IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ インフィネオン テクノロジーズ アーゲーの特許一覧

<>
  • 特許-パッド非対称補償 図1
  • 特許-パッド非対称補償 図2
  • 特許-パッド非対称補償 図3
  • 特許-パッド非対称補償 図4
  • 特許-パッド非対称補償 図5
  • 特許-パッド非対称補償 図6
  • 特許-パッド非対称補償 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】パッド非対称補償
(51)【国際特許分類】
   H03M 3/02 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
H03M3/02
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018159945
(22)【出願日】2018-08-29
(65)【公開番号】P2019047494
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2021-06-18
(31)【優先権主張番号】15/690,728
(32)【優先日】2017-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501209070
【氏名又は名称】インフィネオン テクノロジーズ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】INFINEON TECHNOLOGIES AG
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】デュワン, ケタン
(72)【発明者】
【氏名】クッシアン, ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー, ユルゲン
【審査官】吉江 一明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-216606(JP,A)
【文献】特開2009-303157(JP,A)
【文献】特表2013-511894(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0211861(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106526234(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次以上を有するデルタシグマ変調回路であって、入力信号をパルス密度変調(PDM)信号に変調するように構成されたデルタシグマ変調回路と、
前記PDM信号の立ち上がり遷移又は立ち下がり遷移の数を最大化することにより、前記入力信号の大きさと、前記PDM信号の前記立ち上がり遷移又は立ち下がり遷移の数との間の関係を線形化し、且つ修正PDM信号を出力するように構成されたパッド非対称補償(PAC)回路と
を含み、線形化された前記関係は、前記PDM信号内のオフセットを補償するためのものである、変調器。
【請求項2】
前記PAC回路は、前記修正PDM信号のパルス密度が修正PDM信号のパルス密度と異ならないように、前記修正PDM信号を前記デルタシグマ変調回路にフィードバックするように構成されている、請求項1に記載の変調器。
【請求項3】
前記PAC回路は、
前記入力信号がフルスケールの所定のパーセンテージより小さい場合、PDM信号の任意の2つの連続する1のビットを0及び1で置き換えること、及び
前記入力信号がフルスケールの前記所定のパーセンテージ以上である場合、前記PDM信号の任意の2つの連続する0のビットを1及び0で置き換えること
により、前記PDM信号の前記立ち上がり遷移又は立ち下がり遷移の数を最大化するように構成されている、請求項1に記載の変調器。
【請求項4】
前記所定のパーセンテージは、50%である、請求項3に記載の変調器。
【請求項5】
前記PAC回路は、
前記デルタシグマ変調回路からの前記PDM信号の以前のビットと現在のビットとを比較すること、
前記入力信号がフルスケールの所定のパーセンテージより小さい場合、且つ前記PDM信号の前記以前のビット及び前記現在のビットが両方とも1である場合、前記現在のビットを0で置き換えること、及び
前記入力信号がフルスケールの前記所定のパーセンテージ以上である場合、且つ前記PDM信号の前記以前のビット及び前記現在のビットが両方とも0である場合、前記現在のビットを1で置き換えること
により、前記PDM信号の前記立ち上がり遷移又は立ち下がり遷移の数を最大化するように構成されている、請求項1に記載の変調器。
