(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】プリプレグ、プリプレグの製造方法、及び、成形品
(51)【国際特許分類】
C08J 5/24 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
C08J5/24 CFF
(21)【出願番号】P 2022553639
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2022012139
【審査請求日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2021086990
(32)【優先日】2021-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】加藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】新地 智昭
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0255316(US,A1)
【文献】国際公開第2019/065210(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/163899(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0014480(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107793548(CN,A)
【文献】特表2009-520107(JP,A)
【文献】国際公開第2014/057740(WO,A1)
【文献】特表2017-500391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)、重合開始剤(B)、及び、アミン触媒(C)を含有する樹脂組成物、並びに、強化繊維(D)を含有するプリプレグであって、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、及び、ジフェニルメタンジイソシアネートを含有するポリイソシアネート化合物(a1)と、水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含有する水酸基を有する化合物(a2)との反応物であることを特徴とするプリプレグ。
【請求項2】
前記アミン触媒が、酸ブロックアミン触媒であることを特徴とする請求項1に記載のプリプレグ。
【請求項3】
前記酸ブロックアミン触媒の乖離温度が、50~70℃であることを特徴とする請求項2に記載のプリプレグ。
【請求項4】
前記ジフェニルメタンジイソシアネートが、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、及び、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートのカルボジイミド変性体からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のプリプレグ。
【請求項5】
前記樹脂組成物の初期粘度(20℃)が、300mPa・s~50,000mPa・sであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のプリプレグ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のプリプレグの製造方法であって、
30℃以下に調製した前記樹脂組成物を、前記強化繊維(D)に塗工・含浸させる工程と、
前記樹脂組成物を塗工・含浸した前記強化繊維(D)を40~80℃で加熱する工程と、を含むことを特徴とするプリプレグの製造方法。
【請求項7】
更に、10~50℃雰囲気下で12時間~48時間熟成させる工程を含むことを特徴とする請求項6に記載のプリプレグの製造方法。
【請求項8】
請求項1~5のいずれかに記載のプリプレグの硬化物であることを特徴とする成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業性及び成形性に優れた成形品が得られるプリプレグ、プリプレグの製造方法、及び、成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維にて強化した繊維強化樹脂複合材料は、軽量でありながら耐熱性や機械強度に優れる特徴が注目され、自動車や航空機の筐体或いは各種部材をはじめ、様々な構造体用途での利用が拡大している。この繊維強化樹脂複合材料の成形方法としては、例えば、強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグと呼ばれる中間材料を用いて、オートクレーブ成形、プレス成形により、硬化、成形させる方法が用いられる。
【0003】
プリプレグ用の樹脂としては、通常、常温での安定性と加熱等による硬化性を兼ね備えた樹脂であることが必要であるため、一般にはエポキシ樹脂組成物を始めとする熱硬化性樹脂が多用されてきた。しかしながら、エポキシ樹脂を用いたプリプレグは、硬化を早く終了させるために高温で成形する必要があった。そこで、高い生産性を実現できるラジカル重合樹脂組成物の開発も進められている。
