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特許7197304イオン注入装置及び半導体デバイスの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】イオン注入装置及び半導体デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/317 20060101AFI20221220BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20221220BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20221220BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20221220BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20221220BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20221220BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20221220BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20221220BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H01J37/317 A
H01L21/265 603D
H01L21/265 V
H01L21/265 603B
H01L21/265 T
H01L21/265 F
H01L21/265 J
H01L21/265 Z
H01L29/91 F
H01L29/91 D
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/91 A
H01L29/78 653A
H01L29/78 655B
H01L29/78 658A
H01L29/78 658H
H01L29/78 652H
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018148458
(22)【出願日】2018-08-07
(65)【公開番号】P2019046793
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2021-05-13
(31)【優先権主張番号】10 2017 117 999.2
(32)【優先日】2017-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501209070
【氏名又は名称】インフィネオン テクノロジーズ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】INFINEON TECHNOLOGIES AG
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シュスターレダー, ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】イェリネク, モーリッツ
(72)【発明者】
【氏名】シュルツェ, ハンス-ヨアヒム
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-070886(JP,A)
【文献】特開平02-172151(JP,A)
【文献】特開昭62-088249(JP,A)
【文献】特表2016-530712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37
H01L 21
H01L 29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦型パワー半導体デバイス製造用の注入装置であって、
第1の方向に沿って、また前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って、イオンビームと半導体基板との間の相対的な移動をもたらすように構成された走査制御アセンブリと、
前記イオンビームのビーム軸と前記半導体基板の主面に対する垂線との間の傾斜角θを、第1の傾斜角θ1から第2の傾斜角θ2に変化させるように構成された傾斜アセンブリであって、前記第1の傾斜角θ1と前記第2の傾斜角θ2との間の角度スパンΔθは少なくとも5°であり、掃引がθ1=0°からθ2まで、その後θ2からθ1=0°までなされる、傾斜アセンブリと、
前記傾斜アセンブリを制御して、前記イオンビームと前記半導体基板との間の前記相対的な移動の間に、前記傾斜角θを連続的に変化させるように構成された制御ユニットとを備え、前記注入装置は、前記半導体基板の深さ範囲に亘ってほぼ均一な垂直ドーパントプロファイルで前記縦型パワー半導体デバイスのドリフトゾーンを形成するように構成される、注入装置。
【請求項2】
前記走査制御アセンブリは、前記第1の方向に沿って、また前記第2の方向に沿って、前記イオンビームを偏向させるように構成された偏向ユニットを備える、請求項1に記載の注入装置。
【請求項3】
前記第1の方向に沿った走査速度は、前記第2の方向に沿った走査速度よりも速く、前記制御ユニットは、前記第2の方向に沿った前記イオンビームの複数の上方及び下方への掃引を含む単一のイオン注入処理の間に、前記角度スパンΔθだけ前記傾斜角θを変化させるように構成される、請求項2に記載の注入装置。
【請求項4】
前記走査制御アセンブリは、i)前記第1の方向に沿って前記イオンビームを偏向させるように構成された偏向ユニットと、ii)前記第2の方向に沿って前記半導体基板を移動させるように構成されたステージアセンブリとを備える、請求項1に記載の注入装置。
【請求項5】
前記制御ユニットは、前記傾斜角θの関数として前記イオンビームのドーズ量を変化させるように構成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の注入装置。
【請求項6】
窒素、アルミニウム、ヒ素、リン、ホウ素、セレン8、ゲルマニウム、酸素、及び硫黄イオンのうちの少なくとも1つから前記イオンビームを生成するように構成されたイオン源を更に備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の注入装置。
【請求項7】
縦型パワー半導体デバイスを製造する方法であって、
半導体基板の主面上にイオンビームを向けるステップであって、前記半導体基板と前記イオンビームとの間の相対的な移動により、前記イオンビームが前記主面を走査することになる、ステップと、
前記相対的な移動の間に、前記イオンビームのビーム軸と前記主面に対する垂線との間の傾斜角θを、第1の傾斜角θ1から第2の傾斜角θ2に連続的に変化させて、前記半導体基板の深さ範囲に亘ってほぼ均一な垂直ドーパントプロファイルで前記縦型パワー半導体デバイスのドリフトゾーンを形成するステップであって、前記第1の傾斜角θ1と前記第2の傾斜角θ2との間の角度スパンΔθは少なくとも5°であり、掃引がθ1=0°からθ2まで、その後θ2からθ1=0°までなされる、ステップと、
を含む方法。
【請求項8】
偏向ユニットが、前記イオンビームを水平な第1の方向に沿って、また前記第1の方向に対して傾斜した水平な第2の方向に沿って偏向させる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
偏向ユニットが、前記イオンビームを水平な第1の方向に沿って偏向させ、ステージアセンブリが、前記半導体基板を前記第1の方向に対して傾斜した水平な第2の方向に沿って移動させる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の方向に沿った走査速度は、前記第2の方向に沿った走査速度よりも速くなるように設定され、前記傾斜角θは、前記第2の方向に沿った前記イオンビームの複数の上方及び下方への掃引を含む単一のイオン注入処理の間に、前記角度スパンΔθにわたって変動する、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記イオンビームの注入ドーズ量D(θ,t)は、前記傾斜角θ(t)の関数として制御される、請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
D(θ,t)=D0/cos(θ(t))であり、D0はθ=0°での前記注入ドーズ量に等しい、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記半導体基板は炭化ケイ素結晶を含む、請求項7から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記イオンビームを前記半導体基板に向ける前に、前記主面上に注入マスクを形成するステップを更に含む、請求項7から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記イオンビームは酸素イオンを含んでおり、注入された酸素を含有する前記半導体基板の部分は埋め込み酸化ケイ素層に変換され、前記方法は前記主面上にエピタキシャル層を成長させるステップを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
