IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミツトヨの特許一覧

<>
  • 特許-三次元測定装置及び移動制御方法 図1
  • 特許-三次元測定装置及び移動制御方法 図2
  • 特許-三次元測定装置及び移動制御方法 図3
  • 特許-三次元測定装置及び移動制御方法 図4
  • 特許-三次元測定装置及び移動制御方法 図5
  • 特許-三次元測定装置及び移動制御方法 図6
  • 特許-三次元測定装置及び移動制御方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-21
(45)【発行日】2023-01-04
(54)【発明の名称】三次元測定装置及び移動制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/00 20060101AFI20221222BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20221222BHJP
   G01B 5/008 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
G01B21/00 E
G01B11/00 H
G01B5/008
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018000573
(22)【出願日】2018-01-05
(65)【公開番号】P2019120586
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 好弘
(72)【発明者】
【氏名】大山 良和
(72)【発明者】
【氏名】間嶋 崇
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 侑利
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-239042(JP,A)
【文献】特開2011-060076(JP,A)
【文献】特開2016-117131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/00-21/32
G01B 11/00-11/30
G01B 5/00-5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを非接触状態で測定するためのプローブと、
前記プローブを移動させる移動機構と、
前記ワークを含む測定空間を撮影して撮像画像を生成する撮像部と、
前記撮像画像に基づいて、前記測定空間において前記移動機構による前記プローブの移動可能最大速度が第1速度である第1領域と、前記プローブの移動可能最大速度が前記第1速度よりも大きい第2速度であり、前記第1領域よりも前記ワークから離れた第2領域とを決定する領域決定部と、
前記プローブの位置が前記第1領域に含まれている場合に、前記第1速度以下の速度で前記プローブを移動させ、前記プローブの位置が前記第2領域に含まれている場合に、前記第2速度以下の速度で前記プローブを移動させる制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記プローブの位置が前記第1領域に含まれる場合に、移動中の前記プローブの振動の大きさが前記プローブを停止させる所定値よりも大きいか否かを検出する検出処理を実行し、
前記プローブの位置が前記第2領域に含まれる場合に、前記検出処理を実行しない、三次元測定装置。
【請求項2】
ワークを測定するためのプローブと、
前記プローブを移動させる移動機構と、
前記ワークを含む測定空間を撮影して撮像画像を生成する撮像部と、
前記撮像画像に基づいて、前記測定空間において前記移動機構による前記プローブの移動可能最大速度が第1速度である第1領域と、前記プローブの移動可能最大速度が前記第1速度よりも大きい第2速度であり、前記第1領域よりも前記ワークから離れた第2領域とを決定する領域決定部と、
前記プローブの位置が前記第1領域に含まれている場合に、前記第1速度以下の速度で前記プローブを移動させ、前記プローブの位置が前記第2領域に含まれている場合に、前記第2速度以下の速度で前記プローブを移動させる制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記プローブの位置が前記第1領域に含まれる場合に、移動中の前記プローブの振動の大きさが前記プローブを停止させる所定値よりも大きいか否かを検出する検出処理を実行し、
