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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】塩素化ケトン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/29 20060101AFI20221226BHJP
   C07C 49/163 20060101ALI20221226BHJP
   C07C 45/65 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
C07C45/29
C07C49/163
C07C45/65
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019110229
(22)【出願日】2019-06-13
(65)【公開番号】P2020200290
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】504205521
【氏名又は名称】国立大学法人 長崎大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】尾野村 治
(72)【発明者】
【氏名】栗山 正巳
(72)【発明者】
【氏名】山本 耕介
(72)【発明者】
【氏名】菊池 直登
(72)【発明者】
【氏名】森脇 正之
(72)【発明者】
【氏名】角田 大
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】ChemElectroChem,2019年02月22日,Vol.6, No.16,pp.4169-4172
【文献】Green Chemistry,2019年05月10日,Vol.21, No.15,pp.4014-4019
【文献】Green Chemistry,2018年,Vol.20, No.11,pp.2477-2480
【文献】Organic Letters,2002年,Vol.4, No.22,pp.3899-3902
【文献】J. Org. Chem.,1980年,Vol.45, No.14,pp.2874-2880
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 45/29
C07C 49/163
C07C 45/65
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】
(式中、R、及びRは、夫々、アルキル基、芳香族炭化水素基、または脂環式炭化水素基であり、R、及びRは一緒になって脂肪族炭化水素環を形成していてもよい)
で示されるα,α-ジ置換アリルアルコール化合物を、次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウムの存在下に酸化させることを特徴とする、一般式(2)
【化2】
(式中、R、及びRは、上記と同じである)
塩素化ケトン化合物の製造方法。
【請求項2】
次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウムが、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウムである、請求項1記載の塩素化ケトン化合物の製造方法。
【請求項3】
請求項1~2のいずれか一項に記載の方法により製造された、一般式(2)で示される塩素化ケトン化合物を、塩基の存在下に脱塩化水素化させてなる、
一般式(3)
【化3】
(式中、R、及びRは、上記と同じである)
で示されるα-メチレンケトン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素化ケトン化合物の製造方法、詳しくは、α,α-ジ置換アリルアルコール化合物を反応原料とした、塩素化ケトン化合物の製造方法に関する。さらに、本発明は、上記方法で製造した塩素化ケトン化合物をもとにした、α-メチレンケトン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
α-メチレンケトン化合物、具体的には、
一般式(3)
【0003】
【化1】
【0004】
(式中、R、及びRは、夫々、アルキル基、芳香族炭化水素基、または脂環式炭化水素基であり、R、及びRは一緒になって脂肪族炭化水素環を形成していてもよい)
で示される化合物は、天然物に広く見られ、生物学的に活性な物質として知られている(例えば、非特許文献1~3)。従って、該化合物を、有機合成により製造することができれば大変有用であり、種々試みられている。例えば、α,α-ジ置換アリルアルコール化合物を原料に、タリウム(例えば、非特許文献4,5)や水銀(例えば、非特許文献6)等の重金属酸化剤を用いて酸化させる方法や、
超原子価ヨウ素(例えば、非特許文献7~9)を用いて酸化させる方法が知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Arch.Microbiol. 1981,730,223-227;
【文献】Tetrahedron 2006,62,2370-2379
【文献】Sci.Transl.Med.2015,7,286ra67
【文献】Tetrahedron Lett.1996,37,3865-3866
【文献】J.Org.Chem.1999,64,101-119
【文献】Tetrahedron Lett.1992,33,4325-4328
【文献】J.Org.Chem.1995,60,4439-4443
【文献】Org.Lett.2008,10,1017-1020
【文献】Molecules.2015,20,1475-1494
