IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社SUMCOの特許一覧

<>
  • 特許-ワークの両面研磨方法 図1
  • 特許-ワークの両面研磨方法 図2
  • 特許-ワークの両面研磨方法 図3
  • 特許-ワークの両面研磨方法 図4
  • 特許-ワークの両面研磨方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】ワークの両面研磨方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/28 20120101AFI20221227BHJP
   B24B 37/12 20120101ALI20221227BHJP
   B24B 37/24 20120101ALI20221227BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
B24B37/28
B24B37/12 D
B24B37/24 A
H01L21/304 621A
H01L21/304 622R
H01L21/304 622F
H01L21/304 622G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019177790
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021053726
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】野中 英輔
(72)【発明者】
【氏名】平岩 幸二郎
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-050913(JP,A)
【文献】特開2002-331453(JP,A)
【文献】特開2006-156653(JP,A)
【文献】特開2010-253579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B37/00-37/34
H01L21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持する1つ以上の保持孔を有するキャリアプレートの該保持孔に前記ワークを保持して、該ワークの両面研磨を行う、ワークの両面研磨方法であって、
前記保持孔の内周径と、前記ワークのエッジロールオフ量との関係を取得する工程と、
所期するエッジロールオフ量、及び、取得した前記保持孔の内周径と前記ワークのエッジロールオフ量との関係に基づいて、前記保持孔の内周径を決定する工程と、
決定した内周径の前記保持孔を有する前記キャリアプレートを用いて、前記ワークの両面研磨を行う工程と、を含むことを特徴とする、ワークの両面研磨方法。
【請求項2】
前記エッジロールオフ量は、定寸状態でのエッジロールオフ量である、請求項1に記載のワークの両面研磨方法。
【請求項3】
前記決定した内周径は、前記ワークの径より1mm~5mm大きい、請求項1又は2に記載のワークの両面研磨方法。
【請求項4】
前記両面研磨は、研磨パッドを用いて行われ、
前記研磨パッドの表面硬度(ASKER C)は、70~90である、請求項1~3のいずれか一項に記載のワークの両面研磨方法。
【請求項5】
前記ワークは、シリコンウェーハである、請求項1~4のいずれか一項に記載のワークの両面研磨方法。
【請求項6】
前記保持孔の内周径と、前記ワークの端面の表面粗さとの関係を取得する工程をさらに含み、
前記保持孔の内周径を決定する工程において、前記保持孔の内周径は、所期する前記ワークの端面の表面粗さ、及び、取得した前記保持孔の内周径と前記ワークの端面の表面粗さとの関係に基づいて決定される、請求項1~5のいずれか一項に記載のワークの両面研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの両面研磨方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
