(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】積層体およびその用途
(51)【国際特許分類】
C09J 7/29 20180101AFI20221227BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20221227BHJP
C09J 183/04 20060101ALI20221227BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20221227BHJP
C09J 11/00 20060101ALI20221227BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20221227BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
C09J7/29
C09J7/38
C09J183/04
C09J201/00
C09J11/00
B32B7/025
B32B27/00 101
(21)【出願番号】P 2019560797
(86)(22)【出願日】2018-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2018033959
(87)【国際公開番号】W WO2019123739
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2017246951
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福井 弘
(72)【発明者】
【氏名】津田 武明
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/140131(WO,A1)
【文献】特開2010-228295(JP,A)
【文献】特開2013-003952(JP,A)
【文献】国際公開第2016/163069(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/183541(WO,A1)
【文献】特表2014-522436(JP,A)
【文献】特開2006-349736(JP,A)
【文献】国際公開第2017/104710(WO,A1)
【文献】特開2013-139515(JP,A)
【文献】特表2016-534383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(L1)単層または複層の誘電性官能基を有するポリマー硬化物を含む高誘電性シートまたはそれを含む積層構造体、
(L1)単層または複層の誘電性官能基を有するポリマー硬化物を含む高誘電性シートまたはそれを含む積層構造体の両面に配置された、(L3)2つの電極層または(L4)2つの非シリコーン系の熱可塑性樹脂層、及び
(L1
)高誘電性シートまたはそれを含む積層構造体
および(L3)2つの電極層または(L4)2つの非シリコーン系の熱可塑性樹脂層を
、(L3)2つの電極層または(L4)2つの非シリコーン系の熱可塑性樹脂層の外側から挟持する、少なくとも2つの(L2)感圧接着層
を含む積層体。
【請求項2】
誘電性官能基を有するポリマー硬化物を含む高誘電性シートおよび感圧接着層が実質的に透明である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
誘電性官能基を有するポリマー硬化物が、フルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサン硬化物である、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
誘電性官能基を有するポリマー硬化物が、23℃におけるせん断貯蔵弾性率が10
3~10
5Paの範囲にあるフルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサン硬化物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
誘電性官能基を有するポリマー硬化物が、ケイ素原子上の全ての置換基の10モル%以上が、(C
pF
2p+1)-R- (Rは炭素原子数1~10のアルキレン基であり、pは1~8の範囲の数である)で表されるフルオロアルキル基であるフルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサンを少なくとも含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させてなる、フルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサン硬化物である、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
オルガノポリシロキサンが含有するフルオロアルキル基が、トリフルオロプロピル基である、
請求項3~5のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項7】
(L2)感圧接着層が (A)硬化反応性官能基を分子中に平均して1を超える数有する直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサン、 (B)オルガノポリシロキサンレジン、および(C)硬化剤を含む硬化性シリコーン組成物の硬化物からなるシリコーン系感圧接着層である、請求項1~6のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項8】
(L2)感圧接着層と対向する剥離面を備えた(L5)セパレータをさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の積層体を含む、電気・電子部品、トランスデューサーまたは表示装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の積層体からなる、電気・電子部品、トランスデューサー用部材または表示装置用部材。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の積層体をデバイス内に配置する工程を有する、電気・電子部品、トランスデューサーまたは表示装置の製造方法。
【請求項12】
(I)請求項8に記載の積層体から(L5)セパレータを除去する工程、および
(II)上記の工程(I)で得た感圧接着層を外層に有する積層体をデバイス内に配置する工程
を有する、電気・電子部品、トランスデューサーまたは表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリマー硬化物を含む高誘電性シートおよび感圧接着層を含む積層体、それからなるトランスデューサー用部材または表示装置用部材、および上記積層体を含む電気・電子部品、トランスデューサーまたは表示装置、上記積層体を用いる電気・電子部品、トランスデューサーまたは表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の感圧接着剤組成物は、被着体に対する粘着性に優れ、剥離ライナー上に塗布して硬化させることで、剥離ライナーからの界面剥離性に優れた感圧接着層を形成できるので、その粘着力、透明性、接着層の粘弾特性、剥離モード(凝集破壊または界面剥離)、使用される温度条件(耐熱性、耐寒性)等に応じて、アクリル系、ゴム系、またはポリシロキサン系等から適宜選択されて使用されている。特に、ポリシロキサン系感圧接着剤組成物は、電気絶縁性、耐熱性、耐寒性、各種被着体に対する粘着性等に優れるので、耐熱性粘着テープ、電気絶縁性粘着テープ、ヒートシールテープ、メッキマスキングテープ等に使用されている。これらのポリシロキサン系感圧接着剤組成物は、その硬化機構により、付加反応硬化型、縮合反応硬化型、パーオキサイド硬化型などに分類される。室温放置もしくは加熱によって速やかに硬化し、副生物を発生しないので、付加反応硬化型の感圧接着剤組成物が汎用されている。
【0003】
一方、感圧接着剤組成物はその種類および粘着特性等の選択肢が広いことから、近年、スマートデバイス等の先端エレクトロニクス表示素子分野への応用が検討されている。このようなデバイスは、電極層、表示層を含む複数層からなるフィルムを透明基材の間に挟みこんだ構造をとっており、電極層、表示層の保護および層間の接着性改良を目的に、その使用条件に応じて様々な感圧接着剤が使用され、かつ、有効に作用することが期待される。たとえば、ポリシロキサン系感圧接着剤組成物の使用例として、光学的に透明なシリコーン系感圧接着剤フィルムおよびそれを用いたタッチパネル等の表示デバイスの製造は、特表2014-522436号(特許文献1)または特表2013-512326(特許文献2)等で開示されている。
【0004】
一方、これらスマート機器の中で、圧力センサーやアクチュエーターを含むトランスデューサーデバイスやタッチパネルを含む表示装置用途に求められる材料特性として、高誘電特性が挙げられる。本件出願人らはフルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサン硬化物が高い比誘電率を有し、トランスデューサー材料として有用であることを提案した(国際特許公開WO2014/105959、特許文献3ほか)。
【0005】
さらに、本件出願人らは特定のフルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサン硬化物を用いることにより、さらに高性能の誘電層を提供できることを見出し国際特許公開WO2016/098334(特許文献4)、国際特許公開WO2016/163069 (特許文献5)に係る誘電性材料を提案している。また、これらの誘電性フルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサン硬化物は、タッチパネル等の電子材料、表示装置用電子部材、特にセンサー、アクチュエーター等のトランスデューサー材料としての用途に用いる場合、フィルム状に成型されて用いることが求められる場合があり、均一なフィルム状の硬化物を得ることが好ましいため、国際特許公開WO2017/183541 (特許文献6)において、平坦性に優れたフルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサン硬化物の高誘電性フィルムを提案した。
【0006】
これらのフルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサン硬化物は、優れた透明性を有し、所望によりその硬さ(ゲル状~エラストマー状)や粘着力を設計することができ、フィルムなどの成形品を製造するための良好な加工性を有し、かつ比誘電率が高いという利点を有する。さらに、成形加工時の収縮がほとんどなく、硬化速度が大きく、所望の硬化条件を設定しやすいという利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2014-522436号公報
