(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-04
(45)【発行日】2023-01-13
(54)【発明の名称】エステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体、感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物および電子部品
(51)【国際特許分類】
C08G 73/22 20060101AFI20230105BHJP
G03F 7/023 20060101ALI20230105BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20230105BHJP
【FI】
C08G73/22
G03F7/023
G03F7/004 512
(21)【出願番号】P 2019050365
(22)【出願日】2019-03-18
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【氏名又は名称】小島 一真
(74)【代理人】
【識別番号】100187207
【氏名又は名称】末盛 崇明
(72)【発明者】
【氏名】秋元 真歩
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-118947(JP,A)
【文献】特開2007-112990(JP,A)
【文献】国際公開第2016/129546(WO,A1)
【文献】特開2019-059959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/22
G03F 7/023
G03F 7/004
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)および(2)で示される構造の少なくとも一方と、下記一般式(3)で示される構造とを有することを特徴とする、エステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体。
【化1】
【化2】
【化3】
(一般式(1)および(2)中、
X
は、2価の有機基であり、
R
1~R
4のいずれかが、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~10の芳香族基、炭素数6~10のフェノキシ基、炭素数6~10のベンジル基および炭素数6~10のベンジルオキシ基から選択され、それ以外のR
3~R
6が水素原子であり、
nは、1以上の整数を示し、
一般式(3)中、
Xは、2価の有機基であり、
Yは、少なくとも2以上水酸基を有する4価の有機基であり、
oは、1以上の整数を示す。)
【請求項2】
R
1またはR
3のいずれかが、炭素数6~10の芳香族基、炭素数6~10のフェノキシ基、炭素数6~10のベンジル基および炭素数6~10のベンジルオキシ基から選択され、他方が水素原子であり、
R
2およびR
4が、水素原子である、請求項1に記載のエステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体。
【請求項3】
一般式(3)中、Yが、芳香族基である、請求項1または2に記載のエステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体。
【請求項4】
一般式(3)中、Yが、下記構造から選択される1以上の基である、請求項1~3のいずれか一項に記載のエステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体。
【化4】
(上記構造式中、
*
1および*
2のいずれかがアミノ基との連結部を表し、他方が、水酸基を表す。)
【請求項5】
前記一般式(1)および(2)で表される構造の含有量(エステルジアミン含有量)が、0.1モル%以上、10モル%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載のエステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のエステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体と、感光剤とを含む、感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記感光剤が、ナフトキノンジアジド化合物である、請求項6に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
フィルム上に、請求項6または7に記載の感光性樹脂組成物により形成された樹脂層を備えることを特徴とする、ドライフィルム。
【請求項9】
請求項6または7に記載の感光性樹脂組成物または請求項8に記載のドライフィルムの樹脂層により形成されたものであることを特徴とする、硬化物。
【請求項10】
請求項9に記載の硬化物を形成材料として有することを特徴とする、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体(ポリヒドロキシアミドとも称す)、該エステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体を含む感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物により形成された樹脂層を備えるドライフィルム、該感光性樹脂組成物により形成された硬化物および該硬化物を形成材料として有するプリント配線板、半導体素子などの電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリベンゾオキサゾール前駆体を含む感光性樹脂組成物は、加熱によって、ヒドロキシアミド構造が剛直なベンゾオキサゾール環へと環化反応し、分子間でのパッキング密度も上昇することで、絶縁性、耐熱性、機械強度などに優れた特性を発現することから、様々な分野において広く利用されている。例えば、フレキシブルプリント配線板や半導体素子のバッファーコート膜、ウエハレベルパッケージ(WLP)の再配線層用絶縁膜への適用が進められている。
【0003】
従来、バッファーコート膜やウエハレベルパッケージの再配線層用絶縁膜においては、ポリイミド前駆体を含む感光性樹脂組成物に代わって、より微細なフォトリソグラフィによるパターン形成が可能となるポリベンゾオキサゾール前駆体を含む感光性樹脂組成物が注目されている。
このような感光性樹脂組成物としては、特許文献1に開示されるようなポリベンゾオキサゾール前駆体と感光性ジアゾキノンとで構成されたポジ型レジスト組成物が挙げられる。そして、このような感光性樹脂組成物をウエハなどの基材上に、塗布、乾燥して乾燥塗膜を形成し、該乾燥塗膜に活性エネルギー線を照射して露光し、次いで現像することによって所望のパターン膜を形成した後、ポリベンゾオキサゾール前駆体を320℃程度の加熱により環化反応させ、ポリベンゾオキサゾールのパターン硬化膜を形成する。
【0004】
また、最近の半導体素子においては、高機能化や小型化の要求に伴い、バッファーコート膜やウエハレベルパッケージの再配線層用絶縁膜に、より微細なパターン形成を実現するための優れた解像性、さらには、基材となるウエハの薄膜化に伴うクラックや反りの抑制が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の組成物では、最近の半導体素子に要求される解像性を実現するために必要な、現像時における露光部の溶解性と未露光部の耐溶解性のバランス、いわゆる溶解コントラストが低いことから、微細なパターンを形成し難いという問題があり、さらには、クラックや反りの抑制も不十分であった。
