(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-23
(45)【発行日】2023-01-06
(54)【発明の名称】エピタキシャル堆積前の表面調製方法及び装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20221226BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20221226BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
H01L21/304 645C
H01L21/302 102
H01L21/205
(21)【出願番号】P 2020511385
(86)(22)【出願日】2018-08-23
(86)【国際出願番号】 EP2018072776
(87)【国際公開番号】W WO2019038382
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-08-18
(32)【優先日】2017-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502010251
【氏名又は名称】アイクストロン、エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【氏名又は名称】河合 典子
(72)【発明者】
【氏名】サバス、ステファン・エドワード
(72)【発明者】
【氏名】サルダナ、ミグエル・エンジェル
(72)【発明者】
【氏名】コッセンティン、ダン・レスター
(72)【発明者】
【氏名】キム、ハエ・ヤング
(72)【発明者】
【氏名】タミルマニ、サブラマニアン
(72)【発明者】
【氏名】ムクハージー、ニロイ
(72)【発明者】
【氏名】カリム、エム・ズィアウル
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-237486(JP,A)
【文献】特開平09-306891(JP,A)
【文献】特表2001-523883(JP,A)
【文献】特表2004-500703(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0198417(US,A1)
【文献】特開2013-201300(JP,A)
【文献】特表2002-503030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/3065
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピタキシャル堆積前にウェハを調製するための装置において、
金属筐体
(10)内の誘電体容器
(12)であって、前記誘電体容器
(12)は排気マニホールド
(27)と流体連通するプラズマ空間
(32)を形成し、前記排気マニホールドは真空ポンプライン
(28)に接続されている、前記誘電体容器
(12)と、
前記プラズマ空間
(32)の隣に配置された支持台座(14)であって、前記支持台座
(14)が半導体ウェハ
(16)を支持しかつ前記半導体ウェハの温度を少なくとも300℃に上げるように構成された、前記支持台座
(14)と、
水素ガス供給源
(18)及びそのフローを制御するコントローラ
(50)であって、前記水素ガスが前記供給源
(18)から管を通って前記誘電体容器
(12)の1又は複数のガス入口
(21)へと流れる、前記水素ガス供給源
(18)及び前記コントローラ
(50)と、
前記誘電体容器
(12)の少なくとも1つの面の外側に近接して配置された誘導コイル
(34,40)と、
インピーダンスマッチング回路
(38,44)を介して前記誘導コイル
(34,40)に接続された高周波(RF)電源
(36)と、
電気的に接地されかつ前記誘導コイル
(34,40)と前記誘電体容器
(12)との間に配置されたスロット付き静電シールド
(46,48)と、
前記誘電体容器
(12)の内側にて該誘電体容器
(12)の表面に近接して配置された保護ライナー
(42)であって、前記保護ライナー
(42)は結晶シリコン又はポリ結晶シリコンのうち少なくとも1つを有する、前記保護ライナー
(42)と、を有
し、前記保護ライナーが、前記保護ライナーを通して前記プラズマ空間内に前記誘導コイルの磁場を貫通させるためのスロットを有する、装置。
【請求項2】
前記誘電体容器
(12)の1又は複数の前記ガス入口に結合されたガス注入ノズル
(22)をさらに有し、前記ガス注入ノズル
(22)は、前記支持台座
(14)の反対側にある前記誘電体容器
(12)の表面から延在し、前記誘電体容器
(12)の表面から前記支持台座
(14)までの距離の少なくとも3分の1まで延在している、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記誘電体容器
(12)が円筒形であり、かつ、前記誘電体容器
(12)の高さが前記誘電体容器
(12)の半径の半分より小さ
く、かつ/又は、
前記誘導コイルが、前記誘電体容器の上面の外側に近接して配置されている、請求項1又は
2に記載の装置。
【請求項4】
前記支持台座
(14)が、前記半導体ウェハの温度を約850℃に上げるように構成されている、請求項1
~3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記誘電体容器に接続された、ヘリウム用の制御可能なガス供給源をさらに有する、請求項1
~4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記保護ライナー(42)が、ライナー材料からなる複数の平面パネル
又はライナー材料からなる複数の曲面パネルを有し、かつ/又は、
前記保護ライナー
(42)が、前記誘電体容器の上面及び側面をイオン衝撃から部分的に保護するように構成されている、請求項1~5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
残留ガス解析装置
(54)であって、前記残留ガス解析装置
(54)のサンプリングポート
(52)が、前記排気マニホールド
(27)と流体連通している、前記残留ガス解析装置
(54)と、
前記水素ガスの供給及びRF電源
(36)を制御するように構成された自動プロセスコントローラ
(50)と、を
さらに有し、
前記自動プロセスコントローラ
(50)がさらに、エピタキシャル堆積前の前記半導体ウェハ
(16)の調製のためのプロセスをいつ終了させるかを決定するために前記残留ガス解析装置
(54)から汚染物質の濃度に関する情報を受信するように構成されている、請求項1
~6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
エピタキシャル堆積前にウェハを調製するための装置において、
プラズマ空間
(32)を形成する誘電体容器
(12)であって、前記プラズマ空間
(32)は排気マニホールド
(27)と流体連通し、かつ前記排気マニホールド
(27)は真空ポンプライン
(28)に接続されている、前記誘電体容器
(12)と、
前記プラズマ空間
(32)の隣に位置する支持台座
(14)であって、前記支持台座
(14)は半導体ウェハ
(16)を支持しかつ前記半導体ウェハ
(16)の温度を少なくとも300℃に上げるように構成されている、前記支持台座
(14)と、
前記誘電体容器
(12)の少なくとも1つの面の外側に近接して配置された誘導コイル
(34,40)と、
前記プラズマ空間
(32)内でプラズマを維持するべく電流を供給するように構成された高周波(RF)電源
(36)であって、前記RF電源
(36)はインピーダンスマッチング回路
(44)を介して前記誘導コイル
(34,40)に接続されている、前記RF電源
(36)と、
電気的に接地されかつ前記誘導コイル
(34,40)と前記誘電体容器
(12)との間に配置されたスロット付き静電シールド
(46,48)と、
前記誘電体容器
(12)内に水素ガスを注入するように構成されたガス注入ノズル
(22)であって、前記ガス注入ノズル
(22)は、前記誘電体容器
(12)内に配置され、前記支持台座
(14)の反対側に位置する前記誘電体容器
(12)の上面に配置された少なくとも1つのガス入口
(21)に接続され、かつ前記誘電体容器
(12)の上面から前記支持台座
(14)までの距離の少なくとも3分の1まで延在している、前記ガス注入ノズル
(22)と、
水素ガス供給源
(18)及びそのフローを制御するコントローラ
(50)であって、前記水素ガスが前記供給源
(18)から管を通って前記誘電体容器
(12)の少なくとも1つの前記ガス入口
(21)へと流れる、前記水素ガス供給源
(18)及び前記コントローラ
(50)と、を有する、装置。
【請求項9】
前記ガス注入ノズル
(22)の複数のガス出口が、前記ガス注入ノズル
(22)の底面に配置される
か、又は、前記ガス注入ノズル
(22)の底面及び側面に配置され
ており、かつ/又は、
少なくとも1つの結晶シリコンライナープレート
(42)が、前記誘電体容器
(12)の内壁に近接して配置され
ており、かつ/又は、
少なくとも1つの結晶シリコン制限要素
(25)が、前記プラズマ空間
(32)を前記排気マニホールド
(27)に接続する開口に配置され、前記結晶シリコン制限要素
(25)は、前記プラズマ空間
(32)のプラズマが前記排気マニホールド
(27)に流入することを防ぐように構成されている、請求項
8に記載の装置。
【請求項10】
エピタキシャル堆積前にウェハを調製するための装置において、
プラズマ空間
(32)を形成する誘電体容器
(12)であって、前記プラズマ空間
(32)は排気マニホールド
(27)と流体連通し、前記排気マニホールド
(27)は真空ポンプライン
(28)に接続されている、前記誘電体容器
(12)と、
前記プラズマ空間
(32)の隣に配置された支持台座
(14)であって、前記支持台座
(14)は、半導体ウェハ
(16)を支持しかつ前記半導体ウェハ
(16)の温度を少なくとも300℃に上げるように構成されている、前記支持台座
(14)と、
水素ガス供給源
(18)及びそのフローを制御するコントローラ
(50)であって、前記水素ガスは前記供給源
(18)から管を通って前記誘電体容器
(12)の1又は複数のガス入口
(21)へと流れる、前記水素ガス供給源
(18)及び前記コントローラ
(50)と、
前記誘電体容器
(12)の少なくとも1つの面の外側に近接して配置された誘導コイル
(34,40)と、
インピーダンスマッチング回路
(38,44)を介して前記誘導コイル
(34,40)に接続された高周波(RF)電源
(36)と、
電気的に接地されかつ前記誘導コイル
(34,40)と前記誘電体容器
(12)との間に配置されたスロット付き静電シールド
(46,48)と、
前記プラズマ空間
(32)を前記排気マニホールド
(27)に接続している開口に配置された少なくとも1つの結晶シリコン制限要素
(25)であって、前記結晶シリコン制限要素
(25)は、前記プラズマ空間
(32)のプラズマが前記排気マニホールド
