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特許7196964ポリエステルのリサイクルシステム及びリサイクル方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】ポリエステルのリサイクルシステム及びリサイクル方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/06 20060101AFI20221220BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20221220BHJP
   C08J 11/08 20060101ALI20221220BHJP
   B29B 17/04 20060101ALI20221220BHJP
   C08J 7/02 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C11D7/06
C11D7/26
C08J11/08 CFD
B29B17/04 ZAB
C08J7/02 Z
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021128598
(22)【出願日】2021-08-04
(62)【分割の表示】P 2020208859の分割
【原出願日】2020-12-16
(65)【公開番号】P2021175812
(43)【公開日】2021-11-04
【審査請求日】2021-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2020065409
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】多田 和信
(72)【発明者】
【氏名】開 俊啓
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智博
(72)【発明者】
【氏名】黒田 清徳
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/154098(WO,A1)
【文献】特開2010-065230(JP,A)
【文献】特開2000-000879(JP,A)
【文献】特開昭54-066985(JP,A)
【文献】国際公開第2020/059516(WO,A1)
【文献】特開昭53-094381(JP,A)
【文献】特開2005-321537(JP,A)
【文献】特開2000-025041(JP,A)
【文献】特開2020-090094(JP,A)
【文献】特開2001-310970(JP,A)
【文献】特開平09-271748(JP,A)
【文献】国際公開第2003/042288(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 7/06
C11D 7/26
C08J 11/08
B29B 17/04
C08J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収された廃材である、ポリエステルフィルムの表面に機能層(但し、磁性層を除く。)を備える積層ポリエステルフィルムから、該ポリエステルフィルムを溶解する洗浄剤を用いて機能層を除去する機能層除去工程と、
該機能層を除去したポリエステルフィルムを回収する回収工程と、
該回収されたポリエステルフィルムを原料としてリサイクルポリエステル製品を製造する製造工程とを有し、
前記洗浄剤(但し、モルホリン濃度が50質量%以上のモルホリン液を除く。)は、以下の成分(b)を含む、リサイクルポリエステル製品の製造方法。
(b)アルカリ性化剤及びベンジルアルコールを含む酸性度定数(pKa)9.3以上15.4以下のアルコール類
【請求項2】
前記製造工程が、前記機能層を除去したポリエステルフィルムをペレット化するペレット製造工程を有する、請求項1に記載のリサイクルポリエステル製品の製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ性化剤として、2種以上の無機アルカリ性化剤を使用する、請求項1又は2に記載のリサイクルポリエステル製品の製造方法。
【請求項4】
前記機能層除去工程で、機能層を除去したポリエステルフィルムに付着した洗浄剤を、洗い流すリンス工程をさらに備える請求項1~3のいずれか1項に記載のリサイクルポリエステル製品の製造方法。
【請求項5】
前記廃材が、ロール状又は塊状の積層ポリエステルフィルムである請求項1~4のいずれか1項に記載のリサイクルポリエステル製品の製造方法。
【請求項6】
前記機能層除去工程の前段に巻き出し工程又は裁断工程をさらに備える請求項1~5のいずれか1項に記載のリサイクルポリエステル製品の製造方法。
【請求項7】
ロールトゥロール方式が適用される請求項1~6のいずれか1項に記載のリサイクルポリエステル製品の製造方法。
【請求項8】

洗浄装置を有するポリエステルフィルムの回収装置であって、該洗浄装置は、洗浄剤の入った洗浄槽を有し、ポリエステルフィルムの表面に機能層(但し、磁性層を除く。)を備える積層ポリエステルフィルムを、以下の成分()を含む洗浄剤(但し、モルホリン濃度が50質量%以上のモルホリン液を除く。)に浸漬して洗浄する装置であり、 前記洗浄装置で洗浄され、機能層が除去されたポリエステルフィルムを回収することを特徴とする、ポリエステルフィルムの回収装置。
(b)アルカリ性化剤及びベンジルアルコールを含む酸性度定数(pKa)9.3以上15.4以下のアルコール類
【請求項9】
前記アルカリ性化剤として、2種以上の無機アルカリ性化剤を使用する、請求項8に記載のポリエステルフィルムの回収装置。
【請求項10】
前記機能層を除去したポリエステルフィルムに付着した洗浄剤を洗い流すリンス装置をさらに備える請求項8又は9に記載のポリエステルフィルムの回収装置。
【請求項11】
前記洗浄剤が水系洗浄剤であり、前記リンス装置において、水で水系洗浄剤を洗い流す請求項10に記載のポリエステルフィルムの回収装置。
【請求項12】
前記機能層が除去されたポリエステルフィルムを乾燥する乾燥装置を備える請求項8~11のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムの回収装置。
【請求項13】
前記洗浄装置の前段に巻き出し装置を有する請求項8~12のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムの回収装置。
【請求項14】
ロールトゥロール方式で回収する請求項13に記載のポリエステルフィルムの回収装置。
【請求項15】
前記洗浄装置の前段に裁断装置をさらに備える請求項8~12のいずれか1項に記載のポリエステルフィルムの回収装置。
【請求項16】
ポリエステルフィルムの表面に機能層(但し、磁性層を除く。)を備える積層ポリエステルフィルムから機能層を除去するための除去剤であって、
以下の成分()を含む洗浄剤(但し、モルホリン濃度が50質量%以上のモルホリン液を除く。)を含有する、ポリエステルフィルム用機能層除去剤。
(b)アルカリ性化剤及びベンジルアルコールを含む酸性度定数(pKa)9.3以上15.4以下のアルコール類
【請求項17】
前記アルカリ性化剤として、2種以上の無機アルカリ性化剤を使用する、請求項16に記載のポリエステルフィルム用機能層除去剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルのリサイクルシステム、及びリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃プラスチックは、埋め立て、海洋投棄、焼却等の処理がなされていたが、埋め立て場所の確保が困難になりつつあり、海洋投棄はプラスチックが分解しないために環境面で問題になっている。また、焼却によって熱として利用することはできるが、炭酸ガスの排出により、地球温暖化につながるという問題がある。
【0003】
そこで、昨今の環境問題の高まりから、廃プラスチックの再利用、再生等のリサイクルが必要とされており、そのための研究開発が盛んに行われている。また、プラスチックはその多くが化石燃料により生産されており、資源の有効利用の点からも、リサイクル方法の構築が求められている。
【0004】
ところで、プラスチックフィルムの一種であるポリエステルフィルムは、基材フィルムとして有用であり、片面又は両面に種々の機能層が積層された、積層フィルムとして使用されることが多い。機能層としては、ハードコート層、粘接着層、加飾層、遮光層、偏光層、紫外線遮蔽層など、様々な機能層があり、機能層に応じた材料をポリエステルフィルムに積層した積層フィルムが使用されている。
【0005】
