(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】渋滞度判定方法、渋滞度判定プログラム及び渋滞度判定装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/01 20060101AFI20221227BHJP
G08G 1/13 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
G08G1/01 E
G08G1/13
(21)【出願番号】P 2022068705
(22)【出願日】2022-04-19
【審査請求日】2022-04-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595125270
【氏名又は名称】一般財団法人道路交通情報通信システムセンター
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】塚本 晃
(72)【発明者】
【氏名】足立 晋哉
(72)【発明者】
【氏名】日下部 貴彦
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-184236(JP,A)
【文献】特開平11-183184(JP,A)
【文献】特許第6244451(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリンクで構成された渋滞度判定区間において、交通流の渋滞度を判定する渋滞度判定方法であって、
前記各リンクにおけるプローブカーの旅行時間を合計した総旅行時間と、前記各リンクの距離を合計した総距離とに基づいて、前記渋滞度判定区間における区間旅行速度を算出し、
前記区間旅行速度が予め定められた区間渋滞判定閾値よりも高いとき、前記渋滞度判定区間の全体について、交通流の渋滞度が渋滞ではないと判定し、
前記区間旅行速度が前記区間渋滞判定閾値以下であるとき、前記各リンクにおける前記旅行時間及び距離に基づいて、前記各リンクの交通流の渋滞度を判定する、
ことを特徴とする渋滞度判定方法。
【請求項2】
前記区間旅行速度が前記区間渋滞判定閾値以下であるとき、前記各リンクにおける前記旅行時間及び距離からリンク旅行速度を算出し、
前記リンク旅行速度が予め定められたリンク渋滞判定閾値以下であるときには、前記リンクの交通流の渋滞度が渋滞であると判定し、
前記リンク旅行速度が前記リンク渋滞判定閾値よりも高く、予め定められたリンク混雑判定閾値以下であるときには、前記リンクの交通流の渋滞度が混雑であると判定し、
前記リンク旅行速度が前記リンク混雑判定閾値よりも高いときには、前記リンクの交通流の渋滞度が順調であると判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の渋滞度判定方法。
【請求項3】
前記渋滞度判定区間が全区間で交通流の渋滞度が均一であるとみなせる均一渋滞度型の区間であるとき、前記渋滞度判定区間の全体における渋滞度を、前記区間旅行速度に応じて、渋滞又は混雑に補正することを特徴とする請求項2に記載の渋滞度判定方法。
【請求項4】
前記渋滞度判定区間が交通流のボトルネックを含むボトルネック型の区間であり、交通流の渋滞度が渋滞又は混雑であると判定されたリンクとボトルネックとの間に交通流の渋滞度が順調であると判定されたリンクが存在するとき、このリンクの渋滞度を、このリンクに隣接するリンクの渋滞度に補正することを特徴とする請求項2に記載の渋滞度判定方法。
【請求項5】
前記渋滞度判定区間に所定距離以上である長距離リンクが含まれており、前記長距離リンクの交通流の渋滞度が渋滞又は混雑であると判定され、前記長距離リンクに対して上流に位置する上流側リンクの交通流の渋滞度が順調であると判定されたとき、
渋滞に応じた想定旅行速度と、順調に応じた想定旅行速度と、前記長距離リンクにおける前記旅行時間及び距離とに基づいて、前記長距離リンクに含まれる一部の領域の渋滞度を渋滞に補正することを特徴とする請求項2に記載の渋滞度判定方法。
【請求項6】
複数のリンクで構成された渋滞度判定区間において、交通流の渋滞度を判定する渋滞度判定方法であって、
前記各リンクにおけるプローブカーの旅行時間を合計した総旅行時間を取得し、
前記総旅行時間が予め定められた区間渋滞判定閾値よりも短いとき、前記渋滞度判定区間の全体について、交通流の渋滞度が渋滞ではないと判定し、
前記総旅行時間が前記区間渋滞判定閾値以上であるとき、前記各リンクにおける前記旅行時間及び距離に基づいて、前記各リンクの交通流の渋滞度を判定する、
ことを特徴とする渋滞度判定方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の渋滞度判定方法によって判定された結果を地図データ上に重ねて生成されたデータを提供することを特徴とする渋滞度情報提供方法。
【請求項8】
複数のリンクで構成された渋滞度判定区間において、交通流の渋滞度を判定する渋滞度判定方法をコンピュータに実行させる渋滞度判定プログラムであって、
前記渋滞度判定方法は、
前記各リンクにおけるプローブカーの旅行時間を合計した総旅行時間と、前記各リンクの距離を合計した総距離とに基づいて、前記渋滞度判定区間における区間旅行速度を算出し、
前記区間旅行速度が予め定められた区間渋滞判定閾値よりも高いとき、前記渋滞度判定区間の全体について、交通流の渋滞度が渋滞ではないと判定し、
前記区間旅行速度が前記区間渋滞判定閾値以下であるとき、前記各リンクにおける前記旅行時間及び距離に基づいて、前記各リンクの交通流の渋滞度を判定する、
ことを特徴とする渋滞度判定プログラム。
【請求項9】
複数のリンクで構成された渋滞度判定区間において、交通流の渋滞度を判定する判定部を備えた渋滞度判定装置であって、
前記判定部は、
前記各リンクにおけるプローブカーの旅行時間を合計した総旅行時間と、前記各リンクの距離を合計した総距離とに基づいて、前記渋滞度判定区間における区間旅行速度を算出し、
前記区間旅行速度が予め定められた区間渋滞判定閾値よりも高いとき、前記渋滞度判定区間の全体について、交通流の渋滞度が渋滞ではないと判定し、
前記区間旅行速度が前記区間渋滞判定閾値以下であるとき、前記各リンクにおける前記旅行時間及び距離に基づいて、前記各リンクの交通流の渋滞度を判定する、
ことを特徴とする渋滞度判定装置。
【請求項10】
