+1)価のオルガノポリシロキサン残基である。
wwは、2~7の整数である。
(ww+1)価のオルガノポリシロキサン残基としては、上記基11-6で説明した(w+1)価のオルガノポリシロキサン残基と同様の基が挙げられる。
【0196】
bb6は、アルキレン基、または、炭素数2以上のアルキレン基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子もしくは2価のオルガノポリシロキサン残基を有する基である。Qbb6については、基11-6のQb6よりも炭素数が2個少ない基が好ましく例示できる。
【0197】
bb6としては、化合物を製造しやすい点から、-CH-が好ましい。
ww個の[-Qbb6-CH=CH]は、同一であっても異なっていてもよい。
【0198】
基21-6は、-CH=CHをww個有する場合のZの例示であり、基21-6中の連結基は、連結基b-4に分類される。
【0199】
化合物2は、表面層の耐摩擦性および耐溶剤性がより優れる点から、式2-2で表される化合物も好ましい。
【0200】
[A-(OXm2-Qaa-]j4242[-Qbb-CH=CHh42 式2-2
式2-2中、A、X、m2、QaaおよびQbbの定義は、式2中および式21中の各基の定義と同義である。
【0201】
42は、(j42+h42)価の炭化水素基、または、炭化水素基の炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子を1つ以上有する炭素数2以上で(j42+h42)価の炭化水素基である。
42としては、1級の水酸基を有する多価アルコールから水酸基を除いた残基が好ましい。
42としては、原料の入手容易性の点から、上記基Z-1~Z-5が好ましい。ただし、R34は、アルキル基であり、メチル基またはエチル基が好ましい。
j42は2以上の整数であり、2~5の整数が好ましい。
h42は1以上の整数であり、2~4の整数が好ましく、2または3がより好ましい。
j42、Z42およびh42は、それぞれ、式1-2におけるj32、Z32およびh32と同じであるのが好ましい。
【0202】
化合物Bとしては、ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖bの片方の末端に連結基bを有する化合物が、基板への密着性が増すため好ましい。化合物Bとしては、ビニル基の数が多いと基板への密着性が増すため好ましい。化合物Bとしては、連結基b-1を介して末端の炭素-炭素二重結合が2個以上連結した化合物が特に好ましい。この場合、末端の炭素-炭素二重結合の数は、上記と同様に2~10個がより好ましく、2~5個がさらに好ましく、2または3個が特に好ましい。
【0203】
このような化合物Bの具体例としては、化合物2において、Aがペルフルオロアルキル基であり、Z[-CH=CHg2が、基21-2、基21-4、基21-6から選ばれ、連結基bであるZが連結基b-1に分類される化合物が挙げられる。Z[-CH=CHg2としてより具体的には、基21-24、基21-44等が挙げられる。また、化合物2-2において、Aがペルフルオロアルキル基であり、Qbbが-C(O)N(R)-(ただし、Rは上記のとおりである)である化合物が挙げられる。
【0204】
化合物Bの数平均分子量(Mn)は、表面層の耐摩擦性の点から、500~20,000が好ましく、800~10,000がより好ましく、1,000~8,000が特に好ましい。
【0205】
化合物Bは、例えば、化合物Aを得る際に用いる原料成分であってもよい。化合物Aは典型的には、加水分解性基と水素原子がケイ素原子に結合したシラン化合物、例えば、HSi(Rn1 3-n1と化合物Bとをヒドロシリル化反応により結合して製造できる。したがって、このような関係の化合物Bと化合物Aを組み合わせて用いることができる。その場合、化合物Bが有する連結基bは、得られる化合物Aの連結基aに比べて炭素数が2個少ない基となる。
【0206】
例えば、基11-12を有する化合物1は、基21-12を有する化合物2とHSi(OCHをヒドロシリル化反応により結合して製造できる。得られる化合物1における[A-(OXm1-]j1と原料化合物2の[A-(OXm2j2は同じである。
【0207】
他の化合物Aにおいても、対応する化合物Bを用いて同様に製造できる。なお、化合物Bについても、化合物Aの具体例が記載された、上記の文献に具体例が記載されている。
本組成物が含有する化合物Bは1種でも2種以上でもよい。
【0208】
(本組成物)
