(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-27
(45)【発行日】2023-01-11
(54)【発明の名称】成膜装置、有機ELパネルの製造システム、及び成膜方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/04 20060101AFI20221228BHJP
C23C 14/12 20060101ALI20221228BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20221228BHJP
H10K 50/00 20230101ALI20221228BHJP
【FI】
C23C14/04 A
C23C14/12
H05B33/10
H05B33/14 A
(21)【出願番号】P 2018233798
(22)【出願日】2018-12-13
【審査請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100158388
【氏名又は名称】鱸 英俊
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 圭介
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-045137(JP,A)
【文献】国際公開第2018/141367(WO,A1)
【文献】特表2019-508872(JP,A)
【文献】特開2017-119905(JP,A)
【文献】特開2016-128597(JP,A)
【文献】国際公開第2009/069743(WO,A1)
【文献】特開2006-233257(JP,A)
【文献】特開2015-124394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/04
C23C 14/12
H05B 33/10
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が載置されるマスクを保持するマスク保持部と、
前記マスクを吸引するための複数の磁石と、
前記複数の磁石が取り付けられる主面を有し、前記マスク保持部によりマスクが保持される位置よりも上に配置され、前記主面
が傾斜状態
のまま下降しさらに下降することで回動して水平状態となるように回動可能な第1部材と、を備え、
前記複数の磁石の各々は、前記主面に取り付けられる面とは反対側の磁極面を有し、
前記複数の磁石は、前記主面に沿う所定方向に配列された磁石群を含み、
前記磁石群は、第1間隔で隣り合って配置され、前記磁極面の磁極が互いに異なる第1磁石ペアと、前記第1間隔よりも広い第2間隔で隣り合って配置され、前記磁極面の磁極が互いに異なる第2磁石ペアと、を含むことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記第2磁石ペアは、前記第1磁石ペアに対して相対的に前記磁石群における中央の側に位置していることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記第2磁石ペアは、前記複数の磁石における配列パターンの中央部分に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載の成膜装置。
【請求項4】
基板が載置されるマスクを保持するマスク保持部と、
前記マスクを吸引するための複数の磁石と、
前記複数の磁石が取り付けられる主面を有し、前記マスク保持部によりマスクが保持される位置よりも上に配置され、前記主面
が傾斜状態
のまま下降しさらに下降することで回動して水平状態となるように回動可能な第1部材と、を備え、
前記複数の磁石の各々は、前記主面に取り付けられる面とは反対側の磁極面とを有し、
前記複数の磁石は、前記主面に沿う所定方向に配列された磁石群を含み、
前記磁石群は、前記磁極面の磁極が互いに異なる、第1磁力の第3磁石ペアと、前記第3磁石ペアに挟まれた位置に隣り合って配置され、前記磁極面の磁極が互いに異なる、前記第1磁力よりも弱い第2磁力の第4磁石ペアと、を含むことを特徴とする成膜装置。
【請求項5】
前記第4磁石ペアは、前記複数の磁石における配列パターンの中央部分に位置していることを特徴とする請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記第1部材がヨークであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記主面が前記水平状態のときに、前記複数の磁石と、前記マスク保持部に保持されたマスク上の基板との間に位置するように配置された、強磁性体ではない磁性体からなる第2部材を更に備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記第1部材は、軸線まわりに回動可能であり、
前記所定方向は、前記軸線に直交する方向であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記第1部材は、軸線まわりに回動可能であり、
前記所定方向は、前記軸線に平行な方向であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の成膜装置を複数備え、
少なくとも一台の前記成膜装置は、前記基板に有機材料を蒸着して有機薄膜を成膜することを特徴とする有機ELパネルの製造システム。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の成膜装置を用いて前記基板に成膜する成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に成膜する成膜装置、有機ELパネルの製造システム、及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子などの電子デバイスの製造では、ガラスなどの基板の被成膜面を下向きにしてマスク上に載置し、マスクを介して被成膜面に成膜する。膜の品質上、膜厚を均一に成膜する必要があり、そのためには、基板とマスクとを密着させて成膜する必要がある。
【0003】
そこで、特許文献1には、メタルマスクを磁石の磁力によって基板に吸引させて成膜する方法が記載されている。この特許文献1には、板状の磁石を基板の一側の端部から対向する端部にかけて一部ずつ基板に近接させて、メタルマスクを基板に密着させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、基板の大型化に伴い、基板をマスク上に載置した際に、基板の重量によって、基板及びマスクの双方がすり鉢形状に撓んだ状態となることがあった。このように、基板及びマスクの双方がすり鉢形状に撓んだ状態となると、特許文献1に記載の方法によっても、マスクの撓みが部分的に解消されずに基板とマスクとの間に隙間が生じることがあった。マスクの撓みが残留した状態で成膜すると、膜厚のバラつきにつながるため、改善が求められていた。
【0006】
本発明は、マスクを基板に密着させる際に、マスクの撓みが残留するのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様によれば、成膜装置は、基板が載置されるマスクを保持するマスク保持部と、前記マスクを吸引するための複数の磁石と、前記複数の磁石が取り付けられる主面を有し、前記マスク保持部によりマスクが保持される位置よりも上に配置され、前記主面が傾斜状態のまま下降しさらに下降することで回動して水平状態となるように回動可能な第1部材と、を備え、前記複数の磁石の各々は、前記主面に取り付けられる面とは反対側の磁極面を有し、前記複数の磁石は、前記主面に沿う所定方向に配列された磁石群を含み、前記磁石群は、第1間隔で隣り合って配置され、前記磁極面の磁極が互いに異なる第1磁石ペアと、前記第1間隔よりも広い第2間隔で隣り合って配置され、前記磁極面の磁極が互いに異なる第2磁石ペアと、を含むことを特徴とする。
