(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】混合ガス供給装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G05D 11/13 20060101AFI20221226BHJP
B01J 4/00 20060101ALI20221226BHJP
F17D 1/02 20060101ALI20221226BHJP
B01F 23/10 20220101ALI20221226BHJP
B01F 35/80 20220101ALI20221226BHJP
【FI】
G05D11/13 A
B01J4/00 102
F17D1/02
B01F23/10
B01F35/80
(21)【出願番号】P 2020067616
(22)【出願日】2020-04-03
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【氏名又は名称】木戸 良彦
(73)【特許権者】
【識別番号】593027967
【氏名又は名称】大陽日酸エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】古村 直規
(72)【発明者】
【氏名】藤井 淳弘
(72)【発明者】
【氏名】西野 元博
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-306720(JP,A)
【文献】特開2013-119045(JP,A)
【文献】特開2012-113581(JP,A)
【文献】特開2006-266384(JP,A)
【文献】特開平09-094451(JP,A)
【文献】特開2008-252073(JP,A)
【文献】特開2006-086392(JP,A)
【文献】特開2004-207713(JP,A)
【文献】特開2000-182962(JP,A)
【文献】特開平05-068866(JP,A)
【文献】特開平11-002400(JP,A)
【文献】特開平09-317999(JP,A)
【文献】特開平09-269100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 35/83
B01F 23/10
B01F 25/40
B01J 4/00
F17D 1/02-075
G05D 11/00-16
H01L 21/205
H01S 3/036
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の原料ガスを所定の割合で混合して供給する混合ガス供給装置であって、
複数の原料ガス供給経路と、
各原料ガス供給経路から供給される複数の原料ガスを合流させて混合ガスとするガス合流部と、
混合ガスを使用先に供給するための混合ガス供給経路と、を備え、
前記原料ガス供給経路の一つが複数に分岐され、各分岐経路にそれぞれ流量計測器が設けられ、
他の原料ガス供給経路も同様に複数に分岐され、各分岐経路にそれぞれ流量調整器が設けられ、
前記流量調整器は、対応する前記流量計測器からの信号を受信可能に構成され、
前記流量計測器は、検出した流量に応じて、前記流量計測器の計測可能な流量の上限値で割って得られる流量比を示す信号を対応する前記流量調整器に送信し、
前記流量調整器は、前記信号を受信すると、原料ガスの流量を、前記流量調整器の調整可能な流量の上限値に前記流量比を掛けて得られる流量に調整し、
前記原料ガス供給経路の一つの分岐経路に設けられた前記流量計測器の検出した流量が、あらかじめ設定された第1流量を上回ると、隣接する分岐経路の原料ガスを流し始め、 前記第1流量よりも少ないあらかじめ設定された第2流量を下回ると、隣接する分岐経路の原料ガスの流れを遮断することを特徴とする混合ガス供給装置。
【請求項2】
複数の原料ガスを所定の割合で混合して供給する混合ガス供給方法であって、
複数の原料ガスを各原料ガス供給経路に供給し、
前記原料ガス供給経路の一つを複数に分岐し、各分岐経路にそれぞれ流量計測器を設け、
他の原料ガス供給経路も同様に複数に分岐し、各分岐経路にそれぞれ流量調整器を設け、
