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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】水質計、分析ユニットおよびフローセル
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/05 20060101AFI20221226BHJP
   G01N 33/18 20060101ALI20221226BHJP
   G01N 21/13 20060101ALI20221226BHJP
   G01N 21/59 20060101ALI20221226BHJP
   G01N 21/78 20060101ALN20221226BHJP
【FI】
G01N21/05
G01N33/18 Z
G01N21/13
G01N21/59
G01N21/78 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019027864
(22)【出願日】2019-02-19
(65)【公開番号】P2020134306
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】福村 真実
(72)【発明者】
【氏名】浅野 由花子
(72)【発明者】
【氏名】三宅 亮
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-128750(JP,A)
【文献】特開平08-159947(JP,A)
【文献】特開2001-255260(JP,A)
【文献】国際公開第2018/199080(WO,A1)
【文献】実開昭51-031575(JP,U)
【文献】実開昭57-164447(JP,U)
【文献】実開昭61-197543(JP,U)
【文献】特開2003-057153(JP,A)
【文献】国際公開第2016/207320(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/83
G01N 33/00-G01N 33/46
G01N 35/00-G01N 35/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液を通流させる検出流路と、
前記検出流路の一部に設けられ、前記検出流路内に光を照射する光源と、
前記検出流路の一部において前記光源と対向して設けられ、前記光源からの光を受けて前記溶液の透過度および吸光度のうちの少なくとも一方を測定する画像取得装置と、
を有するフローセルを備えた分析ユニットを有し、
前記画像取得装置は、前記検出流路の断面画像を取得し、前記断面画像を複数の領域に分割し、
前記検出流路の光源側を上流側とし、前記検出流路の画像取得装置側を下流側とした場合に、
前記上流側の端部の側面に前記検出流路よりも直径の小さい流入流路が設けられており、
前記下流側の端部の側面に流出流路が設けられており、
前記検出流路の両端部は、光を透過できるように透明となっており、
前記上流側の端部に前記光源が配置され、前記下流側の端部に前記画像取得装置が配置され、前記検出流路の長さが光路長とな
ことを特徴とする水質計。
【請求項2】
請求項において、
前記流入流路が前記検出流路と接続する接続部分において、前記流入流路の中心軸と前記検出流路の中心軸とをずらして設けていることを特徴とする水質計。
【請求項3】
請求項において、
前記検出流路の中心軸に対する前記流入流路の中心軸の傾き角度が0°より大きく90°より小さいことを特徴とする水質計。
【請求項4】
請求項において、
前記流入流路が直管であることを特徴とする水質計。
【請求項5】
請求項1において、
前記画像取得装置は、前記複数の領域の中から特定の領域を指定してその特定の領域の透過度および吸光度のうちの少なくとも一方を測定することを特徴とする水質計。
【請求項6】
溶液を通流させる検出流路と、
前記検出流路の一部に設けられ、前記検出流路内に光を照射する光源と、
前記検出流路の一部において前記光源と対向して設けられ、前記光源からの光を受けて前記溶液の透過度および吸光度のうちの少なくとも一方を測定する画像取得装置と、
を有するフローセルを備えた分析ユニットを有し、
前記画像取得装置は、前記検出流路の断面画像を取得し、前記断面画像を複数の領域に分割し、
前記画像取得装置は、前記複数の領域の中から特定の領域を指定してその特定の領域の透過度および吸光度のうちの少なくとも一方を測定することを特徴とする水質計。
【請求項7】
請求項において、
前記画像取得装置は、前記検出流路の半径において、中心から1/2以上外側の領域を指定することを特徴とする水質計。
【請求項8】
請求項において、
前記画像取得装置は、指定した前記特定の領域に気泡があった場合は、別の領域を指定し、指定した前記別の領域の透過度および吸光度のうちの少なくとも一方を測定することを特徴とする水質計。
【請求項9】
請求項1において、
前記光源の少なくとも一部および前記画像取得装置の少なくとも一部のうちの少なくとも一方が、前記検出流路に突出して設けられており、
前記光源と前記検出流路との間、および、前記画像取得装置と前記検出流路との間には、それぞれ隙間が設けられていることを特徴とする水質計。
【請求項10】
溶液を通流させる検出流路と、
前記検出流路の一部に設けられ、前記検出流路内に光を照射する光源と、
前記検出流路の一部において前記光源と対向して設けられ、前記光源からの光を受けて前記溶液の透過度および吸光度のうちの少なくとも一方を測定する画像取得装置と、
を有するフローセルを備えた分析ユニットを有し、
前記画像取得装置は、前記検出流路の断面画像を取得し、前記断面画像を複数の領域に分割し、
前記光源の少なくとも一部および前記画像取得装置の少なくとも一部のうちの少なくとも一方が、前記検出流路に突出して設けられており、
前記光源と前記検出流路との間、および、前記画像取得装置と前記検出流路との間には、それぞれ隙間が設けられていることを特徴とする水質計。
【請求項11】
請求項1、請求項6または請求項10において、
前記分析ユニットと接続される試薬ユニットを有し、
前記試薬ユニットは、試料水中の測定対象物質を測定する分析用試薬と、前記検出流路から気泡を除去する気泡除去試薬と、を有していることを特徴とする水質計。
