(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】マルチ電子ビーム照射装置、マルチ電子ビーム検査装置及びマルチ電子ビーム照射方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/153 20060101AFI20221221BHJP
H01J 37/21 20060101ALI20221221BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20221221BHJP
H01J 37/22 20060101ALI20221221BHJP
H01J 37/04 20060101ALI20221221BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
H01J37/153 B
H01J37/21 B
H01J37/28 B
H01J37/22 502H
H01J37/04 B
H01L21/66 J
(21)【出願番号】P 2019007370
(22)【出願日】2019-01-18
【審査請求日】2021-12-09
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】317008610
【氏名又は名称】ニューフレアテクノロジー アメリカ,インク.
【氏名又は名称原語表記】NuFlare Technology America,Inc.
【住所又は居所原語表記】1294 Hammerwood Avenue,Sunnyvale,CA 94089,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】安藤 厚司
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 宗博
(72)【発明者】
【氏名】小川 力
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ハートレイ
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-199469(JP,A)
【文献】特開2015-109323(JP,A)
【文献】特開2013-196951(JP,A)
【文献】特表2010-519697(JP,A)
【文献】特表2014-519724(JP,A)
【文献】特開昭61-101944(JP,A)
【文献】特開平03-276547(JP,A)
【文献】特開平10-073424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射されるマルチ電子ビームを屈折させる電磁レンズと、
前記電磁レンズの磁場中に配置され、前記マルチ電子ビームの各ビームに対して個別にバイアス電位と偏向電位を印加可能な収差補正器と、
各ビームが前記バイアス電位と前記偏向電位とにより個別に軌道が修正された前記マルチ電子ビームを試料面に合焦する対物レンズと、
を備えたことを特徴とするマルチ電子ビーム照射装置。
【請求項2】
前記収差補正器は、
前記マルチ電子ビームが通過する複数の通過孔が形成された複数の基板と、
前記マルチ電子ビームの各ビームの通過孔毎にそれぞれ通過するビームを挟むように前記複数の基板の中段の基板上に配置される4極以上の電極で構成される複数の電極セットと、
を有することを特徴とする請求項1記載のマルチ電子ビーム照射装置。
【請求項3】
前記収差補正器は、前記複数の電極セットの電極セット毎に、前記4極以上の電極を用いて、対応するビームの非点収差を個別に補正することを特徴とする請求項2記載のマルチ電子ビーム照射装置。
【請求項4】
前記収差補正器は、前記複数の電極セットの電極セット毎に、前記4極以上の電極を用いて、対応するビームの前記試料面上での設計位置からの歪を個別に補正することを特徴とする請求項2記載のマルチ電子ビーム照射装置。
【請求項5】
前記収差補正器は、前記マルチ電子ビームのうち、中心ビームのビーム径と外側のビームのビーム径とが前記試料面上で同じサイズに
なるように補正することを特徴とする請求項1記載のマルチ電子ビーム照射装置。
【請求項6】
前記収差補正器は、前記マルチ電子ビームの各ビームの焦点位置を個別に補正することを特徴とする請求項1記載のマルチ電子ビーム照射装置。
【請求項7】
前記複数の基板の上段の基板と下段の基板には、グランド電位が印加されることを特徴とする請求項2記載のマルチ電子ビーム照射装置。
【請求項8】
入射される1次マルチ電子ビームを屈折させる電磁レンズと、
前記電磁レンズの磁場中に配置され、前記1次マルチ電子ビームの各ビームに対して個別にバイアス電位と偏向電位を印加可能な収差補正器と、
各ビームが前記バイアス電位と前記偏向電位とにより個別に軌道が修正された前記1次マルチ電子ビームを試料面に合焦する対物レンズと、
試料に前記1次マルチ電子ビームが照射されたことに起因して放出される2次マルチ電子ビームを検出する検出器と、
を備えたことを特徴とするマルチ電子ビーム検査装置。
【請求項9】
検出された2次マルチ電子ビームの像を検査画像として、前記検査画像と参照画像とを比較する比較回路をさらに備えたことを特徴とする請求項8記載のマルチ電子ビーム検査装置。
【請求項10】
電磁レンズにマルチ電子ビームの入射を受け、前記電磁レンズにより前記マルチ電子ビームを屈折させ、
前記電磁レンズの磁場中に配置される収差補正器により、前記マルチ電子ビームの各ビームに対して個別にバイアス電位と偏向電位を印加し、
各ビームが前記バイアス電位と前記偏向電位とにより個別に軌道が修正された前記マルチ電子ビームを対物レンズにより試料面に結像することを特徴とするマルチ電子ビーム照射方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチ電子ビーム照射装置、マルチ電子ビーム検査装置及びマルチ電子ビーム照射方法に関する。例えば、電子線によるマルチビームを照射して放出されるパターンの2次電子画像を取得してパターンを検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅はますます狭くなってきている。そして、多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。しかし、1ギガビット級のDRAM(ランダムアクセスメモリ)に代表されるように、LSIを構成するパターンは、サブミクロンからナノメータのオーダーになっている。近年、半導体ウェハ上に形成されるLSIパターン寸法の微細化に伴って、パターン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。よって、半導体ウェハ上に転写された超微細パターンの欠陥を検査するパターン検査装置の高精度化が必要とされている。その他、歩留まりを低下させる大きな要因の一つとして、半導体ウェハ上に超微細パターンをフォトリソグラフィ技術で露光、転写する際に使用されるマスクのパターン欠陥があげられる。そのため、LSI製造に使用される転写用マスクの欠陥を検査するパターン検査装置の高精度化が必要とされている。
【0003】
検査手法としては、半導体ウェハやリソグラフィマスク等の基板上に形成されているパターンを撮像した測定画像と、設計データ、あるいは基板上の同一パターンを撮像した測定画像と比較することにより検査を行う方法が知られている。例えば、パターン検査方法として、同一基板上の異なる場所の同一パターンを撮像した測定画像データ同士を比較する「die to die(ダイ-ダイ)検査」や、パターン設計された設計データをベースに設計画像データ(参照画像)を生成して、それとパターンを撮像した測定データとなる測定画像とを比較する「die to database(ダイ-データベース)検査」がある。撮像された画像は測定データとして比較回路へ送られる。比較回路では、画像同士の位置合わせの後、測定データと参照データとを適切なアルゴリズムに従って比較し、一致しない場合には、パターン欠陥有りと判定する。
【0004】