前記流量計測器を介して一の原料ガスを供給し、前記流量計測器によって検出された流量に基づく出力信号を、入力信号として対応する流量調整器で他の原料ガスの流量を調整し、
前記原料ガス供給経路の一つの分岐経路に設けられた前記流量計測器の検出した流量が、あらかじめ設定された第1流量を上回ると、隣接する分岐経路の原料ガスを流し始め、
前記第1流量よりも少ないあらかじめ設定された第2流量を下回ると、隣接する分岐経路の原料ガスの流れを遮断し、
複数の原料ガスを合流させて混合ガスとする混合ガス供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合ガス供給装置及び方法に関し、詳しくは、複数のガスを所定の流量比率で混合して供給する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造の分野においては、様々な特殊材料ガスが使用されており、例えば、ウェハー上の結晶をエピタキシャル成長させるために、トリクロロシラン(TCS)と水素(H2)との混合ガスが用いられている。このような混合ガスは、使用量が変動しても混合比率が保たれた状態で製造・供給されることが望ましい。
【0003】
そのような技術としては、例えば、圧力調整弁と流量調整弁と遮断弁とが設けられた複数のガス供給経路を合流させ、圧力計を備えたバッファータンクにつなぎ、バッファータンク内の圧力に応じて各ガス供給経路の遮断弁を開閉制御する混合ガス供給装置が提案されている(特許文献1参照。)。
【0004】
また、流量検出手段と圧力調整部とが設けられたメインガス流通路と、流量調整手段が設けられた添加ガス流通路とを接続し、流量計が検出したメインガスの流量に基づいて、添加ガスの流量を流量調整手段が制御し、添加ガスの圧力に応じて圧力調整部がメインガスの圧力を調整する混合ガス供給装置が提案されている(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許3863644号公報
【文献】特許5557827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、ガスの流量や圧力を安定させるべく、バッファータンクを設けて蓄圧しており、高圧ガス用設備を用いることなくガス混合をしたいという需要に応えることができていなかった。
【0007】
また、特許文献2に記載された発明でも、圧力調整部が構成として必須となり、圧力調整部における圧力損失が大きいので、原料となるガスを低圧のまま取り扱うことができなかった。
【0008】
そこで本発明は、高圧ガス用設備を用いることなく、複数の原料ガスを流量に依らず一定の混合比率を維持して混合でき、混合したガスを低圧のまま消費設備に供給可能な混合ガス供給装置及び方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の混合ガス供給装置は、複数の原料ガスを所定の割合で混合して供給する混合ガス供給装置であって、複数の原料ガス供給経路と、各原料ガス供給経路から供給される複数の原料ガスを合流させて混合ガスとするガス合流部と、混合ガスを使用先に供給するための混合ガス供給経路と、を備え、前記原料ガス供給経路の一つが複数に分岐され、各分岐経路にそれぞれ流量計測器が設けられ、他の原料ガス供給経路も同様に複数に分岐され、各分岐経路にそれぞれ流量調整器が設けられ、前記流量調整器は、対応する前記流量計測器からの信号を受信可能に構成され、前記流量計測器は、検出した流量に応じて、前記流量計測器の計測可能な流量の上限値で割って得られる流量比を示す信号を対応する前記流量調整器に送信し、前記流量調整器は、前記信号を受信すると、原料ガスの流量を、前記流量調整器の調整可能な流量の上限値に前記流量比を掛けて得られる流量に調整し、前記原料ガス供給経路の一つの分岐経路に設けられた前記流量計測器の検出した流量が、あらかじめ設定された第1流量を上回ると、隣接する分岐経路の原料ガスを流し始め、前記第1流量よりも少ないあらかじめ設定された第2流量を下回ると、隣接する分岐経路の原料ガスの流れを遮断することを特徴としている。
【0011】