【文献】特表2013-512326号公報
【文献】国際特許公開 WO2014/105959
【文献】国際特許公開 WO2016/098334
【文献】国際特許公開 WO2016/163069
【文献】国際特許公開 WO2017/183541
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本願発明者らは、上記の特許文献3~6において提案した誘電性材料において、新たなる課題を発見した。タッチパネル等の電子材料、表示装置用電子部材、特にセンサー、アクチュエーター等のトランスデューサー材料として、誘電性フルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサン硬化物に代表される高誘電性ポリマー硬化物を含む極めて平坦なシート状部材(フィルム状部材を含む)が求められるが、特に薄膜状の誘電性シートをデバイスに実装する場合、フィルム状部材の柔軟性および物理的強度に起因した破損や平坦性の低下(肉眼では認められないレベルの皺や亀裂)が発生し、高誘電性ポリマー硬化物を含む誘電性シートが十分な性能を発揮できない場合がある。この問題は、柔軟性に優れたゲル状の誘電性ポリマー硬化物において特に顕著である。当該課題は高誘電性ポリマー硬化物の物理的強度(例えば、硬さ)を高めることで部分的に解決可能であるが、上記の用途においては誘電性シートに対して高度の柔軟性やゲル状物性/応力緩和特性が求められる場合があり、単純に物理的強度を高めた場合、デバイスの性能を確保できなくなるという問題がある。一方、脆弱な誘電性シートの形状や平坦性を損なわないように、細心の注意を払って、当該部材をデバイスに実装することも理論上は可能であるが、工業的生産工程においてはデバイスの生産効率の悪化と歩留まりの低下に直結するため、十分な解決手段とはなりえない。
【0009】
従って、柔軟性および誘電性に優れる一方、物理的に脆弱な誘電性ポリマー硬化物を含む誘電性シートであってもその平坦性および性能を何ら損なうことなく、その取扱作業性を改善することができ、比較的平易な製造工程で当該部材をデバイスに実装することができる高誘電性材料が強く求められる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決すべく、鋭意検討の結果、本発明者らは、(L1)単層または複層の誘電性官能基を有するポリマー硬化物を含む高誘電性シートおよび少なくとも1つの(L2)感圧接着層を含む積層体を用いることで上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。当該高誘電性シートを含む積層体は、感圧接着層を組み合わせることで積層体全体をトランスデューサー用部材または表示装置用部材として取り扱うことができ、誘電性ポリマー硬化物を単独で取り扱う場合に比べて、部材としての物理的強度が改善されており、かつ、感圧接着層を用いることで、各種デバイスに容易に実装することができる。これにより、高誘電性シートの比誘電率や平坦性を何ら損なうことなく、その取扱作業性を改善することができる。
【0011】
すなわち、本発明の目的は、
[1](L1)単層または複層の誘電性官能基を有するポリマー硬化物を含む高誘電性シートおよび少なくとも1つの(L2)感圧接着層を含む積層体
により達成される。
【0012】
好適には、本発明の目的は、下記の構造を有する積層体により達成される。
[2]少なくとも2つの(L2)感圧接着層の間に、(L1)単層または複層の誘電性官能基を有するポリマー硬化物を含む高誘電性シートまたはそれを含む積層構造体が挟持された構造を有する、[1]に記載の積層体。
[3]さらに、(L3)電極層および(L4)非シリコーン系の熱可塑性樹脂層から選ばれる1種類以上の層を有する、[1]または[2]に記載の積層体。
[4][1]~[3]のいずれか1項に記載の積層体であって、(L1)単層または複層の誘電性官能基を有するポリマー硬化物を含む高誘電性シートの少なくとも片面に(L3)電極層および(L4)非シリコーン系の熱可塑性樹脂層から選ばれる1種類以上の層を有するもの。
[5][1]~[4]のいずれか1項に記載の積層体であって、(L2)感圧接着層の少なくとも片面に(L3)電極層および(L4)非シリコーン系の熱可塑性樹脂層から選ばれる1種類以上の層を有するもの。
[6]誘電性官能基を有するポリマー硬化物を含む高誘電性シートおよび感圧接着層が実質的に透明である、[1]~[5]のいずれか1項に記載の積層体。
[7]誘電性官能基を有するポリマー硬化物が、フルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサン硬化物である、[1]~[6]のいずれか1項に記載の積層体。
[8]誘電性官能基を有するポリマー硬化物が、23℃におけるせん断貯蔵弾性率が103~105Paの範囲にあるフルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサン硬化物である、[1]~[7]のいずれか1項に記載の積層体。
[9]誘電性官能基を有するポリマー硬化物が、ケイ素原子上の全ての置換基の10モル%以上が、(CpF2p+1)-R- (Rは炭素原子数1~10のアルキレン基であり、pは1~8の範囲の数である)で表されるフルオロアルキル基であるフルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサンを少なくとも含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させてなる、フルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサン硬化物である、[1]~[8]のいずれか1項に記載の積層体。
[10](L2)感圧接着層が (A)硬化反応性官能基を分子中に平均して1を超える数有する直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサン、 (B)オルガノポリシロキサンレジン、および(C)硬化剤を含む硬化性シリコーン組成物の硬化物からなるシリコーン系感圧接着層である、[1]~[9]のいずれか1項に記載の積層体。
【0013】
また、本発明の目的は、下記の剥離性積層体により達成される。
[11](L2)感圧接着層と対向する剥離面を備えた(L5)セパレータをさらに含む、[1]~[10]のいずれか1項に記載の積層体。
【0014】
同様に、本発明の目的は、上記積層体を含む以下の電子的デバイスまたはその部材により達成される。
[12][1]~[10]のいずれか1項に記載の積層体を含む、電気・電子部品、トランスデューサーまたは表示装置。
[13][1]~[10]のいずれか1項に記載の積層体からなる、電気・電子部品、トランスデューサー用部材または表示装置用部材。
【0015】
さらに、本発明の目的は、上記積層体を用いる、以下の電子的デバイスの製造方法により達成される。
[14][1]~[10]のいずれか1項に記載の積層体デバイス内に配置する工程を有する、電気・電子部品、トランスデューサーまたは表示装置の製造方法。
[15](I)[11]に記載の積層体から(L5)セパレータを除去する工程、および
(II)上記の工程(I)で得た感圧接着層を外層に有する積層体をデバイス内に配置する工程
を有する、電気・電子部品、トランスデューサーまたは表示装置の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、物理的に脆弱な誘電性ポリマー硬化物を含む誘電性シートであってもその平坦性および性能(柔軟性および誘電性)を何ら損なうことなく、取扱作業性に優れた電子装置用部材を提供することができる。また、本発明にかかる積層体は、工業的生産工程において、比較的平易な製造工程で当該部材を所望のデバイスに実装することができる。このため、本発明の積層体を用いることで、性能に優れた電気・電子部品、トランスデューサーまたは表示装置を、生産効率よく提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態による積層体の概略図を示す。
【
図2】本発明の一実施形態による積層体の概略図を示す。
【
図3】本発明の一実施形態による積層体の概略図を示す。
【
図4】本発明の一実施形態による積層体の概略図を示す。
【
図5】PETフィルム(4)上に3つの電極層(3a、3b、3c)を積層した電極層含有積層体(3+4)の上面図を示す。
【
図6】一対の
図5の電極層含有積層体(3+4)が互いに90度ずらした角度で配置されており、当該一対の電極層含有積層体(3+4)により、高誘電性シート(1)およびPETフィルム(4)を含む積層体(1+4)を、上下から挟持した積層体の上面図を示す。
【
図7】一対の
図5の電極層含有積層体(3+4)が互いに90度ずらした角度で配置されており、当該一対の電極層含有積層体(3+4)により、高誘電性シート(1)およびPETフィルム(4)を含む積層体(1+4)を、上下から挟持した積層体の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[積層体の概要]
まず、本発明の積層体について詳細に説明する。本発明の積層体は、(L1)単層または複層の誘電性官能基を有するポリマー硬化物を含む高誘電性シートおよび少なくとも1つの(L2)感圧接着層を含む積層体であり、さらに、(L3)電極層および(L4)非シリコーン系の熱可塑性樹脂層から選ばれる1種類以上の層を有してもよく、その他の保護層、非シリコーン系の接着層、反射層等の光学機能層を所望により各層間または外層に設けてもよい。これらの機能層を有する積層体はそれ自体を電子装置用部材として用いることができ、デバイス内に配置することで、その誘電層および誘電層を含む機能性積層構造体として機能する。また、デバイスの種類により、これらの積層体上に、さらに電極や保護層を設けてもよい。本積層体は、電気・電子部品、トランスデューサーまたは表示装置の部材、特に誘電層を含む部材として特に有用であり、工業的生産工程における取扱作業性に優れ、各種デバイスの生産効率および歩留まりを改善しうる。
【0019】
一方、本発明にかかる積層体は、上記の積層体の(L2)感圧接着層と対向する剥離面を備えた(L5)セパレータをさらに含む剥離性積層体であってもよい。このような剥離性積層体は、セパレータを含む形態で製造、出荷および保管が可能であり、商品性および取扱作業性に優れる利点がある。また、セパレータを分離して感圧接着層を露出させることで、当該セパレータを除いた積層体を上記同様に電子装置用部材として用いることができる。特に、当該剥離性積層体は、セパレータを分離した後は、外層の少なくとも片面に感圧接着層を有するので、所望のデバイス上に当該感圧接着層を用いて配置することができる利点がある。なお、(L5)セパレータの基材は上記の(L4)非シリコーン系の熱可塑性樹脂層と同一の熱可塑性樹脂フィルムであってもよく、最終的に当該層を剥離してデバイス上に配置するか否かに応じて、その機能層の意義が異なるものである。
【0020】
