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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】光照射装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 21/02 20060101AFI20221222BHJP
【FI】
A61M21/02 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021098449
(22)【出願日】2021-06-14
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】391026106
【氏名又は名称】電制コムテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田森 雄介
(72)【発明者】
【氏名】山口 悦範
(72)【発明者】
【氏名】山仲 勇二郎
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-350790(JP,A)
【文献】特表2016-525408(JP,A)
【文献】特開2020-010775(JP,A)
【文献】特表2006-525039(JP,A)
【文献】特開2014-198096(JP,A)
【文献】特開2007-309953(JP,A)
【文献】特開2013-255772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
前記本体部に取り付けられていて、前記本体部を使用者の顔に装着する装着部と、
前記本体部に設けられていて、前記装着部を介して、前記本体部を装着した前記使用者の角膜に光を照射する照射部と、
を備え、
前記照射部から照射される照射光の前記角膜の表面における照度は、9000lxから11000lxの範囲であり、
前記照射部から照射される照射光の青色成分の割合は、10%以下である
ことを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記照射光の青色成分は、355nmから490nmまでの範囲の波長の青色成分である、
ことを特徴とする請求項に記載の光照射装置。
【請求項3】
前記照射部は、前記照射光の青色成分の割合10%以下の範囲となる光学フィルタを有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光照射装置。
【請求項4】
前記角膜の表面における前記照射部から照射される照射光の中心軸と眼球の光軸とがなす鉛直断面における照射角は、0°から35°までの範囲である、
ことを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【請求項5】
前記照射部は、LEDから構成されていて、
前記照射部から照射される前記照射光の中心軸は、前記LEDの中心軸である、
ことを特徴とする請求項に記載の光照射装置。
【請求項6】
鉛直断面における前記照射部と前記角膜の表面との間の照射距離は、35mm以下の範囲である、
ことを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【請求項7】
前記照射部は、発光面を有するLEDから構成されていて、
前記照射距離は、前記LEDの前記発光面と前記角膜の表面との間の距離である、
ことを特徴とする請求項に記載の光照射装置。
【請求項8】
前記装着部は、
前記本体部の中央部に取り付けられているノーズパッドと、
一端部が前記本体部の両端部にそれぞれ取り付けられている左右のヒンジと、
一端部が前記左右のヒンジの他端部にそれぞれ回転可能に取り付けられている左右のツルと、
を有し、
前記本体部、前記照射部および前記左右のツルは、各々、単一のサイズの部品であり、
前記ノーズパッド及び左右のヒンジは、各々、複数のサイズを有する部品で、前記複数のサイズの部品の中から、前記使用者の顔の大きさに対応したサイズの部品が使用される、
ことを特徴とする請求項からのいずれか1項に記載の光照射装置。
【請求項9】
前記左右のヒンジを前記本体部に第1取付部を介して取り付けた際に、前記本体部と前記左右のヒンジとが相互に当接する第1取付面の延長線と、前記左右のヒンジの前記第1取付部同士を結ぶ線分とで挟む取付角は、使用される前記左右のヒンジのサイズにより、少なくとも、2つの異なる角からなる、
ことを特徴とする請求項に記載の光照射装置。
【請求項10】
前記左右のヒンジを前記本体部に第1取付部を介して取り付けた際に、前記本体部と前記左右のヒンジとが相互に当接する第1取付面と、
前記左右のツルを前記左右のヒンジに第2取付部を介して取り付けた際に、前記左右のヒンジと前記左右のツルとが相互に当接する第2取付面との間の取付距離は、使用される前記左右のヒンジのサイズで異なる、
ことを特徴とする請求項に記載の光照射装置。
【請求項11】
前記照射部は、模擬自然光を照射するLEDから構成されている、
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人の生体リズム(体内時計)は、高照度の光の照射を受けることによってリセットされることが知られている。したがって、高照度光の照射は、不規則な睡眠習慣やシフト勤務、時差ボケなどによる生体リズムの異常の改善に有効である。以下の説明では、このような生体リズムの異常の改善のために高照度光を照射する行為を光健康維持法と称することにする。さらに、光健康維持法は、季節性感情障害、内因性うつ病、概日リズム睡眠障害などの治療にも利用されることがある。たとえば特許文献1に記載されている光照射装置において、使用者は、高照度の光の照射を受ける。また、特許文献1に記載されている光照射装置は、光健康維持法の実施中における使用者の移動の自由度を確保して使用者のストレスを軽減させることができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6061216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる光照射装置においては、光健康維持法を効率良く実施できることが重要である。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、光健康維持法を効率良く実施することができる光照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の光照射装置は、本体部と、本体部に取り付けられていて、本体部を使用者の顔に装着する装着部と、本体部に設けられていて、装着部を介して、本体部を装着した使用者の角膜に光を照射する照射部と、を備え、照射部から照射される照射光の角膜の表面における照度が、最大約12000lxの範囲である、ことを特徴とする。
