(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】粉末積層造形に用いるための粉末材料、これを用いた粉末積層造形法および造形物
(51)【国際特許分類】
B22F 1/00 20220101AFI20221227BHJP
C22C 1/051 20230101ALI20221227BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20221227BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20221227BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20221227BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20221227BHJP
C22C 29/08 20060101ALN20221227BHJP
【FI】
B22F1/00 Q
C22C1/05 G
B33Y80/00
B33Y70/00
B33Y10/00
B33Y30/00
C22C29/08
(21)【出願番号】P 2018212472
(22)【出願日】2018-11-12
【審査請求日】2021-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山田 純也
(72)【発明者】
【氏名】伊部 博之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸映
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄太
(72)【発明者】
【氏名】杉山 嘉一
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-519101(JP,A)
【文献】国際公開第2017/178319(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0321255(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00- 8/00
B22F 10/00-12/90
C22C 1/04- 1/05
B33Y 80/00
B33Y 70/00
B33Y 10/00
B33Y 30/00
C22C 29/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックと金属を含み、(タップ密度/理論密度)×100%で定義されるタップ充填率が40%以上である、粉末積層造形に用いられる粉末材料
であって、
前記粉末材料は、主粉末と、添加粉末を含み、
前記主粉末の粒度範囲が5~150μmであり、前記添加粉末の粒度範囲が0.1~15μmであり、前記主粉末の空隙率が5%以下である、粉末材料。
【請求項2】
前記粉末材料を構成する粒子の空隙率が30%以下である請求項1に記載の粉末材料。
【請求項3】
前記主粉末の空隙率は前記添加粉末の空隙率より大きい請求項1または2に記載の粉末材料。
【請求項4】
前記主粉末の体積基準の粒度分布における積算値50%における粒径Dv50をAとし、前記添加粉末の体積基準の粒度分布における積算値50%における粒径Dv50をBとするとき、A/Bが25以下である請求項1~3のいずれか一項に記載の粉末材料。
【請求項5】
前記粉末積層造形によりサーメットまたは超硬合金を製造するために用いられる請求項1~4のいずれか一項に記載の粉末材料。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の粉末材料が粉末積層造形されてなる造形物。
【請求項7】
サーメットまたは超硬合金である、請求項6に記載の造形物。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載の粉末材料を用いた粉末積層造形方法。
【請求項9】
請求項8に記載の粉末積層造形方法を用いる、サーメットまたは超硬合金の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末積層造形に用いるための粉末材料、これを用いた粉末積層造形法および造形物に関する。
【背景技術】
【0002】
粉末積層造形法は、造形原料として粉末材料を用い、この粉末材料を造形すべき造形物の所定断面に対応する形状の薄層として接合または焼結して、順次積層していくことで、目的の三次元形状を造形する手法である。この手法は成形型を必要としないことから、形状モデル等としての三次元造形物を迅速かつ簡易に得ることができるという利点がある。この粉末積層造形法において、粉末材料から薄層を形成する手法には、大きく分けて二つの方式がある。
