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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】ネガ型感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/038 20060101AFI20221227BHJP
   C08G 8/12 20060101ALI20221227BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
G03F7/038 601
C08G8/12
C08G73/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021099191
(22)【出願日】2021-06-15
(65)【公開番号】P2022190770
(43)【公開日】2022-12-27
【審査請求日】2022-07-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長田 裕仁
(72)【発明者】
【氏名】伊部 武史
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/085321(WO,A1)
【文献】特開2008-138128(JP,A)
【文献】特開2009-222923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/038
C08G 8/12
C08G 73/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)~(E)を含有する、ネガ型感光性樹脂組成物。
(A)m-クレゾールから誘導される構造単位(a1)、ベンズアルデヒドから誘導される構造単位(a2)、及びサリチルアルデヒドから誘導される構造単位(a3)のモル比[(a1):(a2):(a3)]が、1.0:0.3~0.8:0.3~0.8であるノボラック型フェノール樹脂
(B)ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体、及びポリベンゾオキサゾール前駆体から選択される1種類以上の樹脂
(C)有機ハロゲン化合物、スルホン酸エステル、オニウム塩、ジアゾニウム塩及びジスルホン化合物から選択される1種以上である光酸発生剤
(D)架橋剤
(E)溶剤
【請求項2】
前記成分(A)が、m-クレゾール、ベンズアルデヒド、及びサリチルアルデヒドを、有機溶媒中、モル比でm-クレゾール:ベンズアルデヒド:サリチルアルデヒド=1.0:0.3~0.8:0.3~0.8の範囲において、酸触媒で重縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂である、請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記成分(A)における、m-クレゾールから誘導される構造単位(a1)、ベンズアルデヒドから誘導される構造単位(a2)、及びサリチルアルデヒドから誘導される構造単位(a3)の含有量の合計が30質量%以上である、請求項1又は2に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記成分(A)の重量平均分子量が1,000以上7,000以下である、請求項1~3のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記成分(D)が、アルコキシメチル基、メチロール基、エポキシ基及びオキセタニル基から選択される1種以上を分子内に2つ以上有する化合物である、請求項1~4のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物から得られる硬化膜。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物から得られるレジスト膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネガ型感光性樹脂組成物、硬化膜、及びレジスト膜に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代フラットパネルディスプレイとして、有機ELディスプレイが注目を集めている。有機ELディスプレイは、有機化合物による電界発光を利用した自己発光型の表示装置であって、高角視野及び高速応答の画像表示が可能である。また、薄型化及び軽量化が可能である。近年、有機ELディスプレイの高精細化に伴い、発光素子の更なる小型化が求められている。
【0003】
有機ELディスプレイは、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔が再結合するエネルギーを用いて、素子が発光する。そのため、電子と正孔の再結合を阻害するエネルギー準位を形成する物質が存在すると、発光素子の発光効率が低下し、有機ELディスプレイの寿命が低下する。一方で、一般的に発光素子の画素間を分割するために、画素分割層という絶縁層が、光取出し側の透明電極と反対側の金属電極の間に形成される。この画素分割層は発光素子に隣接する位置に形成されるため、画素分割層からの脱ガスやイオン成分の流出は、有機ELディスプレイの寿命低下の一因となり得る。このため、画素分割層には耐熱性及び耐久性が要求される。
【0004】
高耐熱性の観点から、画素分割層の材料にはポリイミドやポリベンゾオキサゾールを用いたポジ型感光性樹脂組成物が用いられている(例えば、特許文献1)。しかしながら、上記ポジ型感光性樹脂組成物を用いた画素分割層は、感光剤にナフトキノンジアジド化合物を含有しているため、画素分割層から脱ガスが発生し、有機ELディスプレイの寿命を低下させる一因となる。
そこで、ナフトキノンジアジドを使用しないネガ型感光性樹脂組成物を用いた画素分割層の形成方法が検討されている(例えば、特許文献2)。しかしながら、特許文献2記載のネガ型レジストでは十分なアルカリ現像性、低温硬化性が得られず、現像後の残渣発生、熱処理後の分割層のダレが課題であった。
【0005】
また、末端基にフェノール性水酸基を有する、ポリイミドを用いたネガ型感光性樹脂組成物も検討されている(例えば、特許文献3)。しかしながら、特許文献3記載のネガ型感光性樹脂組成物は、光酸発生剤により発生した架橋剤のメチロール基とフェノール性水酸基由来のフェノラートイオンが反応することで高架橋密度由来の低温硬化性性を示すものの、近年要求される微細な画素分割層描画では、現像後の残渣発生が依然として課題となっている。
【0006】