(27)に流入することを防ぐように構成されている、前記結晶シリコン制限要素
(25)と、を有
し、前記結晶シリコン制限要素(25)が、前記誘電体容器(12)に取り付けられている、装置。
【請求項11】
少なくとも1つの結晶シリコンライナー
(42)が、前記誘電体容器
(12)の内壁に近接して配置されて
おり、かつ/又は、
ガス注入ノズル
(22)が、前記支持台座
(14)の反対側にある前記誘電体容器
(12)の上面の中央から延在し、少なくとも前記誘電体容器
(12)の上面から前記支持台座
(14)までの距離の3分の1まで延在している、
請求項
10に記載の装置。
【請求項12】
エピタキシャル堆積前にウェハを調製するための装置において、
プラズマ空間
(32)を形成する誘電体容器
(12)であって、前記プラズマ空間
(32)は排気マニホールド
(27)と流体連通しており、かつ前記排気マニホールド
(27)は真空ポンプライン
(28)に接続されている、前記誘電体容器
(12)と、
前記プラズマ空間
(32)の隣に配置された支持台座
(14)であって、前記支持台座
(14)は、半導体ウェハ
(16)を支持しかつ前記半導体ウェハ
(16)の温度を少なくとも300℃に上げるように構成されている、前記支持台座
(14)と、
前記誘電体容器
(12)の少なくとも1つの面の外側に近接して配置された誘導コイル
(34,40)と、
インピーダンスマッチング回路
(38,44)を介して前記誘導コイルに接続された高周波電源
(36)と、
電気的に接地されたスロット付き静電シールド
(46,48)であって、前記スロット付き静電シールド
(46,48)は前記誘導コイル
(34,40)と前記誘電体容器
(12)との間に配置されている、前記スロット付き静電シールド
(46,48)と、
水素ガス供給源
(18)及びそのフローを制御するコントローラ
(50)、並びに前記供給源
(18)と前記誘電体容器
(12)の1又は複数のガス入口
(21)とに接続された管と、を有し、
1又は複数の前記ガス入口
(21)は、前記支持台座
(14)の第1の側面の隣にある前記誘電体容器
(12)の壁に配置されており、
前記プラズマ空間
(32)を前記排気マニホールド
(27)に接続する開口が、前記支持台座
(14)の前記第1の側面の反対側にある前記支持台座
(14)の第2の側面の隣に配置されることによって、水素ガスが前記半導体ウェハ
(16)の表面に対して実質的に平行に流れ
、
前記支持台座(14)が、前記半導体ウェハ(16)の温度を約850℃に上げるように構成されている、装置。
【請求項13】
前記誘電体容器
(12)が円筒形であり、かつ、前記誘電体容器
(12)の高さが前記誘電体容器
(12)の半径の半分より小さ
く、かつ/又は、
結晶シリコン製の少なくとも1つのライナー
(42)が、前記誘電体容器
(12)の内壁に近接して配置されている、請求項
12に記載の装置。
【請求項14】
エピタキシャル堆積前にウェハを洗浄しかつ再構成するための方法において、
誘電体容器(12)内に形成されたプラズマ空間(32)の隣に配置された支持台座(14)の上にウェハ(16)を載置し、前記プラズマ空間(32)は、真空ポンプライン(28)に接続された排気マニホールド(27)と流体連通しており;
第1のガスの制御されたフローを前記プラズマ空間(32)に注入し;
前記誘電体容器(12)の少なくとも1つの面の外側に近接して配置された誘導コイル(34,40)に高周波(RF)電源(36)からインピーダンスマッチング回路(38,44)を介してRF電力を供給し、それにより前記プラズマ空間(32)内の第1のプラズマを維持して前記ウェハ(16)から汚染物質を除去し、その場合、スロット付き静電シールド(46,48)が電気的に接地されかつ前記誘導コイル(34,40)と前記誘電体容器(12)との間に配置されており;
残留ガス解析装置(54)により前記排気マニホールド(27)内の汚染物質の濃度を検知し;
前記残留ガス解析装置(54)により検知された前記汚染物質の濃度が所定のレベル未満に低下したとき、前記誘導コイル(34,40)へのRF電力を終了させかつ
前記第1のガスのフローを終了させ;
前記支持台座(14)により、前記ウェハ(16)を少なくとも700℃に加熱し;
第2のガスを前記プラズマ空間(32)に注入し;かつ
前記誘電体容器(12)の少なくとも1つの面の外側に近接して配置された誘導コイル(34,40)に高周波(RF)電源からインピーダンスマッチング回路(38,44)を介してRF電力を供給し、それにより前記プラズマ空間(32)内の第2のプラズマを維持し、前記第2のプラズマは前記支持台座(14)からの熱と合わさって前記ウェハ(16)を少なくとも750℃に加熱することによって、薄膜のヘテロエピタキシーのために前記ウェハ(16)の結晶表面を再構成し、
その場合、ライナー(42)が、前記第1及び第2のプラズマにより前記誘電体容器(12)の表面がエッチングされかつスパッタリングされることを防ぐことによって、前記プラズマ空間(32)に汚染物質が放出されることを実質的に防止し、その場合、前記ライナー(42)は、結晶シリコン又はポリ結晶シリコンのうち少なくとも1つを有する、方法。
【請求項15】
前記第1のガスが、前記誘電体容器
(12)内に配置されたガス注入ノズル
(22)を通して前記プラズマ空間
(32)に注入され、前記ガス注入ノズル
(22)は、前記支持台座
(14)の反対側に位置する前記誘電体容器
(12)の上面に配置された少なくとも1つのガス入口
(21)に接続され、かつ前記誘電体容器
(12)の上面から前記支持台座
(14)までの距離の少なくとも3分の1まで延在して
おり、かつ/又は、
前記残留ガス解析装置
(54)により検知された前記排気マニホールド
(27)内の酸素の濃度が、1ppm未満に低下したとき、前記第1のガスの流れを終了
し、かつ/又は、
前記ウェハ
(16)の表面のプレ洗浄及び再構成によって1cm
2当たり5×10
9個未満の欠陥密度が得られ
、かつ/又は、
前記第1のガスが、前記誘電体容器
(12)内の再循環を生じずに前記誘電体容器
(12)を通って前記支持台座
(14)の周囲を流れて前記排気マニホールド
(27)へと流れるように、前記第1のガスが注入され
、かつ/又は、
前記第1のガスが水素を有し、かつ、前記第2のガスがヘリウム、NF
3、F
2又はH
2のうち少なくとも1つを有する、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体容器及びそれに関係する部品、並びに、半導体材料のヘテロ又はホモエピタキシャル堆積前に(パターンなし又はありの)ウェハの表面調製のためにその誘電体容器内で行われるプラズマベースの表面再構成プロセスに関する。このようなエピタキシーは、トランジスタにおける重要ではない領域又はチャネルのような重要な領域のいずれにおいても行うことができる。そのプロセスは、ウェハ表面を損傷することなく自然酸化物をエッチングし、酸素、炭素及びアモルファスシリコン等の汚染物質を除去するためにプラズマ中の水素原子を用いる。それによってウェハが、III-V又はその他の半導体材料の高品質エピタキシーのための準備がなされた高品質結晶表面を有することになる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、エピタキシャル堆積前の洗浄プロセスを開示しており、表面上の自然酸化物又は汚染物質を除去するために、不特定なタイプの高周波(RF)励起プラズマが、不特定なエッチングガスから形成される。ガス圧力又は高周波電力の電力密度若しくは結合モードは提示されていないと思われる。
【0003】
特許文献2は、自然酸化物(~50A)をスパッタリング除去するために20eV~100eVのイオンエネルギーをもつアルゴンプラズマを用い、その後、アルゴンイオン衝撃により損傷したシリコンを除去するために極めて小さいイオンエネルギーをもつ水素プラズマを用いる洗浄方法を開示している。
【0004】
特許文献3は、水素ガスを用いた純粋に熱的な自然酸化物除去プロセスを開示しており、酸素の除去及びシリコンウェハの表面欠陥の回避を提供する。プラズマは用いられないため、約1000℃を超える温度を必要とする。
【0005】
特許文献4は、ケイ化物を形成するための金属堆積前の洗浄プロセスを開示している。そのプロセスは、100SCCMのフローで100Paのガス圧力のH2とアルゴンの混合物による、約500Wの電力レベルの-容量結合した-水素ガスプラズマを用いる。特許文献4は、洗浄プロセス後に得られる表面の結晶状態又は汚染レベルを記載又は特定していない。
【0006】
特許文献5は、パターン化ウェハ表面の遠隔プラズマエッチングを開示する。遠隔プラズマエッチングは、エピタキシープロセス前には行われず、エッチング後の表面の結晶化度には関係しないようである。プラズマは、NF3ガス及びNH3ガス並びに水素を主に含む水素フッ素ガス混合物を用いて与えられる。反応機構は、2つのステップに分けられる。最初に、プラズマ中で自然酸化物、NF3及びNH3の反応から付加物が形成される反応ステップが実行され、その後、高温で付加物が蒸発する昇華ステップが実行される。
【0007】
特許文献6は、相互接続又は接点のためのウェハ表面の金属化前のプレ洗浄プロセスを開示している。水素、ヘリウム及びアルゴンを含むガス混合物が、誘導結合プラズマ源とウェハサポートに適用される低電力RFバイアスの双方を用いてチャンバに供給される。発明者らは、特許文献6のこのプロセスが清浄さをもたらすが、その後の低欠陥エピタキシャル膜の成長には不適切な損傷した表面(アルゴンイオン衝撃による)を生成し、基板材料の一部も除去することに留意する。
【0008】
特許文献7は、ウェハ表面から自然酸化物を除去するための、水素ガスを用いた静電シールド誘導結合プラズマ源を開示している。主なプロセスの適用は、コバルトの堆積及びケイ化コバルトの形成前の接点領域の表面洗浄である。この方法の使用は、上述した方法により生じる幾つかの問題、例えばイオン損傷によるシリコンの浸食及び深い結晶欠陥を回避する。特許文献7では、チャンバが、プラズマ容器の上面中央開口からガスを注入するように構成されている。さらに、コイル内の真空チャンバの壁が、磁場透過に必要な非導電材料からなる。最後に、プレ洗浄プロセスが、特許文献7の用途では、ウェハ表面から汚染物質を除去するために適切な予め規定された時間で行われる。発明者らは、特許文献7の欠陥レベル性能は、特許文献7の用途に適切な1cm2当たり1×1011~1×1012個の欠陥となり得ることに留意する。しかしながら、この欠陥レベルは、ヘテロエピタキシーの前の表面調製方法として、特にチャネルなどのトランジスタの超高感度領域においてははるかに高すぎる。
【0009】
特許文献8は、プラズマと隣接する誘電体ライナーを有する静電シールド誘導プラズマを開示している。このようなライナーは、石英と高純度セラミックで作製できる。発明者らは、このようなライナー材料は、典型的には酸化アルミニウムを含んでいるため、プラズマ源の気相に侵入し得る酸素の発生源、及び可能性として金属不純物の発生源となり得ることに留意する。
【0010】