【0004】
この問題を解決するため、高い生産性と常温での安定性を実現できるラジカル重合成樹脂組成物の開発が進められている(例えば、特許文献1参照。)。このラジカル重合成樹脂組成物は、特定構造のトリ(メタ)アクリレート化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、特定構造のジ(メタ)アクリレート化合物を必須成分とするラジカル重合性樹脂を含むものであるが、このラジカル重合成樹脂組成物では、プリプレグの作業性(タック性)を改善するため、UV硬化を必要とし、成形品の層間密着性が不十分であるという問題があった。
【0005】
また、炭素繊維などの強化繊維に、ラジカル重合性樹脂組成物(溶液)などを塗工・含浸する際に、樹脂組成物の粘度が低すぎると、強化繊維の動きや、樹脂組成物の目付(質量)の変動などが発生しやすくなり、製品目付の安定しないプリプレグとなり、また、粘度が高すぎると、前記エポキシ樹脂組成物を、ポンプを使用して輸送(送液)する場合に、送液自体が困難になるほか、強化繊維への含浸性が悪化し、得られるプリプレグの製品品質が上がらないという問題が存在する。
【0006】
更に、触媒(硬化促進剤)を含む樹脂組成物の調製直後や、常温での保管の際に、触媒による硬化反応が進行し、樹脂組成物の粘度上昇により、ポットライフが短くなったり、製品目付量が安定しないなど、取り扱い性や製品安定性等の問題も生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、プリプレグに使用される樹脂組成物(溶液)の調製後、増粘を抑えることができ、加熱工程後、安定した製品目付が得られ、作業性、及び、製品安定性に優れるプリプレグ、そのプリプレグの製造方法、及び、前記プリプレグを用いて得られる成形品を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、特定のウレタン(メタ)アクリレート、重合開始剤、アミン触媒、及び、強化繊維を含有するプリプレグが、作業性、及び、製品安定性に優れ、成形不良の発生を抑制し、作業性に優れる成形品を得られることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)、重合開始剤(B)、及び、アミン触媒(C)を含有する樹脂組成物、並びに、強化繊維(D)を含有するプリプレグであって、
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、及び、ジフェニルメタンジイソシアネートを含有するポリイソシアネート化合物(a1)と、水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含有する水酸基を有する化合物(a2)との反応物であることを特徴とするプリプレグに関する。
【0011】
本発明のプリプレグは、前記アミン触媒が、酸ブロックアミン触媒であることが好ましい。
【0012】
本発明のプリプレグは、前記酸ブロックアミン触媒の乖離温度が、50~70℃であることが好ましい。
【0013】
本発明のプリプレグは、前記ジフェニルメタンジイソシアネートが、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、及び、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートのカルボジイミド変性体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0014】
本発明のプリプレグは、前記樹脂組成物の初期粘度(20℃)が、300mPa・s~50,000mPa・sであることが好ましい。
【0015】
本発明は、前記プリプレグの製造方法であって、
30℃以下に調製した前記樹脂組成物を、前記強化繊維(D)に塗工・含浸させる工程と、
前記樹脂組成物を塗工・含浸した前記強化繊維(D)を40~80℃で加熱する工程と、を含むことを特徴とするプリプレグの製造方法に関する。
【0016】
本発明のプリプレグの製造方法は、更に、10~50℃雰囲気下で12時間~48時間熟成させる工程を含むことが好ましい。
【0017】
本発明は、前記プリプレグの硬化物であることを特徴とする成形品に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、樹脂組成物(溶液)を調製後、増粘を抑えることができ、加熱工程後、安定した製品目付のプリプレグが得られるため、作業性、及び、製品安定性に優れ、成形不良の発生を抑制し、作業性、及び、取り扱い性に優れる成形品を得られることから、自動車部材、鉄道車両部材、航空宇宙機部材、船舶部材、住宅設備部材、スポーツ部材、軽車両部材、建築土木部材、OA機器等の筐体等に好適に使用可能であり、特に、住宅設備部材、建築土木部材等に好適に使用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[プリプレグ]
