(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-20
(45)【発行日】2022-12-28
(54)【発明の名称】アルキル変性カルボキシル基含有共重合体、当該共重合体を含む増粘剤、及び当該共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 220/06 20060101AFI20221221BHJP
C08L 33/02 20060101ALI20221221BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20221221BHJP
C08K 5/103 20060101ALI20221221BHJP
【FI】
C08F220/06
C08L33/02
C09K3/00 103G
C08K5/103
(21)【出願番号】P 2019539440
(86)(22)【出願日】2018-08-24
(86)【国際出願番号】 JP2018031290
(87)【国際公開番号】W WO2019044679
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2017165399
(32)【優先日】2017-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】清本 梨絵
(72)【発明者】
【氏名】西口 慧
(72)【発明者】
【氏名】村上 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】橋本 直幸
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/056591(WO,A1)
【文献】特開2012-007010(JP,A)
【文献】特開2011-105833(JP,A)
【文献】国際公開第2013/008627(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/055354(WO,A1)
【文献】特開昭59-232107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/06
C08L 33/02
C08K 5/103
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル変性カルボキシル基含有共重合体とノニオン性界面活性剤とを含む、アルキル変性カルボキシル基含有共重合体組成物であって、
前記アルキル変性カルボキシル基含有共重合体は、(メタ)アクリル酸100質量部と、アルキル基の炭素数が18~24である(メタ)アクリル酸アルキルエステル1.5~4.5質量部と、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物0~0.1質量部との共重合体であり、
前記ノニオン性界面活性剤は、疎水部と親水部から構成され、前記疎水部は、多価アルコール脂肪酸エステル及びヒドロキシ脂肪酸の付加重合物から選ばれる一種であり、
前記ノニオン性界面活性剤を1.5~4.5質量部含む、アルキル変性カルボキシル基含有共重合体
組成物。
【請求項2】
前記アルキル変性カルボキシル基含有共重合体の1質量%中和粘稠液の光透過率Xが、90%以上である、請求項1に記載のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体
組成物。
【請求項3】
前記アルキル変性カルボキシル基含有共重合体の1質量%中和粘稠液100質量部に対して、1質量部の塩化ナトリウムを添加して得られた電解質含有1%中和粘稠液の光透過率Yが、90%以上である、請求項1または2に記載のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体
組成物。
【請求項4】
25℃において、前記アルキル変性カルボキシル基含有共重合体の1質量%中和粘稠液の粘度Aが、5,000mPa・s以上である、請求項1~3のいずれか記載のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体
組成物。
【請求項5】
25℃において、前記アルキル変性カルボキシル基含有共重合体の1質量%中和粘稠液の粘度Aに対する、前記1質量%中和粘稠液100質量部に対して1質量部の塩化ナトリウムを添加して得られた電解質含有1%中和粘稠液の粘度Bの粘度比(粘度B/粘度A)が、0.5~2.0の範囲にある、請求項1~4のいずれかに記載のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体
組成物。
【請求項6】
前記アルキル変性カルボキシル基含有共重合体の1質量%中和粘稠液の粘度Aと、前記1質量%中和粘稠液100質量部に対して1質量部の塩化ナトリウムを添加して得られた電解質含有1%中和粘稠液の粘度Bとの差の絶対値|粘度A-粘度B|が、10,000mPa・s以下である、請求項1~5のいずれかに記載のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体
組成物。
【請求項7】
前記エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物が、ペンタエリスリトールポリアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル
、及びポリアリルサッカロースからなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項1~6のいずれかに記載のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体
組成物。
【請求項8】
形状が微粒子である、請求項1~7のいずれかに記載のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体
組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体
組成物を含む、増粘剤。
【請求項10】
(メタ)アクリル酸と、アルキル基の炭素数が18~24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、任意に、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物とを、ノニオン性界面活性剤の存在下に共重合させる工程を備える、請求項1~8のいずれかに