また、上記目的を達成するため、本発明の混合ガス供給方法は、複数の原料ガスを所定の割合で混合して供給する混合ガス供給方法であって、複数の原料ガスを各原料ガス供給経路に供給し、前記原料ガス供給経路の一つを複数に分岐し、各分岐経路にそれぞれ流量計測器を設け、他の原料ガス供給経路も同様に複数に分岐し、各分岐経路にそれぞれ流量調整器を設け、前記流量計測器を介して一の原料ガスを供給し、前記流量計測器によって検出された流量に基づく出力信号を、入力信号として対応する流量調整器で他の原料ガスの流量を調整し、前記原料ガス供給経路の一つの分岐経路に設けられた前記流量計測器の検出した流量が、あらかじめ設定された第1流量を上回ると、隣接する分岐経路の原料ガスを流し始め、前記第1流量よりも少ないあらかじめ設定された第2流量を下回ると、隣接する分岐経路の原料ガスの流れを遮断し、複数の原料ガスを合流させて混合ガスとする
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の第1の混合ガス供給装置によれば、第1原料ガスの流量に対して、第2原料ガスの流量を、流量計測器の計測上限値と、流量調整器の調整上限値とによって決定して混合できるので、複数の原料ガスを流量に依らず一定の混合比率を維持して混合でき、混合したガスを低圧のまま消費設備に供給可能になる。
【0015】
また、本発明の第2の混合ガス供給装置によれば、1台の流量計測器と流量調整器では供給できない大流量の混合ガスが必要とされる場合に、複数台を多段式に接続することにより、供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1形態例を示す混合ガス供給装置の系統図である。
【
図2】混合ガス供給装置による各原料ガスの流量と混合比率との関係を示すグラフである。
【
図3】本発明の第2形態例を示す多段式の混合ガス供給装置の系統図である。
【
図4】
図3の多段式の混合ガス供給装置において、第1原料ガスの流量増加に伴って各第1ガス分岐経路に流入するガス流量の遷移を示すグラフである。
【
図5】
図3の多段式の混合ガス供給装置において、第1原料ガスの流量減少に伴って各第1ガス分岐経路に流入するガス流量の遷移を示すグラフである。
【
図6】他の多段式の混合ガス供給装置において、第1原料ガスの流量増加に伴って各第1ガス分岐経路に流入するガス流量の遷移を示すグラフである。
【
図7】他の多段式の混合ガス供給装置において、第1原料ガスの流量減少に伴って各第1ガス分岐経路に流入するガス流量の遷移を示すグラフである。
【
図8】本発明の変形例を示す混合ガス供給装置の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の第1形態例を示す混合ガス供給装置11の系統図である。本形態例では、トリクロロシラン(TCS)を水素(H
2)で20%に希釈した混合ガスを供給する場合に適用される場合について説明する。
【0018】
混合ガス供給装置11は、第1原料ガスであるトリクロロシラン(TCS)を供給するTCS供給部12から延びた第1ガス供給経路13と、第2原料ガスである水素(H2)を供給するH2供給部14から延びた第2ガス供給経路15と、TCSとH2とを混合した混合ガスを、混合ガスを使用する消費設備16に供給する混合ガス供給経路18とを備えており、第1ガス供給経路13と第2ガス供給経路15とは、合流部17で合流して混合ガス供給経路18に繋げられている。
【0019】
TCS供給部12には、供給するTCSを所定の温度に保つ温度調整装置12aが取り付けられている。蒸気圧が0.2MPa以上となると高圧ガス用設備としての取り扱いとなるため、温度調整装置12aにより、蒸気圧が0.2MPa以上となることを防ぐため53℃を超えないよう、蒸気圧0.183MPaとなる50℃にて温度調整している。
【0020】
第1ガス供給経路13には、流量計測器であるマスフローメータ19(MFM)と、ガス流を遮断可能な第1遮断弁20とが設けられており、第2ガス供給経路15には、流量調整器であるマスフローコントローラ21(MFC)と、ガス流を遮断可能な第2遮断弁22とが設けられている。
【0021】
合流部17と、マスフローメータ19と、第1遮断弁20と、マスフローコントローラ21と、第2遮断弁22とは、それぞれ、恒温槽23の内部に配置されて、内部のガス温度を一定に保つように構成されている。
【0022】
