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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/472 20060101AFI20221226BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20221226BHJP
   A61F 13/494 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
A61F13/472 200
A61F13/532 200
A61F13/494 100
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020094954
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021186281
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2021-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003247
【氏名又は名称】弁理士法人小澤知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 智之
(72)【発明者】
【氏名】北川 雅史
(72)【発明者】
【氏名】谷尾 俊幸
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-103719(JP,A)
【文献】特開2017-153999(JP,A)
【文献】特開2017-074281(JP,A)
【文献】特開2016-187474(JP,A)
【文献】特開2020-075044(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0254556(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する前後方向及び幅方向と、
着用者の膣口と対向する股下域と、
少なくともパルプを有する吸収コアと、
着用物品に接合するための接合部と、を有し、
前記股下域における前記吸収コアの前記幅方向の中心に対する両側のそれぞれに配置された一対の吸収隆起部と、前記吸収隆起部間に配置され、前記吸収隆起部よりも厚みが薄い吸収中央部と、を有する吸収性物品であって、
前記吸収隆起部は、前記吸収中央部よりも肌面側に隆起する肌側隆起領域と、前記吸収中央部よりも非肌面側に隆起する非肌側隆起領域と、を有する、吸収性物品。
【請求項2】
前記非肌側隆起領域の厚みは、前記肌側隆起領域の厚みよりも厚い、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記肌側隆起領域の吸収材料の密度は、前記肌側隆起領域の吸収材料の密度よりも高い、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収隆起部の幅は、前記吸収隆起部の厚みよりも長い、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記非肌側隆起領域の少なくとも一部は、前記接合部と重なる領域に設けられている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収コアよりも肌面側に位置する肌側シートと、前記肌側シートに付された接着剤と、を有しており、
前記吸収隆起部と重なる領域における前記接着剤の坪量は、前記吸収中央部と重なる領域における前記接着剤の坪量よりも高い、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収コアの前記幅方向の中央を覆うセンターシートと、前記センターシートよりも肌面側に位置し、前記吸収コアの前記幅方向の中心に対する両側のそれぞれに配置されたサイドシートと、少なくとも前記サイドシートを有し、かつ前記吸収コアよりも肌面側に位置する防漏カフと、を有し、
前記防漏カフは、少なくとも前記サイドシートが肌面側に起立可能な起立部と、前記起立部と前記前後方向に隣接する前後基点部と、前記起立部と前記幅方向に隣接する幅基点部と、を有し、
前記起立部の頂点は、前記起立部の外側部に位置し、
前記前後基点部は、前記吸収隆起部よりも前記前後方向の外側に位置し、
前記幅基点部の少なくとも一部は、前記吸収隆起部と重なる領域に位置する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記吸収コアの前記幅方向の中央を覆うセンターシートと、前記センターシートよりも肌面側に位置し、前記吸収コアの前記幅方向の中心に対する両側のそれぞれに配置されたサイドシートと、少なくとも前記サイドシートを有し、かつ前記吸収コアよりも肌面側に位置する防漏カフと、を有し、
前記防漏カフは、少なくとも前記サイドシートが肌面側に起立可能な起立部と、前記起立部と前記前後方向に隣接する前後基点部と、前記起立部と前記幅方向に隣接する幅基点部と、を有し、
前記起立部の頂点は、前記起立部の内側部に位置し、
前記前後基点部の少なくとも一部は、前記吸収隆起部よりも前記前後方向の外側に位置し、
前記幅基点部の少なくとも一部は、前記吸収隆起部の外側縁よりも前記幅方向の外側に位置する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記前後基点部は、前記吸収コアと重なる領域に配置されている、請求項7又は請求項8に記載の吸収性物品。
【請求項10】
少なくとも前記吸収コアが厚さ方向に圧縮され、かつ前記前後方向に延びる前後圧搾部を有し、
前記前後圧搾部の少なくとも一部は、前記起立部と重なる領域に配置されている、請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
後側域における前記幅方向の中心に配置され、前記吸収中央部よりも厚みが厚い吸収後部を有し、
前記吸収後部は、前記吸収中央部よりも肌面側に隆起する肌側後領域と、前記吸収中央部よりも非肌面側に隆起する非肌側後領域と、を有し、
前記肌側後領域の厚みは、前記非肌側後領域の厚みよりも厚い、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収コアにおいて肌面側に隆起する吸収隆起部を有する吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、吸収コアにおいて肌面側に隆起する吸収隆起部を有する吸収性物品が開示されている。特許文献1の吸収隆起部は、吸収コアの幅方向の側部と、吸収コアの幅方向の中央と、に設けられている。吸収コアの側部の吸収隆起部は、着用者の膣口よりも側方にフィットする位置に設けられており、膣口から側方に流れた体液を吸収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した吸収性物品には、以下の問題点がある。
股下域の吸収コアは、脚によって押圧され、幅方向の内側に向かう力を受ける。このとき、吸収コアは、幅方向に連続している領域で当該力を受け、幅方向に連続していていない領域(厚さ方向において吸収隆起部のみが配置された領域)が幅方向の内側に変形し易い。吸収隆起部が肌面側のみに隆起しているため、吸収コアの外側縁では、肌面側の領域が非肌面側の領域よりも幅方向の内側に傾斜する。加えて、太腿の内側面間の距離は、太ももの上部で最も幅が狭くなる部分と、当該最も狭くなる部分よりも上方において鼠蹊部にそって広がる部分と、を有する。太ももの上部で最も幅が狭くなる部分は、脂肪がつきやすく、当該最も狭くなる部分よりも上方の部分は、脂肪が付きにくく、主として骨と皮になり易いためである。そのため、吸収隆起部が肌面側のみに隆起している構成にあっては、吸収コアの外側部が最も幅が狭い部分に当接して内側に傾斜した状態で、下着と共に吸収性物品が引き上げられると、内側に傾斜した吸収コアの外側部と鼠蹊部の間に隙間が生じ、漏れが発生するおそれがある。