上述したパターン検査装置には、レーザ光を検査対象基板に照射して、その透過像或いは反射像を撮像する装置の他、検査対象基板上を電子ビームで走査(スキャン)して、電子ビームの照射に伴い検査対象基板から放出される2次電子を検出して、パターン像を取得する検査装置の開発も進んでいる。電子ビームを用いた検査装置では、さらに、マルチビームを用いた装置の開発も進んでいる。マルチビームでは、視野(FOV)を大きくすると、光学系の収差によって、ビームのボケが大きくなってしまう。ここで、荷電粒子線に対して光軸から離れるように偏向する凹レンズの機能を有する偏向器が複数配置された偏向器アレイ、レンズアレイ、及び四極子アレイを組み合わせた収差補正器を使って複数の荷電粒子線を偏向して、色収差や球面収差を補正することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。ボケの補正をビーム毎に行うと、収差補正器の補正電極に印加する電圧が大きく、電極で放電を引き起こす場合があり、高速に切り替えることが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の一態様は、マルチ電子ビームを照射する場合に、従来よりも小さい電位で収差或いは/及び歪等を小さくすることが可能な装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様のマルチ電子ビーム照射装置は、
入射されるマルチ電子ビームを屈折させる電磁レンズと、
電磁レンズの磁場中に配置され、マルチ電子ビームの各ビームに対して個別にバイアス電位と偏向電位を印加可能な収差補正器と、
各ビームがバイアス電位と偏向電位とにより個別に軌道が修正された前記マルチ電子ビームを試料面に合焦する対物レンズと、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様のマルチ電子ビーム検査装置は、
入射される1次マルチ電子ビームを屈折させる電磁レンズと、
電磁レンズの磁場中に配置され、1次マルチ電子ビームの各ビームに対して個別にバイアス電位と偏向電位を印加可能な収差補正器と、
各ビームがバイアス電位と偏向電位とにより個別に軌道が修正された1次マルチ電子ビームを試料面に合焦する対物レンズと、
試料に1次マルチ電子ビームが照射されたことに起因して放出される2次マルチ電子ビームを検出する検出器と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様のマルチ電子ビーム照射方法は、
電磁レンズにマルチ電子ビームの入射を受け、電磁レンズによりマルチ電子ビームを屈折させ、
電磁レンズの磁場中に配置される収差補正器により、マルチ電子ビームの各ビームに対して個別にバイアス電位と偏向電位を印加し、
各ビームがバイアス電位と偏向電位とにより個別に軌道が修正されたマルチ電子ビームを対物レンズにより試料面に結像することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、マルチ電子ビームを照射する場合に、従来よりも小さい電位で収差或いは/及び歪等を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す構成図である。
【
図2】実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
【
図3】実施の形態1における収差補正器の断面構成の一例と配置位置を説明するための断面図である。
【
図4】実施の形態1における収差補正器の各電極基板の一例の上面図である。
【
図5】実施の形態1の比較例における収差補正器による電子ビームの軌道補正を説明するための図である。
【
図6】実施の形態1における収差補正器による電子ビームの軌道補正を説明するための図である。
【
図7】実施の形態1における照射されるビームサイズの一例を示す図である。
【
図8】実施の形態1におけるディストーションの一例を示す図である。
【
図9】実施の形態1における非点の一例を示す図である。
【
図10】実施の形態1におけるマルチビーム検査方法の要部工程の一例を示すフローチャート図である。
【
図11】実施の形態1における半導体基板に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。
【
図12】実施の形態1におけるマルチビームの照射領域と測定用画素との一例を示す図である。
【
図13】実施の形態1における比較回路内の構成の一例を示す構成図である。
【
図14】実施の形態1の変形例における収差補正器の各電極基板の一例の上面図である。
【
図15】実施の形態2における電極セットのグループ化を説明するための図である。
【
図16】実施の形態2の変形例における電極セットのグループ化と電極配列の仕方とを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
また、以下、実施の形態では、個別ビーム検出器が搭載される装置の一例として、マルチビーム描画装置について説明する。但し、これに限るものではなく、例えば、パターンの欠陥を検査する検査装置等のマルチビームを照射する装置であれば、同様に搭載することができる。
【0013】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す構成図である。
図1において、基板に形成されたパターンを検査する検査装置100は、電子ビーム検査装置の一例である。また、検査装置100は、マルチ電子ビーム検査装置の一例である。さらに検査装置100は、電子ビーム照射装置の一例である。さらに検査装置100は、マルチ電子ビーム照射装置の一例である。検査装置100は、画像取得機構150、及び制御系回路160を備えている。画像取得機構150は、電子ビームカラム102(電子鏡筒ともいう。)(マルチビームカラムの一例)、検査室103、検出回路106、チップパターンメモリ123、ステージ駆動機構142、及びレーザ測長システム122を備えている。電子ビームカラム102内には、電子銃201、照明レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、転送レンズ218,219、収差補正器220、縮小レンズ205、制限アパーチャ基板206、対物レンズ207、主偏向器208、副偏向器209、一括ブランキング偏向器212、ビームセパレーター214、投影レンズ224,226、偏向器228、及びマルチ検出器222が配置されている。
【0014】
検査室103内には、少なくともXY平面上を移動可能なXYステージ105が配置される。XYステージ105上には、検査対象となる基板101(試料)が配置される。基板101には、露光用マスク基板、及びシリコンウェハ等の半導体基板が含まれる。基板101が半導体基板である場合、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されている。基板101が露光用マスク基板である場合、露光用マスク基板には、チップパターンが形成されている。チップパターンは、複数の図形パターンによって構成される。かかる露光用マスク基板に形成されたチップパターンが半導体基板上に複数回露光転写されることで、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されることになる。以下、基板101が半導体基板である場合を主として説明する。基板101は、例えば、パターン形成面を上側に向けてXYステージ105に配置される。また、XYステージ105上には、検査室103の外部に配置されたレーザ測長システム122から照射されるレーザ測長用のレーザ光を反射するミラー216が配置されている。マルチ検出器222は、電子ビームカラム102の外部で検出回路106に接続される。検出回路106は、チップパターンメモリ123に接続される。
【0015】
制御系回路160では、検査装置100全体を制御する制御計算機110が、バス120を介して、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、ステージ制御回路114、収差補正器制御回路121、レンズ制御回路124、ブランキング制御回路126、偏向制御回路128、補正データ生成回路130、磁気ディスク装置等の記憶装置109、モニタ117、メモリ118、及びプリンタ119に接続されている。また、偏向制御回路128は、DAC(デジタルアナログ変換)アンプ144,146,148に接続される。DACアンプ146は、主偏向器208に接続され、DACアンプ144は、副偏向器209に接続される。
【0016】