前記プローブの位置が前記第2領域に含まれる場合に、前記検出処理を実行せず、
前記領域決定部は、前記プローブが前記ワークに近づく間の前記第1領域と前記第2領域との境界位置を、前記プローブが前記ワークから離れる間の前記境界位置よりも、前記ワークから離れた位置に決定する、三次元測定装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記プローブの位置が前記第2領域に含まれる場合に、前記プローブを前記第2速度で移動させると共に前記検出処理を実行しない、
請求項1又は2に記載の三次元測定装置。
【請求項4】
前記領域決定部は、前記ワークの表面から所定の距離の位置の内側を前記第1領域に決定し、前記ワークの表面から所定の距離の位置の外側を前記第2領域に決定する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の三次元測定装置。
【請求項5】
前記領域決定部は、前記ワークを含む直方体の内側を前記第1領域に決定し、前記直方体の外側を前記第2領域に決定する、
請求項1からのいずれか1項に記載の三次元測定装置。
【請求項6】
前記領域決定部は、複数の前記第1領域を決定する、
請求項1からのいずれか1項に記載の三次元測定装置。
【請求項7】
前記撮像部は、
前記測定空間を上方から撮影することにより第1撮像画像を生成する第1撮像部と、
前記測定空間を横から撮影することにより第2撮像画像を生成する第2撮像部と、
を有し、
前記領域決定部は、前記第1撮像画像及び前記第2撮像画像に基づいて、前記第1領域及び前記第2領域を決定する、
請求項1からのいずれか1項に記載の三次元測定装置。
【請求項8】
三次元測定装置のプローブによって非接触状態で測定されるワークを含む測定空間を撮影して撮像画像を生成するステップと、
前記撮像画像に基づいて、前記測定空間において移動機構による前記プローブの移動可能最大速度が第1速度である第1領域と、前記プローブの移動可能最大速度が前記第1速度よりも大きい第2速度であり、前記第1領域よりも前記ワークから離れた第2領域とを決定するステップと、
前記プローブの位置が前記第1領域に含まれている場合に、前記第1速度以下の速度で前記プローブを移動させ、前記プローブの位置が前記第2領域に含まれている場合に、前記第2速度以下の速度で前記プローブを移動させるステップと、
前記プローブの位置が前記第1領域に含まれる場合に、移動中の前記プローブの振動の大きさが前記プローブを停止させる所定値よりも大きいか否かを検出する検出処理を実行するステップと、
前記プローブの位置が前記第2領域に含まれる場合には、前記検出処理を実行しないステップと、
を備える、移動制御方法。
【請求項9】
三次元測定装置のプローブによって測定されるワークを含む測定空間を撮影して撮像画像を生成するステップと、
前記撮像画像に基づいて、前記測定空間において移動機構による前記プローブの移動可能最大速度が第1速度である第1領域と、前記プローブの移動可能最大速度が前記第1速度よりも大きい第2速度であり、前記第1領域よりも前記ワークから離れた第2領域とを決定するステップと、
前記プローブの位置が前記第1領域に含まれている場合に、前記第1速度以下の速度で前記プローブを移動させ、前記プローブの位置が前記第2領域に含まれている場合に、前記第2速度以下の速度で前記プローブを移動させるステップと、
前記プローブの位置が前記第1領域に含まれる場合に、移動中の前記プローブの振動の大きさが前記プローブを停止させる所定値よりも大きいか否かを検出する検出処理を実行するステップと、
前記プローブの位置が前記第2領域に含まれる場合には、前記検出処理を実行しないステップと、
を備え、
前記第1領域及び前記第2領域を決定するステップにおいて、前記プローブが前記ワークに近づく間の前記第1領域と前記第2領域との境界位置を、前記プローブが前記ワークから離れる間の前記境界位置よりも、前記ワークから離れた位置に決定する、移動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元測定装置及び移動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベースに載置された被測定物であるワークの座標等をプローブで測定する三次元測定装置が利用されている。例えば、プローブは、移動機構によって測定空間において直交する三軸方向に移動しており、ワークに接触しながら倣い測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-2715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の三次元測定装置において測定効率を向上させるために、プローブの移動速度を大きくする方策が検討されている。
