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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-26
(45)【発行日】2023-01-10
(54)【発明の名称】呈味改善剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20221227BHJP
   A23L 27/30 20160101ALI20221227BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L27/30 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019511220
(86)(22)【出願日】2018-04-02
(86)【国際出願番号】 JP2018014063
(87)【国際公開番号】W WO2018186328
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】P 2017074568
(32)【優先日】2017-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 美咲
(72)【発明者】
【氏名】徳地 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅博
【審査官】山本 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-009646(JP,A)
【文献】国際公開第2016/084788(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/160851(WO,A1)
【文献】特開2002-223721(JP,A)
【文献】特開2006-081544(JP,A)
【文献】国際公開第2011/024471(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/077019(WO,A1)
【文献】油脂産業における食の安全性,2005年,p17,https://www.yushikaikan.or.jp/content/files/Kenkyu16.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酸化物価が15以上180以下であり、10質量%以上100質量%以下の乳脂を含む酸化油脂を有効成分とする、高甘味度甘味料の呈味改善剤であって、前記呈味改善剤は、前記高甘味度甘味料を含む飲食品に、前記酸化油脂に含まれる乳脂の含有量が0.01ppm以上10000ppm以下となるように添加して用いるためのものである、該呈味改善剤
【請求項2】
前記酸化油脂を0.001質量%以上100質量%以下含む、請求項1に記載の呈味改善剤。
【請求項3】
前記呈味改善が、高甘味度甘味料の異風味の改善である、請求項1又は2に記載の呈味改善剤。
【請求項4】
高甘味度甘味料を含む飲食品であって、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の呈味改善剤を、前記酸化油脂に含まれる乳脂の含有量が0.01ppm以上10000ppm以下となるように含む、前記飲食品。
【請求項5】
前記高甘味度甘味料100質量部に対し、前記酸化油脂に含まれる乳脂が0.0001質量部以上10000質量部以下となるように前記呈味改善剤を含む、請求項に記載の飲食品。
【請求項6】
前記高甘味度甘味料を0.00001質量%以上5質量%以下含む、請求項又はに記載の飲食品。
【請求項7】
過酸化物価が15以上180以下であり、10質量%以上100質量%以下の乳脂を含む酸化油脂と、高甘味度甘味料とを飲食品に添加することを特徴とする甘味付与方法であって、前記酸化油脂は、該酸化油脂に含まれる乳脂の含有量が0.01ppm以上10000ppm以下となるように添加する、前記甘味付与方法。
【請求項8】
過酸化物価が15以上180以下であり、10質量%以上100質量%以下の乳脂を含む酸化油脂と、高甘味度甘味料とを含むことを特徴とする甘味付与用組成物であって、前記甘味付与用組成物は、前記高甘味度甘味料を含む飲食品に、前記酸化油脂に含まれる乳脂の含有量が0.01ppm以上10000ppm以下となるように添加して用いるためのものである、該甘味付与用組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食品等に適用される呈味改善剤に関し、より詳細には、高甘味度甘味料の呈味を改善する呈味改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
スクラロース、アスパルテーム、ステビア、アセスルファムカリウム(アセスルファムK)、アドバンテーム、ネオテームなどの高甘味度甘味料は、ショ糖の数十倍から数千倍の甘味を有するため、少ない添加量でショ糖と同等の甘味を付与できることが知られている。そのため、近年の健康指向の高まりから、砂糖等の甘味料に代えて、高甘味度甘味料を使うことで低カロリーとすることができ、そのような飲食品が増えている。一方で、高甘味度甘味料は、特有の苦みやエグ味、雑味、甘味が後味に残る等の呈味の点での改善が大きな課題となっている。すなわち、高甘味度甘味料は少量で甘味を付与できる点で有用である一方、砂糖等の一般の甘味料にはない異風味を有しており、それが飲食品の価値を損ねる要因となることもある。
