(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-05
(45)【発行日】2023-01-16
(54)【発明の名称】ループ型ヒートパイプ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20230106BHJP
F28D 15/04 20060101ALI20230106BHJP
【FI】
F28D15/02 101K
F28D15/02 E
F28D15/02 106G
F28D15/04 E
(21)【出願番号】P 2018152493
(22)【出願日】2018-08-13
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】町田 洋弘
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/087451(WO,A1)
【文献】特開2002-039693(JP,A)
【文献】特開2018-036012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02
F28D 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体を気化させる蒸発器と、
前記作動流体を液化する凝縮器と、
前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する液管と、
前記蒸発器と前記凝縮器とを接続し、前記液管と共にループを形成する蒸気管と、
前記液管内に設けられ、液相の前記作動流体を貯留する多孔質体と、
を有し、
前記液管は、互いに積層された複数の金属層から形成され、
前記液管は、
第1管壁と、
前記複数の金属層の積層方向に垂直な方向で前記第1管壁に対向する第2管壁と、
を有し、
前記第1管壁と前記第2管壁との間にソリッドな支柱が設けられ、
前記支柱は、
前記第2管壁に対向する第1側面と、
前記第1管壁に対向する第2側面と、
を有し、
前記多孔質体は、前記第1管壁と前記第2側面との間に設けられ、
前記多孔質体は、
前記第1管壁に接触する第3側面と、
前記第2側面に接触する第4側面と、
を有し、
前記液管は、前記作動流体を注入するための注入口を有し、
前記注入口は、前記第2管壁に設けられ、
前記第1側面と前記第2管壁との間に連絡流路が設けられ、
前記多孔質体の一方の第1の端部は、前記注入口と前記蒸発器との間に位置し、
前記多孔質体の他方の第2の端部は、前記注入口と前記凝縮器との間に位置し、
前記多孔質体は、前記注入口と前記蒸発器との間の少なくとも一部で、前記液管の内部を充填することを特徴とするループ型ヒートパイプ。
【請求項2】
前記第2の端部よりも前記凝縮器側において、前記液管の前記第1管壁及び前記第2管壁の少なくとも一方の壁面に溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項3】
前記溝は、前記液管に沿って延びることを特徴とする請求項2に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項4】
前記液管は、前記第2の端部よりも前記凝縮器側に設けられた空間からなる流路を有し、
前記連絡流路は、前記注入口と前記流路とを繋ぐことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項5】
前記多孔質体の前記注入口と前記蒸発器との間で前記液管の内部を充填する部分は、前記第1管壁及び前記第2管壁に接触することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項6】
前記多孔質体
を構成する部分の前記複数の金属層の各々に、一方の面側から窪む第1の有底孔と、他方の面側から窪む第2の有底孔と、前記第1の有底孔と前記第2の有底孔とが部分的に連通して形成された細孔と、を備え
たことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項7】
作動流体を気化させる蒸発器と、前記作動流体を液化する凝縮器と、前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する液管と、前記蒸発器と前記凝縮器とを接続し、前記液管と共にループを形成する蒸気管と、を備えたループ型ヒートパイプの製造方法であって、
複数の金属層を積層することにより、前記蒸発器、前記凝縮器、前記液管及び前記蒸気管を形成すると共に、前記作動流体を注入するための注入口を前記液管に形成し、前記液管内に液相の前記作動流体を貯留する多孔質体を形成する工程を有し、
前記液管は、
第1管壁と、
前記複数の金属層の積層方向に垂直な方向で前記第1管壁に対向する第2管壁と、
を有し、
前記第1管壁と前記第2管壁との間にソリッドな支柱が設けられ、
前記支柱は、
前記第2管壁に対向する第1側面と、
前記第1管壁に対向する第2側面と、
を有し、
前記多孔質体は、前記第1管壁と前記第2側面との間に設けられ、
前記多孔質体は、
前記第1管壁に接触する第3側面と、
前記第2側面に接触する第4側面と、
を有し、
前記注入口は、前記第2管壁に設けられ、
前記第1側面と前記第2管壁との間に連絡流路が設けられ、
前記多孔質体の一方の第1の端部は、前記注入口と前記蒸発器との間に位置し、
前記多孔質体の他方の第2の端部は、前記注入口と前記凝縮器との間に位置し、
前記多孔質体は、前記注入口と前記蒸発器との間の少なくとも一部で、前記液管の内部を充填することを特徴とするループ型ヒートパイプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ループ型ヒートパイプ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に搭載されるCPU(Central Processing Unit)等の発熱部品を冷却するデバイスとして、ヒートパイプが知られている。ヒートパイプは、作動流体の相変化を利用して熱を輸送するデバイスである。
【0003】
ヒートパイプの一例として、発熱部品の熱により作動流体を気化させる蒸発器と、気化した作動流体を冷却して液化する凝縮器とを備え、蒸発器と凝縮器とがループ状の流路を形成する液管と蒸気管で接続されたループ型ヒートパイプが挙げられる。ループ型ヒートパイプでは、作動流体はループ状の流路を一方向に流れる。
【0004】
また、ループ型ヒートパイプの液管内には、多孔質体が設けられており、多孔質体に生じる毛細管力で液管内の作動流体を蒸発器に誘導し、蒸発器から液管に蒸気が逆流することを抑制している。多孔質体には多数の細孔が形成されている。各細孔は、貫通孔が形成された金属層同士を、貫通孔が部分的に重複するように積層することにより形成される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ループ型ヒートパイプの使用中に液管内の作動流体が枯渇し、ドライアウトが発生することがある。
【0007】
