(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】天井制振システム
(51)【国際特許分類】
E04B 9/18 20060101AFI20230105BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
E04B9/18 G
E04B9/18 F
F16F15/02 N
(21)【出願番号】P 2018072751
(22)【出願日】2018-04-04
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】594012070
【氏名又は名称】株式会社安井建築設計事務所
(73)【特許権者】
【識別番号】502306903
【氏名又は名称】八潮建材工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 治
(72)【発明者】
【氏名】安田 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】小野 俊博
(72)【発明者】
【氏名】露木 保男
(72)【発明者】
【氏名】松井 和幸
(72)【発明者】
【氏名】岡本 真成
(72)【発明者】
【氏名】吉川 昇
(72)【発明者】
【氏名】岩下 裕樹
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-047134(JP,A)
【文献】特開2015-059410(JP,A)
【文献】特開2017-141575(JP,A)
【文献】特開2011-102498(JP,A)
【文献】特開2015-116087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/18
E04B 9/02
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊元と前記吊元から吊り下げられる天井との間に配置される天井制振システムであって、
前記吊元に固定されて前記天井を吊り下げる吊ボルトと、
互いに反対側に傾斜して配置されて前記天井に生じる振動を減衰する第一ダンパ及び第二ダンパと、
上下方向に延びて前記第一ダンパ及び前記第二ダンパの
伸び及び縮みに伴う前記天井の面外変形を抑える束材と、を備え、
前記束材は、前記吊ボルトとは異なる位置に配置される、
天井制振システム。
【請求項2】
吊元と前記吊元から吊り下げられる天井との間に配置される天井制振システムであって、
互いに反対側に傾斜して配置されて前記天井に生じる振動を減衰する第一ダンパ及び第二ダンパと、
上下方向に延びて前記第一ダンパ及び前記第二ダンパの
伸び及び縮みに伴う前記天井の面外変形を抑える束材と、を備え、
前記第一ダンパ及び前記第二ダンパは、圧縮方向の減衰力が引張方向の減衰力よりも小さい、
天井制振システム。
【請求項3】
前記吊元に固定されて前記天井を吊り下げる吊ボルトを更に備える、
請求項2に記載の天井制振システム。
【請求項4】
前記吊ボルトは、第一吊ボルトと、第二吊ボルトと、前記第一吊ボルトと前記第二吊ボルトとの間に配置される第三吊ボルトと、を有し、
前記束材は、前記第二吊ボルトの前記第一吊ボルト側に配置される第一束材と、前記第三吊ボルトの前記第一吊ボルト側に配置される第二束材と、を有する、
請求項1又は3に記載の天井制振システム。
【請求項5】
前記第一ダンパは、前記第一ダンパの軸線方向の長さを調節可能な第一継手を有し、
前記第二ダンパは、前記第二ダンパの軸線方向の長さを調節可能な第二継手を有する、
請求項1~4の何れか一項に記載の天井制振システム。
【請求項6】
前記第一ダンパと前記第二ダンパとは、上方に向けて広がるV字状に配置されている、
請求項1~5の何れか一項に記載の天井制振システム。
【請求項7】
前記第一ダンパと前記第二ダンパとは、下方に向けて広がるV字状に配置されている、
請求項1~6の何れか一項に記載の天井制振システム。
【請求項8】
前記束材は、互いに分離された第一束材及び第二束材を有し、
前記第一ダンパは、前記第一束材と固定されており、
前記第二ダンパは、前記第二束材と固定されている、
請求項1~7の何れか一項に記載の天井制振システム。
【請求項9】
前記天井の振動に伴う前記第一ダンパの伸縮量を増幅する第一振動増幅機構と、
前記天井の振動に伴う前記第二ダンパの伸縮量を増幅する第二振動増幅機構と、を更に備える、
請求項1~8の何れか一項に記載の天井制振システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、天井制振システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、吊天井の地震対策としては、耐震化を図ることが行われており、近年の法基準の改正でも、特定天井の天井下地構造において、V字状に斜めに配置される一対のブレースを備えることが求められている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の法基準に基づく「建築物における天井脱落対策に係る技術基準の解説」には、「現在の技術的知見では、大地震時における構造躯体につられている天井の性状を明らかにすることは困難であるため、今回の技術基準については、天井の性状をある程度想定することが可能な稀な地震動の発生時(中地震時)において天井の損傷を抑止することにより、中地震を超える一定の地震時においても天井の脱落の低減を図ることを目標としている。」と記載されている。
【0005】
本発明者らが鋭意検討した結果、上記の法基準に則った特定天井の天井下地構造でも、中地震を超える一定の地震が発生した場合、天井の加速度応答が増幅し、また、地震後にも天井の揺れが続くことで、天井が損傷する可能性があるとの知見を得た。
【0006】
そこで、本発明は、地震が発生した場合に、天井の加速度を低減させるとともに天井の揺れを早期に減衰させて、天井の損傷を抑制することができる天井制振システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る天井制振システムは、吊元と吊元から吊り下げられる天井との間に配置される天井制振システムであって、互いに反対側に傾斜して配置されて天井に生じる振動を減衰する第一ダンパ及び第二ダンパと、上下方向に延びて第一ダンパ及び第二ダンパの伸縮に伴う天井の面外変形を抑える束材と、を備える。
【0008】