このような積層フィルムは、使用後にほとんど再利用されておらず、廃棄、焼却等がなされている。
【0006】
機能層が積層された積層フィルムをそのまま再溶融してリサイクルしようとしても、機能層を構成する材料が溶融ポリマー中に混入するため、押し出し時に異臭を発生したり、ポリマーの溶融粘度が低下したりしてフィルム製膜時の破断の原因となる。
また、仮に製膜できたとしても得られたフィルムの着色や、異物混入などによる品質の劣化が避けられない。
【0007】
また、仮に機能層を物理的に削り取るなどして剥離除去し、溶融押出しした場合も、押出し時の濾過工程で、残存した機能層によってフィルターが目詰まりを起こし、正常な製膜ができなくなるなどの問題が生じる。
【0008】
積層フィルムのリサイクル方法として、例えば、特許文献1に開示される技術がある。この技術は、基材フィルムの少なくとも片面に易溶解性機能層と表面機能層をこの順に積層してなる積層フィルムである。このような構成としたうえで、使用後に、易溶解性機能層のみ溶解可能であって、基材フィルムを溶解しない溶媒で洗浄することにより、積層フィルムから基材フィルムを分離回収しようというものである。分離回収したものは再溶融され、基材フィルムを構成していた樹脂組成物を再生することを可能としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2004-169005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示される方法は、上述のように、基材フィルムの表面に易溶解性樹脂層と表面機能層とをこの順に積層してなる積層フィルムを前提としており、易溶解性機能層を溶解させることによって、機能層を除去しようとするものである。
すなわち、易溶解性機能層を有さない、大部分の積層ポリエステルフィルムに用いることはできず、汎用性のない技術である。
上記実情に鑑みて、本発明は汎用的に用いることのできる、ポリエステルフィルムのリサイクルシステム又はリサイクル方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、廃材である積層ポリエステルフィルムを回収し、特定の洗浄剤を用いて機能層を除去し、機能層を除去したポリエステルフィルムを回収し、回収されたポリエステルフィルムを原料として、リサイクル製品を製造することで、上記課題を解決し得ることを見出した。本発明は係る知見に基づき完成したものである。すなわち、本発明は、以下の態様を有するものである。
(1)回収された廃材である、ポリエステルフィルムの表面に機能層を備える積層ポリエステルフィルムから、該ポリエステルフィルムを溶解する洗浄剤を用いて機能層を除去する機能層除去手段と、該機能層を除去したポリエステルフィルムを回収する回収手段と、該回収されたポリエステルフィルムを原料としてリサイクルポリエステル製品を製造する製造手段とを有する、ポリエステルのリサイクルシステム。
(2)前記製造手段が、前記機能層を除去したポリエステルフィルムをペレット化するペレット製造手段を有する、上記(1)に記載のポリエステルのリサイクルシステム。
(3)前記洗浄剤が、アルカリ性化剤を含む洗浄剤である、上記(1)又は(2)に記載のポリエステルのリサイクルシステム。
(4)前記機能層除去手段で、機能層を除去したポリエステルフィルムに付着した洗浄剤を、洗い流すリンス手段をさらに備える上記(1)~(3)のいずれか1つに記載のポリエステルのリサイクルシステム。
(5)前記廃材が、ロール状又は塊状の積層ポリエステルフィルムである上記(1)~(4)のいずれか1つに記載のポリエステルのリサイクルシステム。
(6)前記機能層除去手段の前段に巻き出し手段又は裁断手段をさらに備える上記(1)~(5)のいずれか1つに記載のポリエステルのリサイクルシステム。
(7)ロールトゥロール方式が適用される上記(1)~(6)のいずれか1つに記載のポリエステルのリサイクルシステム。
(8)廃材であり、かつポリエステルフィルムの表面に機能層を備える積層ポリエステルフィルムを回収する回収工程(A)と、該積層ポリエステルフィルムから該ポリエステルフィルムを溶解する洗浄剤を用いて機能層を除去する機能層除去工程と、 機能層を除去したポリエステルフィルムを回収する回収工程(B)と、該回収工程(B)で回収されたポリエステルフィルムを原料としてリサイクルポリエステル製品を製造する製造工程とを有する、ポリエステルのリサイクル方法。
(9)前記製造工程が、前記機能層を除去したポリエステルフィルムをペレット化するペレット製造工程を有する、上記(8)に記載のポリエステルのリサイクル方法。
(10)前記洗浄剤が、アルカリ性化剤を含む洗浄剤である、上記(8)又は(9)に記載のポリエステルのリサイクル方法。
(11)前記機能層除去工程において、機能層を除去したポリエステルフィルムに付着した洗浄剤を洗い流すリンス工程をさらに備える上記(8)~(10)のいずれか1つに記載のポリエステルのリサイクル方法。
(12)前記回収工程(A)において、ロール状又は塊状の廃ポリエステルフィルムを回収する上記(8)~(11)のいずれか1つに記載のポリエステルのリサイクル方法。
(13)前記機能層除去工程の前段に巻き出し工程又は裁断工程をさらに備える上記(8)~(12)のいずれか1つに記載のポリエステルのリサイクル方法。
(14)ロールトゥロール方式で行われる上記(8)~(13)のいずれか1つに記載のポリエステルのリサイクル方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のリサイクルシステム及びリサイクル方法によれば、機能層を有する積層ポリエステルフィルムから、機能層を除去し、効率的にポリエステル(ポリエステルフィルム基材)を回収し、再生利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のリサイクルシステムの一態様を示す概念図である。
図2】本発明のリサイクルシステムの他の一態様を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のリサイクル方法は、廃材であり、かつポリエステルフィルムの表面に機能層を備える積層ポリエステルフィルムを回収する回収工程(A)と、該積層ポリエステルフィルムから該ポリエステルフィルムを溶解する洗浄剤を用いて機能層を除去する機能層除去工程と、機能層を除去したポリエステルフィルムを回収する回収工程(B)と、該回収工程(B)で回収されたポリエステルフィルムを原料としてリサイクルポリエステル製品を製造する製造工程とを有する、ポリエステルのリサイクル方法である。
【0015】
<積層ポリエステルフィルムの回収工程(A)>
本発明における積層ポリエステルフィルムの回収工程は、使用済みとなった積層ポリエステルフィルムを、市場から回収するものである。より具体的には、例えば、顧客に販売した機能層を有する積層ポリエステルフィルムを、次の新品の積層ポリエステルフィルムの納入と交換に、廃材である使用済み積層ポリエステルフィルムを回収する方法が考えられる。
本発明では、顧客リスト等において、納入した積層ポリエステルフィルムの種類、納入量、納入頻度を把握しておくことで、回収する積層ポリエステルフィルムの種類及び回収量を予測することができる。本発明のリサイクル方法は、この予測と回収実績から、より精度の高い予測を立てることができ、機能層を剥離するために必要な洗浄剤の種類、必要量を事前に把握できる、一貫したリサイクル方法である。
なお、廃材となった積層ポリエステルフィルムは、納入時と同様にロール状で保管されている場合もあれば、塊状の場合もある。本発明のリサイクル方法では、廃材の形状に応じて、後述する巻き出し方法や裁断方法を駆使して、効率よくリサイクルすることができる。ここで、廃材の形状は、通常、積層フィルムの用途に依存するため、本発明のリサイクル方法では、いずれの形状のもの(ロール状か塊状か)がどの程度の量で回収されるのか予測することも可能である。
【0016】
(積層ポリエステルフィルム)
本発明における積層ポリエステルフィルムとは、基材フィルムであるポリエステルフィルムの表面に樹脂層などの機能層が積層されたものをいう。
ポリエステルフィルムは、単層構造であっても多層構造であってもよい。多層構造の場合、2層構造、3層構造などでもよいし、4層又はそれ以上の多層であってもよく、層数は特に限定されない。また、ポリエステルフィルムは、二軸延伸フィルム等の延伸フィルムであっても未延伸フィルムであってもよい。
ポリエステルフィルムを構成するポリエステルとしては、特に限定されるものではなく、市場に流通しているものを適宜使用できる。具体的には、ジカルボン酸とジオールを重縮合してなるポリエステルが挙げられ、ジカルボン酸としては芳香族ジカルボン酸が好ましく、ジオールとしては脂肪族グリコールが好ましい。
