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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】外用乳化組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20221220BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20221220BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20221220BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20221220BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20221220BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20221220BHJP
   A61K 31/727 20060101ALI20221220BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20221220BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20221220BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20221220BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221220BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/06
A61K8/39
A61K8/55
A61K8/86
A61K9/107
A61K31/727
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/24
A61P17/00
A61Q19/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018243842
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020105091
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】工藤 洋造
(72)【発明者】
【氏名】高根 俊輔
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-130224(JP,A)
【文献】特開2017-048163(JP,A)
【文献】特開2016-029025(JP,A)
【文献】特開平11-180821(JP,A)
【文献】特開2009-184951(JP,A)
【文献】特開2009-234957(JP,A)
【文献】特開2015-193626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/73
A61K 8/06
A61K 8/39
A61K 8/55
A61K 8/86
A61K 9/107
A61K 31/727
A61K 47/10
A61K 47/14
A61K 47/24
A61P 17/00
A61Q 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ヘパリン類似物質、並びに(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル無機酸エステル及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤を含み、両連続マイクロエマルション形態である、外用乳化組成物。
【請求項2】
更に、(C)ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルよりなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤を含む、請求項1に記載の外用乳化組成物。
【請求項3】
更に、多価アルコールを含む、請求項1に記載の外用乳化組物。
【請求項4】
油性成分の総量100重量部当たり、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを3重量部以上含む、請求項1~3のいずれかに記載の外用乳化組物。
【請求項5】
油性成分の総量100重量部当たり、ポリオキシエチレンアルキルエーテル無機酸エステル及び/又はその塩を2~35重量部含む、請求項1~4のいずれかに記載の外用乳化組物。
【請求項6】
ヘパリン類似物質を含む外用乳化組成物における粘度の上昇を抑制する方法であって、
外用乳化組成物において、(A)ヘパリン類似物質と共に、(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル無機酸エステル、及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種を配合し、両連続マイクロエマルション形態にする、粘度の上昇抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘパリン類似物質を含み、粘度の上昇が抑制されている外用乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
外用剤の分野において、乳化製剤は、水溶性成分と油性成分を含有させることができるので、広く使用されている。乳化形態の外用組成物には、クリーム剤やローション剤等があり、消費者に広く受け入れられている。また、ヘパリン類似物質は、コンドロイチン多硫酸等の多硫酸化ムコ多糖であり、保湿作用を有しており、従来、保湿目的で外用剤に配合されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来、保湿効果を有する外用製剤として、ヘパリン類似物質を含む外用乳化組成物が開発されている。しかしながら、従来技術では、ヘパリン類似物質を外用乳化組成物に配合すると、粘度が上昇する傾向が現れる。このように乳化組成物の粘度が高くなると、肌に馴染ませ難くなり、使用感の低下を招く。