(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】流量測定装置及び流量測定方法
(51)【国際特許分類】
G01F 7/00 20060101AFI20221221BHJP
G01F 1/46 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
G01F7/00
G01F1/46
(21)【出願番号】P 2018187071
(22)【出願日】2018-10-02
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】大槻 喜則
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/095241(WO,A2)
【文献】特開平02-068108(JP,A)
【文献】特開2002-250649(JP,A)
【文献】特開2018-096737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスが流れる流路に接続される第1流路と、
前記第1流路に設けられ、第1測定レンジ及び第1応答速度を有する差圧計である第1流量変換器と、
前記ガスが流れる流路に接続され、又は、前記第1流路において前記第1流量変換器をバイパスするように接続された第2流路と、
前記第2流路に設けられ、前記第1測定レンジよりも低流量側に狭い第2測定レンジを有し、第2応答速度を有する差圧計である第2流量変換器と、
前記第2流路において、前記第2流量変換器の上流側及び下流側それぞれに設けられ、前記第2応答速度を前記第1応答速度よりも遅いものとするキャピラリと、
前記第1流量変換器及び前記第2流量変換器を同時に用いて前記第2測定レンジに含まれる流量を測定する場合に、前記第2流量変換器の出力を用いて前記第1流量変換器の出力を補正して流量を算出する流量算出部とを備える、流量測定装置
。
【請求項2】
前記流量算出部は、前記第2流量変換器の出力と前記第1流量変換器の出力の平均値とが一致するように前記第1流量変換器の出力を補正する、請求項1記載の流量測定装置。
【請求項3】
前記流量算出部は、算出した流量の平均値が前記第2測定レンジよりも高流量側の流量測定時には、前記第1流量変換器の出力を用いて流量を算出する、請求項1又は2に記載の流量測定装置。
【請求項4】
前記流量算出部は、算出した流量の平均値が前記第2測定レンジよりも高流量側の流量測定時には、所定の固定値を用いて前記第1流量変換器の出力を補正する、請求項1又は2に記載の流量測定装置。
【請求項5】
前記第2
流路において、前記第2流量変換器の上流側及び下流側に設けられた大気開放弁をさらに備え、
前記流量算出部は、前記大気開放弁を開放することによって、前記第2流量変換器のドリフトを補正する、請求項1乃至4の何れか一項に記載の流量測定装置。
【請求項6】
ガスが流れる流路に接続される第1流路に第1測定レンジ及び第1応答速度を有する差圧計である第1流量変換器を設け、
前記ガスが流れる流路に接続され、又は、前記第1流路において前記第1流量変換器をバイパスするように接続された第2流路に前記第1測定レンジよりも低流量側に狭い第2測定レンジを有し、第2応答速度を有する差圧計である第2流量変換器を設け、
前記第2流路において、前記第2流量変換器の上流側及び下流側それぞれにキャピラリを設けて、前記第2応答速度を前記第1応答速度よりも遅いものとし、
前記第1流量変換器及び前記第2流量変換器を同時に用いて前記第2測定レンジに含まれる流量を測定する場合に、前記第2流量変換器の出力を用いて前記第1流量変換器の出力を補正して流量を算出する、流量測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量測定装置及び流量測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ピトー管流量計、ベンチュリ流量計、ラミナー流量計又はオリフィス流量計などの差圧式流量計において、ダイナミックレンジ(測定レンジ)を拡大する場合には、測定レンジの異なる流量計を設けることが考えられている。
【0003】