請求項1から6のいずれか1つに記載の渋滞度判定方法によって判定された結果を地図データ上に重ねて生成されたデータを提供することを特徴とする渋滞度情報提供装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブカーが走行する所定の区間において、交通流の渋滞度を判定する渋滞度判定方法、渋滞度判定プログラム及び渋滞度判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路の交通流の渋滞度を判定するときには、複数のリンクのそれぞれにおいてプローブカーの旅行速度を取得し、この旅行速度に基づいて、各リンクの交通流の渋滞度が渋滞、混雑及び順調のいずれであるかを判定している。具体的には、旅行速度が第1閾値(速度)以下であれば、渋滞度が渋滞であると判定し、旅行速度が第1閾値及び第2閾値(第1閾値よりも高い速度)の間の範囲内であれば、渋滞度が混雑であると判定し、旅行速度が第2閾値以上であれば、渋滞度が順調であると判定している。なお、旅行速度は、リンクの距離を、リンクを移動したプローブカーの旅行時間で除算した値となる。
【0003】
一方、特許文献1に記載の渋滞判定方法では、交差点間を結ぶ道路に対応する区間毎に移動体の平均速度を取得し、取得した平均速度が所定速度以下である区間を低速区間として検出している。そして、低速区間が所定距離より短い場合には、短い低速区間に隣接する前後の区間を結合した結合区間における移動体の平均速度を取得し、この平均速度が所定速度以下である場合には、短い低速区間のみを渋滞区間と判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リンク内には信号機が設置されていることがあり、このリンクの交通流は、信号機の点灯状態(青信号や赤信号)の影響を受けやすくなる。ここで、実際の道路では、渋滞度が順調であっても、信号機の赤信号によってプローブカーが停止すると、リンクの旅行速度が低くなりやすく、渋滞度が渋滞であると判定(誤判定)されてしまうことがある。また、リンクの旅行速度は、上述したようにリンクの距離及び旅行時間から求められるため、赤信号の停止に伴って旅行時間が増加したとき、リンクの距離が短いほど、旅行速度が低くなりやすい。
【0006】
なお、リンク内に信号機が設置されている場合に限らず、例えば、一時停止の道路標識が設置されていたり、踏切が設置されていたりした場合でも、上述した誤判定が発生することがある。
【0007】
一方、特許文献1は、結合区間における移動体の平均速度を取得する点で後述する本発明と共通しているものの、渋滞を判定する具体的な方法について、本発明と異なる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願第1の発明は、複数のリンクで構成された渋滞度判定区間において、交通流の渋滞度を判定する渋滞度判定方法である。まず、各リンクにおけるプローブカーの旅行時間を合計した総旅行時間と、各リンクの距離を合計した総距離とに基づいて、渋滞度判定区間における区間旅行速度を算出する。区間旅行速度が予め定められた区間渋滞判定閾値よりも高いときには、渋滞度判定区間の全体について、交通流の渋滞度が渋滞ではないと判定する。一方、区間旅行速度が区間渋滞判定閾値以下であるときには、各リンクにおける旅行時間及び距離に基づいて、各リンクの交通流の渋滞度を判定する。
【0009】
区間旅行速度が区間渋滞判定閾値以下であるときには、各リンクにおける旅行時間及び距離からリンク旅行速度を算出する。ここで、リンク旅行速度が予め定められたリンク渋滞判定閾値以下であるときには、リンクの渋滞度が渋滞であると判定する。リンク旅行速度がリンク渋滞判定閾値よりも高く、予め定められたリンク混雑判定閾値以下であるときには、リンクの渋滞度が混雑であると判定する。リンク旅行速度がリンク混雑判定閾値よりも高いときには、リンクの渋滞度が順調であると判定する。
【0010】
渋滞度判定区間が全区間で交通流の渋滞度が均一であるとみなせる均一渋滞度型の区間であるとき、渋滞度判定区間の全体における交通流の渋滞度を、区間旅行速度に応じて、混雑に補正することができる。一方、渋滞度判定区間が交通流のボトルネックを含むボトルネック型の区間であり、交通流の渋滞度が渋滞又は混雑であると判定されたリンクとボトルネックとの間に交通流の渋滞度が順調であると判定されたリンクが存在するとき、このリンクの渋滞度を、このリンクに隣接するリンクの渋滞度(渋滞又は混雑)に補正することができる。例えば、隣接するリンクの渋滞度として、上流側に存在するリンクの渋滞度とすることができる。
【0011】
渋滞度判定区間に所定距離以上である長距離リンクが含まれており、長距離リンクの渋滞度が渋滞又は混雑であると判定され、長距離リンクに対して上流に位置する上流側リンクの渋滞度が順調であると判定されたときには、長距離リンクに含まれる一部の領域の渋滞度を渋滞に補正することができる。ここで、渋滞に応じた想定旅行速度と、順調に応じた想定旅行速度と、長距離リンクにおける旅行時間及び距離とに基づいて、上述した補正を行うことができる。
【0012】
本願第2の発明は、複数のリンクで構成された渋滞度判定区間において、交通流の渋滞度を判定する渋滞度判定方法である。まず、各リンクにおけるプローブカーの旅行時間を合計した総旅行時間を取得する。ここで、総旅行時間が予め定められた区間渋滞判定閾値よりも短いときには、渋滞度判定区間の全体について、交通流の渋滞度が渋滞ではないと判定する。一方、総旅行時間が区間渋滞判定閾値以上であるときには、各リンクにおける旅行時間及び距離に基づいて、各リンクの交通流の渋滞度を判定する。
【0013】
本願第3の発明である渋滞度提供方法は、上述した本願第1又は第2の発明である渋滞度判定方法によって判定された結果を地図データ上に重ねて生成されたデータを提供する。
【0014】
本願第4の発明は、複数のリンクで構成された渋滞度判定区間において、交通流の渋滞度を判定する渋滞度判定方法をコンピュータに実行させる渋滞度判定プログラムである。ここで、渋滞度判定方法は、上述した本願第1又は第2の発明と同様である。
【0015】
本願第5の発明は、複数のリンクで構成された渋滞度判定区間において、交通流の渋滞度を判定する判定部を備えた渋滞度判定装置である。ここで、判定部は、上述した本願第1又は第2の発明である渋滞度判定方法の処理を行うことができる。
【0016】
本願第6の発明である渋滞度提供装置は、上述した本願第1又は第2の発明である渋滞度判定方法によって判定された結果を地図データ上に重ねて生成されたデータを提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、渋滞度判定区間の区間旅行速度に応じて、交通流の渋滞度を判定する対象を、渋滞度判定区間の全体と、渋滞度判定区間を構成する各リンクとに分けている。上述したように、1つのリンクに着目すると、交通流の渋滞度が渋滞であると誤判定されるような場合であっても、複数のリンクで構成された渋滞度判定区間の全体に着目して交通流の渋滞度を判定すれば、誤判定を抑制しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】交通流の渋滞度を判定するシステムを説明する概略図である。