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、重金属酸化剤や超原子価ヨウ素の酸化剤は、汎用的な試薬とは言い難く、高価であり、また、前者の重金属酸化剤であれば、環境負荷も大きい。従って、工業的な方法としては十分に満足できる方法ではなく、より簡便な製造方法を開発することが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題に鑑み、鋭意研究を続けてきた。その結果、α,α-ジ置換アリルアルコール化合物を、次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウムの存在下に酸化させれば、前記α-メチレンケトン化合物を製造するための中間体である、前記塩素化ケトン化合物が簡便に合成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、一般式(1)
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、R、Rは、夫々、アルキル基、芳香族炭化水素基、または脂環式炭化水素基であり、R、及びRは一緒になって脂肪族炭化水素環を形成していてもよい)
で示されるα,α-ジ置換アリルアルコール化合物を、次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウムの存在下に酸化させることを特徴とする、一般式(2)
【0011】
【化3】
【0012】
(式中、R、及びRは、上記と同じである)
塩素化ケトン化合物の製造方法である。
【0013】
更に本発明は、上記製造された、一般式(2)で示される塩素化ケトン化合物を、塩基の存在下にさらに脱塩化水素化させてなる、
一般式(3)
【0014】
【化4】
【0015】
(式中、R、及びRは、上記と同じである)
で示されるα-メチレンケトン化合物の製造方法も提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、α,α-ジ置換アリルアルコール化合物を原料に、次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウムを用いた酸化反応により、対応する塩素化ケトン化合物を簡便に有機合成できる。この塩素化ケトン化合物は、塩基の存在下に脱塩化水素化させることによりα-メチレンケトン化合物とすることができる。従って、重金属系等の高価な酸化剤を用いずに、環境負荷も少ない方法で効率的に、前記目的化合物を得ることができ、工業上極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について、以下に詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
【0018】
本発明の製造方法では、原料化合物として、一般式(1)
【0019】
【化5】
【0020】
(式中、R、Rは、夫々、アルキル基、芳香族炭化水素基、または脂環式炭化水素基であり、R、及びRは一緒になって脂環式炭化水素基を形成していてもよい)
で示されるα,α-ジ置換アリルアルコール化合物を用いる。こうしたα,α-ジ置換アリルアルコール化合物は、対応するケトン化合物にビニルグリニャール試薬を求核付加することにより容易に製造される。
【0021】
ここで、R、Rのアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば、炭素数1~20のアルキル基が挙げられる。このようなアルキル基として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、イソペンチル基、2-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、4-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、セチル基、ステアリル基等が挙げられる。上記アルキル基の炭素数は1~12が好ましく、1~6の低級アルキル基がより好ましく、メチル基であるのが最も好ましい。
【0022】
また、芳香族炭化水素基は、例えば炭素数6~20のアリール基が挙げられ、具体的には、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、アントリル基、フェナンスリル基、2-ビフェニル基、3-ビフェニル基、4-ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられ、フェニル基が特に好ましい。
【0023】
さらに、脂環式炭化水素基は、例えば炭素数が3~20とすればよく、5~15が好ましく、6~12がより好ましい。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の単環式基,アダマンチル基、ビシクロ(2,2,1)ヘプチル基等の有橋脂環基が挙げられ、このうちシクロヘキシル基が特に好ましい。また、これらの脂環基は、芳香族炭化水素環や、さらに他の脂肪族炭化水素環が縮合した縮合脂環基であっても良い。
【0024】
さらに、これらのR、及びRは一緒になって脂肪族炭化水素環を形成していてもよい。こうしたR、及びRが一緒になって形成される脂肪族炭化水素環は、前記R、Rで示した脂環式炭化水素基に対応するスピロ環が挙げられ、特には、シクロアルキル環や、これに芳香族環や、他の脂肪族環が縮合した縮合脂肪族環が好ましい。
【0025】
これらR、Rの芳香族炭化水素基または脂環式炭化水素基は、置換基を有していても良く、こうした置換基としては、前記で示したアルキル基や、ハロゲン原子(好ましくは、塩素原子)、チオ基、水酸基等が挙げられる。
【0026】
本発明の方法では、こうしたα,α-ジ置換アリルアルコール化合物を、次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウムの存在下に酸化させて、一般式(2)
【0027】
【化6】
【0028】
(式中、R、及びRは、上記と同じである)