[(L1)高誘電性シート]
誘電性官能基を有するポリマー硬化物を含む高誘電性シートは本発明の積層体の必須の構成の一つであり、デバイスに配置した場合の誘電層として機能する層である。当該層は、1枚のシート状に成型されたポリマー硬化物からなる単層の高誘電性シートであってもよく、同一又は異なるポリマー硬化物の複数のシートを積層してなる複層の高誘電性シートであってもよい。複層の高誘電性シートは、単層の高誘電性シートに比べて厚膜化することが容易であり、硬さや誘電率、厚み等物性の異なる高誘電性ポリマー硬化物(例えば、ゲル状ポリマー硬化物とエラストマー状ポリマー硬化物、誘電率の異なるポリマー硬化物など)を積層することで、高誘電性シート全体の物理的性質を調整することができる。さらに、延伸シートなど、異方性を有するポリマー硬化物のシートを同一方向または直角方向に積層することで、高誘電性シート全体の物理的性質を調整することができる。
【0021】
誘電性官能基を有するポリマー硬化物の種類は特に限定されるものではなく、同一又は異なる公知の誘電性ポリマーから選ばれる1種類または2種類以上のポリマーの組み合わせが選択可能である。具体的には、アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、シロキサン系ポリマーおよびこれらの混合物(ハイブリッド型ポリマー混合物を含む)を例示することができる。上記のとおり、本発明にかかる高誘電性シートは複層であってもよいので、誘電性官能基の種類や物性の異なるポリマー硬化物を積層してなる高誘電性シートであってよく、異種のポリマー硬化物を積層してなる高誘電性シート(例えば、ウレタン系ポリマー層とシロキサン系ポリマー層の積層体)であってもよい。なお、電気絶縁性、耐熱性、耐寒性(特に低温下における物性変化の抑制)の見地から、本発明にかかる高誘電性シートは、シロキサン系ポリマー層を有することが好ましい。
【0022】
誘電性官能基は、ポリマー硬化物およびそれからなる高誘電性シートに誘電性を付与する官能基であり、特に制限されるものではないが、a)クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基を含むフルオロアルキル基、及びペルフルオロアルキル基等のハロゲン原子及びハロゲン原子含有基、b)シアノ基(例えば、シアノプロピル基、及びシアノエチル基)等の窒素原子含有基、c)エステル基等の酸素原子含有基、d)イミダゾール基、ピリジン基、フタロシアニン基等の複素環基、e)ボレートエステル基及びホウ酸塩基等のホウ素含有基、f)ホスフィン基、ホスフィンオキシド基、ホスホン酸エステル基、亜リン酸エステル基、リン酸エステル基等のリン含有基、g)チオール基、スルホン基、チオケトン基、スルホン酸エステル基、及びスルホンアミド基等の硫黄含有基が挙げられる。高誘電性シートを構成するポリマー硬化物は、これらの誘電性官能基を1種類または2種類以上含んでもよく、その含有量についても特に制限されるものではない。
【0023】
また、誘電性官能基を上記のポリマー硬化物に導入する手段についても制限はなく、誘電性官能基により変性された硬化反応性ポリマーのポリマーを硬化させてもよく、誘電性官能基を有する化合物を添加してポリマーマトリックス中に分散させてもよく、誘電性官能基および反応性官能基を有する化合物であって硬化反応性ポリマーを硬化させてなるポリマーマトリックスに導入されるものであってもよく、硬化反応性ポリマーと相溶性の誘電性官能基を有する化合物をポリマー硬化物に膨潤させてもよく、誘電性官能基を有する化合物により任意のフィラーの処理を行い、当該フィラーと共に硬化反応性ポリマーに添加し、全体を硬化させてもよい。
【0024】
誘電性官能基を有するポリマー硬化物を与える硬化反応は任意であり、アクリル系ポリマー硬化物、ウレタン系ポリマー硬化物、シロキサン系ポリマー硬化物に利用可能な硬化系を特に制限なく、1種類又は2種類以上組み合わせて利用可能である。好適には、縮合硬化性、付加硬化性、過酸化物硬化性、ラジカル反応硬化性又は光・エネルギー線硬化性のポリマー硬化物の利用が好ましい。
【0025】
誘電性官能基を有するポリマー硬化物には、本発明の技術的効果および誘電層としての機能を損なわない範囲で、その他の任意のフィラー等の添加剤を含んでもよい。具体的には、表面処理を行ってもよい誘電性無機粒子、及び補強性無機粒子からなる群から選択される1種以上の無機粒子、離型剤、絶縁改良剤、接着性向上剤などが挙げられる。なお、これらの成分またはそれと同等物は、上記の特許文献3~6に開示された成分と同様であり、シロキサン系ポリマー硬化物およびその他の誘電性官能基を有するポリマー硬化物に対して、特に制限なく添加することができる。
【0026】
上記の誘電性官能基を有するポリマー硬化物を含む高誘電性シートは実質的に平坦であることが好ましく、好適には、シートの末端の厚みと中央の厚みの差が5.0%以内であり、シート中央の厚みが5~1000μmの範囲にある。また、前記のとおり、当該高誘電性シートは単層でも複層であってもよく、複数のシートを重ね合わせて1000μmを超える誘電性シートを形成し、各種トランスデューサー等のデバイスに用いられる大容量の誘電層を形成する目的で用いてもよい。
【0027】
本発明の高誘電性シートは、その用途に応じて透明であっても、不透明であってもよい。一方、ポリマー硬化物がフルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサン硬化物等の透明性に優れたポリマーマトリックスであり、着色剤や粒子径の大きいフィラー等を配合しない場合には、実質的に透明である。ここで、実質的に透明とは、厚さ50~1000μmのフィルム状の硬化物を形成させた場合、目視で透明であることを意味するものであり、概ね、波長450nmの光の透過率が空気の値を100%とした場合に80%以上である。
【0028】
本発明の高誘電性シートは、誘電性の見地から、1kHz、25℃における比誘電率が4以上であり、5以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましい。なお、ポリマー硬化物がフルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサン硬化物であり、そのケイ素原子上の全ての置換基の10モル%以上が、トリフルオロプロピル基等の特定のフルオロアルキル基であるフルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサンを少なくとも含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物を用いることで、比較的容易に比誘電率が6または7の高誘電性シートが設計可能である。
【0029】
本発明の高誘電性シートをタッチパネル等の電子材料、表示装置用電子部材、特にセンサー等のトランスデューサー材料としての用途に用いる場合には、23℃におけるせん断貯蔵弾性率が103~105Paの範囲にあることが好ましく、1.0×103~5.0×104Paの範囲にあることがより好ましい。また、任意選択により、本発明の高誘電性シートの圧縮残留ひずみ(%)が10%未満であることが好ましく、5%未満であることがより好ましく、4%以下であることが特に好ましい。同様に、圧縮率(%)が15%以上であることが好ましく、18%以上であることがより好ましく、20%以上であることが特に好ましい。これらの測定手段は、上記の特許文献6(国際特許公開 WO2017/183541)と同様である。
【0030】
本発明の高誘電性シートの性質は特に限定されるものではなく、柔軟なゲル状、粘弾性に優れたエラストマー状および硬質な樹脂状のいずれであってもよいが、高誘電性シート全体としてゲル状またはエラストマー状であることが本発明の技術的効果の見地から特に好ましい。特に、本発明の積層体は、単独では取扱作業性に劣るゲル状の高誘電性シートを効率よくデバイスに配置する目的で利用することができる。
【0031】
本発明の高誘電性シートとして特に好適には、上記の特許文献3~6において提案されているフルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサン硬化物であり、好適には、ケイ素原子上の全ての置換基の10モル%以上が、(CpF2p+1)-R- (Rは炭素原子数1~10のアルキレン基であり、pは1~8の範囲の数である)で表されるフルオロアルキル基であるフルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサンを少なくとも含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させてなるものが好ましい。特に、実質的に透明な3,3,3-トリフルオロプロピル基を含むフルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサン硬化物からなる平坦なゲル状シートを単独または複数組み合わせた複層シートである高誘電性シートが特に好ましい。フルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサン硬化物を含有してなる高誘電性シートは粘着力が低く、高い圧縮率および良好な回復特性を示す。さらに、例えば0℃以下の低温下においても、上記物性の変化が少ないため、タッチパネル等の表示デバイスの誘電層として応用した場合、低圧力下においても圧力応答性に優れ、幅広い温度域で安定した高いセンサー感度を実現しうる。
【0032】
本発明における高誘電性シートは、上記の硬化性ポリマー組成物(好適には、フルオロアルキル基含有オルガノポリシロキサンを少なくとも含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物)を積層構造を構成する他の機能層上、好適にはシリコーン系感圧接着層上または非シリコーン系の熱可塑性樹脂層上に塗工することによって塗膜を形成し、所望の条件により硬化物とすることで得てもよく、他の剥離性基材上に上記の硬化性シリコーン組成物を塗工して硬化させ、当該剥離性基材上から硬化物を引き剥がして他の機能層上、またはそれを含む積層構造体上に貼り合せてもよい。
【0033】
塗工方法としては、グラビアコート、オフセットコート、オフセットグラビア、ロールコート、リバースロールコート、エアナイフコート、カーテンコート、及びコンマコートが例示される。
【0034】
なお、本発明における高誘電性シートは、上記の硬化性ポリマー組成物の硬化反応の前もしくは硬化反応後に、圧延加工を行うことによっても得ることができる。圧延加工は、硬化乃至半硬化状態のポリマー硬化物又はポリマー半硬化物に対して行うこともできるが、未硬化の硬化性ポリマー組成物を圧延加工した後に、加熱等により硬化させて平坦かつ均一なポリマー硬化物を得ることが好ましい。また、圧延加工を行う場合、後述する剥離層を有するセパレータ間に未硬化の感圧接着層および硬化性ポリマー組成物を塗工した積層体全体を圧延加工した後に、加熱等により硬化させて平坦かつ均一なフ積層構造を得てもよく、かつ、好ましい。
【0035】