フェノール性水酸基を有するポリイミドではなく、フェノール樹脂を混合することで、アルカリ溶解性を向上させ、残渣発生を抑制したネガ型感光性樹脂組成物も検討されている(例えば、特許文献4)。しかしながら、特許文献4で使用されているフェノール樹脂は非露光部のアルカリ溶解性が十分ではなかった。また、現像後の硬化工程において、200℃以下の低温で硬化した場合、膜の硬化が不十分であり耐溶剤(薬品)性が低いという課題があった。
【0007】
以上のように、高精細化に伴い、より微細な画素分割層描画を残渣発生なしに描画でき、かつ、低温硬化性及び耐薬品性を有する感光性樹脂組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2002/162998号明細書
【文献】国際公開第2017/159876号
【文献】特開2006-308765号公報
【文献】特開2005-250161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、アルカリ溶解性を有し、低温硬化が可能であり、耐薬品性に優れる硬化膜が得られる硬化性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の構造単位を有するノボラック型フェノール樹脂組成物を使用したネガ型感光性樹脂組成物が、非露光部のアルカリ溶解性が高く、現像後に低温硬化が可能であり、かつ耐薬品性に優れる硬化膜が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は下記の成分(A)~(E)を含有する、ネガ型感光性樹脂組成物に関する。
(A)m-クレゾールから誘導される構造単位(a1)、ベンズアルデヒドから誘導される構造単位(a2)、及びサリチルアルデヒドから誘導される構造単位(a3)のモル比[(a1):(a2):(a3)]が、1.0:0.3~0.8:0.3~0.8であるノボラック型フェノール樹脂
(B)ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体、及びポリベンゾオキサゾール前駆体から選択される1種類以上の樹脂
(C)光酸発生剤
(D)架橋剤
(E)溶剤
【0012】
本発明はさらに、前記ネガ型感光性樹脂組成物から得られる硬化膜に関する。
本発明はさらに、前記ネガ型感光性樹脂組成物から得られるレジスト膜に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アルカリ溶解性を有し、低温硬化が可能であり、耐薬品性に優れる硬化膜が得られる硬化性組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】合成例1で得たノボラック型フェノール樹脂のGPCチャートである。
図2】合成例2で得たノボラック型フェノール樹脂のGPCチャートである。
図3】合成例3で得たノボラック型フェノール樹脂のGPCチャートである。
図4】合成例4で得たノボラック型フェノール樹脂のGPCチャートである。
図5】合成例5で得たノボラック型フェノール樹脂のGPCチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に発明を実施するための形態について説明する。
なお、本明細書において、「x~y」は「x以上、y以下」の数値範囲を表すものとする。数値範囲に関して記載された上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
また、以下に記載される本発明の個々の形態を2つ以上組み合わせた形態もまた、本発明の形態である。
【0016】
[ネガ型感光性樹脂組成物]
本発明の一実施形態に係るネガ型感光性樹脂組成物は、下記の成分(A)~(E)を含有する。
(A)m-クレゾールから誘導される構造単位(a1)、ベンズアルデヒドから誘導される構造単位(a2)、及びサリチルアルデヒドから誘導される構造単位(a3)のモル比[(a1):(a2):(a3)]が、1.0:0.3~0.8:0.3~0.8であるノボラック型フェノール樹脂
(B)ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体、及びポリベンゾオキサゾール前駆体から選択される1種類以上の樹脂
(C)光酸発生剤
(D)架橋剤
(E)溶剤
【0017】
本実施形態では、上記(A)のノボラック型フェノール樹脂を使用し、かつ、上記(B)の樹脂と(D)の架橋剤を組み合わせて使用することにより、非露光部のアルカリ溶解性が高く、現像後に低温硬化が可能であり、かつ耐薬品性に優れる硬化膜が得られる樹脂組成物となる。
以下、ネガ型感光性樹脂組成物の構成成分について説明する。
【0018】
・成分(A)
成分(A)であるノボラック型フェノール樹脂は、m-クレゾールから誘導される構造単位(a1)、ベンズアルデヒドから誘導される構造単位(a2)、及びサリチルアルデヒドから誘導される構造単位(a3)のモル比[(a1):(a2):(a3)]が、1.0:0.3~0.8:0.3~0.8である。
【0019】
成分(A)が有するm-クレゾールから誘導される構造単位(a1)、ベンズアルデヒドから誘導される構造単位(a2)、及びサリチルアルデヒドから誘導される構造単位(a3)のモル比[(a1):(a2):(a3)]は、高感度に加えて低温硬化で耐薬品性を有する硬化膜を得る観点から、好ましくは1.0:0.3~0.7:0.3~0.7であり、より好ましくは1.0:0.4~0.7:0.4~0.7である。
【0020】
成分(A)は、m-クレゾールから誘導される構造単位(a1)、ベンズアルデヒドから誘導される構造単位(a2)、及びサリチルアルデヒドから誘導される構造単位(a3)以外の構造単位を含んでいてもよい。(a1)~(a3)以外の構造単位としては、m-クレゾール、ベンズアルデヒド、及びサリチルアルデヒド以外のフェノール類やアルデヒド類から誘導される構造単位が挙げられる。
【0021】
上記フェノール類としては、フェノール、o-クレゾール、p-クレゾール、2,3-キシレノール、2,5-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール等が挙げられる。
【0022】
上記アルデヒド類としては、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、クロロアセトアルデヒド、4-ヒドロキシベンズアルデヒド、3-ヒドロキシベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0023】
成分(A)における、上記構造単位(a1)、(a2)及び(a3)の含有量の合計は、高感度に加えて低温硬化で耐薬品性を有する硬化膜を得る観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