記載のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体
組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキル変性カルボキシル基含有共重合体、当該共重合体を含む増粘剤、及び当該共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧品用の増粘剤、パップ剤の保湿剤、乳化剤、および懸濁安定化剤に用いられる、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体として、種々の共重合体が知られている。例えば、特定量のオレフィン系不飽和カルボン酸単量体と特定量の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数が8~30)と架橋剤とを反応させた共重合体(特許文献1参照)、特定量のオレフィン系不飽和カルボン酸単量体と特定量の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数が8~30)と架橋剤とを反応させた共重合体(特許文献2参照)等が知られている。これら(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体は、通常、水などに溶解させた後、アルカリで中和して0.1~1質量%程度の中和粘稠液とすることにより、上記の各用途に用いられる。
【0003】
この中和粘稠液は、製品を構成する種々の原料や添加物として用いられる電解質が共存する場合、それらが比較的低濃度であっても、粘度や光透過率が低下したり、共重合体の一部が析出したりするといった問題がある。
【0004】
この問題に対し、比較的高濃度の電解質の存在下であっても高い粘度と高い透過率を有し、べたつきの無いみずみずしい触感を有する中和粘稠液を形成することのできる増粘剤として、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数が18~24)と架橋剤を反応させた共重合体(特許文献3参照)が開発されている。しかしながら、当該共重合体は、水への溶解性に乏しい、また、中和粘稠液の粘度差が電解質の有無で非常に大きく、粘度コントロールが難しいといった問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭59-232107号公報
【文献】特開昭51-6190号公報
【文献】国際公開2007/055354号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、水への分散性に優れ、電解質の添加の有無で粘度が大きく変化せず、電解質の存在下での透明性も高い中和粘稠液を調製できるアルキル変性カルボキシル基含有共重合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、(メタ)アクリル酸100質量部と、アルキル基の炭素数が18~24である(メタ)アクリル酸アルキルエステル1.5~4.5質量部と、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物0~0.1質量部との共重合体であり、ノニオン性界面活性剤を1.5~4.5質量部含む、アルキル変性カルボキシル基含有共重合体は、水への分散性に優れ、電解質の添加の有無で粘度が大きく変化せず、電解質の存在下での透明性も高い中和粘稠液を調製できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の構成を備える発明を提供する。
項1. (メタ)アクリル酸100質量部と、アルキル基の炭素数が18~24である(メタ)アクリル酸アルキルエステル1.5~4.5質量部と、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物0~0.1質量部との共重合体であり、ノニオン性界面活性剤を1.5~4.5質量部含む、アルキル変性カルボキシル基含有共重合体。
項2. 前記アルキル変性カルボキシル基含有共重合体の1質量%中和粘稠液の光透過率Xが、90%以上である、項1に記載のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体。
項3. 前記アルキル変性カルボキシル基含有共重合体の1質量%中和粘稠液100質量部に対して、1質量部の塩化ナトリウムを添加して得られた電解質含有1%中和粘稠液の光透過率Yが、90%以上である、項1または2に記載のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体。
項4. 25℃において、前記アルキル変性カルボキシル基含有共重合体の1質量%中和粘稠液の粘度Aが、5,000mPa・s以上である、項1~3のいずれか記載のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体。
項5. 25℃において、前記アルキル変性カルボキシル基含有共重合体の1質量%中和粘稠液の粘度Aに対する、前記1質量%中和粘稠液100質量部に対して1質量部の塩化ナトリウムを添加して得られた電解質含有1%中和粘稠液の粘度Bの粘度比(粘度B/粘度A)が、0.5~2.0の範囲にある、項1~4のいずれかに記載のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体。
項6. 前記アルキル変性カルボキシル基含有共重合体の1質量%中和粘稠液の粘度Aと、前記1質量%中和粘稠液100質量部に対して1質量部の塩化ナトリウムを添加して得られた電解質含有1%中和粘稠液の粘度Bとの差の絶対値|粘度A-粘度B|が、10,000mPa・s以下である、項1~5のいずれかに記載のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体。
項7. 前記エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物が、ペンタエリスリトールポリアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールアリルエーテル、及びポリアリルサッカロースからなる群より選ばれた少なくとも1種である、項1~6のいずれかに記載のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体。