また、チップパターンメモリ123は、比較回路108に接続されている。また、XYステージ105は、ステージ制御回路114の制御の下に駆動機構142により駆動される。駆動機構142では、例えば、ステージ座標系におけるX方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X-Y-θ)モータの様な駆動系が構成され、XYステージ105が移動可能となっている。これらの、図示しないXモータ、Yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。XYステージ105は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能である。そして、XYステージ105の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。レーザ測長システム122は、ミラー216からの反射光を受光することによって、レーザ干渉法の原理でXYステージ105の位置を測長する。ステージ座標系は、例えば、マルチ1次電子ビームの光軸に直交する面に対して、X方向、Y方向、θ方向が設定される。
【0017】
電子銃201には、図示しない高圧電源回路が接続され、電子銃201内の図示しないフィラメントと引出電極間への高圧電源回路からの加速電圧の印加と共に、所定の引出電極(ウェネルト)の電圧の印加と所定の温度のカソードの加熱によって、カソードから放出された電子群が加速させられ、電子ビーム200となって放出される。照明レンズ202、転送レンズ218、転送レンズ219、縮小レンズ205、対物レンズ207、及び投影レンズ224,226は、例えば電磁レンズが用いられ、共にレンズ制御回路124によって制御される。また、ビームセパレーター214もレンズ制御回路124によって制御される。一括ブランキング偏向器212は少なくとも2極の電極群により構成され、ブランキング制御回路126によって制御される。主偏向器208は、少なくとも4極の電極群により構成され、電極毎に配置されるDACアンプ146を介して、偏向制御回路128によって制御される。同様に、副偏向器209は、少なくとも4極の電極群により構成され、電極毎に配置されるDACアンプ144を介して、偏向制御回路128によって制御される。また、収差補正器220は、収差補正器制御回路121によって制御される。また、偏向器228は、少なくとも4極の電極で構成され、電極毎に配置されるDACアンプ148を介して、偏向制御回路128にて制御される。
【0018】
ここで、
図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
【0019】
図2は、実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
図2において、成形アパーチャアレイ基板203には、2次元状の横(x方向)m
1列×縦(y方向)n
1段(m
1,n
1は2以上の整数)の穴(開口部)22がx,y方向に所定の配列ピッチで形成されている。
図2の例では、23×23の穴(開口部)22が形成されている場合を示している。各穴22は、共に同じ寸法形状の矩形で形成される。或いは、同じ外径の円形であっても構わない。これらの複数の穴22を電子ビーム200の一部がそれぞれ通過することで、マルチビーム20が形成されることになる。ここでは、横縦(x,y方向)が共に2列以上の穴22が配置された例を示したが、これに限るものではない。例えば、横縦(x,y方向)どちらか一方が複数列で他方は1列だけであっても構わない。また、穴22の配列の仕方は、
図2のように、横縦が格子状に配置される場合に限るものではない。例えば、縦方向(y方向)k段目の列と、k+1段目の列の穴同士が、横方向(x方向)に寸法aだけずれて配置されてもよい。同様に、縦方向(y方向)k+1段目の列と、k+2段目の列の穴同士が、横方向(x方向)に寸法bだけずれて配置されてもよい。
【0020】
図3は、実施の形態1における収差補正器の断面構成の一例と配置位置を説明するための断面図である。
図4は、実施の形態1における収差補正器の各電極基板の一例の上面図である。
図3及び
図4において、収差補正器220は、転送レンズ218の磁場中に配置される。収差補正器220は、互いに所定の隙間を開けて配置される、3段以上の電極基板により構成される。
図3及び
図4(a)から
図4(c)の例では、例えば、3段の電極基板10,12,14(複数の基板)により構成される収差補正器220が示されている。また、
図3及び
図4(a)から
図4(c)の例では、3×3本のマルチビーム20を用いる場合について示している。複数の電極基板10,12,14には、マルチビーム20が通過する複数の通過孔が形成されている。
図4(a)に示すように、上段電極基板10には、マルチビーム20(e)が通過する位置に複数の通過孔11(開口部)が形成される。同様に、
図4(b)に示すように、中段電極基板12には、マルチビーム20(e)が通過する位置に複数の通過孔13(開口部)が形成される。同様に、
図4(c)に示すように、下段電極基板14には、マルチビーム20(e)が通過する位置に複数の通過孔15(開口部)が形成される。上段電極基板10と下段電極基板14は、導電性材料を用いて形成される。或いは、絶縁材料の表面に導電性材料の膜を形成してもよい。上段電極基板10と下段電極基板14には、収差補正器制御回路121によって、共に、グランド電位(GND)が印加される。
【0021】
一方、上段電極基板10と下段電極基板14とに挟まれた中段の電極基板12には、マルチビーム20の各ビームの通過孔13毎にそれぞれ通過するビームを挟むようにそれぞれ4極以上の電極16a,16b,16c,16dで構成される複数の電極セットが配置される。電極16a,16b,16c,16dは、導電性材料で形成される。また、電極基板12は、例えば、シリコン材で形成され、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems:微小電気機械システム)技術を用いて、電極基板12上に配線層を形成して、それぞれ対応する配線上に、電極16a,16b,16c,16dが形成される。電極16a,16b,16c,16dが互いに導通しないように電極基板12上に形成される。例えば、配線層と絶縁層がシリコン基板上に形成され、絶縁層上に電極16a,16b,16c,16dを配置し、対応する配線に接続させればよい。通過孔13用の電極セットの電極16a,16b,16c,16dには、ビーム毎に、4極すべてに同じ電位となるバイアス電位(第1の軌道補正電位)が個別に印加可能に構成される。バイアス電位として、負の電位が印加される。さらに、各電極セットでは、通過孔13を挟んで対向する2つの電極16a,16b(或いは/及び16c,16d)間に電位差(電圧)が生じるように一方の電極に必要に応じて個別の偏向電位(第2の軌道補正電位)が印加可能に構成される。よって、収差補正器制御回路121には、通過孔13毎(ビーム毎)に、バイアス電位を印加するための1つの電源回路と、偏向電位を印加するための少なくとも2つの電源回路とが配置される。各通過孔13用の電極セットが8極で構成される場合であれば、通過孔13毎に、バイアス電位を印加するための1つの電源回路と、偏向電位を印加するための少なくとも4つの電源回路とが配置されることになる。
【0022】
画像取得機構150は、電子ビームによるマルチビーム20を用いて、図形パターンが形成された基板101から図形パターンの被検査画像を取得する。以下、検査装置100における画像取得機構150の動作について説明する。
【0023】
電子銃201(放出源)から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202によりほぼ垂直に成形アパーチャアレイ基板203全体を照明する。成形アパーチャアレイ基板203には、
図2に示すように、矩形の複数の穴22(開口部)が形成され、電子ビーム200は、すべての複数の穴22が含まれる領域を照明する。複数の穴22の位置に照射された電子ビーム200の各一部が、かかる成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22をそれぞれ通過することによって、例えば矩形の複数の電子ビーム(マルチビーム)20a~20c(
図1の実線)(マルチ1次電子ビーム)が形成される。
【0024】