縦型パワー半導体デバイス製造用の注入装置であって、
第1の方向に沿って、また前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って、イオンビームと半導体基板との間の相対的な移動をもたらすように構成された走査制御アセンブリと、
前記イオンビームのビーム軸と前記半導体基板の主面に対する垂線との間の傾斜角θを、第1の傾斜角θ1から第2の傾斜角θ2に変化させるように構成された傾斜アセンブリであって、前記第1の傾斜角θ1と前記第2の傾斜角θ2との間の角度スパンΔθは少なくとも5°であり、掃引がθ1からθ2=-θ1まで、その後θ2=-θ1からθ1までなされる、傾斜アセンブリと、
単一のイオン注入処理中に前記傾斜アセンブリ及び前記走査制御アセンブリを制御して、前記第2の方向に沿って、異なる傾斜角で連続的な掃引を実行するように構成された制御ユニットと、を備え、前記注入装置は、前記半導体基板の深さ範囲に亘ってほぼ均一な垂直ドーパントプロファイルで前記縦型パワー半導体デバイスのドリフトゾーンを形成するように構成される、注入装置。
【請求項17】
前記イオンビームのイオンを加速させるように構成された加速ユニットを更に備え、前記制御ユニットは、単一のイオン注入処理中に前記加速ユニットを制御して、前記第2の方向に沿った異なる傾斜角での連続的な掃引同士の間に、前記イオンの加速度を変動させるように更に構成される、請求項16に記載の注入装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
半導体デバイスの幾つかのパラメータが、垂直ドーパントプロファイルの特性と関連していることがある。例えば、正面側の第1の負荷電極と半導体ダイの背面側の第2の負荷電極との間の負荷電流を制御する縦型パワー半導体デバイスは、特定の垂直ドーパントプロファイルを有するドリフト領域、補償構造、バッファ層、及びフィールドストップ層などの、ドープされた領域を含んでおり、均一性、平滑さ、及びうねりなどの、関係する層の垂直ドーパントプロファイルのパラメータは、デバイスのパラメータに大きな影響を及ぼすことがある。エピタキシー又は堆積によるドーパントの導入と比べると、イオン注入は、総ドーズ量及びドーズ率の両方を正確に監視することが可能である。イオン注入は、通常、エンド・オフ・レンジ・ピーク(end-off-range-peak)を中心としたドーパントのガウス状分布をもたらし、エンド・オフ・レンジ・ピークと基板表面との距離は、注入されたイオンの加速エネルギーの関数になる。ドーパントイオンの拡散係数が高い半導体結晶では、熱処理により、注入されたドーパントを拡散させ、垂直注入プロファイルを広げる。ドーパントイオンの拡散係数が低い半導体結晶では、又は拡散に対する最大許容サーマルバジェットが制限されている場合には、イオン注入処理は、垂直ドーパントプロファイルを広げるための幾つかの手段によって適合されることがある。
【0002】
垂直ドーパントプロファイルの形状に関して、低処理コストでより高い柔軟性をもたらすドーピング方法及び装置が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、走査制御アセンブリ、傾斜アセンブリ、及び制御ユニットを含む注入装置に関する。走査制御アセンブリは、第1の水平方向に沿って、また第1の水平方向に直交する第2の水平方向に沿って、イオンビームと半導体基板との間の相対的な移動をもたらす。傾斜アセンブリは、イオンビームのビーム軸と半導体基板の主面に対する垂線との間の傾斜角θを、第1の角度θ1から第2の角度θ2に変化させるように構成され、第1の傾斜角θ1と第2の傾斜角θ2との間の角度スパンΔθは少なくとも5°である。制御ユニットは、イオンビームと半導体基板との間の相対的な移動の間に、傾斜アセンブリを制御して傾斜角θを連続的に変化させるように、構成される。
【0004】
本開示は更に、イオン注入方法に関する。イオンビームは、半導体基板の主面に向けられ、半導体基板とイオンビームとの間の相対的な移動により、イオンビームが主面を走査することになる。この相対的な移動の間に、イオンビームのビーム軸と主面に対する垂線との間の傾斜角θは、第1の傾斜角θ1から第2の傾斜角θ2に連続的に変化し、第1の傾斜角θ1と第2の傾斜角θ2との間の角度スパンΔθは少なくとも5°である。
【0005】
本開示は更に、走査制御アセンブリ、傾斜アセンブリ、及び制御ユニットを含む別の注入装置に関する。走査制御アセンブリは、第1の方向に沿って、また第1の方向に直交する第2の方向に沿って、イオンビームと半導体基板との間の相対的な移動をもたらす。傾斜アセンブリは、イオンビームのビーム軸と半導体基板の主面に対する垂線との間の傾斜角θを、第1の傾斜角θ1から第2の傾斜角θ2に変化させ、第1の傾斜角θ1と第2の傾斜角θ2との間の角度スパンΔθは少なくとも5°である。制御ユニットは、単一のイオン注入処理の間に傾斜アセンブリ及び走査制御アセンブリを制御して、第2の方向に沿って、(異なる傾斜角で)連続的な掃引を実行する。
【0006】
更なる実施形態が、従属請求項に記載される。当業者であれば、以降の詳細な説明を読むことにより、また、添付の図面を参照することにより、更なる特徴及び利点を認識するであろう。
【0007】
添付の図面は、本実施形態の更なる理解を提供するために含められるものであり、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部をなす。図面は、本実施形態を図示しており、説明文と共に、実施形態の原理を説明するようにはたらく。以降の詳細な説明を参照することにより、更なる実施形態及び意図された利点が、より良く理解されるので、それらの更なる実施形態及び意図された利点は、容易に認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】傾斜アセンブリが、半導体基板の主面と主面上を走査するイオンビームとの間の傾斜角を、走査中のその傾斜角での連続掃引に関連した実施形態に従って、変化させる注入装置の概略ブロック図である。
図2】2つの直交する方向での静電式ビーム偏向に関連した実施形態による、走査制御アセンブリの概略ブロック図である。
図3】ビーム偏向を機械式走査と組み合わせた実施形態による、走査制御アセンブリの概略ブロック図である。
図4図1に示した注入装置に基づく実施形態による、注入方法の簡略化された流れ図である。
図5A】実施形態の効果を考察するために、シリコン結晶における陽子の投影飛程を傾斜角の関数としてプロットした図である。
図5B】実施形態の効果を考察するために、シリコン結晶におけるリンイオンの投影飛程を傾斜角の関数としてプロットした図である。
図5C】実施形態の効果を考察するために、シリコン結晶におけるホウ素イオンの投影飛程を傾斜角の関数としてプロットした図である。
図5D】実施形態の効果を考察するために、炭化ケイ素結晶における窒素イオンの投影飛程を傾斜角の関数としてプロットした図である。
図6A】傾斜アセンブリが、半導体基板の主面と主面上を走査するイオンビームとの間の傾斜角を、第1の方向に沿った連続的な走査の間での傾斜角の段階的な変更に関連した実施形態に従って、変化させる注入装置の概略ブロック図である。
図6B図1の注入装置のイオンビームの第1の方向に沿った偏向及び傾斜角についての概略的なタイムチャートである。
図7図6Aに示した注入装置に関連した実施形態による、注入方法の簡略化された流れ図である。
図8A】第1のエピタキシャル層を形成した後の、ドリフト層の形成に関連した実施形態に従って、走査中に注入角度を変化させることを含む半導体デバイスの製造方法を説明するための、半導体基板の一部の概略的な縦断面図である。
図8B】変化する注入角度でのイオン注入中の、図8Aの半導体基板部分の概略的な縦断面図である。
図8C】イオン注入後の図8Bの線C-Cに沿った垂直ドーパントプロファイルを示す概略図である。
図9A】第1のイオン注入後で、また第2のエピタキシャル層を形成した後の、厚いドリフト層の形成に関連した実施形態に従って、走査中に注入角度を変化させることを含む半導体デバイスの製造方法を説明するための、半導体基板の一部の概略的な縦断面図である。
図9B】変化する注入角度での第2のイオン注入中の、図9Aの半導体基板部分の概略的な縦断面図である。
図9C】第2のイオン注入後の図9Bの線C-Cに沿った垂直ドーパントプロファイルを示す概略図である。
図10A】吸収層を形成した後の、主面に対して短い距離で形成されたドリフト層に関連した半導体デバイスの製造方法を説明するための、半導体基板の一部の概略的な縦断面図である。
図10B】吸収層を介したイオン注入中の、図10Aの半導体基板部分の概略的な縦断面図である。
図10C】イオン注入後の図10Bの線C-Cに沿った垂直ドーパントプロファイルを示す概略図である。
図11A】第1のエピタキシャル層を形成した後の、低濃度にドープされたドリフト層と隣接するより高濃度にドープされたフィールドストップ又は電荷補償層との組み合わせ形成に関連した実施形態に従って、走査中に注入角度を変化させることを含む半導体デバイスの製造方法を説明するための、半導体基板の一部の概略的な縦断面図である。