本発明の第2態様によれば、成膜装置は、基板が載置されるマスクを保持するマスク保持部と、前記マスクを吸引するための複数の磁石と、前記複数の磁石が取り付けられる主面を有し、前記マスク保持部によりマスクが保持される位置よりも上に配置され、前記主面が傾斜状態のまま下降しさらに下降することで回動して水平状態となるように回動可能な第1部材と、を備え、前記複数の磁石の各々は、前記主面に取り付けられる面とは反対側の磁極面とを有し、前記複数の磁石は、前記主面に沿う所定方向に配列された磁石群を含み、前記磁石群は、前記磁極面の磁極が互いに異なる、第1磁力の第3磁石ペアと、前記第3磁石ペアに挟まれた位置に隣り合って配置され、前記磁極面の磁極が互いに異なる、前記第1磁力よりも弱い第2磁力の第4磁石ペアと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、マスクを基板に密着させる際に、マスクの撓みが残留するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る成膜装置の概略図である。
【
図2】(a)は、第1実施形態に係るマグネットユニットの平面図である。(b)は、(a)のIIB-IIB線に沿うマグネットユニットの断面図である。
【
図3】第1実施形態における磁石群を説明するための図である。
【
図4】(a)、(b)及び(c)は、第1実施形態に係る成膜方法の一部の工程を説明するための図である。
【
図5】(a)及び(b)は、第1実施形態に係る成膜方法の一部の工程を説明するための図である。
【
図6】(a)は、第2実施形態に係るマグネットユニットの平面図である。(b)は、(a)のVIB-VIB線に沿うマグネットユニットの断面図である。
【
図7】(a)は、第3実施形態に係るマグネットユニットの平面図である。(b)は、(a)のVIIB-VIIB線に沿うマグネットユニットの断面図である。
【
図8】(a)は、第4実施形態に係るマグネットユニットの平面図である。(b)は、(a)のVIIIB-VIIIB線に沿うマグネットユニットの断面図である。
【
図9】(a)は、第5実施形態に係るマグネットユニットの平面図である。(b)は、(a)のIXB-IXB線に沿うマグネットユニットの断面図である。
【
図10】(a)は、第6実施形態に係るマグネットユニットの平面図である。(b)は、(a)のXB-XB線に沿うマグネットユニットの断面図である。
【
図11】第7実施形態に係る製造システムの模式的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態を説明する。ただし、以下で説明する実施形態は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲をそれらの構成に限定するものではない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、製造条件、寸法、材質、形状などは、特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る成膜装置100の概略図である。成膜装置100は、基板の一例である、平行平板のガラス基板5の表面に、真空蒸着により所望のパターンの薄膜(材料層)を形成するものである。蒸着材料としては、有機材料、無機材料(例えば金属、金属酸化物)などの任意の材料を選択できる。具体的には、電子デバイス(例えば、有機EL表示装置、薄膜太陽電池)の製造装置に適用可能である。本実施形態では、成膜装置100は、被成膜基板であるガラス基板5の表面に有機薄膜を形成して製造する有機EL素子の製造工程のうち成膜工程に用いられる。また、
図1に示す本実施形態の成膜装置100は、蒸着装置であるが、これに限定するものではなく、スパッタリング法やCVD法など、蒸着法以外の成膜方法を用いる成膜装置であってもよい。
図1において、上下方向をZ方向、Z方向に直交する2方向であって、互いに直交する水平方向をX方向及びY方向とする。
【0012】
成膜装置100は、装置本体100Aと、装置本体100Aを制御する制御部50とを備える。装置本体100Aは、ガラス基板5に成膜材料を形成するための成膜空間2を有するチャンバ4と、ガラス基板5をチャンバ4内に搬入/搬出するためのゲートバルブ15と、を備える。また、装置本体100Aは、チャンバ4の内部である成膜空間2に配置されたガラス基板5及びマスク6を保持して、ガラス基板5とマスク6との相対的な位置決めを行う位置決め機構1を備える。また、装置本体100Aは、マスク6を吸引して、マスク6をガラス基板5に密着させるマスク吸引機構14を備える。チャンバ4の成膜空間2には、成膜材料を収納した成膜源(蒸着源)7が設けられている。
【0013】
位置決め機構1は、チャンバ4の外部に設けられたプレート10と、プレート10を駆動する駆動部11と、を有する。また、位置決め機構1は、チャンバ4の内部に設けられ、ガラス基板5を保持する基板保持部8と、チャンバ4の内部に設けられ、マスク6を保持するマスク保持部9と、を有する。基板保持部8は、ガラス基板5をマスク6上に載置後、ガラス基板5から退避する。
【0014】
プレート10には、シャフト12が固定されている。シャフト12は、チャンバ4の上部隔壁3に設けられた貫通穴を通じて、チャンバ4の外部と内部とに亘って設けられている。そして、シャフト12の下部に基板保持部8が取り付けられ、成膜空間2においてガラス基板5を保持することが可能となっている。上部隔壁3に設けられた貫通穴は、シャフト12と上部隔壁3とが干渉しないよう、シャフト12の外径に対して大きく形成されている。チャンバ4の外部において、シャフト12は、プレート10と上部隔壁3とに固定されたベローズ13によって覆われる。
【0015】
マスク吸引機構14は、駆動部16と、駆動部16によってZ方向に昇降駆動されるプレート19と、を有する。駆動部16及びプレート19は、チャンバ4の外部に配置されている。
【0016】
プレート19には、シャフト21が固定されている。シャフト21は、チャンバ4の上部隔壁3に設けられた貫通穴を通じて、チャンバ4の外部と内部とに亘って設けられている。シャフト21の下部には、磁力によって吸引されない材質、即ち強磁性体ではない磁性体、例えば反磁性体からなる基板押え部17が設けられている。上部隔壁3に設けられた貫通穴は、シャフト21と上部隔壁3とが干渉しないよう、シャフト21の外径に対して大きく形成されている。チャンバ4の外部において、シャフト21は、プレート19と上部隔壁3とに固定されたベローズ41によって覆われる。基板押え部17は、駆動部16の駆動によって下降した際にガラス基板5と接触する、第2部材の一例である基板押えプレート20と、基板押えプレート20の上面に取り付けられた突き当てブロック23と、を有する。
【0017】
ここで、成膜品質における主要項目のひとつとして、膜厚の均一性がある。例えば、成膜により電極層を形成する場合、膜厚にバラつきが生じると、電極層の抵抗値にもバラつきが生じ、発光ムラにつながる。そのためには、膜厚が均一となるように成膜を行う必要がある。そこで、本実施形態では、マスク吸引機構14は、磁力によって吸引される材質、例えば強磁性体からなるマスク6を磁力によって吸引し、ガラス基板5にマスク6を密着させるものである。