本発明は、ドライアウトを抑制することができるループ型ヒートパイプ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ループ型ヒートパイプの一態様は、作動流体を気化させる蒸発器と、前記作動流体を液化する凝縮器と、前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する液管と、前記蒸発器と前記凝縮器とを接続し、前記液管と共にループを形成する蒸気管と、前記液管内に設けられ、液相の前記作動流体を貯留する多孔質体と、を有する。前記液管は、互いに積層された複数の金属層から形成され、前記液管は、第1管壁と、前記複数の金属層の積層方向に垂直な方向で前記第1管壁に対向する第2管壁と、を有する。前記第1管壁と前記第2管壁との間にソリッドな支柱が設けられ、前記支柱は、前記第2管壁に対向する第1側面と、前記第1管壁に対向する第2側面と、を有する。前記多孔質体は、前記第1管壁と前記第2側面との間に設けられ、前記多孔質体は、前記第1管壁に接触する第3側面と、前記第2側面に接触する第4側面と、を有する。前記液管は、前記作動流体を注入するための注入口を有し、前記注入口は、前記第2管壁に設けられ、前記第1側面と前記第2管壁との間に連絡流路が設けられ、前記多孔質体の一方の第1の端部は、前記注入口と前記蒸発器との間に位置し、前記多孔質体の他方の第2の端部は、前記注入口と前記凝縮器との間に位置し、前記多孔質体は、前記注入口と前記蒸発器との間の少なくとも一部で、前記液管の内部を充填する。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、ドライアウトを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプを示す平面模式図である。
【
図2】第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプの蒸発器及びその周囲の断面図である。
【
図3】第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプの注入口及びその近傍における液管の内部の構成を例示する平面模式図である。
【
図4】第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプの内部の構成を例示する断面図(その1)である。
【
図5】第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプの内部の構成を例示する断面図(その2)である。
【
図6】2層目から5層目までの各金属層における多孔質体に含まれる有底孔の配置を例示する平面図である。
【
図7】第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプの製造工程を例示する図(その1)である。
【
図8】第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプの製造工程を例示する図(その2)である。
【
図9】第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプの製造工程を例示する図(その3)である。
【
図10】第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプの製造工程を例示する図(その4)である。
【
図11】第1の実施形態の変形例に係るループ型ヒートパイプの内部の構成を例示する断面図である。
【
図12】第2の実施形態に係るループ型ヒートパイプの内部の構成を例示する断面図(その1)である。
【
図13】第2の実施形態に係るループ型ヒートパイプの内部の構成を例示する断面図(その2)である。
【
図14】第3の実施形態に係るループ型ヒートパイプの内部の構成を例示する断面図(その1)である。
【
図15】第3の実施形態に係るループ型ヒートパイプの内部の構成を例示する断面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0012】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について説明する。第1の実施形態はループ型ヒートパイプに関する。
【0013】
[ループ型ヒートパイプの構造]
図1は、第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプを示す平面模式図である。
【0014】
図1に示すように、第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプ100は、蒸発器110と、凝縮器120と、蒸気管130と、液管140とを有する。ループ型ヒートパイプ100は、例えば、スマートフォンやタブレット端末等のモバイル型の電子機器102に収容することができる。
【0015】
ループ型ヒートパイプ100において、蒸発器110は、作動流体Cを気化させて蒸気Cvを生成する機能を有する。凝縮器120は、作動流体Cの蒸気Cvを液化させる機能を有する。蒸発器110と凝縮器120は、蒸気管130及び液管140により接続されており、蒸気管130及び液管140によって作動流体C又は蒸気Cvが流れるループである流路101が形成されている。
【0016】
液管140には作動流体Cを注入するための注入口141が形成されている。注入口141は作動流体Cの注入に用いられ、作動流体Cの注入後に塞がれる。
【0017】
図2は、第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプの蒸発器及びその周囲の断面図である。
図1及び
図2に示すように、蒸発器110には、例えば4つの貫通孔110xが形成されている。蒸発器110に形成された各貫通孔110xと回路基板10に形成された各貫通孔10xにボルト15を挿入し、回路基板10の下面側からナット16で止めることにより、蒸発器110と回路基板10とが固定される。
【0018】
回路基板10には、例えば、CPU等の発熱部品12がバンプ11により実装され、発熱部品12の上面が蒸発器110の下面と密着する。蒸発器110内の作動流体Cは、発熱部品12で発生した熱により気化し、蒸気Cvが生成される。
【0019】
図1に示すように、蒸発器110に生成された蒸気Cvは、蒸気管130を通って凝縮器120に導かれ、凝縮器120において液化する。これにより、発熱部品12で発生した熱が凝縮器120に移動し、発熱部品12の温度上昇が抑制される。凝縮器120で液化した作動流体Cは、液管140を通って蒸発器110に導かれる。蒸気管130の幅W
1は、例えば、8mm程度とすることができる。また、液管140の幅W
2は、例えば、6mm程度とすることができる。蒸気管130の幅W
1や液管140の幅W
2は、これに限らず、例えば互いに等しくてもよい。
【0020】
作動流体Cの種類は特に限定されないが、蒸発潜熱によって発熱部品12を効率的に冷却するために、蒸気圧が高く、かつ蒸発潜熱が大きい流体を使用することが好ましい。そのような流体としては、例えば、アンモニア、水、フロン、アルコール、及びアセトンを挙げることができる。
【0021】
蒸発器110、凝縮器120、蒸気管130、及び液管140は、例えば、金属層が複数積層された構造とすることができる(
図4及び
図5参照)。金属層は、例えば、熱伝導性に優れた銅層であって、固相接合等により互いに直接接合されている。金属層の各々の厚さは、例えば、50μm~200μm程度とすることができる。
【0022】
なお、金属層は銅層には限定されず、ステンレス層やアルミニウム層、マグネシウム合金層等から形成してもよい。また、金属層の積層数は特に限定されない。
【0023】
図3は、第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプの注入口141及びその近傍における液管140の内部の構成を例示する平面模式図である。但し、
図3では、一方の最外層となる金属層(
図4及び
図5に示す金属層151)の図示が省略されている。
【0024】