【0007】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、その目的としては、高い溶解コントラストを実現し、さらにはクラックや反りが生じ難いポリベンゾオキサゾール前駆体を含む感光性樹脂組成物を提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、前記感光性樹脂組成物を用いたドライフィルムおよびプリント配線板、半導体素子などの電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的の実現に向け鋭意研究した結果、エステル構造を有するジアミンをポリベンゾオキサゾール前駆体に導入することで、感光性樹脂組成物の溶解コントラストを顕著に改善でき、さらに硬化時に生じる内部応力を緩和することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明のエステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体は、一般式(1)および(2)で示される構造の少なくとも一方と、下記一般式(3)で示される構造とを有することを特徴とする。
【化1】
【化2】
【化3】
(一般式(1)および(2)中、
X
は、2価の有機基であり、
R
1~R
4のいずれかが、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~10の芳香族基、炭素数6~10のフェノキシ基、炭素数6~10のベンジル基および炭素数6~10のベンジルオキシ基から選択され、それ以外のR
1~R
4が水素原子であり、
nは、1以上の整数を示し、
一般式(3)中、
Xは、2価の有機基であり、
Yは、少なくとも2以上水酸基を有する4価の有機基であり、
oは、1以上の整数を示す。)
【0011】
本発明においては、R1またはR3のいずれかが、炭素数6~10の芳香族基、炭素数6~10のフェノキシ基、炭素数6~10のベンジル基および炭素数6~10のベンジルオキシ基から選択され、他方が水素原子であり、
R2およびR4が、水素原子であることが好ましい。
【0012】
本発明においては、一般式(3)中、Yが、下記構造から選択される1以上の基であることが好ましい。
【化4】
(上記構造式中、
*
1および*
2のいずれかがアミノ基との連結部を表し、他方が、水酸基を表す。)
【0013】
本発明においては、一般式(1)および(2)で表される構造の含有量(エステルジアミン含有量)が、0.1モル%以上、10モル%以下であることが好ましい。
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物は、ポリベンゾオキサゾール前駆体と、感光剤とを含むことを特徴とする。
【0015】
本発明においては、感光剤が、ナフトキノンジアジド化合物であることが好ましい。
【0016】
本発明のドライフィルムは、フィルム上に、上記感光性樹脂組成物により形成された樹脂層を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の硬化物は、上記感光性樹脂組成物または上記ドライフィルムの樹脂層により形成されたものであることを特徴とする。
【0018】
プリント配線板や半導体素子などの本発明の電子部品は、上記硬化物を形成材料として有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のエステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体によれば、高い溶解コントラストおよび高温パターン維持性を有する乾燥塗膜を得るのに有効な、感光性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[エステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体]
本発明のエステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体は、下記一般式(1)および(2)で示される構造の少なくとも一方と、下記一般式(3)で示される構造とを有するポリベンゾオキサゾール前駆体によれば、これを含む感光性樹脂組成物は、露光部の現像性を損なうことなく未露光部の耐現像性が得られ、さらに硬化物においては、柔軟性に優れるアミド結合とエステル結合が内部応力を緩和すると考える。
【化5】
【化6】
上記一般式(1)および(2)において、Xは、2価の有機基である。この有機基は、脂肪族基であっても、芳香族基であってもよいが、芳香族基であることが好ましく、芳香環上において、上記一般式(1)および(2)中におけるカルボニルと結合していることがより好ましい。
2価の有機基の炭素数は、6~30であることが好ましく、6~24であることがより好ましい。
2価の有機基としては、以下の構造を有する基が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、用途に応じて適宜変更することが好ましい。
【化7】
【0021】
上記2価の有機基の構造式において、Aは、単結合、アルキレン、-O-、-CO-、-S-、-SO2-、-C(CF3)2-および-C(CH3)2-から選択され、*は、カルボニルへの連結部を表す。
【0022】
上記した中でも、感光性樹脂組成物の優れた現像性と硬化膜の優れた機械特性が得られることから、2価の有機基は、以下に示す構造の基であることが特に好ましい。
【化8】
【0023】
上記一般式(1)および(2)において、R1~R4のいずれかが、好ましくはR1またはR3のいずれかが、特に好ましくはR3が、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~10の芳香族基、炭素数6~10のフェノキシ基、炭素数6~10のベンジル基および炭素数6~10のベンジルオキシ基から選択され、それ以外のR1~R4が水素原子である。
炭素数1~12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基およびヘキシル基などが挙げられる。
炭素数1~12のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基およびペントキシ基などが挙げられる。
炭素数6~10の芳香族基としては、フェニル基、トリル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、ジエチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、クロルフェニル基、ブロモフェニル基、メトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ジエトキシフェニル基、メトキシベンジル基、ジメトキシベンジル基、エトキシベンジル基、ジエトキシベンジル基、アミノフェニル基、アミノベンジル基、ニトロフェニル基、ニトロベンジル基、シアノフェニル基、シアノベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビフェニル基およびナフチル基などが挙げられる。
炭素数6~10のフェノキシ基としては、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、プロピルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、ジエチルフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、エトキシフェノキシ基およびジメトキシフェノキシ基などが挙げられる。
炭素数6~10のベンジル基としては、ベンジル基、メチルベンジル基、エチルベンジル基、プロピルベンジル基、ジメチルベンジル基、メトキシベンジル基、エトキシベンジル基およびメトキシベンジル基などが挙げられる。
炭素数6~10のベンジルオキシ基としては、メチルベンジルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、ベチルベンジルオキシ基、エチルベンジルオキシ基、プロピルベンジルオキシ基、ジメチルベンジルオキシ基、メトキシベンジルオキシ基およびエトキシベンジルオキシ基などが挙げられる。