本発明に係る天井制振システムでは、第一ダンパ及び第二ダンパが互いに反対側に傾斜して配置されているため、地震が発生した場合に、天井の揺れが第一ダンパ及び第二ダンパにより減衰される。これにより、地震が発生した場合に、天井の加速度を低減させるとともに天井の揺れを早期に減衰させて、天井の損傷を抑制することができる。更に、上下方向に延びる束材により、第一ダンパ及び第二ダンパの伸縮に伴う天井の面外変形を抑えることができるため、天井の損傷を更に抑制することができる。なお、束材は、第一ダンパ及び第二ダンパに作用する圧縮方向の地震力を負荷するため、第一ダンパ及び第二ダンパは、少なくとも引張方向の減衰力を発揮すればよく、圧縮方向の減衰力を発揮しなくてもよい。
【0009】
第一ダンパ及び第二ダンパは、圧縮方向の減衰力が引張方向の減衰力よりも小さくてもよい。この天井制振システムでは、圧縮方向の減衰力が引張方向の減衰力よりも小さい第一ダンパ及び第二ダンパを用いるため、圧縮方向の減衰力と引張方向の減衰力とが等しいダンパを用いる場合に比べて、コストを低減することができる。
【0010】
第一ダンパは、第一ダンパの軸線方向の長さを調節可能な第一継手を有し、第二ダンパは、第二ダンパの軸線方向の長さを調節可能な第二継手を有してもよい。この天井制振システムでは、第一継手及び第二継手により第一ダンパ及び第二ダンパの軸線方向の長さを調節することで、天井の吊長さ、第一ダンパ及び第二ダンパの傾斜角度等が異なる施工現場に施工する場合にも、第一ダンパ及び第二ダンパを適切に取り付けることができる。
【0011】
第一ダンパと第二ダンパとは、上方に向けて広がるV字状に配置されていてもよい。この天井制振システムでは、第一ダンパと第二ダンパとが上方に向けて広がるV字状に配置されているため、天井の揺れを第一ダンパ及び第二ダンパにより適切に減衰させることができる。
【0012】
第一ダンパと第二ダンパとは、下方に向けて広がるV字状に配置されていてもよい。この天井制振システムでは、第一ダンパと第二ダンパとが下方に向けて広がるV字状に配置されているため、天井の揺れを第一ダンパ及び第二ダンパにより適切に減衰させることができる。
【0013】
束材は、互いに分離された第一束材及び第二束材を有し、第一ダンパは、第一束材と固定されており、第二ダンパは、第二束材と固定されていてもよい。この天井制振システムでは、第一ダンパと第一束材とが一ユニットとして組み立てられるとともに、第二ダンパと第二束材とが一ユニットとして組み立てられるため、施工性を向上させることができる。
【0014】
天井の振動に伴う第一ダンパの伸縮量を増幅する第一振動増幅機構と、天井の振動に伴う第二ダンパの伸縮量を増幅する第二振動増幅機構と、を更に備えてもよい。この天井制振システムでは、第一振動増幅機構及び第二振動増幅機構が、それぞれ第一ダンパ及び第二ダンパの伸縮量を増幅するため、第一ダンパ及び第二ダンパの減衰効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、地震が発生した場合に、天井の加速度を低減させ、天井の揺れを早期に減衰させ、天井の損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第一実施形態に係る天井制振システムを示す断面図である。
【
図2】第二実施形態に係る天井制振システムを示す断面図である。
【
図3】第三実施形態に係る天井制振システムを示す断面図である。
【
図4】第四実施形態に係る天井制振システムを示す断面図である。
【
図5】第五実施形態に係る天井制振システムを示す断面図である。
【
図6】第六実施形態に係る天井制振システムを示す断面図である。
【
図7】第七実施形態に係る天井制振システムを示す断面図である。
【
図8】第八実施形態に係る天井制振システムを示す断面図である。
【
図9】比較例1の天井制振システムを示す断面図である。
【
図10】比較例2の天井制振システムを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係る天井制振システムについて詳細に説明する。なお、全図中、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
[第一実施形態]
図1に示すように、第一実施形態に係る天井制振システム1は、吊元Sと、吊元Sから吊り下げられる天井Cと、の間に配置されるものである。吊元Sは、建物躯体や、梁等で構成される。天井Cは、吊ボルト5によって吊元Sから吊り下げられるものであって、吊天井とも呼ばれる。なお、以下の説明において、天井制振システムにおける上下の方向は、吊元Sと天井Cとの間に配置された状態における上下の方向をいう。
【0019】
天井Cは、天井表層材である天井材2と、天井下地材である野縁3及び野縁受け4と、を主構成要素とする。
【0020】
野縁3は、天井材2が取り付けられる部材である。野縁3は、ステンレスや亜鉛めっき鋼板などの金属材で長尺に形成されている。野縁3は、上方に開放された断面略C字状に形成されている。天井制振システム1は、複数の野縁3を備えている。複数の野縁3は、互いに平行に配置されて、水平方向に延在している。
【0021】
野縁受け4は、野縁3の天井材2とは反対側(野縁3の上側)に配置されて野縁3と直交する方向に延びる部材である。野縁受け4は、ステンレスや亜鉛めっき鋼板などの金属材で長尺に形成されている。野縁受け4は、側方に開放された断面コ字状に形成されている。天井制振システム1は、複数の野縁受け4を備えている。複数の野縁受け4は、互いに平行に配置されて、野縁受け4と直交する水平方向に延在している。
【0022】
野縁3と野縁受け4とは、クリップ11により連結されている。クリップ11は、野縁3と野縁受け4とが交差する交差位置において野縁3と野縁受け4とを連結する金具である。クリップ11は、ステンレスや亜鉛めっき鋼板などの金属材で形成されている。
【0023】
なお、天井Cは、野縁受け4の野縁3とは反対側(野縁受け4の上側)に配置されて野縁受け4と直交する方向に延びる補強材を、更に備えてもよい。この場合、補強材は、クリップにより野縁受け4に連結される。
【0024】
吊ボルト5は、吊元Sに固定されて天井Cを吊り下げる部材である。吊ボルト5は、鉛直方向に直線状に延びている。吊ボルト5の下端部には、野縁受け4を引っ掛ける吊金具12(ハンガ)が取り付けられている。
【0025】
本実施形態では、吊元Sから複数の吊ボルト5が吊り下げられている。この複数の吊ボルト5には、第一吊ボルト5aと、第二吊ボルト5bと、第一吊ボルト5aと第二吊ボルト5bとの間に配置される第三吊ボルト5cと、が含まれている。第一吊ボルト5aと第三吊ボルト5c、第二吊ボルト5bと第三吊ボルト5cとは、それぞれ互いに隣り合う吊ボルト5であることが好ましいが、これらの間に他の吊ボルト5が配置されていてもよい。
