(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-28
(45)【発行日】2023-01-12
(54)【発明の名称】放電装置の製造方法および放電装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/24 20060101AFI20230104BHJP
【FI】
H05H1/24
(21)【出願番号】P 2022559626
(86)(22)【出願日】2022-04-15
(86)【国際出願番号】 JP2022017910
【審査請求日】2022-09-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501241645
【氏名又は名称】学校法人 工学院大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩田 有波
(72)【発明者】
【氏名】葛本 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】生沼 学
(72)【発明者】
【氏名】永井 裕己
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光史
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/103945(WO,A1)
【文献】特表平11-500705(JP,A)
【文献】特開昭61-266304(JP,A)
【文献】特開平7-002501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00-1/54
C01B 13/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が封止され、
他端から内面に沿って筒状の給電部が挿入された誘電体管の内部に導電膜を形成する溶液を注入し、前記誘電体管の内面
および前記給電部と前記誘電体管の内面との間に前記導電膜を形成する工程、
を含むことを特徴とする放電装置の製造方法。
【請求項2】
前記給電部は、前記導電膜と同種の金属であることを特徴とする請求項
1に記載の放電装置の製造方法。
【請求項3】
前記給電部は、金属の薄板を筒状に加工して形成することを特徴とする請求項
2に記載の放電装置の製造方法。
【請求項4】
前記給電部は、前記誘電体管との接合面に貫通穴が設けられたことを特徴とする請求項
3記載の放電装置の製造方法。
【請求項5】
前記導電膜を形成する溶液は、金属前駆体液と有機還元剤を含むことを特徴とする請求項
4に記載の放電装置の製造方法。
【請求項6】
前記金属前駆体液は、Ag、Cu、Li、Ni、Mn、Zn、およびCoからなる群より選択された少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項
5に記載の放電装置の製造方法。
【請求項7】
前記有機還元剤は、アスコルビン酸、クエン酸、シュウ酸、ギ酸、および3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸からなる群より選択された少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項
6に記載の放電装置の製造方法。
【請求項8】
前記形成された導電膜は、金属粒子の粒径が0.1~10μmであることを特徴とする請求項
7に記載の放電装置の製造方法。
【請求項9】
前記形成された導電膜は、膜厚が0.1~10μmであることを特徴とする請求項
8に記載の放電装置の製造方法。
【請求項10】
請求項1から請求項
9のいずれか1項に記載の放電装置の製造方法で形成された前記導電膜が設けられた高電圧電極と、
前記高電圧電極と空隙を介して対向する接地電極と、
前記高電圧電極と前記接地電極との間に高電圧を印加する高電圧電源と、
前記高電圧電源と前記高電圧電極の給電部を接続する給電線と、
を備えたことを特徴とする放電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、放電装置の製造方法および放電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酸素を含む原料ガス中での放電によりオゾンを発生させる放電装置がある。従来の放電装置の中には、管状の接地電極内部に誘電体管が配置された構造のものがあり、誘電体管の外面が接地電極の内面と空隙部を介して対向している。誘電体管の内面には、高電圧を印加するための導電膜が設けられており、放電を発生させる高電圧電極として機能している。そして、空隙部に酸素を含む原料ガスを供給し、両電極間に高電圧を印加することにより空隙部に放電が発生し、この放電によりオゾン化ガスが生成される。
【0003】
上記のような放電装置を製造する際には、誘電体管内面に導電膜を形成する成膜工程が必要であり、様々な手法が開示されている。例えば、特許文献1で開示されている放電装置の製造方法においては、溶射法により誘電体管の内面にアルミ被膜を形成した後、さらにNi-Cr被膜をアルミ被膜上に溶射して導電膜を成膜するという手法が示されている。また、特許文献2に開示されている放電装置の製造方法においては、スパッタ法あるいは蒸着法により誘電体管の内面にステンレス・スチール膜を成膜するという手法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-2501号公報(段落0010、