【請求項12】
溶液を通流させる検出流路と、
前記検出流路の一部に設けられ、前記検出流路内に光を照射する光源と、
前記検出流路の一部において前記光源と対向して設けられ、前記光源からの光を受けて前記溶液の透過度および吸光度のうちの少なくとも一方を測定する画像取得装置と、
を有するフローセルを備え、
前記画像取得装置は、前記検出流路の断面画像を取得し、前記断面画像を複数の領域に分割し、
前記検出流路の光源側を上流側とし、前記検出流路の画像取得装置側を下流側とした場合に、
前記上流側の端部の側面に前記検出流路よりも直径の小さい流入流路が設けられており、
前記下流側の端部の側面に流出流路が設けられており、
前記検出流路の両端部は、光を透過できるように透明となっており、
前記上流側の端部に前記光源が配置され、前記下流側の端部に前記画像取得装置が配置され、前記検出流路の長さが光路長とな
ことを特徴とする分析ユニット。
【請求項13】
溶液を通流させる検出流路と、
前記検出流路の一部に設けられ、前記検出流路内に光を照射する光源と、
前記検出流路の一部において前記光源と対向して設けられ、前記光源からの光を受けて前記溶液の透過度および吸光度のうちの少なくとも一方を測定する画像取得装置と、
を有し、
前記画像取得装置は、前記検出流路の断面画像を取得し、前記断面画像を複数の領域に分割し、
前記検出流路の光源側を上流側とし、前記検出流路の画像取得装置側を下流側とした場合に、
前記上流側の端部の側面に前記検出流路よりも直径の小さい流入流路が設けられており、
前記下流側の端部の側面に流出流路が設けられており、
前記検出流路の両端部は、光を透過できるように透明となっており、
前記上流側の端部に前記光源が配置され、前記下流側の端部に前記画像取得装置が配置され、前記検出流路の長さが光路長とな
ことを特徴とするフローセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質計、分析ユニットおよびフローセルに関する。
【背景技術】
【0002】
工場や下水処理からの排水や油水分離した後の処理水中に含まれる重金属類、有機化合物、硝酸・亜硝酸などの検出に代表される水質検査が重要となってきている。例えば、非特許文献1には、マイクロ反応流路で試料水と分析用試薬を混合することにより発色させた処理液をフローセルへ送液し、光源からフローセルへ光を照射し、フローセルへ照射した光を受光部で受光し、受光した光の強度から透過度または吸光度を算出することにより、水中の物質の濃度を測定する水質計が記載されている。
【0003】
一方、液体クロマトグラフにおけるクロマトグラムの拡がり、分析精度の低下を抑制するフローセルが、特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載のフローセルは、検出光が照射される検出部と、検出部における試料の流れ方向と異なる方向に検出部に試料を流入させる流入部と、検出部における試料の流れ方向と異なる方向に検出部から試料を流出させる流出部とを備え、検出光の照射方向と検出部の試料の流れ方向が平行となっている。そして、このフローセルは、流出部が試料を検出部から複数方向へ流出する流路を有している。なお、特許文献1には、流入部は検出部の手前で一旦分岐し、検出部で合流する流路から構成されており、検出部における流入位置が、検出部の端面の中心に対して点対称であり、検出部への流入方向が、検出部の端面の中心と交差しない、と記載されている。さらに、特許文献1には、この構造により、流入路から検出部に流入する噴流によって旋回流を生じさせる、と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-75352号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】戦略的創造研究推進事業CREST研究領域「持続可能な水利用を実現する革新的な技術とシステム」研究課題「モデルベースによる水循環系スマート水質モニタリング網構築技術の開発」研究終了報告書、第21頁、図25、URL:https://www.jst.go.jp/kisoken/crest/research/s-houkoku/sh_h27/JST_1111074_10101620_2015_PER.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に記載された水質計では、フローセルに気泡が混入した場合、その気泡が光を反射するため、測定ノイズが発生してしまう。これに対し、前述の通り、特許文献1には、流入路から検出部に流入する噴流によって旋回流を生じさせるフローセルが記載されている。特許文献1に記載の発明により、すなわちフローセル中に旋回流を発生させることにより、旋回流発生箇所の気泡を除去することができる。しかし、特許文献1に記載の発明においては、旋回流以外の箇所は流れが滞留してしまい、その滞留箇所の気泡は除去することができない。したがって、特許文献1に記載の発明には、フローセル中の気泡は旋回流によりある程度は除去されるが、流れの滞留箇所の気泡は除去されず、測定ノイズが残ってしまうことがあり、この点に改善の余地があった。
【0007】
本発明は前記状況に鑑みてなされたものであり、フローセルに混入した気泡に由来する測定ノイズを低減した水質計、分析ユニットおよびフローセルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決した本発明に係る水質計は、溶液を通流させる検出流路と、前記検出流路の一部に設けられ、前記検出流路内に光を照射する光源と、前記検出流路の一部において前記光源と対向して設けられ、前記光源からの光を受けて前記溶液の透過度および吸光度のうちの少なくとも一方を測定する画像取得装置と、を有するフローセルを備えた分析ユニットを有し、前記画像取得装置は、前記検出流路の断面画像を取得し、前記断面画像を複数の領域に分割し、前記検出流路の光源側を上流側とし、前記検出流路の画像取得装置側を下流側とした場合に、前記上流側の端部の側面に前記検出流路よりも直径の小さい流入流路が設けられており、前記下流側の端部の側面に流出流路が設けられており、前記検出流路の両端部は、光を透過できるように透明となっており、前記上流側の端部に前記光源が配置され、前記下流側の端部に前記画像取得装置が配置され、前記検出流路の長さが光路長となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フローセルに混入した気泡に由来する測定ノイズを低減した水質計、分析ユニットおよびフローセルを提供できる。
