(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】炎症性腸疾患を治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230104BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230104BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20230104BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZMD
A61P1/04
C07K16/28 ZNA
(21)【出願番号】P 2018564829
(86)(22)【出願日】2017-06-12
(86)【国際出願番号】 US2017037072
(87)【国際公開番号】W WO2017218434
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2020-06-12
(32)【優先日】2016-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100181168
【氏名又は名称】丸山 智裕
(72)【発明者】
【氏名】ロサリオ,マリア
(72)【発明者】
【氏名】バロカス,モリス
(72)【発明者】
【氏名】ガストンゲイ,マーク アール.
【審査官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/086147(WO,A1)
【文献】NEW ENGLAND JOURNAL OF MEDICINE,vol. 369 no. 8,2013年,699-710
【文献】Aliment Pharmacol Ther,42,2015年,188-202
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61P 1/04
C07K 16/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベドリズマブを含む、
潰瘍性大腸炎を有するベドリズマブ非レスポンダーを治療するための組成物であって、
初回用量300mgのベドリズマブ及び前記初回用量から2週間後の2回目の用量300mgのベドリズマブの投与後、ベドリズマブが、前記ベドリズマブ非レスポンダーに対し、前記初回用量から6週間後に用量600mgで静脈内投与され、
前記ベドリズマブ非レスポンダーは、
前記初回用量から5週間後に50μg/ml未満のベドリズマブの血清濃度閾値を有する、
前記組成物。
【請求項2】
a)ベドリズマブのその次の用量と、その後の用量が300mgであるか、または
b)前記600mgの用量を2回以上投与し、投薬間の間隔が2~8週間である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記用量が4週間間隔で投与される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
i) 臨床反応および/もしくは寛解が起こるまで、600mgの用量が投与されるか、
ii) 粘膜治癒が起こるまで、600mgの用量が投与されるか、または
iii) ベドリズマブのトラフ血清濃度が12μg/mlより大きくなるか、もしくはベドリズマブの血清濃度が90μg/mlより大きくなるまで、600mgの用量が投与される、
請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
ベドリズマブのトラフ血清濃度が12μg/mlより大きくなるか、またはベドリズマブの血清濃度が90μg/mlより大きくなった場合、さらに前記用量が300mgまで減らされる、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
ベドリズマブのトラフ血清濃度が12μg/mlより大きくなるか、またはベドリズマブの血清濃度が90μg/mlより大きくなった場合、さらに前記用量が8週間隔まで減らされる、請求項4または5に記載の組成物。
【請求項7】
i) 前記治療によって粘膜治癒が生じ、
ii) 前記治療によって臨床反応および/もしくは臨床的寛解が生じ、
iii) 前記治療によってコルチコステロイド使用が中断され、かつ/または
iv) 前記患者が、免疫調節剤、コルチコステロイド類もしくはTNFαアンタゴニストのうち少なくとも1つに対して不十分な反応を有するか、これらに対する反応を失っているか、もしくはこれらに対して不耐性である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
ベドリズマブを含む、
潰瘍性大腸炎を有するベドリズマブ非レスポンダーを治療するための組成物であって、
ベドリズマブは、前記ベドリズマブ非レスポンダーに対し、用量600mgで投与され、
前記ベドリズマブ非レスポンダーは、
1回目の用量300mgのベドリズマブ及び前記1回目の用量から2週間後の2回目の用量300mgのベドリズマブの投与を含むベドリズマブの導入期投薬計画に従って投与され、ベドリズマブの導入期投薬計画の
1回目の用量から5週間後に50μg/ml未満のベドリズマブ血清濃度閾値を有する患者で
ある、
前記組成物。
【請求項9】
前記非レスポンダーは、13μg/ml未満のトラフ血清濃度を有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記患者が、粘膜治癒している、請求項8または9に記載の組成物。
【請求項11】
ベドリズマブを含む、
潰瘍性大腸炎を有するベドリズマブ非レスポンダーを治療するための組成物であって、
ベドリズマブは、前記ベドリズマブ非レスポンダーに対し、用量600mgで投与され、
前記ベドリズマブ非レスポンダーは、
a)
潰瘍性大腸炎を有する患者に対し、2回分の
300mgの用量のベドリズマブを投与する工程であって、1回目の用量の約2週間後に2回目の用量を投与する工程と、
b)
1回目の用量から5週間後に決定され
た50μg/mL未満のベドリズマブ血清濃度閾値を有する患者をベドリズマブ非レスポンダーとして選択する工程
によって選択される、前記組成物。
【請求項12】
ベドリズマブの前記1回目の用量投薬の6週間後に600mgが投与される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
ベドリズマブを含む、
潰瘍性大腸炎を有するベドリズマブ非レスポンダーを治療するための組成物であって、
ベドリズマブは、前記ベドリズマブ非レスポンダーに対し、1回以上の用量600mgで投与され、
前記ベドリズマブ非レスポンダーは、
a)
潰瘍性大腸炎を有する患者に対し、2回分の
300mgの用量のベドリズマブを投与する工程であって、1回目の用量の約2週間後に2回目の用量を投与する工程と
、
b)
1回目の用量から5週間後に前記患者のベドリズマブの血清濃度を測定する工程と、
c)前記患者の血清濃度閾値が50μg/mL未満である場合、前記患者をベドリズマブ非レスポンダーとして選択する工程
によって選択される、前記組成物。
【請求項14】
前記患者の血清濃度が、1~13μg/mlである、請求項8または13に記載の組成物。
【請求項15】
前記ベドリズマブ血清濃度が、サンドイッチELISAアッセイによって測定される、請求項8、11および13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
i) ベドリズマブ非レスポンダーの選択が、抗ベドリズマブ抗体を測定することをさらに含み、かつ/または
ii) ベドリズマブ非レスポンダーの選択が、アルブミン濃度を測定することをさらに含む、請求項
13に記載の組成物。
【請求項17】
ベドリズマブ非レスポンダーの選択が、体重を測定することをさらに含む、請求項
16に記載の組成物。
【請求項18】
前記アルブミン濃度が3.2g/dL未満である、請求項
16に記載の組成物。
【請求項19】
ベドリズマブを含む、
潰瘍性大腸炎を有するベドリズマブ非レスポンダーを治療するための組成物であって、
ベドリズマブは、前記ベドリズマブ非レスポンダーに対し、用量600mgで投与され、
前記ベドリズマブ非レスポンダーは、
a)
潰瘍性大腸炎を有し、その前の5週間に少なくとも2回の用量300mgのベドリズマブを投与された患者から得られた血清サンプルにおけるベドリズマブの濃度を測定する工程
であって、前記測定が1回目の用量から5週間後になされるものである工程と、
b)前記ベドリズマブの血清濃度閾値が50μg/mL未満である場合、前記患者をベドリズマブ非レスポンダーとして選択する工程
によって選択される、前記組成物。
【請求項20】
ベドリズマブ非レスポンダーとしての患者の選択が、前記測定から1週間後に部分Mayoスコアを得ることをさらに含み、部分Mayoスコアが、臨床反応を示さない、請求項
19に記載の組成物。
【請求項21】
i) 600mgの用量投与が、ベドリズマブの前記1回目の用量投与の6週間後であるか、または
ii) 前記血清濃度閾値が、30μg/mL以上、50μg/mL未満である、
請求項
19または
20に記載の組成物。
【請求項22】
ベドリズマブが、600mgの用量投与から4週間後に、その後の用量300mgでさらに投与される、請求項
21に記載の組成物。
【請求項23】
ベドリズマブが、4週間間隔で、1回以上のさらなる用量600mgでさらに投与される、請求項
19~
21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
i) ベドリズマブが、4週間間隔で、1回以上のさらなる用量300mgでさらに投与され、かつ/または
ii) その前の用量投与から3週間後に、ベドリズマブの血清濃度がさらに測定される、
請求項
22または
23に記載の組成物。
【請求項25】
ベドリズマブが、前記濃度が90μg/mLより高いときは減らした用量で投与され、前記600mgの用量が300mgに減らされるか、または前記300mgの用量が8週間間隔で投与される、請求項
24に記載の組成物。
【請求項26】
i) ベドリズマブ非レスポンダーとしての患者の選択が、抗ベドリズマブ抗体を測定することをさらに含むか、または
ii) ベドリズマブ非レスポンダーとしての患者の選択が、アルブミン濃度を測定することをさらに含む、
請求項
19~
25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
ベドリズマブ非レスポンダーとしての患者の選択が、体重を測定することをさらに含む、請求項
26に記載の組成物。
【請求項28】
3.2g/dL未満のアルブミン濃度であれば、さらに、前記患者は、より高い用量でベドリズマブを用いた連続治療のための患者であると特定される、請求項
27に記載の組成物。
【請求項29】
i) 前記治療によって粘膜治癒が生じ、
ii) 前記治療によって臨床反応および/もしくは臨床的寛解が生じ、
iii) 前記治療によってコルチコステロイド使用が中断され、かつ/または
iv) 前記患者が、免疫調節剤、コルチコステロイド類もしくはTNFαアンタゴニストのうち少なくとも1つに対して不十分な反応を有するか、これらに対する反応を失っているか、もしくはこれらに対して不耐性である、
請求項
19~
28のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年6月12日に出願された米国仮出願第62/349,026号の利益を主張する。上述の出願の内容全体が、本明細書に参考として組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
炎症性腸疾患(IBD)、例えば、潰瘍性大腸炎およびクローン病は、例えば、消化管の炎症を伴う、身体を衰弱させる進行性疾患であり得る。IBD治療には、抗炎症薬(例えば、コルチコステロイド類およびスルファサラジン)、免疫抑制薬(例えば、6-メルカプトプリン、シクロスポリンおよびアザチオプリン)および手術(例えば、結腸切除術)が含まれる。Podolsky、New Engl.J.Med.、325:928-937(1991)およびPodolsky、New Engl.J.Med.、325:1008-1016(1991)。疾患が進行するにつれて、治療は、副作用が増していくリスクと、クオリティオブライフの喪失に患者をさらす治療計画へと進んでいく。
【0003】
インテグリン受容体は、リンパ球の再循環および炎症部位への動員の両方を制御するのに重要である(Carlos,T.M.およびHarlan,J.M.、Blood、84:2068-2101(1994))。ヒトα4β7インテグリンは、いくつかのリガンドを有しており、そのうちの1つは、粘膜の血管アドレシンMAdCAM-1であり(Berlin,C et.al.、Cell 74:185-195(1993);Erle,D.J.et.al.、J.Immunol.153:517-528(1994))、腸間膜リンパ節およびパイエル板における高内皮細静脈で発現する(Streeter, P.R.et.al.、Nature 331:41-46(1998))。このように、α4β7インテグリンは、腸粘膜のリンパ系組織へのリンパ球の移動に介在するホーミング受容体として作用する(Schweighoffer,T.et.al.、J.Immunol.151:717-729(1993))。
【0004】
ヒトα4β7インテグリンに対する抗体、例えば、マウスモノクローナル抗体Act-1(mAb Act-1)は、粘膜リンパ節内の高内皮細静脈に存在する粘膜アドレシン細胞接着性分子-1(MAdCAM-1)に対するα4β7インテグリンの結合を妨害する。Act-1は、元々、Lazarovits,A.I.et.al.、J.Immunol.133:1857-1862(1984)によって、ヒト破傷風トキソイドに特異的なTリンパ球で免疫付与されたマウスから単離され、マウスIgGl/κ抗体であることが報告された。Schweighoffer,T.et.al.、J.Immunol.151:711-729(1993)による抗体のその後の分析は、α4β7インテグリンを選択的に発現するヒト記憶CD4+Tリンパ球のサブセットに結合し得ることを示した。Act-1から誘導される構造的特徴を有する抗α4β7インテグリンモノクローナル抗体(mAb)であるEntyvio(商標)ベドリズマブは、潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病(CD)の治療に適応がある。これらの障害を治療する際のベドリズマブの活性を報告する研究(Feagen et.al.、NEJM 369:699-710(2013)およびSandborn et.al.、NEJM 369:711-721(2013))は、その障害および従来の治療の性質に応じて、さまざまなレベルの成功を示した。これらは長い研究であり、患者が利用可能な治療の選択肢の数は増えつつあるため、これらの治療における初期の改変されたベドリズマブ治療から便益を受け得る患者を特定する必要がある。適切で正確な治療の決定によって、疾患を効率よく管理する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)を含む治療に当初は十分に反応しない患者の特定および治療に関する。一連の治療における初期に(例えば、1回分または2回分のベドリズマブ投薬の後)、患者または患者の生体サンプルから測定した因子は、ある患者が個別の治療アプローチを受けるべきかどうかの指標となる。
【0006】
一態様では、薬物動態因子または薬力学因子は、患者が抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)を用いた改変治療を受けるべきかを示すことができる。治療用mAbトラフ濃度が大きいほど、有効性が大きくなることと関係があるため、mAbクリアランスの決定因子を理解すれば、投薬計画を最適化し得る。出願人らは、抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)を用いた従来の治療に十分に反応しない炎症性腸疾患患者の部分集合を特定し、抗α4β7抗体の臨床に関連する決定因子(例えば、抗体濃度、体重およびアルブミンレベル)が認識された後に投与すべき改変された投薬計画を特定した。
【0007】
いくつかの実施形態では、薬物動態因子は、抗α4β7抗体の血清濃度である。いくつかの実施形態では、薬物動態因子は、平均血清トラフ濃度である。他の実施形態では、薬物動態因子は、治療用抗体のクリアランスである。用量が高いほど、曝露レベルが高くなると予想され、高いベドリズマブクリアランスを有する被験体において、5週間の血清ベドリズマブ濃度閾値(50μg/mL未満)に基づき、効能が得られ得る。これに加え、後のCトラフレベルが曝露限界である90μg/mLを超えると、その後の用量は、量を減らしてもよい。