【0005】
また、着用者が立った姿勢や座った姿勢において、吸収コアに引き込まれた体液は、重力によって肌面側から非肌面側に移行しつつ、排泄口に近い幅方向の中央から側方に移行する。すなわち、吸収中央部から吸収隆起部に向かって幅方向の外側に移行する。厚さ方向において吸収隆起部の非肌面の位置と吸収中央部の非肌面の位置が一致しているため、吸収隆起部に移行した体液は、重力に逆らって肌面側に移動し難く、吸収隆起部内の非肌面側に溜まり易い。そのため、吸収隆起部の吸収容量を十分に生かすことができずに、横漏れが発生するおそれがあった。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、横漏れを抑制できる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様に係る吸収性物品は、互いに直交する前後方向及び幅方向と、着用者の膣口と対向する股下域と、少なくともパルプを有する吸収コアと、着用物品に接合するための接合部と、を有する。吸収性物品は、前記股下域における前記吸収コアの前記幅方向の中心に対する両側のそれぞれに配置された一対の吸収隆起部と、前記吸収隆起部間に配置され、前記吸収隆起部よりも厚みが薄い吸収中央部と、を有する。前記吸収隆起部は、前記吸収中央部よりも肌面側に隆起する肌側隆起領域と、前記吸収中央部よりも非肌面側に隆起する非肌側隆起領域と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る吸収性物品の肌面側から見た平面図である。
図2図2は、実施形態に係る吸収性物品の非肌面側から見た平面図である。
図3図3は、図1に示すA-A線に沿った断面図である。
図4図4は、図1に示すD-D線に沿った断面図である。
図5図5は、吸収コアの肌面側から見た平面図である。
図6図6は、吸収コアの非肌面側から見た平面図である。
図7図7は、図3に示す断面(図1に示すA-A線に沿った断面)を基準とした吸収コアの模式断面図である。
図8図8は、図3に示す断面(A-A線に沿った断面)を基準とした着用状態(非押圧状態)の模式断面図である。
図9図9は、図3に示す断面(A-A線に沿った断面)を基準とした着用状態(押圧状態)の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)実施形態の概要
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
一態様に係る吸収性物品は、互いに直交する前後方向及び幅方向と、着用者の膣口と対向する股下域と、少なくともパルプを有する吸収コアと、着用物品に接合するための接合部と、を有する。吸収性物品は、前記股下域における前記吸収コアの前記幅方向の中心に対する両側のそれぞれに配置された一対の吸収隆起部と、前記吸収隆起部間に配置され、前記吸収隆起部よりも厚みが薄い吸収中央部と、を有する。前記吸収隆起部は、前記吸収中央部よりも肌面側に隆起する肌側隆起領域と、前記吸収中央部よりも非肌面側に隆起する非肌側隆起領域と、を有する。吸収コアに引き込まれた体液は、幅方向において排泄口に近い中央から側方に移行する。すなわち、吸収中央部から吸収隆起部に向かって幅方向の外側に体液が移行する。このとき、吸収隆起部に移行した体液が重力によって非肌面側に移動した際に、非肌側隆起領域において体液を吸収でき、横漏れを抑制できる。
【0010】
好ましい態様によれば、前記非肌側隆起領域の厚みは、前記肌側隆起領域の厚みよりも厚い。本態様によれば、吸収隆起部内の非肌面側において体液を吸収できる吸収容量を確保できる。
【0011】
好ましい態様によれば、前記肌側隆起領域の吸収材料の密度は、前記肌側隆起領域の吸収材料の密度よりも高い。本態様によれば、非肌側隆起領域の吸収材料の密度が高いため、吸収コア内の粗密勾配によって非肌側隆起領域に体液をより引き込み易くなる。その結果、横漏れを抑制できる。
【0012】
好ましい態様によれば、前記吸収隆起部の幅は、前記吸収隆起部の厚みよりも長い。本態様によれば、吸収隆起部の幅が吸収隆起部の厚みよりも長いため、吸収隆起部の幅が吸収隆起部の厚みよりも短い形態と比較して、幅方向の外側から押圧された際に、吸収隆起部全体が内倒れし難くなる。よって、吸収コアの外側縁が太腿に沿って配置された状態を維持しやすく、漏れを抑制できる。
【0013】
好ましい態様によれば、前記非肌側隆起領域の少なくとも一部は、前記接合部と重なる領域に設けられている。本態様によれば、非肌側隆起領域は、吸収中央部よりも非肌面側に隆起しており、着用物品に対して押圧され易い。非肌側隆起領域と重なる領域に接合部が設けられていることにより、接合部が着用物品に対して強く当たって、着用物品に対する接合力を確保し易く、吸収性物品が着用物品から剥がれにくくなる。
【0014】
好ましい態様によれば、前記吸収コアよりも肌面側に位置する肌側シートと、前記肌側シートに付されたシート接着剤と、を有している。前記吸収隆起部と重なる領域における前記シート接着剤の坪量は、前記吸収中央部と重なる領域における前記シート接着剤の坪量よりも高い。本態様によれば、吸収隆起部と重なる領域のシート接着剤の坪量が高いため、当該シート接着剤によって吸収隆起部から肌面側への体液の移行を抑制でき、一旦吸収コアにおいて吸収した体液のリウェットを抑制できる。
【0015】
好ましい態様によれば、前記吸収性物品は、前記吸収コアの前記幅方向の中央を覆うセンターシートと、前記センターシートよりも肌面側に位置し、前記吸収コアの前記幅方向の中心に対する両側のそれぞれに配置されたサイドシートと、少なくとも前記サイドシートを有し、かつ前記吸収コアよりも肌面側に位置する防漏カフと、を有する。前記防漏カフは、少なくとも前記サイドシートが肌面側に起立可能な起立部と、前記起立部と前記前後方向に隣接する前後基点部と、前記起立部と前記幅方向に隣接する幅基点部と、を有する。起立部の頂点は、前記起立部の外側部に位置する。前記前後基点部は、前記吸収隆起部よりも前記前後方向の外側に位置する。前記幅基点部の少なくとも一部は、前記吸収隆起部と重なる領域に位置する。本態様によれば、幅方向に沿った断面視において、幅基点部から幅方向の外側に延びる起立部が立ち上がる。吸収性物品の肌面に排出された体液は、非肌面側の吸収コアに引き込まれると共に、吸収性物品の肌面を幅方向の外側に伝って幅基点部に到達することがある。このとき、幅基点部が吸収隆起部と重なる領域に配置されているため、幅基点部に到達した体液を吸収隆起部によって引き込むことができる。よって、幅基点部を超えて体液が拡散することを抑制し、横漏れを抑制できる。
【0016】
好ましい態様によれば、前記吸収性物品は、前記吸収コアの前記幅方向の中央を覆うセンターシートと、前記センターシートよりも肌面側に位置し、前記吸収コアの前記幅方向の中心に対する両側のそれぞれに配置されたサイドシートと、少なくとも前記サイドシートを有し、かつ前記吸収コアよりも肌面側に位置する防漏カフと、を有する。前記防漏カフは、少なくとも前記サイドシートが肌面側に起立可能な起立部と、前記起立部と前記前後方向に隣接する前後基点部と、前記起立部と前記幅方向に隣接する幅基点部と、を有する。前記起立部の頂点は、前記起立部の内側部に位置する。前記前後基点部の少なくとも一部は、前記吸収隆起部よりも前記前後方向の外側に位置する。前記幅基点部の少なくとも一部は、前記吸収隆起部の外側縁よりも幅方向の外側に位置する。本態様によれば、幅方向に沿った断面視において、幅基点部から幅方向の内側に延びる起立部が立ち上がり、幅方向の内側に向けて開口するポケット構造を作ることができる。このとき、幅基点部が吸収隆起部よりも幅方向の外側に位置するため、ポケット部が起立しやすくなる。よって、吸収隆起部で引き込めなかった体液を、防漏ギャザーのポケットで受け止め、横漏れを防止することができる。
