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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】注出部材挿入構造
(51)【国際特許分類】
   B65D 75/58 20060101AFI20221221BHJP
【FI】
B65D75/58
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019022723
(22)【出願日】2019-02-12
(65)【公開番号】P2020128254
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】林 佑樹
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-156120(JP,A)
【文献】特開2008-052926(JP,A)
【文献】特開平11-193894(JP,A)
【文献】特開2018-131243(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0267393(US,A1)
【文献】国際公開第2014/126473(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 75/58
B41J 2/00- 2/525
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の開口部に装着され円筒形状の挿入部を有する注出部材と、前記挿入部内に軸線方向移動可能に設けられた弁体と、前記挿入部が挿入される断面円形状の挿入孔を有する被挿入部とを備え、
前記弁体は、前記挿入部に対し前記容器側または前記被挿入部側へ移動することにより前記注出部材の流路が開き、
前記挿入部の内周面および前記弁体の外周面に、互いに係合しあい螺旋方向への相対移動を可能にする第1の螺旋係合部がそれぞれ形成されている、注出部材挿入構造。
【請求項2】
前記被挿入部に、前記注出部材を前記挿入孔へ挿入した際に前記挿入部の内部で前記弁体と相対回転不能に係合する係合部が形成されている、請求項1の注出部材挿入構造。
【請求項3】
前記挿入孔の内周面と前記挿入部の外周面には、互いに係合しあい螺旋方向への相対移動を可能にする第2の螺旋係合部がそれぞれ形成され、前記第2の螺旋係合部の螺旋角は、前記第1の螺旋係合部の螺旋角と等しい、請求項1または2に記載の注出部材挿入構造。
【請求項4】
前記挿入部の内周面に形成された前記第1の螺旋係合部は、突起と溝のうち一方であり、前記弁体の外周面に形成された前記第1の螺旋係合部は、突起と溝のうち他方である、請求項1~3のいずれか1項に記載の注出部材挿入構造。
【請求項5】
前記注出部材は、前記容器の前記開口部に装着される基部をさらに備え、
前記挿入部は、前記基部から突出して形成され、
前記基部と前記挿入部とは別体であり、互いに結合されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の注出部材挿入構造。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の注出部材挿入構造の前記注出部材と、前記容器とを備える包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注出部材挿入構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、印刷装置には、インクが充てんされたインク容器が接続される。インク容器は、挿入部を有する注出部材を備える。印刷装置は、挿入孔を有する被挿入部を備える。注出部材の挿入部は、被挿入部の挿入孔に挿入されることによって印刷装置に接続される。これにより、インク容器内のインクを印刷装置に供給できる。被挿入部と、これに挿入される挿入部とを備えた接続構造としては、特許文献1に記載の連結部材がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2001-511416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記注出部材は、接続先の装置に接続する際に内容物が漏出することがあった。そのため、接続作業において内容物の漏出を抑制することが求められている。
