(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】ガス吸気システム、原子層堆積装置および方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/455 20060101AFI20230104BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20230104BHJP
【FI】
C23C16/455
H01L21/205
(21)【出願番号】P 2021516433
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(86)【国際出願番号】 CN2018121168
(87)【国際公開番号】W WO2020062607
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-22
(31)【優先権主張番号】201811149949.2
(32)【優先日】2018-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510182294
【氏名又は名称】北京北方華創微電子装備有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING NAURA MICROELECTRONICS EQUIPMENT CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.8 Wenchang Avenue Beijing Economic-Technological Development Area, Beijing 100176, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】魏 景峰
(72)【発明者】
【氏名】傅 新宇
(72)【発明者】
【氏名】▲栄▼ 延▲棟▼
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-173824(JP,A)
【文献】特許第5764228(JP,B1)
【文献】特許第5800957(JP,B1)
【文献】特開2017-123425(JP,A)
【文献】特開2005-303292(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102312221(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106401901(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00-16/56
H01L 21/205
H01L 21/365
H01L 21/285
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス分配デバイスと連通し、前記ガス分配デバイスを通じて反応チャンバ内へ反応先駆物質を導入するべく構成され、かつガス吸気オン・オフ・バルブが備えられたガス吸気パイプラインを包含するガス吸気システムであって、
前記ガス分配デバイスに連通する入口と、前記反応チャンバに連通する出口と、排気オン・オフ・バルブ
とが備えられた排気パイプライン
を包含し、
前記排気パイプラインは、前記ガス吸気オン・オフ・バルブが閉じられているときに前記ガス分配デバイス内の残留反応先駆物質を前記反応チャンバに導入するように構成されている、ガス吸気システム。
【請求項2】
前記ガス吸気パイプラインは、前記ガス分配デバイスを通じて前記反応チャンバ内へ異なる反応先駆物質を導入するべく構成された少なくとも2つのガス吸気パイプラインを包含し、前記少なくとも2つのガス吸気パイプラインのそれぞれには、前記ガス吸気オン・オフ・バルブが備えられる、請求項1に記載のガス吸気システム。
【請求項3】
あらかじめ決定済みの体積の反応先駆物質を貯蔵する能力のあるバッファ・デバイスが、前記ガス吸気パイプライン上であり、かつ前記ガス吸気オン・オフ・バルブの上流に配置される、請求項1または2に記載のガス吸気システム。
【請求項4】
前記バッファ・デバイスは、
前記ガス吸気パイプラインの内径より大きい内径を有する管状のキャビティ、
を包含する、請求項3に記載のガス吸気システム。
【請求項5】