図3に示すように、注入口141の近傍において、液管140内に、その内側の管壁142に接触するようにして多孔質体150が設けられている。例えば、多孔質体150は、管壁142に接触して、一体的に形成されている。多孔質体150は、液相の作動流体Cを貯留する。液管140に沿う方向において、多孔質体150の一方の端部150Aは、注入口141と蒸発器110との間に位置し、多孔質体150の他方の端部150Bは、注入口141と凝縮器120との間に位置する。
【0025】
注入口141より凝縮器120側において、多孔質体150は、液管140の外側の管壁143から離間しており、多孔質体150と管壁143との間に連絡流路180が形成されている。連絡流路180は注入口141に連通している。多孔質体150と連絡流路180との間には、ソリッドな支柱160が設けられている。
【0026】
液管140の多孔質体150の端部150Bと凝縮器120との間には、管壁142、管壁143、一方の最外層となる金属層(
図4及び
図5に示す金属層151)及び他方の最外層となる金属層(
図4及び
図5に示す金属層156)により囲まれた空間からなる流路170が存在する。流路170は流路101の一部である。連絡流路180は流路170に連通しており、注入口141から液管140に注入された液相の作動流体Cが、連絡流路180を通じて流路170に流れ込む。
【0027】
注入口141より蒸発器110側では、多孔質体150は内側の管壁142だけでなく、外側の管壁143にも接触している。そして、多孔質体150は、注入口141と蒸発器110との間の少なくとも一部で、液管140の内部を充填している。
【0028】
ここで、液管140、多孔質体150、支柱160、流路170及び連絡流路180について詳細に説明する。
図4及び
図5は、第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプの内部の構成を例示する断面図である。
図4は、
図3中のI-I線に沿った断面図に相当し、
図5は、
図3中のII-II線に沿った断面図に相当する。
図6は、2層目から5層目までの各金属層における多孔質体150に含まれる有底孔の配置を例示する平面図である。
図6においてI-I線で示す部分が、
図4中の多孔質体150の断面に相当する。なお、
図3中の直線状のI-I線のうち、多孔質体150の部分での実際のI-I線は
図6に示す通りである。
【0029】
液管140、多孔質体150及び支柱160は、例えば、金属層151~156の6層が積層された構造とすることができる。金属層151~156は、例えば、熱伝導性に優れた銅層であって、固相接合等により互いに直接接合されている。金属層151~156の各々の厚さは、例えば、50μm~200μm程度とすることができる。なお、金属層151~156は銅層には限定されず、ステンレス層やアルミニウム層、マグネシウム合金層等から形成してもよい。また、金属層の積層数は限定されず、5層以下や7層以上の金属層を積層してもよい。
【0030】
なお、
図4~
図6において、金属層151~156の積層方向をZ方向、Z方向に垂直な平面内で液管140に沿う方向をY方向、この平面内においてY方向と直交する方向をX方向としている(以降の図も同様)。
【0031】
液管140、多孔質体150及び支柱160において、1層目(一方の最外層)の金属層151及び6層目(他方の最外層)の金属層156には、孔や溝は形成されていない。これに対して、
図4及び
図6(a)に示すように、2層目の金属層152には、多孔質体150内で、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔152xと、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔152yとが、それぞれ複数個形成されている。
【0032】
有底孔152xと有底孔152yとは、平面視でX方向に交互に配置されている。また、有底孔152xと有底孔152yとは、平面視でY方向に交互に配置されている。X方向に交互に配置された有底孔152xと有底孔152yとは、平面視で部分的に重複しており、重複する部分は連通して細孔152zを形成している。Y方向に交互に配置された有底孔152xと有底孔152yとは、所定間隔を有して形成されており、平面視で重複していない。そのため、Y方向に交互に配置された有底孔152xと有底孔152yとは、細孔を形成していない。しかし、これに限らず、Y方向における有底孔152xと有底孔152yの配置は、平面視で重複し、細孔を形成してもよい。
【0033】
有底孔152x及び152yは、例えば、直径が100μm~300μm程度の円形とすることができるが、楕円形や多角形等の任意の形状として構わない。有底孔152x及び152yの深さは、例えば、金属層152の厚さの半分程度とすることができる。隣接する有底孔152xの間隔L1は、例えば、100μm~400μm程度とすることができる。隣接する有底孔152yの間隔L2は、例えば、100μm~400μm程度とすることができる。
【0034】
有底孔152x及び152yの内壁は、底面側から開口側に向かって拡幅するテーパ形状とすることができる。しかし、これに限らず、有底孔152x及び152yの内壁は、底面に対して垂直であっても構わない。また、有底孔152x及び152yの内壁は、湾曲する半円形状でも構わない。細孔152zの短手方向の幅W3は、例えば、10μm~50μm程度とすることができる。また、細孔152zの長手方向の幅W4は、例えば、50μm~150μm程度とすることができる。
【0035】
図4に示すように、金属層152には、連絡流路180を構成する開口部152sも形成されている。開口部152sは、金属層152を厚さ方向(Z方向)に貫通する貫通孔で形成されている。この貫通孔は、例えば平面視で重複する上面側の有底孔と下面側の有底孔とが繋がって構成される。
【0036】
図5に示すように、金属層152には、流路170を構成する開口部152tも形成されている。開口部152tは、金属層152を厚さ方向(Z方向)に貫通する貫通孔で形成されている。この貫通孔も、例えば平面視で重複する上面側の有底孔と下面側の有底孔とが繋がって構成される。
【0037】
図4及び
図6(b)に示すように、3層目の金属層153には、多孔質体150内で、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔153xと、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔153yとが、それぞれ複数個形成されている。
【0038】
金属層153では、有底孔153xのみがX方向に配置された列と、有底孔153yのみがX方向に配置された列とが、Y方向に交互に配置されている。Y方向に交互に配置された列において、隣接する列の有底孔153xと有底孔153yとは、平面視で部分的に重複しており、重複する部分は連通して細孔153zを形成している。
【0039】
但し、細孔153zを形成する隣接する有底孔153xと有底孔153yとは、中心位置がX方向にずれている。言い換えれば、細孔153zを形成する有底孔153xと有底孔153yとは、X方向及びY方向に対して斜め方向に交互に配置されている。有底孔153x及び153y、細孔153zの形状等は、例えば、有底孔152x及び152y、細孔152zの形状等と同様とすることができる。
【0040】
金属層152の有底孔152yと、金属層153の有底孔153xとは、平面視で重複する位置に形成されている。そのため、金属層152と金属層153との界面には、細孔は形成されない。しかし、これに限らず、X方向及びY方向において、有底孔153xと有底孔153yの配置を適宜変更することで、金属層152と金属層153との界面には、細孔を形成してもよい。
【0041】