【
図3】第1実施形態において、渋滞度判定方法を説明するフローチャートである。
【
図4】渋滞度判定区間の全体について、交通流の渋滞度を判定した結果を説明する図である。
【
図5】渋滞度判定区間の各リンクについて、交通流の渋滞度を判定した結果を説明する図である。
【
図6】第2実施形態において、交通流の渋滞度判定結果を補正する処理を説明するフローチャートである。
【
図7】均一渋滞度型に基づいて、交通流の渋滞度判定結果を補正する処理を説明する図である。
【
図8】ボトルネック型に基づいて、交通流の渋滞度判定結果を補正する処理を説明する図である。
【
図9】第3実施形態において、長距離リンクの部分渋滞を判定する処理を説明するフローチャートである。
【
図10】長距離リンクにおける部分渋滞の距離Lpを説明する図である。
【
図11】長距離リンクの交通流の渋滞度を部分的に補正する処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態である交通流の渋滞度の判定について、以下に説明する。
【0020】
(システム構成)
図1において、プローブカーPCは、プローブデータを基地局BSに送信し、基地局BSからインターネットIを介して渋滞度判定装置10にプローブデータが送信される。基地局BSとしては、移動体通信網である携帯電話網の基地局が用いられる。渋滞度判定装置10は、判定部11と、メモリ12と、受信部13とを有する。判定部11は、後述する交通流の渋滞度の判定を行い、メモリ12は、所定の情報を格納しており、受信部13は、インターネットIを介してプローブデータを受信する。
【0021】
(渋滞度判定区間)
本実施形態では、連続する複数のリンクを統合した区間を渋滞度判定区間TJSとして設定している。各リンクは、始端に相当するノードと終端に相当するノードによって規定される。
図2に示す例では、5つのリンク(リンク1~リンク5)によって渋滞度判定区間TJSが構成されており、プローブカーPCの進行方向における下流から上流に向かって、リンク1、リンク2、リンク3、リンク4及びリンク5が設けられている。なお、渋滞度判定区間TJSを構成するリンクの総数は、5つに限るものではなく、適宜設定することができる。
【0022】
渋滞度判定区間TJSの始端及び終端としては、交通流の渋滞度が変化しやすい地点を設定することができる。この地点としては、例えば、渋滞のボトルネックとなる地点、信号が設置された地点、交差点が存在する地点が挙げられる。また、渋滞度判定区間TJSの距離は、道路交通状況に応じて適宜設定することができる。好適には、渋滞度判定区間TJSの距離として、信号停止による旅行速度低下の影響を低減できる700~1000m以上とすることが望ましい。実際の道路地図上では、複数の渋滞度判定区間TJSが設けられることになるため、ID番号を用いることにより、個々の渋滞度判定区間TJSを区別することができる。
【0023】
(渋滞度判定方法)
本実施形態では、上述した渋滞度判定区間TJSにおいて交通流の渋滞度の判定を行うようにしており、この渋滞度の判定では、交通流の渋滞度が渋滞、混雑及び順調のいずれであるかを判定している。以下、本実施形態の渋滞度判定方法について、
図3に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0024】
ステップS101において、渋滞度判定装置10の受信部13は、プローブカーPCから送信されたプローブデータを受信する。そして、渋滞度判定装置10の判定部11は、受信したプローブデータに基づいて、渋滞度判定区間TJSに含まれる各リンクについて、プローブカーPCの旅行時間Tnを取得する。旅行時間Tnは、各リンクにおいて、始端から終端までプローブカーPCが移動したときの時間である。なお、複数のプローブカーが走行した場合には、これらのプローブカーの旅行時間を平均した平均旅行時間を用いる。旅行時間Tnの添え字nは、各リンクに割り当てられた値であり、nは、渋滞度判定区間TJSを構成するリンクの総数だけ存在する。
【0025】
ステップS102において、渋滞度判定装置10の判定部11は、下記式(1)に基づいて、渋滞度判定区間TJSの区間旅行速度Vsを算出する。
【0026】
【0027】
上記式(1)において、Vsは渋滞度判定区間TJSの区間旅行速度[km/h]であり、Lnは各リンクの距離[km]であり、Tnは各リンクにおけるプローブカーPCの旅行時間[h]である。距離Ln及び旅行時間Tnの添え字nは、各リンクに割り振られた値であり、nは、渋滞度判定区間TJSを構成するリンクの総数だけ存在する。上記式(1)によれば、渋滞度判定区間TJSに含まれるすべてのリンクの距離Lnの総和(ΣLn)を、渋滞度判定区間TJSに含まれるすべてのリンクにおける旅行時間Tnの総和(ΣTn)で除算することにより、区間旅行速度Vsを求めている。なお、距離Lnの総和(ΣLn)は、渋滞度判定区間TJSの距離を示す。
【0028】
各リンクの距離Lnは、予め測定しておくことができ、渋滞度判定装置10のメモリ12に記憶しておくことができる。これにより、ステップS101の処理において各リンクの旅行時間Tnを取得すれば、上記式(1)に基づいて、区間旅行速度Vsを算出することができる。
【0029】
ステップS103において、渋滞度判定装置10の判定部11は、ステップS102の処理で算出された区間旅行速度Vsが区間渋滞判定閾値Vs_th以下であるか否かを判別する。区間旅行速度Vsが区間渋滞判定閾値Vs_thよりも高いときには、ステップS104の処理に進み、区間旅行速度Vsが区間渋滞判定閾値Vs_th以下であるときには、ステップ105の処理に進む。
【0030】
区間渋滞判定閾値Vs_thは、渋滞度判定区間TJSにおいて、交通流の渋滞度が渋滞であるか否かを判定するための閾値(旅行速度)であり、具体的な旅行速度は予め決めておくことができる。例えば、区間渋滞判定閾値Vs_thを10[km/h]~20[km/h]の範囲内の旅行速度に設定することができる。好適には、渋滞度判定区間TJSにおいて、交通流の渋滞度が順調である時の統計的な旅行時間分布(1日の時刻ごとの旅行時間の分布)の上限値(地域により傾向が異なるものの、一般的には10時~11時および14時~15時の時刻帯における旅行時間分布の95パーセンタイル値など)に相当する旅行速度を用いることが望ましい。区間渋滞判定閾値Vs_thに関する情報は、渋滞度判定装置10のメモリ12に記憶しておくことができる。
【0031】
ステップS104において、渋滞度判定装置10の判定部11は、渋滞度判定区間TJSの全体において、交通流の渋滞度が渋滞ではないと判定する。例えば、
