(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】アルデヒド捕捉剤
(51)【国際特許分類】
A61L 9/01 20060101AFI20221226BHJP
C07C 239/20 20060101ALN20221226BHJP
【FI】
A61L9/01 K
C07C239/20
(21)【出願番号】P 2017245501
(22)【出願日】2017-12-21
【審査請求日】2020-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2016254725
(32)【優先日】2016-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】須藤 幸徳
(72)【発明者】
【氏名】増田 隆洋
(72)【発明者】
【氏名】小林 修
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 拓里
(72)【発明者】
【氏名】平井 憲次
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05112741(US,A)
【文献】国際公開第2001/081367(WO,A2)
【文献】特開2011-173070(JP,A)
【文献】特開2012-224608(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0275913(US,A1)
【文献】特開2005-233613(JP,A)
【文献】特開2003-287480(JP,A)
【文献】特開2014-142197(JP,A)
【文献】特開2007-333692(JP,A)
【文献】特開2010-046665(JP,A)
【文献】NISHIKAWA Harumitsu et al.,Properties of Apatite Absorbent Modified with O-methylhydroxylamine for Gaseous Aldehyde,Journal of the Society of Inorganic Materials, Japan,2011年,Vol.18, No.353,p.191-195,ISSN: 1345-3769, 特に、Abstract, Results and Discussion
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/01
C07C 239/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される1種以上のO-置換モノヒドロキシルアミン又はその化学的に許容される無機酸若しくは有機酸の塩
が、水に不溶性の担体に担持されていることを特徴と
し、ガス状アルデヒドを捕捉するアルデヒド捕捉剤。
【化1】
[上記一般式(1)において、R
1は、化学的に許容される任意の位置に、少なくとも一つのカルボキシ基を有し、尚且つ更にフェニル基を有していてもよい、メチル基又はエチル基を表す。]
【請求項2】
一般式(1)において、R
1が、カルボキシメチル基、1-カルボキシエチル基、2-カルボキシエチル基、α-カルボキシベンジル基、α-カルボキシフェネチル基、又はβ-カルボキシフェネチル基のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のアルデヒド捕捉剤。
【請求項3】
前記の下記一般式(1)で表される1種以上のO-置換モノヒドロキシルアミン又はその化学的に許容される無機酸若しくは有機酸の塩が、(アミノオキシ)酢酸である、請求項1に記載のアルデヒド捕捉剤。
【請求項4】
請求項1乃至
3に記載のアルデヒド捕捉剤をアルデヒド発生源に対して使用することを特徴とするアルデヒドの除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルデヒド類の捕捉剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アセトアルデヒドやホルムアルデヒド等のアルデヒド類は、生活環境における代表的な臭気物質であり、臭い閾値が極めて低いために低濃度でも不快臭の原因となる。これらのアルデヒド類は屋内や自動車内において合成樹脂、合板、タバコの煙等から発生し、シックハウス症候群やシックカー症候群の原因となることが知られている。また、これらのアルデヒド類は発癌性も疑われており、人が日常的にこれらに曝されると、健康を害するリスクがある。そのため、厚生労働省により室内濃度指針値として、アセトアルデヒドは0.03ppm、ホルムアルデヒドは0.08ppmと規定されている。したがって、アルデヒド類を速やかに且つ持続的に除去する手段が求められている。
【0003】
アセトアルデヒドやホルムアルデヒド等の低級アルデヒドは沸点が低いため、消臭剤として汎用されるシリカゲルや活性炭等の無機系多孔質材では捕捉効率が低い。そこで、ヒドラジン誘導体、アミン、アミノ酸、又は尿素誘導体等からなるアルデヒド捕捉剤とアルデヒド類を化学反応させることによりアルデヒド類を捕捉する方法が開示されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0004】