【0003】
その一つは、粉末材料を薄層状に堆積させた後、熱源となるビーム(指向性エネルギービーム、例えばレーザ)等を目的の断面形状に照射し、粉末粒子を焼結させて焼結層を形成する、ビーム照射方式である(例えば、特許文献1参照)。ビーム照射方式には、熱源であるビームの種類に応じて、選択的レーザ溶融法や電子ビーム溶融法等が含まれる。
そして他の一つは、粉末材料を薄層状に堆積させた後、この堆積層にインクジェットによりバインダ(結合剤)を目的の断面形状に噴射し、粉末粒子を接合させて接合層を形成する、インクジェット方式である(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
従来の粉末積層造形法においては、上記の熱源による融着やバインダによる接合性が良好なことから、樹脂材料からなる粉末材料が用いられてきた。樹脂材料は軽量で、球形の粉末を得やすいことから、比較的流動性のよい均質な粉末材料を調製しやすい。しかしながら、近年では、粉末積層造形法を利用して、より実用的な試作品や製品を直接作製したいとの要望が高まっている。そのため、高温環境に置かれたり高い強度が要求されたりする造形物の作製に際しては、樹脂材料の他に、金属材料やセラミック材料からなる粉末積層造形用の粉末材料の提供が求められていた。
【0005】
そこで、例えば、特許文献3および4では、セラミックスを含む第1粉末と金属を含む第2粉末が焼結により結合された造流焼結粒子から構成される粉末積層造形に用いる造形用材料が提案されている。また、特許文献5では、金属および/またはセラミックスを含む粉末材料であり、一次粒子が間隙をもって三次元的に結合した二次粒子の形態を有している粉末積層造形に用いる造形用材料が提案されている。
【0006】
しかしながら、これらの粉末積層造形に用いる造形用材料においては、粉末粒子の粒子径と比重は比較的均一化されるものの、粉末積層造形法により得られる造形物は十分に緻密化されていないため、サーメット、超硬合金の工具や金型などの硬度が要求される製品の製造には不十分な硬度しか得られないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-245981号公報
【文献】特開平6-218712号公報
【文献】特開2017-113952号公報
【文献】特開2017-114716号公報
【文献】国際公開2015/194678号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、粉末積層造形法により製造した造形物が緻密化され硬度が向上するための粉末材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、ここに開示される技術は、セラミックと金属を含む粉末材料を提供する。かかる粉末材料は、粉末積層造形に用いる粉末材料であって、(タップ密度/理論密度)×100%で定義されるタップ充填率が40%以上である造形用粉末材料を提供する。これにより、相対密度が高い粉末材料が得られ、粉末積層造形法により得られる材料が緻密化され硬度が向上することが期待できる。
【0010】
理論密度に対するタップ密度の比率であるタップ充填率(%)が高くなると粉末材料の相対密度が高くなる傾向にある。タップ充填率が40%以上になると相対密度は高くなり、粉末積層造形法により得られる造形物の硬度が顕著に向上する。
【0011】
タップ密度は、粉末試料を入れた測定用メスシリンダー又は容器を機械的にタップし、試料の体積変化がなくなったときに得られるかさ密度である。本明細書においては、タップ密度は、JIS R 1628:1997に基づいて測定される値を意味する。また、理論密度は物質の種類によって固有に決まっている密度であり、例えば、粉末材料が複数の物質から構成される場合は、それらの配合比率によっておのずと決められる値である。
【0012】
粉末材料のタップ密度は例えば、粉末を構成する粒子の空隙率の調整すること、様々な粒径を有する粒子を混在させる方法、異なる粒子径を有する2種類以上の粉末を混合する方法、粒子形状を球状化する方法等で調整することができる。
【0013】