前記ガス吸気パイプラインには、さらに、マス・フロー・コントローラが備えられる、請求項1または2に記載のガス吸気システム。
【請求項6】
前記ガス吸気オン・オフ・バルブは、電磁バルブである、請求項1または2に記載のガス吸気システム。
【請求項7】
前記排気オン・オフ・バルブは、電磁バルブである、請求項1に記載のガス吸気システム。
【請求項8】
前記ガス吸気パイプラインは、前記ガス分配デバイスを通じて前記反応チャンバ内へSiH
4およびWF
6を導入するべく構成された2つのガス吸気パイプラインを包含する、請求項2に記載のガス吸気システム。
【請求項9】
反応チャンバと、前記反応チャンバのトップに配置されたガス分配デバイスと、ガス吸気システムと、フォアラインとを包含し、それにおいて前記ガス吸気システムが、請求項1から8のいずれか一項に記載の前記ガス吸気システムである、原子層堆積装置。
【請求項10】
請求項9に記載の原子層堆積装置を利用することによって、堆積プロセスを実施する原子層堆積方法であって、
堆積段階において、反応先駆物質が前記ガス分配デバイスを通じて前記反応チャンバ内へ導入されるように、前記ガス吸気オン・オフ・バルブを開き、かつ同時に前記排気オン・オフ・バルブが閉じることと、
パージ段階において、前記ガス分配デバイス内に残された前記反応先駆物質が前記反応チャンバ内へ排出され、その後、前記反応先駆物質が前記フォアラインを通じて前記反応チャンバから排出されるように、前記ガス吸気オン・オフ・バルブを閉じ、かつ同時に前記排気オン・オフ・バルブを開くことと、
を包含する、原子層堆積方法。
【請求項11】
前記ガス吸気パイプラインは、2つのガス吸気パイプラインを包含し、前記2つのガス吸気パイプラインは、それぞれ前記ガス分配デバイスを通じ、前記反応チャンバ内へ第1の反応先駆物質を導入するべく構成された第1のガス吸気パイプラインおよび第2の反応先駆物質を導入するべく構成された第2のガス吸気パイプラインであり;かつ、前記ガス吸気オン・オフ・バルブは、2つのガス吸気オン・オフ・バルブを包含し、前記2つのガス吸気オン・オフ・バルブは、それぞれ、前記第1のガス吸気パイプライン上に配置される第1のガス吸気オン・オフ・バルブ、および前記第2のガス吸気パイプライン上に配置される第2のガス吸気オン・オフ・バルブであり、
前記原子層堆積方法は:
第1の堆積段階において、前記第1の反応先駆物質が前記ガス分配デバイスを通じて前記反応チャンバ内へ導入されるように、前記第1のガス吸気オン・オフ・バルブを開き、かつ同時に前記第2のガス吸気オン・オフ・バルブおよび前記排気オン・オフ・バルブを閉じることと;
第1のパージ段階において、前記ガス分配デバイス内に残されている前記第1の反応先駆物質が前記反応チャンバ内へ排出され、その後、前記第1の反応先駆物質が前記フォアラインを通じて前記反応チャンバから排出されるように、前記第1のガス吸気オン・オフ・バルブを閉じ、かつ同時に前記排気オン・オフ・バルブを開くことと;
第2の堆積段階において、前記第2の反応先駆物質が前記ガス分配デバイスを通じて前記反応チャンバ内へ導入されるように、前記第2のガス吸気オン・オフ・バルブを開き、かつ同時に前記第1のガス吸気オン・オフ・バルブおよび前記排気オン・オフ・バルブを閉じることと;
第2のパージ段階において、前記ガス分配デバイス内に残されている前記第2の反応先駆物質が前記反応チャンバ内へ排出され、その後、前記第2の反応先駆物質が前記フォアラインを通じて前記反応チャンバから排出されるように、前記第2のガス吸気オン・オフ・バルブを閉じ、かつ同時に前記排気オン・オフ・バルブを開くことと;
前記第1の堆積段階と、前記第1のパージ段階と、前記第2の堆積段階と、前記第2のパージ段階とからなるサイクルを、少なくとも1回実施することと、
を包含する、請求項10に記載の原子層堆積方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、半導体製造テクノロジの分野、特にガス吸気システム、原子層堆積装置、および原子層堆積方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子層堆積(ALD)は、基板の表面上に、層毎の単原子膜の形式で物質をめっきする方法を言い、単原子膜は、循環的成長プロセスを有し、各調製サイクルは、概して2つの自己制限的な反応を含む。第1の反応先駆物質が、特定温度において反応チャンバ内へ導入されることによって、その第1の反応先駆物質の分子が、基板の表面上に(主として、化学吸着を通じて)活性剤として吸着される。