【0003】
このような課題に関連して、例えば、特許文献1(特開2000-270804)には、L-アスパラギン等の特定のアミノ酸により、高甘味度甘味料の苦味を低減することが開示されている。また、特許文献2(特開2003-210147)には、リンゴ酸等の特定の有機酸により、スクラロース含有飲料での後味を改善することが開示されている。またさらに、特許文献3(特開2015-142521)には、グルコサミンまたはN-アセチルグルコサミンにより、高甘味度甘味料の不快な異味等を改善できることが開示されている。
【0004】
一方、特許文献4(特許5976968号)には、特定の酸化処理を施した乳脂を含む油脂により、乳風味を増強することが開示されている。しかしながら、高甘味度甘味料の呈味改善の効果については開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-270804号公報
【文献】特開2003-210147号公報
【文献】特開2015-142521号公報
【文献】特許5976968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高甘味度甘味料の呈味を改善する効果に優れた呈味改善剤、あるいはその呈味改善のための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、所定量の乳脂を含む酸化油脂に、高甘味度甘味料の呈味を改善する効果があることを発見し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、過酸化物価が15以上180以下であり、10質量%以上100質量%以下の乳脂を含む酸化油脂を有効成分とする、高甘味度甘味料の呈味改善剤を提供するものである。
【0009】
本発明による呈味改善剤にあっては、前記酸化油脂を0.001質量%以上100質量%以下含むことが好ましい。
【0010】
また、上記呈味改善剤にあっては、前記呈味改善が、高甘味度甘味料の異風味の改善であることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、高甘味度甘味料の呈味改善剤の製造方法であって、
10質量%以上100質量%以下の乳脂を含む原料油脂に、酸素を供給しながら加熱し、過酸化物価が15以上180以下である酸化油脂を得る工程
を含む、前記製造方法を提供するものである。
【0012】
本発明による呈味改善剤の製造方法にあっては、前記原料油脂が乳脂を20質量%以上100質量%以下含むことが好ましい。
【0013】
また、上記製造方法にあっては、前記加熱を65℃以上150℃以下、1時間以上72時間以下でおこなうことが好ましい。
【0014】
また、上記製造方法にあっては、前記酸素の供給が、前記原料油脂1kgあたり、毎分0.001L以上2L以下であることが好ましい。
【0015】
また、上記製造方法にあっては、前記乳脂が無水乳脂であることが好ましい。
【0016】
また、上記製造方法にあっては、前記原料油脂の油脂含量が90質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
【0017】
また、上記製造方法にあっては、更に、食用油脂に前記酸化油脂を添加する工程を含むことが好ましい。
【0018】
その場合、前記食用油脂に対し、前記酸化油脂を0.001質量%以上50質量%以下添加することが好ましい。
【0019】
また、本発明は、高甘味度甘味料を含む飲食品であって、過酸化物価が15以上180以下であり、10質量%以上100質量%以下の乳脂を含む酸化油脂を有効成分とする、高甘味度甘味料の呈味改善剤を含む前記飲食品を提供するものである。
【0020】
本発明による飲食品にあっては、前記酸化油脂に含まれる乳脂が0.01ppm以上10000ppm以下となるように前記呈味改善剤を含むことが好ましい。
【0021】
また、上記飲食品にあっては、前記高甘味度甘味料100質量部に対し、前記酸化油脂に含まれる乳脂が0.0001質量部以上10000質量部以下となるように前記呈味改善剤を含むことが好ましい。
【0022】
また、上記飲食品にあっては、前記高甘味度甘味料が0.00001質量%以上5質量%以下含むことが好ましい。
【0023】
また、本発明は、過酸化物価が15以上180以下であり、10質量%以上100質量%以下の乳脂を含む酸化油脂と、高甘味度甘味料とを飲食品に添加することを特徴とする甘味付与方法を提供するものである。
【0024】
また、本発明は、過酸化物価が15以上180以下であり、10質量%以上100質量%以下の乳脂を含む酸化油脂と、高甘味度甘味料とを含むことを特徴とする甘味付与用組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、所定量の乳脂を含む酸化油脂を用いることで、高甘味度甘味料の呈味を改善する効果に優れた呈味改善剤、並びにその呈味改善のための方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明においては、高甘味度甘味料の呈味を改善するための有効成分として、過酸化物価が15以上180以下であり、10質量%以上100質量%以下の乳脂を含む酸化油脂を用いる。すなわち、その酸化油脂を有効成分とする高甘味度甘味料の呈味改善剤が提供される。