本発明は、ウレタン(メタ)アクリレート(A)、重合開始剤(B)、及び、アミン触媒(C)を含有する樹脂組成物、並びに、強化繊維(D)を含有するプリプレグであって、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、及び、ジフェニルメタンジイソシアネートを含有するポリイソシアネート化合物(a1)と、水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含有する水酸基を有する化合物(a2)との反応物であることを特徴とするプリプレグに関する。
【0020】
[ウレタン(メタ)アクリレート(A)]
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、及び、ジフェニルメタンジイソシアネートを含有するポリイソシアネート化合物(a1)と、水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含有する水酸基を有する化合物(a2)との反応物であることを特徴とする。
【0021】
前記ポリイソシアネート化合物(a1)(以下、「(a1)成分」という場合がある。)は、前記ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを必須原料とする。また、前記強化繊維(D)の表面と親和性の高いポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの芳香環多核体構造により、強化繊維との密着性が向上したプリプレグ、及び、前記プリプレグを用いた成形品が得られる。
【0022】
前記ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートは、下記一般式(1)で表されるものである。なお、これらのポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【化1】
(式中、nは1以上の整数である。)
【0023】
前記ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートとして用いることのできる市販品としては、東ソー株式会社製の「ミリオネート MR-100」、「ミリオネート MR-200」、万華ジャパン株式会社製の「WANNATE PM-200」、「WANNATE PM-400」、三井化学株式会社製の「コスモネートM-1500」、ダウケミカル株式会社製の「ボラネートM-595」等が挙げられる。
【0024】
また、得られる成形品の密着性がより向上することから、前記強化繊維(D)を除いたプリプレグの原料中の前記ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの比率は、1~40質量%の範囲であることが好ましい。
【0025】
前記ポリイソシアネート化合物(a1)としては、前記ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート以外に、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を必須原料とする。
【0026】
前記ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)としては、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、及び、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートのカルボジイミド変性体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0027】
また、前記ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、及び、前記ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)以外には、前記ジフェニルメタンジイソシアネートのヌレート変性体、ビュレット変性体、ウレタンイミン変性体、ジエチレングリコールやジプロピレングリコール等の数平均分子量1000以下のポリオールで変性したポリオール変性体等のジフェニルメタンジイソシアネート変性体、トリレンジイソシアネート(TDI)、トリジンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート変性体、ビュレット変性体、アダクト体、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネートなどを用いることができる。
【0028】
[水酸基を有する化合物(a2)]
前記水酸基を有する化合物(a2)(以下、「(a2)成分」という場合がある。)は、水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を必須原料とする。前記水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を使用することで、得られるウレタン(メタ)アクリレート(A)は、成形品の靭性等に優れ、有用である。
【0029】
前記水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、これらの水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0030】