上記した中でも、感光性樹脂組成物の溶解コントラスト、高温パターン維持性、感度および線熱膨張係数の観点からは、R1~R4のいずれかが、炭素数6~10の芳香族基、炭素数6~10のフェノキシ基、炭素数6~10のベンジル基および炭素数6~10のベンジルオキシ基であることが好ましく、炭素数6~10の芳香族基がより好ましく、フェニル基、トリル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基およびジエチルフェニル基がさらに好ましく、未露光部の膜減り現象の抑止効果および硬化物における分子間のパッキング効果を抑制することによる内部応力の緩和効果の観点から、フェニル基が特に好ましい。
【0024】
上記一般式(1)および(2)において、nは、1以上の整数であり、好ましくは、1~5、より好ましくは、1~2である。
【0025】
本発明のエステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体において、上記一般式(1)および(2)で表される構造の含有量(エステルジアミン含有量)は、0.1モル%以上、10モル%以下であることが好ましく、0.1モル%以上、5モル%以下であることが好ましい。これにより、本発明のポリベンゾオキサゾール前駆体を含む感光性樹脂組成物により形成される乾燥塗膜の現像時の溶解コントラストをより向上することができる。
【0026】
【0027】
上記一般式(3)において、Xは、2価の有機基であり、その好ましい態様などについては、一般式(1)および(2)と同様であるため、ここでは記載を省略する。
【0028】
上記一般式(3)において、Yは、少なくとも2以上の水酸基を有する4価の有機基である。この有機基は、この有機基は、脂肪族基であっても、芳香族基であってもよいが、芳香族基であることが好ましい。
また、4価の有機基が備える水酸基は、アミノ基との位置関係は、オルト位となることが好ましい。
4価の有機基の炭素数は、6~30であることが好ましく、6~24であることがより好ましい。
4価の有機基としては、以下の構造を有する基が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、用途に応じて適宜変更することが好ましい。
【化10】
【0029】
上記4価の有機基の構造式において、*1および*2のいずれかがアミノ基との連結部を表し、他方が、水酸基を表す。
【0030】
上記した中でも、光透過性による感光性向上の観点から、4価の有機基は、以下に示す構造の基であることが特に好ましい。
【化11】
【0031】
上記一般式(3)において、oは、1以上の整数であり、好ましくは、10~40、より好ましくは、20~30である。
【0032】
本発明のエステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体において、上記一般式(3)で表される構造の含有量は、90モル%以上、99.9モル%以下であることが好ましく、95モル%以上、99.9モル%以下であることが好ましい。これにより、本発明のエステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体を含む感光性樹脂組成物は、乾燥塗膜としての露光部の優れた現像液溶解性と、硬化膜としての絶縁性、耐熱性、機械強度を向上することができる。
【0033】
エステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体の数平均分子量(Mn)は、2,000以上、50,000以下であることが好ましく、4,000以上、25,000以下であることがより好ましい。これにより、アルカリ現像液への溶解性が向上する。
また、ポリベンゾオキサゾール前駆体の重量平均分子量(Mw)は、4,000以上、10,000以下であることが好ましく、8,000以上、50,000以下であることがより好ましい。これにより、硬化物におけるクラックの発生をより低減することができる。
さらに、Mw/Mnは、1以上、5以下であることが好ましく、1以上、3以下であることがより好ましい。
なお、本発明において、数平均分子量および重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンで換算した数値である。
【0034】
このエステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体は、少なくとも下記一般式(4)で示されるジアミン化合物と、下記一般式(5)で示されるジアミン化合物と、下記一般式(6)で表されるジカルボン酸成分とを反応させることにより得ることができる。
【化12】
【化13】
【化14】
【0035】
上記一般式(6)中におけるZは、水酸基、ハロゲン基または、窒素、硫黄、炭素、酸素、芳香環から構成される環状化合物からなる脱離基を表す。中でも、生産性の観点からハロゲン基であることが好ましい。
上記一般式(4)~(6)におけるR1~R4、X、Yについては上記した通りである。
【0036】
一般式(6)を満たすジカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、5-tert-ブチルイソフタル酸、5-ブロモイソフタル酸、5-フルオロイソフタル酸、5-クロロイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’-ジカルボキシテトラフェニルシラン、ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(p-カルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等の芳香環を有するジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、1,2-シクロブタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸等の脂肪族系ジカルボン酸、それらのジカルボン酸ジハライド、それらのジカルボン酸エステル等が挙げられる。中でも、感光性樹脂組成物の優れた現像性と硬化膜の機械特性が得られることから、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル(即ち、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸)およびそのジハライドが好ましい。
【0037】
このエステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体は、特徴的効果と重合反応性を損なわない範囲で、上記一般式(4)および(5)で示されるジアミン化合物以外のジアミン化合物(以下、その他のジアミン化合物という)を組み合わせることもできる。
その他のジアミン化合物としては、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、m-アミノベンジルアミン、p-アミノベンジルアミン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノシ)フェニル]ブタン、2,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、 2-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-2-[4-(4-アミノフェノキシ)-3-メチルフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-3-メチルフェニル]プロパン、2-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-2-[4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ジメチルフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ジメチルフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’-ビス[(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、2,2-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’-ビス[3-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