【0007】
この発明の光照射装置は、本体部と、本体部に取り付けられていて、本体部を使用者の顔に装着する装着部と、本体部に設けられていて、装着部を介して、本体部を装着した使用者の角膜に光を照射する照射部と、を備え、照射部から照射される照射光の青色成分の割合が、約50%以下の範囲である、ことを特徴とする。
【0008】
この発明の光照射装置において、照射光の青色成分は、約355nmから約490nmまでの範囲の波長の青色成分である、ことが好ましい。
【0009】
この発明の光照射装置において、照射部は、照射光の青色成分が約50%以下の範囲となる光学フィルタを有する、ことが好ましい。
【0010】
この発明の光照射装置は、本体部と、本体部に取り付けられていて、本体部を使用者の顔に装着する装着部と、本体部に設けられていて、装着部を介して、本体部を装着した使用者の角膜に光を照射する照射部と、を備え、角膜の表面における照射部から照射される照射光の中心軸と眼球の光軸とがなす鉛直断面における照射角が、約0°から約35°までの範囲である、ことを特徴とする。
【0011】
この発明の光照射装置において、照射部は、LEDから構成されていて、照射部から照射される照射光の中心軸は、LEDの中心軸である、ことが好ましい。
【0012】
この発明の光照射装置は、本体部と、本体部に取り付けられていて、本体部を使用者の顔に装着する装着部と、本体部に設けられていて、装着部を介して、本体部を装着した使用者の角膜に光を照射する照射部と、を備え、鉛直断面における照射部と角膜の表面との間の照射距離が、約35mm以下の範囲である、ことを特徴とする。
【0013】
この発明の光照射装置において、照射部は、発光面を有するLEDから構成されていて、照射距離は、LEDの発光面と角膜の表面との間の距離である、ことが好ましい。
【0014】
この発明の光照射装置において、装着部が、本体部の中央部に取り付けられているノーズパッドと、一端部が本体部の両端部にそれぞれ取り付けられている左右のヒンジと、一端部が左右のヒンジの他端部にそれぞれ回転可能に取り付けられている左右のツルと、を有し、ノーズパッドが、同一のサイズの部品または使用者の顔の大きさに合わせて複数のサイズの部品から構成されていて、本体部、照射部および左右のツルが、同一のサイズの部品から構成されていて、左右のヒンジが、使用者の顔の大きさに合わせて複数のサイズの部品から構成されている、ことを特徴とする。
【0015】
この発明の光照射装置において、本体部に複数のサイズの左右のヒンジを第1取付部により取り付けた際に、本体部と複数のサイズの左右のヒンジとが相互に当接する第1取付面の延長線と、左右のヒンジの第1取付部同士を結ぶ線分とで挟む取付角は、左右のヒンジの複数のサイズにおいて、少なくとも、2つの異なる角からなる、ことが好ましい。
【0016】
この発明の光照射装置において、本体部に複数のサイズの左右のヒンジを第1取付部により取り付けた際に、本体部と複数のサイズの前記左右のヒンジとが相互に当接する第1取付面と、複数のサイズの左右のヒンジに左右のツルを第2取付部により取り付けた際に、複数のサイズの左右のヒンジと左右のツルとが相互に当接する第2取付面との間の取付距離は、左右のヒンジの複数のサイズ毎に異なる、ことが好ましい。
【0017】
この発明の光照射装置において、照射部は、模擬自然光を照射するLEDから構成されている、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
この発明の光照射装置は、光健康維持法を効率良く実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、この発明にかかる光照射装置の実施形態を示す使用状態図である。
図2図2は、目隠し用シェードを取り付けて使用した状態を示す使用状態図である。
図3図3は、光照射装置を斜め上から見た状態を示す斜視図である。
図4図4は、光照射装置を分解した状態を示す斜め上から見た斜視図である。
図5図5は、光照射装置を分解した状態を示す斜め下から見た斜視図である。
図6図6は、光照射装置のサイズ交換(サイズ展開)の状態を示す斜め下から見た斜視図(図5とは、異なった角度から見た斜視図)である。
図7図7は、3サイズのヒンジを光照射装置に取り付けた状態を示す平面図である。(A)は、Sサイズのヒンジを光照射装置に取り付けた状態を示す平面図である。(B)は、Mサイズのヒンジを光照射装置に取り付けた状態を示す平面図である。(C)は、Lサイズのヒンジを光照射装置に取り付けた状態を示す平面図である。
図8図8は、3サイズのヒンジを光照射装置に取り付けた状態を示す底面図である。(A)は、Sサイズのヒンジを光照射装置に取り付けた状態を示す底面図である。(B)は、Mサイズのヒンジを光照射装置に取り付けた状態を示す底面図である。(C)は、Lサイズのヒンジを光照射装置に取り付けた状態を示す底面図である。
図9図9は、3サイズのヒンジを光照射装置に取り付けた時のツルの位置(配置)の違いを示す底面説明図である。
図10図10は、3サイズのヒンジをツルに取り付けた状態を示す底面図である。(A)は、Sサイズのヒンジをツルに取り付けた状態を示す底面図である。(B)は、Mサイズのヒンジをツルに取り付けた状態を示す底面図である。(C)は、Lサイズのヒンジをツルに取り付けた状態を示す底面図である。
図11図11は、3サイズのヒンジをツルに取り付けた状態を示す斜視図である。(A)は、Sサイズのヒンジをツルに取り付けた状態を示す斜視図である。(B)は、Mサイズのヒンジをツルに取り付けた状態を示す斜視図である。(C)は、Lサイズのヒンジをツルに取り付けた状態を示す斜視図である。
図12図12は、光照射装置の本体部とヒンジとツルとの取付状態を示す縦断面図(図9におけるXII-XII線断面図)である。
図13図13は、第1取付面と基準線とで挟む取付角を示す底面説明図である。
図14図14は、第1取付面と第2取付面との間の取付距離を示す底面説明図である。
図15図15は、メラトニン抑制に関する臨床評価試験結果のメラトニン量の推移を示す説明図である。縦軸は、メラトニン量「pg/ml」である。横軸は、時間「h」である。
図16図16は、メラトニン抑制に関する臨床評価試験を行った直接照射方式試験機(この発明の光照射装置)の仕様詳細を示す説明図である。