図11B】変化する注入角度及び変化する注入ドーズ量でのイオン注入中の、図11Aの半導体基板部分の概略的な縦断面図である。
図11C】イオン注入後の図11Bの線C-Cに沿った垂直ドーパントプロファイルを示す概略図である。
図12A】半導体ダイオードに関連した実施形態による、変化する注入角度でのイオン注入によって規定されるドーピングによるドリフト領域を含む半導体デバイスの概略的断面図である。
図12B】半導体スイッチに関連した実施形態による、変化する注入角度でのイオン注入によって規定されるドーピングによるドリフト領域を含む半導体デバイスの概略的断面図である。
図12C】連続的に又は段階的に変化する注入角度での陽子注入によって形成されるフィールドストップ領域に関連した実施形態による、線C-Cに沿った、図12A又は図12Bの半導体デバイスの垂直ドーパントプロファイルの一部を示す概略図である。
図13】変化する注入角度でのイオン注入中の、深いエミッタ層の形成に関連した半導体デバイスの製造方法を説明するための、半導体基板の一部の概略的な縦断面図である。
図14A図13の半導体基板から得られる半導体デバイスの概略的な縦断面図である。
図14B図14Aの線C-Cに沿った垂直ドーパントプロファイルを示す概略図である。
図15A】変化する注入角度でのアクセプタのイオン注入中の、超接合デバイスに関連した実施形態による、半導体デバイスの製造方法を説明するための、半導体基板の一部の概略的な縦断面図である。
図15B】変化する注入角度でのドナーのイオン注入中の、図15Aの半導体基板部分の概略的な縦断面図である。
図15C図15Bの半導体基板部分に延びる溝を形成した後の、図15Bの半導体基板部分の概略的な縦断面図である。
図15D】溝を半導体材料で充填した後の、図15Cの半導体基板部分の概略的な縦断面図である。
図15E】加熱処理後の、図15Dの半導体基板部分の概略的な縦断面図である。
図16A】変化する注入角度でのイオン注入によって規定される超接合構造に関連した実施形態による、半導体デバイスの一部の概略的な縦断面図である。
図16B図16Aの線B-Bに沿った概略的な水平ドーパントプロファイルである。
図16C図16Aの線C-Cに沿った概略的な垂直ドーパントプロファイルの一部である。
図16D図16Aの線D-Dに沿った概略的な垂直ドーパントプロファイルの一部である。
図17A】変化する注入角度でのゲルマニウムの注入中の、シリコン基材上でのゲルマニウム層の形成に関連した実施形態による、半導体デバイスの製造方法を説明するための、半導体基板の一部の概略的な縦断面図である。
図17B図17Aの線B-Bに沿った垂直ゲルマニウム濃度プロファイルを示す概略図である。
図18A】変化する注入角度でのゲルマニウムの注入中の、シリコン基材上でのゲルマニウム層の形成に関連した別の実施形態による、半導体デバイスの製造方法を説明するための、半導体基板の一部の概略的な縦断面図である。
図18B図18Aの線B-Bに沿った垂直ゲルマニウム濃度プロファイルを示す概略図である。
図19】変化する注入角度でのイオン注入によって規定される応力緩和層に関連した実施形態による、半導体デバイスの一部の概略的な縦断面図である。
図20A】注入マスクを形成した後の、埋め込み酸化物層の形成に関連した実施形態による、半導体デバイスの製造方法を説明するための、半導体基板の一部の概略的な平面図である。
図20B】酸素イオンの注入中の、図20Aの半導体基板部分の概略的な縦断面図である。
図20C】酸素注入マスクを除去した後の、図20Bの半導体基板部分の概略的な縦断面図である。
図20D】エピタキシャル層を形成した後の、図20Cの半導体基板部分の概略的な縦断面図である。
図20E】格子状のマスク開口部を使用する実施形態による、半導体基板の一部の概略的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以降の詳細な説明では、添付の図面への参照がなされ、添付の図面は本明細書の一部を形成し、また図面では、実施することができる具体的な実施形態が例として示される。本開示の範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用することができ、構造的又は論理的変更を加えることができることを、理解されたい。例えば、ある実施形態に対して図示又は説明された特徴は、他の実施形態で使用されるか又は他の実施形態と併せて使用されて、更なる実施形態をもたらすことができる。本開示は、そのような修正例及び変形例を含むことが意図されている。例は、特定の専門用語を用いて説明されているが、このことは、添付の特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。図面は縮尺通りに描かれてはおらず、説明のためのみのものである。特段の断りがない限り、異なる図面において、対応する要素は同じ参照符号によって示されている。
【0010】
「有する(having)」、「含む(containing)」、「含む(including)」、「含む(comprising)」などの用語はオープンであり、これらの用語は記載された構造、要素、又は特徴が存在することを示すが、追加の要素又は特徴を排除するものではない。冠詞「a」、「an」、及び「the」は、文脈がそうではないことを明示しない限り、単数に加えて複数を含むことが意図されている。
【0011】
「電気的に接続された」という用語は、電気的に接続された素子同士の間の永続的な低抵抗の接続、例えば、関連する素子間の直接的な接触、又は、金属及び/若しくは高濃度にドープされた半導体材料を介した低抵抗接続などを表す。「電気的に結合された」という用語は、電気的に結合された素子同士の間に、信号伝送のために適合された1つ又は複数の介在素子、例えば、第1の状態では低抵抗の接続を一時的に提供し、第2の状態では高抵抗の電気的減結合を一時的に提供するように制御可能な素子など、が存在することがあるということを含む。
【0012】
図は、ドーピングタイプ「n」又は「p」の次に「-」又は「+」を示すことによって、相対的なドーピング濃度を示す。例えば、「n-」は、「n」ドーピング領域のドーピング濃度よりも低いドーピング濃度を意味し、一方、「n+」ドーピング領域は、「n」ドーピング領域よりも高いドーピング濃度を有する。同じ相対的ドーピング濃度のドーピング領域は、必ずしも同じ絶対的なドーピング濃度を有するとは限らない。例えば、2つの異なる「n」ドーピング領域は、同じか又は異なる絶対的なドーピング濃度を有することがある。
【0013】
図1は、イオン、例えば、陽子、又は4よりも大きな原子番号を有するイオン、例えば、窒素、アルミニウム、ホウ素、リン、ヒ素、硫黄、セレン、ゲルマニウム、又は酸素などのイオンを生成し放出するイオン源905を含むイオン注入装置900を示す。加速ユニット920は、選択されたタイプのイオンを加速し、他のイオンを取り除くことができる。コリメーターユニット930は、イオンの動きの方向をビーム軸912と平行な向きに整列させることができ、平行化されたイオンビーム910を半導体基板700上に向けることができ、半導体基板700は、一時的に固定されている、例えば、基板ホルダ980上に静電的にチャックされていることがある。ビーム軸912と直交する平面では、平行化されたイオンビーム910のイオン分布は、ビーム中心に対して点対称であることがある。
【0014】
イオンビーム910の断面積は、数百平方マイクロメートルから数平方センチメートル程度であることがある。走査制御アセンブリ950が、半導体基板700の主面701上でビームトラック911に沿ってイオンビーム910を走査して、半導体基板700全体に渡ってイオンを均一に分配する。ビームトラック911は、直線部分を含むことがあり、又は円を形成することがあり、又は螺旋を形成することがある。
【0015】
走査制御アセンブリ950は、例えば偏向ユニット955による静電場によって、又は例えばステージアセンブリ956による基板ホルダ980の機械的な移動によって、又はその両方の組み合わせによって、走査を制御することができ、走査制御アセンブリ950は、2つの直交方向に基づいてイオンビーム910と半導体基板700との間の相対的な移動を制御する。2つの直交方向は、2つの直線方向か、又は1つの回転方向及び1つの半径方向であることがある。2つの方向に沿った静電場走査に基づく図1の走査制御アセンブリ950のより詳細な図示及び説明が、図2に示されている。この場合、両方の方向に沿った典型的な走査周波数は、kHzの範囲内である。最適な均一性及び走査速度のために、偏向パターンが選択されることがある。例として、偏向パターンは、第1の方向での上方及び下方への掃引を含むことがある。第1の方向での各終点において、第2の方向における位置がインクリメントされる。第2の方向における終点に到達すると、第2の方向におけるシフトが適用されることがある。次いで、この基本パターンは、第1の方向に上下に移動し、第2の方向における位置をデクリメントすることによって、反転される。従って、第1の方向に沿った走査周波数は、第2の方向における1つの掃引のインクリメントの数に応じて、第2の方向での走査周波数に比べて大きい。静電場走査及び機械式走査の組み合わせに基づく図1の走査制御アセンブリ950のより詳細な図示及び説明が、図3に示されている。この場合、第1の方向に沿った静電場走査の典型的な走査周波数はkHzの範囲内であり、第2の方向に沿った機械式走査の典型的な走査速度は、cm/sの範囲内である。