【0017】
好ましい態様によれば、前記前後基点部は、前記吸収コアと重なる領域に配置されている。本態様によれば、前後基点部は、前記吸収コアと重なる領域に配置されているため、吸収コアの剛性によって前後基点部の前後方向の位置ずれを抑制できる。前後基点部の位置が安定することにより、防漏カフの起立部が意図せずにめくれることを抑制し、横漏れを抑制できる。
【0018】
好ましい態様によれば、少なくとも前記吸収コアが厚さ方向に圧縮され、かつ前記前後方向に延びる前後圧搾部を有する。前記前後圧搾部の少なくとも一部は、前記起立部と重なる領域に配置されている。本態様によれば、前後圧搾部によって吸収コアの剛性が高くなり、起立部がより起立しやすくなる。加えて、前後圧搾部は、前後方向に延びており、一対の前後基点部が近づくような力に対向できる。よって、一対の前後基点部の位置が安定し、起立部の起立性を維持できる。
【0019】
好ましい態様によれば、前記後側域における前記幅方向の中心に配置され、前記吸収中央部よりも厚みが厚い吸収後部を有する。前記吸収後部は、前記吸収中央部よりも肌面側に隆起する肌側後領域と、前記吸収中央部よりも非肌面側に隆起する非肌側後領域と、を有する。前記肌側後領域の厚みは、前記非肌側後領域の厚みよりも厚い。本態様によれば、吸収後部は、後側域の幅方向の中心に設けられており、臀部間の溝にフィットし易い。このとき、肌側領域の厚みが厚いため、臀部間の溝と吸収性物品との隙間を抑制し、後側への伝い漏れを抑制できる。
【0020】
(2)実施形態に係る吸収性物品
以下、図面を参照して、実施形態に係る吸収性物品ついて説明する。吸収性物品は、生理用ナプキン、パンティライナー、母乳パッド、大人用失禁パッド、糞便パッド又は汗取りシートのような吸収性物品であってよい。吸収性物品は、使用者の下着のような着用物品の内側に取り付けられて使用される物品であってよい。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なる場合があることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法等は、以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれる場合がある。
【0021】
図1は、実施形態に係る吸収性物品の肌面側T1から見た平面図である。図2は、実施形態に係る吸収性物品の非肌面側T2から見た平面図である。図3は、図1に示すA-A線に沿った断面図である。図4は、図1に示すD-D線に沿った断面図である。図5は、吸収コアの肌面側T1から見た平面図である。図6は、吸収コアの非肌面側T2から見た平面図である。図7は、図3に示す断面(図1に示すA-A線に沿った断面)を基準とした吸収コアの模式断面図である。なお、図7においては、説明の便宜上、圧搾部が形成されていない状態の吸収コアを図示している。ここで、「肌面側」は、使用中に着用者の肌に面する側に相当する。「非肌面側」は、使用中に着用者の肌とは反対に向けられる側に相当する。吸収性物品1は、前後方向L、幅方向W及び厚み方向Tを有する。前後方向Lは、着用者の前側(腹側)から後側(背側)に延びる方向、又は着用者の後側から前側に延びる方向である。幅方向Wは、前後方向Lと直交する方向である。厚み方向Tは、肌面側T1と非肌面側T2に延びる方向である。
【0022】
吸収性物品1は、股下域S2、前側域S1及び後側域S3を有する。股下域S2は、着用者の排泄口、例えば膣口に対向して配置される領域である。吸収性物品1が着用物品に装着されたときに、股下域S2は着用物品の股下に配置され、着用者の両脚の間に配置される領域である。前側域S1は、股下域S2よりも前側に位置する。前側域S1の前端縁は、吸収性物品1の前端縁を規定する。後側域S3は、股下域S2よりも後方に位置する。後側域S3の後端縁は、吸収性物品1の後端縁を規定する。股下域S2は、股下域S2の前後方向Lの中心である股下中心S2CLと股下域S2の前端縁との間に延びる前股下域S21と、股下中心S2CLと股下域S2の後端縁との間に延びる後股下域S22と、を有する。
【0023】
股下域S2には、ウイング25が設けられてよい。ウイング25は、吸収コア31よりも幅方向Wの外側に延出し、使用時に着用物品の非肌面側T2に折り畳まれる。ウイング25は、表面シート21と裏面シート22を有してよい。ウイング25の前端縁は、ウイング25の付け根によって規定されており、幅方向Wの内側に窪んだ2つの部分のうち、前側に位置する部分に相当する。ウイング25の前端縁は、股下域S2と前側域S1との境界を規定してもよい。ウイング25の後端縁は、ウイング25の付け根によって規定されており、幅方向Wの内側に窪んだ2つの部分のうち、後側に位置する部分に相当する。ウイング25の後端縁は、股下域S2と後側域S3との境界を規定してもよい。また、ウイング25の内側縁は、ウイングの付け根であり、ウイング25の前端縁とウイング25の後端縁を繋ぐ仮想線となる。また、ウイング25を有しない吸収性物品1にあっては、吸収性物品1の前後方向Lの長さが最も長い位置において、吸収性物品1を前後方向Lに3等分した領域のそれぞれが、前側域S1、股下域S2及び後側域S3を構成してもよい。
【0024】
なお、本発明における外側部とは、幅方向Wにおける外縁を含む幅方向Wに一定の範囲を占める部分であり、外側縁とは、幅方向Wにおける外縁である。本発明における内側部とは、幅方向Wにおける内縁を含む幅方向Wに一定の範囲を占める部分であり、内側縁とは、幅方向Wにおける内縁である。また、本発明における前端部及び後端部は、前後方向Lにおける縁を含む前後方向Lに一定の範囲を占める部分であり、前端縁及び後端縁は、前後方向Lにおける縁である。外端部は、前端部及び後端部を含んでおり、外端縁は、前端縁及び後端縁を含んでいる。また、内側辺は、内側縁を含み、かつ前後方向Lに沿って延びる辺である。外側辺は、外側縁を含み、かつ前後方向Lに沿って延びる辺である。なお、本明細書において、「前後方向Lに沿って」という用語は、前後方向Lに対して45°未満の角度を持った方向を意味し、「幅方向Wに沿って」という用語は、幅方向Wに対して45°未満の角度を持った方向を意味する。
【0025】
後側域S3には、ヒップフラップ27が設けられてよい。ヒップフラップ27は、後側域S3において幅方向Wの外側に膨らんでいる。ヒップフラップ27は、円弧状であってもよいし、複数の曲線からなる波状であってもよい。ヒップフラップ27は、使用時に着用物品の非肌面側T2に折り畳まれず、臀部に対向して配置される。ヒップフラップ27は、表面シート21と裏面シート22を有してよい。
【0026】
吸収性物品1は、着用者の肌に当接する表面シート21と、着用者の肌とは反対側に向けられる裏面シート22と、表面シート21と裏面シート22の間の吸収コア31と、を含む。表面シート21は、吸収コア31よりも肌面側T1に配置され、使用中に着用者の肌の方に向いて配置される。表面シート21は、繊維を有する不織布又は織布によって構成されてよい。表面シート21は、液透過性シートから構成されていてよい。表面シートは、吸収コア31よりも肌面側T1に位置し、本発明の肌側シートを構成する。裏面シート22は、液不透過性シートを含んでいてよい。図1及び図3等に示すように、表面シート21は、吸収コア31の幅方向Wの中央を覆うセンターシート21Cと、センターシート21Cの外側部に重なるサイドシート21Sと、と有してよい。センターシート21Cは、サイドシート21Sよりも非肌面側T2に配置されてよい。サイドシート21Sの内側縁は、幅方向Wの外側に折り返されてよい。また、変形例において、折り返されたサイドシート21S間には、弾性部材が配置されてよい。