図4に示すように、金属層153には、連絡流路180を構成する開口部153sも形成されている。開口部153sは、金属層153を厚さ方向(Z方向)に貫通する貫通孔で形成されている。この貫通孔は、例えば平面視で重複する上面側の有底孔と下面側の有底孔とが繋がって構成される。
【0042】
図5に示すように、金属層153には、流路170を構成する開口部153tも形成されている。開口部153tは、金属層153を厚さ方向(Z方向)に貫通する貫通孔で形成されている。この貫通孔も、例えば平面視で重複する上面側の有底孔と下面側の有底孔とが繋がって構成される。
【0043】
図4及び
図6(c)に示すように、4層目の金属層154には、多孔質体150内で、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔154xと、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔154yとが、それぞれ複数個形成されている。
【0044】
有底孔154xと有底孔154yとは、平面視でX方向に交互に配置されている。また、有底孔154xと有底孔154yとは、平面視でY方向に交互に配置されている。X方向に交互に配置された有底孔154xと有底孔154yとは、平面視で部分的に重複しており、重複する部分は連通して細孔154zを形成している。Y方向に交互に配置された有底孔154xと有底孔154yとは、所定間隔を有して形成されており、平面視で重複していない。そのため、Y方向に交互に配置された有底孔154xと有底孔154yとは、細孔を形成していない。しかし、これに限らず、Y方向における有底孔154x及び154yの配置は、平面視で重複して、細孔を形成してもよい。有底孔154x及び154y、細孔154zの形状等は、例えば、有底孔152x及び152y、細孔152zの形状等と同様とすることができる。
【0045】
金属層153の有底孔153yと、金属層154の有底孔154xとは、平面視で重複する位置に形成されている。そのため、金属層153と金属層154との界面には、細孔は形成されない。しかし、これに限らず、X方向及びY方向において、有底孔154xと有底孔154yの配置を適宜変更することで、金属層153と金属層154との界面には、細孔を形成してもよい。
【0046】
図4に示すように、金属層154には、連絡流路180を構成する開口部154sも形成されている。開口部154sは、金属層154を厚さ方向(Z方向)に貫通する貫通孔で形成されている。この貫通孔は、例えば平面視で重複する上面側の有底孔と下面側の有底孔とが繋がって構成される。
【0047】
図5に示すように、金属層154には、流路170を構成する開口部154tも形成されている。開口部154tは、金属層154を厚さ方向(Z方向)に貫通する貫通孔で形成されている。この貫通孔も、例えば平面視で重複する上面側の有底孔と下面側の有底孔とが繋がって構成される。
【0048】
図4及び
図6(d)に示すように、5層目の金属層155には、多孔質体150内で、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔155xと、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔155yとが、それぞれ複数個形成されている。
【0049】
金属層155では、有底孔155xのみがX方向に配置された列と、有底孔155yのみがX方向に配置された列とが、Y方向に交互に配置されている。Y方向に交互に配置された列において、隣接する列の有底孔155xと有底孔155yとは、平面視で部分的に重複しており、重複する部分は連通して細孔155zを形成している。
【0050】
但し、細孔155zを形成する隣接する有底孔155xと有底孔155yとは、中心位置がX方向にずれている。言い換えれば、細孔155zを形成する有底孔155xと有底孔155yとは、X方向及びY方向に対して斜め方向に交互に配置されている。有底孔155x及び155y、細孔155zの形状等は、例えば、有底孔152x及び152y、細孔152zの形状等と同様とすることができる。
【0051】
金属層154の有底孔154yと、金属層155の有底孔155xとは、平面視で重複する位置に形成されている。そのため、金属層154と金属層155との界面には、細孔は形成されない。しかし、これに限らず、X方向及びY方向において、有底孔155x及び有底孔155yの配置を適宜変更することで、金属層154と金属層155との界面には、細孔を形成してもよい。
【0052】
図4に示すように、金属層155には、連絡流路180を構成する開口部155sも形成されている。開口部155sは、金属層155を厚さ方向(Z方向)に貫通する貫通孔で形成されている。この貫通孔は、例えば平面視で重複する上面側の有底孔と下面側の有底孔とが繋がって構成される。
【0053】
図5に示すように、金属層155には、流路170を構成する開口部155tも形成されている。開口部155tは、金属層155を厚さ方向(Z方向)に貫通する貫通孔で形成されている。この貫通孔も、例えば平面視で重複する上面側の有底孔と下面側の有底孔とが繋がって構成される。
【0054】
各金属層に形成された細孔同士は互いに連通しており、互いに連通する細孔は多孔質体150内に三次元的に広がっている。そのため、作動流体Cは、毛細管力により、互いに連通する細孔内を三次元的に広がる。
【0055】
また、
図4に示すように、開口部152s~155sは平面視で重複する位置に形成されており、開口部152s~155sから連絡流路180が構成されている。連絡流路180と多孔質体150との間の部分では、金属層152~155に孔や溝が形成されておらず、このような孔や溝が形成されていない部分が重なり合うことでソリッドな支柱160が形成されている。
【0056】
また、
図5に示すように、平面視で、開口部152t~155tはX方向で交互にずれるようにして形成されている。すなわち、X方向において開口部153t及び155tが開口部152t及び154tよりも大きく形成され、管壁142及び143の両側で開口部153t及び155tの側面が開口部152t及び154tの側面よりも後退して凹んでいる。このように、開口部153t及び155tの側面のX方向の位置と開口部152t及び154tの側面のX方向の位置にずれがあり、金属層153に溝193が形成され、金属層155に溝195が形成されている。例えば、溝193及び195は、液管140に沿って延びる(Y方向において、流路170と略平行に延びる)ように形成されている。
【0057】
このように、液管140の壁面(管壁142及び管壁143の壁面)には溝193及び195が設けられており、液管140の流路170内の液相の作動流体Cは、溝193及び195に生じる毛細管力によって凝縮器120から蒸発器110に向かって誘導される。
【0058】
また、注入口141の近傍にて流路170と蒸発器110との間に多孔質体150が設けられている。従って、注入口141から液管140内に注入された液相の作動流体Cは多孔質体150により、吸収されて貯留される。また、ループ型ヒートパイプ100が動作を開始した後では、溝193及び195により蒸発器110に向かって誘導されてきた液相の作動流体Cが、蒸発器110に達する前に多孔質体150により吸収されて、貯留される。
【0059】
蒸発器110に付与される熱量が大きくなると、蒸発器110が蒸気Cvを生成する速度が、凝縮器120が蒸気Cvを液化して液相の作動流体Cを生成する速度を上回ることがある。このような場合、流路170内の液相の作動流体Cの量が減少していく。しかし、第1の実施形態では、流路170よりも蒸発器110側に位置する多孔質体150が液相の作動流体Cを貯留しているため、流路170内の液相の作動流体Cの量が減少したとしても、多孔質体150から蒸発器110に液相の作動流体Cを供給し続けることができる。つまり、第1の実施形態によれば、液管140内の作動流体Cの枯渇に伴うドライアウトを抑制することができる。