マスフローメータ19は、フルスケールと称される計測可能な流量の上限値(計測上限値)Hmと、計測精度が保証される流量の下限値(計測下限値)Lmとが、あらかじめ定まっている。本形態例では、50L/minが計測上限値Hmとなるマスフローメータ19を採用しており、計測下限値Lmは、一般的な機種であれば、計測上限値Hmの2%程度、高精度な機種であっても0.5%程度である。
【0023】
同様に、マスフローコントローラ21についても、フルスケールと称される調整可能な流量の上限値(調整上限値)Hcと、調整精度が保証される流量の下限値(調整下限値)Lcとが、あらかじめ定まっている。本形態例では、TCSを20%に希釈することから、200L/minが調整上限値Hcとなるマスフローコントローラ21を採用している。調整下限値Lcもマスフローメータ19と同様に、一般的な機種であれば、調整上限値Hcの2%程度、高精度な機種であっても0.5%程度となる。
【0024】
マスフローメータ19は、マスフローコントローラ21、第1遮断弁20及び第2遮断弁22のそれぞれに対して、電気的に接続されて情報伝達可能に形成されており、計測した第1ガス供給経路13のガス流量L1を、計測上限値Hmで割って得られる流量比に応じた0~5Vの範囲の電圧信号S(出力信号)に変換して送るように設定されている。
【0025】
すなわち、S=5・L1/Hmである。例えば、マスフローメータ19によって、計測されたTCSの流量が40L/minの場合、電圧信号Sは4Vとなる。このとき、第1ガス供給経路13におけるTCSの圧力は、マスフローメータ19の上流側では0.183MPaであったのが、マスフローメータ19の下流側では、配管等の圧力損失により、0.18MPaとなる。
【0026】
マスフローコントローラ21は、マスフローメータ19から受け取った電圧信号S(入力信号)に応じて第2ガス供給経路15の流量を調整するように形成されており、これにより調整される流量L2は、調整上限値Hcに電圧信号Sの最大値5Vに応じた流量比を掛けて得られる値になるように設定されている。
【0027】
すなわち、L2=Hc・S/5である。したがって、電圧信号Sが4Vの場合、H2の流量が160L/minとなるように調整される。このとき、H2の圧力は、第2ガス供給経路15において、マスフローコントローラ21の上流側では0.25MPaであったのが、マスフローコントローラ21の下流側では、混合されるTCS供給圧力となる(本形態例では、0.18MPa)。
【0028】
このように、合流部17に送り込まれるTCSとH2との割合は、L1/L2=Hm/Hcとなり、TCSの流量が変動しても、常に一定のガス混合比になるように、H2の流量が調整可能となる。
【0029】
また、第1遮断弁20及び第2遮断弁22は、それぞれ、マスフローメータ19が計測した流量L1が計測上限値Hmに達した、又は、計測下限値Lmを下回った場合の電圧信号Sを受け取ると、各弁を閉じて第1ガス供給経路13及び第2ガス供給経路15のガス流をそれぞれ遮断するように形成されている。
【0030】
図2は、第1形態例における混合ガス供給装置11による各原料ガスの流量と混合比率との関係を示すグラフで、TCSの流量を0~50L/minの範囲で10L/minずつ断続的に変化させた場合の各経路におけるガス流量を計測した結果を示している。
【0031】
図2に示されるように、時刻tにおける第1ガス供給経路13の流量L1(t)と、第2ガス供給経路15の流量L2(t)と、混合ガス供給経路18の流量L3(t)との関係を見ると、流量が一定の範囲では、L3(t)=L1(t)+L2(t)が成り立っており、かつ、L2(t)=4・L1(t)であることがわかる。
【0032】
したがって、TCSとH2の混合比率は、L1(t):L2(t)=20%:80%=Hm:Hcとなって、実際に、マスフローメータ19の計測上限値Hmとマスフローコントローラ21の調整上限値Hcとの関係で決まっていることがわかる。
【0033】
このように、本発明の混合ガス供給装置11によれば、第1原料ガスであるTCSの流量L1に対して、第2原料ガスであるH2の流量L2を、マスフローメータ19の計測上限値Hmと、マスフローコントローラ21の調整上限値Hcとによって決定して混合できるので、複数の原料ガスを流量に依らず一定の混合比率を維持して混合でき、混合したガスを低圧のまま消費設備に供給可能になる。