4-{4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノ-6-トリフルオロメチルフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノ-6-フルオロフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノ-6-メチルフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノ-6-シアノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノ-5,5’-ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-4,5’-ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-フェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノ-5-フェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-4-フェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-5’-フェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノ-5,5’-ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-4,5’-ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノ-5-ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-4-ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-5’-ビフェノキシベンゾフェノン、1,3-ビス(3-アミノ-4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-5-フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-5-フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノ-4-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-4-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-5-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-5-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリルおよび上記芳香族ジアミンにおける芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基またはアルコキシル基、シアノ基、またはアルキル基またはアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1~3のハロゲン化アルキル基またはアルコキシル基で置換された芳香族ジアミンなど、4、4‘-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン、トランスー1,4-ジアミノシクロヘキサン、シスー1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,4-シクロヘキサンビス(メチルアミン)、2,5-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、3,8-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5,2,1,0]デカン、1,3-ジアミノアダマンタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロププロパン、1,3-プロパンジアミン、1,4-テトラメチレンジアミン、1,5-ペンタメチレンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ヘプタメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、1,9-ノナメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミンが挙げられる。その他のジアミン化合物は単独で用いてもよいし、2種以上使用してもよい。
【0038】
[感光性樹脂組成物]
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)上記エステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体、および(B)感光剤を含む。
感光性樹脂組成物にこのようなエステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体を用いることにより、感光性樹脂組成物により形成される乾燥塗膜の溶解コントラストおよび内部応力を顕著に改善できる。
【0039】
以下、本発明の感光性樹脂組成物が含有する成分について詳述する。
【0040】
[(A)エステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体]
本発明の感光性樹脂組成物は、ポリベンゾオキサゾール前駆体として、前述したようなエステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体を含むことで、形成される乾燥塗膜の溶解コントラストおよび硬化膜の内部応力を顕著に改善できる。
なお、本発明の感光性樹脂組成物は、上記エステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体以外のポリベンゾオキサゾール前駆体と組み合わせて用いてもよい。
感光性樹脂組成物におけるエステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体の含有量は、不揮発成分中において50質量%以上、99質量%以下であることが好ましく、60質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。このような含有量の範囲により、本発明の効果を十分に得ることができる。
【0041】
[(B)感光剤]
本発明の感光性樹脂組成物は、感光剤を含み、例えば、光酸発生剤および光塩基発生剤などが挙げられる。これらの中でも、溶解コントラストという観点から、光酸発生剤が好ましい。
この感光剤は、公知慣用の割合で配合することができ、例えば、光酸発生剤については、エステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体100質量部に対して、5~40質量部、好ましくは10~30質量部の割合で配合することが好ましい。
なお、このような感光剤は、2種以上含んでいてもよい。
【0042】
光酸発生剤は、紫外線や可視光などの光照射により酸を発生する化合物であり、例えば、ナフトキノンジアジド化合物、ジアリールスルホニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、アリールジアゾニウム塩、芳香族テトラカルボン酸エステル、芳香族スルホン酸エステル、ニトロベンジルエステル、芳香族N-オキシイミドスルフォネート、芳香族スルファミドおよびベンゾキノンジアゾスルホン酸エステルなどを挙げることができる。
上記した中でも、溶解コントラストという観点から、ナフトキノンジアジド化合物が好ましい。