【0005】
本発明の一態様は、注出部材を接続先に接続する作業において内容物の漏出を抑制できる注出部材挿入構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、容器の開口部に装着され円筒形状の挿入部を有する注出部材と、前記挿入部内に軸線方向移動可能に設けられた弁体と、前記挿入部が挿入される断面円形状の挿入孔を有する被挿入部とを備え、前記弁体は、前記挿入部に対し前記容器側または前記被挿入部側へ移動することにより前記注出部材の流路が開き、前記挿入部の内周面および前記弁体の外周面に、互いに係合しあい螺旋方向への相対移動を可能にする第1の螺旋係合部がそれぞれ形成されている、注出部材挿入構造を提供する。
【0007】
前記注出部材挿入構造は、前記被挿入部に、前記注出部材を前記挿入孔へ挿入した際に前記挿入部の内部で前記弁体と相対回転不能に係合する係合部が形成されている構成を採用できる。
【0008】
前記注出部材挿入構造は、前記挿入孔の内周面と前記挿入部の外周面には、互いに係合しあい螺旋方向への相対移動を可能にする第2の螺旋係合部がそれぞれ形成され、前記第2の螺旋係合部の螺旋角は、前記第1の螺旋係合部の螺旋角と等しい構成を採用できる。
【0009】
前記挿入部の内周面に形成された前記第1の螺旋係合部は、突起と溝のうち一方であり、前記弁体の外周面に形成された前記第1の螺旋係合部は、突起と溝のうち他方であることが好ましい。
【0010】
前記注出部材は、前記容器の前記開口部に装着される基部をさらに備え、前記挿入部は、前記基部から突出して形成され、前記基部と前記挿入部とは別体であり、互いに結合されていてもよい。
【0011】
本発明の他の態様は、前記注出部材挿入構造の前記注出部材と、前記容器とを備える包装容器を提供する。
前記注出部材挿入構造を有する包装構造体を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、注出部材を接続先に接続する作業において内容物の漏出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態の注出部材装置の斜視図である。
図2】実施形態の注出部材挿入構造の注出部材の斜視図である。
図3】実施形態の注出部材挿入構造の注出部材の一部の側面図である。
図4】実施形態の注出部材挿入構造の注出部材の一部を前図とは反対側から見た側面図である。
図5】実施形態の注出部材挿入構造の弁体の斜視図である。
図6】実施形態の注出部材挿入構造の弁体を前図とは反対側から見た斜視図である。
図7】実施形態の注出部材挿入構造の断面図である。
図8】実施形態の注出部材挿入構造の動作を説明する断面図である。
図9】実施形態の注出部材挿入構造の動作を説明する断面図である。
図10】実施形態の注出部材挿入構造の動作を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している場合がある。
【0015】
[注出部材挿入構造]
図1は、実施形態の注出部材装置100の斜視図である。図2は、注出部材10の斜視図である。図3は、注出部材10の一部の側面図である。図4は、注出部材10の一部を図3とは反対側から見た側面図である。図5は、弁体20の斜視図である。図6は、弁体20を図5とは反対側から見た斜視図である。図7は、注出部材挿入構造10Aの断面図である。
以下の説明においては、図7に即して上下の位置関係を仮に定める。すなわち、図7において上に向かう方向を上方といい、下に向かう方向を下方という。ここで定めた位置関係は、注出部材挿入構造10Aの使用時の姿勢を限定しない。
【0016】
図1に示すように、注出部材装置100は、注出部材10と、受け部30とを備える。
受け部30は、被挿入部5と、第1内筒部2と、底板部4とを備える。
【0017】
実施形態の注出部材挿入構造10Aは、注出部材10と、被挿入部5とを有する。
図1および図6に示すように、底板部4は、概略、矩形状に形成されている。
図7に示すように、被挿入部5は、底板部4の一方の面(上面)から上方に突出する。図6に示すように、被挿入部5は、第1端壁1aと、第1側壁1cと、第2側壁1dとを備える。第1端壁1aは、矩形状の底板部4の第1端縁4aに形成されている。第1側壁1cは、底板部4の第1側縁4cを含む部分に形成されている。第2側壁1dは、底板部4の第2側縁4dを含む部分に形成されている。
【0018】