[(L2)感圧接着層]
感圧接着層は上記の誘電性官能基を有するポリマー硬化物と異なる層であり上記の高誘電性シート、またはそれを含む積層構造体をデバイスに圧着することで配置することを可能にする感圧接着層(最外層)であってもよく、積層体を構成する他の機能性層との層間密着性を改善するための中間層であってもよい。当該感圧接着層を備えることにより、高誘電性シートを含む積層体全体が物理的に補強ないし一体化され、積層体それ自体を電子装置用部材として取り扱う上での取り扱い作業性を改善することができるほか、その配置に応じて部材としての利用性が向上する。
【0036】
本発明における感圧接着層は、積層構造体およびデバイスの種類、使用条件および製造プロセスに応じて、その種類、物理的性質および粘着特性等を適宜選択することができ、その厚さや形成方法にも特に制限されるものではない。本発明において利用可能な感圧接着層として、たとえば、ゴム系感圧接着剤、アクリル系感圧接着剤、シリコーン系感圧接着剤、ビニルアルキルエーテル系感圧接着剤、ポリエステル系感圧接着剤、ポリアミド系感圧接着剤、ウレタン系感圧接着剤、フッ素系感圧接着剤、ポリビニルピロリドン系感圧接着剤、ポリアクリルアミド系感圧接着剤、セルロース系感圧接着剤等が例示され、これらは、その目的に応じて、公知の耐熱性添加剤、粘着付与剤、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、老化(劣化)防止剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、染料、顔料などをさらに含むものであってもよい。
【0037】
好適には、本発明における感圧接着層は、ゴム系感圧接着剤、アクリル系感圧接着剤、およびシリコーン系感圧接着剤から選ばれる1種類以上の感圧接着剤からなるものであり、アクリル-シリコーン系のように両者を混合、積層またはグラフトしてなる複合型の感圧接着剤層であってもよい。
【0038】
本発明の感圧接着層は、特に、シリコーン系感圧接着剤層、アクリル系感圧接着剤層またはこれらの組み合わせであることが好ましい。これらの感圧接着剤層は、必要に応じて、耐熱性、耐寒性及び耐久性を備え、所望により実質的に透明な感圧接着層を容易に与えることができるほか、粘着力が容易に調整でき、かつ、糊残りやデバイス内への残留接着物を抑制できることから、貼り直し等に伴うリワーク性にも優れるという利点を有する。
【0039】
用途に応じ、本発明における感圧接着剤層は、実質的に透明な感圧接着剤層であってよい。ここで、実質的に透明とは、上記同様、厚さ50~1000μmのフィルム状の硬化物を形成させた場合、目視で透明であることを意味するものであり、概ね、波長450nmの光の透過率が空気の値を100%とした場合に80%以上である。
【0040】
本発明における感圧接着剤層の粘着力は特に限定されないが、厚さ100μmの感圧接着層の両面にポリエチレンテレフタレート(PET)基材(厚さ50μm)を張り合わせた試験片について、23℃、湿度50%の環境で行ない、速度300mm/min、180度の角度で引き剥がした場合、その粘着力が5N/m以上であることが好ましく、10N/m以上であることがより好ましい。
【0041】
ゴム系感圧接着剤としては、天然ゴムや各種の合成ゴム[例えば、ポリイソプレンゴム、スチレン・ブタジエンブロック共重合体(SB)ゴム、スチレン・イソプレンブロック共重合体(SI)ゴム、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)ゴム、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)ゴム、スチレン・イソプレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SIBS)ゴム、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)ゴム、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)ゴム、スチレン・エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEP)ゴム、再生ゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレンや、これらの変性体など]をベースポリマーとしたゴム系感圧接着剤が挙げられる。
【0042】
アクリル系感圧接着剤としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系重合体[単独重合体(ホモポリマー)又は共重合体(コポリマー)]をベースポリマーとするアクリル系感圧接着剤が挙げられる。前記アクリル系感圧接着剤における(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステル[好ましくは(メタ)アクリル酸C4-18アルキル(直鎖状又は分岐鎖状のアルキル)エステル]などが挙げられる。なお、前記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性、架橋性などの改質を目的として、必要に応じて、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他の単量体成分に対応する単位を含んでいてもよい。これらの反応性(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、重合開始剤の存在下、紫外線等の高エネルギー線の照射により硬化し、アクリル系感圧接着剤層を形成する。
【0043】
本発明におけるシリコーン系感圧接着剤層は、
(A)硬化反応性官能基を分子中に平均して1を超える数有する直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサン、
(B)オルガノポリシロキサンレジン、及び
(C)硬化剤
を含む硬化性シリコーン組成物の硬化物であることが特に好ましい。ここで、本発明におけるシリコーン系感圧接着剤層は、感圧接着剤層としての機能を有し、前記の(L1)高誘電性シート層と独立した層である限り、3,3,3-トリフルオロプロピル基を含むフルオロアルキル基に代表される高誘電性官能基を含んでもよく、かつ、好ましい。
【0044】
硬化性シリコーン組成物の硬化系は特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、過酸化物で硬化させる過酸化物硬化型のもの、白金系触媒によって硬化させるヒドロシリル化反応硬化型のもの、紫外線等のエネルギー線照射により硬化するエネルギー線硬化型/光硬化型及び縮合反応硬化型のものが挙げられる。過酸化物硬化型の硬化性シリコーン組成物は、通常、アルケニル基含有ジオルガノポリシロキサンを含有しており、高温下で、過酸化物の作用により硬化する。ヒドロシリル化反応硬化型の硬化性シリコーン組成物は、通常、白金系触媒の作用により、ジオルガノポリシロキサン中のビニル基とオルガノハイドロジェンポリシロキサン中のSiH基(ケイ素原子結合水素原子)と間のヒドロシリル化反応により硬化する。エネルギー線硬化型/光硬化型の硬化性シリコーン組成物は、紫外線等のエネルギー線の照射によりラジカルを発生する化合物として公知のもの、例えば、有機過酸化物、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、およびアゾ化合物などの光重合開始剤の存在下、ラジカル反応により硬化する。縮合反応硬化型の硬化性シリコーン組成物は、通常、縮合反応触媒の作用下で、ジオルガノポリシロキサンなどのシラノール基または加水分解性基間の縮合反応により硬化する。特に、相対的に低温・短時間で硬化できるため、ヒドロシリル化反応により硬化するヒドロシリル化反応硬化型の硬化性シリコーン組成物を使用することが好ましい。
【0045】
硬化性シリコーン組成物としてヒドロシリル化反応硬化型のものを使用する場合、(A)オルガノポリシロキサンの硬化反応性官能基はアルケニル基であり、特に炭素数2~10のアルケニル基である。炭素数2~10のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、及びヘキセニル基が挙げられる。好ましくは、炭素数2~10のアルケニル基は、ビニル基である。(A)オルガノポリシロキサンは、単一の成分のみを含んでいてもよく、2種以上の異なった成分の混合物であってもよい。(A)成分中のアルケニル基以外の官能基はフッ素原子等のハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基等が例示され、炭素数1~6のアルキル基またはフェニル基であることが好ましい。また、(A)成分中に、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のフルオロアルキル基等を含んでもよく、かつ、好ましい。
【0046】
好ましくは、(A)オルガノポリシロキサンは、直鎖状である。(A)成分の室温における性状はオイル状または生ゴム状であってもよく、(A)成分の粘度は25℃において50mPa・s以上、特に100mPa・s以上であることが好ましい。特に、硬化性シリコーン組成物が溶剤型である場合には、(A)成分は、25℃において100,000mPa・s以上の粘度を有するか、JIS K6249に規定される方法に準じて測定された可塑度(25℃、4.2gの球状試料に1kgfの荷重を3分間かけたときの値)が50~200の範囲にある、さらに好ましくは80~180の範囲にある生ゴム状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンであることが好ましい。但し、より低粘度の(A)成分であっても、利用可能である。
【0047】
(B)オルガノポリシロキサンレジンは、ハード層への接着力を付与する成分であり、三次元網状構造を有するオルガノポリシロキサンであれば特に限定されない。例えば、R2SiO2/2単位(D単位)及びRSiO3/2単位(T単位)(式中、Rは互いに独立して、一価有機基を表す)からなり、水酸基または加水分解性基を有するもしくは有さないレジン、T単位単独からなり、水酸基または加水分解性基を有するレジン、並びにR3SiO1/2単位(M単位)及びSiO4/2単位(Q単位)からなり、水酸基または加水分解性基を有するもしくは有さないレジンなどを挙げることができる。特に、R3SiO1/2単位(M単位)及びSiO4/2単位(Q単位)からなり、水酸基または加水分解性基を有するもしくは有さないレジン(MQレジンとも呼ばれる)を使用することが好ましい。なお、水酸基または加水分解性基は、レジン中のT単位またはQ単位などのケイ素に直接結合しており、原料となるシラン由来またはシランが加水分解した結果、生じた基である。
【0048】