図4に示すように、渋滞度判定区間TJSを構成するリンク1~5のすべてにおいて、交通流の渋滞度が順調であると判定する。ステップS104の処理の後は、
図3に示す処理を終了する。
【0032】
ステップS105において、渋滞度判定装置10の判定部11は、渋滞度判定区間TJSに含まれる各リンクについて、プローブカーPCの旅行速度(以下、「リンク旅行速度」という)Vnを算出する。リンク旅行速度Vnの添え字nは、各リンクに割り振られた値であり、nは、渋滞度判定区間TJSを構成するリンクの総数だけ存在する。リンク旅行速度Vnは、各リンクの距離Lnを各リンクの旅行時間Tnで除算することによって算出される。ここで、各リンクの距離Lnは、予め測定しておくことができ、各リンクの旅行時間Tnは、ステップS101の処理によって取得される。
【0033】
ステップS106において、渋滞度判定装置10の判定部11は、ステップS105の処理で算出されたリンク旅行速度Vnがリンク渋滞判定閾値Vn_th1以下であるか否かを判別する。リンク旅行速度Vnがリンク渋滞判定閾値Vn_th1以下であるときには、ステップS107の処理に進み、リンク旅行速度Vnがリンク渋滞判定閾値Vn_th1よりも高いときには、ステップS108の処理に進む。
【0034】
リンク渋滞判定閾値Vn_th1は、各リンクでの交通流の渋滞度が渋滞であるか否かを判定するための閾値(旅行速度)であり、具体的な旅行速度は予め決めておくことができる。例えば、リンク渋滞判定閾値Vn_th1を10[km/h]に設定することができる。リンク渋滞判定閾値Vn_th1に関する情報は、渋滞度判定装置10のメモリ12に記憶しておくことができる。
【0035】
ステップS107において、渋滞度判定装置10の判定部11は、リンク旅行速度Vnがリンク渋滞判定閾値Vn_th1以下であるリンクについて、交通流の渋滞度が渋滞であると判定する。ステップS107の処理の後は、
図3に示す処理を終了する。
【0036】
ステップS108において、渋滞度判定装置10の判定部11は、ステップS105の処理で算出されたリンク旅行速度Vnがリンク混雑判定閾値Vn_th2以下であるか否かを判別する。リンク旅行速度Vnがリンク混雑判定閾値Vn_th2以下であるときには、ステップS109の処理に進み、リンク旅行速度Vnがリンク混雑判定閾値Vn_th2よりも高いときには、ステップS110の処理に進む。
【0037】
リンク混雑判定閾値Vn_th2は、各リンクでの交通流の渋滞度が混雑であるか否かを判定するための閾値(旅行速度)であり、具体的な旅行速度は予め決めておくことができる。ここで、リンク混雑判定閾値Vn_th2は、リンク渋滞判定閾値Vn_th1よりも高い旅行速度に設定される。例えば、リンク渋滞判定閾値Vn_th1を10[km/h]に設定したときには、リンク混雑判定閾値Vn_th2を20[km/h]に設定することができる。リンク混雑判定閾値Vn_th2に関する情報は、渋滞度判定装置10のメモリ12に記憶しておくことができる。
【0038】
ステップS109において、渋滞度判定装置10の判定部11は、リンク旅行速度Vnがリンク混雑判定閾値Vn_th2以下であるリンクについて、交通流の渋滞度が混雑であると判定する。ここで、交通流の渋滞度が混雑であると判定されたリンクでは、リンク旅行速度Vnがリンク混雑判定閾値Vn_th2以下であって、リンク渋滞判定閾値Vn_th1よりも高くなる。ステップS109の処理の後は、
図3に示す処理を終了する。
【0039】
ステップS110において、渋滞度判定装置10の判定部11は、リンク旅行速度Vnがリンク混雑判定閾値Vn_th2よりも高いリンクについて、交通流の渋滞度が順調であると判定する。ステップS110の処理の後は、
図3に示す処理を終了する。
【0040】
図5には、上述したステップS105~ステップS110の処理の結果(一例)を示す。リンク1では、リンク旅行速度V
1がリンク渋滞判定閾値Vn_th1以下であるため、交通流の渋滞度が渋滞であると判定している。リンク2では、リンク旅行速度V
2がリンク混雑判定閾値Vn_th2よりも高いため、交通流の渋滞度が順調であると判定している。リンク3では、リンク旅行速度V
3がリンク渋滞判定閾値Vn_th1以下であるため、交通流の渋滞度が渋滞であると判定している。リンク4では、リンク旅行速度V
4がリンク渋滞判定閾値Vn_th1よりも高く、リンク混雑判定閾値Vn_th2以下であるため、交通流の渋滞度が混雑であると判定している。リンク5では、リンク旅行速度V
5がリンク混雑判定閾値Vn_th2よりも高いため、交通流の渋滞度が順調であると判定している。
【0041】
上述した交通流の渋滞度の判定を行った後では、この判定結果を地図データ上に重ねたデータを生成して提供することができる。本実施形態では、交通流の渋滞度として、渋滞、混雑及び順調を設定しているため、これらの交通流の渋滞度を区別可能な状態で地図データ上に重ねることができる。例えば、交通流の渋滞度が順調であると判定した場合には、この判定対象となった渋滞度判定区間TJS又はリンクを緑色で表示して地図データ上に重ねることができる。交通流の渋滞度が混雑であると判定した場合には、この判定対象となった渋滞度判定区間TJS又はリンクを黄色で表示して地図データ上に重ねることができる。交通流の渋滞度が渋滞であると判定した場合には、この判定対象となった渋滞度判定区間TJS又はリンクを赤色で表示して地図データ上に重ねることができる。判定結果を地図データ上に重ねたデータを生成して提供すれば、ユーザは、カーナビゲーションシステムのディスプレイなどにおいて、交通流の渋滞度を把握することができる。
【0042】
本実施形態によれば、渋滞度判定区間TJSの区間旅行速度Vsに応じて、交通流の渋滞度を判定する対象を、渋滞度判定区間TJSの全体と、渋滞度判定区間TJSを構成する各リンクとに分けている。すなわち、区間旅行速度Vsが区間渋滞判定閾値Vs_thよりも高いときには、交通流の渋滞度を判定する対象を、渋滞度判定区間TJSの全体としている。一方、区間旅行速度Vsが区間渋滞判定閾値Vs_th以下であるときには、交通流の渋滞度を判定する対象を、渋滞度判定区間TJSを構成する各リンクとしている。
【0043】
1つのリンクに着目すると、交通流の渋滞度が渋滞であると誤判定されるような場合であっても、複数のリンクで構成された渋滞度判定区間TJSの全体に着目すれば、交通流が渋滞していないことがあるため、交通流の渋滞度が誤判定されることを抑制しやすくなる。本実施形態では、区間旅行速度Vsが区間渋滞判定閾値Vs_thよりも高いときには、渋滞度判定区間TJSを構成する各リンクにおいて、交通流が渋滞していないと判定している。すなわち、仮に、任意の1つのリンクにおいて、一時的な渋滞が発生していたとしても、渋滞度判定区間TJSの全体に着目して、交通流が渋滞していないと判定している。