ヘパリン類似物質を含んでいながら、粘度の上昇を抑制できる外用乳化組成物の開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-234957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ヘパリン類似物質を含み、粘度の上昇が抑制されている外用乳化組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、(A)ヘパリン類似物質と、(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル無機酸エステル及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤とを含む外用乳化組成物は、粘度の上昇を抑制できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0007】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)ヘパリン類似物質、並びに(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル無機酸エステル及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤を含む、外用乳化組成物。
項2. 更に、(C)ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルよりなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤を含む、項1に記載の外用乳化組成物。
項3. 更に、多価アルコールを含む、項1に記載の外用乳化組物。
項4. 油性成分の総量100重量部当たり、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを3重量部以上含む、項1~3のいずれかに記載の外用乳化組物。
項5. 油性成分の総量100重量部当たり、ポリオキシエチレンアルキルエーテル無機酸エステル及び/又はその塩を2~35重量部含む、項1~4のいずれかに記載の外用乳化組物。
項6. ヘパリン類似物質を含む外用乳化組組成物における粘度の上昇を抑制する方法であって、
外用乳化組成物において、(A)ヘパリン類似物質と共に、(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル無機酸エステル、及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種を配合する、粘度の上昇抑制方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の外用乳化組成物によれば、ヘパリン類似物質を含んでいながらも、粘度の上昇を抑制でき、肌に馴染ませ易く良好な使用感を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.外用乳化組成物
本発明の外用乳化組成物は、ヘパリン類似物質((A)成分と表記することがある)、並びにポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル無機酸エステル及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤((B)成分と表記することがある)を含むことを特徴とする。以下、本発明の外用乳化組成物について詳述する。
【0010】
[(A)ヘパリン類似物質]
本発明の外用乳化組成物は、ヘパリン類似物質を含有する。ヘパリン類似物質とは、コンドロイチン多硫酸等の多硫酸化ムコ多糖であり、保湿作用や血流量増加作用等を有することが知られている公知の薬剤である。従来の外用乳化組成物においてヘパリン類似物質が含まれる場合には、粘度が上昇する傾向が認められるが、本発明の外用乳化組成物では、特定の界面活性剤を使用して乳化させることにより、ヘパリン類似物質が含まれていながらも、粘度の上昇を抑制することが可能になっている。
【0011】
本発明で使用されるヘパリン類似物質の由来については、特に制限されないが、例えば、ムコ多糖類を多硫酸化することにより得られたもの、食用獣の組織(例えば、ウシの気管軟骨を含む肺臓)から抽出したもの等が挙げられる。本発明の外用乳化組成物では、ヘパリン類似物質として、日本薬局方外医薬品規格に収戴されているヘパリン類似物質が好適に使用される。
【0012】
本発明の外用乳化組成物における(A)成分の含有量については、特に制限されないが、例えば、0.01~10重量%、好ましくは0.05~0.5重量%、より好ましくは0.1~0.4重量%が挙げられる。
【0013】
[(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル無機酸エステル及び/又はその塩]
本発明の外用乳化組成物は、界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル無機酸エステル、及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する。このように特定の界面活性剤を含むことにより、ヘパリン類似物質を含んでいながらも、外用乳化組成物の粘度の上昇を抑制することが可能になる。
【0014】
(B)成分として使用される各界面活性剤のHLB値としては、例えば、8~20、好ましくは10~20が挙げられる。このようなHLB値を有する(B)成分を使用することによって、粘度の上昇をより一層効果的に抑制することが可能になる。
【0015】
(B)成分の内、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとは、ポリオキシエチレン鎖がアルキル基とエーテル結合している界面活性剤である。ポリオキシエチレンアルキルエーテルにおけるポリオキシエチレンアルキルエーテル鎖のエチレンキサイドの付加モル数については、特に制限されないが、例えば、2~50、好ましくは10~40、更に好ましくは20~30が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルを構成するアルキル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。ポリオキシエチレンアルキルエーテルを構成するアルキル基の炭素数については、特に制限されないが、例えば、8~22、好ましくは12~22、更に好ましくは14~22が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルとして、具体的には、POEオクチルエーテル、POEイソオクチルエーテル、POEデシルエーテル、POEイソデシルエーテル、POEラウリルエーテル、POEミリスチルエーテル、POEセチルエーテル、POEイソセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEアラキジルエーテル、POEベヘニルエーテル等が挙げられる。ここで、「POE」はポリオキシエチレンを示す。これらのポリオキシエチレンアルキルエーテルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