【請求項6】
前記所定のパーセンテージは、50%である、請求項5に記載の変調器。
【請求項7】
前記PAC回路は、
PACフリップビットを、前記入力信号がフルスケールの所定のパーセンテージより小さい場合に1に設定し、且つ前記入力信号がフルスケールの前記所定のパーセンテージ以上である場合に0に設定すること、
前記PACフリップビットが前記デルタシグマ変調回路からの前記PDM信号の以前のビット及び現在のビットの両方と等しいかどうかを判定すること、
前記PACフリップビットが前記デルタシグマ変調回路からの前記PDM信号の前記以前のビット及び前記現在のビットの両方と等しい場合、前記現在のビットの反転を出力すること、及び
前記PACフリップビットが前記デルタシグマ変調回路からの前記PDM信号の前記以前のビット及び前記現在のビットの両方と等しくない場合、前記現在のビットを出力すること
により、前記PDM信号の前記立ち上がり遷移又は立ち下がり遷移の数を最大化するように構成されている、請求項1に記載の変調器。
【請求項8】
前記所定のパーセンテージは、50%である、請求項7に記載の変調器。
【請求項9】
前記デルタシグマ変調回路は、
前記入力信号から前記修正PDM信号を減算し、且つ差信号又は誤差信号を減算信号として出力するように構成された減算器と、
複数の積分器を含み、且つ所定期間にわたる前記減算信号に比例する積分信号を出力するように構成された積分回路と、
前記積分信号を閾値と比較し、且つ前記PDM信号を出力するように構成された比較器と
を含む、請求項1に記載の変調器。
【請求項10】
前記デルタシグマ変調回路は、
前記比較器と前記減算器との間に結合され、且つ前記PDM信号をシングルビット信号からマルチビット信号に変換するように構成されたデジタル-デジタル変換器
を更に含む、請求項に記載の変調器。
【請求項11】
前記PDM信号内のオフセットは、線形化された前記関係に基づく線形係数を前記入力信号に乗じることによって補償される、請求項1に記載の変調器。
【請求項12】
前記PDM信号内のオフセットは、線形化された前記関係に基づく線形係数を前記PDM信号又は復調されたPDM信号に乗じることによって補償される、請求項1に記載の変調器。
【請求項13】
2次以上を有するデルタシグマ変調回路により、入力信号をパルス密度変調(PDM)信号に変調することと、
パッド非対称補償(PAC)回路により、前記PDM信号の立ち上がり遷移又は立ち下がり遷移の数を最大化することにより、前記入力信号の大きさと、前記PDM信号の前記立ち上がり遷移又は立ち下がり遷移の数との間の関係を線形化し、且つ修正PDM信号を出力することと
を含み、線形化された前記関係は、前記PDM信号内のオフセットを補償するためのものである、変調方法。
【請求項14】
前記修正PDM信号のパルス密度が修正PDM信号のパルス密度と異ならないように、前記修正PDM信号を前記PAC回路の出力から前記デルタシグマ変調回路にフィードバックすることを更に含む、請求項13に記載の変調方法。
【請求項15】
前記PAC回路により、
前記入力信号がフルスケールの所定のパーセンテージより小さい場合、PDM信号の任意の2つの連続する1のビットを0及び1で置き換えること、及び
前記入力信号がフルスケールの前記所定のパーセンテージ以上である場合、前記PDM信号の任意の2つの連続する0のビットを1及び0で置き換えること
により、前記PDM信号の前記立ち上がり遷移又は立ち下がり遷移の数を最大化することを更に含む、請求項13に記載の変調方法。
【請求項16】
前記PAC回路により、
前記デルタシグマ変調回路からの前記PDM信号の以前のビットと現在のビットとを比較すること、
前記入力信号がフルスケールの所定のパーセンテージより小さい場合、且つ前記PDM信号の前記以前のビット及び前記現在のビットが両方とも1である場合、前記現在のビットを0で置き換えること、及び
前記入力信号がフルスケールの前記所定のパーセンテージ以上である場合、且つ前記PDM信号の前記以前のビット及び前記現在のビットが両方とも0である場合、前記現在のビットを1で置き換えること
により、前記PDM信号の前記立ち上がり遷移又は立ち下がり遷移の数を最大化することを更に含む、請求項13に記載の変調方法。
【請求項17】
前記PAC回路により、
PACフリップビットを、前記入力信号がフルスケールの所定のパーセンテージより小さい場合に1に設定し、且つ前記入力信号がフルスケールの前記所定のパーセンテージ以上である場合に0に設定すること、
前記PACフリップビットが前記デルタシグマ変調回路からの前記PDM信号の以前のビット及び現在のビットの両方と等しいかどうかを判定すること、
前記PACフリップビットが前記デルタシグマ変調回路からの前記PDM信号の前記以前のビット及び前記現在のビットの両方と等しい場合、前記現在のビットの反転を出力すること、及び