【0044】
(渋滞度判定プログラム)
渋滞度判定装置10によって実行される各機能は、プログラムによって実現可能である。具体的には、各機能を実現するために予め用意されたコンピュータプログラムを補助記憶装置に格納しておき、CPU等の制御部が補助記憶装置に格納されたプログラムを主記憶装置に読み出し、主記憶装置に読み出されたプログラムを制御部が実行することにより、渋滞度判定装置10に各機能を動作させることができる。渋滞度判定装置10の各機能は、個別の装置で動作させることもでき、複数の装置を互いに接続することにより、渋滞度判定装置10を構成することもできる。
【0045】
上記プログラムは、コンピュータで読取可能な記録媒体に記録された状態において、コンピュータに提供することも可能である。記録媒体としては、CD-ROM等の光ディスク、DVD-ROM等の相変化型光ディスク、MO(Magnet Optical)やMD(Mini Disk)などの光磁気ディスク、フロッピー(登録商標)ディスクやリムーバブルハードディスクなどの磁気ディスク、コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア、SDメモリカード、メモリスティック等のメモリカードが挙げられる。また、本発明の目的のために特別に設計されて構成された集積回路(ICチップ等)等のハードウェア装置も記録媒体として含まれる。
【0046】
(変形例1)
本実施形態では、
図3に示すステップS103の処理において、区間旅行速度Vs及び区間渋滞判定閾値(旅行速度)Vs_thを比較しているが、これに限るものではない。渋滞度判定区間TJSの距離は予め決められているため、区間旅行速度Vsの代わりに、渋滞度判定区間TJSの区間旅行時間(上記式(1)における総和ΣTn)を用いることができる。そして、区間渋滞判定閾値として、旅行速度Vs_thの代わりに、旅行速度Vs_thに対応する旅行時間Ts_thを用いることができる。旅行時間Ts_thは、旅行速度Vs_thに渋滞度判定区間TJSの距離(上記式(1)における総和ΣLn)を乗算した値である。
【0047】
区間旅行時間ΣTnが区間渋滞判定閾値(旅行時間)Ts_thよりも短いときには、
図3に示すステップS104の処理を行うことができる。一方、区間旅行時間ΣTnが区間渋滞判定閾値(旅行時間)Ts_th以上であるときには、
図3に示すステップS105以降の処理を行うことができる。
【0048】
(変形例2)
本実施形態では、
図3に示すステップS106の処理において、リンク旅行速度Vn及びリンク渋滞判定閾値(旅行速度)Vn_th1を比較しているが、これに限るものではない。リンクの距離Lnは予め決められているため、リンク旅行速度Vnの代わりに、リンクの旅行時間Tnを用いることができる。そして、リンク渋滞判定閾値として、旅行速度Vn_th1の代わりに、旅行速度Vn_th1に対応する旅行時間Tn_th1を用いることができる。旅行時間Tn_th1は、旅行速度Vn_th1にリンクの距離Lnを乗算した値である。
【0049】
リンクの旅行時間Tnがリンク渋滞判定閾値(旅行時間)Tn_th1よりも長いときには、
図3に示すステップS107の処理を行うことができる。また、リンクの旅行時間Tnがリンク渋滞判定閾値(旅行時間)Tn_th1以下であるときには、
図3に示すステップS108以降の処理を行うことができる。
【0050】
(変形例3)
本実施形態では、
図3に示すステップS108の処理において、リンク旅行速度Vn及びリンク混雑判定閾値(旅行速度)Vn_th2を比較しているが、これに限るものではない。リンクの距離Lnは予め決められているため、リンク旅行速度Vnの代わりに、リンクの旅行時間Tnを用いることができる。そして、リンク混雑判定閾値として、旅行速度Vn_th2の代わりに、旅行速度Vn_th2に対応する旅行時間Tn_th2を用いることができる。旅行時間Tn_th2は、旅行速度Vn_th2にリンクの距離Lnを乗算した値である。
【0051】
リンクの旅行時間Tnがリンク混雑判定閾値(旅行時間)Tn_th2よりも長いときには、
図3に示すステップS109の処理を行うことができる。また、リンクの旅行時間Tnがリンク混雑判定閾値(旅行時間)Tn_th2以下であるときには、
図3に示すステップS110の処理を行うことができる。
【0052】
(変形例4)
本実施形態では、
図3に示すステップS105~S110の処理において、渋滞、混雑及び順調といった3種類の交通流の渋滞度を判定しているが、これに限るものではない。具体的には、渋滞及び順調といった2種類の交通流の渋滞度を判定したり、重渋滞、渋滞、混雑及び順調といった4種類の交通流の渋滞度を判定したりすることができる。
【0053】
2種類の交通流の渋滞度を判定する場合には、渋滞及び順調を区別するためのリンク判定閾値(旅行速度)Vn_thを設定することができる。そして、リンク旅行速度Vnがリンク判定閾値Vn_th以下であるときには、交通流の渋滞度が渋滞であると判定する。一方、リンク旅行速度Vnがリンク判定閾値Vn_thよりも高いときには、交通流の渋滞度が順調であると判定する。
【0054】
4種類の交通流の渋滞度を判定する場合には、交通流の渋滞度が重渋滞であるか否かを判定するためのリンク重渋滞判定閾値(旅行速度)Vn_th0と、交通流の渋滞度が渋滞であるか否かを判定するためのリンク渋滞判定閾値(旅行速度)Vn_th1と、交通流の渋滞度が混雑であるか否かを判定するためのリンク混雑判定閾値(旅行速度)Vn_th2とを設定することができる。ここで、リンク重渋滞判定閾値Vn_th0は、リンク渋滞判定閾値Vn_th1よりも低く、リンク渋滞判定閾値Vn_th1は、リンク混雑判定閾値Vn_th2よりも低い。各判定閾値Vn_th0,Vn_th1,Vn_th2の具体的な旅行速度は予め決めておくことができ、変形例4における判定閾値Vn_th1,Vn_th2は、本実施形態で説明した判定閾値Vn_th1,Vn_th2と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0055】
リンク旅行速度Vnがリンク重渋滞判定閾値Vn_th0以下であるときには、交通流の渋滞度が重渋滞であると判定する。リンク旅行速度Vnが、リンク重渋滞判定閾値Vn_th0よりも高く、リンク渋滞判定閾値Vn_th1以下であるときには、交通流の渋滞度が渋滞であると判定する。リンク旅行速度Vnが、リンク渋滞判定閾値Vn_th1よりも高く、リンク混雑判定閾値Vn_th2以下であるときには、交通流の渋滞度が混雑であると判定する。リンク旅行速度Vnが、リンク混雑判定閾値Vn_th2よりも高いときには、交通流の渋滞度が順調であると判定する。
