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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】ベーカリー用油脂組成物
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20230105BHJP
   A23D 7/00 20060101ALI20230105BHJP
   A21D 2/14 20060101ALI20230105BHJP
   A21D 2/16 20060101ALI20230105BHJP
   A21D 13/00 20170101ALI20230105BHJP
【FI】
A23D9/00 502
A23D7/00 506
A21D2/14
A21D2/16
A21D13/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018209971
(22)【出願日】2018-11-07
(65)【公開番号】P2020074708
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】郷内 佳奈子
(72)【発明者】
【氏名】河原 歩
(72)【発明者】
【氏名】廣川 敏幸
【審査官】山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-178363(JP,A)
【文献】特開2014-050336(JP,A)
【文献】国際公開第2014/077019(WO,A1)
【文献】特開2016-202150(JP,A)
【文献】特開2015-043712(JP,A)
【文献】特開2001-045969(JP,A)
【文献】特開2018-023309(JP,A)
【文献】特開2013-121343(JP,A)
【文献】特開2015-146759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 7/00-9/06
A21D 2/00-17/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離アミノ酸を0.0001~0.01質量%及び糖類を固形分として0.01~1質量%含有し、該遊離アミノ酸中の含硫アミノ酸含量が15質量%以上であ該含硫アミノ酸が、システイン、シスチン及びグルタチオンからなる群から選択される少なくとも1種であり、ベーカリー生地に練り込み使用又はロールイン使用される、ベーカリー用油脂組成物。
【請求項2】
上記遊離アミノ酸中の疎水性分岐アミノ酸含量が5質量%以上である、請求項1記載のベーカリー用油脂組成物。
【請求項3】
さらに乳製品を含有する、請求項1又は2記載のベーカリー用油脂組成物。
【請求項4】
さらに乳風味香料を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のベーカリー用油脂組成物。
【請求項5】
バター風味を有するベーカリー用である、請求項1~4のいずれか一項に記載のベーカリー用油脂組成物。
【請求項6】
油中水型可塑性乳化油脂組成物である、請求項1~5のいずれか一項に記載のベーカリー用油脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のベーカリー用油脂組成物を含有するベーカリー生地。
【請求項8】
請求項7記載のベーカリー生地を加熱処理してなるベーカリー製品。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載のベーカリー用油脂組成物を、ベーカリー生地製造時に添加する、ベーカリー生地の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好なバター風味を有するベーカリー製品を安定して製造することのできるベーカリー用油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ベーカリー製品に良好なコク味を付与するために、一般的にはバターが使用されてきた。これは、バターがコクのある強い乳風味をもともと持っていることに加え、ベーカリー生地に使用すると、加熱によりさらにその風味が際立つためである。そのため、美味しいベーカリー製品には「バター」を使用し、その名称が接頭語として使用される。例えば、バターロール、バタークロワッサン、バターデニッシュなどである。
【0003】
しかし、バターはベーカリー製品に良好な風味を付与するが、日本国内においてはマーガリンに比べて極めて高価なものである。さらに、乳の生産量減等によるバター不足、あるいは、乳牛の生育環境による風味の違いなどの問題があり、安定した品質のバターを安定的に得ることが困難である。そのため、良好なバター風味を有するマーガリンに対する需要が高まってきている。
【0004】
良好なバター風味を有するマーガリンを得るために、通常、マーガリンにバターを10~30質量%配合した、いわゆるコンパウンドマーガリンが使用されている。しかしながら、この方法では、バターの含量分のバター風味しか得られない。また、バター香料をマーガリンに使用する方法もある。しかしながら、この方法では良好なバターのコク味が得られないことに加え、油脂組成物の段階では良好なバター風味を呈するものであっても、ベーカリー製品になった場合は風味が弱くなってしまったり、人工的な風味が感じられるなどの問題があった。
【0005】
このため、バターを使用しなくても、あるいはバターの使用量は少量であっても、良好なバター風味を有するベーカリー製品を得る方法についての研究が各種行われ、様々な提案がなされている。
【0006】
良好なバター風味を有するベーカリー製品を得るため、各種の乳風味増強剤を使用する方法(例えば、特許文献1~8参照)が提案されている。