上記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、フタル酸などが挙げられる。上記脂肪族グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等を挙げることができる。
ポリエステルはホモポリエステルであっても、共重合ポリエステルであってもよい。また、ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸、グリコール以外の第3成分を共重合体成分として含んでもよい。
ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン-2,6-ナフタレートなどが挙げられ、これらの中ではポリエチレンテレフタレートが好ましい。また、これらは、共重合体ポリエステルであってもよく、例えば、ポリエチレンテレフタレートは、ジカルボン酸単位の30モル%以下程度でテレフタル酸以外のジカルボン酸単位を有し、また、ジオール単位の30モル%程度でエチレングリコール以外のジオール単位を有してもよい。
【0017】
機能層は、その構成成分は特に限定されないが、本発明の回収方法によって除去する観点からは、樹脂により構成されていることが好ましい。機能層としては例えば、粘接着層、ハードコート層、離型層、加飾層、遮光層、紫外線遮蔽層、易接着層(プライマー層)、帯電防止層、屈折率調整層、オリゴマー封止層などが挙げられる。
【0018】
粘接着層は、他の機器等に粘接着させるために設けられる層であり、粘接着層を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、公知のアクリル系、ゴム系、シリコーン系等の粘着樹脂を使用することができる。
【0019】
ハードコート層は、ポリエステルフィルムに耐擦傷性などを付与するために設けられる層であり、ハードコート層を形成する材料としては、特に限定されないが、例えば、単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレート、テトラエトキシシラン等の反応性ケイ素化合物の硬化物などが挙げられる。
【0020】
離型層は、ポリエステルフィルムに離型性を付与するために設けられる層であり、例えば、セラミック電子部品の製造時に使用するグリーンシート成形用工程紙、偏光板、光学フィルター等のフラットパネルディスプレイ製造時に使用する光学部材の粘着セパレータなどに使用される離型フィルムに設けられる層である。離型層を構成する材料としては、特に制限はなく、例えば、硬化型シリコーン樹脂を主成分とするもの、あるいはウレタン樹脂、エポキシ樹脂等とのグラフト重合等による変性シリコーン樹脂等、長鎖アルキル基含有化合物、フッ素化合物、炭化水素系ワックス等が挙げられる。
【0021】
加飾層は、意匠性を付与するために設けられる層であり、加飾層を構成する材料としては、特に限定されず、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂に顔料、染料等が加えられ装飾がなされる。
【0022】
遮光層又は紫外線遮光層は、内容物を紫外線、可視光等から保護するために設けられる層であり、遮光層又は紫外線遮光層を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、加飾層で記載した各種樹脂や、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、シリカ、珪藻土、硫酸バリウム等の無機充填剤、木粉、パルプ粉等、セルロース粉末等の有機充填剤が挙げられる。
【0023】
易接着層(プライマー層)は、他の層やフィルムをポリエステルフィルム上に接着させるために設けられる層であり、特に限定されないが、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂等や、各種架橋剤、粒子等が挙げられる。
【0024】
帯電防止層は、他の材質との接触や剥離などにより発生する帯電を防ぐために設けられる層である。帯電防止層に使用される帯電防止剤としては、特に限定されないが、ノニオン系、カチオン系、アニオン系、両性界面活性剤、ポリピロール、ポリアニリン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(4-スチレンサルフォネート)等の導電性高分子、SnO(Sbドープ)、In(Snドープ)、ZnO(Alドープ)等の金属酸化物フィラー、グラフェン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)などのカーボン化合物等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、二種以上を併用して使用してもよい。また、帯電防止層は、帯電防止剤を含む樹脂組成物から形成されてもよい。樹脂組成物に含有される樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、及びウレタン樹脂などが挙げられる。
【0025】
屈折率調整層は、屈折率を調整するために設けられる層であり、屈折率調整層を構成する材料としては、特に限定されないが、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、尿素樹脂、フッ素樹脂、酸化ジルコニウムや酸化チタン等の金属酸化物等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、二種以上を併用して使用してもよい。
【0026】
オリゴマー封止層は、加熱工程後のフィルム白化・異物防止のために設けられる層であり、特に限定されないが、例えば、オリゴマー封止層を構成する材料としてはアミン系化合物、イオン性樹脂などが挙げられる。また、オリゴマー封止層は、高架橋塗膜等などであってもよい。
【0027】
これら機能層は単層でも良いし、2種類以上積層されていてもよい。
2種類以上積層されている場合、少なくとも1層が樹脂により構成されている層であることが好ましい。
【0028】
<機能層除去工程>
機能層除去工程は、積層ポリエステルフィルムから機能層を除去する工程である。機能層の除去工程としては、洗浄剤を用いて洗浄することにより、機能層そのものを溶解するか、又はポリエステルフィルム基材の一部表面を溶解し、機能層をポリエステルフィルム基材との界面で剥離する方法がとられる。
より具体的には、洗浄剤の入った洗浄槽に浸漬する浸漬法、溶液状態の洗浄剤を塗布する塗布法、溶液状態の洗浄剤又は気化した洗浄剤を吹き付ける吹き付け法などが挙げられる。これらのうち、機能層への洗浄剤の浸透性から、浸漬法が好ましい。
【0029】
浸漬法における洗浄剤の温度としては、室温(20℃)以上であることが好ましい。室温(20℃)以上であると、洗浄液の粘度が低く、機能層へ浸透しやすいため良好な洗浄性が得られる。以上の観点から、浸漬法における洗浄剤の温度としては40℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましく、60℃以上であることが特に好ましい。
また、洗浄剤の温度の上限値としては、洗浄剤を溶液状態で用いる場合には、沸点以下の温度が好ましい。本願の好適な態様である水系洗浄剤の場合は、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましい。
なお、浸漬法以外においても洗浄時の洗浄液の温度は、上記と同様である。また、浸漬法における剥離洗浄では、加水分解反応を進める目的として、マイクロ波照射を行ってもよい。
【0030】
洗浄剤のpHは、洗浄性の観点から12以上が好ましく、13以上がより好ましい。
【0031】
浸漬時間とは、洗浄対象物の種類によって、以下のように適宜調整する必要がある。
【0032】
機能層としてアクリル系粘着層を設けたポリエステルフィルムが洗浄対象の場合、1秒以上、30分以下が好ましい。1秒以上であると、洗浄剤が機能層へ充分に浸透し、洗浄性が発揮できる。一方、30分以内であると、基材であるポリエステルフィルムが過度に溶解することなく、回収した際に得られるポリエステルの量を確保できる。以上の観点から、15秒以上、20分以下であることがより好ましく、30秒以上、15分以下であることがさらに好ましく、1分以上、10分以下であることが特に好ましい。
【0033】
機能層としてアクリル系ハードコート層を設けたポリエステルフィルムが洗浄対象の場合、1秒以上、30分以下が好ましい。1秒以上であると、洗浄剤が機能層へ充分に浸透し、洗浄性が発揮できる。一方、30分以内であると、基材であるポリエステルフィルムが過度に溶解することなく、回収した際に得られるポリエステルの量を確保できる。以上の観点から、15秒以上、30分以下であることがより好ましく、30秒以上、25分以下であることがさらに好ましく、1分以上、20分以下であることが特に好ましい。