前述した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】第1実施形態に係る水質計の構成を説明する概略構成図である。
図1B図1Aに示す分析ユニットの構成を説明する概略構成図である。
図1C図1Bに示す画像取得装置が取得した検出流路の断面画像を複数の領域に分割した一例を説明する説明図である。
図2A】分析ユニットが備えるフローセルの構成を説明する概略側面図である。
図2B】分析ユニットが備えるフローセルの構成を説明する概略平面図である。
図3A図2Aに示すフローセルの一態様におけるA-A断面図である。
図3B図2Aに示すフローセルの他の態様におけるA-A断面図である。
図3C図2Aに示すフローセルのさらに他の態様におけるA-A断面図である。
図4A図2Aに示すフローセルの一態様のA-A断面図であって、処理液の流れを説明する説明図である。
図4B図2Bに示すフローセルの一態様のB-B断面図であって、処理液の流れを説明する説明図である。
図5A】検出流路に気泡が存在する場合における分析ユニットによる測定時のフローチャートである。
図5B】気泡を有する検出流路の断面画像において、指定した特定の領域が気泡を有する場合を示した模式図である。
図5C】気泡を有する検出流路の断面画像において、指定した特定の領域が気泡を有さない場合を示した模式図である。
図6A図2Bに示すフローセルの一態様におけるB-B断面図である。
図6B図6Aに示すフローセルのC-C断面図である。
図7A】気泡除去前のフローセルの内部を示す縦断面図である。
図7B】気泡除去中のフローセルの内部を示す縦断面図である。
図7C】気泡除去後、次の測定を行っているフローセルの内部を示す縦断面図である。
図8A図7Aに示す状態とするための、水質計のバルブの状態を示す概略構成図である。
図8B図7Bに示す状態とするための、水質計のバルブの状態を示す概略構成図である。
図8C図7Cに示す状態とするための、水質計のバルブの状態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において参照する図面は、実施形態を概略的に示したものであるため、各部材のスケールや間隔、位置関係などが誇張、変形、あるいは、部材の一部の図示が省略されている場合がある。また、平面図とその断面図において、各部材のスケールや間隔が一致しない場合もある。なお、以下の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明はこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
本明細書に記載される「~」は、その前後に記載される数値を下限値および上限値として有する意味で使用する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値または下限値は、他の段階的に記載されている上限値または下限値に置き換えてもよい。
【0012】
(水質計101)
(第1実施形態)
図1Aは、第1実施形態に係る水質計101の構成を説明する概略構成図である。図1Bは、図1Aに示す分析ユニット103の構成を説明する概略構成図である。図1Cは、図1Bに示す画像取得装置401が取得した検出流路203の断面画像203Cを複数の領域A~Tに分割した一例を説明する説明図である。図2Aは、分析ユニット103が備えるフローセル113の構成を説明する概略側面図である。図2Bは、分析ユニット103が備えるフローセル113の構成を説明する概略平面図である。なお、図2Aおよび図2Bは、図1Bに概略的に示されているフローセル113をより具体的に図示したものである。
【0013】
図1Aに示すように、水質計101は、試薬ユニット102と、分析ユニット103と、通信制御ユニット104と、電源ユニット105と、を有している。これらのユニットは着脱自在に接続されており、いずれも必要に応じて新しいユニットに交換することができる。そして、この水質計101は、分析ユニット103内にフローセル113(図1B図2Aおよび図2B参照)を備えている。
【0014】
そして、このフローセル113は、図1Bおよび図2Aに示すように、溶液を通流させる検出流路203を有している。また、フローセル113は、検出流路203の一部に設けられ、検出流路203内に光(測定対象物質に応じて任意に選定される所定の波長の入射光116)を照射する光源112を有している。さらに、フローセル113は、検出流路203の一部において光源112と対向して設けられ、光源112からの光を受けて溶液の透過度および吸光度のうちの少なくとも一方(本明細書において単に「透過度など」ということがある)を測定する画像取得装置401を有している。また、この画像取得装置401は、検出流路203の断面画像203C(図1C参照)を取得し、この断面画像203Cを複数の領域A~Tに分割する。なお、前記した透過度などは、領域A~Tの画像毎に測定されることが好ましい。
【0015】
また、図2Aおよび図2Bに示すように、フローセル113は、試料水106と分析用試薬107とが混合してなる処理液115を注入するためのフローセル入口201と、処理液115を排出するためのフローセル出口202と、を有している。フローセル113は、フローセル入口201と検出流路203の間の流入流路204と、検出流路203とフローセル出口202の間の流出流路205と、を有している。本実施形態においては、図2Aに示すように、流入流路204は検出流路203に対して直角に設けられており、流出流路205は流入流路204と同じ方向に、かつ検出流路203に対して直角に設けられている。つまり、流入流路204および流出流路205は、検出流路203に対して直交するように設けられている。
【0016】
試薬ユニット102には、試料水106中の測定対象物質を測定するための分析用試薬107が、複数回分析可能な量充填されている。
ここで、試料水106としては、例えば、上水、下水、再生水、温調用水、農業用水など、水の属性・特性・由来などを問わず様々な水が対象となる。