図1では、第一吊ボルト5aは、第三吊ボルト5cの左側に隣り合う吊ボルト5であり、第二吊ボルト5bは、第三吊ボルト5cの右側に隣り合う吊ボルト5である。なお、以下の説明では、第一吊ボルト5a、第二吊ボルト5b及び第三吊ボルト5cを特に区別して説明する場合を除き、吊ボルト5として纏めて説明する。
【0026】
天井制振システム1は、第一ダンパ6と、第二ダンパ7と、束材8と、を主要構成要素とする。
【0027】
第一ダンパ6及び第二ダンパ7は、天井Cに生じる振動を減衰する部材である。第一ダンパ6と第二ダンパ7とは、互いに反対側に傾斜して配置されている。詳しく説明すると、第一ダンパ6と第二ダンパ7とは、上方に向けて広がるV字状となるように、互いに反対側に傾斜して配置されている。第一ダンパ6及び第二ダンパ7を構成するダンパとしては、オイルダンパ、粘弾性ダンパ、ガスダンパ、履歴ダンパ、摩擦ダンパ等の様々なダンパを用いることができるが、低コスト化かつ軽量化の観点からフリーピストン型のガススプリングダンパを用いることが好ましい。
【0028】
束材8は、上下方向に延びる部材である。束材8は、第一ダンパ6及び第二ダンパ7の伸縮に伴う天井Cの面外変形を抑える。詳しく説明すると、中地震を超える一定の地震が発生すると、第一ダンパ6及び第二ダンパ7が伸縮する。このとき、束材8が無いと、吊ボルト5が座屈して、天井Cが波打つように面外方向に変形する。そこで、吊元Sと天井Cとの間に、上下方向に延びる束材8を配置することで、天井Cの面外方向の変形を抑制する。このため、束材8は、吊ボルト5よりも大きな座屈荷重を有することが好ましい。束材8は、ステンレスや亜鉛めっき鋼板などの金属材により棒状に形成されている。束材8の数は、特に限定されないが、本実施形態では、第三吊ボルト5cの第一吊ボルト5a側に配置される第一束材8aと、第三吊ボルト5cの第二吊ボルト5b側に配置される第二束材8bと、の2つの互いに分離された束材8が設けられている。
【0029】
第一ダンパ6は、第一束材8aと固定されている。詳しく説明すると、第一ダンパ6は、第一補助金具9aを介して第一束材8aと固定されている。第一補助金具9aは、第一ダンパ6と第一束材8aとを固定する部材である。第一補助金具9aには、第一ダンパ6の下端部と、第一束材8aの下端部と、が固定されている。そして、第一ダンパ6及び第一束材8aは、第一補助金具9aにより1ユニット化されて、V字状の第一組立体10aとして組み立てられている。第一ダンパ6は、第一補助金具9aに対して揺動不能に固定されており、第一束材8aは、第一補助金具9aに対して揺動可能に固定されている。このため、第一束材8aに対する第一ダンパ6の傾斜角度を変えることが可能となっている。ここで、揺動不能に固定するとは、例えば、複数のビスにより締結されており、当該ビスを緩めても両部材が相対的に揺動できないことをいう。揺動可能に固定するとは、例えば、1本のボルトにより締結されており、当該ボルトを緩めることで両部材を相対的に揺動できることをいう。
【0030】
第二ダンパ7は、第二束材8bと固定されている。詳しく説明すると、第二ダンパ7は、第二補助金具9bを介して第二束材8bと固定されている。第二補助金具9bは、第二ダンパ7と第二束材8bとを固定する部材である。第二補助金具9bには、第二ダンパ7の下端部と、第二束材8bの下端部と、が固定されている。そして、第二ダンパ7及び第二束材8bは、第二補助金具9bにより1ユニット化されて、V字状の第二組立体10bとして組み立てられている。第二ダンパ7は、第二補助金具9bに対して揺動不能に固定されており、第二束材8bは、第二補助金具9bに対して揺動可能に固定されている。このため、第二束材8bに対する第二ダンパ7の傾斜角度を変えることが可能となっている。
【0031】
そして、第一組立体10a及び第二組立体10bは、第一ダンパ6と第二ダンパ7とが上方に向けて広がるV字状に配置されるように、吊元Sと天井Cとの間に配置されている。
【0032】
詳しく説明すると、第一補助金具9aは、第三吊ボルト5cの近傍において野縁受け4に固定された下部固定金具13に固定されており、第一ダンパ6の上端部は、第一吊ボルト5aに固定された第一上部固定金具14aに固定されており、第一束材8aの上端部は、第三吊ボルト5cに固定された第三上部固定金具14cに固定されている。また、第二補助金具9bは、第三吊ボルト5cの近傍において野縁受け4に固定された下部固定金具13に固定されており、第二ダンパ7の上端部は、第二吊ボルト5bに固定された第二上部固定金具14bに固定されており、第二束材8bの上端部は、第三吊ボルト5cに固定された第三上部固定金具14cに固定されている。つまり、第一補助金具9a及び第二補助金具9bは、共に同じ下部固定金具13に固定されており、第一束材8aの上端部及び第二束材8bの上端部は、共に同じ第三上部固定金具14cに固定されている。
【0033】
このため、第一ダンパ6の下端部は,第一補助金具9a及び下部固定金具13を介して、天井Cの野縁受け4に固定されており、第一ダンパ6の上端部は、第一上部固定金具14a及び第一吊ボルト5aを介して吊元Sに固定されている。また、第二ダンパ7の下端部は、第二補助金具9b及び下部固定金具13を介して、天井Cの野縁受け4に固定されており、第二ダンパ7の上端部は、第二上部固定金具14b及び第二吊ボルト5bを介して吊元Sに固定されている。また、第一束材8aの下端部は、第一補助金具9a及び下部固定金具13を介して、天井Cの野縁受け4に固定されており、第一束材8aの上端部は、第三上部固定金具14c及び第三吊ボルト5cを介して吊元Sに固定されている。また、第二束材8bの下端部は、第二補助金具9b及び下部固定金具13を介して、天井Cの野縁受け4に固定されており、第二束材8bの上端部は、第三上部固定金具14c及び第三吊ボルト5cを介して吊元Sに固定されている。
【0034】
ところで、第一ダンパ6及び第二ダンパ7は伸長するものの、その最小長及び最大長の範囲は制約される。このため、吊ボルト5による天井Cの吊長さ、吊ボルト5の間隔、第一ダンパ6及び第二ダンパ7の傾斜角度等が変わると、第一ダンパ6及び第二ダンパ7を下部固定金具13と第一上部固定金具14a及び第二上部固定金具14bとに固定することができない可能性がある。そこで、第一ダンパ6は、第一ダンパ6の軸線方向の長さを調節可能な第一継手6aを有しており、第二ダンパ7は、第二ダンパ7の軸線方向の長さを調節可能な第二継手7aを有している。第一継手6a及び第二継手7aとしては、例えば、外筒に対して内筒を伸縮させることが可能な入れ子状の構造であって、ボルト等の固定部材により外筒に対する内筒の位置を固定する構造のものとすることができる。