本組成物は、化合物Aと化合物Bとを所定の割合で混合することで製造できる。また、化合物Bを上記ヒドロシリル化反応により化合物Aとする際に、反応に用いる化合物Bの量を調整して得られた反応液から、化合物Bと化合物A以外の成分を除去して製造してもよい。なお、反応に用いる化合物Bの量は、得られる反応液が化合物Aと化合物Bとを所定の割合で含有するように調整する。
【0209】
本組成物が含有する化合物Aの1モルに対する化合物Bの含有割合は、0.25~0.40モルである。本組成物においては、化合物Aと化合物Bとを上記割合で含有することで、主として化合物Aの硬化により得られる表面層に対する化合物Bによる滑り性の付与と、表面層からの化合物B自体の脱離の抑制がバランス良く達成できる。化合物Aの1モルに対する化合物Bの含有割合は、0.25~0.35モルが好ましい。
【0210】
本組成物において化合物Aは、化合物A自体が含有されてもよく、化合物Aが有する基Yが加水分解性基を有する場合はその一部が加水分解反応した状態、さらに基Yがシラノール基を有する場合はそのシラノール基が、または上記加水分解反応で生成したシラノール基が部分的に縮合した状態で含まれていてもよい。
【0211】
本組成物が含有する化合物Aと化合物Bの合計含有量は、組成物全量に対して50~100質量%が好ましく、90~100質量%がより好ましく、99~100質量%がさらに好ましく、99.5~100質量%が特に好ましい。
【0212】
本組成物は本発明の効果を損なわない範囲で任意成分を含有できる。任意成分としては、例えば、界面活性剤、化合物Aが有する基Yの加水分解と縮合反応を促進する酸触媒や塩基性触媒等の公知の添加剤、フルオロエーテル環化体が挙げられる。酸触媒としては、塩酸、硝酸、酢酸、硫酸、燐酸、スルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等が挙げられる。塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等が挙げられる。
【0213】
フルオロエーテル環化体としては、例えば、化合物Cが挙げられる。
【化9】
【0214】
式C中、Xはフルオロアルキレン基、zは1~200の整数である。(OX)が複数存在する場合、(OX)は同一であっても異なっていてもよく、またその結合順序は限定されず、ランダム、交互、ブロックに配置されていてもよい。
zは2~150の整数が好ましく、2~100の整数が特に好ましい。
の炭素数は1~6が好ましい。Xの炭素数が2以上の場合、直鎖状であっても分岐鎖状であっても構わないが直鎖状が好ましい。Xは耐摩擦性に優れる点からはペルフルオロアルキレン基が好ましい。
の具体例としては、CF、CHF、C、CHF、CH、C、CHF、C、C、CHF、C、C10、CHF、C、C12、CHF11、C12が挙げられる。
1つの分子内にXが複数存在する場合、その種類は、2~20の範囲であることが好ましい。
【0215】
フルオロエーテル環化体の数平均分子量は500~5,000が好ましい。フルオロエーテル環化体の分子量分布は1~1.5が好ましい。フルオロエーテル環化体は、数平均分子量の2倍以上の成分が、20質量%以下であることが好ましい。
【0216】
フルオロエーテル環化体の具体例としては化合物C-1~C-13が挙げられる。なお、式中のz1~z12は好ましい範囲も含めて上述のzと同様である。式中のp、q、rおよびdはそれぞれ1~197であって、p+q+r+dは好ましい範囲も含めて上述のzと同様である。
【0217】
【化10】
【0218】
任意成分は、化合物Aおよび化合物Bの製造工程で生成した副生成物等の不純物を含んでもよい。任意成分の含有量は本組成物全量に対して50質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が特に好ましい。特に、任意成分がフルオロエーテル環化体の場合、フルオロエーテル環化体の含有量は本組成物全量に対して50質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下が特に好ましい。
【0219】
[コーティング液]
本発明のコーティング液(以下、「本コーティング液」とも記す。)は、本組成物と液状媒体とを含む。本コーティング液は、液状であればよく、溶液であっても分散液であってもよい。
【0220】
本コーティング液における本組成物の含有量は、本コーティング液のうち、0.001~40質量%が好ましく、0.001~20質量%がより好ましく、0.001~10質量%がさらに好ましく、0.01~1質量%が特に好ましい。