【0016】
イオン注入装置900は、更に傾斜アセンブリ960を含み、傾斜アセンブリ960は、主面701に対する垂線704とイオンビーム910のビーム軸912との間の傾斜角θを、単一のイオン注入処理中に、第1の傾斜角θ1と第2の傾斜角θ2との間で変化させる。単一のイオン注入処理とは、単一の注入レシピに基づいており、また、例えば、注入レシピを変更するための調節期間によって中断されることのない、イオン注入処理である。従って、傾斜角の変更は、単一の注入レシピの一部である。第1の傾斜角θ1と第2の傾斜角θ2との間の角度スパンΔθは、少なくとも5°、例えば45°である。第1の傾斜角θ1及び第2の傾斜角θ2は、ビーム軸912に対して互いに対称である、即ち、θ2=-θ1であることがある。別の実施形態によれば、第1の傾斜角θ1及び第2の傾斜角θ2は、ビーム軸912に対して非対称であり、例えば、θ1=0°であることがある。
【0017】
制御ユニット990は、傾斜角θの変化が、第1及び第2の方向に沿った走査のうちの少なくとも一方と同期するように、走査制御アセンブリ950及び傾斜アセンブリ960を制御することがある。
【0018】
半導体基板700の内部では、注入されたイオンは、投影飛程の周囲の領域で静止し、主面701に直交する垂直方向に沿った投影飛程の両側で密度が低下するようになる。注入されたイオンの投影飛程は、傾斜角θが増加するにつれ減少し、その結果、傾斜角θの連続的な掃引は、主面701に直交する垂直方向に沿った半導体基板700内の投影飛程の連続的な掃引をもたらす。
【0019】
単一の注入レシピの走査中の傾斜角θの連続的な変化は、垂直ドーパントプロファイルの制御を向上させ、垂直ドーパントプロファイルを規定するための更なる自由度を提供する。例えば、比較的に高い拡散係数を有する半導体基板700では、傾斜角θの連続的な変化により、拡散によって垂直ドーパントを拡大し平滑化するためのサーマルバジェットが低下する。低い拡散係数を有する半導体基板700の場合には、傾斜角θの連続的な変化により、精緻な代替物を置き換えることができる。傾斜角は、現在の注入角度を規定する。
【0020】
傾斜角θの変化を複数の走査のうちの少なくとも1つ、例えばより遅い走査速度を有する走査と同期させることで、半導体基板700全体に渡る注入プロファイルの均一性を向上させることができる。
【0021】
更に、制御ユニット990は、イオンビーム910のドーズ量D(t)を、傾斜角θの関数として制御することがある。例えば、ドーズ量D(t)の増加は、0°からの傾斜角θの偏差が増加すると、イオンビーム910が主面701のより広い部分領域に渡って分布することに起因してドーズ量が減少するのを、補償することができる。
【0022】
傾斜角θ及びドーズ量D(θ)の適切な変動は、垂直ドーパントプロファイルを用途特有の特徴にあわせて調節するのを改善することにつながる。例えば、連続的に変化する注入角度を有する注入処理は、1μm超の厚さを有する比較的に厚い均一にドープされた層を形成するための、より精度の低いエピタキシー処理を置き換えることができる。
【0023】
異なるドーパント濃度の垂直に積み重ねられた層間の遷移は、従来の技術によるものよりも、より滑らかに又はより鮮明に規定されることができる。拡散によってドーパントプロファイルを平滑化する方法と比べると、連続的に掃引する注入角度での傾斜注入は、注入後に適用されるより低い温度バジェットと適合することができる。
【0024】
別の実施形態によれば、制御ユニット990は一定の加速エネルギーを提供し、単一のイオン注入処理中に傾斜角θが変化する注入は、幾つかの注入レシピ、即ち、異なる加速エネルギーレベルでの幾つかのイオン注入処理、を処理する場合と同様の結果を達成することができる。従って、加速エネルギーの変更は不要であり、それによって、イオン注入装置900の加速エネルギーを、新たな加速エネルギーレベル毎に再較正する調節サイクルの必要性が省かれる。
【0025】
傾斜角θを増加させると、注入深さの下限が小さくなることにつながる。例えば、イオン注入器の設計によっては、100keV未満の加速エネルギーでは十分なイオンビーム電流を供給できないことがある。傾斜角θを約60°に増加させることにより、最小の注入深さは、同じ加速エネルギーでの直交注入に対する投影飛程よりも、はるかに小さな投影飛程に低減されることがある。
【0026】
図2は、イオンビーム910を偏向させるための偏向ユニット955を含む走査制御アセンブリ950を示す。イオンビーム910は、直線の第1の方向951に沿ってイオンビーム910を偏向させる一対の第1の偏向電極953の間の領域を横切る。次いで、イオンビーム910は、図面に直交する直線の第2の方向952に沿ってイオンビーム910を偏向させる、一対の第2の偏向電極954を通過する。偏向ユニット955の電場は、半導体基板700の主面701全体に渡ってイオンビーム910を掃引する。2つの走査速度のうちの一方は、例えば、10~100倍の範囲だけ、他方よりも速いことがある。傾斜アセンブリ960は、ビーム軸912の断面平面に対して傾斜角θだけ、基板ホルダ980を傾斜させることができ、傾斜角θは、イオン注入処理中に時間の経過と共に連続的に変化することがある。
【0027】
図3のハイブリッド走査制御アセンブリ950は、偏向ユニット955及びステージアセンブリ956を含み、偏向ユニット955は、図面と直交する直線の第1の方向951にイオンビーム910を静電的に走査し、ステージアセンブリ956は、第1の方向951に直交する直線の第2の方向952に基板ホルダ980を移動させる。
【0028】
図4は、図1の注入装置900を使用することができる半導体デバイスの製造方法に関する。イオンビームは、半導体基板の主面に向けられ(992)、半導体基板とイオンビームとの間の相対的な移動により、イオンビームが主面を完全に走査することになる。この相対的な移動の間に、イオンビームのビーム軸912と主面に対する垂線との間の傾斜角θは、第1の傾斜角θ1から第2の傾斜角θ2に変化し、第1の傾斜角θ1と第2の傾斜角θ2との間の角度スパンΔθは少なくとも5°、例えば少なくとも40°である(994)。
【0029】
図5A図5Dは、幾つかのイオンの投影飛程p(θ)を、主面に対する垂線とイオンビームのビーム軸との間の傾斜角θの関数として示す。
【0030】
図5Aによれば、シリコンにおける2.5MeVの運動エネルギーを有する陽子の投影飛程は、θ=0で約68μmからθ=60°で約35μmまで減少する。
【0031】
図5Bによれば、2.5MeVの注入エネルギーでのシリコン中のリンイオンの投影飛程p(θ)は、θ=0で約2.0μmからθ=60°で約1.0μmまで低下する。
【0032】
図5Cは、シリコン中に2.5MeVの注入エネルギーで注入されたホウ素イオンの投影飛程p(θ)が、θ=0で約3.3μmからθ=60°で約1.7μmまで低下することを示す。
【0033】
図5Dによれば、炭化ケイ素結晶中に4.0MeVの加速エネルギーで注入された窒素イオンの投影飛程p(θ)は、θ=0で約2.4μmからθ=60°で約1.2μmまで低下する。
【0034】
図6Aのイオン注入装置900は、傾斜アセンブリ960を含み、傾斜アセンブリ960は、主面701とイオンビーム910の直交断面平面との間の傾斜角θを、第2の方向952に沿った2回の掃引の間に、第1の傾斜角θ1と第2の傾斜角θ2との間で変化させる。
【0035】
第1の傾斜角θ1と第2の傾斜角θ2との間の角度スパンΔθは、少なくとも5°、例えば40°よりも大きく、例えば120°である。第1の傾斜角θ1及び第2の傾斜角θ2は、θ2=-θ1で、ビーム軸912に対して互いに対称であることがある。別の実施形態によれば、第1の傾斜角θ1及び第2の傾斜角θ2は、ビーム軸912に対して非対称であり、例えば、θ1=0°であることがある。
【0036】
図6Bでは、線994は、x1とx2との間の1回の掃引中の第2の方向952に沿ったイオンビーム910の位置x(t)を示しており、x1とx2との間の1回の掃引中に、イオン注入装置900は、第1の方向951に沿った複数の掃引を行う。線995は、x1とx2との間の2つの連続的な掃引の間のθ(t)の段階的な変化を示す。
【0037】
制御ユニット990は、介在する調節サイクル無しに、イオンビームが異なる傾斜角で連続的な掃引を実行するように、傾斜アセンブリ960及び走査制御アセンブリ950を制御する。そのような処理制御は、例えば、別の注入レシピを適用することによる、加速エネルギーを再較正するための介在する調節サイクル無しに、異なる傾斜角での連続的な掃引が、互いの掃引の後に直接続くことができるような態様で、単一の注入レシピの中で、傾斜角θを変化させることを可能にする。
【0038】
一実施形態によれば、制御ユニット990は、加速ユニット920を更に制御して、介在する調節サイクル無しに、異なる傾斜角での連続的な低速走査同士の間でイオンの加速を変化させる。そのような処理制御は、加速エネルギーを再較正するための介在する調節サイクル無しに、異なる傾斜角及び異なる加速エネルギーでの走査が、互いの走査の後に直接続くことができるように、単一の注入レシピの中で、傾斜角θと加速エネルギーの両方を変化させることを可能にする。
【0039】