(B)成分の内、ポリオキシエチレンアルキルエーテル無機酸エステルとは、ポリオキシエチレンアルキルエーテルと無機酸がエステル結合している界面活性剤である。ポリオキシエチレンアルキルエーテル無機酸エステルにおけるエチレンキサイドの付加モル数については、特に制限されないが、例えば、2~10、好ましくは4~10が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル無機酸エステルを構成するアルキル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。ポリオキシエチレンアルキルエーテル無機酸エステルを構成するアルキル基の炭素数については、特に制限されないが、例えば、8~22、好ましくは12~22、更に好ましくは14~22が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル無機酸エステルにおいてポリオキシエチレンアルキルエーテルとエステルを形成する無機酸としては、特に制限されないが、例えば、リン酸、硫酸等、好ましくはリン酸が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル無機酸エステル1分子において、無機酸にエステル結合しているポリオキシエチレンアルキルエーテルの数については、無機酸の種類に応じて異なるが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルの場合であれば2又は3個(即ち、ジエステル又はトリエステル)、好ましくは3個(即ち、トリエステル)が挙げられ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸の場合であれば1個(即ち、モノエステル)が挙げられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル無機酸エステルとして、具体的には、POEオクチルエーテルリン酸、POEイソオクチルエーテルリン酸、POEデシルエーテルリン酸、POEイソデシルエーテルリン酸、POEラウリルエーテルリン酸、POEミリスチルエーテルリン酸、POEセチルエーテルリン酸、POEイソセチルエーテルリン酸、POEステアリルエーテルリン酸、POEイソステアリルエーテルリン酸、POEアラキジルエーテルリン酸、POEベヘニルエーテルリン酸等のPOEアルキルエーテルリン酸;POEオクチルエーテル硫酸、POEイソオクチルエーテル硫酸、POEデシルエーテル硫酸、POEイソデシルエーテル硫酸、POEラウリルエーテル硫酸、POEミリスチルエーテル硫酸、POEセチルエーテル硫酸、POEイソセチルエーテル硫酸、POEステアリルエーテル硫酸、POEイソステアリルエーテル硫酸、POEアラキジルエーテル硫酸、POEベヘニルエーテル硫酸等のPOEアルキルエーテル硫酸等が挙げられる。
【0017】
(B)成分の内、ポリオキシエチレンアルキルエーテル無機酸エステルの塩としては、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテル無機酸エステルのアルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)が挙げられる。
【0018】
本発明の外用乳化組成物では、(B)成分として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル無機酸エステル及びその塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、これらの中から2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
これらの(B)成分の中でも、粘度の上昇をより一層効果的に抑制するという観点から、好ましくは(B-1)ポリオキシエチレンアルキルエーテルと、(B-2)ポリオキシエチレンアルキルエーテル無機酸エステル及び/又はその塩との組み合わせが挙げられる。
【0020】
(B)成分として、(B-1)ポリオキシエチレンアルキルエーテルと(B-2)ポリオキシエチレンアルキルエーテル無機酸エステル及び/又はその塩とを組み合わせて使用する場合、これらの比率については、特制限されないが、例えば(B-1)ポリオキシエチレンアルキルエーテル100重量部当たり、(B-2)ポリオキシエチレンアルキルエーテル無機酸エステル及び/又はその塩が総量で30~430重量部、好ましくは50~300重量部、より好ましくは80~200重量部が挙げられる。
【0021】
本発明の外用乳化組成物における(B)成分の含有量としては、例えば、(B)成分の総量で、0.3~10重量%、好ましくは1.4~7.4重量%、より好ましくは1.9~7.4重量%、更に好ましくは2.3~5.9重量%が挙げられる。より具体的には、(B)成分の種類毎の好適な含有量は、以下の通りである。
(B-1)ポリオキシエチレンアルキルエーテルの場合:総量で0.5~2重量%、好ましくは0.6~1.7重量%、より好ましくは1~1.7重量%。
【0022】
(B-2)ポリオキシエチレンアルキルエーテル無機酸エステル及び/又はその塩の場合:総量で0.3~7重量%、好ましくは0.5~6重量%、より好ましくは0.8~6重量%、更に好ましくは0.9~4.5重量%。
【0023】
また、本発明の外用乳化組成物において、油性成分と(B)成分との比率については、特に制限されないが、例えば、油性成分の総量100重量部当たり、(B)成分が総量で5重量部以上、好ましくは5~75重量部、より好ましくは5~50重量部、更に好ましくは8~42.3重量部、更により好ましくは10~42.3重量部、特に好ましくは13.1~33.7重量部が挙げられる。本明細書において、油性成分とは、油性基剤、及び必要に応じて配合される油性の薬理成分や油性の添加剤である。
【0024】
外用乳化組成物の粘度の上昇をより一層効果的に抑制するという観点から、(B)成分の種類毎の油性成分との比率については、以下の範囲が挙げられる。
(B-1)ポリオキシエチレンアルキルエーテルの場合:油性成分の総量100重量部当たり、(B-1)ポリオキシエチレンアルキルエーテルが総量で、好ましくは3重量部以上、より好ましくは3~15重量部、更に好ましくは3.4~9.7重量部、特に好ましくは5.7~9.7重量部。