形成されたマルチビーム20a~20cは、転送レンズ218,219によって転送される。言い換えれば、転送レンズ218,219は、マルチビーム20の入射を受け、マルチビーム20を屈折させる。マルチビーム20a~20cが転送レンズ218の磁場中を通過している間に、収差補正器220は、マルチビーム20の各ビームに個別にバイアス電位を印加することで、ビーム毎に基板101面上での焦点位置を補正して像面収差を補正すると共に各ビームに対して個別に独立して偏向電位を印加することで個別にビーム軌道を修正し、非点、及び/或いは歪(位置ずれ)を個別に補正する。
【0025】
個別にビーム軌道が補正されたマルチビーム20a~20cは、その後、クロスオーバー(C.O.)を形成し、マルチビーム20の各ビームのクロスオーバー位置に配置されたビームセパレーター214を通過した後、縮小レンズ205によって、縮小され、制限アパーチャ基板206に形成された中心の穴に向かって進む。ここで、一括ブランキング偏向器212によって、マルチビーム20a~20c全体が一括して偏向された場合には、制限アパーチャ基板206の中心の穴から位置がはずれ、制限アパーチャ基板206によって遮蔽される。一方、一括ブランキング偏向器212によって偏向されなかったマルチビーム20a~20cは、
図1に示すように制限アパーチャ基板206の中心の穴を通過する。かかる一括ブランキング偏向器212のON/OFFによって、ブランキング制御が行われ、ビームのON/OFFが一括制御される。このように、制限アパーチャ基板206は、一括ブランキング偏向器212によってビームOFFの状態になるように偏向されたマルチビーム20a~20cを遮蔽する。そして、ビームONになってからビームOFFになるまでに形成された、制限アパーチャ基板206を通過したビーム群により、検査用のマルチビーム20a~20cが形成される。
【0026】
制限アパーチャ基板206を通過し、収差補正器220により各ビームがバイアス電位と偏向電位とにより個別に軌道が修正されたマルチビーム20a~20cは、対物レンズ207により基板101(試料)面上に焦点が合わされ(合焦され)、所望の縮小率のパターン像(ビーム径)となり、主偏向器208及び副偏向器209によって、制限アパーチャ基板206を通過したマルチビーム20全体が同方向に一括して偏向され、各ビームの基板101上のそれぞれの照射位置に照射される。かかる場合に、主偏向器208によって、マルチビーム20が走査するマスクダイの基準位置にマルチビーム20全体を一括偏向する。実施の形態1では、例えばXYステージ105を連続移動させながらスキャンを行う。そのため、主偏向器208は、さらにXYステージ105の移動に追従するように、トラッキング偏向を行う。そして、副偏向器209によって、各ビームがそれぞれ対応する領域内を走査するようにマルチビーム20全体を一括偏向する。一度に照射されるマルチビーム20は、理想的には成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22の配列ピッチに上述した所望の縮小率(1/a)を乗じたピッチで並ぶことになる。このように、電子ビームカラム102は、一度に2次元状のm1×n1本のマルチビーム20を基板101に照射する。
【0027】
基板101の所望する位置にマルチビーム20が照射されたことに起因して基板101からマルチビーム20の各ビームに対応する、反射電子を含む2次電子の束(マルチ2次電子ビーム300)(
図1の点線)が放出される。
【0028】
基板101から放出されたマルチ2次電子ビーム300は、対物レンズ207によって、マルチ2次電子ビーム300の中心側に屈折させられ、制限アパーチャ基板206に形成された中心の穴に向かって進む。制限アパーチャ基板206を通過したマルチ2次電子ビーム300は、縮小レンズ205を通り、ビームセパレーター214に進む。
【0029】
ここで、ビームセパレーター214はマルチビーム20が進む方向(光軸)に直交する面上において電界と磁界を直交する方向に発生させる。電界は電子の進行方向に関わりなく同じ方向に力を及ぼす。これに対して、磁界はフレミング左手の法則に従って力を及ぼす。そのため電子の侵入方向によって電子に作用する力の向きを変化させることができる。ビームセパレーター214に上側から侵入してくるマルチビーム20(1次電子ビーム)には、電界による力と磁界による力が打ち消し合い、マルチビーム20は下方に直進する。これに対して、ビームセパレーター214に下側から侵入してくるマルチ2次電子ビーム300には、電界による力と磁界による力がどちらも同じ方向に働き、マルチ2次電子ビーム300は斜め上方に曲げられる。
【0030】
斜め上方に曲げられたマルチ2次電子ビーム300は、投影レンズ224,226によって、屈折させられながらマルチ検出器222に投影される。マルチ検出器222は、投影されたマルチ2次電子ビーム300を検出する。マルチ検出器222は、例えば図示しないダイオード型の2次元センサを有する。そして、マルチビーム20の各ビームに対応するダイオード型の2次元センサ位置において、マルチ2次電子ビーム300の各2次電子がダイオード型の2次元センサに衝突して、電子を発生し、2次電子画像データを画素毎に生成する。また、XYステージ105を連続移動させながらスキャンを行うため、上述したようにトラッキング偏向が行われる。かかるトラッキング偏向に伴う偏向位置の移動に合わせて、偏向器228は、マルチ2次電子ビーム300をマルチ検出器222の受光面における所望の位置に照射させるように偏向する。そして、マルチ2次電子ビーム300は、マルチ検出器222にて検出される。
【0031】
図5は、実施の形態1の比較例における収差補正器による電子ビームの軌道補正を説明するための図である。
図5において、比較例では、収差補正器221が転送レンズ218の磁場空間から外れた位置に配置される場合を示している。
図5の例では、収差補正器221として、3段の電極基板を用い、マルチビームのうちの中心ビームが通過する部分を示している。上段電極基板と下段電極基板にはグランド電位を印加し、中段電極基板に負のバイアス電位を印加する場合について示している。
図5の例では、中段電極基板上の4極の電極については図示を省略している。
図5の例では、バイアス電位だけを印加する場合について説明する。よって、
図5の例では、1本のビームに対する静電レンズと同様の構成を示している。検査装置100での取得する画像の視野の大きさを大きくすると収差が大きくなる。さらに、各ビームの基板101上での照射位置の設計位置からのずれ(歪)は、ビームのショット毎に副偏向器209等による偏向位置によって変化するため、後述するように、歪補正を合わせて行う場合には、ショット毎にダイナミックに補正する必要が生じる。かかる収差を比較例の収差補正器221で補正するために、例えば、-10kVの加速電圧で放出された高速で移動する電子ビーム(e)に対して、転送レンズ218により合焦される中間像の焦点位置を変更するためには、加速電圧と同程度の例えば、-10kV程度のバイアス電位が必要となる。このように、収差補正器221に印加する電圧が大きすぎるため、電極基板間に放電が起こり、収差補正器221によりビームのショット毎に焦点位置をダイナミックに補正する高速切り換え動作を行うことが困難になる場合があり得る。さらに、電圧が大きいので整定時間も長く必要となり、ますます高速切り換え動作が困難になる。
【0032】
図6は、実施の形態1における収差補正器による電子ビームの軌道補正を説明するための図である。
図6において、実施の形態1の収差補正器220は転送レンズ218の磁場中に配置される。
図6の例では、収差補正器220の3段の電極基板のうち、マルチビームのうちの中心ビームが通過する部分を示している。
図6の例では、中段電極基板12上の4極の電極16については図示を省略している。
図6の例では、説明の理解を容易にするために、バイアス電位だけを印加する場合について説明する。よって、
図6の例では、1本のビームに対する静電レンズと同様の構成を示している。検査装置100での取得する画像の視野の大きさを大きくすると収差が大きくなる。さらに、各ビームの基板101上での照射位置の設計位置からのずれ(歪)は、ビームのショット毎に副偏向器209等による偏向位置によって変化するため、後述するように、歪補正を合わせて行う場合には、ショット毎にダイナミックに補正する必要が生じる。収差補正器220は、バイアス電位を可変に制御することによって、マルチビーム20の各ビームの焦点位置を個別に補正する。ここで、例えば、-10kVの加速電圧で放出された高速で移動する電子ビーム(e)が転送レンズ218の磁場に進入すると、かかる磁場によって電子の移動速度が遅くなる。よって、転送レンズ218により合焦される中間像の焦点位置を変更する場合、電子の移動速度が遅くなっている状態、言い換えれば電子のエネルギーが小さくなっている状態で、収差補正器220により電子ビームの軌道を修正するので、中段電極基板に印加するバイアス電位は、例えば-10kVの加速電圧に対して、例えば1/100の-100V程度に低減することもできる。よって、電極基板間に放電が起こらず、収差補正器220によりビームのショット毎に焦点位置をダイナミックに補正する高速動作を行うことが可能になる。さらに、印加するバイアス電位を小さくできるので、その分、整定時間も短くできる。よって、動作切り換え時間を短縮でき、高速切り換え動作を容易にすることができる。これにより、像面収差(像面湾曲)をダイナミックに補正できる。