研磨に供するワークの典型例であるシリコンウェーハなどの半導体ウェーハの製造において、より高精度なウェーハの平坦度品質や表面粗さ品質を得るために、ウェーハの表裏面を同時に研磨する両面研磨工程が一般的に採用されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2014-2467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ウェーハの形状は、その用途等に応じて様々に制御することが求められ、例えば、エピタキシャル成長を行う場合において、特に4μm以上の膜厚のエピタキシャル層を成長させる際に、ウェーハの外周を意図的にロールオフさせることが望まれる場合がある。
【0005】
このような場合に、例えば、硬度の低い研磨パッドを用いて両面研磨を行うことにより、研磨パッドの弾性変形によって、ウェーハの外周を意図的にロールオフさせること等が考えられる。
【0006】
しかしながら、硬度の低い研磨パッドを用いる場合には、ウェーハ全面の平坦度(例えばGBIR)が低下する等の問題が生じるおそれがあった。このため、ウェーハの外周形状を意図的に制御することのできる別の手法が求められていた。そして、このような問題は、ウェーハのみならず、両面研磨に供されるワークに一般に生じ得るものでもある。
【0007】
本発明は、ワークの外周形状を意図的に制御することのできる、ワークの両面研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
本発明のワークの研磨方法は、
ワークを保持する1つ以上の保持孔を有するキャリアプレートの該保持孔に前記ワークを保持して、該ワークの両面研磨を行う、ワークの両面研磨方法であって、
前記保持孔の内周径と、前記ワークのエッジロールオフ量との関係を取得する工程と、
所期するエッジロールオフ量、及び、取得した前記保持孔の内周径と前記ワークのエッジロールオフ量との関係に基づいて、前記保持孔の内周径を決定する工程と、
決定した内周径の前記保持孔を有する前記キャリアプレートを用いて、前記ワークの両面研磨を行う工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
ここで、「エッジロールオフ」とは、ワークの外周部がダレて、外周部の厚さが減少することをいう。「エッジロールオフ量」とは、ワークの外周部のダレの量であり、エッジロールオフ量が大きいほど、ワークの外周部のダレが大きく、従って外周部の厚さが薄いことを意味する。
【0010】
「エッジロールオフ量」の指標として、例えばESFQRを用いることができる。「ESFQR」とは、SEMI規格に規定される、ウェーハの平坦度を示す指標であり、ウェーハ全周の周縁領域に形成した扇形(ウェーハの外周から30mmの範囲で円周方向に72等分)の各領域のウェーハ厚みについて、最小二乗法により求められた基準面からの最大変位量の絶対値の和を算出することにより求めるものである。「ESFQRmax」は、その中の最大値である。ただし、ワークがウェーハである場合等には、外縁が面取りされている場合があるため、例えば、外周縁から径方向に1mmの領域をエッジ除外領域として除外することができる。
外周部がロールオフしているウェーハにおいては、「ESFQR」が大きいほど、「エッジロールオフ量」が大きいことを意味する。
【0011】
また、「内周径」は、保持孔の内周面に(例えば樹脂製の)インサータを有する場合には、該インサータの内周径をいうものとする。
【0012】
ここで、前記エッジロールオフ量は、定寸状態でのエッジロールオフ量であることが好ましい。
「定寸状態」とは、ワークの厚さが、キャリアプレートの厚さと同じになるまで、ワークが両面研磨された状態をいう。
【0013】
一般に、両面研磨においては、弾性体である研磨パッドを用いてワークの表裏面を同時に研磨することから、図5の状態A~状態Cに示すようにワーク(図5においては、ウェーハとして示している)が研磨されていく。すなわち、図5に示すように、研磨初期(状態A)では、ワークの全面形状は、上に凸の形状であり、ワーク外周でも大きなダレ形状が見られ、エッジロールオフ量が大きくなっている。このとき、ワークの厚さはキャリアプレートの厚さより十分に厚い。研磨が進むと(状態B)、ワークの全面形状は、ほぼ平坦な形状となり、ウェーハ外周のエッジロールオフ量が小さくなる。このとき、ワークの厚さとキャリアプレートの厚さは、ほぼ等しい。その後、研磨を進めると(状態C)、ワークの形状が段々と中心部が凹んだ形状となり、ワークの外周が切上がり形状となる。状態Cにおいては、キャリアプレートの厚さが、ワークの厚さより厚い状態となる。上記の状態Bが、定寸状態である。
【0014】
また、前記決定した内周径は、前記ワークの径より1mm~5mm大きいことが好ましい。
【0015】