Rの一価有機基は、好ましくは炭素数1~10の一価炭化水素基であり、フッ素原子等のハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1~10のアルキル基、炭素数2~10のアルケニル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のシクロアルキル基、ベンジル基、フェニルエチル基、及びフェニルプロピル基が例示される。特に、Rの90モル%以上が炭素数1~6のアルキル基またはフェニル基であることが好ましく、Rの95~100モル%がメチル基であることが特に好ましい。また、Rの一部に3,3,3-トリフルオロプロピル基等のフルオロアルキル基等を含んでもよく、かつ、好ましい。
【0049】
(B)オルガノポリシロキサンレジンがR3SiO1/2単位(M単位)、RSiO3/2単位(T単位)及びSiO4/2単位(Q単位)からなるレジンである場合、M単位対Q単位のモル比は、0.5~2.0であることが好ましい。このモル比が0.5未満である場合にはハード層への接着力が低下することがあり、2.0より大きい場合には中間層を構成する物質の凝集力が低下するからである。また、本発明の特性を損なわない範囲で、D単位及びQT単位を(B)成分中に含有させることも可能であり、(B)成分は、2種以上のオルガノポリシロキサンを併用することもできる。当該オルガノポリシロキサンは、水酸基または加水分解性基を一定量有してもよく、水酸基または加水分解性基を有するレジン、水酸基または加水分解性基を有さないレジン、またはそれらの混合物であっても制限なく用いることができる。本オルガノポリシロキサンレジンが、水酸基または加水分解性基を有する場合は通常0.1~5.0質量%の水酸基または加水分解性基を含む。
【0050】
硬化性シリコーン組成物としてヒドロシリル化反応硬化型のものを使用する場合、(C)硬化剤は、Si-H結合を分子中に2以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることが好ましい。この場合において、オルガノポリシロキサンのアルケニル基がオルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子結合水素原子とヒドロシリル化反応して、硬化性シリコーン組成物の硬化物を形成することができる。(C)硬化剤は、単一の成分のみを含んでいてもよく、2種以上の異なった成分の混合物であってもよい。
【0051】
硬化性シリコーン組成物としてヒドロシリル化反応硬化型のものを使用する場合、(C)硬化剤の含有量は、組成物中のアルケニル基に対する(C)成分中のケイ素原子結合水素原子(SiH)基のモル比が0.1~100となることが好ましく、0.2~50となることがより好ましい。このモル比が100より大きい場合には、反応せずに残存する硬化剤の量が多くなってしまい、このモル比が0.1より小さい場合には、硬化が不十分となることがあるからである。
【0052】
また、硬化性シリコーン組成物としてヒドロシリル化反応硬化型のものを使用する場合、硬化性シリコーン組成物は、さらなる成分として(D)ヒドロシリル化反応触媒を含んでもよい。ヒドロシリル化反応触媒としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒が例示され、本組成物の硬化を著しく促進できることから白金系触媒が好ましい。この白金系触媒としては、白金微粉末、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金-アルケニルシロキサン錯体、白金-オレフィン錯体、白金-カルボニル錯体が例示され、特に、白金-アルケニルシロキサン錯体が好ましい。このアルケニルシロキサンとしては、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのメチル基の一部をニトリル類、アミド類、ジオキソラン類、及びスルホラン類からなる群から選択される基、エチル基、フェニル基等で置換したアルケニルシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのビニル基をアリル基、ヘキセニル基等で置換したアルケニルシロキサンが例示される。特に、この白金-アルケニルシロキサン錯体の安定性が良好であることから、1,3-ジビニル-1,1,3,3-トテラメチルジシロキサンであることが好ましい。なお、ヒドロシリル化反応を促進する触媒としては、鉄、ルテニウム、鉄/コバルトなどの非白金系金属触媒を用いてもよい。
【0053】
(D)ヒドロシリル化反応触媒の含有量は、成分(A)~(C)の合計量に対し、白金金属量が1~5000ppmとなる範囲であり、1~1000ppmとなる範囲であることが好ましく、1~200ppmとなる範囲であることがより好ましい。(D)ヒドロシリル化反応触媒の含有量が1ppm未満であると硬化速度が遅く、または硬化が不十分となることがあり、5000ppmを超えると着色等の問題を生じることがあるからである。
【0054】
硬化性シリコーン組成物には、その特性を損なわない範囲で、上記成分以外の成分を含むことができる。例えば、硬化遅延剤;接着促進剤;ポリジメチルシロキサンまたはポリジメチルジフェニルシロキサンなどの非反応性のオルガノポリシロキサン;フェノール系、キノン系、アミン系、リン系、ホスファイト系、イオウ系、またはチオエーテル系などの酸化防止剤;トリアゾール系またはベンゾフェノン系などの光安定剤;リン酸エステル系、ハロゲン系、リン系、またはアンチモン系などの難燃剤;カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、または非イオン系界面活性剤などからなる1種類以上の帯電防止剤;染料;顔料などを含むことができる。
【0055】
本発明におけるシリコーン系感圧接着剤層は、上記の硬化性シリコーン組成物を高誘電性シート上、またはそれを含む積層構造体上に塗工することによって塗膜を形成し、所望の条件により硬化物とすることで得てもよく、他の剥離性基材上に上記の硬化性シリコーン組成物を塗工して硬化させ、当該剥離性基材上から硬化物を引き剥がして高誘電性シート上、またはそれを含む積層構造体上に貼り合せてもよい。
【0056】
塗工方法としては、グラビアコート、オフセットコート、オフセットグラビア、ロールコート、リバースロールコート、エアナイフコート、カーテンコート、及びコンマコートが例示される。
【0057】
硬化反応は硬化系に応じて異なるが、ヒドロシリル化反応硬化型の場合、該組成物を加熱あるいは活性エネルギー線にさらすことにより達成される。熱による硬化反応温度は、特に限定されないが、50℃以上200℃以下が好ましく、60℃以上200℃以下がより好ましく、80℃以上180℃以下がさらに好ましい。また、硬化反応にかける時間は、上記(A)、(B)、(C)成分の構造に依存するが、通常1秒以上3時間以下である。一般的には、90~180℃の範囲内で10秒~30分保持することにより硬化物を得ることができる。
【0058】
[(L3)電極層]
電極層は上記の高誘電性シート、またはそれを含む積層構造体に通電する目的で設けられる電極層または導電層である。具体的には、電極層は上記の誘電性シート、感圧接着剤層または熱可塑性樹脂層等に、単独又は複数の電極を形成してなるものであり、電極は、導電膜又は導体である。かかる電極層は透明電極層であっても、不透明であってもよい。これらの電極層を形成する方法は公知であり、たとえば、Au、Ag、Cu、C、ZnO、およびIn2O3等から構成される群から選択される導電性粒子を分散させたインクを塗布する方法により導体を形成することができる。この場合、前記の導電性粒子、バインダー樹脂と有機溶剤を混合分散したペースト(「導電性ペースト」ともいう)を塗布し、印刷することが好ましい。これにより、バインダー樹脂が導電性粒子を相互に結着する結着剤としての機能を果たし、最終的に電極層の耐久性を向上させることができる。バインダー樹脂としては、例えば、エチルセルロース系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。又、有機溶剤としては、例えば、ターピネオール、ブチルカルビトールアセテート等が挙げられる。
【0059】
、本積層体の用途に応じ、電極層は、透明電極層であってもよく、かつ好ましい。前記透明導電膜は、例えば、ITO(酸化インジウム+酸化錫)、CNT(カーボンナノチューブ)、IZO(酸化インジウム+酸化亜鉛)、AZO(AIドープ酸化亜鉛)又は導電性高分子(PEDOT又はPSS)等で構成されている。前記導体は、例えば、感光性銀、銀ナノインク、銀ナノワイヤ、蒸着銅、圧延銅又は銅ナノインク等である。特に、本積層体をタッチパネル等の表示装置用途に用いる電子装置用部材として用いる場合、ITO等の透明導電膜を用いることにより、積層体全体を実質的に透明に設計することが可能である。
【0060】
電極層の形状や配置は特に制限されず、本発明の
図5に示すように、同一電極層面上に複数の電極を設けてもよい。また、本発明の
図6に示すように、電極層を相互に異なる角度で配置してもよい。
【0061】
[(L4)非シリコーン系の熱可塑性樹脂層]
非シリコーン系の熱可塑性樹脂層は、シリコーン以外の熱可塑性樹脂からなるシート状の層であり、上記の各層の物理的強度を高めるための支持層または補強層であってよい。本発明においてこのような熱可塑性樹脂層の使用は任意であるが、例えば、上記の高誘電性シート、またはそれを含む積層構造体の片面に対する支持層または両面に対する挟持層として用いることにより、高誘電性シートを含む積層体全体を物理的に補強し、積層体それ自体を電子装置用部材として取り扱う上での取り扱い作業性を改善することができる。
【0062】
熱可塑性樹脂層に用いられる基材として、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、シクロオレフィンポリマー及びポリメタクリル酸メチルが例示される。特に積層体全体に耐熱性が要求される場合には、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルフォン等の耐熱性合成樹脂のフィルムが好適である。一方、積層体が表示デバイス等視認性が求められるデバイスに用いられる場合においては、透明基材、具体的にはポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、PEN等の透明材料が好適である。
【0063】
熱可塑性樹脂層はフィルム状またはシート状であることが好ましい。その厚さは特に制限されないが、通常5~300μm程度である。さらに、積層体における当該熱可塑性樹脂層と他の機能層との密着性を向上させるために、プライマー処理、コロナ処理、エッチング処理、プラズマ処理された熱可塑性樹脂フィルム又は熱可塑性樹脂シートを用いてもよい。また、当該熱可塑性樹脂には、傷つき防止、汚れ防止、指紋付着防止、防眩、反射防止、帯電防止などの処理などの表面処理または保護層が形成されたものであってもよい。
【0064】
[その他の機能層]
本発明の積層体は、上記の各層に加えて、その他の機能層を有してもよく、本発明の技術的硬化を損なわない限り、これらの機能層の厚みおよび種類を問わない。具体的には、その他の機能層として、保護層、非シリコーン系の接着層、反射層等の光学機能層が例示され、これらの層は所望により各層間(すなわち、中間層)または外層に設けてもよい。