【0008】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、アルブミン濃度、例えば、血清アルブミン濃度を測定することを含む。3.2g/dL未満のアルブミン濃度であれば、さらに、その患者は、抗α4β7抗体(例えば、ベドリズマブ)の非レスポンダーであると特定される。アルブミン濃度は、3.0g/dL未満、2.0g/dL未満または1.7g/dL未満、0.0~3.1g/dLの範囲、1.0~3.0g/dLの範囲、0.5~3.2g/dLの範囲、または2.0~3.1g/dLの範囲であってもよい。
【0009】
一態様では、本発明は、個別の治療のための候補としての患者を特定するための方法であって、当該方法が、炎症性腸疾患(IBD)を患っており、その前の4ヶ月間に少なくとも2回分の用量のベドリズマブを投与された患者から得られた生体サンプルにおけるベドリズマブのクリアランスを測定する工程と、前記患者におけるクリアランスが0.14L/日より大きい場合、ベドリズマブを用いた連続治療のための患者であると特定する工程とを含む、方法に関する。クリアランスは、0.20L/日より大きくてもよく、または0.14~0.4L/日であってもよい。
【0010】
別の態様では、本発明は、個別の治療のための候補としての患者を特定するための方法であって、当該方法が、炎症性腸疾患(IBD)を患っており、その前の2ヶ月間に少なくとも1回分の用量のベドリズマブを投与された患者から得られた生体サンプルにおけるベドリズマブのクリアランスを測定する工程と、前記患者におけるクリアランスが0.14L/日より大きい場合、ベドリズマブを用いた連続治療のための患者であると特定する工程とを含む、方法に関する。クリアランスは、0.20L/日より大きくてもよく、または0.14~0.24L/日であってもよい。いくつかの実施形態では、患者は、その前の月に少なくとも1回分の用量のベドリズマブを投与された。いくつかの実施形態では、患者は、その前の月に少なくとも2回分の用量のベドリズマブを投与された。
【0011】
本発明は、さらに、抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)に対する個別の治療のための候補である患者を特定するために本明細書に記載する因子を測定する際に使用するためのアッセイに関する。いくつかの実施形態では、アッセイは、血中抗α4β7抗体のための薬物動態アッセイである。一実施形態では、アッセイは、例えば、患者を苦しめるIBDの反応または寛解に反応するか、または維持する能力を予想するために、抗α4β7抗体の低い陽性レベルまたは継続した陽性レベル(例えば、患者からの血清サンプルにおいて、13μg/ml未満、12μg/ml未満、11μg/ml未満、10μg/ml未満、9μg/ml未満、8μg/ml未満、7μg/ml未満、6μg/ml未満、5μg/ml未満、4μg/ml未満、3μg/ml未満、2μg/ml未満または1μg/ml)を測定してもよい。一実施形態では、抗α4β7抗体の血清濃度は、サンドイッチELISAアッセイによって測定されてもよい。一実施形態では、抗α4β7抗体の血清濃度は、抗体架橋アッセイによって測定されてもよい。
【0012】
一態様では、炎症性腸疾患(IBD)を有するヒト患者を治療するための方法であって、当該方法は、IBDを有し、2回分の用量のベドリズマブから3週間後または4週間後の時間点でのベドリズマブの血清濃度が13μg/ml未満であるヒト患者を選択し、ここで、1回目の用量のベドリズマブは、2回目の用量のベドリズマブの2週間前に被験体に投与されたものであることと、IBDを有するヒト患者にベドリズマブを投与することによって、IBDを有するヒト患者を治療することとを含む。一実施形態では、ベドリズマブの1回目と2回目の用量は、300mgを含む。一実施形態では、ベドリズマブの3回目の用量は、600mgを含み、その後の全ての用量は、300mgを含む。一実施形態では、ベドリズマブの3回目およびその後の用量は、600mgを含む。一実施形態では、患者は、1回目および2回目の用量を静脈内で摂取した。いくつかの実施形態では、ベドリズマブの3回目およびその後の用量は、4週間間隔である。いくつかの実施形態では、患者は、TNFブロッカーに対して不十分な反応を有していたか、これに対する反応を失っていたか、またはこれに対して不耐性であった。
【0013】
本明細書に提供される一実施形態は、ベドリズマブを用いた治療に対し、炎症性腸疾患(IBD)を有するベドリズマブ非レスポンダーを特定するためのin vitroでの方法であり、当該方法は、患者からの血液サンプルと抗ベドリズマブ抗体とを接触させることによって、患者からの血液サンプルにおけるベドリズマブの濃度を測定することを含み、このサンプルが、2回目の用量のベドリズマブの投与からほぼ3週間後または4週間後に得られたものであり、1回目の用量のベドリズマブは、2回目の用量のベドリズマブの2週間前に被験体に投与されたものであり、前記血液サンプル中のベドリズマブ濃度が13μg/ml未満であることは、その患者が、ベドリズマブを用いた治療に非反応性であることを示している。一実施形態では、本方法は、さらに、患者にベドリズマブを投与することを含む。一実施形態では、ベドリズマブの1回目および2回目の用量は、300mgを含む。一実施形態では、ベドリズマブの3回目の用量は、600mgを含む。一実施形態では、患者は、1回目および2回目の用量を静脈内で摂取した。いくつかの実施形態では、患者は、TNFブロッカーに対して不十分な反応を有していたか、これに対する反応を失っていたか、またはこれに対して不耐性であった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、試験設計の模式図を示す。1日目から2週間まで(導入期)に、全ての適格な被験体に、ベドリズマブIV300mgを静脈内摂取させる。
(a)6週目に反応する被験体(Mayoスコアによる)は、無作為化せず、医師の判断で適切な治療を受ける。最後の用量の試験薬物の後、被験体には、18週間の安全性をみるフォローアップ通院と、6ヶ月の長期間にわたるフォローアップ(LTFU)の電話を行う。
(b)6週目で非レスポンダーであり、通常から低いベドリズマブクリアランス(0.14L/日以下)を有する被験体は、無作為化せず、医師の判断で適切な治療を受ける。最後の用量の試験薬物の後、被験体には、18週間の安全性をみるフォローアップ通院と、6ヶ月のLTFUの電話を行う。
(c)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、抗α4β7抗体(例えば、ベドリズマブ)を用いて、炎症性腸疾患(IBD)を有する患者を治療するための方法、前記抗体(例えば、ベドリズマブ)を用いた改変治療のための患者を特定するための方法、患者におけるIBDの寛解を維持するための方法に関する。
【0016】
抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)を用いた治療を受ける全ての炎症性腸疾患患者がこの治療に反応性なわけではなく、一部は、治療に完全に反応性ではない。これらの疾患の罹患率に起因して、抗α4β7抗体治療に十分に反応しない患者を迅速に特定し、有効性転帰を向上させるために投薬計画を調節する必要がある。本出願は、抗α4β7抗体の導入期の曝露を高めることが、炎症性腸疾患患者(例えば、潰瘍性大腸炎患者)における改良された有効性転帰に関係があるという驚くべき発見に関するものである。
【0017】
α4β7インテグリンに特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体であるベドリズマブは、中程度から重度の活動性潰瘍性大腸炎(UC)およびクローン病(CD)に適応である。ベドリズマブは、ナタリズマブおよび腫瘍壊死因子-α(TNF-α)アンタゴニストを含め、炎症性腸疾患(IBD)の治療のための他の現在上市されている生物学的薬剤とは異なる新規な腸選択的な作用機序を有する。α4β7を発現する細胞表面に結合することによって、ベドリズマブは、記憶腸ホーミングTリンパ球の一部と、内皮細胞で発現する粘膜アドレシン細胞接着性分子-1(MAdCAM-1)との相互作用をブロックする。その結果、炎症を受けた腸組織へのこれらの細胞の移動が阻害される。
【0018】
UCおよびCDの治療に使用される他の治療用モノクローナル抗体の薬物動態は、既に報告されている。抗薬物抗体の存在、性別、身体の大きさ、免疫抑制剤の併用、疾患の種類、アルブミン濃度、全身の炎症の程度を含め、いくつかの因子が、これらの抗体のクリアランスの促進と関係がある。さらに、有効性と曝露量との一貫した関係は、薬物の用量とは対照的に、これらの薬剤の多くで観察され、高いトラフ薬物濃度は、高い有効性と関係がある。薬物クリアランスの違いは、この観察結果の重要な説明となり得る。したがって、治療用抗体のクリアランスの決定因子をよりよく理解することが、薬物投薬計画の最適化をもたらし得る。
【0019】
以前の試験では、健康な志願者への0.2~10mg/kgの用量範囲での単回用量(静脈内[IV]点滴)の薬物動態、薬力学(α4β7受容体の飽和)、安全性、ベドリズマブの忍容性を観察した(未公開データ)。ピーク濃度に到達した後、ベドリズマブの血清濃度は、濃度が約1~10ng/mLに達するまで、一般的に両対数の様式で減少した。その後、濃度は、非線形の様式で低下するようであった。ベドリズマブ複数回用量の薬物動態および薬力学は、CD患者への0.5~2mg/kgのIV点滴と、UC患者への2、6、10mg/kgの点滴の後に観察された。
【0020】
ベドリズマブの薬物動態は、一般的に、UC患者への2~10mg/kgの用量範囲でのIV点滴の後、線形であった。複数回の用量投与の後、1回目の用量のベドリズマブ投与の後、迅速にほぼ完全なα4β7受容体の飽和が達成された。
【0021】
ベドリズマブの導入療法および維持両方の有効性および安全性は、UC患者において、GEMINI 1治験(臨床治験政府番号NCT00783718)で示され、CD患者において、GEMINI 2(臨床治験政府番号NCT00783692)およびGEMINI 3(臨床治験政府番号NCT01224171)の治験で示された。導入治療および維持治療のためのUC患者およびCD患者におけるベドリズマブの曝露-反応(有効性)の関係は、他の場所で提示している。例えば、GEMINI 1治験において、うまく反応しなかった被験体の中で、89%が、ベドリズマブCトラフレベルが40μg/mL未満であった。ベドリズマブクリアランスが0.14L/日未満の個人は、有効性転帰の減少と関係があった。このクリアランスのカットポイントと、承認されたベドリズマブのIVでの投薬計画により、以下のベドリズマブ曝露目標が、この方法で使用するための例である。6週目のCトラフ>37.1μg/mL、14週目のCトラフ>18.4μg/mL、定常状態でのCトラフ>12.7μg/mL。改良された転帰は、より高い用量(例えば導入用量)によってみられる場合があり、より高い血清濃度を生じる
【0022】
(定義)
本明細書で使用される場合、抗体の「トラフ」血清濃度は、次の投薬の直前の濃度を指す。
【0023】
「臨床的寛解」または「寛解」は、潰瘍性大腸炎被験体に言及しつつ本明細書で使用される場合、完全Mayoスコアが2点以下であり、個々のサブスコアが1点より大きくないことを指す。クローン病の「臨床的寛解」は、クローン病活動指数(CDAI)スコアが150点以下であることを指す。「Harvey-Bradshaw Index」(HBI)は、データ収集の目的のためのCDAIのさらに単純な態様である。HBIは、全身の健康状態、腹痛、1日あたりの液状便の数、腹部腫瘤、ヘマトクリット、体重、下痢を制御するための医薬および合併症の存在を含む臨床パラメータのみからなり、必要なのは、日記に相当する1日分の報告のみである。磁気共鳴筋運動記録(MREn)は、寛解を測定するための方法として評価されている。
【0024】
「内視鏡的な寛解」は、本明細書で使用される場合、低い内視鏡スコアを有する状態を指す。潰瘍性大腸炎において内視鏡スコアを評価するための方法の一例は、フレキシブルS状結腸鏡検査である。潰瘍性大腸炎における内視鏡スコアは、Mayoサブスコアであってもよい。クローン病において内視鏡スコアを評価するための方法の一例は、大腸内視鏡検査である。クローン病における内視鏡スコアは、クローン病のための単純な内視鏡スコア(SES-CD)であってもよい。SES-CDは、潰瘍の大きさ、潰瘍のある表面の量、罹患した表面の量、消化管が狭くなっているかどうか、またどの程度狭くなっているかといった指標を含んでいてもよい。
【0025】
「臨床反応」は、潰瘍性大腸炎被験体に言及しつつ本明細書で使用される場合、直腸出血サブスコアが1点以上(≧1)、または完全直腸出血スコアが1点以下(≦1)の減少を伴いつつ、完全Mayoスコアが3点以上、ベースラインから30%減少すること(または、完全Mayoスコアを通院で行うことができなかった場合には、部分Mayoスコアが2点以上、ベースラインから25%以上減少すること)を指す。「臨床反応」は、クローン病被験体を参照しつつ本明細書で使用される場合、CDAIスコアがベースライン(0週目)から70点以上減少していることを指す。「臨床反応」および「反応」との用語は、例えば、任意の形容詞を含まずに単独で、本明細書で相互に置き換え可能に使用される。
【0026】
「完全Mayoスコア」は、4個の疾患活動性変数(排便の頻度、直腸の出血、S状結腸鏡検査での治験、医師の全体的な評価)を組み合わせた指数を指し、それぞれ、0から3のスケールでランク分けされる(スコアが大きいほど、疾患の活動性が大きいことを示す)。
【0027】
「部分Mayoスコア」は、3個の疾患活動性変数(排便の頻度、直腸の出血、医師の全体的な評価)を組み合わせた指数を指し、それぞれ、0から3のスケールでランク分けされる(スコアが大きいほど、疾患の活動性が大きいことを示す)。部分Mayoスコアは、完全Mayoスコアと同様に計算されるが、S状結腸鏡検査のサブスコアを除く。
【0028】
「内視鏡的な反応」は、本明細書で使用される場合、ベースライン(例えば、スクリーニングで、または最初の用量の直前)からの内視鏡スコアの減少率を指す。クローン病において、内視鏡的な反応は、クローン病のための単純な内視鏡スコア(SES-CD)によって評価することができる。
「ベースライン」は、本明細書で使用される場合、最初の用量の治療の前に測定されるパラメータ値を記述するものである。これは、最初の治療の前の週の間の同じ日、前日(すなわち、1回目の用量の前の時期、1回目の用量の後まで小さな変化が予想される場合には、その用量によって引き起こされる変化を表すためにこのベースライン値と比較することによって、1回目の用量の後に得られた測定値)に得たサンプルの測定値を指していてもよい。
【0029】
「粘膜治癒」は、潰瘍性大腸炎被験体に関して本明細書で使用される場合、Mayoの内視鏡サブスコアが1以下であることを指す。クローン病に言及すると、「瘻孔治癒」によって、瘻孔が閉じるか、または瘻孔がなくなる。さらにクローン病に言及すると、粘膜治癒は、粘膜(例えば、消化管)における創傷の量または重篤度における改善を指す。例えば、粘膜治癒は、消化管における1箇所、または1箇所より多い潰瘍の量、大きさまたは重篤度の減少を指していてもよい。別の例では、粘膜治癒は、壁の厚み、腸壁のコントラストの向上、粘膜浮腫、潰瘍および腸周囲の血管分布からなる群から選択される1つ以上のパラメータの減少を指す。このような粘膜治癒は、SES-CDスコアまたは活動性の磁気共鳴指数(MaRIA)スコアとして表すことができる。クローン病における完全な粘膜治癒は、潰瘍がないことを含む。
【0030】
「MaRIAスコア」は、例えば、結腸および回腸末端の各セグメント(例えば、回腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S字結腸および直腸)について、磁気共鳴筋運動記録によって測定されるような、種々の粘膜治癒パラメータのスコアの合計である。
【0031】
「コルチコステロイド(CS)を用いない寛解」は、本明細書で使用される場合、ベースラインで経口でコルチコステロイドを用いており、コルチコステロイドの使用を中断し、52週目で臨床的寛解状態である患者を指す。
【0032】