特許文献9は、ゲルマニウム又はIII-V材料を含む場合があるウェハ表面材料上の酸化物から酸素を除去するための水素ベースの洗浄プロセスを開示している。水素は、ウェハから離れたチャンバ内で解離し、原子水素が、ウェハを保持する別のチャンバへと流される。ウェハを支持する台座は、比較的小電力のRFバイアス(50W~150W)を印加され、そしてプロセスチャンバ内のガス圧力は、約100mTorrである。発明者らは、実質的なエネルギーによるウェハのイオン衝撃が発生し、ゲルマニウム又はIII-V材料であるウェハ表面材料の表面近傍層を損傷させ得ることに留意する。この洗浄後、ケイ化物接点又はゲート誘電体/ゲート電極を表面上に堆積させ得るが、表面上のエピタキシャル堆積には言及されていないようである。洗浄プロセス後の表面の結晶化度についても考慮されていないようである。
【0011】
現状(最先端のウェハ製造設備に現在導入されている10nmノード)までのところ、半導体製造におけるパターン化ウェハ上のヘテロエピタキシーの適用は、接点(ソース/ドレイン再成長)領域における堆積を含み、トランジスタのチャネルにおける堆積は含んでいなかった。接点においては、堆積されたエピタキシャル層は、Geであれ他の材料であれ、接点の機能を損なうことなく欠陥を有する場合がある。この場合の表面再構成は不要である。なぜなら、堆積した層の欠陥は重要ではないからである。ホモ及びヘテロエピタキシーの成功は、パターンニングの前にベアウェハ上で日常的に行われている。しかしながら、パターン化ウェハ上のシリコン上のIII-Vのようなヘテロエピタキシーの将来の用途では、最適な相互コンダクタンスを有しかつ望ましくない副作用を避けるために、欠陥のないチャネルにヘテロエピタキシャル層を堆積することになるであろう。
【0012】
従来技術におけるエピタキシーの前の前処理の方法は、上述したように、非荷電粒子が用いられる高温でのガスエッチングを採用するか、又は、低いウェハ温度で汚染物質をエッチング除去するためにある種のプラズマ生成された反応種の使用を含む。ガスエッチングを可能とする温度は少なくとも900℃であり、それはエッチングガスと表面上の汚染物質との化学反応を活性化してそれらを揮発性種に変換してポンプで排出するために必要である。このような方法は、通常、超清浄なチャンバ条件を維持することにより壁から来るウェハの汚染を回避することができる。ほとんどの熱的洗浄の適用においては、このような処理における最大の「サーマルバジェット(熱収支)」があり、それは、所定の温度範囲でプロセス時間を短く維持する必要がありかつ最大温度を超えてはならないことを意味する。
【0013】
ベアウェハ上での結晶材料のブランケットヘテロエピタキシャル成長のための調製において、水素又は他のガスを用いたシリコンウェハの効果的な洗浄は、日常的に高温(>900℃)のガスによるウェハ処理を用いて行われている。しかしながら、トランジスタ製造のためのパターンニングが一旦開始されると、このような高温はウェハのサーマルバジェットの範囲内に収まらない場合がある。長い焼成時間を伴う高温(>900℃)による既存のウェハパターンに対する化学的及び機械的影響は、半導体デバイスに対して次のような問題を生じ得る:1)ソース/ドレイン領域の浅い注入ドーパントの損失、2)エピタキシャル成長用のトレンチを具備するパターン化ウェハに対する損傷、及び、3)HF洗浄とH2焼成の併用による重要なデバイス寸法の変化。
低温(<850℃)では、熱的汚染物質除去のプロセス時間の長さが過大となる。なぜならその速度が温度とともに指数関数的に低下するからである。このような熱的/化学的洗浄も、表面汚染を完全に除去できないことがあるが、通常は適切な結晶化度の表面を生じ、引き続きエピタキシャル層を成長させる。高温洗浄の利点は、汚染物質が除去された後に、結晶構造に適切に組み込まれなかった可能性のあるシリコン原子の再結晶化を同時に促進することである。
【0014】
プラズマベースの前処理は、通常、熱的な前処理よりも遙かに低いウェハ温度を有し、通常600℃未満である。プラズマは、解離又は気相反応によって、種を活性化し又は反応性ラジカルを形成するために用いられる。汚染物質除去のための反応種を生成するプラズマを用いたプレ洗浄処理は、多様な異なるプラズマ構成を用いて行われてきた。幾つかの従来技術の特許は、RF帯における電力の容量結合、誘導結合、又は、UHF若しくはマイクロ波帯の電磁結合を含むプラズマ生成の多様な方法を用いて、反応種生成のためにプロセスチャンバ内でプラズマを用いる。
【0015】
汚染物質と化学的に反応するガス種を活性化するプラズマを用いたプロセスは、CVDチャンバで用いられ、金属化の前のウェハで用いられ、さらには幾つかのホモエピタキシャル堆積プロセスでさえ普通に用いられる。しかしながら、このような洗浄プロセスでは、通常、スパッタリング又はチャンバ壁からの汚染物質の放出によって、許容できない量の表面汚染物質(>>1×1010/cm2)が残り、そしてほとんど常に、結晶格子からの原子の転位を生じさせるのに十分なエネルギーによるウェハのイオン衝撃がある。このような酸素の汚染レベルは、一般的に、ほとんどのエピタキシー層に中程度から高度の欠陥密度を生じさせ、そして、壁からの他の汚染物質がこの状況を悪化させることになる。上記の問題があることから、直接プラズマ洗浄は、より敏感な半導体膜のエピタキシープロセス前の洗浄及び表面調製のための高度な技術ノード(約10nm未満の臨界寸法)における全ての要件を満たすことに未だに成功していない。従来技術における直接プラズマ洗浄の欠陥レベルは極めて高く、特に化学的に異なる単結晶を原材料表面上に堆積するヘテロエピタキシーにおいて高い。このような層は、表面層の結晶と基板の結晶との間に「格子不整合」を有し、それによって汚染物質に対して特に敏感となる。
【0016】
それに替えて、幾つかの従来技術では、表面から汚染物質をエッチングする反応種を生成するプラズマを、遠隔プラズマと呼ばれる別のチャンバで形成することができる。遠隔プラズマが用いられるほとんどの場合、反応種の自然酸化物や他の汚染物質との反応を促進するためにウェハ表面上で活性化エネルギーの別の供給源が必要である。このようなプレ洗浄プロセスのために、フッ素ベース及び水素ベースのガスを含め、不活性ガス及び反応性ガスを含むガス混合物としてそれらを用いた多くのアプローチによる多様なプロセス化学が用いられてきた。いくつかの近接及び遠隔プラズマのプレ洗浄システムは、ウェハ表面の酸素の除去と自然酸化物の還元のための主要な反応種として水素ガスを使用してきた。
【0017】
「ダウンストリーム」プラズマベースのガス活性化を用いたプレ洗浄プロセスは、反応種を生成するために用いられるプラズマを別のチャンバがサポートするが、プロセスチャンバ内でのスパッタリング及び結晶損傷の問題を回避し、そして壁から放出される汚染物質の量を低減する可能性がある。しかしながら、プラズマチャンバの壁からスパッタリングされ又は脱離され得る汚染物質が、プロセスチャンバに流入する活性化ガスに追随することによってウェハが汚染される可能性がある。さらに、このようなプレ洗浄プロセスは、通常はゆっくりであり、そしてウェハ上の表面反応のための別の活性化エネルギーの供給源がなければ普通は完全に炭素及び酸素の汚染物質をウェハから除去できない。この活性化エネルギーは、エッチャント種と表面汚染物質との反応生成物を除去するべくかつ処理時間を短くするべく、ラジカルと表面酸化物又は他の種との反応を促進するために重要である。通常、「ソフト」プラズマは、ソフトイオン衝撃、UV衝撃又は電子衝撃の形態で活性化エネルギーを付与するためにプロセスチャンバ内で用いられる。しかしながら、RFを用いる場合もDCを用いる場合も、プラズマを維持することは極めて困難であり、プラズマ電位が極めて低いためにイオン衝撃やスパッタリングを生じない。UV照射は、活性化エネルギーの1つの可能なクリーンな供給源であるが、それを利用する商用技術が未だなく、そして他のデータ(特許文献6)は、実質的なエッチング又は洗浄の速度をもたらすには非常に高いエネルギーのフォトン(例えば、ヘリウム励起などからのVUV)を必要とする場合があることを示しているが、それは外部の照射源から提供することは困難である。
【0018】
ウェハの表面結晶構造を再構成するためのチャンバは、一般的に少なくとも1000℃の温度に対応できる熱アニールチャンバである。これらのアニールチャンバは、通常、アニールチャンバを中央処理システムに接続することにより、処理システムに組み込む必要がある。これによって、プレ洗浄チャンバから来るウェハを、ウェハの表面上に薄膜が成長させられるエピタキシャル成長チャンバに非汚染環境で移動する前に、アニールチャンバ内で速やかに再構成することができる。しかしながら、パターン化ウェハにとってはこの温度は非常に高すぎるため、上述した通り、ウェハ上のトランジスタ用パターンを損傷させることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】米国特許第8,152,918号明細書
【文献】米国特許第5,252,181号明細書
【文献】米国特許第6,995,077号明細書
【文献】米国特許第6,811,448号明細書
【文献】米国特許第8,501,629号明細書
【文献】米国特許第7,053,002号明細書
【文献】米国特許第6,776,170号明細書
【文献】米国特許第5,903,106号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0011339号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
温度及び処理時間の制約を考慮すると、いずれの従来技術の洗浄装置及び方法も、ウェハ表面を十分に洗浄せず、そして、極めて低い欠陥密度の、薄膜のエピタキシャル堆積のための十分な表面結晶化度を保持しない。特許文献3のような非プラズマ法は、数時間未満の処理時間とするためには1000℃を遙かに超える温度を必要とするが、パターン化ウェハは850℃を超える温度に耐えられない。水素原子などの活性化された水素種を生成するためにプラズマを利用する他の従来の方法及び装置には、以下の欠点があった:ウェハの重要な表面層に結晶損傷を生じること;壁からの汚染物質がウェハに到達できそこに欠陥を残すこと;ウェハ表面材料の除去が多すぎること;ウェハ表面上に残す欠陥が多すぎるために最高品質のエピタキシャル膜の成長ができないこと。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の一実施形態によれば、プレ洗浄プロセス中、半導体ウェハが、金属筐体内の誘電体容器内に配置され、そして水素を有する誘導結合プラズマ(誘電体容器のプラズマ空間で生成されたもの)が、半導体ウェハの表面から汚染物質(例えば、酸素、炭素)を除去するために用いられる。プラズマからの反応種が、半導体ウェハの表面上の汚染物質と結合して揮発性化合物を形成し、それらがウェハ表面から脱離され、誘電体容器から排気マニホールドへと排気され、その後、排気マニホールドから排出される。以下の技術及び装置の1又は複数が用いられることで、半導体表面上において5×109/cm2未満の低い欠陥密度が得られる。
【0022】