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-n-ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、これらのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0031】
また、前記水酸基を有する化合物(a2)としては、得られる成形品の靱性等がより向上することから、前記水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物以外のその他ポリオールを併用することが好ましい。
【0032】
前記その他ポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、芳香族ジオールのアルキレンオキサイド付加物、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアルキレンポリオール等を使用することができる。これらのポリオールは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0033】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)の原料となる、前記ポリイソシアネート化合物(a1)のイソシアネート基(NCO)と前記水酸基を有する化合物(a2)の水酸基(OH)とのモル比(NCO/OH)は、0.7~1.2が好ましく、0.9~1.0がより好ましい。
【0034】
[重合開始剤(B)]
前記重合開始剤(B)としては、特に制限されず、例えば、有機過酸化物、アゾ化合物、レドックス開始剤などが挙げられ、中でも、常温(23℃)での安定性の観点から、有機過酸化物が好ましい。なお、これらの重合開始剤(B)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0035】
前記有機過酸化物としては、例えば、ジアシルパーオキサイド化合物、パーオキシエステル化合物、ハイドロパーオキサイド化合物、ケトンパーオキサイド化合物、アルキルパーエステル化合物、パーカーボネート化合物、パーオキシケタール等が挙げられ、成形条件に応じて適宜選択できる。なお、これらの有機過酸化物は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0036】
また、前記有機過酸化物の中でも、成形時間を短縮する目的で10時間半減期を得るための温度が60~100℃の有機過酸化物を使用するのが好ましく、65~95℃がより好ましい。前記温度が、60~100℃の範囲内であれば、プリプレグの常温でのライフが長く、また加熱により短時間(5分以内)で硬化ができるため好ましく、本発明のプリプレグを使用することで、硬化性と成形性がより優れたものとなる。このような重合開始剤としては、例えば、1,6-ビス(t-ブチルパーオキシカルボニロキシ)ヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルパーオキシジエチルアセテート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジーtert-ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、t-アミルパーオキシトリメチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等が挙げられる。
【0037】
前記重合開始剤(B)の含有量としては、硬化特性と保存安定性が共に優れることから、本発明のプリプレグに用いられる樹脂組成物(固形分)中、0.3~3質量%が好ましく、0.5~2.5質量%がより好ましい。
【0038】
[アミン触媒(C)]
本発明のプリプレグは、前記樹脂組成物中に、アミン触媒を含有することを特徴とし、前記アミン触媒が、酸ブロックアミン触媒であることが好ましい。前記アミン触媒を使用することで、従来使用されていた金属触媒(例えば、錫触媒)などに比べて、
低温で反応速度の上昇が抑制されるため、好ましい態様となる。
【0039】
前記アミン触媒としては、例えば、トリエチレンジアミンや1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)などが挙げられ、中でも、DBUなどのフェノール塩又はフタル酸塩である酸ブロックアミン触媒が好ましく、前記酸ブロックアミン触媒の中でも、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)の酸誘導体がより好ましい。中でも、特に、DBUの酸誘導体を使用することにより、樹脂組成物を強化繊維(D)に塗工・含浸後の加熱工程において、急速に反応を進行させることができ、増粘された樹脂組成物の粘度が上昇し、強化繊維(D)の動きを抑制し、樹脂組成物自体の動きも抑制することで、製品目付の安定したプリプレグを得ることができ、製品安定性に優れ、特に好ましい。
【0040】