【0221】
(液状媒体)
液状媒体としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒は、含フッ素有機溶媒でも非フッ素有機溶媒でもよく、両溶媒を含んでもよい。
【0222】
含フッ素有機溶媒としては、フッ素化アルカン、フッ素化芳香族化合物、フルオロアルキルエーテル、フッ素化アルキルアミン、フルオロアルコール等が挙げられる。
【0223】
フッ素化アルカンとしては、炭素数4~8の化合物が好ましい。市販品としては、C13H(AGC社製、アサヒクリン(登録商標)AC-2000)、C13(AGC社製、アサヒクリン(登録商標)AC-6000)、CCHFCHFCF(ケマーズ社製、バートレル(登録商標)XF)等が挙げられる。
【0224】
フッ素化芳香族化合物としては、ヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ペルフルオロトルエン、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等が挙げられる。
【0225】
フルオロアルキルエーテルとしては、炭素数4~12の化合物が好ましい。市販品としては、CFCHOCFCFH(AGC社製、アサヒクリン(登録商標)AE-3000)、COCH(3M社製、ノベック(登録商標)7100)、COC(3M社製、ノベック(登録商標)7200)、CCF(OCH)C(3M社製、ノベック(登録商標)7300)等が挙げられる。
【0226】
フッ素化アルキルアミンとしては、ペルフルオロトリプロピルアミン、ペルフルオロトリブチルアミン等が挙げられる。
【0227】
フルオロアルコールとしては、2,2,3,3-テトラフルオロプロパノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール等が挙げられる。
【0228】
非フッ素有機溶媒としては、水素原子および炭素原子のみからなる化合物と、水素原子、炭素原子および酸素原子のみからなる化合物が好ましく、炭化水素、アルコール、ケトン、エーテル、エステルが挙げられる。
液状媒体は、2種以上を混合した混合媒体であってもよい。
【0229】
液状媒体の含有量は、本コーティング液のうち、60~99.999質量%が好ましく、80~99.999質量%がより好ましく、90~99.999質量%がさらに好ましく、99~99.999質量%が特に好ましい。
【0230】
[物品]
本発明の物品(以下、「本物品」とも記す。)は、本組成物から形成された表面層を基材の表面に有する。
【0231】
表面層の厚さは、0.1~100nmが好ましく、0.1~50nmが特に好ましい。表面層の厚さが前記範囲の下限値以上であれば、表面処理による効果が充分に得られやすい。表面層の厚さが上記範囲の上限値以下であれば、利用効率が高い。表面層の厚さは、薄膜解析用X線回折計(RIGAKU社製、ATX-G)を用いて、X線反射率法によって反射X線の干渉パターンを得て、干渉パターンの振動周期から算出できる。
【0232】
基材としては、撥水撥油性の付与が求められている基材が挙げられる。基材の材料としては、金属、樹脂、ガラス、サファイア、セラミック、石、これらの複合材料が挙げられる。ガラスは化学強化されていてもよい。ガラスとしては、ソーダライムガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、クリスタルガラス、石英ガラスが好ましく、化学強化したソーダライムガラス、化学強化したアルカリアルミノケイ酸塩ガラス、および化学強化したホウ珪酸ガラスが特に好ましい。透明樹脂としては、アクリル樹脂、ポリカーボネートが好ましい。
【0233】
基材の表面にはSiO膜等の下地膜が形成されていてもよい。基材は本物品の用途に応じて適宜選択される。
【0234】
[物品の製造方法]
本物品の製造方法において、本組成物を用いて基材の表面に表面層を形成する方法は、ドライコーティング法であってもウェットコーティング法であってもよい。
【0235】
ドライコーティング法により表面層を形成する場合、本組成物を用いてドライコーティング法により基材の表面を処理する方法が好ましい。ウェットコーティング法により表面層を形成する場合、本コーティング液を基材の表面に塗布し、乾燥させて、表面層を形成する方法が好ましい。
【0236】