(B-2)ポリオキシエチレンアルキルエーテル無機酸エステル及び/又はその塩の場合:油性成分の総量100重量部当たり、(B-2)ポリオキシエチレンアルキルエーテル無機酸エステル及び/又はその塩が総量で、好ましくは2~35重量部、より好ましくは2.9~34.3重量部、更に好ましくは5.1~25.7重量部。
【0025】
[(C)ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び/又はポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル]
本発明の外用乳化組成物は、前記(B)成分に加えて、界面活性剤として更にポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び/又はポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル((C)成分と表記することもある)を含んでいてもよい。本発明の外用乳化組成物において、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び/又はポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルが含まれる場合には、粘度の上昇に対する抑制効果を更に向上させることが可能になる。
【0026】
(C)成分として使用される各界面活性剤のHLB値としては、例えば、8~20、好ましくは10~20、より好ましくは12~20が挙げられる。このようなHLB値を有する(C)成分を使用することによって、粘度の上昇に対する抑制効果をより一層向上させることが可能になる。
【0027】
(C)成分の内、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルとは、ポリエチレングリコールが脂肪酸とエステル結合している界面活性剤である。ポリエチレングリコール脂肪酸エステルにおけるエチレンキサイドの付加モル数については、特に制限されないが、例えば、6~150、好ましくは10~100、更に好ましくは40~70が挙げられる。ポリエチレングリコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよく、また飽和型又は不飽和型のいずれであってもよい。ポリエチレングリコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数については、特に制限されないが、例えば、8~22、好ましくは12~22、更に好ましくは14~22が挙げられる。ポリエチレングリコール脂肪酸エステル1分子において、ポリエチレングリコールにエステル結合しているポ脂肪酸ルの数としては、例えば、1又は2個(即ち、モノエステル又はジエステル)、好ましくは1個(即ち、モノエステル)が挙げられる。ポリエチレングリコール脂肪酸エステルとして、具体的には、モノカプリル酸ポリエチレングリコール、モノカプリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノミスチレイン酸ポリエチレングリコール、モノパルミチン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノリノール酸ポリエチレングリコール、モノリノレイン酸ポリエチレングリコール、モノエイコサン酸ポリエチレングリコール、モノアラキドン酸ポリエチレングリコール、モノベヘン酸ポリエチレングリコール等のモノ脂肪酸ポリエチレングリコール;ジカプリル酸ポリエチレングリコール、ジカプリン酸ポリエチレングリコール、ジラウリン酸ポリエチレングリコール、ジミスチレイン酸ポリエチレングリコール、ジパルミチン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、ジリノール酸ポリエチレングリコール、ジリノレイン酸ポリエチレングリコール、ジエイコサン酸ポリエチレングリコール、ジアラキドン酸ポリエチレングリコール、ジベヘン酸ポリエチレングリコール等のジ脂肪酸ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0028】
(C)成分の内、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は、ポリオキシエチレン鎖が硬化ヒマシ油とエーテル結合している界面活性剤である。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油におけるポリオキシエチレン鎖のエチレンキサイドの付加モル数については、特に制限されないが、例えば、20~100、好ましくは40~80、更に好ましくは40~60が挙げられる。
【0029】
(C)成分の内、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルとは、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン鎖がアルキル基とエーテル結合している界面活性剤である。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルにおけるポリオキシエチレンポリオキシプロピレン鎖のエチレンキサイドの付加モル数については、特に制限されないが、例えば、10~30、好ましくは15~25、更に好ましくは20~25が挙げられる。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルにおけるにおけるポリオキシエチレンポリオキシプロピレン鎖のプロピレンオキサイドの付加モル数については、特に制限されないが、例えば、2~8、好ましくは4~8、更に好ましくは4~6が挙げられる。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを構成するアルキル基は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよい。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルを構成するアルキル基の炭素数については、特に制限されないが、例えば、8~22、好ましくは12~22、更に好ましくは14~22が挙げられる。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルとして、具体的には、POE・POPオクチルエーテル、POE・POPイソオクチルエーテル、POE・POPデシルエーテル、POE・POPイソデシルエーテル、POE・POPラウリルエーテル、POE・POPミリスチルエーテル、POE・POPセチルエーテル、POE・POPイソセチルエーテル、POE・POPステアリルエーテル、POE・POPイソステアリルエーテル、POE・POPアラキジルエーテル、POE・POPベヘニルエーテル等が挙げられる。ここで、「POE」はポリオキシエチレン、「POP」はポリオキシプロピレンを示す。これらのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