図17図17は、照射部から照射される照射光の中心軸と眼球の光軸とがなす鉛直断面における照射角、および、鉛直断面における照射部と角膜の表面との間の照射距離を示す説明図(照射部のイメージ図)である。
図18図18は、照射部から照射される照射光が眼球内に入光(入射)した状態 を示す説明図(イメージ図)である。
図19図19は、メラトニン抑制に関する臨床評価試験を行った直接照射方式試験機(この発明の光照射装置)の角膜の表面における分光スペクトラムを示す説明図である。縦軸は、分光放射照度「W/m 2 /nm」である。横軸は、波長「nm」である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明にかかる光照射装置の実施形態(実施例)の1例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面においては、概略図であるため、部品の一部の図示を省略し、また、ハッチングの一部を省略し、あるいは、断面の一部を省略する。図10から図14は、左のヒンジ、左のツルを示し、右のヒンジ、右のツルの符号においては、()書きとする。
【0021】
(実施形態の構成の説明)
以下、この実施形態にかかる光照射装置1(以下、「光照射装置1」と称する)の構成について説明する。光照射装置1は、図1および図2に示すように、使用者Pの顔Fに着脱可能に装着するウエアラブルタイプである。
【0022】
光照射装置1は、図1から図9図12および図13に示すように、本体部2と、装着部3と、照射部4と、を備える。光照射装置1は、照射部4から光(以下、「照射光」と称する)Lを、使用者Pの眼Eに照射する。ヒトの眼Eは、眼球5と、視神経(図示せず)と、付属器としての眼瞼(まぶた)50と、からなる。眼球5は、図18図19に示すように、角膜51と、瞳孔52と、硝子体53と、網膜54と、を有する。図18図19中において、符号55は、眼球5の光軸(眼軸)である。
【0023】
(本体部2の説明)
本体部2は、図1から図9図12および図13に示すように、左右の玉型(リム)と、左右の玉型を繋ぐブリッジとを一体に構成した構造体から構成されている。本体部2は、同一のサイズの部品(本体部)から構成されている。本体部2は、この例では、上部2Uと、下部2Dと、から構成されている。また、本体部2は、この例では、中空構造をなす。
【0024】
本体部2は、Micro-USBケーブル20を着脱可能に接続するUSB端子(図示せず)と、電源スイッチ21と、を有する。Micro-USBケーブル20をPCやUSB充電器(図示せず)と本体部2のUSB端子とに接続することにより、照射部4に電源を供給する準備が完了する。
【0025】
なお、この例において、本体部2は、図2に示すように、シェード22を着脱可能に取り付けることができる。シェード22は、照射部4から光(以下、「照射光」と称する)Lが照射されている使用者Pの目元を覆い隠すものである。
【0026】
(装着部3の説明)
装着部3は、図1から図14に示すように、本体部2に取り付けられていて、本体部2を使用者Pの顔Fに着脱可能に装着する。装着部3は、ノーズパッド30と、左右のヒンジ31(31S、31M、31L)、32(32S、32M、32L)と、左右のツル33、34と、を有する。なお、ヒンジは、ヨロイと呼称される場合があるが、この明細書および別紙の特許請求の範囲、要約書においては、ヒンジと称する。
【0027】
ノーズパッド30は、図1図5から図9に示すように、本体部2の内側面(使用者Pの顔Fに向き合う側の面)の中央部に取り付けられている。ノーズパッド30は、使用者Pの鼻Nの左右両側を挟んで、本体部2および照射部4を使用者Pの顔Fに固定させる。
【0028】
ノーズパッド30は、この例では、本体部2と同様に同一のサイズの部品(ノーズパッド)から構成されている。なお、ノーズパッド30は、使用者Pの顔Fの大きさに合わせて複数のサイズの部品(ノーズパッド)から構成されていても良い。
【0029】
左右のヒンジ31(31S、31M、31L)、32(32S、32M、32L)は、図7から図11に示すように、使用者Pの顔Fの大きさに合わせて複数のサイズ、この例では、3つのサイズ(Sサイズ、Mサイズ、Lサイズ)の部品(ヒンジ)から構成されている。
【0030】
すなわち、左右のヒンジ31、32は、Sサイズの左右のヒンジ31S、32Sと、Mサイズの左右のヒンジ31M、32Mと、Lサイズの左右のヒンジ31L、32Lと、から構成されている。左右のヒンジ31、32の一端部は、本体部2の左右両端部に、第1取付部6により、それぞれ着脱可能に取り付けられている。
【0031】
なお、左右のヒンジ31、32は、2つのサイズの部品(ヒンジ)、あるいは、4つ以上のサイズの部品(ヒンジ)から構成されていても良い。
【0032】
左右のツル33、34は、図7から図11に示すように、本体部2およびノーズパッド30と同様に同一のサイズの部品(ツル)から構成されている。同一のサイズの左右のツル33、34の一端部は、3つのサイズの左右のヒンジ31(31S、31M、31L)、32(32S、32M、32L)の他端部に、第2取付部7により、それぞれ回転可能に取り付けられている。
【0033】
左右のツル33、34は、図1図2に示すように、左右のツル33、34の他端部を使用者Pの左右の耳Yにかけることにより、ノーズパッド30と共に、本体部2および照射部4を使用者Pの顔Fに着脱可能に装着させる。
【0034】
(照射部4の説明)
照射部4は、図5から図9図18図19に示すように、本体部2の内側面の左右両側部に設けられていて、装着部3を介して、本体部2を装着した使用者Pの角膜51に照射光Lを照射する。照射部4は、本体部2、ノーズパッド30および左右のツル33、34と同様に同一のサイズの部品(照射部)から構成されている。
【0035】
照射部4は、本体部2に取り付けられている基板40と、基板40に実装されている光源としてのLED41と、を有する。LED41は、発光面42を有する。LED41の発光面42から照射光Lが使用者Pの角膜51に照射される。なお、照射部4の光源としては、この例のLED以外に、OLED(有機EL)などの自発光半導体型発光素子(半導体発光素子)タイプの光源を使用しても良い。
【0036】
(照射光Lの説明)
以下、照射部4のLED41の発光面42から使用者Pの角膜51に照射される照射光Lについて説明する。照射光Lの使用者Pの角膜51の表面における照度は、最大約12000lxの範囲である。なお、この照射光Lの照度は、IEC62471:2006/JIS C7550:2011に準拠している。