図1)
【文献】特開2007-169134号公報(段落0017、
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および2に記載の溶射法、スパッタ法および蒸着法のような成膜手法は、導電膜を成膜するまでの工程が煩雑であり、また、成膜装置自体が高価であるという問題があった。さらに、誘電体管の内面に導電膜を形成した後に、高電圧電極と高電圧電源とを接続するための給電部を別途誘電体管に接合する工程が必要であるが、接合した給電部の剥離あるいは電気的接触不良などが懸念されるという問題があった。
【0006】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、簡易な工程で低コストかつ高品質な放電装置の製造方法および放電装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に開示される放電装置の製造方法は、一端が封止され、他端から内面に沿って筒状の給電部が挿入された誘電体管の内部に導電膜を形成する溶液を注入し、前記誘電体管の内面および前記給電部と前記誘電体管の内面との間に前記導電膜を形成する工程、を含むことを特徴とする。
【0008】
本願に開示される放電装置は、上記導電膜が設けられた高電圧電極と、前記高電圧電極と空隙を介して対向する接地電極と、前記高電圧電極と前記接地電極との間に高電圧を印加する高電圧電源と、前記高電圧電源と前記高電圧電極の給電部を接続する給電線と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本願によれば、簡易な工程で低コストかつ高品質な放電装置を製造することができ、装置自体の製造コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1による放電装置の製造方法による放電装置の製造工程を説明するためのフローチャート図である。
【
図2】実施の形態1に係る放電装置の製造方法による放電装置の製造工程を示す平面図である。
【
図3】実施の形態1に係る放電装置の製造方法による放電装置の製造工程を示す斜視図である。
【
図4】実施の形態1に係る放電装置の製造方法による放電装置の製造工程を示す断面図である。
【
図5】実施の形態1に係る放電装置の製造方法による放電装置の製造工程を示す断面図である。
【
図6】実施の形態1に係る放電装置の製造方法により形成された高電圧電極の構成を示す断面図である。
【
図7】実施の形態2に係る放電装置の製造方法で用いる給電部を示す斜視図である。
【
図8】実施の形態3に係る放電装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願を実施するための実施の形態に係る放電装置の製造方法および放電装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一符号は同一もしくは相当部分を示している。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本願の実施の形態1に係る放電装置の製造方法による放電装置の製造工程を示すフローチャート図である。
図2から
図5は、
図1の各製造工程を説明するための図である。
図2は導電膜の成膜に用いられる給電部材の展開図であり、
図3は加工した給電部の斜視図である。
図4および
図5は給電部を挿入した誘電体管の断面図であり、それぞれ誘電体管に導電膜を形成する前の状態、導電膜を形成するための溶液を注入した状態を示す。これらの図を用いて、本願の実施の形態1に係る放電装置の製造方法について説明する。
【0013】
最初の製造工程では、導電膜の成膜に用いられる金属の薄板で形成された給電部材を、片側を封止した誘電体管に挿入するため筒状に加工する(
図1のステップS101)。
図2に示すように、給電部材1は、厚さ約0.1mmの金属板であり、辺Aと辺Bの矩形からなる面1aと、辺Cと辺Dの矩形からなる面1bで構成されている。
【0014】
なお、辺Bに対して平行な方向をX軸方向、垂直な方向をY軸方向としている。面1bは辺Bの中心に位置していることが好ましいが、必ずしも中心に位置している必要はない。辺Aは20mm以上が好ましく、20~40mmがより好ましい。辺Bは50mm以上が好ましく、52.5~53mmがより好ましい。52.5~53mmにすることで、給電部材1の面1aを筒状にして誘電体管に挿入した際、給電部材1が誘電体管内に拡がり、より密着性を向上させることができる。辺Cは5mm以上であることが好ましい。辺Dは10mm以上が好ましく、給電部材の強度の観点から10~20mmがより好ましい。
【0015】
また、
図2において辺Cは辺Bよりも短くなっているが、辺Bと同じ長さであってもよい。給電部材1の材質としては、例えば、銀(Ag)、銅(Cu)、リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、およびコバルト(Co)等が挙げられる。電気的接触が良好であるという観点からは、Cu、Agが好ましく、Cuがより好ましい。