また、前記酸ブロックアミン触媒の乖離温度は、50~80℃であることが好ましく、60~70℃であることがより好ましい。なお、前記乖離温度とは、酸ブロックがアミンから乖離することで触媒の活性が発揮される温度を意味する。前記乖離温度が、前記範囲内であることにより、重合開始剤(B)として、例えば、有機過酸化物などを用いる場合に、前記有機過酸化物の分解を防止することができ、更に、低温での反応を抑制でき、増粘された樹脂組成物の粘度上昇に伴い、強化繊維(D)の動きを抑制し、樹脂組成物自体の動きも抑制することで、製品目付の安定したプリプレグを得ることができ、製品安定性に優れる。
【0041】
なお、従来の樹脂組成物を強化繊維に含浸させる場合、含浸後、例えば、48時間の熟成工程により、硬化反応を進行させていたが、初期の増粘が不十分となり、強化繊維の動きや樹脂組成物自体の動きを抑制することができず、製品目付が不安定となり、プリプレグ品質が低下する問題を含んでいた。しかし、本発明のプリプレグは、そのような問題がなく、有用である。
【0042】
本発明で用いられる樹脂組成物は、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)、前記重合開始剤(B)、及び、前記アミン触媒(C)を含有し、前記樹脂組成物の初期粘度(20℃)が、JIS K7117-1に基づいた測定において、取り扱い性や作業性、含浸性の観点から、300mPa・s~50,000mPa・sであることが好ましく、より好ましくは、500mPa・s~30,000mPa・sである。前記初期粘度が、前記範囲内であることにより、前記強化繊維(D)に前記樹脂組成物を塗工・含浸した際に、製品目付(質量)が安定し、得られるプリプレグの製品の品質が安定(製品安定性)し、有用となる。
【0043】
[強化繊維(D)]
本発明のプリプレグは、前記樹脂組成物、及び、前記強化繊維(D)を含有するものであり、前記強化繊維(D)としては、炭素繊維、ガラス繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、金属繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、テトロン繊維等の有機繊維などが挙げられる。中でも、より高強度、高弾性の成形品が得られることから、炭素繊維、及び、ガラス繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。これらの強化繊維(D)は単独で用いることも、2種以上併用することもできる。
【0044】
前記炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル系、ピッチ系、レーヨン系などの各種のものが使用できるが、これらの中でも、容易に高強度の炭素繊維が得られることから、ポリアクリロニトリル系のものが好ましい。
【0045】
前記強化繊維(D)の形状としては特に制限はなく、強化繊維フィラメントを収束させた強化繊維トウや、強化繊維トウを一方向に引き揃えた一方向材、製織した織物又は短く裁断した強化繊維からなる不織布等が挙げられるが、強化繊維として一方向材を用い、積層させ成形することで高い機械物性が得られるため好ましい。
【0046】
織物の場合は、平織、綾織、朱子織、若しくはノン・クリンプト・ファブリックに代表される、繊維束を一方向に引き揃えたシートや角度を変えて積層したようなシートをほぐれないようにステッチしたステッチングシート等が挙げられる。
【0047】
強化繊維(D)の目付け(繊維1m2当たりの重さ)としては、特に制限されるものではないが、15~1000g/m2が好ましく、20~500g/m2がより好ましい。前記目付が、15g/m2以上になると繊維幅のムラが少なく、機械物性が良好になるので好ましい。前記目付が、1000g/m2以下であれば、樹脂組成物の含浸が良好になるため好ましい。
【0048】
また、作業性がより向上することから、本発明のプリプレグの原料として、エチレン性不飽和単量体を使用することができる。前記エチレン性不飽和単量体としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、ジビニルベンゼン等のスチレン化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メチルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチルアクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、フェニルメタクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート等の単官能(メタ)アクリレート化合物;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート化合物;ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、1,12ドデカンジオールジメタクリレート、水素添加ビスフェノールAジメタクリレート、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート、9,9-ビス[4-(2-メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、イソソルバイドのエチレンオキサイド付加物のジメタクリレート、水素添加ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジメタクリレート、トリメチロールプロパンのエチレンオキサイド付加物のトリメタクリレート、ペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加物のテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールのエチレンオキサイド付加物のヘキサメタクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。これらは単独で用いることも、2種以上併用することもできる。