【0018】
マスク吸引機構14は、駆動部18と、駆動部18によってZ方向に昇降駆動される昇降ユニット22と、昇降ユニット22に回動可能に支持されたマグネットユニット24とを有する。昇降ユニット22及びマグネットユニット24は、チャンバ4の内部に配置され、マスク保持部9に保持されたマスク6の位置よりも上方に配置されている。基板押え部17は、ボックス状であり、内部に昇降ユニット22及びマグネットユニット24が配置されている。基板押え部17の底板が、基板押えプレート20である。基板押えプレート20は、マグネットユニット24とガラス基板5との間に位置するように配置されている。
【0019】
マグネットユニット24は、第1部材であるヨーク29と、ヨーク29に取り付けられた複数の磁石30と、を有する。ヨーク29は、Y方向に延びる軸25によって昇降ユニット22に回動可能に支持されている。ヨーク29は、基板側の面であって下面である主面291と、主面291とは反対側の上面である面292とを有する板状の部材である。複数の磁石30は、ヨーク29の主面291に取り付けられている。各磁石30は、自身の磁力によってヨーク29に固定されるが、更に接着剤などの固定部材によってヨーク29に固定されていてもよい。
【0020】
駆動部18は、チャンバ4の外部に配置され、プレート19に固定されている。昇降ユニット22は、駆動部18から延びるシャフト28に接続されている。昇降ユニット22及びマグネットユニット24は、駆動部18によりシャフト28を通じて、基板押さえ部17に対して相対的にZ方向に昇降駆動される。
【0021】
シャフト28は、チャンバ4の上部隔壁3に設けられた貫通穴を通じて、チャンバ4の外部と内部とに亘って設けられている。そして、シャフト28の下部に昇降ユニット22が取り付けられている。上部隔壁3に設けられた貫通穴は、シャフト28と上部隔壁3とが干渉しないよう、シャフト28の外径に対して大きく形成されている。チャンバ4の外部において、シャフト28は、ベローズ42によって覆われる。
【0022】
ヨーク29の面292には、昇降ユニット22に係脱可能なストッパ26と、突き当てブロック23に係脱可能なストッパ27とが設けられている。ストッパ27が突き当てブロック23から離間しているとき、マグネットユニット24が自重によって軸25のまわりに回動して主面291が水平状態に対して傾斜する。そして、ストッパ26が昇降ユニット22に係合する、即ち引っ掛かることで、主面291が水平状態に対して所定の角度で傾斜状態に保持される。
【0023】
マグネットユニット24、即ち主面291の傾斜角度は、ストッパ26のZ方向の長さによって決まる。ストッパ26は、Z方向の長さが調整自在となっており、マグネットユニット24、即ち主面291の傾斜角度を所望する所定の角度に調整することができる。また、マグネットユニット24がシャフト28によって下降することで、ストッパ27が突き当てブロック23に突き当たる。その後、マグネットユニット24が更に下降することによって軸25を中心に回動し、主面291が傾斜状態から水平状態になる。なお、マグネットユニット24を回動させる機構は、以上に説明したものに限定するものではなく、マグネットユニット24を直接アクチュエータで回動させてもよい。
【0024】
シャフト12、21、及び28は、ベローズ13、41、及び42によってチャンバ4と連通する閉じられた空間に閉じ込められるため、シャフト12、21、及び28の全体を成膜空間2と同じ状態(例えば、真空状態)に保つことができる。
【0025】
ベローズ13、41、及び42には、X方向、Y方向、及びZ方向に柔軟性を持つものを用いるのが好ましい。これにより、位置決め機構1によってベローズ13、41、及び42が変位した際に発生する抵抗力を十分に小さくすることができ、位置調整時の負荷を低減することができる。
【0026】
マスク保持部9は、チャンバ4の内部において、上部隔壁3における成膜空間側の面に設置されており、マスク6は水平状態で保持される。マスク6は、磁力により吸着する材質からなり、マスク箔6Aと、マスク箔6Aが固定されたマスク枠6Bとを有する。マスク箔6Aには、成膜パターンに応じた開口が形成されている。マスク枠6Bは、ガラス基板5を支持可能なようにマスク箔6Aよりも剛性の高く、マスク箔6Aを架張した状態で、マスク保持部9に固定されている。マスク6のマスク箔6Aは、マグネットユニット24が接近することで、磁力により吸引される。磁力により吸引されたマスク箔6Aは、ガラス基板5と共に基板押えプレート20に押し付けられることで、ガラス基板5とマスク箔6Aとを密着させることが可能となっている。
【0027】
位置決め機構1、マスク吸引機構14、及び成膜源7の一連の動作は、制御部50によって制御される。制御部50は、例えば、プロセッサ、メモリ、ストレージ、I/Oなどを有するコンピュータにより構成可能である。この場合、制御部50の機能は、メモリ又はストレージに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。コンピュータとしては、汎用のパーソナルコンピュータを用いてもよいし、組込型のコンピュータ又はPLC(programmable logic controller)を用いてもよい。あるいは、制御部270の機能の一部又は全部をASICやFPGAのような回路で構成してもよい。なお、成膜装置ごとに制御部50が設けられていてもよいし、1つの制御部50が複数の成膜装置を制御してもよい。
【0028】
ガラス基板5の大型化に伴い、マスク6上にガラス基板5を載置した際に、ガラス基板5の重量によって、ガラス基板5及びマスク6の中央部分がすり鉢形状に撓んだ状態となる。ガラス基板5の撓み形状とマスク6の撓み形状との間に差があると、ガラス基板5とマスク6との間に隙間が生じる。
【0029】
以下、マスク吸引機構14のマグネットユニット24について具体的に説明する。
図2(a)は、第1実施形態に係るマグネットユニット24の平面図である。
図2(b)は、
図2(a)のIIB-IIB線に沿うマグネットユニット24の断面図である。
【0030】
ヨーク29の主面291には、複数の磁石30が設けられている。ヨーク29の主面291は、矩形形状であり、
図1に示すマスク箔6Aとほぼ同じ大きさである。複数の磁石30は、主面291に沿う方向であって、回動中心となる仮想的な軸線L1に平行な配列方向A1と、配列方向A1に直交する配列方向A2とにマトリックス状に配列されている。軸線L1は、軸25の中心にある。
【0031】
各磁石30は、永久磁石であり、磁極がS極又はN極となる一対の磁極面31及び32を有する。即ち、一対の磁極面31及び32のうち、一方の磁極面の磁極がS極であれば、他方の磁極面の磁極はN極である。本実施形態では、各磁石30は、平面視矩形状であり、互いに同じ大きさ、及び互いに同じ磁力のものである。各磁石30の磁極面32がヨーク29の主面291に取り付けられ、反対側の磁極面31が外側に向いて配置されている。本実施形態では、複数の磁石30は、所定方向である配列方向A2に磁極面31の磁極がN極とS極とに互い違いとなるように配列されている。なお、複数の磁石30は、配列方向A1に磁極面31の磁極が同極となるように配列されている。磁極面31の磁極がS極となる磁石30と、磁極面31の磁極がN極となる磁石30とが配列方向A2に交互に配置されているので、配列方向A2に隣り合う2つの磁石30で磁気回路が形成される。なお、