例えば特許文献1に示すように、大流量に対応した測定レンジを有する流量計と、小流量に対応した測定レンジを有する流量計とを設けることによって、ダイナミックレンジを拡大するものが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば排ガス流量のように平均流量が小さい割に脈動によるピーク流量が大きい流量を測定する場合には、上記のように単純に測定レンジの異なる複数の流量計を設ける構成では、大流量側の流量計の温度変化などに起因するドリフトの影響により、測定精度を向上させることが難しい。
【0006】
そこで本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、脈動によるピーク流量が大きい流量を精度良く測定することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る流量測定装置は、第1測定レンジ及び第1応答速度を有する第1流量変換器と、前記第1測定レンジよりも低流量側に狭い第2測定レンジを有し、第2応答速度を有する第2流量変換器と、前記第1流量変換器及び前記第2流量変換器を同時に用いて前記第2測定レンジに含まれる流量を測定する場合に、前記第2流量変換器の出力を用いて前記第1流量変換器の出力を補正して流量を算出する流量算出部とを備えることを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、第1流量変換器よりも低流量側に狭い測定レンジを有する第2流量変換器の流量を用いて第1流量変換器の出力を補正することで、第1流量変換器をオフセット補正することができ、第2測定レンジにおいて第1流量変換器の測定誤差を低減することができる。その結果、脈動によるピーク流量が大きい流量を精度良く測定することができる。また、第1流量変換器の出力をリアルタイムに補正して流量を算出することもできる。さらに、第1流量変換器及び第2流量変換器を同時に用いて流量を測定するので、2つの流量変換器を切り替えた場合に生じる流量の不連続的な変化などの切り替えショックが無くなり、流量を精度良く測定することができる。
【0009】
オフセット補正をより簡単に且つ精度良く行うためには、前記第2応答速度は、前記第1応答速度よりも遅いものであることが望ましい。
【0010】
第1流量変換器の出力を精度良く補正するためには、前記流量算出部は、前記第2流量変換器の出力と前記第1流量変換器の出力の平均値とが一致するように前記第1流量変換器の出力を補正することが望ましい。
【0011】
流量算出部が算出した流量の平均値が第2測定レンジよりも高流量側では第2流量変換器の測定精度が低下してしまうため、第2流量変換器の出力をそのまま用いることが難しい。このため、前記流量算出部は、算出した流量の平均値(平均流量)が前記第2測定レンジよりも高流量側の流量測定時には、前記第1流量変換器の出力を用いて流量を算出することが望ましい。
【0012】
また、前記流量算出部は、算出した流量の平均値が前記第2測定レンジよりも高流量側の流量測定時には、所定の固定値を用いて前記第1流量変換器の出力を補正することが望ましい。ここで所定の固定値としては、予め定めた値であってもよいし、直近の第2測定レンジにおける第2流量変換器の出力であっても良い。
【0013】
流量測定装置において、前記第1流量変換器及び前記第2流量変換器は、差圧計であることが考えられる。
この場合、前記第2流路において、前記第2流量変換器の上流側及び下流側に設けられた大気開放弁をさらに備え、前記流量算出部は、前記大気開放弁を開放することによって、前記第2流量変換器のドリフトを補正することが望ましい。
この構成であれば、第2流量変換器のドリフトを補正することができる。例えば、流量算出部が算出した流量の平均値が前記第2測定レンジよりも高流量側であり第1流量変換器のみで計測可能な条件下において、前記大気開放弁を開放することによって第2流量変換器を補正することができる。
【0014】
また本発明に係る流量測定方法は、第1測定レンジ及び第1応答速度を有する第1流量変換器、及び前記第1測定レンジよりも低流量側に狭い第2測定レンジを有し、前記第1応答速度よりも遅い第2応答速度を有する第2流量変換器を流路に設け、前記第2測定レンジに含まれる流量測定時において、前記第2流量変換器の出力を用いて前記第1流量変換器の出力を補正して流量を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上に述べた本発明によれば、測定レンジ及び応答速度が互いに異なる第1流量変換器及び第2流量変換器を用いることによって、脈動によるピーク流量が大きい流量を精度良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る流量測定装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】同実施形態の各流量変換器の出力により算出した流量の模式図である。