また、測定対象物質としては、例えば、塩素、二酸化炭素、亜塩素酸ナトリウム、遊離シアン、全シアン、6価クロム、全クロム、鉄、2価鉄、3価鉄、過酸化水素、マンガン、ニッケル、亜硝酸、亜硝酸態窒素、硝酸、硝酸態窒素、鉛、フェノール、全窒素、亜鉛、銅、ほう素、化学的酸素要求量、ホルムアルデヒド、過マンガン酸カリウム量、ヒ素、陰イオン界面活性剤、溶存酸素、アンモニウム、アンモニウム態窒素、りん酸、りん酸態りん、全りん、硫化物(硫化水素)、シリカ、カルシウム、遊離ふっ素、オゾン、塩化物、カリウム、土壌油分、硫酸などが挙げられるが、これらに限定されない。分析用試薬107は、前記した測定対象物質を測定するために市販されている任意の試薬を用いることができる。
【0017】
図1Bに示すように、分析ユニット103は、試料水106と分析用試薬107を混合させるためのマイクロ流路111からなる混合部118、混合した溶液を発色させるためのマイクロ流路111からなる反応部119、および反応部119のマイクロ流路111と接続された前記フローセル113を有する分析部120を有している。すなわち、マイクロ流路111は、試料水106と分析用試薬107とを混合して反応させた処理液115を通流させる流路である。
【0018】
マイクロ流路111に関して、マイクロ反応場による効果を得るためには、流路径の代表長さ、すなわち流路の幅や直径は2mm以下にすることが好ましい。特に、試料水106と分析用試薬107を分子拡散により迅速に混合させるために、流路径の代表長さは数十μm~1mmの範囲が好ましい。これにより、使用する分析用試薬107の量、および廃液となる処理液115の量を大幅に減らすことができる。なお、マイクロ流路111の流路の長さは、測定対象物質と分析用試薬107とが混合して反応する時間を考慮し、適宜に設定することができる。
【0019】
光源112は、水質計101や分光光度計などで従来用いられているものであればどのようなものも用いることができる。
そして、本実施形態における画像取得装置401は、前記したように、光源112からの光(入射光116)を受けて溶液の透過度などを測定するとともに、検出流路203の断面画像203C(図1C参照)を取得し、この断面画像203Cを複数の領域A~Tに分割する。
【0020】
領域A~Tは、断面画像203Cを所定の画素群で区分けすることでそれぞれ得ることができる。このようにすると、領域A~Tの画像群毎に透過光117を撮影し、透過光117の透過度などを測定することができる。そして、このとき、領域A~Tにおいて気泡402(図1C参照)が存在する領域については透過度などのデータを採用しないことができる。つまり、気泡402が存在していない領域についての透過度などのデータを採用することができる。したがって、本実施形態における画像取得装置401を採用する水質計101は、フローセル113に混入した気泡402に由来する測定ノイズを低減できる。なお、図1Cでは、領域Aに気泡402が存在している例を示している。
【0021】
領域内の気泡402の有無は、撮影された領域A~Tの画像を解析して、気泡402と溶液の界面に起因する円環状の色の濃い部分や、気泡402に起因する円形の色が薄くなっている部分の有無を確認することで行うことができる。画像取得装置401としては、例えば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサやCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサなどを用いることができるが、これらに限定されない。
【0022】
検出流路203の両端は、光(入射光116や透過光117)を透過できるように透明となっており、光源112から照射された入射光116は、検出流路203の処理液115を通過した後、画像取得装置401で透過光117として受光できるようになっている。すなわち、検出流路203の長さが光路長となる。したがって、その長さを長くするほど測定対象物質の濃度が低い溶液でも測定できるようになり、測定精度が上がる。しかし、検出流路203の長さを長くすると、検出流路203の内容積が増えて、使用する分析用試薬107の量、および廃液となる処理液115の量が増える。したがって、フローセル113の検出流路203の断面の代表長さ、すなわち、検出流路203を透過する光路に対して垂直な断面の幅や直径は2mm以下であるのが好ましく、検出流路203の長さ(光路長)は10~50mmの範囲が好ましい。
【0023】
分析ユニット103は、このようにして得られた領域A~Tの画像および画像取得装置401で撮影された透過度などの各種データ110を通信制御ユニット104(図1A参照)に送信する。
【0024】
通信制御ユニット104は、前記した領域A~Tの画像および透過度などの各種データ110を分析ユニット103から受信する。なお、通信制御ユニット104は、信号等を図1Aに図示してはいないが、外部との各種の信号およびデータの送受信を行うとともに、試薬ユニット102および分析ユニット103の制御109を行う。
【0025】
電源ユニット105は、バッテリ、交流電源、直流電源などの電源供給用の適宜の手段を備え、図1Aに示すように、試薬ユニット102、分析ユニット103、通信制御ユニット104に電源108を供給する。
【0026】
以上に説明した構成を有する水質計101は次のように用いられる。
まず、図1Aおよび図1Bに示すように、分析ユニット103に、測定対象である試料水106と、試薬ユニット102内から分析1回分の分析用試薬107と、が導入される。
【0027】
ここで、試料水106は、シリンジポンプやペリスタルティックポンプなどの各種ポンプで分析ユニット103に導入してもよいし、水道管などから分岐させて分析ユニット103に導入してもよい。また、試料水106は、水道管などから分岐させた後、バルブ(図示せず)で流量制御して分析ユニット103に導入してもよい。
分析用試薬107は、シリンジポンプやペリスタルティックポンプなどの各種ポンプによって試薬ユニット102から分析ユニット103に導入してもよい。
また、分析用試薬107は、試薬ユニット102内に分析用試薬107を複数回分析可能な量充填した試薬パック(図示せず)を設け、試薬ユニット102の筐体と試薬パックとの間に試料水106を導入し、その圧力で試薬ユニット102から(試薬パックから)分析ユニット103に導入するようにしてもよい。この場合、試薬パックの口にバルブ(図示せず)を設置し、このバルブを一定時間開放することにより、一定量の分析用試薬107を吐出させるようにすることができる。