【0027】
吸収コア31は、吸収性物品1の前後方向Lに沿って延びている。吸収コア31は、水分を吸収可能な吸収材料を有し、少なくともパルプを有する。吸収材料は、パルプ、高吸収性ポリマー(SAP)を例示できる。図5に示すように、吸収コア31は、コアラップ24によって覆われていてよい。コアラップ24は、例えばティッシュにより構成することができる。吸収コア31よりも肌面側T1に位置するコアラップ24は、吸収コア31よりも肌面側T1に位置し、本発明の肌側シートを構成する。吸収コア31は、前側域S1、股下域S2及び後側域S3に配置されてよい。吸収コア31については、後述にて詳細に説明する。
【0028】
図2に示すように、吸収性物品1の非肌面側T2(裏面シート22の非肌面)には、接合部50が設けられてよい。接合部50は、吸収性物品1を着用物品に接合するための粘着剤が設けられた領域である。接合部50は、吸収コア31と重なる領域に配置された本体接合部51と、ウイング25に設けられたウイング接合部52と、ヒップフラップ27に設けられたフラップ接合部53と、を有してよい。本体接合部51は、前後方向Lに延び、かつ幅方向Wに間隔を空けて配置されている。なお、変形例において、本体接合部51は、幅方向Wに延び、かつ前後方向Lに間隔を空けて配置されていてもよい。接合部50は、図示しない剥離シート又は個包装シートによって使用前に覆われていてよい。本体接合部51は、本発明の「接合部」を構成する。
【0029】
吸収性物品1は、少なくとも吸収コア31が厚み方向Tに圧搾された圧搾部80を有してよい。圧搾部80は、少なくとも吸収コア31が厚み方向Tに圧搾されていればよく、コアラップ24も厚み方向Tに圧搾されていてもよいし、表面シート21も厚み方向Tに圧搾されていてもよい。本実施の形態の圧搾部80は、表面シート21、コアラップ24、及び吸収コア31が厚み方向Tに圧縮された部分である。吸収コア31のみを厚み方向Tに圧縮した構成と比較して、密度がより高くなり、変形基点として機能し易くなる。また、センターシート21Cとサイドシート21Sは、圧搾部80を介して一体化されていてよい。サイドシート21Sは、下着の非肌面側T2に巻き込まれ、下着に固定されるため、着用時にずれ難い。サイドシート21Sとセンターシート21Cが一体化され、センターシート21Cと吸収コア31が圧搾部80を介して強固に結合するため、吸収コア31がよりよれ難くなる。圧搾部80は、股下域S2に配置された中央圧搾部81と、前側域S1に配置された前側圧搾部82と、を有してよい。図5に示すように、中央圧搾部81は、第1圧搾部811、第2圧搾部812及び第3圧搾部813を有する。第1圧搾部811は、吸収性物品の幅方向Wの中心である物品幅中心1WCに対する一方側に配置されており、格子状である。第2圧搾部812は、物品幅中心1WCに対する他方側に配置されており、格子状である。第3圧搾部813は、吸収隆起部34の内側辺に沿って配置されており、円弧状である。第1圧搾部811、第2圧搾部812及び第3圧搾部813は、股下域S2に少なくとも配置されていればよいが、本実施の形態では、股下域S2、前側域S1及び後側域S3に跨っている。中央圧搾部81を構成する第1圧搾部811、第2圧搾部812及び第3圧搾部813は、前後方向に延びており、本発明における「前後圧搾部」を構成する。
【0030】
吸収性物品1は、防漏カフ60を有する。防漏カフは、少なくともサイドシート21Sを有する。なお、変形例において、防漏カフ60は、前後方向に伸縮する弾性部材を有し、弾性部材の伸縮によって肌面側に起立するように構成されていてよい。図1に示すように、防漏カフ60は、少なくともサイドシート21Sが肌面側T1に起立可能な起立部63と、起立部63と前後方向Lに隣接する前後基点部61(図1参照)と、起立部63と幅方向Wに隣接する幅基点部62(図3参照)と、を有する。前後基点部61は、吸収隆起部34よりも前後方向Lの外側に位置している。起立部63は、当該部分よりも非肌面側に位置する部材に固定されていない部分であり、非肌面側T2に位置する部材に対して起立可能な部分である。前後基点部61は、当該部分よりも非肌面側T2に位置する部材に固定されている部分の前後方向の内端縁(前端縁又は後端縁)である。前後基点部61及び幅基点部62は、起立部63の起立支点となる。幅基点部62は、当該部分よりも非肌面側T2に位置する部材に固定されている部分の内側縁である。起立部の頂点(起立部の幅基点部側の縁に対する反対側の縁)は、起立部63の外側部に位置する。起立部63は、着用状態において、幅基点部62から起立部の頂点縁までの部分である。本実施の形態の前後基点部61は、サイドシート21S同士が接合された部分の前後方向の内端縁であり、幅基点部62は、サイドシート21Sがセンターシート21Cに接合された部分の内側縁である。
【0031】
本実施の形態では、図3に示すように、サイドシート21Sは、サイドシート21Sの内側縁に配置された防漏折り目FL60を基点に幅方向の外側に折り返されている。折り返された部分は、起立部63を構成し、折り返されていない部分よりも肌面側T1に位置する。すなわち、起立部63は、少なくともサイドシート21Sが幅方向Wの外側かつ肌面側T1に折り返された部分である。起立部63は、着用者の肌に当接するように構成されている。起立部63は、防漏折り目FL60を基点として幅方向Wの外側に向かって肌側に起立する。よって、防漏カフ60は、いわゆる外倒しの防漏カフである。防漏カフ60の起立頂点は、折り返し部の外側縁(先端)となる。本実施の形態の防漏カフ60の起立部63は、弾性部材を有していないが、変形例において起立部は、弾性部材を有してよい。
【0032】
次いで、吸収コア31について詳細に説明する。吸収コア31は、吸収隆起部34と、吸収中央部32と、吸収前部36と、吸収後部38と、を有してよい。吸収隆起部34は、股下域S2における吸収コア31の外側部(幅方向Wの側部)に一対で配置されている。なお、吸収隆起部34は、吸収コア31の外側縁31Eと離間し、外側縁31Eよりも幅方向Wの内側に配置されてもよいし、吸収コア31の外側縁31Eに配置されていてもよい。本実施の形態の吸収隆起部34は、吸収コア31の外側縁31Eに設けられ、吸収コア31の外側縁31Eから幅方向Wの内側に延びる一定範囲に設けられている。吸収隆起部34は、少なくとも股下域S2に配置されていればよく、股下域S2と前側域S1に跨がっていてもよいし、股下域S2と後側域S3に跨がっていてもよい。本実施の形態の吸収隆起部34は、股下域S2、前側域S1、及び後側域S3に跨がっている。
【0033】
吸収隆起部34は、股下域S2における吸収コア31の幅方向Wの中心に対する両側のそれぞれに配置されており、左右に離間して一対で配置されている。一対の吸収隆起部34は、部分的に互いに連なっていてもよいが、好適には、吸収隆起部34の前後方向Lの全域に亘って互いに離間してよい。吸収隆起部34の内側辺は、前後方向Lの中心が幅方向の内側に向かって突出する湾曲形状である。変形例において吸収隆起部34の内側辺は、前後方向Lに沿う直線状であってよいし、前後方向Lの中心が幅方向の外側に向かって突出する湾曲形状であってもよい。吸収隆起部34の外側辺は、前後方向Lに沿う直線状である。変形例において、吸収隆起部34の外側辺は、前後方向Lの中心が幅方向Wの外側に向かって突出する湾曲形状であってもよいし、前後方向Lの中心が幅方向Wの内側に向かって突出する湾曲形状であってもよい。
【0034】