「European Quality of Life-5 Dimension(EQ-5D)のビジュアルアナログスケール(VAS)」は、本明細書で使用される場合、患者において一般的な健康に関係するクオリティオブライブ(HRQOL)を測定するために使用される認証された(ahrq.gov/rice/eq5dproj.htm、「U.S. Valuation of the EuroQol EQ-5D(商標) Health States」、2012年8月8日にアクセス、Bastida et.al.、BMC Gastroenterology 10:26-(2010)、Konig et.al.、European Journal of Gastroenterology & Hepatology 14:1205-1215(2002))内容であるアンケートを指し、5分野(運動性、セルフケア、通常の活動、痛み/不快感、不安/抑鬱状態)を含む。患者は、各項目について、患者が現在有している健康問題のレベルを、「なし」、「中程度」または「強い」として選択し、それぞれ、1、2または3にランク分けする。合わせたEQ-5Dスコアは、個々のスコアから計算することができ、全体的なHRQOLを評価することができる。EQ-5D Visual Analog Scale(VAS)スコアは、20cmの見た目、垂直スケールを用いた全体的な健康状態を自分で割り当てたランク分けであり、スコア0は、最も悪く、100は、可能な限り最高の健康状態である。EQ-5DおよびEQ-5D VASは、多くの試験で、GI疾患の患者において、HRQOLを測定するための装置で有効であり、信頼性が高いことが示されている。EQ-5Dスコアの0.3点以上の減少は、患者のHRQOLに臨床的に意味のある改善を表す。EQ-5D VASスコアの7点以上の増加は、患者のHRQOLに臨床的に意味のある改善を表す。
【0033】
「炎症性腸疾患アンケート」((IBDQ)(Irvine Journal of Pediatric Gastroenterology & Nutrition 28:S23-27(1999))を使用し、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎またはクローン病を有する成人患者におけるクオリティオブライブを評価し、HRQOLの4つの分野について32個、腸系(10個の質問)、感情的な機能(12個の質問)、社会的な機能(5個の質問)、全身的な機能(5個の質問)を含んでいる。患者は、最近2週間の症状およびクオリティオブライブを思い出すように質問され、7点のLikertスケールで各項目をランク分けする(スコアが大きいほど、クオリティオブライブが高い)。全IBDQスコアは、各分野からのスコアを合計することによって計算される。全IBDQスコアは、32~224の範囲である。全IBDQスコアが170より大きいことは、寛解状態の患者の健康に関連するクオリティオブライブ(HRQoL)に特徴的である。
【0034】
本明細書で使用される場合、「導入療法」は、治療の初期段階であり、患者は、治療用薬剤を比較的強度の高い投薬計画で投与される。治療用薬剤(例えば抗体)は、特定の目的(例えば、薬剤に対する免疫耐性を誘発する、または臨床反応を誘発し、疾患の症状を軽減するため)に適した有効量の薬剤を迅速に与える様式で投与される。(例えば、本明細書に参考として組み込まれるWO2012/151247およびWO2012/151248を参照)。
【0035】
本明細書で使用される場合、「維持療法」は、導入療法の後であり、安定なレベルの治療用薬剤(例えば抗体)を用い、導入療法によって達成された反応を維持する様式で投与される。維持投薬計画は、疾患(例えばIBD)の症状の戻りまたは再発を防ぐことができる(本明細書に参考として組み込まれるWO2012/151247およびWO2012/151248を参照)。維持投薬計画は、患者に簡便さを与えることができる。例えば、単純な投薬計画であってもよく、または治療のための移動がそれほど頻繁には必要でなくてもよい。
【0036】
細胞表面分子である「α4β7インテグリン」または「α4β7」は、α4鎖(CD49D、ITGA4)とβ7鎖(ITGB7)のヘテロダイマーである。それぞれの鎖が、互いのインテグリン鎖とヘテロダイマーを形成し、α4β1またはαEβ7を形成することができる。ヒトα4およびβ7遺伝子(GenBank(National Center for Biotechnology Information、ベセスダ、MD)、それぞれ、参照配列アクセッション番号NM_000885およびNM_000889)は、Bリンパ球およびTリンパ球、特に記憶CD4+リンパ球によって発現する。多くのインテグリンの中で典型的なものであるα4β7は、休止状態または活動性状態のいずれかで存在していてもよい。α4β7のリガンドとしては、血管細胞接着性分子(VCAM)、フィブロネクチンおよび粘膜アドレシン(MAdCAM(例えば、MAdCAM-1))が挙げられる。α4β7インテグリンは、粘膜アドレシン細胞接着性分子-1(MAdCAM-1)との接着性相互作用による胃腸管粘膜および腸に関連するリンパ系組織(GALT)へのリンパ球トラフィッキングに介在し、腸間膜リンパ節および胃腸管粘膜の内皮で発現する。
【0037】
本明細書の「抗体」との用語は、最も広い意味で用いられ、具体的には、全長モノクローナル抗体、免疫グロブリン、ポリクローナル抗体、例えばそれぞれが異なる抗原またはエピトープに対する少なくとも2つの全長抗体から作られる多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、dAb、scFv、Fab、F(ab)’2、Fab’を含む個々の抗原結合フラグメントを包含し、ヒト、ヒト化抗体および非ヒト種由来の抗体、モノボディおよびダイアボディなどの組換え抗原結合形態を含む。
【0038】
「モノクローナル抗体」との用語は、本明細書で使用される場合、実質的に均一な抗体の集合から得られる抗体、すなわち、集合に含まれる個々の抗体が、モノクローナル抗体の産生中に生じ得る可能なバリアントを除き(このようなバリアントは、一般的に、少量存在する)、同一であるか、および/または同じエピトープに結合することを指す。典型的には異なる決定因子(エピトープ)に対して指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、それぞれのモノクローナル抗体は、抗原上の1個の決定因子に対して指向する。「モノクローナル」との修飾語句は、抗体の実質的に均一な集合から得られたという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法によって抗体の集合を必要とする場合には、構築されるべきではない。例えば、本発明にしたがって使用されるモノクローナル抗体は、最初にKohler et.al.、Nature、256:495(1975)によって記載されるハイブリドーマ方法によって作られてもよく、または組換えDNA方法によって作られてもよい(例えば、米国特許第4,816,567号を参照)。また、「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson et.al.、Nature、352:624-628(1991)およびMarks et.al.、J.Mol Biol、222:581-597(1991)に記載される技術を用い、ファージ抗体ライブラリから単離されてもよい。
【0039】
ある抗体の「抗原結合フラグメント」は、抗α4β7抗体の重鎖および/または軽鎖の可変領域を少なくとも含む。例えば、ベドリズマブの抗原結合フラグメントは、配列番号2のヒト化軽鎖配列のアミノ酸残基20~131を含む。このような抗原結合フラグメントの例としては、当該技術分野で知られているヒト化抗体のFabフラグメント、Fab’フラグメント、scFvおよびF(ab’)2フラグメントが挙げられる。本発明のヒト化抗体の抗原結合フラグメントは、酵素開裂または組み換え技術によって生成することができる。例えば、パパインまたはペプシンによる開裂を使用し、FabまたはF(ab’)2フラグメントをそれぞれ作製することができる。また、抗体は、自然な停止部位の上流に1つ以上の停止コドンが導入された抗体遺伝子を用い、種々のトランケーションされた形態で産生されてもよい。例えば、F(ab’)2フラグメントの重鎖をコードする組換え構築物は、重鎖のCH1ドメインとヒンジ領域をコードするDNA配列を含むように設計することができる。一態様では、抗原結合フラグメントは、その1つ以上のリガンド(例えば、粘膜アドレシンMAdCAM(例えばMAdCAM-1)、フィブロネクチン)に対するα4β7インテグリンの結合を阻害する。
【0040】
「Fc受容体」または「FcR」との用語は、抗体のFc領域に結合する受容体を記述するために使用される。一態様では、FcRは、ネイティブ配列ヒトFcRである。別の態様では、FcRは、IgG抗体(γ受容体)に結合するものであり、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIサブクラスの受容体を含み、これらの受容体の対立遺伝子バリアントおよび/またはスプライシングされた形態を含む。FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化受容体」)とFcγRIIB(「阻害受容体」)を含み、これらは同様のアミノ酸配列を有し、その細胞質ドメインが主に異なっている。活性化受容体FcγRIIAは、免疫受容体チロシン依存性活性化モチーフ(ITAM)をその細胞質ドメインに含む。阻害受容体FcγRIIBは、免疫受容体チロシン依存性阻害モチーフ(ITIM)をその細胞質ドメインに含む。(M.Daeron、Annu.Rev.Immunol.15:203-234(1997)の総説を参照。)FcRは、RavetchおよびKinet、Annu.Rev.Immunol 9:457-92(1991);Capel et.al.、Immunomethods 4:25-34(1994);およびde Haas et.al.、J.Lab.Clin.Med.126:33-41(1995)にまとめられている。他のFcRは、将来的に特定されるものも含め、本明細書では「FcR」の用語に包含される。この用語は、新生児受容体FcRnも含み、胎児に対する成熟IgGの移動を担い(Guyer et.al.、J.Immunol.l17:587(1976)およびKim et.al.、J.Immunol.24:249(1994))、血清中の免疫グロブリンG(IgG)およびアルブミンの持続性の制御を担う(Rath et.al.、J.Clin.Immunol.33 Suppl 1:S9-17(2013)にまとめられている)。
【0041】
「超可変領域」との用語は、本明細書で使用される場合、抗原結合を担い、各鎖の「可変ドメイン」中に見出される抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、一般的に、「相補性決定領域」すなわち「CDR」からのアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメイン中の残基24~34(L1)、50~56(L2)および89~97(L3)と、重鎖可変ドメイン中の31~35(H1)、50~65(H2)および95~102(H3);Kabat et.al.、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th Ed.、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda,Md.(1991))および/または「超可変ループ」からの残基(例えば、軽鎖可変ドメイン中の残基26~32(L1)、50~52(L2)および91~96(L3)と、重鎖可変ドメイン中の26~32(H1)、53~55(H2)および96~101(H3);ChothiaおよびLesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987))を含む。
【0042】
「フレームワーク領域」すなわち「FR」残基は、本明細書に定義するような超可変領域以外の可変ドメイン残基である。超可変領域またはそのCDRは、ある抗体の鎖から別の抗体へと、または別のタンパク質へと移行され、得られた(コンポジット)抗体または結合タンパク質に対する抗原結合特異性を付与してもよい。
【0043】
「単離された」抗体は、同定され、その天然環境の構成要素から分離され、および/または回収されたものである。特定の実施形態では、抗体は、(1)Lowry方法によって決定される場合、タンパク質が95重量%より多くなるまで、または99重量%より多くなるまで精製され、(2)スピニングカップシークエネーターを使用することによって、N末端または内部のアミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで精製され、または(3)クマシンブルーまたは銀染色を用いて還元条件または非還元条件でのSDS-PAGEによって均一になるまで精製される。単離された抗体は、抗体の天然環境の少なくとも1つの構成要素が存在していないため、組換え細胞内のin situでの抗体を含む。しかし、元来は、単離された抗体は、少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0044】
「治療」は、治療のための処置と、予防または防止のための測定の両方を指す。治療を必要とするものは、既に疾患を有するもの、ならびに疾患またはその再発を予防すべきものを含む。したがって、本明細書で治療される患者は、その疾患を有すると既に診断されていてもよく、またはその疾患であると診断される前であってもよく、またはその疾患にかかりやすくてもよい。「患者」および「被験体」との用語は、本明細書で相互に置き換え可能に用いられる。
【0045】
抗α4β7抗体を用いたベドリズマブ非レスポンダーの治療
一態様では、本発明は、ベドリズマブ非レスポンダーにおいてIBD(例えば、潰瘍性大腸炎)を治療する方法であって、ベドリズマブ非レスポンダーに、例えばヒトにおいてIBDを治療するのに有効な量で本明細書に記載する抗α4β7抗体を投与することを含む方法に関する。ヒト患者または被験体は、成人(例えば18歳以上)であってもよく、青年または小児であってもよい。これらを患う被験体においてIBDを治療するために、抗α4β7抗体を含む医薬組成物を本明細書に記載するように使用してもよい。いくつかの実施形態では、治療によって、IBD(例えば、UCまたはCD)の粘膜治癒が起こる。いくつかの実施形態では、治療によって、IBD(例えば、UCまたはCD)の臨床反応および/または臨床的寛解が起こる。いくつかの実施形態では、コルチコステロイドでも治療しつつ、治療を始めた患者についての治療の結果は、臨床的寛解と、コルチコステロイド治療の中断である。いくつかの実施形態では、治療の結果は、14週間、18週間、22週間、26週間、30週間、または34週間の治療で起こる。いくつかの実施形態では、治療の結果(例えば反応)は、長く続き(例えば、長時間継続する臨床反応)、例えば、患者は、治療を開始してから14週間と30週間の両方で臨床反応を示す。
【0046】
本明細書で使用される場合、「非レスポンダー(non-responder)」、「非レスポンダー(nonresponder)」または「ベドリズマブ非レスポンダー」は、1回目および2回目の導入用量の抗α4β7インテグリン抗体(例えばベドリズマブ)を摂取し、初期には(例えば、2回目の導入用量からほぼ3週間後または4週間後に)治療(例えばベドリズマブ治療)において非反応性を示すIBD(例えば、潰瘍性大腸炎)を有する患者の選択された部分集合である。非反応性の徴候としては、臨床反応の測定値および/または本明細書に記載する測定値が挙げられ得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、非反応性の治療は、限定されないが、抗体の濃度および/または抗体のクリアランスを含む因子を含むアルゴリズムを用いて特定されてもよい。抗体濃度は、患者から得た血清中で測定されてもよい。さらなる実施形態では、非反応性のための治療を特定するためのアルゴリズムにおける因子は、体重および/またはアルブミンレベルを含む。
【0048】