第1の反応先駆物質の吸着が飽和状態に達すると化学吸着が完了し、第1の反応先駆物質と基板の表面の間における反応の自己制限的なコントロール(第1の自己制限的な反応)が実現される。第1の自己制限的な反応が完了した後、第1の反応先駆物質が(一般に、第1の反応先駆物質と基板の表面の間の反応の副次的生成物とともに)特定のパージング方法を用いて反応チャンバからパージされ、その後、第2の反応先駆物質が導入される;この第2の反応先駆物質は、活性剤(第1の反応先駆物質)と反応して基板の表面上に吸着され、基板の表面上に単層の調製されるべき膜を生成し、ガス状の副次的生成物を放出する。
【0003】
図1に示されているとおり、2つの反応先駆物質の例としてSiH
4およびWF
6を取りあげるが、ガス吸気システムは、シャワーヘッドを通じて反応チャンバ内へSiH
4およびWF
6のそれぞれを導入するべく構成された2つのガス吸気パイプライン(A、B)を含み、これら2つのガス吸気パイプライン(A、B)のそれぞれは、ガス流をコントロールするべく構成されたマス・フロー・コントローラ(MFC)を備えている。それに加えて、2つのガス吸気パイプライン(A、B)のそれぞれには、反応チャンバ内への2つの反応先駆物質の交互導入が達成されるように、ガス吸気パイプラインの接続または接続解除を実現するべく構成された高速切り換えバルブ(これ以降、ALDバルブと呼ぶ)が備えられる。さらに、それに加えて、ガス吸気システムは、それぞれが、ガス吸気パイプライン(A、B)を反応チャンバのフォアラインに接続してガス吸気パイプラインをフォアラインと連通させる2つの排気パイプライン(C、D)を含み、フォアラインは、残留ガスまたは副次的生成物を排出するべく構成され、2つの排気パイプライン(C、D)のそれぞれには、反応チャンバ内へ2つの反応先駆物質が交互に導入されている間に、反応チャンバ内へ導入されなかった反応先駆物質を、フォアラインを通じて排出するALDバルブが備えられている。
【0004】
上記のガス吸気システムを用いると、ALDバルブが交互に開閉されて、反応チャンバ内への2つの反応先駆物質の高速かつ交番する導入が可能になり、ALD薄膜の調製が完了する。しかしながら、上記のガス吸気システムは、実際的な応用において以下のような問題を必然的に有する。
【0005】
第一に、ALDバルブを閉じると、反応先駆物質が反応チャンバ内に入ることを防止できるが、ALDバルブが設置されているガス吸気パイプライン内の圧力の増加を生じさせる。したがって、ALDバルブが再び開かれたときに、反応先駆物質が反応チャンバに極めて不安定な圧力を伴って入って流れることになり、MFCがそのガス流をコントロールすることは困難である。
【0006】
第二に、ある時間期間にわたって、反応先駆物質がフォアライン内へも導入されることから、反応チャンバに入るガスの総量が減少してチャンバ内側に不安定なプロセス圧力がもたらされ、その結果、ガスの総流量およびチャンバ内側のプロセス圧力を正確に安定化させ、かつコントロールすることが困難になる;それに加えて、ガス吸気パイプライン内の流量変動は、チャンバ内側の圧力変動に影響を及ぼしてチャンバ内の粒子を増加させるに充分であり、それによってプロセスの成果、特に膜の一様性に影響が及ぼされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記を鑑み、この開示の実施態様は、ALDプロセスに適用されるガス吸気システムおよびコントロール方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この開示の実施態様の1つの側面によれば、ガス分配デバイスと連通し、前記ガス分配デバイスを通じて反応チャンバ内へ反応先駆物質を導入するべく構成され、かつガス吸気オン・オフ・バルブが備えられたガス吸気パイプラインを含むガス吸気システムが提供され;かつ、前記ガス吸気システムは、さらに、
前記ガス分配デバイスおよび前記反応チャンバの両方と連通し、かつ排気オン・オフ・バルブが備えられた排気パイプライン、
を含む。
【0009】
オプションにおいては、前記ガス吸気パイプラインが、前記ガス分配デバイスを通じて前記反応チャンバ内へ異なる反応先駆物質を導入するべく構成された少なくとも2つのガス吸気パイプラインを含み、前記少なくとも2つのガス吸気パイプラインのそれぞれには、前記ガス吸気オン・オフ・バルブが備えられる。