完全な注入レシピは、全体として較正されることができ、注入処理は、より時間のかからない調節サイクルと適合する。
【0040】
図7は、図6Aの注入装置900を使用することができる半導体デバイスの製造方法に関する。処理特徴996では、イオンビームは、半導体基板の主面に向けられ、半導体基板とイオンビームとの間の相対的な移動により、イオンビームが、第1の方向及び第1の方向と直交する第2の方向に沿って主面を走査することになる。処理特徴998では、第2の方向に沿った2回の走査の間に、イオンビームのビーム軸912と主面に対する垂線との間の傾斜角θは、第1の傾斜角θ1から第2の傾斜角θ2まで変化し、第1の傾斜角θ1と第2の傾斜角θ2との間の角度スパンΔθは少なくとも5°であり、異なる傾斜角での2つの連続する掃引は、介在する調節サイクル無しに、互いの掃引に直接的に続く。
【0041】
一実施形態によれば、イオンビームのイオンに印加される加速エネルギーは、異なる傾斜角での2回の連続する走査の間で変化し、異なる加速エネルギーでの2回の走査は、介在する調節サイクル無しに、互いの走査に続く。
【0042】
以降の図は、半導体デバイス、例えば、半導体ダイの正面側の第1の負荷電極と背面側の第2の負荷電極との間の負荷電流を制御する縦型パワー半導体デバイスにおいて、ドープ構造を形成する方法に関し、ドープ構造のうちの少なくとも1つは、これまでの図を参照して説明した注入方法のうちの1つによって形成される。
【0043】
連続的又は段階的に変化する注入角度を伴うイオン注入によって形成されたドープ構造は、ドリフト領域、フィールドストップ領域、電荷補償領域、ボディ領域、ソース領域、接合終端拡張部、VLD(variation of lateral doping)領域、チャネルストッパ領域、及びフィールドリングを含むことがあり、関係するドープ領域内部の垂直ドーパントプロファイルは、例として、シリコン基板とSiC基板の両方における、ドーパント濃度最大点の位置、ドーパント濃度最小点の位置、起伏、均一性及び勾配に関して、用途に対して適合されることがある。
【0044】
以降の図では、それぞれの半導体基板700の主面701に対する垂線は、垂直方向を規定する。主面701に平行な方向は、水平方向である。
【0045】
図8A図11Bは、垂直方向に沿った阻止電圧のかなりの部分に対処するためのドリフト領域を含む半導体デバイスの製造を表わす。
【0046】
エピタキシャル層710が、結晶ベース基板705上にエピタキシーによって形成されることがあり、堆積した半導体材料の原子が、ベース基板705の結晶格子と共にレジストリ内で成長する。
【0047】
図8Aは、ベース基板705の正面側にエピタキシャル層710を含む、結果として得られる半導体基板700を示す。ベース基板705は、鋸引きによって結晶インゴットから得られる結晶のスライスであることがある。ベース基板705は、例として、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、2H-SiC(2Hポリタイプの炭化ケイ素)、4H-SiC、6H-SiC、又は15R-SiCであることがある。ベース基板705は、高濃度にドープされることがある。エピタキシャル層710は、真性であるか、又は、1013cm-3~1×1015cm-3、又は5×1013cm-3~5×1014cm-3の範囲の背景ドーパント濃度で、低濃度にドープされていることがある。
【0048】
半導体基板700の正面側の主面701を介して、ドーパントがエピタキシャル層710の少なくとも一部に注入される。ドーパントを含むイオンビームが主面701に向けられ、半導体基板700とイオンビーム910との間の相対的な移動により、イオンビーム910が主面701を走査することになる。この相対的な移動の間に、イオンビーム910のビーム軸912と主面701に対する垂線704との間の傾斜角θは、第1の傾斜角θ1から第2の傾斜角θ2に連続的又は段階的に変化し、例として、θ1は-θ2と等しいか、又は0°に等しいことがある。第1の傾斜角θ1と第2の傾斜角θ2との間の角度スパンΔθは少なくとも5°、例えば少なくとも20°である。
【0049】
図8Bに示すように、注入されたドーパントは、エピタキシャル層710の内部に完全に形成されるドリフト層730を画定する。ドリフト層730は、主面701とドリフト層730との間のエピタキシャル層710の表面部分732と共に第1の水平接合部j1を形成し、またドリフト層730は、第1のエピタキシャル層710の底部部分733又はベース基板705のいずれかと共に第2の水平接合部j2を形成することがある。ドリフト層730の垂直範囲v1は、少なくとも1.0μm、例えば、少なくとも1.5μmであり得る。
【0050】
図8Cは、2.5MeVの加速エネルギーでの、θ1=0°からθ2=60°の範囲内の9つの異なる注入角度での合計9回のホウ素原子の注入に対する、図8Bの線C-Cに沿った概略垂直ドーパントプロファイル452を示しており、6回の注入が1.0E13cm-2の注入ドーズ量でθ=0°、θ=20°、θ=28°、θ=35°、θ=40°、及びθ=46°で行われ、1回の注入が1.1E13cm-2のドーズ量でθ=51°で行われ、1回の注入が1.2E13cm-2のドーズ量でθ=56°で行われ、また1回の注入が1.4E13cm-2のドーズ量でθ=60°で行われた。パラメータzは、主面701までの距離を示す。
【0051】
注入後及び熱処理前に、結果として得られる垂直ドーパントプロファイル452は、z=1.8μm~z=3.2μmの間で、ほぼ一定である。z<1.0μm及びz>3.7μmについては、注入は、エピタキシャル層710の背景ドーピングには有意な影響を与えない。
【0052】
この処理は、エピタキシャル層710の影響されていない表面部分732内及び/又はエピタキシャル層710上のエピタキシーによって形成された更なる薄い層内に、半導体ダイオードのアノード領域又はトランジスタセルのボディ領域及びソース領域の形成を進めることがある。
【0053】
炭化ケイ素に基づく半導体デバイスの場合、注入角度の連続的な又は段階的な変化により、垂直方向に沿って高い均一性で分布したドーパントを含むドリフト領域がもたらされることがある。
【0054】
シリコンに基づく半導体デバイスの場合、注入角度の図示した段階的な変化により、非常に均一な垂直ドーパントプロファイルを有するドリフト領域を、ドーパントの垂直方向の拡散のために適用されることになる著しく低いサーマルバジェットで形成することができるようになる。
【0055】
約100Vまでの阻止電圧を有するシリコンデバイスの場合、ドリフト層730は、1回のエピタキシー処理と連続的又は段階的に変化する注入角度での1回のイオン注入とに基づく処理を用いて、形成されることがある。
【0056】
約100Vまでの阻止電圧を有するシリコンデバイスの場合、ドリフト層730は、1回のエピタキシー処理と図8A図8Cに図示したような変化する注入角度での1回のイオン注入とを含む処理を用いて、形成されることがある。
【0057】
図9A図9Cは、2つ以上の連続的に形成されたエピタキシャル層内に形成されるドリフト層730を表わす。図8Bに示すように、半導体基板700の主面701上に更なるエピタキシャル層720が形成される。
【0058】
図9Aは、第1のエピタキシャル層710上に積層された第2のエピタキシャル層720を有する半導体基板700を示しており、第1のエピタキシャル層710もまた、ベース基板705上に形成されることがある。第1のエピタキシャル層710は、ドリフト層730、及び第2のエピタキシャル層720とドリフト層730との間の表面部分732を含む。
【0059】
ドーパントは、図8Bに関して説明したイオン注入と同じ方法で又は少なくとも同様の方法で、連続的に又は段階的に変化する注入角度で注入され、その際、第2のエピタキシャル層720の厚さ及び第2のイオン注入の注入パラメータは、第2のイオン注入が第1のエピタキシャル層710の表面部分732の内部でも有効であるように、選択される。
【0060】
図9Bは、両方のイオン注入の結果として得られる強化されたドリフト層730を示しており、第2のイオン注入は、垂直方向に沿って第1のイオン注入とある程度重なり合う。強化されたドリフト層730は、第1のエピタキシャル層710内に形成された第1の部分的な層7301及び第2のエピタキシャル層720内に形成された第2の部分的な層7302を含む。この2つの部分的な層7301、7302は互いに直接的に隣接し、ドリフト層730を形成する。ドリフト層730は、主面701の近くに水平な第1の接合部j1と、第1のエピタキシャル層710の底部部分733の内部又はベース基板705上に水平な第2の接合部j2とを形成する。
【0061】
図9Cは、図9Bのドリフト層730に対する垂直ドーパントプロファイル453を示す。図示した実施形態によれば、垂直ドーパントプロファイル453は、図8Cに示した2つの同一の垂直ドーパントプロファイル452を、第2のエピタキシャル層の厚さv2だけ互いにシフトさせて重ね合わせた結果として生じる。他の実施形態によれば、第2の注入の注入パラメータは、2つの垂直ドーパントプロファイル452が重なり合う過渡領域においてでも、垂直ドーパントプロファイル453がこの過渡領域の両側で平坦になるように調節されることがある。
【0062】