(C)成分として、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルの中から1種を選択して単独で使用してもよく、これらの中から2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
これらの(C)成分の中でも、粘度の上昇に対する抑制効果をより一層有効に向上させるという観点から、好ましくはポリエチレングリコール脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、より好ましくはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が挙げられる。
【0032】
本発明の外用乳化組成物に(C)成分を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、(C)成分の総量で0.5~9重量%、好ましくは1~3重量%、が挙げられる。より具体的には、(C)成分の種類毎の好適な含有量は、以下の通りである。
ポリエチレングリコール脂肪酸エステルの場合:総量で0.5~3重量%、好ましくは1.1~2.9重量%、より好ましくは1.5~2.9重量%。
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の場合:総量で0.5~3重量%、好ましくは1~2.3重量%、より好ましくは1.5~2.5重量%。
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルの場合:総量で0.5~3重量%、好ましくは1~2.3重量%、より好ましくは1.5~2.5重量%。
【0033】
また、本発明の外用乳化組成物に(C)成分を含有させる場合、油性成分と(C)成分との比率については、特に制限されないが、例えば、油性成分の総量100重量部当たり、(C)成分が総量で2.8~17重量部、好ましくは6.3~16.6重量部、より好ましくは8.6~16.6重量部が挙げられる。
【0034】
[油性基剤]
本発明の外用乳化組成物は、油相を構成する油性基剤を含む。油性基剤としては、薬学的に許容されるものであることを限度として特に制限されないが、例えば、高級アルコール、鉱物油、エステル油、植物油、動物油、コレステロール、脂肪酸、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0035】
高級アルコールにおける1分子中の炭素原子数について、6以上であればよいが、好ましくは6~34、更に好ましくは14~22が挙げられる。高級アルコールとして、具体的には、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール、セタノール、オレイルアルコール等の直鎖状高級アルコール;ノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、等の分枝鎖状高級アルコールが挙げられる。これらの高級アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
鉱物油としては、具体的には、パラフィン、水添ポリイソブテン、流動パラフィン、ゲル化炭化水素(プラスチベース等)、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が挙げられる。これらの鉱物油は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
エステル油としては、具体的には、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル、アジピン酸イソプロピル、アジピン酸イソブチル、セバシン酸イソプロピル、エチルヘキサン酸セチル、エチルヘキサン酸パルミチル、ミリスチン酸ミリスチル、パルチミン酸イソプロピル、パルチミン酸セチル、オレイン酸エチル、ステアリン酸バチル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、リノール酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ステアリン酸ブチル、ラウリル酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、安息香酸(炭素数12~15)アルキル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル等の脂肪酸1分子が1価又は多価アルコール1分子に結合したモノエステル油;ジカプリル酸プロピレングリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ジエチルヘキサン酸グリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジヘプチルウンデカン酸グリセリン、ジ(カプリル酸/カプリン酸)ブチレングリコール等の脂肪酸2分子が多価アルコール1分子に結合したジエステル油;トリエチルヘキサノイン(トリエチルヘキサン酸グリセリル)、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリイソオクタン酸グリセリル、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリン、トリ2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド等の脂肪酸3分子が3価以上の多価アルコール1分子に結合したトリエステル;テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル等の脂肪酸4分子が4価以上の多価アルコール1分子に結合したテトラエステル油;セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ2-エチルヘキシル、リンゴ酸ジイソステアリル、ナフタリンジカルボン酸ジエチルヘキシル、アジピン酸ジ2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ2-ヘプチルウンデシル、コハク酸ジ2-エチルヘキシル等の1価アルコール2分子がジカルボン酸1分子に結合したジエステル油;ラノリン脂肪酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、マカデミアナッツ脂肪酸コレステリル等の脂肪酸コレステリル等が挙げられる。これらのエステル油は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