項8. 形状が微粒子である、項1~7のいずれかに記載のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体。
項9. 項1~8のいずれかに記載のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体を含む、増粘剤。
項10. (メタ)アクリル酸と、アルキル基の炭素数が18~24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、任意に、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物とを、ノニオン性界面活性剤の存在下に共重合させる工程を備える、項1~8のいずれかにアルキル変性カルボキシル基含有共重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水への分散性に優れ、電解質の添加の有無で粘度が大きく変化せず、電解質の存在下での透明性も高い中和粘稠液を調製できるアルキル変性カルボキシル基含有共重合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体は、(メタ)アクリル酸100質量部と、アルキル基の炭素数が18~24である(メタ)アクリル酸アルキルエステル1.5~4.5質量部と、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物0~0.1質量部との共重合体であり、ノニオン性界面活性剤を1.5~4.5質量部含む、アルキル変性カルボキシル基含有共重合体であることを特徴とする。本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体は、水への好適な分散性を備えている。以下、本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体、当該共重合体を含む増粘剤、及び当該共重合体の製造方法について、詳述する。
【0011】
なお、本発明において、「アクリル酸及びメタクリル酸」を総称して「(メタ)アクリル酸」という。また、本発明において、「中和粘稠液」とは、本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体の水分散液のpHが6.5~7.5となるように、アルキル変性カルボキシル基含有共重合体の水分散液にアルカリ成分(例えば水酸化ナトリウム)を混合して、アルキル変性カルボキシル基含有共重合体を中和したものを意味する。また、「1質量%中和粘稠液」とは、本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体の割合が0.9~1質量%である中和粘稠液を意味する。さらに、「電解質含有1%中和粘稠液」とは、1質量%中和粘稠液100質量部に対して1質量部の塩化ナトリウムを添加して得られた中和粘稠液を意味する。
【0012】
本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体は、(メタ)アクリル酸100質量部と、アルキル基の炭素数が18~24である(メタ)アクリル酸アルキルエステル1.5~4.5質量部と、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物0~0.1質量部との共重合体であり、ノニオン性界面活性剤を1.5~4.5質量部含むものである。後述の通り、本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体は、(メタ)アクリル酸と、アルキル基の炭素数が18~24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物という各単量体成分を、前記所定の割合となるようにして、所定量のノニオン性界面活性剤の存在下に共重合させることにより製造することができる。
【0013】
本発明において、(メタ)アクリル酸としては、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方を使用することができ、好ましくはアクリル酸である。
【0014】
アルキル基の炭素数が18~24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、(メタ)アクリル酸と、アルキル基の炭素数が18~24である高級アルコールとを反応させて得られるエステルである。具体例としては、(メタ)アクリル酸ステアリル(メタ)アクリル酸エイコサニル(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸テトラコサニルなどがある。これらの中でも、水への分散性に優れ、電解質の添加の有無で粘度が大きく変化せず、電解質の存在下での透明性も高い中和粘稠液を好適に調製する観点から、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸エイコサニル、メタクリル酸ベヘニル及びメタクリル酸テトラコサニル等が好適に用いられる。
【0015】
本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体において、単量体を構成しているアルキル基の炭素数が18~24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、1種類を用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。アルキル基の炭素数が18~24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを2種類以上用いて共重合するときは、例えば、日本油脂株式会社製の商品名ブレンマーVMA-70(メタクリル酸ステアリルが10質量部~20質量部、メタクリル酸エイコサニルが10質量部~20質量部、メタクリル酸ベヘニルが59質量部~80質量部、及びメタクリル酸テトラコサニルが1質量部以下の混合物)を用いることができる。
【0016】