ドライコーティング法としては、物理的蒸着法(真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法)、化学的蒸着法(熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法)、イオンビームスパッタリング法等が挙げられる。本組成物中の化合物の分解を抑制できる点、および装置の簡便さの点から、真空蒸着法が特に好ましい。真空蒸着時には、鉄、鋼等の金属多孔体に本組成物を含浸させたペレット状物質を用いてもよい。本コーティング液を鉄、鋼等の金属多孔体に含浸させ、液状媒体を乾燥させて、本組成物が含浸したペレット状物質を用いてもよい。
【0237】
ウェットコーティング法において本コーティング液を基材の表面に塗布する方法としては、スピンコート法、ワイプコート法、スプレーコート法、スキージーコート法、ディップコート法、ダイコート法、インクジェット法、フローコート法、ロールコート法、キャスト法、ラングミュア・ブロジェット法、グラビアコート法等が挙げられる。
【0238】
表面層形成後、表面層の耐摩擦性を向上させるために、必要に応じて、加熱、加湿、光照射等の後処理を行ってもよい。これにより、例えば、表面層中に化合物Aの基Yに由来する未反応のケイ素原子に結合した加水分解性基や水酸基、または加水分解後のシラノール基等が存在していた場合に、それらの加水分解反応や加水分解性基の縮合反応が促進され、充分に硬化した表面層が得られる。
【0239】
本物品が基材上に有する表面層は、優れた撥水撥油性を有するとともに、該撥水撥油性は耐摩擦性および耐溶剤性に優れ、長期使用においても撥水撥油性が低下しにくい特性を有する。
【実施例
【0240】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0241】
[化合物Aおよび化合物Bの製造]
(化合物A-1および化合物B-1)
国際公開第2013/121984号の例6に記載の方法にしたがい、化合物A-1および化合物B-1を得た。
【0242】
CF-(OCFCFOCFCFCFCFx3OCFCFOCFCFCF-C(O)NHCHCHCH-Si(OCH …式A-1
単位数x3の平均値:7、Mn:2,900。
【0243】
CF-(OCFCFOCFCFCFCFx3OCFCFOCFCFCF-C(O)NHCH-CH=CH …式B-1
単位数x3の平均値:7、Mn:2,780。
【0244】
(化合物A-2および化合物B-2)
以下の方法で得られる化合物B-2を用いて、国際公開第2018/043166の段落0087の方法と同様にして、化合物A-2を得た。国際公開第2013/121984号の例6に記載の方法と同様にして、CF-(OCFCFOCFCFCFCFx3OCFCFOCFCFCF-C(=O)OCHの10.0gを得た。続いて、ジアリルアミンの1.54g、4-ピロリジノピリジンの1.12g、AC-2000の3gを加えて0℃で200時間撹拌した。その後、シリカゲルカラムで精製して、AC-2000をエバポレータで除去することで、化合物B-2を得た。
【0245】
CF-(OCFCFOCFCFCFCFx3OCFCFOCFCFCF-C(O)N(CHCHCH-Si(OCH …式A-2
単位数x3の平均値:13、Mn:5,040。
【0246】
CF-(OCFCFOCFCFCFCFx3OCFCFOCFCFCF-C(O)N(CH-CH=CH …式B-2
単位数x3の平均値:13、Mn:4,790。
【0247】
(化合物A-3および化合物B-3)
国際公開第2017/038830号の例1に記載の方法にしたがい、化合物A-3および化合物B-3を得た。
【0248】
CFCFCF-(OCFCF)(OCFCF){(OCFx1(OCFCFx2}OCF-CHOCHC[CHOCHCHCH-Si(OCH …式A-3
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、Mn:4,810。
【0249】
CFCFCF-(OCFCF)(OCFCF){(OCFx1(OCFCFx2}OCF-CHOCHC(CHOCH-CH=CH …式B-3
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、Mn:4,450。
【0250】
(化合物A-4および化合物B-4)
国際公開第2017/038830号の例8に記載の方法にしたがい、化合物A-4および化合物B-4を得た。
【0251】
CFCFCF-(OCF(CF)CFx4OCF(CF)-CHOCHC[CHOCHCHCH-Si(OCH …式A-4
単位数x4の平均値:6、Mn:1,920。
【0252】
CFCFCF-(OCF(CF)CFx4OCF(CF)-CHOCHC(CHOCH-CH=CH …式B-4