しかし、プローブの移動速度を大きくすると、プローブの振動が大きくなってしまう。そして、プローブの振動が大きいと、例えば、プローブが誤ってワークに衝突してしまったり、実際にはプローブがワークに接触していないのに接触したものと誤検出されたりする恐れがある。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、プローブによる測定効率を向上させつつ、プローブの移動時の振動による影響を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、ワークを測定するためのプローブと、前記プローブを移動させる移動機構と、前記ワークを含む測定空間を撮影して撮像画像を生成する撮像部と、前記撮像画像に基づいて、前記測定空間において前記移動機構による前記プローブの移動可能最大速度が第1速度である第1領域と、前記プローブの移動可能最大速度が前記第1速度よりも大きい第2速度であり、前記第1領域よりも前記ワークから離れた第2領域とを決定する領域決定部と、前記プローブの位置が前記第1領域に含まれている場合に、前記第1速度以下の速度で前記プローブを移動させ、前記プローブの位置が前記第2領域に含まれている場合に、前記第2速度以下の速度で前記プローブを移動させる制御部と、を備える、三次元測定装置を提供する。
【0007】
また、前記制御部は、前記プローブの位置が前記第1領域に含まれる場合に、前記プローブの振動の大きさが前記プローブを停止させる所定値よりも大きいか否かを検出する検出処理を実行し、前記プローブの位置が前記第2領域に含まれる場合に、前記検出処理を実行しないこととしてもよい。
【0008】
また、前記制御部は、前記プローブの位置が前記第2領域に含まれる場合に、前記プローブを前記第2速度で移動させると共に前記検出処理を実行しないこととしてもよい。
【0009】
また、前記領域決定部は、前記ワークの表面から所定の距離の位置の内側を前記第1領域に決定し、前記ワークの表面から所定の距離の位置の外側を前記第2領域に決定することとしてもよい。
【0010】
また、前記領域決定部は、前記ワークを含む直方体の内側を前記第1領域に決定し、前記直方体の外側を前記第2領域に決定することとしてもよい。
また、前記領域決定部は、複数の前記第1領域を決定することとしてもよい。
【0011】
また、前記領域決定部は、前記プローブが前記ワークに近づく間と、前記プローブが前記ワークから離れる間とで、前記第1領域と前記第2領域との境界位置を変化させることとしてもよい。
【0012】
また、前記領域決定部は、前記プローブが前記ワークに近づく間の前記境界位置を、前記プローブが前記ワークから離れる間の前記境界位置よりも、前記ワークから離れた位置に決定することとしてもよい。
【0013】
また、前記撮像部は、前記測定空間を上方から撮影することにより第1撮像画像を生成する第1撮像部と、前記測定空間を横から撮影することにより第2撮像画像を生成する第2撮像部と、を有し、前記領域決定部は、前記第1撮像画像及び前記第2撮像画像に基づいて、前記第1領域及び前記第2領域を決定することとしてもよい。
【0014】
本発明の第2の態様においては、プローブによって測定されるワークを含む測定空間を撮影して撮像画像を生成するステップと、前記撮像画像に基づいて、前記測定空間において移動機構による前記プローブの移動可能最大速度が第1速度である第1領域と、前記プローブの移動可能最大速度が前記第1速度よりも大きい第2速度であり、前記第1領域よりも前記ワークから離れた第2領域とを決定するステップと、前記プローブの位置が前記第1領域に含まれている場合に、前記第1速度以下の速度で前記プローブを移動させ、前記プローブの位置が前記第2領域に含まれている場合に、前記第2速度以下の速度で前記プローブを移動させるステップと、を備える、移動制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プローブによる測定効率を向上させつつ、プローブの移動時の振動による影響を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一の実施形態に係る三次元測定装置1の概略構成を説明するための模式図である。