試薬パックの加圧のために試薬ユニット102内に導入した試料水106は、引き続き、試料水106として分析ユニット103に導入してもよい。このようにすると、試料水106の導入手段と分析用試薬107の加圧手段とを兼ねることができる。
なお、図示しないポンプの運転や図示しないバルブの開閉は、通信制御ユニット104で行う。
【0028】
次いで、分析ユニット103に導入された試料水106および分析用試薬107は、混合部118のマイクロ流路111内で混合後、試料水106に含まれている測定対象物質と分析用試薬107が反応部119のマイクロ流路111内で反応して発色する。このようにして得られた処理液115は、分析部120のフローセル113の検出流路203に導入され、通流した後、フローセル113から排出される。光源112から照射された入射光116は、発色した処理液115を透過して透過光117となる。透過光117は、画像取得装置401で受光され、透過度などが測定されて、データ110が得られる。また、画像取得装置401は当該測定とともに、検出流路203の断面画像203Cを取得し、この断面画像203Cを複数の領域A~Tに分割する。なお、前記したデータ110は、測定された透過度などを分析ユニット103内で検量線に基づいて濃度に変換したものであってもよい。この検量線に基づく濃度への変換は、通信制御ユニット104で行うこともできる。
【0029】
次いで、水質計101は、領域A~T内に気泡402が存在する画像に関しては、透過度などのデータを採用しないことができる。
このように、本実施形態に係る水質計101は、前述した画像取得装置401を有しており、気泡402が存在する領域A~Tについては採用しない、つまり、そのような領域A~Tに関する透過度などのデータを採用しないことができる。そのため、水質計101は、フローセル113に混入した気泡402に由来する測定ノイズを低減できる。
【0030】
(第2実施形態)
本発明に係る水質計101の好ましい第2実施形態を以下に説明する。なお、第2実施形態に係る水質計101は、フローセル113を好ましい態様としたものである。
図3Aは、図2Aに示すフローセル113の一態様におけるA-A断面図である。図3Bは、図2Aに示すフローセル113の他の態様におけるA-A断面図である。図3Cは、図2Aに示すフローセル113のさらに他の態様におけるA-A断面図である。図4Aは、図2Aに示すフローセル113の一態様のA-A断面図であって、処理液115の流れを説明する説明図である。図4Bは、図2Bに示すフローセル113の一態様のB-B断面図であって、処理液115の流れを説明する説明図である。
【0031】
図2A図3Aなどに示すように、フローセル113は、検出流路203の光源112側を上流側とし、検出流路203の画像取得装置401側を下流側とした場合に、前記上流側の端部に検出流路203よりも直径の小さい流入流路204が設けられていることが好ましい。このようにすると、流入流路204から検出流路203内に導入される際の溶液(処理液115)の勢いを高めることができる。これにより、検出流路203内に気泡402が存在した場合に気泡402を下流側へ押し流し、流出流路205から排出させ易くなる。そのため、フローセル113に混入した気泡402由来の測定ノイズをより低減できる。
【0032】
また、図3Aに示すように、フローセル113の流入流路204は、検出流路203と接続する接続部分において、流入流路204の中心軸206と検出流路203の中心軸207とをずらして設けていることが好ましい。このようにすると、流入流路204の中心軸206と検出流路203の中心軸207とがずれているので、処理液115が検出流路203の壁面に沿って回り込むように導入され、図4Aおよび図4Bに示すような旋回流208となる。この旋回流208は、図4Bに示すように、検出流路203の上流側から下流側にかけて発生し、検出流路203では中心軸207近傍よりも検出流路203の壁面近傍の流れが相対的に速くなる。この旋回流208の作用により、検出流路203の壁面近傍に存在した気泡402は、検出流路203の下流側、さらには流出流路205へ流され、フローセル出口202から排出される。一方、検出流路203の流れ方向の中心軸207近傍は流れが遅いため、この箇所に存在した気泡402は下流側へ流すことは困難である。したがって、旋回流208が発生することにより、気泡402は検出流路203の流れ方向の中心軸207近傍のみに残る。そのため、画像取得装置401で取得する領域A~Tについて、検出流路203の壁面近傍の画像を優先的に取得することによって、処理液115の透過度などをより好適に測定できる。なお、上述の検出流路203の流れ方向における中心軸207近傍に残った気泡402により、中心軸207近傍に測定ノイズが生じることがあるが、そのような場合は、分析ユニット103で後述する処理を行うとよい(なお、この処理については図5Aを参照して後に説明する)。
【0033】
また、図3Aに示すように、フローセル113は、検出流路203の中心軸207に対する流入流路204の中心軸206の傾き角度θが0°より大きく90°より小さいことが好ましい。このようにした場合も、流入流路204の中心軸206と、検出流路203の中心軸207とがずれているので、図4Aおよび図4Bに示すような旋回流208となる。そのため、前記と同様、気泡402は検出流路203の流れ方向の中心軸207近傍のみに残る。したがって、画像取得装置401で取得する領域A~Tについて、検出流路203の壁面近傍の画像を優先的に取得することによって、処理液115の透過度などをより好適に測定できる。
【0034】