図2(a)では、配列方向A1において同極の磁石同士が連結されているが、これに限定するものではなく、同極の磁石同士が配列方向A1に間隔をあけて配置されていてもよい。
【0032】
図2(a)及び
図2(b)には、磁極面31がN極となる磁石を網掛けで図示し、磁極面31がS極となる磁石を斜線のハッチングで図示している。
図2(a)において二点鎖線で囲んだ、複数の磁石30における配列パターンの中央部分P1が、
図1に示すガラス基板5及びマスク6においてすり鉢形状に撓んだ部分のうち底部に対応する部分である。
【0033】
複数の磁石30のうち、配列方向A1の中央に位置する磁石群130について説明する。
図2(b)には、磁石群130における断面を図示している。複数の磁石30は、配列方向A1の中央に位置する磁石群130を含む。磁石群130は、配列方向A2に配列された複数の磁石30
1~30
16からなる。
図2(b)では、磁石30
1、30
3、30
5、30
7、30
9、30
11、30
13、及び30
15の磁極面31がS極であり、磁石30
2、30
4、30
6、30
8、30
10、30
12、30
14、及び30
16の磁極面31がN極である。このように、磁石群130において配列方向A2に磁極面31の磁極がS極とN極とで互い違いとなるように配列されている。なお、磁石群130において、隣り合う磁石の磁極面の磁極が同極となる配列が一部存在していてもよい。
【0034】
磁石群130は、第1間隔である間隔D1で隣り合って配置され、磁極面31の磁極が互いに異なる第1磁石ペアである磁石ペア131を含んでいる。磁石群130は、間隔D1よりも広い第2間隔である間隔D2で隣り合って配置され、磁極面31の磁極が互いに異なる第2磁石ペアである磁石ペア132を含んでいる。磁石群130において、第1磁石ペアは、複数組存在し、その一例が磁石3010及び磁石3011からなる磁石ペア131である。磁石ペア132は、磁石308及び磁石309である。本実施形態では、磁石ペア131と磁石ペア132とは隣り合っている。
【0035】
図3は、第1実施形態における磁石群130を説明するための図である。磁石ペア131において隣り合う磁石30
10と磁石30
11との極性は対極の関係にある。また、磁石ペア132において隣り合う磁石30
8と磁石30
9との極性は対極の関係にある。
【0036】
磁石ペア131によって発生する磁束(磁気回路)をB1、磁石ペア132によって発生する磁束(磁気回路)をB2とする。
図3において、磁束B1及びB2は、破線で示している。磁束B2は、磁石ペア132における磁石30
8と磁石30
9との間隔D2が間隔D1よりも広いため、磁束B1よりも低い密度で、かつ磁束B1よりも広範囲に広がる。従って、磁石ペア132は、磁石ペア131よりも吸引力が低くなるものの、磁石ペア132よりも広範囲に(つまり遠方に)所定力以上の吸引力が及ぶことになる。よって、磁石ペア132の磁束B2による吸引力は、遠方においては、磁石ペア131の磁束B1による吸引力よりも強く、逆に近傍では、磁石ペア131の磁束B1による吸引力よりも弱くなる。
【0037】
磁石ペア132は、
図2(b)に示すように、磁石ペア131に対して相対的に磁石群130における中央C1の側に位置しているのが好ましく、本実施形態では、中央C1を跨いで位置している。そして、本実施形態では、磁石ペア132は、複数の磁石30における配列パターンの中央部分P1(
図2(a))に位置している。なお、
図3に示す磁石ペア131と磁石ペア132との間隔D3は、間隔D1以上間隔D2以下の範囲内の間隔であり、本実施形態では、間隔D1と同じ間隔である。つまり、磁石30
8と磁石30
9との間隔のみD2であり、それ以外の2つの磁石の間隔はD1である。
【0038】
次に、
図1に示す成膜装置100を用いてガラス基板5に成膜する成膜方法について説明する。まず、ガラス基板5をマスク6に載置する工程を説明する。ガラス基板5は、
図1に示す基板保持部8に保持されているものとする。駆動部11により基板保持部8を駆動することにより、ガラス基板5とマスク6との位置合わせを行い、マスク6上にガラス基板5を載置する。ガラス基板5がマスク6上に載置された際に、ガラス基板5及びマスク箔6Aは、ガラス基板5の重量によって、すり鉢形状に撓む。ガラス基板5とマスク6とは、位置合わせが行われているため、ガラス基板5及びマスク箔6Aの撓み量は、ガラス基板5及びマスク箔6Aの中央部分で最大となる。
【0039】
マスク箔6A上にガラス基板5の載置が完了すると、駆動部16により基板押え部17の基板押えプレート20を水平状態に保持したまま、基板押え部17を所定の位置まで下降させ、基板押えプレート20をガラス基板5に接触させる。
【0040】
次に、マスク吸引機構14によるガラス基板5とマスク箔6Aとを密着させる工程について説明する。
図4(a)、
図4(b)、
図4(c)、
図5(a)、及び
図5(b)は、第1実施形態に係る成膜方法の一部の工程を説明するための図である。
図4(a)、
図4(b)、
図4(c)、
図5(a)、及び
図5(b)には、ヨーク29の下降を開始したときから、マスク箔6Aとガラス基板5とが密着するまでの工程を概略的に図示している。また、
図4(a)、
図4(b)、
図4(c)、
図5(a)、及び
図5(b)には、複数の磁石30のうちの磁石群130を図示している。なお、
図4(a)、
図4(b)、
図4(c)、
図5(a)、及び
図5(b)には、各磁石30が受ける吸引力を矢印で模式的に図示している。矢印の長さが所定力以上の吸引力の及ぶ範囲であり、矢印の太さがその吸引力の強さを示す。
【0041】
図4(a)に示すように、基板押えプレート20は、ガラス基板5に接触しているが、ガラス基板5及びマスク6のマスク箔6Aは、すり鉢形状に撓んだ状態である。ヨーク29は、基板押えプレート20の上方において、所定の角度に傾斜させた状態で保持される。その際、マグネットユニット24は、ヨーク29の傾斜方向下端部が、マスク箔6Aの端部とX方向及びY方向において一致するように配置される。また、マグネットユニット24は、
図2(a)の複数の磁石30における配列パターンの中央部分P1が、マスク箔6Aにおいて撓み量が最大となる部分に対応するように配置する。
【0042】
次に、
図4(b)に示すように、ストッパ26が昇降ユニット22に係合した状態、即ちヨーク29の主面291が傾斜状態のまま、昇降ユニット22及びマグネットユニット24を下降させる。これにより、ヨーク29の傾斜方向下端部の近傍に位置する磁石30
1による吸引力が、マスク箔6AのX方向の一端部に作用する。そして、マグネットユニット24が徐々に下降するに従って、磁石30
2、磁石30
3、…の順に、上端部側に向かって順次、吸引力がマスク箔6Aに作用する。これにより、マスク箔6AのX方向の一端部から一部分ずつ他端部に向かって、マスク箔6Aが徐々にマグネットユニット24に吸引される。
【0043】
このとき、マスク箔6Aがマグネットユニット24に吸引されることで、ガラス基板5もマスク箔6Aに押し上げられて、基板押えプレート20に密着する。更に、本実施形態では、ヨーク29の中央部分に位置する磁石308及び磁石309による磁気回路が遠方に形成されるため、マスク箔6Aの中央部分も吸引される。このように、マスク箔6Aの中央部分とガラス基板5の中央部分とが密着するとともに、マスク箔6Aの一端部から他端部にかけて撓みが均されながら一部ずつ徐々にマスク箔6Aとガラス基板5との密着領域が広がっていく。
【0044】
