(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】樹脂組成物、成形品、マスターバッチおよびそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/12 20060101AFI20221227BHJP
C08L 1/02 20060101ALI20221227BHJP
C08J 3/22 20060101ALI20221227BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20221227BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20221227BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
C08L101/12
C08L1/02
C08J3/22 CEP
C08L23/00
C08L33/04
C08L75/04
(21)【出願番号】P 2021565636
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2020047074
(87)【国際公開番号】W WO2021125251
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2019228227
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】木村 敏樹
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 豊
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 啓信
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/150907(WO,A1)
【文献】特開2019-059956(JP,A)
【文献】特開2014-025053(JP,A)
【文献】特開2013-082117(JP,A)
【文献】特開2019-189758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/16
C08J 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維(A)と、
ガラス転移温度が160℃以下の非晶性樹脂(B)と、
融点(融解ピーク温度)が80~150℃、且つ融解開始温度が融点より30℃以下である結晶性樹脂(C)と、
融点又はガラス転移温度が前記結晶性樹脂(C)の融点よりも5℃以上高い熱可塑性樹脂(D)と、
を含有する
樹脂組成物であって、
前記非晶性樹脂(B)は、エステル結合、エーテル結合、尿素結合、水酸基、アミノ基、またはカルボキシ基を有する樹脂であり、
前記結晶性樹脂(C)は、オレフィン系樹脂であり、
前記熱可塑性樹脂(D)は、ポリプロピレン、ポリアセタール、またはポリアミドである、ことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記セルロース繊維(A)の樹脂組成物中における含有率が0.1~30質量%の範囲である請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
樹脂組成物中の前記セルロース繊維(A)の平均繊維径(平均繊維幅)が4nm~30μmであり、平均繊維長が1000μm以下である請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記非晶性樹脂(B)が、親水性アクリル樹脂又は親水性ウレタン樹脂である請求項1~3の何れか1項記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記結晶性樹脂(C)が、比重0.7~1.1のポリエチレンである請求項1~4の何れか1項記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂(D)がポリプロピレン
またはポリアミ
ドである請求項1~5の何れか1項記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記結晶性樹脂(C)と前記熱可塑性樹脂(D)の樹脂組成物中における質量比(C)/(D)が0.5未満である請求項1~6の何れか1項記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項記載の樹脂組成物を用いてなる成形品。
【請求項9】
内部に発泡セルを有し、比重が1以下である請求項8記載の成形品。
【請求項10】
セルロース繊維(A)と、
ガラス転移温度が160℃以下の非晶性樹脂(B)と、
融点(融解ピーク温度)が80~150℃、且つ融解開始温度が融点より30℃以下である結晶性樹脂(C)と、
を含有する
マスターバッチであって、
前記非晶性樹脂(B)は、エステル結合、エーテル結合、尿素結合、水酸基、アミノ基、またはカルボキシ基を有する樹脂であり、
前記結晶性樹脂(C)は、オレフィン系樹脂である、
ことを特徴とするマスターバッチ。
【請求項11】
前記セルロー
ス繊維(A)が、セルロー
ス繊維100質量部に対して水を5質量部以上含有してなる含水セルロー
ス繊維を原料として用いるものである、請求項10記載のマスターバッチ。
【請求項12】
前記マスターバッチ中のセルロース繊維(A)の配合割合が、マスターバッチの固形分100質量部中、20~60質量部の範囲である請求項10又は11記載のマスターバッチ。
【請求項13】
前記非晶性樹脂(B)が親水性アクリル樹脂又は親水性ウレタン樹脂である請求項10~12の何れか1項記載のマスターバッチ。
【請求項14】
セルロース繊維(A)集合物と、
ガラス転移温度が160℃以下の非晶性樹脂(B)と、
融点(融解ピーク温度)が80~150℃、且つ融解開始温度が融点より30℃以下である結晶性樹脂(C)と、
沸点が120℃以下の解繊助剤(E)と、
を溶融混錬する
マスターバッチの製造方法であって、
前記非晶性樹脂(B)は、エステル結合、エーテル結合、尿素結合、水酸基、アミノ基、またはカルボキシ基を有する樹脂であり、
前記結晶性樹脂(C)は、オレフィン系樹脂であること、
を特徴とするマスターバッチの製造方法。
【請求項15】
前記解繊助剤(E)が、水溶性アルコール、ケトン、エーテル及び水から選ばれる1種以上の助剤である請求項14記載のマスターバッチの製造方法。
【請求項16】
請求項14又は15記載の製造方法でマスターバッチを製造する工程、さらに、マスターバッチ中の前記結晶性樹脂(C)の融点よりも5℃以上高い融点又はガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂(D)を溶融混練する工程を含む、樹脂組成物の製造方法。
【請求項17】
請求項16項記載の製造方法で樹脂組成物を製造する工程、さらに、得られた樹脂組成物を成形する工程を有する、成形品の製造方法。
【請求項18】
前記樹脂組成物を成形する工程が、超臨界成形法である請求項17記載の成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維を含む樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」という)に関し、とくに熱可塑性樹脂を主成分とするマスターバッチ、樹脂組成物、成形品及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製品のモビリティー化が進む中、それを形成する材料の軽量化がますます重要視されている。しかしながら材料の比重が低くなるに従い、その剛性は小さくなる傾向にあるため、このトレードオフを解消するために様々な材料が検討されている。中でも、生産性の観点からは、熱可塑性樹脂を主成分とする材料は広く検討されてきた。