本発明の幾つかの実施形態によれば、水素ガスを注入ノズルを介してプラズマ空間内に注入することができ、注入ノズルは、誘電体容器の上面から、誘電体容器の上面を半導体ウェハの表面から分離する距離の少なくとも3分の1まで延在する。別の実施形態では、水素と3フッ化窒素等のフッ素化ガスとの混合物を注入することができる。半導体ウェハ表面の近傍(一般的に誘電体容器の半径の約半分より小さい)における水素ガスの注入によって、注入ノズルがウェハ表面から容器半径の半分より大きいところに位置する場合に比べて、ウェハの表面の直ぐ上方でガスの径方向外向きの速度が大きくなる。ガスが、ウェハ表面から離れた中央ガス入口から直接注入されるのではなくウェハの近傍で注入される実施形態においては、誘電体容器から搬送される揮発性化合物及び他の汚染物質の増加、及び、半導体ウェハ表面上への汚染物質の再堆積の低減という効果が得られる。この細長い注入ノズルによって、処理に必要な時間が短くなると共に、幾つかの場合、プロセスの完了時におけるウェハの清浄さのレベルが向上する。
【0023】
本発明の幾つかの実施形態では、誘電体容器が、低いプロフィール(例えば、誘電体容器の高さが誘電体容器の半径の半分より小さいか又はほぼ等しい)を有することができる。低いプロフィールのフロー速度場に対する影響は、ウェハ表面の直ぐ上方のガスが(ガスが高いプロフィールをもつ誘電体容器内に注入される場合に比べて)より大きな径方向速度を有することができるという点で、細長い注入ノズルの影響と類似している。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、プラズマからの反応種に対して不活性な材料からなる保護表面層が、内側の誘電体壁(すなわち誘電体容器の内壁)を覆っている。このような表面材料層は、物理的なライナー又はその上のコーティングの形態をとることができ、誘電体容器の内面近傍に、又は、内側の容器壁上のコーティングとして配置することができる。幾つかの好ましい実施形態では、材料の保護表面又は保護層を、結晶シリコン製又はポリシリコン製の薄いシート材料のライナーの形態とすることができる。このようなライナーは、約1mm又はそれより大きい厚さを有することができ、誘電体壁の近傍とするべきであるが、誘電体壁に取り付ける必要はなく、自立させることもできる。他の実施形態によれば、保護層が誘電体容器の内壁上のコーティング又は誘電体容器の内側に装着された別の非導電性構造の上のコーティングとすることができ、そのようなコーティングはY2O3(高密度イットリア)、La2Zr2O7(ジルコン酸ランタン)、窒化チタン、窒化タンタル又は窒化アルミニウムとすることができ、これらの全てが、原子水素による還元に対して化学的に極めて安定である。このような保護表面材料は、(原子水素による還元の結果として生じる)汚染物質が誘電体容器から放出されガスを通して半導体ウェハ表面に拡散することを防止する。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、排気リストリクタにより形成された排気制限要素によって、排気マニホールド内でプラズマが形成することを防止し、さらに、汚染物質を含む揮発性化合物及び他の化学化合物が排気マニホールドから誘電体容器に逆流拡散することを防止する。排気リストリクタは、誘電体容器内に汚染物質を導入することがないシリコン等の材料から作製されるか、又は、誘電体容器の内壁上又は内壁近傍の保護表面のような不活性コーディングによりコーティングされた誘電体材料から作製されることが好ましい。
【0026】
本発明の幾つかの実施形態では、プラズマ空間内の汚染化学種のレベルを計測するために残留ガス解析装置(RGA)を用いることができる。RGAのサンプリングポートは、誘電体容器の壁上に配置することができ、その場合、誘電体容器内のプロセスガス中の汚染物質のレベルが直接計測される。あるいは、RGAのサンプリングポートを排気マニホールド内に配置することができ、その場合、誘電体容器から排気された直後のガス中の汚染物質のレベルが計測される。RGAは、プレ洗浄プロセスの開始前に汚染物質のレベルを計測することができる(すなわち、汚染物質のレベルが許容可能なレベル未満のときにのみプレ洗浄プロセスを開始する)。RGAにより計測される汚染物質のレベルは、プレ洗浄プロセスをいつ終了させるかを決定するためにも用いることができる(すなわち、汚染物質のレベルが許容可能なレベル未満のときにプレ洗浄プロセスを終了する)。このようなRGAは、好ましい実施形態では、高感度を有しかつ10-6パスカルより十分低い汚染物質分圧を計測することができる。
【0027】
幾つかの実施形態では、プレ洗浄プロセスが行われた同じ誘電体容器内で、ウェハの表面結晶化度を再構成させるためにウェハを約850℃に加熱することができる。ウェハは、プラズマなしでランプにより又は加熱された支持台座に近接することにより、加熱することができ、そして幾つかの実施形態では、再構成が行われている間にプラズマを作動させることができ、プラズマによるウェハの加熱が、ウェハ温度を必要な温度に上げるために必要な電力の一部を提供する。幾つかの実施形態では、表面結晶化度の再構成のためのエネルギーを、プラズマからのイオンによる表面の衝撃から得ることができる。しかしながら、イオン衝撃のエネルギーは、結晶の原子の転位形成の閾値を超えてはならない。シリコンについては、このような閾値は、酸素又はフッ素等のイオン種において約15eVである。一方、幾つかの化合物半導体材料については、閾値が25eV程度の場合がある。
【0028】
これらの又は他の本発明の実施形態は、以下の図面に関してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による、半導体ウェハの表面を調製するための装置、並びに電気制御部品及び水素ガス源の断面図を示す。
【
図2】
図2は、ウェハ表面の中央部上に汚染物質が堆積している、半導体ウェハの表面を調製するための装置の断面を示す。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態による、細長いガス注入ノズル及び保護ライナーを含む、半導体ウェハの表面を調製するための装置の断面を示す。
【
図4】
図4は、本発明の幾つかの実施形態による、側面及び底面のガス出口を有する細長いガス注入ノズルを具備する、半導体ウェハの表面を調製するための装置の断面を示す。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態による、低い誘電体容器高さを有する、半導体ウェハの表面を調製するための装置の断面を示す。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態による、水素ガスが、支持台座の第1の側の隣の誘電体容器の壁に配置されたガス入口から注入され、排気ガスが、支持台座の第2の側の隣に配置されたガス出口から排出される、半導体ウェハの表面を調製するための装置の断面を示す。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態による、低い誘電体容器高さを有すること以外において、
図6に類似する装置の断面を示す。
【
図8A】
図8Aは、本発明の幾つかの実施形態による、円筒形のスロット付き静電シールドの斜視図を示す。
【
図8B】
図8Bは、本発明の幾つかの実施形態による、ディスク形状のスロット付き静電シールドの斜視図を示す。
【
図9A】
図9Aは、本発明の幾つかの実施形態による、スロット付き保護ライナーの側面部の斜視図を示す。
【
図9B】
図9Bは、本発明の幾つかの実施形態による、スロット付き保護ライナーの上面部の斜視図を示す。
【
図10A】
図10Aは、本発明の幾つかの実施形態による、スロットのない保護ライナーの側面部の斜視図を示す。
【
図10B】
図10Bは、本発明の幾つかの実施形態による、スロットのない保護ライナーの上面部の斜視図を示す。
【
図11A】
図11Aは、本発明の幾つかの実施形態による、ライナー材料の曲面パネルにより形成された保護ライナーの平面図を示す。
【
図11B】
図11Bは、本発明の幾つかの実施形態による、平面パネルにより形成された保護ライナーの平面図を示す。
【
図12A】
図12Aは、(特許文献7の
図1の実施形態などのチャンバ内での)シリコンウェハのプレ洗浄及び洗浄されたシリコンウェハ上でのIII-V材料のヘテロエピタキシャル堆積の双方を含む組合せプロセス後の半導体ウェハの概略を示す(UV光を照射する診断ツールからの画像を表現している)。
【
図12B】
図12Bは、(保護ライナーはないが
図5の実施形態のようなチャンバ内での)プレ洗浄及びIII-V材料のヘテロエピタキシャル堆積を含む組合せプロセス後の半導体ウェハの概略を示す(UV光を照射する診断ツールからの画像を表現している)。
【
図12C】
図12Cは、(保護ライナーはないが
図1の実施形態のようなチャンバ内での)プレ洗浄及びIII-V材料のヘテロエピタキシャル堆積を含む組合せプロセス後の半導体ウェハの概略を示す(UV光を照射する診断ツールからの画像を表現している)。
【
図13A】
図13Aは、本発明の幾つかの実施形態による、シリコン基板の表面上にIII?V層をエピタキシャル成長させるプロセスの様々な時点にわたるシリコンウェハの断面を示す。
【
図13B】
図13Bは、本発明の幾つかの実施形態による、シリコン基板の表面上にIII?V層をエピタキシャル成長させるプロセスの様々な時点にわたるシリコンウェハの断面を示す。
【
図13C】
図13Cは、本発明の幾つかの実施形態による、シリコン基板の表面上にIII?V層をエピタキシャル成長させるプロセスの様々な時点にわたるシリコンウェハの断面を示す。
【
図13D】
図13Dは、本発明の幾つかの実施形態による、シリコン基板の表面上にIII?V層をエピタキシャル成長させるプロセスの様々な時点にわたるシリコンウェハの断面を示す。
【
図13E】
図13Eは、本発明の幾つかの実施形態による、シリコン基板の表面上にIII?V層をエピタキシャル成長させるプロセスの様々な時点にわたるシリコンウェハの断面を示す。
【
図14】
図14は、本発明の方法をインスタンス化する(すなわち実行する)コンピュータ可読命令が格納されかつ実行され得るコンピュータシステムの構成要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下の好ましい実施形態の詳細な説明においては、本明細書の一部を形成しかつ本発明を実施することができる特定の実施形態を例示として示す添付の図面を参照する。本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用することができ、構成上の変更を行うことができることを理解されたい。幾つかの図面に関係付けられた説明は、同様又は類似の構成要素/ステップを含む別の図面に適用可能である。シーケンス図は、それぞれ特定の順序で一連のステップを示しているが、一部のステップの順序は変更される場合がある。
【0031】