【0056】
なお、変形例4では、交通流の渋滞度を判定するための閾値を旅行速度としているが、上述した変形例2,3と同様に、旅行速度の代わりに、旅行時間を判定閾値として用いることもできる。この場合には、リンクの旅行時間Tnを判定閾値(旅行時間)と比較することにより、交通流の渋滞度を判定することができる。
【0057】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態である交通流の渋滞度の判定について、以下に説明する。本実施形態では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については説明を省略する。
【0058】
第1実施形態では、区間旅行速度Vsが区間渋滞判定閾値Vs_th以下であるときには、渋滞度判定区間TJSに含まれる各リンクについて、交通流の渋滞度を判定している(
図3のステップS105~S110の処理)。本実施形態では、第1実施形態に基づいて各リンクの交通流の渋滞度を判定した後、渋滞度判定区間TJSの道路環境(後述する均一渋滞度型やボトルネック型)に基づいて、交通流の渋滞度の判定結果を補正する。
【0059】
以下、この補正処理について、
図6に示すフローチャートを用いて説明する。
図6に示す処理は、
図3に示す処理によって、各リンクの交通流の渋滞度を判定した後に実行される。なお、
図3に示すステップS104の処理によって、渋滞度判定区間TJSの全体について、渋滞が無いと判定したときには、
図6に示す処理は行われない。
【0060】
ステップS201において、渋滞度判定装置10の判定部11は、渋滞度判定区間TJSが均一渋滞度型の区間であるか否かを判別する。渋滞度判定区間TJSが均一渋滞度型の区間である場合には、ステップS202の処理に進み、渋滞度判定区間TJSが均一渋滞度型の区間ではない場合には、ステップS203の処理に進む。
【0061】
均一渋滞度型の区間とは、プローブデータの統計解析によって、区間の全体で交通流の渋滞度が均一であると判断された区間である。例えば、渋滞度判定区間TJSにおいて、短い距離間隔で信号機が設置されている場合には、信号機間の距離が短いリンクで渋滞が発生していても、この渋滞は無視し、区間の全体を均一な交通流(渋滞度)とみなした方が、実情に沿ったものとなり、利用者にとってはわかりやすくなる。この点を考慮して、本実施形態では、渋滞度判定区間TJSが均一渋滞度型の区間であるか否かを判別するようにしている。均一渋滞度型の区間に関する情報は、渋滞度判定区間TJSのID番号と紐付けた状態で渋滞度判定装置10のメモリ12に記憶しておくことができる。これにより、判定部11は、メモリ12に記憶された情報を参照することにより、交通流の渋滞度を判定する渋滞度判定区間TJSについて、均一渋滞度型の区間であるか否かを判別することができる。均一渋滞度型の区間は、所定の期間(任意)が経過するたびに、プローブデータの統計解析によって更新することができる。
【0062】
ステップS202において、渋滞度判定装置10の判定部11は、まず、渋滞度判定区間TJSの区間旅行速度Vsに基づいて、交通流の渋滞度が渋滞又は混雑であるかを判定する。具体的には、区間旅行速度Vsが区間渋滞判定閾値Vs_th1以下であるときには、交通流の渋滞度が渋滞であると判定する。一方、区間旅行速度Vsが、区間渋滞判定閾値Vs_th1よりも高く、区間混雑判定閾値Vs_th2以下であるときには、交通流の渋滞度が混雑であると判定する。ここで、区間混雑判定閾値Vs_th2は、区間渋滞判定閾値Vs_th1よりも高い旅行速度である。そして、判定部11は、渋滞度判定区間TJS内のすべてのリンクについて、上述したように判定した交通流の渋滞度と同一の渋滞度(渋滞又は混雑)に補正し、
図6に示す処理を終了する。なお、区間旅行速度Vsが区間混雑判定閾値Vs_th2よりも高いときには、
図3において、ステップS103の処理からステップS104の処理に進むため、
図6に示す処理は行われないことになる。
【0063】
ステップS203において、渋滞度判定装置10の判定部11は、渋滞度判定区間TJSがボトルネック型の区間であるか否かを判別する。渋滞度判定区間TJSがボトルネック型の区間である場合には、ステップS204の処理に進み、渋滞度判定区間TJSがボトルネック型の区間ではない場合には、
図6に示す処理を終了する。
【0064】
ボトルネック型の区間とは、プローブデータの統計解析によって、交通流の渋滞が頻繁に発生する先頭地点(ボトルネック)が含まれると判断された区間である。例えば、ボトルネックとしては、信号交差点、合流部、織込み区間、高速道路のサグおよびトンネル入口が挙げられる。ボトルネック型の渋滞が発生する場所では、プローブカーの走行状況(すなわち、旅行時間Tn)によっては、渋滞又は混雑が発生する区間内の短いリンクで交通流の渋滞度が順調であると判定されることもあるが、これは個別のプローブカーの走行状況の誤差に起因したものと考えることができ、ボトルネックを下流端として渋滞又は混雑が発生している末尾(上流端)までの区間を連続した渋滞又は混雑であると判定した方が、実情に沿ったものとなり、利用者にはわかりやすい。ボトルネック型の区間に関する情報は、渋滞度判定区間TJSのID番号と紐付け状態で渋滞度判定装置10のメモリ12に記憶しておくことができる。これにより、判定部11は、メモリ12に記憶された情報を参照することにより、交通流の渋滞度を判定する渋滞度判定区間TJSについて、ボトルネック型の区間であるか否かを判別することができる。ボトルネック型の区間は、所定の期間(任意)が経過するたびに、プローブデータの統計解析によって更新することができる。
【0065】
ステップS204において、渋滞度判定装置10の判定部11は、渋滞度判定区間TJSにおいて、交通流の渋滞度が渋滞又は混雑であるリンクとボトルネックの間に、交通流の渋滞度が順調であるリンクが存在するか否かを判別する。
図3に示すステップS105~ステップS110の処理によれば、渋滞度判定区間TJSに含まれる各リンクにおいて、交通流の渋滞度が判定されるため、交通流の渋滞度が渋滞又は混雑であるリンクを把握することができる。また、ボトルネックの位置は、予め把握しておくことができる。ここで、交通流の渋滞度が渋滞又は混雑であるリンクとボトルネックの間に、交通流の渋滞度が順調であるリンクが存在する場合には、ステップS205の処理に進み、そうでない場合には、
図6に示す処理を終了する。
【0066】