【0060】
また、ループ型ヒートパイプ100の使用時等において、凝縮器120が蒸発器110の鉛直下方に位置すると、作動流体Cを凝縮器120側に移動させる重力が作用する。しかし、第1の実施形態では、多孔質体150が作動流体Cを貯留しているため、多孔質体150から蒸発器110に液相の作動流体Cを供給し続け、ドライアウトを抑制することができる。
【0061】
また、蒸発器110からのヒートリーク等によって液管140内を蒸気Cvが逆流しようとしても、多孔質体150から液相の作動流体Cに作用する毛細管力で蒸気Cvを押し戻すことができ、蒸気Cvの逆流を防止することが可能となる。特に、多孔質体150の一部が蒸発器110の近傍で液管140の内部を充填している場合、蒸気Cvの逆流を防止する効果が高い。
【0062】
更に、多孔質体150は蒸発器110内にも設けられている。蒸発器110内の多孔質体150のうち、液管140寄りの部分には液相の作動流体Cが浸透する。この際、多孔質体150から作動流体Cに作用する毛細管力が、ループ型ヒートパイプ100内で作動流体Cを循環させるポンピング力となる。
【0063】
しかも、この毛細管力は蒸発器110内の蒸気Cvに対抗するため、蒸気Cvが液管140に逆流するのを抑制することが可能となる。
【0064】
なお、液管140には作動流体Cを注入するための注入口141が形成されているが、注入口141は塞がれており、ループ型ヒートパイプ100内は気密に保たれる。
【0065】
[ループ型ヒートパイプの製造方法]
次に、第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプの製造方法について、多孔質体の製造工程を中心に説明する。
図7~
図10は、第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプの製造工程を例示する図である。
図7~
図8は、
図4に対応する断面を示し、
図9~
図10は、
図5に対応する断面を示している。
【0066】
まず、
図7(a)及び
図9(a)に示す工程では、
図1の平面形状に形成された金属シート152bを準備する。そして、金属シート152bの上面にレジスト層310を形成し、金属シート152bの下面にレジスト層320を形成する。金属シート152bは、最終的に金属層152となる部材であり、例えば、銅、ステンレス、アルミニウム、マグネシウム合金等から形成することができる。金属シート152bの厚さは、例えば、50μm~200μm程度とすることができる。レジスト層310及び320としては、例えば、感光性のドライフィルムレジスト等を用いることができる。
【0067】
次に、
図7(b)及び
図9(b)に示す工程では、金属シート152bの多孔質体150を形成する領域において、レジスト層310を露光及び現像して、金属シート152bの上面を選択的に露出する開口部310xを形成する。また、レジスト層320を露光及び現像して、金属シート152bの下面を選択的に露出する開口部320xを形成する。開口部310x及び320xの形状及び配置は、
図9(a)に示した有底孔152x及び152yの形状及び配置に対応するように形成する。
【0068】
レジスト層310の露光及び現像の際には、
図7(b)に示すように、連絡流路180を形成する領域において、金属シート152bの上面を選択的に露出する開口部310yも形成し、
図9(b)に示すように、流路170を形成する領域において、金属シート152bの上面を選択的に露出する開口部310zも形成する。また、レジスト層320の露光及び現像の際には、
図7(b)に示すように、連絡流路180を形成する領域において、金属シート152bの下面を選択的に露出する開口部320yも形成し、
図9(b)に示すように、流路170を形成する領域において、金属シート152bの下面を選択的に露出する開口部320zも形成する。
【0069】
次に、
図7(c)及び
図9(c)に示す工程では、開口部310x、310y及び310z内に露出する金属シート152bを金属シート152bの上面側からハーフエッチングすると共に、開口部320x、320y及び320z内に露出する金属シート152bを金属シート152bの下面側からハーフエッチングする。これにより、金属シート152bの上面側に有底孔152xが形成され、下面側に有底孔152yが形成されると共に、金属シート152bを貫通する開口部152s及び152tが形成される。また、表裏でX方向に交互に配置された開口部310xと開口部320xとは、平面視で部分的に重複しているため、重複する部分が連通して細孔152zが形成される。金属シート152bのハーフエッチングには、例えば、塩化第二鉄溶液を用いることができる。
【0070】
次に、
図7(d)及び
図9(d)に示す工程では、レジスト層310及び320を剥離液により剥離する。これにより、金属層152が完成する。
【0071】
次に、
図8(a)及び
図10(a)に示す工程では、孔や溝が形成されていないベタ状の金属層151及び156を準備する。また、金属層152と同様の方法により、金属層153、154、及び155を形成する。金属層153、154、及び155に形成される有底孔、細孔及び開口部の位置は、例えば、
図6に示した通りである。
【0072】
次に、
図8(b)及び
図10(b)に示す工程では、
図8(a)及び
図10(a)に示す順番で各金属層を積層し、加圧及び加熱により固相接合を行う。これにより、隣接する金属層同士が直接接合され、蒸発器110、凝縮器120、蒸気管130、及び液管140が形成され、蒸発器110及び液管140に多孔質体150が形成され、液管140に支柱160が形成される。また、多孔質体150の端部150Bの凝縮器120側に、作動流体Cを多孔質体150に誘導する空間からなる微細な流路170が形成されると共に、液管140の外側の管壁143と支柱160との間に連絡流路180が形成される。
【0073】
その後、真空ポンプ等を用いて液管140内を排気した後、注入口141から液管140内に作動流体Cを注入する。液管140内に注入された作動流体Cは、多孔質体150に浸み込むと共に、連絡流路180を通じて流路170に流れ込む。このとき、多孔質体150と連絡流路180との間にソリッドな支柱160が設けられているため、多孔質体150が連絡流路180に面している場合よりも、作動流体Cは流路170まで流れやすい。作動流体Cの注入後には、注入口141を塞ぐ。
【0074】
ここで、固相接合とは、接合対象物同士を溶融させることなく固相(固体)状態のまま加熱して軟化させ、更に加圧して塑性変形を与えて接合する方法である。なお、固相接合によって隣接する金属層同士を良好に接合できるように、金属層151~156の全ての材料を同一にすることが好ましい。
【0075】
このようにして、ループ型ヒートパイプ100を製造することができる。
【0076】
このように、各金属層の両面側から形成した有底孔を部分的に連通させて各金属層内に細孔を設ける構造とすることで、貫通孔が形成された金属層同士を貫通孔が部分的に重複するように積層する従来の細孔の形成方法よりも優れた安定性を得ることができる。すなわち、金属層同士を積層する際の位置ずれや、金属層を複数積層する際の加熱処理の際の金属層の膨張及び収縮による位置ずれが生じることがなく、一定の大きさの細孔を金属層内に形成できる。
【0077】
これにより、細孔の大きさがばらついて細孔により発現する毛細管力が低下することを防止可能となり、蒸発器110から液管140に蒸気Cvが逆流することを抑制する効果を安定的に得ることができる。
【0078】