【0034】
また、第1ガス供給経路13にマスフローメータ19の計測上限値Hmから計測下限値Lmの範囲を外れた流量の第1原料ガスが流されても、第1ガス供給経路13を第1遮断弁20が、第2ガス供給経路15を第2遮断弁22が、それぞれ遮断するので、マスフローメータ19が精度よく計測可能な場合のみガスの混合を行うことができ、一定の混合比率を保つことができる。
【0035】
図3は、本発明の第2形態例を示す混合ガス供給装置30の系統図である。本形態例は、消費設備において、1台のマスフローメータとマスフローコントローラでは供給できない大流量の混合ガスが必要とされる場合に、複数台のマスフローメータとマスフローコントローラを多段式に接続するものである。
【0036】
図3に示されるように、本形態例における多段式の混合ガス供給装置30は、第1形態例とは恒温槽23内の構成が異なっており、TCSとH
2とを混合させる経路が3段、並列に配設されたものである。
【0037】
第1ガス供給経路13からは第1ガス分岐経路13a,13b,13cがそれぞれ延びており、第2ガス供給経路15からは第2ガス分岐経路15a,15b,15cがそれぞれ延びている。
【0038】
第1ガス分岐経路13aと第2ガス分岐経路15aとは、合流部17aで混合ガス供給経路18と接続しており、第1ガス分岐経路13bと第2ガス分岐経路15bとは、合流部17bで混合ガス供給経路18と接続しており、第1ガス分岐経路13cと第2ガス分岐経路15cとは、合流部17cで混合ガス供給経路18と接続している。
【0039】
また、混合ガス供給経路18において、合流部17bは、合流部17aよりも上流に配置されており、合流部17cは、合流部17bよりも上流に配置されている。
【0040】
第1ガス分岐経路13a,13b,13cには、それぞれ、マスフローメータ19a,19b,19cが取り付けられており、第2ガス分岐経路15a,15b,15cには、それぞれ、マスフローコントローラ21a,21b,21cが取り付けられている。また、第1ガス分岐経路13aには、マスフローメータ19aの上流に第1開閉弁31が、第1ガス分岐経路13bには、マスフローメータ19bの上流に第2開閉弁32が、第1ガス分岐経路13cには、マスフローメータ19cの上流に第3開閉弁33が取り付けられている。
【0041】
なお、マスフローメータ19a,19b,19cは、それぞれ同一のフルスケールである計測上限値Hmを有し、マスフローコントローラ21a,21b,21cは、それぞれ同一のフルスケールである調整上限値Hcを有している。
【0042】
マスフローメータ19aは、マスフローコントローラ21aと第2開閉弁32とのそれぞれに対して、電気的に接続されて情報伝達可能に形成されており、第1ガス分岐経路13aで計測したガス流量L1aの情報を、計測上限値Hmとの比に応じた0~5Vの範囲の電圧信号Saに変換して送るように設定されている。
【0043】
マスフローメータ19bは、マスフローコントローラ21bと第3開閉弁33とのそれぞれに対して、電気的に接続されて情報伝達可能に形成されており、第1ガス分岐経路13bで計測したガス流量L1bの情報を、計測上限値Hmとの比に応じた0~5Vの範囲の電圧信号Sbに変換して送るように設定されている。
【0044】
マスフローメータ19cは、マスフローコントローラ21cに対して、電気的に接続されて情報伝達可能に形成されており、第1ガス分岐経路13cで計測したガス流量L1cの情報を、計測上限値Hmとの比に応じた0~5Vの範囲の電圧信号Scに変換して送るように設定されている。
【0045】
マスフローコントローラ21aは、マスフローメータ19aから受け取った電圧信号Saに応じて第2ガス分岐経路15aの流量を調整するように形成されており、これにより調整される流量L2aは、調整上限値Hcに電圧信号Sの最大値5Vに対する割合を掛けて得られる量に設定されている。
【0046】
マスフローコントローラ21bは、マスフローメータ19bから受け取った電圧信号Sbに応じて第2ガス分岐経路15bの流量を調整するように形成されており、これにより調整される流量L2bは、調整上限値Hcに電圧信号Sの最大値5Vに対する割合を掛けて得られる量に設定されている。