しかし、特許文献1~6の乳風味増強剤を使用する方法は、実際には乳風味自体を増強しているのではなく、単にコク味を付与することにより乳風味を増強させている。そのため、コク味の強さの割りにバター風味は感じられないという問題があった。また、乳風味以外の風味をも同様に増強してしまい、乳風味が目立って増強されたように感じられないという問題もあった。また、乳風味増強剤に使用される素材はコク味を付与するために素材自体の風味が強いものであるため、添加量を増やすと当該素材の風味が感じられてしまうという問題もあった。特許文献7に記載の乳清ミネラルを使用する方法は、良好なバター風味を付与することができるが、バターのコク味付与の観点から改善の余地があった。引用文献8に記載の酵母エキスを使用する方法は、バター風味を強化するために酵母エキスの添加量を増やすとえぐ味が出るおそれがあるという問題があった。
【0007】
一方、乳風味を得る目的で呈味成分そのものを使用する方法が提案されている。その方法としてアミノ酸を利用する方法が注目されている。これはアミノ酸がたんぱく質の構成成分であり、乳風味の基本が乳タンパク由来であるためである。
アミノ酸を利用する方法として、例えば、グルタミン酸、グリシン、リジン及びメチオニンからなる群から選択される3種のアミノ酸を使用する、熟成されたチーズ風味を有する食品を得る方法(例えば特許文献9参照)、ロイシン、アスパラギン酸、グルタミン酸及びカルボニル化合物を含有するミルク風味の油脂組成物(例えば特許文献10参照)、特定の9種のアミノ酸の混合物により発酵乳風味を得る方法(例えば特許文献11及び12参照)、アラニン及びアルギニンを使用する方法(例えば特許文献13及び14参照)、呈味の異なる2種のアミノ酸を組み合わせる方法(例えば特許文献15参照)、並びに3種の特性のアミノ酸を組み合わせる方法(例えば特許文献16参照)などが提案されている。
【0008】
しかし、上述のアミノ酸を利用する方法は、例えば、特許文献9であればチーズ風味、特許文献10であればミルク風味、特許文献11及び12であれば発酵乳風味などの特定の乳風味、特許文献15であれば発酵バター風味等、与える乳風味が特定の風味に特化される問題があった。一方、特許文献13及び14に記載されている汎用性の高いアミノ酸組成物は、バター風味を強化するために使用すると、自然でコクのある良好なバター風味が得られない問題があった。また特許文献16のアミノ酸組成物は、良好なバター風味が得られるが、バター風味を強化するためにアミノ酸の添加量を増やすとえぐ味が出るおそれがあるという問題があった。
【0009】
また、アミノ酸は還元糖とのアミノカルボニル反応(メイラード反応)によりベーカリー製品に良好な風味を付与することが知られている。そのため、良好な風味を付与するためにアミノ酸を利用する場合、アミノ酸と糖類とを併用することでコクのある乳風味を得る方法が提案されている(例えば特許文献17~20参照)。しかしこれらの方法ではコク味が強調されてしまい、むしろ乳風味は弱くなってしまうという問題があった。さらに、メイラード反応により生成される着色物質によってベーカリー製品の色調、とくにベーカリー製品の内相の白度が落ちるという問題があった。
【0010】
また、アミノ酸の中でも、反応性の高いSH基を持ち、かつ呈味的にも特異的である含硫アミノ酸を少量使用することで各種飲食品の呈味を調整することが行われている(例えば特許文献21~24参照)。しかし、これらの特許文献は肉風味や魚風味に関するものがほとんどであり、乳風味に関しては、特許文献24のチーズのような発酵臭の付与や、特許文献25のフレッシュな牛乳風味の付与しかなく、コクのある良好なバター風味が得られるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2007-202492号公報
【文献】特開2010-057434号公報
【文献】特開平07-236451号公報
【文献】特開2000-135055号公報
【文献】特開2008-259447号公報
【文献】特開2000-004822号公報
【文献】特開2014-050336号公報
【文献】特開2010-124819号公報
【文献】特開昭47-03175号公報
【文献】特開昭54-062339号公報
【文献】特開平10-276670号公報
【文献】特開平10-327751号公報
【文献】特開2001-271089号公報
【文献】特開2001-258501号公報
【文献】特開2007-143432号公報
【文献】再表2009-101972
【文献】特開平05-284898号公報
【文献】特開平10-313782号公報
【文献】特開平11-289977号公報
【文献】特開2013-121343号公報
【文献】特開昭49-109561号公報
【文献】特開平06-311840号公報
【文献】特開2002-165558号公報
【文献】特開2005-328804号公報
【文献】特開2017-000125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の課題は、自然でコクのある良好なバター風味を有するベーカリー製品を得ることができるベーカリー用油脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は上記課題を解決すべく種々検討した結果、従来はアミノ酸を使用して乳風味を得る場合、数種のアミノ酸の組み合わせにより乳風味を得ていたものを、使用するアミノ酸を特定のものに限定し、該アミノ酸の添加量を大幅に減じ、かつ糖と共に油脂組成物中に含有させることにより、ベーカリー生地の焼成時のメイラード反応が進行しやすくなり、好ましい自然でコクのある良好なバター風味のベーカリー製品が得られることを見出した。そしてこの効果は、乳風味香料や乳製品を少量含有するマーガリンでより効果的であることを見出した。
【0014】