本発明の粉末積層造形に用いる粉末材料に含まれるセラミックス及び金属は、特に限定されるものではない。セラミックスとしては、例えば、酸化物、炭化物、ホウ化物、窒化物、アパタイト等などが挙げられる。また、金属としては、単体金属、合金あるいはこれらの組合せを含んでもよい。特に、造形物としてサーメットを得るためには、高硬度の金属炭化物,ホウ化物,窒化物,酸化物などのセラミックスと、コバルト,鉄,クロム,モリブデン,ニッケルなどの金属やその合金を含むものであってもよい。また、超硬合金を得るためには、粉末材料が炭化タングステン、炭化チタン、炭化タンタルなどの炭化物セラミックスとコバルト、ニッケルなどの結合金属を含むものであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の粉末材料を使用すれば、粉末積層造形法により得られる造形物の硬度が著しく向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】粉末積層造形のための装置の一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態による粉末積層造形に用いる粉末材料を構成する粒子の空隙率は30%以下であってもよい。空隙率を低下させることによって、タップ充填率を高くすることができる。空隙率は、好ましくは20%以下、あるいは10%以下、さらに5%以下であってもよい。
【0017】
空隙率の測定では、粉末から10個の粒子が無作為に抽出される。それぞれの粒子の断面を解析し、この断面に存在する全ての孔の面積を算出する。この面積を断面の面積で除すことで、空隙率が求められる。
【0018】
また、粉末材料を構成する粒子の粒度範囲は、粉末積層造形に使用される装置の種類や条件に応じて適宜設定することができる。例えば、粉末材料を構成する粒子の粒度範囲は、0.1~150μm、15~75μm、あるいは20~63μmのように適宜調整することができる。
【0019】
本明細書における、粉末材料の粒度分布とは、その粉末材料を構成する粒子群に、どの様な大きさ(粒子径)の粒子が、どの様な割合(粉末材料の全体を100%としたときの相対粒子量)で含まれているかを示す。また「粒度範囲」とは、その粉末材料の粒子径の下限と上限までの幅(広がり)を示す指標である。本明細書における粒度範囲の下限の値は、粉末材料中に占めるその値以下の粒子径を有する粒子の割合が5%以下であることを意味している。また、粒度範囲の上限の値は、粉末材料中に占めるその値以上の粒子径を有する粒子の割合が5%以下であることを意味している。なお、粉末材料の粒度分布については、当該粉末材料の粒度に応じた適切な粒度分布測定装置により測定することができる。例えば、ロータップ試験機(JISR6002参照)や、レーザ回折/散乱方式を採用する測定器を用いて求められる。また、例えば粒度範囲が5~75μmである粉末材料であれば、5μm以下の粒子径を有する粒子の割合が5%以下であり、かつ、75μm以上の粒子径を有する粒子の割合は5%以下であることを意味する。
【0020】
本発明の一実施形態による粉末積層造形に用いる粉末材料は主粉末のみから構成されてもよく、あるいは、主粉末と添加粉末を含んでもよい。添加粉末を含むときは、主粉末の含有量が添加粉末の含有量以上であることが好ましい。また、添加粉末の断面空隙率は主粉末の断面空隙率より小さいことが好ましい。主粉末と添加粉末の空隙率がこのような関係にあることにより、造形物の硬度がより向上する。
【0021】
主粉末の粒度範囲(二次粒子の場合は二次粒子の粒度範囲)は、特に限定されるものではないが、5~150μm、10~100μm、15~75μmあるいは20~63μmのように適宜調整することができる。
【0022】
粉末材料を構成する主粉末がこのような形態を有する粒子であれば、従来の粉末積層造形で使用されてきた、単一の原料粒子の集合である粉末材料と比較して、流動性が格段に向上する。従来の粉末積層造形で使用されてきた原料粒子が単分散している粒子のような場合、平均粒子径が小さいと粒子と粒子の接触面積の増加に伴い流動性が低下する傾向にあった。このように、一次粒子の平均粒子径が小さくても、この一次粒子は二次粒子を形成しているために、二次粒子の平均粒子径に対応した良好な流動性を備えることができる。また、主粉末の平均一次粒子径を小さくすることにより、作製される三次元造形物の表面粗さ(Ra)を小さくできるとともに、寸法精度が向上するという効果を得ることができる。
【0023】
主粉末はそれぞれの粒子間の空隙を大きくし、粒子間に添加粉末が入りやすくする。添加粉末は、主粉末の粒子間の空隙に隙間無く充填するために粒度が小さくできる限り細かい粒子であるとよい。したがって、添加粉末は上記で述べた一次粒子のままで二次粒子を形成しない粒子であってもよい。添加粉末の粒度範囲は、特に限定されるものではないが、0.1~15μm、0.1~10μm、0.5~10μmあるいは1~5μmのように、主粉末の粒度範囲等に応じて適宜調整することができる。
【0024】