【0047】
マスフローコントローラ21cは、マスフローメータ19cから受け取った電圧信号Scに応じて第2ガス分岐経路15cの流量を調整するように形成されており、これにより調整される流量L2cは、調整上限値Hcに電圧信号Scの最大値5Vに対する割合を掛けて得られる量に設定されている。
【0048】
多段式の混合ガス供給装置における開閉弁の開閉動作について、次段の開閉弁の開閉設定を1つの閾値で制御すると、開閉時に流量変動が大きくなり濃度変動がおきてしまうため、開時、閉時の閾値をそれぞれ別に設定することで、流量変動を小さくすることができる。
【0049】
具体的には、第2開閉弁32は、電圧信号Saの80%までは機器の自己制御とし、マスフローメータ19aから受け取った電圧信号Saが最大値5Vの80%(4V)を超えると第2開閉弁32を開き、電圧信号Sbの最大値の20%(1V)を下回ると弁を閉じるように設定されている。
【0050】
第3開閉弁33は、電圧信号Sbの75%までは機器の自己制御とし、マスフローメータ19bから受け取った電圧信号Sbが最大値5Vの75%(3.75V)を超えると弁を開き、電圧信号Scの最大値の25%(1.25V)を下回ると弁を閉じるように設定されている。
【0051】
多段式の混合ガス供給装置30による混合ガスの供給は、次のように行われる。
【0052】
第1開閉弁31を開き、TCS供給部12からTCSが第1ガス供給経路13に供給されると、まず、TCSが第1段目の第1ガス分岐経路13aに流れ込み、マスフローメータ19aがTCSの流量を計測して電圧信号Saを送る。
【0053】
マスフローコントローラ21aが電圧信号Saを受け取ると、マスフローコントローラ21aによって電圧信号Saに応じた流量のH2が、H2供給部14から第2ガス分岐経路15aに流されるので、TCSとH2とが合流部17aで混合されて混合ガス供給経路18に流され、混合ガス供給経路18を介して消費設備16に供給される。
【0054】
また、第1ガス分岐経路13aに流れ込むTCSの流量がマスフローメータ19aの計測上限値Hmの80%に達すると、第2開閉弁32がその電圧信号Saに反応して開放されるので、TCSが2段目の第1ガス分岐経路13bにも流れ込む。
【0055】
第1ガス分岐経路13bにTCSが流れると、マスフローコントローラ21bがTCSの流量を計測して電圧信号Sbを送る。マスフローメータ19bが電圧信号Sbを受け取ると、マスフローメータ19bによって電圧信号Sbに応じた流量のH2が、H2供給部14から第2ガス分岐経路15bに流されるので、TCSとH2とが合流部17bでも混合されて混合ガス供給経路18に流される。
【0056】
さらに、第1ガス分岐経路13bに流れ込むTCSの流量がマスフローメータ19bの計測上限値Hmの75%に達すると、第3開閉弁33がその電圧信号Sbに反応して開放されるので、TCSが3段目の第1ガス分岐経路13cにも流れ込む。
【0057】
第1ガス分岐経路13cにTCSが流れると、マスフローコントローラ21cがTCSの流量を計測して電圧信号Scを送る。マスフローメータ19cが電圧信号Scを受け取ると、マスフローメータ19cによって電圧信号Scに応じた流量のH2が、H2供給部14から第2ガス分岐経路15cに流されるので、TCSとH2とが合流部17cでも混合されて混合ガス供給経路18に流される。
【0058】
また、TCSの供給によって第2開閉弁32及び第3開閉弁33が開放されている状態で、第1ガス分岐経路13cに分配されて流れ込むTCSの流量がマスフローメータ19cの計測上限値Hmの25%にまで下がると、第3開閉弁33がその電圧信号Scに反応して閉鎖されるので、TCSが第1ガス分岐経路13cに流れなくなる。
【0059】
さらに、第1ガス分岐経路13bに分配されて流れ込むTCSの流量がマスフローメータ19bの計測上限値Hmの20%にまで下がると、第2開閉弁32がその電圧信号Sbに反応して閉鎖されるので、TCSが第1ガス分岐経路13bに流れなくなる。
【0060】
図4は、
図3の多段式の混合ガス供給装置30において、TCSの流量増加に伴って各第1ガス分岐経路13a,13b,13cに流入するガス流量の遷移を示すグラフであり、