【0035】
次に、本実施形態に係る天井制振システム1の施工方法について説明する。
【0036】
本実施形態に係る天井制振システム1の施工方法は、吊元Sと天井Cとの間に天井制振システム1を施工する方法である。この方法では、まず、第一ダンパ6の下端部及び第一束材8aの下端部を第一補助金具9aに固定して、第一ダンパ6及び第一束材8aをV字状の第一組立体10aに組み立てる。また、第二ダンパ7の下端部及び第二束材8bの下端部を第二補助金具9bに固定して、第二ダンパ7及び第二束材8bをV字状の第二組立体10bに組み立てる。
【0037】
次に、第三吊ボルト5cの近傍において野縁受け4に固定された下部固定金具13に第一補助金具9aを固定し、第三吊ボルト5cに固定された第三上部固定金具14cに第一束材8aの上端部を固定し、第一吊ボルト5aに固定された第一上部固定金具14aに第一ダンパ6の上端部を固定する。このとき、第一束材8aに対する第一ダンパ6の傾斜角度を調整するとともに、第一継手6aにより第一ダンパ6の長さを調整することで、第一上部固定金具14aの位置と第一ダンパ6の上端部の位置とを合わせる。
【0038】
また、第三吊ボルト5cの近傍において野縁受け4に固定された下部固定金具13に第二補助金具9bを固定し、第三吊ボルト5cに固定された第三上部固定金具14cに第二束材8bの上端部を固定し、第二吊ボルト5bに固定された第二上部固定金具14bに第二ダンパ7の上端部を固定する。このとき、第二束材8bに対する第二ダンパ7の傾斜角度を調整するとともに、第二継手6bにより第二ダンパ7の長さを調整することで、第二上部固定金具14bの位置と第二ダンパ7の上端部の位置とを合わせる。
【0039】
これにより、天井制振システム1の施工が終了する。なお、上記の施工順序は、適宜変更することができる。
【0040】
ここで、
図9及び
図10を参照して、本実施形態の比較例について説明する。
【0041】
図9に示すように、比較例1の天井制振システム110は、基本的には第一実施形態の天井制振システム1と同様であるが、第一ダンパ6、第二ダンパ7及び束材8の代わりに、第一ブレース111及び第二ブレース112を備えている点のみ、第一実施形態の天井制振システム1と相違する。
【0042】
第一ブレース111及び第二ブレース112は、天井Cの揺れ止めを行うための部材であり、上方に向けて広がるV字状となるように、互いに反対側に傾斜して配置されている。そして、第一ブレース111及び第二ブレース112の下端部は、野縁受け4に固定された下部固定金具13に固定されている。第一ブレース111の上端部は、第一吊ボルト5aに固定された第一上部固定金具14aに固定されている。第二ブレース112の上端部は、第二吊ボルト5bに固定された第二上部固定金具14bに固定されている。
【0043】
このように構成される比較例1の天井制振システム110では、天井Cの揺れを減衰させる構成を備えないため、地震が発生した場合、天井Cの加速度応答が増幅し、また、地震後にも天井Cの揺れが続くことで、天井Cが損傷する可能性がある。
【0044】
図10に示すように、比較例2の天井制振システム120は、基本的には第一実施形態の天井制振システム1と同様であるが、束材8を備えていない点のみ、第一実施形態の天井制振システム1と相違する。
【0045】
このように構成される比較例2の天井制振システム120では、天井Cの上下方向の揺れを止める構成を備えないため、小地震が発生しても、第一ダンパ6及び第二ダンパ7の伸縮により天井Cが面外方向に変形するため、天井Cが損傷する可能性がある。
【0046】
これに対し、本実施形態に係る天井制振システム1では、第一ダンパ6及び第二ダンパ7が互いに反対側に傾斜して配置されているため、地震が発生した場合に、天井Cの揺れが第一ダンパ6及び第二ダンパ7により減衰される。これにより、地震が発生した場合に、天井Cの加速度を低減させるとともに天井Cの揺れを早期に減衰させて、天井Cの損傷を抑制することができる。更に、上下方向に延びる束材8により、第一ダンパ6及び第二ダンパ7の伸縮に伴う天井Cの面外変形を抑えることができるため、天井Cの損傷を更に抑制することができる。
【0047】
ところで、束材8は、第一ダンパ6及び第二ダンパ7に作用する圧縮方向の地震力を負荷するため、第一ダンパ6及び第二ダンパ7は、少なくとも引張方向の減衰力を発揮すればよく、圧縮方向の減衰力を発揮しなくてもよい。このため、第一ダンパ6及び第二ダンパ7は、圧縮方向の減衰力が引張方向の減衰力よりも小さいダンパであってもよく、引張方向のみ減衰力が発揮されるダンパであってもよい。第一ダンパ6及び第二ダンパ7として圧縮方向の減衰力が引張方向の減衰力よりも小さいダンパを用いる場合は、圧縮方向の減衰力と引張方向の減衰力とが等しいダンパを用いる場合に比べて、コストを低減することができる。第一ダンパ6及び第二ダンパ7として、引張方向のみ減衰力が発揮されるダンパを用いる場合は、圧縮方向の減衰力及び引張方向の減衰力の双方が発揮されるダンパを用いる場合に比べて、コストを低減することができる。
【0048】
ところで、吊元Sに対して天井材2は極めて軽量であるため、小さな減衰力でも、吊元Sに対する天井材2の振動を減衰させることができる。このため、第一ダンパ6及び第二ダンパ7は、フリーピストン型のガススプリングダンパであってもよい。第一ダンパ6及び第二ダンパ7としてフリーピストン型のガススプリングダンパを用いる場合、低コスト化かつ軽量化を図りつつ、必要十分な減衰性能を発揮することができる。
【0049】
また、第一継手6a及び第二継手7aにより第一ダンパ6及び第二ダンパ7の軸線方向の長さを調節することで、天井Cの吊長さ、吊ボルト5の間隔、第一ダンパ6及び第二ダンパ7の傾斜角度等が異なる施工現場に施工する場合にも、第一ダンパ6及び第二ダンパ7を適切に取り付けることができる。
【0050】
また、第一ダンパ6と第二ダンパ7とが上方に向けて広がるV字状に配置されているため、天井Cの揺れを第一ダンパ6及び第二ダンパ7により適切に減衰させることができる。
【0051】
また、第一ダンパ6と第一束材8aとが一ユニットとして組み立てられるとともに、第二ダンパと第二束材8bとが一ユニットとして組み立てられるため、施工性を向上させることができる。