X方向の一端部から他端部に向かってマスク箔6Aの撓みが均される途中で、既にマスク箔6Aの中央部分とガラス基板5の中央部分とが密着している場合があるが、中央部分に位置する磁石30
8及び磁石30
9による吸引力は他の磁石に比べて相対的に弱い。そのため、更に昇降ユニット22を下降させることで、
図4(c)に示すように、まわりの磁石による吸引力に押されてマスク箔6Aの撓みが解消され、マスク箔6Aがガラス基板5に密着する。
【0045】
図4(c)に示すようにストッパ27が突き当てブロック23に接触した後、さらに昇降ユニット22を下降させることで、
図5(a)に示すように、ストッパ26と昇降ユニット22とが離間してヨーク29が軸25を中心に回動する。これにより、ヨーク29の主面291の傾斜角度が徐々に小さくなる。マスク箔6Aとガラス基板5との密着が完了していない中央部から他端部にかけた部分についても、マスク箔6Aの撓みが解消されて、ガラス基板5とマスク箔6Aとの密着領域が徐々に増加する。
【0046】
さらに昇降ユニット22を下降させることで、
図5(b)に示すように、主面291が傾斜状態から水平状態となる。昇降ユニット22が所定の位置まで下降して主面291が水平状態となると、マスク箔6Aとヨーク29の主面291とが平行な状態となる。これにより、マスク箔6Aの全面がガラス基板5に密着する。
【0047】
第1実施形態によれば、磁石ペア132における2つの磁石同士の間隔D2が、磁石ペア131における磁石同士の間隔D1よりも広い。したがって、磁石ペア132の各磁石により所定力以上の吸引力の及ぶ範囲が、磁石ペア131の各磁石により所定力以上の吸引力の及ぶ範囲よりも広くなる。これにより、マスク6をガラス基板5に密着させる際に、マスク6においてすり鉢形状に撓んだ部分の底部に、磁石ペア132の各磁石による吸引力が及ぶ。よって、すり鉢形状に撓んだ部分を効果的に吸引することができ、マスク6の撓みが残留するのを防止することができる。
【0048】
また、マスク6においてすり鉢状に撓むのは、中央部分であるため、磁石ペア132は、マスク6の中央部分に近いほどよい。よって、磁石ペア132は、磁石ペア131に対して相対的に磁石群130における中央C1の側に位置しているのが好ましい。第1実施形態では、磁石ペア132は、複数の磁石30における配列パターンの中央部分P1に位置している。このように、マスク6の中央部分に対応する箇所に、磁石ペア132を配置することで、より効果的にマスク6の撓みが残留するのを防止することができる。
【0049】
なお、磁石群130に配列方向A1に隣接する磁石群も、不図示ではあるが、磁石群130と同様の構成としてもよい。
【0050】
[第2実施形態]
第2実施形態の成膜装置について説明する。
図6(a)は、第2実施形態に係るマグネットユニットの平面図である。
図6(b)は、
図6(a)のVIB-VIB線に沿うマグネットユニットの断面図である。第2実施形態の成膜装置においては、第1実施形態とマグネットユニットの構成が異なり、それ以外の構成は第1実施形態と同様であり、同様の構成については説明を省略する。以下、第2実施形態のマグネットユニット24Aについて具体的に説明する。
【0051】
ヨーク29の主面291には、複数の磁石30Aが設けられている。ヨーク29の主面291は、矩形形状であり、
図1に示すマスク箔6Aとほぼ同じ大きさである。複数の磁石30Aは、主面291に沿う方向であって、回動中心となる仮想的な軸線L1に平行な配列方向A1と、配列方向A1に直交する配列方向A2とにマトリックス状に配列されている。
【0052】
各磁石30Aは、永久磁石であり、磁極がS極又はN極となる一対の磁極面31A及び32Aを有する。即ち、一対の磁極面31A及び32Aのうち、一方の磁極面の磁極がS極であれば、他方の磁極面の磁極はN極である。本実施形態では、各磁石30Aは、平面視矩形状であり、互いに同じ磁力のものである。各磁石30Aの磁極面32Aがヨーク29の主面291に取り付けられ、反対側の磁極面31Aが外側に向いて配置されている。本実施形態では、複数の磁石30Aは、所定方向である配列方向A1に磁極面31Aの磁極がN極とS極とに互い違いとなるように配列されている。なお、複数の磁石30Aは、配列方向A2に磁極面31Aの磁極が同極となるように配列されている。磁極面31Aの磁極がS極となる磁石30Aと、磁極面31Aの磁極がN極となる磁石30Aとが配列方向A1に交互に配置されているので、配列方向A1に隣り合う2つの磁石30Aで磁気回路が形成される。なお、
図6(a)では、配列方向A2において同極の磁石同士が連結されているが、これに限定するものではなく、同極の磁石同士が配列方向A2に間隔をあけて配置されていてもよい。
【0053】
図6(a)及び
図6(b)には、磁極面31AがN極となる磁石を網掛けで図示し、磁極面31AがS極となる磁石を斜線のハッチングで図示している。
図6(a)において二点鎖線で囲んだ、複数の磁石30Aにおける配列パターンの中央部分P2が、
図1に示すガラス基板5及びマスク6においてすり鉢形状に撓んだ部分のうち底部に対応する部分である。
【0054】
複数の磁石30Aのうち、配列方向A2の中央に位置する磁石群130Aについて説明する。
図6(b)には、磁石群130Aにおける断面を図示している。複数の磁石30Aは、配列方向A2の中央に位置する磁石群130Aを含む。磁石群130Aは、配列方向A1に配列された複数の磁石30A
1~30A
12からなる。
図6(b)では、磁石30A
1、30A
3、30A
5、30A
7、30A
9、及び30A
11の磁極面31AがN極である。磁石30A
2、30A
4、30A
6、30A
8、30A
10、及び30A
12の磁極面31AがS極である。このように、磁石群130Aにおいて配列方向A1に磁極面31Aの磁極がS極とN極とで互い違いとなるように配列されている。なお、磁石群130Aにおいて、隣り合う磁石の磁極面の磁極が同極となる配列が一部存在していてもよい。
【0055】
磁石群130Aは、第1間隔である間隔D21で隣り合って配置され、磁極面31Aの磁極が互いに異なる第1磁石ペアである磁石ペア131Aを含んでいる。また、磁石群130Aは、間隔D21よりも広い第2間隔である間隔D22で隣り合って配置され、磁極面31Aの磁極が互いに異なる第2磁石ペアである磁石ペア132Aを含んでいる。磁石群130Aにおいて、第1磁石ペアは、複数組存在し、その一例が磁石30A8及び磁石30A9からなる磁石ペア131Aである。磁石ペア132Aは、磁石30A6及び磁石30A7である。本実施形態では、磁石ペア131Aと磁石ペア132Aとは隣り合っており、その間隔は、間隔D21以上間隔D22以下が好ましく、例えば間隔D21である。
【0056】
磁石ペア132Aは、
図6(b)に示すように、磁石ペア131Aに対して相対的に磁石群130Aにおける中央C2の側に位置しているのが好ましく、本実施形態では、中央C2を跨いで位置している。そして、本実施形態では、磁石ペア132Aは、複数の磁石30Aにおける配列パターンの中央部分P2(
図6(a))に位置している。
【0057】
第2実施形態によれば、磁石ペア132Aにおける2つの磁石同士の間隔D22が、磁石ペア131Aにおける磁石同士の間隔D21よりも広い。したがって、磁石ペア132Aの各磁石により所定力以上の吸引力の及ぶ範囲が、磁石ペア131Aの各磁石により所定力以上の吸引力の及ぶ範囲よりも広くなる。これにより、
図1のマスク6をガラス基板5に密着させる際に、マスク6においてすり鉢形状に撓んだ部分の底部に、磁石ペア132Aの各磁石による吸引力が及ぶ。よって、すり鉢形状に撓んだ部分を効果的に吸引することができ、マスク6の撓みが残留するのを防止することができる。