また、前記両面研磨は、研磨パッドを用いて行われ、
前記研磨パッドの表面硬度(ASKER C)は、70~90であることが好ましい。
ここで、「研磨パッドの表面硬度(ASKER C)」は、ASKER C硬度計により計測されるものである。
【0016】
また、前記ワークは、シリコンウェーハであることが好ましい。
【0017】
また、前記保持孔の内周径と、前記ワークの端面の表面粗さとの関係を取得する工程をさらに含み、
前記保持孔の内周径を決定する工程において、前記保持孔の内周径は、所期する前記ワークの端面の表面粗さ、及び、取得した前記保持孔の内周径と前記ワークの端面の表面粗さとの関係に基づいて決定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ワークの外周形状を意図的に制御することのできる、ワークの両面研磨方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態にかかるワークの両面研磨方法に用いる、両面研磨装置の一例の概略図である。
図2】本発明の一実施形態にかかるワークの両面研磨方法のフロー図である。
図3】キャリアプレートの保持孔の内周径と、ESFQRmaxとの関係を示す図である。
図4】キャリアプレートの保持孔の内周径と、ワークの端面の表面粗さRaとの関係を示す図である。
図5】定寸状態について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
【0021】
<ワークの両面研磨装置>
図1は、本発明の一実施形態にかかるワークの両面研磨方法に用いる、両面研磨装置の一例の概略図である。
【0022】
両面研磨装置100は、保持孔1の内周径が後述する手法により決定されたものである点を除いては、ワーク(ウェーハW)の両面研磨に通常用いられる両面研磨装置と同様の構成とすることができる。以下、その一例について説明する。
【0023】
図1に示すように、本実施形態のワークの両面研磨装置100は、ワーク(本実施形態ではウェーハW(一例としてはシリコンウェーハ))を保持する1つ以上(図示例で1つ)の保持孔1を有する1つ以上(図示例で1つ)のキャリアプレート2を有する。
図1に示すように、本例の両面研磨装置100は、上定盤3a及びそれに対向する下定盤3bを有する回転定盤3と、回転定盤3の回転中心部に設けられたサンギア4と、回転定盤3の外周部に円環状に設けられたインターナルギア5とを備えている。
図1に示すように、上下の回転定盤3の対向面、すなわち、上定盤3aの研磨面である下面側及び下定盤3bの研磨面である上面側には、それぞれ研磨パッド6が貼付されている。
【0024】
また、図1に示すように、キャリアプレート2は、上定盤3aと下定盤3bとの間に設けられている。なお、図示例では、この両面研磨装置100は、キャリアプレート2を1つのみ有しているが、複数のキャリアプレート2を有していても良く、また、保持孔1の数も1つ以上であれば2つ以上であっても良い。図示例では、保持孔1にワーク(ウェーハW)が保持されている。
本例では、両面研磨装置100による研磨に供されるワーク(ウェーハW)の径は、300mmであるが、この場合には限定されない。また、ワークがウェーハWである場合に、結晶方位や導電型等も特に限定されない。
【0025】
ここで、両面研磨装置100は、サンギア4とインターナルギア5とを回転させることにより、キャリアプレート2に、公転運動及び自転運動の遊星運動をさせることができる、遊星歯車方式の両面研磨装置である。すなわち、研磨スラリーを供給しながら、キャリアプレート2を遊星運動させ、同時に上定盤3a及び下定盤3bをキャリアプレート2に対して相対的に回転させることにより、上下の回転定盤3に貼布した研磨パッド6とキャリアプレート2の保持孔1に保持したワーク(ウェーハW)の両面とを摺動させてワーク(ウェーハW)の両面を同時に研磨することができる。
【0026】
ここで、本実施形態において、研磨パッド6の表面硬度(ASKER C)は、70~90であることが好ましい。
【0027】
また、キャリアプレート2の内周面は、(例えば樹脂製の)インサータを備えていても良く、備えていなくても良い。
【0028】
後述するように、キャリアプレート2の保持孔1の内周径は、所定の工程を経て決定されるものであるが、該内周径は、ワークの径より1mm~5mm大きいことが好ましい。本例では、ワークは径300mmのウェーハであるため、キャリアプレート2の保持孔1の内周径は、301mm~305mmであることが好ましい。