【
図3】同実施形態の第1流量変換器の出力補正を示す模式図である。
【
図4】本発明の変形実施形態に係る流量測定装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る流量測定装置について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
<装置構成>
本実施形態の流量測定装置100は、例えば内燃機関から排出される排ガスの流量を測定するものであり、排ガス中の成分を分析する排ガス分析装置とともに用いられるものである。
【0019】
具体的にこの流量測定装置100は、例えばピトー管式流量計等の差圧式流量計を用いたものであり、
図1に示すように、排ガス等のガスが流れる流路に接続される接続ポートP1、P2を有する第1流路L1と、当該第1流路L1に設けられた第1流量変換器2と、第1流路L1において第1流量変換器2をバイパスするように接続された第2流路L2と、当該第2流路L2に設けられた第2流量変換器3と、第1流量変換器2及び第2流量変換器3の出力を取得して所定の演算を行う演算装置6とを備えている。なお、接続ポートP1、P2の一方は、ピトー管の静圧側又は動圧側の一方に接続され、接続ポートP1、P2の他方は、ピトー管の静圧側又は動圧側の他方に接続されている。
【0020】
第1流量変換器2は差圧計であり、流量に応じた差圧を出力するものである。この第1流量変換器2は、
図2に示すように、第1流路L1を流れる排ガスの脈動のピーク流量が測定可能な第1測定レンジを有するとともに、排ガスの脈動に追従して測定可能な第1応答速度を有するものである。
【0021】
第2流量変換器3は差圧計であり、流量に応じた差圧を出力するものである。この第2流量変換器3は、
図2に示すように、第1測定レンジよりも低流量側第2測定レンジを有し、第1応答速度よりも遅い第2応答速度を有するものである。第2流量変換器3は、第1流量変換器2よりも応答速度が遅いので排ガスの脈動が低減された平均的な流量を測定することになる。
【0022】
第2流路L2には、第2流量変換器3の上流側及び下流側には、排ガスの脈動を低減するための脈動低減機構であるキャピラリ41、42が設けられている。また、第2流路L2において、上流側のキャピラリ41と第2流量変換器3との間に大気開放弁51が設けられるとともに、下流側のキャピラリ42と第2流量変換器3との間に大気開放弁52が設けられている。なお、前記脈動低減機構は必須の構成ではなく、設けなくても良い。
【0023】
演算装置6は、第2流量変換器3の出力を用いて第1流量変換器2の出力をリアルタイムに補正して流量を算出する機能を有している。
【0024】
具体的に演算装置6は、第1流量変換器2及び第2流量変換器3を同時に用いて第2測定レンジに含まれる流量を測定する場合に、第2流量変換器3の出力を用いて第1流量変換器2の出力を補正して流量を算出する流量算出部61とを備えている。
【0025】
流量算出部61は、
図3に示すように、第2測定レンジに含まれる流量測定時において、第2流量変換器3の出力と第1流量変換器2の出力の平均値とが一致するように第1流量変換器2の出力をリアルタイムにオフセット補正する。
【0026】
ここで、オフセットの補正の具体例としては、例えば以下である。
第1流量変換器2の応答時間をt1とし、第2流量変換器3の応答時間をt2とすると、t1<t2となる。このとき、第2流量変換器3の出力の点数が1個であるとすると、第1流量変換器2の出力の点数は1×(t2/t1)個となる。流量算出部61は、この第1流量変換器2の1×(t2/t1)個の出力の平均値を求めて、当該平均値と第2流量変換器3の出力との差を求めて、その差をオフセット量とする。流量算出部61は、第1流量変換器2の出力からオフセット量を差し引くことによって補正する。その他、流量算出部61は、第2流量変換器3の出力の点数をn個とし、第1流量変換器2の出力の点数をn×(t2/t1)個として、第2流量変換器3のn個の出力の平均値と、第1流量変換器2のn×(t2/t1)個の出力の平均値とからオフセット量を算出して、第1流量変換器2の出力からオフセット量を差し引くことによって補正してもよい。
【0027】
