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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】金属シール、及び、流体制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/08 20060101AFI20230105BHJP
   F16L 23/02 20060101ALN20230105BHJP
【FI】
F16J15/08 A
F16J15/08 G
F16L23/02 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017228199
(22)【出願日】2017-11-28
(65)【公開番号】P2019100361
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-10-16
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】591202155
【氏名又は名称】熊本県
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】上村 誠
(72)【発明者】
【氏名】宮地 博記
(72)【発明者】
【氏名】村上 恵一
【合議体】
【審判長】平田 信勝
【審判官】岡本 健太郎
【審判官】尾崎 和寛
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-2944(JP,U)
【文献】特開2008-45730(JP,A)
【文献】特開2004-340315(JP,A)
【文献】特開2009-281589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/08
F16L 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1平面、及び、当該第1平面に対して平行な第2平面との間に設けられ、前記第1平面、及び、前記第2平面を互いに近づけることによって押圧挟持される環状の金属シールであって、
前記第1平面と対向させて設けられる第1端面部と、
前記第2平面と対向させて設けられる第2端面部と、を備え、
前記第1端面部が、
前記第1平面と接触する曲面又は平面を有する第1凸部と、
前記第1凸部に対して半径方向にずらして形成され、前記第1平面と接触して食い込むように構成された稜線を有する第1突起と、を具備し、
前記第2端面部が、
前記第2平面と接触する曲面又は平面を有する第2凸部と、
前記第2凸部に対して半径方向にずらして形成され、前記第2平面と接触して食い込むように構成された稜線を有し、第2突起と、を具備し、
前記第2端面部が前記第2平面に接触しており、かつ、前記第1端面部に対して前記第1平面が離間している前記金属シールが変形前の自然状態である場合に、前記第1凸部において前記第2平面に対する垂直方向距離が最も大きい点と、前記第1突起の稜線とが、前記第1平面と平行な同一平面上にあり、
前記金属シールにおいて、前記第1凸部、及び、前記第2突起が内周側に形成されており、前記第1突起、及び、前記第2凸部が外周側に形成されており、横断面視で前記第1凸部の曲面における前記第1平面に対する接触点又は前記第1凸部の平面における半径方向の中点が、前記第2突起において前記第2平面に接触する稜線に対して半径方向にずれており、前記第1突起において前記第1平面に接触する稜線が、前記第2凸部の曲面における前記第2平面に対する接触点又は前記第2凸部の平面における半径方向の中点に対して半径方向にずれていることを特徴とする金属シール。
【請求項2】
前記第1端面部が前記第1平面に接触しており、かつ、前記第2端面部に対して前記第2平面が離間している前記金属シールが変形前の自然状態である場合に、前記第2凸部において前記第1平面に対する垂直方向距離が最も大きい点と、前記第2突起の稜線とが、前記第2平面と平行な同一平面上にある請求項1記載の金属シール。
【請求項3】
前記第1凸部が、前記第2凸部よりも内周側に形成されており、
前記第1突起が、前記第2突起よりも外周側に形成されている請求項2記載の金属シール。
【請求項4】