で示される塩素化ケトン化合物を得る。ここで、次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウムは、アルキル基として、メチル基、エチル基等の炭素数1~5のものを有するものが好適である。このような次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウムとしては、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム、次亜塩素酸テトラエチルアンモニウム、次亜塩素酸テトラプロピルアンモニウム、次亜塩素酸テトラブチルアンモニウム等が例示され、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム及び次亜塩素酸テトラエチルアンモニウムが特に好ましい。これら次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウムは、2種以上を混合して使用することもできる。
【0029】
上記次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウムは、如何なる製造方法によって得られたものを用いても良く、具体的には、テトラアルキルアンモニウム水酸化物溶液に塩素ガスを吹き込んで当該目的化合物を生成させる塩素化法や、テトラアルキルアンモニウム水酸化物溶液をイオン交換樹脂に通過させてテトラアルキルアンモニウムに置換し、次いで次亜塩素酸ナトリウム等の次亜塩素酸塩溶液を通過させることで、当該目的化合物を溶離させるイオン交換樹脂法で得られたものが好ましい。これら製法に由来して、これら次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウムには、テトラアルキルアンモニウムクロリドやテトラアルキルアンモニウム水酸化物等が混存していても良い。
【0030】
次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウムの使用量は、特に制限されるものではないが、α,α-ジ置換アリルアルコール化合物1モルに対して等モル以上が好ましい。目的とする塩素化ケトン化合物を高収量で得る観点から、より好ましくは1~6モルであり、特に好ましくは1.1~4モルである。
【0031】
上記α,α-ジ置換アリルアルコール化合物の酸化反応を実施するための溶媒は、上記原料化合物を溶解させる有機溶媒において、該有機溶媒自体が、酸化剤の次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウムに酸化されにくいものが使用される。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の極性プロトン性溶媒;アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ニトロベンゼン等の極性非プロトン性溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の非極性溶媒が挙げられる。これらは2種以上を混合して使用しても良い。例えば、α,α-ジ置換アリルアルコール化合物が、前記一般式(1)において、Rがメチル基等の低級アルキル基であり、Rがシクロヘキシル基等の単環式基の場合、メタノール(10~90質量%)とアセトニトリル(10~50質量%)の混合溶媒であるのが特に好ましい。
【0032】
溶媒の好適な使用量は、溶媒1mlに対して、原料化合物を0.02~0.5mmol、より好適には0.03~0.4mmol溶解させる量である。
【0033】
こうしたα,α-ジ置換アリルアルコール化合物の酸化反応は、酸性化合物を共存下で実施するのが好ましい。即ち、酸性化合物が二重結合へのハロゲン付加を促進する作用を発揮して、反応の進行を高める。こうした酸性化合物は、水溶液が酸性を示すブレンステッド酸であれば特に制限されるものではないが、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸等の無機酸や、酢酸、プロピオン酸、スルホン酸等の有機酸が挙げられ、このうち酢酸が特に好ましい。
【0034】
酸性化合物の使用量は、反応液のpHが強酸性になる程の多量であると、酸化剤として使用する次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウム由来の次亜塩素酸が分解して塩素ガスが発生し、系外に漏れ出る恐れがあるため、前記の配合目的が達成される必要量があれば十分であり、次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウムに対して1~6当量、好ましくは1.2~3当量の範囲で使用される。
【0035】
上記の酸化反応は、通常、0~50℃の反応温度で撹拌下に行われ、好ましくは5~35℃の反応温度で撹拌下に行われる。反応温度が50℃を超えると、次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウムの分解反応と酸化反応との競争反応になり、次亜塩素酸テトラアルキルアンモニウムの使用量が増大するので好ましくなく、また、反応温度を反応系が固化しない程度の低温(0℃未満)まで下げることは、特別に設備的な対応が必要になるほか、反応速度の低下を招く等、かえって利点が少ない。
【0036】
反応時間は通常、0.2~8時間、より好ましくは0.5~4時間の範囲から採択される。
【0037】
以上のα,α-ジ置換アリルアルコール化合物の酸化反応により、前記式(2)
【0038】
【化7】
【0039】
(式中、R、及びRは、上記と同じである)
で示される塩素化ケトン化合物が生成する。この塩素化ケトン化合物は、種々の反応原料として活用可能であるが、一般には、前記生物学的に活性な物質として有用な一般式(3)
【0040】
【化8】
【0041】
(式中、R、及びRは、上記と同じである)