前記PACフリップビットが前記デルタシグマ変調回路からの前記PDM信号の前記以前のビット及び前記現在のビットの両方と等しくない場合、前記現在のビットを出力すること
により、前記PDM信号の前記立ち上がり遷移又は立ち下がり遷移の数を最大化することを更に含む、請求項13に記載の変調方法。
【請求項18】
前記変調することは、
減算器により、前記入力信号から前記修正PDM信号を減算し、且つ差信号又は誤差信号を減算信号として出力すること、
複数の積分器を含む積分回路により、所定期間にわたる前記減算信号に比例する積分信号を生成すること、及び
比較器により、前記積分信号を閾値と比較し、且つ前記PDM信号を出力すること
を含む、請求項13に記載の変調方法。
【請求項19】
前記変調することは、前記比較器と前記減算器との間に結合されたデジタル-デジタル変換器により、前記PDM信号をシングルビット信号からマルチビット信号に変換することを含む、請求項18に記載の変調方法。
【請求項20】
前記線形化された関係に基づく線形係数を前記入力信号又は前記PDM信号若しくは復調されたPDM信号に乗じることにより、前記PDM信号内のオフセットを補償することを更に含む、請求項13に記載の変調方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
半導体集積回路(IC)は、物理的に非対称であり得る入力/出力(I/O)パッドを有し、その結果、通過する信号の立ち上がり時間と立ち下がり時間との間に非対称が発生する。
【0002】
図7は、従来のデルタシグマ変調回路において、パルス密度変調(PDM)信号が非対称I/Oパッドを通り抜け、且つローパスフィルタ(LPF)を使用して復調又は平均化されると、非対称により、直流(DC)電圧オフセットが発生することを示す。E1及びE0は、それぞれ論理1及び論理0のパルス幅を表す。PDM信号が対称なI/Oパッドを通り抜ける場合、PDM信号の立ち上がり時間及び立ち下がり時間は等しく、従ってDC電圧オフセットは発生しない。他方では、PDM信号が非対称なI/Oパッドを通り抜ける場合、DC電圧オフセットが発生し、これは、非対称のタイプに応じて正又は負になり得る。具体的には、立ち上がり時間が立ち下がり時間より短い場合、DC電圧オフセットは正である。また、立ち上がり時間が立ち下がり時間より長い場合、DC電圧オフセットは負である。DC電圧オフセットは、容易に補償されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
立ち上がり時間と立ち下がり時間との間の対称を達成するための従来のアプローチは、I/Oパッドの設計を改良することに焦点を当ててきた。そのようなアプローチは、設計サイクルが長くなり、パッド設計が複雑になり、電力消費が大きくなり、面積が大きくなり、且つコストが上昇する点で不利である。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】本開示の態様による変調器の概略図を示す。
図2図1のデルタシグマ変調器(DSM)の入力信号の大きさ、出力信号ビットストリーム、及びパルス密度の表を示す。
図3】本開示の態様による、パッド非対称補償(PAC)回路によって実施される方法のフローチャートを示す。
図4】本開示の態様による、従来のDSM及びPACロジックを有するDSMの出力ビットストリームのグラフを示す。
図5】本開示の態様による、従来のDSM及びPACロジックを有するDSMのエッジ/遷移の数対入力の大きさのグラフを示す。
図6】本開示の態様による変調方法のフローチャートを示す。
図7】ローパスフィルタ(LPF)を使用してアナログ電圧に復調された従来のDSMの出力ビットストリームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本開示は、2次以上を有するデルタシグマ変調回路であって、入力信号をパルス密度変調(PDM)信号に変調するように構成されたデルタシグマ変調回路と、PDM信号の立ち上がり遷移又は立ち下がり遷移の数を最大化することにより、入力信号の大きさと、PDM信号の立ち上がり遷移又は立ち下がり遷移の数との間の関係を線形化し、且つ修正PDM信号を出力するように構成されたパッド非対称補償(PAC)回路とを含み、線形化された関係は、PDM信号内のオフセットを補償するためのものである、変調器を対象とする。
【0006】
2次以上の従来のDSM回路では、アナログ/デジタル入力信号の大きさと、PDM出力信号の遷移又はエッジ(即ち論理0から論理1及びその逆)の数との間に非線形な関係がある。本明細書に開示のPAC回路は、この非線形関係を線形化するように構成されている。この線形関係を用いて、対応する線形係数を入力信号、出力PDM信号又はその復調信号に乗じることにより、I/Oパッド非対称を補償することができる。