【0034】
機能層としてシリコーン離型層を設けたポリエステルフィルムが洗浄対象の場合1秒以上、30分以下が好ましい。1秒以上であると、洗浄剤が機能層へ充分に浸透し、洗浄性が発揮できる。一方、30分以内であると、基材であるポリエステルフィルムが過度に溶解することなく、回収した際に得られるポリエステルの量を確保できる。以上の観点から、15秒以上、20分以下であることがより好ましく、30秒以上、10分以下であることがさらに好ましく、1分以上、5分以下であることが特に好ましい。
【0035】
機能層除去工程の具体的な態様は、廃材である積層ポリエステルフィルムの形状による。
【0036】
(ロール状の場合)
廃材である積層ポリエステルフィルムが、ロール状である場合には、洗浄剤を入れた洗浄槽の前段に巻き出し装置を設置しておき、該装置から積層フィルムを巻き出して、洗浄槽中に導入して洗浄することが好ましい。そして、連続的に次の回収工程(B)に移行する態様が好ましい。
また、機能層除去工程から後述するリンス工程において、積層ポリエステルフィルムから効率良く機能層を除去する目的で、ロールブラシ、超音波、マイクロ/ナノバブル、水流、圧縮冷気などの物理的手段を備えた設備を設けてもよい。
【0037】
(塊状の場合)
廃材である積層ポリエステルフィルムが、塊状である場合には、洗浄工程の前に裁断装置を設置しておき、フレーク状にして洗浄槽に導入することが好ましい。フレーク状にすることで、積層ポリエステルフィルムと洗浄剤との接触面積が大きくなって、洗浄剤が浸透しやすくなり、効率的に機能層を除去することができる。本態様では、ベルトコンベア等を利用して、フレーク状の積層ポリエステルフィルムを連続的に洗浄槽に導入する方法が好ましい。このような態様をとることで、高い生産性で洗浄することができる。なお、本態様の場合には、洗浄はバッチ式で行うこともできる。
【0038】
<回収工程(B)>
前記機能層除去工程の後に、基材フィルムであるポリエステルフィルムを回収する。回収工程の前段で、後述するリンス工程、及び乾燥工程を有することが好ましい。回収の方法としては、廃材である積層ポリエステルフィルムの形状に応じて、適当な方法を選択することができる。
【0039】
廃材である積層ポリエステルフィルムが、ロール状の場合は、ロールトゥロールで連続的に行い、適宜洗浄工程、リンス工程及び乾燥工程を経て、巻き取ることで効率的に回収することができる。
【0040】
廃材である積層ポリエステルフィルムが塊状の場合は、上述のように、機能層除去工程の前に、裁断工程を有することが好ましい。本態様の場合には、ベルトコンベア等を利用して、連続的にリンス工程、乾燥工程を通過させて、フレーク状のポリエステルを回収する態様が好ましい。
【0041】
上述のようにして回収されたポリエステルフィルムは、回収後、ペレット状にすることが、取り扱いの点で有利である。
【0042】
<リンス工程>
本発明では、機能層除去工程の後、回収工程(B)の前に、洗浄剤を洗い流すリンス工程を有することが好ましい。具体的には、リンス液により、機能層を除去したポリエステルフィルムに付着した洗浄剤を洗い流す工程を指す。
【0043】
リンス液としては、洗浄剤を洗い流し得るものであれば特に限定されないが、本発明の好適な態様である水系洗浄剤を用いる場合には、リンス工程に水を用いることができる。
【0044】
リンス工程の温度としては、効率的に洗い流せるとの観点から、室温付近であることが好ましく、具体的には5~50℃であることが好ましく、5~30℃であることがより好ましい。
【0045】
洗浄剤を洗い流す方法としては、機能層を除去したポリエステルフィルムに対してリンス液を吹き付ける吹き付け法、ポリエステルフィルムをリンス液の入ったリンス槽に浸漬する浸漬法などが挙げられる。ただし、洗い流す必要のない洗浄剤を使用する場合には、リンス工程は省略可能である。
【0046】
洗浄剤とともに、ポリエステルフィルムから剥離した機能層も同時に洗い流される場合がある。リンス工程で用いられた有機溶剤又は水と、機能層を構成していた材料はその後分離され、有機溶剤及び水はリンス工程で再利用することができ、機能層を構成していた材料も再利用することが可能である。
【0047】
<乾燥工程>
リンス工程の後には、乾燥工程を経ることが好ましい。乾燥工程によって、ポリエステルフィルム上に残存した洗浄剤及び/又はリンス液を除去できる。なお、リンス工程が省略される場合には、乾燥工程は、機能層除去工程(A)の後に行われるとよい。
【0048】
乾燥工程の条件としては、特に限定されず、通常70~150℃で、1~30分程度の時間乾燥される。乾燥方法としては、赤外線ヒーターやオーブン等による加熱乾燥、熱風乾燥機等による熱風乾燥やマイクロ波加熱乾燥など、一般的な方法を用いることができる。
【0049】
<リサイクルポリエステル製品製造工程>
上記回収工程(B)で回収されたポリエステルフィルムを原料としてリサイクル(再生利用)し、リサイクルポリエステル製品を製造する。該製造工程の前段で、後述するペレット製造工程によりポリエステルをペレット化し、該ペレットを用いて後述するリサイクルポリエステル製品を製造することが好ましい。
【0050】
<ペレット製造工程>
乾燥されたポリエステルフィルムは、ペレット製造工程により、ペレットに加工されることが好ましい。特に、廃材である積層ポリエステルフィルムが塊状の場合は、上述のように、裁断されており、得られるリサイクルポリエステルはフレーク状である。フレーク状のポリエステルは、ペレット化することで取り扱い性が格段に向上する。
ペレットは、取り扱いの点で有利であるだけでなく、保管、その後の加工等も行いやすいというメリットもある。
【0051】
<リサイクルポリエステル製品>
本発明の回収方法により得られたポリエステルフィルムは、ポリエステル原料として利用でき、いわゆるリサイクルポリエステル製品として、再利用することができる。具体的には、回収したポリエステルはペレット化して、ペレット状のポリエステル(ポリエステル製品)として保管することができる。また、回収されたポリエステルは、溶融押出し等によってポリエステルフィルムなどの各種のポリエステル製品に成形することもできる。なお、回収されたポリエステルは、その製造容易性から、一旦ペレット化した後に、各種製品に成形することが好ましい。
【0052】
用途としては、通常のポリエステル製品と同様の用途に用いることができ、例えば、基材フィルムであるポリエステルフィルムとして使用することができる。当該基材フィルムに、機能層を形成することで、積層フィルムとして再利用することも可能である。
【0053】
リサイクルポリエステルは、従来の方法で製造されたポリエステルと混合して使用することもでき、また、リサイクルポリエステルと従来の方法で製造されたポリエステルを用いた多層フィルムとすることもできる。
【0054】
リサイクルポリエステル製品としては、フィルム以外にも、各種用途に使用可能であり、例えばペットボトル、ポリエステル繊維、ポリエステルシート、ポリエステル容器などを製造することもできる。
【0055】
なお、剥離した機能層に関しても、必要に応じて回収し、再利用することも可能である。
【0056】
<洗浄剤>
機能層除去工程で用いられる洗浄剤としては、基材のポリエステルフィルムを溶解する機能を有するものであれば、特に限定されないが、アルカリ性化剤を含有することが好ましい。機能層の種類に応じて、好適な洗浄剤があり、あらかじめ準備しておくことが好ましい。なお、本リサイクルシステムでは、上述の顧客リスト等から、種々の情報が一貫して管理されていることが好ましく、無駄なく洗浄剤や洗浄槽等の準備が可能となる。
【0057】
(アルカリ性化剤を含有する洗浄剤)
アルカリ性化剤を含有する洗浄剤は、例えば、アクリル系の機能層を有する粘着フィルムやハードコートフィルムに対して有効である。具体的には、(a)アルカリ性化剤と(b)少なくとも一つの水酸基を有する化合物を含有する洗浄剤が好ましい。
【0058】
アルカリ性化剤を含有する洗浄剤は、上記シリコーン系の機能層を有する離型フィルムなど、洗浄剤により分解、溶解を受けない機能層を有する積層フィルムであっても、基材であるポリエステルフィルム自体が、エステル交換反応、鹸化、イオン化などして溶出が起こるので、その上にある機能層が剥離され、除去することができる。
【0059】
(アルカリ性化剤)
アルカリ性化剤(以下、(a)成分とも記す)は、洗浄液をアルカリ性とするものであり、アルカリ剤とも呼べる。アルカリ性化剤としては、無機アルカリ性化剤であっても、有機アルカリ性化剤であってもよい。
【0060】