半導体IC製造においては、エピタキシー、特にヘテロエピタキシーの前に完了することができるウェハ前処理プロセスの2つの独立した機能がある。まだ明らかでないならば、「前処理」における「処理」は、その後のエピタキシー処理のことを指す。第1の機能であるウェハ表面洗浄(プレ洗浄プロセスとも称する)は、ウェハ表面上の汚染物質が除去されるプロセスステップである。第2の機能であるウェハ表面の再構成は、複数の平行した結晶面をそれらの間の「段」と共に形成するための、ウェハ表面再成長又は修正を含む。現在まで(現在最先端の製造システムに導入されている10nmノード)、半導体製造においてパターン化ウェハ上のヘテロエピタキシーへの適用は、接点(ソース/ドレイン再成長)領域における堆積を含み、トランジスタのチャネルにおける堆積を含んでいなかった。接点では、堆積されたエピタキシャル層は、Geであろうと他の材料であろうと、接点機能を損なうことなく欠陥を有する場合がある。この場合、堆積された層中の欠陥は重要ではないので、表面再構成は不要である。ホモ及びヘテロエピタキシーは、パターン化の前のベアウェハ上では日常的に行われ成功している。しかしながら、パターン化ウェハのシリコン上へのIII-Vなどの、ヘテロエピタキシーの将来の適用では、最適な相互コンダクタンスを有しかつ望ましくない副作用を避けるためにほぼ欠陥のないことを必要とするチャネルにヘテロエピタキシャル層を堆積することになる。このため、ほぼ完全な汚染物質除去(通常、酸素が主要な汚染物質)と表面再構成の両方を、ウェハ前処理プロセスで実行する必要がある。
【0032】
本発明の一実施形態では、ほぼ完全なヘテロエピタキシーを行うために必要とされるウェハ表面は、欠陥が1cm2当たり約5×109個未満でなければならず、単結晶でなければならない。さらに、1つの表面結晶平面から別の表面結晶平面へのいずれの「段」も、エピタキシャル層が段において転位を有しないように少なくとも2原子層であるという追加の要件がある。このために、前処理プロセスは、ほぼ全ての表面汚染物質を蒸発させるか又は揮発性種に化学的に変換し、そして同時に、環境又は誘電体容器の壁からウェハへの汚染物質の再流入を最小限に抑制することができる。ウェハ表面が2原子層の段をもつ単結晶平面を有するように「再構成」することは、現在、従来技術のプレ洗浄の後、別のアニーリングチャンバで行われている。
【0033】
現在、非パターン化ウェハ上又はソースドレイン領域でのエピタキシーの前に用いられている、IC製造におけるプレ洗浄のためのプロセス及び装備は、トランジスタのチャネル領域でのエピタキシーの前の、パターン化ウェハのプレ洗浄には許容できないものである。発明者らが知る全ての従来技術は、以下の欠点の1又は複数を有するように思われる:それらの技術では、ウェハの表面における化学的欠陥又は物理的欠陥により堆積層に欠陥が残ること、ウェハ温度を900℃又はそれ以上とすること、又は、基板若しくは表面層材料の除去が多すぎることである。
チャネルにおけるヘテロエピタキシーのような新しい進んだ適用は、おそらく極めて高速の超大型集積(USLI)論理集積回路(IC)共に、おそらくは7nmノードで始まるであろう。上記及び他の特許に記載されているプレ洗浄システム及び関連する表面調製並びに再構成方法のための従来技術は、高度なデバイスの生産におけるウェハ調製に必要な以下のタスクの少なくとも1つを達成できない:
・ウェハ表面から酸素、炭素、フッ素、弱結合シリコンを含む汚染物質をほぼ完全に除去すること。プレ洗浄後の表面欠陥密度が、約5×109/cm2未満でなければならない。
・誘電体容器壁からウェハ表面に来る汚染物質を最小限とすること。
・(ウェハ近傍のプラズマからの汚染物質の除去をより困難とする)汚染物質のリサイクルとなるプラズマ空間内のガス再循環を最小限とすること。
・ウェハ台座の下の排気マニホールドからの汚染物質の逆拡散を最小限とすること。
・ウェハ上のパターンニングを保存するためにウェハ温度を850℃未満に維持すること。
・面領域間の階段状の移行を有する結晶表面をもつ表面を残すこと。
・合理的なコスト、プロセスの再現性、プロセスの移行性、及び高い可用性を有する量産ツールにおいて短いプロセス時間(5~10分)及び高い生産性を実現すること。
【0034】
従来技術のチャンバ及びプロセスは、通常、上述した要件の幾つかを実現するが、それらの1つ又は複数を欠いている。上記のタスクの全てを満足するプレ洗浄チャンバ及びプロセスのみが、高度な(<10nm)半導体デバイス用のパターン化ウェハ上のヘテロエピタキシーのための半導体製造システムにおいて成功する可能性がある。
【0035】
プレエピタキシー表面調製のために誘導結合プラズマを用いるプレ洗浄チャンバは、通常、容量結合プラズマを用いるプレ洗浄チャンバよりも容積において大きく、より低いガス圧力で作動し、かつ、チャンバ周囲の注入リング又はプレ洗浄チャンバ(すなわち、プラズマチャンバ又はプラズマリアクタとも称される)の上面の中央ノズルのいずれかからのガス注入を有する。通常、プラズマチャンバの壁は、石英又はアルミナセラミック製であり(特許文献8参照)、酸素及び他の汚染物質の発生源となり得る。ウェハに対して近接して離間したシャワーヘッドによりガスフローパターンが設定される容量リアクタでは、ウェハ中心から径方向外向きの強力なガスフローパターンが得られるのに対し、これは、より大きな誘導プラズマチャンバには当てはまらない。
誘導プラズマチャンバの例としては特許文献7を参照されたい。誘導プラズマリアクタは、通常、約5パスカル未満の、通常は2パスカル未満のガス圧力で動作する。この範囲の下限近くの圧力では、大きな容積をもつこのようなプラズマリアクタは、プラズマチャンバ内のバルクガスフローによる汚染物質のチャンバ排気への穏やかな対流輸送をもたらすのみである。汚染物質のこの対流輸送は、過半数のガスが水素であるとき、H2の低分子量と汚染物質の大きな平均自由行程のためにさらに減少する。このように、汚染物質は、極めて非効率的で汚染物質のかなりの部分をウェハへ戻す傾向がある拡散プロセスを介してその一部が排気に到達しなければならない。しかしながら、拡散は、商業的に実施可能な大量生産工場においてウェハから完全に汚染物質を除去するには極めて遅すぎる。
ウェハへの汚染物質の流れの別の機構は、排気マニホールドからの酸素などの種の逆拡散である。排気マニホールドは使用済みのプロセスガスが真空ラインへと流れる途中にある。排気マニホールドの壁は、それらの上に吸着していたり、プラズマ又はガスラジカルの存在下で気相中に放出され得る材料中に含まれるかなりの汚染ガスを有する場合がある。
特にウェハの中心近傍において、ウェハへ酸素などの汚染物質を還流する傾向のある第3の機構は、通常プラズマチャンバの中心軸近傍のプラズマ中において最も正であるDCプラズマ電位である。気相中の酸素汚染物質はこのプラズマ中で負イオンを形成する可能性があり、そしてこれらのイオンがその負電荷のためにDC電界により中心軸の方へ移動させられる。電子は、中心において冷たくかつ密度が低いため、通常、負イオンはそこでの寿命が長くなり、ウェハ中心に落下する。この機構は、汚染物質の酸素をプラズマチャンバの壁から、それらを最も除去しにくいウェハ中心にリサイクルする傾向がある。従来の誘導リアクタは、汚染物質除去及び還流に関して理想的ではなく、そのようなリアクタからの汚染物質の完全な除去は効率的ではない。
【0036】
誘導リアクタにおけるプラズマは、通常、容量リアクタにおけるより高密度であり、純粋な誘導結合(静電シールドを用いる場合)においては、壁に衝突するイオンのエネルギーは通常遙かに小さい。それにも拘わらず、容量リアクタのように、還元ガス又は混合物で作動される誘導プラズマリアクタはなお、石英又はほとんどの誘電体壁材料からプラズマ中への汚染物質の流れを有することとなる。ウェハプレ洗浄チャンバ(特許文献7の
図1と類似)内でこのようなガス注入構成の試験が本発明者らにより行われたとき、ウェハ表面に多くの欠陥が存在したことによって、シリコンウェハ上でのその後のヘテロエピタキシーにおいて、ウェハの大部分に多くの欠陥をもつIII-V層があり、UV蛍光画像で緑がかった色合いとなった。
図12Aは、基板16の表面上に多くの欠陥をもつIII-V層(影のある領域56)を概略的に示している。
【0037】
重要なトランジスタ領域へのヘテロエピタキシーのようにウェハから汚染物質をほぼ完全に除去する適用においては、ウェハ上の汚染物質(例えば自然酸化物)の厚さの変化、又は、誘電体容器若しくは排気マニホールドの壁上の酸素若しくは水分の量の時間的な変化が重要である。この場合、一定の予め設定された処理時間によるウェハ洗浄は、幾つかのウェハでは非効率的となり得る(非常に僅かな汚染物質を有するウェハが不必要に長時間処理される場合)が、他のウェハにおいては、他のウェハの不適切な処理が、幾つかの状況下において処理を失敗させ得る(プレ洗浄プロセス前に、より多くの汚染物質が壁上又はウェハ上に存在する場合)。したがって、エピタキシャルのプレ洗浄のための従来技術の誘導リアクタは、一般的に、ヘテロエピタキシーであろうとホモエピタキシーであろうと、高品質エピタキシーに必要な極めて低い汚染物質の表面密度及び欠陥のないウェハ表面を提供することができない。
【0038】
発明者らは、ウェハの結晶表面の再構成を実現する熱処理を行うように構成され又はそれが可能である従来技術のプラズマベースのチャンバは意識していない。プラズマを生成する構成要素を有する従来技術におけるチャンバは、一般的に、後でトランジスタの一部となるパターン化構造を損傷せずにアニーリングを行う可能性がある非常に高い温度、通常800℃~850℃の間の温度に耐えられない。
【0039】
本発明の1つの目的によれば、プラズマベースの、プレエピタキシーウェハ前処理チャンバ及びプロセスは、ウェハ表面から汚染物質種を完全に除去し、ウェハ上の欠陥/孔食サイトの密度を低減し、かつ幾つかの実施形態では、線状の段をもつウェハ表面に平行な結晶面として露出表面を残すアニーリングを含むべきである。本発明の目的は、さらに特別に以下のうちの1又は複数を含む:
・大量の反応水素原子を効率的に生成しかつHe又はF原子もさらに提供できるよう、ウェハ表面に亘って均一な密度をもつプラズマを含む水素を提供すること。
・壁及び壁材料又はライナー材料に対するイオンエネルギーを制御することによりチャンバ壁からウェハへの汚染物質の流れを最小限とすること。
・ポンピングマニホールドの壁からウェハ上方のプラズマ領域への汚染物質の逆拡散を防止すること。
・ウェハ表面上の自然酸化物と原子水素との化学反応、酸素及び他の汚染物質の化学反応により酸素及び炭素などの元素を気相に取り込み、ウェハ表面上に残る欠陥を5×109/cm2未満とすること。
・誘電体容器を通って排気マニホールドに至るバルクガスフローに巻き込まれることによってウェハ上の空間からガス状汚染物質を効率的に除去すること。
・プラズマ空間における再循環フローが回避されるようにプロセスガスを注入すること。
・イオン衝撃のエネルギーを損傷又はスパッタ閾値未満に維持することによってイオン衝撃によるウェハ表面層の結晶中の欠陥を生じさせないこと。
・排出されたプロセスガスから汚染物質元素がほぼ完全に除去されたときを検知すること。
・ウェハ温度を約850℃未満に維持して、ウェハ表面を段をもつ面で再構成するためにウェハをアニーリングすること。
・結晶材料の1nm未満がウェハの露出層からエッチングされるように、基板材料のエッチングを最小限とすること。