【0003】
近年開発されたセルロースファイバーは、低比重かつ高強度な樹脂用複合材料として注目されている。水酸基を多く持つセルロースは水中で解繊を行うことが多く実施されており、解繊後のセルロースファイバーは、水を多く含有している。そのため、各種樹脂との複合化の際には、脱水工程を実施する必要があるが、この工程中で再凝集することが多く、樹脂への均一分散が困難であった。このような問題を解決する手段の一つとして、例えば、水等の媒体を使用せずに、セルロースの集合体を直接、ポリエステル系樹脂に混合し、当該樹脂中でセルロースを微細化することで、セルロースファイバーを高濃度で含有するマスターバッチとする方法が提供されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、このマスターバッチと、他の熱可塑性樹脂、特に融点又はガラス転移温度の高い熱可塑性樹脂との複合体におけるセルロースの解繊状態は不十分であり、得られる成形品の機械的強度に対するセルロースの添加効果が小さいという問題があった。
【0005】
またセルロースを含む複合材料と発泡成形とを組み合わせることによる成形体の軽量化手法が開発されているものの、セルロースの解繊状態により出来上がる発泡体の特性が実用レベルに達していないことも改良課題として提起されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記事情を鑑み、本発明が解決しようとする課題は、セルロースの添加効果を十分に発揮し、成形品、特に発泡成形品に優れた機械的強度を付与することのできる、熱可塑性の樹脂組成物、成形品、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の熱可塑性材料にセルロース繊維を混合し、さらに当該熱可塑性材料よりも融点又はガラス転移温度の高い熱可塑性樹脂で希釈する方法によって、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、セルロース繊維(A)と、ガラス転移温度が160℃以下の非晶性樹脂(B)と、融点(融解ピーク温度)が80~150℃、且つ融解開始温度が融点より30℃以下である結晶性樹脂(C)と、融点又はガラス転移温度が前記結晶性樹脂(C)の融点よりも5℃以上高い熱可塑性樹脂(D)と、を含有することを特徴とする樹脂組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、前記の樹脂組成物を用いてなる成形品に関する。
【0011】
また、本発明は、 セルロース繊維(A)と、ガラス転移温度が160℃以下の非晶性樹脂(B)と、融点(融解ピーク温度)が80~150℃、且つ融解開始温度が融点より30℃以下である結晶性樹脂(C)と、を含有することを特徴とするマスターバッチに関する。
【0012】
また本発明は、セルロース繊維(A)集合物と、ガラス転移温度が160℃以下の非晶性樹脂(B)と、融点(融解ピーク温度)が80~150℃、且つ融解開始温度が融点より30℃以下である結晶性樹脂(C)と、沸点が120℃以下の解繊助剤(E)と、を溶融混錬することを特徴とするマスターバッチの製造方法に関する。
【0013】
また、本発明は、前記の製造方法でマスターバッチを製造する工程、さらに、マスターバッチ中の前記結晶性樹脂(C)の融点よりも5℃以上高い融点又はガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂(D)を溶融混練する工程を含む、樹脂組成物の製造方法に関する。
【0014】
そして、本発明は、前記の製造方法で樹脂組成物を製造する工程、さらに、得られた樹脂組成物を成形する工程を有する、成形品の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、セルロース繊維を含む樹脂組成物であって、当該セルロース繊維が樹脂組成物中で十分に解繊されており、発泡体に成形した場合であっても剛性等の機械的性能に優れる樹脂組成物とその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明で用いるセルロース繊維(A)は、後述する熱可塑性樹脂(D)をマトリックスの主成分とする成形体を補強する機能を有する成分である。セルロース繊維(A)は、原料であるセルロース繊維(A)の集合物を解繊することにより得られる。なお、以下、原料である、未解繊のセルロース繊維(A)を「セルロース繊維(A)集合物」や「セルロース繊維(A)未解繊物」とも表現することがある。
【0017】
セルロース繊維(A)の原料であるセルロース繊維(A)集合物には、例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、綿、ビート、農産物残廃物、布のような天然植物原料から得られる植物繊維(パルプ)、新聞古紙、段ボール古紙、雑誌古紙、コピー用紙古紙のような古紙等から選択される1種または2種以上を使用することができる。前記木材としては、例えば、シトカスプルース、スギ、ヒノキ、ユーカリ、アカシア等が挙げられる。
【0018】
セルロース繊維(A)の原料であるセルロース繊維(A)集合物は、パルプや、パルプをフィブリル化して得られるフィブリル化パルプが好ましい。パルプは、植物原料を化学的または機械的に、あるいは両者を併用してパルプ化することで得ることが好ましい。
【0019】
かかるパルプとしては、例えば、ケミカルパルプ(クラフトパルプ(KP)、亜硫酸パルプ(SP))、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグランドパルプ(CGP)、ケミメカニカルパルプ(CMP)、砕木パルプ(GP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)が好ましい。また、パルプには、上記パルプを主成分とする脱墨古紙パルプ、段ボール古紙パルプ、雑誌古紙パルプ等を使用してもよい。
【0020】
中でも、パルプとしては、針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹酸素晒し未漂白クラフトパルプ(NOKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)のような繊維の強度が強い針葉樹由来のクラフトパルプが好ましい。その他、パルプには、晒クラフトパルプ(LBKP)、未晒クラフトパルプ(LUKP)、酸素漂白クラフトパルプ(LOKP)のような広葉樹クラフトパルプ等を使用してもよい。
【0021】
パルプには、必要に応じて、脱リグニン処理、漂白処理等を行って、これに含まれるリグニン量を調整するようにしてもよい。なお、パルプは、主として、セルロース、ヘミセルロース、リグニンから構成される。
【0022】
セルロース繊維(A)の原料であるセルロース繊維(A)集合物の平均繊維長は特に限定されないが、0.5mm以上であることが好ましく、2.5mm以上であることがより好ましい。繊維長が長いほど、後述する結晶性樹脂(C)又は熱可塑性樹脂(D)中で解繊されたセルロース繊維(A)のアスペクト比が高くなり、補強効果をより向上させることができる。
【0023】