【0037】
また、図20に示すように、照射光Lの青色成分の割合は、約50%以下である。照射光Lの青色成分は、約355nmから約490nmまでの波長の青色成分である。すなわち、照射部4は、照射光Lの青色成分が約50%以下となるブルーライトカットフィルムなどの光学フィルタ(図示せず)を有する。光学フィルタは、LED41の発光面42の前方、すなわち、照射光Lが照射される方向側に配置されている。
【0038】
さらに、照射光Lは、模擬自然光、すなわち、図20に示すように、太陽光に極めて近い分光分布を有する。
【0039】
図18に示すように、使用者Pの角膜51の表面における照射部4から照射される照射光Lの中心軸(光軸)Zと眼球5の光軸55とがなす鉛直断面における照射角θ1は、約0°から約35°までの範囲である。照射光Lの中心軸Zは、LED41の中心軸(発光面42の中心垂直線)である。
【0040】
また、図18に示すように、鉛直断面における照射部4と角膜51の表面との間の照射距離T1は、約35mm以下の範囲である。照射距離T1は、LED41の発光面42と角膜51の表面との間の距離である。
【0041】
(第1取付部6の説明)
第1取付部6は、本体部2側の第1取付部と、左右のヒンジ31、32側の第1取付部と、第1取付ネジ60と、第1取付ナット61と、ワッシャ62と、から構成されている。
【0042】
本体部2側の第1取付部は、本体部2の左右両端部にそれぞれ設けられている。すなわち、本体部2の左右両端部の内側面には、第1取付面23が、それぞれ設けられている。本体部2の左右両端部の第1取付面23には、直方体形状(もしくは、立方体形状)の第1挿入凹部24が、それぞれ設けられている。また、本体部2の左右両端部には、円筒形状の第1取付孔25が、それぞれ第1挿入凹部24に交差するように設けられている。第1取付孔25は、本体部2の下部2Dを貫通していて、本体部2の上部2Uを貫通していない。
【0043】
左右のヒンジ31、32側の第1取付部は、左右のヒンジ31、32の一端部にそれぞれ設けられている。すなわち、左右のヒンジ31、32の一端部の端面には、本体部2側の第1取付面23に当接する第1取付面310、320が、それぞれ設けられている。左右のヒンジ31、32の一端部の第1取付面310、320には、第1挿入凹部24に挿入する直方体形状(もしくは、立方体形状)の第1挿入凸部311、321が、それぞれ設けられている。また、左右のヒンジ31、32の一端部には、円筒形状の第1取付孔312、322が、それぞれ第1挿入凸部311、321に交差するように設けられている。左右のヒンジ31、32の第1取付孔312、322の内径と、本体部2の第1取付孔25の内径とは、ほぼ一致する。
【0044】
第1挿入凸部311、321の上面の第1取付孔312、322の縁部には、第1取付ナット嵌合凹部313、323が、それぞれ設けられている。第1取付ナット嵌合凹部313、323中には、第1取付ナット61が、嵌合されている。
【0045】
第1取付部6は、以上のごとき構成からなり、以下、取り付け方について説明する。まず、本体部2の第1挿入凹部24中に左右のヒンジ31、32の第1挿入凸部311、321を挿入する。つぎに、本体部2の第1取付面23と左右のヒンジ31、32の第1取付面310、320とを相互に当接させる。この時、本体部2の第1取付孔25と左右のヒンジ31、32の第1取付孔312、322とは、合致する。
【0046】
それから、本体部2の下部2Dの第1取付孔25の縁部にワッシャ62をセットする。つづいて、第1取付ネジ60を、ワッシャ62、本体部2の下部2Dの第1取付孔25、左右のヒンジ31、32の第1取付孔312、322中に挿入して、第1取付ナット61にねじ込む。これにより、図12に示すように、左右のヒンジ31、32の一端部は、本体部2の左右両端部に、第1取付部6により、それぞれ着脱可能に取り付けられる。この時、第1取付ネジ60の先端は、本体部2の上部2Uの第1取付孔25中に収まっている。また、第1取付ネジ60の頭部は、本体部2の下部2Dの下面の凹部中に収まっている。
【0047】
そして、図13に示すように、本体部2と左右のヒンジ31、32とが相互に当接する第1取付面23、310、320の延長線L1と、左右のヒンジ31、32の第1取付部6の中心(平面視(上から見た)第1取付ネジ60の中心線)同士を結ぶ線分L2とで挟む角θ2を、取付角θ2とする。
【0048】
(第2取付部7の説明)
第2取付部7は、左右のヒンジ31、32側の第1取付部と、左右のツル33、34側の第2取付部と、第2取付ネジ70と、第2取付ナット71と、から構成されている。
【0049】
左右のヒンジ31、32側の第2取付部は、左右のヒンジ31、32の他端部にそれぞれ設けられている。すなわち、左右のヒンジ31、32の他端部の端面には、第2取付面314、324が、それぞれ設けられている。左右のヒンジ31、32の他端部の第2取付面314、324には、直方体形状(もしくは、立方体形状)の第2挿入凹部315、325が、それぞれ設けられている。また、左右のヒンジ31、32の他端部には、円筒形状の第2取付孔316、326が、それぞれ第2挿入凹部315、325に交差するように設けられている。
【0050】
左右のツル33、34側の第2取付部は、左右のツル33、34の一端部にそれぞれ設けられている。すなわち、左右のツル33、34の一端部の端面には、左右のヒンジ31、32側の第2取付面314、324に当接する第2取付面330、340が、それぞれ設けられている。左右のツル33、34の一端部の第2取付面330、340には、第2挿入凹部315、325に挿入する直方体形状(もしくは、立方体形状)の第2挿入凸部331、341が、それぞれ設けられている。また、左右のツル33、34の一端部には、円筒形状の第2取付孔332、342が、それぞれ第2挿入凸部331、341に交差するように設けられている。左右のツル33、34の第2取付孔332、342の内径と、左右のヒンジ31、32の第2取付孔316、326の内径とは、ほぼ一致する。
【0051】
第2取付部7は、以上のごとき構成からなり、以下、取り付け方について説明する。まず、左右のヒンジ31、32の第2挿入凹部315、325中に左右のツル33、34の第2挿入凸部331、341を挿入する。つぎに、左右のヒンジ31、32の第2取付面314、324と左右のツル33、34の第2取付面330、340とを相互に当接させる。この時、左右のヒンジ31、32の第2取付孔316、326と左右のツル33、34の第2取付孔332、342とは、合致する。
【0052】