抗α4β7抗体は、α4鎖上のエピトープに結合することができ(例えば、ヒト化MAb 21.6(Bendig et.al.、米国特許第5,840,299号)、β7鎖上のエピトープに結合することができ(例えば、FIB504またはヒト化誘導体(例えば、Fong et.al.、米国特許第7,528,236号))、またはα4鎖とβ7鎖との会合によって作られるコンビナトリアルエピトープ(combinatorial epitope)に結合することができる。一態様では、この抗体は、α4β7複合体上のコンビナトリアルエピトープに結合するが、これらの鎖が互いに会合していなければ、α4鎖またはβ7鎖の上のエピトープには結合しない。例えば、両方の鎖に存在し、共にエピトープを含む近接する残基をもたらすことによって、または1つの鎖(例えば、α4インテグリン鎖またはβ7インテグリン鎖)上で、適切なインテグリン相手がいない状態、またはインテグリン活性化が行われていない状態では、抗体結合を行うことができないエピトープ結合部位を配座的に露出させることによって、α4インテグリンとβ7インテグリンの会合によって、コンビナトリアルエピトープを生成することができる。別の態様では、抗α4β7抗体は、α4インテグリン鎖とβ7インテグリン鎖の両方に結合し、したがって、α4β7インテグリン複合体に特異的である。コンビナトリアルエピトープ抗α4β7抗体は、α4β7に結合することができるが、例えば、α4β1には結合することができず、および/またはαEβ7には結合することができない。別の態様では、抗α4β7抗体は、Act-1抗体と同じまたは実質的に同じエピトープに結合する(Lazarovits,A.I.et.al.、J.Immunol、133(4):1857-1862(1984)、Schweighoffer et.al.、J.Immunol、151(2):717-729、1993;Bednarczyk et.al.、J.Biol Chem.、269(11):8348-8354、1994)。マウスACT-1ハイブリドーマ細胞株は、マウスAct-1モノクローナル抗体を産生するが、Millennium Pharmaceuticals,Inc.、40 ランズドーンストリート、ケンブリッジ、Mass.02139、U.S.A.に対して、American Type Culture Collection、10801 ブールバード大学(University Boulevard)、マナサス、Va、20110-2209、U.S.A.で、アクセッション番号PTA-3663として、2001年8月22日にブダペスト条約に準拠して寄託された。別の態様では、抗α4β7抗体は、米国特許出願公開第2010/0254975号で提供されるCDRを用いた、ヒト抗体またはα4β7結合タンパク質である。
【0049】
一態様では、抗α4β7抗体は、そのリガンドの1つ以上(例えば、粘膜アドレシン、例えば、MAdCAM(例えば、MAdCAM-1)、フィブロネクチンおよび/または血管アドレシン(VCAM))に対するα4β7の結合を阻害する。霊長類MAdCAMは、PCT出願公開第WO 96/24673号に記載されており、その完全な教示は、この参照によって本明細書に組み込まれる。別の態様では、抗α4β7抗体は、VCAMの結合を阻害することなく、MAdCAM(例えば、MAdCAM-1)および/またはフィブロネクチンに対するα4β7の結合を阻害する。
【0050】
一態様では、治療に使用するための抗α4β7抗体は、マウスAct-1抗体のヒト化態様である。ヒト化抗体を調製するのに適した方法は、当該技術分野で周知である。一般的に、ヒト化抗α4β7抗体は、マウスAct-1抗体の3個の重鎖相補性決定領域(CDR1、配列番号4、CDR2、配列番号5およびCDR3、配列番号6といったCDR)と適切なヒト重鎖フレームワーク領域とを含む重鎖を含み、さらに、マウスAct-1抗体の3個の軽鎖CDR(CDR1、配列番号7、CDR2、配列番号8およびCDR3、配列番号9)と適切なヒト軽鎖フレームワーク領域とを含む軽鎖も含む。ヒト化Act-1抗体は、アミノ酸置換を含むか、または含まないコンセンサスフレームワーク領域を含め、任意の適切なヒトフレームワーク領域を含んでいてもよい。例えば、フレームワークアミノ酸の1つ以上が、マウスAct-1抗体の対応する位置で、別のアミノ酸と置き換わっていてもよい。ヒト定常領域またはその一部は、存在する場合、対立遺伝子バリアントを含め、ヒト抗体のκまたはλ軽鎖および/またはγ(例えば、γ1、γ2、γ3、γ4)、μ、α(例えば、α1、α2)、δまたはε重鎖から誘導されてもよい。特定の定常領域(例えば、IgGl)、バリアントまたはその一部は、エフェクター機能を調節するために選択されてもよい。例えば、Fc受容体に対する結合を最小限にするために、および/または相補体を固定する能力を最小限にするために、変異した定常領域(バリアント)が、融合タンパク質に組み込まれてもよい(例えば、Winter et.al.、GB第2,209,757 B号;Morrison et.al.、WO89/07142;Morgan et.al.、WO94/29351、1994年12月22日を参照)。Act-1抗体のヒト化態様は、PCT国際公開第WO98/06248号および第WO07/61679号に記載されており、それぞれの完全な教示は、この参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
一態様では、抗a4β7抗体は、ベドリズマブである。ベドリズマブ(MLN0002、ENTYVIO(商標)またはKYNTELES(商標)とも呼ばれる)は、ヒトリンパ球インテグリンα4β7に対して指向するヒト化免疫グロブリン(Ig)Gl mAbである。ベドリズマブは、α4β7インテグリンに結合し、そのMAdCAM-1に対する付着に拮抗し、例えば、腸ホーミング白血球の胃腸粘膜への移動を妨害する。ベドリズマブは、腫瘍壊死因子(TNF)ブロッカーまたは免疫調節剤に対して不十分な反応を有していたか、これに対する反応を失っていたか、またはこれに対して不耐性であったか、またはコルチコステロイドに対して不十分な反応を有していたか、これに対する反応を失っていたか、またはこれに対して不耐性であった、中程度から重度の活動性UCまたはCDを有する成人患者に適応であったインテグリン受容体アンタゴニストである。UCの場合、ベドリズマブは、臨床反応を誘発し、維持するため、臨床的寛解を誘発し、維持するため、粘膜の内視鏡的な外観を改善するため、および/またはコルチコステロイドを用いない寛解を達成するためのものである。CDの場合、ベドリズマブは、臨床反応を達成するため、臨床的寛解を達成するため、および/またはコルチコステロイドを用いない寛解を達成するためのものである。いくつかの実施形態では、コルチコステロイドを用いない寛解は、ベドリズマブを用いた連続治療の間に徐々に減らしていく投薬計画によって達成される。
【0052】
別の態様では、治療に使用するためのヒト化抗α4β7抗体は、配列番号1のアミノ酸20~140を含む重鎖可変領域と、配列番号2のアミノ酸20~131または配列番号3のアミノ酸21から132を含む軽鎖可変領域とを含む。所望な場合、適切なヒト定常領域が存在していてもよい。例えば、ヒト化抗α4β7抗体は、配列番号1のアミノ酸20~470を含む重鎖と、配列番号3のアミノ酸21~239を含む軽鎖とを含んでいてもよい。別の例では、ヒト化抗α4β7抗体は、配列番号1のアミノ酸20~470を含む重鎖と、配列番号2のアミノ酸20~238を含む軽鎖とを含んでいてもよい。ベドリズマブのヒト化軽鎖(例えば、Chemical Abstract Service(CAS、American Chemical Society)登録番号943609-66-3)は、2つのマウス残基がヒト残基と入れ替わっており、別のヒト化抗α4β7抗体であるLDP-02の軽鎖よりもヒト化されている。これに加え、LDP-02は、わずかに親水性のヒドロキシ含有トレオニン114と疎水性の潜在的に内側を向いているバリン115残基とを有するベドリズマブでは置き換わっている、いくらか疎水性であり、柔軟性のあるアラニン114と、親水性部位(アスパラギン酸115)とを有する。
【0053】
ヒト化抗α4β7抗体配列に対するさらなる置換は、例えば、重鎖および軽鎖のフレームワーク領域に対する変異、例えば、配列番号10の残基2のイソロイシンからバリンへの変異;配列番号10の残基4のメチオニンからバリンへの変異;配列番号11の残基24のアラニンからグリシンへの変異;配列番号11の残基38のアルギニンからリジンへの変異;配列番号11の残基40のアラニンからアルギニンへの変異;配列番号11の残基48のメチオニンからイソロイシンへの変異;配列番号11の残基69のイソロイシンからロイシンへの変異;配列番号11の残基71のアルギニンからバリンへの変異;配列番号11の残基73のトレオニンからイソロイシンへの変異;またはこれらの組み合わせ、および重鎖CDRを、マウスAct-1抗体のCDR(CDR1、配列番号4、CDR2、配列番号5およびCDR3、配列番号6)と置き換えること;軽鎖CDRを、マウスAct-1抗体の軽鎖CDR(CDR1、配列番号7、CDR2、配列番号8およびCDR3、配列番号9)と置き換えることであってもよい。
【0054】
本発明は、第1の態様では、炎症性腸疾患(IBD)を有する非レスポンダー患者を、抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)を用いて治療するための方法を提供する。この態様では、本方法は、限定されないが、アルブミンレベル、体重およびα4β7抗体濃度を含む複数の因子を評価するアルゴリズムを用いることを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、この抗体のレベルが低い患者を高用量治療するために選択することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、この抗体のクリアランスが高い患者を高用量治療するために選択することを含む。本方法は、この抗体の以前の少なくとも1回分の用量を摂取してから所定時間に(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8週間または9週間に)、患者からの生体サンプル(例えば、血液、血清、血漿、便、腸液、唾液、炎症性漏出物)において抗α4β7抗体の濃度を測定することを含む。いくつかの実施形態では、抗α4β7抗体の血清濃度の測定は、クリアランスの指標であってもよい。クリアランスは、例えば、薬力学因子、臨床的な因子、炎症または免疫反応の因子などの他のパラメータによって影響を受けるか、またはさらに示されてもよく、これらの測定を、抗α4β7抗体の測定と組み合わせて使用してもよい。クリアランスの指標を、単独で、または1つ以上の他のパラメータの測定と組み合わせて使用し、抗α4β7抗体治療に対する反応を予測し、抗α4β7抗体治療に反応しない患者を特定し、抗α4β7抗体を用いたさらなる治療のために患者を選択し、その患者のための用量または投薬計画を選択し、または治療中の抗α4β7抗体の有効性をモニタリングしてもよい。例えば、サンプリング時に、患者における抗α4β7抗体の量が少ないことは、抗α4β7抗体を用いた、より高用量の3回目および場合により高用量のその後の投薬が、IBDの治療において便益を与えることを示す。抗α4β7抗体の濃度が低い非レスポンダーは、以下により特徴付けられる場合がある。(a)抗体(例えばベドリズマブ)のクリアランス速度が約0.10L/日より大きく、0.14L/日より大きく、0.14~0.24L/日、0.15L/日より大きく、または0.2L/日より大きい;および/または(b)抗体(例えばベドリズマブ)の血清濃度(例えば、定常状態のトラフ濃度)が、15μg/ml未満、14μg/ml未満、13μg/ml未満、12μg/ml未満、10μg/ml未満、9μg/ml未満、8μg/ml未満、7μg/ml未満、6μg/ml未満、または4μg/ml未満であるか、または1~15μg/ml、2~14μg/ml、3~13μg/ml、1~12μg/ml、4~12μg/ml、1~11μg/ml、1~9μg/mlまたは5~10μg/mlである。
【0055】
本発明は、第2の態様では、炎症性腸疾患(IBD)を有する非レスポンダー患者を、抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)を用いて治療するための方法を提供する。この態様では、本方法は、2回の用量300mgの抗α4β7抗体で患者を治療し、2回目の用量が1回目の用量の2週間後であることと、1回目の用量から5週間後に抗α4β7抗体の濃度を測定することと、1回目の用量の抗α4β7抗体投与から6週間後に臨床反応の測定結果(例えば、部分Mayoスコア)を得ることとを含む。いくつかの実施形態では、非レスポンダーは、5週間目の抗α4β7抗体の血清濃度が50μg/mL未満であり、6週間目までに臨床反応についての基準(例えば、部分Mayoスコア)を満たさない場合であると特定される。いくつかの実施形態では、本方法は、5週間目の測定で抗体レベルが低く、6週間目の評価で臨床反応についての基準(例えば、部分Mayoスコア)を満たさない患者を高用量治療のために選択することを含む。いくつかの実施形態では、より高い用量のベドリズマブは、例えば、静脈内投与される場合、450mgまたは600mgであり、さらに、4週間ごとの頻度であってもよい。他の実施形態では、高用量のベドリズマブは、160mg、216mg、320mgの皮下用量であり、さらに、毎週または2週間ごとの頻度であってもよい。
【0056】
一実施形態では、ベドリズマブ非レスポンダーにおいて、抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)を用いてIBDを治療するための方法は、1回目の用量のベドリズマブが、2回目の用量投与の2週間前に被験体に投与され、2回目の用量のベドリズマブを摂取してから3週間後または4週間後の時点で、血清濃度が約15μg/ml以下、約14μg/ml以下、約13μg/ml以下、約12μg/ml以下、約11μg/ml以下、約10μg/ml以下、約9μg/ml以下、約8μg/ml以下、約7μg/ml以下または約6μg/ml以下である、IBDを有するか、またはIBDを患う2人以上の患者の群から、IBDを有するヒト患者を選択する工程を含む。具体的には、患者の血清濃度は、約1~15、約2~14、約3~13、約4~12、約1~11、約1~9または約5~10μg/mlであってもよい。患者の血清濃度(例えば、トラフ血清濃度)は、12.7μg/ml未満、12μg/ml未満または11μg/ml未満であってもよい。いくつかの実施形態では、患者は、血清ベドリズマブの測定のためのサンプリングよりも約2週間前、約3週間前、約4週間前、約5週間前、約6週間前、約7週間前、約8週間前または約9週間前に、ベドリズマブの事前投与を受けていた。このような患者を患者群から選択したら、その患者にベドリズマブを投与し、IBDを治療する。
【0057】
別の態様では、本発明は、導入用量(例えば300mg)より高い用量(例えば600mg)の抗α4β7抗体(例えば、ベドリズマブ)を用い、ベドリズマブ非レスポンダーにおいてIBDを治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、ベドリズマブを用いる本方法は、3回以上の用量のベドリズマブを、IBDを患う患者に投与し、2回目の用量は、1回目の用量が患者に投与されてから約2週間後に投与される工程と、少なくとも2週間、少なくとも3週間、約4週間または5週間の期間待つ工程と、患者の抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)血清濃度を測定する工程と、患者の抗α4β7抗体血清濃度が、約15μg/ml未満、約14μg/ml未満、約13μg/ml未満、約12μg/ml未満、約11μg/ml未満、約10μg/ml未満、約9μg/ml未満、約8μg/ml未満、約7μg/ml未満または約6μg/ml未満である場合に、患者に、より高い用量の(例えば600mg)のベドリズマブをさらに1回以上投与する工程とを含む。患者の血清濃度は、約1~15、約2~14、約3~13、約4~12、約1~11、約1~9または約5~10μg/mlであってもよい。患者の抗α4β7抗体の血清濃度(例えば、トラフ血清濃度)は、12.7μg/ml未満、12μg/ml未満または11μg/ml未満であってもよい。
【0058】
本方法は、さらに、患者の血清濃度が、約15μg/ml未満、約14μg/ml未満、約13μg/ml未満、約12μg/ml未満、約11μg/ml未満、約10μg/ml未満、約9μg/ml未満、約8μg/ml未満、約7μg/ml未満または約6μg/ml未満である場合、3回目または4回目の用量投与の後、例えば、1回目の誘導用量と、より高い用量(例えば600mg)での1回以上の抗体の投与から約11週間後、約12週間後、約13週間後または約14週間後に、抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)の血清濃度の第2の測定を含んでいてもよい。患者の血清濃度は、約1~15、約2~14、約3~13、約4~12、約1~11、約1~9または約5~10μg/mlであってもよい。患者の血清濃度(例えば、トラフ血清濃度)は、12.7μg/ml未満、12μg/ml未満または11μg/ml未満であってもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、ベドリズマブ非レスポンダーは、血清ベドリズマブの測定のためのサンプリングより約3週間または4週間前に、最後の事前の用量(例えば2回目の用量)のベドリズマブを摂取した。他の実施形態では、ベドリズマブ非レスポンダーは、血清ベドリズマブの測定のためのサンプリングより約3~8週間前に、最後の事前の用量を摂取した。
【0060】