【0033】
図7は、実施の形態1における照射されるビームサイズの一例を示す図である。
図7(a)と
図7(b)の例では、マルチビーム20のうち、中心ビーム31aを中心にx方向に並ぶ5本のビームの基板101上に照射されるビームサイズの一例を示している。成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22がx,y方向に所定のピッチでマトリクス状に形成されていれば、理想的には、
図7(b)に示すように、基板101上に照射されるマルチビーム20のビームサイズは、いずれも同じサイズで並ぶはずである。しかし、照明レンズ202、転送レンズ218,219、縮小レンズ205、及び/或いは対物レンズ207といった電磁レンズ等の光学系を使用することで、像面湾曲等により、
図7(a)に示す様に、中心ビーム31a、ビーム31b、ビーム31cの順で基板101上でのビームサイズが大きくなってしまう。すなわち、外側のビームほど、基板101上でのビームサイズが大きくなってしまう。ビームサイズの変化は、ある程度の傾向は存在するとしても、ビーム毎に異なってしまう。パターン検査では、ビームサイズが異なると、2次電子の放出数が変化するので検出される感度が異なってしまう。そのため、取得される像が異なってしまい、疑似欠陥を生じさせやすくなると共に、欠陥を見逃すことにもつながってしまう。像面湾曲は、基板101上での各ビームの焦点位置をずらすことによって補正することができる。そこで、実施の形態1において、収差補正器220は、マルチビーム20の各ビームの焦点位置を個別に補正して像面湾曲を補正する。かかる場合に、収差補正器220は、
図7(b)に示すように、マルチビーム20のうち、中心ビームのビーム径と外側のビームのビーム径とが同じサイズにように補正する。言い換えれば、収差補正器220によって、小さいビームサイズを大きいビームサイズに合わせる。さらに言い換えれば、最も大きいビームサイズに、他のビームのビームサイズを合わせる。ビームサイズは基板101上での焦点位置をずらす(補正する)ことによって調整することができる。大きいビームサイズに合わせるのでボケが大きくなるが、ビーム間での検出感度を合わせることができる。
【0034】
なお、
図6の例では、4極の電極16の図示を省略したが、実施の形態1では、像面収差(像面湾曲)の補正の他、さらに、各ビームの基板101上での照射位置の設計位置からのずれ(歪曲収差)および非点の補正も同時に行う。
【0035】
図8は、実施の形態1における歪曲収差(ディストーション)の一例を示す図である。
図8の例では、5×5本のマルチビーム20を用いた場合について示している。成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22がx,y方向に所定のピッチでマトリクス状に形成されていれば、理想的には、
図8(b)に示すように、基板101上に照射されるマルチビーム20の照射位置19も所定の縮小率でマトリクス状に配置されるはずである。しかし、照明レンズ202、転送レンズ218,219、縮小レンズ205、及び/或いは対物レンズ207といった電磁レンズ等の光学系を使用することで、
図8(a)に示す様にディストーション(歪曲収差)が発生してしまう。ディストーションの形は条件により、樽型またはピンクッション型と呼ばれる分布を取る。一般には磁気レンズのディストーションは半径方向に加えて回転方向のずれも生ずる。
図8(a)では回転成分が生じない条件での例を示している。マルチビーム20に生じるディストーションの向き及び位置ずれ量は、ある程度の傾向は存在するとしても、ビーム毎に異なってしまう。そのため、かかるディストーションを補正するためには、個別ビーム毎に補正する必要がある。そこで、実施の形態1では、収差補正器220を用いて、ビーム毎にビーム軌道を補正する。
【0036】
図9は、実施の形態1における非点の一例を示す図である。
図9の例では、3×3本のマルチビーム20を用いた場合について示している。
図9(b)に示すように、理想的には、各ビームは、円形に照射される。しかし、照明レンズ202、転送レンズ218,219、縮小レンズ205、及び/或いは対物レンズ207といった電磁レンズ等の光学系を使用することで、
図9(a)に示すように、非点収差が生じてしまう場合がある。そのため、
図9(a)に示すように、基板101(試料)面上においてx,y方向の2次方向に焦点位置がずれ、焦点位置でビームがいわゆる楕円状になり、照射されるビームにボケが生じてしまう。マルチビーム20に生じる非点の向き及び位置ずれ量は、マルチビーム20の中心から放射状に延びるように楕円状になる傾向があるが、ビーム毎に異なってしまう。そのため、かかる非点を補正するためには、個別ビーム毎に補正する必要がある。そこで、実施の形態1では、ディストーションの他に、さらに、非点についても収差補正器220を用いて、ビーム毎にビーム軌道を補正する。
【0037】
図10は、実施の形態1におけるマルチビーム検査方法の要部工程の一例を示すフローチャート図である。
図10において、実施の形態1におけるマルチビーム検査方法は、像面湾曲量測定工程(S102)と、バイアス電位演算工程(S103)と、ディストーション及び非点測定工程(S104)と、補正データ生成工程(S105)と、被検査画像取得工程(S106)と、ダイナミック補正工程(S108)と、参照画像作成工程(S110)と、位置合わせ工程(S120)と、比較工程(S122)と、いう一連の工程を実施する。
図10に示す像面湾曲量測定工程(S102)と、ディストーション及び非点測定工程(S104)と、補正データ生成工程(S105)と、ダイナミック補正工程(S108)と、被検査画像取得工程(S106)とは、実施の形態1におけるマルチビーム照射方法の要部工程でもある。
【0038】
像面湾曲量測定工程(S102)として、まず、検査装置100を使って、像面湾曲を測定する。測定結果は、記憶装置109に格納しておく。
【0039】
バイアス電位演算工程(S103)として、補正データ生成回路130は、測定された像面湾曲を補正する収差補正器220の各ビーム用の電極16に印加するビーム毎の個別のバイアス電位を演算する。或いは、実験により、各ビームのバイアス電位を可変にしながら、像面湾曲を補正する各ビームのバイアス電位を調整してもよい。調整された像面湾曲を補正する各ビーム用のバイアス電位のデータは、補正データ生成回路130に出力される。
【0040】
ディストーション及び非点測定工程(S104)として、検査装置100を使って、ディストーション及び非点を測定する。但し、かかる量は、成形アパーチャの位置に応じたビームの形状、成形アパーチャの加工誤差による量と、成形アパーチャアレイ基板203の同じ穴22を通過した同じ位置のビーム(以下、同じビーム)を用いる場合であっても、ショット毎の主偏向器208及び副偏向器209による偏向量によって、異なってくる量との合計からなる。よって、各ショットの状態で生じるディストーション及び非点を測定する。測定結果は、記憶装置109に格納しておく。なお、像面湾曲の補正によってディストーション及び非点が変化する場合があるため、像面湾曲を補正する各ビームのバイアス電位を印加した状態でディストーション及び非点を測定すると好適である。
【0041】
補正データ生成工程(S105)として、補正データ生成回路130は、バイアス電位のデータの他、ディストーション及び非点を補正するための偏向電位を演算し、ショット毎の偏向量に対応する収差補正器220の各ビーム用の電極16に印加するためのビーム毎の個別の偏向電位のデータを生成する。生成された各ビーム用の個別のバイアス電位のデータと個別の偏向電位のデータは、ショット順に収差補正器制御回路121に出力される。マルチビーム20のショット順の照射位置は、検査シーケンスによって決まるので、補正データ生成回路130内にて、かかる検査シーケンスに沿って、各ビーム用の個別のバイアス電位のデータと個別の偏向電位のデータとを予め並び替えておけばよい。