図2】制御装置7の構成の一例を説明するためのブロック図である。
図3】ワークWの位置検出の一例を説明するための模式図である。
図4】第1領域R1と第2領域R2を説明するための模式図である。
図5】第1領域R1が複数ある場合を説明するための模式図である。
図6】プローブ30の移動方向と、第1領域R1及び第2領域R2の境界位置との関係を説明するための模式図である。
図7】プローブ30の移動制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<三次元測定装置の構成>
本発明の一の実施形態に係る三次元測定装置の構成について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、一の実施形態に係る三次元測定装置1の概略構成を説明するための模式図である。図2は、制御装置7の構成の一例を説明するためのブロック図である。三次元測定装置1は、図1に示すように、測定機本体2と、制御装置7とを有する。
【0019】
測定機本体2は、図1及び図2に示すように、ベース10と、移動機構20と、プローブ30と、撮像部40とを有する。測定機本体2は、ベース10に載置された被測定物であるワークを、移動機構20によって移動するプローブ30によって測定する。
【0020】
ベース10は、ワークが載置される載置面11を有する。載置面11の上方の空間が、ワークを測定する測定空間を成している。ベース10のX軸方向の一端側には、Y軸方向に沿ってガイド部12が設けられている。ガイド部12は、移動機構20(具体的には、移動機構20のコラム22)のY軸方向への移動をガイドする。
【0021】
移動機構20は、ベース10上に設けられており、プローブ30を測定空間内で移動させる機構である。移動機構20は、プローブ30を保持した状態で、測定空間内でX軸、Y軸及びZ軸方向に移動させる。移動機構20は、コラム22と、ビーム23と、スライダ24と、ラム25と、駆動部29(図2参照)とを有する。
【0022】
コラム22は、ガイド部12上に立設されており、ガイド部12上をY軸方向に沿って移動可能である。
ビーム23は、X軸方向に延びるように設けられており、コラム22と共にY軸方向に移動する。ビーム23の長手方向の一端側は、コラム22に支持されており、ビーム23の長手方向の他端側は、支柱26に支持されている。
【0023】
スライダ24は、ビーム23に支持されており、ビーム23上をX軸方向に沿って移動可能である。
ラム25は、スライダ24の内部に挿通されており、スライダ24と共にX軸方向に移動する。また、ラム25は、スライダ24内をZ軸方向に沿って移動可能である。
駆動部29は、例えばモータ等の駆動源を有し、コラム22、ビーム23、スライダ24及びラム25を移動させる。
【0024】
プローブ30は、ベース10に載置されたワークを測定するための測定子である。例えば、プローブ30は、ワークに接触しながら移動することで、ワークの三次元位置を倣い測定する。プローブ30は、測定結果を制御装置7に出力する。
【0025】
撮像部40は、ベース10上のワークを含む測定空間を撮影して撮像画像を生成する。なお、撮像部40は、ワークだけでなくプローブ30も含むように、測定空間を撮影してもよい。撮像部40は、生成した撮像画像を制御装置7に出力する。
【0026】
撮像部40は、測定空間を上方から撮影することにより第1撮像画像を生成する第1撮像部41と、測定空間を横から撮影することにより第2撮像画像を生成する第2撮像部42と、を有する。第1撮像部41は、ビーム23の下面に設けられており、第2撮像部42は、図1に示すようにコラム22の側面に設けられている。
【0027】
制御装置7は、測定機本体2の動作を制御する。制御装置7は、例えば移動機構20によるプローブ30の移動制御や、プローブ30の測定結果に基づいたワークの形状解析等の演算処理を実行する。制御装置7は、図2に示すように、記憶部70と、制御部80とを有する。
【0028】
記憶部70は、例えばROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含む。記憶部70は、制御部80が実行するためのプログラムや各種データを記憶する。
【0029】
制御部80は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。制御部80は、記憶部70に記憶されたプログラムを実行することにより、測定機本体2の動作を制御する。制御部80は、位置検出部82、領域決定部83、移動制御部84及び振動検出部85として機能する。
【0030】