【0010】
オプションにおいては、あらかじめ決定済みの体積の反応先駆物質を貯蔵する能力のあるバッファ・デバイスが、前記ガス吸気パイプライン上であり、かつ前記ガス吸気オン・オフ・バルブの上流に配置される。
【0011】
オプションにおいては、前記バッファ・デバイスが、
前記ガス吸気パイプラインの内径より大きい内径を有する管状のキャビティ、
を含む。
【0012】
オプションにおいては、前記ガス吸気パイプラインに、さらに、マス・フロー・コントローラが備えられる。
【0013】
オプションにおいては、前記ガス吸気オン・オフ・バルブが、電磁バルブである。
【0014】
オプションにおいては、前記排気オン・オフ・バルブが、電磁バルブである。
【0015】
オプションにおいては、前記ガス吸気パイプラインが、前記ガス分配デバイスを通じて前記反応チャンバ内へSiH4およびWF6を導入するべく構成された2つのガス吸気パイプラインを含む。
【0016】
この開示の別の側面によれば、この開示により提供されるALD装置を利用することによって堆積プロセスを実施するALD方法が提供され、前記ALD方法は、
堆積段階において、反応先駆物質が前記ガス分配デバイスを通じて前記反応チャンバ内へ導入されるように、前記ガス吸気オン・オフ・バルブを開き、かつ同時に前記排気オン・オフ・バルブを閉じることと、
パージ段階において、前記ガス分配デバイス内に残された前記反応先駆物質が前記反応チャンバ内へ排出され、その後、前記反応先駆物質が前記フォアラインを通じて前記反応チャンバから排出されるように、前記ガス吸気オン・オフ・バルブを閉じ、かつ同時に前記排気オン・オフ・バルブを開くことと、
を含む。
【0017】
オプションにおいては、前記ガス吸気パイプラインが、2つのガス吸気パイプラインを含み、前記2つのガス吸気パイプラインが、それぞれ前記ガス分配デバイスを通じ、前記反応チャンバ内へ第1の反応先駆物質を導入するべく構成された第1のガス吸気パイプラインおよび第2の反応先駆物質を導入するべく構成された第2のガス吸気パイプラインであり;かつ、前記ガス吸気オン・オフ・バルブが、2つのガス吸気オン・オフ・バルブを含み、前記2つのガス吸気オン・オフ・バルブは、それぞれ、前記第1のガス吸気パイプライン上に配置される第1のガス吸気オン・オフ・バルブ、および前記第2のガス吸気パイプライン上に配置される第2のガス吸気オン・オフ・バルブであり、
前記ALD方法が、
第1の堆積段階において、前記第1の反応先駆物質が前記ガス分配デバイスを通じて前記反応チャンバ内へ導入されるように、前記第1のガス吸気オン・オフ・バルブを開き、かつ同時に前記第2のガス吸気オン・オフ・バルブおよび前記排気オン・オフ・バルブを閉じることと;
第1のパージ段階において、前記ガス分配デバイス内に残されている前記第1の反応先駆物質が前記反応チャンバ内へ排出され、その後、前記第1の反応先駆物質が前記フォアラインを通じて前記反応チャンバから排出されるように、前記第1のガス吸気オン・オフ・バルブを閉じ、かつ同時に前記排気オン・オフ・バルブを開くことと;
第2の堆積段階において、前記第2の反応先駆物質が前記ガス分配デバイスを通じて前記反応チャンバ内へ導入されるように、前記第2のガス吸気オン・オフ・バルブを開き、かつ同時に前記第1のガス吸気オン・オフ・バルブおよび前記排気オン・オフ・バルブを閉じることと;
第2のパージ段階において、前記ガス分配デバイス内に残されている前記第2の反応先駆物質が前記反応チャンバ内へ排出され、その後、前記第2の反応先駆物質が前記フォアラインを通じて前記反応チャンバから排出されるように、前記第2のガス吸気オン・オフ・バルブを閉じ、かつ同時に前記排気オン・オフ・バルブを開くことと;
前記第1の堆積段階と、前記第1のパージ段階と、前記第2の堆積段階と、前記第2のパージ段階とからなるサイクルを、少なくとも1回実施することと、
を含む。
【0018】
ガス吸気システムの技術的解決策において、この開示のALD装置およびALD方法は、ガス分配デバイスおよび反応チャンバと連通する排気パイプラインを提供することによって、ガス分配デバイス内に残された反応先駆物質が、ガス吸気パイプライン上のガス吸気オン・オフ・バルブが閉じられているとき反応チャンバ内へ流れることが可能であり、かつ、その後、反応チャンバのフォアラインを通って排出されるが、フォアライン内へ反応先駆物質が直接排出される従来技術に照らしてみれば、これにより、ガス吸気パイプライン内の圧力の増加の回避、および反応チャンバ内に入るガスの総量が変化しないことの保証が可能であり、その結果、チャンバ内側のプロセス圧力の安定性を向上させることが可能であり、かつガスの総流量およびチャンバ内側のプロセス圧力のコントロールを容易にすることが可能であり、それによって、事実上、プロセスの間における圧力の変動または流量の変動に起因して生成される粒子が低減され、膜の一様性および膜の歩留まりが向上する。