解繊により得られた、マスターバッチ中ないし樹脂組成物中のセルロース繊維(A)の平均繊維径(平均繊維幅)は、好ましくは4nm~30μm程度であり、平均繊維長は好ましくは1000μm以下、より好ましくは100μm以下、そして、好ましくは5μm以上の範囲である。なお、セルロース繊維(A)の平均繊維径や平均繊維長は、例えば、電子顕微鏡の視野内のセルロース繊維(A)の少なくとも50本について測定した値の平均値として表すことができる。
【0024】
また、セルロース繊維(A)の比表面積は特に限定されないが、好ましくは70m2/g以上、より好ましくは100m2/g以上であり、そして、好ましくは300m2/g以下、より好ましくは250m2/g以下、さらに好ましくは200m2/g以下の範囲である。
【0025】
セルロース繊維(A)の比表面積を高くすることにより、樹脂組成物中において、後述する結晶性樹脂(C)又は熱可塑性樹脂(D)との接触面積を増大させ、樹脂組成物から製造される成形体の機械的強度をより向上させることができる。また、セルロース繊維(A)の比表面積を調整することにより、樹脂組成物中でセルロース繊維(A)の凝集を抑制して、機械的強度がより高い成形体を製造することができる。
【0026】
樹脂組成物中に含まれるセルロース繊維(A)の含有量は、成形体の用途や成形体に要求される特性に応じて適宜設定されるため、特に限定されないが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。なお、セルロース繊維(A)の量を多くすれば、成形体の機械的強度を向上する効果が大きい。一方、セルロース繊維(A)の含有量を少なくすれば、成形体の成形性や連続生産性を高める効果が得られ易い。
【0027】
本発明で用いるガラス転移温度が160℃以下の非晶性樹脂(B)は、セルロース繊維(A)の原料の解繊を促進する機能や、後述する融点(融解ピーク温度)が80~150℃、且つ融解開始温度が融点より30℃以下である結晶性樹脂(C)に安定的に分散させる機能を有する。なお、本発明でのガラス転移温度、融解開始温度、融点については、実施例中に記載の方法で測定したものである。
【0028】
前記非晶性樹脂(B)の構造としては、特に限定されるものではないが、前述の機能を効果的に発現できる観点から、エステル結合、エーテル結合、尿素結合、水酸基、アミノ基、カルボキシ基等の親水性の官能基を有する樹脂であることが好ましく、特に親水性アクリル樹脂、親水性ウレタン樹脂であることがより好ましい。
【0029】
前記親水性アクリル樹脂の中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく第1構造単位とアミド基を有するアクリル単量体に基づく第2構造単位とを含み、重量平均分子量が5,000~100,000の範囲である共重合樹脂を用いることが特に好ましい。なお、本発明での樹脂の分子量は、実施例中の記載の方法で測定したものである。
【0030】
前記第1構造単位が有するアルキル基の炭素原子数は、特に限定されないが、好ましくは6以上、より好ましくは8以上であり、そして、好ましくは18以下、より好ましくは15以下である。また、アクリル樹脂を構成する全構造単位に占める第1構造単位の量は、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。
【0031】
一方、アクリル樹脂を構成する全構造単位に占める第2構造単位の量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上であり、そして、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下の範囲である。これにより、アクリル樹脂中におけるアミド基の数(濃度)が適度になり、セルロース繊維(A)との親和性が良好となり、分散剤としての機能を効果的に発現することができる。
【0032】
具体的には、アクリル樹脂中のアミド基の濃度は特に限定されないが、好ましくは1.4mmol/g以上、より好ましくは2.8mmol/g以上であり、そして、好ましくは9.9mmol/g以下、より好ましくは9.2mmol/g以下の範囲である。なお、このアミド基の濃度は、アクリル樹脂の原料である単量体の仕込み量から算出される値である。
【0033】
アクリル樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上であり、そして好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下の範囲である。かかる重量平均分子量のアクリル樹脂は、結晶性樹脂(C)との相溶性がさらに高まる。
【0034】
なお、アクリル樹脂中に含まれる各構造単位の量は、アクリル樹脂の原料である単量体成分中に含まれる各単量体の量と実質的に等しくなる。
【0035】
前記アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、アミド基を有するアクリル単量体とを重合させることにより得られる。
【0036】
なお、本明細書中において、「(メタ)アクリル酸」の表記は、「アクリル酸」および「メタクリル酸」のいずれか一方または両方を表す。「(メタ)アクリレート」の表記は、「アクリレート」および「メタクリレート」のいずれか一方または両方を表す。「(メタ)アクリルアミド」の表記は、「アクリルアミド」および「メタクリルアミド」のいずれか一方または両方を表す。また、アルキル基は、シクロアルキル基を含む。
【0037】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられるが、ラウリル(メタ)アクリレートが好ましい。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0038】
アミド基を有するアクリル単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ドデシルアクリルアミド、N-プロポキシメチルアクリルアミド、6-(メタ)アクリルアミドヘキサン酸、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-[2,2-ジメチル-3-(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド等が挙げられる。なお、アクリル単量体は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0039】
また、アクリル樹脂の合成には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよびアミド基を有するアクリル単量体の他に、必要に応じてその他の単量体を使用することができる。
【0040】
その他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸等のカルボキシ基を有する単量体;2-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、γ―メタクリロキシプロピルトリメトシキシラン、ビニルトリエトキシシラン、グリシジル(メタ)アクリレート等の官能基を有する(メタ)アクリレート;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル酸-1,4-ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸-1,6-ヘキサンジオール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、ジ(メタ)アクリル酸グリセリン、スチレン、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン、クロロメチルスチレン等が挙げられる。なお、その他の単量体は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0041】