位置検出部82は、撮像部40が生成した撮像画像に基づいて、ベース10上のワークの位置を検出する。具体的には、位置検出部82は、第1撮像部41が生成した第1撮像画像と、第2撮像部42が生成した第2撮像画像に基づいて、測定空間におけるワークの位置を検出する。なお、位置検出部82は、ワークに加えて、測定空間におけるプローブ30の位置も検出しうる。例えば、位置検出部82は、測定空間において移動中のプローブ30の位置を検出してもよい。
【0031】
図3は、ワークWの位置検出の一例を説明するための模式図である。図3(a)に第1撮像部41の第1撮像画像G1が示され、図3(b)に第2撮像部42の第2撮像画像G2が示されている。位置検出部82は、第1撮像画像G1から、測定空間のXY平面におけるワークWの位置を検出する。また、位置検出部82は、第2撮像画像G2から、測定空間のZ方向におけるワークWの高さを検出する。これにより、位置検出部82は、測定空間におけるワークWの位置を精度良く特定できる。
【0032】
領域決定部83は、撮像画像に基づいて、測定空間において移動機構20によるプローブ30の移動可能最大速度が速度V1(第1速度)である第1領域R1と、プローブ30の移動可能最大速度が速度V1よりも大きい速度V2(第2速度)である第2領域R2とを決定する。すなわち、領域決定部83は、位置検出部82が撮像画像(具体的には、第1撮像画像G1及び第2撮像画像G2)から検出した測定空間におけるワークWの位置に基づいて、空間領域としての第1領域R1と第2領域R2を決定する。別言すれば、領域決定部83は、測定空間を第1領域R1と第2領域R2に分割する。
【0033】
図4は、第1領域R1と第2領域R2を説明するための模式図である。図4では、説明の便宜上、ワークの中心W1のみが示されている。第1領域R1は、ここでは図4の破線で囲まれた長方体形状の領域である。第2領域R2は、図4の一点鎖線で囲まれ、かつ第1領域R1よりも外側の領域である。すなわち、第2領域R2は、測定空間から第1領域R1を除いた空間領域であり、第1領域R1よりもワークから離れている。
第1領域R1は、例えばプローブ30がワークを倣い測定する際に、ワークの周囲を移動する可能性が高い領域であるのに対して、第2領域R2は、プローブ30が振動してもワークに衝突する危険性がない領域である。別言すれば、第1領域R1は、測定に関連するため精度が必要な領域であり、第2領域R2は、精度が不要な領域である。そして、プローブ30が第2領域R2で高速で移動することで、プローブ30の移動時間を短縮できるので、測定効率を高められる。
【0034】
領域決定部83は、第1撮像画像G1及び第2撮像画像G2からワークWの位置や形状を特定して、第1領域R1及び第2領域R2を決定する。例えば、領域決定部83は、ワークWの表面から所定の距離の位置の内側を第1領域R1に決定し、ワークWの表面から所定の距離の位置の外側を第2領域R2に決定してもよい。また、領域決定部83は、ワークWを含む直方体の内側を第1領域R1に決定し、直方体の外側を第2領域R2に決定してもよい。これにより、ワークWの形状に応じた最適な第1領域R1及び第2領域R2をそれぞれ決定できる。
【0035】
図5は、第1領域R1が複数ある場合を説明するための模式図である。例えばベース10上にワークが複数ある場合には、領域決定部83は、複数の第1領域R1を決定してもよい。すなわち、領域決定部83は、撮像画像中にワークが複数含まれている場合には、各ワークに対応する領域を第1領域R1として決定する。なお、複数の第1領域R1の大きさは、対応するワークの大きさに応じて異なってもよい。
【0036】
領域決定部83は、測定機本体2に交換用のプローブ30を支持するラックが設けられている場合には、当該ラックの周辺領域も第1領域R1として決定してもよい。これにより、プローブ交換のためにラックにプローブ30が近づく際に誤ってラックに衝突することを防止できる。
【0037】
領域決定部83は、第1領域R1と第2領域R2との境界位置を変化させてもよい。例えば、領域決定部83は、プローブ30がワークに近づく間と、プローブ30がワークから離れる間とで、第1領域R1と第2領域R2との境界位置を変化させる。具体的には、領域決定部83は、プローブ30がワークに近づく間の境界位置を、プローブ30がワークから離れる間の境界位置よりも、ワークから離れた位置に決定する。
【0038】