本発明は、上記知見に基づいて完成されたものであり、遊離アミノ酸を0.0001~0.01質量%及び糖類を固形分として0.01~1質量%含有し、該遊離アミノ酸中の含硫アミノ酸含量が15質量%以上であるベーカリー用油脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のベーカリー用油脂組成物を使用したベーカリー製品は、自然でコクのある良好なバター風味を有する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のベーカリー用油脂組成物について詳述する。
まず、本発明で使用する遊離アミノ酸について述べる。
本発明のベーカリー用油脂組成物は、遊離アミノ酸を、組成物基準で、0.0001~0.01質量%、好ましくは0.0001~0.005質量%、より好ましくは0.0005~0.0025質量%含有する。遊離アミノ酸の含量が0.0001質量%未満であると本発明の効果が得られにくく、0.01質量%を超えるとベーカリー生地への適用量によっては得られるベーカリー製品の風味が悪化するおそれがある。
【0017】
本発明における遊離アミノ酸とは、たんぱく質やポリペプチドの構成成分としてのアミノ酸でないこと意味し、具体的にはアミノ酸そのものに加え、結合数10以下のオリゴペプチド、アミノ酸塩及びアミノ酸塩の水和物を含むものとする。また、本発明においては、イミノ酸であるプロリンもアミノ酸に含むものとする。上記オリゴペプチドは、アミノ酸の結合数が少なくなると呈味性が良好となることから、ペプチドにおけるアミノ酸の結合数が7以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、3以下であることがさらに好ましい。アミノ酸塩としては、例えば、アミノ酸塩酸塩、アミノ酸ナトリウム塩及びアミノ酸カルシウム塩等が挙げられる。
【0018】
本発明のベーカリー用油脂組成物は、上記遊離アミノ酸中の含硫アミノ酸含量が15質量%以上であることが必要であり、好ましくは20質量%以上である。含硫アミノ酸含量の上限値は100質量%であり、えぐ味などの異味がない良好なバター風味を得る観点から、好ましくは75質量%、より好ましくは50質量%である。
本発明のベーカリー用油脂組成物中の遊離含硫アミノ酸の含量は、組成物基準で0.0001質量%以上であることが好ましく、0.0003質量%以上であることがより好ましく、0.0005質量%以上であることがさらに好ましい。本発明のベーカリー用油脂組成物中の遊離含硫アミノ酸の含量の上限値は0.01質量%であり、好ましくは0.0075質量%、より好ましくは0.005質量%、さらに好ましくは0.0025質量%、最も好ましくは0.001質量%である。
ところで、一般的なバターにおける遊離含硫アミノ酸の含量は通常2ppm以下であり、遊離アミノ酸中の遊離含硫アミノ酸の含量は10質量%未満である。
【0019】
本発明のベーカリー用油脂組成物で使用される含硫アミノ酸とは、イオウ原子を含むアミノ酸であり、例えば、メチオニン、システイン、シスチン及びグルタチオン等を挙げることができる。
【0020】
本発明のベーカリー用油脂組成物は、より優れたバター風味が得られる点で、上記含硫アミノ酸に加え、疎水性分岐アミノ酸を含有することが好ましい。本発明で使用される疎水性分岐アミノ酸としては、バリン、ロイシン及びイソロイシンを挙げることができ、好ましくはバリンを使用する。
【0021】
本発明のベーカリー用油脂組成物における上記疎水性分岐アミノ酸の含量は、遊離アミノ酸中5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましい。なお、上記疎水性分岐アミノ酸の含量の上限値は85質量%であり、遊離アミノ酸を本発明のベーカリー用油脂組成物以外にベーカリー生地にとくに別添する必要がなくなる点において、好ましくは75質量%、より好ましくは50質量%である。
【0022】
本発明のベーカリー用油脂組成物に含まれる遊離アミノ酸は、上記含硫アミノ酸及び上記疎水性分岐アミノ酸以外のその他のアミノ酸を含有していてもよい。上記その他のアミノ酸としては、グリシン、アラニン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、ヒスチジン及びアルギニンなどを挙げることができる。
【0023】
本発明のベーカリー用油脂組成物が上記その他のアミノ酸を含有する場合、グリシン、アラニン、フェニルアラニンのうちの1種又は2種以上からなる疎水性アミノ酸、アルギニン及び/又はリジンからなる塩基性アミノ酸、並びに、グルタミン酸及び/又はアスパラギン酸からなる酸性アミノ酸を含有することが好ましく、より好ましくはグリシン、アラニン、フェニルアラニン、アルギニン、リジン及びグルタミン酸を使用することが好ましい。ベーカリー用油脂組成物におけるその他のアミノ酸の含量は下記のとおりである。
ベーカリー用油脂組成物における疎水性アミノ酸の含量は、上記含硫アミノ酸及び上記疎水性分岐アミノ酸を除く全遊離アミノ酸中、好ましくは30~60質量%、さらに好ましくは35~55質量%、最も好ましくは35~50質量%である。
ベーカリー用油脂組成物における塩基性アミノ酸の含量は、上記含硫アミノ酸及び上記疎水性分岐アミノ酸を除く全遊離アミノ酸中、好ましくは35~65質量%、さらに好ましくは40~60質量%、最も好ましくは45~60質量%である。
ベーカリー用油脂組成物における酸性アミノ酸の含量は、上記含硫アミノ酸及び上記疎水性分岐アミノ酸を除く全遊離アミノ酸中、好ましくは1~20質量%、さらに好ましくは2.5~15質量%、最も好ましくは5~10質量%である。
【0024】
ベーカリー用油脂組成物における、上記含硫アミノ酸、上記疎水性分岐アミノ酸、疎水性アミノ酸、塩基性アミノ酸及び酸性アミノ酸等の遊離アミノ酸の含量は、例えば、HPLCにより測定することができる。
【0025】
次に本発明で使用する糖類について述べる。