それから、第2取付ネジ70を、左右のヒンジ31、32の上側の第2取付孔316、326、左右のツル33、34の第2取付孔332、342、左右のヒンジ31、32の下側の第2取付孔316、326中に挿入して、第2取付ナット71にねじ込む。これにより、図12に示すように、左右のツル33、34の一端部は、左右のヒンジ31、32の他端部に、第2取付部7により、それぞれ回転可能に取り付けられる。この時、第2取付ネジ70の先端および第2取付ナット71は、左右のヒンジ31、32の下面の凹部中に収まっている。
【0053】
そして、図14に示すように、本体部2と左右のヒンジ31、32とが相互に当接する第1取付面23、310、320と、左右のヒンジ31、32と左右のツル33、34とが相互に当接する第2取付面314、324、330、340との間の距離T2を、取付距離T2とする。
【0054】
(取付角θ2、取付距離T2の説明)
図13に示すように、本体部2に3つのサイズの左右のヒンジ31(31S、31M、31L)、32(32S、32M、32L)を第1取付部6により取り付けた際に、本体部2と3つのサイズの左右のヒンジ31(31S、31M、31L)、32(32S、32M、32L)とが相互に当接する第1取付面23、310、320の延長線L1と、左右のヒンジ31(31S、31M、31L)、32(32S、32M、32L)の第1取付部6同士を結ぶ線分L2とで挟む取付角θ2は、左右のヒンジ31(31S、31M、31L)、32(32S、32M、32L)の3つのサイズにおいて、少なくとも、2つの異なる角からなる。この例では、Sサイズの取付角θ2およびMサイズの取付角θ2は、約5°である。Lサイズの取付角θ2は、約8°である。
【0055】
図14に示すように、本体部2に3つのサイズの左右のヒンジ31(31S、31M、31L)、32(32S、32M、32L)を第1取付部6により取り付けた際に、本体部2と3つのサイズの左右のヒンジ31(31S、31M、31L)、32(32S、32M、32L)とが相互に当接する第1取付面23、310、320と、3つのサイズの左右のヒンジ31(31S、31M、31L)、32(32S、32M、32L)に左右のツル33、34を第2取付部7により取り付けた際に、3つのサイズの左右のヒンジ31(31S、31M、31L)、32(32S、32M、32L)と左右のツル33、34とが相互に当接する第2取付面314、324、330、340との間の取付距離T2は、左右のヒンジ31(31S、31M、31L)、32(32S、32M、32L)の3つのサイズ毎に異なる。この例では、Sサイズの取付距離T2は、約8.6mmである。Mサイズの取付距離T2は、約17mmである。Lサイズの取付距離T2は、約23.4mmである。
【0056】
(実施形態の使用例の説明)
この実施形態にかかる光照射装置1は、以上のごとき構成からなり、以下、その使用例について説明する。この実施形態にかかる光照射装置1は、起床時または覚醒をしたい時に、使用する。覚醒をしたい時とは、たとえば、時差ボケなどを低減(軽減)するために覚醒をしたい時などである。なお、使用例としては、起床時または覚醒をしたい時以外にもある。たとえば、夜勤などの夜型生活から通常の生活に戻す時、日中の眠気を低減(軽減)させる時、生活リズムにメリハリをつける時、睡眠の質を向上させる時、不眠を改善する時、集中力を向上させる時などである。
【0057】
まず、光照射装置1の本体部2のUSB端子とPCやUSB充電器とをMicro-USBケーブル20により電気的に接続する。つぎに、図1図2に示すように、ノーズパッド30を使用者Pの鼻Nの左右両側に挟み、かつ、左右のツル33、34の他端部を使用者Pの左右の耳Yにかけて、光照射装置1を使用者Pの顔Fに着脱可能に装着させる。
【0058】
それから、電源スイッチ21をオンにすると、照射部4のLED41の発光面42が発光して、図19のイメージ図に示すように、照射部4から照射光Lが使用者Pの眼Eに向けて照射される。照射光Lは、眼球5の角膜51、瞳孔52、硝子体53を透過して網膜54に照射される。すると、網膜54にある内因性光感受性網膜神経節細胞(ipRGC)が反応し、メラトニンが抑制される。メラトニンが抑制されることで概日リズムがリセットされ、その位相をシフトすることができる。照射光Lの照射時間は、任意であるが、約30分から約60分が好ましい。電源スイッチ21をオフにすると、LED41の発光面42が消光して、照射光Lの照射が止まる。
【0059】
使用者Pの顔Fの大きさ(使用者Pの頭幅寸法)に合わせて、光照射装置1の装着部3のサイズ交換(サイズ展開)を行う場合は、まず、第1取付部6の第1取付ネジ60を第1取付ナット61から外す。つぎに、本体部2から左右のヒンジ31、32と左右のツル33、34との一体構造部品(ヒンジ+ツル)を取り外す。それから、使用者Pの顔Fの大きさに合わせたサイズの左右のヒンジ31、32と左右のツル33、34との一体構造部品(ヒンジ+ツル)を本体部2に第1取付部6により取り付ける。これにより、光照射装置1の装着部3のサイズ交換(サイズ展開)が完了する。
【0060】
この実施形態にかかる光照射装置1に使用されるヒンジとツルとの一体構造部品は、3つのサイズの一体構造部品(ヒンジ+ツル)からなる。すなわち、Sサイズの左右のヒンジ31S、32Sと同一のサイズの左右のツル33、34との一体構造部品、Mサイズの左右のヒンジ31M、32Mと同一のサイズの左右のツル33、34との一体構造部品、Lサイズの左右のヒンジ31L、32Lと同一のサイズの左右のツル33、34との一体構造部品、からなる。
【0061】
(実施形態の効果の説明)
この実施形態にかかる光照射装置1は、以上のごとき構成、作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0062】
この実施形態にかかる光照射装置1は、本体部2と、装着部3と、照射部4と、を備え、照射部4から照射される照射光Lの使用者Pの角膜51の表面における照度を、最大約12000lx(好ましくは、約9000lxから約11000lx)までの範囲とするものである。この結果、この実施形態にかかる光照射装置1は、高照度の照射光Lを使用者Pの網膜54に照射すること(届けること)ができるので、起床時または覚醒をしたい時に、メラトニンの分泌を効率良く抑制することができる。これにより、この実施形態にかかる光照射装置1は、光健康維持法を効率良く実施することができる。なお、メラトニンの分泌抑制効果については、下記の「メラトニン抑制に関する臨床評価試験」において、詳細に説明する。
【0063】