・合理的なコスト、プロセス再現性、プロセス移行性、及び高い可用性を有する量産ヘテロエピタキシーツールにおける高い生産性を可能とすること。
【0040】
プレ洗浄プロセスは、酸素(自然酸化物)及び他の汚染物質種をウェハから実質的に完全に除去し、かつ、エッチング不可能な汚染物質が壁又は排気マニホールドからウェハに接触することを回避する必要がある。このために、プロセスは、ラジカルベースの化学エッチングプロセスにより、通常は原子水素又はフッ素原子を用いて汚染物質要素をウェハ表面上で揮発性化合物に変換することができる。反応生成物は、表面に衝突するUVフォトンやイオンなどのエネルギー種によりウェハから脱離する。両方とも水素含有プラズマにより大量に提供される。そのようなイオンは、反応生成物を脱離させるのに十分なエネルギーを有するべきであるが、結晶に損傷やスパッタリングを生じさせてはならない。脱離されたならば、反応生成物は、バルクガスフロー及び拡散の両方によって誘電体容器から除去することができる。壁をたたくイオンのエネルギーは、プラズマ電位と壁電位の間の差にほぼ等しいが、ウェハをたたくエネルギーは、主にプラズマ電位に依存する。ウェハをたたくイオンは、結晶に欠陥を生成するエネルギー閾値未満でなければならず、その閾値はイオンの種類及び結晶組成に依存する。シリコン結晶については、0+又は他の重いイオンの場合は20eVを超えるイオンエネルギーで転位を生じ得るのに対し、H+イオンの場合は120eVを超えるエネルギーが必要である。壁をたたくイオンについての主な懸念は、それらが、後でウェハに到達する汚染物質の化学エッチングやスパッタリングを促進することである。通常、より重いイオンでは、スパッタリングを生じるのに約20eV超えのエネルギーを必要とするのみであり、これ未満のときでさえ化学エッチングを生じ得る。
【0041】
壁材料は、汚染物質の発生源となってはならず、かつスパッタリングによる金属汚染物質の発生源となり得る金属を含んではならない。さらに、壁材料は、原子水素及びフッ素によるエッチングに可能な限り耐えなければならない。
【0042】
処理時間は、各ウェハがほぼ完全なヘテロエピタキシャル膜成長のための清浄度要件を満たすように、ウェハ表面結晶から汚染物質及び欠陥を完全に除去するのに十分でなければならない。この時間は、量産環境で多数のウェハを洗浄する過程でウェハ毎に大きく異なる場合がある。この処理時間はまた、安全マージンとして、排気中に汚染物質が所定の低レベルに到達する時間を超過して、追加の適度なオーバーエッチング時間を含むべきである。しかしながら、処理時間は、過度及び無駄であってはならない。なぜなら、一時間にできるだけ多くのウェハを処理するような高価な処理システムの商業的競争力にとって不可欠だからである。
【0043】
可能であれば、この前処理プロセスは、化学的汚染物質に加え、ウェハ表面層材料の非結晶結合原子も除去し、又は、表面層を再構成して、ウェハ全体に亘って平面の/段付きの構造をもつ結晶表面を残すようにしなければならない。これは、幾つかの実施形態においては、「非結晶結合」種に対する極めて選択的なエッチングプロセスにより実現できる。シリコン基板の場合、汚染物質要素の除去後、弱く結合した表面上のシリコン原子が、アモルファス中のように存在し得る。このような原子は、結晶構造内に完全に結合した原子よりも容易に表面からエッチングすることができる。トランジスタ製造が既に開始されているパターン化ウェハの場合、ほぼ完全な(すなわち5×109/cm2未満の欠陥)表面洗浄は、ウェハ全体の各ダイについて、エピタキシャル層が堆積されるべきパターン内の全ての領域を含まなければならない。さらに、このようなプロセスは基板材料を過度に除去してはならない(~1nm又はそれ未満)。なぜなら、その材料は、通常、ウェハ上に作製されるデバイスに必要となるからである。理想的には平面領域間の段は、平面のセグメント間の不連続性を最小限に抑えるために、少なくとも2つの原子層でなければならない。前処理プロセスは、ウェハ全体に亘って、すなわちウェハ全体に亘って各デバイスの所望されるエリア上に、欠陥のないヘテロ及びホモエピタキシャル膜を成長させることができなければならない。
【0044】
前処理プロセスは、多様な基板又は表面層(結晶シリコン及びIII-V化合物半導体を含む)上での欠陥のないヘテロ及びホモエピタキシャル成長を可能とすべきである。この洗浄及び表面調製は、GaAs上にInP又はInP上にInGaAsなどエピタキシャル層の上にエピタキシャル層を成長させるように、別の層を成長させるために既に薄い表面結晶層を有するウェハ表面の調製にも適用可能でなければならない。この場合、その後のエピタキシャル堆積のためにウェハを調製する前処理プロセス中に、下層における材料損失が2、3原子単層より多くなってはならない。
【0045】
図1は、本発明の一実施形態による、半導体ウェハの表面を調製する装置の断面と共に、制御構成要素及び水素ガス供給源を示している。表面の調製は、水素含有プラズマを用いた汚染物質(例えば自然酸化物)の除去と、ウェハを750~850℃の温度でアニーリングすることによる表面結晶度の回復を含むことができる。これらの両方のステップは、同じプロセスチャンバ内で生じさせることができる。
【0046】
誘電体容器12は、金属筐体10内に配置することができる。支持台座14は、誘電体容器12の隣に配置することができ、かつ基板16(例えば半導体ウェハ)を支持することができる。支持台座14は、交流(AC)接地に接続されることにより支持台座14のAC電圧を最小に抑えることができる。ヒーター13(例えば抵抗ヒーター)が、基板16の温度を300℃~850℃の間に上げるために支持台座14内に存在することができる。ヒーター13の温度(そして基板16の温度)は、コントローラ50により制御可能である。支持台座14は、支持台座14を上昇又は下降させるように構成されたシャフト15に接続されることができる。シャフト15の動作(そして支持台座14の高さ)は、コントローラ50により制御可能である。
【0047】
バルブ20は、ガス供給源18からプラズマ空間32へのH2ガス又はH2ガスを含む混合物のフローを制御可能である。プラズマ空間32は、誘電体容器12(プラズマチャンバ、プレ洗浄チャンバ又はプロセスチャンバとも称される)内に形成することができる。バルブ20は、コントローラ50により制御可能であり、コントローラ50はH2又は混合ガスのフローを遮断又は導通させることができる。H2又は混合ガスは、管(すなわちガス供給源18とバルブ20とを接続するライン、及び、バルブ20と誘電体容器12のガス入口21とを接続するライン)を通ってガス注入ノズル22へ流れることができる。ガス注入ノズル22は、誘電体容器12の上面から下向きに延在することができる。幾つかの実施形態においては、ガス注入ノズル22が、誘電体容器の上面から支持台座14までの距離の4分の1~4分の3の間に延在することができる。別の実施形態では、ガス注入ノズル22は、誘電体容器の上面から支持台座14までの距離の少なくとも3分の1まで延在することができる。
【0048】
ガス出口24は、ガス注入ノズル22の底面に配置することができ、それを通ってH
2又は混合ガスがプラズマ空間32内に入る。ガス注入ノズル22の細長い形状によって、ウェハ16の表面から5mm~10mmの間の距離におけるH
2又は混合ガスの、プラズマ空間32の中心から外向きの径方向流速が(誘電体容器12のガス入口21から直接プラズマ空間32内に注入されるガスに比べて)増加する。H
2又は混合ガスのフローは、
図2~
図7でさらに説明する。ガス注入ノズル22は、ノズルが汚染物質の発生源となることを避けるためにシリコン製とすることができる。プロセスのプレ洗浄工程中、又は、再構成工程中、水素ガス供給源と組み合わせた他のガス供給源、例えばフッ素供給源を用いることができることに留意されたい。幾つかの実施形態においては、水素ガス供給源に替えて、ヘリウムガス供給源(図示せず)などを用いることができる。
【0049】
誘導コイル34及び40は、(交流電流により電力供給されると)磁場を発生し、その磁場は、プラズマ空間32内でガスをプラズマに(すなわち、H2ガスを水素原子及びイオンに、そして他の分子ガスをH又はFの原子及びイオンを含み得る断片に)変換する。誘導コイル34は螺旋形状とすることができ、一方、誘導コイル40は平坦コイルの形状とすることができる。誘導コイル34及び40は、両方とも
図1の実施形態に存在しているが、他の実施形態では、誘導コイル34(そして誘導コイル40がない)又は誘導コイル40(そして誘導コイル34がない)を有することが可能であることを理解されたい。高周波(RF)電力は、RF電源36からインピーダンスマッチング回路38を介して誘導コイル34に供給可能である。誘導コイル34の端子部分は接地できる(図示せず)ことが理解される。同様に、RF電源42からインピーダンスマッチング回路44を介して誘導コイル40にRF電力を供給することができる。誘導コイル40の端子部分も接地することができる(図示せず)ことが理解される。コントローラ50は、RF電源36及び/又はRF電源42を制御することができ、コントローラ50がプラズマ空間32内のプラズマの生成をアクティブ化/非アクティブ化することができる。金属筐体10は、誘導コイル34及び40によって生成された磁場が金属筐体10の周囲の環境に到達するのを防ぐために使用される。したがって、金属筐体10は導電性材料から作られ、接地され得る。
【0050】
金属静電シールド46及び48は、実質的にプラズマ電位を低下させかつ基板16に衝突するイオンエネルギーを低減することにより、基板16の結晶構造の損傷を回避する。金属静電シールド46及び49はまた、誘電体12に衝突するイオンエネルギーを低減することによって、気相中に汚染物質を誘導しその後にウェハを汚染する可能性がある誘電体容器12の壁のスパッタリング及びプロセスガスの壁とのエッチング反応を低減する。誘電体容器12が円筒形であるとき、静電シールド46は、誘電体容器12の円筒形壁にほぼ適合する開放端円筒に似ている(
図8A参照)が、静電シールド48は、誘電体容器12の円形上面にほぼ適合する円盤形状である(
図8B参照)。静電シールド46及び48は、コイル34及び40における電流の方向に垂直な方向にそれぞれスロットを付与することができ、それにより磁場が効率的にプラズマ空間32を貫通することができる。図示のように、両方の静電シールド46及び48は接地されている。
【0051】
保護ライナー42は、誘電体壁に対するエネルギー種の流れを実質的に低減するために誘電体容器12の内面の隣に配置することができ、それによって酸素又は他の汚染物質の気相中への流れが大きく低減される。保護ライナー42は、プラズマに露出されたときにガス状汚染物質を放出しない(又はほとんど放出しない)、スパッタリング又はエッチングに対して高い耐性をもつ材料から作製することができる。好ましい実施形態では、保護ライナー42は、結晶シリコン又はポリシリコンから作製することができ、それは主に水素ベースのプラズマ中で極めてゆっくりとエッチングされる。別の実施形態では、保護ライナー42は、Y2O3(高密度イットリア)、La2Zr2O7(ジルコン酸ランタン)、又は窒化アルミニウムから作製することができ、それらは原子水素による還元又はエッチングに対して化学的に非常に安定である。一実施形態では、保護ライナー42は、誘電体容器12の壁上のコーティング(例えば薄膜)として形成することができる。