本発明で使用する糖類としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖等の低分子の糖類が挙げられる。糖類の具体例としては、例えば、上白糖、グラニュー糖、粉糖、液糖、ブドウ糖、果糖、ソルビトール、ショ糖、麦芽糖、乳糖、はちみつ、酵素糖化水飴、異性化液糖、ショ糖結合水飴、還元糖化水飴、オリゴ糖、トレハロース、キシロース、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖等が挙げられる。これらの糖類は、1種を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。本発明では、上記糖類が還元糖であることが、良好な風味のベーカリー製品が得られる点で好ましい。還元糖の具体例としては、例えば、ブドウ糖、果糖、キシロース、ガラクトース、アラビノース、マルトース、乳糖、異性化液糖及びマルトオリゴ糖等が挙げられ、これらの中でも乳糖を使用することが好ましい。
【0026】
本発明のベーカリー用油脂組成物における、上記糖類の含量は、固形分として、0.01~1質量%であることが必要であり、好ましくは0.01~0.5質量%、より好ましくは0.2~0.5質量%である。糖類の含量が0.01質量%未満であると本発明の効果を得にくく、1質量%を超えるとバター風味よりも甘さが目立ってしまうようになる。本発明では、下記の乳製品やその他の成分に含まれる糖類についても、上記糖類含量に含めるものとする。
【0027】
本発明のベーカリー用油脂組成物は、上記総遊離アミノ酸1質量部に対して上記糖類を固形分換算で1~1000質量部、好ましくは2~1000質量部、より好ましくは10~500質量部、さらに好ましくは50~500質量部含有するものである。
遊離アミノ酸1質量部に対し糖類が2質量部未満であると、本発明の効果を得ることが難しく、1000質量部を超えると効果が頭打ちとなり、また、バター風味よりも甘さが目立ってしまうようになることがある。
【0028】
ベーカリー用油脂組成物における上記糖類の含量は、例えば、HPLCにより測定することができる。
【0029】
本発明のベーカリー用油脂組成物は、乳製品を含有することが好ましい。上記乳製品としては、牛乳、脱脂乳、チーズ、濃縮ホエイ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、乳清ミネラル、乳清カルシウム及び無塩バター等のバター等が挙げられる。本発明においては、これらの乳製品の中から選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。本発明のベーカリー用油脂組成物が乳製品を含む場合、得られるベーカリー製品の乳風味を増強し、良好なコクのあるバター風味のベーカリー製品とすることができる。
【0030】
本発明のベーカリー用油脂組成物における上記乳製品の含量は、使用する乳製品の風味と強度に応じて適宜設定することができるが、自然なコクのある良好なバター風味が得られることから、乳固形分として0.1~30質量%であることが好ましく、0.3~10質量%であることがより好ましい。
【0031】
上記乳製品の中には、脱脂粉乳に代表される乳糖を含有する乳製品や、加糖練乳のように糖類を添加して得られる乳製品も存在する。本発明では、これらの乳製品に含まれる糖類については、上述のように、上記糖類の含量に含めるものとする。
【0032】
本発明のベーカリー用油脂組成物は、乳風味香料を含有することが好ましい。上記乳風味香料としては、乳風味を付与するための香料であればよく、バター風味香料であってもよく、ミルク風味香料であってもよい。本発明のベーカリー用油脂組成物が乳風味香料を含む場合、得られるベーカリー製品の乳風味を増強し、香料の際立ちを抑え、良好なコクのあるバター風味のベーカリー製品とすることができる。
【0033】
本発明のベーカリー用油脂組成物における上記乳風味香料の含量は、使用する乳風味香料の風味と強度に応じて適宜設定することができる。
【0034】
本発明のベーカリー用油脂組成物は、油脂を含有する。
上記油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、キャノーラ油及びカカオ脂等の植物性油脂、牛脂、乳脂、豚脂、魚油及び鯨油等の動物性油脂、並びにこれの油脂に水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂等が挙げられる。これらの油脂の1種を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0035】
本発明のベーカリー用油脂組成物における油脂の含量は、好ましくは20~95質量%、さらに好ましくは50~90質量%、最も好ましくは70~90質量%である。本発明において油脂の含量が20質量%以上であると、ベーカリー用油脂組成物を油中水型の乳化物とした場合に乳化が安定するため好ましく、95質量%以下であると水相成分の呈味が一層明確に感じられるため好ましい。本発明のベーカリー用油脂組成物に油脂を含有する原材料を使用した場合は、上記油脂の含量には、それらの原材料に含まれる油脂分も含めるものとする。
【0036】
本発明のベーカリー用油脂組成物は、水分を含有しないショートニングタイプであってもよく、水分を含有するマーガリンタイプであってもよい。メイラード反応のおこりやすさの点で、本発明のベーカリー用油脂組成物は水分を含有するマーガリンタイプであることが好ましい。水分を含有する場合、その乳化形態は水中油型、油中水型及び油中水中油型等どのような乳化形態であってもよく、生成したメイラード反応生成物のベーカリー中の拡散や蒸散がおきにくい点で、好ましくは油脂が連続相である、油中水型又は油中水中油型であることが好ましい。なお、本発明のベーカリー用油脂組成物が水分を含有する場合、好ましい水分含量は5~40質量%、さらに好ましくは5~30質量%、最も好ましくは5~20質量%である。本発明において水分とは、水道水や天然水等の配合水以外にも、牛乳、液糖等の水分を含む原材料に含まれる水分も含めたものとする。