図5は、
図3の多段式の混合ガス供給装置30において、TCSの流量減少に伴って各第1ガス分岐経路13a,13b,13cに流入するガス流量の遷移を示すグラフである。
【0061】
図4及び
図5において、各第1ガス分岐経路13a,13b,13cの流量を計測する各マスフローメータ19a,19b,19cの計測上限値Hmは、それぞれ50L/minに設定されている。
【0062】
図4に示されるように、TCSの流量を0/minから増加させると、0~40L/minの範囲では、第1ガス分岐経路13aのみ流入可能であるが、40L/min(Hmの80%)を超えたところで第2開閉弁32が開くので、第1ガス分岐経路13bにもTCSが流入可能になり、TCSの流量を2つの経路で分け合って第1ガス分岐経路13a及び第1ガス分岐経路13bの流量が20L/minまで下がる。
【0063】
さらにTCSの流量を増加させ、第1ガス分岐経路13a及び第1ガス分岐経路13bにおけるTCSの流量が37.5L/min(Hmの75%)を超えると、第3開閉弁33が開くので、第1ガス分岐経路13cにもTCSが流入可能になり、TCSの流量を3つの経路で分け合って第1ガス分岐経路13a,第1ガス分岐経路13b及び第1ガス分岐経路13cの流量は25L/minまで下がる。
【0064】
そして、さらに流量を増加させることで第1ガス分岐経路13a,13b,13cの流量がそれぞれ50L/minに達するので、TCSの流量を全体で150L/minまで精度よく増やすことが可能である。
【0065】
図5に示されるように、TCSの流量を150L/minから減少させると、150~40L/minの範囲では、第1ガス分岐経路13a,13b,13c全てで流入可能であるが、総流量が37.5L/min、つまり、各経路で12.5L/min(Hmの25%)を下回ると、第1ガス分岐経路13cで第3開閉弁33が閉じるので、第1ガス分岐経路13cにTCSが流入できなくなり、TCSの流量を2つの経路で分け合って第1ガス分岐経路13aの流量及び第1ガス分岐経路13bの流量は18.75L/minまで上がる。
【0066】
さらにTCSの流量を減少させ、第1ガス分岐経路13a及び第1ガス分岐経路13bにおけるTCSの総流量が20L/min、つまり、各経路で10L/min((Hmの20%)を下回ると、第1ガス分岐経路13bで第2開閉弁32が閉じるので、第1ガス分岐経路13aのみ流入可能になり、第1ガス分岐経路13aの流量は20L/minまで上がる。
【0067】
そして、さらに流量を減少させることで第1ガス分岐経路13aの流量が5L/minに達するので、TCSの流量を計測下限値Lmまで精度よく減らすことが可能である。
【0068】
このように、本発明の多段式の混合ガス供給装置30によれば、TCSとH2とを混合する経路を分岐させて複数段設け、TCSの流量増加に応じてTCSが流れる経路を順次開放することで、最大でマスフローメータ19a,19b,19cの各計測上限値Hmを合算した流量のTCSを流すことができるので、単一の経路では対応できない大流量の混合ガスを供給可能になる。
【0069】
また、二段目以降の第1ガス分岐経路13b,13cのそれぞれを前段のTCSの流量が所定の範囲を上回ったら開き、下回ったら閉じるように構成したことで、TCSが第1ガス分岐経路13a,13b,13cのいずれかに偏って流入するいわゆる片流れを防止できるので、TCSの流量を、計測上限値Hmを段数倍した値から計測下限値Lmの範囲で、H2と精度よく混合することができる。
【0070】
さらに、各段で混合が正しくされているかの濃度検定を行うことで、故障・異常箇所の検知も容易となる。
【0071】
なお、本形態例の多段式の混合ガス供給装置では、第1分岐経路及び第2分岐経路をそれぞれ3段ずつ設けているが、必ずしも3段である必要はなく、2段でもよいし、消費設備先の混合ガスの必要量に応じて4段以上設けてもよい。
【0072】
例えば、第1分岐経路及び第2分岐経路を8段設けた場合、TCSの流量増加又は減少に伴う各第1ガス分岐経路に流入するガス流量は、
図6及び