【0052】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態について説明する。第二実施形態は、基本的に第一実施形態(
図1参照)と同様であり、束材の構成のみ、第一実施形態と相違する。このため、以下では、第一実施形態と相違する事項のみを説明し、第一実施形態と同様の事項の説明を省略する。
【0053】
図2に示すように、本実施形態に係る天井制振システム1Aは、第一ダンパ6と、第二ダンパ7と、束材21と、支持部材22と、を主構成要素としている。
【0054】
束材21は、筒状(管状)に形成されており、内周側に吊ボルト5を挿入することが可能となっている。束材21の筒状としては、製造容易性の観点から円筒状(円管状)であることが好ましい。
【0055】
支持部材22は、第三吊ボルト5cに取り付けられて、第三吊ボルト5cの軸線方向における位置を調節可能な部材である。支持部材22は、例えば、第三吊ボルト5cが挿入されることで第三吊ボルト5cに沿って上下方向に移動可能な皿状部材と、第三吊ボルト5cに螺合されて皿状部材を下方から支持するナットと、により構成することができる。皿状部材は、束材21を下方から支持する皿状の部材である。このため、支持部材22では、ナットを回転させることで、皿状部材を上下方向に移動させることができる。
【0056】
そして、第一吊ボルト5aが束材21に挿入された状態で、束材21が支持部材22と吊元Sとにより挟み込まれている。つまり、支持部材22のナットを回転させて皿状部材を上方に移動させることで、束材21が支持部材22と吊元Sとにより挟み込まれている。
【0057】
次に、本実施形態に係る天井制振システム1Aの施工方法について説明する。
【0058】
まず、束材21に第三吊ボルト5cを挿入して、支持部材22と吊元Sとにより束材21を挟み込む。なお、束材21に対する第三吊ボルト5cの挿入は、第三吊ボルト5cで天井Cを吊り下げる前に行う。
【0059】
次に、第一ダンパ6の下端部を第一補助金具9aに固定するとともに、第二ダンパ7の下端部を第二補助金具9bに固定する。
【0060】
次に、第三吊ボルト5cの近傍において野縁受け4に固定された下部固定金具13に第一補助金具9aを揺動可能に固定し、第一吊ボルト5aに固定された第一上部固定金具14aに第一ダンパ6の上端部を固定する。このとき、下部固定金具13に対する第一補助金具9aの傾斜角度を調整するとともに、第一継手6aにより第一ダンパ6の長さを調整することで、第一上部固定金具14aの位置と第一ダンパ6の上端部の位置とを合わせる。
【0061】
また、第三吊ボルト5cの近傍において野縁受け4に固定された下部固定金具13に第二補助金具9bを揺動可能に固定し、第二吊ボルト5bに固定された第二上部固定金具14bに第二ダンパ7の上端部を固定する。このとき、下部固定金具13に対する第二補助金具9bの傾斜角度を調整するとともに、第二継手6bにより第二ダンパ7の長さを調整することで、第二上部固定金具14bの位置と第二ダンパ7の上端部の位置とを合わせる。
【0062】
これにより、天井制振システム1Aの施工が終了する。なお、上記の施工順序は、適宜変更することができる。
【0063】
このように、本実施形態に係る天井制振システム1Aでは、第三吊ボルト5cが束材21に挿入された状態で、第三吊ボルト5cの軸線方向における位置が調整可能な支持部材22と吊元Sとにより束材が挟み込まれているため、容易に束材21を配置することができる。
【0064】
[第三実施形態]
次に、第三実施形態について説明する。第三実施形態は、基本的に第一実施形態(
図1参照)と同様であり、第一ダンパ及び第二ダンパの配置が異なる点、及び第一振動増幅機構及び第二振動増幅機構を更に備える点のみ、第一実施形態と相違する。このため、以下では、第一実施形態と相違する事項のみを説明し、第一実施形態と同様の事項の説明を省略する。
【0065】
図3に示すように、本実施形態に係る天井制振システム1Bは、第一ダンパ31と、第二ダンパ32と、束材8と、第一振動増幅機構33と、第二振動増幅機構34と、を主構成要素としている。
【0066】
第一ダンパ31と第二ダンパ32とは、下方に向けて広がる逆V字状となるように、互いに反対側に傾斜して配置されている。第一ダンパ31及び第二ダンパ32を構成するダンパとしては、第一実施形態の第一ダンパ6及び第二ダンパ7と同じダンパを用いることができる。
【0067】
第一ダンパ31及び第二ダンパ32の上端部は、第三吊ボルト5cに固定された第三上部固定金具14cに固定されている。第一ダンパ31の下端部は、第一振動増幅機構33に連結されている。第二ダンパ32の下端部は、第二振動増幅機構34に連結されている。
【0068】
第一振動増幅機構33は、天井Cの振動に伴う第一ダンパ31の伸縮量を増幅する機構であって、トグル機構とも呼ばれる。第一振動増幅機構33は、野縁受け4に固定される下部固定金具13と第一ダンパ31の下端部とに揺動自在に固定される第一ブレース33aと、第一ダンパ31の下端部と第一上部固定金具14aとに揺動自在に固定される第二ブレース33bと、を有する。第一ブレース33aと下部固定金具13との連結、第一ブレース33aと第一ダンパ31との連結、第二ブレース33bと下部固定金具13との連結、第二ブレース33bと第一ダンパ31との連結、第一ブレース33aと第二ブレース33bとの連結は、例えば、回転支承(ピン支承)により行うことができる。そして、第一ブレース33aと第二ブレース33bとは、第一ダンパ31側に屈曲するように連結されている。
【0069】
第二振動増幅機構34は、天井Cの振動に伴う第二ダンパ32の伸縮量を増幅する機構であって、トグル機構とも呼ばれる。第二振動増幅機構34は、下部固定金具13と第二ダンパ32の下端部とに揺動自在に固定される第一ブレース34aと、第二ダンパ32の下端部と第二上部固定金具14bとに揺動自在に固定される第二ブレース34bと、を有する。第一ブレース34aと下部固定金具13との連結、第一ブレース34aと第二ダンパ32との連結、第二ブレース34bと下部固定金具13との連結、第二ブレース34bと第二ダンパ32との連結、第一ブレース34aと第二ブレース34bとの連結は、例えば、回転支承(ピン支承)により行うことができる。そして、第一ブレース34aと第二ブレース34bとは、第二ダンパ32側に屈曲するように連結されている。
【0070】
次に、本実施形態に係る天井制振システム1Bの施工方法について説明する。
【0071】