また、本発明のベーカリー用油脂組成物は、可塑性を有することが、ベーカリー生地に添加する際に均質に練り込み、及び/又は折り込み可能な点で好ましい。
すなわち、本発明のベーカリー用油脂組成物は、油中水型可塑性乳化油脂組成物であることが好ましい。
【0037】
本発明のベーカリー用油脂組成物が水分を含み、かつ油脂が連続相である油中水型又は油中水中油型の乳化物である場合、含硫アミノ酸及び糖類は同一の水相中に含まれていてもよく、別個の水相に分離された状態で含まれていてもよい。本発明においては、含硫アミノ酸及び糖類が同一の水相中に含まれていることが好ましい。
【0038】
本発明のベーカリー用油脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を妨げない範囲において、その他の成分を含有することができる。その他の成分としては、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム及びポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル等の乳化剤、大豆たんぱく質、小麦たんぱく質及び卵たんぱく質等のたんぱく質、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、CMC、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉及び化工澱粉等の増粘安定剤、食塩及び塩化カリウム等の塩味剤、アミラーゼ、プロテアーゼ、アミログルコシダーゼ、プルラナーゼ、ペントサナーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、ホスフォリパーゼ、カタラーゼ、リポキシゲナーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、スルフィドリルオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ及びグルコースオキシダーゼ等の酵素、β―カロチン、カラメル及び紅麹色素等の着色料類、酢酸、乳酸及びグルコン酸等の酸味料、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、トコフェロール及び茶抽出物等の酸化防止剤、乳風味香料以外の着香料、果実、果汁、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、コーヒー、紅茶、緑茶、穀類、豆類、野菜類、肉類及び魚介類等の食品素材等が挙げられる。
【0039】
次に、本発明のベーカリー用油脂組成物の好ましい製造方法について、油中水型の乳化物である場合を例に挙げて述べる。
本発明のベーカリー用油脂組成物は、例えば、遊離アミノ酸を組成物中0.0001~0.01質量%となりうる量、及び、糖類を組成物中固形分として0.01~1質量%となりうる量を含有し、遊離アミノ酸中の含硫アミノ酸含量が15質量%以上である水相と、油脂を主体とする油相とを乳化し、冷却することにより得ることができる。
【0040】
具体的には、まず油脂に必要により乳化剤やその他の材料を添加した油相と、水に遊離アミノ酸及び糖類を添加した水相とを混合し、油中水型に乳化し、乳化物とする。水に添加する遊離アミノ酸の量は、得られるベーカリー用油脂組成物中の遊離アミノ酸の含量が0.0001~0.01質量%となり、かつ遊離アミノ酸中の含硫アミノ酸含量が15質量%以上となる量とする。水に添加する糖類の量は、得られるベーカリー用油脂組成物中の糖類の含量が固形分として0.01~1質量%となる量とする。油相と水相との質量比率は、好ましくは油相:水相=30:70~90:10、より好ましくは油相:水相=45:55~80:20である。油相が30質量%以上であり、かつ水相が70質量%以下であると、乳化が安定しやすい。また、油相が90質量%以下であり、かつ水相が10質量%以上であると、良好な可塑性が得られやすい。
【0041】
次に、得られた乳化物を殺菌処理するのが望ましい。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。次に、殺菌処理した乳化物を冷却し、可塑化する。本発明において、上記の冷却は-0.5℃/分以上で行うことが好ましく、-5℃/分以上で行うことがより好ましい。冷却は、徐冷却より急速冷却の方が好ましい。冷却に用いる機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えばボテーター、コンビネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターの組み合わせ等が挙げられる。
【0042】
本発明のベーカリー用油脂組成物を製造する際のいずれかの製造工程で、窒素、空気等を含気させても、含気させなくても構わない。
【0043】
本発明のベーカリー用油脂組成物が、水分を含まないショートニングタイプである場合は、含硫アミノ酸及び糖類を油脂中に分散させ、冷却、好ましくは急冷可塑化することによって得ることができる。
【0044】
本発明のベーカリー用油脂組成物は、シート状、ブロック状、円柱状、直方体等の形状としてもよい。
【0045】
本発明のベーカリー用油脂組成物は、各種ベーカリー製品の製造に用いることができる、好ましくは乳風味を有するベーカリー用であることが好ましい。なお、上記のように、乳風味にはバター風味とミルク風味があるが、本発明のベーカリー用油脂組成物は、バター風味を有するベーカリー用であることが好ましい。本発明においてバター風味とは、乳脂を含む乳製品を使用した場合に感じられる、コクのある乳風味を意味する。
【0046】
ベーカリー製品における本発明のベーカリー用油脂組成物の使用方法としては、例えばパン類や菓子類のベーカリー生地の製造時に、練り込み用、ロールイン用、サンド・フィリング用、スプレー・コーティング用、フライ用として使用することができ、なかでも本発明のベーカリー用油脂組成物をベーカリー生地に練り込み使用及び/又はロールイン使用することが好ましく、練り込み使用することがとくに好ましい。