【0027】
本発明による呈味改善剤においては、前記酸化油脂の含有量は、高甘味度甘味料の呈味を改善するための有効量で含まれればよく、特に限定されない。例えば、前記酸化油脂が、好ましくは0.001質量%以上100質量%以下、より好ましくは0.005質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは0.005質量%以上50質量%以下、さらにより好ましくは0.005質量%以上10質量%以下含まれるようにする。
【0028】
乳脂は、生乳、牛乳又は特別牛乳から得られる油脂含量が95質量%以上100質量%以下のものをいう。例えば、無水乳脂、澄ましバター等が挙げられる。無水乳脂は、牛乳等から乳脂肪以外のほとんどすべての成分を除去したものをいい、AMF(Anhydrous Milk Fat、バターオイル)等と表記される場合もある。澄ましバターはバターの脂肪分を分取したものである。本発明で使用する乳脂は、好ましくは無水乳脂または澄ましバターであり、より好ましくは無水乳脂である。また、乳脂の油脂含量は、好ましくは98質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは99質量%以上100質量%以下である。
【0029】
本発明に用いられる酸化油脂の乳脂含量は、10質量%以上100質量%以下であり、20質量%以上100質量%以下であることが好ましく、50質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、60質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましく、65質量%以上100質量%以下であることがさらにより好ましく、95質量%以上100質量%以下であることが特に好ましく、100質量%(すなわち、乳脂単独)であることが最も好ましい。また、酸化油脂の油脂含量は、好ましくは90質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは95質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは98質量%以上100質量%以下であり、よりさらに好ましくは99質量%以上100質量%以下である。
【0030】
また、前記酸化油脂は、乳脂以外の食用油脂を含んでいてもよい。乳脂以外の食用油脂としては、特に限定されないが、中鎖脂肪酸トリグリセリド、大豆油、菜種油、コーン油、パーム油及びパーム分別油のいずれか一種または二種以上が好ましく、大豆油及び菜種油のいずれか一種または二種がより好ましい。前記酸化油脂は、本発明の効果を阻害しない限り、通常油脂に添加できる助剤等を含んでいてもよい。また、酸化油脂の水の含量は、好ましくは1質量%未満である。
【0031】
また、本発明では、前記酸化油脂の過酸化物価(以下、「POV」ともいう)は15以上180以下であり、30以上150以下であることが好ましく、35以上140以下であることがより好ましく、40以上140以下であることがさらに好ましく、40以上120以下であることが特に好ましい。所定のPOVとすることで、高甘味度甘味料の呈味を改善する効果がより一層期待できる。
【0032】
前記酸化油脂は酸化をすることで、所定範囲のPOVとすることができるが、酸化の方法は特に限定されない。酸化をする際、加熱することが好ましく、加熱する温度は65℃以上150℃以下が好ましく、70℃以上140℃以下がより好ましく、75℃以上140℃以下がさらに好ましい。また、酸化をする時間は、特に限定されないが、好ましくは1時間以上72時間以下であり、より好ましくは3時間以上72時間以下であり、さらに好ましくは5時間以上72時間以下である。
【0033】
また、酸化をする際には、原料油脂に酸素を供給し、酸化をすることが好ましい。酸素の供給源としては、酸素単独でもかまわないし、空気等の酸素を含むものでも良く、好ましくは空気である。酸素の供給量が、原料油脂1kgあたり、毎分0.001L以上2L以下となるようにすることが好ましく、毎分0.005L以上2L以下となるようにすることがより好ましく、毎分0.02L以上2L以下となるようにすることがさらに好ましい。例えば、空気の場合は、原料油脂1kgあたり、毎分0.005L以上10L以下であることが好ましく、毎分0.025L以上10L以下であることがより好ましく、毎分0.1L以上10L以下であることがさらに好ましく、毎分0.3L以上5L以下であることがさらにより好ましい。また、酸化をする場合には、原料油脂を撹拌することが好ましい。
【0034】
前記原料油脂の乳脂含量は、10質量%以上100質量%以下であり、20質量%以上100質量%以下であることが好ましく、50質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、60質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましく、65質量%以上100質量%以下であることがさらにより好ましく、95質量%以上100質量%以下であることが特に好ましく、100質量%(すなわち、乳脂単独)であることが最も好ましい。また、原料油脂の油脂含量は、好ましくは90質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは95質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは98質量%以上100質量%以下であり、よりさらに好ましくは99質量%以上100質量%以下である。