【0065】
[積層体における各層の配置]
本発明の積層体において、上記の各層の配置は任意であり、積層体に求められる電子装置用部材としての耐久性や強度、取扱作業性に応じて設計可能である。一方、上記の高誘電性シートを電気・電子部品、トランスデューサーまたは表示装置の誘電層として利用し、かつ、当該積層体全体をデバイスに圧着することで配置することを可能にしたり、積層体を構成する他の機能性層との層間密着性を改善するための中間層として利用する見地から、少なくとも2つの(L2)感圧接着層の間に、(L1)単層または複層の誘電性官能基を有するポリマー硬化物を含む高誘電性シートまたはそれを含む積層構造体が挟持された構造を有することが好ましい。
【0066】
また、本発明の積層体は、(L1)単層または複層の誘電性官能基を有するポリマー硬化物を含む高誘電性シートの少なくとも片面に(L3)電極層および(L4)非シリコーン系の熱可塑性樹脂層から選ばれる1種類以上の層を有することが好ましく、高誘電性シートから見てこれらの機能層のさらに外側の層に(L2)感圧接着層、(L3)電極層および(L4)非シリコーン系の熱可塑性樹脂層から選ばれる層をさらに有してもよい。
【0067】
同様に、本発明の積層体は、(L1)単層または複層の誘電性官能基を有するポリマー硬化物を含む高誘電性シートを少なくとも有し、(L2)感圧接着層の少なくとも片面に(L3)電極層および(L4)非シリコーン系の熱可塑性樹脂層から選ばれる1種類以上の層を有するものであってもよい。
【0068】
なお、本発明の積層体において、同一カテゴリーの機能層は単層であっても複層であってもよく、高誘電性シートの説明で述べた通り、単独のシートでも、複合シートであってもよい。例えば、(L4)非シリコーン系の熱可塑性樹脂層においては、単独の合成樹脂シートであってもよく、異なる2種類の合成樹脂シートを貼り合わせた複合シートであってもよく、本発明の範囲に包含される。
【0069】
電子装置用部材として用いる場合、このような積層体の構造として以下のような組み合わせが例示できる。なお、以下の組み合わせは例示であって、これに制限されるものではないことは言うまでもなく、一部例示の通り対称性のある積層体でなくてもよい。さらに、例示において、各機能層の例示は以下のとおりであり、「/」は積層体の積層方向(一般に各機能層の表面に対して垂直な厚み方向)について、各層が対向していることを意味する。
(L1)単層または複層の誘電性官能基を有するポリマー硬化物を含む高誘電性シート:(EAP)
(L2)感圧接着層:(PSA)
(L3)電極層:(EL)
(L4)非シリコーン系の熱可塑性樹脂層:(PF)
【0070】
例1: PSA/EAP/PSA
例2: PSA/EL/EAP/EL/PSA
例3: PSA/PF/EAP/PF/PSA
例4: PSA/EL/PF/EAP/PF/EL/PSA
例5: PSA/PF/EL/EAP/EL/PF/PSA
例6: PF/PSA/EL/EAP/EL/PSA/PF
例7: EL/PSA/EAP/PSA/EL
例8: PF/PSA/EL/EAP/PF/PSA/EL
例9: EL/PSA/EAP/EL
例10: EL/PSA/EAP/EL/PSA
例11: PF/PSA/EAP/PF
例12: PF/PSA/EAP/PF/PSA
例13: EL/PSA/PF/EAP/PF/PSA/EL
例14: PSA/EL/PF/EAP/PF/EL/PF
なお、例7、例13等のPSA上に電極層を形成した積層体については、PSA上に後述するセパレータを含む剥離性積層体の状態で出荷し、後からセパレータを剥がしてPSA上に電極層を設けてもよい。なお、タッチパネル等の積層型表示装置に実装する場合、PSA層を介してガラス基板等の表示面、ITO等の透明電極基板および表示モジュールが接合されてもよい。
【0071】
[剥離性積層体]
本発明の積層体は、(L2)感圧接着層と対向する剥離面を備えた(L5)セパレータをさらに含む剥離性の積層体であってもよい。本発明の誘電性シートを含む積層部材は、デバイスに配置する際に部材単独で取り扱うことが求められる。感圧接着層と対向する剥離面を有するセパレータを用いることで、積層体を構成するセパレータから本発明の誘電性シートを含む積層構造を容易に分離して取り扱うことができ、かつ、セパレータを分離した際に露出する感圧接着層を用いて当該積層構造をデバイスに圧着し、固定することができる。このような積層体は、感圧接着層と対向する剥離面を備えた(L5)セパレータを有し、任意で、さらに、他の(L5)セパレータを備えていてもよく、以下の積層体の構成が例示できる。なお、以下の例において「/」は積層体の積層方向(一般に各機能層の表面に対して垂直な厚み方向)について、各層が対向していることを意味する。また、セパレータにおいて基材と剥離面は一体または同一層(材質または物理的な凹凸を設けたりして剥離性を持たせた基材)であってもよい。
例1: セパレータ/剥離面/(L2)感圧接着層/(L1)誘電性シートまたはそれを含む積層構造
例2: セパレータ/剥離面/(L2)感圧接着層/(L1)誘電性シートまたはそれを含む積層構造/(L2)感圧接着層/剥離面/セパレータ
特に、例2のように、二つの剥離面で本発明の誘電性シートを含む積層構造がサンドイッチされた構成を有する場合、本発明の誘電性シートを含む積層体を、セパレータで保護した状態で輸送(国外への輸出を含む)することができ、所望のタイミングと場所で、積層体の両面から剥離面を備えたセパレータを分離して、本発明の誘電性シートを含む積層体を、感圧接着層を用いて所望のデバイスに配置ないし積層することができる。
【0072】
また、所望により、本発明の誘電性シートを含む積層体全体を、セパレータ間に挟持した状態でロール圧延等で圧延加工した後に、平坦化された各機能層または硬化して(L1)誘電性シートまたは(L2)感圧接着層を形成する硬化性組成物を加熱等により硬化させて本発明の誘電性シートを含む積層体を得ることができる。
【0073】
上記のセパレータの基材は特に制限されるものではないが、板紙,ダンボール紙,クレーコート紙,ポリオレフィンラミネート紙,特にはポリエチレンラミネート紙,合成樹脂フィルム・シート,天然繊維布,合成繊維布,人工皮革布,金属箔が例示される。特に、合成樹脂フィルム・シートが好ましく、合成樹脂として、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、シクロポリオレフィン、ナイロンが例示される。基材はフィルム状またはシート状であることが好ましい。その厚さは特に制限されず、用途に応じて所望の厚さで設計することができる。なお、後述するように上記の基材それ自体が剥離層として機能するような材質ないし基材表面に物理的に微細な凹凸を形成したりして剥離性を持たせた構造であってもよい。
【0074】
剥離面は剥離ライナー、離型層あるいは剥離コーティング層と呼ばれることもあり、好適には、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、アルキド系剥離剤、またはフルオロシリコーン系剥離剤等の剥離コーティング能を有する剥離層、基材表面に物理的に微細な凹凸を形成させたり、上記の感圧接着層と付着しにくい基材それ自体であってもよい。
【0075】
[積層体の用途]
本発明の誘電性シートを含む積層体は、単独でフィルムコンデンサ等の誘電層として使用することができるが、電気・電子部品、トランスデューサーまたは表示装置に用いる電子装置用部材として特に好適である。具体的には、本発明の積層体は、電子材料、表示装置用部材またはトランスデューサー用部材(センサー、スピーカー、アクチュエーター、およびジェネレーター用を含む)として有用であり、特に、全体が透明な積層体は、表示パネルまたはディスプレイ用の部材として好適であり、画面を指先等で接触することにより機器、特に電子機器を操作可能な所謂タッチパネル用途および各種トランスデューサー用途に特に有用である。
【0076】
[電子的デバイスの製造方法]
本発明の誘電性シートを含む積層体は、電子装置用部材として用いることができ、具体的には、当該積層体をデバイス内に配置する工程を有する、電気・電子部品、トランスデューサーまたは表示装置の製造方法を提供することができる。
【0077】
同様に、セパレータを有する剥離性積層体については、(I)上記の剥離性積層体から(L5)セパレータを除去する工程、および
(II)上記の工程(I)で得た感圧接着層を外層に有する積層体をデバイス内に配置する工程
を有する、電気・電子部品、トランスデューサーまたは表示装置の製造方法を提供することができる。
【0078】
上記の積層体は、同一デバイス内に単独で配置してもよく、同一又は異なる積層体を同一デバイス内に複数配置してもよい。複数の積層体を同一デバイス内に配置する場合、デバイス上の平面/水平または略水平方向の異なる機能部位に配置してもよく、積層体の厚みを確保するため、上記の積層体を機能層の表面に対して垂直方向に複数積み重ねて配置してもよい。特に、後者の積層方法は、大きな静電容量が求められるトランスデューサーデバイスにおいて有用な配置方法である。また、デバイスの種類や誘電層の配置によっては、デバイス表面に対して水平方向に設けられた部材の配置部位に差込式(スロットイン方式)で本積層体を配置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の誘電性シートを含む積層体の用途としては、上記に開示した他に何ら制約はなく、センサー、スピーカー、アクチュエーター、およびジェネレーター等の各種トランスデューサー、テレビ受像機、コンピューター用モニター、携帯情報端末用モニター、監視用モニター、ビデオカメラ、デジタルカメラ、携帯電話、携帯情報端末、自動車などの計器盤用ディスプレイ、種々の設備・装置・機器の計器盤用ディスプレイ、自動券売機、現金自動預け払い機、など、文字や記号、画像を表示するための種々のフラットパネルディスプレイ(FPD)に使用することができる。装置としては、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、表面電解ディスプレイ(SED)、電界放出型ディスプレイ(FED)などの表示装置や、これらを利用したタッチパネルに応用が可能である。
【実施例】
【0080】
以下、本発明に関してその構成および各機能層を形成する原料等の例を挙げて説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。
[誘電性シートを形成する硬化性オルガノポリシロキサン組成物の原料成分]
・成分(a1):両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖、3,3,3-トリフルオロプロピルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー(3,3,3-トリフルオロプロピルメチルシロキサンユニット:182、ジメチルシロキサンユニット:46、フルオロアルキル基の含有量:39モル%)。25度におけるE型粘度計で測定した粘度が約10,000mPa・sである。