無機アルカリ性化剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、リン酸三カリウム、ピロリン酸カリウム、トリポリリン酸カリウム等のアルカリ金属のリン酸塩;オルソケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のアルカリ金属のケイ酸塩;アンモニアなどが挙げられる。
【0061】
本洗浄剤における無機アルカリ性化剤のうち、アルカリ金属の水酸化物が好ましく、入手容易性から水酸化ナトリウム、水酸化カリウムがより好ましく、洗浄性から水酸化カリウムが特に好ましい。
【0062】
本洗浄剤における無機アルカリ性化剤としては、一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて使用することができる。特に、水酸化カリウムと水酸化ナトリウムを組み合わせて使用することが、効果及び取り扱い性の点から好ましい。
【0063】
有機アルカリ性化剤としては、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-シクロヘキシルアミン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、2-(ジメチルアミノ)エタノール、2-(ジエチルアミノ)エタノール、1-アミノ-2-プロパノール、トリイソプロパノールアミン、等の有機アミン化合物等が挙げられる。
なお、有機アルカリ性化剤として、少なくとも一つの水酸基を有する化合物が含まれる場合があるが、該化合物の酸性度定数(pKa)が30以上であれば、アルカリ性化剤として取り扱う。
【0064】
有機アルカリ性化剤として、少なくとも一つの水酸基を有する化合物が含まれる場合があるが、該化合物の酸性度定数(pKa)が30以上であれば、アルカリ性化剤として取り扱う。
【0065】
本洗浄剤における有機アルカリ性化剤のうち、汎用性からモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが好ましく、入手容易性からモノエタノールアミン、ジエタノールアミンがより好ましく、洗浄性からモノエタノールアミンが特に好ましい。
【0066】
さらに、無機アルカリ性化剤と、有機アルカリ性化剤を併用することも洗浄性の点から好ましく、具体的には、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの少なくとも1種の無機アルカリ性化剤と、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、2-(ジメチルアミノ)エタノール、2-(ジエチルアミノ)エタノール、1-アミノ-2-プロパノール、トリイソプロパノールアミンから選択される少なくとも1種の有機アルカリ性化剤の組み合わせがより好ましく、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムから選択される少なくとも1種の無機アルカリ性化剤、及びモノエタノールアミン、ジエタノールアミンから選択される少なくとも1種の有機アルカリ性化剤を併用した組み合わせが特に好ましい。
【0067】
洗浄剤全体におけるアルカリ性化剤の含有量は1~50質量%であることがより好ましく、2~45質量%であることがさらに好ましく、3~40質量%が特に好ましい。上記範囲を外れる場合、洗浄剤として充分な効果が得られない場合がある。
【0068】
(少なくとも一つの水酸基を有する化合物)
アルカリ性化剤を含有する洗浄剤には、少なくとも一つの水酸基を有する化合物(以下、(b)成分とも記す)を含有することが好ましい。
少なくとも一つの水酸基を有する化合物としてはアルコール類、フェノール類などが挙げられる。
【0069】
アルコール類としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ヘキサフルオロ-2-プロパノール等の単価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の2価アルコール、グリセリン等の多価アルコール等を挙げることができる。
【0070】
フェノール類としては、フェノール、キシレノール、サリチル酸、ピクリン酸、ナフトール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、フロログルシノール、ジブチルヒドロキシトルエン、ビスフェノールA、クレゾール、エストラジール、オイゲノール、没食子酸、グアイアコール、ピクリン酸、フェノールフタレイン、セロトニン、ドーパミン、アドレナリン、ノルアドレナリン、チモール、チロシン、ヘキサヒドロキシベンゼン等を挙げることができる。
【0071】
これらは1種を単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良いが、とりわけ、剥離洗浄効果を高める観点から、2種類以上を併用することが好ましく、中でもアルコール類を2種類以上併用することがより好ましい。
【0072】
これらの中でも、洗浄剤のアルカリ性を損なわず、洗浄性を維持する観点及び、ポリエステルフィルム基材の溶解を促進させる観点からアルコール類が好ましい。
アルコール類が有する水酸基から生成するアルコキシドによってポリエステルフィルムのエステル結合部でエステル交換反応が起こり、低分子量化合物を得る。次いで、上記低分子量化合物のエステル結合に対し、(b)アルカリ性化剤から電離したヒドロキシル基が求核攻撃することで鹸化反応が進行してカルボキシラートを得る(イオン化)。これにより、ポリエステルフィルムの溶解が促進されると推定している。
【0073】
洗浄性の観点から、アルコール類の酸性度定数(pKa)が8.0以上、20.0以下の範囲であることが好ましく、8.0以上、18.0以下がより好ましく、9.0以上、16.0以下がさらに好ましく、9.0以上、15.6以下の範囲が特に好ましく、9.3以上、15.4以下が最も好ましい。
アルコール類の酸性度定数(pKa)が上記範囲内であれば、洗浄剤のアルカリ性を損ねることなく、アルコキシドが生成されるため、洗浄剤の洗浄能力が向上する。
【0074】
一部アルコールの酸性度定数(pKa)を次に示す。ヘキサフルオロ-2-プロパノール(pKa=9.3)、ベンジルアルコール(pKa=15.4)、メタノール(pKa=15.5)、エタノール(pKa=16.0)、1-プロパノール(pKa=16.1)、2-プロパノール(pKa=17.1)、1-ブタノール(pKa=16.1)、tert-ブタノール(pKa=18.0)。
上記に示すアルコールの酸性度定数(pKa)の場合、酸性度定数(pKa)15.4以下のアルコール類とは、メタノールよりも酸性度定数(pKa)が小さいアルコール類と言える。
また、酸性度定数(pKa)9.3以上のアルコール類とは、ヘキサフルオロ-2-プロパノールの酸性度定数(pKa)以上のアルコール類と言える。
【0075】
(成分(b)の好ましい態様1)
上記の中でも、洗浄性の観点から、ヘキサフルオロ-2-プロパノール、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール及びベンジルアルコールがより好ましい。これらのアルコール類は、プロトンが電離してアルコキシドが生成しやすく、高い洗浄性を有する。その中でも、洗浄力の高いヘキサフルオロ-2-プロパノールが好ましい。
【0076】
さらに、洗浄能力を調整する目的で、ヘキサフルオロ-2-プロパノールと他のアルコール類を併用することも好ましい。併用する場合は、ヘキサフルオロ-2-プロパノールとメチルアルコール、ヘキサフルオロ-2-プロパノールとエチルアルコール及びヘキサフルオロ-2-プロパノールとベンジルアルコールの併用が好ましい。
【0077】
アルコール類としてヘキサフルオロ-2-プロパノールと他の単価アルコール類を用いる場合には、これらの質量部比(ヘキサフルオロ-2-プロパノール:他の単価アルコール類)は、1:1~1:100が好ましく、1:3~1:41であることがより好ましく、1:4~1:20がさらに好ましく、1:5~1:10であることが特に好ましい。
【0078】
なお、単価アルコール類を2種類以上併用した場合でも、さらに2価アルコール及び多価アルコールを併用してもよい。
【0079】
(成分(b)の好ましい態様2)
また、低揮発性及び使用可能な温度範囲の観点からは、上記の中でも、ベンジルアルコールの使用が好ましい。
【0080】
(成分(b)の好ましい態様3)
さらに、とりわけ、剥離洗浄効果を高める観点から、2種類以上を併用することが好ましく、2種類以上を併用する場合は、塗膜の性状に関わらず広くかつ相乗的に剥離洗浄効果を発現させる観点から、疎水性単価アルコールと水溶性単価アルコールの組合せが好ましい。ここで、疎水性単価アルコールとは、水と混じらずに2層に分離する単価アルコールのことを、水溶性単価アルコールとは、水と混じり1層になる単価アルコールのことを指す。