この実施形態にかかる光照射装置1は、照射光Lの使用者Pの角膜51の表面における照度を、最大約12000lx(好ましくは、約9000lxから約11000lx)までの範囲とするものである。この結果、この実施形態にかかる光照射装置1は、製品仕様として、前記の照度をある値、たとえば、約10000lxと定め、この照度値をベースに含まれる光波長、照射角θ1、照射距離T1などの調整を行って、メラトニンの分泌抑制効果が得られる製品を製造した場合において、照射部4の光源としてのLED41に製造公差(ばらつき)があったとしても、前記の照度を最大約12000lxまでの範囲に収めることができる。これにより、この実施形態にかかる光照射装置1は、製品に製造公差(ばらつき)があったとしても、光健康維持法を効率良く実施することができる。
【0064】
この実施形態にかかる光照射装置1は、本体部2と、装着部3と、照射部4と、を備え、照射部4から照射される高照度の照射光Lの青色成分の割合を、約50%(好ましくは、約10%)以下の範囲とするものである。この結果、この実施形態にかかる光照射装置1は、ブルーライトによるメラトニンの分泌を抑制することができ、また、ブルーライトから使用者Pの眼Eを保護することができる。これにより、この実施形態にかかる光照射装置1は、光健康維持法を効率良く実施することができ、また、使用者Pの眼Eの安全性を確保することができる。
【0065】
この実施形態にかかる光照射装置1は、照射光Lの青色成分を、約355nmから約490nmまでの範囲の波長の青色成分とするものである。この結果、この実施形態にかかる光照射装置1は、ブルーライトによるメラトニンの分泌をより効率良く抑制することができ、また、ブルーライトから使用者Pの眼Eをより確実に保護することができる。これにより、この実施形態にかかる光照射装置1は、光健康維持法をより効率良く実施することができ、また、使用者Pの眼Eの安全性をより確実に確保することができる。
【0066】
この実施形態にかかる光照射装置1は、照射部4に、照射光Lの青色成分が約50%(好ましくは、約10%)以下の範囲となる光学フィルタを、設けたものである。この結果、この実施形態にかかる光照射装置1は、ブルーライトによるメラトニンの分泌をより効率良く抑制することができ、また、ブルーライトから使用者Pの眼Eをより確実に保護することができる。これにより、この実施形態にかかる光照射装置1は、光健康維持法をより効率良く実施することができ、また、使用者Pの眼Eの安全性をより確実に確保することができる。
【0067】
この実施形態にかかる光照射装置1は、本体部2と、装着部3と、照射部4と、を備え、使用者Pの角膜51の表面における照射部4から照射される高照度の照射光Lの中心軸Zと眼球5の光軸55とがなす鉛直断面における照射角θ1を、約0°から約35°までの範囲とするものである。この結果、この実施形態にかかる光照射装置1は、使用者Pの顔Fの大きさや形状、また、使用者Pの眼Eの位置などにおいて、使用者Pの個人差があっても、また、使用者Pの視線がどの方向に向いていても、高照度の照射光Lを、使用者Pの眼球5の角膜51、瞳孔52、硝子体53を透過して網膜54に照射すること(届けること)ができる。これにより、この実施形態にかかる光照射装置1は、使用者Pの個人差があっても、また、使用者Pの視線がどの方向に向いていても、高照度の照射光Lによるメラトニンの分泌を抑制することができ、光健康維持法を効率良く実施することができる。
【0068】
この実施形態にかかる光照射装置1において、照射光Lの照射角θ1は、理想として、約0°である。すなわち、理想としては、高照度の照射光Lの中心軸Zと眼球5の光軸55とがほぼ一致することであって、高照度の照射光Lが使用者Pの眼Eの真正面から照射されることである。この実施形態にかかる光照射装置1は、照射光Lの照射角θ1を、理想の約0°から上方向に約35°(好ましくは、約27°)の範囲とすることにより、照射部4を理想の約0°から上方向に約35°(好ましくは、約27°)の範囲内に位置させることができる。この結果、この実施形態にかかる光照射装置1において、使用者Pは、照射角θ1の約0°から下方向の範囲の視野を確保することができるので、この実施形態にかかる光照射装置1を使用していても、日常の生活(歯磨き、食事、テレビ観賞、新聞を読むなど)を営むことができる。これにより、この実施形態にかかる光照射装置1は、使用者Pの顔Fに着脱可能に装着するウエアラブルタイプに適している。
【0069】
この実施形態にかかる光照射装置1は、照射部4から照射される高照度の照射光Lの中心軸Zが照射部4のLED41の中心軸(発光面42の中心垂直線)であるから、高照度の照射光Lを使用者Pの網膜54に効率良く照射すること(届けること)ができる。この結果、この実施形態にかかる光照射装置1は、メラトニンの分泌をより効率良く抑制することができ、光健康維持法をより効率良く実施することができる。
【0070】
この実施形態にかかる光照射装置1は、本体部2と、装着部3と、照射部4と、を備え、鉛直断面における照射部4と使用者Pの角膜51の表面との間の照射距離T1を、約20mm以下の範囲とするものである。この結果、この実施形態にかかる光照射装置1は、使用者Pの顔Fの大きさや形状、また、使用者Pの眼Eの位置などにおいて、使用者Pの個人差があっても、また、使用者Pの視線がどの方向に向いていても、高照度の照射光Lを、使用者Pの眼球5の角膜51、瞳孔52、硝子体53を透過して網膜54に照射すること(届けること)ができる。これにより、この実施形態にかかる光照射装置1は、使用者Pの個人差があっても、また、使用者Pの視線がどの方向に向いていても、高照度の照射光Lによるメラトニンの分泌を抑制することができ、光健康維持法を効率良く実施することができる。
【0071】
この実施形態にかかる光照射装置1において、照射光Lの照射距離T1は、理想として、約0mmである。すなわち、理想としては、高照度の照射光Lが直接使用者Pの角膜51に照射されることである。この実施形態にかかる光照射装置1は、照射光Lの照射距離T1を、理想の約0mmから約35mm(好ましくは、約20mm)以下の範囲とすることにより、照射部4を理想の約0mmから約35mm(好ましくは、約20mm)以下の範囲内に位置させることができる。この結果、この実施形態にかかる光照射装置1は、使用者Pの顔Fに着脱可能に装着するウエアラブルタイプに適している。
【0072】
この実施形態にかかる光照射装置1は、照射距離T1を、照射部4のLED41の発光面42と照射部4の角膜51の表面との間の距離とするものであるから、高照度の照射光Lを使用者Pの網膜54に効率良く照射すること(届けること)ができる。この結果、この実施形態にかかる光照射装置1は、メラトニンの分泌をより効率良く抑制することができ、光健康維持法をより効率良く実施することができる。