【0042】
被検査画像取得工程(S106)として、画像取得機構150は、収差補正器220を通過したマルチビーム20を使って、基板101(試料)に形成されたパターンの2次電子画像を取得する。具体的には、以下のように動作する。上述したように、成形アパーチャアレイ基板203によって形成されたマルチビーム20a~20cは、転送レンズ218,219によって転送される。
【0043】
転送レンズ218の磁場を通過中、後述するように収差補正器220によってマルチビーム20a~20cは個別にビーム軌道が補正されることになる。個別にビーム軌道が補正されたマルチビーム20a~20cは、その後、ビームセパレーター214、縮小レンズ205、一括ブランキング偏向器212、及び制限アパーチャ基板206を通過し、対物レンズ207により基板101(試料)面上に焦点が合わされ(合焦され)、主偏向器208及び副偏向器209によって、各ビームの基板101上のそれぞれの照射位置に照射される。
【0044】
基板101の所望する位置にマルチビーム20が照射されたことに起因して基板101からマルチビーム20の各ビームに対応する、反射電子を含む2次電子の束(マルチ2次電子ビーム300)(
図1の点線)が放出される。基板101から放出されたマルチ2次電子ビーム300は、対物レンズ207、縮小レンズ205を通過し、ビームセパレーター214に進み、斜め上方に曲げられる。斜め上方に曲げられたマルチ2次電子ビーム300は、投影レンズ224,226によって、屈折させられながらマルチ検出器222に投影される。
【0045】
図11は、実施の形態1における半導体基板に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。
図11において、基板101が半導体基板(ウェハ)である場合、半導体基板(ウェハ)の検査領域330には、複数のチップ(ウェハダイ)332が2次元のアレイ状に形成されている。各チップ332には、露光用マスク基板に形成された1チップ分のマスクパターンが図示しない露光装置(ステッパ)によって例えば1/4に縮小されて転写されている。各チップ332内は、例えば、2次元状の横(x方向)m
2列×縦(y方向)n
2段(m
2,n
2は2以上の整数)個の複数のマスクダイ33に分割される。実施の形態1では、かかるマスクダイ33が単位検査領域となる。
【0046】
図12は、実施の形態1におけるマルチビームの照射領域と測定用画素との一例を示す図である。
図12において、各マスクダイ33は、例えば、マルチビームのビームサイズでメッシュ状の複数のメッシュ領域に分割される。かかる各メッシュ領域が、測定用画素36(単位照射領域)となる。
図12の例では、9×9列のマルチビームの場合を示している。1回のマルチビーム20の照射で照射可能な照射領域34は、(基板101面上におけるマルチビーム20のx方向のビーム間ピッチにx方向のビーム数を乗じたx方向サイズ)×(基板101面上におけるマルチビーム20のy方向のビーム間ピッチにy方向のビーム数を乗じたy方向サイズ)で定義される。
図12の例では、照射領域34がマスクダイ33と同じサイズの場合を示している。但し、これに限るものではない。照射領域34がマスクダイ33よりも小さくても良い。或いは大きくても構わない。そして、照射領域34内に、1回のマルチビーム20の照射で照射可能な複数の測定用画素28(1ショット時のビームの照射位置)が示されている。言い換えれば、隣り合う測定用画素28間のピッチがマルチビームの各ビーム間のピッチとなる。
図12の例では、隣り合う4つの測定用画素28で囲まれると共に、4つの測定用画素28のうちの1つの測定用画素28を含む正方形の領域で1つのサブ照射領域29を構成する。
図12の例では、各サブ照射領域29は、4×4画素36で構成される場合を示している。
【0047】
実施の形態1におけるスキャン動作では、マスクダイ33毎にスキャン(走査)される。
図12の例では、ある1つのマスクダイ33を走査する場合の一例を示している。マルチビーム20がすべて使用される場合には、1つの照射領域34内には、x,y方向に(2次元状に)m
1×n
1個のサブ照射領域29が配列されることになる。1つ目のマスクダイ33にマルチビーム20が照射可能な位置にXYステージ105を移動させる。そして、偏向器208によって、XYステージ105の移動に追従するように、トラッキング偏向を行いながら、トラッキング偏向されている状態で、当該マスクダイ33を照射領域34として当該マスクダイ33内を走査(スキャン動作)する。マルチビーム20を構成する各ビームは、互いに異なるいずれかのサブ照射領域29を担当することになる。そして、各ショット時に、各ビームは、担当サブ照射領域29内の同じ位置に相当する1つの測定用画素28を照射することになる。
図12の例では、偏向器208によって、各ビームは、1ショット目に担当サブ照射領域29内の最下段の右から1番目の測定用画素36を照射するように偏向される。そして、1ショット目の照射が行われる。続いて、偏向器208によってマルチビーム20全体を一括してy方向に1測定用画素36分だけビーム偏向位置をシフトさせ、2ショット目に担当サブ照射領域29内の下から2段目の右から1番目の測定用画素36を照射する。同様に、3ショット目に担当サブ照射領域29内の下から3段目の右から1番目の測定用画素36を照射する。4ショット目に担当サブ照射領域29内の下から4段目の右から1番目の測定用画素36を照射する。次に、偏向器208によってマルチビーム20全体を一括して最下段の右から2番目の測定用画素36の位置にビーム偏向位置をシフトさせ、同様に、y方向に向かって、測定用画素36を順に照射していく。かかる動作を繰り返し、1つのビームで1つのサブ照射領域29内のすべての測定用画素36を順に照射していく。1回のショットでは、成形アパーチャアレイ基板203の各穴22を通過することによって形成されたマルチビームによって、最大で各穴22と同数の複数のビームショットに応じたマルチ2次電子300が一度に検出される。
【0048】
以上のように、マルチビーム20全体では、マスクダイ33を照射領域34として走査(スキャン)することになるが、各ビームは、それぞれ対応する1つのサブ照射領域29を走査することになる。そして、1つのマスクダイ33の走査(スキャン)が終了すると、隣接する次のマスクダイ33が照射領域34になるように移動して、かかる隣接する次のマスクダイ33の走査(スキャン)を行う。かかる動作を繰り返し、各チップ332の走査を進めていく。マルチビーム20のショットにより、その都度、照射された測定用画素36から2次電子が放出され、マルチ検出器222にて検出される。実施の形態1では、マルチ検出器222の単位検出領域サイズは、各測定用画素36から上方に放出された2次電子を測定用画素36毎(或いはサブ照射領域29毎)に検出する。
【0049】
以上のようにマルチビーム20を用いて走査することで、シングルビームで走査する場合よりも高速にスキャン動作(測定)ができる。なお、ステップアンドリピート動作で各マスクダイ33のスキャンを行っても良いし、XYステージ105を連続移動させながら各マスクダイ33のスキャンを行う場合であってもよい。照射領域34がマスクダイ33よりも小さい場合には、当該マスクダイ33中で照射領域34を移動させながらスキャン動作を行えばよい。
【0050】
基板101が露光用マスク基板である場合には、露光用マスク基板に形成された1チップ分のチップ領域を例えば上述したマスクダイ33のサイズで短冊状に複数のストライプ領域に分割する。そして、ストライプ領域毎に、上述した動作と同様の走査で各マスクダイ33を走査すればよい。露光用マスク基板におけるマスクダイ33のサイズは、転写前のサイズなので半導体基板のマスクダイ33の4倍のサイズとなる。そのため、照射領域34が露光用マスク基板におけるマスクダイ33よりも小さい場合には、1チップ分のスキャン動作が増加する(例えば4倍)ことになる。しかし、露光用マスク基板には1チップ分のパターンが形成されるので、4チップよりも多くのチップが形成される半導体基板に比べてスキャン回数は少なくて済む。
【0051】