【0029】
<ワークの両面研磨方法>
図2は、本発明の一実施形態にかかるワークの両面研磨方法のフロー図である。
図2に示すように、本実施形態のワークの両面研磨方法では、まず、保持孔1の内周径と、ワーク(ウェーハW)のエッジロールオフ量との関係を取得する(ステップS101:第1の工程)。
【0030】
ここで、保持孔1の内周径と、ワーク(ウェーハW)のエッジロールオフ量との関係について詳細に説明する。図3は、キャリアプレートの保持孔の内周径と、ESFQRmaxとの関係を示す図である。また、上述したように、ESFQRは、エッジロールオフ量の指標の1つである。図3のESFQRは、定寸状態におけるESFQRを示している。図3に関する実験の詳細は、実施例において後述する。
【0031】
本発明者らが、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、図3に示すように、キャリアプレートの保持孔の内周径が大きくなるにつれ、エッジロールオフ量(図3ではESFQRmax)が大きくなることが判明した。
ここで、研磨初期(図5の状態A)においては、ウェーハの厚さがキャリアプレートの厚さより厚いため、ウェーハの外周部が弾性を有する研磨パッドにより直接研磨される。そこから研磨が進んで、ウェーハの厚さがキャリアプレートの厚さと同程度になってくると、ウェーハの外周部がキャリアプレートに保護されるようになり、研磨パッドのウェーハの外周部への作用が減少し、相対的にウェーハ中央部の研磨量が大きくなって、ウェーハが平坦となり(状態B)、その後、ウェーハの厚さがキャリアプレートの厚さより薄くなると、ウェーハの外周部がキャリアプレートに保護される一方で、ウェーハの中央部の研磨が進むため、ウェーハの中央部が凹んだ形状になる(状態C)。
このことから、保持孔の内周面とワーク(ウェーハW)との隙間が大きくなると、上述した、ウェーハの外周部がキャリアプレートにより保護されて外周部の研磨量が低減する効果が小さくなること、また、保持孔の内周径が大きいほど、研磨スラリーの介在量が多くなり研磨が促進されること等により、研磨レート及びエッチング力が増大することによって、キャリアプレートの保持孔の内周径が大きくなるにつれ、エッジロールオフ量が大きくなるものと考えられる。
【0032】
このように、保持孔1の内周径と、ワーク(ウェーハW)のエッジロールオフ量とには相関関係があり、具体的には、上述のように、キャリアプレートの保持孔の内周径が大きくなるにつれ、エッジロールオフ量が大きくなる関係がある。
従って、ステップS101(第1の工程)においては、ワーク(ウェーハW)を両面研磨した際(例えば定寸状態まで研磨した際)の、保持孔1の内周径、及び、そのときのワーク(ウェーハW)のエッジロールオフ量について、予め多数の十分なデータを用意することにより、そのデータ自体、あるいは、そのデータに統計処理等を施したもの、あるいは、そのデータに基づいて、保持孔1の内周径とワーク(ウェーハW)のエッジロールオフ量との関係を数式化したもの等を、保持孔の内周径と、ワークのエッジロールオフ量との関係として取得することができる。
一例としては、当該保持孔の内周径と、ワークのエッジロールオフ量との関係は、記憶部(メモリ等)を有するコンピュータに格納することもでき、あるいは、通信部を有するコンピュータ等により当該関係の情報を送受信するようにしても良い。当該情報は、リアルタイム又は適時にアップデートすることができる。
【0033】
次いで、図2に示すように、本実施形態では、所期するエッジロールオフ量、及び、取得した上記保持孔の内周径とワークのエッジロールオフ量との関係に基づいて、保持孔の内周径を決定する(ステップS102:第2の工程)。
上述したように、保持孔1の内周径と、ワーク(ウェーハW)のエッジロールオフ量とには相関関係があり、具体的には、キャリアプレートの保持孔の内周径が大きくなるにつれ、エッジロールオフ量が大きくなる関係があり、ステップS101(第1の工程)において、それを取得している。
このため、所期するエッジロールオフ量を決定することにより、取得した上記保持孔の内周径とワークのエッジロールオフ量との関係を用いて、両面研磨に用いるキャリアプレートの保持孔の内周径を決定することができる。