ナフトキノンジアジド化合物としては、具体的には、例えば、トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼンのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のTS533、TS567、TS583、TS593)、テトラヒドロキシベンゾフェノンのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のBS550、BS570、BS599)、および4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]-α,α-ジメチルベンジル}フェノールのナフトキノンジアジド付加物(例えば、三宝化学研究所社製のTKF-428、TKF-528)などが挙げられる。
【0043】
光塩基発生剤は、紫外線や可視光などの光照射により分子構造が変化することにより、または分子が開裂することにより、1種以上の塩基性物質(2級アミンおよび3級アミンなど)を生成する化合物である。
光塩基発生剤としては、イオン型光塩基発生剤でもよく、非イオン型光塩基発生剤でもよいが、感光性樹脂組成物の感度という観点からは、イオン型光塩基発生剤が好ましい。
イオン型光塩基発生剤としては、例えば、芳香族成分含有カルボン酸と3級アミンとの塩などが挙げられ、この市販品としては、和光純薬社製イオン型PBGのWPBG-082、WPBG-167、WPBG-168、WPBG-266およびWPBG-300などが挙げられる。
非イオン型の光塩基発生剤としては、例えば、α-アミノアセトフェノン化合物、オキシムエステル化合物や、N-ホルミル化芳香族アミノ基、N-アシル化芳香族アミノ基、ニトロベンジルカーバメイト基およびアルコオキシベンジルカーバメート基などの置換基を有する化合物などが挙げられる。
その他の光塩基発生剤として、和光純薬社製のWPBG-018(商品名:9-anthrylmethyl N,N’-diethylcarbamate)、WPBG-027(商品名:(E)-1-[3-(2-hydroxyphenyl)-2-propenoyl]piperidine)、WPBG-140(商品名:1-(anthraquinon-2-yl)ethyl imidazolecarboxylate)およびWPBG-165などが挙げられる。
【0044】
[架橋剤]
本発明の感光性樹脂組成物は架橋剤を含有することができる。架橋剤を添加することで220℃程度の低温硬化でも十分な硬化物の特性が得られる。架橋剤は、特に限定されず、公知慣用の架橋剤が挙げられる。
本明細書においてその架橋剤はポリベンゾオキサゾール前駆体中のフェノール性水酸基と反応し架橋構造を形成し得る化合物であることが好ましい。
ここでポリベンゾオキサゾール前駆体中のフェノール性水酸基と反応する化合物としてはエポキシ基などの環状エーテル基、エピスルフィド基などの環状チオエーテル基を有する架橋剤、メチロール基などの炭素数1~12のアルキレン基にヒドロキシル基が結合したアルコール性水酸基を有する架橋剤、アルコキシメチル基などのエーテル結合を有する化合物、トリアジン環構造を有する架橋剤、尿素系架橋剤が挙げられる。
これらの中でも、環状エーテル基、特には、エポキシ基を有する架橋剤およびアルコール性水酸基、特には、ヒドロキシル基が結合したメチロール基を有する架橋剤が好ましい。
架橋剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の感光性樹脂組成物における架橋剤の配合量は、ポリベンゾオキサゾール前駆の不揮発成分100質量部に対し、0.1~30質量部であることが好ましい。また、0.1~20質量部がより好ましい。
【0045】
(エポキシ基を有する架橋剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、架橋剤としてエポキシ基を有する架橋剤を含有することが好ましい。エポキシ基を有する架橋剤は、上記ポリベンゾオキサゾール前駆体の水酸基と熱反応し、架橋構造を形成する。エポキシ基を有する架橋剤の官能基数は、2~4であることが好ましい。感光性樹脂組成物が、エポキシ基を有する架橋剤を含有することにより、低温硬化性が得られ、形成される乾燥塗膜の溶解コントラストをより改善できる。
エポキシ基を有する架橋剤のなかでも、ナフタレン骨格を有する2官能以上のエポキシ化合物が好ましい。柔軟性および耐薬品性により優れた絶縁膜が得られるだけでなく、柔軟性と二律背反の関係にある低CTE化が可能となり、絶縁膜の反りやクラックの発生を抑制することができる。また、ビスフェノールA型エポキシ化合物も柔軟性の観点から好適に用いることができる。
【0046】
(メチロール基を有する架橋剤)
本発明の感光性樹脂組成物は、架橋剤としてメチロール基を有する架橋剤を含有することが好ましい。メチロール基を有する架橋剤としては、メチロール基を2以上有することが好ましく、下記一般式(7)で表される化合物であることがさらに好ましい。
【化15】
(一般式(7)中、R
A1は2~10価の有機基を示す。R
A2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を示す。rは2~10の整数を示す。)
【0047】
前記一般式(7)中、RA1は、置換基を有していてもよい炭素数1~3のアルキレン基であることが好ましい。
【0048】
前記一般式(7)中、RA2は、水素原子であることが好ましい。
【0049】
前記一般式(7)中、rは、2~4の整数であることが好ましく、2であることがより好ましい。
【0050】
また、フェノール性水酸基を有する架橋剤は、フッ素原子を有することが好ましく、トリフルオロメチル基を有することがより好ましい。前記フッ素原子または前記トリフルオロメチル基は、前記一般式(7)中のRA1が示す2~10価の有機基が有することが好ましく、RA1はジ(トリフルオロメチル)メチレン基であることが好ましい。また、フェノール性水酸基を有する架橋剤は、ビスフェノール構造を有することが好ましく、ビスフェノールAF構造を有することがより好ましい。
【0051】
[可塑剤]
本発明の感光性樹脂組成物は、可塑剤を含有することが好ましい。本発明においては、可塑剤の可塑作用、すなわち、ポリマー分子鎖間の凝集作用を削減し、分子鎖間の移動性、柔軟性が向上したことによって、ポリベンゾオキサゾール前駆体の熱分子運動が向上し、環化反応が促進されることで低温硬化性が付与されると考えられる。可塑剤としては、可塑性を向上する化合物であれば特に限定されず、2官能(メタ)アクリル化合物、スルホンアミド化合物、フタル酸エステル化合物、マレイン酸エステル化合物、脂肪族二塩基酸エステル、リン酸エステル、クラウンエーテルなどのエーテル化合物などが挙げられる。中でも、2官能(メタ)アクリル化合物であることが好ましい。2官能(メタ)アクリル化合物は、組成物中の他の成分と架橋構造を形成しない化合物であることが好ましい。また、2官能(メタ)アクリル化合物は、硬化物の内部応力をより緩和する観点から、自己重合により直鎖構造を形成する化合物であることが好ましい。本発明の感光性樹脂組成物における可塑剤の配合量としては、ポリベンゾオキサゾール前駆体の不揮発成分100質量部に対し、3~40質量部であることが好ましい。
【0052】
2官能の(メタ)アクリル化合物の中でも、ジオールの(エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどの)アルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレートや2官能のポリエステル(メタ)アクリレートが好ましく、2官能のポリエステル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0053】
ジオールのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレートとしては、具体的にはジオールをアルキレンオキシド変性した後に末端に(メタ)アクリレートを付加させたものが好ましく、ジオールに芳香環を有するものがさらに好ましい。例えば、ビスフェノールA EO(エチレンオキサイド)付加物ジアクリレート、ビスフェノールA PO(プロピレンオキサイド)付加物ジアクリレートなどが挙げられる。ジオールのアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレートの具体的な構造を下記一般式(8)に示すがこれに限定されるものではない。