また、中でも疎水性単価アルコールとしてベンジルアルコールを、水溶性単価アルコールとしてヘキサフルオロ-2-プロパノール、メチルアルコール、エチルアルコール及びプロピルアルコールを併用することがより好ましく、中でも、ベンジルアルコールとヘキサフルオロ-2-プロパノール及びベンジルアルコールとメチルアルコールの併用が最も好ましい。
【0081】
前記アルコール類を2種類以上併用する場合の配合比は特に制限されないが、剥離洗浄効果を特に高める観点から、疎水性単価アルコール:水溶性単価アルコールの質量比が1:1~10:1であることが好ましく、1.5:1~10:1であることがより好ましい。
【0082】
なお、単価アルコール類を2種類以上併用した場合でも、さらに2価アルコール及び多価アルコールを併用してもよい。
【0083】
アルカリ性化剤を含有する洗浄剤における(b)化合物の含有量は、10~99質量%が好ましく、20~98質量%がより好ましく、30~97質量%がさらに好ましい。上記範囲内であれば、(a)アルカリ性化剤の量が適当となるため、ポリエステルフィルムを回収した際にアルカリ性化剤成分の析出による異物混入等が抑制され、リサイクルポリエステルフィルムの品質を維持できる。
【0084】
洗浄性の観点から、本発明における洗浄剤の特に好ましい態様としては、(W)又は(X)、かつ(Y)又は(Z)の組み合わせである。
(W)(a)アルカリ性化剤(アルカリ剤)としてアルカリ金属水酸化物、特に水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウムを含む。
(X)(a)アルカリ性化剤(アルカリ剤)としてアルカリ金属水酸化物、特に水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウムを含み、かつ有機アルカリ性化剤を含む。
(Y)(b)少なくとも一つの水酸基を有する化合物として、ヘキサフルオロ-2-プロパノール、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、又はベンジルアルコール、特にベンジルアルコールを少なくとも含む。
(Z)(b)少なくとも一つの水酸基を有する化合物として、酸性度定数(pKa)が9.3以上、15.4以下の範囲であるアルコール類を含む、すなわち、ヘキサフルオロ-2-プロパノールの酸性度定数(pKa)以上、かつメタノールよりも酸性度定数(pKa)が小さいアルコール類を少なくとも含む。
【0085】
本発明に係るアルカリ性化剤を含有する洗浄剤は、水系洗浄剤であることが好ましい。水系洗浄剤は、水に上記(a)及び(b)成分を溶解させ、また、希釈させたものである。水系洗浄剤は引火点を上げることができるため比較的安全性が高く、また、後述するリンス工程において、水を使用できる点でも有利である。
【0086】
洗浄剤には、上記(a)成分及び(b)成分以外にも種々の添加剤を配合することができる。例えば、界面活性剤、酸化防止剤、防錆剤、pH調整剤、防腐剤、粘度調整剤、消泡剤などを添加してもよい。
【0087】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、特に制限はなく、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用することができる。
【0088】
アニオン系界面活性剤としては、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルカルボン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、α-オレフィンスルホン酸、ジアルキルスルホコハク酸、α-スルホン化脂肪酸、N-メチル-N-オレイルタウリン、石油スルホン酸、アルキル硫酸、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸、アルキルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、これらの塩等が挙げられる。
【0089】
カチオン系界面活性剤としては、四級アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、トリアルキルベンジルアンモニウムアルキルピリジニウム、2-アルキル-1-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリニウム、N,N-ジアルキルモルホリニウム、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物の第四級アンモニウム及びこれらの塩等が挙げられる。
【0090】
ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレンエーテル;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレングリコール、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステル、トリアルキルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0091】
両性界面活性剤としては、ベタイン類(N,N-ジメチル-N-アルキル-N-カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N,N,N-トリアルキル-N-スルホアルキレンアンモニウムベタイン、N,N-ジアルキル-N,N-ビスポリオキシエチレンアンモニウム硫酸エステルベタイン、2-アルキル-1-カルボキシメチル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等)、アミノカルボン酸類(N,N-ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸塩等)が挙げられる。
【0092】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、特に限定されず、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤等を用いることができる。
【0093】
(防錆剤)
防錆剤としては、クロム酸塩、モリブデン酸塩、亜硝酸ナトリウム等の無機化合物が挙げられる。
【0094】
(pH調整剤)
pH調整剤としては乳酸、二酸化炭素、コハク酸、グルコン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、リンゴ酸、リン酸、等が挙げられる。
【0095】
(防腐剤)
防腐剤としてはパラベン系、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、プロピオン酸塩系、デヒドロ酢酸、二酸化硫黄及びピロ亜硫酸ナトリウム系等が挙げられる。
【0096】
(粘度調整剤)
粘度調整剤としては、高分子化合物、層状無機粒子などが挙げられる。
【0097】
(消泡剤)
消泡剤としては、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、ポリエーテル系化合物、アセチレングリコール系化合物やEDTAに代表されるキレート剤等が挙げられる。
【0098】
<ポリエステルのリサイクルシステム>
本発明に係るポリエステルのリサイクルシステムは、機能層除去手段、機能層を除去したポリエステルフィルムの回収手段、及び該ポリエステルフィルムを原料としたリサイクルポリエステル製品の製造手段を有する。本システムは、回収された廃材である積層ポリエステルフィルムをリサイクルするシステムである。廃材の回収方法は上記のとおりである。
また、本システムは、廃材であるポリエステルフィルムの形状に応じて、前述のように、洗浄装置の前段に巻き出し手段、裁断手段等を設けることも好ましい態様である。
廃材であるポリエステルフィルムがロール状の場合には、巻き出し手段を有していることが好ましく、さらには、巻き取りもロールで行う、いわゆるロールトゥロール方式であることが、効率的にリサイクルポリエステルが得られる点で好ましい。
また、廃材であるポリエステルフィルムが、塊状の場合は、裁断手段を有していることが好ましい。裁断によって、廃材はフレーク状になり、前述のように、洗浄手段がより効率的になる。
【0099】
本発明のポリエステルのリサイクルシステムについて、図1及び図2に示す概念図を用いて、以下詳細に説明する。なお、図1は廃材である積層ポリエステルフィルムが、ロール状である場合、図2は廃材である積層ポリエステルフィルムが、塊状である場合を示している。