エピタキシャル成長及び変化する注入角度でのエピタキシャル層へのイオン注入のシーケンスを数回繰り返して、目標阻止電圧に適した所望の目標厚さを有するドリフト層を形成することができる。
【0063】
図10A図10Cは、主面701までの距離が短いドープされた層の形成を容易にする実施形態に関する。ドープされた層は、例として、ドリフト層730であり得る。吸収層410が、半導体基板700の主面701上に形成される。
【0064】
図10Aは、半導体基板700の主面701を覆う吸収層410を示しており、半導体基板700は、ベース基板705上に形成された第1のエピタキシャル層710を含む。吸収層410は、フォトレジスト又はハードマスクからの層、例えば、酸化ケイ素からの層であることがある。
【0065】
図10Bに示すように、ドーパントは、上述した注入方法のうちの1つを使用することによって、吸収層410を通して半導体基板700に注入される。吸収層410は、イオンを減衰させ、投影飛程を低減させる。
【0066】
図10Cは、図8B及び図8Cを参照して説明した注入シーケンスを表わす。結果として得られる垂直ドーパントプロファイル454は、図8Cの垂直ドーパントプロファイル452と概ね類似しているが、zのより小さな値に、及び主面701のより近くにシフトされており、その結果、垂直ドーパントプロファイル454は、0.9μm~2.5μmの間のzの範囲については、ほぼ均一になっている。
【0067】
図11A図11Cは、ドリフト層730とフィールドストップ又は電荷補償層738との一体化した形成のために、少なくとも注入ドーズ量の有意な変化と組み合わせて、連続的に又は段階的に変化する注入角度でイオン注入を制御する方法を表わす。
【0068】
図11Aは、図8Aを参照して説明したベース基板705上に形成されたエピタキシャル層710を含む半導体基板700を示す。イオン注入は、上述したように、単一の注入レシピの処理中に、注入角度を段階的に又は連続的に変化させて行われる。図8Bの実施形態以外では、θ(t)及び少なくとも注入ドーズ量D(θ)は、ほぼ均一な垂直ドーパントプロファイルを有するドリフト層730に加えて、ドリフト層730とベース基板705との間の第1のエピタキシャル層710の一部中にフィールドストップ又は電荷補償層738を形成するように制御され、フィールドストップ又は電荷補償層738中のピークドーパント濃度Npkは、ドリフト層730の平均ドーパント濃度NDrの少なくとも2倍、例えば少なくとも10倍である。
【0069】
図11Cは、図11Bの線C-Cに沿った垂直ドーパントプロファイル455を示す。ドリフト層の垂直範囲v3は、1μm~70μmの範囲内、例えば1μm~3μmの範囲内であり得る。ドリフト層730とフィールドストップ又は電荷補償層738の両方とも、同じ側から形成されるので、第1の接合部j1とフィールドストップ又は電荷補償層738との間の距離は、明確に定められ、フィールドストップ又は電荷補償層738を背面から注入する場合以外は、エピタキシャル層の厚さに依存せず、エピタキシャル層の厚さは、エピタキシー処理に固有の処理変動によって引き起こされる増減を受ける。
【0070】
フィールドストップ層又は電荷補償層738は、フィールドストップとして有効であるように、又は、半導体基板700から得られる半導体デバイスの耐放射性及び電子なだれ耐久性を増加させるように設計されることがある。
【0071】
図12A及び図12Bは、図8A図11Cに関して詳細に説明した方法のうちの1つから得られる半導体デバイス500の垂直断面を示しており、図示したドープされた構造のいずれも、単一の注入レシピの処理中に注入角度の段階的な又は連続的な変化を含むイオン注入からもたらされることができる。図示した断面に直交する垂直断面は、図示した断面に広く対応していることがあり、又は、性質的に同一であることがある。
【0072】
図12Aの半導体デバイス500は、半導体部分100に基づくパワー半導体ダイオードであり、半導体部分100は、例として、結晶形4H-SiC、2H-SiC、6H-SiC、若しくは15R-SiC、シリコン、ゲルマニウム、又はシリコンゲルマニウムであり得る。半導体部分100の正面側の第1の面101は、背面の反対側の第2の面102と平行である。ドリフト構造130は、第2の面102と直接的に隣接する。ドリフト構造130は、低濃度にドープされたドリフト領域131に加えて、ドリフト領域131と第2の面102との間に高濃度にドープされた接触部分139を含むことがあり、接触部分139は、ドリフト領域131と同じ導電型を有する。
【0073】
ドリフト構造130は、低抵抗接触を介して第2の負荷電極320に電気的に接続又は結合されることがある。例えば、第2の面102に沿った接触部分139内のドーパント濃度は、第2の面102に直接的に隣接する第2の負荷電極320と低抵抗接触を形成するように十分に高い。第2の負荷電極320は、半導体ダイオードのカソード端子Kを形成するか、又はカソード端子Kに電気的に接続若しくは結合される。
【0074】
ドリフト領域131は、上述したような連続的に又は段階的に変化する傾斜角でのイオン注入によって形成されたドリフト層から結果として生じる。ドリフト領域131内の正味のドーパント濃度は、半導体部分100が炭化ケイ素に基づいている場合には、1E14cm-3~3E16cm-3の範囲内であり得る。
【0075】
ドリフト構造130は、ドリフト領域131と第1の面101との間、及びドリフト領域131と第2の面102との間に、更なるドープされた領域を含むことがある。ドリフト領域131は、第1の面101とドリフト構造130との間に形成されるアノード領域122との水平のpn接合部pnxを形成することがある。第1の負荷電極310は、アノード領域122に直接的に隣接し、アノード端子Aを形成するか、又はアノード端子Aに電気的に接続若しくは結合されることがある。誘電体層210が、第1の負荷電極310の側壁を覆うことがある。
【0076】
従来、ドリフト領域131内のドーパント濃度は、ドリフト領域131が内部に形成されるエピタキシャル層のエピタキシャル成長中のin-situドープに起因する。in-situドープ処理は、成長する結晶中に組み込まれるドーパントの総量の比較的に大きな偏差を招き、また、同じ半導体内、及び同じ半導体基板から得られた複数の半導体デバイス間、及び異なる半導体基板から得られた複数の半導体デバイス間の、ドーパント濃度の変動を招く。
【0077】
対照的に、上述したような傾斜角の段階的な又は連続的な変化を伴うイオン注入は、ドリフト領域131内のドーパント原子の総量に対するより厳しい許容範囲を促進し、垂直方向に沿ったドリフト領域131内のドーパント原子の分布をより正確に規定する。
【0078】
ドリフト領域131の代わりに又はドリフト領域131に加えて、他のドープされた構造のいずれかが、注入角度の段階的な又は連続的な変化を用いたイオン注入からもたらされることがあり、例えば、アノード領域122、フィールドストップ領域137、又は、第1の面101からドリフト領域131にかけてアノード領域122の外側の周辺領域に延在し、ドリフト領域131と共にpn接合部を形成する、接合終端構造128、などである。
【0079】
図12Bは、トランジスタセルTCを含む、半導体デバイス500である。半導体デバイス500は、例えば、IGFET(絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)、又はMCD(MOS制御ダイオード)であり得る。半導体部分100及びドリフト構造130の詳細については、図12Aの半導体ダイオードの説明を参照されたい。
【0080】
アノード領域の代わりに、図12Bの半導体デバイス500はトランジスタセルTCを含んでおり、各トランジスタセルTCでは、ボディ領域120がドリフト構造130からソース領域を分離している。ボディ領域120は、ドリフト構造130と、例えばドリフト領域131と、第1のトランジスタpn接合部を形成し、第1のトランジスタpn接合部は、図12Aのpn接合部pnxに対応する。ボディ領域120は、ソース領域と第2のトランジスタpn接合部を更に形成する。
【0081】
ボディ領域120及びトランジスタセルTCのソース領域に電気的に接続された第1の負荷電極310は、第1の負荷端子L1を形成するか、又は第1の負荷端子L1に電気的に接続若しくは結合されることがあり、第1の負荷端子L1はMCDのアノード端子、IGFETのソース端子、又はIGBTのエミッタ端子であることがある。
【0082】
接触部分139に電気的に接続された第2の負荷電極320は、第2の負荷端子L2を形成するか、又は第2の負荷端子L2に電気的に接続若しくは結合されることがあり、第2の負荷端子L2はMCDのカソード端子、IGFETのドレイン端子、又はIGBTのコレクタ端子であることがある。
【0083】
トランジスタセルTCは、プレーナゲート電極又はトレンチゲート電極を有するトランジスタセルであることがあり、トレンチゲート電極は、横チャネル又は縦チャネルを制御することがある。一実施形態によれば、トランジスタセルTCは、pドープボディ領域120と、nドープソース領域と、nドープドリフト領域131とを有するnチャネルFETセルである。
【0084】