または、本発明は、高用量の抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)を用いた治療のために非レスポンダーを特定するための方法であって、IBDを患っており、その前の1ヶ月間または2ヶ月間の間に少なくとも1回分の用量のベドリズマブを摂取した患者から得た血清サンプルにおいてベドリズマブの濃度を測定する工程と、前記サンプル中の血清濃度が約15μg/ml未満、約14μg/ml未満、約13μg/ml未満、約12μg/ml未満、約11μg/ml未満、約10μg/ml未満、約9μg/ml未満、約7μg/ml未満、約6μg/ml未満または約5μg/ml未満である場合に、高用量のベドリズマブを用いた連続治療のための患者であると特定する工程とを含む。患者の血清濃度は、約1~15、約2~14、約3~13、約4~12、約1~11、約1~9または約5~10μg/mlであってもよい。患者の血清濃度(例えば、トラフ血清濃度)は、12.7μg/ml未満、12μg/ml未満または11μg/ml未満であってもよい。いくつかの実施形態では、ベドリズマブ非レスポンダーは、血清ベドリズマブの測定のためのサンプリングよりも約2週間前、約3週間前、約4週間前、約5週間前または約6週間前に、ベドリズマブの事前投与を受けていた。
【0061】
または、少なくとも1回分の用量の抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)が、ベドリズマブ非レスポンダーに投与されてもよく、少なくとも約2週間、または場合により、2~5週間待ち、次いで、患者のベドリズマブ血清濃度を測定し、患者の血清濃度が約15μg/ml未満、約14μg/ml未満、約13μg/ml未満、約12μg/ml未満、約11μg/ml未満、約10μg/ml未満、約9μg/ml未満、約8μg/ml未満、約7μg/ml未満または約6μg/ml未満である場合に、患者に対し、より高い用量(例えば600mg)のベドリズマブをさらに1回以上投与してもよい。患者の血清濃度は、約1~15、約2~14、約3~13、約4~12または約5~10μg/mlであってもよい。患者の血清濃度(例えば、トラフ血清濃度)は、12.7μg/ml未満、12μg/ml未満または11μg/ml未満であってもよい。
【0062】
または、少なくとも1回分または2回分(例えば300mg)の用量の抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)が、ベドリズマブ非レスポンダーに投与されてもよく、1回目の抗α4β7抗体投与から少なくとも約5週間、または場合により、2~5週間待ち、次いで、患者のベドリズマブ血清濃度を測定し、患者の抗α4β7抗体の血清濃度が約50μg/ml未満、約45μg/ml未満、約40μg/ml未満、約35μg/ml未満、約30μg/ml未満、約35μg/ml未満、約20μg/ml未満または約15μg/ml未満である場合に、患者に対し、より高い用量(例えば600mg)のベドリズマブをさらに1回以上投与してもよい。患者の抗α4β7抗体の血清濃度は、約0~50、約5~50、約15~50、約20~50、約30~50、約40~50または約45~50μg/mlであってもよい。患者の抗α4β7抗体の血清濃度は、50μg/ml未満、45μg/ml未満または40μg/ml未満であってもよい。患者の抗α4β7抗体の血清濃度は、30μg/ml未満であってもよい。さらにこの実施形態では、患者は、6週目に、臨床反応の基準(例えば、部分Mayoスコア)を満たさないことによって、非レスポンダーであると決定されてもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、3回目または4回目の用量投与の後、例えば、1回目の誘導用量と、より高い用量(例えば600mg)での連続治療から約11週間後、約12週間後、約13週間後または約14週間後に、抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)の血漿濃度のさらなる測定によって、患者の血清濃度が約12μg/mlより大きく、約13μg/mlより大きく、約14μg/mlより大きく、約15μg/mlより大きく、約16μg/mlより大きく、約17μg/mlより大きく、または約18μg/mlより大きいことがわかった場合、患者の投薬を、導入用量(例えば300mg)に戻してもよい。患者の血清濃度は、約12~25、約15~17、約17~25、約12~40、約13~60、約13~90または約15~50μg/mlであってもよい。患者の血清濃度(例えば、トラフ血清濃度)は、12.7μg/mlより高くてもよく、13μg/mlより高くてもよく、または14μg/mlより高くてもよい。
【0064】
ベドリズマブは、任意の適切な方法で、例えば、静脈注射、皮下注射、または点滴のうち1つ以上によって投与されてもよい。いくつかの実施形態では、ベドリズマブは、50mg、100mg、180mg、300mgまたは600mgの用量で投与される。いくつかの実施形態では、ベドリズマブは、0.5mg/kg、1.0mg/kg、1.5mg/kg、2.0mg/kg、2.5mg/kg、3.0mg/kg、4.0mg/kgまたは5.0mg/kgの用量で、108mg、216mg、160mg、165mg、320mgまたは480mgの用量で、例えば皮下投与される。
【0065】
ベドリズマブは、1日に1回、週に1回、1ヶ月に1回、または1年に1回投与されてもよい。ベドリズマブの投薬計画は、初期または導入期と、維持期を有していてもよい。導入期は、1回、または1回より多く、例えば、2回、3回または4回の高用量の用量であってもよく、または長い時間ではなく、例えば、それぞれの用量の間がわずか1週間、2週間、3週間または4週間であってもよい。例えば、導入投薬計画は、0日(週)目に1回、2週目(14日目)に1回の2回の用量を含んでいてもよい。維持期(例えば、IBDの寛解を維持するためのもの)は、導入期より少ない用量であってもよく、または導入期とはさらに離れた用量であってもよい。いくつかの実施形態では、ベドリズマブは、0週目、2週目、6週目に投与され(導入)、次いで、その後は、4週間ごと、または8週間ごとに投与される(維持)。他の治療に対して難治性のIBD患者は、維持療法を開始する前に、さらに長い導入期間(例えば、8週間、10週間または12週間)を必要とする場合がある。一実施形態では、ベドリズマブは、0週目、2週目、6週目に静脈内投与され、次いで、その後は8週間ごとに投与される。いくつかの実施形態では、ベドリズマブは、1回以上投与され、次いで、少なくとも1ヶ月後、少なくとも6ヶ月後、または少なくとも1年後に、ベドリズマブを再び1回以上投与する。いくつかの実施形態では、300mgのベドリズマブが、0週目と2週目に、次いで、6週目に静脈内点滴によって投与され、その後、4週間間隔または8週間間隔で、600mgのベドリズマブが静脈内投与されてもよい。いくつかの実施形態では、300mgのベドリズマブが、0週目と2週目に静脈内点滴によって投与され、次いで、6週目に、600mgのベドリズマブが静脈内点滴によって投与され、次いで、4週間間隔または8週間間隔で、300mgのベドリズマブが静脈内投与されてもよい。この実施形態では、患者は、5週目の測定で、30μg/ml以上(≧30μg/ml)、50μg/ml未満(<50μg/ml)のベドリズマブを有していてもよい。いくつかの実施形態では、300mgのベドリズマブを、0週目、2週目に静脈内点滴によって投与し、次いで、600mgを6週目に投与し、血清濃度測定によって、12.7μg/mlより多く、13μg/mlより多く、14μg/mlより多いことがわかるまで、または13週目の血清濃度で、ベドリズマブが90μg/mLより多くなるまで、4週間間隔または8週間間隔で投与し、この時点で、次いで、300mgをその後に4週間間隔または8週間間隔で静脈内点滴によって投与してもよい。この実施形態では、患者は、5週目の測定で、30μg/ml未満(<30μg/ml)のベドリズマブを有していてもよい。いくつかの実施形態では、4週間ごとに300mgのベドリズマブを投与される患者は、次の用量測定の1週間前に90μg/mLより多いベドリズマブを有しており、その次およびその後の用量は、8週間間隔で投与されてもよい。いくつかの実施形態では、300mgのベドリズマブが、0週目と2週目に静脈内点滴によって投与され、次いで、6週目に、600mgのベドリズマブが静脈内点滴によって投与され、次いで、2週間間隔、3週間間隔または4週間間隔で、108mgのベドリズマブが皮下投与されてもよい。いくつかの実施形態では、300mgのベドリズマブを、0週目、2週目に静脈内点滴によって投与し、次いで、600mgを6週目に投与し、血清濃度測定によって、ベドリズマブが12.7μg/mlより多く、13μg/mlより多く、14μg/mlより多いことがわかるまで、4週間間隔または8週間間隔で投与し、この時点で、次いで、108mgをその後に2週間間隔、3週間間隔または4週間間隔で皮下投与してもよい。抗α4β7インテグリン抗体を用いる治療方法は、米国特許出願公開第2005/0095238号、WO2012151248およびWO2012/151247に記載されている。
【0066】
本発明は、抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)を用いて非レスポンダーを治療するための方法であって、IBDを患っており、その前の4ヶ月間に(例えば、その前の3ヶ月間に、その前の2ヶ月間に)少なくとも2回分の用量のベドリズマブを投与された患者から得られた生体サンプルにおけるベドリズマブのクリアランスを測定する工程と、前記患者におけるクリアランスが、0.12L/日より大きく、0.14L/日より大きく、0.16L/日より大きく、0.18L/日より大きく、0.2L/日より大きく、または0.14~0.24L/日である場合、ベドリズマブを用いた連続治療のための患者であると特定する工程とを含む、方法にも関する。生体サンプルは、任意の生体サンプル、例えば、血清、血漿、唾液、尿または糞便であってもよい。本方法は、抗α4β7抗体、例えば、トラフ濃度、例えば、6週目のトラフ濃度、14週目のトラフ濃度または定常状態でのトラフ濃度を測定することを含んでいてもよい。場合により、本方法は、抗α4β7抗体の曝露レベルの測定を含んでいてもよい。
【0067】
抗α4β7抗体を用いて患者を治療する方法のいくつかの実施形態では、1回または2回の用量投与の後に十分な血清トラフ濃度を有していない患者、例えば、導入後に、例えば、1回目の用量投与から2ヶ月間の間(例えば、5週目または6週目)に、低い血清濃度(例えば、15μg/ml未満、13μg/ml未満、10μg/ml未満、8μg/ml未満または6μg/ml未満)を有し、および/または高いクリアランス(例えば、0.12L/日より大きく、0.14L/日より大きく、0.16L/日より大きく、または0.20L/日より大きい)を有する患者は、標準的な治療計画に変えてもよい。一実施形態では、改変投薬計画を必要とする患者は、抗α4β7抗体の血清濃度が13μg/ml未満であり、抗α4β7抗体のクリアランス速度が0.14L/日より大きく、および/またはアルブミン濃度が3.2g/dL未満である。別の実施形態では、改変投薬計画を必要とする患者は、抗α4β7抗体を用いた治療を始めてから5週間後に、抗α4β7抗体の血清濃度が50μg/mL未満である。この実施形態についてさらに、改変投薬計画を必要とする患者は、抗α4β7抗体を用いた治療を開始してから6週目に、臨床反応の基準(例えば、部分Mayoスコア)を満たしていない。例えば、抗α4β7抗体を用いた治療は、中断してもよく、用量投与は、さらに頻繁であってもよく、例えば、8週間ごとの代わりに、4週間ごと、または2週間ごとであってもよく、用量の量は、増やしてもよく、例えば、300mg~600mgであってもよい。いくつかの実施形態では、用量投与の頻度と量をこのような患者で増やし、例えば、用量を増やし(例えば、600mgまで)、頻度を増やす(例えば、4週間ごとの治療まで)。
【0068】
抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)非レスポンダーである患者を治療する方法は、アルブミン濃度を測定することをさらに含んでいてもよい。治療用抗体による治療において、クリアランス活性、例えば、新生児FcRに結合する能力を反映したものであってもよい。または、これは、患者が経験している炎症の量を反映したものであってもよい。例えば、血漿タンパク質は、IBD炎症の負荷から漏れやすい血管からの血流を出ていく場合がある。アルブミン濃度は、抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)を用いた治療前に測定されてもよい(すなわち、ベースライン測定)。他の実施形態では、アルブミン濃度は、抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)を用いた治療の後に測定されてもよい。低い血清アルブミンレベルの場合には、抗α4β7抗体は、高いクリアランスを有することができる。その結果、血清アルブミンレベルが低い患者は、用量300mgには反応しない場合があり、または抗α4β7抗体を用いた治療に反応するのに長い時間かかる場合がある。約3.5g/dL未満、約3.2g/dL未満、約3.0g/dL未満、約2.7g/dL未満または約2.0g/dL未満、または2.0~3.1g/dLの範囲、1.5~3.1g/dLの範囲、0.8~3.1g/dLの範囲、または0.1~3.1g/dLの範囲のアルブミン濃度であれば、さらに、例えば、導入用量より高い用量で、例えば、300mgではなく600mgで、抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)を用いた連続治療のための患者であると特定されてもよい。
【0069】
本方法は、さらに、患者の体重測定を含んでいてもよい。体重は、抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)を用いた治療の前に、すなわちベースラインで決定されてもよく、または治療中の他の時期に、例えば、患者の反応をモニタリングするときに測定されてもよい。本方法は、ベースラインアルブミン濃度と患者の体重を測定することを含んでいてもよい。体重が重く(例えば90kgより多い、100kgより多い、110kgより多い、または120kgより多い)、アルブミンレベルが低い(例えば、3.2g/dL未満、3.0g/dL未満、2.5g/dL未満、または1.2g/dL未満)患者は、高い抗α4β7抗体クリアランスを有している場合があり、そのため、抗α4β7抗体を用いた治療に反応しない場合があり、または連続治療のために、さらに高く、またはさらに頻繁な用量の抗α4β7抗体を必要とする場合がある。
【0070】
クリアランス(例えば、線形クリアランス、例えば、単位時間あたりに薬物が排出される血液の体積)は、当業者に知られている任意の適切な手段によって計算/概算/誘導されてもよい。例えば、クリアランスは、集合アプローチ、例えば、PCT/US 15/00476号に記載されるモデルによって概算されてもよい。クリアランスの計算は、以下の式に記載されるモデルを使用してもよい:
【数1】
ここで、E
0は、ベースラインMAdCAM-1結合率であり、Emaxは、最大効果であり、Concは、ベドリズマブ血清濃度であり、EC
50は、最大効果の半分でのベドリズマブ血清濃度であり、γは、Hill係数または傾き因子である。計算のためのパラメータは、ベースラインMAdCAM-1阻害(E0)が12.1%、最大効果の半分での濃度(EC50)は0.093μg/mL、最大効果(Emax)は0.959、Hill係数または傾き因子(γ)は0.801、指数残差誤差分散(δ2exp)は0.613(%CV=78.3)である。
【0071】
抗α4β7抗体の露出指標(例えば、トラフ血清濃度、例えば、新しい用量を投与する1日前、2日前、3日前、4日前または1週間前までの抗α4β7抗体の血清濃度、ピーク血清濃度、1つより多いサンプリングで測定された平均血清濃度、または濃度時間曲線下面積)を、クリアランスを決定するためのモデルに入力する。
【0072】
IBDを患っている患者から得た生体サンプルにおけるベドリズマブのクリアランスを測定する工程を含む、ベドリズマブを用いた連続治療のための患者を特定するための方法は、その前の1か月間または2か月間の間に少なくとも1回分の用量のベドリズマブを投与された患者で行われてもよく、その患者におけるクリアランスが、0.25L/日より大きく、0.14L/日より大きく、0.14~0.24L/日、0.14L/日より大きく、または0.2L/日より大きい場合に、より高い用量でベドリズマブを用いた連続治療のための患者であると特定する。生体サンプルは、任意の生体サンプル、例えば、血清、血漿、唾液、尿または糞便であってもよい。
【0073】
抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)非レスポンダーである患者を治療する方法は、測定の組み合わせを用いて用量を特定することを含んでいてもよい。測定の組み合わせ、例えば、Bayesian計算方法、例えば、全Bayesian方法、例えば、Markov Chain Monte Carlo(MCMC)方法またはMaximum a-posteriori(MAP)方法は、計算を使用してもよい。非レスポンダー、例えば、2回分の用量の抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)の後の反応がない患者のために用量を考える方法の1つは、線形クリアランスを用いる方法であり、例えば、集合薬物動態モデルを用いた計算で、抗体血清濃度から概算され、これは実施例に記載している。いくつかの実施形態では、計算(例えば、Bayesian方法)は、測定の組み合わせ、例えば、血清アルブミンレベル、体重および抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)のクリアランスからなる群から選択される1つ、2つまたは全ての測定の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、血清アルブミンレベルおよび体重は、ベースラインで、例えば、抗体を用いた治療の前に測定される。いくつかの実施形態では、抗体クリアランスは、抗体を用いた導入療法の後の血清濃度から計算される。他の実施形態では、抗体クリアランスは、少なくとも1回分の高用量(例えば、600mg)の抗体を用いた治療の後の抗体の血清濃度から計算される。
【0074】
一態様では、本発明は、抗α4β7抗体(例えば、ベドリズマブ)非レスポンダーにおいて、導入用量(例えば300mg)より高い用量(例えば、600mg)の抗α4β7抗体(例えば、ベドリズマブ)を用いてIBD(例えば潰瘍性大腸炎)を治療するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、ベドリズマブを用いる本方法は、患者の血清アルブミンと体重を測定する工程と、2回以上の用量のベドリズマブを、IBDを患う患者に投与し、2回目の用量は、1回目の用量が患者に投与されてから約2週間後に投与される工程と、少なくとも2週間、少なくとも3週間、約4週間または5週間の期間待つ工程と、患者の抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)血清濃度を測定する工程と、アルブミンレベル、体重および抗体のクリアランスの測定結果を合わせる工程と、前記測定の組み合わせが、非レスポンダーが、より高い用量から便益が得られることを示す場合には、患者に、より高い用量の(例えば600mg)のベドリズマブをさらに1回以上投与する工程とを含む。いくつかの実施形態では、例えば、本方法に入力される、より高い用量によって、例えば、定常状態で、12.7μg/mlより高い目標血清濃度が得られる場合、患者は、より高い用量から便益を受けるだろう。いくつかの実施形態では、本方法に入力される、より高い用量によって、例えば、抗体を用いた治療を開始してから6週目に、37.1μg/mlより高い目標血清濃度が得られる場合、患者は、より高い用量から便益を受けるだろう。いくつかの実施形態では、4週間隔で、より高い用量が投与される。いくつかの実施形態では、8週間隔で、より高い用量が投与される。
【0075】
本方法は、さらに、患者が、より高い用量から便益を受ける場合、例えば、本方法に入力される、より高い用量によって、例えば、定常状態で、12.7μg/mlより高い目標血清濃度が得られる場合、3回目または4回目の用量投与の後、例えば、1回目の誘導用量と、より高い用量(例えば600mg)での連続治療から約11週間後、約12週間後、約13週間後または約14週間後に、抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)の血清濃度の第2の測定を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、本方法に入力される、より高い用量によって、例えば、抗体を用いた治療を開始してから14週目に、例えば、3回または4回の用量の抗体を投与した後に、18.4μg/mlより高い目標血清濃度が得られる場合、患者は、より高い用量から便益を受けるだろう。いくつかの実施形態では、4週間隔で、より高い用量が投与される。いくつかの実施形態では、8週間隔で、より高い用量が投与される。
【0076】
本方法は、さらに、内視鏡サブスコアを測定することを含んでいてもよい。抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)治療は、内視鏡サブスコアが約3未満、約2.5未満、約2未満、約0~2、または1以下である場合に継続してもよい。
【0077】
好中球の細胞質タンパク質であるカプロテクチンの糞便レベルは、潰瘍性大腸炎における内視鏡的な活動性と相関関係にある。典型的には、疾患のない被験体は、糞便カプロテクチンは50μg/g未満であろう。50μg/gを超えるが、150μg/g未満の糞便カプロテクチンレベルは、粘膜炎症の可能性がある徴候である場合があり、一方、150μg/gを超える糞便カプロテクチンレベルは、通常、活動性の炎症の徴候である。本明細書に記載の方法は、さらに、糞便のカプロテクチン濃度を測定することを含んでいてもよい。糞便のカプロテクチンレベルが高いことは、再発のリスクが大きいことと関係がある。糞便のカプロテクチン濃度が1500μg/g未満、1250μg/g未満、1000μg/g未満、750μg/g未満、500μg/g未満、400μg/g未満、300μg/g未満、250μg/g未満、200~1200μg/g、350~800μg/g、300~1000μg/g、<50μg/g、<100μg/g、<150μg/g、<200μg/g、≦250~499μg/g、または500~900μg/gであるとき、ベドリズマブ治療を継続してもよい。または、糞便のカプロテクチンが、ベースラインまたは治療前の濃度の約50%未満、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、10~55%、10~30%、15~35%、15~45%、または20~40%まで減少してもよい。排泄物サンプル中の糞便カプロテクチンは、PHICAL試験キット(Calpro、Lysaker Norway)を用いて測定することができる。
【0078】
本治療は、さらに、例えば、約1~3週間または約2週間から開始して、抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)を用いた治療を開始してから10週間以下のコルチコステロイドを徐々に減らす投薬計画を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、非レスポンダーIBD患者は、例えば、診断時またはベースライン時に、10~20mg/日、20~40mg/日、25~35mg/日または約30mg/日のコルチコステロイド類(例えばプレドニゾン)の事前の治療または例えば、2~12mg/日、3~10mg/日または約9mg/日のブデソニドの事前の治療を受けていてもよい。プレドニゾンの場合、用量を、10mg/日に達するまで、5mg/週の速度で減らしてもよく。10mg/日以下の用量では、プレドニゾンの用量を、中断するまで2.5mg/週の速度で減らす。ブデソニドの場合、用量を、中断するまで、2週間ごとに3mgの速度で減らす。
【0079】
薬物動態および薬力学のアッセイ
抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)の濃度は、当業者に知られている任意の適切な手段によって測定されてもよい。抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)の血清濃度は、次の用量投与より1週間前、または以前の用量から3週間後に測定されてもよい。いくつかの実施形態では、測定は、1回目の用量の抗体から5週後である。いくつかの実施形態では、測定は、1回目の用量の抗体から13週後である。いくつかの実施形態では、測定は、1回目の用量の抗体から5週後と13週後である。いくつかの実施形態では、抗体の用量は、血清濃度測定の結果に基づいて調整される。例えば、50μg/ml未満(<50μg/ml)または30μg/ml未満(<30μg/ml)、の血清濃度について、用量を増やしてもよく、例えば、用量の量を増加させ(例えば、300mgから600mg)、および/または用量の間の間隔を短くしてもよい(例えば、静脈内の用量について、8週間から4週間へ)。例えば、90μg/ml以上(≧90μg/ml)の血清濃度について、例えば、用量を減らしてもよく、600mgから300mgまで用量を減らし、および/または用量の間隔を長くする(例えば用量の間が4週間から8週間へ)ことによって減らしてもよい。用量の調整は、臨床反応(例えば部分Mayo)、血清濃度測定から1週間後の評価と組み合わせて行われてもよい。例えば、増加した用量は、臨床反応(例えば、部分Mayo)の基準を満たさない患者に投与されてもよく、減少した用量は、その治療からの臨床反応(例えば、部分Mayo)の基準を満たす患者に投与されてもよい。
【0080】
一態様では、ベドリズマブ濃度は、サンドイッチ酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)アッセイによって測定される。別の態様では、薬力学アッセイの使用、血中の抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)による、α4β7を発現する末梢血細胞に対するMAdCAM-1-Fcの結合阻害を、抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)によるα4β7飽和の程度の指標として使用する。
【0081】
一実施形態では、抗α4β7抗体の量、例えば、血清中の量は、薬物動態アッセイで測定することができる。固定された相、例えば、マイクロタイタープレート、容器またはビーズを、抗α4β7抗体に特異的に結合する試薬でコーティングする。固定された試薬を、抗α4β7抗体を含んでいてもよく、または含んでいなくてもよい患者サンプル(例えば血清)と接触させる。インキュベートし、洗浄した後、コーティング試薬と複合体化した抗α4β7抗体を、捕捉抗体に結合する試薬と接触させ、例えば、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)などの標識を用いて検出してもよい。結合試薬は、抗α4β7抗体のFc部分に結合する抗ヒト抗体(例えば、ポリクローナルまたはモノクローナル)であってもよい。HRP基剤(例えば、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB))の添加によって、シグナルの蓄積(例えば、発色)が可能になり、これを例えば分光法によって測定することができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、コーティング試薬は、抗α4β7抗体、例えば、その可変領域または1つ以上のCDR(例えば、重鎖CDR3、配列番号6)を含むその一部に特異的に結合する抗イディオタイプ抗体である。アッセイに使用するための抗イディオタイプ抗α4β7抗体は、抗α4β7抗体のα4β7インテグリン結合部分に特異的であり、したがって、これに結合することができるが、抗α4β7抗体のFc部分には特異的ではないため、抗α4β7抗体のFc部分には結合しない。アッセイに使用するための抗イディオタイプ抗α4β7抗体は、例えば、配列番号1のアミノ酸20~140、配列番号2のアミノ酸20~131、配列番号3のアミノ酸21~132からなる群から選択される、抗α4β7抗体の重鎖および/または軽鎖の可変領域に特異的であり、そのため、これらに結合することができる。アッセイに使用するための抗イディオタイプ抗α4β7抗体は、抗α4β7抗体の抗原結合フラグメント特異的であり、そのため、これに結合することができる。抗イディオタイプ抗体は、抗α4β7抗体またはそのα4β7インテグリン結合部分、例えば、1つ以上のCDRを含む抗体フラグメントを用いた免疫付与プロセスから単離し、組換え方法によって単離または製造されたものとして使用することができる。いくつかの実施形態では、抗イディオタイプ抗α4β7抗体は、重鎖CDR3(配列番号6)を含む免疫原に対して上昇する。他の実施形態では、抗イディオタイプ抗α4β7抗体は、例えば、配列番号1のアミノ酸20~140、配列番号2のアミノ酸20~131、配列番号3のアミノ酸21~132からなる群から選択される、抗α4β7抗体の重鎖および/または軽鎖の可変領域を含む免疫原に対して上昇する。いくつかの実施形態では、抗イディオタイプ抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗イディオタイプ抗体のscFvフラグメントがアッセイに使用される。他の実施形態では、インタクトな抗イディオタイプ抗体をアッセイに使用する。
【0083】
抗イディオタイプ抗α4β7抗体の作製は、以下の一般的な方法で進めることができる。タンパク質、例えば、抗α4β7抗体またはそのα4β7インテグリン結合部分、またはこの部分を含む融合タンパク質を用いる、適切な動物(例えば、マウス、ラット、ウサギまたはヒツジ)の免疫付与は、例えば、アジュバント(例えば、完全Freundアジュバント)を用いた反応を誘発する様式で注射のために調製された免疫原を用いて行うことができる。他の適切なアジュバントとしては、TITERMAX GOLD(登録商標)アジュバント(CYTRX Corporation、ロサンゼルス、CA)およびミョウバンが挙げられる。小さなペプチド免疫原、例えば、重鎖のCDR3などのCDRを含むフラグメントは、もっと大きな分子(例えばキーホールリンペットヘモシアニン)に結合していてもよい。マウスに、多くの様式で注射することができ、例えば、皮下、静脈内または筋肉内の多くの部位に、例えば、腹膜(i.p.)、尾の基部、または足底、または部位の組合せ、例えば、i.p.と尾の基部に注射することができる。ブースター注射は、同じ免疫原または異なる免疫原を含んでいてもよく、さらに、アジュバント、例えば、不完全Freundアジュバントを含んでいてもよい。一般的に、モノクローナル抗体が望ましい場合、ハイブリドーマは、不死細胞株からの適切な細胞(例えば、骨髄腫細胞、例えば、SP2/0、P3X63Ag8.653または異種骨髄腫)と、抗体を産生する細胞とを融合することによって作られる。抗体を産生する細胞を、目的の抗原で免疫付与された動物の末梢血から得てもよく、または好ましくは、脾臓またはリンパ節から得てもよい。抗体を産生する細胞は、適切な方法、例えば、ヒトの抗体を産生する細胞と、異種骨髄腫またはトリオーマとの融合、またはEpstein Barrウイルスを用いた感染による、活性化されたヒトB細胞の不死化を用いて作ることができる。(例えば、米国特許第6,197,582号(Trakht);Niedbala et.al.、Hybridoma、17:299-304(1998);Zanella et.al.、J Immunol Methods、156:205-215(1992);Gustafsson et.al.、Hum Antibodies Hybridomas、2:26-32(1991)を参照。)融合しているか、または不死化した抗体を産生する細胞(ハイブリドーマ)を、選択培養条件を用いて単離し、限界希釈法によってクローニングしてもよい。所望の特異性を有する抗体を産生する細胞は、適切なアッセイ(例えば、ELISA(例えば、マイクロタイターウェルに固定された免疫原)を用いて特定することができる。
【0084】
抗α4β7抗体または抗イディオタイプ抗α4β7抗体は、生きている細胞(例えば、培養物中の細胞)の各鎖をコードする核酸配列の発現によって作られてもよい。種々の宿主発現ベクター系を利用し、本発明の抗体を発現させてもよい。このような宿主発現系は、ビヒクルを表し、これによって、目的のコード配列が産生され、その後に精製されてもよく、また、適切なヌクレオチドコード配列を用いて形質変換またはトランスフェクションされたときに、抗α4β7抗体を系内で発現し得る細胞も表す。
【0085】