上記構造単位(a1)、(a2)及び(a3)の含有量の合計は、実質的に100質量%であってもよい。なお、実質的に100質量%とは、上記構造単位(a1)、(a2)及び(a3)以外の構造単位が不可避的に含まれる場合を意味する。
【0024】
成分(A)であるノボラック型フェノール樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1000以上、より好ましくは1,500以上である。また、好ましくは7,000以下、より好ましくは6,000以下、さらに好ましくは5,000以下である。重量平均分子量が1000以上であると、高耐熱であるため好ましい。一方、重量平均分子量が7,000以下であると、高感度であるため好ましい。なお、本明細書において、重量平均分子量は実施例に記載する条件に従って測定する。
【0025】
成分(A)は、m-クレゾール、ベンズアルデヒド、及びサリチルアルデヒドを、有機溶媒中、モル比(m-クレゾール:ベンズアルデヒド:サリチルアルデヒド)が1.0:0.3~0.8:0.3~0.8である範囲で、酸触媒を用いて重縮合させることによって得られる。
【0026】
有機溶媒中の、m-クレゾール、ベンズアルデヒド、及びサリチルアルデヒドのモル比(m-クレゾール:ベンズアルデヒド:サリチルアルデヒド)は、高感度に加えて低温硬化で耐薬品性を有する硬化膜を得る観点から、好ましくは1.0:0.3~0.7:0.3~0.7、より好ましくは1.0:0.4~0.7:0.4~0.7の範囲である。
【0027】
ベンズアルデヒドのモル比はサリチルアルデヒドのモル比よりも小さいことが好ましい。すなわち、ベンズアルデヒド<サリチルアルデヒド(モル比)を満たすと好ましい。
【0028】
m-クレゾール、ベンズアルデヒド、及びサリチルアルデヒドを有機溶媒中で重縮合させて成分(A)であるノボラック型フェノール樹脂を得る際、上述したように、m-クレゾール、ベンズアルデヒド、及びサリチルアルデヒド以外のフェノール類及びアルデヒド類が有機溶媒に含まれていてもよい。
【0029】
有機溶媒中の、成分(A)の構成する構造単位となり得る全ての出発原料の合計質量に対する、m-クレゾール、ベンズアルデヒド、及びサリチルアルデヒドの合計質量の割合は、高感度に加えて低温硬化で耐薬品性を有する硬化膜を得る観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは実質的に100質量%である。
【0030】
成分(A)の製造時に使用する有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン等が挙げられる、これらの中でも好ましくはエタノール、1-プロパノール、及び2-プロパノールから選ばれる1種以上であり、より好ましくはエタノールである。
【0031】
上記有機溶媒の使用量としては、反応の均一性の観点から、成分(A)の構成する構造単位を誘導するための原料100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは50質量部以上である。また、好ましくは500質量部以下、より好ましくは300質量部以下である。
【0032】
成分(A)の製造時に使用する酸触媒としては、塩酸、硫酸、燐酸、ホウ酸等の無機酸類;蓚酸、酢酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸類等が例示できる。これらの中でも、より反応を促進するため、無機酸類、パラトルエンスルホン酸が好ましく、パラトルエンスルホン酸がより好ましい。
酸触媒の添加量は、特に制限されないが、成分(A)の構成する構造単位を誘導するための原料100質量部に対し、好ましくは5質量部以上、より好ましくは20質量部以上である。また、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。
【0033】
成分(A)の原料を重縮合させる際の反応温度は、反応を促進しつつ、かつ、効率良く高分子量化することができることから、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上である。また、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下である。
反応時間は、好ましくは4時間以上、より好ましくは12時間以上である。また、好ましくは32時間以下、より好ましくは24時間以下である。
【0034】
・成分(B)
成分(B)は、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド前駆体、及びポリベンゾオキサゾール前駆体から選択される1種類以上の樹脂である。成分(B)は、従来から感光性樹脂組成物に使用されているものを用いることができる。
具体的に、ポリイミドは、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを反応させてポリイミド前駆体であるポリアミド酸を得た後、当該ポリアミド酸を加熱処理により脱水閉環することで得ることができる。
ポリイミドの合成に用いられるテトラカルボン酸二無水物は、耐熱性の観点から、好ましくは無水ピロメリット酸である。ポリイミドの合成に用いられるジアミンは、耐熱性の観点から、好ましくは4,4-ジアミノジフェニルエーテルである。
【0035】
ポリベンゾオキサゾールは、例えば、ビスアミノフェノールとジカルボン酸を反応させて、ポリベンゾオキサゾール前駆体であるポリヒドロキシアミドを得た後、ポリヒドロキシアミドを加熱処理により脱水閉環することで得ることができる。
ポリベンゾオキサゾールの合成に用いられるビスアミノフェノールは、耐熱性の観点から、好ましくは3,3-ヒドロキシベンジジンである。ポリベンゾオキサゾールの合成に用いられるジカルボン酸は、耐熱性の観点から、好ましくは4,4-ビフェニルジカルボン酸である。
【0036】
ポリイミド前駆体の例としては、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、ポリアミド酸アミド、ポリイソイミド等が挙げられる。
ポリベンゾオキサゾール前駆体の例としては、ポリヒドロキシアミド等が挙げられる。
【0037】
成分(B)の重量平均分子量は、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上である。また、好ましくは50,000以下、より好ましくは40,000以下である。重量平均分子量が5,000以上であると、高耐熱であるため好ましい。一方、重量平均分子量が50,000以下であると、溶剤溶解性の観点から好ましい。
【0038】
成分(B)の配合量は、良好な感度が得られ、所望のパターンが得られることから、成分(A)100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上である。また、好ましくは2,000質量部以下であり、より好ましくは1,000質量部以下である。