ここで、「一次粒子」とは、上記粉末材料を構成している形態的な構成要素のうち、外観から粒状物として識別できる最小単位を意味する。また、「二次粒子」とは、上記一次粒子が三次元的に結合され、一体となって一つの粒のように振る舞う粒子状物(粒子の形態をなしたもの)をいう。
【0025】
なお、ここでいう「結合」とは、直接的または間接的に、2つ以上の一次粒子が結びつくことを指し、例えば、化学反応による一次粒子同士の結合、単純吸着によって一次粒子同士が引き合う結合、一次粒子表面の凹凸に接着材等を入り込ませるアンカー効果を利用した結合、静電気により引き合う効果を利用した一次粒子同士の結合、一次粒子の表面が溶融して一体化した結合等が含まれる。
【0026】
本発明の一実施形態では、主粉末の体積基準の粒度分布における積算値50%における粒子径(Dv50)をAとし、添加粉末の体積基準の粒度分布における積算値50%における粒子径(Dv50)をBとするとき、A/Bが25以下であることが好ましい。A/Bが25を超えると、添加粉末の凝集により粉末の流動性が悪化する傾向にある。また主粉末が二次粒子の場合、主粉末を構成する一次粒子の平均粒子径をCとした場合、C/Bは1以上3以下が好ましい。C/Bがこの範囲にあるとき造形物の硬度がより向上する。
【0027】
A/Bの調整は、主粉末と添加粉末の製造において、各粉末の粒度分布を調整し、各粉末の混合比率を変えることにより行うことができる。
【0028】
本発明の粉末材料を使用して、粉末積層造形法により、物品を製造することができる。特に、超硬合金や超硬合金からなる超硬工具の製造に適している。
【0029】
本実施形態における粉末積層造形法としては、例えば、レーザ粉体肉盛り法(レーザメタルデポジション法;LMD)、選択的レーザ溶融法(セレクトレーザメルティング法;SLM)、電子ビーム溶融法(エレクトロンビームメルティング法;EBM)等のビーム照射方式や、インクジェットによりバインダ(結合剤)を噴射して粉末粒子の接合層を形成するインクジェット方式が挙げられる。
【0030】
レーザメタルデポジション法とは、具体的には、構造物の所望の部位に粉末材料を提供して、そこにレーザ光を照射することで粉末材料を溶融・凝固させ、当該部位に肉盛りを行う技術である。この手法を利用することで、例えば、構造物に摩耗等の物理的な劣化が発生した場合に、当該劣化部位に粉末材料として当該構造物を構成する材料または補強材料等を供給し、その粉末材料を溶融・凝固させることで劣化部位等に肉盛りを行うことができる。
【0031】
セレクトレーザメルティング法とは、設計図から作成したスライスデータに基づき、粉末材料を堆積させた粉末層にレーザ光を走査させ、粉末層を所望形状に溶融・凝固する操作を、1断面(1スライスデータ)ごとに繰り返して積層させることで三次元的な構造体を造形する技術である。また、エレクトロンビームメルティング法とは、3D CADデータから作成したスライスデータを基に、電子ビーム用いて上記粉末層を選択的に溶融・凝固させ、積層することで3次元的な構造体を造形する技術である。いずれの技術においても、構造体の原料である粉末材料を所定の造形位置に供給するという工程を含む。特に、セレクトレーザメルティング法やエレクトロンビームメルティング法においては、構造体を造形する積層エリア全体に、粉末材料を1断面厚さに対応する厚みで、均一に薄く堆積する平坦化工程を繰り返す必要がある。この粉末材料の平坦化工程において、粉末材料の流動性は重要なパラメータであり、作製する三次元造形物の仕上がりに大きく影響する。それに対して、本発明における粉末積層造形に用いる粉末材料は、流動性が良好であることから、仕上がりの良好な三次元造形物を作製できる。
【0032】
<粉末材料の製造方法>
本実施形態における粉末材料は、造粒焼結法、溶融粉砕法などによって製造できるが、この限りではない。
造粒焼結法とは、原料粒子を二次粒子の形態に造粒した後、焼結して、原料粒子同士を強固に結合(焼結)させる手法である。この造粒焼結法において、造粒は、例えば、乾式造粒あるいは湿式造粒等の造粒方法を利用して実施することができる。造粒方法としては、具体的には、例えば、転動造粒法、流動層造粒法、撹枠造粒法、破砕造粒法、溶融造粒法、噴霧造粒法、マイクロエマルション造粒法等が挙げられる。なかでも好適な造粒方法として、噴霧造粒法が挙げられる。特に、空隙率が小さい粒子を得るという観点からはボトムスプレー方式の噴霧流動層造粒法が好ましい。
【0033】
噴霧造粒法によると、例えば、以下の手順で粉末材料を製造することができる。すなわち、まず、所望の組成を有する原料粒子を用意し、必要に応じてその表面を保護剤等により安定化させる。そしてかかる安定化された原料粒子を、例えばバインダと、必要に応じて含まれる有機材料等からなるスペーサー粒子等とともに適切な溶媒に分散させて噴霧液を用意する。原料粒子の溶媒への分散には、例えば、ホモジナイザー、翼式撹拌機等の混合機、分散機等を用いて実施することができる。そしてこの噴霧液を、超音波噴霧機等を利用して噴霧し液滴を形成する。かかる液滴を、例えば、気流に載せて連続炉を通過させる。すると、液滴は、連続炉内を搬送されながら、炉内の比較的上流に設けられる低温ゾーンで乾燥されて溶媒成分が除去され、次いで、炉内の比較的下流に設けられる高温ゾーンで焼成される。このとき、造粒された原料粒子同士が互いの接点で焼結されて、造粒形状を概ね維持して焼結される。したがって、一次粒子が間隙をもって結合された二次粒子の形態の粒子からなる主粉末の製造に適している。
【0034】
溶融粉砕法の例としては、結着樹脂、原料粒子、及び、その他の添加剤等をヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合器により十分混合した後、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融混練して樹脂類をお互いに相溶せしめた中に原料粒子、を分散又は溶解せしめ、冷却固化後、粉砕、分級を行なって本発明に係るトナーを得ることができる。分級工程においては生産効率上、多分割分級機を用いることが好ましい。
【0035】
<組成・構成>
粉末材料は、セラミックスと共に、金属、合金、またはそれらの混合物を含む。例えば、サーメットの粒子は、セラミックス粒子からなる原料粒子と金属粒子からなる原料粒子の混合物から得られる、セラミックス一次粒子と金属一次粒子が結合して間隙をもって三次元的に結合されてなる二次粒子であってもよい。原料粒子の組成については特に制限されない。製造したい目的の粉末材料(二次粒子)に合わせて適宜選択され、例えば、金属、合金、セラミックス、またはその混合物からなる材料である。
【0036】
セラミックスとしては、造形物として特にサーメットや超硬合金を得るためには、例えば、金属炭化物,ホウ化物,窒化物、酸化物などであってもよい。また、金属としては、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、ニッケルなどの金属やその合金を含むものであってもよい。
セラミックは、上記に限らず、酸化物、炭化物、ホウ化物、窒化物、アパタイト等の非酸化物からなるセラミックス材料であってよい。
ここで、酸化物としては、特に限定されることなく各種の金属の酸化物とすることができる。酸化物系セラミックスを構成する金属元素としては、例えば、B、Si、Ge、Sb、Bi等の半金属元素、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Al、Ga、In、Sn、Pb等の典型元素、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Au等の遷移金属元素、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Er、Lu等のランタノイド元素から選択される1種または2種以上が挙げられる。なかでも、Mg、Y、Ti、Zr、Cr、Mn、Fe、Zn、Al、Erから選択される1種または2種以上の元素であることが好ましい。
【0037】
酸化物系セラミックスとしては、より具体的には、例えば、アルミナ、ジルコニア、イットリア、クロミア、チタニア、コバルタイト、マグネシア、シリカ、カルシア、セリア、フェライト、スピネル、ジルコン、酸化ニッケル、酸化銀、酸化銅、酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化ストロンチウム、酸化スカンジウム、酸化サマリウム、酸化ビスマス、酸化ランタン、酸化ルテチウム、酸化ハフニウム、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タングステン、マンガン酸化物、酸化タンタル、酸化テルピウム、酸化ユーロピウム、酸化ネオジウム、酸化スズ、酸化アンチモン、アンチモン含有酸化スズ、酸化インジウム、スズ含有酸化インジウム、酸化ジルコニウムアルミネート、酸化ジルコニウムシリケート、酸化ハフニウムアルミネート、酸化ハフニウムシリケート、酸化チタンシリケート、酸化ランタンシリケート、酸化ランタンアルミネート、酸化イットリウムシリケート、酸化チタンシリケート、酸化タンタルシリケート等が挙げられる。
【0038】