・成分(a2):両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖、3,3,3-トリフルオロプロピルメチル-ジメチルシロキサンコポリマー(シロキサン重合度:273、3,3,3-トリフルオロプロピルメチルシロキサンユニット:216、ジメチルシロキサンユニット:57、フルオロアルキル基の含有量: 40モル%)。25度におけるE型粘度計での粘度が約17,500mPa・s。
・成分(B1):ジメチルヒドロシロキシユニットと3,3,3-トリフルオロプロピル基を有するT単位で構成されるMH
1.3TF3Pr(Mw=1.11×103)。なお、成分(B1)の重量平均分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒に用いて、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
・成分(C1):白金-両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖、3,3,3-トリフルオロプロピルメチルシロキサン錯体(シロキサン重合度:3、白金濃度で約0.5重量%)。
<ヒドロシリル化反応抑制剤>
・成分(D1): 3-メチル-1-ブチン-3-オール
【0081】
組成例1または組成例2に係る誘電性シートの比誘電率および動的粘弾性(=せん断貯蔵弾性率)は以下の方法で測定した。
<比誘電率の測定>
Wayne Kerr社製LCR6530Pを使用して比誘電率を測定した。測定には、基材フィルムPET上に、厚さ約1.5-2.0mmのフィルム状に硬化した試料を用いて行った。
<動的粘弾性測定>
動的粘弾性測定には、アントンパール社製MCR302を用いた。厚み約1.5mm、直径8mmのディスク状試料を作製し、パラレルプレート法を用いて、-80℃から150℃まで毎分3度の速度で昇温して測定した。その際、周波数1Hz、歪0.2%の条件のもと、23℃におけるせん断貯蔵弾性率を用いた。
【0082】
[組成例1:誘電性シートを与える硬化性オルガノポリシロキサン組成物1]
前記の成分(a1)を99.08質量部、成分(B1)0.77質量部および成分(C1)0.07質量部および成分(D1)0.08質量部を含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物を作成した。当該組成物中のビニル基1モル当たりのケイ素原子結合水素原子(Si-H)は、約0.7モルとなる量である。当該組成物をフィルム状に塗布し、80℃で15分加熱後、さらに150℃で15分間加熱して硬化させることにより、ゲル状の誘電性シート(オルガノポリシロキサン硬化物)を作製した。
【0083】
上記の方法により測定した当該誘電性シートのせん断貯蔵弾性率は4.2 × 103 Paであった。なお、当該誘電性シートの比誘電率の値は室温、周波数1kHzにおいて、6であった。
【0084】
[組成例2:誘電性シートを与える硬化性オルガノポリシロキサン組成物2]
前記の成分(a2)を99.37質量部、成分(B1)0.56質量部および成分(C1)0.08質量部を含む硬化性オルガノポリシロキサン組成物を作成した。当該組成物中のビニル基1モル当たりのケイ素原子結合水素原子(Si-H)は、約0.6モルとなる量である。当該組成物をフィルム状に塗布し、110℃で10分加熱して硬化させることにより、ゲル状の誘電性シート(オルガノポリシロキサン硬化物)を作製した。
【0085】
上記の方法により測定した当該誘電性シートのせん断貯蔵弾性率は1.6×104Paであった。なお、当該硬化物の比誘電率の値は室温、周波数1kHzにおいて、6であった。
【0086】
[成分A1~A10:3,3,3-トリフルオロプロピル基含有MTQレジン]
表1に組成例3~19において用いる、3,3,3-トリフルオロプロピル基含有MTQ型シリコーンレジンのシロキサン単位の構成((CH
3)
3SiO
1/2単位:M単位、Trifluoropropyl-SiO
3/2単位:T
Tfp単位、及びSiO
4/2単位:Q単位)の構成比率、重量平均分子量およびトリフルオロプロピル基(=フルオロアルキル基)の含有量を示す。
【表1】
【0087】
[誘電性シートであり、透明なシリコーン感圧接着剤層(OCA層)としても機能する硬化性オルガノポリシロキサン組成物の原料成分]
上記の成分A1~A10のほか、誘電性シートであり、かつ透明なシリコーン感圧接着剤層(OCA層)を与える硬化性オルガノポリシロキサン組成物の原料成分として、以下の成分を利用した。
成分(a3):両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖、3,3,3-トリフルオロプロピルメチルシロキサンポリマー (シロキサン重合度:250,フルオロアルキル基の含有量: 49モル%)
成分(a4):両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖、3,3,3-トリフルオロプロピルメチルジメチルシロキサンコポリマー(シロキサン重合度:390,フルオロアルキル基の含有量: 20モル%)
成分(B2):MH
1.7Q(Mw=1.00×103)
成分(B3):MHDTfp
13MH(ケイ素原子結合水素原子0.092重量%)
式中、MHは、(CH3)2(H)SiO1/2基を表し、DTfpは、(3,3,3-トリフルオロプロピル)メチルSiO2/2基を表し、QはSiO4/2基を表す。
成分(C2):白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(白金濃度で約0.6重量%)
成分(D2):1, 3, 5, 7 -テトラメチル-1, 3, 5, 7-テトラビニルシクロテトラシロキサン
成分(E):1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン
【0088】
[組成例3:誘電性シートを与える硬化性オルガノポリシロキサン組成物3]
ガラスバイアル中にて、成分(A1)(ただし、(E)1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンの70質量%溶液58.49質量部) 40.94質量部、成分(E)17.54質量部、成分(a3)40.88質量部、成分(B1)0.53質量部、成分(C2)0.06質量部および成分(D2)0.06質量部を混合することで、組成例3である硬化性オルガノポリシロキサン組成物を作製した。
【0089】
[組成例4~19:硬化性オルガノポリシロキサン組成物4~19]
組成例3と同様にして、下表2および表3に示す成分および組成により、組成例4~19である硬化性オルガノポリシロキサン組成物を作製した。
【0090】
組成例3~19に係るオルガノポリシロキサン硬化物(=誘電性を有するシリコーン感圧接着剤層)の比誘電率、動的粘弾性(=せん断貯蔵弾性率)、光透過率(=透明性)および粘着力を以下の方法で測定した。結果を表2および表3に示す。すなわち、組成例3~19に係るオルガノポリシロキサン硬化物は、本発明における誘電性シートとして用いることができる一方、透明なシリコーン感圧接着剤層としても機能する成分である。
<比誘電率の測定>
組成例3~19に係るオルガノポリシロキサン硬化物について、Wayne Kerr社製LCR6530Pを使用して比誘電率を測定した。測定には、室温にて一晩放置し、その後150℃にて15分間かけて硬化した約1.0mmのフィルム状試料を用いて行った。
<動的粘弾性測定>
組成例3、6、8、10~14、18および19に係るオルガノポリシロキサン硬化物について、動的粘弾性測定には、アントンパール社製MCR301用いた。各組成例の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を室温にて一晩放置し、その後150℃にて15分間硬化させた。その後、厚み約1mm、直径8mmのディスク状試料を作製し、パラレルプレート法を用いて、歪0.1%および周波数1Hz で -60℃から150℃まで毎分3℃の速度で昇温して測定した。
<光透過率の測定>
組成例3~19に係るオルガノポリシロキサン硬化物について、Konica Minolta社製 Spectrophotometer CM-5を使用して、全光線透過率を測定した。
各組成例の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を、硬化後の厚さが約300μmとなるように、ポリエチレンテレフタレート(PET、厚さ50μm)上に塗布した。それを室温にて一晩放置し、その後150℃にて15分間硬化させて、得られたフィルム状の試料を測定に供した。上記の組成例に係るオルガノポリシロキサン硬化物の全光線透過率は89%(共通)であり、使用したPETフィルムの全光線透過率を考慮すると、組成例3~19により得られるオルガノポリシロキサン硬化物は透明性を必要とする場合に十分使用可能である。
<粘着力の測定>
組成例3~19に係るオルガノポリシロキサン硬化物について、自動塗工機(テスター産業社製、PI-1210)を用い、PET基材(厚さ50μm)上に硬化後の厚さが約100μmとなるように、各組成例の硬化性オルガノポリシロキサン組成物を塗布した。70℃で約60分放置し、その後150℃にて15分間硬化させた。得られた硬化物フィルム上にPET基材(厚さ50μm)を張り合わせ試験片を作製した。その剥離力の測定は23℃、湿度50%の環境でおこない、速度300mm/min、180°ピールで行った(Orientec社製、RTC-1210)。
【0091】
【0092】
[調製例1:セパレータ上に形成されたシリコーン系感圧接着剤シート]
剥離層を備えたPETフィルム(セパレータ)上にシリコーン感圧接着剤組成物 SD4580 FC(東レ・ダウコーニング株式会社製)を50μm厚となるように塗布し、120℃―5分間の条件で加熱硬化させ、剥離層を備えたPETフィルム(セパレータ)上にシリコーン系感圧接着剤シートが形成された積層体を得た。なお、以下の実施例は上記のSD4580 FC以外の感圧接着剤組成物を用いてもよく、PETフィルム以外のセパレータ基材を用いてもよい。
【0093】
[実施例1:セパレータ/剥離面/(L2)シリコーン系感圧接着層/(L1)誘電性シートからなる構造を備えた積層体の作成]
組成例1または2から選ばれる一つのオルガノポリシロキサン硬化物からなる、ゲル状の高誘電性シート上に、調整例1で作成したセパレータ上にシリコーン系感圧接着剤シートを備えた積層体をシリコーン系感圧接着剤シート面が高誘電性シートと対向するように貼り付け、圧着した。その後、高誘電性シートの逆面に対して、同様に調整例1で作成したセパレータ上にシリコーン系感圧接着剤シートを備えた積層体を貼り付け、圧着した。これにより、単層の高誘電性シートの両面にシリコーン系感圧接着層およびセパレータが対称的に積層された積層体を作成することができた。
【0094】
[実施例2:セパレータ/剥離面/(L2)シリコーン系感圧接着層/(L4)非シリコーン系の熱可塑性樹脂層/(L1)誘電性シートからなる構造を備えた積層体の作成]