【化16】
【0054】
一般式(8)中、p+qは2以上であり、2~40であることが好ましく、3.5~25であることがより好ましい。
【0055】
(熱酸発生剤、増感剤、密着剤、その他の成分)
本発明の感光性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、更にポリベンゾオキサゾール前駆体の環化反応を促進するために公知の熱酸発生剤や、光感度を向上させるために公知の増感剤や、基材との接着性向上のためにシランカップリング剤などの公知の密着剤などを配合することもできる。更に、本発明の感光性樹脂組成物に加工特性や各種機能性を付与するために、その他に様々な有機または無機の低分子または高分子化合物を配合してもよい。例えば、界面活性剤、レベリング剤、微粒子等を用いることができる。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、シリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子が含まれる。また、本発明の感光性樹脂組成物に各種着色剤および繊維等を配合してもよい。
【0056】
[溶剤]
本発明の感光性樹脂組成物は、溶剤を含んでいてもよい。溶剤としては、上記各成分を溶解できるものであれば特に限定されず、例えば、N,N’-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、テトラメチル尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリノン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、ピリジン、γ-ブチロラクトンおよびジエチレングリコールモノメチルエーテルなどを挙げることができる。
【0057】
感光性樹脂組成物における溶剤の含有量は、特に限定されるものではなく、その用途に応じ適宜変更することが好ましいが、例えば、感光性樹脂組成物に含まれるエステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体100質量部に対し、50質量部以上、9000質量部以下とすることができる。
なお、感光性樹脂組成物は、溶剤を2種以上含んでいてもよい。
【0058】
[ドライフィルム]
本発明のドライフィルムは、フィルム(例えば支持(キャリア)フィルム)と、このフィルム上に、上記感光性樹脂組成物を用いて形成された樹脂層とを備える。また、ドライフィルムは、フィルム上に形成された樹脂層上に、さらに保護(カバー)するフィルム(いわゆる保護フィルム)を備えていてもよい。
【0059】
(フィルム)
フィルムは、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ならびにポリスチレンフィルムなどの熱可塑性樹脂からなるフィルムを使用することができる。
これらの中でも、耐熱性、機械的強度および取扱性などの観点から、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。また、これらフィルムの積層体をフィルムとして使用することもできる。
【0060】
また、上記したような熱可塑性樹脂フィルムは、機械的強度向上の観点から、一軸方向または二軸方向に延伸されたフィルムであることが好ましい。
【0061】
フィルムの厚さは、特に制限されるものではないが、例えば、10~150μmとすることができる。
【0062】
(樹脂層)
樹脂層は、上記感光性樹脂組成物を用いて形成されたものであり、その厚さは、特に限定されるものではなく、用途に応じ適宜変更することが好ましいが、例えば、1μm以上、150μm以下とすることができる。
【0063】
樹脂層は、フィルム上に、感光性樹脂組成物を、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーターおよびスプレーコーターなどにより、均一な厚さに塗布し、乾燥させることにより形成することができる。
また、他の実施形態においては、樹脂層は、保護フィルム上に、感光性樹脂組成物を塗布、乾燥させることにより形成することができる。
【0064】
(保護フィルム)
本発明においては、樹脂層の表面に塵が付着するのを防ぐなどの目的で、樹脂層の表面に剥離可能な保護フィルムを積層することが好ましい。
【0065】
剥離可能な保護フィルムとしては、保護フィルムを剥離するときに樹脂層とフィルムとの接着力よりも樹脂層と保護フィルムとの接着力がより小さくなるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムおよび表面処理した紙などを用いることができる。
【0066】
保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、10μm以上、150μm以下とすることができる。
【0067】
[硬化物]
本発明の硬化物は、上記感光性樹脂組成物を用いて形成されたものであることを特徴とする。また、該硬化物は、パターンが形成されているもの(以下、場合によりパターン膜という)であってもよい。
以下、本発明の硬化物の製造方法を説明する。
【0068】
[第1工程]
本発明の硬化物の製造方法は、感光性樹脂組成物を、基材上に塗布し塗膜を形成し、これを乾燥することにより、または上記ドライフィルムから樹脂層を基材上に転写することにより、乾燥塗膜を形成させる工程を含む。
【0069】
感光性樹脂組成物の基材上への塗布方法は、特に限定されず、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーターおよびスクリーン印刷機などを用いて塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法、ならびにインクジェット法などが挙げられる。
【0070】
塗膜の乾燥方法としては、風乾、オーブンまたはホットプレートによる加熱乾燥、真空乾燥などの方法が用いられる。
また、塗膜の乾燥は、感光性樹脂組成物中のポリイミド前駆体の閉環が起こらないような条件で行うことが望ましい。
具体的には、自然乾燥、送風乾燥、あるいは加熱乾燥を、70~140℃で1~30分の条件で行うことが好ましい。また、操作方法が簡便であるため、ホットプレートを用いて、1~20分乾燥を行うことが好ましい。
また、真空乾燥も可能であり、この場合は、室温で20分~1時間の条件で行うことができる。
【0071】
ドライフィルムの基材上への転写は、真空ラミネーターなどを用いて、加圧および加熱下で行うことが好ましい。このような真空ラミネーターを使用することにより、回路形成された基板を用いた場合に、回路基板表面に凹凸があっても、ドライフィルムの樹脂層が真空条件下で回路基板の凹凸に充填するため、気泡の混入がなく、また、基板表面の凹部の穴埋め性も向上する。
【0072】
基材としては、あらかじめ銅などにより回路形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板の他、紙フェノール、紙エポキシ、ガラス布エポキシ、ガラスポリイミド、ガラス布/不繊布エポキシ、ガラス布/紙エポキシ、合成繊維エポキシ、フッ素樹脂・ポリエチレン・ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンオキシド・シアネートなどを用いた高周波回路用銅張積層板などの材質を用いたもので、全てのグレード(FR-4など)の銅張積層板、その他、金属基板、ポリイミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、ガラス基板、セラミック基板、ウエハ板などを挙げることができる。
【0073】
[第2工程]
次に、上記塗膜を、パターンを有するフォトマスクを通して選択的に、あるいはフォトマスクを通さず非選択的に、活性エネルギー線を照射し、露光する。
【0074】
活性エネルギー線は、例えば(B)感光剤としての光酸発生剤を活性化させることができる波長のものを用いる。具体的には活性エネルギー線は、最大波長が350~410nmの範囲にあるものが好ましい。
露光量は膜厚などによって異なるが、一般には10~1000mJ/cm2、好ましくは20~800mJ/cm2の範囲内とすることができる。