図6に示すように、第1側壁1cの内面には、第1中間凸部1eが形成されている。第1中間凸部1eは、第2側壁1dに近づく方向に突出して形成されている。図1に示すように、第2側壁1dの内面には、第2中間凸部1fが形成されている。第2中間凸部1fは、第1側壁1cに近づく方向に突出して形成されている。
【0019】
被挿入部5の内部空間は挿入孔5aである。挿入孔5aは、第1端壁1aと第1側壁1cと第2側壁1dと中間凸部1e,1fとによって囲まれた空間である。挿入孔5aは、中心軸方向に直交する断面が円弧状とされている。
【0020】
図7に示すように、挿入孔5aの内周面5bには、第1キー突起41および第2キー突起42が形成されている。第1キー突起41および第2キー突起42は、例えば、半球状の突起である。第1キー突起41および第2キー突起42は、内周面5bから、第1挿入孔5aの中心軸に近づく方向に突出している。第1キー突起41と第2キー突起42は、例えば、第1挿入孔5aの中心軸に対して軸周り方向に約180°ずれた位置に形成されている。すなわち、第1キー突起41と第2キー突起42との間の突起間角度α1(図1参照)は約180°である。
第1キー突起41および第2キー突起42は、挿入孔5aの内周面5bに形成された「第2の螺旋係合部」である。
【0021】
図6および図7に示すように、第1内筒部2の上端には、一対の板状の係合部7,7が設けられている。係合部7は、被挿入部5の上端から軸線方向に沿って上方に突出している。係合部7は、第1挿入孔5aの中心軸に直交する断面が中心軸周りの円弧状となる板状とされている。係合部7,7は、先端部が係合受け部24,24に係合したときに、弁体20の中心軸C1周り方向の変位を規制することができる。
【0022】
図7に示すように、注出部材10は、容器34の容器本体35の開口部35aに装着されている。注出部材10は、基部11と、挿入部12とを有する。図1に示すように、基部11は、例えば、円板状であってよいし、いわゆる舟形であってもよい。図7に示すように、基部11は、容器本体35の開口部35aに取り付けられている。
基部11と挿入部12とは一体に形成されている。基部11と挿入部12とは一体成型によって作製することができる。
【0023】
挿入部12は、概略、円筒状とされている。挿入部12は、基部11の第1面11a(図7における下面)から、図7における下方に突出している。C1は、注出部材10の中心軸、すなわち、挿入部12および流路13,14(図1参照)の中心軸である。
図1に示すように、基部11には、Z方向に沿って流路13が形成されている。挿入部12の内部空間は流路14となる。流路14は、流路13に比べて内径が小さい。そのため、図7に示すように、流路13と流路14との境界には、流路13,14の内径差により段部15が形成されている。流路13,14は、容器本体35(図5参照)の内容物を、挿入部12の先端開口から外部に注出させることができる。
【0024】
図2図4に示すように、挿入部12の外周面には、第1キー溝43および第2キー溝44が形成されている。第1キー溝43および第2キー溝44は、例えば、長さ方向に直交する断面が半円状の溝である。
【0025】
図3に示すように、第1キー溝43は、第1主溝45と、第1屈折溝47とを有する。第1キー溝43は、第1キー突起41(図1および図7参照)に嵌合する。第1キー溝43(詳しくは第1屈折溝47)と第1キー突起41とは、互いに係合しあって螺旋方向への相対移動を可能とする。
【0026】
図4に示すように、第2キー溝44は、第2主溝46と、第2屈折溝48とを有する。第2キー溝44は、第2キー突起42(図1および図7参照)に嵌合する。第2キー溝44(詳しくは第2屈折溝48)と第2キー突起42とは、互いに係合しあって螺旋方向への相対移動を可能とする。
【0027】
キー溝43,44(詳しくは屈折溝47,屈折溝48)の螺旋角は、キー溝53,54の螺旋角と等しい。キー溝43,44(詳しくは屈折溝47,屈折溝48)は、挿入部12の外周面に形成された「第2の螺旋係合部」である。
【0028】
図3および図4に示すように、第1主溝45および第2主溝46は、挿入部12の先端12aから、中心軸C1に沿って基部11に近づく方向に延びる。第1屈折溝47および第2屈折溝48は、第1主溝45および第2主溝46の各末端45a,46aから屈折した方向に延びる。第1屈折溝47および第2屈折溝48は、中心軸C1周りの螺旋状とされている。
【0029】