本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体における、アルキル基の炭素数が18~24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、1.5~4.5質量部である。水への分散性に優れ、電解質の添加の有無で粘度が大きく変化せず、電解質の存在下での透明性も高い中和粘稠液を好適に調製する観点から、アルキル基の炭素数が18~24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合は、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、下限については1.5質量部以上であり、上限については、4.5質量部以下、好ましくは3.5質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下であり、当該割合の範囲は、好ましくは1.5~3.5質量部、より好ましくは1.5~3.0質量部が挙げられる。
【0017】
本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体において、必要に応じて含まれる単量体成分であるエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物は、重合性を有するエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物である。好ましい具体例としては、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル等のペンタエリスリトールポリアリルエーテルや、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールアリルエーテル、ポリアリルサッカロース等がある。エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物は、1種類を用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。水への分散性に優れ、電解質の添加の有無で粘度が大きく変化せず、電解質の存在下での透明性も高い中和粘稠液を好適に調製する観点から、これらの中でも、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物は、ペンタエリスリトールポリアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールアリルエーテル、及びポリアリルサッカロースのうち少なくとも1種を含んでいることが好ましい。
【0018】
本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体における、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の割合は、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、0~0.1質量部である。水への分散性に優れ、電解質の添加の有無で粘度が大きく変化せず、電解質の存在下での透明性も高い中和粘稠液を好適に調製する観点からは、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の割合は、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、下限については0質量部以上であり、上限については、0.1質量部以下、好ましくは0.05質量部以下、より好ましくは0.01質量部以下であり、当該範囲は、好ましくは0~0.05質量部、より好ましくは0~0.01質量部である。
【0019】
本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体には、(メタ)アクリル酸、アルキル基の炭素数が18~24である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及びエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物以外の他の単量体成分が共重合されていてもよい。他の単量体成分の割合は、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、例えば5.0質量部以下である。
【0020】
本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体は、ノニオン性界面活性剤を含んでいる。より具体的には、ノニオン性界面活性剤は、単量体成分としてではなく、アルキル変性カルボキシル基含有共重合体の表面や内部に存在している。本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体の形状が、例えば微粒子である場合には、当該微粒子の表面や内部にノニオン性界面活性剤が含まれる。
【0021】
ノニオン性界面活性剤は、疎水部と親水部から構成される。
【0022】
疎水部の例は、多価アルコール脂肪酸エステル、ヒドロキシ脂肪酸の付加重合物などがある。
【0023】
多価アルコール脂肪酸エステルの多価アルコール部分は、例えば、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチルプロパノール、ソルビット、ソルビタンなどの多価アルコールに由来するものが好ましい。多価アルコール部分は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。また、多価アルコール脂肪酸エステルの脂肪酸部分は、例えば、ステアリン酸、イソステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸に由来するものが好ましい。脂肪酸部分は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。多価アルコール脂肪酸エステルの好適な例は、ステアリン酸エステル、イソステアリン酸エステル、パルミチン酸エステルの他、硬化ヒマシ油誘導体などもある。
【0024】
また、ヒドロキシ脂肪酸の付加重合物の好適な例は、2-ヒドロキシパルミチン酸、16-ヒドロキシパルミチン酸、12-ヒドロキシステアリン酸の付加重合物である。
【0025】
ノニオン性界面活性剤の親水部の例は、ノニオン性界面活性剤中のオキシアルキレン鎖がある。オキシアルキレン鎖の好適な例としては、下記一般式で示されるオキシアルキレン基がある。
【0026】
-(CH2-CHR1-O)n-
(式中、R1は水素原子、メチル基またはエチル基を示し、nは1~100の整数を示す。nが2以上の整数である場合、複数のR1は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
【0027】