また、非酸化物系セラミックスとしては、例えば、炭化タングステン、炭化クロム、炭化バナジウム、炭化ニオブ、炭化モリブデン、炭化タンタル、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素などの炭化物、ホウ化モリブデン、ホウ化クロム、ホウ化ハフニウム、ホウ化ジルコニウム、ホウ化タンタル、ホウ化チタンなどのホウ化物、窒化チタン、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の窒化物、フオルステライト、ステアタイト、コーディエライト、ムライト、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、Mn-Znフェライト、Ni-Znフェライト、サイアロン等の複合化物、ハイドロキシアパタイト、リン酸カルシウム等のリン酸化合物等が挙げられる。これらは、いずれか1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いるようにしても良い。
【0039】
金属および合金としては、例えば、一例として、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、鉄(Fe)、鉄鋼、銅(Cu)、銅合金、ニッケル(Ni)、ニッケル合金、金(Au)、銀(Ag)、ビスマス(Bi)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、亜鉛合金、チタン(Ti)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、白金(Pt)、ジルコニウム(Zr)およびイリジウム(Ir)等が挙げられる。これらは、いずれか1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いるようにしても良い。
【0040】
<三次元造形物の製造方法>
本発明における粉末材料を用いた三次元造形物の粉末積層による製造方法は、例えば、次のような方法がある。
図1は粉末積層造形のための積層造形装置の簡略図の一例を示しており、大まかな構成として、積層造形が行われる空間である積層エリア10と、粉末材料を貯留しておくストック12と、積層エリア10への粉末材料の供給を補助するワイパ11と、粉末材料を固化するための固化手段(インクジェットヘッド、レーザ発振器等)13と、を備えている。積層エリア10は、典型的には、外周が囲まれた造形空間内を造形面より下方に有し、この造形空間内に昇降可能な昇降テーブル14を備えている。この昇降テーブル14は、所定厚みΔt1ずつ降下することができ、この昇降テーブル14上に目的の造形物を造形してゆく。ストック12は、積層エリア10の傍に配置され、例えば、外周が囲まれた貯留空間内に、シリンダー等によって昇降可能な底板(昇降テーブル)を備えている。底板が上昇することで、所定量の粉末材料を造形面に供給(押し出し)することができる。
【0041】
このような積層造形装置では、昇降テーブル14を造形面より所定厚みΔt1だけ下げた状態で積層エリア10へ粉末材料層20を供給することで、所定厚みΔt1の粉末材料層20を用意することができる。このとき、造形面にワイパ11を走査させることで、ストック12から押し出された粉末材料を積層エリア10上に供給するとともに、粉末材料の表面を平坦化して、均質な粉末材料層20を形成することができる。そして、例えば、形成された第1層目の粉末材料層20に対し、第1層目のスライスデータに対応した固化領域にのみ、固化手段13を介して熱源や固化組成物等を与えることで、粉末材料を所望の断面形状に焼結または接合等し、第1層目の粉末固化層21を形成することができる。
【0042】
この後、昇降テーブル14を所定厚みΔt1だけ下げて再度粉末材料を供給し、ワイパ11でならすことで第2層目の粉末材料層20を形成する。そしてこの粉末材料層20の第2層目のスライスデータに対応した固化領域にのみ、固化手段13を介して熱源や固化組成物等を与えて粉末材料を固化させて第2層目の粉末固化層21を形成する。このとき、第2層目の粉末固化層21と、下層である第1層目の粉末固化層21とが一体化されて、第2層目までの積層体を形成する。
【0043】
引き続き、昇降テーブル14を所定厚みΔt1だけ下降させて新たな粉末材料層20を形成し、固化手段13を介して熱源や固化組成物等を与えて所要箇所を粉末固化層21とする、との工程を繰り返すことで、目的とする三次元造形物を製造することができる。
【0044】