以上のように、画像取得機構150は、マルチビーム20を用いて、図形パターンが形成された被検査基板101上を走査し、マルチビーム20が照射されたことに起因して被検査基板101から放出される、マルチ2次電子300を検出する。マルチ検出器222によって検出された各測定用画素36からの2次電子の検出データ(測定画像:2次電子画像:被検査画像)は、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、チップパターンメモリ123に格納される。このようにして、画像取得機構150は、基板101上に形成されたパターンの測定画像を取得する。そして、例えば、1つのチップ332分の検出データが蓄積された段階で、チップパターンデータとして、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、比較回路108に転送される。
【0052】
ダイナミック補正工程(S108)として、被検査画像取得工程(S106)と並行して、転送レンズ218の磁場中に配置された収差補正器220は、複数の電極セットの電極セット毎に、4極以上の電極16を用いて、対応するビームの像面湾曲を個別に補正する。また、収差補正器220は、複数の電極セットの電極セット毎に、4極以上の電極16を用いて、対応するビームの非点収差を個別に補正する。また、収差補正器220は、複数の電極セットの電極セット毎に、4極以上の電極16を用いて、対応するビームの基板101(試料)面上での設計位置からの歪(ディストーション)を個別に補正する。具体的には、以下のように動作する。収差補正器制御回路121から像面湾曲を補正する各ビームの個別バイアス電位と、ディストーション及び非点を補正する各ビームの個別偏向電位とが印加された収差補正器220によって、転送レンズ218を通過中のマルチビーム20の各ビームの軌道が補正される。収差補正器220による個別のバイアス電位のデータと個別の偏向電位のデータは、ショット毎にマルチビーム20の一括偏向される偏向量に応じてダイナミックに制御される。
【0053】
参照画像作成工程(S110)として、参照画像作成回路112(参照画像作成部)は、被検査画像に対応する参照画像を作成する。参照画像作成回路112は、基板101にパターンを形成する基になった設計データ、或いは基板101に形成されたパターンの露光イメージデータに定義された設計パターンデータに基づいて、フレーム領域毎に、参照画像を作成する。フレーム領域として、例えばマスクダイ33を用いると好適である。具体的には、以下のように動作する。まず、記憶装置109から制御計算機110を通して設計パターンデータを読み出し、読み出された設計パターンデータに定義された各図形パターンを2値ないしは多値のイメージデータに変換する。
【0054】
ここで、設計パターンデータに定義される図形は、例えば長方形や三角形を基本図形としたもので、例えば、図形の基準位置における座標(x、y)、辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報で各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納されている。
【0055】
かかる図形データとなる設計パターンデータが参照画像作成回路112に入力されると図形ごとのデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の設計パターン画像データに展開し、出力する。言い換えれば、設計データを読み込み、検査領域を所定の寸法を単位とするマス目として仮想分割してできたマス目毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算し、nビットの占有率データを出力する。例えば、1つのマス目を1画素として設定すると好適である。そして、1画素に1/28(=1/256)の分解能を持たせるとすると、画素内に配置されている図形の領域分だけ1/256の小領域を割り付けて画素内の占有率を演算する。そして、8ビットの占有率データとして参照回路112に出力する。かかるマス目(検査画素)は、測定データの画素に合わせればよい。
【0056】
次に、参照画像作成回路112は、図形のイメージデータである設計パターンの設計画像データに適切なフィルタ処理を施す。測定画像としての光学画像データは、光学系によってフィルタが作用した状態、言い換えれば連続変化するアナログ状態にあるため、画像強度(濃淡値)がデジタル値の設計側のイメージデータである設計画像データにもフィルタ処理を施すことにより、測定データに合わせることができる。作成された参照画像の画像データは比較回路108に出力される。
【0057】
図13は、実施の形態1における比較回路内の構成の一例を示す構成図である。
図13において、比較回路108内には、磁気ディスク装置等の記憶装置50,52,56、被検査画像生成部54、位置合わせ部57、及び比較部58が配置される。被検査画像生成部54、位置合わせ部57、及び比較部58といった各「~部」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。被検査画像生成部54、位置合わせ部57、及び比較部58内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度図示しないメモリ、或いはメモリ118に記憶される。
【0058】
比較回路108内では、転送されたストライプパターンデータ(或いはチップパターンデータ)が、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、記憶装置50に一時的に格納される。また、転送された参照画像データが、記憶装置52に一時的に格納される。
【0059】
次に、被検査画像生成部54は、ストライプパターンデータ(或いはチップパターンデータ)を用いて、所定のサイズのフレーム領域(単位検査領域)毎、フレーム画像(被検査画像)を生成する。フレーム画像として、例えば、ここでは、マスクダイ33の画像を生成する。但し、フレーム領域のサイズはこれに限るものではない。生成されたフレーム画像(例えばマスクダイ画像)は、記憶装置56に格納される。
【0060】
位置合わせ工程(S120)として、位置合わせ部57は、被検査画像となるマスクダイ画像と、当該マスクダイ画像に対応する参照画像とを読み出し、画素36より小さいサブ画素単位で、両画像を位置合わせする。例えば、最小2乗法で位置合わせを行えばよい。
【0061】
比較工程(S122)として、比較部58は、マスクダイ画像(被検査画像)と参照画像とを比較する。比較部58は、所定の判定条件に従って画素36毎に両者を比較し、例えば形状欠陥といった欠陥の有無を判定する。例えば、画素36毎の階調値差が判定閾値Thよりも大きければ欠陥と判定する。そして、比較結果が出力される。比較結果は、記憶装置109、モニタ117、若しくはメモリ118に出力される、或いはプリンタ119より出力されればよい。
【0062】
図14は、実施の形態1の変形例における収差補正器の各電極基板の一例の上面図である。
図14において、収差補正器220が転送レンズ218の磁場中に配置される点は同様である。
図14(a)に示すように、上段電極基板10の構成は、
図4(a)と同様である。そして、
図14(c)に示すように、下段電極基板14の構成は、
図4(c)と同様である。上段電極基板10と下段電極基板14には、収差補正器制御回路121によって、共に、グランド電位(GND)が印加される点は同様である。
【0063】
一方、上段電極基板10と下段電極基板14とに挟まれた中段の電極基板12には、
図14(b)に示すように、マルチビーム20の各ビームの通過孔13毎に通過孔13を取り囲む環状電極17が配置される。環状電極17は、導電性材料で形成される。各ビームに個別にバイアス電位をかけるだけであれば、4極以上の電極16ではなく環状電極17で足りる。各ビームに個別にバイアス電位を印加することで、各ビームの焦点位置を個別に補正できる。よって、像面湾曲の補正、及び基板101上でのビームサイズの調整ができる。また、収差補正器220は転送レンズ218の磁場中に配置されるので、バイアス電位を小さくできる点は上述した通りである。
【0064】
以上のように、実施の形態1によれば、マルチ電子ビームを照射する場合に、従来よりも小さい電位で収差或いは/及び歪等を小さくできる。よって、放電を起こすことなく電位の高速切り換えが可能となり、ショット毎の各ビームのダイナミックな軌道補正ができる。
【0065】
実施の形態2.