【0035】
また、前記原料油脂は、乳脂以外の食用油脂を含んでいてもよい。乳脂以外の食用油脂としては、特に限定されないが、中鎖脂肪酸トリグリセリド、大豆油、菜種油、コーン油、パーム油及びパーム分別油のいずれか一種または二種以上が好ましく、大豆油及び菜種油のいずれか一種または二種がより好ましい。また、原料油脂の水の含量は、好ましくは1質量%未満である。
【0036】
本発明によれば、高甘味度甘味料を含む飲食品等に上述した酸化油脂を含有せしめることで、その高甘味度甘味料の呈味を改善することができる。より詳細には、高甘味度甘味料による異風味等に対する改善効果に優れる。ここで、「異風味」とは、当該飲食品等を食したときの苦味、雑味、エグ味、甘味の後引き(後味として持続する甘味)、くどい甘さ、角のある不快な甘さ、あるいは、不自然な甘さ等の、高甘味度甘味料に特有の呈味のことである。また、「改善する」とは、その異風味が低減され、抑制され、ひいては感じられなくなったり、あるいは、砂糖等の一般的な甘味料が呈する甘味に近づいたりすることを含む。特には、本発明によると、食したときの後味に残る甘味、苦味、雑味を抑制する効果や、砂糖の甘味に近づける効果に優れている。このような高甘味度甘味料の異風味の有無や、その高甘味度甘味料による呈味を改善する効果は、例えば、公正な水準を満たす専門パネラーによる官能評価などによって、客観的に判定し得る。
【0037】
本発明が適用される高甘味度甘味料は、特に限定されず、ショ糖の10倍以上、より好ましくは100倍以上の甘味を有する天然及び合成の化合物である。例えば、ステビア抽出物、ラカンカ抽出物、グリチルリチン、グリチルリチン酸塩類、ソーマチン等の天然甘味料;スクラロース、アセスルファムカリウム、アミノ酸系甘味料(アスパルテーム、アドバンテーム、アリテーム、ネオテーム等)、サッカリン、サッカリンナトリウム、ズルチン等の人工甘味料である。好ましくは、人工甘味料であり、より好ましくはスクラロース、アセスルファムカリウム及びアミノ酸系甘味料から選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくはスクラロース及びアミノ酸系甘味料から選ばれる1種又は2種であり、さらに好ましくはスクラロース及びアスパルテームから選ばれる1種又は2種である。
【0038】
本発明が適用される飲食品は、前記高甘味度甘味料を含んでいれば、特に限定されない。また、砂糖等の高甘味度甘味料以外の甘味料を含んでいてもよい。また、ヒトや動物が経口で摂取するものであり、飲料や食品の他に、経口医薬、エサや飼料も含まれる。より具体的には、例えば、果実類、野菜類、魚介類等の加工品;練製品;調理食品;総菜類;スナック類;加工食品;栄養食品;茶飲料、コーヒー飲料、果汁飲料、炭酸飲料、清涼飲料、機能性飲料、アルコール飲料、スポーツドリンク等の飲料;アイスクリーム、シャーベット等の冷菓類;ゼリー、キャンディー、グミ、ガム、プリン、羊かん等のデザート類;クッキー、ケーキ、チョコレート、チューイングガム、饅頭等の菓子類;菓子パン、食パン等のパン類;ジャム類;ラムネ、タブレット等の錠菓類;インスタントコーヒー、インスタントスープ等のインスタント食品;ガムシロップ、スティックシュガー等の甘味製剤;調味料;ドレッシング類;経口医薬;ペットフード;飼料などである。飲食品に含まれる高甘味度甘味料の含有量は特に限定されないが、例えば、0.00001質量%以上5質量%以下であり、好ましくは0.00005質量以上%4質量%以下である。
【0039】
本発明の適用方法としては、前記高甘味度甘味料に上述した酸化油脂を組み合わせる方法であればよく、特に限定されるものではない。より詳細には、高甘味度甘味料を含む飲食品等に前記酸化油脂を含有せしめればよい。また、添加するタイミングも特に限定されず、例えば、飲食品の製造後であって、食する前に添加してもよく、あるいは、飲食品の製造のいずれかの工程において添加してもよい。例えば、高甘味度甘味料を含む飲食品等の製造工程において、その原料や製造工程の中間物等へ添加すればよい。また、酸化油脂は、高甘味度甘味料よりも前に添加してもよく、高甘味度甘味料よりも後に添加してもよく、それらを一緒に添加してもよい。あるいは、それら酸化油脂と高甘味度甘味料とを複合的に含む組成物の形態で添加してもよい。
【0040】
飲食品における前記酸化油脂の含有量は、その効果に応じて調整すればよいが、例えば、前記酸化油脂に含まれる乳脂が、好ましくは0.01ppm以上10000ppm以下、より好ましくは0.05ppm以上10000ppm以下、さらに好ましくは0.1ppm以上5000ppm以下、さらにより好ましくは1ppm以上3000ppm以下、特に好ましくは1ppm以上1000ppm以下となるようにする。
【0041】
また、飲食品における前記酸化油脂の含有量は、飲食品に含まれる高甘味度甘味料100質量部に対し、前記酸化油脂に含まれる乳脂が、例えば、0.0001質量部以上10000質量部以下、好ましくは0.001質量部以上7000質量部以下、好ましくは0.005質量部以上7000質量部以下となるようにする。
【0042】