ステップS205において、渋滞度判定装置10の判定部11は、リンク(渋滞又は混雑)及びボトルネックの間に存在するリンク(順調)について、隣接リンクの渋滞度に補正する。ここでいう隣接リンクは、リンク(順調)と隣り合うリンクであり、具体的には、リンク(順調)に対して上流又は下流で隣り合うリンク(上流側リンク又は下流側リンク)である。ボトルネック型の区間では、ボトルネックを先頭地点として上流に向かって渋滞が延伸するため、最上流のリンク(渋滞又は混雑)からボトルネックまでは、途中にリンク(順調)が混在した場合でも、連続した一つの渋滞度とみなすことができる。そして、隣接リンクの渋滞度は渋滞又は混雑になりやすい。
【0067】
したがって、最上流のリンク(渋滞又は混雑)からボトルネックまでの間に、リンク(順調)が存在した場合、このリンクの渋滞度は、順調から渋滞又は混雑に補正されることになる。ここで、最上流のリンクの渋滞度は渋滞又は混雑であるため、最上流のリンクに隣接する下流側リンクの渋滞度が順調であると判定されている場合には、この下流側リンクの渋滞度は、順調から渋滞又は混雑に補正されることになる。このように下流側リンクの渋滞度が補正されると、このリンクに隣接する下流側リンクの渋滞度が順調であると判定されている場合にも、渋滞度が順調から渋滞又は混雑に補正されることになる。
【0068】
なお、リンク(順調)に隣接する上流側リンクと下流側リンクの渋滞度が同一である場合には、その渋滞度に補正する。一方、上流側リンクと下流側リンクの渋滞度が同一でない場合には、隣接リンク(上流側リンク及び下流側リンク)のどちらか一方の渋滞度、または、上流側リンク及び下流側リンクのうち、距離が長い方の隣接リンクの渋滞度と同一の渋滞度に補正するなどの方法を適用することができる。
【0069】
ステップS205の補正処理について、
図8(一例)を用いて説明する。
図8において、リンク1の下流端(ノード)をボトルネックとしている。また、
図3に示すステップS105~ステップS110の処理によれば、リンク1,3の渋滞度が渋滞であると判定され、リンク4の渋滞度が混雑であると判定されており、リンク4は、渋滞度が渋滞又は混雑である最上流のリンクとなる。また、ボトルネックとリンク4(又はリンク3)の間に存在するリンク2の渋滞度が順調であると判定されている。この場合には、リンク2について、渋滞度を補正する。ここで、リンク2に隣接するリンク1,3の渋滞度は共に渋滞であるため、リンク2の渋滞度は順調から渋滞に補正される。
【0070】
なお、
図8において、リンク2だけでなく、リンク3も順調である場合には、リンク2,3がボトルネックとリンク4(混雑)の間に存在するため、交通流を補正する対象となる。この場合において、上流側リンクの渋滞度で補正する場合は、リンク3の渋滞度はリンク4の渋滞度(混雑)に補正される。また、リンク2の渋滞度は、補正された後のリンク3の渋滞度(混雑)に補正される。
【0071】
本実施形態によれば、渋滞度判定区間TJSの道路環境(均一渋滞度型やボトルネック型)を踏まえて、交通流の渋滞度を判定することができる。なお、本実施形態では、均一渋滞度型及びボトルネック型について判別しているが、均一渋滞度型及びボトルネック型の一方だけを判別することもできる。
【0072】
なお、本実施形態では、渋滞、混雑及び順調といった3種類の交通流の渋滞度を判定した上で、上述した交通流の補正を行っているが、これに限るものではない。具体的には、渋滞及び順調といった2種類の交通流の渋滞度を判定した上で、各リンクの渋滞度を補正したり、重渋滞、渋滞、混雑及び順調といった4種類の交通流の渋滞度を判定した上で、各リンクの渋滞度を補正したりすることができる。
【0073】
2種類の交通流の渋滞度を判定する場合において、
図6に示すステップS202の処理では、渋滞度判定区間TJSのすべてのリンクについて、交通流の渋滞度を渋滞に補正することができる。また、
図6に示すステップS204の処理では、リンク(渋滞)及びボトルネックの間にリンク(順調)が存在するか否かを判断することができ、
図6に示すステップS205の処理では、リンク(順調)の交通流を渋滞に補正することができる。
【0074】
4種類の交通流の渋滞度を判定する場合において、
図6に示すステップS202の処理では、渋滞度判定区間TJSのすべてのリンクについて、区間旅行速度Vsに応じて、交通流を重渋滞、渋滞又は混雑に補正することができる。この場合には、交通流の渋滞度が重渋滞、渋滞又は混雑であるかを判定するための閾値(旅行速度)をそれぞれ設定しておけばよく、重渋滞、渋滞、混雑の順に、閾値(旅行速度)を高くすればよい。ここで、区間旅行速度Vsに基づいて交通流の渋滞度が重渋滞、渋滞及び混雑のいずれでもない場合には、
図3において、ステップS103の処理からステップS104の処理に進むため、
図6に示す処理は行われないことになる。一方、
図6に示すステップS204の処理では、リンク(重渋滞、渋滞又は混雑)及びボトルネックの間にリンク(順調)が存在するか否かを判断することができ、
図6に示すステップS205の処理では、リンク(順調)の渋滞度を隣接リンク(上流側リンク又は下流側リンク)の渋滞度(重渋滞、渋滞又は混雑)に補正することができる。
【0075】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態である交通流の渋滞度の判定について、以下に説明する。本実施形態では、第1実施形態や第2実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態や第2実施形態と共通する点については説明を省略する。
【0076】
本実施形態では、距離Lnが所定距離Lth以上であるリンク(以下、「長距離リンク」という)が渋滞度判定区間TJSに含まれているとき、長距離リンクの交通流の渋滞度を補正する。以下、この補正処理について、
図9に示すフローチャートを用いて説明する。
【0077】
図9に示す処理は、
図3に示すステップS105~S110の処理が行われた後に実行することができる。すなわち、渋滞度判定区間TJSに含まれる各リンクについて、交通流の渋滞度を判定した後に、
図9に示す処理を実行することができる。なお、
図6に示す処理(第2実施形態)が終了した後に、
図9に示す処理(第3実施形態)を行うこともできる。具体的には、
図6に示すステップS203の処理を行う場合を除いて、
図9に示す処理を行うことができる。
【0078】
ステップS301において、渋滞度判定装置10の判定部11は、渋滞度判定区間TJSに長距離リンクが含まれているか否かを判別する。渋滞度判定区間TJSに長距離リンクが含まれている場合には、ステップS302の処理に進み、渋滞度判定区間TJSに長距離リンクが含まれていなければ、
図9に示す処理を終了する。
【0079】