【0047】
次に本発明のベーカリー生地について説明する。
本発明のベーカリー生地は本発明のベーカリー用油脂組成物を含有するものであり、好ましくはベーカリー生地製造時に本発明のベーカリー用油脂組成物を練り込み及び/又はロールインしたものであり、最も好ましくは練り込んだものである。上記のベーカリー生地としては、例えば、クッキー生地、パイ生地、シュー生地、サブレ生地、スポンジケーキ生地、バターケーキ生地、ケーキドーナツ生地等の菓子生地や、食パン生地、フランスパン生地、バラエティブレッド生地、ブリオッシュ生地、デニッシュ生地、スイートロール生地、イーストドーナツ生地、マフィン生地、ピザ生地、スコーン生地、蒸しパン生地、ワッフル生地、イングリッシュマフィン生地、バンズ生地等のパン生地が挙げられる。本発明のベーカリー生地は、良好なバター風味が得られる点でパン生地であることが好ましい。
【0048】
上記ベーカリー生地における本発明のベーカリー用油脂組成物の含量は、ベーカリー生地の種類により異なるが、ベーカリー用油脂組成物を練り込み使用し、かつベーカリー生地が菓子生地の場合は、菓子生地に含まれる澱粉類100質量部に対し、好ましくは2~30質量部、より好ましくは4~21質量部である。ベーカリー用油脂組成物を練り込み使用し、かつベーカリー生地がパン生地の場合、パン生地に含まれる澱粉類100質量部に対し、好ましくは2~30質量部、より好ましくは4~21質量部である。
ベーカリー用油脂組成物をロールイン使用する場合、上記ベーカリー生地における本発明のベーカリー用油脂組成物の含量は、ベーカリー生地に含まれる澱粉類100質量部に対し、好ましくは10~100質量部、より好ましくは10~50質量部である。
【0049】
上記澱粉類としては、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉及び全粒粉などの小麦粉類、ライ麦粉、大麦粉、米粉などのその他の穀粉類、アーモンド粉、へーゼルナッツ粉、カシュ―ナッツ粉、オーナッツ粉及び松実粉などの堅果粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉及び米澱粉などの澱粉並びにこれらの澱粉に酵素処理、α化処理、分解処理、エーテル化処理、エステル化処理、架橋処理及びグラフト化処理から選択される1以上の処理を施した化工澱粉等が挙げられる。
本発明で使用される澱粉類は、小麦粉類を50質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上含有することがより好ましく、100質量%含有することがより好ましい。
【0050】
次に本発明のベーカリー生地の製造方法について述べる。
本発明のベーカリー生地の製造方法は、上記本発明のベーカリー用油脂組成物を、ベーカリー生地製造時に添加することを特徴とする。
本発明のベーカリー用油脂組成物のベーカリー生地への添加方法は上述のとおりである。
【0051】
次に、本発明のベーカリー製品について述べる。
本発明のベーカリー製品は、上記の本発明のベーカリー生地を、適宜、分割、成形し、必要に応じホイロ、リタード、レストをとった後、加熱処理することにより得ることができる。
上記成形は、どのような形状に成形してもよく、型詰めを行っても構わない。成形は、手作業で行っても、連続ラインを用いて全自動で行っても構わない。
上記加熱処理としては、例えば、焼成、フライ、蒸し、蒸し焼きが挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上の処理を行うことができるが焼成によることが好ましい。
また、得られた本発明のベーカリー製品を、冷蔵、冷凍保存したり、該保存後に電子レンジ加熱することも可能である。
【実施例
【0052】
以下に実施例、比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに何ら限定されるものではない。
【0053】
〔実施例1〕
豚脂、牛脂、パームステアリン、ナタネ油を70:20:5:5の質量比で混合した混合油脂80.1質量部を60℃に加熱し、グリセリンモノステアリン酸エステル0.5質量部及びレシチン0.5質量部、バター香料0.4質量部を添加・溶解した油相を用意した。一方、水18.2995質量部を混合後60℃に加熱し、乳糖0.2質量部、システィン0.0005質量部を添加・溶解した水相を用意した。上記油相と水相を油中水型の乳化物とし、殺菌し、急冷可塑化工程(冷却速度-20℃/分)にかけ、可塑性油中水型乳化物である、ベーカリー用油脂組成物1を製造した。
【0054】
〔実施例2〕
システィンの添加量を0.0005質量部から0.00025質量部に変更し、水の添加量を18.2995質量部から18.29975質量部に変更した以外は、実施例1と同様の配合及び製法で、本発明のベーカリー用油脂組成物2を製造した。
〔実施例3〕
システィンの添加量を0.00025質量部から0.0015質量部に変更し、水の添加量を18.2995質量部から17.7985質量部に変更した以外は、実施例1と同様の配合及び製法で、本発明のベーカリー用油脂組成物3を製造した。
〔実施例4〕
システィンの添加量を0.00025質量部から0.003質量部に変更し、水の添加量を18.2995質量部から18.297質量部に変更した以外は、実施例1と同様の配合及び製法で、本発明のベーカリー用油脂組成物4を製造した。
〔実施例5〕
システィンの添加量を0.00025質量部から0.0025質量部に変更し、水の添加量を18.2995質量部から18.2955質量部に変更した以外は、実施例1と同様の配合及び製法で、本発明のベーカリー用油脂組成物5を製造した。
【0055】
〔実施例6〕