【0039】
・成分(C)
成分(C)である光酸発生剤は、特に限定されず、公知の光酸発生剤を使用することができる。例えば、有機ハロゲン化合物、スルホン酸エステル、オニウム塩、ジアゾニウム塩、ジスルホン化合物が挙げられる。
【0040】
光酸発生剤の具体例としては、以下が挙げられる。
トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、トリス(トリブロモメチル)-s-トリアジン、トリス(ジブロモメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス(トリブロモメチル)-6-p-メトキシフェニル-s-トリアジン、(2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン)等のハロアルキル基含有s-トリアジン誘導体;
【0041】
1,2,3,4-テトラブロモブタン、1,1,2,2-テトラブロモエタン、四臭化炭素、ヨードホルム等のハロゲン置換パラフィン系炭化水素化合物;ヘキサブロモシクロヘキサン、ヘキサクロロシクロヘキサン、ヘキサブロモシクロドデカン等のハロゲン置換シクロパラフィン系炭化水素化合物;
【0042】
ビス(トリクロロメチル)ベンゼン、ビス(トリブロモメチル)ベンゼン等のハロアルキル基含有ベンゼン誘導体;トリブロモメチルフェニルスルホン、トリクロロメチルフェニルスルホン等のハロアルキル基含有スルホン化合物;2,3-ジブロモスルホラン等のハロゲン含有スルホラン化合物;トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート等のハロアルキル基含有イソシアヌレート化合物;
【0043】
トリフェニルスルホニウムクロライド、ジフェニル-4-メチルフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムp-トルエンスルホネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート等のスルホニウム塩;
【0044】
ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムp-トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート等のヨードニウム塩;
【0045】
p-トルエンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸エチル、p-トルエンスルホ
ン酸ブチル、p-トルエンスルホン酸フェニル、1,2,3-トリス(p-トルエンスルホニルオキシ)ベンゼン、p-トルエンスルホン酸ベンゾインエステル、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、メタンスルホン酸ブチル、1,2,3-トリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン、メタンスルホン酸フェニル、メタンスルホン酸ベンゾインエステル、トリフルオロメタンスルホン酸メチル、トリフルオロメタンスルホン酸エチル、トリフルオロメタンスルホン酸ブチル、1,2,3-トリス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ベンゼン、トリフルオロメタンスルホン酸フェニル、トリフルオロメタンスルホン酸ベンゾインエステル等のスルホン酸エステル化合物;ジフェニルジスルホン等のジスルホン化合物;
【0046】
ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4-ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル-(2-メトキシフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル-(3-メトキシフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル-(4-メトキシフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロペンチルスルホニル-(2-メトキシフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロペンチルスルホニル-(3-メトキシフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロペンチルスルホニル-(4-メトキシフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル-(2-フルオロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル-(3-フルオロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル-(4-フルオロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロペンチルスルホニル-(2-フルオロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロペンチルスルホニル-(3-フルオロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロペンチルスルホニル-(4-フルオロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル-(2-クロロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル-(3-クロロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル-(4-クロロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロペンチルスルホニル-(2-クロロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロペンチルスルホニル-(3-クロロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロペンチルスルホニル-(4-クロロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル-(3-トリフルオロメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル-(4-トリフルオロメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロペンチルスルホニル-(2-トリフルオロメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロペンチルスルホニル-(3-トリフルオロメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロペンチルスルホニル-(4-トリフルオロメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル-(2-トリフルオロメトキシフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル-(3-トリフルオロメトキシフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル-(4-トリフルオロメトキシフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロペンチルスルホニル-(2-トリフルオロメトキシフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロペンチルスルホニル-(3-トリフルオロメトキシフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロペンチルスルホニル-(4-トリフルオロメトキシフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル-(2,4,6-トリメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル-(2,3,4-トリメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル-(2,4,6-トリエチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロヘキシルスルホニル-(2,3,4-トリエチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロペンチルスルホニル-(2,4,6-トリメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロペンチルスルホニル-(2,3,4-トリメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロペンチルスルホニル-(2,4,6-トリエチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、シクロペンチルスルホニル-(2,3,4-トリエチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、フェニルスルホニル-(2-メトキシフェニルスルホニル)ジアゾメタン、フェニルスルホニル-(3-メトキシフェニルスルホニル)ジアゾメタン、フェニルスルホニル-(4-メトキシフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2-メトキシフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(3-メトキシフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4-メトキシフェニルスルホニル)ジアゾメタン、フェニルスルホニル-(2,4,6-トリメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、フェニルスルホニル-(2,3,4-トリメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、フェニルスルホニル-(2,4,6-トリエチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、フェニルスルホニル-(2,3,4-トリエチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、2,4-ジメチルフェニルスルホニル-(2,4,6-トリメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、2,4-ジメチルフェニルスルホニル-(2,3,4-トリメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、フェニルスルホニル-(2-フルオロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、フェニルスルホニル-(3-フルオロフェニルスルホニル)ジアゾメタン、フェニルスルホニル-(4-フルオロフェニルスルホニル)ジアゾメタン等のスルホンジアジド化合物;
【0047】
o-ニトロベンジル-p-トルエンスルホネート等のo-ニトロベンジルエステル化合物;
N,N’-ジ(フェニルスルホニル)ヒドラジド等のスルホンヒドラジド化合物;
トリアリールスルホニウム、トリアラルキルスルホニウム等のスルホニウムカチオンと、フルオロアルカンスルホネート、アレーンスルホネート、アルカンスルホネート等のスルホネートとの塩であるスルホニウム塩;
【0048】
ジアリールヨードニウム等のヨードニウムカチオンと、フルオロアルカンスルホネート、アレーンスルホネート、アルカンスルホネート等のスルホネートとの塩であるヨードニウム塩;
ビス(アルキルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロアルキルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(パーフルオロアルキルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(アリールスルホニル)ジアゾメタン、ビス(アラルキルスルホニル)ジアゾメタン等のビススルホニルジアゾメタン化合物;
【0049】
ジカルボン酸イミド化合物と、フルオロアルカンスルホネート、アレーンスルホネート、アルカンスルホネート等のスルホネートとの組み合わせからなるN-スルホニルオキシイミド化合物;
ベンゾイントシレート、ベンゾインメシレート、ベンゾインブタンスルホネート等のベンゾインスルホネート化合物;
ポリヒドロキシアレーン化合物のヒドロキシ基の全てをフルオロアルカンスルホネート、アレーンスルホネート、アルカンスルホネート等のスルホネート等で置換したポリヒドロキシアレーンスルホネート化合物;
【0050】
フルオロアルカンスルホン酸(ポリ)ニトロベンジル、アレーンスルホン酸(ポリ)ニトロベンジル、アルカンスルホン酸(ポリ)ニトロベンジル等のニトロベンジルスルホネート化合物;