【0019】
この開示の実施態様の追加の側面および利点は、以下に述べるそれらの説明から明らかになるか、またはこの開示の実際的な応用から学び取られることになるであろう。
【0020】
この開示の実施態様における技術的解決策、または従来技術におけるそれをより明瞭に例証するために、実施態様または従来技術の説明に使用する図面を下に簡単に紹介する。下に説明されている図面が、この開示のいくつかの実施態様の例証のためにのみ使用されることは明らかであり、この分野の当業者であれば、創造的な仕事を伴うことなく、以下の図面からほかの図面を引き出すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】従来技術において使用されているガス吸気システムの概略の構造図である。
【
図2】この開示に従ったガス吸気システムの概略の構造図である。
【
図3】この開示によって提供されるガス吸気システムを利用することによって行われるALDプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照してこの開示をより完全に説明し、この開示の例示的な実施態様を例証する。以下においては、図面の参照を伴って、この開示の実施態様における技術的解決策を明瞭にかつ完全に説明する。この中に述べられている実施態様が、この開示の実施態様のすべてであるということはなく、むしろ一部の実施態様に過ぎないことは明らかである。この開示の中に述べられている実施態様に基づき、この分野の当業者によって創造的な仕事を伴うことなく引き出されるほかのすべての実施態様は、この開示の保護範囲内である。この開示の技術的解決策は、図面および実施態様の参照とともに複数の側面から説明されることになる。
【0023】
説明の便宜のために、これ以降において使用される『左』、『右』、『上』、および『下』という用語は、図面における左、右、上、および下と一致する。これ以降において使用される『第1』、『第2』、およびこれらの類の用語は、単に説明の中の要素の間の区別のためのものであり、そのほかの特別な意味はまったく有していない。
【0024】
図2に示されているとおり、この開示は、反応チャンバ8のためのプロセス・ガスを提供するべく構成され、かつALDプロセスに適用することが可能なガス吸気システムを提供する。具体的に述べれば、このガス吸気システムは、ガス分配デバイス7と連通し、かつガス分配デバイス7を通じて反応チャンバ8内へ反応先駆物質を導入するべく構成されたガス吸気パイプラインを含み、ガス吸気パイプラインは、ガス吸気パイプラインを接続し、または接続解除するべく構成されたガス吸気オン・オフ・バルブを備えている。ガス分配デバイス7は、ガスを分配するべく構成され、かつ反応チャンバ8内へガスが一様に流れることを可能にする。ALDプロセスのために、ガス分配デバイス7は、少なくとも2つの反応先駆物質を互いから分離する能力を有する。具体的に述べれば、ガス分配デバイス7は、少なくとも2つの互いに独立したガス吸気チャンネル、および散乱チャンバを含むことができ、少なくとも2つのガス吸気チャンネルは、1対1対応で少なくとも2つのガス吸気パイプラインと連通し、かつガス吸気パイプラインから反応チャンバ8内へ、反応先駆物質を一様に引き渡すべく構成されている。
【0025】
この実施態様においては、
図2に示されているとおり、2つのガス吸気パイプライン、すなわち第1のガス吸気パイプライン1および第2のガス吸気パイプライン2が、2つの異なる反応先駆物質を反応チャンバ8内へガス分配デバイス7を通じて導入するべく配置されており、たとえば、第1のガス吸気パイプライン1がSiH
4を引き渡すべく、かつ第2のガス吸気パイプライン2がWF