廃材がロール状である場合には、図1に示すように、ロール状の積層ポリエステルフィルムを巻き出す、巻き出し手段(巻き出しロール)14を有することが好ましい。巻き出された積層フィルム16は、機能層除去手段11によって、洗浄剤により洗浄され、機能層が剥離されて除去される。なお、図1においては、機能層除去手段11は、浸漬漕に洗浄剤を満たしておき、これに積層フィルムを浸漬させる浸漬装置を例示しているが、洗浄剤を積層ポリエステルフィルムに塗布する塗布装置、洗浄剤を積層ポリエステルフィルムに吹き付ける吹付装置であってもよい。なお、これらの中では、浸漬装置を用いた浸漬法が好ましい。
【0100】
次いで、リンス手段12によって、機能層除去手段11で用いられた、ポリエステルフィルム基材に付着した洗浄剤を洗い流すことが好ましい。図1では、機能層除去手段と同様に、浸漬漕にリンス液を満たしておき、これにポリエステルフィルムを浸漬させる浸漬装置を示しているが、機能層を除去したポリエステルフィルム基材に対してリンス液を吹き付ける吹付装置などであってもよい。
【0101】
機能層が除去されたポリエステルフィルム基材は、乾燥手段13によって、乾燥されて、リンス液が除去される。ただし、リンス手段12は省略してもよく、リンス手段12が省略される場合には、乾燥手段で洗浄剤が除去される。乾燥手段としては、特に限定されず、加熱乾燥を行うオーブン、熱風乾燥機等公知の乾燥装置を用いることができる。
【0102】
廃材が、ロール状の積層ポリエステルの場合は、巻き取り手段(巻き取りロール)15によって巻き取られる態様が好ましい。すなわち、図1に示した、いわゆるロールトゥロールの方式で行うことが、効率的であり好ましい。
【0103】
乾燥され、かつ巻き取られたポリエステルフィルム基材は、その後、ぺレット製造装置18にてペレット化されることが好ましい。ペレット製造装置18としては、ポリエステルフィルム基材を溶融して、ペレット化できる限り特に限定されないが、例えば、公知の押出機を使用でき、押出機にてポリエステルフィルム基材を溶融して、押し出したポリエステルをペレット化すればよい。また、ポリエステルフィルム基材は、巻き取り手段から繰り出した後、適宜、微細化したうえで、押出機に投入すればよく、微細化手段としては、公知の粉砕機、切断機などが挙げられる。
【0104】
次に、図2を用いて、廃材である積層ポリエステルフィルムが塊状である場合について説明する。廃材である積層ポリエステルフィルムが塊状26である場合には、裁断手段24にて、フレーク状の積層ポリエステルフィルム27とすることが好ましい。
フレーク状とされたポリエステルフィルムは、ベルトコンベア25により、機能層除去手段21に搬送され、洗浄剤により洗浄され、機能層は剥離される。なお、図2においても、機能層除去手段21は、浸漬漕に洗浄剤を満たしておき、これに積層フィルムを浸漬する方法を例示している。
その後、リンス手段22によって、機能層除去手段21で用いられた洗浄剤が洗い流されることが好ましく、乾燥手段23によって乾燥され、フレーク状のリサイクルポリエステルが得られる。得られたフレーク状のポリエステルは、その後ペレット製造装置28でペレット状にされる。ペレット製造装置28は、ペレット製造装置18と同様であるが、既にフレーク状にされているので、微細化手段は省略してもよい。
なお、図2に示す態様では、一連の手段を、ベルトコンベア25を用いて行うことが、生産性の点で有利であるが、ベルトコンベヤ25以外の搬送手段を使用してもよい。
なお、上記したポリエステルのリサイクルシステムは、一実施形態であって、本システムが有する各手段は、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜変更、改変することが可能である。
【0105】
<剥離洗浄液の廃液処理システム>
本発明で使用する剥離洗浄液の廃液は従来公知の分離精製手法により、各有効成分を単離して、再度剥離洗浄液の原料として用いても良いが、運用面の観点から廃棄処理を行っても良い。
廃棄処理を行う場合、廃液の浄水が可能な生物酸化層、曝気層、沈殿槽、塩素殺菌槽、汚泥槽等を具備する下水処理槽に廃棄する方法がある。
下水処理槽による廃液処理の場合は、化学的酸素要求量(COD)及び生物化学的要求量(BOD)の数値を規定値以下にしなければ廃液を投棄する事ができないので、事前にある程度廃液の浄化が必要となる。
なお、事前に廃液の濃縮などを行い、廃液量を低減しておいてもよい。
前述の事前処理としては、凝集剤を添加し処理水及び凝集物に分離した後、各々を投棄する凝集沈殿法、UF膜フィルター等を用いて廃液を処理水及び濃縮液に分離した後、各々を投棄するフィルター濾過分離法、減圧下もしくは常圧下で廃液を加熱し溶媒を揮発させて処理水及び濃縮液に分離した後に、各々を回収や投棄する減圧蒸留法や蒸発濃縮法、廃液中の有機物を酸化処理等によりCOと水に分解する酸化還元法(オゾン分解法など)、廃液中の有機物を生物処理により分解する生物処理法などが挙げられる。
【実施例
【0106】
次に、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。但し、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0107】
<評価方法>
(1)浸漬試験
各実施例及び比較例で調製した洗浄剤を30mlの水槽に入れ、積層フィルムを浸漬させた。洗浄剤の温度、浸漬時間、及びサンプルサイズは、表に記載の通りである。
【0108】
(2)機能層の剥離評価
(2-1)目視
(粘着層を有する積層ポリエステルフィルム、及びハードコート層を有する積層ポリエステルフィルム)
浸漬した積層フィルムを取り出して表面を目視観察し、以下の基準で評価した。
◎(very good);機能層が溶解又は剥離されており、実用上特に好ましい。
○(good);機能層が一部溶解又は剥離しており、実用上問題ない。
△(fair);機能層のごく一部が溶解又は剥離している。
×(bad);機能層が残ったままであり、実用上問題がある。
【0109】
(2-2)蛍光X線分析
(シリコーン離型層を有する積層ポリエステルフィルム)
洗浄後の積層フィルムの表面を、蛍光X線分析装置(XRF、(株)島津製作所製「XRF-1800」)を用いてSi元素の定量分析を行った。
洗浄前の積層ポリエステルフィルム表面のSi元素量を100%、積層フィルムの機能層が塗工されていないプレーンフィルムのSi元素量を0%とすることで、機能層の除去率を測定した。
◎(very good) ;除去率90~100%
○(good) ;除去率70~89%
×(bad) ;除去率0~69%
【0110】
(3)極限粘度(IV;Intrinsic Viscosity)の評価
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0111】
(4)ポリエステルフィルムの溶解評価
ポリエチレンテレフタレートフィルムを表1の条件で洗浄剤に浸漬し、(株)ミツトヨ社製「シックネスゲージ ID-C112X/1012X」によって厚みを測定することでポリエステルフィルム基材の厚み変化を測定した。
厚み変化が3μm以上あった場合をA、厚み変化が3μm未満であった場合をBとした。厚み変化が3μm以上あった場合、洗浄剤への浸漬により、ポリエステルフィルム基材の溶解が進み、機能層が剥離したものと推測する。
【0112】
(機能層を有する積層ポリエステルフィルム)
次の(I)~(III)の機能層を有する積層ポリエステルフィルムを、試料として用意した。
(I)積層フィルム(アクリル系粘着層を有する積層ポリエステルフィルム);市販品(日榮新化(株)製「PET75-H120(10)ブルー」)、ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚み;75μm、アクリル系粘着層の厚み;10μm。
【0113】
(II)積層フィルム(アクリル系ハードコート層を有する積層ポリエステルフィルム);下記手順にてアクリル系ハードコート層を有する積層ポリエステルフィルムを得た。
(アクリル系ハードコート溶液の調製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート24重量部、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート6重量部、光重合開始剤(商品名:Omnirad 184、IGM Resins B.V.製)1.5重量部、トルエン70重量部の混合塗液とし、アクリル系ハードコート溶液を得た。
(アクリル系ハードコートフィルムの調製)
ポリエチレンテレフタレートフィルム;市販品(三菱ケミカル社製「ダイヤホイル」)上に、上記アクリル系ハードコート溶液を乾燥膜厚が約9μmとなるよう塗布し、紫外線を照射して硬化させ、アクリル系ハードコート層を有する積層ポリエステルフィルムを得た。