吸収隆起部34は、吸収中央部32よりも厚い厚みを有していればよく、吸収隆起部34内で厚みが変化してもよい。なお、吸収中央部32から吸収隆起部34にかけて徐々に厚みが変化する形態にあっては、股下域S2の前後方向L及び幅方向Wの中心における吸収コア31の厚みを基準として、当該基準に対する10%の範囲までの部分を吸収中央部32とすることができる。吸収隆起部34は、吸収中央部32よりも厚い厚みを有する部分であり、吸収隆起部34の端縁(前端縁、後端縁、内側縁、及び外側縁)は、吸収中央部32と同じ厚みの部分となる。また、吸収コア31において厚みが厚い部分は、吸収コア31を構成する吸収材料の坪量が多い部分であってもよいし、吸収材料の坪量が周囲と同じであるが密度が低い部分であってもよいし、周囲よりも多くの吸収層が積層された領域であってもよい。
【0035】
吸収中央部32は、吸収隆起部34間に挟まれた部分であって、吸収隆起部34よりも薄い厚みを有する部分である。すなわち、図7に示すように、吸収隆起部34の厚みT34は、吸収中央部32の厚みT32よりも厚い。なお、吸収隆起部34の最大の厚みが、吸収中央部32の最大の厚みよりも厚ければよい。吸収中央部32の前端縁32Fは、左右の吸収隆起部34の前端縁34Fを繋ぐ仮想線に一致する。吸収中央部32の後端縁32Rは、左右の吸収隆起部34の後端縁34Rを繋ぐ仮想線に一致する。吸収中央部32は、股下域S2における物品幅中心1WCを含んでいる。図3及び図5に示すように、股下域S2の前後方向Lにおける中心である股下中心S2CLにおいて、吸収中央部32は、吸収コア31を幅方向Wに三等分した領域のうち、幅方向Wの中央に位置する領域の全体に配置されてよい。股下中心S2CLにおいて、吸収中央部32の幅方向Wの長さW32は、各吸収隆起部34の幅方向Wの長さW34よりも長くてよい。変形例において、股下中心S2CLにおいて、吸収中央部32の幅方向Wの長さW32は、各吸収隆起部34の幅方向Wの長さW34よりも短くてもよい。
【0036】
吸収中央部32は、基準部32Bと、基準部32Bよりも前後方向Lの外側に位置し、基準部32Bよりも幅方向Wの長さが長い幅広部32Sと、を有する。基準部32Bは、吸収中央部32において最も幅方向Wの長さが短い部分であってもよい。基準部32Bは、吸収隆起部34の内側辺によって挟まれた部分であってよく、前後方向Lに一定の長さを有していてもよい。幅広部32Sの幅方向Wの長さは、一定であってもよいし、変化していてもよい。本実施の形態の幅広部32Sの幅方向Wの長さは、基準部32Bから前後方向Lの外側に向かって長くなっている。幅広部32Sは、基準部32Bよりも前側に位置する前幅広部32SFと、基準部32Bよりも後側に位置する後幅広部32SRの少なくともいずれかを有してよい。すなわち、前幅広部32SFのみが設けられていてもよいし、後幅広部32SRのみが設けられていてもよいし、前幅広部32SFと後幅広部32SRの両方が設けられていてもよい。基準部32Bは、前股下域S21に位置してもよいし、後股下域S22に位置してもよい。また、前幅広部32SF及び後幅広部32SRのそれぞれは、前股下域S21のみに配置されていてもよいし、後股下域S22のみに配置されていてもよいし、前股下域S21及び後股下域S22の両方に設けられていてもよい。
【0037】
本実施の形態の吸収コア31は、吸収材料の坪量が異なる領域を複数有している。本実施の形態においては、吸収隆起部34が最も高い坪量(500g/m2)を有し、吸収前部36及び吸収後部38が次に高い坪量(400g/m2)を有し、それ以外の領域(吸収中央部32を含む)が低い坪量(200g/m2)を有している。すなわち、吸収隆起部34の吸収材料の坪量及び吸収前部36の吸収材料の坪量は、吸収中央部32の吸収材料の坪量よりも高くてよい。また、吸収中央部32は、吸収隆起部34よりも少ない吸収材料を有しているが、変形例において、吸収材料を有していなくてもよい(坪量が0であってもよい)。他の変形例において、複数の吸収層によって吸収コア31が構成され、吸収隆起部34の層数が吸収中央部32の層数よりも多くてもよい。また、吸収コア31は、複数のスリット(坪量が0の部分)を有してよい。複数のスリットは、前後方向L及び幅方向Wに沿って複数形成され、吸収コア31は、複数のブロックの集合体によって構成されてよい。複数のブロックのうち、厚みが厚いブロックが吸収隆起部34を構成し、厚みが薄いブロックが吸収中央部32を構成してもよいし、複数のブロックを有する区画が複数設けられ、最も厚みが厚いブロックを有する区画が吸収隆起部34を構成し、最も厚みが薄いブロックを有する区画が吸収中央部32を構成してもよい。このように、複数のスリットによって分断された複数のブロックを有する吸収コア31によれば、各ブロックが変形し易く、身体に追従し易い。よって、身体に対する追従性と横漏れを抑制する効果を両立できる。本実施の形態の吸収コアは、吸収前部36、吸収隆起部34、及び吸収後部38以外の領域の厚みは、吸収中央部32の厚みと実質的に同じである。すなわち、吸収中央部32と吸収後部38の間の領域の厚み、及び、吸収中央部32と吸収前部36の間の領域の厚みは、吸収中央部32の厚みと実質的に同じであってよい。
【0038】
ここで、本明細書における「吸収コアの厚み及び坪量」の測定は、測定圧3g/cm2、直径10mmの測定端子を有する厚み計(株式会社 尾崎製作所社製 Peacockダイヤルシックネスゲージ)を用いることができる。複数の吸収性物品がパッケージに収容された形態にあっては、同じパッケージから5つの吸収性物品を取り出し、その状態にて20℃±2℃、相対湿度60%±5%RHの雰囲気下において12時間放置したサンプルを用いる。個包装シート等によって包装された吸収性物品においては包装体を開封し、折り畳まれた吸収性物品を展開して、吸収性物品の坪量を測定する部分の厚みを測定する。次いで、坪量を測定する部分を吸収性物品から切り出し、切り出した部分の重量を測定する。次いで、切り出した部分から吸収コアを取り除き、表面シート及び裏面シート等、吸収コア以外の厚み及び重量を測定する。なお、吸収コアが接着剤等で残っている場合には、トルエン等ですべて取り除き、24時間常温で乾燥させた後に測定する。最初に測定した吸収性物品の厚みから吸収コア以外の厚みを除き、吸収コアの厚みを測定する。また、切り出した部分の重量から吸収コア以外の重量を除き、坪量を測定する部分の面積に基づいて坪量を算出する。なお、吸収コアの坪量を測定する領域が複数あり、当該複数の領域が同一のシート(表面シート、コアラップ等)によって覆われている場合には、当該シートの坪量が同じであるとみなすことができるため、坪量を測定する部分を吸収性物品から切り出した後、シートを剥がさずに吸収コアの坪量を測定してもよい。すなわち、吸収コアの厚みを比較する場合、複数の測定位置において、同一のシート(表面シート、コアラップシート等)によって覆われている場合には、シート厚みは同じとみなし、厚みの大小を比較してもよい。測定した厚みと重量に基づいて、密度を算出し、その平均値を吸収コアの密度とする。
【0039】
図7に示すように、吸収隆起部34は、吸収中央部32よりも非肌面側T2に突出した非肌側隆起領域342を有してよい。すなわち、吸収中央部32の非肌面は、吸収隆起部34の非肌面よりも肌面側T1に凹んでいてもよい。非肌側隆起領域342は、吸収隆起部34と隣接する吸収中央部32の非肌面よりも非肌面側T2に位置する部分である。吸収コア31に引き込まれた体液は、幅方向Wにおいて排泄口に近い中央から側方に移行する。すなわち、吸収中央部32から吸収隆起部34に向かって幅方向Wの外側に体液が移行する。このとき、吸収隆起部34に移行した体液が重力によって非肌面側T2に移動した際に、非肌側隆起領域342において体液を吸収でき、横漏れを抑制できる。
【0040】
吸収隆起部34は、吸収中央部32よりも肌面側T1に隆起する肌側隆起領域341を有している。すなわち、吸収中央部32の肌面は、吸収隆起部34の肌面よりも非肌面側T2に凹んでよい。肌側隆起領域341は、吸収隆起部34と隣接する吸収中央部32の肌面よりも肌面側T1に位置する部分である。吸収コア31の幅方向Wに沿った断面において、吸収コア31の非肌面は、幅方向Wの側部(吸収隆起部が配置された部分)が厚み方向Tに膨らみ、幅方向Wの中央部(吸収中央部32が配置された部分)が凹んでいる。