6を引き渡すべく、それぞれ構成されている。それに加えて、第1のガス吸気パイプライン1には、第1のガス吸気オン・オフ・バルブ3が備えられ;第2のガス吸気パイプライン2には、第2のガス吸気オン・オフ・バルブ5が備えられている。第1のガス吸気オン・オフ・バルブ3および第2のガス吸気オン・オフ・バルブ5を交互に開けることによって、2つの反応先駆物質を反応チャンバ8内へ交互に導入することが可能である。好ましくは、第1のガス吸気オン・オフ・バルブ3および第2のガス吸気オン・オフ・バルブ5の両方を、電磁バルブ等の高速切り換えバルブとする。この方法においては、2つの反応先駆物質が、交互に、かつ迅速に反応チャンバへ入り、ALD薄膜の調製を完了することが可能である。
【0026】
オプションにおいては、ガス吸気パイプラインに、そのガス吸気パイプライン内のガス流をコントロールするべく構成されたマス・フロー・コントローラ(MFC)が備わる。
【0027】
ガス吸気システムは、さらに、ガス分配デバイス7および反応チャンバ8の両方と連通する排気パイプライン4を含む。具体的に述べれば、排気パイプライン4は、ガス分配デバイス7の散乱チャンバと反応チャンバ8とを連通させるべく構成されている。排気パイプライン4には、排気パイプライン4を接続し、または接続解除するべく構成された排気オン・オフ・バルブ10が備えられている。
【0028】
ガス分配デバイス7内の残留反応先駆物質は、ガス吸気パイプライン上のガス吸気オン・オフ・バルブが閉じられているとき、排気パイプライン4を通じて反応チャンバ8内へ流れることが可能であり、かつ、その後、反応チャンバ8のフォアライン9を通じて排出されるが、これは、フォアライン9内へ反応先駆物質が直接排出される従来技術に照らしてみれば、ガス吸気パイプラインからフォアライン内へ反応先駆物質が直接入ることによってもたらされる分流を回避すること、およびそれによって、ガス吸気パイプライン内の圧力の増加を回避することが可能である。一方、反応チャンバ8内に入るガスの総量が変化しないことが保証可能であり、その結果、反応チャンバ8内側のプロセス圧力の安定性を向上させることが可能であり、かつガスの総流量およびチャンバ内側のプロセス圧力のコントロールを容易にすることが可能であり、それによって、事実上、プロセスの間における圧力の変動または流量の変動に起因して生成される粒子が低減され、膜の一様性および膜の歩留まりが向上する。
【0029】
オプションにおいては、排気オン・オフ・バルブ10が、電磁バルブ等の高速切り換えバルブであり、その結果、排気パイプラインと吸気パイプラインの間における高速切り換えを実現することが可能になる。
【0030】
図2に示されている2つの反応先駆物質SiH
4およびWF
6を引き渡すガス吸気システムを例に取りあげるが、
図3に示されているとおり、このALDプロセスは:
第1の反応先駆物質(SiH
4)がガス分配デバイス7を通じて反応チャンバ8内へ導入されるように、第1のガス吸気オン・オフ・バルブ3が開かれ、かつ同時に第2のガス吸気オン・オフ・バルブ5および排気オン・オフ・バルブ10が閉じられる第1の堆積段階と;
ガス分配デバイス7内に残留している第1の反応先駆物質が反応チャンバ8内へ排出され、その後フォアライン9を通じて反応チャンバ8から排出されるように、第1のガス吸気オン・オフ・バルブ3が閉じられ、かつ同時に排気オン・オフ・バルブ10が開かれる第1のパージ段階と;
第2の反応先駆物質(WF
6)がガス分配デバイス7を通じて反応チャンバ内へ導入されるように、第2のガス吸気オン・オフ・バルブ5が開かれ、かつ同時に第1のガス吸気オン・オフ・バルブ3および排気オン・オフ・バルブ10が閉じられる第2の堆積段階と;
ガス分配デバイス7内に残留している第2の反応先駆物質が反応チャンバ8内へ排出され、その後フォアライン9を通じて反応チャンバ8から排出されるように、第2のガス吸気オン・オフ・バルブ5が閉じられ、かつ同時に排気オン・オフ・バルブ10が開かれる第2のパージ段階と、
を含む。
【0031】
これらの第1の堆積段階、第1のパージ段階、第2の堆積段階、および第2のパージ段階からなるサイクルが、少なくとも1回実施されてALDプロセスが完了する。
【0032】
オプションにおいては、あらかじめ決定済みの体積の反応先駆物質を貯蔵する能力を有するバッファ・デバイスが、ガス吸気オン・オフ・バルブの上流のガス吸気パイプライン上に配置される。この実施態様においては、