前記第1凸部と前記第2突起が軸方向に並んで形成されており、
前記第2凸部と前記第1突起が軸方向に並んで形成されている請求項2又は3記載の金属シール。
【請求項5】
横断面を見た場合に、前記第1端面部と前記第2端面部が所定の回転中心に対して回転対称である請求項1乃至4いずれかに記載の金属シール。
【請求項6】
横断面を見た場合に、前記第1端面部と前記第2端面部が非対称である請求項1乃至4いずれかに記載の金属シール。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれかに記載の金属シールと、
前記第1平面が形成されたフランジと、
前記第2平面が形成されたブロックと、を備え、
前記ブロックに対して前記フランジを取り付けることによって前記金属シールが前記第1平面と前記第2平面との間に押圧挟持されるように構成された流体制御装置。
【請求項8】
第1端面部と、第2端面部を備えた環状の金属シールであって、
前記第1端面部が、
曲面又は平面を有する第1凸部と、
前記第1凸部に対して前記金属シールの半径方向にずらして形成され、平面と接触して食い込むように構成された稜線を有する第1突起と、を具備し、
前記第2端面部が、
曲面又は平面を有する第2凸部と、
前記第2凸部に対して前記金属シールの半径方向にずらして形成され、平面と接触して食い込むように構成された稜線を有する第2突起と、を具備し、
前記第2端面部が所定平面上に配置され、かつ、前記金属シールが変形前の自然状態にある場合に、
前記第1凸部において前記所定平面に対する垂直方向距離が最も大きい点と、前記第1突起の稜線とが、前記所定平面と平行な同一平面上にあり、
前記金属シールにおいて、前記第1凸部、及び、前記第2突起が内周側に形成されており、前記第1突起、及び、前記第2凸部が外周側に形成されており、横断面視で前記第1凸部の曲面における前記所定平面に対する垂直方向距離が最も大きい点又は前記第1凸部の平面における半径方向の中点が、前記第2突起における稜線に対して半径方向にずれており、前記第1突起おける稜線が、前記第2凸部の曲面における前記所定平面に接触する点又は前記第2凸部の平面における半径方向の中点に対して半径方向にずれていることを特徴とする金属シール。
【請求項9】
請求項1乃至6又は8いずれかに記載の金属シールを用いたシール方法であって、
前記金属シールが変形前の自然状態において、前記第1端面部を第1平面に対して離間させて対向させるとともに、前記第2端面部を第2平面に対して接触させることと、
前記第1平面、及び、前記第2平面を互いに近づける際に、前記第1平面が、前記第1凸部、及び、前記第1突起の稜線に同時に接触し始めるようにすることと、を備えたシール方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平行な2つの平面間において押圧挟持される金属シールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、マスフローコントローラ等の流体制御機器では、内部流路が形成されたブロックと、前記ブロックの内部流路の開口部分を塞ぐように取り付けられるバルブや流量センサのフランジとの間に環状の金属シールが設けられる。前記金属シールは、前記ブロックと前記フランジとの間で平行な平面間で軸方向に押し潰されることによって前記ブロックと前記フランジとの間の隙間を塞ぎ、内部流路から外部への漏れが発生するのを防ぐ。
【0003】
従来の環状の金属シール100Aとしては、図7及び図8に示すように、変形前の自然状態での横断面視において概略長方形状の中間基部Mと、前記中間基部Mの上部内周側から突出させた半円形状の第1凸部11Aと、前記中間基部Mの下部内周側から吐出させた半円形状の第2凸部21Aとを備えている。前記第1凸部11Aの外周側、前記第2凸部21Aの内周側にはそれぞれ直角の第1エッジ12A、及び、第2エッジ22Aが形成されている。
【0004】
図8(a)に示すように変形前の自然状態では、前記第1凸部11Aのみが前記第1平面S1と接触し、前記第2凸部21Aのみが前記第2平面S2と接触する。次に図8(b)に示すように前記金属シール100Aを押圧挟持する第1平面S1と第2平面S2が相互に接近すると、前記第1凸部11A、及び、前記第2凸部21Aが上下方向にそれぞれ押圧されて、前記金属シール100Aには、断面が捩じれることにより前記中間基部M(重心)を中心とする捩じれ弾性変形が生じることになる。この結果、前記第1平面S1に前記第1エッジ12Aが接触するのと同時に前記第2平面S2に対して前記第2エッジ22Aが接触することになる。