上述した実施の形態1では、収差補正器220の各通過孔13の電極セット(4極の電極16a,16b,16c,16d)に印加するバイアス電位及び偏向電位を個別制御する場合について説明した。よって、通過孔13毎(ビーム毎)に、バイアス電位を印加するための1つの電源回路と、偏向電位を印加するための少なくとも2つの電源回路とが必要となる。非点補正用の偏向電位を印加するための電源回路と歪補正用の偏向電位を印加するための電源回路とを別々に用いる場合には、さらに、電源回路の数が増えることになる。仮に、各通過孔13用の電極セットが8極で構成される場合であれば、通過孔13毎に、バイアス電位を印加するための1つの電源回路と、偏向電位を印加するための少なくとも4つの電源回路とが必要となる。実施の形態2では、かかる電源回路の低減を可能になる構成について説明する。検査装置100の構成は
図1と同様である。また、実施の形態2におけるマルチビーム検査方法の要部工程の一例を示すフローチャート図は、
図10と同様である。以下、特に説明する点以外の内容は実施の形態1と同様である。
【0066】
図15は、実施の形態2における電極セットのグループ化を説明するための図である。
図15の例では、13×13本のマルチビームを用いる場合について示している。
図15において、収差補正器220の中段電極基板12上には、マルチビームの配列数に合わせて13×13個の通過孔13が形成されている。また、各通過孔13の周囲には、それぞれ、図示しない4極以上の電極16a,16b,16c,16dから構成される電極セットが配置される。ここで、像面湾曲によるずれは、中心ビームから外側に放射状に順に大きくなる。そこで、実施の形態2では、中心ビームから外側に向かう複数の同心円で複数の通過孔13(及び電極セット)をグループ化する。
図15の例では、中心ビームを含む円内に位置する通過孔13(及び電極セット)をグループ1(G1)、グループ1の外側であってグループ1の1つ外側の円内に位置する通過孔13(及び電極セット)をグループ2(G2)、グループ2の外側であってグループ2の1つ外側の円内に位置する通過孔13(及び電極セット)をグループ3(G3)、グループ3の外側であってグループ3の1つ外側の円内に位置する通過孔13(及び電極セット)をグループ4(G4)、及びグループ4の外側であってグループ4の1つ外側の円内に位置する通過孔13(及び電極セット)をグループ5(G5)とグループ化処理を行う。同じグループ内の各ビームに生じる像面湾曲の量は同程度になるので、同じ補正量での補正で足りる。そこで、実施の形態2では、かかるグループ毎に、各通過孔13(ビーム)に対応する電極セット(4極の電極16a,16b,16c,16d)に印加するバイアス電位を共通化する。これにより、バイアス電位を印加するための電源回路をグループ毎に共通化できる。言い換えれば、バイアス電位を印加するための電源回路をグループ数まで低減できる。
【0067】
ここで、中心ビームから外側に放射状に順に大きくなる現象として、
図9(b)に示したように非点も同様である。非点を補正するには、ビーム毎の4極以上の電極16a,16b,16c,16dを対向する電極間で電位差を生じさせる必要がある。しかし、
図4(b)に示したように、各通過孔13周囲に配置される4極以上の電極16a,16b,16c,16dは、x,y座標系に沿って配置される。そのため、配列の向きが放射状にはなっていないので、同じグループ内であっても電極16a,16c(電極16b,16dにはGND電位を印加)に印加する偏向電位を共通化することができない。
【0068】
図16は、実施の形態2の変形例における電極セットのグループ化と電極配列の仕方とを説明するための図である。
図16の例では、
図15の例と同様、13×13本のマルチビームを用いる場合について示している。
図16において、収差補正器220の中段電極基板12上には、マルチビームの配列数に合わせて13×13個の通過孔13が形成されている。また、各通過孔13の周囲には、それぞれ、図示しない4極以上の電極16a,16b,16c,16dから構成される電極セットが配置される。ここで、
図16の例では、各通過孔13の周囲に配置される電極16a,16b,16c,16dの配置向きを、中心ビーム(光軸)を軸にして位相に合わせて回転させる。言い換えれば、各通過孔13の周囲に配置される電極16a,16b,16c,16dの配置向きを放射方向に合わせる。これにより、バイアス電位だけではなく偏向電位についても、同じグループ内の各ビームに生じる非点のずれ量は同程度になるので、非点補正分については同じ補正量で足りる。よって、
図16では、バイアス電位を印加するための電源回路をグループ毎に共通化できると共に、非点補正用の偏向電位を印加するための電源回路をグループ毎に共通化できる。言い換えれば、非点補正用の偏向電位を印加するための電源回路をグループ数まで低減できる。
【0069】
以上のように、実施の形態2によれば、同心円でのグループ化によって、収差補正器220の中段電極基板12の電極16に電位を印加する電源回路を共通化でき、電源回路の数を大幅に低減できる。
【0070】
以上の説明において、一連の「~回路」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~回路」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。プロセッサ等を実行させるプログラムは、磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FD、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録されればよい。例えば、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、補正データ生成回路130等は、上述した少なくとも1つの処理回路で構成されても良い。
【0071】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0072】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。
【0073】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのマルチ電子ビーム照射装置、マルチ電子ビーム検査装置及びマルチ電子ビーム照射方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0074】
10,12,14 電極基板
11,13,15 通過孔
16 電極
20 マルチビーム
22 穴
28 測定用画素
29 サブ照射領域
31 ビーム
33 マスクダイ
34 照射領域
36 画素
50,52,56 記憶装置
54 被検査画像生成部
57 位置合わせ部
58 比較部
100 検査装置
101 基板
102 電子ビームカラム
103 検査室
105 XYステージ
106 検出回路
107 位置回路
108 比較回路
109 記憶装置
110 制御計算機
112 参照画像作成回路
114 ステージ制御回路
117 モニタ
118 メモリ
119 プリンタ
120 バス
121 収差補正器制御回路
122 レーザ測長システム
123 チップパターンメモリ
124 レンズ制御回路
126 ブランキング制御回路
128 偏向制御回路
130 補正データ生成回路
142 ステージ駆動機構
144,146,148 DACアンプ
150 画像取得機構
160 制御系回路
200 電子ビーム
201 電子銃
202 照明レンズ
203 成形アパーチャアレイ基板
205 縮小レンズ
206 制限アパーチャ基板
207 対物レンズ
208 主偏向器
209 副偏向器
212 一括ブランキング偏向器
214 ビームセパレーター
216 ミラー
218,219 転送レンズ
220 収差補正器
222 マルチ検出器
224,226 投影レンズ
228 偏向器
330 検査領域
332 チップ