システィン0.0005質量部をメチオニン0.0005質量部に変更した以外は、実施例1の配合及び製法で、本発明のベーカリー用油脂組成物6を製造した。
〔実施例7〕
バリン0.0005質量部を追加添加し、水の添加量を18.2995質量部から18.299質量部に変更した以外は、実施例1と同様の配合及び製法で、本発明のベーカリー用油脂組成物7を製造した。
〔実施例8〕
ロイシン0.0005質量部を追加添加し、水の添加量を18.2995質量部から18.299質量部に変更した以外は、実施例1と同様の配合及び製法で、本発明のベーカリー用油脂組成物8を製造した。
〔実施例9〕
イソロイシン0.0005質量部を追加添加し、水の添加量を18.2995質量部から18.299質量部に変更した以外は、実施例1と同様の配合及び製法で、本発明のベーカリー用油脂組成物9を製造した。
【0056】
〔比較例1〕
システィン0.0005質量部を無添加とし、水の添加量を18.2995質量部から18.3質量部に変更した以外は、実施例1と同様の配合及び製法で、比較例のベーカリー用油脂組成物B1を製造した。
〔比較例2〕
乳糖0.2質量部を無添加とし、水の添加量を18.2995質量部から18.4995質量部に変更した以外は、実施例1と同様の配合及び製法で、比較例のベーカリー用油脂組成物B2を製造した。
〔比較例3〕
システィン0.0005質量部をバリン0.0005質量部に変更した以外は、実施例1の配合及び製法で、比較例のベーカリー用油脂組成物B3を製造した。
〔比較例4〕
システィン0.0005質量部をロイシン0.0005質量部に変更した以外は、実施例1の配合及び製法で、比較例のベーカリー用油脂組成物B4を製造した。
【0057】
〔比較例5〕
システィン0.0005質量部をグルタミン酸0.0005質量部に変更した以外は、実施例1の配合及び製法で、比較例のベーカリー用油脂組成物B5を製造した。
〔比較例6〕
システィン0.0005質量部をフェニルアラニン0.0005質量部に変更した以外は、実施例1の配合及び製法で、比較例のベーカリー用油脂組成物B6を製造した。
〔比較例7〕
システィン0.0005質量部を下記のアミノ酸混合物A0.0015質量部に変更し、水の添加量を18.2995質量部から18.2985質量部に変更した以外は、実施例1の配合及び製法で、比較例のベーカリー用油脂組成物B7を製造した。
【0058】
<アミノ酸混合物Aの調製>
バリン8質量部、フェニルアラニン8質量部、グリシン3質量部及びアラニン4質量部からなる疎水性アミノ酸46質量%、リジン7質量部及びアルギニン1質量部からなる塩基性アミノ酸48質量%、並びに酸性アミノ酸であるグルタミン酸6質量%を混合し、アミノ酸混合物を得た。
【0059】
〔比較例8〕
システィン0.0005質量部を下記アミノ酸混合物B0.0015質量部に変更し、水の添加量を18.2995質量部から18.2985質量部に変更した以外は、実施例1の配合及び製法で、比較例のベーカリー用油脂組成物B8を製造した。
【0060】
<アミノ酸混合物Bの調製>
チロシン14質量部、フェニルアラニン6質量部、スレオニン2質量部、グリシン9質量部及びアラニン6質量部からなる疎水性アミノ酸23質量%、バリン6質量部、ロイシン14質量部及びイソロイシン6質量部からなる疎水性分岐アミノ酸17質量%、ヒスチジン11質量部、リジン7質量部及びアルギニン13質量部からなる塩基性アミノ酸20質量%、グルタミン酸35質量部及びアスパラギン酸5質量部からなる酸性アミノ酸25質量%、システィン10質量部及びメチオニン10質量部からなる含硫アミノ酸13質量%、並びにイミノ酸であるプロリン2質量%を混合し、アミノ酸混合物Bを得た。
【0061】
〔比較例9〕
システィン0.0005質量部を上記アミノ酸混合物A0.05質量部に変更し、水の添加量を18.2995質量部から18.25質量部に変更した以外は、実施例1の配合及び製法で、比較例のベーカリー用油脂組成物B9を製造した。
〔比較例10〕
システィン0.0005質量部を上記アミノ酸混合物A0.25質量部に変更し、水の添加量を18.2995質量部から18.05質量部に変更した以外は、実施例1の配合及び製法で、比較例のベーカリー用油脂組成物B10を製造した。
【0062】
〔実施例10〕
乳糖の添加量を0.2質量部から0.02質量部に変更し、水の添加量を18.2995質量部から18.4795質量部に変更した以外は、実施例1と同様の配合及び製法で、本発明のベーカリー用油脂組成物10を製造した。
〔実施例11〕
乳糖の添加量を0.2質量部から0.1質量部に変更し、水の添加量を18.2995質量部から18.3995質量部に変更した以外は、実施例1と同様の配合及び製法で、本発明のベーカリー用油脂組成物11を製造した。
〔実施例12〕
乳糖の添加量を0.2質量部から0.4質量部に変更し、水の添加量を18.2995質量部から18.0995質量部に変更した以外は、実施例1と同様の配合及び製法で、本発明のベーカリー用油脂組成物12を製造した。
〔実施例13〕
乳糖の添加量を0.2質量部から0.6質量部に変更し、水の添加量を18.2995質量部から17.8995質量部に変更した以外は、実施例1と同様の配合及び製法で、本発明のベーカリー用油脂組成物13を製造した。
〔実施例14〕
乳糖0.2質量部をブドウ糖0.2質量部に変更した以外は、実施例1と同様の配合及び製法で、本発明のベーカリー用油脂組成物14を製造した。
〔実施例15〕
乳糖0.2質量部を果糖0.2質量部に変更した以外は、実施例1と同様の配合及び製法で、本発明のベーカリー用油脂組成物15を製造した。
【0063】
〔実施例16〕
乳糖0.2質量部をショ糖0.2質量部に変更した以外は、実施例1と同様の配合及び製法で、本発明のベーカリー用油脂組成物16を製造した。
〔実施例17〕
乳糖0.2質量部をソルビトール0.2質量部に変更した以外は、実施例1と同様の配合及び製法で、本発明のベーカリー用油脂組成物17を製造した。
〔実施例18〕