また、金属層同士を積層する部分では、隣接する有底孔全体を重複させる構造とすることで、金属層同士が接する面積を大きくできるため、強固な接合が可能となる。
【0079】
更に、この製造方法によれば、多孔質体150を構成する有底孔及び細孔と流路170及び連絡流路180を構成する貫通孔とを並行して形成することができる。
【0080】
(第1の実施形態の変形例)
次に、第1の実施形態の変形例について説明する。第1の実施形態の変形例は、連絡流路180の構成の点で第1の実施形態と相違する。
図11は、第1の実施形態の変形例に係るループ型ヒートパイプの内部の構成を例示する断面図である。
図11は、
図3中のI-I線に沿った断面図に相当する。
【0081】
第1の実施形態の変形例に係るループ型ヒートパイプは、第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプ100と同様に、液管140、多孔質体150、支柱160、流路170及び連絡流路180を有する。
【0082】
但し、
図11に示すように、平面視で、開口部152s~155sがX方向で交互にずれるようにして形成されている。すなわち、X方向において開口部153s及び155sが開口部152s及び154sよりも大きく形成され、管壁143及び支柱160の両側で開口部153s及び155sの側面が開口部152s及び154sの側面よりも後退して凹んでいる。このように、開口部153s及び155sの側面のX方向の位置と開口部152s及び154sの側面のX方向の位置にずれがあり、金属層153に溝293が形成され、金属層155に溝295が形成されている。例えば、溝293及び295は、液管140に沿って延びる(Y方向において、連絡流路180と略平行に延びる)ように形成されている。
【0083】
他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0084】
このような変形例によっても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、連絡流路180の壁面に溝293及び295が形成されているため、溝293及び295によって液相の作動流体Cの流動が促進される。従って、注入口141から注入された作動流体Cをより速やかに流路170に導くことができる。
【0085】
例えば、溝293は次のようにして有底孔153x及び153yと並行して形成することができる。すなわち、最終的に金属層153となる金属シートの上面及び下面に形成するレジスト層に、溝293に倣う平面形状の開口部を形成し、この金属シートのハーフエッチングを行う。このようにして有底孔153x及び153yと並行して溝293を形成することができる。溝293と同様に、例えば、溝295は有底孔155x及び155yと並行して形成することができる。
【0086】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、流路170及び連絡流路180の構成の点で第1の実施形態と相違する。
図12及び
図13は、第2の実施形態に係るループ型ヒートパイプの内部の構成を例示する断面図である。
図12は、
図3中のI-I線に沿った断面図に相当し、
図13は、
図3中のII-II線に沿った断面図に相当する。
【0087】
第2の実施形態に係るループ型ヒートパイプは、第1の実施形態に係るループ型ヒートパイプ100と同様に、液管140、多孔質体150、支柱160、流路170及び連絡流路180を有する。
【0088】
但し、
図12に示すように、支柱160及び管壁143の両側において、開口部152sの縁に、有底孔152xと同様に、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む溝492が形成されている。つまり、金属層152の上面に、連絡流路180に繋がるように溝492が形成されている。溝492の深さは、例えば、金属層152の厚さの半分程度とすることができる。
【0089】
また、
図12に示すように、支柱160及び管壁143の両側において、開口部153sの縁に、有底孔153xと同様に、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む溝493が形成されている。つまり、金属層153の上面に、連絡流路180に繋がるように溝493が形成されている。溝493の深さは、例えば、金属層153の厚さの半分程度とすることができる。
【0090】
また、
図12に示すように、支柱160及び管壁143の両側において、開口部154sの縁に、有底孔154xと同様に、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む溝494が形成されている。つまり、金属層154の上面に、連絡流路180に繋がるように溝494が形成されている。溝494の深さは、例えば、金属層154の厚さの半分程度とすることができる。
【0091】
また、
図12に示すように、支柱160及び管壁143の両側において、開口部155sの縁に、有底孔155xと同様に、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む溝495が形成されている。つまり、金属層155の上面に、連絡流路180に繋がるように溝495が形成されている。溝495の深さは、例えば、金属層155の厚さの半分程度とすることができる。
【0092】
溝492~495は、湾曲面からなる凹形状の内壁面を有する。また、
図12では多孔質体150に含まれる有底孔の断面形状をテーパ形状としているが、これら有底孔も、湾曲面からなる凹形状の内壁面を有することができる。
【0093】
開口部152s~155sは平面視で重複する位置に形成されている。また、例えば、溝492~495は、液管140に沿って延びる(Y方向において、連絡流路180と略平行に延びる)ように形成されている。
【0094】
更に、第2の実施形態では、
図13に示すように、多孔質体150の端部150Bと凝縮器120との間で、液管140の壁面に形成される溝が第1の実施形態と相違する。
【0095】
すなわち、
図13に示すように、管壁142及び143の両側において、開口部152tの縁に、有底孔152xと同様に、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む溝392が形成されている。つまり、金属層152の上面に、流路170に繋がるように溝392が形成されている。溝392の深さは、例えば、金属層152の厚さの半分程度とすることができる。
【0096】
また、
図13に示すように、管壁142及び143の両側において、開口部153tの縁に、有底孔153xと同様に、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む溝393が形成されている。つまり、金属層153の上面に、流路170に繋がるように溝393が形成されている。溝393の深さは、例えば、金属層153の厚さの半分程度とすることができる。
【0097】
また、
図13に示すように、管壁142及び143の両側において、開口部154tの縁に、有底孔154xと同様に、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む溝394が形成されている。つまり、金属層154の上面に、流路170に繋がるように溝394が形成されている。溝394の深さは、例えば、金属層154の厚さの半分程度とすることができる。
【0098】
また、