長距離リンクを規定するための所定距離Lthは、適宜決めることができるが、例えば、300[m]~1000[m]の範囲内の距離とすることができる。長距離リンクに関する情報は、渋滞度判定区間TJSのID番号と紐付けた状態で渋滞度判定装置10のメモリ12に記憶しておくことができる。これにより、判定部11は、メモリ12に記憶された情報を参照することにより、渋滞度判定区間TJSに長距離リンクが含まれている否かを判別することができる。
【0080】
ステップS302において、渋滞度判定装置10の判定部11は、
図3に示す判定結果に基づいて、長距離リンクの交通流の渋滞度が渋滞又は混雑であるか否かを判別する。
図3に示す処理(S105~S110)によれば、長距離リンクについても、交通流の渋滞度(渋滞、混雑又は順調)が判定される。長距離リンクの交通流の渋滞度が渋滞又は混雑ではない場合、すなわち、長距離リンクの交通流の渋滞度が順調である場合には、
図9に示す処理を終了する。一方、長距離リンクの交通流の渋滞度が渋滞又は混雑である場合には、ステップS303の処理に進む。
【0081】
ステップS303において、渋滞度判定装置10の判定部11は、長距離リンクと隣り合うリンクであって、長距離リンクに対して上流に位置するリンク(以下、「上流側リンク」という)について、交通流の渋滞度が順調であるか否かを判別する。
図3に示すステップS105~ステップS110の処理によれば、上流側リンクの交通流の渋滞度を把握することができる。上流側リンクの交通流の渋滞度が順調であれば、ステップS304の処理に進む。一方、上流側リンクの交通流の渋滞度が渋滞又は混雑であれば、
図9に示す処理を終了し、長距離リンクの全体を同一の交通流のままとする。
【0082】
ステップS304において、渋滞度判定装置10の判定部11は、長距離リンクの一部に渋滞が発生していると判定し、この部分渋滞の距離を算出する。具体的には、判定部11は、下記式(2)に基づいて、部分渋滞の距離を算出する。
【0083】
【0084】
上記式(2)において、Lpは長距離リンクにおける部分渋滞の距離[m]であり、Vuは渋滞度(順調)に応じた想定旅行速度[km/h]であり、Vdは渋滞度(渋滞)に応じた想定旅行速度[km/h]である。Tnは長距離リンクにおける旅行時間[h]であり、
図3に示すステップS101の処理によって取得することができる。Lnは長距離リンクの距離[km]であり、予め測定しておくことができる。想定旅行速度Vu,Vdに関する情報は、渋滞度判定装置10のメモリ12に記憶しておくことができる。想定旅行速度は、渋滞、順調の順に高くなる。
【0085】
図10は、上記式(2)を説明するための図である。
図10に示すように、長距離リンクの上流端から途中までは、想定旅行速度Vu(順調)でプローブカーが走行するとみなし、長距離リンクの途中から下流端までは、想定旅行速度Vd(渋滞)でプローブカーが走行するとみなしている。この場合には、長距離リンクの途中から下流端まで、交通流が渋滞しているとみなすことができ、部分渋滞の距離Lpを求めることができる。
【0086】
ステップS305において、渋滞度判定装置10の判定部11は、ステップS304の処理で算出された部分渋滞の距離Lpに基づいて、長距離リンクの一部の領域について、交通流を渋滞に補正する。交通流を渋滞に補正する領域は、長距離リンクの下流端と、この下流端から上流側に距離Lpだけ離れた地点との間に位置する領域である。なお、長距離リンクのうち、交通流を渋滞に補正する領域以外の領域については、元の交通流(混雑)のままとしたり、上流側リンクの交通流と同じ交通流(順調)に補正したりすることができる。
【0087】
図11は、長距離リンクの一部の領域について、交通流を渋滞に補正する処理を説明する図である。
図11では、
図3に示す処理によって、上流側リンクの交通流の渋滞度が順調であり、長距離リンクの交通流の渋滞度が混雑であり、下流側リンクの交通流の渋滞度が渋滞であると判定されている。ここで、上記式(2)に基づいて、部分渋滞の距離Lpを求めると、この距離Lpに相当する領域について、交通流を渋滞に補正する。一方、長距離リンクのうち、距離Lpに相当する領域以外の領域については、上流側リンクの交通流と同じ交通流(順調)に補正している。この領域については、元の交通流(混雑)のままとすることもできる。
【0088】
本実施形態によれば、長距離リンクについて、部分的な渋滞を把握することができる。
図3に示す処理(S105~S110)では、リンク単位で交通流の渋滞度を判定することになるが、長距離リンクについては、この全体において、交通流の渋滞度が同じであるとは限らない。そこで、本実施形態では、長距離リンクに含まれる部分的な渋滞を把握するようにしている。
【0089】
なお、本実施形態では、渋滞、混雑及び順調といった3種類の交通流の渋滞度を判定した上で、長距離リンクの部分的な渋滞度の補正を行っているが、これに限るものではない。具体的には、渋滞及び順調といった2種類の交通流の渋滞度を判定した上で長距離リンクの部分的な渋滞度の補正を行ったり、重渋滞、渋滞、混雑及び順調といった4種類の交通流の渋滞度を判定した上で長距離リンクの部分的な渋滞度の補正を行ったりすることができる。
【0090】
2種類の交通流の渋滞度を判定する場合において、
図9に示すステップS302の処理では、長距離リンクが渋滞であるか否かを判別することができる。一方、4種類の交通流の渋滞度を判定する場合において、
図9に示すステップS302の処理では、長距離リンクが重渋滞、渋滞又は混雑であるか否かを判別することができる。そして、
図9に示すステップS305の処理では、長距離リンクの一部(上記距離Lp)を渋滞又は重渋滞に補正することができる。ここで、ステップS302の処理において、長距離リンクが重渋滞であるときには、ステップS305の処理において、長距離リンクの一部(上記距離Lp)を重渋滞に補正することができる。一方、ステップS302の処理において、長距離リンクが渋滞又は混雑であるときには、ステップS305の処理において、長距離リンクの一部(上記距離Lp)を渋滞に補正することができる。
【符号の説明】
【0091】
10:渋滞度判定装置、11:判定部、12:メモリ、13:受信部、
I:インターネット、BS:基地局、PC:プローブカー
【要約】
【課題】 複数のリンクで構成された渋滞度判定区間において、交通流の渋滞度を判定する。
【解決手段】 各リンクにおけるプローブカーの旅行時間を合計した総旅行時間と、各リンクの距離を合計した総距離とに基づいて、渋滞度判定区間における区間旅行速度を算出する。区間旅行速度が予め定められた区間渋滞判定閾値よりも高いときには、渋滞度判定区間の全体について、交通流の渋滞度が渋滞ではないと判定する。区間旅行速度が区間渋滞判定閾値以下であるときには、各リンクにおける旅行時間及び距離に基づいて、各リンクの交通流の渋滞度を判定する。
【選択図】
図3