また、上述したように、本発明の適用方法は、飲食品等に前記酸化油脂を含有せしめる方法であればよい。この場合、飲食品用組成物の形態、すなわち、例えば、食品添加製剤や甘味製剤等の形態で飲食品やその原料に添加するようにしてもよい。
【0043】
本発明が飲食品用組成物の形態で適用される場合、その飲食品用組成物における前記酸化油脂の含有量は、高甘味度甘味料の呈味の改善効果を発揮する限り、特に限定されない。典型的には、前記酸化油脂が、好ましくは0.001質量%以上100質量%以下、より好ましくは0.005質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは0.005質量%以上50質量%以下、さらにより好ましくは0.005質量%以上10質量%以下となるようにする。
【0044】
本発明が飲食品用組成物の形態で適用される場合、その飲食品用組成物には、前記酸化油脂を希釈するための食用油脂を使用してもよい。この場合、前記食用油脂に対し、前記酸化油脂を好ましくは0.001質量%以上50質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以上20質量%以下、さらにより好ましくは0.01質量%以上10質量%以下となるようにする。食用油脂は特に限定されず、例えば、パーム核油、パーム油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、カカオ脂等の植物油脂、ラード等の動物油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド等が挙げられる。また、これらの分別油(パーム油の中融点部、パーム油の分別軟質油、パーム油の分別硬質油等)、エステル交換油、水素添加油等の加工した油脂を使用できる。また、これらの食用油脂は、1種又は2種以上を使用することができる。その形態は、飲食品に適した形態であればよく、例えば、液状、粉末状等が例示される。また、本発明の効果を阻害しない限り、通常油脂に添加できる助剤等を使用してもよく、さらには、粉末状等の形状とするためのコーンシロップ等を使用してもよい。
【0045】
一方、本発明の別の側面からは、前記酸化油脂と、前記高甘味度甘味料とを飲食品に添加する、甘味付与方法が提供され得る。すなわち、この甘味付与方法では、高甘味度甘味料により飲食品に甘味が付与されるとともに、その酸化油脂により、高甘味度甘味料の呈味が改善される。前記酸化油脂と、前記高甘味度甘味料との、飲食品への適用態様は、上述した通りである。
【0046】
また、本発明の他の側面からは、過酸化物価が15以上180以下であり、10質量%以上100質量%以下の乳脂を含む酸化油脂と、高甘味度甘味料とを含む、甘味付与用組成物が提供され得る。すなわち、この甘味付与用組成物を飲食品等に含有せしめることで、高甘味度甘味料により飲食品等に甘味が付与されるとともに、その酸化油脂により、高甘味度甘味料の呈味が改善される。
【0047】
本発明が甘味付与用組成物の形態で適用される場合、その甘味付与用組成物における前記酸化油脂の含有量は、高甘味度甘味料の呈味の改善効果を発揮する限り、特に限定されない。典型的には、前記酸化油脂が、前記酸化油脂が、好ましくは0.001質量%以上80質量%以下、より好ましくは0.005質量%以上80質量%以下、さらに好ましくは0.005質量%以上70質量%以下、さらにより好ましくは0.005質量%以上50質量%以下含まれるようにする。また、高甘味度甘味料の含有量は、例えば、5質量%以上99.999質量%以下であることが好ましく、5質量%以上99.995質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上99.995質量%以下であることがさらに好ましい。また、高甘味度甘味料100質量部に対し、前記酸化油脂に含まれる乳脂が、例えば、0.0001質量部以上10000質量部以下、好ましくは0.005質量部以上7000質量部以下、より好ましくは0.01質量部以上7000質量部以下さらに好ましくは0.1質量部以上7000質量部以下、さらにより好ましくは1質量部以上7000質量部以下となるようにする。
【0048】
本発明が甘味付与用組成物の形態で適用される場合、その甘味付与用組成物には、前記酸化油脂を希釈するための食用油脂を使用してもよい。この場合、前記食用油脂に対し、前記酸化油脂を好ましくは0.001質量%以上50質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以上20質量%以下、さらにより好ましくは0.01質量%以上10質量%以下となるようにする。食用油脂は特に限定されず、例えば、パーム核油、パーム油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、カカオ脂等の植物油脂、ラード等の動物油脂、中鎖脂肪酸トリグリセリド等が挙げられる。また、これらの分別油(パーム油の中融点部、パーム油の分別軟質油、パーム油の分別硬質油等)、エステル交換油、水素添加油等の加工した油脂を使用できる。また、これらの食用油脂は、1種又は2種以上を使用することができる。その形態は、飲食品に適した形態であればよく、例えば、液状、粉末状等が例示される。また、本発明の効果を阻害しない限り、通常油脂に添加できる助剤等を使用してもよく、さらには、粉末状等の形状とするためのコーンシロップ等を使用してもよい。
【0049】