植物油としては、具体的には、オリーブ油、小麦胚芽油、こめ油、サフラワー油、大豆油、つばき油、とうもろこし油、なたね油、ごま油、ひまし油、ひまわり油、綿実油、落花生油、ホホバ油、硬化油、アボガド油、ウイキョウ油、チョウジ油、ハッカ油、ユーカリ油、レモン油、オレンジ油、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、木ロウ、ライスワックス、等が挙げられる。これらの植物油は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
動物油としては、具体的には、ラード、魚油、スクワラン、蜜蝋等が挙げられる。これらの動物油は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
脂肪酸における1分子中の炭素原子数について、6以上であればよいが、好ましくは6~34、更に好ましくは14~22が挙げられる。また、脂肪酸は、飽和型又は不飽和型のいずれであってもよい。脂肪酸として、具体的には、プリン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、アラキドン酸等が挙げられる。これらの脂肪酸は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0041】
シリコーンオイルとしては、具体的には、メチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、アクリルシリコーン、フェニル変性シリコーン等が挙げられる。これらのシリコーンオイルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
これらの油性基剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの油性基剤の中でも、好ましくは高級アルコール、エステル油、鉱物油、動物油、及びコレステロールが挙げられる。
【0043】
本発明の外用乳化組成物における油性基剤の含有量については、特に制限されないが、例えば、油性基剤の総量で10~25重量%、好ましくは14~20重量%、より好ましくは15~19重量%が挙げられる。
【0044】
[水相基剤]
本発明の外用乳化組成物には、水相を形成する基剤として水が含まれる。本発明の外用乳化組成物における水の含有量については、特に制限されないが、例えば、50~85重量%、好ましくは55~80重量%、より好ましくは60~75重量%が挙げられる。
【0045】
[多価アルコール]
本発明の外用乳化組成物には、多価アルコールが含まれていてもよい。多価アルコールが含まれていることにより、保湿効果の向上等を図れることに加え、粘度の低下をより一層好適に実現することが可能になる。多価アルコールは、水相用原料液に配合して乳化させてもよいが、油相用原料液に配合して乳化させることにより、粘度の上昇をより一層効果的に抑制した両連続マイクロエマルション形態を形成することが可能になる。
【0046】
多価アルコールとしては、薬学的に許容されることを限度として、特に制限されないが、例えば、エチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、イソプレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等が挙げられる。これらの多価アルコールの中でも、好ましくはグリセリンが挙げられる。
【0047】
これらの多価アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0048】
本発明の外用乳化組成物に、多価アルコールを含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、2~10重量%、好ましくは4~15重量%、更により好ましくは4~10重量%、特に好ましくは5~7重量%が挙げられる。
【0049】
[増粘剤]
本発明の外用乳化組成物には、所望の粘性の付与等のために、必要に応じて増粘剤が含まれていてもよい。増粘剤は水溶性成分であるので、本発明の外用乳化組成物に増粘剤を含有させる場合、増粘剤は水相に含まれる。
【0050】
増粘剤としては、薬学的に許容されることを限度として、特に制限されないが、例えば、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、デキストラン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体、ポリアクリル酸ナトリウムベントナイト、デキストリン脂肪酸エステル、ペクチン等が挙げられる。これらの増粘剤の中でも、好ましくはカルボキシビニルポリマーが挙げられる。
【0051】
これらの増粘剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
本発明の外用乳化組成物に、増粘剤を含有させる場合、その含有量については、特に制限されないが、例えば、0.05~1重量%、好ましくは0.2~0.8重量%、より好ましくは0.4~0.6重量%が挙げられる。
【0053】
[その他の成分]