【0073】
この実施形態にかかる光照射装置1は、本体部2と、装着部3と、照射部4と、を備え、装着部3が、ノーズパッド30と、3つのサイズから構成されている左右のヒンジ31(31S、31M、31L)、32(32S、32M、32L)と、左右のツル33、34と、を有するものである。この結果、この実施形態にかかる光照射装置1は、3つのサイズの中から、使用者Pの顔Fの大きさに合ったサイズを選択することができる。これにより、この実施形態にかかる光照射装置1は、使用者Pの顔Fの大きさや形状、また、使用者Pの眼Eの位置などにおいて、使用者Pの個人差があっても、使用者Pの顔Fに装着することができる。
【0074】
この実施形態にかかる光照射装置1は、装着部3の左右のヒンジ31(31S、31M、31L)、32(32S、32M、32L)を3つのサイズの部品に構成することにより、本体部2、装着部3のノーズパッド30、装着部3の左右のツル33、34および照射部4を同一のサイズの部品を使用することができる。この結果、この実施形態にかかる光照射装置1は、製造コストを安価にすることができる。
【0075】
この実施形態にかかる光照射装置1は、3つのサイズの左右のヒンジ31(31S、31M、31L)、32(32S、32M、32L)と、同一のサイズの左右のツル33、34とを、一体に取り付けることにより、一体の左右のヒンジ31、32と左右のツル33、34とを、本体部2に簡単に取り付けることができる。
【0076】
この実施形態にかかる光照射装置1は、3つのサイズの左右のヒンジ31(31S、31M、31L)、32(32S、32M、32L)と、同一のサイズの左右のツル33、34とを、一体に取り付けることにより、一体の左右のヒンジ31、32と左右のツル33、34とを、3つのサイズとすることができる。この結果、この実施形態にかかる光照射装置1は、使用者Pの耳Yにかける同一のサイズの左右のツル33、34を、3つのサイズの左右のヒンジ31(31S、31M、31L)、32(32S、32M、32L)を介して、3つのサイズの左右のツルとなすことができる。これにより、この実施形態にかかる光照射装置1は、使用者Pの個人差があっても、使用者Pの顔Fに合わせて装着することができる。ここで、照射光Lの照射角θ1を、理想の約0°から上方向に約35°(好ましくは、約27°)の範囲として、照射部4を理想の約0°から上方向に約35°(好ましくは、約27°)の範囲内に位置させるためには、また、照射光Lの照射距離T1を、理想の約0mmから約35mm(好ましくは、約20mm)以下の範囲として、照射部4を理想の約0mmから約35mm(好ましくは、約20mm)以下の範囲内に位置させるためには、この実施形態にかかる光照射装置1のように、使用者Pの顔Fの大きさに合わせて適切に装着することが必要である。
【0077】
この実施形態にかかる光照射装置1は、ノーズパッド30を複数のサイズの部品に構成することにより、3つのサイズの左右のヒンジ31(31S、31M、31L)、32(32S、32M、32L)と共に、多くの個人差がある使用者Pの顔Fに合わせて装着することができる。
【0078】
この実施形態にかかる光照射装置1は、図13に示すように、本体部2に3つのサイズの左右のヒンジ31(31S、31M、31L)、32(32S、32M、32L)を第1取付部6により取り付けた際に、本体部2と3つのサイズの左右のヒンジ31(31S、31M、31L)、32(32S、32M、32L)とが相互に当接する第1取付面23、310、320の延長線L1と、左右のヒンジ31、32の第1取付部6同士を結ぶ線分L2とで挟む取付角θ2は、左右のヒンジ31、32の3つのサイズにおいて、少なくとも、2つの異なる角からなる。
【0079】
すなわち、この実施形態にかかる光照射装置1は、Sサイズの左右のヒンジ31S、32Sの取付角θ2およびMサイズの左右のヒンジ31M、32Mの取付角θ2が、約5°であり、Lサイズの左右のヒンジ31L、32Lの取付角θ2が、約8°であり、異なるものである。この結果、この実施形態にかかる光照射装置1は、3つのサイズの左右のヒンジ31(31S、31M、31L)、32(32S、32M、32L)における2つの異なる取付角θ2により、多くの個人差がある使用者Pの顔Fに合わせて装着することができる。
【0080】
この実施形態にかかる光照射装置1は、図14に示すように、本体部2に3つのサイズの左右のヒンジ31(31S、31M、31L)、32(32S、32M、32L)を第1取付部6により取り付けた際に、本体部2と3つのサイズの左右のヒンジ31(31S、31M、31L)、32(32S、32M、32L)とが相互に当接する第1取付面23、310、320と、3つのサイズの左右のヒンジ31(31S、31M、31L)、32(32S、32M、32L)に左右のツル33、34を第2取付部7により取り付けた際に、3つのサイズの左右のヒンジ31、32と左右のツル33、34とが相互に当接する第2取付面314、324、330、340との間の取付距離T2は、左右のヒンジ31、32の3つのサイズ毎に異なる。
【0081】
すなわち、この実施形態にかかる光照射装置1は、Sサイズの左右のヒンジ31S、32Sの取付距離T2が、8.6mmであり、Mサイズの左右のヒンジ31M、32Mの取付距離T2が、約17mmであり、Lサイズの左右のヒンジ31L、32Lの取付距離T2が、約23.4mmであり、異なるものである。この結果、この実施形態にかかる光照射装置1は、3つのサイズの左右のヒンジ31(31S、31M、31L)、32(32S、32M、32L)における3つの異なる取付距離T2により、多くの個人差がある使用者Pの顔Fに合わせて装着することができる。
【0082】
この実施形態にかかる光照射装置1は、照射部4を、模擬自然光を照射するLED41から構成するものである。この結果、この実施形態にかかる光照射装置1は、照射部4から、模擬自然光、すなわち、太陽光に極めて近い分光分布を有する高照度の照射光Lを、使用者Pの眼Eに照射することができる。これにより、この実施形態にかかる光照射装置1は、メラトニンの分泌をより効率良く抑制することができ、光健康維持法をより効率良く実施することができる。
【0083】
この実施形態にかかる光照射装置1は、本体部2を中空構造に構成するものであるから、軽量化を図ることができ、使用者Pの顔Fに着脱可能に装着するウエアラブルタイプに適している。
【0084】