図2に示されているとおり、第1のガス吸気パイプライン1に第1のバッファ・デバイス11が、かつ第2のガス吸気パイプライン2に第2のバッファ・デバイス12が、それぞれ備えられる。ガス吸気オン・オフ・バルブが閉じられているときにバッファ・デバイス内に特定体積の反応先駆物質を貯蔵することによって、ガス吸気オン・オフ・バルブが再び開かれたときのガス吸気パイプライン内における大きな流量変動および大きな圧力変動を回避することが可能である。異なるガス吸気オン・オフ・バルブが、非常に短い間隔において互いに切り換えられることから、バッファ・デバイスが、事実上、反応先駆物質の圧力および流量を安定化させることが可能であり、MFCのコントロールに対する影響はまったく有していない。
【0033】
オプションにおいては、バッファ・デバイスが、ガス吸気パイプラインの内径より大きい内径を有する管状のキャビティを含む。確かに、実際的な応用においては、反応先駆物質の圧力および流量を効果的に安定化させることが可能である限りにおいて、バッファ・デバイスがこのほかの構造として、またはほかの態様で実装されることがある。
【0034】
別の技術的解決策として、この開示は、さらにALD装置を提供する。
図2に示されているとおり、このALD装置は、反応チャンバ8と、反応チャンバ8のトップに配置されたガス分配デバイス7と、上で述べたとおりのガス吸気システムと、フォアライン9を含む。
【0035】
上記のガス吸気システムを利用することにより、この開示によって提供されるALD装置は、チャンバ内側のプロセス圧力の安定性を向上させること、並びにガスの総流量およびチャンバ内側のプロセス圧力のコントロールを容易にすることが可能であり、それによって、事実上、プロセスの間における圧力の変動または流量の変動に起因して生成される粒子が低減され、膜の一様性および膜の歩留まりが向上する。
【0036】
また別の技術的解決策として、さらにこの開示は、上記のこの開示によって提供されるALD装置を利用することによって堆積プロセスを行うALD方法を提供する。このALD方法は:
堆積段階において、反応先駆物質がガス分配デバイスを通じて反応チャンバ内へ導入されるように、ガス吸気オン・オフ・バルブを開き、かつ同時に排気オン・オフ・バルブを閉じることと;
パージ段階において、ガス分配デバイス内に残された反応先駆物質が反応チャンバ内へ排出され、その後、フォアラインを通じて反応チャンバから排出されるように、ガス吸気オン・オフ・バルブを閉じ、かつ同時に排気オン・オフ・バルブを開くことと、
を含む。
【0037】
上記のALD装置を利用して堆積プロセスを実施することにより、この開示によって提供されるALD方法は、反応チャンバ内側のプロセス圧力の安定性を向上させること、並びにガスの総流量および反応チャンバ内側のプロセス圧力のコントロールを容易にすることが可能であり、それによって、事実上、プロセスの間における圧力の変動または流量の変動に起因して生成される粒子が低減され、膜の一様性および膜の歩留まりが向上する。
【0038】
具体的に述べれば、
図2に示されているALD装置によって利用されるガス吸気システムを例に取りあげるが、2つのガス吸気パイプライン、すなわち第1のガス吸気パイプライン1および第2のガス吸気パイプライン2が、第1の反応先駆物質および第2の反応先駆物質を反応チャンバ8内へガス分配デバイス7を通じて導入するべく配置されており;かつ、2つのガス吸気オン・オフ・バルブ、すなわち第1のガス吸気オン・オフ・バルブ3および第2のガス吸気オン・オフ・バルブ5が、それぞれ、第1のガス吸気パイプライン1および第2のガス吸気パイプライン2上に配置されている。
【0039】
このALD方法は:
第1の堆積段階において、第1の反応先駆物質(SiH4)がガス分配デバイス7を通じて反応チャンバ8内へ導入されるように、第1のガス吸気オン・オフ・バルブ3を開き、かつ同時に第2のガス吸気オン・オフ・バルブ5および排気オン・オフ・バルブ10を閉じることと;
第1のパージ段階において、ガス分配デバイス7内に残留している第1の反応先駆物質が反応チャンバ8内へ排出され、その後フォアライン9を通じて反応チャンバ8から排出されるように、第1のガス吸気オン・オフ・バルブ3を閉じ、かつ同時に排気オン・オフ・バルブ10を開くことと;
第2の堆積段階において、第2の反応先駆物質(WF6)がガス分配デバイス7を通じて反応チャンバ内へ導入されるように、第2のガス吸気オン・オフ・バルブ5を開き、かつ同時に第1のガス吸気オン・オフ・バルブ3および排気オン・オフ・バルブ10を閉じることと;
第2のパージ段階において、ガス分配デバイス7内に残留している第2の反応先駆物質が反応チャンバ8内へ排出され、その後フォアライン9を通じて反応チャンバ8から排出されるように、第2のガス吸気オン・オフ・バルブ5を閉じ、かつ同時に排気オン・オフ・バルブ10を開くことと;