第1屈折溝47および第2屈折溝48は、第1主溝45および第2主溝46の各末端45a,46aを起点として、基部11に近づく方向に、中心軸C1に対して傾斜して延びる。第1屈折溝47と第2屈折溝48の傾斜方向は互いに同じである。第1屈折溝47および第2屈折溝48は、例えば、中心軸C1周り方向に10°~180°の範囲に形成されている。この角度が120°以下であると、接続時のひねりが少なく、より作業しやすい。
【0030】
図2に示すように、第1キー溝43と第2キー溝44は、中心軸C1周り方向に約180°ずれた位置に形成されている。すなわち、第1キー溝43の最深部と第2キー溝44の最深部との間の中心軸C1周りの角度β1(溝間角度β1)は、約180°である。溝間角度β1は、第1キー突起41と第2キー突起42との間の突起間角度α1(図1参照)と等しい。溝間角度β1は180°に限定されず、任意の角度とすることができる。
【0031】
挿入部12の内周面には、第1キー突起51および第2キー突起52が形成されている。第1キー突起51および第2キー突起52は、例えば、半球状の突起である。第1キー突起51および第2キー突起52は、挿入部12の内周面から、中心軸C1に近づく方向に突出している。第1キー突起51と第2キー突起52は、例えば、中心軸C1に対して軸周り方向に約180°ずれた位置に形成されている。第1キー突起51と第2キー突起52との間の突起間角度α2は約180°である。
第1キー突起51および第2キー突起52は、挿入部12の内周面に形成された「第1の螺旋係合部」である。突起間角度α2は180°に限定されず、任意の角度とすることができる。
【0032】
図7に示すように、弁体20は、挿入部12の内部に、中心軸C1に沿う方向(軸線方向)に移動可能に設けられている。
図5および図6に示すように、弁体20は、閉止板21と、筒部22と、複数の連結部23とを備える。
閉止板21は、円板状に形成されている。閉止板21は、中心軸C1に対して垂直である。図7に示すように、閉止板21の外径は、流路13の内径より小さく、流路14の内径より大きい。そのため、閉止板21は、段部15に係止して流路13,14を閉止可能である。
【0033】
図5および図6に示すように、筒部22は、円筒形状とされている。筒部22の外周面には、第1キー溝53および第2キー溝54が形成されている。第1キー溝53および第2キー溝54は、中心軸C1周りの螺旋状とされている。第1キー溝53および第2キー溝54は、閉止板21に近づく方向に、中心軸C1に対して傾斜して延びる。
【0034】
第1キー溝53は、第1キー突起51に嵌合する。第1キー溝53と第1キー突起51とは、互いに係合しあって螺旋方向への相対移動を可能とする。第2キー溝54は、第2キー突起52に嵌合する。第2キー溝54と第2キー突起52とは、互いに係合しあって螺旋方向への相対移動を可能とする。
第1キー溝53および第2キー溝54は、弁体20の外周面に形成された「第1の螺旋係合部」である。
【0035】
筒部22は、閉止板21から軸線方向に離間している。
連結部23は、軸線方向に沿う柱状とされ、閉止板21と筒部22とを連結している。複数の連結部23は、中心軸C1周り方向に間隔をおいて形成されている。そのため、閉止板21が段部15から上方(容器34に近づく方向)に離れると(図10参照)、閉止板21と筒部22との隙間を通して、流路13と流路14との間で流体の流通が可能となる。
【0036】
図6および図7に示すように、筒部22の下部の外周面には、被挿入部5の係合部7,7の先端部と係合する凹状の係合受け部24,24が形成されている。係合受け部24は、深さ方向を上方(閉止板21に近づく方向)に向けて形成されている。係合受け部24に係合部7の先端部が嵌合したときには、弁体20の中心軸C1周り方向の変位が規制される。一対の係合受け部24,24は、中心軸C1周りに約180°ずれた位置に形成されている。
【0037】
[注出部材挿入構造の使用方法]
次に、注出部材挿入構造10Aの使用方法について説明する。まず、注出部材10の挿入部12を挿入孔5aに挿入する操作について説明する。
図7に示すように、弁体20の閉止板21は段部15に当接して流路13,14を閉止している。そのため、容器34の内容物がこぼれ出るのが抑制される。
【0038】
図8に示すように、注出部材10の挿入部12を被挿入部5の挿入孔5aに合わせる。その際、第1キー溝43および第2キー溝44(図2参照)の位置を、それぞれ第1キー突起41および第2キー突起42の位置に合わせる。注出部材10の中心軸C1は挿入孔5aの中心軸に一致させる。