【0005】
特許文献1では、前記金属シール100Aを自然状態から所定期間の間は捩じれ弾性変形させた後、前記第1エッジ12A及び前記第2エッジ22Aによって捩じれ弾性変形を終了させることによって各所で適切な接触面圧を実現して、前記第1平面S1及び前記第2平面S2に損傷が生じないようにして、漏れが発生するのを防ぐことができると考えられている。
【0006】
しかしながら、実際には上記のような金属シール100Aを用いても流体の漏れが発生することがある。この原因について本願発明者らが鋭意検討を行ったところ以下のような複数の問題があることを初めて見出した。
【0007】
すなわち、前記金属シール100Aを変形前の自然状態から捩じれ弾性変形させて前記第1エッジ12A、及び、前記第2エッジ22Aを前記第1平面S1、及び、前記第2平面S2に接触させるようにすると、前記金属シール100Aは圧縮による変形中に内周側及び外周側へそれぞれ広がろうとする。
【0008】
この際、圧縮による場合は金属シール100Aの体積自体は大きくは変化できないので、前記第1凸部11Aは、前記第1平面S1に対して内周側へ滑ってしまい、前記第2凸部21Aは、前記第2平面S2に対して外周側へ滑ってしまう。そうすると、第1平面S1、及び、前記第2平面S2には滑りによる細かい傷が発生するため、密閉できない箇所が発生してしまう。
【0009】
また、特許文献1に記載されている程度に大きく捩じれ弾性変形を前記金属シール100Aに生じさせると、図9(a)に示すように、環状の金属シール100Aは内周側に金属が集中することによって、前記第1凸部11A上に円周方向に沿って微小なしわが発生することになる。この結果、図9(a)のA-A線断面図である図9(b)に示すように、前記第1凸部11Aと前記第1平面S2とは当接している箇所としていない箇所が発生して、不均一に接触していることになるため、想定しているような押し潰し状態が前記金属シール100Aに実現できていない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許4299581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述したような問題を鑑みてなされたものであり、第1平面、及び、第2平面に対して滑りによる微小な傷が発生しにくく、しわの発生を抑えて、均一に押し潰すことができる金属シールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明に係る金属シールは、第1平面、及び、当該第1平面に対して平行な第2平面との間に設けられ、前記第1平面、及び、前記第2平面を互いに近づけることによって押圧挟持される環状の金属シールであって、前記第1平面と対向させて設けられる第1端面部と、前記第2平面と対向させて設けられる第2端面部と、を備え、前記第1端面部が、前記第1平面と接触する曲面又は平面を有する第1凸部と、前記第1凸部に対して半径方向にずらして形成され、前記第1平面と接触する稜線を有する第1突起と、を具備し、前記第2端面部が前記第2平面に接触しており、かつ、前記第1端面部に対して前記第1平面が離間している前記金属シールが変形前の自然状態である場合に、前記第1凸部において前記第2平面に対する垂直方向距離が最も大きい点と、前記第1突起の稜線とが、前記第1平面と平行な同一平面上にあることを特徴とする。
【0013】
このようなものであれば、前記第1平面、及び、前記第2平面を互いに近づけることによって、前記第1凸部と前記第1突起をほぼ同時に前記第1平面に対して接触させ始めることができる。このため、押圧挟持の過程において前記金属シールに対して大きな捩じれ弾性変形を生じにくくすることができ、前記第1凸部上において変形によるしわの発生を抑制できる。したがって、金属シール全体を前記第1平面、及び、前記第2平面により均一に押圧して高いシール性を実現できる。
【0014】