図13に示すように、管壁142及び143の両側において、開口部155tの縁に、有底孔155xと同様に、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む溝395が形成されている。つまり、金属層155の上面に、流路170に繋がるように溝395が形成されている。溝395の深さは、例えば、金属層155の厚さの半分程度とすることができる。
【0099】
溝392~395は、湾曲面からなる凹形状の内壁面を有する。また、これに限らず、
図12の多孔質体150に含まれる有底孔の断面形状のようにテーパ形状でもよい。
【0100】
開口部152t~155tは平面視で重複する位置に形成されている。また、例えば、溝392~395は、液管140に沿って延びる(Y方向において、流路170と略平行に延びる)ように形成されている。
【0101】
他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0102】
第2の実施形態によっても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、流路170の壁面に溝392~395が形成されているため、溝392~395によって液相の作動流体Cの流動が促進される。溝の数が第1の実施形態より多いため、熱輸送性能をより一層向上することができる。
【0103】
また、連絡流路180の壁面に溝492~495が形成されているため、溝492~495によって液相の作動流体Cの流動が促進される。溝の数が第1の実施形態の第1の参考例より多いため、注入口141から注入された作動流体Cをより速やかに流路170に導くことができる。
【0104】
例えば、溝392及び492は次のようにして有底孔152xと並行して形成することができる。すなわち、金属シート152bに形成するレジスト層310に形成する開口部310z(
図9(b)参照)及び開口部310y(
図7(b)参照)の平面形状を、溝392、492の形状に倣ったものとする。そして、金属シート152bのハーフエッチングを行う。このようにして有底孔152xと並行して溝392及び492を形成することができる。溝392及び492と同様に、例えば、溝393~395及び493~495は有底孔153x~155xと並行して形成することができる。
【0105】
なお、第1の実施形態と同様に、連絡流路180の壁面に溝492~495が形成されていなくてもよい。また、第1の実施形態の変形例と同様に、溝492~495に代えて、連絡流路180の壁面に溝293及び295が形成されていてもよい。
【0106】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、流路170及び連絡流路180の構成の点で第1の実施形態と相違する。
図14及び
図15は、第3の実施形態に係るループ型ヒートパイプの内部の構成を例示する断面図である。
図14は、
図3中のI-I線に沿った断面図に相当し、
図15は、
図3中のII-II線に沿った断面図に相当する。
【0107】
第3の実施形態に係るループ型ヒートパイプは、第2の実施形態に係るループ型ヒートパイプ100と同様に、液管140、多孔質体150、支柱160、流路170及び連絡流路180を有する。
【0108】
但し、
図14に示すように、支柱160及び管壁143の両側において、開口部152sの縁に、溝492だけでなく、有底孔152yと同様に、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む溝692が形成されている。つまり、金属層152の下面に、連絡流路180に繋がるように溝692が形成されている。溝692の深さは、例えば、金属層152の厚さの半分程度とすることができる。
【0109】
また、
図14に示すように、支柱160及び管壁143の両側において、開口部153sの縁に、溝493だけでなく、有底孔153yと同様に、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む溝693が形成されている。つまり、金属層153の下面に、連絡流路180に繋がるように溝693が形成されている。溝693の深さは、例えば、金属層153の厚さの半分程度とすることができる。
【0110】
また、
図14に示すように、支柱160及び管壁143の両側において、開口部154sの縁に、溝494だけでなく、有底孔154yと同様に、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む溝694が形成されている。つまり、金属層154の下面に、連絡流路180に繋がるように溝694が形成されている。溝694の深さは、例えば、金属層154の厚さの半分程度とすることができる。
【0111】
また、
図14に示すように、支柱160及び管壁143の両側において、開口部155sの縁に、溝495だけでなく、有底孔155yと同様に、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む溝695が形成されている。つまり、金属層155の下面に、連絡流路180に繋がるように溝695が形成されている。溝695の深さは、例えば、金属層155の厚さの半分程度とすることができる。
【0112】
溝692と溝493とが繋がって溝892が形成され、溝693と溝494とが繋がって溝893が形成され、溝694と溝495とが繋がって溝894が形成されている。
【0113】
更に、
図14に示すように、支柱160及び管壁143の両側において、溝492と繋がるようにして、金属層151に、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む溝691が形成されている。つまり、金属層151の下面に、連絡流路180に繋がるように溝691が形成されている。溝691の深さは、例えば、金属層151の厚さの半分程度とすることができる。溝691と溝492とが繋がって溝891が形成されている。
【0114】
更に、
図14に示すように、支柱160及び管壁143の両側において、溝695と繋がるようにして、金属層156に、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む溝496が形成されている。つまり、金属層156の上面に、連絡流路180に繋がるように溝496が形成されている。溝496の深さは、例えば、金属層156の厚さの半分程度とすることができる。溝695と溝496とが繋がって溝895が形成されている。
【0115】
溝691~695及び496は、湾曲面からなる凹形状の内壁面を有する。また、
図14では多孔質体150に含まれる有底孔の断面形状をテーパ形状としているが、これら多孔質体150に含まれる有底孔も、湾曲面からなる凹形状の内壁面を有することができる。
【0116】
第2の実施形態と同様に、開口部152s~155sは平面視で重複する位置に形成されている。また、例えば、溝891~895は、液管140に沿って延びる(Y方向において、連絡流路180と略平行に延びる)ように形成されている。
【0117】
更に、第3の実施形態では、
図15に示すように、多孔質体150の端部150Bと凝縮器120との間で、液管140の壁面に形成される溝が第2の実施形態と相違する。
【0118】
すなわち、
図15に示すように、管壁142及び143の両側において、開口部152tの縁に、溝392だけでなく、有底孔152yと同様に、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む溝592が形成されている。つまり、金属層152の下面に、流路170に繋がるように溝592が形成されている。溝592の深さは、例えば、金属層152の厚さの半分程度とすることができる。
【0119】
また、