無塩バター(油分81質量%、水分16質量%、遊離アミノ酸0.0016質量%(16ppm)含有)5質量%を追加添加し、混合油脂80.499質量部を75.499質量部に変更した以外は、実施例1と同様の配合及び製法で、本発明のベーカリー用油脂組成物18を製造した。
〔実施例19〕
無塩バター(油分81質量%、水分16質量%、遊離アミノ酸0.0016質量%(16ppm)含有)10質量%を追加添加し、混合油脂80.499質量部を70.499質量部に変更した以外は、実施例1と同様の配合及び製法で、本発明のベーカリー用油脂組成物19を製造した。
〔実施例20〕
無塩バター(油分81質量%、水分16質量%、遊離アミノ酸0.0016質量%(16ppm)含有)20質量%を追加添加し、混合油脂80.499質量部を60.499質量部に変更した以外は、実施例1と同様の配合及び製法で、本発明のベーカリー用油脂組成物20を製造した。
【0064】
〔実施例21〕
無塩バター(油分81質量%、水分16質量%、遊離アミノ酸0.0016質量%(16ppm)含有)10質量%を追加添加し、混合油脂80.499質量部を70.499質量部に変更し、さらに、上記アミノ酸混合物A0.0015質量部を添加し、水の添加量を18.2995質量部から18.2980質量部に変更した以外は、実施例1の配合及び製法で、本発明のベーカリー用油脂組成物21を製造した。
〔実施例22〕
無塩バター(油分81質量%、水分16質量%、遊離アミノ酸0.0016質量%(16ppm)含有)10質量%を追加添加し、混合油脂80.499質量部を70.499質量部に変更し、さらに、上記アミノ酸混合物B0.0015質量部を添加し、水の添加量を18.2995質量部から18.2980質量部に変更した以外は、実施例1の配合及び製法で、本発明のベーカリー用油脂組成物22を製造した。
〔実施例23〕
無塩バター(油分81質量%、水分16質量%、遊離アミノ酸0.0016質量%(16ppm)含有)10質量%を追加添加し、混合油脂80.499質量部を70.499質量部に変更し、さらに、システィンの添加量を0.0005質量部から0.00025質量部に変更し、上記アミノ酸混合物B0.0015質量部を添加し、水の添加量を18.2995質量部から18.29825質量部に変更した以外は、実施例1の配合及び製法で、本発明のベーカリー用油脂組成物23を製造した。
〔実施例24〕
バター香料0.001質量部を無添加とし、混合油脂80.499質量部を80.5質量部に変更した以外は、実施例1の配合及び製法で、本発明のベーカリー用油脂組成物24を製造した。
〔実施例25〕
バター香料0.001質量部をミルク香料0.001質量部に変更した以外は、実施例1の配合及び製法で、本発明のベーカリー用油脂組成物25を製造した。
【0065】
実施例1~25で得られた実施例のベーカリー用油脂組成物1~25及び比較例1~10で得られた比較例のベーカリー用油脂組成物B1~B10における、総遊離アミノ酸含量、含硫アミノ酸含量、疎水性分岐アミノ酸含量、遊離アミノ酸中の含硫アミノ酸含量、遊離アミノ酸中の疎水性分岐アミノ酸含量、及び、含硫アミノ酸と疎水性分岐アミノ酸の比を表1に記載した
【0066】
【表1】
【0067】
実施例1~25で得られた実施例のベーカリー用油脂組成物1~25、及び比較例1~10で得られた比較例のベーカリー用油脂組成物B1~B10を用い、下記の配合・製法で菓子パンを製造し、得られた菓子パンのバター風味を下記の基準で評価した。
【0068】
(配合・製法)
強力粉70質量部、イーストフード0.1質量部、イースト3質量部、上白糖3質量部及び水40質量部をミキサーボールに投入し、たて型ミキサーにてフックを使用して、低速で3分、中速で2分ミキシングし、中種生地(捏ね上げ温度26℃)を得た。得られた中種生地は28℃、相対湿度80%にて2時間の中種発酵をとった。
中種発酵を終えた中種生地に、強力粉30質量部、上白糖12質量部、食塩0.9質量部、脱脂粉乳2質量部、及び水23質量部を添加し、たて型ミキサーにてフックを使用して、低速で3分、中速で3分ミキシング後、ベーカリー用油脂組成物15質量部を添加し、低速で3分、中速で4分ミキシングし、菓子パン生地(捏ね上げ温度27℃)を得た。得られた菓子パン生地は、40分のフロアタイムをとり、分割(380g)し、30分のベンチタイムをとった後、ワンローフ成形をし、ワンローフ型に入れ、38℃、相対湿度85%、40分のホイロをとった後、上火180℃、下火180℃のオーブンで25分焼成した。
【0069】
<ベーカリー製品の風味評価>
12人のパネラーにより、得られた菓子パンそれぞれを直接喫食した際の風味、味の持続性、雑味を、それぞれ下記評価基準にしたがって官能評価した。12人のパネラーの合計点を評価点数として、評価点数に基づき下記の基準でベーカリー製品の風味を評価した。結果を表2に示す。
51~60点:◎++
41~50点:◎+
33~40点:◎
25~32点:○
17~24点:△
9~16点:×
0~8点:××
【0070】
<評価基準>
5点…自然なコクのある良好なバター風味が感じられる。
3点…コクのある良好なバター風味が感じられる。
2点…コクがやや弱いが良好なバター風味が感じられる。
1点…バター風味は感じられるがコクがない。
0点…バター風味が感じられない。
【0071】
・味の持続性
5点…トップからラストまで呈味が感じられる。
3点…トップからラストまで呈味が感じられるがトップがやや弱い。
2点…トップからミドルにかけて呈味を感じるがラストの呈味が弱い。
1点…トップには呈味を感じるが、ミドルからラストにかけての呈味が弱い。
0点…トップには呈味を感じるが、すぐに消えてしまう。
【0072】
・雑味
5点…渋味や苦みなどのエグ味が全く感じられず、極めて良好である。
3点…エグ味がほとんど感じられず、良好である。
2点…若干の雑味を感じるが許容範囲である。
1点…渋味や苦みなどのエグ味が感じられ、やや不良である。
0点…渋味や苦みなどのエグ味が強く感じられ、不良である。
【0073】
【表2】