【0058】
また、マスク6においてすり鉢状に撓むのは、中央部分であるため、磁石ペア132Aは、マスク6の中央部分に近いほどよい。よって、磁石ペア132Aは、磁石ペア131Aに対して相対的に磁石群130Aにおける中央C2の側に位置しているのが好ましい。第2実施形態では、磁石ペア132Aは、複数の磁石30Aにおける配列パターンの中央部分P2に位置している。このように、マスク6の中央部分に対応する箇所に、磁石ペア132Aを配置することで、より効果的にマスク6の撓みが残留するのを防止することができる。
【0059】
なお、磁石群130Aに配列方向A2に隣接する磁石群も、磁石群130Aと同様の構成としてもよく、
図6(a)では、磁石群130Aと同様の構成となっている。
【0060】
[第3実施形態]
第3実施形態の成膜装置について説明する。
図7(a)は、第3実施形態に係るマグネットユニットの平面図である。
図7(b)は、
図7(a)のVIIB-VIIB線に沿うマグネットユニットの断面図である。第3実施形態の成膜装置においては、第1実施形態とマグネットユニットの構成が異なり、それ以外の構成は第1実施形態と同様であり、同様の構成については説明を省略する。以下、第3実施形態のマグネットユニット24Bについて具体的に説明する。
【0061】
ヨーク29の主面291には、複数の磁石30Bが設けられている。ヨーク29の主面291は、矩形形状であり、
図1に示すマスク箔6Aとほぼ同じ大きさである。複数の磁石30Bは、主面291に沿う方向であって、回動中心となる仮想的な軸線L1に平行な配列方向A1と、配列方向A1に直交する配列方向A2とにマトリックス状に配列されている。
【0062】
各磁石30Bは、永久磁石であり、磁極がS極又はN極となる一対の磁極面31B及び32Bを有する。即ち、一対の磁極面31B及び32Bのうち、一方の磁極面の磁極がS極であれば、他方の磁極面の磁極はN極である。本実施形態では、各磁石30Bは、平面視矩形状であり、互いに同じ磁力のものである。各磁石30Bの磁極面32Bがヨーク29の主面291に取り付けられ、反対側の磁極面31Bが外側に向いて配置されている。本実施形態では、複数の磁石30Bは、所定方向である配列方向A1と配列方向A2に磁極面31Bの磁極がN極とS極とに互い違いとなるように配列されている。即ち、複数の磁石30Bは、磁極面31Bの磁極がN極とS極とで千鳥状となるように配列されている。磁極面31Bの磁極がS極となる磁石30Bと、磁極面31Bの磁極がN極となる磁石30Bとが配列方向A1及びA2に交互に配置されているので、配列方向A1又は配列方向A2に隣り合う2つの磁石30Bで磁気回路が形成される。
【0063】
図7(a)及び
図7(b)には、磁極面31BがN極となる磁石を網掛けで図示し、磁極面31BがS極となる磁石を斜線のハッチングで図示している。
図7(a)において二点鎖線で囲んだ、複数の磁石30Bにおける配列パターンの中央部分P3が、
図1に示すガラス基板5及びマスク6においてすり鉢形状に撓んだ部分のうち底部に対応する部分である。
【0064】
複数の磁石30Bのうち、配列方向A1の中央に位置する磁石群130Bについて説明する。
図7(b)には、磁石群130Bにおける断面を図示している。複数の磁石30Bは、配列方向A1の中央に位置する磁石群130Bを含む。磁石群130Bは、第1実施形態で説明した磁石群130の配列と同様であり、磁石ペア131と、磁石ペア132とを含む。なお、磁石群130Bにおいて、隣り合う磁石の磁極面の磁極が同極となる配列が一部存在していてもよい。
【0065】
したがって、第3実施形態によれば、第1実施形態と同様、マスク6においてすり鉢形状に撓んだ部分を効果的に吸引することができ、マスク6の撓みが残留するのを防止することができる。
【0066】
なお、磁石群130Bに配列方向A1に隣接する磁石群も、不図示ではあるが、磁石群130Bと同様の構成としてもよい。
【0067】
[第4実施形態]
第4実施形態の成膜装置について説明する。
図8(a)は、第4実施形態に係るマグネットユニットの平面図である。
図8(b)は、
図8(a)のVIIIB-VIIIB線に沿うマグネットユニットの断面図である。第4実施形態の成膜装置においては、第1実施形態とマグネットユニットの構成が異なり、それ以外の構成は第1実施形態と同様であり、同様の構成については説明を省略する。以下、第4実施形態のマグネットユニット24Cについて具体的に説明する。
【0068】
ヨーク29の主面291には、複数の磁石30Cが設けられている。ヨーク29の主面291は、矩形形状であり、
図1に示すマスク箔6Aとほぼ同じ大きさである。複数の磁石30Cは、主面291に沿う方向であって、回動中心となる仮想的な軸線L1に平行な配列方向A1と、配列方向A1に直交する配列方向A2とにマトリックス状に配列されている。
【0069】
各磁石30Cは、永久磁石であり、磁極がS極又はN極となる一対の磁極面31C及び32Cを有する。即ち、一対の磁極面31C及び32Cのうち、一方の磁極面の磁極がS極であれば、他方の磁極面の磁極はN極である。本実施形態では、各磁石30Cは、平面視矩形状であり、互いに同じ大きさのものである。各磁石30Cの磁極面32Cがヨーク29の主面291に取り付けられ、反対側の磁極面31Cが外側に向いて配置されている。本実施形態では、複数の磁石30Cは、所定方向である配列方向A2に磁極面31Cの磁極がN極とS極とに互い違いとなるように配列されている。なお、複数の磁石30Cは、配列方向A1に磁極面31Cの磁極が同極となるように配列されている。磁極面31Cの磁極がS極となる磁石30Cと、磁極面31Cの磁極がN極となる磁石30Cとが配列方向A2に交互に配置されているので、配列方向A2に隣り合う2つの磁石30Cで磁気回路が形成される。なお、
図8(a)では、配列方向A1において同極の磁石同士が連結されているが、これに限定するものではなく、同極の磁石同士が配列方向A2に間隔をあけて配置されていてもよい。
【0070】
図8(a)及び
図8(b)には、磁極面31CがN極となる磁石を網掛けで図示し、磁極面31CがS極となる磁石を斜線のハッチングで図示している。
図8(a)において二点鎖線で囲んだ、複数の磁石30Cにおける配列パターンの中央部分P4が、
図1に示すガラス基板5及びマスク6においてすり鉢形状に撓んだ部分のうち底部に対応する部分である。
【0071】
複数の磁石30Cのうち、配列方向A1の中央に位置する磁石群130Cについて説明する。
図8(b)には、磁石群130Cにおける断面を図示している。複数の磁石30Cは、配列方向A1の中央に位置する磁石群130Cを含む。磁石群130Cは、配列方向A2に配列された複数の磁石30C
1~30C
18からなる。
図8(b)では、磁石30C
1、30C
3、30C
5、30C
7、30C
9、30C
11、30C
13、30C
15、及び30C
17の磁極面31CがS極である。磁石30C
2、30C
4、30C
6、30C
8、30C
10、30C
1230C
14、30C
16、及び30C
18の磁極面31CがN極である。このように、磁石群130Cにおいて配列方向A2に磁極面31Cの磁極がS極とN極とで互い違いとなるように配列されている。なお、磁石群130Cにおいて、隣り合う磁石の磁極面の磁極が同極となる配列が一部存在していてもよい。
【0072】
磁石群130Cは、第1磁力F1である第3磁石ペアである磁石ペア133Cを含んでいる。また、磁石群130Cは、第1磁力F1よりも弱い第2磁力F2である第4磁石ペアである磁石ペア134Cを含んでいる。磁石ペア133Cは、磁石30C