ドリフト領域131の代わりに又はドリフト領域131に加えて、他のドープされた構造のいずれかが、段階的又は連続的に変化する注入角度を用いたイオン注入からもたらされることがあり、例えば、アノード領域122、又は、第1の面101からドリフト領域131にかけてアノード領域122の外側の周辺領域に延在し、ドリフト領域131と共にpn接合部を形成する、接合終端構造128、などである。
【0085】
ドリフト領域131の代わりに又はドリフト領域131に加えて、他のドープされた構造のいずれかが、段階的又は連続的に変化する注入角度を用いたイオン注入からもたらされることがあり、例えば、ボディ領域125、ソース領域、第1の面101からドリフト領域131にかけてトランジスタセルTCと外側表面との間の周辺領域に延在し、ドリフト領域131と共にpn接合部を形成する、チャネルストッパ又はディープフィールドリング129、などである。
【0086】
図示した実施形態では、図12A及び図12Bの半導体デバイス500は、図11Bのフィールドストップ又は電荷補償層738から得られるフィールドストップ又は電荷補償領域138を含む。他の実施形態によれば、半導体デバイス500は、ドリフト領域131から独立して形成されるフィールドストップ又は電荷補償領域138を含むことがある。
【0087】
図12Cは、図12A又は図12Bの半導体デバイスのフィールドストップ又は電荷補償領域138の垂直ドーパントプロファイル456を示しており、フィールドストップ又は電荷補償領域138は、連続的又は段階的に変化する注入角度で、注入角度に応じた加速エネルギーで、後側からの陽子注入によって形成される。通常は少なくとも30分間でまた10時間未満の間、380℃~420℃の間で熱処理を行うと、水素に関係したドナーを活性化することができる。
【0088】
垂直ドーパントプロファイル456は、起伏の低いガウス分布に近似することがある。別の選択肢では、垂直ドーパントプロファイル457は、2つ以上の平滑なステップを含むことがある。
【0089】
図13は、例えば逆阻止IGBTなどのIGBTの後側でのディープエミッタ層の形成を表わす。
【0090】
ドリフト領域層731を含む半導体基板700において、トランジスタセルTCは、主面701とドリフト領域層731との間の正面側に形成され、トランジスタセルTCは、主面701からドリフト領域層731にかけてボディ領域120間に延在することがあるゲート電極155を含む。トレンチゲート構造150は、導電ゲート電極155と、ゲート電極155をボディ領域120から分離するゲート誘電体159とを含むことがある。ソース領域110は、トレンチゲート構造150の少なくとも1つの側壁に直接的に隣接する。ボディ領域120は、ドリフト領域層731からソース領域110を分離し、ドリフト領域層731との第1のpn接合部pn1を形成し、ソース領域110との第2のpn接合部pn2を形成する。
【0091】
ドリフト領域層731と、主面701と反対側にある後側の面702との間に、フィールドストップ層737が形成されることがあり、フィールドストップ層737の平均正味ドーパント濃度は、ドリフト領域層731の平均ドーパント濃度の少なくとも2倍、例えば少なくとも10倍である。フィールドストップ層737は、後側の面702から離間しているか、又は後側の面702と直接的に隣接していることがある。
【0092】
ドリフト領域層731の導電型とは反対の導電型を有するドーパントを後側の面702を介して後側から注入してエミッタ層739を形成し、イオン注入中の注入角度は、上述したように段階的に又は連続的に変化する。この処理は、複数の同一の半導体ダイを得るために、後側の金属化を形成し、スクライブラインに沿って半導体基板700をダイシングすることを進めることがある。
【0093】
図14Aは、図13の半導体基板700から得られた半導体デバイス500を示しており、この半導体デバイス500は、逆阻止IGBTであり得る。ボディ領域120及びソース領域110は、第2の負荷電極320に電気的に接続又は結合されており、第2の負荷電極320は、エミッタ端子Eを形成するか、又はエミッタ端子Eに電気的に接続されていることがある。ドリフト領域131は、図13のドリフト領域層731の一部から形成され、フィールドストップ領域137は、図13のフィールドストップ層737の一部から形成される。
【0094】
高濃度にドープされた接触部分139は、半導体デバイス500の後側にホールエミッタを含んでおり、ホールエミッタは、図13のエミッタ層739から、段階的又は連続的に変化する注入角度により、結果として生じる。エミッタ層739の垂直範囲v4は、100nm~3μm、又は200nm~2μm、又は更には250nm~1μmの範囲内であり得る。一実施形態によれば、ホールエミッタは、完全に焼きなましされず、また、ホールエミッタ効率が低下するように、比較的に多数の結晶欠陥及び結晶格子間ドーパント原子を含む。
【0095】
図14Bでは、線461はドナーに対する垂直ドーパントプロファイルを示し、線462は、アクセプタに対する垂直ドーパントプロファイルを示す。ドナー濃度N(z)は、1つ又は複数のピークを有することがある。第2の面102に最も近いピークと第2の面との間の距離d2は、例えば、フィールドストップ領域137と接触部分139との間に形成されたpn接合部まで、500nm~10μm、又は1μm~8μm、又は2μm~5μmの範囲内にあり得る。ドナー濃度N(z)のピークとpn接合部との間の短い距離d2及び完全に焼きなまされていないエミッタ層により、飽和電圧VCSAT及び短絡耐久性を設計するための更なる自由度がもたらされる。
【0096】
図15A図15Eは、段階的又は連続的に変化する注入角度でのイオン注入を使用することにより、超接合構造を形成する方法に関する。
【0097】
上述したような連続的又は段階的に変化する注入角度での第1のイオン注入により、半導体基板700内の低濃度にドープされた層750の一部にアクセプタイオンを導入することができる。
【0098】
図15Aは、半導体基板700、及び注入されたアクセプタを含有する超接合層780を示す。低濃度にドープされた層750は、高濃度にドープされたベース基板705上に形成されたエピタキシャル層であり得る。低濃度にドープされた層750の影響を受けていない底部部分733は、有意な程度のアクセプタを含んでいないことがあり、超接合層780を高濃度にドープされたベース基板705から分離することがある。
【0099】
上述したような連続的又は段階的に変化する注入角度での第2のイオン注入が、超接合層780にドナーを導入し、第2のイオン注入の角度スパンΔθ2は、第1の注入の角度スパンΔθ1と等しくても又は異なっていてもよい。
【0100】
図15Bに示すように、第2のイオン注入の後、超接合層780はアクセプタとドナーの両方を含む。正面側から半導体基板700に溝735がエッチングされる。
【0101】
図15Cによれば、溝735は、主面701から超接合層780内へと延びることがある。溝735は超接合層780を通って延在することがあり、溝735はドリフト層730の底部部分733を露出させることがある。溝735同士の間の半導体基板700の残りの部分は、柱状構造753を形成する。堆積処理、例えばエピタキシー処理により、溝735を結晶性半導体材料736で充填することができる。
【0102】
図15Dは、図15Cの溝735を充填する半導体材料736を示す。半導体材料736は、真性であるか、又は1E13cm-3未満又は5E13cm-3未満の平均ドーパント濃度で軽くドープされていることがある。熱処理により、柱状構造753から半導体材料736にアクセプタ及びドナーを拡散させる。アクセプタ及びドナーの異なる拡散係数は、アクセプタ及びドナーの部分的な分離をもたらし、その結果、熱処理の後では、柱状構造753においてはアクセプタ及びドナーのうちのより遅い方がより速い方の数を超過し、半導体材料736においてはより速い方がより遅い方の数を超過する。
【0103】
図15Eは、局所的に過剰なアクセプタから生じるp型コラム734と、局所的に過剰なドナーから生じるn型コラム754とを有する、結果として得られる超接合構造を示す。アクセプタ及びドナーの最初の分布及びそれらの数は、正確に制御可能なイオン注入処理によって与えられるので、製造歩留まりは高くなり、また、超接合構造中のドーパントプロファイル及びドーパント濃度の詳細に依存する、そのようなデバイスパラメータの変動が、低減される。変動する注入角度は、垂直方向に沿って非常に均一なドーパントプロファイルを提供し、p型コラム734及びn型コラム754内の垂直ドーパントプロファイルの起伏は低い。
【0104】
図16Aは、超接合構造180を含むドリフト構造130を有する半導体デバイス500を示しており、これは従来のドリフト領域を部分的に又は完全に置換することができる。超接合構造180は、図15Eのp型コラム734から生じることがあるpドープコラム181を含み、図15Eのn型コラム754から形成されることがあるnドープコラム182を更に含む。半導体デバイス500は、例として、MCD、MOSFET、又はIGBTであり得る。更なる詳細については、図12Bの半導体デバイスを参照されたい。
【0105】
別の実施形態によれば、超接合構造180は、段階的又は連続的に変化する注入角度での2回の連続したマスク付きイオン注入によって形成されることがある。ドナーのイオン注入は、第1のマスク開口部を有する第1の注入マスクを使用し、アクセプタのイオン注入は、第2のマスク開口部を有する第2のマスクを使用する。第1及び第2のマスク開口部は、ストライプ状であることがある。半導体基板に対して、第1のマスク開口部同士の間に第2のマスク開口部が形成される。