【0007】
図1は、本開示の態様による変調器100の概略図を示す。
【0008】
変調器100は、2次フルフィードフォワードデルタシグマ変調(DSM)回路110と、パッド非対称補償(PAC)回路120とを含む。
【0009】
DSM回路110は、2次以上(即ち2次、3次など)を有する任意のDSMであり得、入力信号をパルス密度変調(PDM)信号に変調するように構成されている。DSM回路110の次数は、その積分器の数で決まる。DSM回路110は、減算器111と、積分回路112及び113と、比較器114と、デジタル-デジタル変換器(DDC)115と、第1の乗算係数116と、第2の乗算係数117とを含む。
【0010】
減算器111は、DDC115から受信された修正PDM信号を入力信号から差し引き、且つ差/誤差信号を出力するように構成されている。この例の入力信号は16ビット入力信号であるが、本開示はこのように限定されない。
【0011】
積分回路は、複数の積分器、この例では第1段積分器112及び第2段積分器113を含む。積分回路は、減算器111からの差/誤差信号を第1段積分器112に蓄積し、次に第2段積分器113に蓄積するように構成されている。積分器回路は、入力信号に対するLPFとして動作する。積分回路は、所定期間にわたる差/誤差信号に比例する積分信号を出力する。
【0012】
比較器114は、積分信号と、中間/内部信号に乗算係数116及び117を乗じたものとの総和を特定の閾値と比較し、且つPDM信号を出力するように構成されており、PDM信号は、この例では、1つ以上の論理0及び/又は論理1を含むシングルビット信号である。
【0013】
DDC115は、PAC回路120の出力と減算器111との間のフィードバックパス内に結合されている。DDC115は、修正PDM信号をシングルビット信号からマルチビット信号(この場合には16ビット信号)に変換するように構成されている。
【0014】
PAC回路120は、立ち上がり遷移及び立ち下がり遷移の数を最大化することにより、入力信号の大きさと、PDM信号の立ち上がり遷移/エッジ及び立ち下がり遷移/エッジの数との間の関係を線形化するように構成されている。この線形化された関係は、線形化された関係に基づく線形係数を入力信号、PDM信号又はその復調信号に乗じることにより、I/Oパッド非対称に起因する復調PDM信号の電圧オフセットを補償するために用いられる。PAC回路120は、この修正PDM信号を出力する。
【0015】
PDM信号の復調後に発生する電圧オフセットは、PDM信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの数の関数である。出力PDM信号が常に1である場合、PDM信号は、エッジを全く有さない。この場合、エッジがないため、従って立ち上がり時間と立ち下がり時間との非対称がないため、非対称の影響は無視できる。エッジの数が多いほど、非対称の影響が大きくなり、電圧オフセットが大きくなる。
【0016】
エッジの数が増加すると、復調後の全体的な電圧オフセットが増加する。しかしながら、この増加により、電圧オフセットの補償がより容易になる。電圧オフセットは、その線形関係に対応する線形係数を入力信号、PDM出力信号又はその復調信号に乗じることによって補償され得る。
【0017】
図2は、図1のDSM110の入力信号の大きさ、出力信号のビットストリーム、及びパルス密度の表200を示す。
【0018】
DSM110の出力ビットストリームは、入力信号の大きさに基づくパルス密度を有する。入力信号がフルスケールの場合、出力は全て論理1である。入力信号がフルスケールの半分の場合、論理0の数と論理1の数とは等しい。
【0019】
DSM110の入力信号フルスケール値が216(65,536)である状況を考慮すると、入力信号が0であればパルス密度は0%である。入力信号が214である場合、パルス密度は25%であり、即ちビットの25%が1であり、及びビットの75%が0である。入力信号が214であることは、絶対入力が214であることを意味するのではなく、214を216のフルスケール値で除したことを意味する(即ち214/216であり、これは1/4又は25%である)。同様に、215の入力信号は、215/216(これは1/2又は50%である)のパルス密度を有する。
【0020】
図3は、本開示の態様による、パッド非対称補償(PAC)回路120によって実施される方法のフローチャート300を示す。図4は、従来のDSM及びPAC回路120を有するDSM110の出力ビットストリームのグラフ400を示す。
【0021】