単位数x4の平均値:6、Mn:1,550。
【0253】
(化合物A-5および化合物B-5)
国際公開第2017/038830号の例10に記載の方法にしたがい、化合物A-5および化合物B-5を得た。
【0254】
CFCFCF-OCHFCFOCHCF{(OCFx1(OCFCFx2}OCF-CHOCHCHCH-Si(OCH …式A-5
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、Mn:4,310。
【0255】
CFCFCF-OCHFCFOCHCF{(OCFx1(OCFCFx2}OCF-CHOCH-CH=CH …式B-5
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、Mn:4,190。
【0256】
(化合物A-6および化合物B-6)
国際公開第2017/038830号の例11に記載の方法にしたがい、化合物A-6および化合物B-6を得た。
【0257】
CF-(OCFCFOCFCFCFCFx3OCFCFOCFCFCF-C(O)NHCHC[CHCHCH-Si(OCH …式A-6
単位数x3の平均値:13、Mn:5,400。
【0258】
CF-(OCFCFOCFCFCFCFx3OCFCFOCFCFCF-C(O)NHCHC(CH-CH=CH …式B-6
単位数x3の平均値:13、Mn:4,800。
【0259】
(化合物A-7および化合物B-7)
国際公開第2017/038830号の例12に記載の方法にしたがい、化合物A-7および化合物B-7を得た。
【0260】
CF-(OCFCFOCFCFCFCFx3OCFCFOCFCFCF-C(O)NHC[CHCHCH-Si(OCH …式A-7
単位数x3の平均値:13、Mn:5,400。
【0261】
CF-(OCFCFOCFCFCFCFx3OCFCFOCFCFCF-C(O)NHC(CH-CH=CH …式B-7
単位数x3の平均値:13、Mn:4,800。
【0262】
(化合物A-8および化合物B-8)
国際公開第2017/038830号の例13に記載の方法にしたがい、化合物A-8および化合物B-8を得た。
【0263】
CFCFCF-OCHFCFOCHCF{(OCFx1(OCFCFx2}OCF-C(O)NHCHC[CHCHCH-Si(OCH …式A-8
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、Mn:4,600。
【0264】
CFCFCF-OCHFCFOCHCF{(OCFx1(OCFCFx2}OCF-C(O)NHCHC(CH-CH=CH …式B-8
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、Mn:4,250。
【0265】
(化合物A-9および化合物B-9)
国際公開第2017/038830号の例14に記載の方法にしたがい、化合物A-9および化合物B-9を得た。
【0266】
CFCFCF-OCHFCFOCHCF{(OCFx1(OCFCFx2}OCF-C(O)NHC[CHCHCH-Si(OCH …式A-9
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、Mn:4,600。
【0267】
CFCFCF-OCHFCFOCHCF{(OCFx1(OCFCFx2}OCF-C(O)NHC(CH-CH=CH …式B-9
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、Mn:4,250。
【0268】
(化合物A-10および化合物B-10)
国際公開第2017/038830号の例16に記載の方法にしたがい、化合物A-10および化合物B-10を得た。
【0269】
CFCFCF-(OCFCF)(OCFCF){(OCFx1(OCFCFx2}OCF-C(O)NHCHC[CHCHCH-Si(OCH …式A-10
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、Mn:4,720。
【0270】
CFCFCF-(OCFCF)(OCFCF){(OCFx1(OCFCFx2}OCF-C(O)NHCHC(CH-CH=CH …式B-10
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、Mn:4,360。
【0271】
(化合物A-11および化合物B-11)
国際公開第2017/038830号の例48に記載の方法にしたがい、化合物A-11および化合物B-11を得た。