ここで、この態様において、流入流路204と検出流路203とは、流入流路204の下流側のy軸方向(直径方向)の端の壁面204yが、検出流路203のy軸方向(直径方向)の端の壁面203yに接するように接続されていることが好ましい。つまり、図3Aにおける検出流路203の壁面203yを円周と仮定し、流入流路204の壁面204yを直線と仮定したときに、この直線が円周の1点をとおる接線となるように、壁面203yと壁面204yとを接続することが好ましい。このようにすると、流入流路204の壁面204yと検出流路203の壁面203yとの間に段差がないため、気泡402がトラップされるのを防止できる。なお、図3Aでは、流入流路204と検出流路203との接続は、検出流路203のy軸のマイナス方向(-)としているが、y軸のプラス方向(+)でもよい。この場合も、検出流路203のy軸方向の端の壁面203yが、流入流路204のy軸方向の端の壁面204yに接続されていれば旋回流208となるので、前記と同様、気泡402は検出流路203の流れ方向の中心軸207近傍のみに残る。したがって、画像取得装置401で取得する領域A~Tについて、検出流路203の壁面近傍の画像を優先的に取得することによって、処理液115の透過度などをより好適に測定できる。なお、この場合も上述の検出流路203の流れ方向における中心軸207近傍に残った気泡402により、中心軸207近傍に測定ノイズが生じることがあるが、そのような場合は、分析ユニット103で後述する処理を行うとよい(なお、この処理については図5Aを参照して後に説明する)。
【0035】
また、図3Aでは、流入流路204を途中で屈曲させることによって、前記傾き角度θを得ている様子を示している。しかし、図3Bに示すように、流入流路204を直管とし、流入流路204上流側から傾き角度θで傾斜する構造としてもよい。また、図3Cに示すように、流入流路204を傾斜させずに直管とし、流入流路204の中心軸206と、検出流路203の中心軸207とをずらして設けることにより、距離tの間隔を空けるようにしてもよい。図3Bおよび図3Cのいずれの場合も流入流路204の中心軸206と、検出流路203の中心軸207とをずらして設けているので、図4Aおよび図4Bに示すような旋回流208となる。そのため、前記と同様、気泡402が存在するとしてもその気泡402は検出流路203の流れ方向の中心軸207近傍のみに残る。したがって、画像取得装置401で取得する領域A~Tについて、検出流路203の壁面近傍の画像を優先的に取得することによって、処理液115の透過度などをより好適に測定できる。
【0036】
ここで、図3Bおよび図3Cのいずれの場合も、流入流路204のy軸方向の端の壁面204yが、検出流路203のy軸方向の端の壁面203yと接するように接続させてもよい。また、前記した距離tは、流入流路204のy軸方向の端の壁面204yが、検出流路203のy軸方向の端の壁面203yに接する値に設定するとよい。つまり、図3Bおよび図3Cにおける検出流路203の壁面203yを円周と仮定し、流入流路204の壁面204yを直線と仮定したときに、この直線が円周の1点をとおる接線となるように、壁面203yと壁面204yとを接続することが好ましい。このようにすると、流入流路204の壁面204yと検出流路203の壁面203yとの間に段差がないため、気泡402がトラップされるのを防止できる。なお、図3Bおよび図3Cでは、流入流路204と検出流路203との接続は、検出流路203のy軸のマイナス方向としているが、y軸のプラス方向でもよい。これらのいずれの態様によっても、流入流路204のy軸方向の端の壁面204yが、検出流路203のy軸方向の端の壁面203yに接続されていれば旋回流208となる。なお、この場合も上述の検出流路203の流れ方向における中心軸207近傍に残った気泡402により、中心軸207近傍に測定ノイズが生じることがあるが、そのような場合は、分析ユニット103で後述する処理を行うとよい(なお、この処理については図5Aを参照して後に説明する)。
【0037】
次に、旋回流208によって検出流路203の流れ方向における中心軸207近傍に気泡402が残り、中心軸207近傍に測定ノイズが生じてしまう場合における分析ユニット103による処理について説明する。
図5Aは、検出流路203に気泡402が存在する場合における分析ユニット103による測定時のフローチャートである。また、図5Bは、気泡402を有する検出流路203の断面画像203Cにおいて、指定した特定の領域Aが気泡402を有する場合を示した模式図である。図5Cは、気泡402を有する検出流路203の断面画像203Cにおいて、指定した特定の領域Bが気泡402を有さない場合を示した模式図である。なお、図5Bおよび図5Cは、検出流路203の断面形状が円形の場合を示しているが、検出流路203の断面形状は矩形でもよく、その他の形状であってもよい。
【0038】
まず、図5Aに示すように、画像取得装置401を用いて検出流路203を撮影した検出流路203の断面画像203C(図1C参照)を分析ユニット103に取り込む(ステップS1)。
続いて、取り込んだ断面画像203C(画像データ)において、中心軸207近傍ではない領域(図5B参照)、すなわち、旋回流208により気泡402が除去されている壁面近傍の箇所を、例えば、領域A、領域B、領域C、領域D…と領域毎に分割する(ステップS2)。
さらに、分割した複数の領域の中から特定の領域として、例えば、領域Aを指定し(ステップS3)、領域A内の気泡402の有無を確認する(ステップS4)。ここで、指定した領域Aに気泡402がなかった場合(ステップS5で“NO”)、画像取得装置401は、その領域Aの透過度などを測定する(ステップS6)。
一方、気泡402の有無を確認した際に(ステップS4)、指定した領域Aに旋回流208では除去しきれなかった気泡402があった場合(ステップS5で“YES”、図5B参照)、画像取得装置401は、図5Cに示すように、領域Aとは別の領域Bを指定し(ステップS7、図5C参照)、領域B内の気泡402の有無を確認する(ステップS4)。画像取得装置401は、この一連の流れを気泡402がない領域を指定するまで繰り返し行い、気泡402がない領域の透過度などを測定する(ステップS6)。
【0039】
前記したように、旋回流208によって検出流路203の流れ方向における中心軸207近傍に気泡402が残り、中心軸207近傍に測定ノイズが生じる。そのため、中心軸207近傍の領域については予め指定しないという態様とするのも好ましい。このようにすると、測定ノイズが生じる可能性が高い領域について処理を行わないため、処理速度の高速化やデータの記録容量の低減などを図ることができる。このような態様としては、例えば、分析ユニット103(具体的には、画像取得装置401)は、検出流路203の半径において、中心(中心軸207)から1/2未満の領域を指定しないようにすることが挙げられる。すなわち、画像取得装置401は、検出流路203の半径において、中心(中心軸207)から1/2以上外側の領域を指定することが挙げられる。この態様において、より好ましくは、画像取得装置401は、検出流路203の半径において、中心(中心軸207)から1/4以上外側の領域を指定することが挙げられる。この態様について、図5Bおよび図5Cに示すように、例えば、検出流路203の中心軸207近傍は指定せず、検出流路203の壁面近傍の領域A~Pの16個の領域を指定するようにすることが好ましい。