概要を述べると、PAC回路120は、PDM出力信号の遷移/エッジの数を最大化することにより、入力信号の大きさと、PDM出力信号の立ち上がり遷移/エッジ及び立ち下がり遷移/エッジの数との間の線形関係を確立するように構成されている。この最大化は、PAC回路120が、現在のビットを0で置き換える(11→01)により、フルスケールの所定のパーセンテージ(例えば、215、これは50%である)より小さい入力信号に対する出力信号としての2つの連続する論理1を避けることによって達成される。同様に、PAC回路120は、現在のビットを論理1で置き換える(00→10)ことにより、フルスケールの所定のパーセンテージ以上である入力信号に対する出力信号としての2つの連続する論理0を避ける。フルスケールの所定のパーセンテージは、例えば、50%であり得るが、本開示はこのように限定されない。
【0022】
フローチャート300の各ステップに沿ってより詳細に説明すると、ステップ310では、PAC回路120は、PACイネーブルビット(pac_en)を論理1に設定されることによって有効化される。当然のことながら、本開示は、この特定の設計に限定されず、PAC回路120は、任意の様式で有効化され得る。
【0023】
ステップ320では、入力信号の現在の値がフルスケールの所定のパーセンテージより小さい場合、例えば、PACフリップビット(pfb)が論理1に設定される。他方では、入力信号の現在の値がフルスケールの所定のパーセンテージ以上である場合、例えば、pfbが論理0に設定される。所定のパーセンテージは、50%であり得るが、本開示はこのように限定されない。
【0024】
ステップ330では、PACフリップビット(pfb)がDSM回路110からのPDM信号の以前のビット(pb)及び現在のビット(cb)の両方と等しいかどうかが判定される。現在のビット(cb)は、次のサンプル/ビット生成のための以前のビット(pb)として記憶される。
【0025】
PACフリップビット(pfb)がDSM回路110からのPDM信号の以前のビット(pb)及び現在のビット(cb)の両方と等しい場合(ステップ360)、PAC回路120は、現在のビットの反転
を出力する(ステップ370)。
【0026】
他方では、PACフリップビット(pfb)がDSM回路110からのPDM信号の以前のビット及び現在のビットの両方と等しくない場合(ステップ340)、PAC回路120は、現在のビット(cb)を出力する(ステップ350)。
【0027】
ステップ380では、プロセスは、ステップ310にループバックし得る。
【0028】
PAC回路120は、修正PDM信号のパルス密度が未修正PDM信号のパルス密度と異ならないように、修正PDM信号をDSM回路110にフィードバックするように更に構成されている。図4に示されるように、従来のDSMは、8個のエッジと、50%のパルス密度とを有するPDM出力信号を有する。PAC回路120を有するDSM回路110は、16個のエッジを有するPDM出力信号を有し、且つ依然として50%のパルス密度を維持する。パルス密度は、0に対する1の数で決まる。パルス密度は、変調器の次数にかかわらず変化しない。分布のみが変化する。例えば、ビットストリームは、111000又は101010であり得、いずれの場合もパルス密度は同じである。
【0029】
図5は、従来のDSM及び本開示の態様によるPAC回路120を有するDSM回路110の、エッジ/遷移の数対入力の大きさのグラフ500を示す。
【0030】
PAC回路120を有するDSM回路110に関して、曲線520で示されるように、入力信号の大きさがフルスケールの半分まで増加するとき、エッジの数は直線的に増加し、その後、直線的に減少する。これは、PACフリップビット(pfb)が、フルスケールの半分未満の入力信号の大きさから、フルスケールの半分以上の入力信号の大きさへの遷移を制御するためである。16ビット信号の場合、フルスケールの半分は215である。32ビット入力信号の場合、フルスケールの半分は231である。本開示は、任意の入力信号ビット幅に合わせて修正され得る。PAC回路120及びPACフリップビット(pfb)がない場合、曲線510で示されるように非線形の電圧オフセットが発生する。
【0031】
ここでもまた、入力信号の大きさと、PDM信号の遷移の数との間には関係が存在する。線形関係を確立することにより、入力信号、PDM信号又はその復調信号に利得係数を乗じてI/Oパッド非対称を補償することが可能である。
【0032】
I/Oパッド非対称が全くない場合、即ち、信号の立ち上がり時間と立ち下がり時間とが同じである場合、
(IM<0.5×FSの場合) (式1)
及び
(IM≧0.5×FSの場合) (式2)
となる。ここで、IMは、入力信号の大きさであり、NREは、立ち上がりエッジの数であり、NFEは、立ち下がりエッジの数であり、TSは、クロック期間であり、TPは、観察時間であり、及びFSは、フルスケール値である。
【0033】