アクリル樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、アクリル単量体と、必要に応じてその他の単量体とを、有機溶剤中で、重合開始剤存在下、好ましくは60~140℃の温度範囲でラジカル重合することによって製造することができる。なお、有機溶剤はラジカル重合後、脱溶剤工程により、除去しても構わない。
【0042】
有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレンのような芳香族溶剤;シクロへキサノンのような脂環族溶剤;酢酸ブチル、酢酸エチルのようなエステル溶剤;イソブタノール、ノルマルブタノール、イソプロピルアルコール、ソルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなセロソルブ溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン溶剤等を使用することができる。なお、溶剤は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0043】
重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、アゾビスシアノ吉草酸のようなアゾ化合物;tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイドのような有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムのような無機過酸化物等が挙げられる。なお、重合体開始剤は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。かかる重合開始剤は、アクリル樹脂の原料となる単量体の合計に対して、0.1~10質量%程度で使用することが好ましい。
【0044】
また、アクリル樹脂が有するアミド基は、金属イオンに配位結合等することにより、金属イオンを効果的に捕捉して、金属イオンによる樹脂(C)、(D)の劣化を抑制または不活性化する機能も有する。なお、前記金属イオンとしては、各種存在するが、銅イオン、マンガンイオン、コバルトイオン等が挙げられる。
【0045】
前記親水性ウレタン樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、カルボキシ基を有するウレタン樹脂であることが、工業的生産性に優れる観点から好ましいものである。
【0046】
前記親水性ウレタン樹脂としては、例えば、ポリカルボン酸とグリコールとを用いてなるポリエステルポリオールと、ポリイソシアネート化合物と、必要に応じて鎖伸長剤とから得られる、ペンダントカルボキシ基を有する高分子量体であって、該カルボキシ基がアンモニアや有機アミン等で中和された水性ポリエステルポリウレタン樹脂を挙げることができる。
【0047】
前記ポリカルボン酸は、反応性や分子量調整が容易である観点より、ジカルボン酸を用いることが好ましく、芳香族ジカルボン酸、脂肪(環)族ジカルボン酸のいずれを用いてもよい。特に、セルロース繊維(A)との親和性(分散性)を高めるとともに、樹脂(C)、樹脂(D)との相溶性も良好である観点から、芳香族ジカルボン酸を単独で用いるか、あるいは、ポリカルボン酸中に脂肪族ジカルボン酸を30質量%以下で芳香族ジカルボン酸と併用することが好ましい。
【0048】
前記芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-P,P′-ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びそれらの無水物あるいはエステル形成性誘導体、p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸及びそれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0049】
また、脂肪(環)族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、無水マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸およびそれらの無水物あるいはエステル形成性誘導体が挙げられる。
【0050】
前記グリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の脂肪族ジオール;1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール、ビスフェノールA、ハイドロキノン及びそれらのアルキレンオキシド付加体等のジオールが挙げられる。
【0051】
前記ポリカルボン酸とグリコールとを用いて得られるポリエステルポリオールは、通常線状ポリマーであることが好ましいが、得られる水性ポリエステルポリウレタン樹脂の水分散性、セルロース繊維(A)との親和性を損わない範囲において、多官能成分の使用は妨げない。かかる多官能成分としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、シクロヘキサントリカルボン酸等のポリカルボン酸及びそれらの無水物あるいはエステル形成性誘導体;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオールが挙げられる。
【0052】
また前記鎖伸長剤としては、ペンダントカルボキシル基含有ジオール類や例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコール類あるいはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノシクロヘキシルメタン、ピペラジン、イソホロンジアミン等のジアミン類及びヒドラジン等が挙げられる。
【0053】
また、前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4′-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3′-ジメチル-4,4′-ビフェニレンジイソシアネート、3,3′-ジメトキシ-4,4′-ビフェニレンジイソシアネート、3,3′-ジクロロ-4,4′-ビフェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0054】
ペンダントカルボキシ基を導入する方法としては、従来公知のいかなる方法でもよいが、好ましくは例えば下記式
【0055】
【化1】
〔式中Rは1~3個の炭素原子を有するアルキル基である〕
で表される化合物をポリエステルを合成する際にグリコール成分として共重合して得られるペンダントカルボキシル基含有ポリエステルポリオールを使用する方法、あるいは鎖伸長剤として、前記式で表されるペンダントカルボキシル基含有鎖伸長剤を使用する方法等が挙げられる。
【0056】
前記式で表わされる化合物としては、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸等が挙げられる。
【0057】