で示されるα-メチレンケトン化合物の製造原料とするのが好ましい。
【0042】
前記式(3)で示されるα-メチレンケトン化合物は、前記式(2)で示される塩素化ケトン化合物を塩基の存在下に脱塩化水素化させることにより簡単に製造できる。即ち、前記α,α-ジ置換アリルアルコール化合物の酸化反応後、該塩素化ケトン化合物を含有する反応液に塩基を配合して、上記α-メチレンケトン化合物を生成させれば良い。
【0043】
なお、上記式(3)で示される化合物は、前記α,α-ジ置換アリルアルコール化合物の酸化反応においても、反応条件によっては、生成した前記式(2)で示される化合物の一部が上記脱塩化水素化まで反応が進行して、該式(2)で示される化合物と共存して生成することもある。
【0044】
ここで、塩基は、水酸化物イオン(OH)を出す物質であれば制限無く使用できる。好適には、pKa値が、5以上、好適には10以上を示す塩基性化合物である。具体的には、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム等の無機炭酸塩; 水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物;水素化ナトリウム、水素化カリウム等の水素化物;トリエチルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族三級アミン化合物;ピリジン、4-N,N-ジメチルアミノピリジン等の芳香族三級アミン化合物等が挙げられる。
【0045】
さらに、塩基としては、ホスファゼン、アミジン、グアニジン、多環ポリアミン系の有機塩基化合物からなる超強塩基も好適に使用できる。こうした超強塩基としては、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG)、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4,4,0]デカ-5-エン (MTBD)、1,5,7-トリアザビシクロ[4,4,0]デカ-5-エン(TBD)、tert-ブチルイミノ-トリ(ピロリジノ)ホスホラン(BTPP)、2-tert-ブチルイミノ-2-ジエチルアミノ-1.3-ジメチルペルヒドロ-1,3,2-ジアザホスホリン(BEMP)等が挙げられ、このうちDBUが特に好ましい。
【0046】
これら塩基の使用量は、特に制限されるものではないが、目的とするα-メチレンケトン化合物を高収量で得る観点から、塩素化ケトン化合物に対して、好ましくは1~4当量であり、より好ましくは2~3当量である。
【0047】
係る脱塩化水素化反応の反応温度も、通常、0~50℃の反応温度で撹拌下に行われ、好ましくは5~35℃の反応温度で撹拌下に行われる。反応時間は、通常、0.3~4時間、より好ましくは0.5~3時間の範囲から採択すれば良い。
【実施例
【0048】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
実施例における化合物名を下記にまとめた。
【0050】
【表1】
【0051】
実施例1
メタノール6mlに、化合物1aを0.5mmol、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウムを1mmol、及び酢酸を1mmol仕込み、室温で2時間、撹拌することで、上記化合物1aと次亜塩素酸テトラメチルアンモニウムとを反応させた。得られた反応液について、生成物を、プロトン核磁気共鳴スペクトル(H-NMR)により、重クロロホルム中で測定し、δ: 3.83、2.75ppm付近に塩素置換したメチレン基の水素のピーク、δ:2.25ppm付近にアセチル基の水素のピーク、δ:3.62ppm付近に三置換炭素の水素のピークが確認でき、これが化合物2aであることを確認した。化合物2aの収率は90%であった。
【0052】
実施例2
実施例1において、原料化合物を化合物1aに代えて化合物1bを用いる以外は、該実施例1と同様に実施した。得られた反応液について、生成物を、H-NMRにより、重クロロホルム中で測定し、化合物2bであることを確認した。化合物2bの収率は45%であった。また、この反応液には、他に、化合物3bが収率12%で含有されていた。
【0053】
実施例3
実施例1において、原料化合物を化合物1aに代えて化合物1bを用い、さらに、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウムを次亜塩素酸テトラエチルアンモニウムに代える以外は、該実施例1と同様に実施した。得られた反応液について、生成物を、H-NMRにより、重クロロホルム中で測定し、化合物2bであることを確認した。化合物2bの収率は26%であった。また、この反応液には、他に、化合物3bが収率36%で含有されていた。
【0054】
実施例4
メタノール4mlとアセトニトリル2mlの混合溶媒に、化合物1cを0.5mmol、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウムを1mmol、及び酢酸を1mmol仕込み、室温で4時間、撹拌することで、上記化合物1cと次亜塩素酸テトラメチルアンモニウムとを反応させた。得られた反応液について、生成物を、H-NMRにより、重クロロホルム中で測定し、化合物2cであることを確認した。化合物2cの収率は59%であった。
【0055】
実施例5
実施例1と同様な操作を実施して得られた、化合物2aを含有する反応液に引き続き、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)を2mmol加えて、室温で3時間撹拌した。得られた反応液について、生成物を、H-NMRにより、重クロロホルム中で測定し、δ: 5.67、5.55ppm付近にビニル基の水素のピーク、δ:2.30ppm付近にアセチル基の水素のピークが確認でき、これが化合物3aであることを確認した。化合物3aの収率は、化合物1aを基準に68%であった。