【0039】
挿入部12が挿入孔5aに挿入されるとともに、第1キー突起41および第2キー突起42は、それぞれ第1キー溝43および第2キー溝44の第1主溝45および第2主溝46に進入する。
【0040】
挿入部12を被挿入部5に対して挿入方向に移動させると、第1キー突起41および第2キー突起42は、それぞれ第1主溝45および第2主溝46内を進み、末端45a,46a(図3および図4参照)に達する。
挿入部12を中心軸C1周りの螺旋方向に変位させると、第1キー突起41および第2キー突起42は、それぞれ第1屈折溝47および第2屈折溝48に進入する。これにより、挿入部12は、回転しつつ挿入方向(図8の下方)に変位する。
【0041】
図9および図10に示すように、係合部7,7の先端部が係合受け部24,24に嵌合すると、弁体20の中心軸C1周り方向の変位が規制されるが、挿入部12の螺旋方向の変位は妨げられない。この際、挿入部12のキー突起51,52はキー溝53,54(図5および図6参照)内を進行する。
【0042】
弁体20が高さ位置を維持したまま、挿入部12は挿入方向(図9および図10の下方)に変位するため、閉止板21は段部15から離れる。そのため、容器34の内容物は、閉止板21と筒部22との隙間を通して、流路13から流路14に流入する。容器34の内容物は流路14を通して、被挿入部5を経て貯留容器(図示略)に供給される。
第1キー突起41および第2キー突起42が、それぞれ第1屈折溝47および第2屈折溝48の終端に達した段階で、挿入部12の、挿入孔5aへの挿入は完了する。
【0043】
次に、注出部材10の挿入部12を挿入孔5aから引き抜く操作について説明する。
図9に示すように、挿入部12を、挿入時とは逆の方向に回転させつつ、引き抜き方向(図9の上方)に変位させる。この過程で、キー突起41,42は屈折溝47,48内を進行し、キー突起51,52はキー溝53,54内を進行する。図8に示すように、挿入部12の上昇によって段部15が閉止板21に達するため、流路13,14は閉止される。
【0044】
係合部7,7が係合受け部24,24から外れると、弁体20の回転規制は解除されるため、弁体20は挿入部12と一体的に移動する。
キー突起41,42が末端45a,46a(図3および図4参照)に達した後、挿入部12を引き抜き方向(図8の上方)に変位させる。これにより、図7に示すように、挿入部12は、挿入孔5aから引き抜かれる。
【0045】
[注出部材挿入構造が奏する効果]
図1に示すように、注出部材挿入構造10Aでは、挿入部12内に弁体20が設けられ、被挿入部5に、弁体20の係合受け部24と係合する係合部7が設けられている。そのため、挿入部12の挿入過程で、挿入部12が十分に深く挿入孔5aに挿入されて流路が確保されてから、弁体20の回転変位が規制されて流路13,14が開放される。よって、注出部材10を被挿入部5に接続する作業において内容物の漏出を抑制することができる。
【0046】
注出部材挿入構造10Aでは、挿入孔5aの内周面にキー突起41,42が形成され、挿入部12の外周面にキー溝43,44が形成されているため、挿入部12の引き抜きの際に、弁体20の閉止板21が流路13,14を閉止する。よって、注出部材10を被挿入部5から引き抜く作業において内容物の漏出を抑制することができる。
【0047】
キー溝43,44は、主溝45,46に加えて屈折溝47,48を有するため、キー突起がキー溝内を進行する過程で進行方向が変化することから、操作者が注出部材の挿入操作の完了を確認しやすい。よって、注出部材挿入構造10Aは、操作性に優れている。
【0048】
本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、図1に示す注出部材挿入構造10Aでは、被挿入部5にキー突起41,42が形成され、注出部材10にキー溝43,44が形成されているが、注出部材10および被挿入部5の構造はこれに限定されない。注出部材挿入構造は、挿入部の外周面と挿入孔の内周面のいずれか一方にキー突起が形成され、他方に、キー突起が嵌合するキー溝が形成されていればよい。そのため、図1に示す注出部材挿入構造10Aとは逆に、被挿入部にキー溝が形成され、注出部材にキー突起が形成されていてもよい。
【0049】