また、上記以外のペンダントカルボキシル基の導入方法としては、特公昭52-3438号公報(2個のカルボキシル基含有芳香族ジアミンを鎖伸長剤として使用する方法)、特開昭57-165420号公報(ポリヒドロキシル化合物とジカルボン酸無水物とからの半エステルを鎖伸長剤として使用する方法)、特公昭53-7479号公報(イソシアネート末端プレポリマーに過剰のポリアルキレンポリアミンを反応させてポリウレタンウレアポリアミンとした後、無水トリメリット酸を付加させる方法)特公昭52-40677号公報(多価アルコールと多塩基酸から高酸価のポリエステル中間体を合成し、ヒドロキシル基の当量以下のポリイソシアネートと反応させる方法)等が挙げられる。
【0058】
前記式で表わされる化合物の使用量は、安定な水性ポリエステルポリウレタン樹脂が得られ、また、セルロール繊維(A)との親和性がよく、分散剤としての機能を効果的に発現できる観点から、得られるポリエステルポリウレタン中のペンダントカルボキシル基の含有量がポリエステルポリウレタン樹脂(固形分)に対して0.5~6質量%の範囲になるように設計して合成することが好ましい。
【0059】
前記水性ポリエステルポリウレタン樹脂の製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、イソシアネートに対して不活性でかつ親水性の有機溶剤に前記式のカルボキシ基含有化合物を共重合して得られるペンダントカルボキシル基含有ポリエステルポリオールを必要に応じて鎖伸長剤と共にポリイソシアネート化合物と反応させるか、あるいはポリエステルポリオール、前記式のカルボキシル基含有化合物及び必要に応じて鎖伸長剤とを、ポリイソシアネート化合物と反応させウレタン化した後、アンモニアもしくは有機アミンで中和して水性化(必要に応じて減圧下脱溶剤して)させることにより製造される。また、上記ポリイソシアネート化合物との反応の際、イソシアネート基の当量を活性水素原子に対して過剰にすることによりペンダントカルボキシル基含有イソシアネートプレポリマーとした後、水中で鎖伸長させると同時に中和して水性化させることによっても得られる。
【0060】
また、上記ウレタン化反応においてゲル化を防止するためにメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、1,3-ブタンジオール等のグリコール類等の反応停止剤を使用することもできる。
【0061】
このようにして得られるポリエステルポリウレタン樹脂の重量平均分子量は特に限定されないが、好ましくは8,000以上、より好ましくは10,000以上であり、そして、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下の範囲である。
【0062】
ペンダントカルボキシル基を中和する塩基としては、アンモニア以外に、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の有機アミンが挙げられ、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンが好ましい。
【0063】
また、前述のイソシアネートに対して不活性でかつ親水性の有機溶剤としては、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類等が挙げられる。
【0064】
本発明において、非晶性樹脂(B)の使用割合としては、特に限定されるものではないが、前述の分散性や解繊性がより良好となる観点より、セルロース繊維(A)の固形分100質量部に対して、非晶性樹脂(B)固形分として、例えば、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上であり、そして、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下の範囲である。
【0065】
本発明で用いる融点(融解ピーク温度)が80~150℃、且つ融解開始温度が融点より30℃以下である結晶性樹脂(C)としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブチレート、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、およびこれらの混合物等が挙げられる。これらの中でも工業的入手容易性や、得られる成形体の強度等の観点より、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂を用いることが好ましく、特に比重0.7~1.1のポリエチレンを用いることが好ましい。このようなポリエチレンとして、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE) 、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などが好ましいものとして挙げられる。
【0066】
本発明で用いる融点又はガラス転移温度が前記結晶性樹脂(C)の融点よりも5℃以上高い熱可塑性樹脂(D)としては、特に限定されるものではない。前記結晶性樹脂(C)よりも融点あるいはガラス転移温度が5℃以上高い樹脂を用いることによって、セルロース繊維(A)による樹脂の補強効果が向上し、また、成形品、特に発泡成形品としたときの強度も良好である。特にこの温度差が5℃~100℃の範囲であると、後述する混錬方法で樹脂組成物を得る際の生産性が良好であり、且つ成形品の強度もより高まる点から好ましい。
【0067】
前記熱可塑性樹脂(D)としては、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ナイロン6、ナイロン66、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンケトン、ポリアセタール等を例示することができる。中でも、結晶性の樹脂であることが、セルロース繊維の分散性が良好であり、かつ高強度の成形品が得られる観点から好ましく、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリアミドを用いることが好ましい。
【0068】
本発明の樹脂組成物において、樹脂成分の組成比については特に限定されるものではないが、より成形品の強度等に優れる観点から、前記結晶性樹脂(C)と前記熱可塑性樹脂(D)の樹脂組成物中における質量比(C)/(D)が0.5未満であることが好ましい。
【0069】
本発明の樹脂組成物は前述の各成分を混合することによって得ることができるが、より効率的にセルロース繊維(A)が分散できることから、セルロース繊維(A)と、ガラス転移温度が160℃以下の非晶性樹脂(B)と、融点(融解ピーク温度)が80~150℃、且つ融解開始温度が融点より30℃以下である結晶性樹脂(C)と、を含有するマスターバッチを得てから、これと熱可塑性樹脂(D)と混合する方法が好ましい。その際、マスターバッチ中のセルロース繊維(A)の分散性を損ねない範囲で予めマスターバッチに熱可塑性樹脂(D)を配合することもできる。
【0070】
本発明のマスターバッチの製造方法は、前記セルロース繊維(A)、前記非晶性樹脂(B)、前記結晶性樹脂(C)を配合して溶融混練する工程(「工程(1)」ということがある)を含む。
【0071】
この時、セルロース繊維(A)は、含水状態であるものを用いてもよく、特にセルロール繊維100質量部に対して水を5質量部以上含有してなる含水セルロール繊維を原料として用いることがより好ましい。
【0072】
先ず、セルロース繊維(A)、非晶性樹脂(B)、結晶性樹脂(C)を配合して、必要に応じて任意の原料成分である前記その他の着色剤や添加剤等とを、バルク状、ペレット状、チップ状などの様々な形態で、必要に応じて予備混合した後に、溶融混練機に投入して、該結晶性樹脂(C)の融点以上に加熱して、溶融混練する。この時、沸点が120℃以下の解繊助剤(E)を併用すると、溶融混練物中のセルロース繊維(A)の分散が良好となる観点から好ましい。
【0073】