まず、第一束材8aの上端部を、第三吊ボルト5cに固定された第三上部固定金具14cに固定するとともに、第一束材8aの下端部を、第三吊ボルト5cの近傍において野縁受け4に固定された下部固定金具13に固定する。また、第二束材8bの上端部を、第三吊ボルト5cに固定された第三上部固定金具14cに固定するとともに、第二束材8bの下端部を、第三吊ボルト5cの近傍において野縁受け4に固定された下部固定金具13に固定する。
【0072】
次に、第一ブレース33aの下端部を、第三吊ボルト5cの近傍において野縁受け4に固定された下部固定金具13に揺動可能に連結し、第二ブレース33bの上端部を、第一吊ボルト5aに固定された第一上部固定金具14aに揺動可能に連結し、第一ブレース33aの上端部と第二ブレース33bの下端部とを、揺動可能に連結する。また、第一ブレース34aの下端部を、第三吊ボルト5cの近傍において野縁受け4に固定された下部固定金具13に揺動可能に連結し、第二ブレース34bの上端部を、第二吊ボルト5bに固定された第二上部固定金具14bに揺動可能に連結し、第一ブレース34aの上端部と第二ブレース34bの下端部とを、揺動可能に連結する。
【0073】
次に、第一ダンパ31の上端部を、第三吊ボルト5cに固定された第三上部固定金具14cに固定するとともに、第一ダンパ31の下端部を、第一ブレース33aの上端部と第二ブレース33bの下端部との連結部に揺動可能に連結する。また、第二ダンパ32の上端部を、第三吊ボルト5cに固定された第三上部固定金具14cに固定するとともに、第二ダンパ32の下端部を、第一ブレース34aの上端部と第二ブレース34bの下端部との連結部に揺動可能に連結する。
【0074】
これにより、天井制振システム1Bの施工が終了する。なお、上記の施工順序は、適宜変更することができる。
【0075】
このように、本実施形態に係る天井制振システム1Bでは、地震が発生した場合に天井Cが揺れると、第一振動増幅機構33は、第一ブレース33a及び第二ブレース33bの屈曲により第一ダンパ31の伸縮量を増幅させ、第二振動増幅機構34は、第一ブレース34a及び第二ブレース34bの屈曲により第二ダンパ32の伸縮量を増幅させる。これにより、第一ダンパ31及び第二ダンパ32の減衰効率を向上させることができる。
【0076】
[第四実施形態]
次に、第四実施形態について説明する。第四実施形態は、基本的に第一実施形態(
図1参照)と同様であり、第一組立体(第一束材)と第二組立体(第二束材)とが離れている点のみ、第一実施形態と相違する。このため、以下では、第一実施形態と相違する事項のみを説明し、第一実施形態と同様の事項の説明を省略する。
【0077】
図4に示すように、本実施形態に係る天井制振システム1Cは、第一ダンパ6と、第二ダンパ7と、束材8と、を主構成要素としている。
【0078】
吊元Sから吊り下げられる複数の吊ボルト5には、第一吊ボルト5a、第二吊ボルト5b及び第三吊ボルト5cの他に、更に、第一吊ボルト5aの第三吊ボルト5cとは反対側に配置される第四吊ボルト5dと、第二吊ボルト5bの第三吊ボルト5cとは反対側に配置される第五吊ボルト5eと、が含まれている。第一吊ボルト5aと第四吊ボルト5d、第二吊ボルト5bと第五吊ボルト5eとは、それぞれ互いに隣り合う吊ボルト5であることが好ましいが、これらの間に他の吊ボルト5が配置されていてもよい。
図4では、第四吊ボルト5dは、第一吊ボルト5aの左側に隣り合う吊ボルト5であり、第五吊ボルト5eは、第二吊ボルト5bの右側に隣り合う吊ボルト5である。
【0079】
第一実施形態と同様に、第一ダンパ6及び第一束材8aは、第一補助金具9aにより1ユニット化されて、V字状の第一組立体10aとして組み立てられており、第二ダンパ7及び第二束材8bは、第二補助金具9bにより1ユニット化されて、V字状の第二組立体10bとして組み立てられている。しかしながら、第四実施形態では、第一組立体10a及び第二組立体10bが互いに離間した位置に配置されて、第一ダンパ6と第二ダンパ7とが上方に向けて広がるV字状となるように配置されている。
【0080】
詳しく説明すると、第一補助金具9aは、第一吊ボルト5aの近傍において野縁受け4に固定された第一下部固定金具13aに固定されており、第一ダンパ6の上端部は、第四吊ボルト5dに固定された第四上部固定金具14dに固定されており、第一束材8aの上端部は、第一吊ボルト5aに固定された第一上部固定金具14aに固定されている。また、第二補助金具9bは、第二吊ボルト5bの近傍において野縁受け4に固定された第二下部固定金具13bに固定されており、第二ダンパ7の上端部は、第五吊ボルト5eに固定された第五上部固定金具14eに固定されており、第二束材8bの上端部は、第二吊ボルト5bに固定された第二上部固定金具14bに固定されている。つまり、第一補助金具9aと第二補助金具9bとは、互いに異なる第一下部固定金具13a及び第二下部固定金具13bに固定されており、第一束材8aの上端部と第二束材8bの上端部とは、互いに異なる第一上部固定金具14a及び第二上部固定金具14bに固定されてる。
【0081】
このため、第一組立体10a(第一束材8a)と第二組立体10b(第二束材8b)とは、互いに離間した位置に配置される。そして、第一ダンパ6の下端部は,第一補助金具9a及び第一下部固定金具13aを介して、天井Cの野縁受け4に固定されており、第一ダンパ6の上端部は、第四上部固定金具14d及び第四吊ボルト5dを介して吊元Sに固定されている。また、第二ダンパ7の下端部は、第二補助金具9b及び第二下部固定金具13bを介して、天井Cの野縁受け4に固定されており、第二ダンパ7の上端部は、第五上部固定金具14e及び第五吊ボルト5eを介して吊元Sに固定されている。また、第一束材8aの下端部は、第一補助金具9a及び第一下部固定金具13aを介して、天井Cの野縁受け4に固定されており、第一束材8aの上端部は、第一上部固定金具14a及び第一吊ボルト5aを介して吊元Sに固定されている。また、第二束材8bの下端部は、第二補助金具9b及び第二下部固定金具13bを介して、天井Cの野縁受け4に固定されており、第二束材8bの上端部は、第二上部固定金具14b及び第二吊ボルト5bを介して吊元Sに固定されている。
【0082】
このように、本実施形態に係る天井制振システム1Cでは、第一組立体10aと第二組立体10bとが互いに離間した位置に配置されているが、第一ダンパ6及び第二ダンパ7は、互いに反対側に傾斜して配置されて天井Cに生じる振動を減衰し、束材8は、上下方向に延びて第一ダンパ6及び第二ダンパ7の伸縮に伴う天井Cの面外変形を抑える。このため、第一実施形態と同様に、地震が発生した場合に、天井Cの加速度を低減させるとともに天井Cの揺れを早期に減衰させて、天井Cの損傷を抑制することができる。
【0083】
[第五実施形態]