また、甘味付与用組成物には、デンプン、デキストリン等の賦形剤を含んでいてもよい。
【0050】
この甘味付与用組成物の飲食品等へのその他の適用態様は、本発明により提供される呈味改善剤と同様であり、上述した通りである。
【実施例
【0051】
以下に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨はこれらに限定されるものではない。
【0052】
実施に際しては、以下のものを使用した。

(油脂)(いずれも水の含量は1質量%未満)
無水乳脂(製品名:バターオイルCML、丸和油脂株式会社製、油脂含量:99.8質量%)
大豆油(株式会社J-オイルミルズ社製)
菜種油(株式会社J-オイルミルズ社製)
高オレイン酸低リノレン酸菜種油(HOLL菜種油)(株式会社J-オイルミルズ社製)

(高甘味度甘味料)
パルスイートカロリーゼロ(製品名:パルスイートカロリーゼロ、味の素株式会社製、高甘味度甘味料として、アスパルテーム・L-フェニルアラニン化合物、アセスルファムKを含む)
アスパルテーム(製品名:アスパルテーム、和光純薬株式会社製)
アセスルファムK(製品名:アセスルファムK、輸入者:北大貿易株式会社)
スクラロース(製品名:スクラロース標準品、和光純薬株式会社製)
【0053】
(調製例1)
無水乳脂200gをステンレスビーカーに入れ、120℃に保温しながら、撹拌し、空気(200ml/分)を供給し、過酸化物価(POV) 46の酸化油脂(調製例1)を得た。なお、POVは「基準油脂分析試験法 2.5.2 過酸化物価」に準じて、測定した。
【0054】
(調製例2)
菜種油 99.9質量部に調製例1を0.1質量部混合し、調製例2を得た。
【0055】
(調製例3)
菜種油 99質量部に調製例1を1質量部混合し、調製例3を得た。
【0056】
(調製例4)
菜種油 90質量部に調製例1を10質量部混合し、調製例4を得た。
【0057】
(添加量の評価)
容器に牛乳(製品名:明治おいしい牛乳、株式会社明治社製)195g、高甘味度甘味料(製品名:パルスイートカロリーゼロ)6.7g、菜種油または調製例2~4のいずれかを0.22g混合し、加熱した。高甘味度甘味料が十分に溶解したら火を止め、ディスパーザーで5000rpm、5分間攪拌し、混合液を得た。
ゼラチン3gと水15gを混合し、ゼラチンに吸水させ、吸水ゼラチンを得た。吸水ゼラチンを電子レンジで500W、20秒間加熱して溶かし、混合液に添加し、スパチュラで十分に攪拌し、ゼラチン含有混合液を得た。ゼラチン含有混合液をカップに分注後、余熱が取れたら4℃で冷却し、牛乳ゼリーを得た。
得られた牛乳ゼリーを3名で食し、合議に基づき、後味に残る甘味の抑制及び甘味の質について、下記の評価基準で評価した。その結果を表1に示す。
ここで、高甘味度甘味料特有の後味に残る甘味とは、食した際に甘味が切れない状態のことである。
【0058】
<後味に残る甘味の抑制>
◎:後味に残る甘味が対照に比べて非常に弱い
○:後味に残る甘味が対照に比べて弱い
△:後味に残る甘味が対照に比べてやや弱い
×:後味に残る甘味が対照と同等もしくは強い
【0059】
<甘味の質>
◎:砂糖の甘味に非常に近い
○:砂糖の甘味に近い
△:砂糖の甘味とやや異なる
×:砂糖の甘味と異なる
【0060】
【表1】

【0061】
調製例2~4を配合した牛乳ゼリーは、高甘味度甘味料特有の後味に残る甘味が弱くなり、特に、実施例1-3では、後味に残る甘味を全く感じなかった。
また、甘味の質については、喫食時の酸化油脂の含有量が10ppm以上となるように配合することで、砂糖の甘味に非常に近い牛乳ゼリーを得ることができた。
【0062】
(種々のPOVでの評価)
以下のように、POVの異なる酸化油脂を調製した。
【0063】
(調製例5~10)
無水乳脂200gをステンレスビーカーに入れ、100℃に保温しながら、撹拌し、空気(200ml/分)を供給した。適時サンプリングし、調製例6~10の酸化油脂を得た。なお、酸化処理を施していない無水乳脂を調製例5とした。
【0064】
得られた酸化油脂の過酸化物価(POV)を「基準油脂分析試験法 2.5.2 過酸化物価」に準じて、測定した。結果を表2に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
(調製例11~16)
菜種油 90質量部に調製例5~10のいずれかの油脂を10質量部混合し、調製例11~16を得た。
【0067】
調製例4に代えて、菜種油(対照)、及び調製例11~16のいずれかを添加したことを除き、実施例1-3と同じ操作で、評価した。その結果を表3に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
実施例3-1~5に示すように酸化油脂のPOVが15以上で後味に残る甘味の抑制効果が確認できた。特にPOVが34以上120以下でその効果が高く、POVが46以上120以下でより顕著であった。また、甘味の質についても同様の効果が確認できた。
一方、比較例3-1に示したように、酸化処理を施していない無水乳脂では、後味に残る甘味の抑制効果や甘味の質の改善効果は、確認できなかった。
【0070】
(乳脂含有量の評価)
【0071】
(調製例17、乳脂および乳脂以外の食用油脂を含む酸化油脂)