【0016】
給電部材1の面1aを、Y軸方向を回転軸として丸め込み筒状に加工することで、
図3に示すような筒状部分11aを有する給電部11が形成される。これにより、後述の工程である給電部を誘電体管の内部に挿入する際、給電部と誘電体管の密着性を向上させることができる。筒状に加工するに際して、筒状部分11aは辺A同士が隙間なく接合されていることが望ましいが、重なって接合されていてもよい。
【0017】
続いて、筒状に加工した給電部11の筒状部分11aを誘電体管2の内面に沿って挿入する(
図1のステップS102)。
図4に示すように、給電部11は、筒状部分11aを誘電体管2の内部に完全に挿入させるが、面1bである給電部11のリード線11bの一部は誘電体管2の内部に、一部は誘電体管2の外にはみ出す位置に設置させる。これにより、高電圧電源に接続するための給電線と給電部とを容易に接続することができる。なお、筒状部分11aは誘電体管2の内部に完全に挿入されていることが好ましいが、筒状部分11aの一部が誘電体管2の外にはみ出してもよい。
【0018】
次いで、給電部11を挿入した誘電体管2の内部に導電膜を形成するための溶液を注入する(
図1のステップS103)。誘電体管2に導電膜4を形成するための溶液3を、給電部11の辺Aの高さまで注入する。
図5は、誘電体管2に導電膜4を形成するための溶液3を注入した後の状態を示す。溶液3は、金属前駆体液と有機還元剤を含む混合溶液である。なお、溶液3において、金属前駆体液と有機還元剤とを混合して得られる混合溶液中の金属前駆体液および有機還元剤の含有量には、特に制限はない。
【0019】
金属前駆体液は、金属錯体および金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1種(以下、特定金属化合物と総称)と、アンモニアおよびアミンから選ばれる少なくとも1種と、溶媒と、を含む混合溶液である。金属前駆体液に含まれる金属としては、例えば、Ag、Cu、Li、Ni、Mn、Zn、Co等が挙げられる。
【0020】
金属錯体は、金属錯体を生成し得るNH3配位子、RNH2配位子(Rはアルキレン基を表す)、OH2配位子、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のジアミン由来の配位子を部分構造として有する化合物から選ばれる金属錯体形成用の化合物の1種以上と、金属イオンとの反応生成物であることが好ましい。金属錯体における金属としては、給電部11の給電部材1と同種であることが好ましい。金属錯体としては、例えば、金属としてCuを含む、エチレンジアミン四酢酸銅、テトラアンミン銅等が好ましく挙げられる。電気的接触が良好であるという観点からは、Cu、Ag等が好ましく、Cuがより好ましい。
【0021】
金属塩は、水を含む溶媒中で解離して金属イオンとなり、金属錯体を形成し得る機能を有する金属化合物である。本開示における金属塩とは、25℃の水に可溶な金属塩を指す。25℃の水に可溶とは、25℃の水に対する溶解度が0.1質量%以上であることを指し、溶解度は1質量%以上であることが好ましい。金属塩が水に可溶であることで、金属塩は水を含む溶媒中で解離して金属イオンとなり、当該金属イオンが溶媒中に含まれるアミン類と反応して金属錯体が得られる。さらに、溶媒中に所望により錯体形成用の化合物が含まれる場合には、当該金属イオンと錯体形成用の化合物とが反応して金属錯体が形成される場合がある。
【0022】
金属錯体形成用の化合物としては、より具体的には、アンモニア、ギ酸アンモニウム、及びエチレンジアミン四酢酸(以下、H4EDTAと称する)から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、これらの化合物は、水溶液として混合液中に含まれることが好ましい。なかでも、混合液は、金属錯体形成用化合物としてのH4EDTA水溶液を含むことがより好ましい。
【0023】
なお、金属前駆体液は、金属錯体および金属塩の双方を含んでもよい。また、混合液が特定金属化合物を2種以上含有する場合、例えば、同じ金属を含み配位子の異なる金属錯体同士の組み合わせ、異なる金属を含む金属錯体同士の組み合わせのいずれであってもよい。合成適性上は、同種の金属を含む金属錯体同士の組み合わせであることが好ましい。
【0024】
アンモニアは、アミンと同様の塩基性を有することから、以下、アンモニアおよびアミンから選ばれる少なくとも1種を「アミン類」と総称することがある。アミン類は、混合溶液中に、塩化合物として含まれていてもよい。混合溶液は、アミン類を1種のみ含んでもよく、2種以上を含んでもよい。
【0025】
溶媒は、水、水とアルコールとの混合物などの水性溶媒を用いることができる。水は、不純物、特に金属イオン以外のイオンの含有量が少ないことが好ましく、そのような観点からは、精製水、イオン交換水、純水などを用いることが好ましい。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、イソブタノール、n-ブタノール等の炭素数1~10の1価のアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、およびグリセリン等の多価アルコールが挙げられる。特定金属化合物の溶解性およびハンドリング性の観点からは、水性溶媒として、水、または、水と炭素数1~5の1価のアルコールとの混合物が好ましく、水、または、水と、メタノール、エタノール、およびプロパノールから選ばれるアルコールと、の混合物がより好ましく、水がさらに好ましい。