【0049】
本発明のプリプレグの成分としては、上記した以外のものを使用してもよく、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、重合禁止剤、硬化促進剤、充填剤、低収縮剤、離型剤、増粘剤、減粘剤、顔料、酸化防止剤、可塑剤、難燃剤、抗菌剤、紫外線安定剤、補強材、光硬化剤等を含有することができる。
【0050】
[プリプレグ]
本発明のプリプレグは、前記樹脂組成物を反応させて用いることで、未硬化あるいは半硬化の状態に形成したものであり、本発明のプリプレグを使用することで、得られる成形品は、層間せん断強度や耐熱性等に優れることとなり、好ましい。
【0051】
[プリプレグの製造方法]
本発明におけるプリプレグの製造方法として、(1)30℃以下に調製した前記樹脂組成物(溶液)を、前記強化繊維(D)に塗工・含浸させる工程と、(2)前記樹脂組成物を塗工・含浸した前記強化繊維(D)を40~80℃で加熱する工程を含むことを特徴とするプリプレグの製造方法に関する。
前記(1)の塗工・含浸工程が30℃以下(低温)に調整された前記樹脂組成物を用いて行われることで、急激な増粘が生じず、塗工の可使時間が短くなることを抑制でき、強化繊維(D)に均等に含浸することができる。
前記(2)の加熱工程において、40~80℃の雰囲気下に調整し、アミン触媒(C)を使用することで、重合開始剤(B)(例えば、有機過酸化物)の分解が生じず、(a1)成分と(a2)成分の反応によるウレタン化反応が促進され、有用である。また、40~80℃の温度に調整することで、急激な増粘効果を発揮し、樹脂組成物の粘度上昇に伴い、強化繊維(D)の動きを抑制し、樹脂組成物自体の動きも抑制することで、製品目付の安定したプリプレグを得ることができ、製品安定性に優れ、有用である。
なお、前記(1)の塗工における可使時間としては、特に制限されないが、12分以上が好ましい。
また、前記(2)の加熱工程における反応時間としては、こちらも、特に制限されないが、1~30分が好ましい。
【0052】
本発明のプリプレグの製造方法は、更に、(3)10~50℃雰囲気下で12時間~48時間熟成させる工程を含むことが好ましい。前記熟成工程において、10~50℃雰囲気(低温)に調整することで、強化繊維(D)と樹脂組成物自体の動きを抑制可能な粘度となり、有用である。また、12時間~48時間熟成することにより、プリプレグを積層する際の作業性や取り扱いに優れ、有用である。
【0053】
本発明のプリプレグ中、前記強化繊維(D)の含有率(含有量)は、得られる成形品の機械強度がより向上することから、35~85質量%の範囲が好ましく、45~75質量%の範囲がより好ましい。
【0054】
本発明のプリプレグの厚みとしては、15~1000μmであることが好ましく、20~500μmであることがより好ましい。前記厚みに調製することで、プリプレグを積層する際に、取り扱いが容易となり、好ましい。
【0055】
[成形品]
本発明は、前記プリプレグの硬化物であることを特徴とする成形品に関する。前記成形品は、前記プリプレグを用いて得られるため、成形不良の発生が抑えられ、作業性や取り扱い性に優れ、好ましい。
【0056】
[成形品の製造方法]
前記プリプレグを用いて、最終硬化をおこなって硬化物(成形品)を形成してもよいし、前記プリプレグを用いて、積層体を形成する場合は、プリプレグを作製した後プリプレグやその他の層を積層してから最終硬化を行うことで、各層が密着した積層体を形成することができる。なお、前記プリプレグは、熱硬化性プリプレグや、電子線硬化性プリプレグ等とすることが可能であるが、作業性やコストの観点から、熱硬化性プリプレグとすることが好ましい。
【0057】
前記プリプレグを用いて成形品を得る方法としては、具体的には、前記プリプレグを8~16枚積層した後、予め110~160℃に加熱した金型に投入し、圧縮成形機にて型締めを行い、プリプレグを賦型させ、0.1~10MPaの成形圧力を保持することによって、プリプレグを硬化させ、その後、成形品を取り出し、得る方法等が用いられる。この場合、シェアエッジを有する金型内で金型温度120~160℃にて、成形品の厚さ1mm当たり1~2分間で、1~8MPaの成形圧力を保持し、加熱圧縮成形する製造方法を用いることができる。
【実施例】
【0058】
以下に本発明を具体的な実施例を挙げて、より詳細に説明する。
【0059】
<樹脂組成物の初期粘度(20℃)>
混合直後の樹脂組成物をサンプリングする。次いで、JIS K7117-1に基づき、ブルックフィールド粘度計にて、20℃における粘度を測定した。なお、前記樹脂組成物の初期粘度(20℃)として、取り扱い性や作業性、含浸性の観点から、300mPa・s~50,000mPa・sであることが好ましく、500mPa・s~30,000mPa・sであることがより好ましい。