第1の堆積段階、第1のパージ段階、第2の堆積段階、および第2のパージ段階からなるサイクルを、少なくとも1回実施してALDプロセスを完了することと、
を含む。
【0040】
要約すると、ガス吸気システムの技術的解決策において、この開示のALD装置およびALD方法は、ガス分配デバイスおよび反応チャンバと連通する排気パイプラインを提供することによって、ガス分配デバイス内に残された反応先駆物質が、ガス吸気パイプライン上のガス吸気オン・オフ・バルブが閉じられているときに反応チャンバ内へ流れることが可能であり、かつ、その後、反応チャンバのフォアラインを通って排出されるが、フォアライン内へ反応先駆物質が直接排出される従来技術に照らしてみれば、これにより、ガス吸気パイプライン内の圧力の増加の回避、および反応チャンバ内に入るガスの総量が変化しないことの保証が可能であり、その結果、チャンバ内側のプロセス圧力の安定性を向上させることが可能であり、かつガスの総流量およびチャンバ内側のプロセス圧力のコントロールを容易にすることが可能であり、それによって、事実上、プロセスの間における圧力の変動または流量の変動に起因して生成される粒子が低減され、膜の一様性および膜の歩留まりが向上する。
【0041】
別段の記載がない限り、上記のこの開示の技術的解決策のいずれかが数値的範囲を開示している場合においては、その開示された数値的範囲は好ましいとする数値的範囲であり、この分野の当業者は、その好ましい数値的範囲が、明らかな技術的効果を導く値、または多くの実装可能な値の中の代表的な値を単にカバーしているに過ぎないことを理解するものとする。多くの実装可能な値が存在し、かつそれらの値すべてをリストすることが不可能であることから、ここでは、この開示の技術的解決策の例証にそれらの値の一部が開示されているのであって、上にリストされている値が、この開示の保護範囲を限定するものと考えられるべきではない。
【0042】
一方、別段の記載がない限り、この開示が、互いに固定的に接続される部品または構造部材を開示しているか、またはそれに関係する場合においては、固定された接続を、取り外し可能に固定された接続(ボルトまたはねじを介するもの等)、または取り外し不可能に固定された接続(リベット留めまたは溶接によるもの等)として解釈することが可能である。あるいは、相互の固定的な接続は、一体構造(たとえば、鋳造プロセスによって一体形成される)によって(一体形成プロセスが採用不可能であることが明らかでない限り)置き換えられ得る。
【0043】
それに加えて、別段の記載がない限り、上記のこの開示の技術的解決策のいずれかにおいて、特定の位置的関係または形状を示すために使用されている用語は、同様な、類似の、もしくは近似の状態または形状も示す。この開示によって提供される部品のいずれかを、複数の独立した構成要素によって組み立てること、または一体形成プロセスによって製造される独立した部品とすることはできる。
【0044】
上記の実施態様は、この開示の技術的解決策を例証することのみが意図されており、それらの技術的解決策を限定しない。好ましい実施態様を参照してこの開示を詳細に説明したが、この分野の当業者は、この開示の特定の実施態様に対する修正が可能であること、または技術的特徴の部品の等価な代用の作成が可能であることを理解する必要がある。この開示の技術的解決策の精神からの逸脱を伴うことなく行われるそれらの修正および等価な代用は、この開示の技術的解決策の保護範囲内に入ると見做されるものとする。
【0045】
この開示の説明は、例証の目的のために与えられており、それが網羅的であること、またはこの開示を限定することは意図されていない。この分野の当業者には、多くの修正および変形が明らかである。実施態様は、この開示の原理および実際的な応用をより良好に例証するため、およびこの分野の当業者が、この開示を理解して、多様な修正を含む多様な特定の目的の実施態様を設計することを可能にするために選択され、かつ説明されている。
【符号の説明】
【0046】
1 第1のガス吸気パイプライン
2 第2のガス吸気パイプライン
3 第1のガス吸気オン・オフ・バルブ
4 排気パイプライン
5 第2のガス吸気オン・オフ・バルブ
7 ガス分配デバイス
8 反応チャンバ
9 フォアライン
10 排気オン・オフ・バルブ
11 第1のバッファ・デバイス
12 第2のバッファ・デバイス