前記解繊助剤(E)としては、例えば、水や各種アルコール類、ケトン類、エーテル類等が挙げられ、取り扱いが良好である観点からは、水、エタノール、イソプロパノールを用いることが好ましい。
【0074】
前記解繊助剤(E)の使用割合は特に限定されないが、例えば、セルロース繊維(A)の固形分100部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは20質量部以上であり、そして、好ましくは200質量部以下、より好ましくは100質量部以下の範囲である。
【0075】
前記工程(1)において、セルロース繊維(A)、前記非晶性樹脂(B)、結晶性樹脂(C)の配合割合は、本発明の効果を損ねなければ特に限定されないが、セルロース繊維(A)の固形分100質量部に対して、前記非晶性樹脂(B)が、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上から、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下の範囲であり、結晶性樹脂(C)が好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上から、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下の範囲である。また、工程(1)において予めマスターバッチに熱可塑性樹脂(D)を配合することは必須ではないものの、配合する場合には、結晶性樹脂(C)と前記熱可塑性樹脂(D)とのマスターバッチ中における質量比(C)/(D)が好ましくは3~20の範囲であってよい。
【0076】
前記工程(1)において、予備混合は、本発明の効果を損ねなければ特に限定されないが、リボンブレンター、ヘンシェルミキサー、Vブレンターなどを用いるドライブレンドを挙げることができる。また、溶融混練機としては、本発明の効果を損ねなければ特に限定されないが、バンバリーミキサー、ミキシングロール、単軸または2軸の押出機およびニーダーなどの加熱機構が備えられた溶融混練機を挙げることができる。
【0077】
このようにして得られた本発明のマスターバッチのメルトフローレートの範囲は、例えば、230℃、5kg荷重で、下限値が0.1〔g/10min〕以上、好ましくは1〔g/10min〕以上であり、一方、上限値は特に制限されないが、好ましくは用いる100〔g/10min〕以下である。
【0078】
上記工程(1)を含むマスターバッチの製造方法によれば、本発明のマスターバッチ中に含まれるセルロース繊維(A)の平均繊維径(平均繊維幅)は4nm~30μmであり、平均繊維長は1000μm以下であるものを容易に得ることができ、特に平均繊維長が10~800μmの範囲であるものを好適に得ることができる。
【0079】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、上記工程(1)を含む工程で得られたマスターバッチを、熱可塑性樹脂(D)と、さらに必要に応じて、任意の原料成分とを配合して溶融混練する工程(「工程(2)」ということがある)を含む。
【0080】
先ず、マスターバッチと、熱可塑性樹脂(D)と、必要に応じて任意の原料成分とを、粉末、ベレット、細片など様々な形態で、必要に応じて予備混合した後に、溶融混練機に投入して、熱可塑性樹脂(D)の融点又はガラス転移温度以上に加熱して、溶融混練する。
【0081】
工程(2)において、マスターバッチ(M)に対する熱可塑性樹脂(D)の配合割合(D/M)は特に限定されないが、マスターバッチ(M)中の結晶性樹脂(C)と、前記熱可塑性樹脂(D)との樹脂組成物中における質量比(C)/(D)が好ましくは0.5未満、より好ましくは0.4未満に、そして、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.01以上の範囲になるように配合することが好ましい。
【0082】
工程(2)において、予備混合は、本発明の効果を損ねなければ特に限定されないが、工程(1)で用いたものと同じものを用いることができる。工程(2)は、顆粒状に加工したマスターバッチと、顆粒状の熱可塑性樹脂(D)と、必要に応じて任意の原料成分とを固相状態で予備混合することが、分散性が向上するため特に好ましい。
【0083】
また、工程(2)において、溶融混練機は、本発明の効果を損ねなければ特に限定されないが、工程(1)で用いたものと同じものを用いることができる。
【0084】
このようにして得られた本発明の樹脂組成物の形態は本発明の効果を損ねなければ特に限定されないが、前記溶融混練の後に、ストランド状に押出した後に切断してペレット状、チップ状などの顆粒状とすることもできるし、また、前記溶融混練の後に、直接または前記顆粒状のものを溶融混合して、射出成形、圧縮成形、コンポジット、シート、パイプなどの押出成形、引抜成形、ブロー成形、トランスファー成形など各種の溶融成形に供し、成形品とすることもできる。
【0085】
本発明の成形体は、発泡体であることが、より軽量である観点から好ましい。発泡剤は窒素や二酸化炭素などの物理発泡剤やそれらを使用した超臨界発泡法、炭酸水素カルシウムやイソブタンやイソペンタン、イソオクタン、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾジカルボンアミド、尿素、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドなどの化学発泡剤のいずれも問題なく使用することができる。これら各種発泡剤のなかでも超臨界流体は、得られる発泡体の機械特性が向上するので好ましい。
【0086】
化学発泡剤を使用する場合は樹脂組成物100質量部あたり、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、そして、好ましくは15質量部以下、より好ましくは8質量部以下の範囲である。化学発泡剤の配合量を上記範囲内とすることによって、発泡セルの粗大化を低減して、微細な発泡セルが均一に分散された高強度な発泡成形体を得ることができる。
【0087】
なお、化学発泡剤の使用方法については、樹脂組成物に化学発泡剤を直接添加しても良いし、ポリオレフィン樹脂等をマトリックスとするマスターバッチペレットで使用しても構わない。
【0088】
発泡剤は、超臨界流体発泡剤であっても良い。この場合、樹脂組成物は、発泡剤を超臨界状態にして発泡させる超臨界発泡により成形される。超臨界発泡による発泡成形では、樹脂の酸化等を防ぐため、不活性ガスを用いることが好ましい。特に窒素ガスは汎用性があり、安価なガスとして好ましい。また、通常の超臨界発泡成形では、樹脂100質量部に対して窒素ガスの質量が0.5~1質量部になるように設定して15~25MPaの範囲の高圧条件で混合すると、好ましい超臨界状態を形成することができる。
【0089】
超臨界発泡成形において、超臨界流体発泡剤としては、実用上可能な温度及び圧力で超臨界流体となり得る物質であれば、特に制限はない。例えば、二酸化炭素、窒素、アルゴン、及び、ヘリウム等の不活性ガス、水等が挙げられる。
【0090】
また、本発明に用いることができる超臨界流体発泡剤は、樹脂の劣化を防ぐ観点から、成形時の圧力において、300℃以下の温度で超臨界状態となる物質が好ましい。前記超臨界流体発泡剤の超臨界状態となる圧力は、成形機の取り付けバルブや配管の耐圧性成形時の金型等の限界から、5MPa以下が好ましい。
【0091】
本発明の成形体を得るための樹脂組成物は、そのMFRが5~60の範囲にあることが望ましい。MFRをこの範囲とすることで、良好な物性と成形性を両立することができる。
【0092】