組成例1または2から選ばれる一つのオルガノポリシロキサン硬化物からなる、ゲル状の高誘電性シート上に、PETフィルムが高誘電性シートと対向するように貼り付け、圧着した。さらに、当該PETフィルム上に、調整例1で作成したセパレータ上にシリコーン系感圧接着剤シートを備えた積層体をシリコーン系感圧接着剤シート面がPETフィルムと対向するように貼り付け、圧着した。同様の方法で、高誘電性シート上に、PETフィルム、シリコーン系感圧接着剤シートおよびセパレータが積層された積層体をもう一つ作成した。
【0095】
上記の2組の積層体の高誘電性シート面が対向するように貼り付け、圧着した。これにより、2層の高誘電性シートの両面にPETフィルム、シリコーン系感圧接着層およびセパレータが対称的に積層された積層体を作成することができた。
【0096】
[実施例3:セパレータ/剥離面/(L2)シリコーン系感圧接着層/(L4)非シリコーン系の熱可塑性樹脂層/(L1)誘電性シートからなる構造を備えた積層体の作成]
2枚のPETフィルム間で組成例1または2から選ばれる一つの硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させることにより、PETフィルム間に挟持されたゲル状の高誘電性シートを作製した。次いで、各々のPETフィルム上に、調整例1で作成したセパレータ上にシリコーン系感圧接着剤シートを備えた積層体をシリコーン系感圧接着剤シート面がPETフィルムと対向するように貼り付け、圧着した。これにより、単層の高誘電性シートの両面にPETフィルム、シリコーン系感圧接着層およびセパレータが対称的に積層された積層体を作成することができた。
【0097】
[調製例2:セパレータ上に形成された透明なシリコーン系感圧接着剤シートの作成]
剥離層を備えたPETフィルム(セパレータ)上に硬化後の厚さが約100μmとなるように、組成例3~19から選ばれる一つの硬化性オルガノポリシロキサン組成物を塗布した。70℃で約60分放置し、その後150℃にて15分間硬化させることにより、剥離層を備えたPETフィルム(セパレータ)上に誘電性官能基を含む透明なシリコーン系感圧接着剤シートが形成された積層体を得た。
【0098】
[実施例4:セパレータ/剥離面/(L2)シリコーン系感圧接着層/(L4)非シリコーン系の熱可塑性樹脂層/(L1)誘電性シートからなる構造を備えた積層体の作成]
2枚のPETフィルム間で組成例1または2から選ばれる一つの硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させることにより、PETフィルム間に挟持されたゲル状の高誘電性シートを作成した。次いで、各々のPETフィルム上に、調整例2で作成したセパレータ上に誘電性官能基を含む透明なシリコーン系感圧接着剤シートを備えた積層体をシリコーン系感圧接着剤シート面がPETフィルムと対向するように貼り付け、圧着した。これにより、単層の高誘電性シートの両面にPETフィルム、誘電性官能基を含む透明なシリコーン系感圧接着層およびセパレータが対称的に積層された積層体を作成することができた。
【0099】
[実施例5]
実施例1において、組成例1または2から選ばれる一つのオルガノポリシロキサン硬化物からなるゲル状の高誘電性シートを、組成例3~19から選ばれる一つのオルガノポリシロキサン硬化物からなる高誘電性シートに置き換えたほかは、実施例1と同様にして、単層の高誘電性シートの両面にシリコーン系感圧接着層およびセパレータが対称的に積層された積層体を作成することができた。なお、当該高誘電性シートは、透明かつシリコーン系の接着層としての機能を併有する層である。
【0100】
[実施例6]
実施例2において、組成例1または2から選ばれる一つのオルガノポリシロキサン硬化物からなるゲル状の高誘電性シートを、組成例3~19から選ばれる一つのオルガノポリシロキサン硬化物からなる高誘電性シートに置き換えたほかは、実施例2と同様にして、2層の高誘電性シートの両面にPETフィルム、シリコーン系感圧接着層およびセパレータが対称的に積層された積層体を作成することができた。なお、当該高誘電性シートは、透明かつシリコーン系の接着層としての機能を併有する層である。
【0101】
[実施例7]
実施例3で作製した積層体の片面の剥離層を剥がし、感圧接着層を露出させた。ついで、片面にITO導電層(電極層)を有するPETフィルムを、当該ITO導電層が、前記の実施例3にかかる積層体の感圧接着層と対向するように貼り合わせることにより、ITO導電層と感圧接着層が密着した構造を有する積層体を形成した。さらに、当該積層体の片面の剥離面(=実施例3の積層体の二つの剥離面のひとつであって、先に剥離させた面と異なる面に相当する)を剥がして、感圧接着面を露出させ、先の貼り合わせと同様に、片面にITO導電層(電極層)を有するPETフィルムを、当該ITO導電層が、前記の感圧接着層と対向するように貼り合わせ、以下の構成を備えた積層体を作製した。
積層体の構成:PETフィルム/ITO導電層/感圧接着層/PETフィルム/誘電性シリコーン層/PETフィルム/感圧接着層/ITO導電層/PETフィルム
備考:上記構成のうち、“感圧接着層/PETフィルム/誘電性シリコーン層/PETフィルム/感圧接着層”の構造は、実施例3の積層体の両面の剥離層(セパレータ)を除いた構造に相当する。
【0102】
[実施例8]
2枚のPETフィルム間で組成例1または2から選ばれる一つの硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させることにより、PETフィルム間に挟持されたゲル状の高誘電性シートを作製した。当該PETフィルムの片面上に、銀導電ペーストをスクリーン印刷し、加熱硬化させることで、PETフィルム上に銀導電膜(電極層)を備えた積層体(以下、「高誘電性シートを含む積層体」)を作製した。さらに、上記の積層体と別に、PETフィルム上に銀導電ペーストをスクリーン印刷し、半硬化状態の銀導電膜(電極層)を形成した電極層付のPETフィルム(以下、「半硬化状態の電極層付のPETフィルム」)を作製した。
最後に、高誘電性シートを含む積層体の電極層を有しないPETフィルム面に、半硬化状態の電極層付のPETフィルムの銀導電膜が対向するように貼り合せ、銀導電膜を完全に硬化させることにより、両面を結着させ、以下の構成を備えた積層体を作製した。当該積層体は、その両面に、さらに、感圧接着層を配置して、本発明の実施例として利用可能である(応用例2における測定参照)。
構成:PETフィルム/電極層/PETフィルム/高誘電性シリコーン層/PETフィルム/電極層
【0103】
[応用例1]
実施例7記載の積層体の構成において、ゲル状の高誘電性シリコーンシート(150μm厚)、PETフィルム(50μm厚)、シリコーン系感圧接着剤(50μm厚)、ITO導電膜付PETフィルム( 135μm厚)を使用し、5cmx5cmの面積の積層体を作製した。また、ITO導電膜は1cmx1cmの正方形を3x3マトリックスパターニングし、各列からリードを引いた。上下リードが90度交差して電極が重なり合うように配置した。
図5に電極層(ITO導電膜)ののマトリックスパターンを示す。
【0104】
[測定例1]
応用例1で得られた積層体の上下中間のリードに、LCRメーターU1732C(KEYSIGHT社製)を接続し、それ以外のリードは装置のガードに連結した。積層体片面にシリコーン系感圧接着層(50μm厚)および0.2mmのガラスを貼り付け、その上から中心の電極に合わせて重さの異なる分銅を約30秒間それぞれおいて静電容量を測定した。表4に加えた荷重と静電容量の変化率を示す。
【0105】
[応用例2]
実施例8記載の積層体の構成において、ゲル状の高誘電性シリコーンシート(150μm厚)、PETフィルム(50μm厚)、銀導電膜(35μm厚)からなる電極層および半硬化状態の銀導電膜(35μm厚、硬化時)を形成したPETフィルム(75μm厚)を使用し、5cmx5cmの面積の積層体を作製した。銀導電膜は、ゲル状の高誘電性シートを挟み込んだ片面のPETフィルム上に、銀導電ペースト(味の素ファインテクノ社製)をスクリーン印刷し、100℃-1時間で加熱硬化させることで作製した。一方、半硬化状態の銀導電膜(35μm厚、硬化時)を形成したPETフィルムは、75μm厚のPETフィルム上に銀導電ペースト(味の素ファインテクノ社製)をスクリーン印刷することにより作製した。なお、当該半硬化状態の銀導電膜は、これらを貼り合せた後に、加熱硬化して、両面を結着させた。
本積層体において、応用例1同様に、銀導電膜は1cmx1cmの正方形を3x3マトリックスパターニングし、各列からリードを引いた。上下リードが90度交差して電極が重なり合うように配置した。
図7に本積層体の断面図(側面図)を示す。また、
図6に本積層体の上面図を示す。なお、当該積層体は、次項の「測定例2」に示すとおり、さらに感圧接着層を設けて使用される。
【0106】
[測定例2]
応用例2で得られた積層体の上下中間のリードに、LCRメーターU1732C(KEYSIGHT社製)を接続し、それ以外のリードは装置のガードに連結した。積層体銀導電膜面に調整例1同様に、シリコーン系感圧接着層(50μm厚)および0.2mm厚のガラスを貼り付け、その上から中心の電極に合わせて重さの異なる分銅を約30秒間それぞれおいて静電容量を測定した。表4に加えた荷重と静電容量の変化率を示す。
【0107】
表4の結果から変わるように本発明の積層体を用いることで、荷重に対応する形で線形に静電容量が変化することがわかる。たとえばセンサーとしての使用が想定される。電極にITOなどを使用することで光学的に透明なセンサーも作製可能である。
【0108】
【0109】
図1の積層体は、高誘電性シートの両面に電極層が設けられており、その両側にシリコーン系感圧接着層が設けられた構造を有する。
図2の積層体は、高誘電性シートの両面にPETフィルムが設けられており、その両側にシリコーン系感圧接着層が設けられた構造を有する。
図3の積層体は、
図1の積層体のシリコーン系感圧接着層の外側に、シリコーン系感圧接着層と対向する剥離面を備えたセパレータを有する。
図4の積層体は、高誘電性シートの両面にPETフィルムが設けられており、その両側に感圧接着層があり、さらに電極層を有するPETフィルムを備えた構造を有する。
図5は、PETフィルム上に1cmx1cmの正方形を3x3マトリックスパターニングした電極の上面図である。
図6は、
図5の電極を上下90度ずらし、電極層およびPETフィルムを含む積層体(3+4)間に高誘電性シート、PETフィルムが配置された積層体上面図である。
図7の積層体は、
図6の積層体の断面図である。
【符号の説明】
【0110】
1 単層または複層の誘電性官能基を有するポリマー硬化物を含む高誘電性シート:(EAP)
2 シリコーン系感圧接着層:(PSA)
3 電極層:(EL)
3a:電極1
3b:電極2
3c:電極3
4 ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム
5 積層面2に対向する剥離面を備えたセパレータ