図6は、プローブ30の移動方向と、第1領域R1及び第2領域R2の境界位置との関係を説明するための模式図である。なお、図6では、説明の便宜上、ワークの中心位置W1のみを示し、ワークの形状を省略している。図6(a)に示す境界位置B1(破線で示される位置)は、第2領域R2においてプローブ30がワーク側へ近づく際の位置であり、図6(b)に示す境界位置B2(破線で示される位置)は、第1領域R1においてプローブ30がワークから離れる際の位置である。
図6(a)に示す境界位置B1は、ワークの中心W1から見て、図6(b)に示す境界位置B2よりも離れている。これにより、プローブ30がワークに近づく際に、プローブ30が停止する迄に誤ってワークに衝突することを抑制できる。また、プローブ30がワークから離れる場合には、プローブ30がワークに衝突する可能性が低いので、境界位置B2をワークの近くにすることでプローブ30の移動速度を直ぐに大きくできる。
【0039】
移動制御部84は、移動機構20によるプローブ30の移動を制御する。本実施形態では、移動制御部84は、プローブ30が位置する領域(第1領域R1と第2領域R2)に応じて、プローブ30の移動速度を制御する。例えば、移動制御部84は、プローブ30の位置が第1領域R1に含まれている場合には、速度V1以下の速度でプローブ30を移動させる。一方で、移動制御部84は、プローブ30の位置が第2領域R2に含まれている場合には、速度V2以下の速度でプローブ30を移動させる。特に、移動制御部84は、第2領域R2においてプローブ30を速度V2で高速移動させることで、測定効率を向上させることができる。
【0040】
移動制御部84は、移動中のプローブ30の振動が大きいと、強制的に停止させる。具体的には、移動制御部84は、プローブ30の振動の大きさが移動中のプローブ30を停止させる所定値よりも大きい場合に、プローブ30を強制的に停止させる。これにより、プローブ30の振動が大きいことに起因してプローブ30がワーク等に衝突することを未然に防ぐことができる。
【0041】
振動検出部85は、プローブ30の振動の大きさがプローブ30を停止させる所定値よりも大きいか否かを検出する検出処理を実行する。振動検出部85は、例えば、プローブ30の移動時の変位量から振動の大きさを求める。振動検出部85によってプローブ30の振動の大きさが所定値より大きいと検出されると、移動制御部84は移動中のプローブ30を停止させる。
【0042】
振動検出部85は、プローブ30の位置が第1領域R1に含まれる場合には上記の検出処理を実行し、プローブ30の位置が第2領域R2に含まれる場合には上記の検出処理を実行しない。例えば、プローブ30が第2領域R2を速度V2で高速移動している際に、振動検出部85は検出処理を実行しない。
プローブ30が第2領域R2を速度V2で移動している場合には、仮にプローブ30の振動の大きさが所定値よりも大きくなる可能性がある。しかし、上記の検出処理を実行しないことで、振動の大きさが所定値よりも大きくてもプローブ30が強制的に停止することがなく、プローブ30の高速移動が継続される。一方で、プローブ30が第2領域R2を移動中は振動してもワークWに衝突する恐れがないので、プローブ30の振動が大きくなった際に停止しなくても特段の不利益はない。
【0043】
<プローブの移動制御>
プローブ30の移動制御について、図7を参照しながら説明する。
【0044】
図7は、プローブ30の移動制御の一例を説明するためのフローチャートである。図7に示す処理は、制御装置7の制御部80が記憶部70に記憶されたプログラムを実行することで実現される。
【0045】
図7のフローチャートは、測定者によってワークWの測定開始が指示され、プローブ30が例えば待機位置から移動機構20によって移動を開始するものとする。まず、撮像部40は、ベース10上のワークWを含む測定空間を撮影して、撮像画像を生成する(ステップS102)。具体的には、第1撮像部41が第1撮像画像G1を生成し、第2撮像部42が第2撮像画像G2を生成する。
【0046】
次に、制御部80の位置検出部82は、撮像部40が生成した撮像画像(第1撮像画像G1及び第2撮像画像G2)から、測定空間におけるワークWの位置を検出する(ステップS104)。具体的には、位置検出部82は、図3に示すように、測定空間のX、Y、Z軸方向におけるワークWの位置を検出する。
【0047】
次に、領域決定部83は、位置検出部82が検出したワークWの位置に基づいて、測定空間においてプローブ30の移動可能最大速度が異なる第1領域R1及び第2領域R2を決定する(ステップS106)。例えば、領域決定部83は、図4に示すように、長方体形状の第1領域R1と、第1領域R1を囲むような第2領域R2とを決定する。
【0048】