なお、流量算出部61は、第2測定レンジに含まれる流量測定時において、第1流量変換器2の平均値を算出することなく、単に第1流量変換器2の出力から第2流量変換器3の出力を差し引くことにより補正しても良い。
【0028】
また、流量算出部61は、算出した流量の平均値が第2測定レンジよりも高流量側の流量測定時には、所定の固定値を用いて第1流量変換器2の出力を補正して流量を算出する。なお、
図3では、簡単のため瞬時値を示している。本実施形態の流量算出部61は、直近の第2測定レンジにおける第2流量変換器3の出力を所定の固定値として用いている。その他、流量算出部61は、予め設定された固定値を用いて第1流量変換器2の出力を補正して流量を算出するようにしても良い。
【0029】
また、流量算出部61は、第2流路L2に設けられた大気開放弁51、52を開放することによって、第2流量変換器3の差圧がゼロとなるので、これによって、第2流量変換器3のドリフトを補正する。この補正のタイミングとしては、例えば、算出した流量の平均値が第2測定レンジよりも高流量側の流量測定時であり第1流量変換器2のみで計測可能な条件下である。なお、前記大気開放弁51、52は必須の構成ではなく、設けなくても良い。
【0030】
<本実施形態の効果>
本実施形態の流量測定装置100によれば、第1流量変換器2よりも低流量側の測定レンジを有し、第1流量変換器2よりも応答速度が遅い第2流量変換器3の出力を用いて第1流量変換器2の出力を補正することで、第1流量変換器2をオフセット補正することができ、第2測定レンジにおいて第1流量変換器2の測定誤差を低減することができる。その結果、脈動によるピーク流量が大きい流量を精度良く測定することができる。また、第1流量変換器2の出力をリアルタイムに補正して流量を算出することもできる。
【0031】
また、流量算出部61が算出した流量の平均値が第2測定レンジよりも高流量側の流量測定時においても、流量算出部61が所定の固定値を用いて第1流量変換器2の出力を補正するので、算出した流量の平均値が第2測定レンジよりも高流量側において第1流量変換器2の測定誤差を低減することができる。さらに、第1流量変換器2及び第2流量変換器3を同時に用いて流量を測定するので、2つの流量変換器を切り替えた場合に生じる流量の不連続的な変化などの切り替えショックが無くなり、流量を精度良く測定することができる。
【0032】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0033】
例えば、前記実施形態の流量変換器が差圧計である差圧式流量計を用いたものであったが、その他、電磁流量計、超音波流量計、渦流量計、コリオリ式流量計、容積式流量計、面積流量計、熱式流量計などの種々の流量計を用いても良い。
【0034】
また、前記実施形態では、接続ポートP1、P2を有する第1流路L1に第2流路L2を接続する構成であったが、
図4に示すように、接続ポートP1、P2を有する第1流路L1と、接続ポートP3、P4を有する第2流路L2とを直列的に設けても良い。この場合であっても、第1流路L1には第1流量変換器2が設けられ、第2流路L2には第2流量変換器3が設けられる。そして、演算装置6は、第2流量変換器3の出力を用いて第1流量変換器2の出力をリアルタイムに補正して流量を算出する。
【0035】
前記実施形態の流量算出部は、第1流量変換器の出力を第2流量変換器の出力を用いて補正した後に、その補正した出力を用いて流量を算出するものであったが、第1流量変換器の出力から第1流量を求め、第2流量変換器の出力から第2流量を求めて、第2流量を用いて第1流量を補正するようにしても良い。
【0036】
前記実施形態の第2流量変換器の第2応答速度は、第1流量変換器の第1応答速度よりも遅いものであっが、同じ又はよりよりも早いものであっても良い。この場合、例えば第1流量変換器の平均値を取る点数を第2流量変換器の平均値をとる点数よりも多くすることが考えられる。
【0037】
また、前記実施形態では、排ガスなどの気体の流量を測定するものであったが、流体の流量を測定するものであっても良い。
【0038】
さらに、第2流路に設ける脈動低減機構としては、キャピラリの他にバッファタンク等であっても良い。
【0039】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0040】
100・・・流量測定装置
L1・・・第1流路
2・・・第1流量変換器
L2・・・第2流路
3・・・第2流量変換器
51、52・・・大気開放弁
6・・・演算装置
61・・・流量算出部