一例として、保持孔の内周径とエッジロールオフ量との関係を(例えば一次式で)数式化したものを、ステップS101(第1の工程)において上記保持孔の内周径とワークのエッジロールオフ量との関係として取得した場合には、所期するエッジロールオフ量を上記数式に代入して、両面研磨に用いるキャリアプレートの保持孔の内周径を求めることができる。特には限定されないが、キャリアプレートの内周径は、整数値であることも多いため、四捨五入等により整数値として求めることもできる。あるいは、上記保持孔の内周径とワークのエッジロールオフ量との関係は、データのまま用いることもでき、所期するエッジロールオフ量(及びそれに近いエッジロールオフ量)を達成することができた、キャリアプレートの保持孔のデータを用いて、両面研磨に用いるキャリアプレートの保持孔の内周径を決定することができる。例えば、所期するエッジロールオフ量(及びそれに近いエッジロールオフ量)を達成することができた、キャリアプレートの保持孔のデータの平均値を算出することができる。同様に特には限定されないが、キャリアプレートの内周径は、整数値であることも多いため、四捨五入等により整数値として求めることもできる。あるいは、所期するエッジロールオフ量(及びそれに近いエッジロールオフ量)を達成することができた数の最も多いキャリアプレートの保持孔の内周径を、両面研磨に用いるキャリアプレートの保持孔の内周径として決定することもできる。
なお、上記データに統計処理を施したものを上記保持孔の内周径とワークのエッジロールオフ量との関係として所得した場合も同様に行うことができる。
一例として、当該決定は、計算部(カルキュレータ)を有するコンピュータにより行うことができる。
【0034】
次いで、図2に示すように、本実施形態では、決定した内周径の保持孔を有するキャリアプレートを用いて、ワーク(ウェーハW)の両面研磨を行う(ステップS103:第3工程)。ステップS103(第3の工程)における両面研磨は、例えば、図1を用いて説明した両面研磨装置100を用いて行うことができる。このとき、両面研磨装置のキャリアプレートを、決定した内周径の保持孔を有するキャリアプレートに交換することが好ましいが、決定した内周径の保持孔を有するキャリアプレートを備えた両面研磨装置を新たに用意しても良い。両面研磨は、通常の方法で行うことができる。一例としては、上述したように、研磨スラリーを供給しながら、キャリアプレート2を遊星運動させ、同時に上定盤3a及び下定盤3bをキャリアプレート2に対して相対的に回転させることにより、上下の回転定盤3に貼付した研磨パッド6とキャリアプレート2の保持孔1に保持したワーク(ウェーハW)の両面とを摺動させてワーク(ウェーハW)の両面を同時に研磨することができる。
以下、本実施形態のワークの両面研磨方法について説明する。
【0035】
本実施形態のワークの両面研磨方法によれば、所定の工程(第1及び第2の工程)を経て決定した内周径の保持孔を有するキャリアプレートを用いるという簡易な手法により、ワーク(ウェーハW)の外周形状を意図的に制御することができる。すなわち、決定した内周径の保持孔は、所期するエッジロールオフ量に対応しているため、ワーク(ウェーハW)の外周形状が意図的に制御される。本実施形態のワークの両面研磨方法によれば、研磨パッドとしては、表面硬度(ASKER C)が70~90であるものを用いているため、硬度の低い研磨パッドに交換する場合と比べて、資材交換のロス等を生じさせることがなく、また、硬度の低い研磨パッドを用いることによるワーク(ウェーハW)全面の平坦度(GBIR等)の低下の問題も生じさせない。さらに、本実施形態のワークの両面研磨方法によれば、ワーク(ウェーハW)とキャリアプレートの保持孔の内周面との接触面積が減少し、ワーク(ウェーハW)の自転が促進されるため、後述の実施例でも示されるように、ワーク(ウェーハW)の端面の粗さを低減して、端面の表面品質を向上させることもできる。
【0036】
ここで、エッジロールオフ量(ステップS101でのワークのエッジロールオフ量及びステップS102での所期したエッジロールオフ量)は、定寸状態でのエッジロールオフ量であることが好ましい。所期したエッジロールオフ量を得るために、あえて定寸状態からさらに研磨を施す場合と比べて、ワーク全面の平坦度等への悪影響を与えずに済むからである。一方、定寸状態より前の状態(図5の状態A)でも、より大きなエッジロールオフ量(ダレ量)を得ることができる。
【0037】