本発明の樹脂組成物は、互いに溶解しない複数の樹脂成分が高分散化によって形成された微細な界面を有する。また、セルロース繊維同士が絡み合うことで、上記樹脂組成物に微細な空間と、上記空間に接する界面が形成されている。そのため、超臨界流体を用いた発泡において上記界面が発泡起点となり、発泡成形体の内部に微細な気泡を均一に存在させることができ、耐熱性、強度を維持しながら軽量化等の特性が充分に発揮される。更に、所定量のセルロース繊維を含有することで、優れた低温衝撃強さを有する。
【0093】
上記超臨界流体を用いた発泡成形体の製造方法は、まず、溶解した樹脂組成物に高圧力下で超臨界流体を注入し攪拌することで、樹脂組成物と超臨界流体との単一相溶解物を得る。次に、減圧することで、単一相溶解物中の超臨界流体が気体へ相転移するため、気泡が発生する。発泡起点が均一に多数存在する場合には、微細な発泡粒子を多数含む発泡成形体となる。これにより、発泡用樹脂組成物が発泡し、微細な発泡粒子を有する発泡成形体が得られる。発泡倍率は、樹脂組成物の体積の1.1~5倍の範囲になるようにすることが好ましい。
【0094】
発泡成形体は、上記樹脂組成物を射出成形して得られたことが好ましい。特に、上記発泡成形体は、上記樹脂組成物に超臨界流体を含浸しながら射出成形を行なう方法(以後、超臨界射出成形ともいう。)により得られたことが好ましい。上記樹脂組成物は、超臨界射出成形により、上記発泡成形体を精密な形状、及び、多彩な形状に加工することができる。中でも、超臨界射出成形において、金型の空洞部分(キャビティ)内に上記樹脂組成物を溶融した状態で充填した後、冷却固化が進行する前に金型の一部を動かすことによってキャビティを強制的に広げ急激な圧力減少を引き起こす方法(以後、コアバック法)により発泡させることが好ましく、コアバック法を用いることにより、発泡量を大幅に増大させることができる。また、コアバック法は金型形状に制限があり複雑形状をとることが難しいため、通常の金型に超臨界状態の組成物を少量流し込み発泡により金型に充填する方法(以下、ショートショット法)があり、本発明品はショートショット法にも良好に作用する。
【0095】
本発明の樹脂組成物は、機械的強度に優れる成形品が得られることから、各種成形品の製造に利用できる。成形品の具体的な用途としては、例えば、自動車、バイク、自転車、鉄道、ドローン、ロケット、航空機、船舶のような輸送機械用の内外装材や筐体;風力発電機、水力発電機のようなエネルギー機械;エアコン、冷蔵庫、掃除機、電子レンジ、AV機器、ディジタルカメラ、パソコンのような家電筐体;電子基板;携帯電話、スマートホンのような通信機器筐体;松葉づえ、車いすのような医療用器具;スニーカー、ビジネスシューズのような靴;タイヤ;球技スポーツ用のボール、スキーブーツ、スノーボード板、ゴルフクラブ、プロテクタ、釣り糸、疑似餌のようなスポーツ用品;テント、ハンモックのようなアウトドア用品;電線被覆材;水道管、ガス管のような土木建築資材;柱材、床材、化粧板、窓枠、断熱材のような建築材;本棚、机、椅子のような家具;産業用ロボット、家庭用ロボットのようなロボット;ホットメルト接着剤;積層式3Dプリンタ用フィラメントやサポート剤;塗料;インク、トナーのような記録材料用バインダー樹脂;フィルム、テープのような包装材;ペットボトルのような樹脂容器;メガネフレーム;ごみ箱、シャープペンシルケースのような生活雑貨等が挙げられる。
【実施例】
【0096】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下実施例中に記載の「部」は特に断りにない限り質量基準である。
【0097】
<融点、融解開始温度の測定方法>
融点は示差走査熱量計(DSC)を用いて、樹脂約5mgを加熱速度10℃/分で-40℃~250℃まで昇温し、250℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で-40℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で250℃まで昇温したときに測定されたサーモグラムから求めた結晶融解ピーク温度(Tm)(℃)である。融解開始温度は、融解開始温度は、二回目の昇温時にてベースラインから吸熱が開始する温度を融解開始温度とした。
測定装置:セイコーインスツルメンツ株式会社製「DSC6300」
【0098】
<ガラス転移温度の測定方法>
ガラス転移温度(Tg)はDSCを用いて、樹脂約5mgを加熱速度10℃/分で-40℃~250℃まで昇温し、250℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で-40℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で250℃まで昇温したときにベースラインのシフトが起こる接線から求めた中間ガラス温度(℃)を用いた。
測定装置:セイコーインスツルメンツ株式会社製「DSC6300」
【0099】
<GPC測定条件>
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC-8320 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL-L」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G3000HXL」
+東ソー株式会社製「TSK-GEL G4000HXL」
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPCワークステーション EcoSEC―WorkStation」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準 : 前記「GPCワークステーション EcoSEC―WorkStation」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A-500」
東ソー株式会社製「A-1000」
東ソー株式会社製「A-2500」
東ソー株式会社製「A-5000」
東ソー株式会社製「F-1」
東ソー株式会社製「F-2」
東ソー株式会社製「F-4」
東ソー株式会社製「F-10」
東ソー株式会社製「F-20」
東ソー株式会社製「F-40」
東ソー株式会社製「F-80」
東ソー株式会社製「F-128」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0100】
<未解繊セルロースの評価方法>
得られたコンパウンドを0.2g秤取り、加熱プレスを200℃に加温した条件にて10MPaの圧力でシートを作製した。作製したシートの全領域を光学顕微鏡で50倍に拡大した視野にて1mm以上のセルロース解繊(A)未解繊物及びその凝集体の数(以下、未解繊セルロース数)を計測した。
【0101】
<弾性率の測定方法>
製造した成形体に関して縦に70mmのところを、TD方向に幅25mmを切り出し、TD方向試験片を作製した。得られた試験片を用いて、ISO 178による曲げ試験により、曲げ弾性率を測定した。未発泡体、発泡体の弾性率保持率を比較した。
試験機:株式会社島津製作所製「AUTOGRAPH AGS-X」
条件:曲げ速度:5mm/min、 支点間距離:32mm
【0102】
合成例1:非晶性アクリル樹脂の製造