8及び磁石30C
11である。磁石30C
8及び磁石30C
11は、磁極面31Cの磁極が互いに異なるものである。磁石ペア134Cは、磁石30C
9及び磁石30C
10である。磁石30C
9及び磁石30C
10は、磁極面31Cの磁極が互いに異なるものである。磁石30C
9と磁石30C
10とは、配列方向A2に隣り合って配置されている。磁石30C
8と磁石30C
11とは、磁石ペア134Cを挟んで配置されている。本実施形態では、複数の磁石30Cにおいて、磁石30C
9及び磁石30C
10以外の磁石は、全て第1磁力である。なお、隣り合う磁石30C
12と磁石30C
13とで、第1実施形態で説明した磁石ペア131(
図3)と同様の構成の磁石ペア135Cとなる。磁石の磁力は、例えばガウスメータで測定可能である。第2磁力F2は、第1磁力F1の1/2以下であるのが好ましい。更に、第2磁力F2は、第1磁力F1の1/3以下であるのが好ましい。
【0073】
このように、磁石30C
8と磁石30C
11との間に磁力の弱い磁石30C
9及び磁石30C
10が配置されている。磁石30C
8と磁石30C
11と磁石ペア133Cで形成される磁束(磁気回路)は、第1実施形態で説明した磁石ペア132(
図3)と同様、広範囲に広がり、所定力以上の吸引力が広範囲に及ぶことになる。よって、磁石ペア134Cの磁気回路による吸引力は、遠方においては、磁石ペア135Cの磁気回路による吸引力よりも強く、逆に近傍では、磁石ペア135Cの磁気回路による吸引力よりも弱くなる。
【0074】
磁石ペア134Cは、
図8(b)に示すように、中央C4を跨いで位置している。そして、本実施形態では、磁石ペア134Cは、複数の磁石30Cにおける配列パターンの中央部分P4(
図8(a))に位置している。
【0075】
第4実施形態によれば、第1実施形態と同様、磁石ペア133Cの各磁石により所定力以上の吸引力の及ぶ範囲が広くなる。これにより、マスク6をガラス基板5に密着させる際に、マスク6においてすり鉢形状に撓んだ部分の底部に、磁石ペア133Cの各磁石による吸引力が及ぶ。よって、すり鉢形状に撓んだ部分を効果的に吸引することができ、マスク6の撓みが残留するのを防止することができる。
【0076】
また、マスク6においてすり鉢状に撓むのは、中央部分であるため、磁石ペア133Cは、マスク6の中央部分に近いほどよい。よって、第4実施形態では、磁石ペア133Cによって挟まれる磁石ペア134Cは、複数の磁石30Cにおける配列パターンの中央部分P4に位置している。このように、マスク6の中央部分に対応する箇所に、磁石ペア134Cを配置することで、より効果的にマスク6の撓みが残留するのを防止することができる。
【0077】
なお、磁石群130Cに配列方向A1に隣接する磁石群も、不図示ではあるが、磁石群130Cと同様の構成としてもよい。
【0078】
[第5実施形態]
第5実施形態の成膜装置について説明する。
図9(a)は、第5実施形態に係るマグネットユニットの平面図である。
図9(b)は、
図9(a)のIXB-IXB線に沿うマグネットユニットの断面図である。第5実施形態の成膜装置においては、第1実施形態とマグネットユニットの構成が異なり、それ以外の構成は第1実施形態と同様であり、同様の構成については説明を省略する。以下、第5実施形態のマグネットユニット24Dについて具体的に説明する。
【0079】
ヨーク29の主面291には、複数の磁石30Dが設けられている。ヨーク29の主面291は、矩形形状であり、
図1に示すマスク箔6Aとほぼ同じ大きさである。複数の磁石30Dは、主面291に沿う方向であって、回動中心となる仮想的な軸線L1に平行な配列方向A1と、配列方向A1に直交する配列方向A2とにマトリックス状に配列されている。
【0080】
各磁石30Dは、永久磁石であり、磁極がS極又はN極となる一対の磁極面31D及び32Dを有する。即ち、一対の磁極面31D及び32Dのうち、一方の磁極面の磁極がS極であれば、他方の磁極面の磁極はN極である。各磁石30Dの磁極面32Dがヨーク29の主面291に取り付けられ、反対側の磁極面31Dが外側に向いて配置されている。本実施形態では、複数の磁石30Dは、配列方向A2に磁極面31Dの磁極が同極となるように配列されている。各磁石30Dは、平面視矩形状である。
【0081】
図9(a)及び
図9(b)には、磁極面31DがN極となる磁石を網掛けで図示し、磁極面31DがS極となる磁石を斜線のハッチングで図示している。
図9(a)において二点鎖線で囲んだ、複数の磁石30Dにおける配列パターンの中央部分P5が、
図1に示すガラス基板5及びマスク6においてすり鉢形状に撓んだ部分のうち底部に対応する部分である。
【0082】
複数の磁石30Dのうち、配列方向A2の中央に位置する磁石群130Dについて説明する。
図9(b)には、磁石群130Dにおける断面を図示している。複数の磁石30Dは、配列方向A2の中央に位置する磁石群130Dを含む。磁石群130Dは、配列方向A1に配列された複数の磁石30D
1~30D
14からなる。
図9(b)では、磁石30D
1、30D
3、30D
5、30D
8、30D
9、30D
11、及び30D
13の磁極面31DがN極であり、磁石30D
2、30D
4、30D
6、30D
7、30D
10、30D
12、及び30D
14の磁極面31DがS極である。磁石群130Dにおいて、隣り合う磁石の磁極面の磁極が同極となる配列が一部存在していてもよい。本実施形態では、隣り合う磁石30D
6と磁石30D
7の磁極面31Dが同極となる配列であり、隣り合う磁石30D
8と磁石30D
9の磁極面31Dが同極となる配列である。磁石群130Dにおいて、これら以外の隣り合う2つの磁石の磁極面の磁極は、互いに異なる。なお、磁石群130Dにおいて配列方向A1に磁極面31Dの磁極がS極とN極とで互い違いとなるように配列されていてもよい。
【0083】
磁石群130Dは、第1磁力F1である第3磁石ペアである磁石ペア133Dを含んでいる。また、磁石群130Dは、第1磁力F1よりも弱い第2磁力F2である第4磁石ペアである磁石ペア134Dを含んでいる。磁石ペア133Dは、磁石30D6及び磁石30D9である。磁石30D6及び磁石30D9は、磁極面31Dの磁極が互いに異なるものである。磁石ペア134Dは、磁石30D7及び磁石30D8である。磁石30D7及び磁石30D8は、磁極面31Dの磁極が互いに異なるものである。磁石30D7と磁石30D8とは、配列方向A1に隣り合って配置されている。磁石30D6と磁石30D9とは、磁石ペア134Dを挟んで配置されている。本実施形態では、複数の磁石30Dにおいて、磁石30D7及び磁石30D8以外の磁石は、全て第1磁力である。磁石の磁力は、例えばガウスメータで測定可能である。第2磁力F2は、第1磁力F1の1/2以下であるのが好ましい。更に、第2磁力F2は、第1磁力F1の1/3以下であるのが好ましい。
【0084】
磁石ペア134Dは、
図9(b)に示すように、中央C5を跨いで位置している。そして、本実施形態では、磁石ペア134Dは、複数の磁石30Dにおける配列パターンの中央部分P5(
図9(a))に位置している。
【0085】
第5実施形態によれば、第4実施形態と同様、マスク6においてすり鉢形状に撓んだ部分を効果的に吸引することができ、マスク6の撓みが残留するのを防止することができる。
【0086】