【0026】
金属前駆体液は、溶媒中に、特定金属化合物とアミン類とを含有させ、十分に撹拌して
混合することで調製することができる。混合は、常温で行ってもよく、溶解を促進する目的で、溶媒を40℃~60℃に加温して行ってもよい。
【0027】
有機還元剤は、カルボキシ基を有する化合物から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。有機還元剤として、分子内にカルボキシ基を有し、還元剤としての機能を有する有機カルボン酸化合物から適宜選択して用いることが好ましい。
【0028】
有機還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、クエン酸、シュウ酸、ギ酸、および3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸等から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、導電膜の形成性がより良好であるという観点からは、アスコルビン酸、クエン酸、および3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、アスコルビン酸、およびクエン酸から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0029】
有機還元剤としてアスコルビン酸を含むことが、本開示の好ましい態様の一つとして挙げられる。有機還元剤は、水溶液として用いられることが好ましい。水溶液の調製に用いられる水は、金属イオンを含まないか、或いは、金属イオン濃度ができるだけ低いことが、得られる金属膜の均一性の観点から好ましく、従って、水溶液の調製に用いられる水は、精製水、イオン交換水、純水などを用いることが好ましい。特定還元剤を水に溶解する際には、溶解性を向上させる目的で、溶媒である水を30℃~60℃に加温してもよく、35℃~45℃に加温することが好ましい。また、溶解は撹拌しながら行ってもよい。
【0030】
続いて、導電膜形成用の溶液を誘電体管2に所定時間静置し、誘電体管2に導電膜4を形成させる(
図1のステップS104)。
図5に示す導電膜4を形成するための溶液3を注入した誘電体管2を所定時間静置させることで、誘電体管2の内面に金属錯体が吸着し、緻密な導電膜4が形成され、導電膜4が給電部11と誘電体管2の内面との間にも成膜される。緻密な膜を形成することにより、耐腐食性を高めることが可能となる。
【0031】
溶液3は給電部11と誘電体管2の間に染み込むため、給電部11と導電膜4が同種の金属であり、給電部11と導電膜4は密着性に優れている。例えば、金属としてCuを用いた場合には、Cu錯体に由来するCuのナノ粒子が基材に付着してCu膜が形成され、電気的接触が良好なものとなる。なお、導電性の観点から、成膜された金属粒子の粒径は0.1~10μmであることが好ましく、1μmがより好ましい。また、誘電体管2の内面に成膜された導電膜4の膜厚は、耐腐食性、電気伝導性、生産性の観点から、0.1~10μmであることが好ましい。
【0032】
また、溶液3に含まれる金属錯体がアンモニウム基、エチレンジアミンに由来する配位子等を有する場合には、金属錯体は、誘電体管との密着性が良好となる。従って、当該金属錯体を用いて形成された導電膜は誘電体管との密着性に優れることが期待できる。
【0033】
静置時間は、例えば常温(25℃)においては、6時間以上であることが好ましく、12時間以上であることがより好ましい。基材としての誘電体管2の内部に形成された金属膜である導電膜4の形成用組成物層を静置することで、溶液3に含まれる金属が基材に吸着して導電膜4が形成される。静置時間の上限には特に制限はないが、生産性等を考慮すれば、120時間以下とすることができ、90時間以下が好ましい。なお、誘電体管2を静置させる場合、誘電体管2の設置方法に特に制限はなく、例えば、導電膜を形成するため静置している間に誘電体管2を重力方向に対し円周方向に90°、180°などの角度で回転させてもよい。
【0034】
最後に、導電膜4を形成した溶液を誘電体管2から排出し(
図1のステップS105)、誘電体管2の内部を乾燥させることで、導電膜4の形成が完了する。
図6は、上記の実施の形態1に係る放電装置の製造方法により導電膜4を形成した誘電体管2を用いた高電圧電極である。
【0035】
以上のように、本実施の形態1に係る放電装置の製造方法によれば、一端が封止された誘電体管2の内部に導電膜4を形成する溶液3を注入し、誘電体管2の内面に導電膜4を形成する工程、を含むようにしたので、溶射法およびスパッタ法と比較して安価で、かつ緻密な導電膜を成膜することができる。さらに、誘電体管2の内面に沿って筒状の給電部11を挿入し、給電部11と誘電体管2の内面との間に導電膜4を形成する工程、を含むようにしたので、導電膜の形成と給電部の導電膜への接続が同時にでき、簡易な工程で低コストかつ高品質な放電装置を製造することができる。
【0036】
実施の形態2.