また、前記第1平面と前記第2平面による押圧開始時から前記第1突起が前記第1平面に接触するので、前記第1突起の稜線が前記第1平面に対して食い込むことにより、前記第2端面部が前記第2平面に対してすべりが発生するのを防ぐことができる。したがって、押圧挟持されていく過程で前記金属シールが滑って前記第1平面、及び、前記第2平面に微小な傷が発生して、漏れが発生する原因となるのを抑制できる。
【0015】
前記第2端面部においても高いシール性を実現しつつ、金属シールが変形することによるしわの発生を抑えて均一な押圧挟持を実現できるようにするには、前記第2端面部が、前記第2平面と接触する曲面又は平面を有する第2凸部と、前記第2凸部に対して半径方向にずらして形成され、前記第2平面と接触する稜線を有する第2突起と、を具備し、前記第1端面部が前記第1平面に接触しており、かつ、前記第2端面部に対して前記第2平面が離間している前記金属シールが変形前の自然状態である場合に、前記第2凸部において前記第1平面に対する垂直方向距離が最も大きい点と、前記第2突起の稜線とが、前記第2平面と平行な同一平面上にあればよい。
【0016】
前記金属シールが、内周側と外周側で押圧状態の均一性が保たれやすくするには、前記第1凸部が、前記第2凸部よりも内周側に形成されており、前記第1突起が、前記第2突起よりも外周側に形成されていればよい。
【0017】
前記第1平面と、前記第2平面による押圧挟持により、前記第1凸部、及び、前記第2凸部に滑りがより発生しにくくするには、前記第1凸部と前記第2突起が軸方向に並んで形成されており、前記第2凸部と前記第1突起が軸方向に並んで形成されていればよい。
【0018】
前記金属シールを機械加工等によって簡単に加工できるようにするには、横断面を見た場合に、前記第1端面部と前記第2端面部が所定の回転中心に対して回転対称であればよい。
【0019】
前記第1平面と、前記第2平面による押圧挟持を開始した際に、第1端面部と第2端面部においていずれか先に変形が生じやすくして、金属シールの個体間に変形モードの違いが生じにくくするには、横断面を見た場合に、前記第1端面部と前記第2端面部が非対称であればよい。横断面を対称形状とした場合には金属シールを構成する金属の品質のばらつきに応じて、前記第1端面部、又は、前記第2端面部のどちらから変形が発生するかは変化するが、非対称形状であれば、構造としての強度の差が金属の品質よりも影響を大きくして、必ず一方から変形が開始されるように変形モードを限定しやすい。したがって、金属シールの個体間においてシール性に関するばらつきを抑えることができる。
【0020】
本発明に係る金属シールと、前記第1平面が形成されたフランジと、前記第2平面が形成されたブロックと、を備え、前記ブロックに対して前記フランジを取り付けることによって前記金属シールが前記第1平面と前記第2平面との間に押圧挟持されるように構成された流体制御装置であれば、前記ブロックに取り付けられる各種流体機器との接続部分からの流体のリークを低減し、より高精度な流体制御を実現できる。
【0021】
また、本発明に係る金属シールは、第1端面部と、第2端面部を備えた環状の金属シールであって、前記第1端面部が、曲面又は平面を有する第1凸部と、前記第1凸部に対して前記金属シールの半径方向にずらして形成され、稜線を有する第1突起と、を具備し、前記第2端面部が所定平面上に配置され、かつ、前記金属シールが変形前の自然状態にある場合に、前記第1凸部において前記所定平面に対する垂直方向距離が最も大きい点と、前記第1突起の稜線とが、前記所定平面と平行な同一平面上にあることを特徴とする。
【0022】
このようなものであれば、前記第1端面部と前記第2端面部とから平行な平面で押圧挟持してシール性を発揮させる際に、前記第1凸部と前記第1突起を同時に押圧挟持される面に接触を開始させることができる。このため、金属シール自体には捩じれ弾性変形がほとんど生じず、前記第1凸部上において変形によるしわの発生を抑制し、当該第1凸部が均一に押圧されて高いシール性を実現できる。また、前記第1突起が押圧される面に最初から接触しているので、押圧挟持によって金属シールが半径方向に滑るのを防止し、リークの原因となる微小な傷の発生を防げる。
【0023】