【0041】
次いで、このように構成された吸収性物品の着用状態の作用効果について詳細に説明する。図8及び図9は、着用物品としての下着Sに吸収性物品1を装着した状態である。図8は、図3に示す断面(A-A線に沿った断面)を基準とした着用状態(非押圧状態)の模式断面図である。図9は、図3に示す断面(A-A線に沿った断面)を基準とした着用状態(押圧状態)の模式断面図である押圧状態は、両脚によって挟まれた状態や横向きに寝た状態等における幅方向Wの外側から幅方向Wの内側に押圧された状態であり、非押圧状態は、幅方向Wの外側から幅方向Wの内側に押圧されていない状態である。図8及び図9において、着用者の身体の外形をラインBLで示している。また、図8及び図9においては、説明の便宜上、吸収性物品1の外形のみを示しており、各構成部材の境界を示していない。
【0042】
図9に示すように、股下域S2の吸収コア31は、脚によって押圧され、幅方向Wの内側に向かう力を受ける。このとき、吸収コア31は、吸収隆起部34と吸収中央部32が幅方向Wに連なっている領域(以下、連続領域343とする。図8参照)で当該力を受け、吸収隆起部34が吸収中央部32に対して隆起した領域(肌側隆起領域341及び非肌側隆起領域342)が幅方向Wの内側に変形し易い。従来のように、吸収隆起部が吸収中央部よりも肌面側のみに隆起している形態にあっては、吸収コアの外側縁では、肌面側の領域を中心として幅方向の内側に円弧状に移動する。すなわち、吸収コアの外側縁における非肌面側の領域よりも吸収コアの外側縁における肌面側の領域が幅方向の内側に移動するように、吸収コアの外側縁が内倒れする。吸収隆起部の外側縁が内倒れするにより、吸収コアと身体の隙間が生じ、漏れが発生するおそれがあった。しかし、本実施形態の吸収性物品1は、肌側隆起領域341及び非肌側隆起領域342を有しているため、太腿の最も出っ張っている上部において非肌側隆起領域342が当たることにより、非肌側隆起領域342が内側に倒れようとする。すなわち、吸収隆起部34の幅方向の外側縁の内倒れ量を抑制できる。結果として、肌側隆起領域341は、フラット(非肌側隆起領域342と幅方向において同じ位置)もしくは外倒しになるように変形し易い。太腿の最も幅方向に出っ張っている部分よりも幅方向の外側に位置する鼠蹊部に対して肌側隆起領域341をフィットさせることができるため、吸収コア31と身体の隙間を低減し、漏れを抑制できる。加えて、吸収性物品1の非肌面は、本体接合部51を介して着用物品Sに接合されており、着用物品Sから肌面側T1に向かう力を受ける。そのため、吸収中央部32が肌側に押され、肌面側T1に向けて凸状に変形し易い。よって、着用者と吸収性物品1の隙間を低減でき、伝い漏れを抑制できる。
【0043】
吸収隆起部34は、股下域S2の側部に位置し、吸収中央部32を挟んで配置されている。吸収隆起部34は、膣口の側方に位置する陰唇部に対向して配置される。一般的に、陰唇部は、膣口よりも吸収性物品1側に膨らんでいる。吸収隆起部34は、吸収中央部32よりも厚い厚みを有する。そのため、吸収隆起部34は、陰唇部に密着し易い。吸収隆起部34が膣口から側方に導かれた体液を引き込むことで、横漏れを抑制できる。また、一対の吸収隆起部34は、吸収中央部32を挟んで配置され、互いに離間している。各吸収隆起部34のそれぞれが左右の陰唇部に密着した状態を維持することで、意図せずに吸収隆起部34が膣口に当たることを抑制できる。デリケートな膣口に吸収隆起部34が当たることに起因する違和感を抑制し、装着感を向上できる。図9に示すように、着用時に両脚によって吸収性物品が挟まれたり、下着によって身体側に吸収性物品が押圧されたりすると、吸収中央部32は、身体側に向かって隆起し易い。その際、吸収中央部32の厚みが吸収隆起部34よりも薄いため、吸収中央部32が身体側に隆起しても、吸収中央部32が膣口に対して密着し難い。より詳細には、吸収中央部32の厚みが薄いため、吸収中央部32が襞状又は肌面側T1に変形し、吸収中央部32の表面が膣口に触れることがある。しかし、吸収中央部32の厚みが厚くないため、身体の動きに応じて吸収中央部32が変形し易く、膣口に当接し続け難い。よって、膣口に対して吸収性物品1をフィットさせつつデリケートな膣口に対する違和感を抑制できる。
【0044】
図3及び図4に示すように、吸収コア31の非肌面には、厚み方向Tに凹む吸収凹部39が形成されてよい。吸収凹部39は、吸収中央部32において吸収性物品の幅方向Wの中心である物品幅中心を跨ぎ、前後方向Lに沿って延びてよい。吸収凹部39は、周囲よりも吸収材料の坪量が低い部分であってもよいし、吸収材料の坪量が周囲と同じであるが密度が低い部分であってよい。吸収凹部39は、吸収コア31を厚み方向Tに貫通してなく、吸収材料が配置されていてよい。吸収凹部39は、厚み方向Tに凹んでおり、吸収コア31の変形基点である。また、吸収凹部が肌面側T1に向かって凹んでいるため、図9に示すように、吸収凹部39を基点とした吸収中央部32の変形は、肌面側T1に向かって凸状になる。よって、吸収中央部32は、物品幅中心1WCにおいて吸収凹部39を基点に肌面側T1に向かって凸状に変形し易くなる。
【0045】
吸収凹部39の前後方向Lの外端縁は、吸収隆起部34の前後方向Lの外端縁よりも前後方向Lの内側に位置してよい。すなわち、吸収凹部39の前端縁39Fは、吸収隆起部34の前端縁34Fよりも後側に位置してよく、吸収凹部39の後端縁39Rは、吸収隆起部34の後端縁34Rよりも前側に位置してよい。吸収凹部39の外端縁と吸収隆起部34の外端縁と間の領域では、吸収凹部39による変形基点が形成されず、吸収凹部39の外端縁より前後方向Lの内側の領域と比較して、吸収中央部32が隆起した部分の高さを抑えることができる。吸収中央部32の隆起状態が前後方向Lの外側に向かって徐々に低くなり、局所的に高さが変化する構成と比較して身体に対する隙間を抑制できる。
【0046】
非肌側隆起領域342の密度は、肌側隆起領域341の密度よりも高くてよい。非肌側隆起領域342の密度が比較的高いため、肌側隆起領域341から非肌側隆起領域342に体液を引きこむことができる。また、体液が非肌面側(肌側隆起領域から非肌側隆起領域側)T2に引き込まれるため、吸収性物品1の肌面の液量を減少させ、液戻り量を低減することができる。
【0047】
図7に示すように、非肌側隆起領域342の厚みT342は、肌側隆起領域341の厚みT341よりも厚くてよい。非肌側隆起領域342の厚みが肌側隆起領域341よりも厚いため、吸収コア31が幅方向Wに押圧された際に、非肌側隆起領域342が脚に当たり易く、吸収隆起部34の外側縁の内倒れをより抑制できる。また、吸収隆起部34内の非肌面側において体液を吸収できる吸収容量を確保できる。加えて、肌側隆起領域341が連続領域343を中心として幅方向Wの内側に円弧状に移動する力も作用し、かつ非肌側隆起領域342の厚みT342が厚いため、非肌側隆起領域342は、連続領域343及び肌側隆起領域341と比較して、脚に強くあたって密度が高くなる。そのため、吸収コア31内の粗密勾配によっても、非肌側隆起領域342に体液を引き込み、横漏れを抑制できる。また、連続領域343の厚みは、非肌側隆起領域342の厚みT342よりも厚く、肌側隆起領域341の厚みT341よりも厚くてよい。肌側隆起領域341の厚みT341:連続領域343の厚み:非肌側隆起領域342の厚みT342の比率は、7:16:9であってよい。
【0048】