フルオロアルカンスルホン酸(ポリ)フルオロアルカンベンジル、アレーンスルホン酸(ポリ)フルオロアルカンベンジル、アルカンスルホン酸(ポリ)フルオロアルカンベンジル等のフルオロアルカンベンジルスルホネート化合物;
【0051】
ビス(アリールスルホニル)アルカン化合物;
ビス-O-(アリールスルホニル)-α-ジアルキルグリオキシム、ビス-O-(アリールスルホニル)-α-ジシクロアルキルグリオキシム、ビス-O-(アリールスルホニル)-α-ジアリールグリオキシム、ビス-O-(アルキルスルホニル)-α-ジアルキルグリオキシム、ビス-O-(アルキルスルホニル)-α-ジシクロアルキルグリオキシム、ビス-O-(アルキルスルホニル)-α-ジアリールグリオキシム、ビス-O-(フルオロアルキルスルホニル)-α-ジアルキルグリオキシム、ビス-O-(フルオロアルキルスルホニル)-α-ジシクロアルキルグリオキシム、ビス-O-(フルオロアルキルスルホニル)-α-ジアリールグリオキシム、ビス-O-(アリールスルホニル)-α-ジアルキルニオキシム、ビス-O-(アリールスルホニル)-α-ジシクロアルキルニオキシム、ビス-O-(アリールスルホニル)-α-ジアリールニオキシム、ビス-O-(アルキルスルホニル)-α-ジアルキルニオキシム、ビス-O-(アルキルスルホニル)-α-ジシクロアルキルニオキシム、ビス-O-(アルキルスルホニル)-α-ジアリールニオキシム、ビス-O-(フルオロアルキルスルホニル)-α-ジアルキルニオキシム、ビス-O-(フルオロアルキルスルホニル)-α-ジシクロアルキルニオキシム、ビス-O-(フルオロアルキルスルホニル)-α-ジアリールニオキシム等のオキシム化合物;
【0052】
アリールスルホニルオキシイミノアリールアセトニトリル、アルキルスルホニルオキシイミノアリールアセトニトリル、フルオロアルキルスルホニルオキシイミノアリールアセトニトリル、((アリールスルホニル)オキシイミノ-チオフェン-イリデン)アリールアセトニトリル、((アルキルスルホニル)オキシイミノ-チオフェン-イリデン)アリールアセトニトリル、((フルオロアルキルスルホニル)オキシイミノ-チオフェン-イリデン)アリールアセトニトリル、ビス(アリールスルホニルオキシイミノ)アリーレンジアセトニトリル、ビス(アルキルスルホニルオキシイミノ)アリーレンジアセトニトリル、ビス(フルオロアルキルスルホニルオキシイミノ)アリーレンジアセトニトリル、アリールフルオロアルカノン-O-(アルキルスルホニル)オキシム、アリールフルオロアルカノン-O-(アリールスルホニル)オキシム、アリールフルオロアルカノン-O-(フルオロアルキルスルホニル)オキシム等の変性オキシム化合物。
【0053】
光酸発生剤は、1種単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
成分(C)の配合量は、良好な感度が得られ、所望のパターンが得られることから、成分(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上であり、より好ましくは5質量部以上ある。また、好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは15質量部以下である。
【0054】
・成分(D)
成分(D)である架橋剤は、特に限定されず、公知の架橋剤を使用することができる。具体的には、アルコキシメチル基、メチロール基、エポキシ基、オキセタニル基等のような熱架橋性基を、分子内に2つ以上有する化合物が挙げられる。
より具体的には、以下に示す多官能メチロール化合物が挙げられる。
【0055】
【化1】
【0056】
【化2】
【0057】
【化3】
【0058】
架橋剤は、1種単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
成分(D)の配合量は、良好な感度が得られ、所望のパターンが得られることから、成分(A)100質量部に対して、好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは3質量部以上ある。また、好ましくは30質量部以下であり、より好ましくは15質量部以下である。
【0059】
・成分(E)
成分(E)である溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の極性の非プロトン性溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート等のエステル類、乳酸エチル、乳酸メチル、ジアセトンアルコール、3-メチル-3-メトキシブタノール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。これらの溶剤は1種単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0060】
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物における成分(E)の配合量は、組成物の流動性をスピンコート法等の塗布法により均一な塗膜を得られることから、当該組成物中の固形分濃度が、好ましくは5質量%以上となる量である。また、好ましくは65質量%以下となる量である。
【0061】
・その他
一実施形態において、ネガ型感光性樹脂組成物には、上述した成分(A)~(E)の他、本発明の効果を阻害しない範囲で各種添加剤を配合してもよい。添加剤としては、充填材、顔料、レベリング剤等の界面活性剤、密着性向上剤、溶解促進剤等が挙げられる。
【0062】
一実施形態では、露光時に光酸発生剤(成分(C))から生じる酸を中和するための有機塩基化合物を含んでもよい。ネガ型感光性樹脂組成物が有機塩基化合物を含むことにより、光酸発生剤から発生する酸の移動によるレジストパターンの寸法変動を防止する効果が得られる。
【0063】
有機塩基化合物の具体例としては、ピリミジン、(ポリ)アミノピリミジン、(ポリ)ヒドロキシピリミジン、(ポリ)アミノ(ポリ)ヒドロキシピリミジン、(ポリ)アミノ(ポリ)アルキルピリミジン、(ポリ)アミノ(ポリ)アルコキシピリミジン、(ポリ)ヒドロキシ(ポリ)アルキルピリミジン、(ポリ)ヒドロキシ(ポリ)アルコキシピリミジン等のピリミジン化合物;ピリジン、(ポリ)アルキルピリジン、ジアルキルアミノピリジン等のピリジン化合物;ポリアルカノールアミン、トリ(ヒドロキシアルキル)アミノアルカン、ビス(ヒドロキシアルキル)イミノトリス(ヒドロキシアルキル)アルカン等のヒドロキシアルキル基含有アミン化合物;アミノフェノール等のアミノアリール化合物等が挙げられる。
有機塩基化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