なお、粉末材料を固化するための手段としては、例えば、インクジェットにより粉末材料を固化するための組成物を噴射する方法や、レーザにより熱を与えて粉末材料を溶融固化する方法、または粉末材料が光硬化の性質をもつものであれば、その光硬化の特性に合わせて紫外線の照射等が選択される。具体的には、粉末材料を固化するための手段がレーザの場合は、例えば炭酸ガスレーザやYAGレーザを好適に用いることができる。また、粉末材料を固化するための手段がインクジェットによる組成物の噴射である場合は、接着剤としてポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸誘導体、ポリアミド等を含む組成物や、例えば重合開始剤等を含む組成物を使用することができる。さらに、粉末材料として光硬化の性質を持つものを使用する場合は、紫外線の波長領域を持つエキシマレーザ(308nm)、He-Cdレーザ(325nm)、Arレーザ(351~346nm)、可視光硬化樹脂を使用する場合はArレーザ(488nm)等を使用することができる。つまりは、使用する粉末材料の特性に応じて、適切な粉末材料を固化するための手段を選択することがよい。
【0045】
<実施例>
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明を以下の実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0046】
下記の表1に示す主粉末と添加粉末の混合比率からなる粉末材料を用意した。なお、実施例1、4および比較例2では主粉末のみとし、添加粉末は使用しなかった。
【0047】
【0048】
(主粉末)
実施例1~7及び比較例1~2の主粉末は、それぞれタングステンカーバイド(WC)からなる原料粒子(平均粒子径2μm)およびコバルト(Co)からなる原料粒子(平均粒子径2μm)をスラリー化しアトライダで混合した。その後、実施例1~5は、連続スプレー流動造粒乾燥装置(製品名:「スプリュード」、製造元:株式会社大川原製作所)を使用して、また、実施例6、7および比較例1、2は、噴霧乾燥型造粒機(スプレードライヤ)で造粒し、その後焼結し、解砕、分級することにより、表1に示す平均粒子径のWC/12質量%Coサーメット粉末材料を構成している。なお、原料粒子の平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒度測定器(株式会社堀場製作製 LA-300)を用いて測定した。
【0049】
(添加粉末)
実施例1~3、6及び比較例1の添加粉末は、それぞれタングステンカーバイド(WC)からなる原料粒子およびコバルト(Co)からなる原料粒子を加熱溶融した後に冷却することにより固化物(インゴット)を形成し、該固化物を粉砕、分級することにより、表1に示す平均粒子径のWC/10質量%Coサーメット粉末材料を構成している。
【0050】
(体積基準Dv50)
得られた主粉末および添加粉末の体積基準の粒度分布における積算値50%におけるDv50粒径をそれぞれ測定した。Dv50粒径は、レーザ回折/散乱式粒度測定器(株式会社堀場製作製 LA-300)を用いて測定し、得られた結果を主粉末のDv50をA、添加粉末のDv50をBとして表1に示した。
【0051】
(断面空隙率)
得られた主粉末および添加粉末の空隙率を、任意に選択した10粒子の断面を500倍の電子顕微鏡像で観察して断面における空隙の面積を全断面積で除した値により算出し、表1に示した。
【0052】
(タップ充填率)
得られた主粉末と添加粉末を混合し、JIS R 1628:1997に基づいてタップ密度を測定した。また、得られたタップ密度(g/cm3)、理論密度およびタップ密度を理論密度(g/cm3)で除したタップ充填率(%)をそれぞれ表1に示した。理論密度は、具体的には、下記式にて求めた。
理論密度=[15.63(WCの密度)× 主粉末中のWC重量% + 8.9(Coの密度)× 主粉末中のCo 重量%] × 主粉末の重量%+[15.63(WCの密度)× 添加粉末中のWC重量% + 8.9(Coの密度)× 添加粉末中のCo 重量%] × 添加粉末の重量%
【0053】
<三次元造形物の製造>
表1に示す主粉末と添加粉末の混合比率からなる粉末材料を使用して、(製品名:ProXDMP 200、3DSystem社製)により、平らに敷いた粉末にレーザを照射し、一層ずつ溶融させ、この工程を繰り返すことで造形物を製造した。この際、出力300W、走査速度300mm/s、ピッチ幅0.1mm、積層厚さ30μmとした。
【0054】
(造形物の相対密度)
得られた造形物の相対密度は、アルキメデス法による密度を理論密度で除した値をパーセント表示で表1に示した。
【0055】
実施例1~7においては、粉末材料のタップ充填率が40%以上であり、得られた造形物の相対密度93%以上が得られた。これに対して、比較例1および2では、粉末材料のタップ充填率が40未満であり、得られた造形物の相対密度93%未満であった。