【0114】
(III)積層フィルム(シリコーン離型層を有する積層ポリエステルフィルム);市販品(三菱ケミカル社製「MRF38」)、ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚み;38μm。該ポリエチレンテレフタレートフィルムの極限粘度は0.67。
【0115】
[実施例1]
(a)成分である水酸化カリウム5質量部、(b)成分であるベンジルアルコール、及びキシレノールをそれぞれ40質量部、10質量部、その他成分として水を45質量部となるように混合し、洗浄剤(pH=13以上)を調製した。
積層フィルム(I)~(III)を用いて、表1に記載の条件で洗浄性評価を実施した。結果を表1に示す。
【0116】
[実施例2]
(a)成分として、水酸化カリウム5質量部、水酸化ナトリウム5質量部、エタノールアミン19質量部、(b)成分としてベンジルアルコール40質量部、及びプロピレングリコール1質量部、その他成分として水を30質量部となるように混合し、洗浄剤(pH=13以上)を調製した。
積層フィルム(I)~(III)を用いて、表1に記載の条件で洗浄性評価を実施した。結果を表1に示す。
【0117】
[実施例3]
(a)成分として、水酸化カリウム5質量部、水酸化ナトリウム5質量部、及びジエタノールアミン10質量部、(b)成分としてベンジルアルコール16質量部、その他成分として水を64質量部となるように混合し、洗浄剤(pH=13以上)を調製した。
積層フィルム(I)及び(III)を用いて、表1に記載の条件で洗浄性評価を実施した。結果を表1に示す。
【0118】
[実施例4]
(a)成分として、水酸化カリウム5質量部、(b)成分としてベンジルアルコール95質量部となるように混合し、洗浄剤(pH=13以上)を調製した。
積層フィルム(I)及び(III)を用いて、表1に記載の条件で洗浄性評価を実施した。結果を表1に示す。
【0119】
[実施例5]
(a)成分として、水酸化カリウム5質量部、(b)成分としてメタノール95質量部となるように混合し、洗浄剤(pH=13以上)を調製した。
積層フィルム(III)を用いて、表1に記載の条件で洗浄性評価を実施した。結果を表1に示す。
【0120】
[実施例6]
(a)成分として、水酸化カリウム5質量部、(b)成分としてエタノール95質量部となるように混合し、洗浄剤を調製した。
積層フィルム(I)及び(III)を用いて、表1に記載の条件で洗浄性評価を実施した。結果を表1に示す。
【0121】
[実施例7]
(a)成分として、水酸化カリウム5質量部、水酸化ナトリウム5質量部、及びエタノールアミン17.9質量部、(b)成分としてベンジルアルコール33.8質量部、メタノール3.8質量部、及びプロピレングリコール2.9質量部、その他成分として水を31.7質量部となるように混合し、洗浄剤を調製した。
積層フィルム(III)を用いて、表1に記載の条件で洗浄性評価を実施した。結果を表1に示す。
【0122】
[実施例8]
(a)成分として、水酸化カリウム5質量部、水酸化ナトリウム5質量部、及びエタノールアミン17.9質量部、(b)成分としてベンジルアルコール28.1質量部、メタノール9.4質量部、及びプロピレングリコール2.9質量部、その他成分として水を31.7質量部となるように混合し、洗浄剤を調製した。
積層フィルム(III)を用いて、表1に記載の条件で洗浄性評価を実施した。結果を表1に示す。
【0123】
[実施例9]
(a)成分として、水酸化カリウム5質量部、水酸化ナトリウム5質量部、及びモノエタノールアミン17.9質量部、(b)成分としてベンジルアルコール18.8質量部、メタノール18.8質量部、及びプロピレングリコール2.9質量部、その他成分として水を31.7質量部となるように混合し、洗浄剤を調製した。
積層フィルム(III)を用いて、表1に記載の条件で洗浄性評価を実施した。結果を表1に示す。
【0124】
[実施例10]
(a)成分として、水酸化カリウム5質量部、水酸化ナトリウム5質量部、及びモノエタノールアミン17.9質量部、(b)成分としてベンジルアルコール33.8質量部、ヘキサフルオロ-2-プロパノール3.8質量部、及びプロピレングリコール2.9質量部、その他成分として水を31.7質量部となるように混合し、洗浄剤を調製した。
積層フィルム(III)を用いて、表1に記載の条件で洗浄性評価を実施した。結果を表1に示す。
【0125】
[実施例11]
(a)成分として、水酸化カリウム5質量部、水酸化ナトリウム5質量部、及びモノエタノールアミン17.9質量部、(b)成分としてベンジルアルコール28.1質量部、ヘキサフルオロ-2-プロパノール9.4質量部、及びプロピレングリコール2.9質量部、その他成分として水を31.7質量部となるように混合し、洗浄剤を調製した。
積層フィルム(III)を用いて、表1に記載の条件で洗浄性評価を実施した。結果を表1に示す。
【0126】
[実施例12]
(a)成分として、水酸化カリウム5質量部、水酸化ナトリウム5質量部、及びモノエタノールアミン17.9質量部、(b)成分としてベンジルアルコール18.8質量部、ヘキサフルオロ-2-プロパノール18.8質量部、及びプロピレングリコール2.9質量部、その他成分として水を31.7質量部となるように混合し、洗浄剤を調製した。
積層フィルム(III)を用いて、表1に記載の条件で洗浄性評価を実施した。結果を表1に示す。
【0127】
[実施例13]
(a)成分として、水酸化カリウム5質量部、水酸化ナトリウム5質量部、及びモノエタノールアミン17.9質量部、(b)成分としてベンジルアルコール28.1質量部、エタノール9.4質量部、及びプロピレングリコール2.9質量部、その他成分として水を31.7質量部となるように混合し、洗浄剤を調製した。
積層フィルム(III)を用いて、表1に記載の条件で洗浄性評価を実施した。結果を表1に示す。
【0128】
[実施例14]
(a)成分として、水酸化カリウム5質量部、水酸化ナトリウム5質量部、及びモノエタノールアミン17.9質量部、(b)成分としてベンジルアルコール28.1質量部、2-プロパノール9.4質量部、及びプロピレングリコール2.9質量部、その他成分として水を31.7質量部となるように混合し、洗浄剤を調製した。
積層フィルム(III)を用いて、表1に記載の条件で洗浄性評価を実施した。結果を表1に示す。
【0129】
[比較例1]
(a)成分として、水酸化カリウム30質量部、その他成分として水を70質量部となるように混合し、洗浄剤を調製した。積層フィルム(I)及び(III)を用いて、表1に記載の条件で洗浄性評価を実施した。結果を表1に示す。
【0130】
[参考例1]
参考例として機能層を備えない基材フィルム(IV)(ポリエチレンテレフタレートフィルム 厚み52μm)を、試料として用意した。
実施例1と同じ組成の洗浄剤を用いて、試料を5分間洗浄剤に浸漬し、(株)ミツトヨ社製「シックネスゲージ ID-C112X/1012X」によって厚みを測定することで基材の厚み変化を測定した。
厚み変化が3μm以上あった場合をA、厚み変化が3μm未満であった場合をBとした。結果を表1に示す。
【0131】
【表1】
【0132】
[参考例2]
洗浄剤におけるアルコール類の最良の形態の確認のために、実施例2及び7~12において、洗浄温度を40℃、浸漬時間を1.2分に洗浄条件を変更し、以下の基準にて洗浄評価を行った。結果を表2に示す。
なお、上記と同様に、洗浄後の積層フィルムの表面について、蛍光X線分析装置を用いてSi元素の定量分析を行うことで洗浄評価を行った。
機能層の除去率は、以下の基準で判断した。
○(good);除去率50~100%
△(fair);除去率0~49%
【0133】
【表2】
【0134】
本発明のリサイクルシステム又は本発明のリサイクル方法によれば、ポリエステルフィルムを溶解する洗浄剤を用いて、積層ポリエステルフィルムから機能層を剥離し、ポリエステルフィルムを効率的にリサイクルすることができる。
【0135】
参考例1の結果から、ポリエステルフィルムである基材フィルム(IV)は表面が一部溶融して薄膜化していることがわかる。したがって、本発明のリサイクルシステムは、洗浄剤を用いて基材であるポリエステルフィルムの表面を一部溶解することで、機能層を効果的に剥離している。
【符号の説明】
【0136】
10 リサイクルシステム
11 機能層除去手段
12 リンス手段
13 乾燥手段
14 巻き出し手段
15 巻き取り手段
16 積層ポリエステルフィルム
18 ペレット製造手段
20 リサイクルシステム
21 機能層除去手段
22 リンス手段
23 乾燥手段
24 裁断手段
25 ベルトコンベア
26 塊状積層ポリエステルフィルム(廃材)
27 フレーク状積層ポリエステルフィルム
28 ペレット製造手段
図1
図2