また、マスク6においてすり鉢状に撓むのは、中央部分であるため、磁石ペア133Dは、マスク6の中央部分に近いほどよい。よって、第5実施形態では、磁石ペア133Dによって挟まれる磁石ペア134Dは、複数の磁石30Dにおける配列パターンの中央部分P5に位置している。このように、マスク6の中央部分に対応する箇所に、磁石ペア134Dを配置することで、より効果的にマスク6の撓みが残留するのを防止することができる。
【0087】
[第6実施形態]
第6実施形態の成膜装置について説明する。
図10(a)は、第6実施形態に係るマグネットユニットの平面図である。
図10(b)は、
図10(a)のXB-XB線に沿うマグネットユニットの断面図である。第6実施形態の成膜装置においては、第1実施形態とマグネットユニットの構成が異なり、それ以外の構成は第1実施形態と同様であり、同様の構成については説明を省略する。以下、第6実施形態のマグネットユニット24Eについて具体的に説明する。
【0088】
ヨーク29の主面291には、複数の磁石30Eが設けられている。ヨーク29の主面291は、矩形形状であり、
図1に示すマスク箔6Aとほぼ同じ大きさである。複数の磁石30Eは、主面291に沿う方向であって、回動中心となる仮想的な軸線L1に平行な配列方向A1と、配列方向A1に直交する配列方向A2とにマトリックス状に配列されている。
【0089】
各磁石30Eは、永久磁石であり、磁極がS極又はN極となる一対の磁極面31E及び32Eを有する。即ち、一対の磁極面31E及び32Eのうち、一方の磁極面の磁極がS極であれば、他方の磁極面の磁極はN極である。本実施形態では、各磁石30Eは、平面視矩形状であり、互いに同じ大きさのものである。各磁石30Eの磁極面32Eがヨーク29の主面291に取り付けられ、反対側の磁極面31Eが外側に向いて配置されている。本実施形態では、複数の磁石30Eは、所定方向である配列方向A1と配列方向A2に磁極面31Eの磁極がN極とS極とに互い違いとなるように配列されている。即ち、複数の磁石30Eは、磁極面31Eの磁極がN極とS極とで千鳥状となるように配列されている。磁極面31Eの磁極がS極となる磁石30Eと、磁極面31Eの磁極がN極となる磁石30Eとが配列方向A1及びA2に交互に配置されているので、配列方向A1又は配列方向A2に隣り合う2つの磁石30Eで磁気回路が形成される。
【0090】
図10(a)及び
図10(b)には、磁極面31EがN極となる磁石を網掛けで図示し、磁極面31EがS極となる磁石を斜線のハッチングで図示している。
図10(a)において二点鎖線で囲んだ、複数の磁石30Eにおける配列パターンの中央部分P6が、
図1に示すガラス基板5及びマスク6においてすり鉢形状に撓んだ部分のうち底部に対応する部分である。
【0091】
複数の磁石30Eのうち、配列方向A1の中央に位置する磁石群130Eについて説明する。
図10(b)には、磁石群130Eにおける断面を図示している。複数の磁石30Eは、配列方向A1の中央に位置する磁石群130Eを含む。磁石群130Eは、第4実施形態で説明した磁石群130Cの配列と同様であり、磁石ペア133C、磁石ペア134C、及び磁石ペア135Cを含む。
【0092】
したがって、第6実施形態によれば、第4実施形態と同様、マスク6においてすり鉢形状に撓んだ部分を効果的に吸引することができ、マスク6の撓みが残留するのを防止することができる。
【0093】
[第7実施形態]
次に、上述の実施形態の成膜装置うち、いずれかの成膜装置を含む製造システムについて説明する。
図11は、第7実施形態に係る製造システムの模式的な構成図で、有機ELパネルを製造する製造システム300を例示している。
【0094】
製造システム300は、複数台の成膜装置100、搬送室1101、搬送室1102、搬送室1103、基板供給室1105、マスクストック室1106、受渡室1107、ガラス供給室1108、貼合室1109、取出室1110等を備えている。成膜装置100は、有機ELパネルの発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電極層等の異なる機能層の成膜に用いられ得るため、成膜装置ごとに成膜材料やマスクなどが相違する場合がある。各成膜装置100は、第1~第6実施形態で説明したいずれかのマグネットユニットを備え、第1~第6実施形態のいずれかの成膜方法を実施できる。各成膜装置100は、
図1に示すガラス基板5をマスク6にセットした後、ガラス基板5にマスク6越しに成膜パターンを形成する成膜方法を実施できる。
【0095】
基板供給室1105には、外部から基板が供給される。搬送室1101、搬送室1102、搬送室1103には、搬送機構であるロボット1120が配置されている。ロボット1120によって各室間の基板の搬送が行われる。本実施形態の製造システム300が複数台備える成膜装置100のうち、少なくとも一台は有機材料の蒸着源を備えている。製造システム300に含まれる複数の成膜装置100は、お互いが同一材料を成膜する装置であってもよいし、異なる材料を成膜する装置であってもよい。例えば、各成膜装置において、互いに異なる発光色の有機材料を蒸着してもよい。製造システム300では、基板供給室1105から供給された基板に有機材料を蒸着したり、あるいは金属材料等の無機材料の膜を形成し、有機ELパネルを製造する。
【0096】
マスクストック室1106には、各成膜装置100にて用いられ、膜が堆積したマスクが、ロボット1120によって搬送される。マスクストック室1106に搬送されたマスクを回収することで、マスクを洗浄することができる。また、マスクストック室1106に洗浄済みのマスクを収納しておき、ロボット1120によって成膜装置100にセットすることもできる。
【0097】
ガラス供給室1108には、外部から封止用のガラス材が供給される。貼合室1109において、成膜された基板に封止用のガラス材を貼り合わせることで、有機ELパネルが製造される。製造された有機ELパネルは、取出室1110から取り出される。
【0098】
このように、上述した成膜装置100は、有機EL素子を製造する製造システム300において好適に実施され得るが、それ以外のデバイスを製造するための製造システムにおいて実施してもかまわない。電子デバイスなどを製造する際に、マスクを基板に吸着させて、生産性を高めることができる。
【0099】
[他の実施形態]
尚、本発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。
【0100】
例えば、上述の第1~第7実施形態では、基板の一例としてガラス基板5である場合について説明したが、蒸着対象の基板の材質は、ガラスに限定されるものではなく、磁力よって吸引されない材質であれば、どのような材質であってもよい。
【0101】
また、上述の第1~第3実施形態において、マグネットユニットにおける複数の磁石に、第2磁石ペアが複数含まれていてもよい。同様に、上述の第4~第6実施形態において、マグネットユニットにおける複数の磁石に、第3磁石ペア及び第4磁石ペアが複数含まれていてもよい。
【0102】
また、上述の第1~第3実施形態で説明したヨーク29において、第2磁石ペアの2つの磁石間の位置に、貫通穴が設けられていてもよい。
【0103】
また、上述の第1~第7実施形態では、第1部材がヨーク29であるため、磁石による吸引力を基板側に効果的に生じさせることができるため好ましいが、第1部材がヨーク29である場合に限定するものではない。第1部材がヨーク29以外の部材の場合、磁石は第1部材に接着剤などで固定すればよい。
【符号の説明】
【0104】
9…マスク保持部、29…ヨーク(第1部材)、30…磁石、31…磁極面、100…成膜装置、130…磁石群、131…磁石ペア(第1磁石ペア)、132…磁石ペア(第2磁石ペア)、291…主面