しかしながら、これら特許文献に記載の方法は、捕捉効率が不十分である、捕捉剤自体が臭気源となる、又は一旦アルデヒド類を捕捉しても経時的にアルデヒド類を再放出する等の問題があった。また、これら特許文献に記載のアルデヒド捕捉剤をシックハウス症候群やシックカー症候群を予防する目的で住居内や自動車内で使用する場合、これらの場所は夏場等に高温になるため、性能が低下する点が問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平4-358536号公報
【文献】特開平11-4879号公報
【文献】特開2012-120708公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであって、アルデヒド類を速やかに且つ持続的に捕捉するアルデヒド捕捉剤を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、特定のO-置換モノヒドロキシルアミン又はこれらの化学的に許容される塩を含むアルデヒド捕捉剤がアルデヒド類を速やかに且つ持続的に捕捉することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の要旨を有するものである。
【0009】
[1]
1種以上のO-置換モノヒドロキシルアミン又はその化学的に許容される塩を含むことを特徴とするアルデヒド捕捉剤。
【0010】
[2]
下記一般式(1)で表される1種以上のO-置換モノヒドロキシルアミン又はその化学的に許容される塩を含むことを特徴とする[1]に記載のアルデヒド捕捉剤。
【0011】
【0012】
[上記一般式(1)において、R1は、化学的に許容される任意の位置に、
ハロゲン原子;
炭素数1~6のアルキルオキシ基;
炭素数1~6のハロアルキル基;
炭素数1~6のハロアルキルオキシ基;
カルボキシ基;
ヒドロキシ基;
メルカプト基;
シアノ基;
ニトロ基;
ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルキルオキシ基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のハロアルキルオキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シアノ基若しくはニトロ基で置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基;
ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルキルオキシ基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のハロアルキルオキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シアノ基若しくはニトロ基で置換されていてもよい炭素数4~14のヘテロアリール基;
下記一般式(2)で表されるアルコキシカルボニル基;
及び
下記一般式(3)で表されるカルバモイル基;
からなる群より選ばれる1つ以上の置換基で置換されていてもよい炭素数1~18の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基を表す。]
【0013】
【0014】
[上記一般式(2)において、R2は、化学的に許容される任意の位置に、
カルボキシ基;
ヒドロキシ基;
メルカプト基;
ハロゲン原子;
炭素数1~6のアルキルオキシ基;
炭素数1~6のハロアルキルオキシ基;
炭素数6~14のアリール基;
及び
炭素数4~14のヘテロアリール基;
からなる群より選ばれる1つ以上の置換基で置換されていてもよい炭素数1~18の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基を表す。]
【0015】
【0016】
[上記一般式(3)において、R3は、同一又は相異なっていてもよく、各々独立して、化学的に許容される任意の位置に、
カルボキシ基;
ヒドロキシ基;
メルカプト基;
ハロゲン原子;
炭素数1~6のアルキルオキシ基;
炭素数1~6のハロアルキルオキシ基;
炭素数6~14のアリール基;
及び
炭素数4~14のヘテロアリール基;
からなる群より選ばれる1つ以上の置換基で置換されていてもよい炭素数1~18の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、
炭素数6~14のアリール基、
炭素数4~14のヘテロアリール基、
又は
水素原子を表す。]
[3]