水への分散性に優れ、電解質の添加の有無で粘度が大きく変化せず、電解質の存在下での透明性も高い中和粘稠液を好適に調製する観点から、ノニオン性界面活性剤のHLBは、5~8が好ましい。
【0028】
水への分散性に優れ、電解質の添加の有無で粘度が大きく変化せず、電解質の存在下での透明性も高い中和粘稠液を好適に調製する観点から、ノニオン性界面活性剤の好ましい具体例は、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレントリステアリン酸トリメチロールなどである。さらに、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルの好ましい具体例は、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ジステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、トリステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、ジイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ジイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、2-ヒドロキシパルミチン酸とアルキレングリコールのブロック共重合体、16-ヒドロキシパルミチン酸とアルキレングリコールのブロック共重合体、12-ヒドロキシステアリン酸とアルキレングリコールのブロック共重合体などである。ノニオン性界面活性剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0029】
本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体における、ノニオン性界面活性剤の割合は、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、1.5~4.5質量部である。水への分散性に優れ、電解質の添加の有無で粘度が大きく変化せず、電解質の存在下での透明性も高い中和粘稠液を好適に調製する観点からは、ノニオン性界面活性剤の割合は、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、下限については、1.5質量部以上、好ましくは2.0質量部以上であり、上限については、4.5質量部以下、好ましくは4.0質量部以下であり、当該割合の好ましい範囲は、1.5~4.0質量部、2.0~4.5質量部、2.0~4.0質量部である。
【0030】
本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体の1質量%中和粘稠液の粘度Aは、25℃において、下限については、好ましくは5,000mPa・s以上、より好ましくは8000mPa・s以上であり、上限については、好ましくは15,000mPa・s以下、より好ましくは13,000mPa・s以下であり、好ましい範囲は、5,000~15,000mPa・s、5,000~13,000mPa・s、8,000~15,000mPa・s、8,000~13,000mPa・sである。本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体は、前述の各単量体成分とノニオン性界面活性剤が上記所定量に設定されているため、1質量%中和粘稠液の粘度Aを当該値に好適に設定することができ、水への分散性を好適なものとすることができる。
【0031】
さらに、25℃において、前記1質量%中和粘稠液の粘度Aに対する、前記1質量%中和粘稠液100質量部に対して1質量部の塩化ナトリウムを添加して得られた電解質含有1%中和粘稠液の粘度Bの粘度比(粘度B/粘度A)は、下限については、好ましくは0.5以上、より好ましくは1.0以上であり、上限については、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下であり、好ましい範囲は、0.5~2.0の範囲、0.5~1.5の範囲、1.0~2.0の範囲、1.0~1.5の範囲である。本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体は、各単量体成分とノニオン性界面活性剤が上記所定量に設定されているため、当該粘度比をこのような範囲に好適に設定することができ、水への分散性に優れ、電解質の添加の有無で粘度が大きく変化せず、電解質の存在下での透明性も高い中和粘稠液を好適に調製することができる。
【0032】
また、25℃において、前記1質量%中和粘稠液の粘度Aと、電解質含有1%中和粘稠液の粘度Bとの差の絶対値|粘度A-粘度B|としては、好ましくは10,000mPa・s以下、より好ましくは7,500mPa・s以下、さらに好ましくは5,000mPa・s以下が挙げられる。本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体は、各単量体成分とノニオン性界面活性剤が上記所定量に設定されているため、当該粘度差をこのような値に好適に設定することができ、水への分散性に優れ、電解質の添加の有無で粘度が大きく変化せず、電解質の存在下での透明性も高い中和粘稠液を好適に調製することができる。
【0033】
本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体の電解質含有1%中和粘稠液の粘度Bは、25℃において、下限については、好ましくは5,000mPa・s以上、より好ましくは7,500mPa・s以上、さらに好ましくは10,000mPa・s以上であり、上限については、好ましくは17,500mPa・s以下、より好ましくは15,000mPa・s以下であり、好ましい範囲は、5,000~20,000mPa・s、5,000~17,500mPa・s、5,000~15,000mPa・s、7,500~20,000mPa・s、7,500~17,500mPa・s、7,500~15,000mPa・s、10,000~20,000mPa・s、10,000~17,500mPa・s、10,000~15,000mPa・sである。
【0034】
1質量%中和粘稠液の粘度A及び電解質含有1%中和粘稠液の粘度Bは、それぞれの中和粘稠液について、回転粘度計を用いて、スピンドルローターNo.6の回転速度を毎分20回転として1分後の粘度を25℃で測定した値である。
【0035】