左右の吸収隆起部34間の間隔(幅方向Wの距離)G34は、肌側隆起領域341の厚みT341の2倍以上であってよい。左右の吸収隆起部34間の間隔(幅方向Wの距離)は、吸収中央部32の幅方向Wの長さである。吸収性物品の幅方向Wに沿ったいずれかの断面において、左右の吸収隆起部34間の間隔が肌側隆起領域341の厚みT341の2倍以上であればよい。左右のそれぞれの肌側隆起領域341が幅方向の内側に倒れた際における肌側隆起領域341の最大の倒れ幅(幅方向の内側に倒れる部分の最大長さ)は、肌側隆起領域341の厚みT341であり、両側の肌側隆起領域341の倒れ幅を合計すると、肌側隆起領域341の厚みT341の2倍となる。本態様によれば、両側の肌側隆起領域341の倒れ幅よりも左右の吸収隆起部34間の間隔が長いため、肌側隆起領域341が幅方向の内側に最も倒れた状態で、肌側隆起領域341間に間隔がある。当該間隔には、肌側隆起領域341に覆われずに、吸収中央部32が配置されている。よって、排泄口から排出された体液を肌側隆起領域341間の空間に迅速に引き込むことができる。
【0049】
吸収隆起部34の幅W34は、吸収隆起部34の厚みT34よりも長くてよい。吸収隆起部34の最大幅が吸収隆起部34の最大厚みよりも長くてよい。本態様によれば、吸収隆起部34の幅W34が吸収隆起部34の厚みT34よりも長いため、吸収隆起部34の幅W34が吸収隆起部34の厚みT34よりも短い形態と比較して、幅方向Wの外側から押圧された際に、吸収隆起部34全体が内倒れし難くなる。よって、吸収コア31の外側縁が太腿に沿って配置された状態を維持しやすく、漏れを抑制できる。
【0050】
非肌側隆起領域342の少なくとも一部は、本体接合部51と重なる領域に設けられてよい。非肌側隆起領域342は、吸収中央部32よりも非肌面側T2に隆起しており、着用物品Sに対して押圧され易い。非肌側隆起領域342と重なる領域に本体接合部51が設けられていることにより、本体接合部51が着用物品Sに対して強く当たって、着用物品Sに対する接合力を確保し易く、吸収性物品1が着用物品Sから剥がれにくくなる。
【0051】
なお、非肌側隆起領域342と肌側隆起領域341は、少なくとも一部において厚み方向Tにおいて重なっていてよい。また、非肌側隆起領域342の幅方向の位置と、肌側隆起領域341の幅方向Wの位置と、は、一致していてよい。すなわち、非肌側隆起領域342の外側縁は、肌側隆起領域341の外側縁から厚み方向に延びる延長線上に配置されていてよく、非肌側隆起領域342の内側縁は、肌側隆起領域341の内側縁から厚み方向に延びる延長線上に配置されていてよい。
【0052】
吸収隆起部34と重なる領域におけるシート接着剤の坪量は、吸収中央部32と重なる領域におけるシート接着剤の坪量よりも高くてよい。シート接着剤は、肌側シートに付された接着剤であり、肌側シート同士を接着する接着剤(センターシートとサイドシートを接着する接着剤)のみならず、肌側シートと他の部材を接着する接着剤(コアラップと吸収コアを接着する接着剤)を含む概念である。肌側シートは、吸収コア31よりも肌面側に位置するシートであり、吸収コア31よりも肌面側に位置するコアラップ24、センターシート21C、サイドシート21Sを含む。また、センターシート21Cとコアラップ24の間に補助シートを有する形態にあっては、肌側シートは、補助シートを含む。吸収隆起部34と重なる領域の接着剤の坪量は、吸収隆起部34と重なる領域の複数層にシート接着剤が配置されている場合に、複数層のシート接着剤の合計の坪量である。吸収隆起部34と重なる領域のシート接着剤の坪量が高いため、当該シート接着剤によって吸収隆起部34から肌面側T1への体液の移行を抑制でき、一旦吸収コア31において吸収した体液のリウェットを抑制できる。吸収隆起部34は、吸収中央部32よりも肌面側T1に隆起しており、着用者の肌に当たり易いので肌伝いによる横漏れを防止できる。吸収隆起部34が肌に比較的強く当たった際も、体液のリウェットを抑制できる。
【0053】
吸収コア31は、後側域S3において、吸収中央部32よりも厚みが厚い吸収後部38を有してよい。吸収後部38は、少なくとも後側域S3に配置されていればよく、後側域S3のみに設けられてよい。本実施の形態の吸収後部38は、第1吸収後部381と、第1吸収後部381と離間しており、第1吸収後部381よりも後側に位置する第2吸収後部382と、を有してよい。なお、吸収後部38は、複数設けられていてもよいし、1個であってもよい。吸収後部38は、後側域S3における幅方向Wの中心に配置されてよく、物品幅中心1WCを跨ってよい。なお、吸収後部38が複数設けられている形態にあっては、いずれかの吸収後部38(第1吸収後部381又は第2吸収後部382)が物品幅中心1WCを跨ってよい。吸収後部38は、吸収中央部32よりも厚みが厚く、吸収中央部32の変形がそのまま連続せずにフラットな形状を実現し易い。物品幅中心1WCにおける吸収中央部32よりも後側の領域をフラットな形状にすることで、臀裂を幅方向Wに跨ぐ領域に面状の吸収コア31を配置でき、後側への伝え漏れを抑制できる。また、第1吸収後部381と第2吸収後部382の間が離間していることにより、第1吸収後部381と第2吸収後部382の間に緩衝領域を設け、第1吸収後部381と第2吸収後部382を面状で当て続け、後漏れを抑制する効果をより抑制できる。
【0054】
吸収後部38の少なくとも一部は、股下中心S2CLから200mm後方の位置までの範囲に配置されていることが好ましい。着用者の身体の前後方向Lに沿った断面において、臀部間の溝は、会陰部を越えた辺りからはじまり、尾てい骨に至るまで存在し、股下中心S2CLから200mm後方の位置までの範囲に対向して配置され易い。吸収後部38が臀部間の溝に配置され易くなり、後漏れをより抑制できる。
【0055】
図4に示すように、吸収後部38は、吸収中央部32よりも肌面側T1に隆起する肌側後領域383と、吸収中央部32よりも非肌面側T2に隆起する非肌側後領域384と、を有してよい。肌側後領域383の厚みは、非肌側後領域384の厚みよりも厚くてよい。吸収後部38は、後側域S3の幅方向の中心に設けられており、臀部間の溝にフィットし易い。このとき、肌側後領域383の厚みが厚いため、臀部間の溝と吸収性物品との隙間を抑制し、後側への伝い漏れを抑制できる。
【0056】
吸収コア31は、前側域S1において、吸収中央部32よりも厚みが厚い吸収前部36を有してよい。吸収前部36は、少なくとも前側域S1に配置されていればよく、前側域S1のみに設けられてよい。前側域S1は、排泄口よりも前側に位置する恥骨間の膨らみ部分と対向して配置され易い。前側域S1に比較的厚みが厚い吸収前部36が設けられているため、恥骨間の膨らみ部分と吸収性物品1が摩擦抵抗によってずれ難くなり、恥骨間の膨らみ部分に対して吸収性物品1をフィットさせることができる。後側域S3では、ヒップフラップ27が臀部の頂点に対してフィットし、股下域S2では、吸収隆起部34が左右の陰唇部にフィットし、更に前側域S1では、吸収前部36が恥骨間の膨らみ部分に対してフィットすることにより、寝姿勢において下着S及び吸収性物品1が重力によって側方にずれ難くなる。よって、膣口の側方に吸収隆起部34を当て続け、吸収隆起部34によって体液を吸収することにより、横漏れを抑制できる。吸収前部36の後端縁36Rは、吸収隆起部34の前端縁34Fよりも前側に位置する。
【0057】
図4に示すように、吸収前部36は、吸収中央部32よりも肌面側T1に隆起する肌側前領域361と、吸収中央部32よりも非肌面側T2に隆起する非肌側前領域362と、を有してよい。肌側前領域361の厚みは、非肌側前領域362の厚みよりも厚くてよい。吸収前部36は、恥骨間の膨らみにフィットし易い。このとき、肌側前領域361の厚みが厚いため、恥骨間の膨らみ部分と吸収性物品1が摩擦抵抗でずれ難くなり、恥骨間の膨らみ部分に対して吸収性物品1をフィットさせることができる。
【0058】