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに、123部のイソプロピルアルコール(以下、「IPA」と記載する。)を仕込み80℃に昇温した。次に、このIPAに、135.3部のアクリルアミド、108.2部のラウリルメタクリレート、2.5部のメチルアクリレート、246部のIPA、4部の重合開始剤(和光純薬株式会社製「V-59」、アゾ開始剤)、および10部のメチルエチルケトン(以下、「MEK」と記載する。)を含む溶解混合物を、2時間かけて滴下し、73~77℃で反応を行った。その後、反応容器内を同温度範囲で2時間保持し、重合反応を終了した。得られた樹脂溶液から減圧ポンプを用いて脱溶剤(0.08~0.095MPa、60℃)した後、乾燥機を用いて80℃で30分間加熱乾燥を行い、固形物としての非晶性アクリル樹脂を得た。このアクリル樹脂のガラス転移温度は157℃であり、重量平均分子量は15,000であった。
【0103】
合成例2:非晶性水性ウレタン樹脂の製造
温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、テレフタル酸664部、イソフタル酸631部、1,4-ブタンジオール472部、ネオペンチルグリコール447部及びジブチル錫オキサイド0.5部を仕込み、180~230℃で5時間エステル化した後、酸価<1になるまで230℃で6時間重縮合反応を行なった。ついで120℃まで冷却しアジピン酸321部、ジメチロールプロピオン酸268部を加え、再び170℃に昇温しこの温度で20時間反応させ、酸価46.5、水酸基価59.8のペンダントカルボキシル基含有ポリエステルポリオールAを得た。
【0104】
ポリエステルポリオールA1880部を減圧下120℃で脱水し、その後80℃まで冷却した後、メチルエチルケトン1412部を加え十分撹拌溶解し、次いで4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート238部を加え70℃で8時間反応させた。反応終了後、40℃まで冷却し10%アンモニア水265部を加えて中和した後、水6090部を加え水溶化した。得られた透明な反応生成物を減圧下に65℃でメチルエチルケトンを除去した後、水を加えて濃度調整を行ない不揮発分25%の透明コロイド状分散体を得た。さらにブチルセロソルブを加え、不揮発分20%に調整した。なお、固形分のガラス転移温度は、108℃である。
【0105】
実施例1:マスターバッチの製造
セルロース繊維原料である針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)(平均繊維径:50μm、平均繊維長:2mm、Howe Sound Pulp and Paper社製)固形分50部、合成例1で得られたアクリル樹脂18部(固形分換算)、結晶性樹脂である高密度ポリエチレン(HDPE 旭化成社製J320、融点130℃、融解開始温度47℃)18部、結晶性樹脂であるポリプロピレン(PP プライムポリマー社製J106G、融点164℃)2部、解繊助剤として水50部を混合した。得られた混合物を、混練装置であるKZW25(株式会社テクノベル製)にて200℃の条件で溶融混練しマスターバッチ(MB1)を製造した。
【0106】
実施例2:樹脂組成物の製造
得られたマスターバッチMB1を10部と熱可塑性樹脂であるポリプロピレン(PP プライムポリマー社製J106G、融点164℃)90部を混ぜ、混練装置であるKZW25(株式会社テクノベル製)にて200℃の条件で溶融混練しコンパウンド(CP1)を得た。前記の手法で未解繊セルロース数を観測したが、その数は0であった。
【0107】
実施例3:超臨界発泡成形
得られたコンパウンド(CP1)のペレットを、TREXEL社製のMuCell SCF装置(型式:T-100J)を用いて超臨界状態にした窒素を、日本製鋼所社製J110AD射出成形機のシリンダーへと所定量注入し、溶融した樹脂組成物と混合させ金型内へ射出し、ショートショット法にて、超臨界発泡成形を行い、肉厚2mm、縦150mm×横150mmの発泡体を得た。
【0108】
成形条件は、シリンダー温度190℃、金型温度40℃、冷却時間30秒、背圧15MPa、保圧12MPa、窒素流入量0.6質量%、射出保圧時間2秒の条件を適用して行った。おおよそ15%の軽量化となるように発泡成形体を作製した。未発泡体の弾性率は2.4GPa、発泡体(軽量化率は14.9%)の弾性率は1.9GPa、弾性率保持率は79.2%であった。
【0109】
実施例4
HDPEを直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE 日本ポリエチレン社製UJ370、融点121℃、融解開始温度36℃)に変更した以外は実施例1と同様にして、マスターバッチ(MB2)を作製し、実施例2と同様にコンパウンド(CP2)を得た。実施例2と同様に未解繊セルロールの評価を行ったところ、未解繊セルロースの観測数は0であった。実施例3と同様に超臨界発泡成形を行い得られた試験片の弾性率を評価した。
【0110】
実施例5
HDPEを低密度ポリエチレン(LDPE 日本ポリエチレン社製LJ803、融点108℃、融解開始温度29℃)に変更した以外は実施例1と同様にして、マスターバッチ(MB3)を作製し、同様にコンパウンド(CP3)を得た。未解繊セルロースの観測数は0であった。実施例3と同様に超臨界発泡成形を行い得られた試験片の弾性率を評価した。
【0111】
実施例6
HDPEの添加率を20部、熱可塑性樹脂であるPPの添加部数を0部、に変更した以外は実施例1と同様にして、マスターバッチ(MB4)を作製し、実施例2と同様にコンパウンド(CP4)を得た。未解繊セルロースの観測数は0であった。実施例3と同様に超臨界発泡成形を行い得られた試験片の弾性率を評価した。
【0112】
実施例7
熱可塑性樹脂PP2部の代わりに、ポリアミド6(PA6、融点234℃)の添加部数を2部に変更した以外は実施例1と同様にして、マスターバッチ(MB5)を作製し、さらにPPをPA6に変更し、250℃で溶融混練した以外は、実施例2と同様にコンパウンド(CP5)をえた。未解繊セルロースの観測数は1であった。
【0113】
シリンダー温度を250℃にした以外は、実施例3と同様に超臨界発泡成形を行い得られた試験片の弾性率を評価した。
【0114】
実施例8
解繊助剤を水49部、イソプロパノール(IPA)1部に変更した以外は実施例6と同様にして、マスターバッチ(MB6)を作製し、実施例2と同様にコンパウンド(CP6)を得た。未解繊セルロースの観測数は0であった。実施例3と同様に超臨界発泡成形を行い得られた試験片の弾性率を評価した。
【0115】
実施例9
非晶性樹脂である「合成例1で得られたアクリル樹脂」を「合成例2で得られたウレタン樹脂」へ変更した以外は実施例1、2と同様にコンパウンド(CP7)を得た。使用割合は固形分として同じである。実施例1と同様に未解繊セルロールの評価を行ったところ、未解繊セルロースの観測数は0であった。実施例3と同様に超臨界発泡成形を行い得られた試験片の弾性率を評価した。
【0116】
比較例1
マスターバッチを経由せず、PPを92部、NBKPを5部、合成例1のアクリル樹脂を3部混合した以外は実施例2と同様にコンパウンドを得た。未解繊セルロースの観測数は121であった。実施例3と同様に超臨界発泡成形を行い得られた試験片の弾性率を評価した。
【0117】
比較例2
マスターバッチを経由せず、PPを93部、NBKPを5部、HDPEを2部混合した以外は実施例2と同様にコンパウンドを得た。未解繊セルロースの観測数は433であった。実施例3と同様に超臨界発泡成形を行い得られた試験片の弾性率を評価した。
【0118】
比較例3
マスターバッチを経由せず、PPを92部、NBKPを5部、合成例1のアクリル樹脂を3部、HDPEの代わりにステアリン酸(融点70℃)を2部混合した以外は実施例2と同様にコンパウンドをえた。未解繊セルロースの観測数は87であった。実施例3と同様に超臨界発泡成形を行い得られた試験片の弾性率を評価した。
【0119】
【0120】