また、本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体の前記1質量%中和粘稠液の光透過率Xは、下限については、好ましくは90%以上、より好ましくは94%以上、さらに好ましくは96%以上であり、上限については好ましくは100%以下であり、好ましい範囲は、90~100%、94~100%、96~~100%である。本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体は、各単量体成分とノニオン性界面活性剤が上記所定量に設定されているため、1質量%中和粘稠液の光透過率Xをこのような範囲に好適に設定することができ、透明性の高い中和粘稠液とすることができる。
【0036】
また、本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体の前記電解質含有1%中和粘稠液の光透過率Yは、下限については、好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、さらに好ましくは94%以上であり、上限については好ましくは100%以下であり、好ましい範囲は、90~100%、92~100%、94~100%である。本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体は、各単量体成分とノニオン性界面活性剤が上記所定量に設定されているため、電解質含有1%中和粘稠液の光透過率Yをこのような範囲に好適に設定することができ、電解質の存在下での透明性も高い中和粘稠液とすることができる。
【0037】
1質量%中和粘稠液の光透過率X及び電解質含有1%中和粘稠液の光透過率Yは、それぞれの中和粘稠液を遠心分離機に供し、毎分2000回転で20分間の操作により脱泡した後、光路長1cmのセルを用いて、測定波長を425nmとして光透過率を測定した値である。
【0038】
本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体は、以下の測定方法によって測定される水への均一分散に要する時間が、30分間以下であることが好ましく、25分以下であることがより好ましい。
【0039】
(水への均一分散に要する時間の測定方法)
直径11cm、1000mL容のガラスビーカーに25℃の蒸留水495gを投入し、直径3cmの3つ羽翼を有する攪拌器を用いて、1000rpmで蒸留水を撹拌する。撹拌を続けた水の中に、アルキル変性カルボキシル基含有共重合体5gを、徐々に投入し、ママコなく、水に均一に分散するまでの時間を目視で確認する。分散しきっていないアルキル変性カルボキシル基含有共重合体の見落としを防ぐ為、分散液を目開き142μmのろ布に通過させ、ろ布上にアルキル変性カルボキシル基含有共重合体の塊が確認された場合は均一に分散されていないと判断し、測定を最初からやり直す。均一に分散するまでの時間が30分以下であれば、水への均一分散性は優れていると評価できる。
【0040】
本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体の形状は、例えば、微粒子である。微粒子の粒径は、水への分散性を高める観点から、例えば、90%以上の粒子が1~30μmの範囲の粒子径である。
【0041】
本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体の製造方法は、少なくとも、(メタ)アクリル酸と、アルキル基の炭素数が18~24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、任意に、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物とを、ノニオン性界面活性剤の存在下に共重合させる工程を備える方法が挙げられる。共重合させる方法は、各単量体成分を、不活性ガス雰囲気下、溶媒中で撹拌し、重合開始剤を用いて重合させる方法等、単量体を共重合させる一般的な方法である。
【0042】
不活性ガス雰囲気とするための不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガスなどである。
【0043】
また、溶媒は、少なくとも各単量体成分は溶解するが、生成するアルキル変性カルボキシル基含有共重合体は溶解せず、かつ、共重合反応を阻害しなければ、特に限定されない。溶媒の具体例としては、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、イソオクタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、エチレンジクロライド、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトンなどがある。溶媒は、1種類で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。これらの溶媒の中でも、品質が安定しており、入手が容易である観点から、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、シクロヘキサン、エチレンジクロライド、酢酸エチルなどが好適に用いられる。
【0044】
溶媒の使用量は、アルキル変性カルボキシル基含有共重合体の耐塩粘度を上記の範囲に調整する観点や、撹拌操作性を向上させる観点、経済性の観点等から、(メタ)アクリル酸100質量部に対して、300質量部~5,000質量部とすることが好ましい。
【0045】
重合開始剤は、例えば、ラジカル重合開始剤が好ましい。重合開始剤の具体例としては、2,2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)、α、α’-アゾイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、第三級ブチルハイドロパーオキサイドなどがある。重合開始剤は、1種類で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリル酸1モルに対して、好ましくは0.00003~0.002モルである。重合開始剤の使用量が0.00003モル以上であることにより、反応速度が遅くならず、経済的である。また、重合開始剤の使用量が0.002モル以下であることにより、重合が急激に進行することを抑制できる。
【0047】
重合温度は、好ましくは50℃~90℃程度、より好ましくは55℃~75℃程度である。重合温度が50℃以上であることにより、重合速度が遅くならず、経済的である。また、重合温度が90℃以下であるときは、重合が急激に進行することを抑制できる。