上記活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプなどを搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。
【0075】
[第3工程]
該工程は、必要に応じ行われるものであり、塗膜を短時間加熱することにより、未露光部のポリイミド前駆体の一部を閉環してもよい。ここで、閉環率は、30%程度である。加熱時間および加熱温度は、ポリイミド前駆体の種類、塗布膜厚、(B)感光剤の種類によって適宜変更する。
【0076】
[第4工程]
次いで、上記露光後の塗膜を、現像液により処理し、塗膜中の露光部分を除去することにより、パターン膜を得ることができる。
該工程においては、従来より知られているフォトレジストの現像方法、例えば回転スプレー法、パドル法、超音波処理を伴う浸せき法などの中から任意の方法を選択することができる。
【0077】
現像液としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア水などの無機アルカリ類、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシドなどの四級アンモニウム塩類などの水溶液を挙げることができる。
また、必要に応じて、これらにメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加してもよい。
【0078】
その後、必要に応じて塗膜をリンス液により洗浄してパターン膜を得る。
リンス液としては、蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどを単独または組み合わせて用いることができる。また、現像液として上記溶剤を使用してもよい。
【0079】
[第5工程]
次いで、パターン膜を加熱して硬化塗膜(硬化物)を得る。
該加熱工程により、感光性樹脂組成物に含まれるポリベンゾオキサゾール前駆体は、環化反応し、ポリベンゾオキサゾールとなる。
【0080】
加熱条件は、適宜調整することが好ましく、例えば、150℃以上、350℃未満の温度において、5分~120分程度と設定することができる。
加熱には、例えば、ホットプレート、オーブンおよび温度プログラムを設定できる昇温式オーブンを用いることができる。
加熱雰囲気(気体)、空気下であってもよく、窒素、アルゴンなどの不活性ガス下であってもよい。
【0081】
[用途]
本発明の感光性樹脂組成物の用途は特に限定されず、例えば、塗料、印刷インキ、接着剤、表示装置、半導体素子、電子部品、光学部品および建築材料などの形成材料として好適に用いられる。
【0082】
具体的には、表示装置の形成材料としては、カラーフィルター、フレキシブルディスプレイ用フィルム、レジスト材料および配向膜などにおける、層形成材料および画像形成材料が挙げられる。
半導体素子の形成材料としては、レジスト材料およびバッファーコート膜、ウエハレベルパッケージ(WLP)の再配線層用絶縁膜などにおける、層形成材料が挙げられる。
電子部品の形成材料としては、プリント配線板、層間絶縁膜および配線被覆膜などにおける、封止材料および層形成材料が挙げられる。
また、光学部品の形成材料としては、ホログラム、光導波路、光回路、光回路部品および反射防止膜などにおける、光学材料や層形成材料が挙げられる。
さらに、建築材料としては、塗料、コーティング剤などに用いることができる。
【0083】
本発明の感光性樹脂組成物は、主にパターン形成材料として用いられ、特に半導体装置、表示体装置および発光装置の表面保護膜、バッファーコート膜、層間絶縁膜、再配線用絶縁膜、フリップチップ装置用保護膜、バンプ構造を有する装置の保護膜、多層回路の層間絶縁膜、受動部品用絶縁材料、ソルダーレジストやカバーレイ膜などのプリント配線板の保護膜、ならびに液晶配向膜などとして好適に利用できる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0085】
(参考例1:ポリベンゾオキサゾール前駆体A-1の合成)
攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、下記化学式(a)で示される、(2-フェニル-4-アミノフェニル)-4-アミノベンゾエート(PHBPAA)0.489g(1.61mmol)および下記化学式(b)で示される、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン28.02g(76.5mmol)を仕込み、N-メチルピロリドン215g中で撹拌溶解した。
その後、フラスコを氷浴に浸し、フラスコ内を0~5℃に保ちながら、下記化学式(c)で示される、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸クロリド25.29g(85.7mmol)を固体のまま10分間かけて加え、氷浴中で30分間撹拌した。
【化17】
【化18】
【化19】
【0086】
その後、室温で18時間撹拌を続けた。撹拌した溶液を1Lのイオン交換水(比抵抗値18.2MΩ・cm)に投入し、析出物を回収した。その後、得られた固体をアセトン420mLに溶解させ、1Lのイオン交換水に投入した。析出した個体を回収後、減圧乾燥して、下記化学式で示される、カルボキシル基末端のエステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体を得た。GPC法標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は31,000であった。
なお、エステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体におけるエステルジアミンの含有量は、2mol%であった。
【化20】
【0087】
(参考例2:ポリベンゾオキサゾール前駆体A-2の合成)
攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、 PHBPAA0.474(1.56mmol)およびビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン10.88g(29.7mmol)を仕込み、N-メチルピロリドン85g中で撹拌溶解した。
その後、フラスコを氷浴に浸し、フラスコ内を0~5℃に保ちながら、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸クロリド10.09g(34.2mmol)を固体のまま10分間かけて加え、氷浴中で30分間撹拌した。
その後、室温で18時間撹拌を続けた。撹拌した溶液を700mLのイオン交換水(比抵抗値18.2MΩ・cm)に投入し、析出物を回収した。その後、得られた固体をアセトン420mLに溶解させ、1Lのイオン交換水に投入した。析出した個体を回収後、減圧乾燥してカルボキシル基末端のエステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体を得た。GPC法標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は26,900であった。
なお、エステルジアミン含有ポリベンゾオキサゾール前駆体におけるエステルジアミンの含有量は、5mol%であった。
【0088】
(参考例3:ポリベンゾオキサゾール前駆体A-3の合成)
攪拌機、温度計を備えた0.5リットルのフラスコ中に、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン10.0g(27.3mmol)を、N-メチルピロリドン1500g中で撹拌溶解した。
その後、フラスコを氷浴に浸し、フラスコ内を0~5℃に保ちながら、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸クロリド8.78g(29.8mmol)を固体のまま10分間かけて加え、氷浴中で30分間撹拌した。