次に、第五実施形態について説明する。第五実施形態は、基本的に第一実施形態(
図1参照)と同様であり、第一組立体及び第二組立体が、それぞれ左右逆に配置されている点のみ、第一実施形態と相違する。このため、以下では、第一実施形態と相違する事項のみを説明し、第一実施形態と同様の事項の説明を省略する。
【0084】
図5に示すように、本実施形態に係る天井制振システム1Dは、第一ダンパ6と、第二ダンパ7と、束材8と、を主構成要素としている。
【0085】
第一実施形態と同様に、第一ダンパ6と第一束材8aとは、第一補助金具9aにより1ユニット化されて、V字状の第一組立体10aとして組み立てられており、第二ダンパ7と第二束材8bとは、第二補助金具9bにより1ユニット化されて、V字状の第二組立体10bとして組み立てられている。しかしながら、第五実施形態では、第一組立体10a及び第二組立体10bが、それぞれ第一実施形態に対して左右逆に配置されて、第一ダンパ6と第二ダンパ7とが下方に向けて広がるV字状となるように配置されている。
【0086】
詳しく説明すると、第一補助金具9aは、第一吊ボルト5aの近傍において野縁受け4に固定された第一下部固定金具13aに固定されており、第一ダンパ6の上端部は、第三吊ボルト5cに固定された第三上部固定金具14cに固定されており、第一束材8aの上端部は、第一吊ボルト5aに固定された第一上部固定金具14aに固定されている。また、第二補助金具9bは、第二吊ボルト5bの近傍において野縁受け4に固定された第二下部固定金具13bに固定されており、第二ダンパ7の上端部は、第三吊ボルト5cに固定された第三上部固定金具14cに固定されており、第二束材8bの上端部は、第二吊ボルト5bに固定された第二上部固定金具14bに固定されている。
【0087】
このように、本実施形態に係る天井制振システム1Dでは、第一組立体10a及び第二組立体10bが、それぞれ第一実施形態に対して左右逆に配置されているが、第一ダンパ6及び第二ダンパ7は、互いに反対側に傾斜して配置されて天井Cに生じる振動を減衰し、束材8は、上下方向に延びて第一ダンパ6及び第二ダンパ7の伸縮に伴う天井Cの面外変形を抑える。このため、第一実施形態と同様に、地震が発生した場合に、天井Cの加速度を低減させるとともに天井Cの揺れを早期に減衰させて、天井Cの損傷を抑制することができる。
【0088】
[第六実施形態]
次に、第六実施形態について説明する。第六実施形態は、基本的に第四実施形態(
図4参照)と同様であり、第一組立体及び第二組立体が、それぞれ左右逆に配置されている点のみ、第四実施形態と相違する。このため、以下では、第四実施形態と相違する事項のみを説明し、第四実施形態と同様の事項の説明を省略する。
【0089】
図6に示すように、本実施形態に係る天井制振システム1Eは、第一ダンパ6と、第二ダンパ7と、束材8と、を主構成要素としている。
【0090】
第四実施形態と同様に、第一ダンパ6と第一束材8aとは、第一補助金具9aにより1ユニット化されて、V字状の第一組立体10aとして組み立てられており、第二ダンパ7と第二束材8bとは、第二補助金具9bにより1ユニット化されて、V字状の第二組立体10bとして組み立てられている。しかしながら、第六実施形態では、第一組立体10a及び第二組立体10bは、それぞれ第四実施形態に対して左右逆に配置されて、第一ダンパ6と第二ダンパ7とが下方に向けて広がるV字状となるように配置されている。
【0091】
詳しく説明すると、第一補助金具9aは、第四吊ボルト5dの近傍において野縁受け4に固定された第四下部固定金具13dに固定されており、第一ダンパ6の上端部は、第一吊ボルト5aに固定された第一上部固定金具14aに固定されており、第一束材8aの上端部は、第四吊ボルト5dに固定された第四上部固定金具14dに固定されている。また、第二補助金具9bは、第五吊ボルト5eの近傍において野縁受け4に固定された第五下部固定金具13eに固定されており、第二ダンパ7の上端部は、第二吊ボルト5bに固定された第二上部固定金具14bに固定されており、第二束材8bの上端部は、第五吊ボルト5eに固定された第五上部固定金具14eに固定されている。
【0092】
このように、本実施形態に係る天井制振システム1Eでは、第一組立体10a及び第二組立体10bが、それぞれ第四実施形態に対して左右逆に配置されているが、第一ダンパ6及び第二ダンパ7は、互いに反対側に傾斜して配置されて天井Cに生じる振動を減衰し、束材8は、上下方向に延びて第一ダンパ6及び第二ダンパ7の伸縮に伴う天井Cの面外変形を抑える。このため、第四実施形態と同様に、地震が発生した場合に、天井Cの加速度を低減させるとともに天井Cの揺れを早期に減衰させて、天井Cの損傷を抑制することができる。
【0093】
[第七実施形態]
次に、第七実施形態について説明する。第七実施形態は、基本的に第五実施形態(
図5参照)と同様であり、天井制振システムが吊ボルトに固定されていない点のみ、第五実施形態と相違する。このため、以下では、第五実施形態と相違する事項のみを説明し、第五実施形態と同様の事項の説明を省略する。
【0094】
図7に示すように、本実施形態に係る天井制振システム1Fは、第一ダンパ6と、第二ダンパ7と、束材8と、を主構成要素としている。
【0095】
第五実施形態と同様に、第一ダンパ6と第一束材8aとは、第一補助金具9aにより1ユニット化されて、V字状の第一組立体10aとして組み立てられており、第二ダンパ7と第二束材8bとは、第二補助金具9bにより1ユニット化されて、V字状の第二組立体10bとして組み立てられている。しかしながら、第七実施形態では、第一組立体10a及び第二組立体10bが、吊ボルトから離れた位置において、吊元S及び天井Cに固定されている。そして、第一組立体10aでは第一ダンパ6が第二組立体10b側に配置されるとともに、第二組立体10bでは第二ダンパ7が第一組立体10a側に配置されるように、第一組立体10a及び第二組立体10bは、第一ダンパ6と第二ダンパ7とが上方に向けて広がるV字状となるように配置されている。
【0096】
詳しく説明すると、第一補助金具9aは、吊ボルト5から離れた位置において野縁受け4に固定された第六下部固定金具13fに固定されており、第一ダンパ6の上端部は、吊ボルト5から離れた位置において吊元Sに固定された第一吊元固定金具17aに固定されており、第一束材8aの上端部は、吊ボルト5から離れた位置において吊元Sに固定された第二吊元固定金具17bに固定されている。また、第二補助金具9bは、吊ボルト5から離れた位置において野縁受け4に固定された第七下部固定金具13gに固定されており、第二ダンパ7の上端部は、吊ボルト5から離れた位置において吊元Sに固定された第一吊元固定金具17aに固定されており、第二束材8bの上端部は、吊ボルト5から離れた位置において吊元Sに固定された第三吊元固定金具17cに固定されている。そして、第一ダンパ6の上端部と第二ダンパ7の上端部とが、共に同じ第一吊元固定金具17aに固定されていることで、第一組立体10aと第二組立体10bとが隣り合って配置されている。