平面間で金属シールを押圧挟持する過程でしわの発生を防ぎ、均一なシールを実現できるようにしつつ、金属シールが平面間で滑るのを防いで、リークの原因となる微小な傷の発生を抑制できるようにするには、曲面又は平面を有する第1凸部、及び、稜線を有する第1突起を具備する第1端面部と、第2端面部と、を備えた環状の金属シールを用いたシール方法であって、前記金属シールが変形前の自然状態において、前記第1端面部を第1平面に対して離間させて対向させるとともに、前記第2端面部を第2平面に対して接触させることと、前記第1平面、及び、前記第2平面を互いに近づける際に、前記第1平面が、前記第1凸部、及び、前記第1突起の稜線に同時に接触し始めるようにすることと、を備えたシール方法を用いればよい。
【発明の効果】
【0024】
このように本発明に係る金属シールであれば、変形前の自然状態において前記第1凸部と前記第1突起とが弾性変形を発生させずに前記第1平面に対して同時に接触できるように構成されているので、押圧挟持していく過程で金属シールにおいて大きな変形が生じない。したがって、前記第1凸部においてしわが発生するのを防ぎ、当該第1凸部における均一なシール性を実現できる。
【0025】
また、前記第1突起が金属シールの変形開始時から前記第1平面に接触して、ストッパとして役割を果たすので、前記第2端面部が第2平面に対して滑るのを防ぎ、微小な半径方向への傷が第2平面に発生することを防ぐことができる。
【0026】
これらのことから、従来よりも金属シールのシール性を高めて、流体のリークが発生するのを好適に防げる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態に係る金属シール、及び、当該金属シールが用いられるマスフローコントローラを示す模式的分解斜視図。
図2】第1実施形態の金属シールの模式的斜視図。
図3】第1実施形態の金属シールの横断面を示す模式的断面図。
図4】第1実施形態の金属シールの押圧開始時における変形前の自然状態と、押圧挟持完了後の状態を示す模式的断面図。
図5】本発明の第2実施形態に係る金属シールの横断面を示す模式的断面図。
図6】本発明の第3実施形態に係る金属シールの横断面を示す模式的断面図。
図7】従来の金属シールを示す模式的斜視図。
図8】従来の金属シールの押圧開始時における変形前の自然状態と、押圧挟持完了後の状態を示す模式的断面図。
図9】従来の金属シールにおいて押圧挟持完了後のしわの発生状態について示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の第1実施形態に係る金属シール100について図面を参照しながら説明する。
【0029】
第1実施形態の金属シール100は、図1に示すように、例えば流体制御装置であるマスフローコントローラ200において機器間の接続部分からの流体のリークを防ぐために用いられるものである。前記マスフローコントローラ200は、内部流路が形成されたブロックBと、前記ブロックBに対して取り付けられるバルブV、及び、2つの圧力センサPを備えたものである。
【0030】
前記ブロックBは、概略直方体形状のものであり、その上面が前記バルブV、及び、前記圧力センサPの取付面となっている。このブロックBの取付面には内部流路が外部開口する箇所が複数設けられており、この開口部分の周囲に環状の金属シール100が配置される。より具体的には、前記バルブVの前記ブロックBに対する取付フランジFLの底面、及び、前記圧力センサPの前記ブロックBに対する取付フランジFLの底面に第1平面S1が形成されている。また、前記ブロックBの取付面において内部流路の開口部分Cの周囲に形成された環状の第2平面S2が形成されている。なお、説明の便宜上、図1における上面側を第1平面S1、下面側を第2平面S2として定義しているが、この関係は逆であっても構わない。
【0031】
前記金属シール100は、前記第1平面S1と前記第2平面S2との間に挟持され、前記バルブV、及び、前記圧力センサPの取付フランジFLを前記ブロックBに対してボルト等で固定し、前記第1平面S1と前記第2平面S2とを相互に近づけることで押圧挟持される。
【0032】