一般式(1)において、R1が、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ベンジル基、2-ピリジルメチル基、3-ピリジルメチル基、4-ピリジルメチル基、カルボキシメチル基、1-カルボキシエチル基、2-カルボキシエチル基、1-カルボキシプロピル基、2-カルボキシプロピル基、3-カルボキシプロピル基、α-カルボキシベンジル基、α-カルボキシフェネチル基、β-カルボキシフェネチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、1-カルボキシ-2-ヒドロキシエチル基、α-(メトキシカルボニル)ベンジル基、α-(メトキシカルボニル)フェネチル基、β-(メトキシカルボニル)フェネチル基、カルバモイルメチル基、N-フェニルカルバモイルメチル基、N-(2-カルボキシフェニル)カルバモイルメチル基、N-(3-カルボキシフェニル)カルバモイルメチル基、N-(4-カルボキシフェニル)カルバモイルメチル基又はN-(2,6-ジメチルフェニル)カルバモイルメチル基のいずれかであることを特徴とする[1]又は[2]に記載のアルデヒド捕捉剤。
【0017】
[4]
[1]乃至[3]のいずれかに記載のアルデヒド捕捉剤をアルデヒド発生源に対して使用することを特徴とするアルデヒドの除去方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明のアルデヒド捕捉剤は、アルデヒド類を速やかに且つ持続的に捕捉する。その結果、人体に有害なアルデヒド類を低減し、ヒトの生活環境を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のアルデヒド捕捉剤は、1種以上のO-置換モノヒドロキシルアミン又はその化学的に許容される塩を含むことをその特徴とする。
【0020】
上記一般式(1)において、R1は、化学的に許容される任意の位置に、
ハロゲン原子;
炭素数1~6のアルキルオキシ基;
炭素数1~6のハロアルキル基;
炭素数1~6のハロアルキルオキシ基;
カルボキシ基;
ヒドロキシ基;
メルカプト基;
シアノ基;
ニトロ基;
ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルキルオキシ基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のハロアルキルオキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シアノ基若しくはニトロ基で置換されていてもよい炭素数6~14のアリール基;
ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルキルオキシ基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のハロアルキルオキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シアノ基若しくはニトロ基で置換されていてもよい炭素数4~14のヘテロアリール基;
下記一般式(2)で表されるアルコキシカルボニル基;
及び
下記一般式(3)で表されるカルバモイル基;
からなる群より選ばれる1つ以上の置換基で置換されていてもよい炭素数1~18の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基を表す。
【0021】
【0022】
[上記一般式(2)において、R2は、化学的に許容される任意の位置に、
カルボキシ基;
ヒドロキシ基;
メルカプト基;
ハロゲン原子;
炭素数1~6のアルキルオキシ基;
炭素数1~6のハロアルキルオキシ基;
炭素数6~14のアリール基;
及び
炭素数4~14のヘテロアリール基;
からなる群より選ばれる1つ以上の置換基で置換されていてもよい炭素数1~18の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基を表す。]
【0023】
【0024】
[上記一般式(3)において、R3は、同一又は相異なっていてもよく、各々独立して、化学的に許容される任意の位置に、
カルボキシ基;
ヒドロキシ基;
メルカプト基;
ハロゲン原子;
炭素数1~6のアルキルオキシ基;
炭素数1~6のハロアルキルオキシ基;
炭素数6~14のアリール基;
及び
炭素数4~14のヘテロアリール基;
からなる群より選ばれる1つ以上の置換基で置換されていてもよい炭素数1~18の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、
炭素数6~14のアリール基、
炭素数4~14のヘテロアリール基、
又は
水素原子を表す。]
炭素数1~18の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基(セチル基)、ヘプタデシル基、オクタデシル基(ステアリル基)、オレイル基、エライジル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、3-メチルブチル基、2,2-ジメチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、2-エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等が挙げられる。
【0025】