無水乳脂140gに大豆油60gを混合し、乳脂を70質量%含む油脂を調製した。調製した油脂200gをステンレスビーカーに入れ、120℃に保温しながら、撹拌し、空気(200ml/分)を供給した。13時間反応し、POV 44.6の酸化油脂を得た。得られた酸化油脂 10質量部に菜種油を90質量部混合し、調製例17を得た。
【0072】
(調製例18、乳脂および乳脂以外の食用油脂を含む酸化油脂)
無水乳脂50質量部にHOLL菜種油50質量部を混合し、乳脂を50質量%含む油脂を調製した。調製した油脂200gをステンレスビーカーに入れ、100℃に保温しながら、撹拌し、空気(200ml/分)を供給した。36時間反応し、POV 100の酸化油脂を得た。得られた酸化油脂 10質量部に菜種油を90質量部混合し、調製例18を得た。
【0073】
(調製例19、乳脂および乳脂以外の食用油脂を含む酸化油脂)
無水乳脂20質量部にHOLL菜種油80質量部を混合し、乳脂を20質量%含む油脂を調製した。調製した油脂200gをステンレスビーカーに入れ、100℃に保温しながら、撹拌し、空気(200ml/分)を供給した。30時間反応し、POV 105の酸化油脂を得た。得られた酸化油脂 10質量部に菜種油を90質量部混合し、調製例19を得た。
【0074】
調製例4に代えて、菜種油(対照)、及び調製例17~19のいずれかを添加したことを除き、実施例1-3と同じ操作で、評価した。その結果を表4に示す。
【0075】
【表4】
【0076】
実施例4-1~3に示すように酸化油脂に含まれる無水乳脂の含有量が20質量%以上で、後味に残る甘味の抑制効果が確認できた。無水乳脂の含有量が50質量%以上でその効果が高かった。また、甘味の質についても同様の結果であった。
【0077】
(種々の高甘味度甘味料での評価)
実施例1-3において、パルスイートカロリーゼロとその配合量を、表5に記載の高甘味度甘味料とその配合量としたことを除き、同じ操作で評価した。その結果を表5に示す。なお、対照として調製例4に代えて菜種油を添加したものを用いた。
【0078】
【表5】

【0079】
表5に示したように、高甘味度甘味料として、アスパルテーム、スクラロースを使用した場合、いずれも本発明による呈味改善剤を添加することで、高甘味度甘味料の後味に残る甘味を抑制でき、また、甘味の質を砂糖に近づけることができた。
【0080】
実施例1-3において、パルスイートカロリーゼロとその配合量を、表6に記載の高甘味度甘味料とその配合量としたことを除き、同じ操作で牛乳ゼリーを得た。得られた牛乳ゼリーを3名で食し、合議に基づき、後味の苦味・雑味の抑制について、下記の評価基準で評価した。その結果を表6に示す。なお、対照として調製例4に代えて菜種油を添加したものを用いた。
【0081】
<後味の苦味・雑味の抑制>
◎:後味の苦味・雑味が対照に比べて非常に弱い
○:後味の苦味・雑味が対照に比べて弱い
△:後味の苦味・雑味が対照に比べてやや弱い
×:後味の苦味・雑味が対照と同等もしくは強い
【0082】
【表6】
【0083】
表6に示したように、高甘味度甘味料として、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムKを使用した場合、いずれも本発明による呈味改善剤を添加することで、後味の苦味・雑味を抑制できた。特にアセスルファムKにおいて、その効果が顕著であった。
【0084】
(調製例20)
パーム核極硬油45質量部、コーンシロップ(水分25質量%)63.36質量部、pH調整剤ミックス(リン酸水素2カリウム、クエン酸3ナトリウム)2.10質量部及び乳化剤ミックス(酸カゼイン、水酸化ナトリウム、ソルビタン脂肪酸エステル、及びグリセリン脂肪酸エステルの混合物)5.38質量部を配合し、混合をした。さらに水84.16質量部添加し、常法に従い、乳化・噴霧し、粉末油脂を得た(調製例20)。
【0085】
(調製例21)
パーム核極硬油44質量部、調製例1を1質量部、コーンシロップ(水分25質量%)63.36質量部、pH調整剤ミックス(リン酸水素2カリウム、クエン酸3ナトリウム)2.10質量部及び乳化剤ミックス(酸カゼイン、水酸化ナトリウム、ソルビタン脂肪酸エステル、及びグリセリン脂肪酸エステルの混合物)5.38質量部を配合し、混合をした。さらに水84.16質量部添加し、常法に従い、乳化・噴霧し、粉末油脂を得た(調製例21)。
【0086】
(インスタントコーヒーでの評価)
表7に記載の配合量でインスタントコーヒーを調製した。得られたインスタントコーヒーを3名で食し、合議に基づき、後味に残る甘味の抑制及び甘味の質について、下記の評価基準で評価した。その結果を表7に示す。なお、評価に際して、以下の製品を使用した。

インスタントコーヒー粉末(製品名:Blendy メロウ&リッチ、味の素ゼネラルフーヅ株式会社製)
アスパルテームを主原料とする高甘味度甘味料(製品名:パルスイートカロリーゼロ、味の素株式会社製)
スクラロースを主原料とする高甘味度甘味料(製品名:シュガーカット、株式会社浅田飴社製)
【0087】
<後味に残る甘味の抑制>
◎:後味に残る甘味が対照に比べて非常に弱い
○:後味に残る甘味が対照に比べて弱い
△:後味に残る甘味が対照に比べてやや弱い
×:後味に残る甘味が対照と同等もしくは強い
【0088】
<甘味の質>
◎:砂糖の甘味に非常に近い
○:砂糖の甘味に近い
△:砂糖の甘味とやや異なる
×:砂糖の甘味と異なる
【0089】
【表7】

【0090】
インスタントコーヒーに、本発明による呈味改善剤を粉末油脂形態で添加することで、高甘味度甘味料の後味に残る甘味を抑制でき、また、甘味の質を砂糖に近づけることができた。