図1等に示す注出部材挿入構造10Aでは、被挿入部5に2つのキー突起41,42が形成され、挿入部12に2つのキー突起51,52が形成されている。被挿入部および挿入部に形成されるキー突起の数は、それぞれ2つに限らず、1でもよいし、3以上の任意の数でもよい。注出部材挿入構造10Aでは、挿入部12に2つのキー溝43,44が形成され、弁体20に2つのキー溝53,54が形成されている。挿入部および弁体に形成されるキー溝の数は、それぞれ2つに限らず、1でもよいし、3以上の任意の数でもよい。
【0050】
キー突起の形状は特に限定されない。キー突起の形状は半球状に限らず、直方体状、円錐状、円錐台状、角錘状、角錐台状などであってよい。キー溝の形状は特に限定されない。キー溝の長さ方向に直交する断面の形状は半円状に限らず、矩形状、台形状、円弧状などであってよい。
【0051】
図1等に示す注出部材挿入構造10Aでは、挿入部の内周面のキー突起の数は2であり、弁体の外周面のキー溝の数も2であるが、キー突起およびキー溝の数は特に限定されない。挿入部の内周面のキー突起の数は1でもよいし、3以上の任意の数でもよい。挿入部の内周面のキー溝の数は1でもよいし、3以上の任意の数でもよい。
図1等に示す注出部材挿入構造10Aでは、挿入孔の内周面のキー突起の数は2であり、挿入部の外周面のキー溝も2であるが、キー突起およびキー溝の数は特に限定されない。挿入孔の内周面のキー突起の数は1でもよいし、3以上の任意の数でもよい。挿入部の外周面のキー溝の数は1でもよいし、3以上の任意の数でもよい。
【0052】
注出部材を構成する基部と挿入部とは、別体であってもよい。基部と挿入部とが別体である場合には、例えば、次の構造を採用できる。基部は、挿入部の一部が挿入される貫通孔(図示略)を有する。挿入部の一部は、前記貫通孔に挿入された状態で、凹凸嵌合、ネジ嵌合などにより基部と結合される。基部と挿入部とは着脱自在であってよい。
【0053】
基部と挿入部とが別体であると、次の使用方法が可能である。基部は容器に取り付けておく。挿入部を基部から外した状態で、貫通孔を通して内容物を容器に充填する。次いで、挿入部を基部に取り付ける。この方法によれば、内容物を、挿入部ではなく基部の貫通孔を通して容器に充填することができるため、容器への内容物の流入がスムーズとなり充填操作が容易となる。
【0054】
図1等に示す注出部材挿入構造10Aでは、第1内筒部2の係合部7と弁体20の係合受け部24とが係合可能であるが、注出部材挿入構造は、第1内筒部と弁体との係合構造(係合部および係合受け部)がなくてもよい。係合部と係合受け部とがない場合でも、弁体は、第1内筒部と接触したときの摩擦などにより中心軸周り方向の変位が規制されることが好ましい。
【0055】
図1に示す注出部材10と、注出部材10が装着される容器34(図7参照)とは、包装容器を構成する。
【0056】
図1等に示す注出部材挿入構造10Aでは、弁体20は、容器34側に移動したときに注出部材10の流路13,14が開き、被挿入部5側に移動したときに流路13,14が閉じる。注出部材挿入構造は、これに限らず、弁体が容器側に移動したときに注出部材の流路が閉じ、弁体が被挿入部側に移動したときに注出部材の流路が開く構造を採用してもよい。例えば、注出部材の流路内面に段部が形成され、弁体が容器側に移動したときに弁体の閉止板が段部に当接して流路が閉じ、かつ、弁体が被挿入部側に移動したときに閉止板が段部から離れて流路が開く構造が可能である。
【0057】
本発明の注出部材挿入構造は、容器の内容物の詰替えや補充に好適に適用できる。特に、詰替えや補充時の液漏れが問題となる内容物を用いる場合、例えば、印刷用インキ、トイレタリー用品、調味料、医薬品、医療・検査機器、燃料などを対象とする場合に好適である。
【符号の説明】
【0058】
5…被挿入部、5a…挿入孔、10…注出部材、10A…注出部材挿入構造、12…挿入部、13,14…流路、20…弁体、24…係合受け部、34…容器、35a…開口部、41…第1キー突起(第2の螺旋係合部)、42…第2キー突起(第2の螺旋係合部)、47…第1屈折溝(第2の螺旋係合部)、48…第2屈折溝(第2の螺旋係合部)、51…第1キー突起(第1の螺旋係合部)、52…第2キー突起(第1の螺旋係合部)、53…第1キー溝(第1の螺旋係合部)、54…第2キー溝(第1の螺旋係合部)、C1…注出部材の中心軸(軸線)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10