【0040】
ここで、分割した全領域において気泡402が存在した場合、次の処理液115をフローセル113に導入して次の測定をしてもよいし、空気をフローセル113に導入して気泡402を押し流し、その後に次の測定をしてもよい。
また、図5Bおよび図5Cでは、領域A~Pの16個としたが、領域の個数はこれより少なくてもよいし、多くてもよい。領域の個数は、画像取得装置401の透過度などの測定の感度や領域の分割性能に応じて、適宜設定することができる。
【0041】
(第3実施形態)
本発明に係る水質計101の好ましい第3実施形態を以下に説明する。なお、第3実施形態に係る水質計101は、領域A~Tに気泡402がより存在しなくなるようにしたものである。
図6Aは、図2Bに示すフローセル113の一態様におけるB-B断面図である。図6Bは、図6Aに示すフローセル113のC-C断面図である。なお、第3実施形態の側面図および平面図は、それぞれ第1実施形態で示した図2Aおよび図2Bと同様である。
【0042】
図6Aおよび図6Bに示すように、第3実施形態におけるフローセル113は、光源112の少なくとも一部および画像取得装置401の少なくとも一部のうちの少なくとも一方、好ましくは両方が、検出流路203中へ突出した構成となっている。なお、図6Aおよび図6Bは、これらの両方が突出した構成を図示している。このような構成とすることにより、光源112と検出流路203との間、および、画像取得装置401と検出流路203との間のうちの少なくとも一方に隙間601を設けることができる。隙間601は、流れの滞留箇所となり、この流れの滞留箇所に気泡402がトラップされる。この状態で領域A~Tまたは領域A~Pにおける透過度などを画像取得装置401で測定し、測定対象物質の濃度を算出する。このとき、分析ユニット103(画像取得装置401)では、図5Aに示すフローチャートに従い透過度などを測定する。
【0043】
ここで、隙間601にトラップされた気泡402(図6Aには図示せず)は、透過度などを測定した後、気泡402の除去動作によって除去される。この気泡402の除去操作は、前記したように、フローセル入口201またはフローセル出口202から、空気を導入することによりその空気とともに押し流す操作としてもよい。
また、フローセル113の流入流路204、検出流路203および流出流路205は、図2Aから図4Bに示す旋回流208を発生する構造としてもよく、旋回流208を発生する構造としなくてもよい。ただし、図2Aから図4Bに示す旋回流208を発生する構造とした場合、気泡402がトラップされる箇所が、検出流路203の流れ方向の中心軸207近傍および隙間601となり、より気泡402がこれらの箇所でトラップされる確率が上がる。そのため、気泡402が領域A~P(図5B参照)に存在しなくなる確率が上がる。したがって、これらの構成を採用すると、フローセル113に混入した気泡402に由来する測定ノイズをさらに低減できる。
【0044】
(第4実施形態)
本発明に係る水質計101の好ましい第4実施形態を以下に説明する。なお、第4実施形態に係る水質計101は、検出流路203内に存在する気泡402を除去する好ましい態様としたものである。つまり、第4実施形態は、測定前のフローセル113の検出流路203の内部に存在する気泡402を、測定前に気泡除去試薬802を送液することによって除去し、気泡除去後に次回分の処理液115を測定するというものである。このように、検出流路203内に存在する気泡402を適時に除去することによって、フローセル113に混入した気泡402に由来する測定ノイズをさらに低減できる。
【0045】
図7Aは、気泡除去前(透過度などを測定しているとき)のフローセル113の内部を示す縦断面図である。図7Bは、気泡除去中のフローセル113の内部を示す縦断面図である。図7Cは、気泡除去後、次の測定を行っているフローセル113の内部を示す縦断面図である。なお、第4実施形態の側面図および平面図は、それぞれ第1実施形態で示した図2Aおよび図2Bと同様である。また、図8Aは、図7Aに示す状態とするための、水質計101のバルブの状態を示す概略構成図である。図8Bは、図7Bに示す状態とするための、水質計101のバルブの状態を示す概略構成図である。図8Cは、図7Cに示す状態とするための、水質計101のバルブの状態を示す概略構成図である。
【0046】
図8Aから図8Cに示すように、第4実施形態では、第1実施形態で示した試薬ユニット102内に、分析用試薬107に加えて、気泡除去試薬802が充填されている。そして、試薬ユニット102内の分析用試薬107は、分析用試薬バルブ901を介して分析ユニット103と接続されている。また、試薬ユニット102内の気泡除去試薬802は、気泡除去試薬用バルブ902を介して分析ユニット103と接続されている。各試薬の分析ユニット103内の送液はこれらのバルブの開閉動作により制御される。
【0047】
図7Aに示すように、前回の測定後、気泡除去前のフローセル113の内部には前回測定の処理液801が満たされ、流入流路204、検出流路203および流出流路205のそれぞれの壁面などに気泡402が存在している。その際は、図8Aに示すように、分析用試薬バルブ901および気泡除去試薬用バルブ902は閉じている。
【0048】
続いて、図8Bに示すように、気泡除去試薬用バルブ902を開けることにより、図7Bに示すように、フローセル入口201から気泡除去試薬802が導入され、流入流路204、検出流路203および流出流路205が気泡除去試薬802で満たされる。これにより、測定前に存在した気泡402を除去できる。
【0049】
さらに、図8Cに示すように、気泡除去試薬用バルブ902のバルブを閉じ、かつ分析用試薬バルブ901を開けることにより、図7Cに示すように、フローセル入口201から処理液115を導入し、フローセル113の内部、すなわち、流入流路204、検出流路203および流出流路205の内部を処理液115で満たし、次回の測定を行う。