次に、位置検出部82は、プローブ30が第1領域R1に位置するか否かを検出する(ステップS108)。そして、ステップS108でプローブ30が第1領域R1に位置する場合には(Yes)、移動制御部84は、プローブ30を速度V1以下の速度で移動させる(ステップS110)。
【0049】
次に、振動検出部85は、プローブ30の振動の大きさが所定値よりも大きいか否かを検出する検出処理を実行する(ステップS112)。ステップS112において速度V1で移動中のプローブ30の振動の大きさが所定値以下である場合には(No)、移動制御部84は、プローブ30の移動を継続させ(ステップS114)、ワークWの測定を行う。
【0050】
一方で、ステップS112において速度V1で移動中のプローブ30の振動の大きさが所定値よりも大きい場合には(Yes)、移動制御部84は、移動中のプローブ30を強制停止させる(ステップS116)。
【0051】
ステップS108においてプローブ30が第2領域R2に位置する場合には(No)、移動制御部84は、プローブ30を速度V2以下の速度で移動させる(ステップS118)。すなわち、移動制御部84は、速度V1より大きく、かつ速度V2以下の速度でプローブ30を移動させる。例えば、移動制御部84は、第2領域R2内でプローブ30を速度V2で移動させる。
【0052】
ステップS114~S118の後に、プローブ30が位置する領域が変化(例えば、第1領域R1から第2領域R2に変化)した場合には(ステップS120:Yes)、制御部80は、上述したステップS108~S118の処理を繰り返す。すなわち、プローブ30によるワークWの測定が完了するまで、移動中のプローブ30が位置する領域(第1領域R1又は第2領域R2)に応じてプローブ30の移動速度が制御されることになる。なお、この際、前述したように、第1領域R1と第2領域R2の境界位置を、プローブ30の移動方向に応じて変化させてもよい(図6参照)。
【0053】
<本実施形態における効果>
上述した実施形態において、三次元測定装置1は、ワークWを含む測定空間の撮像画像に基づいて、プローブ30の移動可能最大速度が速度V1(第1速度)である第1領域R1と、移動可能最大速度が速度V1よりも大きい速度V2(第2速度)でありワークWから離れた第2領域R2とを決定する。そして、三次元測定装置1は、移動中のプローブ30が第1領域R1に位置する際には速度V1以下で移動させ、プローブ30が第2領域R2に位置する際には速度V2以下で移動させる。
これにより、プローブ30が第1領域Rに位置する場合には、速度V1以下の速度で移動することになり、プローブ30の移動時の振動を抑制できるので、振動したプローブ30がワークWに衝突することを防止できる。プローブ30が第2領域R2に位置する場合には、速度V2以下の速度(速度V1よりも大きい速度)で移動することで移動時間を短縮しつつ、第2領域R2を移動中のプローブ30の振動が大きくなってもプローブ30がワークWに衝突する恐れがない。
【0054】
また、上記した実施形態では、プローブ30が第2領域R2を移動する際に、振動検出部85による振動検出が実行されない。これにより、例えばプローブ30が高速で移動して振動が大きくなっても、プローブ30が強制停止することがない。このため、第2領域R2を移動するプローブ30の移動時間が短くなり、測定効率が向上する。
【0055】
なお、上記では、プローブ30が、ワークWに接触しながら倣い測定することとしたが、これに限定されない。例えば、プローブ30は、ワークWに非接触状態で測定することとしてもよい。
【0056】
また、上記では、移動機構20が、図1に示すような門型の構造であることとしたが、これに限定されない。移動機構20は、プローブ30を移動させることができれば、他の構造であってもよい。
【0057】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の分散・統合の具体的な実施の形態は、以上の実施の形態に限られず、その全部又は一部について、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を合わせ持つ。
【符号の説明】
【0058】
1 三次元測定装置
20 移動機構
30 プローブ
40 撮像部
41 第1撮像部
42 第2撮像部
80 制御部
82 位置検出部
83 領域決定部
84 移動制御部
85 振動検出部
G1 第1撮像画像
G2 第2撮像画像
R1 第1領域
R2 第2領域
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7