前記金属シール100の詳細について説明すると、前記金属シール100は、図2に示すように円柱座標系を設定した場合、中心軸Zから半径方向rに所定距離離れた位置に図3に示す断面を配置し、前記中心軸Z周りに1回転させた回転体形状をなすものである。より具体的には、前記金属シール100は、前記第1平面S1と対向して設けられる第1端面部1Pと、前記第2平面S2と対向して設けられる第2端面部2Pとを備えている。図2及び図3に示すように前記第1端面部1P及び前記第2端面部2Pにはそれぞれ2か所突出している部分が形成してある。また、第1実施形態では、前記金属シール100の横断面形状は重心に対して前記第1端面部1Pと前記第2端面部2Pの形状が回転対称となるように形成してある。前記第1端面部1P、及び、前記第2端面部2Pの形状は例えば切削加工等の機械加工で形成してあるが、その他の加工方法で形成しても構わない。なお、以下の説明においても前記金属シール100を前記第1端面部1P又は前記第2端面部2Pに対して垂直な方向から見た場合の中心を通る回転軸を中心軸Z、前記中心軸Zに対して垂直な方向を半径方向rとして説明する。
【0033】
前記第1端面部1Pは、図2の斜視図、図3の横断面図に示すように、半径方向rに対して内周側に形成された第1凸部11と、外周側に形成された第1突起12と、を備えている。
【0034】
前記第1凸部11は、図3に示すように横断面が部分円筒状に第1平面S1側へと突出したものである。したがって、図2の斜視図に示すように前記第1凸部11は、全体としてハーフパイプが環状をなすように前記第1端面部1Pの内周側に配置してある。
【0035】
前記第1突起12は、図3に示すように横断面が概略三角形状のものである。したがって、図2の斜視図に示すように前記第1突起12は、前記第1端面部1Pの外周側において一周する稜線RLを形成している。前記第1突起12の稜角は図3の横断面図に示されるように90°よりも若干大きく形成してあり、内周側の法面よりも外周側の法面の方が傾斜が大きくなるようにしてある。
【0036】
前記第2端面部2Pは、図3の横断面図に示すように、半径方向rに対して内周側に形成された第2突起22と、外周側に形成された第2凸部21と、を備えている。なお、前記第1端面部1Pと前記第2端面部2Pは回転対称となるように形成されているので、前記第1凸部11と前記第2凸部21は同じ形状を有しており、前記第1突起12と前記第2突起22も同じ形状を有している。
【0037】
前記第2突起22は、図3の横断面図に示すように、前記第1凸部11の下側に配置してある。言い換えると、前記第1凸部11と前記第2突起22は前記金属シール100の中心軸Z方向に対して並ぶように配置してある。ここで、図4(a)に示すように前記金属シール100が変形前の自然状態において、前記第1凸部11において中心軸Z方向に沿って最も外側の点、すなわち、前記第1平面S1との接触点TPは、前記第2突起22の稜線RLよりも外周側に配置してある。また、前記第2突起22の稜角は図3の横断面図に示されるように90°よりも若干大きく形成してあり、外周側の法面よりも内周側の法面の方が傾斜を大きくしてある。
【0038】
前記第2凸部21は、図3の横断面図に示すように、前記第1突起12の下側に配置あり、前記第1突起12と前記第2凸部21は前記金属シール100の中心軸Z方向に対して並ぶように配置してある。図4(a)に示すように前記金属シール100が変形前の自然状態において、前記第2凸部21において中心軸Z方向に沿って最も外側の点、すなわち、前記第2平面S2との接触点TPは、前記第1突起12の稜線RLよりも内周側に配置してある。
【0039】
図4(a)に示すように、前記金属シール100が変形前の自然状態であり、例えば、前記第1端面部1Pに前記第1平面S1が接触し、前記第2端面部2Pに前記第2平面S2が接触して、押圧挟持が開始される時点では、前記第1凸部11の接触点TP(接触線)と、前記第1突起12の稜線RLとは、前記第2平面S2から見て同じ高さに配置されるようにしてある。言い換えると、自然状態において前記第2平面S2に前記金属シール100が載置されている場合には、前記第1凸部11において前記第2平面S2から最も垂直方向に離れている点である接触点TPと前記第1突起12の稜線RLは前記第2平面S2と並行な同一平面上に配置してある。
【0040】
同様に自然状態においては、前記第2突起22の稜線RLと、前記第2凸部21の第2平面S2に対するも第1平面S1に対して平行な同一平面状に配置されるようにしてある。
【0041】