該アルキル基は、ハロゲン原子、カルボキシ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~6のアルキルオキシ基、炭素数1~6のハロアルキル基、炭素数1~6のハロアルキルオキシ基、炭素数6~14のアリール基、炭素数4~14のヘテロアリール基、一般式(2)で表されるアルコキシカルボニル基、及び/又は一般式(3)で表されるカルバモイル基で置換されていてもよく、これらの置換基としては、以下に例示する置換基を挙げることができる。
【0026】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等を例示することができる。
【0027】
炭素数1~6のアルキルオキシ基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよく、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、3-メチルブチルオキシ基、2,2-ジメチルプロピルオキシ基、1,1-ジメチルプロピルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等を例示することができる。
【0028】
炭素数1~6のハロアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよく、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、3-フルオロプロピル基、1-(トリフルオロメチル)-2,2,2-トリフルオロエチル基等を例示することができる。
【0029】
炭素数1~6のハロアルキルオキシ基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよく、ジフルオロメチルオキシ基、トリフルオロメチルオキシ基、2,2-ジフルオロエチルオキシ基、2,2,2-トリフルオロエチルオキシ基、3-フルオロプロピルオキシ基、1-(トリフルオロメチル)-2,2,2-トリフルオロエチルオキシ基等を例示することができる。
【0030】
炭素数6~14のアリール基及び炭素数4~14のヘテロアリール基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、ビニルフェニル基、ビフェニリル基、フェナントリル基、ピロリル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基等が挙げられる。
【0031】
該アリール基及びヘテロアリール基は、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルキルオキシ基、炭素数1~6のハロアルキル基及び/又は炭素数1~6のハロアルキルオキシ基で置換されていてもよく、これらの置換基としては、以下に例示する置換基を挙げることができる。
【0032】
上記一般式(2)で表されるアルコキシカルボニル基としては、特に限定されないが、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、sec-ブチルオキシカルボニル基、tert-ブチルオキシカルボニル基、ジフルオロメチルオキシカルボニル基、トリフルオロメチルオキシカルボニル基、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、ピリジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0033】
上記一般式(3)で表されるカルバモイル基としては、特に限定されないが、例えば、カルバモイル基、N-メチルカルバモイル基、N-エチルカルバモイル基、N-プロピルカルバモイル基、N-イソプロピルカルバモイル基、N-ブチルカルバモイル基、N-イソブチルカルバモイル基、N-(sec-ブチル)カルバモイル基、N-(tert-ブチル)カルバモイル基、N-ジフルオロメチルカルバモイル基、N-トリフルオロメチルカルバモイル基、N-フェニルカルバモイル基、N-ナフチルカルバモイル基、N-ピリジルカルバモイル基、N,N-ジメチルカルバモイル基、N,N-ジエチルカルバモイル基、N,N-ジプロピルカルバモイル基、N,N-ジイソプロピルカルバモイル基、N,N-ジブチルカルバモイル基、N,N-ジイソブチルカルバモイル基、N,N-ジ(sec-ブチル)カルバモイル基、N,N-ジ(tert-ブチル)カルバモイル基、N,N-ビス(ジフルオロメチル)カルバモイル基、N,N-ビス(トリフルオロメチル)カルバモイル基、N,N-ジフェニルカルバモイル基、N,N-ジナフチルカルバモイル基、N,N-ジピリジルカルバモイル基等が挙げられる。
【0034】
炭素数1~6のアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、3-メチルブチル基、2,2-ジメチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、2-エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等を例示することができる。
【0035】