その後、室温で18時間撹拌を続けた。撹拌した溶液を700mLのイオン交換水(比抵抗値18.2MΩ・cm)に投入し、析出物を回収した。その後、得られた固体をアセトン420mLに溶解させ、1Lのイオン交換水に投入した。析出した個体を回収後、減圧乾燥してカルボキシル基末端のポリベンゾオキサゾール前駆体を得た。GPC法標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は29,500、数平均分子量は11,600、PDIは2.54であった。
【0089】
<実施例1-1>
上記参考例1において得られたポリベンゾオキサゾール前駆体A-1(100質量部)およびジアゾナフトキノン化合物A(10質量部、三宝化学工業(株)製、TKF-428、感光剤)を、γ-ブチロラクトン(300質量部)に溶解した後、0.2μmフィルターでろ過し、感光性樹脂組成物のワニスA-1を得た。
【0090】
<実施例1-2>
ポリベンゾオキサゾール前駆体A-1を、ポリベンゾオキサゾール前駆体A-2に変更した以外は、実施例1-1と同様にして感光性樹脂組成物のワニスA-2を得た。
【0091】
<比較例1-1>
ポリベンゾオキサゾール前駆体A-1を、ポリベンゾオキサゾール前駆体A-3に変更した以外は、実施例1-1と同様にして感光性樹脂組成物のワニスA-3を得た。
【0092】
<<伸び率の評価>>
上記実施例1-1~1-2および比較例1-1において得られたワニスA-1、A-2およびA-3を、それぞれ、6インチシリコンウエハ上にスピンコーターを用いて塗布、ホットプレートにて110℃で3分乾燥し、膜厚約30μmの塗膜を得た。次にオーブンを用いて、塗膜付きシリコンウエハを150℃/30分、320℃/60分で加熱を行った。
得られた硬化膜をシリコンウエハから剥がし、島津製作所社製のEZ-SXを用いて、引張試験より伸び率を測定し、下記評価基準に基づいて評価した。評価結果を表1にまとめた。
(評価基準)
◎:伸び率が、15%以上であった。
〇:伸び率が、10%以上、15%未満であった。
×:伸び率が、10%未満であった。
【0093】
<<ガラス転移温度評価>>
伸び率評価において得られた硬化膜を、TMA(熱機械分析)によってガラス転移温度(Tg)を測定し、下記評価基準に基づいて評価した。評価結果を表1にまとめた。
(評価基準)
◎:ガラス転移温度が、300℃以上であった。
〇:ガラス転移温度が、250℃以上、300℃未満であった。
×:ガラス転移温度が、250℃未満であった。
【0094】
<<内部応力評価>>
上記実施例1-1~1-2および比較例1-1において得られたワニスA-1、A-2およびA-3を、それぞれ6インチシリコンウエハ上にスピンコーターを用いて塗布、ホットプレートにて110℃で3分乾燥し、膜厚約6μmの塗膜を得た。次にオーブンを用いて、塗膜付きシリコンウエハを150℃/30分、320℃/60分で加熱を行った。
硬化膜形成前後のシリコンウエハの反り量の変化より得られる曲率半径から、(1)式を用い内部応力を測定し、下記評価基準に基づいて評価した。評価結果を表1にまとめた。
【数1】
(評価基準)
◎: 内部応力が、25MPa未満であった。
〇: 内部応力が、25MPa以上、30MPa未満であった。
×: 内部応力が、30MPa以上であった。
【0095】
<<溶解コントラスト評価>>
上記実施例1-1~1-2および比較例1-1において得られたワニスA-1、A-2およびA-3を、6インチシリコンウエハ上にスピンコーターを用いて塗布、ホットプレートにて110℃で3分乾燥し、膜厚約8μmの塗膜を得た。得られた塗膜に対しマスクを介してi線露光を施し、同一基板内に露光部と未露光部を作った。露光後2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液にて120秒現像し、水でリンスし、ポジ型の硬化膜のパターンを得た。
露光部の膜厚が0になるまでの露光部現像速度と未露光部現像速度を求めた。下記の式よりコントラストを算出し、以下の基準で評価した。評価結果を表1にまとめた。
【数2】
(評価基準)
◎:コントラストが、100以上であった。
○:コントラストが、20以上、100未満であった。
×:溶解速度比が、20未満であった。
【0096】
<<感度評価>>
上記実施例1-1~1-2および比較例1-1において得られたワニスA-1、A-2およびA-3を、スピンコーターにてシリコンウエハ上に塗布し、ホットプレートにより、110℃で3分加熱乾燥し、膜厚約8μmの塗膜を得た。
得られた塗膜に対し、高圧水銀ランプ(i線フィルター付き)を用いて、ブロード光を、パターンを有するフォトマスクを通して照射した。なお、露光量は50mJ/cm2ずつ上昇させ、フォトマスク透過後で、100~1000mJ/cm2の範囲で行った。
露光後の乾燥塗膜を、2.38%TMAH水溶液を用いて現像し、水によりリンスし、ポジ型のパターン膜を形成させた。
露光部が完全に溶出しなくなった露光量を、最小露光量とし、以下の評価基準に従い、評価した。評価結果を表1にまとめた。
(評価基準)
◎:最小露光量が、400mJ/cm2未満であった。
○:最小露光量が、400mJ/cm2以上、700mJ/cm2未満であった。
×:最小露光量が、700mJ/cm2以上であった。
【0097】
【0098】
上記表1中に示す評価結果から明らかなように、実施例においては、高いガラス転移温度、伸び率、溶解コントラストおよび感度を有し、かつ低い内部応力を有していることが確かめられた。
【0099】
<実施例2-1>
上記参考例1において得られたポリベンゾオキサゾール前駆体A-1(100質量部)、ジアゾナフトキノン化合物A(10質量部、三宝化学工業(株)製、TKF-428、感光剤)および2官能(メタ)アクリル化合物(10質量部、東亞合成社製、M-6250、可塑剤)を、γ-ブチロラクトン(300質量部)に溶解した後、0.2μmフィルターでろ過し、感光性樹脂組成物のワニスB-1を得た。
【0100】
<実施例2-2>
上記参考例1において得られたポリベンゾオキサゾール前駆体A-1(100質量部)、ジアゾナフトキノン化合物A(10質量部、三宝化学工業(株)製、TKF-428、感光剤)および2官能以上のエポキシ化合物(10質量部、DIC社製、HP-4032D、架橋剤)を、γ-ブチロラクトン(300質量部)に溶解した後、0.2μmフィルターでろ過し、感光性樹脂組成物のワニスC-1を得た。
【0101】
<実施例2-3>
上記参考例1において得られたポリベンゾオキサゾール前駆体A-1(100質量部)、ジアゾナフトキノン化合物A(10質量部、三宝化学工業(株)製、TKF-428、感光剤)および下記化学式(d)で示されるTM-BIP-A(10質量部、架橋剤)を、γ-ブチロラクトン(300質量部)に溶解した後、0.2μmフィルターでろ過し、感光性樹脂組成物のワニスD-1を得た。
【化21】
【0102】
<<ガラス転移温度評価>>
ワニスを、実施例2-1~2-3において得られたワニスB-1、C-1およびD-1に変更すると共に、オーブンによる塗膜付きシリコンウエハの加熱を、150℃/30分、220℃/60分に変更した以外は、上記した方法と同様の方法により、ガラス転移温度を測定し、同様の評価基準に基づいて評価した。評価結果を表2にまとめた。
【0103】
<<内部応力評価>>
ワニスを、実施例2-1~2-3において得られたワニスB-1、C-1およびD-1に変更すると共に、オーブンによる塗膜付きシリコンウエハの加熱を、150℃/30分、220℃/60分に変更した以外は、上記した方法と同様の方法により、内部応力を測定し、同様の評価基準に基づいて評価した。評価結果を表2にまとめた。
【0104】
<<溶解コントラスト評価>>
ワニスを、実施例2-1~2-3において得られたワニスB-1、C-1およびD-1に変更した以外は、上記した方法と同様の方法により、コントラストを求め、同様の評価基準に基づいて評価した。評価結果を表2にまとめた。
【0105】
<<感度評価>>
ワニスを、実施例2-1~2-3において得られたワニスB-1、C-1およびD-1に変更した以外は、上記した方法と同様の方法により、感度を求め、同様の評価基準に基づいて評価した。評価結果を表2にまとめた。
【0106】
【0107】
上記表2中に示す評価結果から明らかなように、各実施例においては、低温での硬化であっても高いガラス転移温度および溶解コントラストを有し、かつ低い内部応力を有していることが確かめられた。