図15に示すように、管壁142及び143の両側において、開口部153tの縁に、溝393だけでなく、有底孔153yと同様に、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む溝593が形成されている。つまり、金属層153の下面に、流路170に繋がるように溝593が形成されている。溝593の深さは、例えば、金属層153の厚さの半分程度とすることができる。
【0120】
また、
図15に示すように、管壁142及び143の両側において、開口部154tの縁に、溝394だけでなく、有底孔154yと同様に、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む溝594が形成されている。つまり、金属層154の下面に、流路170に繋がるように溝594が形成されている。溝594の深さは、例えば、金属層154の厚さの半分程度とすることができる。
【0121】
また、
図15に示すように、管壁142及び143の両側において、開口部155tの縁に、溝395だけでなく、有底孔155yと同様に、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む溝595が形成されている。つまり、金属層155の下面に、流路170に繋がるように溝595が形成されている。溝595の深さは、例えば、金属層155の厚さの半分程度とすることができる。
【0122】
溝592と溝393とが繋がって溝792が形成され、溝593と溝394とが繋がって溝793が形成され、溝594と溝395とが繋がって溝794が形成されている。
【0123】
更に、
図15に示すように、管壁142及び143の両側において、溝392と繋がるようにして、金属層151に、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む溝591が形成されている。つまり、金属層151の下面に、流路170に繋がるように溝591が形成されている。溝591の深さは、例えば、金属層151の厚さの半分程度とすることができる。溝591と溝392とが繋がって溝791が形成されている。
【0124】
更に、
図15に示すように、管壁142及び143の両側において、溝595と繋がるようにして、金属層156に、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む溝396が形成されている。つまり、金属層156の上面に、流路170に繋がるように溝396が形成されている。溝396の深さは、例えば、金属層156の厚さの半分程度とすることができる。溝595と溝396とが繋がって溝795が形成されている。
【0125】
溝591~595及び396は、湾曲面からなる凹形状の内壁面を有する。また、これに限らず、
図14の多孔質体150に含まれる有底孔の断面形状のようにテーパ形状でもよい。
【0126】
第2の実施形態と同様に、開口部152t~155tは平面視で重複する位置に形成されている。また、例えば、溝791~795は、液管140に沿って延びる(Y方向において、流路170と略平行に延びる)ように形成されている。
【0127】
他の構成は第2の実施形態と同様である。
【0128】
第3の実施形態によっても第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、流路170の壁面に溝791~795が形成されているため、溝791~795によって液相の作動流体Cの流動が促進される。溝の数が第2の実施形態より多いため、熱輸送性能をより一層向上することができる。
【0129】
また、連絡流路180の壁面に溝891~895が形成されているため、溝891~895によって液相の作動流体Cの流動が促進される。溝の数が第2の実施形態より多いため、注入口141から注入された作動流体Cをより速やかに流路170に導くことができる。
【0130】
例えば、溝592及び692は次のようにして有底孔152yと並行して形成することができる。すなわち、金属シート152bに形成するレジスト層320に形成する開口部320z(
図9(b)参照)及び開口部320y(
図7(b)参照)の平面形状を、溝592、692の形状に倣ったものとする。そして、金属シート152bのハーフエッチングを行う。このようにして有底孔152yと並行して溝592及び692を形成することができる。溝592及び692と同様に、例えば、溝593~595及び693~695は有底孔153y~155yと並行して形成することができる。
【0131】
また、金属層151及び156の溝591、691、396及び496も、金属層151及び156の溝591、691、396及び496の形成予定領域に開口部を備えたレジスト層を用いてハーフエッチングすることにより形成することができる。
【0132】
なお、いずれの実施形態においても、液管140内の多孔質体150は、内側の管壁142に接触している必要はなく、管壁142から離間していてもよい。また、注入口141と蒸発器110との間で、多孔質体150が液管140の内部を充填していなくてもよい。例えば、多孔質体150が外側の管壁143に接触せずに、管壁143から離間していてもよい。
【0133】
また、流路170内に多孔質体150の端部150Bに繋がり、液管140に沿って延びる(Y方向において、流路170と略平行に延びる)ソリッドな支柱が設けられていてもよい。ソリッドな支柱を含むことにより、厚さ方向(Z方向)の機械的強度を向上することができる。また、支柱の側面に溝が形成されていてもよい。このような溝は、溝193及び195等と同様に、液相の作動流体Cの流動を促進する。更に、多孔質体150が吸収しきれなかった作動流体Cを吸収し、液管140内での液相の作動流体Cの蒸発器110側から凝縮器120側への移動を遮る遮蔽体が液管140内に設けられていてもよい。遮蔽体としては、例えば、多孔質体150と同様に、金属層152~155に形成された有底孔及び細孔を備えた多孔質体を用いることができる。
【0134】
また、液管140の、端部150Bよりも凝縮器120側に、凝縮器120により液化された作動流体Cを蒸発器110に向けて誘導する多孔質体が、多孔質体150から離間して設けられていてもよい。このような多孔質体は、例えば、管壁142及び143の近傍に設けることができる。
【0135】
また、多孔質体150の領域において、金属層151や金属層156に有底孔を形成してもよい。また、流路170の領域において、多孔質体150に貯留された作動流体Cを流路170側に浸み出させない範囲で、流路170に露出する金属層151や金属層156に有底孔を形成してもよい。金属層151や金属層156にも有底孔を形成することで、更に熱輸送性能をより一層向上することができる。
【0136】
また、多孔質体150と連絡流路180との間に支柱160が設けられている必要はなく、多孔質体150が連絡流路180に面していてもよい。
【0137】
また、多孔質体150を構成する孔が有底孔である必要はなく、多孔質体150に貫通孔が含まれていてもよい。
【0138】
また、注入口141の位置は、多孔質体150の端部150Aと端部150Bとの間であればよく、例えば、
図3に示す平面形状がL字型の液管140において、その屈曲部よりも凝縮器120側に注入口141が設けられていてもよい。
【0139】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0140】
100 ループ型ヒートパイプ
110 蒸発器
120 凝縮器
130 蒸気管
140 液管
141 注入口
142、143 管壁
150 多孔質体
150A、150B 端部
160 支柱
170 流路
180 連絡流路
193、195、293、295、392~396、492~496、591~595、691~695、791~795、891~895 溝