本発明の外用乳化組成物は、前述する成分の他に、必要に応じて、薬理成分を含有することができる。このような薬理成分としては、例えば、抗炎症剤(グリチルリチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸メチル、グリチルリチン酸ステアリル、グリチルレチン酸ピリドキシン、グリチルレチン酸ステアリル、グリチルレチン酸グリセリル、グリチルレチン酸モノグルクロニド、アラントイン、サリチル酸、サリチル酸グリコール、サリチル酸メチル、インドメタシン、フェルビナク、ジクロフェナクナトリウム、ロキソプロフェンナトリウム等)、ステロイド剤(デキサメタゾン、塩酸デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、塩酸ヒドロコルチゾン、吉草酸プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン等)、抗ヒスタミン剤(ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン等)、局所麻酔剤(リドカイン、ジブカイン、プロカイン、テトラカイン、ブピパカイン、メピパカイン、クロロプロカイン、プロパラカイン、メプリルカイン又はこれらの塩、安息香酸アルキルエステル(例えばアミノ安息香酸エチル、塩酸パラブチルアミノ安息香酸ジエチルアミノエチル)、オルソカイン、オキセサゼイン、オキシポリエントキシデカン、ロートエキス、ペルカミンパーゼ、テシットデシチン等)、殺菌剤(塩化ベンザルコニウム、塩化デカリニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、イソプロピルメチルフェノール、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、アンモニア水、スルファジアジン、乳酸、フェノール等)、鎮痒剤(クロタミトン、チアントール等)、皮膚保護剤(コロジオン、ヒマシ油等)、血行促進成分(ニコチン酸ベンジル、ノニル酸ワニリルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、カプサイシン、トウガラシエキス等)、脂溶性ビタミン(トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル、トコトリエノール、レチノール、ビタミンD2、ビタミンD3、ビタミンD4等)、水溶性ビタミン(チアミン、リボフラビン、パントテン酸、ピリドキシン、ピリドキシン塩酸塩、葉酸、ジヒドロ葉酸、シアノコバラミン、メチルコバラミン、アスコルビン酸、アスコルビン酸グルコシド、アスコルビルリン酸等)、ムコ多糖類(コンドロイチン硫酸ナトリウム、グルコサミン、ヒアルロン酸等)等が挙げられる。これらの薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの薬理成分は、水溶性であれば水相に含まれ、油性であれば油相に含まれる。本発明の外用乳化組成物において、これらの薬理成分を含有させる場合、その含有量については、使用する薬理成分の種類、期待する効果等に応じて適宜設定すればよい。
【0054】
また、本発明の外用乳化組成物は、必要に応じて、前述する成分の他に、製剤化等に必要とされる他の添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤については、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、低級アルコール(エタノール、イソプロパノール等)、前記(B)成分及び(C)成分以外の界面活性剤、防腐剤(メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸等)、着香剤(シトラール、1,8-シオネール、シトロネラール、ファルネソール等)、着色剤、pH調整剤(リン酸、塩酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、酒石酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等)、湿潤剤(イノシトール、dl-ピロリドンカルボン酸ナトリウム液、D-ソルビトール液、マクロゴール等)、安定化剤(ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エデト酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、L-アルギニン、L-アスパラギン酸、DL-アラニン、グリシン、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、クロロゲン酸、カテキン、ローズマリー抽出物等)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、緩衝剤、溶解補助剤、可溶化剤、保存剤等の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、水溶性であれば水相に含まれ、油性であれば油相に含まれる。本発明の外用乳化組成物において、これらの添加剤を含有させる場合、その含有量については、使用する添加剤の種類等に応じて適宜設定すればよい。
【0055】
[粘度]
本発明の外用乳化組成物は、ヘパリン類似部室を含みながらも、粘度の上昇が抑制されており、肌に馴染ませ易くなっている。本発明の外用乳化組成物の粘度については、含有する成分の種類や濃度等に応じて異なるが、例えば、25℃での粘度として、100,000cP以下、好ましくは20,000~80,000cP、より好ましくは30,000~70,000cPが挙げられる。本明細書において、25℃での粘度は、B型回転粘度計(BROOKFIELD社製DV-II)にて、スピンドル(T-F型)を使用し、回転数3rpmで、回転を開始して1分経過した時点から1分間の粘度を平均することにより求められる値である。
【0056】
[乳化形態・製剤形態]
本発明の外用乳化組成物の乳化形態については、特に制限されないが、粘度の上昇をより一層効果的に抑制させるという観点から、好ましくは、両連続マイクロエマルション形態が挙げられる。両連続マイクロエマルションとは、界面活性剤の平均曲率が略ゼロ(油相-水相界面張力が略ゼロ)になり、油相と水相が共に連続した状態(連続相)になっている乳化形態を指す。
【0057】
本発明の外用乳化組成物が両連続マイクロエマルション形態である場合、両連続相の中に、水相エマルションやラメラ液晶が分散していてもよい。
【0058】
本発明の外用乳化組成物の製剤形態については、特に制限されないが、例えば、乳液状(乳化系ローション剤等)、クリーム状、ゲル状等が挙げられる。
【0059】
本発明の外用乳化組成物は、経皮適用される外用剤として好適に使用される。本発明の外用乳化組成物として、具体的には、外用医薬品、外用医薬部外品、化粧料、皮膚洗浄料等が挙げられる。
【0060】
[製造方法]
本発明の外用乳化組成物は、前記(A)成分及び水を含む水相用原料液と、前記(B)成分、及び油性成分を含む油相用原料液とを調製し、当該水相用原料液と油相用原料液を乳化させることにより調製できる。また、ヘパリン類似物質以外の水溶性成分(増粘剤、水溶性の薬理成分や添加剤等)を配合する場合、当該水溶性成分は水相用原料液に配合すればよい。但し、水溶性成分の内、多価アルコール(特にグリセリン)については、油相用原料液に配合することが好ましい。このように多価アルコール(特にグリセリン)を油相用原料液に配合することにより、粘度の上昇が効果的に抑制された両連続マイクロエマルション形態を形成することができる。