【0272】
CFCFCF-(OCFCF)(OCFCF){(OCFx1(OCFCFx2}OCF-CHOCHC[CHOCHCHCHCHCH-Si(OCH …式A-11
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、Mn:4,900。
【0273】
CFCFCF-(OCFCF)(OCFCF){(OCFx1(OCFCFx2}OCF-CHOCHC(CHOCHCHCH-CH=CH …式B-11
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、Mn:4,540。
【0274】
(化合物A-12および化合物B-12)
国際公開第2017/038830号の例49に記載の方法にしたがい、化合物A-12および化合物B-12を得た。
【0275】
CFCFCF-OCHFCFOCHCF{(OCFx1(OCFCFx2}OCF-CHOCHC[CHOCHCHCHCHCH-Si(OCH …式A-12
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、Mn:4,850。
【0276】
CFCFCF-OCHFCFOCHCF{(OCFx1(OCFCFx2}OCF-CHOCHC(CHOCHCHCH-CH=CH …式B-12
単位数x1の平均値:21、単位数x2の平均値:20、Mn:4,490。
【0277】
(化合物A-13および化合物B-13)
国際公開第2017/038830号の例50に記載の方法にしたがい、化合物A-13および化合物B-13を得た。
【0278】
CF-(OCFCFOCFCFCFCFx3OCFCFOCFCFCF-CHOCHC[CHOCHCHCHCHCH-Si(OCH …式A-13
単位数x3の平均値:13、Mn:5,400。
【0279】
CF-(OCFCFOCFCFCFCFx3OCFCFOCFCFCF-CHOCHC(CHOCHCHCH-CH=CH …式B-13
単位数x3の平均値:13、Mn:5,040。
【0280】
(化合物A-14および化合物B-14)
以下の方法で得られる化合物B-14を用いて特許第5761305号公報の合成例3~4に記載の方法にしたがい、化合物A-14を得た。特許第5761305号公報の合成例1~2に記載の方法にしたがい、化合物B-14を得た。
【0281】
CFCFCF-(OCFCFCF20OCFCF-CHOCHCHCHSi[CHCHCH-Si(OCH …式A-14
Mn:4,200。
【0282】
CFCFCF-(OCFCFCF20OCFCF-CHOCHCHCHSi(CH-CH=CH …式B-14
Mn:3,800。
【0283】
(化合物A-15および化合物B-15)
以下の方法で得られる化合物B-15を用いて特許第6296200号公報の合成例3~4に記載の方法にしたがい、化合物A-15を得た。特許第6296200号公報の合成例1~2に記載の方法にしたがい、化合物B-15を得た。
【0284】
CFCFCF-(OCFCFCF20OCFCF-CHCHCHSi[CHCHCH-Si(OCH …式A-15
Mn:4,200。
【0285】
CFCFCF-(OCFCFCF20OCFCF-CHCHCHSi(CH-CH=CH …式B-15
Mn:3,800。
【0286】
(化合物A-16および化合物B-16)
以下の方法で得られる化合物B-16を用いて特許第6296200号公報の合成例7~8に記載の方法にしたがい、化合物A-16を得た。特許第6296200号公報の合成例5~6に記載の方法にしたがい、化合物B-16を得た。
【0287】
CF-(OCFCF20(OCF16OCF-CHCHCHSi[CHCHCH-Si(OCH …式A-16
Mn:4,100。
【0288】
CF-(OCFCF20(OCF16OCF-CHCHCHSi(CH-CH=CH …式B-16
Mn:3,700。
【0289】
上記で得た化合物A-1~A-16における、連結基+基Y(末端基)の構造の略称、連結基の分類および基Yの数を表1に示す。同様に化合物B-1~B-16における、連結基+末端の炭素-炭素二重結合(末端基)の構造の略称、連結基の分類および末端の炭素-炭素二重結合数を表2に示す。
【0290】
【表1】
【0291】
【表2】
【0292】
[比較例用化合物]
(化合物Cf-1および化合物Cf-2)
ポリ(オキシフルオロアルキレン)鎖を有するが化合物A、化合物Bのいずれでもない以下の化合物Cf-1および化合物Cf-2を比較例用に準備した。
【0293】