さらに言い換えると、前記金属シール100を前記中心軸Z方向に沿って断層撮影した場合、前記第1凸部11の前記第1平面S1に対する接触線と、前記第1突起12の稜線RLは同一面上で撮像される。同様に前記第2突起22の稜線RLと、前記第2凸部21の前記第2平面S2に対する接触線とは同一面上で撮像される。また、前記金属シール100を定盤等の所定平面に対して前記第2端面部2Pを載置した場合、前記第1凸部11において前記所定平面から最も垂直方向距離の大きい点又は線と、前記第1突起12の稜線RLは前記所定平面と平行な同一面上に配置される。また、前記金属シール100は、等断面形状の環状体であるので、図2に示すように中心軸Zを含む1又は2の切断面で現れる任意の2つの端面を見た場合に、各端面に表れる前記第1凸部11において最も突出している地点であり、第1平面S1に対して接触する2つの接触点TPと、各端面に表れる第1突起12の2つの稜線RLとは、前記金属シール100が変形前の自然状態では同一平面状に配置されるように構成してある。
【0042】
このように構成された前記金属シール100を前記第1平面S1と前記第2平面S2で押圧挟持した場合について図4を参照しながら説明する。
【0043】
図4(a)に示すように、前記金属シール100が変形前の自然状態であって、前記第1平面S1が前記第1端面部1Pに接触し、前記第2平面S2が前記第2端面部2Pに接触し、加圧が開始される時点では、前記第1凸部11の接触点TPと前記第1突起12の稜線RLは前記第1平面S1に対して同時に接触する。同様に前記第2突起22の稜線RLと前記第2凸部21の接触点TPは前記第2平面S2に対して同時に接触する。
【0044】
次に図4(a)の状態からさらに前記第1平面S1と前記第2平面S2を接近させていくと、加圧開始時点において前記第1突起12の稜線RLは前記第1平面S1に対して接触しているので、前記第1突起12の稜線RLが楔としての役割を果たして、図4(b)に示すように前記金属シール100に変形が生じても前記第1突起12が最初に接触している位置からほとんど変化しない。このため、前記第1突起12と中心軸Z方向に対して対向して設けられている前記第2凸部21は曲面であっても前記第2平面S2に対してほとんど滑らず、最初の接触位置からほとんど変化しない。
【0045】
また、前記第2突起22も前記第1突起12と同様の作用を奏するので、図4(a)と図4(b)の比較から分かるように前記第1凸部11と前記第2突起22の接触している位置も最初の位置からほとんど変化しない。このため、前記第2突起22と中心軸Z方向に対して対向して設けられている前記第1凸部11は曲面であっても前記第1平面S1に対してほとんど滑らず、最初の接触位置からほとんど変化しない。
【0046】
これらのことから、第1実施形態の金属シール100であれば、押圧挟持を進めることによって金属シール100が滑って前記第1平面S1や前記第2平面S2に微小な傷が付きにくく、流体のリークの原因となる微小隙間が発生しにくい。
【0047】
さらに、前記第1凸部11、前記第1突起12、前記第2凸部21、及び、前記第2突起22が、それぞれ前記第1平面S1及び前記第2平面S2に同時に接触した状態から押圧挟持が開始されるので、従来の金属シール100と比較すると金属シール100に発生する捩じり弾性変形量は小さい。このため、前記金属シール100の変形が前記第1凸部11や前記第2凸部21にしわとなって表れにくい。
【0048】
したがって、第1実施形態の金属シール100は前記第1平面S1と前記第2平面S2によって均一に押圧され、全周に亘って高い密着性を実現できる。
【0049】
以上の作用によって、第1実施形態の金属シール100であれば高いシール性を実現して、流体のリークを防ぐことができる。加えて、金属シール100は、第1平面S1、第2平面S2に対して反転させて用いることによって、第1突起12、及び、第2突起22を新たに第2平面S2、及び、第1平面S1に対して接触させて、少なくとも2回はシールすることができる。
【0050】
次に本発明の第2実施形態に係る金属シール100について図5を参照しながら説明する。なお、第1実施形態において説明した部材と対応する部材には同じ符号を付すこととする。
【0051】