図7に示されるように遷移するので、第1原料ガスの流量を、マスフローメータの計測上限値を段数倍した値から計測下限値の範囲で、第2原料ガスと精度よく混合することができる。
【0073】
ここで、第2形態例では、開時の閾値を80%から75%、閉時の閾値を25%から20%へと段々と幅を絞っていくようにしているが、
図6及び
図7の場合は、各第1分岐経路に設けられた機器の自己制御幅はいずれも80%~40%の範囲に設定されている
【0074】
このように不感帯の設定については、マスフローメータ、マスフローコントローラのフルスケールや段数、供給する混合ガスの成分・比率によって適宜設けることができる。
【0075】
なお、本発明は、以上の形態例に限定されることなく、発明の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、本形態例では、原料ガスを、第1ガス供給経路と第2ガス供給経路との2つから供給しているが、原料ガスの供給経路は必ずしも2つである必要はなく、3つ以上の供給経路から原料ガスを供給するようにしてもよい。
【0076】
例えば、二酸化炭素(CO2)89%、ヘリウム(He)10%、窒素(N2)1%のレーザーガスを20L/minで供給する場合には、二酸化炭素を17.8L/minを計測上限値(フルスケール)とするマスフローメータを介して供給し、その信号に基づいて、ヘリウムを2L/minを調整上限値(フルスケール)とするマスフローメータを介して、窒素を0.2L/minを調整上限値(フルスケール)とするマスフローメータを介して供給することで、連続供給が可能となる。
【0077】
また、フッ素(F2)、クリプトン(Kr)、ネオン(Ne)等を混合するレーザーガスでも同様に適用でき、本発明は、高圧ガス用設備や圧力調整部を用いることなく、低蒸気圧ガスを混合して供給する場合に好適である。
【0078】
さらに、3つ以上の供給経路から原料ガスを供給する場合、同種の原料ガスを2つ以上の経路から供給してもよい。このようにマスフローメータとマスフローコントローラの連携台数を増やすことで、機器による流量誤差を小さくすることができる。
【0079】
また、第1形態例では、遮断弁を設けてマスフローメータの計測上限値Hmと計測下限値Lmとから外れた流量の場合にガス供給を遮断できるようにしているが、マスフローメータの計測下限値Lmから外れる場合には、
図8に示すように、混合ガス供給経路18に設けられたベント経路41に混合ガスを流すようにしてもよい。原料ガスの混合比率が保証されない場合に、消費設備16へ供給されることを避けることができる。ベント経路に開閉弁を設け、マスフローメータ19の計測下限値を下回る場合には、開閉弁を開けて、混合ガスをすべてベント経路41に流すようにしてもよいが、
図8に示すようにベント経路41にマスフローコントローラ42を設けてもよい。これにより、計測下限値Lmを下回っている電圧信号Sをマスフローコントローラ42が受信して、ベント経路に流れる流量を制御することができる。ただし、配管長が長い場合には変動差が生じるため制御が難しいので、マスフローメータ19が高精度な機種であり、計測下限値Lmが計測上限値Hmの0.5%のときには、マスフローコントローラ42のベントへの制御流量は、マスフローメータ19の計測下限値Lmよりも少し高めの流量を維持できる値を採用するのが好ましい。なお、第1形態例の遮断弁の機構と、本形態例のベント経路の機構を併用することも可能である。
【0080】
なお、原料ガスの混合比率を変更した場合には、所定の比率となるようなフルスケールを有するマスフローメータ、マスフローコントローラに適宜組合せを変更すればよい。
【符号の説明】
【0081】
11…混合ガス供給装置、12…TCS供給部、13…第1ガス供給経路、13a,13b,13c…第1ガス分岐経路、14…H2供給部、15…第2ガス供給経路、15a,15b,15c…第2ガス分岐経路、16…消費設備、17(17a,17b,17c)…合流部、18…混合ガス供給経路、19(19a,19b,19c)…マスフローメータ、20…第1遮断弁、21(21a,21b,21c)…マスフローコントローラ、22…第2遮断弁、23…恒温槽、30…混合ガス供給装置、31…第1開閉弁、32…第2開閉弁、33…第3開閉弁、41…ベント経路、42…マスフローコントローラ