炭素数1~6のアルキルオキシ基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよく、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、3-メチルブチルオキシ基、2,2-ジメチルプロピルオキシ基、1,1-ジメチルプロピルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等を例示することができる。
【0036】
炭素数1~6のハロアルキル基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよく、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、3-フルオロプロピル基、1-(トリフルオロメチル)-2,2,2-トリフルオロエチル基等を例示することができる。
【0037】
炭素数1~6のハロアルキルオキシ基としては、直鎖状、分岐状又は環状のいずれであってもよく、ジフルオロメチルオキシ基、トリフルオロメチルオキシ基、2,2-ジフルオロエチルオキシ基、2,2,2-トリフルオロエチルオキシ基、3-フルオロプロピルオキシ基、1-(トリフルオロメチル)-2,2,2-トリフルオロエチルオキシ基等を例示することができる。
【0038】
これらのうち、一般式(1)において、R1が、カルボキシ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、炭素数6~14のアリール基又は炭素数4~14のヘテロアリール基で置換されていてもよい炭素数1~8の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基であるO-置換モノヒドロキシルアミンが好しく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ベンジル基、2-ピリジルメチル基、3-ピリジルメチル基、4-ピリジルメチル基、カルボキシメチル基、1-カルボキシエチル基、1-カルボキシプロピル基、3-カルボキシプロピル基、α-カルボキシベンジル基、α-カルボキシフェネチル基、β-カルボキシフェネチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、1-カルボキシ-2-ヒドロキシエチル基、α-(メトキシカルボニル)ベンジル基、α-(メトキシカルボニル)フェネチル基、カルバモイルメチル基、β-(メトキシカルボニル)フェネチル基、カルバモイルメチル基、N-フェニルカルバモイルメチル基、N-(2-カルボキシフェニル)カルバモイルメチル基、N-(3-カルボキシフェニル)カルバモイルメチル基、N-(4-カルボキシフェニル)カルバモイルメチル基又はN-(2,6-ジメチルフェニル)カルバモイルメチル基のいずれかであるO-置換モノヒドロキシルアミンが特に好ましい。
【0039】
上記のO-置換モノヒドロキシルアミンは一部又は全てが無機酸又は有機酸との化学的に許容される塩となっていてもよい。塩の種類としては、特に限定されないが、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、過塩素酸塩、ケイ酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、安息香酸塩、トシル酸塩等の有機酸塩が挙げられ、安価である点で無機酸塩が好ましく、塩酸塩がさらに好ましい。
【0040】
また、O-置換モノヒドロキシルアミンがアミノ基を含む場合も、当該アミノ基の一部又は全てが上記の無機酸又は有機酸との化学的に許容される塩となっていてもよい。
【0041】
一方、O-置換モノヒドロキシルアミンがカルボキシ基を含む場合は、当該カルボキシ基が分子内のヒドロキシルアミノ基やアミノ基と分子内塩を形成してもよい。また、当該カルボキシ基の一部又は全てがカルボン酸塩となっていてもよい。カルボン酸塩の種類としては、特に限定されないが、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0042】
本発明のアルデヒド捕捉剤は、目的、用途に応じて任意の形態で使用することができる。例えば、O-置換モノヒドロキシルアミン又はその化学的に許容される塩(以下、「O-置換モノヒドロキシルアミン類」という。)を任意の溶媒に溶解させて液状アルデヒド捕捉剤として使用したり、O-置換モノヒドロキシルアミン類又は前記の液状アルデヒド捕捉剤を任意の担体に担持し、固体状アルデヒド捕捉剤として使用したり、又はゴム等に練り込んで使用することができる。また、これらの捕捉剤を合板や自動車天井材等のアルデヒド発生源となる材料に適用することで、当該材料から環境中へのアルデヒド類放出を抑制することができる。
【0043】
本発明の液状アルデヒド捕捉剤を調製する際の溶媒へのO-置換モノヒドロキシルアミン類の溶解量は、目的に応じて任意に調節可能であり、特に限定するものではないが、本発明の液状アルデヒド捕捉剤に対して1~50重量%の範囲が好ましく、5~30重量%の範囲がさらに好ましい。
【0044】