I/Oパッド非対称がある場合、即ち、信号の立ち上がり時間と立ち下がり時間とが等しくない場合、
(IM<0.5×FSの場合) (式3)
及び
(IM≧0.5×FSの場合) (式4)
となる。ここで、Δは、非対称係数である。Δは、正又は負であり得る。IMとNRE/NFEとの間の関係を線形化すると、プロセス・電圧・温度(PVT)に対してΔがほぼ一定であることから、利得係数(1+Δ)を補償することができる。
【0034】
更に、入力信号の大きさと、PDM出力信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの数との間に線形関係が確立するため、
エッジの数=(線形係数)×(入力信号) (式5)
となる。
【0035】
PDM出力信号の復調後に発生する電圧オフセットは、次のようなPDM出力信号の立ち上がりエッジ及び立ち下がりエッジの数の関数である。
電圧オフセット=(エッジの数)×(非対称係数) (式6)、及び
電圧オフセット=(線形係数)×(入力信号)×(非対称係数) (式7)
【0036】
線形係数は一定である。非対称係数は、プロセス・電圧・温度(PVT)へのわずかな依存を有する。
【0037】
例えば、式5から、100mVの入力信号に100の線形係数を乗じると、10000(10)のエッジとなる。式6から、非対称係数が1nV(10-9)と計算されると、電圧オフセットは(10)×(10-9)=10-5V(10μV)である。出力信号の電圧は、期待される出力電圧にオフセット電圧が加わったものである。従って、入力信号が100であれば、出力電圧は、理想的には100mVであると考えられるが、10μVのオフセットがあるため、出力電圧は、100mV+10μVである。線形係数は入力信号に無関係に一定であるため、オフセット電圧の因子となる入力信号を予測することができる。必要な出力電圧が100mVである場合、オフセット電圧が10μVであれば、入力信号を約99.99mVに設定することができ、出力電圧は100mVである。
【0038】
単一ICに関して、非対称を特定するトレーニングを実施することができる。IC設計者は、線形関係を定義し且つ非対称を補償することができる。
【0039】
図6は、本開示の態様による変調方法のフローチャート600を示す。
【0040】
ステップ610では、2次以上を有するデルタシグマ変調回路110は、入力信号をパルス密度変調(PDM)信号に変調する。
【0041】
ステップ620では、パッド非対称補償(PAC)回路120は、PDM信号の立ち上がり遷移又は立ち下がり遷移の数を最大化することにより、入力信号の大きさと、PDM信号の立ち上がり遷移又は立ち下がり遷移の数との間の関係を線形化し、且つ修正PDM信号を出力する。この線形化された関係は、PDM信号内のオフセットを補償するためのものである。
【0042】
この議論の目的上、「回路」という用語は、回路、プロセッサ、ロジック、又はこれらの組み合わせであると理解されたい。例えば、回路は、アナログ回路、デジタル回路、状態機械ロジック、他の構造的電子ハードウェア、又はこれらの組み合わせを含み得る。
【0043】
多くの他の実施形態も考えられる。これらは、より少ない、又は追加の、且つ/又は異なる構成要素、ステップ、特徴、目的、恩恵、及び利点を有する実施形態を含む。これらはまた、構成要素及び/又はステップが異なって配置され且つ/又は順序付けられる実施形態を含む。
【0044】
上記は、例示的な実施形態と併せて説明されたが、「例示的」という語句は、最良又は最適ではなく一例としての意味に過ぎないことが理解される。従って、本開示は、本開示の範囲に含まれ得る代替形態、修正形態、及び均等物を包含することが意図される。
【0045】
本明細書において特定の実施形態を図示及び記載してきたが、本開示の範囲から逸脱することなく、図示及び記載された特定の実施形態が様々な代替的及び/又は均等な実装形態に置き換えられ得ることが当業者によって理解される。本開示は、本明細書に記載の特定の実施形態の任意の適応形態又は変形形態を包含することが意図される。
【符号の説明】
【0046】
100 変調器
110 デルタシグマ変調(DSM)回路
111 減算器
112 第1段積分器
113 第2段積分器
114 比較器
115 デジタル-デジタル変換器(DDC)
116 第1の乗算係数
117 第2の乗算係数
120 パッド非対称補償(PAC)回路
300 フローチャート
310 ステップ
320 ステップ
330 ステップ
340 ステップ
350 ステップ
360 ステップ
370 ステップ
380 ステップ
400 グラフ
500 グラフ
600 フローチャート
610 ステップ
620 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7