【0097】
このように、本実施形態に係る天井制振システム1Dでは、第一組立体10a及び第二組立体10bが、それぞれ第五実施形態に対して左右逆に配置されているが、第一ダンパ6及び第二ダンパ7は、互いに反対側に傾斜して配置されて天井Cに生じる振動を減衰し、束材8は、上下方向に延びて第一ダンパ6及び第二ダンパ7の伸縮に伴う天井Cの面外変形を抑える。このため、第五実施形態と同様に、地震が発生した場合に、天井Cの加速度を低減させるとともに天井Cの揺れを早期に減衰させて、天井Cの損傷を抑制することができる。
【0098】
[第八実施形態]
次に、第八実施形態について説明する。第八実施形態は、基本的に第七実施形態(
図7参照)と同様であり、第一組立体(第一束材)と第二組立体(第二束材)とが離れている点のみ、第七実施形態と相違する。このため、以下では、第七実施形態と相違する事項のみを説明し、第七実施形態と同様の事項の説明を省略する。
【0099】
図8に示すように、本実施形態に係る天井制振システム1Gは、第一ダンパ6と、第二ダンパ7と、束材8と、を主構成要素としている。
【0100】
第七実施形態と同様に、第一ダンパ6と第一束材8aとは、第一補助金具9aにより1ユニット化されて、V字状の第一組立体10aとして組み立てられており、第二ダンパ7と第二束材8bとは、第二補助金具9bにより1ユニット化されて、V字状の第二組立体10bとして組み立てられている。しかしながら、第八実施形態では、第一組立体10a及び第二組立体10bが互いに離間した位置に配置されて、第一ダンパ6と第二ダンパ7とが下方に向けて広がるV字状となるように配置されている。
【0101】
詳しく説明すると、第一補助金具9aは、吊ボルト5から離れた位置において野縁受け4に固定された第八下部固定金具13hに固定されており、第一ダンパ6の上端部は、吊ボルト5から離れた位置において吊元Sに固定された第四吊元固定金具17dに固定されており、第一束材8aの上端部は、吊ボルト5から離れた位置において吊元Sに固定された第五吊元固定金具17eに固定されている。また、第二補助金具9bは、吊ボルト5から離れた位置において野縁受け4に固定された第九下部固定金具13iに固定されており、第二ダンパ7の上端部は、吊ボルト5及び第四吊元固定金具17dから離れた位置において吊元Sに固定された第六吊元固定金具17fに固定されており、第二束材8bの上端部は、吊ボルト5から離れた位置において吊元Sに固定された第七吊元固定金具17gに固定されている。そして、第一ダンパ6の上端部と第二ダンパ7の上端部とが、互いに異なる第四吊元固定金具17d及び第六吊元固定金具17fに固定されていることで、第一組立体10aと第二組立体10bとが離間して配置されている。
【0102】
このように、本実施形態に係る天井制振システム1Gでは、第一組立体10aと第二組立体10bとが互いに離間した位置に配置されているが、第一ダンパ6及び第二ダンパ7は、互いに反対側に傾斜して配置されて天井Cに生じる振動を減衰し、束材8は、上下方向に延びて第一ダンパ6及び第二ダンパ7の伸縮に伴う天井Cの面外変形を抑える。このため、第七実施形態と同様に、地震が発生した場合に、天井Cの加速度を低減させるとともに天井Cの揺れを早期に減衰させて、天井Cの損傷を抑制することができる。
【0103】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記した本実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。
【0104】
例えば、上記実施形態では、吊元及び天井に対する第一ダンパ、第二ダンパ及び束材の具体的な取り付け位置、取り付け手段等について説明したが、第一ダンパ及び第二ダンパが天井に生じる振動を減衰することができるとともに、束材が第一ダンパ及び第二ダンパの伸縮に伴う天井の面外変形を抑えることができれば、第一ダンパ、第二ダンパ及び束材は、如何なる位置、手段等によって吊元及び天井に取り付けられてもよい。
【0105】
また、上記実施形態において、比較例1のようなブレースを設けてもよい。このようなブレース設けることで、天井制振システムの耐力を更に向上することができ、特に中地震時の天井材の損傷を適切に防止することができる。
【0106】
また、上記実施形態において、野縁受け4の天井材2とは反対側(野縁受け4の上側)に配置されて、野縁受け4と直交する方向に延びる補強材を設けてもよい。このような補強材を設けることで、天井制振システムの耐力を更に向上することができる。なお、ブレースの下端部は、野縁受けに固定してもよく、補強材に固定してもよい。
【符号の説明】
【0107】
1,1A,1B,1C,1D,1F,1G…天井制振システム、2…天井材、3…野縁、4…野縁受け、5…吊ボルト、5a…第一吊ボルト、5b…第二吊ボルト、5c…第三吊ボルト、5d…第四吊ボルト、5e…第五吊ボルト、6…第一ダンパ、6a…第一継手、6b…第二継手、7…第二ダンパ、7a…第二継手、8…束材、8a…第一束材、8b…第二束材、9a…第一補助金具、9b…第二補助金具、10a…第一組立体、10b…第二組立体、11…クリップ、12…吊金具、13…下部固定金具、13a…第一下部固定金具、13b…第二下部固定金具、13d…第四下部固定金具、13e…第五下部固定金具、13f…第六下部固定金具、13g…第七下部固定金具、13h…第八下部固定金具、13i…第九下部固定金具、14a…第一上部固定金具、14b…第二上部固定金具、14c…第三上部固定金具、14d…第四上部固定金具、14e…第五上部固定金具、17a…第一吊元固定金具、17b…第二吊元固定金具、17c…第三吊元固定金具、17d…第四吊元固定金具、17e…第五吊元固定金具、17f…第六吊元固定金具、17g…第七吊元固定金具、21…束材、22…支持部材、31…第一ダンパ、32…第二ダンパ、33…第一振動増幅機構、33a…第一ブレース、33b…第二ブレース、34…第二振動増幅機構、34a…第一ブレース、34b…第二ブレース、110…天井制振システム、111…第一ブレース、112…第二ブレース、120…天井制振システム、C…天井、S…吊元。