(メラトニン抑制に関する臨床評価試験の説明)
以下、メラトニン抑制に関する臨床評価試験について、臨床評価試験内容(A)と臨床評価試験結果(B)とを、図15から図20を参照して説明する。
【0085】
(臨床評価試験内容(A)の説明)
臨床評価試験内容(A)は、下記の通りである。
・被試験者:全12名。
・臨床評価試験期間:2019年5月(6名)12月(6名)。
・試験プロトコル:低照度条件(10[lx]程度の環境にて光照射なし)。
直接照射方式(この発明にかかる光照射装置の試験機にて光照射あり
)。
・試験条件:夜間、低照度環境にてメラトニン量を計測する。
試験時間は5時間。
低照度条件では光照射は行わない。
低照度条件の試験実施後、1週間後に直接照射方式の実験を実施。
直接照射方式による光照射は最後の1時間に行う。
なお、試験期間中、被験者は生活統制を行う。
【0086】
(臨床評価試験結果(B)の説明)
臨床評価試験結果(B)は、下記の通りである。
低照度条件、直接照射方式のメラトニン量の平均値の推移は、図15に示す通りである。図15の横軸の時間軸は、-4時から0時までは光照射なし、0時から1時までは光照射中のデータとして、メラトニン量の推移を表現している。図15における低照度条件は、時間経過とともにメラトニン量が上昇している。一方、図15における直接照射方式は、0時の光照射開始を境にメラトニン量が減少していることが分かる。図15に示すように、直接照射方式は、低照度条件と比較して、約32%のメラトニン分泌の抑制効果が得られる。なお、図15中の「-4時から0時までは光照射なし」において、低照度条件の「メラトニン絶対量」と直接照射方式の「メラトニン絶対量」とが異なるのは、下記の理由によるものである。すなわち、ヒトによる臨床実験のため、その日のヒトのコンディションによって値に幅が発生する理由からである。また、低照度条件の実験日と直接照射方式の実験日とが異なるため、「メラトニン絶対量」に差が出る理由からである。
【0087】
ここで、「メラトニン抑制効果あり」と判断するためには、以下の2つの条件(I)(II)の両方を満たす必要がある。
(I)低照度条件と比較し、十分にメラトニンが抑制されているか。
(II)各条件内の0時(照射直前)のメラトニン量と比較し、十分にメラトニンが抑制されているか。
以上の2点について、どちらも統計学的に有意差が出た時、「メラトニン抑制効果あり」と判断される
【0088】
件(I)(II)共に直接照射方式では「有意差有り」となった。よって直接照射方式は「メラトニン抑制効果あり」と言える。
【0089】
このメラトニン抑制に関する臨床評価試験の結果により、この実施形態にかかる光照射装置1の前記のメラトニン分泌の抑制効果が実証される。
【0090】
(試験機の説明)
前記のメラトニン抑制に関する臨床評価試験を行った直接照射方式の試験機(この発明にかかる光照射装置の試験機)の仕様詳細は、図16の表に示す。なお、図16の表の数値は、実測値である。ここで、被試験者により、試験機装着時の照射角や照射距離に差が出ると考えられるため、図17、図18に示すように、照射角θ1基準を約0°から約35°までの範囲とし、照射距離T1基準を約35mm以下の範囲とする。
【0091】
17は、照射部4から照射される照射光Lの中心軸Zと眼球5の光軸55とがなす鉛直断面における照射角θ1、および、鉛直断面における照射部4と角膜51の表面との間の照射距離T1を示す説明図(照射部のイメージ図)である。図17は、図16の表の仕様を再現した説明図である。なお、図18は、照射部4から照射される照射光Lが眼球5内に入光(入射)した状態を示す説明図(イメージ図)である。
【0092】
試験機による眼球5上照度計測時の分光スペクトラムは、図19に示す通りである。なお、約355nmから約490nmまでの波長を青色成分とした場合、図19に示す分光スペクトラムにおける青色成分の割合は、9.04[%]である。図19に示す分光スペクトラムの測定環境は、以下の通りである。測定日時は、2019年5月20日(月)、場所は、特許出願人株式会社電制の本社2階のハードエリアである。
【0093】
(実施形態以外の例の説明)
なお、この発明の光照射装置は、前記の実施形態により限定されるものではない。
【符号の説明】
【0094】
1 光照射装置
2 本体部
2D 下部
2U 上部
20 Micro-USBケーブル
21 電源スイッチ
22 シェード
23 第1取付面
24 第1挿入凹部
25 第1取付孔
3 装着部
30 ノーズパッド
31 左のヒンジ(ヨロイ)
31L Lサイズの左のヒンジ(ヨロイ)
31M Mサイズの左のヒンジ(ヨロイ)
31S Sサイズの左のヒンジ(ヨロイ)
310 第1取付面
311 第1挿入凸部
312 第1取付孔
313 第1取付ナット嵌合凹部
314 第2取付面
315 第2挿入凹部
316 第2取付孔
32 右のヒンジ(ヨロイ)
32L Lサイズの右のヒンジ(ヨロイ)
32M Mサイズの右のヒンジ(ヨロイ)
32S Sサイズの右のヒンジ(ヨロイ)
320 第1取付面
321 第1挿入凸部
322 第1取付孔
323 第1取付ナット嵌合凹部
324 第2取付面
325 第2挿入凹部
326 第2取付孔
33 左のツル
330 第2取付面
331 第2挿入凸部
332 第2取付孔
34 右のツル
340 第2取付面
341 第2挿入凸部
342 第2取付孔
4 照射部
40 基板
41 LED
42 表面
5 眼球
50 眼瞼(まぶた)
51 角膜
52 瞳孔
53 硝子体
54 網膜
55 光軸(眼球5の光軸、眼軸)
6 第1取付部
60 第1取付ネジ
61 第1取付ナット
62 ワッシャ
7 第2取付部
70 第2取付ネジ
71 第2取付ナット
E 眼(ヒトの眼)
F 顔
L 照射光(光)
L1 延長線
L2 線分
N 鼻
P 使用者
T1 照射距離
T2 取付距離
Y 耳
Z 照射光Lの中心軸(光軸)
θ1 照射角
θ2 取付角
【要約】
【課題】光健康維持法を効率良く実施することができる光照射装置を提供することにある。
【解決手段】この発明は、本体部2、装着部3と、照射部4と、を備える。装着部3は、本体部2に取り付けられていて、本体部2を使用者Pの顔Fに装着する。照射部4は、本体部2に設けられていて、装着部3を介して、本体部2を装着した使用者Pの角膜51に照射光Lを照射する。照射光Lの角膜51の表面における照度は、最大約12000lxの範囲である。この結果、この発明は、光健康維持法を効率良く実施することができる。
【選択図】 図17
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19