化合物Cf-1:CFCF-(OCFCFCF10.9OCFCF-CHOH(純度86.9質量%、PFPEモノアルコール、ダイキン工業社製)
【0294】
化合物Cf-2:CFCFCF-(OCFCFCFOCFCF(Mn:1,100。国際公開第2016/092900号の実施例2にしたがって製造)
【0295】
[例1~25]
上記で得た化合物A-1~A-16、化合物B-1~B-16、化合物Cf-1~Cf-2を表3に示す組み合わせ、割合で混合して例1~25の含フッ素エーテル組成物を製造した。例1~19が実施例であり、例20~25が比較例である。例1で得た含フッ素エーテル組成物を以下「組成物1」と表記する。他の例により得られた含フッ素エーテル組成物も同様に表記する。
【0296】
【表3】
【0297】
[例26]
組成物1と液状媒体としてのCOC(ノベック-7200:製品名、3M社製)とを混合して、コーティング液のうちの組成物1の含有量が0.1質量%であるコーティング液1を調製した。基材としては無アルカリガラス(イーグルXG:製品名、コーニング社製、50mm×50mm、厚さ0.5mm)を準備した。
【0298】
基材の一方の主面にノードソン社製スプレーを用いて、コーティング液1を塗付量6.0g/秒でスプレーコートした後、基材上に形成されたコーティング液1の塗膜を120℃で10分間乾燥させ、表面層付き基材を得た。表面層の厚さは10nmであった。
【0299】
[例27~50]
組成物1の代わりに組成物2~25を用いた以外は例26と同様にして表面層付き基材を得た。表面層の厚さは、いずれも10nmであった。
【0300】
[例51]
真空蒸着装置内に例26と同様の基材を配置し、真空蒸着装置内を5×10-3Pa以下の圧力になるまで排気した。基材の一方の主面に対向するように距離1,000mmの位置に組成物5を収容した蒸着用容器を抵抗加熱によって300℃に加熱し、組成物5を真空蒸着させて厚さ10nmの表面層を形成した。なお、組成物5の温度は、300℃であった。その後、得られた表面層付き基材を、温度200℃で30分間加熱(後処理)した。
【0301】
[例52、53]
組成物5の代わりにそれぞれ組成物20および組成物25を用いた以外は例51と同様にして、表面層付き基材を得た。表面層の厚さはいずれも10nmとした。
【0302】
上記において、例26~44および例51が実施例であり、例45~50、例52および例53が比較例である。
【0303】
[評価]
上記例26~53で得た表面層付き基材の表面層について、以下の方法で、初期の水接触角、摩擦試験後の水接触角、初期の動摩擦係数、洗浄試験後の動摩擦係数を測定し評価した。なお、以下の評価において表面層の表面は、いずれも、表面層の空気側の表面である。結果を、各例における表面層付き基材の製造方法とともに表4に示す。
【0304】
(水接触角測定方法)
表面層の表面に置いた、約2μLの蒸留水を、接触角測定装置DM-500(協和界面科学社製)を用いて測定した。表面層の表面における異なる5箇所で測定を行い、その平均値を算出した。接触角の算出には2θ法を用いた。
【0305】
<初期水接触角>
表面層の表面について、初期の水接触角を上記測定方法で測定した。
【0306】
<摩擦試験後水接触角>
表面層の表面について、JIS L0849:2013(ISO 105-X12:2001)に準拠して往復式トラバース試験機(大栄精機社製)を用い、スチールウールボンスター(番手:♯0000、寸法:5mm×10mm×10mm)を荷重:9.8N、頻度:60Hzで10,000回往復させる摩擦試験を行った。摩擦試験後の表面層の表面について、水接触角を上記測定方法で測定した。
【0307】
また、摩擦試験前後における水接触角の変化量を算出した。摩擦試験前後における水接触角の変化量は、初期水接触角-摩擦試験後水接触角で求められる。
【0308】
このようにして測定される初期の水接触角が105度以上、摩擦試験後の水接触角が104度以上、摩擦試験前後における水接触角の変化量が10度以下であれば実用上問題ない。上記測定結果を表4に示す。
【0309】
なお、表面層の初期の水接触角および摩擦試験後の水接触角はいずれも110度以上が特に好ましい。また、摩擦試験前後における水接触角の変化量は5度以下が特に好ましい。なお、表面層の水接触角は、高いほど好ましいため、上限値は特に限定されない。
【0310】
(動摩擦係数)
表面層の表面について、人工皮革(出光テクノファイン社製、PBZ13001)に対する動摩擦係数を、荷重変動型摩擦摩耗試験システムHHS2000(新東科学社製)を用い、接触面積3cm×3cm、荷重;0.98Nの条件で測定した。