【0050】
このように、気泡除去試薬802を導入して測定前に流入流路204、検出流路203および流出流路205に存在した気泡402を除去した後に、処理液115を送液することにより、気泡402に由来する測定ノイズをより低減できる。
【0051】
ここで、気泡除去試薬802としては、例えば、シリコーン系消泡剤、有機系消泡剤などが挙げられる。有機系消泡剤としては、例えば、高級アルコールなどが挙げられる。また、気泡除去試薬802としては、例えば、界面活性剤、ポリエーテルなどが挙げられる。なお、気泡除去試薬802はこれらに限定されず、従来公知のものを適宜使用できる。
【0052】
また、言うまでもなく、フローセル113は、図3Aから図4Bに示す旋回流208を発生する構造としてもよく、旋回流208を発生する構造としなくてもよい。ただし、旋回流208を発生する構造とした場合、検出流路203の壁面付近の気泡402は除去されるため、気泡402の数が減り、かつ残った気泡402も検出流路203の流れ方向の中心軸207近傍に集まるため、旋回流208を発生する構造としなかった場合よりも気泡除去試薬802で気泡402を除去し易くなるため好ましい。
【0053】
(第5実施形態)
前述したように、分析ユニット103は、試薬ユニット102、通信制御ユニット104、電源ユニット105などと着脱自在に接続されるものである。分析ユニット103は、フローセル113が汚れたり、マイクロ流路111が異物などで詰まってしまったりした場合などに、任意に交換することができる。つまり、分析ユニット103は、水質計101における交換部品となるものである。分析ユニット103と、試薬ユニット102、通信制御ユニット104および電源ユニット105などとの着脱は、従来公知のコネクタを介して行うことができる。コネクタは、溶液の通流を行う箇所については、液密性を維持できるものであればよく、データ110、電源108、制御109を行う箇所については電気的な接続を維持できるものであればよい。
【0054】
交換部品として用いられる分析ユニット103の構成は、図1Bに示すものと同様である。すなわち、交換部品として用いられる分析ユニット103は、図1Bに示すように、溶液を通流させる検出流路203と、検出流路203の一部に設けられ、検出流路203内に光(入射光116)を照射する光源112と、検出流路203の一部において光源112と対向して設けられ、光源112からの光を受けて溶液の透過度などを測定する画像取得装置401と、を有するフローセル113を備えている。分析ユニット103が備えている画像取得装置401は、検出流路203の断面画像203Cを取得し、断面画像203Cを複数の領域A~Tに分割する。そのため、前述したように、本実施形態に係るフローセル113は、フローセル113に混入した気泡402に由来する測定ノイズを低減できる。なお、この場合も、フローセル113は、図3Aから図4Bに示す旋回流208を発生する構造としてもよく、旋回流208を発生する構造としなくてもよい。また、分析ユニット103の構成、効果などについては既に詳述しているので、その説明を省略する。
【0055】
また、フローセル113も分析ユニット103と着脱自在に備えることができる。そのため、フローセル113は、フローセル113が汚れたり、光源112や画像取得装置401が機能しなくなったりした場合に、任意に交換することができる。つまり、フローセル113は、分析ユニット103および水質計101における交換部品となるものである。分析ユニット103内におけるフローセル113の着脱は、従来公知のコネクタを介して行うことができる。コネクタは、溶液の通流を行う箇所については、液密性を維持できるものであればよく、データ110、電源108、制御109を行う箇所については電気的な接続を維持できるものであればよい。
また、フローセル113は、着脱の際に位置決め等を行うガイド溝(図示せず)などが設けられていてもよい。この場合、分析ユニット103におけるフローセル113の取付位置には、当該ガイド溝の形状・大きさに応じたガイド用突起物(図示せず)が設けられていてもよい。このようにすると、フローセル113の着脱を容易且つ確実に行うことができる。
【0056】
交換部品として用いられるフローセル113の構成は、図2Aから図4B図6Aから図7Cに示すものと同様である。すなわち、交換部品として用いられるフローセル113は、図2Aから図4B図6Aから図7Cに示すように、溶液を通流させる検出流路203と、検出流路203の一部に設けられ、検出流路203内に光(入射光116)を照射する光源112と、検出流路203の一部において光源112と対向して設けられ、光源112からの光を受けて溶液の透過度などを測定する画像取得装置401と、を有する。フローセル113が有している画像取得装置401は、検出流路203の断面画像203Cを取得し、断面画像203Cを複数の領域A~Tに分割する。そのため、前述したように、本実施形態に係るフローセル113は、フローセル113に混入した気泡402に由来する測定ノイズを低減できる。なお、フローセル113は、図3Aから図4Bに示す旋回流208を発生する構造としてもよく、旋回流208を発生する構造としなくてもよい。また、フローセル113の構成、効果などについては既に詳述しているので、その説明を省略する。
【0057】
以上、本発明の一実施形態に係る水質計、分析ユニット、フローセルについて詳細に説明したが本発明の主旨はこれに限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。さらに、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0058】
101 水質計
203 検出流路
112 光源
401 画像取得装置
103 分析ユニット
113 フローセル
203C 断面画像
A~T 領域
204 流入流路
206 流入流路の中心軸
207 検出流路の中心軸
104 通信制御ユニット
402 気泡
601 隙間
102 試薬ユニット
106 試料水
107 分析用試薬
802 気泡除去試薬
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C