【0048】
重合時間は、重合温度などによって異なるが、通常、0.5時間~5時間程度である。
【0049】
重合後のスラリー液を、例えば80℃~130℃に加熱して溶媒を除去することにより、本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体を得ることができる。加熱温度を80℃以上としたとき、乾燥時間を短くすることができる。また、加熱温度を130℃以下としたとき、得られたアルキル変性カルボキシル基含有共重合体を水に分散させた際にアルキル変性カルボキシル基含有共重合体が塊状化をより抑制することができる。
【0050】
本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体を用いて得られた中和粘稠液は、電解質の添加の有無で粘度が大きく変化せず、電解質の存在下での透明性も高いため、化粧品用の増粘剤として好適に使用することができる。具体的には、本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体は、例えば、脱イオン水等の純水に分散させ、アルカリで中和して、当該共重合体濃度が1質量%程度でpHが6.5~7.5である中和粘稠液とすることにより、化粧品用の増粘剤として好適に用いることができる。すなわち、本発明は、本発明のアルキル変性カルボキシル基含有共重合体を含む増粘剤を提供することができる。
【0051】
中和するためのアルカリは、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物や、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアミン類であり、なかでも水酸化ナトリウムが好適に用いられる。
【0052】
本発明の増粘剤を好適に用いることができる化粧料は、例えば、化粧水、乳液、美容液、クリーム、クリームパック、マッサージクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングジエル、先顔フォーム、日焼け止め、スタイリングジエル、アイライナー、マスカラ、口紅、ファンデーションなどである。
【実施例】
【0053】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し本発明は実施例に限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
攪拌器、温度計、窒素吹き込み管及び冷却管を備えた500mL(ミリリットル)容の四つ口フラスコに、アクリル酸45g、アルキル基の炭素数が18~24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしてブレンマーVMA70(日油株式会社製、メタクリル酸ステアリルが10~20質量部、メタクリル酸エイコサニルが10~20質量部、メタクリル酸ベヘニルが59~80質量部及びメタクリル酸テトラコサニルの含有率が1質量%以下の混合物)1.35g、ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)0.116g、及び反応溶媒としてノルマルヘキサン230.9gを仕込んだ。引き続き、溶液を均一に攪拌、混合した後、反応容器(四つ口フラスコ)の上部空間、原料及び反応溶媒中に存在している酸素を除去するために、溶液中に窒素ガスを吹き込んだ。次いで、窒素雰囲気下、溶液を60~65℃まで加熱した。溶液の温度が60℃に到達してから2時間後にノニオン性界面活性剤として12-ヒドロキシステアリン酸とポリオキシエチレンのブロック共重合体(クローダ製、Hypermer B246)0.9gを反応容器に投入した。その後、溶液の温度が60℃に到達してから3時間60~65℃に保持した。その後、生成したスラリーを100℃に加熱して、ノルマルヘキサンを留去し、さらに加熱装置の設定温度を115℃に設定して、減圧装置の設定圧力を10mmHgに設定して、8時間乾燥し、アルキル変性カルボキシル基含有共重合体の白色微粒子41gを得た。
【0055】
(実施例2)
実施例1において、加熱前の原料仕込み時にエチレン性不飽和基を少なくとも2個有する化合物としてペンタエリスリトールポリアリルエーテル0.0045gを加えた以外は、実施例1と同様にして、アルキル変性カルボキシル基含有共重合体の白色微粒子43gを得た。
【0056】
(実施例3)
実施例2において、ブレンマーVMA70(日油株式会社製、メタクリル酸ステアリルが10~20質量部、メタクリル酸エイコサニルが10~20質量部、メタクリル酸ベヘニルが59~80質量部及びメタクリル酸テトラコサニルの含有率が1質量%以下の混合物)の使用量を1.575g、12-ヒドロキシステアリン酸とポリオキシエチレンのブロック共重合体(クローダ製、Hypermer B246)の使用量を1.575gに変更した以外は、実施例2と同様にして、アルキル変性カルボキシル基含有共重合体の白色微粒子42gを得た。
【0057】
(実施例4)
実施例2において、12-ヒドロキシステアリン酸とポリオキシエチレンのブロック共重合体(クローダ製、Hypermer B246)の変わりに、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン(30)硬化ヒマシ油(日本エマルジョン株式会社製、エマレックスRWIS-330)1.35gに変更した以外は、実施例2と同様にして、アルキル変性カルボキシル基含有共重合体の白色微粒子43gを得た。
【0058】
(実施例5)
実施例2において、12-ヒドロキシステアリン酸とポリオキシエチレンのブロック共重合体(クローダ製、Hypermer B246)の変わりに、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油(日本エマルジョン株式会社製、エマレックスRWIS-320)1.35gに変更した以外は、実施例2と同様にして、アルキル変性カルボキシル基含有共重合体の白色微粒子43gを得た。
【0059】
(実施例6)
【0060】
実施例2において、ブレンマーVMA70(日油株式会社製、メタクリル酸ステアリルが10~20質量部、メタクリル酸エイコサニルが10~20質量部、メタクリル酸ベヘニルが59~80質量部及びメタクリル酸テトラコサニルの含有率が1質量%以下の混合物)の使用量を1.125g、12-ヒドロキシステアリン酸とポリオキシエチレンのブロック共重合体(クローダ製、Hypermer B246)の使用量を1.800gに変更した以外は、実施例2と同様にして、アルキル変性カルボキシル基含有共重合体の白色微粒子42gを得た。