【0052】
図9A及び
図9Bに示すように、保護ライナー(その側面部42a及び上面部42b)は、電流の方向に垂直な方向にスロットを付与することができ、それによりコイルからの磁場が効率的にプラズマ空間32内を貫通することができる。スロットは、300℃超えでのシリコン(保護ライナーがシリコン製であると想定)の導電性により逆電流を誘導するので必要である。その逆電流はプラズマ空間32を貫通する磁場を低減させてしまう。保護ライナー42のスロットの幅は、静電シールド46、48のスロットの幅よりも小さくすることができる。保護ライナー42は、接地されてもされなくてもよいが、誘電体容器12の内面のできるだけ近傍に配置しなければならない。
【0053】
保護ライナー42は、誘電体容器12の壁領域全体に必要であるが、スロットは、プラズマ励起コイルとプラズマとの間のライナー部分のみに必要である。例えば、コイル34が存在しない場合、誘電体容器12の側面を覆う保護ライナー42の部分は、
図10Aに示された開放端(スロットのない)円筒42cに類似し得る。同様に、コイル40が存在しない場合、誘電体容器12の天井を覆う保護ライナー42の部分は、
図10Bに示された(スロットのない)円盤42dに類似し得る。
【0054】
保護ライナー42が接地されている場合、それは保護ライナー及び静電シールドとして機能することができる(静電シールド46及び48を冗長とする)が、状況によっては、保護ライナー42と静電シールド46、48との両方を含めることが有利な場合がある。
【0055】
水素又は他の反応種が基板16上の汚染物質に結合して揮発性化合物を形成した後、これらの化合物は、排気制限要素26を介して排気マニホールド27に排出されることができる。排気マニホールド27は、支持台座14の下の金属ベース部17内の領域に形成されてもよい。ポンプ30は、排気マニホールド27から真空ポンプライン28への排気ガスの排気を促進することができる。
図1の断面には2つの排気制限要素26が描かれているが、排気制限要素26は、支持台座14を円周方向に囲む制限された開口部でもよいことが理解される。
【0056】
排気リストリクタ25により形成された排気制限要素26は、プラズマが排気マニホールド27内に流入することを防止し、排気ガス(揮発性化合物及び汚染物質を含む)が排気マニホールド27からプラズマ空間32へ逆拡散することを最小限に抑える。しかしながら、排気リストリクタ25は、それ自体が汚染物質の発生源となってはならず、したがって、幾つかの実施形態では、プラズマ空間32にほとんど汚染物質を導入することがないシリコンなどの材料から作製するか又は、可能なライナーコーティングとして上述したような不活性材料でコーティングすることが好ましい。
【0057】
ガス解析装置(RGA)54のサンプリングポート52は、汚染物質(例えば酸素)の濃度をサンプリングするために(図示のように)排気マニホールド27内又は(図示しないが)誘電体容器12の壁上に配置することができる。RGA54は、プレ洗浄プロセスの前及びプレ洗浄プロセス中に用いることができる。台座上にウェハを搭載する前に、RGA54は、プラズマ空間32に存在する化学的汚染物質のレベルをモニタリングするために用いることができる。汚染物質のレベルが第1の予め設定されたレベルを超えている場合、不活性ガスをプラズマ空間32に流入させて汚染物質を排出するか、又は、汚染物質レベルが十分に低下するまで水素含有プラズマを稼動させることができる。汚染物質のレベルが第1の予め設定されたレベル未満に低下したならば、ウェハを搭載し、プレ洗浄プロセスを開始することができる。
【0058】
RGA54はさらに、プレ洗浄プロセス中に、プレ洗浄プロセスをいつ終了させるか(すなわちプロセスガスのフローをいつ終了させるか)を決定するために用いることができる。汚染物質が基板16から除去されているとき、最初は汚染物質のレベルが高い場合がある。最終的にほとんどの汚染物質が揮発性化合物に変換されプラズマ空間32から排出されたとき、RGAは化学的汚染物質のレベルが第2の予め設定されたレベル未満に低下したことを検知することになる。幾つかの実施形態においては、サンプリングされたガス中の酸素の濃度が約1ppm未満に低下したとき、化学的汚染物質のレベルが第2の予め設定されたレベル未満であると見なす。このような終了条件に応じて、励起コイルへのRF電源を停止してガスのフローを終了することができる。プレ洗浄プロセスに続いて、アニールプロセス又はエピタキシャル層の堆積を行うことができる。もしまだ明らかでなければ、プレ洗浄プロセスの時間は、気相中の汚染物質のレベルに依存するのでウェハ毎に異なる場合がある。プラズマプレ洗浄プロセスは、汚染内容が異なる可能性があるウェハ上で行われているためである。より多くの汚染物質を有するウェハは、より長い時間洗浄される場合があるのに対し、より少ない汚染物資を有するウェハは、より短い時間洗浄される場合がある。
【0059】
幾つかの実施形態では、所望されるプラズマ挙動及び反応ガス種の増強された反応は、ガス圧力、RF電力、ガスフロー及び電力デューティサイクルの所定の範囲内でプラズマ源を稼動させることにより実現することができる。プラズマ源は、支持台座14より下にある排気マニホールド27及び他の構成要素を除く
図1の全ての構成要素を含むことができる。プラズマ空間32の圧力は、約1mTorr~約100mTorrの圧力に、好ましくは約3mTorr~約50mTorrの圧力に維持することができる。RF電源36及び/又は42により供給されるRF電力は、約20ワット~5000ワットに、そして好ましくは約200ワット~2000ワットの間の範囲とすることができる。H
2又は混合ガスのフローは、約10SCCM~約5000SCCMに、そして好ましくは約100SCCM~2000SCCMとすることができる。誘電体容器12の大きさは、基板の大きさに依存することができ、基板直径よりも約10%~約67%大きい。プレ洗浄プロセスの効果は、幾つかの実施形態においては、約300Hz~約50kHzの範囲と約10%より大きいデューティサイクルでRF電力を変調することによりさらに最適化することができる。
【0060】
プレ洗浄プロセスに続いて、ウェハ16の表面をプラズマ空間32内で再構成することができる(もっとも、表面再構成ステップではプラズマ空間32がプラズマを含んでも含まなくてもよい)。表面の再構成は、プレ洗浄プロセス中に基板表面から結晶と同じ元素の緩く結合した原子を除去することによって容易とすることができる。さらに幾つかの実施形態では、結晶再構成をプラズマにより、「プラズマ増強熱アニール」プロセスで増強できる。表面の再構成中、ヘリウム、NF3、F2又はH2のうち少なくとも1つを含むガスをプラズマ空間32内に流入させることができる。ヒーター13が支持台座14内に位置することによって基板16が表面再構成に適した温度に到達可能である。通常、このような温度は、約850℃である。このアニールプロセスの持続は、約1分~約30分とすることができる。しかしながら、アニールステップ中のプラズマ空間32内のプラズマの存在は、プラズマによる基板加熱によって、及び幾つかの実施形態ではプラズマからのイオン衝撃の相乗作用によって、欠陥のアニーリングに必要な温度を低下させることができる。
【0061】
幾つかの実施形態においては、支持台座14からの熱は、プレ洗浄プロセスと同じチャンバ(すなわち誘電体容器12)内で行うことができる結晶再構成に必要な全てのエネルギーを提供する。それに替えて幾つかの実施形態では、プラズマが基板16に与える加熱によって、プラズマが、ヒーター13により行われる加熱を支援することができる。プラズマ電力の約25%~40%が基板16の熱に変換されることで、ヒーター13に必要な加熱電力を低減することができる。一実施形態では、ヒーター13が基板16を約750℃に加熱するのに十分な熱を与えることができ、プラズマ加熱が基板を750℃から820℃に上げるのに必要な熱を与えることができる。幾つかの実施形態では、プラズマの更なる効果があり、その場合、ウェハへのイオン流束が、各イオンがウェハに衝突するときに局所的に提供する活性化エネルギ-によって結晶表面の再構成を支援することができる。ウェハに衝突すると、イオンエネルギーは結晶内のフォノンに変換され、ピコ秒の時間スケールで衝突点から外側に伝播する。ウェハへのイオン流束は、1mA/cm2~1mA/cm2程度であり、各イオンは約10eVのエネルギーを与える。このイオン流束は、アニーリングプロセスの活性化エネルギーの追加のワット/cm2まで効果的に提供する。
【0062】
図2は、ここに説明される本発明の技術なしで経験された課題を示すための装置の断面図である。
図2に示した装置は、保護ライナーを有していない。したがって、汚染物質(例えば11a)が誘電体容器12の壁から放出され、基板16上に吸着する可能性がある。当該技術分野で現在使用されているライナー(例えば、アルミナ製)でさえ、汚染物質(例えば、酸素)を放出する可能性があり、それが同様の態様で基板16上に吸着する可能性がある。ガス注入ノズル22なしで(そしてガス注入口21と基板16の表面との間に大きな鉛直方向の分離がある)ガス注入口21からH
2を誘電体容器12に直接注入すると、ウェハ表面の真上における水素含有ガスの径方向速度が弱すぎるため、汚染物質が基板16の表面に再堆積する前に汚染物質をプラズマ空間32から外に対流させることができない。主にH
2からなるガスがプラズマ空間32から汚染物質を運びだすのが難しい理由を詳しく説明すると、汚染物質の分子量は、多くの場合、水素の分子量よりも数倍大きいため、多くの水素分子と衝突することで汚染物質を「押し出し」て排出マニホールド27に向かうバルクフローと共に流すようにする。ボーリングボールに沿って運ぼうとするピンポンボールの群れとの類似性を用いて説明できる。ボーリングボールをピンポンボールの群れと共に所定の方向に移動させるためには多くの衝突を必要とする。
図2は、水素プラズマにより脱離された幾つかの汚染物質(例えば汚染物質11b)でさえ、基板16の表面上に落下して戻ることがあることを示す。その一方、特に基板16の縁領域の幾つかの汚染物質(例えば11c)は、基板16から無事に除去される可能性が高い。
【0063】
図3は、細長いガス注入ノズル22と保護ライナー42を有する、半導体ウェハの表面を調製する装置の断面を示している。
図3では、ガス注入ノズル22からのガス注入の詳細がより詳細に描かれる一方、装置のその他の詳細は、表示を明確に示すために図では省かれている。図示のように、細長いガス注入ノズルは、ウェハ上方の近距離にある、特にウェハ中心近傍のガスの径方向速度を増大させる。さらに、保護ライナー42により、誘電体容器12の壁から放出される汚染物質の量が実質的に低減されることによって、汚染物質が実現可能な除去速度でウェハの中心の領域から除去されると、商業的に許容可能なプロセス時間内にウェハから汚染物質を完全に除去することができる。
【0064】