【0106】
図16Bは、図16Aの超接合構造180内の水平ドナープロファイル481及び水平アクセプタプロファイル482を示す。
【0107】
図16Cは、図16Aの超接合構造180内の垂直ドナープロファイル483を示し、図16Dは垂直アクセプタプロファイル484を示す。
【0108】
nドープコラム182内では、垂直ドナープロファイル483の極大値と極小値との比率は、例えば、1.03~20、又は1.05~5、又は1.1~3の範囲内であり得る。pドープコラム181内では、垂直アクセプタプロファイル484の極大値と極小値との比率は、例えば、1.03~20、又は1.05~5、又は1.1~3の範囲内であり得る。
【0109】
図17A図17Cは、シリコンに基づく半導体基板内のゲルマニウムドープ層の形成を表わす。
【0110】
図17Aによれば、シリコンの半導体基板700の正面側にある主面701を介してゲルマニウムがイオン注入される。半導体基板700は、低濃度にドープされた又は高濃度にドープされたシリコン層760を含むことがある。ゲルマニウムイオンは、主面701に直接的に隣接する第1の基板部分762に注入され、注入角度は連続的に又は段階的に変化する。第2の基板部分761は、影響されないままであることがある。
【0111】
図17Bは、イオン注入後の図17Aの線B-Bに沿った垂直ゲルマニウムプロファイル471を示す。ゲルマニウム濃度NGe(z)は、距離d3全体に渡って最大値NGEmaxに等しいことがあり、距離d3は、少なくとも100nm、例えば少なくとも500nmであり得る。ゲルマニウム含有率の高い領域が、主面701に直接的に隣接することがある。距離d3を越えると、ゲルマニウム含有率は垂直距離d4に渡ってじわじわと減少することがあり、垂直距離d4は少なくとも100nm、例えば少なくとも500nmであり得る。
【0112】
図18A図18Bでは、注入によりある領域が形成され、この領域内では、ゲルマニウム含有率は距離d5に渡ってじわじわと増加し、距離d5は少なくとも100nm、例えば少なくとも500nmであるか、又はd4に等しいことがある。主面701に沿った、主面701の近傍のゲルマニウム濃度は、ゼロであるか又は有意ではないことがある。
【0113】
ゲルマニウムを含有する第1の基板部分762は、例えば主面701上でのエピタキシーによって形成され、またドーパント含有率に関して第2の基板部分761とは著しく異なっている層によって誘起されることがある機械的応力を緩和する。
【0114】
図19は、応力緩和層190を含むドリフト構造130を有する半導体デバイス500を示す。応力緩和層190は、図17A又は図18Aのゲルマニウム含有第1の基板部分762から形成される。半導体デバイス500は、例として、MOSFETであり得る。更なる詳細については、図12Bの半導体デバイスを参照されたい。
【0115】
応力緩和層190は、高濃度にドープされた接触部分139、フィールドストップ領域137及びドリフト領域131の間に形成されるか、又はこれらのうちの少なくとも1つと重なり合っていることがある。ゲルマニウム含有層は、一方の側の高濃度にドープされた接触部分と、他方の側のより低濃度にドープされたフィールドストップ領域137及びドリフト領域131との間の機械的ひずみを低減する。
【0116】
図20A図20Eは、SIMOX(酸素の注入による分離)方式を用いた埋め込み酸化物層の形成を表わす。
【0117】
マスク層が、半導体基板700の主面701上に堆積され、フォトリソグラフィによってパターン形成されて、半導体基板700を露出させるマスク開口部425を有する注入マスク420を形成する。
【0118】
図20Aの実施形態によれば、注入マスク420は、主面701を露出させるストライプ状のマスク開口部425を含む。マスク開口部425の幾つか又は全部の幅及びそれらの間のピッチは、それぞれの隣接するマスク開口部間で連続的な酸化物層を可能にするために、酸素イオン注入の傾斜角に応じて調節することができる。幾つかの領域では、酸化物層は省略されることもある。注入マスク420は、例として、窒化ケイ素層、酸化ケイ素層、酸窒化ケイ素層、フォトレジスト層、又はそれらの組み合わせ、からなるか、これらを含むことがある。段階的又は連続的に変化する注入角度でのイオン注入は、ストライプ状のマスク開口部425を介して酸素原子を導入し、酸素イオンは投影飛程の周りの酸素含有領域774内に静止するようになり、投影飛程は注入角度に伴って垂直方向に沿って掃引することがある。
【0119】
図20Bは、主面701まで少し距離をおいて形成された酸素含有領域774を示す。主面701と酸素含有領域774との間で、注入された酸素イオンは第1の領域776を通過し、この通過する酸素イオンは、半導体基板700の結晶格子にある程度の損傷を与える。注入マスク420の下の先細の第2の領域778は、影響を受けないままである。
【0120】
注入マスク420は除去されることがあり、熱処理により、図19Bの酸素含有領域774から埋め込み酸化ケイ素層775を形成する。
【0121】
図20Cは、埋め込み酸化ケイ素層775と、注入マスク420の除去により露出された主面701とを示す。エピタキシャル層779が、主面701上に形成されることがある。
【0122】
図20Dは、エピタキシャル層779を示す。第2の領域778ではシリコン結晶は損傷を受けていないので、エピタキシャル層779は高い結晶品質で成長し、損傷を受けた第1の領域776の一面にも横方向に成長することがあり、その横方向の幅は、ストライプ状のマスク開口部425の幅w1によって規定される。
【0123】
図20Eは、格子状のマスク開口部425を含む注入マスク420についての別の例を示す。酸素注入は、2つの期間を含むことがあり、半導体基板700は、第1の期間と第2の期間との間で、水平面内で90°回転されることがある。
【0124】
本明細書では特定の実施形態を図示し説明してきたが、当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、図示し説明した特定の実施形態の代わりに様々な代替のまた/又は等価な実施態様を用いることができることを、理解するであろう。この出願は、本明細書で考察された特定の実施形態の任意の改変例又は変形例を包含することを意図している。従って、本発明は、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されることが意図されている。
【符号の説明】
【0125】
100 半導体部分
101 第1の面
102 第2の面
110 ソース領域
120 ボディ領域
122 アノード領域
128 接合終端構造
129 チャネルストッパ又はディープフィールドリング
130 ドリフト構造
131 低濃度にドープされたドリフト領域
137 フィールドストップ領域
138 フィールドストップ又は電荷補償領域
139 高濃度にドープされた接触部分
150 トレンチゲート構造
155 ゲート電極
159 ゲート誘電体
180 超接合構造
181 pドープコラム
182 nドープコラム
190 応力緩和層
210 誘電体層
310 第1の負荷電極
320 第2の負荷電極
410 吸収層
420 注入マスク
425 マスク開口部
452 概略垂直ドーパントプロファイル
453 垂直ドーパントプロファイル
456 垂直ドーパントプロファイル
457 垂直ドーパントプロファイル
471 垂直ゲルマニウムプロファイル
481 水平ドナープロファイル
482 水平アクセプタプロファイル
483 垂直ドナープロファイル
484 垂直アクセプタプロファイル
500 半導体デバイス
700 半導体基板
701 主面
702 後側の面
704 垂線
705 ベース基板
710 第1のエピタキシャル層
720 第2のエピタキシャル層
730 ドリフト層
7301 第1の部分的な層
7302 第2の部分的な層
731 ドリフト領域層
732 表面部分
733 底部部分
734 p型コラム
735 溝
736 結晶性半導体材料
737 フィールドストップ層
738 フィールドストップ又は電荷補償層
739 エミッタ層
750 低濃度にドープされた層
753 柱状構造
754 n型コラム
760 シリコン層
761 第2の基板部分
762 第1の基板部分
774 酸素含有領域
775 埋め込み酸化ケイ素層
776 第1の領域
778 第2の領域
779 エピタキシャル層
780 超接合層
900 イオン注入装置
905 イオン源
910 イオンビーム
911 ビームトラック
912 ビーム軸
920 加速ユニット
930 コリメーターユニット
950 走査制御アセンブリ
951 直線の第1の方向
952 直線の第2の方向
953 第1の偏向電極
954 第2の偏向電極
955 偏向ユニット
956 ステージアセンブリ
960 傾斜アセンブリ
980 基板ホルダ
990 制御ユニット
994 線
995 線
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図16A
図16B
図16C
図16D
図17A
図17B
図18A
図18B
図19
図20A
図20B
図20C
図20D
図20E