ネガ型感光性樹脂組成物中の有機塩基化合物の含有量は、光酸発生剤1molに対して、好ましくは0.1mol%以上であり、より好ましくは1mol%以上である。また、好ましくは100mol%以下であり、より好ましくは50mol%以下である。
【0065】
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、上述した成分(A)~(E)、及び必要に応じて各種添加剤を、通常の方法で、撹拌混合して均一な液とすることで調製できる。
該組成物に充填材、顔料等の固形のものを配合する際には、ディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミル等の分散装置を用いて分散、混合させることが好ましい。また、粗粒や不純物を除去するため、メッシュフィルター、メンブレンフィルター等を用いて該組成物をろ過することもできる。
【0066】
[硬化膜・レジスト膜]
本発明の一実施形態に係る硬化膜は、上述した本発明のネガ型感光性樹脂組成物を硬化させることにより得られる。
具体的には、フォトリソグラフィーを行う対象物上に、本発明のネガ型感光性樹脂組成物を塗布し、プリベークすることにより、溶剤を除去した感光性樹脂組成物の膜(感光性膜)が得られる。
【0067】
塗布方法としては、スピンコート、ロールコート、フローコート、ディップコート、スプレーコート、ドクターブレードコート等が挙げられる。プリベークは、例えば、60℃以上150℃以下の温度で30秒以上600秒以下の時間加熱すればよい。
【0068】
感光性膜を露光することにより、露光部のアルカリ現像液に対する溶解性が大幅に低下する。露光に使用する光源としては、例えば、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、X線、電子線が挙げられる。これらの光源の中でも紫外光が好ましく、高圧水銀灯のg線(波長436nm)、i線(波長365nm)が好適である。
露光後、露光によって発生する酸の触媒反応により、成分(A)、成分(B)及び成分(D)との架橋反応を促進させるために、100℃前後で加熱処理する。
【0069】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物から得られる感光性膜は、高いアルカリ溶解性を有するため、露光部とのアルカリ溶解性の差が大きいことから、高解像度でパターニングが可能となる。したがって、レジスト膜として好適に用いることができる。
【0070】
露光後の現像に用いるアルカリ現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ性物質;エチルアミン、n-プロピルアミン等の1級アミン;ジエチルアミン、ジ-n-ブチルアミン等の2級アミン;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の3級アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩;ピロール、ピヘリジン等の環状アミン等のアルカリ性水溶液が挙げられる。
アルカリ現像液には、必要に応じてアルコール、界面活性剤等を適宜添加して用いることもできる。アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常2~5質量%の範囲が好ましく、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が一般的に用いられる。
【0071】
アルカリ現像液による現像後、例えば、150℃以上200℃以下のような低い温度で加熱することにより、露光部が架橋した硬化膜が得られる。本実施形態の硬化膜は、耐薬品性に優れる。
本実施形態の硬化膜は、例えば、有機ELディスプレイ等の表示装置における画素分割層に使用できる。
【実施例
【0072】
以下、具体的な例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。なお、合成した樹脂の重量平均分子量(Mw)は、下記のGPCの測定条件で測定した。
[GPCの測定条件]
測定装置:東ソー株式会社製「HLC-8220 GPC」
カラム:昭和電工株式会社製「Shodex KF802」:8.0mmФ×300mm
+昭和電工株式会社製「Shodex KF802」:8.0mmФ×300mm
+昭和電工株式会社製「Shodex KF803」:8.0mmФ×300mm
+昭和電工株式会社製「Shodex KF804」:8.0mmФ×300mm
カラム温度:40℃
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC-8020モデルIIバージョン4.30」
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
試料:樹脂固形分換算で0.5質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの
注入量:0.1mL
標準試料:下記単分散ポリスチレン
(標準試料:単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
【0073】
[(A)ノボラック型フェノール樹脂]
合成例1(ノボラック型フェノール樹脂(A1)の合成)
冷却管を設置した容量が2000mLの4口フラスコに、m-クレゾール164g(1.52mol)、ベンズアルデヒド103g(0.97mol)、サリチルアルデヒド74g(0.61mol)、パラトルエンスルホン酸8gを仕込み、反応溶媒としてエタノール300gに溶解させた。その後、マントルヒーターで80℃に加熱し、還流下で16時間撹拌し反応させた。反応後、酢酸エチルと水を添加して5回分液洗浄した。残った樹脂溶液から溶媒を減圧留去した後、真空乾燥して、淡赤色粉末のノボラック型フェノール樹脂(A1)の粉末281gを得た。
ノボラック型フェノール樹脂(A1)のMwは3100であった。ノボラック型フェノール樹脂(A1)のGPCチャートを図1に示す。
【0074】
合成例2(ノボラック型フェノール樹脂(A2)の合成)
出発原料の仕込み量を、m-クレゾール164g(1.52mol)、ベンズアルデヒド96g(0.90mol)、及びサリチルアルデヒド74g(0.6mol)とした以外は、合成例1と同様にしてノボラック型フェノール樹脂(A2)の粉末280gを得た。ノボラック型フェノール樹脂(A2)のMwは2250であった。
ノボラック型フェノール樹脂(A2)のGPCチャートを図2に示す。
【0075】
合成例3(ノボラック型フェノール樹脂(A3)の合成)
出発原料の仕込み量を、m-クレゾール164g(1.52mol)、ベンズアルデヒド117g(1.10mol)、及びサリチルアルデヒド58g(0.47mol)とした以外は、合成例1と同様にしてノボラック型フェノール樹脂(A3)の粉末279gを得た。ノボラック型フェノール樹脂(A3)のMwは2700であった。