また、決定した内周径は、ワークの径より1mm~5mm大きいことが好ましい。決定した内周径がワークの径より1mm以上の範囲で大きいことにより、より確実に、保持孔の内周面とワーク(ウェーハW)との隙間が大きくなり、外周部がキャリアプレートにより保護される上述した効果が弱まること及び、研磨スラリーの介在量が多くなることの効果を得ることができ、一方で、決定した保持孔の内周径がワークの径より5mm以下の範囲で大きいことにより、より確実にワークを保持孔に保持することができるからである。
なお、特には限定されないが、ワークの径及びキャリアプレートのワーク保持孔の内周径は、整数値であることも多いため、決定した内周径は、上記の範囲において、整数値であることも好ましい。
一例として、ワークの径が300mmである場合には、キャリアプレートのワーク保持孔の内周径は、301mm、302mm、303mm、304mm、305mmのいずれかであることが好ましい。
【0038】
また、両面研磨は、研磨パッドを用いて行われ、研磨パッドの表面硬度(ASKER C)は、70~90であることが好ましい。硬度の低い研磨パッドに交換する場合と比べて、資材交換のロスを生じさせることがなく、また、硬度の低い研磨パッドを用いることによるワーク(ウェーハW)全面の平坦度(GBIR等)の低下の問題も生じさせないからである。
【0039】
なお、ステップS103(第3の工程)における両面研磨が終了した際には、ワークの外周部のエッジロールオフ量(例えば、ESFQR)を測定することも好ましい。これにより、当該結果をフィードバックして、データをアップデートすることができ、次回からの両面研磨の際の、所期したエッジロールオフ量を得るための精度を向上させ得る。
【0040】
ここで、保持孔の内周径と、ワークの端面の表面粗さとの関係を取得する工程をさらに含み、保持孔の内周径を決定する工程において、保持孔の内周径は、所期するワークの端面の表面粗さ、及び、取得した上記保持孔の内周径とワークの端面の表面粗さとの関係に基づいて決定されることが好ましい。
後述の図4にも示すように、キャリアプレートのワークの保持孔の内周径が大きいほど、研磨後のワークの端面の表面粗さRaが小さくなるという相関関係があるため、所期するエッジロールオフ量と所期するワークの端面の表面粗さとの両方に鑑みて、キャリアプレートのワークの保持孔の適切な内周径を決定して、ワークの外周形状とワークの端面の表面粗さとを同時に意図的に制御することができる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態には何ら限定されない。例えば、外周部のエッジロールオフ量としては、ESFQRを指標として用いる場合には限定されない。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例には何ら限定されない。
【実施例
【0042】
ワークの保持孔の内周径の異なるキャリアプレート(内周径301mm、302mm、303mm、304mm、305mm)を用意し、径300mmのウェーハに対して、図1に示すような両面研磨装置を用いて、両面研磨を実施した。
両面研磨を行った後、ウェーハの外周縁から径方向に1mmの領域をエッジ除外領域として除外したESFQRを、平坦度測定装置(KLAテンコール社製:Wafersight2)を用いて計測し、その最大値(ESFQRmax)を求めた。
図3及び表1に、その計測結果を示す。その結果、内周径が大きくなるほどESFQRmaxが大きくなり、エッジロールオフさせることができていることがわかった。
【0043】
【表1】
【0044】
図3、表1に示すように、ワークの保持孔の内周径と、ウェーハのエッジロールオフ量とには相関関係があり、具体的には、キャリアプレートのワークの保持孔の内周径が大きくなるにつれ、エッジロールオフ量が大きくなる関係があることがわかる。
従って、この関係を取得することにより、所期するエッジロールオフ量、及び、取得した当該関係に基づいて、ワークの保持孔の内周径を決定することができる。
【0045】
次に、両面研磨後のウェーハの端面の粗さRaを、Chapman社のMPSを用いて計測した。
図4及び表2に、その計測結果を示す。
【0046】
【表2】
【0047】
図4及び表2に示すように、ワークの保持孔の内周径の大きいキャリアプレートを用いることにより、表面粗さRaが小さくなり、表面品質が向上していることがわかる。
【符号の説明】
【0048】
100:両面研磨装置、
1:保持孔、
2:キャリアプレート、
3:回転定盤、
3a:上定盤、
3b:下定盤、
4:サンギア、
5:インターナルギア、
6:研磨パッド、
W:ウェーハ
図1
図2
図3
図4
図5