実施の形態1では、給電部11の形成に通常の金属の薄板を用いた場合について説明したが、実施の形態2では、貫通穴が設けられた金属の薄板を用いた場合について説明する。
【0037】
図7は、本願の実施の形態2に係る放電装置の製造方法で用いる給電部を示す斜視図である。
図7に示すように、実施の形態2で用いる給電部21は、誘電体管2の内面に接続する給電部21の接合面である筒状部分21aに、複数の貫通穴21hが設けられている。貫通穴21hの外径は2~5mmが好ましい。貫通穴5は複数あることが好ましいが、一つでもよい。実施の形態2に係る放電装置の製造方法で形成する高電圧電極のその他の構成およびその製造方法については、実施の形態1に係る放電装置の製造方法で形成する高電圧電極と同様であり、その説明を省略する。
【0038】
このように、給電部21に貫通穴21hを設けることで、給電部21と導電膜4の密着性をさらに向上させることができる。
【0039】
以上のように、本実施の形態2に係る放電装置の製造方法によれば、給電部21に、誘電体管2との接合面に貫通穴21hを設けるようにしたので、実施の形態1での効果に加えて、給電部と導電膜の密着性をさらに向上させることができ、さらに高品質な放電装置を製造することができる。
【0040】
実施の形態3.
図8は、本願の実施の形態3に係る放電装置の構成を示す断面図である。
図8に示すように、本実施の形態3の放電装置100は、実施の形態1および実施の形態2で説明した放電装置の製造方法で形成した導電膜4が設けられた高電圧電極6と、高電圧電極6と空隙を介して対向する接地電極8と、高電圧電極6と接地電極8との間に高電圧を印加する高電圧電源9と、高電圧電源9と給電部11を接続する給電線10と、を備え、当該空隙部分に原料ガスを供給し、高電圧電極6と接地電極8間に高電圧を印加することにより、空隙部分で活性種を発生する。
【0041】
原料ガスは、例えば、酸素を含み、このとき活性種としては酸素原子およびオゾンなどが発生する。
【0042】
このように、放電装置100は、上記の実施の形態1および実施の形態2に記載の放電装置の製造方法により形成した導電膜4が設けられた高電圧電極6を備えることで、装置自体の製造コストを抑制することができる。
【0043】
以上のように、本実施の形態3に係る放電装置100によれば、上記の実施の形態1および実施の形態2に記載の放電装置の製造方法により形成した導電膜4が設けられた高電圧電極6と、高電圧電極6と空隙を介して対向する接地電極8と、高電圧電極6と接地電極8との間に高電圧を印加する高電圧電源9と、高電圧電源9と高電圧電極6の給電部11を接続する給電線10と、を備えるようにしたので、装置自体の製造コストを抑制することができる。
【0044】
本願は、様々な例示的な実施の形態および実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0045】
2 誘電体管、3 溶液、4 導電膜、11 給電部、11a 筒状部分、100 放電装置。
【要約】
一端が封止された誘電体管(2)の内部に導電膜(4)を形成する溶液(3)を注入し、誘電体管(2)の内面に導電膜(4)を形成する工程を含み、緻密な導電膜(4)を成膜する。さらに、誘電体管(2)の内面に沿って筒状の給電部(11)を挿入し、給電部(11)と誘電体管(2)の内面との間に導電膜(4)を形成する工程を含み、導電膜(4)の形成と給電部(11)の導電膜(4)への接続を同時に行い、簡易な工程により低コストかつ高品質で製造する。