本発明の固体状アルデヒド捕捉剤を調製する際にO-置換モノヒドロキシルアミン類を担持する担体としては、水に不溶性のものであれば特に制限なく用いることができる。例えば、高分子担体として、ポリスチレン、架橋ポリスチレン等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン等のポリ(ハロゲン化オレフィン)、ポリアクリロニトリル等のニトリル系ポリマー、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル系ポリマー、セルロース、アガロース、デキストラン等の高分子量多糖類等が挙げられ、無機担体として、活性炭、シリカゲル、珪藻土、ヒドロキシアパタイト、アルミナ、酸化チタン、マグネシア、ポリシロキサン等が挙げられる。
【0045】
ここで、架橋ポリスチレンとは、スチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン等のモノビニル芳香族化合物とジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジビニルナフタレン、トリビニルベンゼン、ビスビニルジフェニル、ビスビニルフェニルエタン等のポリビニル芳香族化合物との架橋共重合体を主体とするものであり、これらの共重合体にグリセロールメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート等のメタクリル酸エステルが共重合されていてもよい。
【0046】
本発明の固体状アルデヒド捕捉剤の調製において用いられる担体の形状としては、特に限定するものではないが、例えば、球状(例えば、球状粒子等)、粒状、繊維状、顆粒状、モノリスカラム、中空糸、膜状(例えば、平膜など)等の一般的に分離基材として使用される形状が利用可能であり、これらのうち、球状、膜状、粒状、顆粒状、又は繊維状のものが好ましい。球状、粒状、又は顆粒状担体は、カラム法やバッチ法で使用する際、その使用体積を自由に設定できることから、特に好ましく用いられる。球状、粒状、又は顆粒状担体の粒子サイズとしては、通常、平均粒径1μm~10mmの範囲のものを用いることができるが、2μm~1mmの範囲が好ましい。
【0047】
本発明の固体状アルデヒド捕捉剤の調製において用いられる担体は多孔質でもよいし、無孔質でもよい。多孔質担体の平均細孔径としては、通常、1nm~1μmのものを用いることができるが、アルデヒド捕捉速度の点で1nm~300nmの範囲が好ましい。
【0048】
本発明の固体状アルデヒド捕捉剤を調製する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、本発明の液状アルデヒド捕捉剤又はO-置換モノヒドロキシルアミン類を担体に物理的に吸着させて固定化する方法が挙げられる。
【0049】
O-置換モノヒドロキシルアミン類を物理的に吸着させて固定化する方法としては、特に限定されないが、例えば、O-置換モノヒドロキシルアミン類を水等の溶媒に溶解させ、次いで上記した担体を加え、O-置換モノヒドロキシルアミン類を当該担体に含浸させて、さらに溶媒を留去する方法が挙げられる。
【0050】
担体へのO-置換モノヒドロキシルアミン類の担持量は、目的に応じて任意に調節可能であり、特に限定するものではないが、O-置換モノヒドロキシルアミン類が1~50重量%の範囲が好ましく、5~30重量%の範囲がさらに好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】実施例1~26及び比較例1~3における1分後のアセトアルデヒド捕捉率を示す図である。
【
図2】実施例28~31及び比較例4~5における残存アセトアルデヒド濃度を示す図である。
【
図3】実施例32~33及び比較例6~7における残存ホルムアルデヒド濃度を示す図である。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されるものではない。
【0053】
実施例1~26(水溶液中のアルデヒド捕捉試験)
O-置換モノヒドロキシルアミン類(0.23mmol)を水(5mL)に溶解し、アルデヒド捕捉剤を調製した。ここに、アセトアルデヒド(0.23mmol)及び内部標準物質としてジエチレングリコールジエチルエーテル(0.2重量%)を含有する水溶液5mLを混合した。1分後、5分後、10分後及び30分後に反応液の一部(0.2mL)を抜き出し、これに水素化ホウ素ナトリウム1mgを添加し、残存しているアセトアルデヒドをエタノールに還元した。この溶液をガスクロマトグラフ(GC-2014、島津製作所製)で分析し、エタノールとジエチレングリコールジエチルエーテルの面積比から残存アセトアルデヒド濃度を算出した。さらに、アルデヒド捕捉率を下式から算出した。
【0054】
アルデヒド捕捉率(%)=[(アセトアルデヒド初濃度-残存アセトアルデヒド濃度)÷アセトアルデヒド初濃度]×100。
【0055】
比較例1~3
O-置換モノヒドロキシルアミン類に代え、既存品であるケムキャッチH-6000HS(ヒドラジド系、大塚化学製)、ピペラジン(アミン系)、又はグリシン(アミノ酸系)を用いたこと以外は実施例1~26と同様に実施した。
【0056】
実施例1~26及び比較例1~3の結果を表1、表2(1分後から30分後の捕捉率)及び
図1(1分後の捕捉率)に示した。
【0057】
【0058】
【0059】
表1、表2及び