【0091】
(調製例22)
パーム核極硬油35質量部、調製例1を10質量部、コーンシロップ(水分25質量%)63.36質量部、pH調整剤ミックス(リン酸水素2カリウム、クエン酸3ナトリウム)2.10質量部及び乳化剤ミックス(酸カゼイン、水酸化ナトリウム、ソルビタン脂肪酸エステル、及びグリセリン脂肪酸エステルの混合物)5.38質量部を配合し、混合をした。さらに水84.16質量部添加し、常法に従い、乳化・噴霧し、粉末油脂を得た(調製例22)。
【0092】
(コーラでの評価)
市販のコーラ(製品名:キリンメッツコーラ、キリンビバレッジ株式会社製;甘味料としてアスパルテーム・L-フェニルアラニン化合物、アセスルファムK、スクラロースを含む)200gを60℃程度に加温後、調製例20(対照)または調製例22を0.1g添加し、スパチュラで十分攪拌した。4℃に冷却後、コーラを3名で食し、合議に基づき、後味に残る甘味の抑制について、実施例7-1と同じ評価基準で評価した。その結果を表8に示す。
【0093】
【表8】
【0094】
高甘味度甘味料を含む市販のコーラに、本発明による呈味改善剤を粉末油脂形態で添加することで、高甘味度甘味料の後味に残る甘味を抑制できた。
【0095】
(クッキーでの評価)
【0096】
(調製例23)
マーガリン(製品名:ラーマ、株式会社J-オイルミルズ社製)を30℃に保温し、柔らかくした。柔らかくしたマーガリン90質量部に調製例1を10質量部添加し、よく混合し、冷蔵庫で冷却して調製例23を得た。
【0097】
表9に記載の配合で生地を作製し、得られた生地をそれぞれ小さいボール状に丸め、5mm程度の厚さになるよう平らに伸ばし、180℃15分焼成した。得られたクッキーを3名で食し、合議に基づき、後味に残る甘味の抑制及び甘味の質について、実施例7-1と同じ評価基準で評価した。その結果を表9に示す。
【0098】
【表9】
【0099】
クッキーに、本発明による呈味改善剤を配合することで、クッキーに含まれる高甘味度甘味料の後味に残る甘味を抑制でき、また、甘味の質を砂糖に近づけることができた。
【0100】
(ホイップクリームでの評価)
クリーム(製品名:スジャータホイップ、株式会社東京めいらく社製)に表10に記載の配合で材料を添加し、氷水で冷やしながら、ハンドミキサーで20分程度(角が立つ程度まで)あわ立て、ホイップクリームを得た。得られたホイップクリームを3名で食し、合議に基づき、後味に残る甘味の抑制及び甘味の質について、実施例7-1と同じ評価基準で評価した。その結果を表10に示す。
【0101】
【表10】
【0102】
ホイップクリームに、本発明による呈味改善剤を配合することで、ホイップクリームに含まれる高甘味度甘味料の後味に残る甘味を抑制でき、また、甘味の質を砂糖に近づけることができた。特に、アスパルテームを主原料とする高甘味度甘味料を使用した場合にその効果が顕著であった。
【0103】
(紅茶での評価)
ティーバッグ(製品名:リプトンイエローラベルティーバッグ、ユニリーバ・ジャパン株式会社製)を湯に浸して抽出した紅茶に、表11に記載のように高甘味度甘味料等を添加し、高甘味度甘味料入りの紅茶を得た。得られた高甘味度甘味料入りの紅茶を3名で食し、合議に基づき、後味に残る甘味の抑制について、実施例7-1と同じ評価基準で評価した。その結果を表11に示す。
【0104】
【表11】
【0105】
紅茶に、本発明による呈味改善剤を配合することで、紅茶に添加した高甘味度甘味料の後味に残る甘味を抑制できた。特に、アスパルテームを主原料とする高甘味度甘味料を使用した場合にその効果が顕著であった。
【0106】
(プリンでの評価)
約50℃の牛乳125gに表12に記載の卵液以外の材料を加え混合し、均一に分散させて混合液を得た。混合液を冷蔵庫で冷却した後、卵液50gを添加し攪拌後、耐熱容器に注ぎいれた。オーブン用の角皿に湯を注ぎいれ、前記耐熱容器を角皿に並べ、140℃に予熱したオーブンで30分蒸し上げた。粗熱を取ったのち、冷蔵庫で冷やし、プリンを得た。得られたプリンを3名で食し、合議に基づき、後味に残る甘味の抑制及び甘味の質について、実施例7-1と同じ評価基準で評価した。その結果を表12に示す。
【0107】
【表12】

【0108】
プリンに、本発明による呈味改善剤を配合することで、プリンに含まれる高甘味度甘味料の後味に残る甘味を抑制でき、また、甘味の質を砂糖に近づけることができた。特に、アスパルテームを主原料とする高甘味度甘味料を使用した場合にその効果が顕著であった。
【0109】
呈味改善剤の製造例
無水乳脂200gをステンレスビーカーに入れ、100℃に保温しながら、撹拌し、空気(5mL/分)を供給した。過酸化物価が47になったところで、空気の供給を止め、冷却し、酸化油脂を得た。得られた酸化油脂を呈味改善剤とした。
【0110】
甘味付与用組成物の製造例1
アスパルテームを主原料とする高甘味度甘味料100質量部に対し、調製例21を30質量部添加し、よく混合して、甘味付与用組成物を製造した。
【0111】
甘味付与用組成物の製造例2
アスパルテーム100質量部に対し、調製例21を300質量部、デキストリンを500質量部添加し、よく混合して、甘味付与用組成物を製造した。
【0112】
甘味付与用組成物の製造例3
スクラロース100質量部に対し、調製例21を100質量部添加し、よく混合して、甘味付与用組成物を製造した。