これらとしては、限定されないが、微生物、例えば、抗体コード配列を含む組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNAまたはコスミドDNA発現ベクターで形質変換された細菌(例えば、E.coli、B.subtilis);抗体コード配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質変換された酵母(例えば、Saccharomyces、Pichia);抗体コード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)で形質変換された昆虫細胞系;組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;たばこモザイクウイルス、TMV)に感染したか、または抗体コード配列を含む組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質変換された植物細胞系;または哺乳動物細胞のゲノムから誘導されたプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)または哺乳動物ウイルスから誘導されるプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含む組換え発現構築物を有する哺乳動物細胞系(例えば、COS、CHO、BHK、293、3T3、NS0細胞)が挙げられる。例えば、哺乳動物細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)は、ベクター(例えば、ヒトサイトメガロウイルス由来の主要な中間初期遺伝子プロモーター要素)と組み合わせて、抗体の効果的な発現系である(Foecking et.al.、Gene 45:101(1986);Cockett et.al.、Bio/Technology 8:2(1990))。
【0086】
細菌系では、発現される抗体分子を意図した使用に依存して、多くの発現ベクターが、有利に選択され得る。例えば、大量のこのようなタンパク質が産生される場合には、抗体分子の医薬組成物を生成するために、高レベルの融合タンパク質産物の発現を指向し、容易に精製されるベクターが望ましい場合がある。このようなベクターとしては、限定されないが、抗体コード配列が、融合タンパク質が産生されるように、ベクターフレーム内でlac Zコード領域と個々に結合していてもよい、E.coli発現ベクターpUR278(Ruther et.al.、EMBO J.2:1791(1983));pINベクター(Inouye & Inouye,Nucleic Acids Res.13:3101-3109 (1985);Van Heeke & Schuster、J.Biol.Chem.24:5503-5509(1989))などが挙げられる。グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)を含む融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現させるために、pGEXベクターも使用してもよい。一般的に、このような融合タンパク質は、可溶性であり、吸着させ、マトリックスグルタチオン-観点ビーズに結合させた後、グルタチオン存在下で溶出させることによって、溶解した細胞から簡単に精製することができる。pGEXベクターは、クローニングされた標的遺伝子産物をGST部分から放出させることができるように、トロンビンまたは第Xa因子プロテアーゼ開裂部位を含むように設計される。昆虫系では、Autographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)をベクターとして使用し、外来遺伝子を発現させる。このウイルスは、Spodoptera frugiperda細胞で成長する。抗体コード配列は、個々に、ウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)へとクローニングされ、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に置かれてもよい。
【0087】
他の実施形態では、コーティング試薬は、抗体のリガンドであり、例えば、MAdCAMまたはそのα4β7インテグリン結合フラグメント、または非MAdCAMタンパク質(例えば、免疫グロブリンG定常ドメイン)と融合した、MAdCAMのα4β7インテグリン結合フラグメントを含む融合タンパク質である。MAdCAM試薬および融合タンパク質の例は、PCT公開第WO9624673号および米国特許第7,803,904号に記載されており、その教示全体が、本明細書に参考として組み込まれる。
【0088】
HAHAアッセイ
ヒト抗α4β7抗体の活性(HAHA)は、抗薬物抗体(ADA)または抗α4β7抗体に特異的な抗体(抗ベドリズマブ抗体)を検出および/または測定することによって決定することができる。例えば、スクリーニングおよび滴定アッセイ、配座アッセイおよび中和アッセイを用いる多くの選択肢が存在する。まず、スクリーニングサンプルを例えば1:5~1:50の希釈率で、血清サンプルを測定する。陽性サンプルによって、特異性について確認し、抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)の活性を中和する能力について試験することができる。
【0089】
スクリーニングアッセイは、プレートが抗α4β7抗体でコーティングされている架橋ELISAを使用することができる。固定された抗α4β7抗体は、ビオチンに接合した抗α4β7抗体によって結合した試験サンプル中のADAを捕捉し、これをセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ストレプトアビジンによってタグ化し、次いで、酵素基質(例えばTMB)を用いて検出する。例えば、分析ソフトウェア(例えばSOFTMAX Pro3.1.2)を用いたマイクロプレートリーダー(例えばSpectramax)で測定されるような陽性発色は、サンプル中のADAの存在を示す。このアッセイのカットポイントは、例えば、ビオチン-アビジン-HRPに基づく架橋アッセイにおいて、陰性コントロールとして通常のヒト血清サンプルを使用することによって決定することができる。10の陰性コントロール血清の平均吸光度値を、陰性コントロールの標準偏差の1.65倍に加え、カットポイントを決定することができる。したがって、このカットポイントは、約5%の偽陽性率を可能にし得る。1μg/mLのベドリズマブ存在下、低いタイター反応は、検出不可能なものとなり得るように妨害されるが、高いレベルの免疫原性は、1μg/mLを超えるベドリズマブ濃度では検出可能である。例えば、標準的なアッセイの感度は、0.44ng/mlであってもよいが、0.5μg/mlのベドリズマブ存在下では、アッセイの感度は、180ng/mlになり得る。
【0090】
これらの理由のため、血清サンプルは、抗α4β7抗体の最後の用量から4週間後より後、8週間後より後、12週間後より後、または16週間後より後に採取されてもよい。前の用量とサンプリングとの間の期間が長いほど、血清薬物レベルは、典型的には、妨害レベルを下回り得る。
【0091】
別のアッセイ方法は、ストレプトアビジンでコーティングされたプレートと、架橋の他の側には架橋および重金属(例えば、ルテニウム、オスミウムまたはレニウム標識された(例えば、スルホタグを介する)抗α4β7抗体)を固定する側のストレプトアビジンでコーティングされた容器、ビーズまたはマイクロタイタープレートに固定されたビオチン標識された抗α4β7抗体とを使用する。架橋した複合体を、段階的な添加と、その間の洗浄によってプレート上に構築してもよく、または溶液で構築してもよく、架橋の両側が、希釈した血液サンプルと接触し、次いで、これをプレートに移す。この方法を用いたアッセイの一例は、3.90ng/mlの抗α4β7抗体の感度を有する。エレクトロルミネセンス(ECL)、例えば、Meso Scale Discovery Sector Imager 6000(ロックビル、MD)による、重金属標識された架橋複合体(例えば、ルテニウム標識された複合体)の検出は、HRP方法より感度が高くてもよく、および/または血清中の抗α4β7抗体の量に対して高い許容差を有していてもよい。したがって、血清薬物レベルが下がった後に、遅れてきたサンプルを待つ必要はない。いくつかの実施形態では、血清サンプルを、酸(例えば、酢酸)または低pHグリシンで前処理し、架橋抗α4β7抗体と接触させる前の患者由来の抗α4β7抗体から抗α4β7抗体を放出させ、血清中の薬物からの妨害を減らすことができる。例えば、標準的なアッセイの感度は、3.90ng/mlであってもよいが、血清中の5μg/mlのベドリズマブ存在下では、アッセイの感度は、10ng/mlになり得る。
【0092】
一実施形態では、患者由来の血清サンプル中の抗ベドリズマブ抗体を検出するためのアッセイは、血清を標準希釈ファクター(例えば、1:5、1:25、1:50、および/または1:125)で希釈することと、酸で処理して希釈したサンプルと、高pH試薬(例えば、酸を中和するための高濃度TRISバッファー)およびビオチン標識されたベドリズマブおよびルテニウム標識されたベドリズマブを含むアッセイ組成物とを、2つのタグ化されたベドリズマブ態様の間で血清から誘導された抗ベドリズマブ抗体との架橋を形成するのに十分な時間、合わせることと、この複合体を、ストレプトアビジンでコーティングされたプレートに移すことと、抗体の架橋によって複合体化さされたルテニウムのみが存在するように、プレートを洗浄することとを含む。マイクロリーダープレートにおいて、結合したルテニウム標識された複合体の検出と、エレクトロルミネセンスによってサンプルを測定することは、読み取り溶液(例えば、トリプロピルアミン)を加え、電圧をかけ、抗体架橋によってプレートに対して複合体化したルテニウム標識を刺激することによって達成することができる。
【0093】
初期のスクリーニングアッセイの後、標識されていない過剰な抗α4β7抗体を使用し、特異性を示すための配座アッセイで、サンプルをさらに試験してもよい。確認された陽性サンプルを、HAHAが、細胞に対する抗α4β7抗体(例えばベドリズマブ)の結合を中和する能力について、さらに評価してもよい。競合フローサイトメトリーに基づくアッセイは、免疫血清が、α4β7インテグリンを発現する細胞株RPMI8866に対する、標識されたベドリズマブの結合を阻害する能力を決定し、フローサイトメトリーによって検出するように設計された。
【0094】
この結果は、免疫原性状態のカテゴリーを示すことができる。陰性:陽性のHAHAサンプルはなし、陽性:少なくとも1つの陽性HAHAサンプルあり、一時的に陽性:少なくとも1つの陽性HAHAサンプルがあり、連続的に陽性のHAHAサンプルはなし、永続的に陽性:少なくとも2つ以上の連続的な陽性HAHAサンプルあり。
【0095】
陰性患者は、抗α4β7抗体に反応するようであり、この抗体での治療を続けることができる。永続的に陽性の患者は、抗α4β7抗体の高いクリアランスを有するようであり、抗α4β7抗体治療に反応しない場合がある。陽性患者は、抗α4β7抗体の高いクリアランスを有する場合があり、抗α4β7抗体に反応しない場合がある。陽性患者は、抗α4β7抗体の別の用量から2、3、4、5または6週間後に、さらなる血清サンプルを有し、永続的に陽性であるか、一時的に陽性であるかを決定することができる。一時的に陽性の患者は、抗α4β7抗体に反応するようであり、これらの患者の治療は、続けることができる。
【0096】
免疫原性レベルのタイターも決定してもよい。タイターカテゴリーは、≧5(低い)、≧50、≧125、≧625および≧3125(高い)を含む。陽性サンプルにおいて高いタイターを有する患者は、抗α4β7抗体の高いクリアランスを有する場合があり、抗α4β7抗体治療に反応しない場合がある。陽性サンプルにおいて低いタイターを有する患者は、抗α4β7抗体治療に反応し得る。
【0097】
本発明を、以下の実施例を参照すれば、さらに完全に理解されるだろう。しかし、これらは、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。あらゆる文献および特許引用文献は、本明細書に参考として組み込まれる。
【実施例】
【0098】
実施例1
第3相のベドリズマブ臨床治験(GEMINI I)からのデータは、従来の集合薬物動態(PK)分析に基づき、6週目の転帰、部分Mayoスコア(PMS)、臨床反応(CR)および臨床的寛解(RM)、個々の特有の共変量、個々の予想される血漿ベドリズマブ濃度およびクリアランスを含んでいた(Rosario et.al.、2015 Alimentary Pharmacology & Therapeutics 42(2):188-202)。この試験における用量範囲を制限した情報から、曝露-応答(E-R)関係についての当惑する因果推論についての可能性を得て、したがって、傾向スコアに基づく症例に適合する分析を行った。
【0099】
各クリアランスの四分位数について、ロジスティック傾向スコアモデルを、全ての測定した共変量を予測因子として用い、治療した被験体の集合および全てのコントロールに適合させた。次いで、適合させた傾向スコアに基づき、傾向スコア分布の標準偏差の安定した概算値を得た。
【0100】
各クリアランスの四分位数について、以前の工程で得られた標準偏差の安定した概算値の0.2倍の範囲内のコントロールアーム中の被験体から(交換しつつ)マッチを無作為に選択した。特定の治療された被験体について、この範囲内のコントロールが存在しない場合、治療された被験体は、マッチしないままにしておき、転帰分析から除外した。
【0101】
次いで、以前の工程を1000回繰り返し、各候補マッチについて、全ての共変数の主要な効果について、二元配置相互作用について、絶対的な標準化された平均差(ASDM)を計算した。次いで、マッチしたコントロールの最適な部分集合を、全ての主要な効果についてASDM<0.2を満足した相互作用効果の中で最も小さな最大ASDMを有する候補マッチとして特定した。症例に適合する結果が得られ、クリアランスの四分位数と、予想される6週目および定常状態でのトラフベドリズマブ濃度を、マッチしていないデータと、症例にマッチしたデータの両方に関する転帰と比較した。
【0102】
結果:全ての曝露法および全ての転帰についての関係は、生データの四分位数分析で明らかになったが、関係は、6週目のPMSと、RMについてよりもCRエンドポイントでさらに安定していた。潜在的交絡についての症例に適合する調整をした後、PMSおよびCRエンドポイントについて、依然として明確な関係が明らかであった。ベドリズマブクリアランスが0.14L/日未満の個人は、有効性転帰の減少と関係があった(PMSの減少は2単位未満、臨床反応のオッズ比は4未満)。このクリアランスのカットポイント0.14L/日と、承認されたベドリズマブのIVでの投薬計画が得られたら、目標となる12.7μg/mLを超える定常状態でのベドリズマブトラフ濃度が計算された。公開されている集合PKモデルを用いたシミュレーションを行い、この試験において5週目の血漿ベドリズマブ濃度に基づき、1)高クリアランスの個体を特定し、2)定常状態での目標を達成するための用量の調整を推奨した。
【0103】
概算されたE-R関係は、クリアランスが高いUC患者における臨床転帰の用量個別化の影響を評価する将来の試験設計に情報を与えるだろう。
【0104】
実施例2:用量カリキュレータアルゴリズムで実施される方法
症例に適合する曝露とクリアランスの反応分析は、高いクリアランス個体を特定するための目標のクリアランス値を与え、将来的な投薬計画を達成するためのベドリズマブトラフ濃度の目標を与えた(14週目および定常状態)。
【0105】
用量カリキュレータアルゴリズムは、患者のベースライン共変量(重量、アルブミン)、ベドリズマブ投薬歴、5週目および13週目に観察された血漿ベドリズマブ濃度を入力すると、個々の患者について最良のアルゴリズムを選択するように設計された。このアルゴリズムは、既に定義した集合導体力学モデルに基づいている(Rosario et.al.、2015、Alimentary Pharmacology & Therapeutics 42 (2):188-202)。
【0106】
この方法論は、MAP(最大事後確率)Bayesian概算方法(「Bayesian分析-MIT OpenCourseWare」、Probabilistic Modeling and Bayesian Analysis、Latham、B.and Rudin、C、MIT course 15.097 notes、2012)に基づくものであり、上述の入力と、従来の集合薬物動態モデルが与えられたときに、個々の患者のクリアランスを概算することを目的とする。次いで、このアルゴリズムに、個々の患者の情報と、クリアランス概算値を適用し、それぞれの候補投薬計画の予想される転帰をシミュレーションする。最適な投薬計画は、投薬間隔の時間を最大限にしつつ、目標ベドリズマブ濃度と少なくとも等しいトラフ濃度を達成するものである。
【0107】
実施例3:改変されたベドリズマブ用量が、中程度から重篤な活動性潰瘍性大腸炎を有する非レスポンダーにおける治療転帰に及ぼす影響