ノボラック型フェノール樹脂(A3)のGPCチャートを図3に示す。
【0076】
合成例4(ノボラック型フェノール樹脂(A4)の合成)
出発原料の仕込み量を、m-クレゾール164g(1.52mol)、ベンズアルデヒド67g(0.63mol)、及びサリチルアルデヒド115g(0.94mol)とした以外は、合成例1と同様にしてノボラック型フェノール樹脂(A4)の粉末282gを得た。ノボラック型フェノール樹脂(A4)のMwは2900であった。
ノボラック型フェノール樹脂(A4)のGPCチャートを図4に示す。
【0077】
合成例5(ノボラック型フェノール樹脂(A5)の合成)
反応溶媒をエタノール250g、1-プロパノール30g及び2-プロパノール15gとした以外は、合成例1と同様にしてノボラック型フェノール樹脂(A5)の粉末282gを得た。ノボラック型フェノール樹脂(A5)のMwは3200であった。
ノボラック型フェノール樹脂(A5)のGPCチャートを図5に示す。
【0078】
比較合成例1(ノボラック型フェノール樹脂(A6)の合成)
乾燥窒素気流下、冷却管を設置した2000mLの4口フラスコにm-クレゾール140g(1.30mol)、p-クレゾール76g(0.7mol)、37重量%ホルムアルデヒド水溶液151g(ホルムアルデヒド1.86mol)、シュウ酸二水和物1g(0.01mol)を仕込み、メチルイソブチルケトン(MIBK)528gに溶解させた後、マントルヒーターで、反応液を還流させながら4時間撹拌し反応させた。反応後、水を添加し、分液洗浄を5回行った。エバポレーターでメチルイソブチルケトンを60℃で減圧留去させた後、真空乾燥して、淡赤色粉末のノボラック型フェノール樹脂(A6)212gを得た。ノボラック型フェノール樹脂(A6)のMwは3500であった。
【0079】
比較合成例2(ノボラック型フェノール樹脂(A7)の合成)
m-クレゾール140g(1.30mol)及びp-クレゾール76g(0.7mol)の代わりに、m-クレゾール173g(2.00mol)とした以外は、比較合成例1と同様にしてノボラック型フェノール樹脂(A7)粉末211gを得た。ノボラック型フェノール樹脂(A7)のMwは5000であった。
【0080】
[(B)ポリイミド前駆体(B1)]
合成例6
乾燥窒素気流下、冷却管を設置した2000mLの4口フラスコに無水ピロメリット酸125g(0.023mol)、4,4-ジアミノジフェニルエーテル115g(0.023mol)をN-メチル-2-ピロリドン1602gに溶解させ、100℃で4時間撹拌し反応させた。反応終了後、溶液を水2000gに投入して、ポリマー固体の沈殿を濾過で集めた。ポリマー固体を真空乾燥機にて80℃で72時間乾燥し、ポリイミド前駆体(B1)の粉末を得た。
【0081】
[ネガ型感光性樹脂組成物]
実施例1
成分(A)として合成例1で得たフェノールノボラック樹脂(A1)粉末5g、成分(B)として合成例6で得たポリイミド前駆体のポリマー(B1)粉末2.5g、成分(C)として光酸発生剤溶液(CPI-101A:サンアプロ株式会社製、50%プロピレンカーボネート溶液)1.0g、成分(D)として架橋剤(2、6-ビス(ヒドロキシメチル)-p-クレゾール:東京化成工業製)0.15gを、成分(E)であるγ―ブチロラクトン74gに溶解させることにより、ネガ型感光性樹脂組成物(F1)を得た。
【0082】
実施例2~5、比較例1、2
成分(A)として表1に示すフェノールノボラック樹脂(A2)~(A7)粉末を用いた以外は、実施例1と同様にしてネガ型感光性樹脂組成物(F2)~(F7)を得た。
【0083】
[評価]
実施例及び比較例で調製したネガ型感光性樹脂組成物を用いて、露光前のアルカリ溶解性、硬化膜の耐薬品性及び硬化膜の硬度を評価した。
(1)露光前のアルカリ溶解性
ネガ型感光性樹脂組成物を直径5インチのシリコンウエハ上に約5μmの厚さになるようにスピンコーターを用いて塗布後、120℃で180秒間プリベークして、感光性膜(レジスト膜)を形成したウエハを得た。ウエハを、現像液(2.38重量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH))250mLを注いだバットに10秒間浸漬した。バットから取り出したウエハを純水で10秒間リンス処理し、ウエハ上の感光性膜の残渣を観察することにより、アルカリ溶解性を評価した。残渣のないものを良好(〇)とし、残渣のあるものを不十分(×)とした。評価結果を表1に示す。
【0084】
(2)硬化膜の耐薬品性
ネガ型感光性樹脂組成物を直径5インチのシリコンウエハ上に約10μmの厚さになるようにスピンコーターを用いて塗布後、120℃で180秒間プリベークして、感光性膜を形成したウエハを得た。次に、ウシオ製マルチライトで、ghi線を感光性膜に200mJ照射した。照射後、130℃のホットプレート上で120秒加熱し、さらに、窒素雰囲気下にて200℃で1時間加熱し、硬化膜とした。
加熱終了後、加熱装置内の温度が50℃以下になったところでウエハを取出し、膜厚を測定した。
その後、ウエハを3等分し、それぞれを、アセトン、N-メチルピロリドン(NMP)及び2.38重量%TMAHに15分間浸漬した。各溶剤から取り出したウエハを純水で洗浄した後、再度膜厚を測定した。
溶剤への浸漬前後の膜厚変化率にて、耐薬品性を評価した。変化率が2%未満であるものを良好(〇)、2%以上のものを不十分(×)とした。評価結果を表1に示す。
【0085】
(3)硬化膜の硬度
上記(2)と同様にして硬化膜を得た後、加熱装置の温度が50℃以下になったところでウエハを取出し、膜厚を測定した。ナノインデンテーション法(ENT-2100:エリオニクス株式会社製)により膜硬度を測定した。押し込み弾性率が8GPa以上であるものを良好(〇)、8GPa未満であるものを不十分(×)とした。評価結果を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
表1において、成分(A)の構造単位のモル比「(a1)/(a2)/(a3)」は、m-クレゾールから誘導される構造単位(a1)、ベンズアルデヒドから誘導される構造単位(a2)、及びサリチルアルデヒドから誘導される構造単位(a3)のモル比である。
モル比(m-Cr/p-Cr)は、m-クレゾールから誘導される構造単位(m-Cr)及びp-クレゾールから誘導される構造単位(p-Cr)のモル比である。
【0088】
表1の結果から、本発明のネガ型感光性樹脂組成物から得られるレジスト膜はアルカリ溶解性を有することが確認できる。また、硬化膜は200℃という低温で硬化しているにもかかわらず、耐薬品性に優れ、かつ、硬度も高いことが確認できる。
図1
図2
図3
図4
図5