図4は、底面出口24aと側面出口24bとを具備する細長いガス注入ノズル22を有する、半導体ウェハの表面を調製する装置の断面を示している。側面出口24bから注入されるガスは、プラズマ空間32内のガスの再循環を低減することを支援し、誘電体容器12から汚染物質が運び出される確率を高め、かつ、壁からの汚染物質が基板16上に堆積(又は再堆積)する確率を低くする。
【0065】
図5は、誘電体容器の高さが誘電体容器の半径に対して小さい、半導体ウェハの表面を再調整する装置の断面を示している。一実施形態では、誘電体容器12の高さは、誘電体容器12の半径よりも小さくすることができる。好ましい実施形態では、誘電体容器12の高さが、誘電体容器12の半径の半分未満とすることができる。誘電体容器の低い高さは、水素ガスが移動する鉛直方向の距離を低減する別の方法であり、ひいてはウェハ中心に近い半径におけるウェハ表面の真上の径方向のバルクガスフロー速度を増加させる。しかしながら、誘電体容器の低い高さは、プラズマ生成の効率が悪くなるという欠点がある。プラズマ空間が小さくなると、エネルギーをもつ電子によるイオン化効率が悪くなる。低い高さの誘電体容器を有する装置では、誘電体容器12の上方の平坦コイル40のみが存在できる一方、螺旋コイル34はプラズマ中に電力を結合するのに非効率的であるので省かれる。
【0066】
図6は、半導体ウェハの表面を調製する装置の断面を示しており、この場合、水素を含む混合ガスが、ウェハ支持台座14の第1の側面の隣にある誘電体容器12の壁に配置されたガス入口23から注入され、排気ガスが、ウェハ支持台座14の第2の側面の隣に配置された排気制限要素26’から排出される。排気制限要素26(例えば
図1)が、ウェハ支持台座14の周囲を取り囲む開口として理解されるのに対し、排気制限要素26’は、ウェハ支持台座14の一方の側面のみに存在する開口とすることができ、ウェハ中心について計測された限定された方位角範囲に亘って存在する。図示のように、注入されたガスは、基板16の表面に対して実質的に平行に流れることができ、そしてガスの横方向のフローは、ウェハ16の表面及び誘電体容器12の壁から放出された全ての揮発性化合物及び汚染物質を運びさりかつ排出することを支援する。基板16の表面の洗浄における均一性を高めるために、支持台座14は中心軸7の周りで回転させることができる。排気リストリクタ25’は支持台座14に当接して描かれているが、支持台座14が中心軸7の周りで自由に回転できるように僅かな隙間が存在してもよい。
【0067】
図7は、誘電体容器の高さが低い(すなわち誘電体容器の半径に比べて誘電体容器の高さが小さい)ことを除いて
図6に示した装置に類似する装置の断面を示している。このような低い高さは、誘電体容器12内のガスの再循環を低減することを助けることができる。
【0068】
本発明の幾つかの実施形態による、
図11Aは、ライナー材料の曲面パネル
45aにより形成された保護ライナー42eの平面図を示し、
図11Bは、ライナー材料の平面パネル45bにより形成された保護ライナー42fの平面図を示す。曲面パネル45aの各々は、(図示のものとは異なる)同じ形状と大きさとすることができる。平面パネル45bの各々も同じ形状及び大きさとすることができる。
【0069】
図12Aは、特許文献7の
図1の実施形態のようなチャンバ内でのプレ洗浄と、III-V材料のヘテロエピタキシャル堆積とを含む複合プロセス後の半導体ウェハ(UV光を照射する診断ツールからの画像を表す)の概略図を示している。概略的に示すように、ウェハの中心の周りのかなりの領域に高密度の欠陥がある。
【0070】
図12Bは、
図5の実施形態のようなチャンバ(しかしながら保護ライナーはない)内でのプレ洗浄と、III-V材料のヘテロエピタキシャル堆積とを含む複合プロセス後の半導体ウェハ(UV光を照射する診断ツールからの画像を表す)の概略図を示している。概略的に示すように、ウェハの中心の周りの小さい領域(例えば直径5cm)に高密度の欠陥がある。
【0071】
図12Cは、
図1の実施形態のようなチャンバ(しかしながら保護ライナーはない)内でのプレ洗浄と、III-V材料のヘテロエピタキシャル堆積とを含む複合プロセス後の半導体ウェハ(UV光を照射する診断ツールからの画像を表す)の概略図を示している。概略的に示すように、高密度の欠陥はなかったが、しかし、走査型電子顕微鏡(SEM)による検査では、ウェハの中心付近に点欠陥(1mm
2当たり約10個の欠陥)が見つかった。
【0072】
図13A~
図13Eは、本発明の一実施形態による、シリコン基板の表面上にIII?V層をエピタキシャル成長させるプロセスの様々な時点に亘るシリコン基板の断面を示す。
図13Aは、自然酸化物62の層を有するシリコン基板60を示す。自然酸化物62は、シリコン基板60の表面上にIII-V層を成長させる前に除去しなければならない。
図13Bは、水素含有プラズマ64に曝されているシリコン基板を示している。
図13Cは、プラズマによって自然酸化物が除去された後のシリコン基板を示している。シリコン基板の欠陥レベルは、1cm
2当たり5×10
9個未満である。
図13Dは、アニールプロセス中のシリコン基板を示している。
図13Eは、シリコン基板の表面上にエピタキシャル成長したIII-V層66を示す。
【0073】
前述の説明から明らかなように、本発明の態様は、様々なコンピュータシステム及びコンピュータ可読命令が格納されたコンピュータ可読記憶媒体の使用を含む。
図14は、本明細書で説明されたいずれかのコンピュータシステム(例えばコントローラ50)を表すシステム100の一例を示す。多様なコンピュータシステムの全てが、システム100の全ての特徴を有するわけではない。例えば、上述したコンピュータシステムの中には、そのコンピュータシステムに通信接続されたクライアントコンピュータにより表示機能が提供可能であるか又はディスプレイ機能が不要である限り、ディスプレイを含まなくてもよいものがある。そのような詳細は本発明には重要ではない。
【0074】
システム100は、情報を伝達するためのバス102又は他の伝達機構と、情報を処理するためにバス102に接続されたプロセッサ104とを含む。コンピュータシステム100はさらに、情報及びプロセッサ104により実行される命令を格納するためにバス102に接続されたランダムアクセスメモリ(RAM)又は他のダイナミック記憶デバイスなどのメインメモリ106を含む。メインメモリ106はさらに、プロセッサ104により実行されるべき命令の実行中、一時的な変数や他の中間情報を格納するために用いることができる。コンピュータシステム100はさらに、プロセッサ104のためのスタティック情報及び命令を格納するためにバス102に接続されたリードオンリメモリ(ROM)108や他のスタティック記憶デバイスを含む。1又は複数のフロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディルク、フラッシュメモリベースの記憶媒体、磁気テープ又は他の磁気記憶媒体、コンパクトディスク(CD)ROM、デジタルバーサタイルディスク(DVD)ROM若しくは他の光学記憶媒体、又は、プロセッサ104が読み取り可能な他の全ての記憶媒体とすることができる記憶装置110が設けられ、情報及び命令(例えば、オペレーティングシステム、アプリケーションプログラムなど)を格納するためにバス102に接続されている。
【0075】
コンピュータシステム100は、コンピュータユーザに対して情報を表示するために、バス102を介してフラットパネルディスプレイなどのディスプレイ112に接続されることができる。プロセッサ104に情報及びコマンド選択を伝達するために、英数字及び他のキーを含むキーボードなどの入力装置114をバス102に接続することができる。別の種類のユーザ入力装置は、プロセッサ104に情報及びコマンド選択を伝達しかつディスプレイ112上のカーソル移動を制御するための、マウス、トラックボール、又はカーソル方向キーなどのカーソル制御装置116である。マイクロフォン、スピーカー等の他のユーザインタフェース装置は、詳細に示さないが、ユーザ入力の受信及び/又は出力の提示に関係付けることができる。
【0076】
本明細書で言及したプロセスは、メインメモリ106に格納されたコンピュータ可読命令の適切なシーケンスを実行するプロセッサ104により行うことができる。このような命令は、記憶装置110などの別のコンピュータ可読媒体からメインメモリ106に読み込むことができ、そしてメインメモリ106に格納された命令のシーケンスの実行により、プロセッサ104が関連する動作を行うことができる。別の実施形態では、本発明を実施するために、プロセッサ104及びその関連するコンピュータソフトウェア命令の替わりに、又はそれらと組み合わせて、ハードワイヤード回路又はファームウェア制御処理ユニット(例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ)を使用することができる。コンピュータ可読命令は、任意のコンピュータ言語でレンダリングできる。一般に、前述の全ての用語は、任意のコンピューター実行可能アプリケーションの特徴である特定の目的を達成するために順番に行われる全ての一連の論理ステップを包含することを意味する。特に明記しない限り、本発明の説明を通して、「構成する」、「処理する」、「演算する」、「計算する」、「決定する」、「表示する」、「受信する」、「伝送する」などの用語の使用は、適切にプログラミングされたコンピュータシステムの動作及びプロセスを指すと理解すべきである。そのコンピュータシステムとは、コンピュータシステム100又は類似の電子演算装置であり、そのレジスタ及びメモリ内の物理(電子的)量として表されるデータを、そのメモリ若しくはレジスタ又は他のそのような情報記憶装置、伝送装置又は表示装置内の物理量として同様に表される他のデータに操作しかつ変換する
【0077】
コンピュータシステム100は、バス102に接続された通信インターフェース118も含む。通信インターフェース118は、コンピュータネットワークとの双方向データ通信チャネルを提供することができ、これは、上記で説明した多様なコンピュータシステムへの接続を提供する。例えば、通信インターフェース118は、互換性のあるLANへのデータ通信接続を提供するローカルエリアネットワーク(LAN)カードとすることができ、それ自体が1つ以上のインターネットサービスプロバイダーネットワークを介してインターネットに通信可能に接続されている。そのような通信経路の正確な詳細は、本発明にとって重要ではない。重要なのは、コンピュータシステム100が通信インターフェース118を介してメッセージ及びデータを送受信し、そのようにしてインターネットを介してアクセス可能なホストと通信できることである。
【0078】
このように、基板の表面を前処理し、前処理された表面上にエピタキシャルIII-V層を成長させるための方法及びシステムが説明された。上記の説明は例示的なものであり、限定的なものではないことを理解されたい。上記の説明を検討すれば、当業者には他の多くの実施形態が明らかであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して、そのような特許請求の範囲が権利付与される均等物の全範囲とともに決定されるべきである。