【0060】
<可使時間の測定>
炭素繊維に含浸させる前の混合直後の樹脂組成物をサンプリングする。次いで、レオメーター(動的粘弾性装置)で25℃の条件下での粘度測定を行い、粘度が2倍になるまでの時間(可使時間)を測定し、評価した。なお、可使時間としては、25℃の条件下で樹脂組成物の混合直後から粘度が2倍になるまでの時間が12分以上であることが好ましい。12分以上であることにより、樹脂組成物のポットライフを十分に確保することができ、作業性、取り扱い性に優れ、有用である。
【0061】
<プリプレグの単位面積当たりの質量(目付)測定>
プリプレグを加工長さの10%毎のサンプリング間隔で50cm長サイズにカットし、次いで、カットしたプリプレグの炭素繊維端から左右内側10mmの位置をカットし、精密天秤で質量を測定し、評価した。なお、目付については、加工長の10%毎に、サンプリングを行い、その質量の平均(n=3)値が、±3%以内であることが好ましく、±2.5%以内であることがより好ましく、±2%以内であることが更に好ましい。±3%に調製されることで、質量のバラツキが抑えられ、製品安定性に優れ、有用である。
【0062】
(調製例1)
ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物(東ソー株式会社製「ミリオネートMR-200」)50質量部と、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート50質量部と、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)66質量部と、ニューポールBPE-20(三洋化成株式会社製:ビスフェノールAのEO付加物、水酸基当量;164g/eq)25質量部と、ニューポールBPE-40(三洋化成株式会社製:ビスフェノールAのEO付加物、水酸基当量;204g/eq)31質量部と、重合開始剤(化薬ヌーリオン株式会社「カヤエステルTMPO-70」、有機過酸化物、1,1,3,3-テトラメチルブチルパ-オキシ-2-エチルヘキサノエート、10時間半減期温度65℃)3質量部、アミン触媒(東ソー株式会社「TOYOCAT DB-30」)0.03質量部を混合し、プリプレグ用樹脂組成物(1)を得た。前記樹脂組成物(1)の初期粘度(20℃)は3000mPa・sであり、可使時間は、約14分であった。
【0063】
(調製例2)
ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物(東ソー株式会社製「ミリオネートMR-200」)50質量部と、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート50質量部と2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)66質量部と、ニューポールBPE-20(三洋化成株式会社製:ビスフェノールAのEO付加物、水酸基当量;164g/eq)25質量部と、ニューポールBPE-40(三洋化成株式会社製:ビスフェノールAのEO付加物、水酸基当量;204g/eq)31質量部と、重合開始剤(化薬ヌーリオン株式会社「カヤエステルTMPO-70」、有機過酸化物、1,1,3,3-テトラメチルブチルパ-オキシ-2-エチルヘキサノエート、10時間半減期温度65℃)3質量部、アミン触媒(サンアプロ株式会社「U-CAT SA1」)0.03質量部を混合し、プリプレグ用樹脂組成物(2)を得た。前記樹脂組成物(2)の初期粘度(20℃)は2500mPa・sであり、可使時間は、約15分であった。
【0064】
[実施例1]
プリプレグ用樹脂組成物(1)を離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に塗布した後、炭素繊維(東レ社製「T-700-12K-50C」)を炭素繊維含有量が50質量%となるように25℃で含浸させ、同じフィルムをかぶせた後、70℃3分間の加熱ラインを通して巻取りを行い、プリプレグ(1)300mを得た。単位面積当たりの質量は、加工長300mの中で±2.5%以内であった。
【0065】
[実施例2]
プリプレグ用樹脂組成物(2)を離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に塗布した後、炭素繊維(東レ社製「T-700-12K-50C」)を炭素繊維含有量が50質量%となるように25℃で含浸させ、同じフィルムをかぶせた後、70℃3分間の加熱ラインを通して巻取りを行い、プリプレグ(2)300mを得た。単位面積当たりの質量は、加工長300mの中で±2.5%以内であった。
【0066】
(調製例3)
ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物(東ソー株式会社製「ミリオネートMR-200」)50質量部と、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート50質量部と2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)66質量部と、ニューポールBPE-20(三洋化成株式会社製:ビスフェノールAのEO付加物、水酸基当量;164g/eq)25質量部と、ニューポールBPE-40(三洋化成株式会社製:ビスフェノールAのEO付加物、水酸基当量;204g/eq)31質量部と、重合開始剤(化薬ヌーリオン株式会社「カヤエステルTMPO-70」、有機過酸化物、1,1,3,3-テトラメチルブチルパ-オキシ-2-エチルヘキサノエート、10時間半減期温度65℃)3質量部を混合し、プリプレグ用樹脂組成物(3)を得た。その樹脂組成物(3)の初期粘度(20℃)は2500mPa・sであり、可使時間は、約20分であった。
【0067】
(調製例4)
ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートと4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物(東ソー株式会社製「ミリオネートMR-200」)50質量部と、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート50質量部と2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)66質量部と、ニューポールBPE-20(三洋化成株式会社製:ビスフェノールAのEO付加物、水酸基当量;164g/eq)25質量部と、ニューポールBPE-40(三洋化成株式会社製:ビスフェノールAのEO付加物、水酸基当量;204g/eq)31質量部と、重合開始剤(化薬ヌーリオン株式会社「トリゴノックス122-80C」、有機過酸化物、1,1-ジ(tert-アミルパーオキシ)シクロヘキサン、10時間半減期温度93℃)3質量部、錫触媒(日東化成株式会社「ネオスタンU-830」)0.02質量部を混合し、プリプレグ用樹脂組成物(4)を得た。その樹脂組成物(4)の初期粘度(20℃)は3000mPa・sであり、可使時間は、約5分であった。
【0068】
[比較例1]
プリプレグ用樹脂組成物(3)を離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に塗布した後、炭素繊維(東レ社製「T-700-12K-50C」)を炭素繊維含有量が50質量%となるように25℃で含浸させ、同じフィルムをかぶせた後、70℃3分間の加熱ラインを通して巻取りを行い、プリプレグ(3)300mを得た。単位面積当たりの質量は、加工長300mの中で±4%以内であったが、±3%以内を超える結果であった。
【0069】
[比較例2]
プリプレグ用樹脂組成物(4)を離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に塗布した後、炭素繊維(東レ社製「T-700-12K-50C」)を炭素繊維含有量が50質量%となるように25℃で含浸させ、同じフィルムをかぶせた後、70℃3分間の加熱ラインを通して巻取りを行ったが、プリプレグ(4)10mを得た時点で増粘により塗布が不可能となり、ラインを停止した。
【0070】
上記評価結果より、実施例1及び2においては、所望の樹脂組成物を用いてプリプレグを作製したことで、前記樹脂組成物の粘度上昇を抑えることができ、プリプレグ自体の製品目付が安定し、取り扱い性、及び、製品安定性に優れることが確認できた。
一方、比較例1では、アミン触媒を使用せずにプリプレグを作製したことで、実施例と比較して触媒の不使用により、可使時間が長くなったが、製品目付のバラツキが大きく、製品安定性に劣ることが確認された。また、比較例2では、アミン触媒の代わりに、金属触媒である錫触媒を使用したところ、加熱ラインを通過後、粘度が急上昇し、増粘したため、炭素繊維への含浸(塗布)作業が困難となり、取り扱い性や製品安定性に劣ることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、樹脂組成物(溶液)を調製後、増粘を抑えることができ、加熱工程後、安定した製品目付のプリプレグが得られるため、作業性、及び、製品安定性に優れ、成形不良の発生を抑制し、作業性、及び、取り扱い性に優れる成形品を得られることから、自動車部材、鉄道車両部材、航空宇宙機部材、船舶部材、住宅設備部材、スポーツ部材、軽車両部材、建築土木部材、OA機器等の筐体等に用いることができ、特に、住宅設備部材、建築土木部材等の使用に好適である。
【要約】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)、重合開始剤(B)、及び、アミン触媒(C)を含有する樹脂組成物、並びに、強化繊維(D)を含有するプリプレグであって、前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、及び、ジフェニルメタンジイソシアネートを含有するポリイソシアネート化合物(a1)と、水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含有する水酸基を有する化合物(a2)との反応物であることを特徴とするプリプレグを提供する。このプリプレグは、作業性、及び、製品安定性に優れ、成形不良の発生を抑制し、作業性、及び、取り扱い性に優れる成形品を得られることから、自動車部材、鉄道車両部材、航空宇宙機部材、船舶部材、住宅設備部材、スポーツ部材、軽車両部材、建築土木部材、OA機器等の筐体等に用いることができる。