吸収隆起部34は、股下域S2に配置されており、吸収コア31の後端部及び前端部には、吸収端部が設けられてよい。吸収隆起部34の前後方向Lの中心は、股下域S2内に位置してよい。股下域S2の幅方向の側部に、比較的坪量が高い吸収隆起部34が形成されているため、膣もしくは排尿口から幅方向の外側に拡散し、吸収コア31の外側部に導かれた体液を保持でき、横漏れを抑制できる。吸収コア31の後端部及び前端部には、比較的坪量の低い吸収端部が配置されてよい。よって、吸収コア31の後端部及び前端部に比較的坪量が高い部分が形成されず、吸収コア31の端部が身体に沿い難くなることを抑制できる。吸収コア31の端部が身体により沿い易くするために、吸収端部は、吸収コア31の幅方向の全域に設けられてよい。本実施の形態の吸収端部は、吸収コア31の前端縁31Fと吸収前部36の前端縁36Fの間において幅方向の全域に設けられ、吸収コア31の後端縁31Rと吸収後部38の後端縁(第2吸収後部の後端縁)の間において幅方向の全域に設けられている。吸収隆起部34の前後方向の長さは、吸収コアの前後方向の長さに対する1/2以下であってよい。
【0059】
本実施の形態において、防漏カフ60の幅基点部62の少なくとも一部は、吸収隆起部34と重なる領域に配置されてよい。起立部63よりも幅方向の内側には、幅基点部62及び防漏折り目FL60が配置されている。よって、幅基点部62が防漏折り目FL60と重なって配置された形態にあっては、防漏折り目FL60を基点として、防漏折り目FL60から幅方向の外側に延びる起立部63が立ち上がる。また、幅基点部62が防漏折り目FL60よりも幅方向の内側に位置する形態にあっては、防漏カフ60の幅基点部62を基点として、防漏折り目FL60と共に起立部63が立ち上がる。吸収性物品の肌面に排出された体液は、非肌面側の吸収コアに引き込まれると共に、吸収性物品の肌面を幅方向の外側に伝って幅基点部62に到達することがある。このとき、幅基点部62が吸収隆起部34と重なる領域に配置されているため、幅基点部62に到達した体液を吸収隆起部34によって引き込むことができる。よって、幅基点部62を超えて体液が拡散することを抑制し、横漏れを抑制できる。
【0060】
変形例において、防漏カフ60は、いわゆる内倒しの防漏カフであってよい。起立部63の頂点は、起立部63の内側部に位置してよい。起立部63は、着用状態において、幅基点部62から起立部63の頂点縁までの部分である。当該変形例において、前後基点部61は、吸収隆起部34よりも前後方向Lの外側に位置してよい。前後方向Lに沿った断面視において、防漏カフ60の前後基点部61を基点として、前後基点部61間の起立部63が立ち上がる。この立ち上がった部分は、幅方向の内側に向かって広がり、体液を収容可能な空間となる。前後基点部61が吸収隆起部34よりも前後方向Lの外側に位置するため、吸収隆起部34から前後方向Lの外側に拡散した体液を、防漏カフ60によって収容でき、体液の漏れをより抑制できる。
【0061】
変形例において、幅基点部62の少なくとも一部は、吸収コア31の外側縁31Eよりも幅方向Wの外側に位置してよい。幅方向Wに沿った断面視において、防漏カフ60の幅基点部62を基点として、幅基点部62から幅方向Wの内側に延びる起立部63が立ち上がる。このとき、吸収コア31の外側縁31Eを境界として剛性差があるため、吸収コア31の外側縁31Eを基点として、吸収コア31の外側縁31Eと幅基点部62の間の領域も立ち上がる。よって、防漏カフ60の高さを確保でき、横漏れをより抑制できる。
【0062】
前後基点部61は、吸収コア31と重なる領域に配置されてよい。前後基点部61は、吸収コア31と重なる領域に配置されているため、吸収コア31の剛性によって前後基点部61の前後方向Lの位置ずれを抑制できる。前後基点部61の位置が安定することにより、防漏カフ60の起立部63が意図せずにめくれることを抑制し、横漏れを抑制できる。
【0063】
吸収隆起部34の少なくとも一部をサイドシートによって覆う形態にあっては、サイドシート21Sは、疎水性シートであることが好ましい。吸収隆起部34に排出された体液の幅方向Wの外側への拡散を、疎水性のサイドシート21Sによって抑制できる。よって、横漏れを抑制できるとともに、一旦吸収コア31によって吸収した体液が吸収隆起部34を介して肌側に戻ることを抑制できる。
【0064】
前後圧搾部の少なくとも一部は、吸収性物品1の伸長状態において、起立部63と重なる領域に配置されてよい。本実施の形態では、前後圧搾部を構成する第1圧搾部811、第2圧搾部812及び第3圧搾部813のうち、第3圧搾部の一部が起立部63と重なる領域に配置されている。起立部63は、当該起立部63よりも非肌面側に位置する吸収コア31に対して肌面側に起立する。前後圧搾部によって吸収コア31の剛性が高くなり、起立部63がより起立しやすくなる。加えて、前後圧搾部は、前後方向Lに延びており、一対の前後基点部61が近づけるような力に対向できる。よって、一対の前後基点部61の位置が安定し、起立部63の起立性を維持できる。
【0065】
変形例において、吸収コア31には、複数の溝部が設けられてよい。溝部は、周囲と比較して凹んだ部分であればよく、周囲よりも吸収材料の坪量が低い低坪量部であってもよいし、エンボス等によって押圧されたことによって周囲よりも厚みが薄い部分であってもよい。なお、溝部を構成する低坪量部は、吸収材料の坪量が実質的に0であるスリットであってよい。溝部は、吸収隆起部34に設けられた隆起溝部と、吸収中央部に設けられた中央溝部と、を有してよい。隆起溝部及び中央溝部が設けられていることにより、複数の変形基点を介して吸収隆起部及び吸収中央部を身体に沿うようにしなやかに変形させることができる。隆起溝部の溝幅は、中央溝部の溝幅よりも狭くてよい。ここで溝幅は、溝が延びる方向(変形例においては幅方向)に対して直交する方向の溝の長さである。中央溝部の溝幅が広いため、中央溝部において周囲に体液を拡散し、吸収コアの広い範囲で体液を拡散できる。一方、隆起溝部の溝幅が狭いため、吸収隆起部において体液の拡散を抑制し、横漏れを抑制できる。また、好適には、隆起溝部及び中央溝部のそれぞれは、幅方向に延び、前後方向Lに間隔を空けて設けられてよい。複数の変形基点を介して吸収隆起部34及び吸収中央部32が、身体の前後方向Lに延びる丸みに沿い易くなる。よって、身体に対する追従性をより向上できる。なお、隆起溝部及び中央溝部は、前後方向Lに延びる溝部のみであってもよいし、前後方向Lに延びる溝部と幅方向Wに延びる溝部の両方であってもよいし、幅方向Wに延びる溝部のみであってもよい。
【0066】
また、肌側隆起領域と非肌側隆起領域を有する吸収コア31は、例えば、次の方法によって得ることができる。吸収材料を積層するパターンプレートに肌側隆起領域又は非肌側隆起領域の一方に対応する凹みを設け、吸収コアを成形した後に、肌側隆起領域又は非肌側隆起領域の他方をプレスによって形成することができる。また、他の方法としては、吸収コアを一定の厚みで積層した後に、肌面側と非肌面側の両方に対応する上軸側と下軸側からプレスし、肌側隆起領域又は非肌側隆起領域を形成することができる。
【0067】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によれば、横漏れを抑制できる吸収性物品を提供することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 :吸収性物品
21 :表面シート
21C :センターシート
21S :サイドシート
22 :裏面シート
31 :吸収コア
32 :吸収中央部
32B :基準部
32S :幅広部
34 :吸収隆起部
341 :肌側隆起領域
342 :非肌側隆起領域
36 :吸収前部
38 :吸収後部
383 :肌側後領域
384 :非肌側後領域
51 :本体接合部(接合部)
813 :第3圧搾部(前後圧搾部)
S :着用物品(下着)
S1 :前側域
S2 :股下域
S3 :後側域
L :前後方向
T :厚み方向
T1 :肌面側
T2 :非肌面側
W :幅方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9