【0311】
<初期の動摩擦係数>
表面層の表面について、初期の動摩擦係数を上記測定方法で測定した。
【0312】
<洗浄試験後の動摩擦係数>
表面層付き基材をAGC社製AE-3000で超音波洗浄(周波数:37Hz、時間:10分、温度:25℃)する洗浄試験を行った。洗浄試験後の表面層の表面について、動摩擦係数を上記測定方法で測定した。
【0313】
また、洗浄試験前後における動摩擦係数の変化量を算出した。洗浄試験前後における動摩擦係数の変化量は、洗浄試験後動摩擦係数-初期動摩擦係数で求められる。
【0314】
このようにして測定される初期の動摩擦係数が1.9以下、洗浄試験後の動摩擦係数が1.9以下、洗浄試験前後における動摩擦係数の変化量が0.5以下であれば実用上問題ない。上記測定結果を表4に示す。
【0315】
なお、表面層の初期の動摩擦係数は1.5以下が特に好ましく、洗浄試験後の動摩擦係数は1.7以下が特に好ましい。また、洗浄試験前後における動摩擦係数の変化量は0.2以下が特に好ましい。
【0316】
【表4】
【0317】
表4から、実施例である例26~44および例51で得た表面層付き基材の表面層については、優れた撥水性を有し、該撥水性は耐摩擦性および耐溶剤性に優れることがわかる。また、実施例のうち例28および例29では、化合物Aと化合物Bにおける連結基の種類が異なる組み合わせの組成物3および組成物4をそれぞれ用いているが、例28および例29以外では、化合物Aと化合物Bにおける連結基の種類が同じ組み合わせの組成物を用いている。したがって、例28および例29に比べて他の実施例による表面層付き基材の表面層は、より耐摩擦性に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0318】
本組成物は、潤滑性や撥水撥油性の付与が求められている各種の用途に用いることができる。例えば、輸送機器用物品、精密機器用物品、光学機器用物品、建築用物品または電子機器用物品に用いるのが好ましい。
【0319】
輸送機器用物品の具体例としては、電車、自動車、船舶および航空機等における、外装部材、内装部材、ガラス(例えば、フロントガラス、サイドガラスおよびリアガラス)、ミラー、タイヤホイールが挙げられる。精密機器用物品の具体例としては、撮影機器における窓材が挙げられる。光学機器用物品の具体例としては、レンズが挙げられる。建築用物品の具体例としては、窓、床材、壁材、ドア材が挙げられる。電子機器用物品の具体例は、通信用端末または画像表示装置におけるディスプレイ用ガラス、ディスプレイ用保護フィルム、反射防止フィルム、指紋センサー、タッチパネルが挙げられる。
【0320】
本組成物のより具体的な使用例としては、タッチパネル等の表示入力装置;透明なガラス製または透明なプラスチック製部材の表面保護コート、キッチン用防汚コート;電子機器、熱交換器、電池等の撥水防湿コートや防汚コート、トイレタリー用防汚コート;導通しながら撥液が必要な部材へのコート;熱交換器の撥水・防水・滑水コート;振動ふるいやシリンダ内部等の表面低摩擦コート等が挙げられる。
【0321】
さらに、ディスプレイの前面保護板、反射防止板、偏光板、アンチグレア板、あるいはそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの、携帯電話、携帯情報端末等の機器のタッチパネルシートやタッチパネルディスプレイ等人の指あるいは手のひらで画面上の操作を行う表示入力装置を有する各種機器、トイレ、風呂、洗面所、キッチン等の水周りの装飾建材、配線板用防水コーティング熱交換器の撥水・防水コート、太陽電池の撥水コート、プリント配線板の防水・撥水コート、電子機器筐体や電子部品用の防水・撥水コート、送電線の絶縁性向上コート、各種フィルタの防水・撥水コート、電波吸収材や吸音材の防水性コート、風呂、厨房機器、トイレタリー用防汚コート、熱交換器の撥水・防水・滑水コート、振動ふるいやシリンダ内部等の表面低摩擦コート、機械部品、真空機器部品、ベアリング部品、自動車部品、工具等の表面保護コートが挙げられる。
【0322】
本組成物は、上記特性を有することから、これらの用途の中でも特にタッチパネルにおいて、指で触れる面を構成する部材の該面に表面層を有するタッチパネルとすれば、効果は顕著である。
なお、2018年10月5日に出願された日本特許出願2018-190427号の明細書、特許請求の範囲及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。