第2実施形態の金属シール100は、その横断面が非対称形状となるように形成してある。具体的には第2実施形態では、前記第1凸部11と前記第1突起12との間に形成された第1凹部の形状が、前記第2突起22と前記第2凸部21との間に形成された第2凹部の形状と異ならせてある。すなわち、第1凹部のほうが第2凹部よりも肉厚を大きくしてあり、前記第1端面部1P側のほうが前記第2端面部2P側よりも変形しにくく形成してある。
【0052】
このように構成することで、前記第1平面S1と前記第2平面S2との間で第2実施形態の金属シール100を押圧挟持すると、前記第2端面部2Pから変形が起こり、その後、前記第1端面部1P側が変形するという変形モードを構造によって生じやすくできる。したがって、複数の金属シール100において金属の品質にバラツキがあったとしても個体差を無くして、どの個体でも同様の変形モードを実現させやすい。このため、第2実施形態の金属シール100であれば、量産した場合でも材料の品質のばらつきに影響を小さくでき、シール性等の特性を個体間で一定に保つことができる。
【0053】
次に第3実施形態の金属シール100について図6を参照しながら説明する。なお、第1実施形態において説明した部材と対応する部材には同じ符号を付すこととする。
【0054】
第3実施形態の金属シール100は、第1実施形態と比較すると第1凸部11、及び、第2凸部21の形状が曲面ではなく平面である点が異なっている。具体的には、前記第1平面S1と前記第2平面S2との間で前記金属シール100の押圧挟持が開始される時点において、前記第1突起12の稜線RLと同時に前記第1平面S1に対して接触する接触面TSを前記第1凸部11は有している。同様に第2凸部21も前記第2突起22の稜線RLと同時に前記第2平面S2に対して接触する接触面TSを有している。
【0055】
このような第3実施形態の金属シール100であっても第1実施形態とほぼ同様のシール性を実現し、微小な傷が前記第1平面S1、又は、前記第2平面S2に発生しにくくして、流体のリークを防ぐことができる。
【0056】
その他の実施形態について説明する。
【0057】
本発明に係る金属シールは、マスフローコントローラだけに用いられるものではなく、その他の用途にも用いることができる。例えば圧力制御装置等の流体制御機器に用いてもよいし、流体の流れる配管同士の継手部分に用いてもよい。
【0058】
第1凸部、第1突起、第2凸部、第2突起の半径方向の配置については各実施形態に示したものに限られない。例えば、第1凸部と第2凸部が金属シールの中心軸方向に並んで配置してあり、第1突起と第2突起が金属シールの中心軸方向に並んで配置してあってもよい。
【0059】
第1突起、第2突起の形状についても稜線が形成されるものであればよい。例えば第1凸部、第2凸部で全周にわたってシール性が確保できるのであれば、第1突起、第2突起の稜線は一部切り欠かれていても良い。すなわち、第1突起、第2突起は押圧挟持を進める過程における前記第1平面及び前記第2平面に対するアンカーの役割だけを果たすように構成してもよい。
【0060】
第1凸部、第2凸部の形状を非対称にしても構わないし、第1突起と第2突起の形状を非対称にしてもよい。
【0061】
金属シールは、環状のものであればよく、前述した実施形態のように第1端面部又は第2端面部に対して垂直な方向から見た場合に概略真円状のものに限られない。金属シールは、例えば第1端面部又は第2端面部に対して垂直な方向から見た場合に、楕円形状、角丸四角形状、トラック形状等様々な形状で環状に形成してもよい。真円形状以外の場合には前述した実施形態における中心軸は基準軸として定義できる。また、金属シールは、延伸方向に対する横断面の形状がどの切断面でもほぼ同じ形状となる等断面形状の環状体として形成されるのが好ましい。
【0062】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の組み合わせや変形を行っても構わない。
【符号の説明】
【0063】
100・・・金属シール
1P ・・・第1端面部
11 ・・・第1凸部
12 ・・・第1突起
2P ・・・第2端面部
21 ・・・第2凸部
22 ・・・第2突起
TP ・・・接触点
RL ・・・稜線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9