図1より明らかなように、本発明のアルデヒド捕捉剤は水溶液中において既存のアルデヒド捕捉剤と比較して、特に初期段階での高いアルデヒド捕捉性能を示した。
【0060】
実施例27
反応時間を24時間としたこと以外は実施例5と同様に実施した結果、24時間経過後もアセトアルデヒド捕捉率は99.9%であり、本発明のアルデヒド捕捉剤は長時間経過後も高いアルデヒド捕捉性能を維持した。
【0061】
実施例28~33(気相中のアルデヒド捕捉試験)
実施例5~7にて調製したアルデヒド捕捉剤0.5mLをアドバンテック製5Aろ紙(直径7cm)に滴下し、60℃で1時間乾燥した。このろ紙をテドラーバッグに封入して減圧脱気した後、100ppm(体積濃度)のアルデヒドガスを1L注入した。室温で1時間静置後、テドラーバッグ内のガスを2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)を担持したカートリッジ(製品名:プレセップ-C DNPH、和光純薬工業製)に吸着させた。このカートリッジからDNPH-アルデヒド縮合体を溶出(溶離液=アセトニトリル)し、溶出液中のDNPH-アルデヒド縮合体を液体クロマトグラフ(装置名:Agilent 1220 Infinity LC、アジレント・テクノロジー製)で定量して残存アルデヒド濃度を算出した。
【0062】
比較例4~9
O-置換モノヒドロキシルアミン類に代え、既存品であるケムキャッチH-6000HS(ヒドラジド系、大塚化学製)、ピペラジン(アミン系)又はグリシン(アミノ酸系)を用いたこと以外は実施例28~33と同様に実施した。
【0063】
実施例28~33及び比較例4~9の結果を表3及び
図2~3に示す。
【0064】
【0065】
実施例34
室温での静置時間を24時間としたこと以外は実施例28と同様に実施した結果、残存アセトアルデヒド濃度は0.9ppm(静置時間1時間)から0.2ppmまで低減し、本発明のアルデヒド捕捉剤は長時間経過後も高いアルデヒド捕捉性能を維持した。
【0066】
実施例35
実施例5にて調製したアルデヒド捕捉剤にシリカゲル(PSQ60B 富士シリシア化学製)を添加し、水を減圧留去して60℃で1時間乾燥した(アルコキシアミン担持量=3重量%)。この紛体0.1gをテドラーバッグに封入して減圧脱気した後、100ppm(体積濃度)のアルデヒドガスを1L注入した。室温で1時間静置後、テドラーバッグ内のガスを実施例28~33と同様に定量した結果、残存アルデヒド濃度は0.1ppmであった。
【0067】
比較例10
シリカゲルのみを捕捉剤としたこと以外は実施例35と同様に実施した結果、残存アルデヒド濃度は50.2ppmであった。
【0068】
表3、
図2~3、実施例35、及び比較例10より明らかなように、本発明のアルデヒド捕捉剤は気相中においても既存の捕捉剤と比較して高いアルデヒド捕捉性能を示した。
【0069】
実施例36(パーティクルボード由来のアルデヒド捕捉試験)
パーティクルボード(縦10cm、横10cm、厚さ1cm)に、(アミノオキシ)酢酸ヘミ塩酸塩を10重量%含有する捕捉剤の水溶液を22.2g/m2の割合で塗布し、室温で24時間乾燥させた。このパーティクルボードをテドラーバッグに空気1Lと共に封入し、60℃で1時間静置後、テドラーバッグ内のガスを実施例28~33と同様に定量した結果、アセトアルデヒド濃度は0.6ppm、ホルムアルデヒド濃度は0.1ppmであった。
【0070】
比較例11
捕捉剤を用いないこと以外は実施例36と同様に実施した結果、テドラーバッグ内のアセトアルデヒド濃度は14.9ppm、ホルムアルデヒド濃度は0.6ppmであった。
【0071】
実施例37(ウレタンフォーム由来のアルデヒド捕捉試験)
ウレタンフォーム(縦4cm、横5cm、厚さ4cm)に、(アミノオキシ)酢酸を5重量%含有する捕捉剤の水溶液を22.2g/m2の割合で塗布し、室温で24時間乾燥させた。このウレタンフォームをテドラーバッグに空気1Lと共に封入し、65℃で2時間静置後、テドラーバッグ内のガスを実施例28~33と同様に定量した結果、アセトアルデヒド濃度は0.1ppm未満、ホルムアルデヒド濃度は0.1ppmであった。
【0072】
比較例12
捕捉剤を用いないこと以外は実施例37と同様に実施した結果、テドラーバッグ内のアセトアルデヒド濃度は0.3ppm、ホルムアルデヒド濃度は0.8ppmであった。
【0073】
比較例13
捕捉剤として、(アミノオキシ)酢酸水溶液の代わりにケムキャッチH-6000HS(大塚化学製)水溶液を用いたこと以外は実施例37と同様に実施した結果、テドラーバッグ内のアセトアルデヒド濃度は0.3ppm、ホルムアルデヒド濃度は0.2ppmであった。
【0074】
実施例36~37と比較例11~13より、本発明のアルデヒド捕捉剤はパーティクルボードやウレタンフォームのようなアルデヒド発生源に適用することで、アルデヒド発生量を低減することができ、且つ既存のアルデヒド捕捉剤と比較して優れたアルデヒド捕捉効果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明のアルデヒド捕捉剤は、アルデヒド類を速やかに且つ持続的に捕捉する。その結果、人体に有害なアルデヒド類を低減し、ヒトの生活環境を改善することができる。