【0061】
(実施例7)
実施例1において、ブレンマーVMA70(日油株式会社製、メタクリル酸ステアリルが10~20質量部、メタクリル酸エイコサニルが10~20質量部、メタクリル酸ベヘニルが59~80質量部及びメタクリル酸テトラコサニルの含有率が1質量%以下の混合物)の使用量を1.800g、12-ヒドロキシステアリン酸とポリオキシエチレンのブロック共重合体(クローダ製、Hypermer B246)の使用量を0.675gに変更した以外は、実施例1と同様にして、アルキル変性カルボキシル基含有共重合体の白色微粒子41gを得た。
【0062】
(比較例1)
実施例2において、12-ヒドロキシステアリン酸とポリオキシエチレンのブロック共重合体(クローダ製、Hypermer B246)の使用量を0.450gに変更した以外は、実施例2と同様にして、アルキル変性カルボキシル基含有共重合体の白色微粒子40gを得た。
【0063】
(比較例2)
実施例2において、12-ヒドロキシステアリン酸とポリオキシエチレンのブロック共重合体(クローダ製、Hypermer B246)の使用量を2.250gに変更した以外は、実施例2と同様にして、アルキル変性カルボキシル基含有共重合体の白色微粒子43gを得た。
【0064】
(比較例3)
実施例2において、ブレンマーVMA70(日油株式会社製、メタクリル酸ステアリルが10~20質量部、メタクリル酸エイコサニルが10~20質量部、メタクリル酸ベヘニルが59~80質量部及びメタクリル酸テトラコサニルの含有率が1質量%以下の混合物)の使用量を0.900g、エチレン性不飽和基を少なくとも2個有する化合物としてペンタエリスリトールポリアリルエーテルの使用量を0.068g、12-ヒドロキシステアリン酸とポリオキシエチレンのブロック共重合体(クローダ製、Hypermer B246)の使用量を1.350gに変更した以外は、実施例2と同様にして、アルキル変性カルボキシル基含有共重合体の白色微粒子43gを得た。
【0065】
(比較例4)
実施例2において、ブレンマーVMA70(日油株式会社製、メタクリル酸ステアリルが10~20質量部、メタクリル酸エイコサニルが10~20質量部、メタクリル酸ベヘニルが59~80質量部及びメタクリル酸テトラコサニルの含有率が1質量%以下の混合物)の使用量を2.475g、12-ヒドロキシステアリン酸とポリオキシエチレンのブロック共重合体(クローダ製、Hypermer B246)の使用量を1.350gに変更した以外は、実施例2と同様にして、アルキル変性カルボキシル基含有共重合体の白色微粒子43gを得た。
【0066】
(比較例5)
実施例2において、ブレンマーVMA70(日油株式会社製、メタクリル酸ステアリルが10~20質量部、メタクリル酸エイコサニルが10~20質量部、メタクリル酸ベヘニルが59~80質量部及びメタクリル酸テトラコサニルの含有率が1質量%以下の混合物)の使用量を0.450g、12-ヒドロキシステアリン酸とポリオキシエチレンのブロック共重合体(クローダ製、Hypermer B246)の使用量を1.350gに変更した以外は、実施例2と同様にして、アルキル変性カルボキシル基含有共重合体の白色微粒子43gを得た。
【0067】
<評価>
以下の方法により、上記で得られた各アルキル変性カルボキシル基含有共重合体を評価した。結果を表1に示す。
【0068】
(1)水への分散性
直径11cm、1000mL容のガラスビーカーに25℃の蒸留水495gを投入し、直径3cmの3つ羽翼を有する攪拌器を用いて、1000rpmで蒸留水を撹拌した。撹拌を続けた水の中に、上記で得られた各アルキル変性カルボキシル基含有共重合体5gをそれぞれ、徐々に投入し、ママコなく、均一に分散するまでの時間を目視で確認した。分散しきっていないアルキル変性カルボキシル基含有共重合体の見落としを防ぐ為、分散液を目開き142μmのろ布に通過させ、ろ布上にアルキル変性カルボキシル基含有共重合体の塊が確認された場合は均一に分散されていないと判断し、測定を最初からやり直した。均一に分散するまでの時間が30分以下であれば、水への均一分散性は優れていると評価できる。
【0069】
(2)1質量%中和粘稠液の調製
上記で得られた各アルキル変性カルボキシル基含有共重合体分散液283gを、500mLビーカーに計りとり、撹拌しながら6質量%水酸化ナトリウム17gを加えて、pHが6.5-7.5の1質量%中和粘稠液を得た。なお、1質量%中和粘稠液は、25℃になるまで25℃の恒温水槽に静置して、評価用試料として用いた。
【0070】
(3)電解質含有1%中和粘稠液の調製
「(2)1質量%中和粘稠液の調製」と同様にして、各1質量%中和粘稠液を得た。次に、1質量%中和粘稠液の攪拌を続けながら、塩化ナトリウム3gを加え、粘稠液が均一になるまで撹拌を続けることにより、1質量%の塩化ナトリウムを含む、電解質含有1%中和粘稠液を得た。なお、電解質含有1%中和粘稠液は、25℃になるまで25℃の恒温水槽に静置して、評価用試料として用いた。
【0071】
(4)粘度測定
上記で得られた各評価用試料について、それぞれ、回転粘度計を用いて、スピンドルローターNo.6の回転速度を毎分20回転として1分後の粘度を25℃で測定した。1質量%中和粘稠液の粘度A(mPa・s)、電解質含有1%中和粘稠液の粘度B(mPa・s)、粘度比(粘度B/粘度A)、粘度差の絶対値|粘度A-粘度B|(mPa・s)を表1に示す。
【0072】
(5)光透過率測定
各評価用試料について、それぞれ、遠心分離機にて毎分2000回転で20分間の操作により脱泡した後、光路長1cmのセルを用いて、測定波長を425nmとして光透過率を測定した。通常、光透過率が90%以上であれば、目視において透明であるといえる。1質量%中和粘稠液の光透過率X(%)、電解質含有1%中和粘稠液の光透過率Y(%)を表1に示す。
【0073】
【0074】
表1において、HYP246は、12-ヒドロキシステアリン酸とポリオキシエチレンのブロック共重合体(クローダ製、Hypermer B246)を意味する。また、RWIS-330はトリイソステアリン酸ポリオキシエチレン(30)硬化ヒマシ油(日本エマルジョン株式会社製、エマレックスRWIS-330)を意味する。同様に、RWIS-320はトリイソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油(日本エマルジョン株式会社製、エマレックスRWIS-320)を意味する。