第4相の非盲検の複数施設による試験を使用し、ベドリズマブのIVでの改変投薬の有効性および安全性を観察し、30週間の治療期間にわたって、ベドリズマブのIVでの標準的な投薬と比較した。この試験には、中程度から重度の活動性潰瘍性大腸炎(UC)を有する成人被験体が登録している。高いベドリズマブ薬物クリアランスを有する100人までの非レスポンダー被験体を無作為化するために、約200人の被験体が登録している。
【0108】
この試験は、28日間のスクリーニング期、6週間の導入期、24週間の無作為化された治療期、その後、18週間のフォローアップ安全性通院、試験薬物の最後の用量投与から6ヶ月後まで、電話による長期間にわたるフォローアップ(LTFU)安全性観察で構成されていた。
【0109】
全ての適格な被験体は、1日目から2週目(導入期に)に300mgのベドリズマブをIVで用いる導入療法を受けた。高いベドリズマブクリアランス(0.14L/日より多いか、または所定の5週目の血清ベドリズマブ濃度閾値(<50μg/mL))を有すると5週目に評価され、6週目に非レスポンダーである(部分Mayoスコアに基づく)と評価された被験体を無作為化し、標準的な用量または改変用量のベドリズマブをIVで摂取させた。6週目に部分Mayoスコアに基づき非レスポンダーであり、高いベドリズマブクリアランスを有する(0.14L/日より多いか、または<50μg/mLの血清ベドリズマブ濃度閾値を満たす)と5週目に評価された被験体は、6週目に1:1比で無作為化を続け、改変用量または標準用量のベドリズマブをIV治療で摂取させる。改変された用量アームに対して無作為化された被験体について、用量カリキュレータアルゴリズムを使用し、投薬計画を選択してもよい。
【0110】
ベドリズマブでのIV標準治療は、8週間ごとに300mg投与される(6週目、14週目、22週目)。ベドリズマブのIV改変治療。6週目に、用量最適化アームについて無作為化した全ての被験体を、被験体の5週目の血清ベドリズマブ濃度に基づき、投薬計画Aまたは投薬計画B(以下)のいずれかに割り当てる。血清ベドリズマブ濃度が50μg/mL未満であり、30μg/mL以上である被験体は、投薬計画Aに割り当てられ、血清ベドリズマブ濃度が30μg/mL未満の被験体は、投薬計画Bに割り当てられる。
【0111】
投薬計画A:ベドリズマブIV600mg(6週目)、300mgのQ4W(10、14、18、22、26週目)、または
投薬計画B:ベドリズマブIV600mg(6週目)、600mgのQ4W(10、14、18、22、26週目)。
【0112】
14週目およびそれ以降、被験体の大部分の最近の血清ベドリズマブ濃度が90μg/mLを超えない限り(例えば、14週目の前の13週目のPKサンプリング)投薬を既に計画した通りに続ける。
【0113】
または、6週目に部分Mayoスコアによって非レスポンダーである患者は、600mgの抗体が投与されてもよく、次いで、用量カリキュレータアルゴリズムを使用し、目標の曝露を達成するのに最も高い確率が得られる最も長い間隔で10週目に投与される用量(例えば、0、300または600mg)を選択してもよい。14週目以降、投薬は、12.7μg/mLの定常状態を達成するためのモデルに基づくアルゴリズムを用い、13週目の血清ベドリズマブ濃度、投薬歴、ベースライン共変量情報に基づき、アップデートされたベドリズマブクリアランス概算値に基づく。改変用量アームにおける被験体について、最も長い間隔を有する頻度で、目標の定常状態の曝露である12.7μg/mLを達成するか、または維持するのに最も高い確率に基づき、以下の4種類の投薬計画の中から1のアルゴリズムを選択する。
【0114】
ベドリズマブIV 300mg Q8W(14週目および33週目)
ベドリズマブIV 300mg Q4W(14、18、22および26週目)
ベドリズマブIV 600mg Q8W(14週目および22週目)
ベドリズマブIV 600mg Q4W(14、18、22および26週目)。
【0115】
この試験の主な目的は、高いベドリズマブクリアランスを有し、6週目に非レスポンダーである潰瘍性大腸炎被験者において、30週目に、ベドリズマブIVの用量改変が、粘膜治癒(30週目でMayoの内視鏡サブスコアが1点以下)に及ぼす影響を、標準的なベドリズマブIV投薬計画と比較することによって決定することである。第2のエンドポイントは、以下のものを含むだろう。
・臨床的寛解を達成する被験体の割合であって、ここで、30週目に、臨床的寛解は、完全Mayoスコアが2点以下であり、個々のサブスコアが1点より大きくないことであると定義される、割合。
・臨床的寛解を達成する被験体の割合であって、ここで、臨床反応は、30週目に、直腸出血サブスコアが1点以上(≧1)、または完全直腸出血スコアが1点以下(≦1)の減少を伴いつつ、完全Mayoスコアが3点以上、ベースライン(1日目)から30%以上減少することと定義される、割合。
・臨床反応を達成する被験体の割合(部分Mayoスコアに基づく)であって、14週目に、直腸出血サブスコアが1点以上(≧1)、または完全直腸出血スコアが1点以下(≦1)の減少を伴いつつ、部分Mayoスコアが2点以上、ベースラインから25%以上減少することと定義される、割合。
・経口コルチコステロイド類をベースラインで用い、コルチコステロイド類を中断し、30週目に臨床的寛解状態である被験体の割合。
配列番号1
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
本発明は次の実施態様を含む。
[1]
ベドリズマブ非レスポンダーを治療する方法であって、前記方法は、非レスポンダーに対し、用量600mgでベドリズマブを静脈内投与することを含む、前記方法。
[2]
ベドリズマブのその次の用量と、その後の用量が300mgである、上記[1]に記載の方法。
[3]
前記600mgの用量を2回以上投与し、投薬間の間隔が2~8週間である、上記[1]に記載の方法。
[4]
前記用量が4週間間隔で投与される、上記[2]または[3]に記載の方法。
[5]
臨床反応および/または寛解が起こるまで、600mgの用量が投与される、上記[3]または[4]に記載の方法。
[6]
粘膜治癒が起こるまで、600mgの用量が投与される、上記[3]または[4]に記載の方法。
[7]
ベドリズマブのトラフ血清濃度が12μg/mlより大きくなるまで、600mgの用量が投与される、上記[3]または[4]に記載の方法。
[8]
ベドリズマブの血清濃度が90μg/mlより大きくなるまで、600mgの用量が投与される、上記[3]または[4]に記載の方法。
[9]
ベドリズマブのトラフ血清濃度が12μg/mlより大きくなるか、またはベドリズマブの血清濃度が90μg/mlより大きくなったら、前記用量を300mgまで減らすことをさらに含む、上記[7]または[8]に記載の方法。
[10]
ベドリズマブのトラフ血清濃度が12μg/mlより大きくなるか、またはベドリズマブの血清濃度が90μg/mlより大きくなったら、前記用量を8週間隔まで減らすことをさらに含む、上記[4]または[9]に記載の方法。
[11]
前記ベドリズマブ非レスポンダーが、炎症性腸疾患を患うヒト患者である、上記[1]~[10]のいずれかに記載の方法。
[12]
前記炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎である、上記[11]に記載の方法。
[13]
前記治療によって粘膜治癒が生じる、上記[11]または[12]に記載の方法。
[14]
前記治療によって臨床反応および/または臨床的寛解が生じる、上記[11]~[13]のいずれかに記載の方法。
[15]
前記治療によって、コルチコステロイド使用が中断される、上記[11]~[14]のいずれかに記載の方法。
[16]
前記患者が、免疫調節剤、コルチコステロイド類またはTNFαアンタゴニストのうち少なくとも1つに対して不十分な反応を有するか、これらに対する反応を失っているか、またはこれらに対して不耐性である、上記[11]~[15]のいずれかに記載の方法。
[17]
ベドリズマブ非レスポンダーを治療する方法であって、前記方法が、
a)患者におけるベドリズマブの濃度、体重およびアルブミンレベルを測定し、その少なくとも2週間前に、前記患者は、ベドリズマブの導入期投薬計画を受けていた工程と、
b)工程a)での測定が高クリアランスを示す患者を選択する工程と、
c)前記選択した患者に対し、600mgのベドリズマブを投与することによってIBDを治療する工程とを含む、前記方法。
[18]
ベドリズマブの濃度が血清濃度である、上記[17]に記載の方法。
[19]
前記血清濃度がトラフ血清濃度である、上記[18]に記載の方法。
[20]
前記血清濃度が13μg/ml未満である場合、その患者を選択する、上記[19]に記載の方法。
[21]
前記濃度測定を使用し、クリアランスの速度を計算する、上記[17]に記載の方法。
[22]
クリアランスの速度が0.14L/日より大きい場合、その患者を選択する、上記[21]に記載の方法。
[23]
前記血清濃度が50μg/ml未満である場合、その患者を選択する、上記[18]に記載の方法。
[24]
前記ベドリズマブ非レスポンダーが、炎症性腸疾患を患うヒト患者である、上記[17]~[23]のいずれかに記載の方法。
[25]
前記炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎である、上記[24]に記載の方法。
[26]
前記患者が、粘膜治癒している、上記[17]~[25]のいずれかに記載の方法。
[27]
IBDを患うベドリズマブ非レスポンダーを治療する方法であって、前記方法が、
a)前記IBDを患うベドリズマブ非レスポンダーに対し、2回分の用量のベドリズマブを投与し、1回目の用量を前記ベドリズマブ非レスポンダーに投与してから約2週間後に2回目の用量を投与する工程と、
b)前記2回目の用量の投与から少なくとも2週間後に決定された13μg/mL未満血清濃度を有するベドリズマブ非レスポンダーを選択する工程と、
c)前記選択した患者に対し、600mgのベドリズマブを投与することによってIBDを有する患者を治療する工程とを含む、前記方法。
[28]
ベドリズマブの前記1回目の用量投薬の6週間後に600mgを投与する、上記[27]に記載の方法。
[29]
IBDを患うベドリズマブ非レスポンダーを治療する方法であって、前記方法が、
a)前記IBDを患うベドリズマブ非レスポンダーに対し、2回分の用量のベドリズマブを投与し、1回目の用量を前記ベドリズマブ非レスポンダーに投与してから約2週間後に2回目の用量を投与する工程と、
b)約3~4週間の期間、待つ工程と、
c)前記患者のベドリズマブの血清濃度を測定する工程と、
d)前記患者の血清濃度が13μg/mL未満である場合、前記患者に1回以上の用量600mgのベドリズマブを投与する工程とを含む、前記方法。
[30]
前記患者の血清濃度が、1~13μg/mlである、上記[17]または[29]に記載の方法。
[31]
前記ベドリズマブ血清濃度が、サンドイッチELISAアッセイによって測定される、上記[18]、[19]、[27]または[29]のいずれかに記載の方法。
[32]
ベドリズマブ非レスポンダーを特定するための方法であって、前記方法が、
a)IBDを患っており、その前の4ヶ月間に少なくとも2回分の用量のベドリズマブを摂取した患者から得られた血清サンプルにおけるベドリズマブの濃度を測定する工程と、
b)前記サンプル中の血清濃度が13μg/ml未満である場合に、その患者をベドリズマブ非レスポンダーであると特定する工程を含む、前記方法。
[33]
前記患者が、その前の3ヶ月間に少なくとも2回分の用量のベドリズマブを摂取している、上記[32]に記載の方法。
[34]
前記患者が、その前の2ヶ月間に少なくとも2回分の用量のベドリズマブを摂取している、上記[32]に記載の方法。
[35]
より高い用量でのベドリズマブを用いた連続治療のためのベドリズマブ非レスポンダーを特定するための方法であって、前記方法が、
a)IBDを患っており、その前の4ヶ月間に少なくとも2回分の用量のベドリズマブを投与された患者から得られた生体サンプルにおけるベドリズマブのクリアランスを測定する工程と、
b)前記患者におけるクリアランスが0.14L/日より大きい場合、または前記血清濃度が50μg/mL未満である場合、より高い用量でベドリズマブを用いた連続治療のための患者であると特定する工程とを含む、前記方法。
[36]
前記測定から1週間後に部分Mayoスコアを得ることと、このスコアが臨床反応を示さない場合、より高い用量でベドリズマブを用いた連続治療のための患者であると特定することとをさらに含む、上記[35]に記載の方法。
[37]
抗ベドリズマブ抗体を測定することをさらに含む、上記[35]に記載の方法。
[38]
アルブミン濃度を測定することをさらに含む、上記[35]に記載の方法。
[39]
体重を測定することをさらに含む、上記[38]に記載の方法。
[40]
3.2g/dL未満のアルブミン濃度であれば、さらに、前記患者は、より高い用量でベドリズマブを用いた連続治療のための患者であると特定される、上記[39]に記載の方法。
[41]
ベドリズマブ非レスポンダーを治療するための方法であって、前記方法が、
a)IBDを患っており、その前の4ヶ月間に少なくとも2回の用量300mgのベドリズマブを投与された患者から得られた生体サンプルにおけるベドリズマブのクリアランスを測定する工程と、
b)前記患者におけるクリアランスが0.14L/日より大きい場合、600mgの用量でベドリズマブを投与する工程とを含む、前記方法。
[42]
抗ベドリズマブ抗体を測定することをさらに含む、上記[41]に記載の方法。
[43]
アルブミン濃度を測定することをさらに含む、上記[41]に記載の方法。
[44]
体重を測定することをさらに含む、上記[43]に記載の方法。
[45]
前記アルブミン濃度が3.2g/dL未満である、上記[44]に記載の方法。
[46]
ベドリズマブ非レスポンダーを治療するための方法であって、前記方法が、
a)IBDを患っており、その前の5週間に少なくとも2回の用量300mgのベドリズマブを投与された患者から得られた血清サンプルにおけるベドリズマブの濃度を測定する工程と、
b)前記ベドリズマブの血清濃度が50μg/mL未満である場合、600mgの用量でベドリズマブを投与する工程とを含む、前記方法。
[47]
前記測定から1週間後に部分Mayoスコアを得ることをさらに含み、部分Mayoスコアが、臨床反応を示さない、上記[46]に記載の方法。
[48]
600mgの用量投与が、ベドリズマブの前記1回目の用量投与の6週間後である、上記[46]または[47]に記載の方法。
[49]
前記ベドリズマブの血清濃度が、30μg/mL以上、50μg/mL未満である、上記[46]または[47]に記載の方法。
[50]
600mgの用量投与から4週間後に、その後の用量300mgのベドリズマブ投与をさらに含む、上記[49]に記載の方法。
[51]
4週間間隔で、1回以上のさらなる用量600mgのベドリズマブ投与をさらに含む、上記[46]~[48]のいずれかに記載の方法。
[52]
4週間間隔で、1回以上のさらなる用量300mgのベドリズマブ投与をさらに含む、上記[50]または[51]のいずれかに記載の方法。
[53]
その前の用量投与から3週間後に、ベドリズマブの血清濃度を測定することをさらに含む、上記[50]~[52]のいずれかに記載の方法。
[54]
前記濃度が90μg/mLより高いときは用量を減らすことをさらに含み、600mgの用量を300mgに減らすか、または300mgの用量を8週間間隔で投与する、上記[53]に記載の方法。
[55]
抗ベドリズマブ抗体を測定することをさらに含む、上記[46]~[54]のいずれかに記載の方法。
[56]
アルブミン濃度を測定することをさらに含む、上記[55]に記載の方法。
[57]
体重を測定することをさらに含む、上記[56]に記載の方法。
[58]
3.2g/dL未満のアルブミン濃度であれば、さらに、前記患者は、より高い用量でベドリズマブを用いた連続治療のための患者であると特定される、上記[57]に記載の方法。
[59]
前記炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎である、上記[46]~[58]のいずれかに記載の方法。
[60]
前記治療によって粘膜治癒が起こる、上記[46]~[59]のいずれかに記載の方法。
[61]
前記治療によって臨床反応および/または臨床的寛解が起こる、上記[46]~[60]のいずれかに記載の方法。
[62]
前記治療によって、コルチコステロイド使用が中断される、上記[46]~[61]のいずれかに記載の方法。
[63]
前記患者が、免疫調節剤、コルチコステロイド類またはTNFαアンタゴニストのうち少なくとも1つに対して不十分な反応を有するか、これらに対する反応を失っているか、またはこれらに対して不耐性である、上記[46]~[62]のいずれかに記載の方法。
【配列表】