【0061】
2.粘度上昇抑制方法
本発明の粘度上昇抑制方法は、ヘパリン類似物質を含む外用乳化組組成物における粘度の上昇を抑制する方法であって、外用乳化組成物において、(A)ヘパリン類似物質と共に、(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル無機酸エステル、及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種を配合することを特徴とする。
【0062】
本粘度上昇抑制方法において、粘度上昇抑制方法で使用される(A)成分の配合量、(B)成分の種類や配合量、その他に配合される成分やその配合量、外用乳化組成物の乳化形態、粘度、製剤形態等については、前記「1.外用乳化組成物」の欄に記載の通りである。
【実施例
【0063】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0064】
なお、以下に示す実施例、比較例、及び参考例等で使用した主な成分の組成や入手元については、以下の通りである。
POEステアリルエーテル:エチレンオキサイドの平均付加モル数が20であるポリオキシエチレンステアリルエーテル、HLB値:18.0、「NIKKOL BS-20」、日本サーファクタント工業株式会社
モノステアリン酸ポリエチレングリコール:エチレンオキサイドの平均付加モル数が55であるモノステアリン酸ポリエチレングリコール、HLB値:18.0、「NIKKOL MYS-55MV」、日本サーファクタント工業株式会社
POEセチルエーテルリン酸エステルナトリウム:エチレンオキサイドの平均付加モル数が5であるポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸エステルナトリウム、HLB値:10.0、「NIKKOL TCP-5」、日本サーファクタント工業株式会社
POP・POEセチルエーテル:エチレンオキサイドの平均付加モル数が20、プロピレンオキサイドの平均付加モル数が4であるポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、HLB値:16.5、「NIKKOL PBC-34」、日本サーファクタント工業株式会社
POE硬化ヒマシ油:エチレンオキサイドの平均付加モル数が60であるポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、HLB値:14.0、「NIKKOL HCO-60」、日本サーファクタント工業株式会社
高級アルコール:セタノール(高級アルコール工業株式会社)30重量%、ステアリルアルコール(高級アルコール工業株式会社)20重量%、及びポリオキシエチレンアラキルエーテル(20E.O.)・ステアリルアルコール混合物(「NIKKOL WAX-230」、日本ケミカルズ株式会社)50重量%の混合物
ワセリン:「日局白色ワセリン」
流動パラフィン:「P-350P」、株式会社MPRESCO
スクワラン:「スクワラン」、日本ケミカルズ株式会社
パルミチン酸セチル:「NIKKOL N-SPV」、日本ケミカルズ株式会社
コレステロール:「理研コレステロール」、理研ビタミン株式会社
カルボキシビニルポリマー:「ジュンロン PW-312S」、東亜合成株式会社
グリセリン:「日局グリセリン」、(坂本薬品工業株式会社)社製
ヘパリン類似物質:(アピ株式会社)社製
【0065】
試験例
(1)外用乳化組成物の製造
表1及び2に示す外用乳化組成物を調製した。具体的には、先ず、表1及び2に示す油相用原料液の各成分を60℃程度に加温して混合して油相用原料液を調製し、また表1及び2に示す水相用原料液の各成分を60℃程度に加温して混合して水相用原料液を調製した。次いで、60℃程度に加温した状態で、油相用原料液に水相用原料液を添加して混合することにより乳化させ、外用乳化組成物を調製した。
【0066】
(2)外用乳化組成物の乳化形態の確認
クライオ電子顕微鏡を使用して各外用乳化組成物の構造を観察した。また、小角X線散乱法(SAXAS)によっても各外用乳化組成物の構造を観察した。
【0067】
(3)外用乳化組成物の粘度の測定
B型回転粘度計(BROOKFIELD社製DV-II)を用い、φ20mmのガラス容器に深さ約30mmとなるまで各外用乳化組成物を充填し、容器に充填した外用乳化組成物の表面から15mm程度の位置にスピンドル(T-F型)を挿入し、3rpmで回転を開始して1分経過した時点から1分間の粘度を平均することにより求めた。なお、粘度の測定は、25℃の温度条件下で行った。
【0068】
(4)肌への馴染ませ易さの評価
10名のモニターによって各外用乳化組成物の肌への馴染ませ易さを評価した。具体的には、各外用乳化組成物を約0.05gを手の甲に塗布し、塗布時の肌への馴染ませ易さを評価した。評価は、肌に馴染ませ難いを「1点」、肌に馴染ませ易いを「10点」とするVAS(Visual Analogue Scale)法によるアンケートによって行い、10名のモニターのアンケート結果の平均値を以下の評価基準に従って分類した。
<評価基準>
◎◎:平均点が8点以上
◎ :平均点が7点以上8点未満
○ :平均点が5点以上7点未満
△ :平均点が3点以上5点未満
× :平均点が3点未満
【0069】
(5)結果
結果を表1及び2に示す。実施例1~17、参考例1、及び比較例1の外用乳化組成物では、いずれも、クライオ透過型電子顕微鏡による観察によって両連続マイクロエマルション形態であることが確認され、小角X線散乱及び回折法によって両連続相中に200nm程度の水相エマルジョン及びラメラ液晶が分散していることが確認された。
【0070】
また、ヘパリン類似物質を含む外用乳化組成物(比較例1)では、ヘパリン類似物質を含まない外用乳化組成物(参考例1)に比べて、粘度が高く、肌に馴染ませ難くなっていた。これに対して、ヘパリン類似物質と共に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテル無機酸エステルの塩を含む外用乳化組成物(実施例1~17)では、ヘパリン類似物質を含まない外用乳化組成物(参考例1)よりも低い粘度になっており、肌に馴染ませ易くなっていた。特に、界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルキルエーテル無機酸エステルの塩に加えて、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合した場合には、格段効果的に粘度が低減され、肌への馴染ませ易さがより一層良好であった。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】